(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】包装箱
(51)【国際特許分類】
B65D 5/66 20060101AFI20240730BHJP
B65D 5/10 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B65D5/66 301G
B65D5/10 J
(21)【出願番号】P 2020034767
(22)【出願日】2020-03-02
【審査請求日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】P 2019184805
(32)【優先日】2019-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和1年6月11日に森紙業株式会社の依頼を受けて群馬森紙業株式会社が太田市農業協同組合に発明に係る包装箱を販売(2)令和1年8月29日に森紙業株式会社が応募した2019パッケージングコンテストの2019パッケージングコンテスト表彰式(東京ガーデンパレス:東京都文京区湯島1-7-5)において公益社団法人日本包装技術協会が発明に係る包装箱を表彰(3)令和1年9月18日~令和1年9月20日に森紙業株式会社が2019王子段ボールグループ包装展(大崎ブライトコアホール:東京都品川区北品川5-5-15)に発明に係る包装箱を展示
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】夏川 準司
(72)【発明者】
【氏名】中路 哲也
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-178877(JP,A)
【文献】登録実用新案第3182826(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2002/0112973(US,A1)
【文献】国際公開第2016/027655(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/66
B65D 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後一対の端壁及び左右一対の側壁を有する胴部と、
前記胴部の下側開口部を閉じている底壁と、
前記胴部の上側開口部を閉じている頂壁と、
前記底壁及び前記頂壁の少なくとも一方の壁は、前記両側壁の縁部に連設された左右一対の内フラップと、前記両端壁の縁部に連設され、前記内フラップの外面に重ねられた前後一対の外フラップと、
前記外フラップの先端部に形成された差込片と、
前記内フラップに形成され、前記差込片が差し込まれる差込穴と、を備え、
前記外フラップには、前記差込穴の縁に形成された当接部に、前記差込片を前記差込穴に差し込む際の差込方向と反対方向から当接することで、前記差込片が反対方向に移動することを規制する係止部が設けられており、
前記当接部は、前記内フラップにおける前記端壁の縁部に近い側において、前記内フラップにおける前記側壁の縁部に近い側に形成されており、
前記係止部は、前記外フラップの外側部から前記外フラップの中央部に向けて切り込まれた切込によって形成されて
おり、
前記差込穴は、前記差込穴の折曲げ誘導線に沿って前記差込穴を塞ぐ蓋を前記胴部の内側に折り曲げることによって開口するようになっており、
前記当接部は、前記差込穴の折曲げ誘導線の延長上に形成されていることを特徴とする包装箱。
【請求項2】
前記切込は、前記差込片を前記差込穴に差し込む際に切り開かれて前記係止部を形成することを特徴とする請求項
1に記載の包装箱。
【請求項3】
前記係止部及び前記当接部は、前記差込片の差込方向と直交する方向に延在していることを特徴とする請求項
1または請求項
2に記載の包装箱。
【請求項4】
前記底壁に、左右一対の前記内フラップ及び前後一対の前記外フラップが設けられており、
前記外フラップに前記差込片が形成され、前記内フラップに前記差込穴が形成されていることを特徴とする請求項
1から請求項
3のいずれか1項に記載の包装箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装箱に関する。
【背景技術】
【0002】
段ボール製の包装箱としては、筒状の胴部と、胴部に折り曲げ自在に連設されたフラップと、を備え、フラップに設けられたロック構造によって胴部の開口部を閉じるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
フラップのロック構造は、フラップ同士が上下に重なる部分に設けられており、上側のフラップに形成された差込片と、下側のフラップに形成され差込穴とを備えている。この包装箱では、差込片の係合顎部が差込穴の係合突部に係合することで、差込片が差込穴に保持されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の包装箱は、差込片の係合顎部が差込穴の係合突部の内側に重なるようにスライド移動して係合するものであった。このため、挿入後に外力が掛かることなどによって、前記係合が外れる方向に差込片がスライドした場合に、前記係合が解除されて差込片が差込穴から抜けるおそれがあった。
特に、包装箱の底壁に従来のロック構造を採用した場合には、包装箱を置く、持ち上げる等の際に、差込片のスライドが誘発されるような力が作用し易いため、前記係合が解除され易く差込片が差込穴から抜け易かった。
【0005】
本発明は、前記した問題を解決し、差込片が差込穴から抜け難く、胴部の開口部の閉状態を好適に維持することができる包装箱を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するため本発明の包装箱は、前後一対の端壁及び左右一対の側壁を有する胴部と、前記胴部の下側開口部を閉じている底壁と、前記胴部の上側開口部を閉じている頂壁と、を備えている。また、包装箱は、前記底壁及び前記頂壁の少なくとも一方の壁は、前記両側壁の縁部に連設された左右一対の内フラップと、前記両端壁の縁部に連設され、前記内フラップの外面に重ねられた前後一対の外フラップと、前記外フラップの先端部に形成された差込片と、前記内フラップに形成され、前記差込片が差し込まれる差込穴と、を備えている。前記外フラップには、前記差込穴の縁に形成された当接部に、前記差込片を前記差込穴に差し込む際の差込方向と反対方向から当接することで、前記差込片が反対方向に移動することを規制する係止部が設けられている。前記当接部は、前記内フラップにおける前記端壁の縁部に近い側において、前記内フラップにおける前記側壁の縁部に近い側に形成されている。前記係止部は、前記外フラップの外側部から前記外フラップの中央部に向けて切り込まれた切込によって形成されている。前記差込穴は、前記差込穴の折曲げ誘導線に沿って前記差込穴を塞ぐ蓋を前記胴部の内側に折り曲げることによって開口するようになっている。前記当接部は、前記差込穴の折曲げ誘導線の延長上に形成されている。
