(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】湿式篩分装置、湿式篩分方法及びトナー製造方法
(51)【国際特許分類】
B03B 5/00 20060101AFI20240730BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B03B5/00 Z
G03G9/08 381
(21)【出願番号】P 2020036272
(22)【出願日】2020-03-03
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 敬弘
(72)【発明者】
【氏名】岡本 将義
(72)【発明者】
【氏名】坂井 智紀
(72)【発明者】
【氏名】金丸 天道
(72)【発明者】
【氏名】村上 良治
(72)【発明者】
【氏名】前野 響
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-337784(JP,A)
【文献】特開2014-159013(JP,A)
【文献】特開2001-129324(JP,A)
【文献】特開平08-302733(JP,A)
【文献】特開昭62-140611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03B 1/00-13/06
G03G 9/00- 9/16
B07B 1/00-15/00
B01D 23/00-37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子分散液を装置本体の内部に配置された供給口から下向きに供給する供給部と、
前記供給口よりも下側に配置され、供給された前記微粒子分散液を篩分する篩分網と、
前記篩分網よりも上側に配置された通気口から、前記篩分網に向けてガスを吹き付ける吹付部と、とを備え、
前記通気口は、前記通気口と重なって鉛直方向に沿う仮想軸に対して、前記供給口側に向けて0°以上であって10°以下の範囲内の角度で傾斜している湿式篩分装置。
【請求項2】
前記篩分網において、前記通気口から前記ガスを吹き付けられる被吹付範囲が、前記供給口から前記微粒子分散液を供給される被供給範囲と重なっている、請求項1に記載の湿式篩分装置。
【請求項3】
前記被吹付範囲の面積は、前記被供給範囲の面積よりも大きい、請求項2に記載の湿式篩分装置。
【請求項4】
前記被供給範囲は、前記被吹付範囲の範囲内に位置している、請求項3に記載の湿式篩分装置。
【請求項5】
前記通気口は、複数ある、請求項1~4の何れか1項に記載の湿式篩分装置。
【請求項6】
複数の前記通気口は、前記供給口を中心に軸対称に配置されている、請求項5に記載の湿式篩分装置。
【請求項7】
前記通気口は、前記供給口よりも鉛直方向上側に配置されている、請求項1~6の何れか1項に記載の湿式篩分装置。
【請求項8】
前記供給口と前記篩分網との間の鉛直方向における距離が2cm以上であって10cm以下の範囲内である、請求項7に記載の湿式篩分装置。
【請求項9】
前記装置本体は、内部の気圧が大気圧であって、
前記供給部は、前記微粒子分散液としてのトナースラリーを、50L/min以上であって200L/min以下の範囲内の流量で供給し、
前記吹付部は、前記ガスとしての圧縮ガスを、3L/min以上であって15L/min以下の範囲内の流量で、且つ前記通気口における圧力が0.1MPa以上であって1.0MPa以下の範囲内で吹き付ける、請求項8に記載の湿式篩分装置。
【請求項10】
供給口から下向きに供給される微粒子分散液を篩分する篩分網に向けて前記篩分網よりも上側に配置された通気口からガスを吹き付ける湿式篩分方法であって、
前記通気口は、前記通気口と重なって鉛直方向に沿う仮想軸に対して、前記供給口側に向けて0°以上であって10°以下の範囲内の角度で傾斜している
湿式篩分方法。
【請求項11】
上側から供給される微粒子分散液としてのトナースラリーを篩分する篩分網に向けてガスを吹き付ける湿式篩分方法を有する湿式篩分工程と、
湿式篩分後のトナースラリーを乾燥する乾燥工程と、
を有するトナー製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式篩分装置、湿式篩分方法及びトナー製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、加振機構によって振動される篩の上方に散水機構を備える湿式篩分け装置において、前記散水機構は、噴出口から下方に向けて円錐環状に水を噴出する回転可能な散水ノズルを備える、ことを特徴とする湿式篩分け装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、篩分網を洗浄液で洗浄しながら微粒子分散液を篩分する構成と比して、篩分後の微粒子分散液の液量の増加を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様に記載の湿式篩分装置は、微粒子分散液を装置本体の内部に配置された供給口から下向きに供給する供給部と、前記供給口よりも下側に配置され、供給された前記微粒子分散液を篩分する篩分網と、前記篩分網よりも上側に配置された通気口から、前記篩分網に向けてガスを吹き付ける吹付部と、を備える。
【0006】
第2態様に記載の湿式篩分装置は、第1態様に記載の湿式篩分装置において、前記通気口は、前記通気口と重なって鉛直方向に沿う仮想軸に対して、前記供給口側に向けて0°以上であって10°以下の範囲内の角度で傾斜している。
【0007】
第3態様に記載の湿式篩分装置は、第1態様又は第2態様に記載の湿式篩分装置において、前記篩分網において、前記通気口から前記ガスを吹き付けられる被吹付範囲が、前記供給口から前記微粒子分散液を供給される被供給範囲と重なっている。
