(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ステータ及びステータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/10 20060101AFI20240730BHJP
H02K 3/34 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H02K15/10
H02K3/34 C
(21)【出願番号】P 2020032483
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏幸
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-152901(JP,U)
【文献】特開2014-135865(JP,A)
【文献】特開2017-093248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/10
H02K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に配列された複数のティースを内周面側に有し、隣り合う前記ティース間に複数のスロットを形成した円環形状のステータコアと、
前記スロットに収容された部分のスロット収容部と前記スロット収容部に連続して前記ステータコアの中心軸の軸方向に突出した部分の突出部とを有し、前記突出部が複数組み合わされて集合体としてのコイルエンド部を形成したコイルと、
前記スロットの内壁面と前記コイルの前記スロット収容部との間に配置され、前記スロットから前記軸方向に突出した紙端部を有する複数の絶縁紙と、
前記スロット内に含浸して硬化したワニスと、
前記コイルエンド部の内周面側に配置された円環部と、前記円環部から突出して、前記ティースの前記軸方向の端面の側に配置され、周方向に隣り合う前記紙端部の間に入り込んだ形状の突起と、を有する環状部材と、を備え、
前記突起は、前記円環部から前記軸方向において前記ステータコアの側に突出した形状であ
り、
前記円環部は、前記コイルの前記スロット収容部の最内周部が前記ステータコアの内周面に対して所定の間隔を有して外周側に位置するように規制する形状であるステータ。
【請求項2】
前記環状部材は、径方向の外側部を前記軸方向に沿って貫通する溝部を有し、該溝部は前記突起側の端部が前記突起を向いている請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記環状部材は、
前記軸方向において前記ステータコアの反対側の外周側の端部に、前記ステータコアの側に向かうに連れて前記外周側に傾斜する傾斜部を有する請求項
1又は2に記載のステータ。
【請求項4】
前記環状部材は、
前記ティースの前記軸方向の前記端面と前記コイルエンド部との間に形成された空間部に径方向から係合した係合部を有する請求項
1乃至3のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項5】
周方向に配列された複数のティースを内周面側に有し、隣り合う前記ティース間に複数のスロットを形成した円環形状のステータコアと、
前記スロットに収容された部分のスロット収容部と前記スロット収容部に連続して前記ステータコアの中心軸の軸方向に突出した部分の突出部とを有し、前記突出部が複数組み合わされて集合体としてのコイルエンド部を形成したコイルと、
前記スロットの内壁面と前記コイルの前記スロット収容部との間に配置され、前記スロットから前記軸方向に突出した紙端部を有する複数の絶縁紙と、
前記スロット内に含浸して硬化したワニスと、
前記コイルエンド部の内周面側に配置された円環部と、前記円環部から突出して、前記ティースの前記軸方向の端面の側に配置され、周方向に隣り合う前記紙端部の間に入り込んだ形状の突起と、を有する環状部材と、を備え、
前記突起は、前記円環部の外周面から前記コイルエンド部の内周面に向けて径方向に突出した形状であり、かつ、前記コイルの前記スロット収容部の最内周部が前記ステータコアの内周面に対して所定の間隔を有して外周側に位置するように、前記コイルの前記コイルエンド部の前記内周面に内周側から当接するステータ。
【請求項6】
前記円環部の前記軸方向における前記ステータコアの側の端面は、前記ティースの前記軸方向の前記端面に突き当たっている請求項5に記載のステータ。
【請求項7】
前記円環部の
内径は、前記ステータコアの内径より大きい請求項
1乃至6のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項8】
前記絶縁紙は、前記スロットから前記軸方向の第1方向側に突出した前記紙端部である第1紙端部と、前記軸方向の前記第1方向とは反対の第2方向側に突出した第2紙端部と、を有し、
前記環状部材は、前記円環部である第1円環部と、前記突起である第1突起と、を有する第1環状部材であり、
前記スロットの前記第2方向側の前記コイルエンド部の内周面側に配置された第2円環部と、前記第2円環部から突出して、前記ティースの前記第2方向の端面の側に配置され、周方向に隣り合う前記第2紙端部の間に入り込んだ形状の第2突起と、を有する第2環状部材を備える請求項1乃至7のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項9】
前記第1円環部及び前記第2円環部の少なくとも一方の内径は、前記ステータコアの内径より大きい請求項
8に記載のステータ。
【請求項10】
周方向に配列された複数のティースを内周面側に有し、隣り合う前記ティース間に複数のスロットを形成した円環形状のステータコアと、前記スロットに収容された部分のスロット収容部と前記スロット収容部に連続して前記ステータコアの中心軸の軸方向に突出した部分の突出部とを有するコイルと、前記スロットの内壁面と前記コイルの前記スロット収容部との間に配置され、前記スロットから前記軸方向に突出した紙端部を有する複数の絶縁紙と、を備え、前記突出部が複数組み合わされて集合体としてのコイルエンド部を形成したステータの製造方法において、