【0015】
本発明の包装箱では、外フラップに形成された差込片を内フラップの差込穴に差し込むと、外フラップに形成された係止部が差込穴の当接部に対して差込方向と反対方向から当接する。この当接によって、差込片が反対方向に移動することが規制される。つまり、差し込み後に、外力が作用して差込方向と反対方向に差込片が引っ張られても、当接状態が維持され易く、差込片が抜け難い。したがって、胴部の開口部の閉状態を好適に維持することができる。
【0017】
また、切込を形成することによって、係止部を簡単に構成できる。つまり、係止部を形成するにあたって、例えば、ブランクシートから余分な部分を切り欠く等の加工を行う必要がない。したがって、包装箱の生産性に優れる。
また、差込片を差込穴に差し込むと、折曲げ誘導線に沿ってその周辺部分が胴部の内側に折り曲げられて差込穴が開口するとともに、差込穴の開口に伴って折曲げ誘導線の延長上に当接部が露出する。したがって、包装箱の組付作業が行い易い。
【0018】
また、前記切込は、前記差込片を前記差込穴に差し込む際に切り開かれて、前記係止部を形成することが好ましい。
【0019】
この構成では、差込片を差込穴に差し込む際に係止部が露出するので、組付時に係止部を露出させるための作業を行う必要がない。したがって、包装箱の組付作業が行い易い。
【0020】
また、前記係止部及び前記当接部は、前記差込片の差込方向と直交する方向に延在していることが好ましい。
【0021】
この構成では、差し込み後に、外力が作用して差込方向と反対方向に差込片が引っ張られても、差込穴の当接部に対する係止部の当接状態が維持され易く、差込片が抜け難い。したがって、胴部の開口部の閉状態を好適に維持することができる。
【0024】
また、前記底壁に、左右一対の前記内フラップ及び前後一対の前記外フラップが設けられており、前記外フラップに前記差込片が形成され、前記内フラップに前記差込穴が形成されていることが好ましい。
【0025】
この構成では、包装箱を置く、持ち上げる等の際に、差込片のスライドが誘発されるような力が作用しても、差込穴の当接部に対する係止部の当接状態が維持され易く、差込片が抜け難い。したがって、底壁の閉状態を好適に維持することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の包装箱では、差込片が差込穴から抜け難く、胴部の開口部の閉状態を好適に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る包装箱を前方右上から見た斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る包装箱のブランクシートを示した図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る包装箱を上下逆にして底壁を上にして示した斜視図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る包装箱の外フラップを示した下面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る包装箱の内フラップの差込穴を示した下面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る包装箱の差込穴の開口により差込穴の当接部が露出した状態を示した斜視図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る包装箱の差込穴に対する差込片の係止状態を示した下面図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係る包装箱の底壁を閉じる際の様子を示した斜視図である。
【
図9】本発明の第1実施形態に係る包装箱の底壁を閉じる際の外フラップを示した拡大斜視図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係る包装箱の底壁を閉じる際の様子を示した
図7のX-X拡大断面図であり、(a)は差込片を差込穴に挿入し始めた状態を示し、(b)は差込片をさらに奥に挿入した状態を示し、(c)は差込片の係止部と差込穴の当接部との係止の様子を示している。
【
図11】本発明の第1実施形態に係る包装箱の差込穴に対する差込片の係止状態を内フラップの内側から視た平面図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る包装箱を前方右上から見た斜視図である。
【
図13】本発明の第2実施形態に係る包装箱のブランクシートを示した図である。
【
図14】本発明の第2実施形態に係る包装箱を上下逆にして底壁を上にして示した斜視図である。
【
図15】本発明の第2実施形態に係る包装箱の底壁を閉じる際の様子を示した斜視図である。
【
図16】本発明の第3実施形態に係る包装箱を前方右上から見た斜視図である。
【
図17】本発明の第3実施形態に係る包装箱のブランクシートを示した図である。
【
図18】本発明の第3実施形態に係る包装箱を上下逆にして底壁を上にして示した斜視図である。
【
図19】本発明の第3実施形態に係る包装箱の前部フラップを示した下面図である。
【
図20】本発明の第3実施形態に係る包装箱の左部フラップ及び右部フラップの差込穴を示した下面図である。
【
図21】本発明の第3実施形態に係る包装箱の差込穴の開口により差込穴の当接部が露出した状態を示した斜視図である。
【
図22】本発明の第3実施形態に係る包装箱の差込穴に対する差込片の係止状態を示した下面図である。
【
図23】本発明の第3実施形態に係る包装箱の底壁を閉じる際の様子を示した斜視図である。
【
図24】本発明の第3実施形態に係る包装箱の底壁を閉じる際の様子を示した
図22のXXIV-XXIV拡大断面図であり、(a)は差込片を差込穴に挿入し始めた状態を示し、(b)は差込片をさらに奥に挿入した状態を示し、(c)は差込片の係止部と差込穴の当接部との係止の様子を示している。
【
図25】本発明の第3実施形態に係る包装箱の差込穴に対する差込片の係止状態を内フラップの内側から視た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
以下の説明において、前後左右方向は、実施形態の包装箱を説明する上で便宜上設定したものであり、本発明の包装箱の構成を限定するものではない。なお、実施形態では、ロック構造を底壁に設けたものを例にして説明する。また、各実施形態において同一の部分には同様の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0029】
(第1実施形態)
包装箱1は、