【0008】
第4態様に記載の湿式篩分装置は、第1態様~第3態様の何れか一態様に記載の湿式篩分装置において、前記被吹付範囲の面積は、前記被供給範囲の面積よりも大きい。
【0009】
第5態様に記載の湿式篩分装置は、第4態様に記載の粉体搬送装置において、前記被供給範囲は、前記被吹付範囲の範囲内に位置している。
【0010】
第6態様に記載の湿式篩分装置は、第1態様~第5態様の何れか一態様に記載の湿式篩分装置において、前記通気口は、複数ある。
【0011】
第7態様に記載の湿式篩分装置は、第6態様に記載の湿式篩分装置において、複数の前記通気口は、前記供給口を中心に軸対称に配置されている。
【0012】
第8態様に記載の湿式篩分装置は、第1態様~第7態様の何れか一態様に記載の湿式篩分装置において、前記通気口は、前記供給口よりも鉛直方向上側に配置されている。
【0013】
第9態様に記載の湿式篩分装置は、第8態様の何れか一態様に記載の湿式篩分装置において、前記供給口と前記篩分網との間の鉛直方向における距離が2cm以上であって10cm以下の範囲内である。
【0014】
第10態様に記載の湿式篩分装置は、第9態様に記載の湿式篩分装置において、前記装置本体は、内部の気圧が大気圧であって、前記供給部は、前記微粒子分散液としてのトナースラリーを、50L/min以上であって200L/min以下の範囲内の流量で供給して、前記吹付部は、前記ガスとしての圧縮ガスを、3L/min以上であって15L/min以下の範囲内の流量で、且つ前記通気口における圧力が0.1MPa以上であって1.0MPa以下の範囲内で吹き付ける。
【0015】
第11態様に記載の湿式篩分方法は、上方から供給される微粒子分散液を篩分する篩分網に向けてガスを吹き付けることを特徴とする。
【0016】
第12態様に記載のトナー製造方法は、前記微粒子分散液がトナースラリーである、第11態様に記載の湿式篩分方法を有する湿式篩分工程と、湿式篩分後のトナースラリーを乾燥する乾燥工程と、を有する。
【発明の効果】
【0017】
第1態様に記載の湿式篩分装置によれば、篩分網を洗浄液で洗浄しながら微粒子分散液を篩分する構成と比して、篩分後の微粒子分散液の液量の増加が抑制される。
【0018】
第2態様に記載の湿式篩分装置によれば、通気口が、該通気口と重なって鉛直方向に沿う仮想軸に対して、供給口側に向けて10°を上回る角度で傾斜している構成と比して、篩分網を通過する微粒子分散液の液量の減少が抑制される。
【0019】
第3態様に記載の湿式篩分装置によれば、被吹付範囲の全体が被供給範囲からずれている構成と比して、微粒子分散液に粗大粒子が含まれるときにおける、被供給範囲での粗大粒子の滞留が抑制される。
【0020】
第4態様に記載の湿式篩分装置によれば、被吹付範囲の面積が被供給範囲の面積よりも小さい構成と比して、微粒子分散液に粗大粒子が含まれるときにおける、被供給範囲での粗大粒子の滞留が抑制される。
【0021】
第5態様に記載の湿式篩分装置によれば、被供給範囲が被吹付範囲の範囲外にはみ出ている構成と比して、微粒子分散液に粗大粒子が含まれるときにおける、被供給範囲での粗大粒子の滞留が抑制される。
【0022】
第6態様に記載の湿式篩分装置によれば、通気口が1つのみである構成と比して、微粒子分散液に粗大粒子が含まれるときにおける、被供給範囲での粗大粒子の滞留が抑制される。
【0023】
第7態様に記載の湿式篩分装置によれば、複数の通気口と、供給口との間隔がバラバラである構成と比して、微粒子分散液に粗大粒子が含まれるときにおける、被供給範囲での粗大粒子の滞留が抑制される。
【0024】
第8態様に記載の湿式篩分装置によれば、通気口が供給口よりも鉛直方向下側に設けられている構成と比して、供給口から供給される微粒子分散液で通気口がふさがれることが抑制される。
【0025】
第9態様に記載の湿式篩分装置によれば、供給口と篩分網との間の鉛直方向における距離が2cmを下回る構成と比して、微粒子分散液に粗大粒子が含まれるときにおける、被供給範囲での粗大粒子の滞留が抑制される。また、第9態様に記載の湿式篩分装置によれば、供給口と篩分網との間の鉛直方向における距離が10cmを上回る構成と比して、微粒子分散液に粗大粒子が含まれるときにおける、被供給範囲での粗大粒子の滞留が抑制される。
【0026】
第10態様に記載の湿式篩分装置によれば、吹付部が3L/minを下回る流量の圧縮ガスを吹き付ける構成と比して、微粒子分散液に粗大粒子が含まれるときにおける、被供給範囲における粗大粒子の滞留が抑制される。また、第10態様に記載の湿式篩分装置によれば、吹付部が15L/minを上回る流量の圧縮ガスを吹き付ける構成と比して、微粒子分散液の発泡が抑制される。
【0027】
第11態様に記載の湿式篩分方法によれば、篩分網を洗浄液で洗浄しながら微粒子分散液を篩分する湿式篩分方法と比して、篩分後の微粒子分散液の液量の増加が抑制される。
【0028】
第12態様に記載のトナー製造方法によれば、湿式篩分工程で篩分網を洗浄液で洗浄しながらトナースラリーを篩分する構成と比して、トナーの製造時間が短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施形態に係る湿式篩分装置を示す概略正面図である。
【
図2】実施形態に係る湿式篩分装置の被供給範囲まわりを示す概略正面図である。
【
図3】実施形態に係る湿式篩分装置の被供給範囲まわりを示す平面断面図である。
【
図4】実施形態の第1変形例に係る湿式篩分装置の被供給範囲まわりを示す平面断面図である。
【
図5】実施形態の第2変形例に係る湿式篩分装置の被供給範囲まわりを示す平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施形態に係る湿式篩分装置、湿式篩分方法及びトナー製造方法の一例について、図面に基づいて説明する。