円環形状であって前記コイルの前記スロット収容部の最内周部が前記ステータコアの内周面に対して所定の間隔を有して外周側に位置するように規制する円環部と前記円環部から前記軸方向において前記ステータコアの側に突出した突起とを有する環状部材の前記円環部を、前記コイルエンド部の内周面側に組み付けると共に、前記ティースの前記軸方向の端面の側であって、周方向に隣り合う前記紙端部の間に前記突起を入り込ませる環状部材組付け工程と、
前記コイルエンド部に前記軸方向からワニスを滴下する滴下工程と、を備えるステータの製造方法。
【請求項11】
周方向に配列された複数のティースを内周面側に有し、隣り合う前記ティース間に複数のスロットを形成した円環形状のステータコアと、前記スロットに収容された部分のスロット収容部と前記スロット収容部に連続して前記ステータコアの中心軸の軸方向に突出した部分の突出部とを有するコイルと、前記スロットの内壁面と前記コイルの前記スロット収容部との間に配置され、前記スロットから前記軸方向に突出した紙端部を有する複数の絶縁紙と、を備え、前記突出部が複数組み合わされて集合体としてのコイルエンド部を形成したステータの製造方法において、
円環形状の円環部と
、前記円環部からの外周面から前記コイルエンド部の内周面に向けて径方向に突出した形状であり、かつ、前記コイルの前記スロット収容部の最内周部が前記ステータコアの内周面に対して所定の間隔を有して外周側に位置するように、前記コイルの前記コイルエンド部の前記内周面に内周側から当接する突起と、を有する環状部材の前記円環部を、前記コイルエンド部の内周面側に組み付けると共に、前記ティースの前記軸方向の端面の側であって、周方向に隣り合う前記紙端部の間に前記突起を入り込ませる環状部材組付け工程と、
前記コイルエンド部に前記軸方向からワニスを滴下する滴下工程と、を備えるステータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この技術は、回転電機を構成するステータ及びステータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電気自動車等の車両に搭載される回転電機等に使用されるステータとしては、鋼板を重ねた略円環形状のステータコアのスロットに、絶縁紙(スロット紙)を配置させてコイルを組み付け、ワニスを滴下して含浸させ、加熱することによりワニスを硬化させる製造方法により製造されたものが普及している。この場合のワニスの滴下方法としては、例えば、ステータコアの軸方向からコイルエンド部に滴下する方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のステータでは、製造時にコイルエンド部に滴下されたワニスの多くは、コイルを伝わってコイルと絶縁紙との間を下方に流れていく。これに対し、コイルを伝わったワニスは、スロットと絶縁紙との間には入りにくく、ワニス硬化後のステータの剛性が小さくなってしまう虞がある。
【0005】
そこで、剛性を向上できるステータ及びステータの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本ステータは、周方向に配列された複数のティースを内周面側に有し、隣り合う前記ティース間に複数のスロットを形成した円環形状のステータコアと、前記スロットに収容された部分のスロット収容部と前記スロット収容部に連続して前記ステータコアの中心軸の軸方向に突出した部分の突出部とを有し、前記突出部が複数組み合わされて集合体としてのコイルエンド部を形成したコイルと、前記スロットの内壁面と前記コイルの前記スロット収容部との間に配置され、前記スロットから前記軸方向に突出した紙端部を有する複数の絶縁紙と、前記スロット内に含浸して硬化したワニスと、前記コイルエンド部の内周面側に配置された円環部と、前記円環部から突出して、前記ティースの前記軸方向の端面の側に配置され、周方向に隣り合う前記紙端部の間に入り込んだ形状の突起と、を有する環状部材と、を備え、前記突起は、前記円環部から前記軸方向において前記ステータコアの側に突出した形状であり、前記円環部は、前記コイルの前記スロット収容部の最内周部が前記ステータコアの内周面に対して所定の間隔を有して外周側に位置するように規制する形状である。
また、本ステータは、周方向に配列された複数のティースを内周面側に有し、隣り合う前記ティース間に複数のスロットを形成した円環形状のステータコアと、前記スロットに収容された部分のスロット収容部と前記スロット収容部に連続して前記ステータコアの中心軸の軸方向に突出した部分の突出部とを有し、前記突出部が複数組み合わされて集合体としてのコイルエンド部を形成したコイルと、前記スロットの内壁面と前記コイルの前記スロット収容部との間に配置され、前記スロットから前記軸方向に突出した紙端部を有する複数の絶縁紙と、前記スロット内に含浸して硬化したワニスと、前記コイルエンド部の内周面側に配置された円環部と、前記円環部から突出して、前記ティースの前記軸方向の端面の側に配置され、周方向に隣り合う前記紙端部の間に入り込んだ形状の突起と、を有する環状部材と、を備え、前記突起は、前記円環部の外周面から前記コイルエンド部の内周面に向けて径方向に突出した形状であり、かつ、前記コイルの前記スロット収容部の最内周部が前記ステータコアの内周面に対して所定の間隔を有して外周側に位置するように、前記コイルの前記コイルエンド部の前記内周面に内周側から当接する。
【0007】
また、本ステータの製造方法は、周方向に配列された複数のティースを内周面側に有し、隣り合う前記ティース間に複数のスロットを形成した円環形状のステータコアと、前記スロットに収容された部分のスロット収容部と前記スロット収容部に連続して前記ステータコアの中心軸の軸方向に突出した部分の突出部とを有するコイルと、前記スロットの内壁面と前記コイルの前記スロット収容部との間に配置され、前記スロットから前記軸方向に突出した紙端部を有する複数の絶縁紙と、を備え、前記突出部が複数組み合わされて集合体としてのコイルエンド部を形成したステータの製造方法において、円環形状であって前記コイルの前記スロット収容部の最内周部が前記ステータコアの内周面に対して所定の間隔を有して外周側に位置するように規制する円環部と前記円環部から前記軸方向において前記ステータコアの側に突出した突起とを有する環状部材の前記円環部を、前記コイルエンド部の内周面側に組み付けると共に、前記ティースの前記軸方向の端面の側であって、周方向に隣り合う前記紙端部の間に前記突起を入り込ませる環状部材組付け工程と、前記コイルエンド部に前記軸方向からワニスを滴下する滴下工程と、を備える。