図1に示すように、角筒状の胴部10と、胴部10の縁部となる下縁部に連設された底壁20と、胴部10の縁部となる上縁部に連設された頂壁30と、を備えている。包装箱1は、A式の段ボール箱である。底壁20は、後記するように、内フラップ(被差込フラップ)22と外フラップ21(差込フラップ)とからなり、内フラップ22に形成された差込穴24に、外フラップ21に形成された差込片を差し込むことで、内フラップ22と外フラップ21とが係止されるように構成されている。差込片23及び差込穴24は、ロック構造を構成している。
【0030】
包装箱1は、
図2に示すように、段ボール製のシートを切り抜いたブランクシートSを各罫線において山折りまたは谷折りすることで形成される。
図2に示すブランクシートSは内面側が見えるように配置されている。
ブランクシートSの各罫線(折線)は、ブランクシートSの表面を押し込んで形成された線状の溝(押罫)である。なお、罫線に切れ込みを形成してもよい。このようにすると、罫線においてブランクシートSを折り曲げ易くなる。
【0031】
胴部10は、
図1に示すように、前後一対の端壁11,12と、左右一対の側壁13,14と、を有している。前端壁11,後端壁12及び左側壁13,右側壁14は、それぞれ四角形の側板である。前端壁11,後端壁12の各上部には、指かけ穴11a,12aが形成されている。
【0032】
前端壁11の左縁部には、罫線を介して左側壁13が連設されている。また、前端壁11の右縁部には、罫線を介して右側壁14が連設されている。また、左側壁13の後縁部には、罫線を介して後端壁12が連設されている。また、右側壁14の後縁部には、罫線を介して帯状の接合片15が連設されている。接合片15は、後端壁12の右端部の内面にホットメルト等の接着手段によって接合されている。
【0033】
そして、ブランクシートS(
図2参照)を各罫線で折り曲げると、前端壁11,後端壁12、左側壁13,右側壁14によって、四角形の角筒状の胴部10が形成される。
【0034】
底壁20は、
図3に示すように、胴部10の下側開口部を閉じている。底壁20は、前端壁11,後端壁12の下縁部L11,L12に連設された前後一対の下側外フラップ21,21と、左側壁13,右側壁14の下縁部L13,L14に連設された左右一対の下側内フラップ22,22と、を備えている。前後一対の下側外フラップ21,21は、左右一対の下側内フラップ22,22の前部外面及び後部外面に重ねられている。
【0035】
前側の下側外フラップ21は、前端壁11の下縁部L11から後方に向けて延びている。後側の下側外フラップ21は、後端壁12の下縁部L12から前方に向けて延びている。
【0036】
各下側外フラップ21,21は、基部21aと、基部21aに連続する先端部21bとを備えている。基部21aと先端部21bとは、左右方向に亘って形成された下側外フラップ折曲げ誘導線L21(以下、単に折曲げ誘導線L21という)を介して連続している。折曲げ誘導線L21は、ブランクシートSの表面(内面)を押し込んで形成された線状の溝(押罫)である。各折曲げ誘導線L21,L21は、下縁部L11,L12と平行である。各下側外フラップ21,21は、折曲げ誘導線L21を介して山折りされる(
図8,
図9参照)。これによって、包装箱1の組立時に各先端部21b,21bが、対応する差込穴24に向けて傾斜可能となっている。
【0037】
各基部21a,21aは、
図4に示すように、横長四角形状を呈している。各先端部21b,21bの先端には、左右一対の差込片23,23が形成されている(
図2参照)。各差込片23,23は、
図3に示すように、下側内フラップ22,22に設けられた差込穴24,24に対して差し込まれている。差込片23が差込穴24に差し込まれることで、差込片23が差込穴24の縁部に係止され、底壁20の閉じられた状態が維持されるようになっている。
【0038】
差込片23は、
図4に示すように、左右で対称形状である。差込片23は、先端側の左右角部がそれぞれアール状に形成されており、差込穴24(
図5参照)に対して差し込み易い形状となっている。
【0039】
先端部21bの左右外側部には、先端部21bの中央部に向けてそれぞれ延びる直線状の切込23a,23aが形成されている。各切込23a,23aは、折曲げ誘導線L21と平行であり、折曲げ誘導線L21と所定の間隔を空けて形成されている。各切込23a,23aの延出端には、折曲げ誘導線L21に向けて延びるアール状の切込23b,23bが連続して形成されている。アール状の切込23b,23bの延出端は、折曲げ誘導線L21に至らず、折曲げ誘導線L21から離れている。
【0040】
また、先端部21bの左右外側部には、略台形状の縁部23d,23dが形成されている。縁部23dは、直線状の切込23a及びアール状の切込23bと、下側外フラップ21の外側部と、折曲げ誘導線L21とで略囲まれた領域である。直線状の切込23aは、折曲げ誘導線L21と平行である。
直線状の切込23aおよびアール状の切込23bは、
図8,
図9に示すように、組立時に折曲げ誘導線L21で下側外フラップ21が山折りされる際に、前後方向に切り開かれる。これによって、
図9に示すように、下側外フラップ21の外縁部には、係止部23eが露出する。係止部23eは、差込片23の差込方向X1と反対となる反対方向X2を臨む端面である。この端面は、ブランクシートSの厚みによって形成される。なお、各図に示す差込方向X1及び反対方向X2は、下側内フラップ22に投影したときの方向である。
【0041】
なお、
図9に示すように、組立時に折曲げ誘導線L21で下側外フラップ21が山折りされると、縁部23d,23dが基部21aに連続するようにして基部21aの左右両側に立ち上がる状態となる。縁部23d,23dは、差込片23,23を差込穴24,24に差し込んだ状態で、下側内フラップ22,22の左右外面に配置される(
図3参照)。
【0042】
また、下側外フラップ21の左右外縁部には、側方に向けて突出する突部23c,23cが形成されている。各突部23c,23cは、
図7に示すように、差込穴24の後記する第一破断誘導線242と、第三破断誘導線244との角部近傍部位に係止される。これによって、各突部23c,23cは、差込片23,23が反対方向X2に移動するのを防止する役割をなす。
【0043】
差込片23,23の間には、
図4に示すように、押え部25が形成されている。押え部25は、左右の縦溝25a,25aで差込片23,23と区画されており、先端部側に向けて延出している。押え部25は、差込片23,23を差込穴24,24に差し込んだ状態で、下側内フラップ22,22の外面に配置される(
図3参照)。押え部25の先端中央部には、半円凹状の指掛け部25bが形成されている。指掛け部25bは、下側内フラップ22,22同士の突合せ部分の外面に位置している(
図7参照)。
【0044】
左側の下側内フラップ22は、