【0031】
なお、以下に示す説明では、湿式篩分装置10をユーザ(図示省略)が立つ側から正面視して、装置上下方向(鉛直方向)、装置幅方向(水平方向)、装置奥行方向(水平方向)をそれぞれ、H方向、W方向、D方向と記載する。また、装置上下方向、装置幅方向、装置奥行方向のそれぞれ一方側と他方側を区別する必要がある場合は、湿式篩分装置10を正面視して、上側を+H側、下側を-H側、右側を+W側、左側を-W側、奥側を-D側、手前側を+D側と記載する。
【0032】
(湿式篩分装置10)
実施形態に係る湿式篩分装置10は、例えば現像剤に含まれるトナーTの製造において、微粒子分散液の一例としてのトナースラリーTSを篩分して、トナースラリーTSに含まれるトナー粒子TPを分級する湿式篩分工程で使用される装置である。トナー粒子TPは、微粒子の一例である。湿式篩分装置10は、
図1に示されるように、装置本体30と、装置本体30の下方に配置された支持部20と、装置本体30の上部に接続されている供給部60及び吹付部70と、を備えている。
【0033】
(供給部60)
供給部60は、装置本体30の内部に配置された供給口62aからトナースラリーTSを供給する供給管62を備えている。供給管62の内側は、断面積がTAであって、トナースラリーTSが流れる流路となっている(
図3参照)。供給管62は、装置本体30の上蓋38(詳細は後述)に対して上方から装置本体30の内部に向けて挿入されている。装置本体30の内部に配置された、供給管62の下側の端部は、下方に向けて開口している供給口62aとされている。供給部60の供給口62aは、後述するノズル72aから吹き付けられる圧縮ガスGの拡散範囲に対して上側に離間している。また、供給管62は、供給口62aと反対方向の端部(図示省略)が、例えばトナースラリーTSが貯留されている貯留タンク(図示省略)と接続されている。実施形態において、供給部60は、貯留タンク(図示省略)に貯留されたトナースラリーTSを、例えばポンプ等の供給手段(図示省略)によって、供給管62内に流して装置本体30の内部に供給させる。また、供給部60は、トナースラリーTSを、下方を向いている供給口62aから装置本体30の内部に供給させる。すなわち、供給部60は、トナースラリーTSを供給口62aから下向きに供給する。また、供給部60は、トナースラリーTSを、50L/min以上であって200L/min以下の範囲内の流量で、装置本体30の内部に供給する。換言すると、供給部60によって装置本体30の内部に供給されるトナースラリーTSの流量は、50L/min以上であって200L/min以下の範囲内である。
【0034】
(支持部20)
支持部20は、一例として装置上下方向に立つ円筒状のベースフレーム22と、ベースフレーム22の上側に並んで配置され、装置上下方向に立つ複数の圧縮コイルばね24と、を備えている。ベースフレーム22は、モータ等の加振部(図示省略)を内部に備えている。複数の圧縮コイルばね24は、上側の端部が装置本体30と連結されており、装置本体30を下方から支持している。トナースラリーTSの篩分において、支持部20は、ベースフレーム22の加振部(図示省略)によって、複数の圧縮コイルばね24に支持された装置本体30を振動させる。これにより、支持部20は、後述する篩分部34によるトナースラリーTSの篩分効率を向上させる。
【0035】
(装置本体30)
装置本体30は、本体上部32と、本体上部32の下方に配置されている篩分部34と、篩分部34の下方に配置されていて、下部が支持部20の複数の圧縮コイルばね24の上側の端部と接続されている本体底部36と、を備えている。
【0036】
(本体上部32)
本体上部32は、上蓋38と、上蓋38の下方に配置されている上枠40と、上枠40の側面から突出している排出パイプ42と、を備えている。
【0037】
上蓋38は、例えば上方に向かって徐々に縮径する略円錐台の形状を有する部材である。上蓋38は、上面の中央部に形成されている貫通孔38aと、上面に形成されて、貫通孔38aを中心に軸対称に配置されている複数の貫通孔38bと、を有する。貫通孔38a、38bはそれぞれ、装置上下方向に延びる孔である。実施形態においては、貫通孔38bの数は6つとされている。貫通孔38aには、供給部60の供給管62が鉛直方向下向きに挿入されている。6つの貫通孔38bうち、装置幅方向に沿って直線状に並ぶ2つの貫通孔38bには、後述する吹付部70の通風管72が鉛直方向下向きに挿入されている。
【0038】
上枠40は、上縁で上蓋38の周縁を支持している、装置上下方向に立つ筒状の部材である。
【0039】
排出パイプ42は、上枠40の側面に設けられて、装置本体30の外部と接続されている排出口42aを有するパイプ状の部材である。排出口42aからは、装置本体30内で後述する篩分網50によって捕捉された、篩分網50の網目よりも粒径が大きいトナー粒子(以降、「大トナー粒子」と表記)TP1が、装置本体30の外部に向けて排出される。
【0040】
(篩分部34)
篩分部34は、供給部60の供給口62aよりも下側で、供給口62aと対向して配置されている篩分網50と、篩分網50の周縁を支持して且つ本体上部32の上枠40を下方から支持している支持枠44と、を備える。支持枠44、例えば装置上下方向に立つ円筒状の形状を有する。
【0041】