また、本ステータの製造方法は、周方向に配列された複数のティースを内周面側に有し、隣り合う前記ティース間に複数のスロットを形成した円環形状のステータコアと、前記スロットに収容された部分のスロット収容部と前記スロット収容部に連続して前記ステータコアの中心軸の軸方向に突出した部分の突出部とを有するコイルと、前記スロットの内壁面と前記コイルの前記スロット収容部との間に配置され、前記スロットから前記軸方向に突出した紙端部を有する複数の絶縁紙と、を備え、前記突出部が複数組み合わされて集合体としてのコイルエンド部を形成したステータの製造方法において、円環形状の円環部と、前記円環部からの外周面から前記コイルエンド部の内周面に向けて径方向に突出した形状であり、かつ、前記コイルの前記スロット収容部の最内周部が前記ステータコアの内周面に対して所定の間隔を有して外周側に位置するように、前記コイルの前記コイルエンド部の前記内周面に内周側から当接する突起と、を有する環状部材の前記円環部を、前記コイルエンド部の内周面側に組み付けると共に、前記ティースの前記軸方向の端面の側であって、周方向に隣り合う前記紙端部の間に前記突起を入り込ませる環状部材組付け工程と、前記コイルエンド部に前記軸方向からワニスを滴下する滴下工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本ステータ及びステータの製造方法によると、剛性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】第1の実施形態に係る第1環状部材の第1突起を示す側面図。
【
図3】第1の実施形態に係る第1環状部材の斜視図。
【
図4】第1の実施形態に係る第1環状部材の斜視図であり、(a)は第1突起、(b)は第1溝部。
【
図5】第1の実施形態に係る第1環状部材の第1傾斜部の斜視図。
【
図6】第1の実施形態に係る第1環状部材の第1係合部の斜視図。
【
図7】第1の実施形態に係るステータにおいて、第1環状部材の第1溝部の近傍を切断した斜視図。
【
図9】第1の実施形態に係るステータにおいて、第1環状部材の第1係合部の近傍を切断した斜視図。
【
図10】第1の実施形態に係るステータの製造方法を示すフローチャート。
【
図11】第1の実施形態に係るスロット紙の紙端部の形状を示す側面図であり、(a)は折り曲げていない形状、(b)は第1方向に折り曲げた形状。
【
図13】第2の実施形態に係る第1環状部材を示す斜視図。
【
図14】第2の実施形態に係る第1環状部材の第1突起と紙端部を示す斜視図。
【
図15】第2の実施形態に係る第1環状部材の第1突起と紙端部を示す断面図。
【
図16】第2の実施形態に係る第1突起を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1の実施形態>
以下、本開示の第1の実施形態を、
図1~
図11に沿って説明する。本実施形態では、ステータは、例えば三相交流モータに使用されるものとしている。
【0011】
[ステータの構成]
まず、
図1を参照して、ステータ1の構成について説明する。ステータ1は、略円環形状に形成され、ステータコア10と、コイルセット20と、絶縁紙の一例であるスロット紙30(
図2参照)と、環状部材の一例である第1環状部材40と、第2環状部材41と、硬化したワニスとを有している。ステータコア10とコイルセット20とスロット紙30と第1環状部材40と第2環状部材41とは、後述するスロット14内(スロット内)に含浸して硬化したワニスにより一体的に固定されている。
【0012】
ステータコア10は、略円環形状の電磁鋼板が積層されて形成されており、その外周側には不図示のモータケースにステータコア10を固定するためのリブ11及びボルト孔12と、内周面10a(
図7参照)側(内周面側)に設けられた周方向に配列された複数のティース13とを有している。隣り合うティース13の間(ティース間)には、コイルセット20を収納するための複数のスロット14が形成されている。
【0013】
コイルセット20は、複数のコイル21の集合体であり、断面矩形状の平角導線を巻き回されたコイル21が1ティース分だけずらしながら、複数を周方向にずらして重ねながら配列して円環状に形成されている。平角導線は、銅等からなる導体部の全周がエナメル等の絶縁被覆材によって覆われて形成されている。
【0014】
図2に示すように、コイル21は、スロット14に収納された部分のスロット収容部22と、スロット収容部22に連続してステータコア10の中心軸C(
図1参照)の軸方向Zに突出した部分の突出部23とを有している。本実施形態では、突出部23が複数組み合わされて集合体としてのコイルエンド部24を形成している。尚、ティース13の第1方向D1側(第1方向側)の端面13aと、コイルエンド部24との間には空間部15が形成されている。
【0015】
スロット紙30は、各スロット14に設けられており、周方向に配列されている。スロット紙30は、軸方向Zから視て、スロット14の内壁面を覆うように、ステータコア10の内周側を開いた略チャネル形状に折られて設けられている。スロット紙30は、スロット14の内壁面14aとスロット収容部22との間に配置され、スロット14から軸方向Zの一方側である第1方向D1側に突出した紙端部の一例である第1紙端部31と、第1方向D1とは反対側の第2方向D2に突出した不図示の第2紙端部と、を有している。第1紙端部31は、ティース13の第1方向D1側の空間部15において、第2方向D2側(第2方向側)に折られており、スロット紙30の軸方向Zへの脱落を防止している。
【0016】
[環状部材]
次に、第1環状部材40について、
図1~
図9を用いて詳細に説明する。