図3に示すように、左側壁13の下縁部L13から右方に向けて延びている。右側の下側内フラップ22は、右側壁14の下縁部L14から左方に向けて延びている。左右の下側内フラップ22,22は、中央部で突き合わされている。なお、左右の下側内フラップ22,22は、中央部で突き合わされるものに限られることはなく、中央部に隙間を有する状態で閉じられるものであってもよい。
【0045】
各下側内フラップ22,22の前部及び後部には、左右一対の差込穴24,24が形成されている。各差込穴24,24は、下側外フラップ21,21の各差込片23,23に対応して設けられている。各差込穴24,24は、これを塞いでいる蓋24f,24fを折り曲げることで開口する。
【0046】
蓋24fは、
図5に示すように、差込穴折曲げ誘導線(以下、単に折曲げ誘導線という)241と、第一破断誘導線242と、第二破断誘導線243と、第三破断誘導線244と、第四破断誘導線245と、他端折曲げ誘導線246と、で囲まれた部分である。折曲げ誘導線241は、直線状を呈している。折曲げ誘導線241は、ブランクシートSの表面(内面)を押し込んで形成された線状の溝(押罫)である。差込穴24は、
図6に示すように、蓋24fを各破断誘導線242,243,244,245で切り離しつつ、折曲げ誘導線241で山折りすることで開口する。
なお、差込穴24の説明において、下側内フラップ22,22同士の突合せ部に近い側を「一端部」と表記し、これとは反対側を「他端部」と表記する。
【0047】
折曲げ誘導線241は、
図5に示すように、差込片23(
図4参照)の差込方向X1と略直交する方向に対して幾分傾斜する方向に延在する直線状の誘導線である。より詳しくは、折曲げ誘導線241は、他端部が一端部に比べて幾分、差込方向X1にずれた位置にあり、差込方向X1と直交する方向から幾分傾斜している。なお、折曲げ誘導線241は、差込方向X1と直交するように形成してもよい。
【0048】
折曲げ誘導線241の他端部の延長上には、第四破断誘導線245が形成されている。
図6に示すように、差込穴24が開口されると、第四破断誘導線245で切り開かれた部分が差込穴24の縁に形成された当接部24eを構成し、差込方向X1に露出する状態となる。
【0049】
第一破断誘導線242、第二破断誘導線243、第三破断誘導線244及び第四破断誘導線245は、いずれも切れ込みを断続的に形成した線である。各破断誘導線242,243,244,245の切れ込みの間隔や形状は限定されるものではない。
【0050】
第一破断誘導線242は、
図5に示すように、折曲げ誘導線241及び第四破断誘導線245と対向するように形成されている。第一破断誘導線242は、一端部に比べて他端部が反対方向X2にずれた位置にあり、折曲げ誘導線241に対して傾斜している。
【0051】
第二破断誘導線243及び第三破断誘導線244は、差込方向X1と平行に形成されている。第二破断誘導線243は、折曲げ誘導線241の一端部から第一破断誘導線242の一端部近傍まで延在している。第二破断誘導線243は、折曲げ誘導線241の一端部に交差して反対方向X2に延びる切込243aを備えている。第三破断誘導線244は、第四破断誘導線245の他端部から第一破断誘導線242の他端部まで延在している。第三破断誘導線244は、第四破断誘導線245の他端部に交差して反対方向X2に延びる切込244aを備えている。
【0052】
他端折曲げ誘導線246は、第三破断誘導線244の一端側に間隔を空けて平行(差込方向X1と平行)に形成されている。他端折曲げ誘導線246は、折曲げ誘導線241の他端部から第一破断誘導線242に向けて延在している。他端折曲げ誘導線246は、ブランクシートSの表面(内面)を押し込んで形成された線状の溝(押罫)である。他端折曲げ誘導線246で山折りされることで、他端折曲げ誘導線246よりも他端側となる部分が、胴部10の内側に入り込む。これによって、
図6に示すように、差込穴24の当接部24eの露出量(露出面積)が増える。
【0053】
頂壁30は、
図1に示すように、胴部10の上側開口部を閉じている。頂壁30は、前端壁11及び後端壁12の上縁部に連設された前後一対の上側内フラップ31,31を備えている。また、頂壁30の外面(上面)には、左側壁13,右側壁14の上縁部に連設された左右一対の上側外フラップ32,32が重ねられている。
【0054】
前側の上側内フラップ31は、四角形の平板であり、前端壁11の上縁部から後方に向けて延びている。前側の上側内フラップ31によって、胴部10の上側開口部の前部側の一部が塞がれている。
後側の上側内フラップ31は、四角形の平板であり、後端壁12の上縁部から前方に向けて延びている。後側の上側内フラップ31によって、胴部10の上側開口部の後部側の一部が塞がれている。
【0055】
左側の上側外フラップ32は、四角形の平板であり、左側壁13の上縁部から右方に向けて延びている。この上側外フラップ32によって、胴部10の上側開口部の左半分が塞がれている。
右側の上側外フラップ32は、四角形の平板であり、右側壁14の上縁部から左方に向けて延びている。この上側外フラップ32によって、胴部10の上側開口部の右半分が塞がれている。
左右の上側外フラップ32,32の端縁部同士は、左右方向の中央部で突き合わされ、図示しない粘着テープ等で接合される。なお、左右の上側外フラップ32,32は、中央部で突き合わされるものに限られることはなく、中央部に隙間を有して閉じられるものであってもよい。
【0056】
次に、包装箱1の底壁20を閉じる際の手順について説明する。
図8に示すように、まず、底壁20を上側にして、左右の下側内フラップ22,22を折り曲げて突き合わせる。その後、下側外フラップ21を折曲げ誘導線L21に沿って山折りしつつ、下側内フラップ22に向けて内側に倒し込む。
【0057】
そうすると、
図9に示すように、左右の切込23a,23aが前後方向に切り開かれ、下側外フラップ21の左右外縁部に係止部23e,23eが露出する。
【0058】
その後、下側外フラップ21を手指で掴んで、
図10(a)に示すように、差込片23を差込穴24に挿入する。そうすると、差込片23に押されて、各破断誘導線242,243,244,245(
図6参照)が破断されるとともに、折曲げ誘導線241(
図6参照)で山折りされて蓋24fが胴部10内に押し込まれる。これによって、差込穴24が開口する。
【0059】
その後、
図10(b)に示すように、差込片23を差込穴24にさらに挿入する。そうすると、下側外フラップ21の係止部23eが、差込穴24の当接部24eに近づく。
【0060】
その後、
図10(c)に示すように、下側外フラップ21が全体的に平らとなるように、差込片23を差込穴24にさらに挿入する。そうすると、下側外フラップ21の係止部23eが差込穴24の当接部24eに対向する位置に入り込む状態となる。
【0061】
この状態で、下側外フラップ21から手指を離すと、下側外フラップ21に対して元の状態に戻ろうとする復元力(反対方向X2の力)が作用し、下側外フラップ21の係止部23eが差込穴24の当接部24eに強く当接する。これによって、反対方向X2に差込片23が移動することが規制される(