篩分網50は、供給部60から供給されたトナースラリーTSを篩分して、トナースラリーTSに含まれるトナー粒子TPを、篩分網50の網目の大きさに準じて分級する。具体的には、篩分網50は、トナースラリーTSに含まれるトナー粒子TPを、大トナー粒子TP1と、篩分網50の網目よりも粒径が小さいトナー粒子(以降、「小トナー粒子」と表記)TP2とに分級する。小トナー粒子TP2を含むトナースラリーTSが篩分網50の上方から供給されて篩分されると、トナースラリーTSに含まれる小トナー粒子TP2は、篩分網50に捕捉されずに篩分網50より下方に通過する。大トナー粒子TP1を含むトナースラリーTSが篩分網50の上方から供給されて篩分されると、大トナー粒子TP1は、篩分網50の後述する被供給範囲KA上で捕捉される。大トナー粒子TP1は、粗大粒子の一例である。実施形態における、篩分網50の網目の目開きは、10μm以上であって300μm以下の範囲内である。
【0042】
篩分網50は、例えば円盤状の網である。篩分網50は、供給口62aよりも鉛直方向下側に2cm~10cmの範囲内の位置に配置されている。すなわち、供給口62aと篩分網50との間の鉛直方向における距離は、2cm以上であって10cm以下の範囲内である。なお、供給口62aと篩分網50との間の鉛直方向における距離は、4cm以上であって8cm以下の範囲内であることが好ましい。実施形態における供給口62aと篩分網50との間の鉛直方向における距離は、6cmである。
【0043】
図2に示されるように、篩分網50の上方に配置されている供給口62aから、トナースラリーTSが下向きに落下して供給されるとき、篩分網50上の、トナースラリーTSが供給される範囲は、供給口62aによる被供給範囲KAとされる。実施形態における被供給範囲KAは、供給管62の内側の断面を、篩分網50上に鉛直方向下向きに投影させた形状を有している(
図3参照)。すなわち、実施形態における被供給範囲KAの面積は、供給管62の流路の断面積TAと同等である。
【0044】
(本体底部36)
本体底部36は、
図1に示されるように、篩分部34の支持枠44の下方に配置されている下枠46と、下枠46の側面から突出している回収パイプ48と、を備えている。
【0045】
下枠46は、支持枠44を下方から支持していて、装置上下方向に立つ円筒状の筒部46aと、筒部46a内の底側に設けられている底部46bと、を有している。底部46bは、装置幅方向における回収パイプ48側であって下方に向かって傾斜している。回収パイプ48は、筒部46aにおける、底部46bの傾斜方向側の側面に設けられて、装置本体30の外部と接続されている回収口48aを有するパイプ状の部材である。回収口48aからは、篩分網50によって篩分された後のトナースラリーTSが、装置本体30の外部に向けて排出されて回収される。
【0046】
装置本体30においては、後述する吹付部70の通風管72が挿入されていない貫通孔38b、排出パイプ42又は回収パイプ48によって、装置本体30の内部の圧力が大気圧となる。
【0047】
(吹付部70)
吹付部70は、例えば装置本体30内部であって篩分網50よりも上方に配置されたノズル72aから篩分網50に向けて圧縮ガスGを吹き付ける通風管72を備えている。ノズル72aは、通気口の一例である。圧縮ガスGは、ガスの一例である。通風管72の内側は、圧縮ガスGが流れる流路となっている。通風管72は、装置本体30の内部に配置されている端部にノズル72aが設けられている。吹付部70は、湿式篩分装置10に複数備えられている。実施形態においては、吹付部70は、2つとされている。具体的には、通風管72及びノズル72aは、湿式篩分装置10にそれぞれ2つずつ備えられている。また、通風管72は、ノズル72aとは反対側の端部(図示省略)が、例えば圧縮ガスGが貯留されている圧縮容器(図示省略)と接続されている。実施形態における圧縮ガスGは、例えばコンプレッサ等の圧縮手段(図示省略)によって空気が圧縮されたものである。なお、圧縮ガスGの組成は、空気に限定されない。例えば、圧縮ガスGの組成は、窒素ガスであってもよい。
【0048】
実施形態において、吹付部70は、圧縮容器(図示省略)に貯留された圧縮ガスGを、例えばレギュレータ等の通気手段(図示省略)によって、通風管72内に流してノズル72aから篩分網50に吹き付ける。実施形態においては、通風管72は、上蓋38の貫通孔38bに鉛直方向下向きに挿入されている。2つのノズル72aはそれぞれ、該ノズル72aと重なって鉛直方向に沿う仮想軸に対して、供給部60の供給口62a側に向けて、0°以上であって10°以下の範囲内の角度で傾斜している。なお、該角度は、0°~5°の範囲内にあることが好ましい。実施形態における該角度は、0°である。なお、該角度の範囲には、0°を下回る負の角度、すなわちノズル72aが該仮想軸に対して、供給口62aとは反対側に向けて傾斜しているときの角度は含まれない。また、2つのノズル72aは、該角度を調整できる構造を有するものであってもよい。
【0049】
吹付部70は、ノズル72aにおける圧力が0.1MPa以上であって1.0MPa以下の範囲内の圧縮ガスGを、篩分網50に吹き付ける。
【0050】
また、吹付部70は、圧縮ガスGを、3L/min以上であって15L/min以下の範囲内の流量で、篩分網50に吹き付ける。この圧縮ガスGの流量は、吹付部70全体での圧縮ガスGの流量である。なお、吹付部70が吹き付ける圧縮ガスGの流量は、3L/min以上であって10L/min以下の範囲内であることが好ましい。さらに、吹付部70が吹き付ける圧縮ガスGの流量は、6L/min以上であって9L/min以下の範囲内であることがより好ましい。
【0051】
実施形態においては、2つのノズル72aは、供給部60の供給口62aよりも上方に配置されている。換言すると、ノズル72aは、供給口62aよりも鉛直方向上側に配置されている。
【0052】