図1に示すように、第1環状部材40は、略円環形状で、ステータコア10の中心軸Cと同心上で、ステータコア10の第1方向D1側に設けられている。本実施形態では、第1環状部材40はPPSなどの樹脂により形成されている。但し、樹脂により形成されることには限られず、例えば、金属製であってもよい。
図3及び
図4(a)に示すように、第1環状部材40は、略円環形状の第1円環部42と第1突起43とを有している。
【0017】
本実施形態では、第1突起43は、第1円環部42から軸方向Zに突出して形成されており、径方向から視て略三角形状としている。第1円環部42は、
図7及び
図8に示すように、スロット14の第1方向D1側のコイルエンド部24の内径側に当接して設けられている。
図2に示すように、第1突起43は、第1円環部42から第2方向D2側に突出している。そして、第1突起43は、隣り合うスロット紙30の第1紙端部31の間に入り込んだ形状になっている。即ち、第1突起43は、隣り合うスロット紙30の第1紙端部31の間を開けた状態で保持して、第1紙端部31の間が閉じないようにしている。
【0018】
これにより、ステータ1の製造時にコイルエンド部24に滴下されたワニスWは、コイル21を伝わって第1環状部材40まで達し、第1円環部42から第1突起43を伝わって、隣り合うスロット紙30の第1紙端部31の間に入り込んで、ティース13とスロット紙30との間に含浸し、ステータ1の剛性を向上することができる。また、
図7に示すように、ティース13の第1方向D1側の空間部15に第1突起43が入り込むので、空間部15を内径側に流通しようとするワニスWの流れを阻害して、ステータコア10から内径側に漏れ出すことを抑制する。
【0019】
また、本実施形態では、
図1に示すように、第1環状部材40は、コイルエンド部24の内周側に装着されている。そして、
図8に示すように、第1環状部材40は、コイル21(
図1参照)のスロット収容部22の最内周部22aがステータコア10の内周面10aに対して先端隙(所定の間隔)Gを有して外周側に位置するように規制する規制部材としても機能している。
【0020】
図3に示すように、第1環状部材40は、溝部の一例としての第1溝部44と、傾斜部の一例としての第1傾斜部45と、係合部の一例としての第1係合部46とを有している。第1溝部44は、
図3、
図4(b)、
図5(a)に示すように、第1円環部42の外側部を軸方向Zに沿って貫通し、第1突起43の側(突起側)の端部が第1突起43を向いた溝形状に形成されている。本実施形態では、第1溝部44の方向は軸方向Zと平行であると共に、第1溝部44と第1突起43とが周方向に一致するようにしている。これにより、
図7に示すように、ステータ1の製造時にコイルエンド部24に滴下されたワニスWは、コイル21を伝わって第1環状部材40まで達し、第1円環部42の第1溝部44から第1突起43を伝わって、隣り合うスロット紙30の第1紙端部31の間に入り込んで、ティース13とスロット紙30との間に含浸する。
【0021】
第1傾斜部45は、第1方向D1側の外周側の端部に設けられ、第2方向D2側に向かうに連れて外周側に傾斜した形状である。これにより、
図8に示すように、ステータ1の製造時にコイルエンド部24に滴下されたワニスWは、コイル21を伝わって第1環状部材40まで達し、第1円環部42の第1傾斜部45を伝わって外周側に流されるので、ステータコア10から内径側に漏れ出すことを抑制する。
【0022】
図3及び
図6に示すように、第1係合部46は、ティース13の第1方向D1側の端面13aとコイルエンド部24との間に形成された空間部15に径方向から係合可能に設けられている。第1係合部46は、例えば、周方向に等間隔で3か所に設けられている。
図9に示すように、第1係合部46が空間部15に係合することにより、ワニスで固定する前に第1環状部材40をコイルエンド部24の内周側に位置決め固定することができる。
【0023】
ステータコア10の第2方向D2側に装着された第2環状部材41は、円環形状の不図示の第2円環部と、第2円環部から軸方向Zに突出した不図示の第2突起とを有している。また、第2環状部材41は、いずれも不図示の第2溝部と、第2傾斜部と、第2係合部とを有している。第2環状部材41は第1環状部材40と同様の構成であり、第2円環部と第2突起と第2溝部と第2傾斜部と第2係合部とは、それぞれ第1円環部42と第1突起43と第1溝部44と第1傾斜部45と第1係合部46と同様の構成であるので、詳細な説明は省略する。
【0024】
本実施形態では、第1環状部材40の第1円環部42の内径はステータコア10の内径より大きく、第2環状部材41の第2円環部の内径はステータコア10の内径より大きくしている。即ち、第1環状部材40と第2環状部材41とは、いずれも軸方向Zから視てステータコア10の内周面10aより外周側に設けられている。このため、第1方向D1側及び第2方向D2側のいずれからでもステータ1にロータを装着することができる。即ち、ステータ1にロータを装着するために、第1環状部材40及び第2環状部材41の少なくとも一方は、軸方向Zから視てステータコア10の内周面10aより外周側に設けられている。
【0025】
[ステータの製造方法]
ところで、
図1及び
図2に示すように、ステータを製造する際に、第1環状部材40と第2環状部材41が設けられていないステータコア10に対してワニスを軸方向Zからコイルエンド部24に滴下すると、ワニスの多くはコイル21を伝わってコイル21のスロット収容部22とスロット紙30との間を下方に流れていく。コイル21を伝わったワニスは、スロット14とスロット紙30との間には入りにくく、ワニス硬化後のステータ1の剛性が小さくなってしまう虞がある。また、コイルエンド部24に滴下されたワニスの一部は、コイル21を伝わって径方向に流れて、ステータコア10の内周面又は外周面から外部に漏れ出してしまう虞があり、漏れ出しによりステータ1の製造時の歩留まりが悪くなってしまう虞がある。そこで、本実施形態では、ワニスがスロット14とスロット紙30との間に流れ込み易く、ステータコア10から径方向に漏れ出しにくいようにする。
【0026】
以下、本実施形態によるステータの製造方法を、