図7,
図11参照)。
【0062】
なお、係止部23eの縁部を差込穴24に向けて手指で押し込むことによって、当接部24eに対向する位置に係止部23eを積極的に入り込ませるようにしてもよい。このようにすることで、係止部23eと当接部24eとの当接が確実となる。
【0063】
なお、係止部23eと当接部24eとの当接を解除する場合には、係止部23eの縁部等を手指で外側に引っ張るようにすればよい。
【0064】
以上説明した本実施形態の包装箱1によれば、下側外フラップ21の差込片23を下側内フラップ22の差込穴24に差し込むと、下側外フラップ21の係止部23eが差込穴24の当接部24eに反対方向X2から当接する。この当接によって、差込片23が反対方向X2に移動することが規制される。つまり、差込片23の差し込み後に、外力が作用して反対方向X2に差込片23が引っ張られても、当接状態が維持され易く、差込片23が抜け難い。したがって、胴部10の下部開口部の閉状態を好適に維持することができる。
【0065】
また、係止部23eを切込23aによって簡単に構成できるので、係止部23eを形成するにあたって、例えば、ブランクシートSから余分な部分を切り欠く等の加工を行う必要がない。したがって、包装箱1の生産性に優れる。
【0066】
また、差込片23を差込穴24に差し込む際に切込23aが切り開かれて、係止部23eが露出するので、組付時に係止部23eを露出させるための作業を行う必要がない。したがって、包装箱1の組付作業が行い易い。
【0067】
また、係止部23e及び当接部24eは、差込片23の差込方向X1と直交する方向に延在しているので、差込片23の差し込み後に、外力が作用して反対方向X2に差込片23が引っ張られても、当接部24eに対する係止部23eの当接状態が維持され易い。したがって、差込片23が抜け難く、胴部10の下部開口部の閉状態を好適に維持できる。
【0068】
また、差込穴24の当接部24eは、差込穴24の折曲げ誘導線241の延長上に形成されている。したがって、差込片23を差込穴24に差し込んで差込穴24を開口させる際に、差込穴24の開口に伴って当接部24eを露出させることができる。したがって、包装箱1の組付作業が行い易い。
【0069】
また、底壁20にロック構造が形成されているので、包装箱1を置く、持ち上げる等の際に、差込片23のスライドが誘発されるような力が作用しても、差込穴24の当接部24eに対する係止部23eの当接状態が維持され易く、差込片23が抜け難い。したがって、底壁20の閉状態を好適に維持することができる。
なお、ブランクシートSがダンボール製であるので、ダンボールが有する柔軟性によって、差込穴24の当接部24eに対する係止部23eの当接状態が好適に維持される。また、差込穴24は、切込243aや切込244aを備えているので、その分、反対方向X2に当接部24eが移動可能であり、差込片23のスライドが誘発されるような力が作用した場合に、これを当接部24eにて柔軟に吸収することができる。したがって、差込片23の抜けを好適に防止できる。
【0070】
(第2実施形態)
図12から
図15を参照して第2実施形態に係る包装箱について説明する。本実施形態の包装箱1Aが前記第1実施形態の包装箱1と異なるところは、ロック構造を構成する差込片23及び差込穴24が底壁20Aの前側にのみ設けられている点にある。
【0071】
包装箱1Aは、
図13に示すように、段ボール製のシートを切り抜いたブランクシートS1を各罫線において山折りまたは谷折りすることで形成される。
図13に示すブランクシートS1は内面側が見えるように配置されている。
【0072】
底壁20Aは、
図14に示すように、前端壁11の下縁部L11に連設され、後方へ向けて延びる差込フラップとしての前部フラップ21A1と、後端壁12の下縁部L12に連設され、前方へ向けて延びる後部フラップ21A2と、を備えている。また、底壁20Aは、左側壁13の下縁部L13に連設され、右方へ向けて延びる被差込フラップとしての左部フラップ22A1と、右側壁14に下縁部L14に連設され、左方へ向けて延びる被差込フラップとしての右部フラップ22A2と、を備えている。
【0073】
前部フラップ21A1は、第1実施形態の前側の下側外フラップ21に相当するものであり、
図14に示すように、胴部10の下側の開口部の前部を覆うものである。前部フラップ21A1の先端部21bには、左右一対の差込片23,23が形成されている。前部フラップ21A1は、直線状の切込23a,23a、アール状の切込23b,23b(
図15参照)及び押え部25を備えている。
【0074】
後部フラップ21A2は、四角形の平板であり、胴部10の下側の開口部の後部を覆うものである。後部フラップ21A2の右部の上面(内面)は、右部フラップ22A2の後部の下面(外面)に重ねられている。また、後部フラップ21A2の左部の下面(外面)には、左部フラップ22A1の後部の上面(内面)が重ねられている。このように、後部フラップ21A2は、左部フラップ22A1及び右部フラップ22A2の一方の上側に重ねられるとともに他方の下側に重ねられている。
【0075】
左部フラップ22A1及び右部フラップ22A2は、第1実施形態の左右の下側内フラップ22,22から後側の差込穴24,24を排除したものであり、前側にのみ、左右一対の差込穴24,24が形成されている。各差込穴24,24は、前部フラップ21A1の各差込片23,23に対応して設けられている。
【0076】
左部フラップ22A1の後部は、後部フラップ21A2の左部の下面(外面)に重ねられている。右部フラップ22A2の後部の下面(外面)には、後部フラップ21A2の右部の上面(内面)が重ねられている。
【0077】
前部フラップ21A1は、各差込片23,23が左部フラップ22A1及び右部フラップ22A2の各差込穴24,24に差し込まれた状態で、左部フラップ22A1及び右部フラップ22A2の前部の下面(外面)に重ねられている。
【0078】
次に、包装箱1Aの底壁20Aを閉じる際の手順について説明する。
まず、底壁20Aを上側にして、右部フラップ22A2を右側壁14に対して胴部10の内側に折り曲げる。
続いて、後部フラップ21A2を後端壁12に対して胴部10の内側に折り曲げて、後部フラップ21A2の右部を右部フラップ22A2の後部の下面(外面)に重ねる。そして、左部フラップ22A1を左側壁13に対して胴部10の内側に折り曲げて、左部フラップ22A1の後部を後部フラップ21A2の左部の下面(外面)に重ねる。
【0079】
その後、
図15に示すように、前部フラップ21A1を折曲げ誘導線L21に沿って山折りしつつ、左部フラップ22A1及び右部フラップ22A2に向けて内側に倒し込み、各差込片23を各差込穴24に挿入する。そうすると、第1実施形態と同様に、差込片23に押されて、各差込穴24が開口し、前部フラップ21A1の係止部23e(
図4参照)が差込穴24の当接部24eに対向する位置に入り込む状態となる(