図2に示されるように、実施形態において、吹付部70で吹き付けられる圧縮ガスGは、ノズル72aから略円錐台状に拡散されながら篩分網50に吹き付けられる。吹付部70全体が篩分網50に圧縮ガスGを拡散させながら吹き付けるとき、篩分網50上の、拡散された圧縮ガスGが吹き付けられる範囲は、吹付部70全体による被吹付範囲FA1とされる。被吹付範囲FA1は、それぞれのノズル72aによる被吹付範囲FA2を合わせた形状を有している。実施形態において、2つのノズル72aによる被吹付範囲FA2は、互いに一部が重なっている。
【0053】
実施形態においては、2つのノズル72aによる被吹付範囲FA2の面積は何れも、
図3に示されるように、供給口62aによる被供給範囲KAの面積よりも大きい。また、2つのノズル72aによる被吹付範囲FA2は何れも、供給口62aによる被供給範囲KAと一部が重なっている。また、吹付部70全体による被吹付範囲FA1は、供給口62aによる被供給範囲KAを、該被吹付範囲FA1の範囲内に収めている。換言すると、供給口62aによる被供給範囲KAは、吹付部70全体による被吹付範囲FA1の範囲内に位置している。すなわち、吹付部70は、被供給範囲KAを範囲内に収めている被吹付範囲FA1の範囲内で、圧縮ガスGを吹き付けている。
【0054】
(トナーTの製造方法)
次に、本発明の実施形態に係るトナーTの製造方法について説明する。実施形態に係るトナーTは、湿式製法の一例である重合法によって製造されるものであり、トナースラリーTSの製造工程、湿式篩分工程、洗浄工程、乾燥工程、外添工程、乾式篩分工程を経て製造される。なお、本発明におけるトナーTの製造方法は、湿式篩分工程が含まれるものであればよく、前述した重合法による製造方法に限定されない。例えば、本発明におけるトナーTの製造方法は、凝集合一法であってもよく、溶解懸濁法であってもよい。
【0055】
トナースラリーTSの製造工程では、トナー粒子TP及びトナー粒子TPの溶媒を含むトナースラリーTSが製造される。トナースラリーTSの製造工程で製造されたトナースラリーTSは、湿式篩分工程において、湿式篩分装置10の篩分網50によって篩分されて、トナースラリーTSに含まれるトナー粒子TPを分級される。具体的には、湿式篩分工程を経て回収されたトナースラリーTSに含まれるトナー粒子TPは、小トナー粒子TP2のみと成る。そして湿式篩分工程を経て回収されたトナースラリーTSに対して、洗浄工程の固液分離工程でトナースラリーTSの溶媒を分離させ、通水洗浄工程で不純物を洗浄することでトナー粒子TPが得られる。そして得られたトナー粒子TPに対して、乾燥工程でトナー粒子TPに含まれる水分を乾燥させることで、トナーTが得られる。
【0056】
(作用・効果)
次に、実施形態の作用について説明する。なお、この説明において、実施形態に対する比較形態を記載するときに、実施形態の湿式篩分装置10と同様の部品等を用いる場合、その部品等の符号及び名称をそのまま用いて説明する。
【0057】
実施形態において、供給部60の供給口62aから大トナー粒子TP1を含むトナースラリーTSが篩分網50に供給されて、篩分網50の被供給範囲KA上で大トナー粒子TP1が捕捉されたときについて考える。このとき、ノズル72aから圧縮ガスGが篩分網50に向けて吹き付けられると、被供給範囲KA上で捕捉された大トナー粒子TP1は、圧縮ガスGによって被供給範囲KA上から除去される。除去された大トナー粒子TP1は、排出パイプ42の排出口42aから装置本体30の外部に排出される。
【0058】
実施形態に係る湿式篩分装置10は、供給部60の供給口62aから下向きに供給されるトナースラリーTSを篩分する篩分網50に向けて、篩分網50の上側に配置された吹付部70のノズル72aから圧縮ガスGを吹き付ける構成(第1構成)を有している。第1構成を有する湿式篩分装置10と、以下に示す第1比較形態としての湿式篩分装置とを比較する。
【0059】
第1比較形態の湿式篩分装置は、篩分網50に向けて圧縮ガスGを吹き付ける吹付部70の代わりに、篩分網50に向けて洗浄液を噴射して篩分網50を洗浄する洗浄部を備えている。以上の点以外については、第1比較形態は実施形態と同様の構成とされている。
【0060】
第1比較形態において、トナースラリーTSに大トナー粒子TP1が含まれるとき、被供給範囲KA上で捕捉された大トナー粒子TP1は、洗浄液によって被供給範囲KA上から除去される。しかしながら、洗浄部で噴射された洗浄液の一部は、篩分網50で篩分されるトナースラリーTSに混入されてしまうことで、篩分されるトナースラリーTSの液量が増加する。篩分されるトナースラリーTSの液量が増加すると、その増加分だけ、湿式篩分工程の時間が増加する。また、洗浄液の一部がトナースラリーTSに混入されてしまうことで、湿式篩分工程で回収されるトナースラリーTSの液量が増加する。湿式篩分工程で回収されるトナースラリーTSの液量が増加すると、湿式篩分工程の後のトナースラリーの固液分離工程で固液分離するスラリーの量が増加するため、それに応じて固液分離工程の時間が増加する。よって、第1比較形態においては、湿式篩分工程の時間及び固液分離工程の時間の増加分だけ、トナーの製造時間が増加する。
【0061】
一方、実施形態の湿式篩分装置10は、第1構成を有している。すなわち、実施形態の湿式篩分装置10は、第1比較形態において洗浄液を噴射する洗浄部の代わりに、圧縮ガスGを吹き付ける吹付部70を備えている。よって、実施形態の湿式篩分装置10は、第1比較形態と比して、篩分後のトナースラリーTSの液量の増加が抑制される。
【0062】
また、実施形態の湿式篩分装置10は、第1比較形態と比して、湿式篩分工程の時間が短縮される。
【0063】
さらに、実施形態の湿式篩分装置10を用いる湿式篩分方法は、第1比較形態の湿式篩分装置を用いてトナースラリーを篩分する方法と比して、篩分後のトナースラリーTSの液量の増加が抑制される。
【0064】