図10に示すフローチャートに沿って説明する。まず、複数のコイル21をステータコア10に組み付ける(ステップS1)。具体的には、まず、複数のコイル21が円環状に組み合わされたコイルセット20を形成する。スロット14にはスロット紙30を装着する。コイルセット20をステータコア10の内径側の空間に配置する。複数のコイル21を外径側に移動することにより、コイル21をスロット14に配置されたスロット紙30の内側に配置する。ここでは、スロット紙30はコイル21がスロット14に配置される前に予めスロット14に配置した場合について説明しているが、これには限られず、スロット紙30は、コイルセット20に装着された後、コイルセット20と共にスロット14に配置されるようにしてもよい。
【0027】
コイル21を組み付けたステータコア10に対して第1環状部材40及び第2環状部材41を組み付ける(ステップS2、環状部材組付け工程)。
【0028】
次に、コイル21を組み付けたステータコア10を予備加熱する(ステップS3)。具体的には、ステータコア10の全体が例えば100℃程度になるように、予備加熱される。
【0029】
予備加熱後、コイル21をステータコア10に固定するためのワニスを軸方向Zからコイルエンド部24に滴下する(ステップS4、滴下工程)。まずは、
図7に示すように、コイルエンド部24に対して、第1方向D1側(上方側)よりワニスWが滴下される。ワニスWの滴下は、ステータコア10の中心軸Cが軸方向Zに沿うようにステータコア10が配置された状態で行われる。コイルエンド部24に滴下されたワニスWは、毛細管現象及び重力によって、コイル21の上方側から下方側に向かって、第1環状部材40まで達し、傾斜部45で外周側に案内され、第1円環部42の第1溝部44から第1突起43を伝わって、隣り合うスロット紙30の第1紙端部31の間に入り込んで、ティース13とスロット紙30との間に含浸する。また、ティース13の第1方向D1側の空間部15に第1突起43が入り込むので、空間部15を内径側に流通しようとするワニスWの流れを阻害して、ステータコア10から内径側に漏れ出すことを抑制する。
【0030】
ワニスWを滴下して所定時間の経過後、ワニスWの滴下を一旦停止し、ステータコア10を上下反転させて、再びワニスの滴下を行う。これにより、第2方向D2側のコイルエンド部24に対して、第2方向D2側よりワニスWが滴下される。コイルエンド部24に滴下されたワニスWは、第2環状部材41まで達し、第2方向D2側からティース13とスロット紙30との間に含浸する。
【0031】
その後、ステータコア10を加熱することにより、ワニスを硬化させる(ステップS5)。ここでは、ステータコア10を例えば約140℃に加熱する。ワニスは、約140℃で数分間加熱されることにより、硬化する。上述したステップS1~S5を実行することにより、ステータ1を製造することができる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態のステータ1によれば、第1環状部材40の第1突起43は隣り合うスロット紙30の第1紙端部31の間に入り込んだ形状であるので、ステータ1の製造時にコイルエンド部24に滴下されたワニスWは、コイル21を伝わって第1環状部材40まで達し、第1円環部42から第1突起43を伝わって、隣り合うスロット紙30の第1紙端部31の間に入り込んで、ティース13とスロット紙30との間に含浸するようにできる。これにより、ワニスがスロット14とスロット紙30との間に流れ込み易くできるので、ステータ1の剛性を向上することができる。
【0033】
また、本実施形態のステータ1によれば、第1突起43は、第1円環部42から第2方向D2側に突出した形状としている。このため、第1円環部42に沿って流れ落ちるワニスWは第1突起43に集められやすくなるので、ワニスWをスロット14とスロット紙30との間に流れ込み易くできる。
【0034】
また、本実施形態のステータ1によれば、第1環状部材40は、コイル21のスロット収容部22の最内周部22aがステータコア10の内周面10aに対して先端隙Gを有して外周側に位置するように規制する規制部材としても機能している。このため、先端隙Gを確保することで、モータの鉄損を抑制することができる。
【0035】
また、本実施形態のステータ1の製造方法によれば、ティース13の第1方向D1側の空間部15に第1突起43が入り込むことにより、空間部15を内径側に流通しようとするワニスWの流れを阻害できるので、ステータコア10から内径側に漏れ出すことを抑制することができる。これにより、ワニスの漏れ出しによるステータ1の製造時の歩留まりの低下を抑制することができる。
【0036】
尚、上述した本実施形態においては、
図2に示すように、第1紙端部31は、第2方向D2側に折られた形状である場合について説明したが、これには限られない。例えば、
図11(a)に示すように、スロット紙30の第1紙端部(紙端部)32を折り曲げずに第1方向D1に延びた形状としたり、あるいは、
図11(b)に示すように、第1紙端部(紙端部)33を第1方向D1側に折られた形状としてもよい。いずれの場合も、第1環状部材40の第1突起43を隣り合うスロット紙30の第1紙端部31の間に入り込ませることで、間を開けた状態に保持して、第1紙端部31の間が閉じないようにできる。
【0037】
また、本実施形態においては、第1突起43は径方向から視て略三角形状とした場合について説明したが、これには限られない。例えば、第1紙端部32が、
図11(a)に示すような形状であれば、第1突起43は径方向から視て略台形状や略四角形状としてもよい。
【0038】
また、本実施形態においては、第1環状部材40はコイルエンド部24の内周側に装着されている場合について説明したが、これには限られない。例えば、第1環状部材40はコイルエンド部24の外周側に装着されていてもよい。この場合、ティース13の第1方向D1側の空間部15に第1突起43が入り込むことにより、空間部15を外径側に流通しようとするワニスWの流れを阻害できるので、ステータコア10から外径側に漏れ出すことを抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態においては、第1環状部材40の第1円環部42の内径はステータコア10の内径より大きく、第2環状部材41の第2円環部の内径はステータコア10の内径より大きくしているが、これには限られない。例えば、第1円環部42及び第2円環部の一方の内径がステータコア10の内径より小さくてもよい。即ち、ステータ1にロータを装着するために、第1環状部材40及び第2環状部材41の少なくとも一方は、ステータコア10の内径より大きければよい。