図10(c)参照)。
【0080】
この状態で、前部フラップ21A1から手指を離すと、前部フラップ21A1に対して元の状態に戻ろうとする復元力(
図10(c)、反対方向X2の力)が作用し、前部フラップ21A1の係止部23eが差込穴24の当接部24eに強く当接する。これによって、反対方向X2に差込片23が移動することが規制される。
【0081】
なお、この場合にも、係止部23eの縁部を差込穴24に向けて手指で押し込むことによって、当接部24eに対向する位置に係止部23eを積極的に入り込ませるようにしてもよい。このようにすることで、係止部23eと当接部24eとの当接が確実となる。
【0082】
以上説明した本実施形態の包装箱1Aによれば、第1実施形態で説明した作用効果に加えて、差込片23を差込穴24に差し込むことによる係止が底壁20Aの前部側で済むので、底壁20Aを閉じる際の作業性に優れる。
【0083】
(第3実施形態)
次に、
図16~
図25を参照して第3実施形態の包装箱について説明する。本実施形態が前記第1,第2実施形態と異なるところは、ロック構造を構成する差込片123及び差込穴124をシンプルな構成にした点にある。なお、差込片123及び差込穴124は底壁120の前側にのみ設けられている。
【0084】
包装箱1Bは、
図16に示すように、角筒状の胴部110と、胴部110の縁部となる下縁部に連設された底壁120と、胴部110の縁部となる上縁部に連設された頂壁130と、を備えている。包装箱1Bは、A式の段ボール箱である。底壁120は、後記するように、差込フラップとしての前部フラップ21B1と、後部フラップ21B2と、を備えている。また、底壁120は、被差込フラップとしての左部フラップ22B1と、被差込フラップとしての右部フラップ22B2と、を備えている。そして、包装箱1Bは、左部フラップ22B1及び右部フラップ22B2に形成された差込穴124に、前部フラップ21B1に形成された差込片123を差し込むことで、底壁120が閉じられるように構成されている。差込片123及び差込穴124は、ロック構造を構成している。
【0085】
包装箱1Bは、
図17に示すように、段ボール製のシートを切り抜いたブランクシートS2を各罫線において山折りまたは谷折りすることで形成される。
図17に示すブランクシートS2は内面側が見えるように配置されている。
ブランクシートS2の各罫線(折線)は、ブランクシートS2の表面を押し込んで形成された線状の溝(押罫)である。なお、罫線に切れ込みを形成してもよい。このようにすると、罫線においてブランクシートS2を折り曲げ易くなる。
【0086】
胴部110は、
図16に示すように、前後一対の端壁111,112と、左右一対の側壁113,114と、を有している。前端壁111,後端壁112及び左側壁113,右側壁114は、それぞれ四角形の側板である。前端壁111,後端壁112の各中央部には、指かけ穴111a,112aが形成されている。
【0087】
前端壁111の左縁部には、罫線を介して左側壁113が連設されている。また、前端壁111の右縁部には、罫線を介して右側壁114が連設されている。また、左側壁113の後縁部には、罫線を介して後端壁112が連設されている。また、右側壁114の後縁部には、罫線を介して帯状の接合片115が連設されている。接合片115は、後端壁112の右端部の内面にホットメルト等の接着手段によって接合されている。
【0088】
そして、ブランクシートS2(
図17参照)を各罫線で折り曲げると、前端壁111,後端壁112、左側壁113,右側壁114によって、四角形の角筒状の胴部110が形成される。
【0089】
底壁120は、
図18に示すように、胴部110の下側開口部を閉じている。底壁120は、前端壁111の下縁部L11に連設された前部フラップ21B1と、後端壁112の下縁部L12に連設された後部フラップ21B2と、を備えている。また、底壁120は、左側壁113,右側壁114の下縁部L13,L14に連設された左右一対の左部フラップ22B1,右部フラップ22B2と、を備えている。
【0090】
前部フラップ21B1は、前端壁111の下縁部L11から後方に向けて延びている。後部フラップ21B2は、後端壁112の下縁部L12から前方に向けて延びている。
【0091】
前部フラップ21B1は、基部21Baと、基部21Baに連続する先端部21Bbとを備えている。基部21Baと先端部21Bbとは、左右方向に亘って形成された折曲げ誘導線L21を介して連続している。折曲げ誘導線L21は、ブランクシートS2の表面(内面)を押し込んで形成された線状の溝(押罫)である。折曲げ誘導線L21は、下縁部L11と平行である。前部フラップ21B1は、折曲げ誘導線L21を介して山折りされる(
図23参照)。これによって、包装箱1Bの組立時に先端部21Bbが、差込穴124に向けて傾斜可能となっている。
【0092】
基部21Baは、
図19に示すように、横長四角形状を呈している。先端部21Bbの先端左右には、外形状が略角形状を呈する差込片123,123が形成されている(
図17参照)。差込片123,123は、
図18に示すように、左部フラップ22B1及び右部フラップ22B2に設けられた差込穴124,124に対して差し込まれている。差込片123が差込穴124に差し込まれることで、差込片123が差込穴124の縁部に係止され、底壁120の閉じられた状態が維持されるようになっている。
【0093】
差込片123は、
図19に示すように、左右で対称形状である。差込片123,123は、差込穴124,124に対応するように左右方向に幅広に形成されている。左側の差込片123の左縁部は、左側の差込穴124の左縁部(後記する第三破断誘導線143)に位置し(
図18参照)、右側の差込片123の右縁部は、右側の差込穴124の右縁部(後記する第三破断誘導線143)に位置している(
図18参照)。
【0094】
差込片123,123には、先端部21Bbの左右の外側部(縁部)から中央部に向けて延びる直線状の切込123a,123aが形成されている。差込片123,123の外側部は、切込123a,123aによって前後方向に区画されている。各切込123a,123aは、折曲げ誘導線L21と平行であり、折曲げ誘導線L21と所定の間隔を空けて形成されている。差込片123,123の左右外側部の先端側部分は、底壁120を閉じる際に前部フラップ21B1を掴む手指の押し込み等により、切込123a,123aを境にして内側(差込穴124側)に折り曲げ可能である。
【0095】
各切込123a,123aは、
図24(c)に示すように、差込片123を差込穴124に差し込む際に切り開かれる。これによって、前部フラップ21B1の左右外縁部には、係止部123e,123eが露出する。係止部123eは、差込片123の差込方向X1と反対となる反対方向X2を臨む端面である。この端面は、ブランクシートS2の厚みによって形成される。なお、各図に示す差込方向X1及び反対方向X2は、左部フラップ22B1,右部フラップ22B2に投影したときの方向である。係止部123e,123eは、後記する差込穴124,124の縁に形成される当接部124e,124eに対向する。つまり、係止部123e,123e及び当接部124e,124eは、差込方向X1と直交する方向に延在している。