そして、実施形態の湿式篩分装置10を用いる湿式篩分方法を有するトナーTの製造方法は、第1比較形態の湿式篩分装置を用いてトナースラリーを篩分する構成と比して、トナーの製造時間が短縮される。
【0065】
また、実施形態の湿式篩分装置10は、2つのノズル72aがそれぞれ、それぞれのノズル72aと重なって鉛直方向に沿う仮想軸に対して、供給部60の供給口62a側に向けて、0°以上であって10°以下の範囲内の角度で傾斜している構成(第2構成)を有している。第2構成を有する湿式篩分装置10と、以下に示す第2比較形態としての湿式篩分装置とを比較する。
【0066】
第2比較形態の湿式篩分装置は、2つのノズル72aがそれぞれ、該ノズル72aと重なって鉛直方向に沿う仮想軸に対して、供給口62a側に向けて、20°の角度で傾斜している。すなわち、第2比較形態の湿式篩分装置は、ノズル72aが該ノズル72aと重なって鉛直方向に沿う仮想軸に対して、供給部60の供給口62a側に向けて、10°を上回る角度で傾斜している。以上の点以外については、第2比較形態は実施形態と同様の構成とされている。
【0067】
圧縮ガスGが吹き付けられるとき、被供給範囲KAに供給されたトナースラリーTSには、圧縮ガスGによる水平方向の力が付与される。圧縮ガスGによる水平方向の力は、鉛直方向に対するノズルの角度に応じて大きくなる。被供給範囲KAに供給されたトナースラリーTSに水平方向の力が付与されると、供給されたトナースラリーTSの一部が被供給範囲KA及び被吹付範囲FA2の範囲外に流出して、排出パイプ42の排出口42aから排出される虞がある。供給されたトナースラリーTSの一部が排出口42aから排出されると、篩分網50を通過して、回収パイプ48の回収口48aから回収されるトナースラリーTSの液量が減少する。特に、小トナー粒子TP2を含んでいるトナースラリーTSが排出口42aから排出されると、回収口48aから回収されるトナースラリーTSに含まれる小トナー粒子TP2の量が減少する。
【0068】
一方、実施形態の湿式篩分装置10は、第2構成を有していることで、第2比較形態と比して、圧縮ガスGによって被供給範囲KAのトナースラリーTSに付与される水平方向の力が小さい。よって、実施形態の湿式篩分装置10は、ノズル72aが該ノズル72aと重なって鉛直方向に沿う仮想軸に対して、供給口62a側に向けて10°を上回る角度で傾斜している構成と比して、篩分網50を通過するトナースラリーTSの液量の減少が抑制される。なお、前述の第2比較形態は、本発明の技術的思想に含まれるものである。
【0069】
また、実施形態の湿式篩分装置10は、2つのノズル72aそれぞれによる被吹付範囲FA2が、供給口62aによる被供給範囲KAと重なっている構成(第3構成)を有している。第3構成を有する湿式篩分装置10と、以下に示す第3比較形態としての湿式篩分装置とを比較する。
【0070】
第3比較形態の湿式篩分装置は、2つのノズル72aそれぞれによる被吹付範囲FA2が、供給口62aによる被供給範囲KAと全く重なっていない構成を有している。すなわち、第3比較形態の湿式篩分装置は、被吹付範囲FA2が、被供給範囲KAからずれている構成を有している。以上の点以外については、第3比較形態は実施形態と同様の構成とされている。
【0071】
第3比較形態において、篩分網50に供給されるトナースラリーTSに大トナー粒子TP1が含まれるとき、大トナー粒子TP1は、被吹付範囲FA2からずれている被供給範囲KAで捕捉される。被吹付範囲FA2からずれている被供給範囲KA上で捕捉された大トナー粒子TP1は、吹付部70のノズル72aからの圧縮ガスGが直接的に吹き付けられないため、被供給範囲KA上から除去されずに滞留する虞がある。よって、第3比較形態の湿式篩分装置は、篩分網50に供給されるトナースラリーTSに大トナー粒子TP1が含まれるとき、篩分網50が被供給範囲KAで滞留した大トナー粒子TP1による目詰まりが発生しやすい。
【0072】
一方、実施形態の湿式篩分装置10は、第3構成を有していることで、被供給範囲KA上で補足された大トナー粒子TP1が圧縮ガスGで除去され易い。よって、実施形態の湿式篩分装置10は、第3比較形態と比して、トナースラリーTSに大トナー粒子TP1が含まれるときにおける、被供給範囲KAでの大トナー粒子TP1の滞留が抑制される。なお、前述の第3比較形態は、本発明の技術的思想に含まれるものである。
【0073】
また、実施形態の湿式篩分装置10は、2つのノズル72aそれぞれによる被吹付範囲FA2の面積がそれぞれ、被供給範囲KAの面積よりも大きい構成(第4構成)を有している。よって、第4構成を有する湿式篩分装置10は、被吹付範囲FA2の面積が被供給範囲KAの面積よりも小さい構成と比して、トナースラリーTSに大トナー粒子TP1が含まれるときにおける、被供給範囲KAでの大トナー粒子TP1の滞留が抑制される。
【0074】
また、実施形態の湿式篩分装置10は、被供給範囲KAが、吹付部70全体による被吹付範囲FA1の範囲内に位置している構成(第5構成)を有している。よって、第5構成を有する湿式篩分装置10は、被供給範囲KAが被吹付範囲FA1の範囲外にはみ出ている構成と比して、トナースラリーTSに大トナー粒子TP1が含まれるときにおける、被供給範囲KAでの大トナー粒子TP1の滞留が抑制される。
【0075】
また、実施形態の湿式篩分装置10は、ノズル72aが複数である構成(第6構成)を有している。よって、第6構成を有する湿式篩分装置10は、ノズル72aが1つのみである構成と比して、トナースラリーTSに大トナー粒子TP1が含まれるときにおける、被供給範囲KAでの大トナー粒子TP1の滞留が抑制される。
【0076】