【0040】
また、本実施形態においては、第1環状部材40及び第2環状部材41を組み付けてからワニスWの滴下工程を実行し、滴下工程においてはステータコア10を上下反転させて第1方向D1側及び第2方向D2側から順にワニスWを滴下する場合について説明したが、これには限られない。例えば、第1環状部材40を組み付けて、第2環状部材41は組み付けずにワニスWの滴下工程を実行し、滴下工程においてはステータコア10を上下反転せずに第1方向D1側のみからワニスWを滴下し、次いで、第2環状部材41を組み付けて、第2方向D2側のみからワニスWを滴下するようにしてもよい。
【0041】
<第2の実施形態>
次に、本開示の第2の実施形態のステータ101を、
図12~
図16に沿って説明する。本実施形態では、第1環状部材140が径方向の外周側に向けた第1突起143を有する点で、第1の実施形態と構成を異にしている。但し、それ以外の構成については、第1の実施形態と同様であるので、符号を同じくして詳細な説明を省略する。
【0042】
図12に示すように、本実施形態の第1環状部材140は、略円環形状で、ステータコア10の中心軸Cと同心上で、ステータコア10の第1方向D1側に設けられている。本実施形態では、第1環状部材140はPPSなどの樹脂により形成されている。但し、樹脂により形成されることには限られず、例えば、金属製であってもよい。
図13に示すように、第1環状部材140は、略円環形状の第1円環部142と第1突起143とを有している。
【0043】
図14に示すように、第1突起143は、スロット14(
図1参照)の第1方向D1側のコイルエンド部24の内径方向X1側に当接して設けられている。また、第1円環部142の第2方向D2側の端面142aは、ティース13の第1方向D1側の端面13aに突き当たっている。これにより、ティース13の第1方向D1側の空間部15を内径方向X1側に流通しようとするワニスの流れを阻害して、ステータコア10から内径方向X1側に漏れ出すことを抑制する。
【0044】
図15に示すように、第1突起143は、第1円環部142から径方向Xに突出した形状に形成されている。本実施形態では、第1突起143は、第1円環部142の外周面から外径方向X2側に突出した形状としている。そして、第1突起143は、隣り合うスロット紙30の第1紙端部31の間に入り込んだ形状になっている。即ち、第1突起143は、隣り合うスロット紙30の第1紙端部31の間を開けた状態で保持して、第1紙端部31の間が閉じないようにしている。
【0045】
これにより、ステータ101の製造時にコイルエンド部24に滴下されたワニスは、コイル21を伝わって第1環状部材140まで達し、第1円環部142から第1突起143を伝わって、隣り合うスロット紙30の第1紙端部31の間に入り込んで、ティース13とスロット紙30との間に含浸し、ステータ101の剛性を向上することができる。
【0046】
また、本実施形態では、第1環状部材140は、コイルエンド部24の内周側に装着されている。そして、
図14に示すように、第1環状部材140は、コイル21のスロット収容部22の最内周部22aがステータコア10の内周面10aに対して先端隙(所定の間隔)Gを有して外周側に位置するように規制する規制部材としても機能している。
【0047】
図16に示すように、第1環状部材140の第1突起143は、第2方向D2側の外径方向X2側の端部に、第1方向D1側に向かうに連れて外径方向X2側に傾斜した形状の第1傾斜部145を有している。また、第1突起143は、外径方向X2側の軸方向Zに沿った2つの縁部に、それぞれ面取部147が形成されている。これにより、ステータ101の製造時に第1環状部材140をコイルエンド部24に軸方向Zに沿って装着したときに、第1突起143の第1傾斜部145及び面取部147が、隣り合うスロット紙30の第1紙端部31の間に容易に入り込むことができる。コイルエンド部24に滴下されたワニスは、コイル21を伝わって第1環状部材140まで達し、第1円環部142の第1突起143を伝わって、隣り合うスロット紙30の第1紙端部31の間に入り込んで、ティース13とスロット紙30との間に含浸する。
【0048】
また、第1の実施形態と同様に、
図12に示すように、ステータコア10の第2方向D2側に装着された第2環状部材141は、円環形状の不図示の第2円環部と、第2円環部から外径方向X2側に突出した不図示の第2突起とを有している。第2環状部材141は第1環状部材140と同様の構成であるので、詳細な説明は省略する。また、本実施形態においても、第1環状部材140の第1円環部142の内径はステータコア10の内径より大きく、第2環状部材141の第2円環部の内径はステータコア10の内径より大きくしている。即ち、第1環状部材140及び第2環状部材141は、いずれも軸方向Zから視てステータコア10の内周面10aより外周側に設けられている。このため、第1方向D1側及び第2方向D2側のいずれからでもステータ1にロータを装着することができる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態のステータ101によれば、第1環状部材140の第1突起143は隣り合うスロット紙30の第1紙端部31の間に入り込んだ形状であるので、ステータ1の製造時にコイルエンド部24に滴下されたワニスWは、コイル21を伝わって第1環状部材140まで達し、第1円環部142から第1突起143を伝わって、隣り合うスロット紙30の第1紙端部31の間に入り込んで、ティース13とスロット紙30との間に含浸するようにできる。これにより、ワニスがスロット14とスロット紙30との間に流れ込み易くできるので、ステータ101の剛性を向上することができる。
【0050】