【0096】
差込片123,123の間には、
図19に示すように、半円凹状の指掛け部129が形成されている。指掛け部129の周囲部分125は、差込片123,123を差込穴124,124に差し込んだ状態で、左部フラップ22B1,右部フラップ22B2の外面に配置され、これらのフラップを押さえる押え部として機能する(
図22参照)。指掛け部129は、左部フラップ22B1,右部フラップ22B2同士の突合せ部分の外面に位置している(
図22参照)。
【0097】
後部フラップ21B2は、四角形の平板であり、胴部110の下側の開口部の後部を覆うものである。後部フラップ21B2の右部の上面(内面)は、右部フラップ22B2の後部の下面(外面)に重ねられている。また、後部フラップ21B2の左部の下面(外面)には、左部フラップ22B1の後部の上面(内面)が重ねられている。このように、後部フラップ21A2は、左部フラップ22A1及び右部フラップ22A2の一方の上側に重ねられるとともに他方の下側に重ねられている。
【0098】
左部フラップ22B1は、
図18に示すように、左側壁113の下縁部L13から右方に向けて延びている。右部フラップ22B2は、右側壁114の下縁部L14から左方に向けて延びている。左部フラップ22B1及び右部フラップ22B2は、中央部で突き合わされている。なお、左部フラップ22B1及び右部フラップ22B2は、中央部で突き合わされるものに限られることはなく、中央部に隙間を有する状態で閉じられるものであってもよい。左部フラップ22B1及び右部フラップ22B2の突き合わせ部には、指掛け部126,127が形成されている。
【0099】
左部フラップ22B1及び右部フラップ22B2の前部には、左右一対の差込穴124,124が形成されている。各差込穴124,124は、前部フラップ21B1の各差込片123,123に対応して設けられている。各差込穴124,124は、これを塞いでいる蓋145,145を折り曲げることで開口する。
【0100】
蓋145は、
図20に示すように、差込穴折曲げ誘導線(以下、単に折曲げ誘導線という)140と、第一破断誘導線141と、第二破断誘導線142と、第三破断誘導線143と、で囲まれた部分である。
【0101】
折曲げ誘導線140は、直線状を呈している。折曲げ誘導線140は、ブランクシートS2の表面(内面)を押し込んで形成された線状の溝(押罫)である。差込穴124は、
図21に示すように、蓋145を各破断誘導線141,142,143で切り離しつつ、折曲げ誘導線140で山折りすることで開口する。
なお、差込穴124の説明において、左部フラップ22B1,右部フラップ22B2同士の突合せ部に近い側を「一端部」と表記し、これとは反対側を「他端部」と表記する。
【0102】
折曲げ誘導線140は、
図20に示すように、差込片123(
図19参照)の差込方向X1と略平行に延在する直線状の誘導線である。折曲げ誘導線140は、左部フラップ22B1,右部フラップ22B2の一端部側に位置している。
【0103】
第一破断誘導線141、第二破断誘導線142、第三破断誘導線143は、いずれも切れ込みを断続的に形成した線である。各破断誘導線141,142,143の切れ込みの間隔や形状は限定されるものではない。
【0104】
第一破断誘導線141は、差込方向X1と直交する方向に延在する直線状の誘導線である。第一破断誘導線141の一端部は、折曲げ誘導線140の前端部に接続されている。第一破断誘導線141の他端部は、左部フラップ22B1において、下縁部L13に延在している。また、第一破断誘導線141の他端部は、右部フラップ22B2において、下縁部L14に延在している。差込穴124が開口されると、
図21に示すように、差込穴124の他端部において第一破断誘導線141で切り開かれた部分が差込穴124の縁に形成された当接部124eを構成し、差込方向X1に露出する状態となる。つまり、当接部124eは、第一破断誘導線141上に形成されている。
【0105】
第二破断誘導線142は、
図20に示すように、第一破断誘導線141と対向するように形成されている。第二破断誘導線142の一端部は、折曲げ誘導線140の後端部に接続されている。第二破断誘導線142は、差込方向X1と反対方向X2に突出して屈曲する屈曲部142aを備えており、一端部に比べて他端部が反対方向X2にずれた位置にある。第二破断誘導線142の他端部は、左部フラップ22B1において、下縁部L13に延在している。また、第一破断誘導線141の他端部は、右部フラップ22B2において、下縁部L14に延在している。
【0106】
第三破断誘導線143は、下縁部L13,L14に沿って差込方向X1と平行に形成されている。第三破断誘導線143の前端部は、第一破断誘導線141の他端部に接続され、第三破断誘導線143の後端部は、第二破断誘導線142の他端部に接続されている。
【0107】
頂壁130は、
図16に示すように、胴部110の上側開口部を閉じている。頂壁130は、前端壁111及び後端壁112の上縁部に連設された前後一対の上側内フラップ131,131を備えている。また、頂壁130の外面(上面)には、左側壁113,右側壁114の上縁部に連設された左右一対の上側外フラップ132,132が重ねられている。
【0108】
前側の上側内フラップ131は、四角形の平板であり、前端壁111の上縁部から後方に向けて延びている。前側の上側内フラップ131によって、胴部110の上側開口部の前部側の一部が塞がれている。
後側の上側内フラップ131は、四角形の平板であり、後端壁112の上縁部から前方に向けて延びている。後側の上側内フラップ131によって、胴部110の上側開口部の後部側の一部が塞がれている。
【0109】
左側の上側外フラップ132は、四角形の平板であり、左側壁113の上縁部から右方に向けて延びている。この上側外フラップ132によって、胴部110の上側開口部の左半分が塞がれている。
右側の上側外フラップ132は、四角形の平板であり、右側壁114の上縁部から左方に向けて延びている。この上側外フラップ132によって、胴部110の上側開口部の右半分が塞がれている。
左右の上側外フラップ132,132の端縁部同士は、左右方向の中央部で突き合わされ、図示しない粘着テープ等で接合される。なお、左右の上側外フラップ132,132は、中央部で突き合わされるものに限られることはなく、中央部に隙間を有して閉じられるものであってもよい。
【0110】
次に、包装箱1Bの底壁120を閉じる際の手順について説明する。
まず、底壁120を上側にして、右部フラップ22B2を右側壁114に対して胴部110の内側に折り曲げる。