また、実施形態の湿式篩分装置10は、複数のノズル72aが供給口62aを中心に軸対称に配置されている構成(第7構成)を有している。よって、第7構成を有する湿式篩分装置10は、複数のノズル72aと、供給口62aとの間隔がバラバラである構成と比して、トナースラリーTSに大トナー粒子TP1が含まれるときにおける、被供給範囲KAでの大トナー粒子TP1の滞留が抑制される。
【0077】
また、実施形態の湿式篩分装置10は、ノズル72aが供給口62aよりも鉛直方向上側に配置されている構成(第8構成)を有している。よって、第8構成を有する湿式篩分装置10は、ノズル72aが供給口62aよりも鉛直方向下側に配置されている構成と比して、供給口62aから供給されるトナースラリーTSでノズル72aがふさがれることが抑制される。
【0078】
また、実施形態の湿式篩分装置10は、供給口62aと篩分網50との間の鉛直方向における距離が2cm以上であって10cm以下の範囲内である構成(第9構成)を有している。よって、第9構成を有する湿式篩分装置10は、該距離が2cmを下回る構成と比して、トナースラリーTSに大トナー粒子TP1が含まれるときにおける、被供給範囲KAでの大トナー粒子TP1の滞留が抑制される。また、第9構成を有する湿式篩分装置10は、該距離が10cmを上回る構成と比して、トナースラリーTSに大トナー粒子TP1が含まれるときにおける、被供給範囲KAでの大トナー粒子TP1の滞留が抑制される。
【0079】
また、実施形態の湿式篩分装置10は、吹付部70が、3L/min以上であって15L/min以下の範囲内の流量で、圧縮ガスGを篩分網50に吹き付ける構成(第10構成)を有している。よって、第10構成を有する湿式篩分装置10は、該流量が3L/minを下回る構成と比して、トナースラリーTSに大トナー粒子TP1が含まれるときにおける、被供給範囲KAでの大トナー粒子TP1の滞留が抑制される。さらに、第10構成を有する湿式篩分装置10と、以下に示す第4比較形態としての湿式篩分装置とを比較する。
【0080】
第4比較形態の湿式篩分装置は、吹付部70が、16L/minの流量で圧縮ガスGを篩分網50に吹き付ける構成を有している。すなわち、第4比較形態の湿式篩分装置は、吹付部70が、15L/minを上回る流量で圧縮ガスGを篩分網50に吹き付ける。以上の点以外については、第4比較形態は実施形態と同様の構成とされている。
【0081】
篩分網50にトナースラリーTSを供給しながら圧縮ガスGを吹き付けると、供給されるトナースラリーTSが圧縮ガスGを巻き込んで発泡する(泡が発生する)。トナースラリーTSが発泡すると、吹付部70によって吹き付けられる圧縮ガスGが、発生した泡に遮られて、トナースラリーTSの被供給範囲KAに到達し難くなり、被供給範囲KA上で補足された大トナー粒子TP1が除去され難くなる。トナースラリーTSの発泡量は、吹き付けられる圧縮ガスGの流量に応じて増加する。
【0082】
一方、実施形態の湿式篩分装置10は、第10構成を有していることで、第4比較形態と比して、トナースラリーTSの発泡量が少ない。よって、実施形態の湿式篩分装置10は、吹付部70が15L/minを上回る流量で圧縮ガスGを吹き付ける構成と比して、トナースラリーTSの発泡が抑制される。なお、前述の第4比較形態は、本発明の技術的思想に含まれるものである。
【0083】
以上のとおり、本発明の特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内にて種々の変形、変更、改良が可能である。
【0084】
例えば、実施形態において、吹付部70は、ノズル72aから圧縮ガスGを篩分網50に吹き付ける構成を有するものとした。しかしながら、吹付部70は、ファンによる風を篩分網50に吹き付ける構成であってもよい。
【0085】
また、実施形態においては、それぞれのノズル72aによる被吹付範囲FA2の面積が、被供給範囲KAの面積よりも大きい構成を有しているものとした。しかしながら、被吹付範囲FA2の面積はそれぞれ、被供給範囲KAの面積よりも小さい構成であってもよい。
【0086】
また、実施形態においては、それぞれのノズル72aによる被吹付範囲FA2は、被供給範囲KAと一部が重なっている構成を有しているものとした。しかしながら、被吹付範囲FA2は被供給範囲KAの全体と重なっている構成であってもよい。
【0087】
また、実施形態においては、供給管62は鉛直上下方向に延びる貫通孔38aに上方から挿入されているものとした。しかしながら、供給管62の供給口62aよりも下方に配置されている篩分網50にトナースラリーTSを供給することができるのであれば、供給管62は鉛直方向に対して傾斜している構成であってもよい。
【0088】
また、実施形態においては、被供給範囲KAが、吹付部70全体による被吹付範囲FA1の範囲内に位置している構成を有しているものとした。しかしながら、被供給範囲KAは、被吹付範囲FA1の範囲外、又はそれぞれのノズル72aによる被吹付範囲FA2の範囲外にはみ出ている構成であってもよい。
【0089】
また、実施形態においては、ノズル72aが2つである構成を有しているものとした。しかしながら、ノズル72aは、1つのみであってもよく(
図4参照)、また3つ以上であってもよい(
図5参照)。
【0090】
また、実施形態においては、2つのノズル72aが供給口62aを中心に軸対称に配置されている構成を有しているものとした。しかしながら、2つのノズル72aは、供給口62aを中心に軸対称に配置されていない構成でもよく、また供給口62aとの間隔がそれぞれバラバラである構成であってもよい。また、ノズル72aが3つ以上であるとき、3つ以上のノズル72a同士の間隔がバラバラである構成であってもよい。
【0091】
また、実施形態においては、ノズル72aが供給口62aよりも鉛直方向上側に配置されている構成を有しているものとした。しかしながら、ノズル72aは、供給口62aよりも鉛直方向下側に配置されている構成であってもよい。