また、本実施形態のステータ101によれば、第1突起143は、第1円環部142から外径方向X2側に突出した形状としている。このため、第1円環部142に沿って流れ落ちるワニスは第1突起143に集められやすくなるので、ワニスをスロット14とスロット紙30との間に流れ込み易くできる。
【0051】
<各実施形態のまとめ>
尚、上述した各実施形態は、以下の構成を少なくとも備える。各実施形態のステータ(1,101)は、周方向に配列された複数のティース(13)を内周面(10a)側に有し、隣り合う前記ティース(13)間に複数のスロット(14)を形成した円環形状のステータコア(10)と、前記スロット(14)に収容された部分のスロット収容部(22)と前記スロット収容部(22)に連続して前記ステータコア(10)の中心軸(C)の軸方向(Z)に突出した部分の突出部(23)とを有し、前記突出部(23)が複数組み合わされて集合体としてのコイルエンド部(24)を形成したコイル(21)と、前記スロット(14)の内壁面(14a)と前記コイル(21)の前記スロット収容部(22)との間に配置され、前記スロット(14)から前記軸方向に突出した紙端部(31,32,33)を有する複数の絶縁紙(30)と、前記スロット(14)内に含浸して硬化したワニス(W)と、前記コイルエンド部(24)の内周面側に配置された円環部(42,142)と、前記円環部(42,142)から突出して、前記ティース(13)の前記軸方向(Z)の端面(13a)の側に配置され、周方向に隣り合う前記紙端部(31,32,33)の間に入り込んだ形状の突起(43,143)と、を有する環状部材(40,41,140,141)と、を備える。
【0052】
この構成によれば、環状部材(40,41,140,141)の突起(43,143)は周方向に隣り合う紙端部(31,32,33)の間に入り込んだ形状であるので、ステータ(1,101)の製造時にコイルエンド部(24)に滴下されたワニス(W)は、コイル(21)を伝わって環状部材(40,41,140,141)まで達し、円環部(42,142)から突起(43,143)を伝わって、周方向に隣り合う紙端部(31,32,33)の間に入り込んで、ティース(13)と絶縁紙(30)との間に含浸するようにできる。これにより、ワニス(W)がスロット(14)と絶縁紙(30)との間に流れ込み易くできるので、ステータ(1,101)の剛性を向上することができる。
【0053】
また、第1の実施形態のステータ(1)は、前記突起(43)は、前記円環部(42)から前記軸方向(Z)において前記ステータコア(10)の側に突出した形状である。この構成によれば、円環部(42)に沿って流れ落ちるワニス(W)は突起(43)に集められやすくなり、ワニス(W)をスロット(14)と絶縁紙(30)との間に流れ込み易くできるので、ステータ(1)の剛性を向上することができる。
【0054】
また、第1の実施形態のステータ(1)は、前記円環部(42)は、前記コイル(21)の前記スロット収容部(22)の最内周部(22a)が前記ステータコア(10)の内周面(10a)に対して所定の間隔を有して外周側に位置するように規制する形状である。この構成によれば、環状部材(40,41)は、コイル(21)のスロット収容部(22)の最内周部(22a)がステータコア(10)の内周面(10a)に対して所定の間隔(G)を有して外周側に位置するように規制する規制部材として機能するようにできる。このため、所定の間隔(G)を確保することで、モータの鉄損を抑制することができる。
【0055】
また、第1の実施形態のステータ(1)は、前記環状部材(40,41)は、径方向の外側部を前記軸方向(Z)に沿って貫通する溝部(44)を有し、該溝部(44)は前記突起(43)側の端部が前記突起(43)を向いている。この構成によれば、ステータ(1)の製造時にコイルエンド部(24)に滴下されたワニス(W)は、コイル(21)を伝わって環状部材(40,41)まで達し、円環部(42)の溝部(44)から突起(43)を伝わって、隣り合う紙端部(31,32,33)の間に入り込んで、ティース(13)と絶縁紙(30)との間に含浸するようにできる。これにより、ワニス(W)がスロット(14)と絶縁紙(30)との間に流れ込み易くできるので、ステータ(1)の剛性を向上することができる。
【0056】
また、第1の実施形態のステータ(1)は、前記環状部材(40,41)は、前記軸方向(Z)において前記ステータコア(10)の反対側の外周側の端部に、前記ステータコア(10)の側に向かうに連れて前記外周側に傾斜する傾斜部(45)を有する。この構成によれば、ステータ(1)の製造時にコイルエンド部(24)に滴下されたワニス(W)は、コイル(21)を伝わって環状部材(40,41)まで達し、円環部(42)の傾斜部(45)を伝わって外周側に流されるので、ステータコア(10)から内径側に漏れ出すことを抑制するようにできる。これにより、ワニス(W)の漏れ出しによるステータ(1)の製造時の歩留まりの低下を抑制することができる。
【0057】
また、第1の実施形態のステータ(1)は、前記環状部材(40,41)は、前記ティース(13)の前記軸方向(Z)の前記端面(13a)と前記コイルエンド部(24)との間に形成された空間部(15)に径方向から係合した係合部(46)を有する。この構成によれば、係合部(46)が空間部(15)に係合することにより、ワニス(W)で固定する前に環状部材(40,41)をコイルエンド部(24)の内周側に位置決め固定することができるので、ワニス(W)の滴下及び硬化時の作業性を向上することができる。
【0058】
また、第2の実施形態のステータ(101)は、前記突起(143)は、前記円環部(142)の外周面から前記コイルエンド部(24)の内周面に向けて径方向に突出した形状である。この構成によれば、円環部(142)に沿って流れ落ちるワニス(W)は突起(143)に集められやすくなり、ワニス(W)をスロット(14)と絶縁紙(30)との間に流れ込み易くできるので、ステータ(101)の剛性を向上することができる。
【0059】