続いて、後部フラップ21B2を後端壁112に対して胴部110の内側に折り曲げて、後部フラップ21B2の右部を右部フラップ22B2の後部の下面(外面)に重ねる。そして、左部フラップ22B1を左側壁113に対して胴部110の内側に折り曲げて、左部フラップ22B1の後部を後部フラップ21B2の左部の下面(外面)に重ねる。
【0111】
その後、
図23に示すように、前部フラップ21B1を折曲げ誘導線L21に沿って山折りしつつ、左部フラップ22B1及び右部フラップ22B2に向けて内側に倒し込む。
【0112】
その後、前部フラップ21B1を手指で掴んで、
図24(a)に示すように、差込片123を差込穴124に挿入する。そうすると、差込片123に押されて、各破断誘導線141,142,143(
図21参照)が破断されるとともに、折曲げ誘導線140(
図21参照)で山折りされて蓋145が胴部110内に押し込まれる。これによって、差込穴124が開口する。
【0113】
その後、
図24(b)に示すように、差込片123を差込穴124にさらに挿入する。そうすると、前部フラップ21B1の係止部123eが、差込穴124の当接部124eに近づく。
【0114】
その後、
図24(c)に示すように、前部フラップ21B1が全体的に平らとなるように、差込片123を差込穴124にさらに挿入する。そうすると、前部フラップ21B1の係止部123eが差込穴124の当接部124eに対向する位置に入り込む状態となる。
【0115】
この状態で、前部フラップ21B1から手指を離すと、前部フラップ21B1に対して元の状態に戻ろうとする復元力(反対方向X2の力)が作用し、前部フラップ21B1の係止部123eが差込穴124の当接部124eに強く当接する。これによって、反対方向X2に差込片123が移動することが規制される(
図22,
図25参照)。
【0116】
なお、係止部123eの縁部を差込穴124に向けて手指で押し込むことによって、当接部124eに対向する位置に係止部123eを積極的に入り込ませるようにしてもよい。このようにすることで、係止部123eと当接部124eとの当接が確実となる。
【0117】
なお、係止部123eと当接部124eとの当接を解除する場合には、係止部123eの縁部等を手指で外側に引っ張るようにすればよい。
【0118】
以上説明した本実施形態の包装箱1Bによれば、前部フラップ21B1の差込片123を左部フラップ22B1及び右部フラップ22B2の差込穴124,124に差し込むと、前部フラップ21B1の係止部123eが差込穴124の当接部124eに反対方向X2から当接する。この当接によって、差込片123が反対方向X2に移動することが規制される。つまり、差込片123の差し込み後に、外力が作用して反対方向X2に差込片123が引っ張られても、当接状態が維持され易く、差込片123が抜け難い。したがって、胴部110の下部開口部の閉状態を好適に維持することができる。
【0119】
また、係止部123eを切込123aによって簡単に構成できるので、係止部123eを形成するにあたって、例えば、ブランクシートS2から余分な部分を切り欠く等の加工を行う必要がない。したがって、包装箱1Bの生産性に優れる。
【0120】
また、差込片123,123は、外形状が略角形状を呈し、底壁120の左右方向の幅と同等の幅を有しているので、強度が高く、さらに、差込穴124,124に対する比較的広い係止面積を確保することができる。したがって、差込片123,123が抜け難く、胴部110の下部開口部の閉状態を好適に維持できる。また、差込片123,123の外形状が略角形状を呈し、底壁120の左右方向の幅と同等の幅を有しているので、差込穴124,124に対して差込み易い。
また、ブランクシートS2を形成する際に、差込片123周りに余分な部分が生じ難いので、歩留まりがよい。
【0121】
また、係止部123e及び当接部124eは、差込片123の差込方向X1と直交する方向に延在しているので、差込片123の差し込み後に、外力が作用して反対方向X2に差込片123が引っ張られても、当接部124eに対する係止部123eの当接状態が維持され易い。したがって、差込片123が抜け難く、胴部110の下部開口部の閉状態を好適に維持できる。
【0122】
また、差込穴124の当接部124eは、差込穴124の第一破断誘導線141上に形成されている。したがって、差込片123を差込穴124に差し込んで差込穴124を開口させる際に、差込穴124の開口に伴って当接部124eを露出させることができる。したがって、包装箱1Bの組付作業が行い易い。
【0123】
また、底壁120にロック構造が形成されているので、包装箱1Bを置く、持ち上げる等の際に、差込片123のスライドが誘発されるような力が作用しても、差込穴124の当接部124eに対する係止部123eの当接状態が維持され易く、差込片123が抜け難い。したがって、底壁120の閉状態を好適に維持することができる。
なお、ブランクシートS2がダンボール製であるので、ダンボールが有する柔軟性によって、差込穴124の当接部124eに対する係止部123eの当接状態が好適に維持される。
【0124】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、第1実施形態において、差込片23と差込穴24とによる係止は、前端壁11側や後端壁12側のいずれか一方にだけ設けてもよい。
【0125】
また、前記各実施形態では、差込片23(123)及び差込穴24(124)によるロック構造を底壁20(20A,120)に設けたが、これに限られることはなく、当該ロック構造を頂壁30(130)に設けてもよい。また、底壁20(20A,120)及び頂壁30(130)の両方にロック構造を設けてもよい。
【0126】
また、第1,第2実施形態の差込片23において、突部23cは、必ずしも設けなくてもよい。なお、突部23cを設けることによって、ロック構造の補強を実現できるので、差込片23の抜けをより強固に防止できる。
【0127】
また、差込片23(123)の形状は、適宜の形状とすることができる。また、差込穴24(124)は、スリット状であってもよい。
【0128】
本実施形態の包装箱1(1A,1B)は段ボール製であるが、各種公知の板紙によって包装箱を形成してもよい。
【符号の説明】
【0129】
1,1A,1B 包装箱
10,110 胴部
11,111 前端壁(端壁)
12,112 後端壁(端壁)
13,113 左側壁(側壁)
14,114 右側壁(側壁)
20,20A,120 底壁
21 下側外フラップ(外フラップ)
21A1,21B1 前部フラップ(差込フラップ)
22 下側内フラップ(内フラップ)
22A1,22B1 左部フラップ(被差込フラップ)
22A2,22B2 右部フラップ(被差込フラップ)
23,123 差込片
23a,123a 切込
23e,123e 係止部
24,124 差込穴
24e,124e 当接部
24f,145 蓋
30,130 頂壁
241 折曲げ誘導線
X1 差込方向
X2 反対方向