【0092】
また、実施形態においては、湿式篩分装置10は、現像剤に含まれるトナーTの製造における、トナー粒子TPの湿式篩分に使用されるものとした。しかしながら、本発明は、トナーTの製造以外における湿式篩分に適用してもよい。例えば、微粒子分散液に含まれる微粒子は、薬物粒子であってもよい。また、本発明においては、用途に応じて、供給口の角度、供給口と篩分網との距離、供給される微粒子分散液の流量、吹き付けられるガスの流量及び吹付口におけるガスの圧力等を適宜調整してもよい。
【実施例】
【0093】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下に示す「部」は質量部を意味する。
【0094】
(トナースラリーTS)
まず、実施例におけるトナースラリーTSについて説明する。実施例におけるトナースラリーTSは、以下に示す方法で得られる。
【0095】
まず、ポリエステル樹脂粒子分散液(テレフタル酸とビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物の重合体、Mw30000)260部、カーボンブラック顔料分散液30部、離型剤(ポリエチレンワックス)分散液40部、ポリ塩化アルミニウム3部、イオン交換水600部を、加熱冷却可能なジャケットを有した槽に投入し、ホモジナイザーを用いて混合分散させた後、撹拌翼にて撹拌しながらジャケット温度50℃で加熱することで、分散液B1を得た。
【0096】
次に、この分散液B1に、前述したポリエステル樹脂粒子分散液を緩やかに67部添加し、ジャケット温度50℃でさらに1時間保持することで、分散液B2を得た。
【0097】
そして、分散液B2に水酸化ナトリウム溶液を適量添加することで分散液B2のpHを7.5に調整した。さらに、分散液B2の液温が90℃になるまで加熱撹拌して、5時間保持した。この後、40℃まで冷却することで、トナースラリーTSを得た。
【0098】
得られたトナースラリーTSには、体積平均粒径(D50v)が6.0μmであるトナー粒子TPが含まれていた。また、トナー粒子TPの形状係数SF1を画像解析装置で測定して得られた形状係数SF1は、130であった。このトナー粒子TPのうち、粒径が20μm以上である大トナー粒子TP1の粒子量は、トナー粒子TP全体の粒子量の1.1%であった。
【0099】
(湿式篩分装置10)
実施例における湿式篩分装置10は、網目が30μmでナイロン製の篩分網50を備えている。また、実施例における湿式篩分装置10は、鉛直方向に対するノズル72aの吹き付け方向の角度が0°である。また、実施例における供給口62aと篩分網50との間の鉛直方向における距離は、6cmである。
【0100】
このトナースラリーTSを、100L/minの流量で湿式篩分装置10に供給して、以下の表1に示される条件で篩分することで、湿式篩分装置10の篩分処理能力の経時変化及び本体上部32内に発生した泡の量を評価した。表1に示される実施例1~7は、ノズル72aの数及び圧縮ガスGの流量の組合せがそれぞれで異なり、それら以外の構成は共通している。また、表1に示される比較例は、吹付部70に代わって散水ノズルを備え、洗浄液を篩分網50に散水する構成を有するものである。湿式篩分装置10の篩分処理能力の経時変化については、回収パイプ48の回収口48aから回収される篩分後のトナースラリーTSの流量を、トナースラリーTSを供給してから0分後と30分後とで比較して評価する。実施例1~7及び比較例における、湿式篩分装置10の篩分処理能力の経時変化及び本体上部32内に発生した泡の量の評価結果を、表1に示す。
【0101】
【0102】
表1から、実施例1及び実施例2は、実施例5と比して、湿式篩分装置10の篩分処理能力が維持されていることが確認できる。これは、実施例1及び実施例2では、実施例5と比して、被供給範囲KAでの大トナー粒子TP1の滞留が抑制されているためである。よって、ノズル72aが3L/min以上であって15L/min以下の範囲内の流量で圧縮ガスGを吹き付ける構成は、該流量が3L/minを下回る構成と比して、被供給範囲KAでの大トナー粒子TP1の滞留が抑制されている。
【0103】
また、表1から、実施例1及び実施例2は、実施例3、4、7と比して、本体上部内に発生した泡の量が少ないことが確認できる。よって、ノズル72aが3L/min以上であって15L/min以下の範囲内の流用で圧縮ガスGを吹き付ける構成は、該流量が15L/minを上回る構成と比して、トナースラリーTSの発泡が抑制されている。
【0104】
また、表1から、実施例1は、実施例6と比して、湿式篩分装置10の篩分処理能力が維持されていることが確認できる。これは、実施例1では、実施例5と比して、被供給範囲KAでの大トナー粒子TP1の滞留が抑制されているためである。よって、ノズル72aが2本である構成は、ノズル72aが1本のみである構成と比して、被供給範囲KAでの大トナー粒子TP1の滞留が抑制されている。
また、表1から、実施例1は、比較例と比して、湿式篩分装置10の篩分処理能力が維持されていることが確認できる。これは、実施例1では、比較例と比して、被供給範囲KAでの大トナー粒子TP1の滞留が抑制されているためである。よって、ノズルから圧縮ガスを吹き付ける構成は、散水洗浄する構成と比して、被供給範囲KAでの大トナー粒子TP1の滞留が抑制されている。
【符号の説明】
【0105】
10 湿式篩分装置
30 装置本体
50 篩分網
60 供給部
62a 供給口
70 吹付部
72a ノズル(通気口の一例)
FA1 被吹付範囲
FA2 被吹付範囲
KA 被供給範囲
G 圧縮ガス(ガスの一例)
T トナー
TS トナースラリー(微粒子分散液の一例)
TP1 大トナー粒子(粗大粒子の一例)