また、第2の実施形態のステータ(101)は、前記突起(143)は、前記コイル(21)の前記スロット収容部(22)の最内周部(22a)が前記ステータコア(10)の内周面(10a)に対して所定の間隔を有して外周側に位置するように規制する形状である。この構成によれば、環状部材(140,141)は、コイル(21)のスロット収容部(22)の最内周部(22a)がステータコア(10)の内周面(10a)に対して所定の間隔(G)を有して外周側に位置するように規制する規制部材として機能するようにできる。このため、所定の間隔(G)を確保することで、モータの鉄損を抑制することができる。
【0060】
また、第2の実施形態のステータ(101)は、前記円環部(142)の前記軸方向(Z)における前記ステータコア(10)の側の端面(142a)は、前記ティース(13)の前記軸方向(Z)の前記端面(13a)に突き当たっている。この構成によれば、環状部材(140,141)とステータコア(10)とで端面(142a,13a)同士が軸方向(Z)に突き当たっているので、端面(142a,13a)同士の間からワニス(W)が径方向に漏れ出すことを低減することができる。
【0061】
また、各実施形態のステータ(1,101)は、前記円環部(42,142)の内径は、前記ステータコア(10)の内径より大きい。この構成によれば、ロータを確実に装着可能にすると共に、ロータを装着しない側の環状部材(40,41,140,141)については部品寸法の制約を低減することができる。
【0062】
また、各実施形態のステータ(1,101)は、前記絶縁紙(30)は、前記スロット(14)から前記軸方向の第1方向(D1)側に突出した前記紙端部(31,32,33)である第1紙端部と、前記軸方向(Z)の前記第1方向(D1)とは反対の第2方向(D2)側に突出した第2紙端部と、を有し、前記環状部材(40,41,140,141)は、前記円環部(42,142)である第1円環部(42,142)と、前記突起(43,143)である第1突起(43,143)と、を有する第1環状部材(40,140)であり、前記スロット(14)の前記第2方向(D2)側の前記コイルエンド部(24)の内周面側に配置された第2円環部と、前記第2円環部から突出して、前記ティース(13)の前記第2方向(D2)の端面(13a)の側に配置され、周方向に隣り合う前記第2紙端部の間に入り込んだ形状の第2突起と、を有する第2環状部材(41,141)を備える。この構成によれば、ステータコア(10)の第1方向(D1)及び第2方向(D2)の両側に環状部材(40,41,140,141)を設けることができる。
【0063】
また、各実施形態のステータ(1,101)は、前記第1円環部(42,142)及び前記第2円環部の少なくとも一方の内径は、前記ステータコア(10)の内径より大きい。この構成によれば、ロータを確実に装着可能にすると共に、ロータを装着しない側の環状部材(40,41,140,141)については部品寸法の制約を低減することができる。
【0064】
また、各実施形態のステータ(1,101)の製造方法は、周方向に配列された複数のティース(13)を内周面(10a)側に有し、隣り合う前記ティース(13)間に複数のスロット(14)を形成した円環形状のステータコア(10)と、前記スロット(14)に収容された部分のスロット収容部(22)と前記スロット収容部(22)に連続して前記ステータコア(10)の中心軸(C)の軸方向に突出した部分の突出部(23)とを有するコイル(21)と、前記スロット(14)の内壁面(14a)と前記コイル(21)の前記スロット収容部(22)との間に配置され、前記スロット(14)から前記軸方向に突出した紙端部(31,32,33)を有する複数の絶縁紙(30)と、を備え、前記突出部(23)が複数組み合わされて集合体としてのコイルエンド部(24)を形成したステータ(1,101)の製造方法において、円環形状の円環部(42,142)と前記円環部(42,142)から突出した突起(43,143)とを有する環状部材(40,41,140,141)の前記円環部(42,142)を、前記コイルエンド部(24)の内周面側に組み付けると共に、前記ティース(13)の前記軸方向(Z)の端面(13a)の側であって、周方向に隣り合う前記紙端部(31,32,33)の間に前記突起(43,143)を入り込ませる環状部材組付け工程と、前記コイルエンド部(24)に前記軸方向(Z)からワニス(W)を滴下する滴下工程と、を備える。
【0065】
この構成によれば、環状部材(40,41,140,141)の突起(43,143)を隣り合う絶縁紙(30)の紙端部(31,32,33)の間に入り込ませているので、ステータ(1,101)の製造時にコイルエンド部(24)に滴下されたワニス(W)は、コイル(21)を伝わって環状部材(40,41,140,141)まで達し、円環部(42,142)から突起(43,143)を伝わって、隣り合う絶縁紙(30)の紙端部(31,32,33)の間に入り込んで、ティース(13)と絶縁紙(30)との間に含浸するようにできる。これにより、ワニス(W)がスロット(14)と絶縁紙(30)との間に流れ込み易くできるので、ステータ(1,101)の剛性を向上することができる。
【0066】
また、ティース(13)の第1方向(D1)側に突起(43,143)が入り込むことにより、内径側に流通しようとするワニス(W)の流れを阻害できるので、ステータコア(10)から径方向に漏れ出すことを抑制することができる。これにより、ワニス(W)の漏れ出しによるステータ(1,101)の製造時の歩留まりの低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0067】
1,101…ステータ
10…ステータコア
10a…内周面
13…ティース
13a…端面
14…スロット
14a…内壁面
15…空間部
21…コイル
22…スロット収容部
22a…最内周部
23…突出部
24…コイルエンド部
30…スロット紙(絶縁紙)
31,32,33…第1紙端部(紙端部)
40,140…第1環状部材(環状部材)
41,141…第2環状部材(環状部材)
42,142…第1円環部(円環部)
43,143…第1突起(突起)
44…第1溝部(溝部)
45…第1傾斜部(傾斜部)
46…第1係合部(係合部)
142a…端面
C…中心軸
D1…第1方向
D2…第2方向
G…先端隙(所定の間隔)
W…ワニス
Z…軸方向