(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】建築物
(51)【国際特許分類】
E04H 3/08 20060101AFI20240730BHJP
E04B 1/26 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
E04H3/08 Z
E04B1/26 A
(21)【出願番号】P 2020041457
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】水野 彩香
(72)【発明者】
【氏名】板橋 茂
(72)【発明者】
【氏名】小泉 しをり
(72)【発明者】
【氏名】土屋 貴輝
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第209824765(CN,U)
【文献】木造建築設計情報プラット 建築事例 宮代町庁舎,[online],2013年10月02日,インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20131002212327/http://www.kiwoikasu-plat.jp/contents/case/form.php?Caseid=87&act=view>,[2023年10月27日検索]
【文献】住防発第一四号 昭和二六年三月六日 建設省住宅局建築防災課長から各都道府建築主務部長あて 通達,[online],2003年,インターネット<URL:https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/sgml/096/81000005/81000005.html>,[2024年1月31日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 3/08
E04B 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ木質構造で形成された2つの木造棟と、当該2つの木造棟同士を接続し、周囲を木質構造で形成された耐火壁体で包囲される接続棟と、を有し、
前記接続棟が、第1出入口によって一方の木造棟と行き来可能とされるとともに、前記第1出入口に相対向する位置に配置された第2出入口によって他方の木造棟と行き来可能であり、且つ、当該接続棟が室空間として使用される建築物であって、
前記2つの木造棟は、互いに建物用途が異なっており、
前記一方の木造棟は、当該一方の木造棟内の室同士を結ぶ平面視細長な第1ホールを前記第1出入口に面して配置され、
前記他方の木造棟は、当該他方の木造棟内の室同士を結ぶ平面視細長な第2ホールを前記第2出入口に面して配置され、
前記第1ホール及び前記第2ホールは、前記接続棟を挟んで一直線上に配置され、
前記第1ホールは、居室として使用され、
前記第2ホールは、床仕上材が木質材であり、且つ、天井に、短手方向へ延びる木質梁が露出しており、
前記第1ホールの短手方向には、当該第1ホールを挟んで複数の居室が相対向する位置に配置され、
前記第2ホールの短手方向には、当該第2ホールを挟んで複数の居室が相対向する位置に配置され
、
前記第1ホールに面して配置される前記複数の居室は、各々の床仕上材が前記木質材であり、且つ、各々の天井に、前記木質梁が露出することを特徴とする建築物。
【請求項2】
前記2つの木造棟は、前記一方の木造棟が学童保育施設であるとともに、前記他方の木造棟が児童館及び子育て支援センターからなることを特徴とする請求項1に記載の建築物。
【請求項3】
前記2つの木造棟は、それぞれ室内に木質梁又は木質柱が露出し、且つ、居室の床仕上材を無垢材としていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物用途の異なる2つの木造棟同士を、耐火性能を有する壁体で囲われた接続棟によって接続する建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行され、国家政策として建築物への木材の利用推進が後押しされている。また昨今、木材を子どもの頃から身近に使用することで、人と、森林資源との関わりを主体的に考えられる豊かな心を育むという、所謂「木育」に注目が集まっており、林野庁においても、子どもから大人までを対象に、木材や木製品との触れ合いを通じて木資源への親しみや木の文化への理解を深める木育の取組を推進している。しかしながら木造建築物を計画する場合、現在の建築基準法では大規模建築物や特殊建築物に対する耐火性能の規制が厳しいため、一般的な木質構造のままでは一定規模以下の建築物とせざるを得ないことが多く、大規模な木造建築物を建設することが難しい。そこで、主要構造部に使用される木材の耐火性能を向上させることにより大規模な木造建築物の建設を実現可能とする発明が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【0003】
特許文献1に記載の発明では、荷重を支持するための荷重支持層と、燃え代部分及び燃え止まり部分を有する集成層と、を接合手段で接合させてなる集成材を主要構造部に使用して建築物自体の耐火性能を向上させることにより、大規模な木造建築物を構築することができる。また、特許文献2に記載の発明は、木質の構造梁を同じく木質の被覆部材で被覆することにより木造建築物を耐火構造とすることができる旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-075456
【文献】特開2013-204261
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の発明では、より規模の大きな木造建築物を構築できるものの、主要構造材の耐火性能を向上させるために特殊な構造や部材を用いなければならず、通常の木質構造で建設された建築物と比較して施工費や部材製作費が嵩むことになる。一方、建築基準法上厳しい耐火性能を求められない一定規模以下の床面積で各々形成された2つの木造建築物同士を、耐火性能を有する壁体で囲われた渡り廊下で繋いで1つの施設として使用する事により規模の大きな木造施設を構築する場合があるが、この場合は通路である渡り廊下によって2つの建築物の空間や流れが分断されてしまうため、施設全体としての一体性を保つことが難しい。
【0006】
そこで、本発明は上述した課題を鑑みてなされたものであって、建築物全体の一体感を保持しつつ、特殊な構造や部材を用いることなく大規模な木質空間を構築可能な建築物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の建築物は、それぞれ木質構造で形成された2つの木造棟と、当該2つの木造棟同士を接続し、周囲を木質構造で形成された耐火壁体で包囲される接続棟と、を有し、前記接続棟が、第1出入口によって一方の木造棟と行き来可能とされるとともに、前記第1出入口に相対向する位置に配置された第2出入口によって他方の木造棟と行き来可能であり、且つ、当該接続棟が室空間として使用される建築物であって、前記2つの木造棟は、互いに建物用途が異なっており、前記一方の木造棟は、当該一方の木造棟内の室同士を結ぶ平面視細長な第1ホールを前記第1出入口に面して配置され、前記他方の木造棟は、当該他方の木造棟内の室同士を結ぶ平面視細長な第2ホールを前記第2出入口に面して配置され、前記第1ホール及び前記第2ホールは、前記接続棟を挟んで一直線上に配置され、前記第1ホールは、居室として使用され、前記第2ホールは、床仕上材が木質材であり、且つ、天井に、短手方向へ延びる木質梁が露出しており、前記第1ホールの短手方向には、当該第1ホールを挟んで複数の居室が相対向する位置に配置され、前記第2ホールの短手方向には、当該第2ホールを挟んで複数の居室が相対向する位置に配置され、前記第1ホールに面して配置される前記複数の居室は、各々の床仕上材が前記木質材であり、且つ、各々の天井に、前記木質梁が露出することを特徴としている。
【0008】
本発明の第2の建築物は、前記2つの木造棟が、前記一方の木造棟が学童保育施設であるとともに、前記他方の木造棟が児童館及び子育て支援センターからなることを特徴としている。
【0009】
本発明の第3の建築物は、前記2つの木造棟が、それぞれ室内に木質梁又は木質柱が露出し、且つ、居室の床仕上材を無垢材としていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の建築物によると、接続棟は、第1出入口によって一方の木造棟と行き来可能とされるとともに、第1出入口に相対向する位置に配置された第2出入口によって他方の木造棟と行き来可能であるため、両方の木造棟から滞在可能な室空間とすることができ、2つの木造棟の空間同士を分断することなく結び付けて建築物全体の一体性を保持することができる。また、第1出入口に面して配置される第1ホールと、第2出入口に面して配置される第2ホールとは、接続棟を挟んで一直線上に配置されるので、それぞれの木造棟から接続棟を挟んで対向する木造棟を広く見渡すことができ、用途の異なる各木造棟同士を接続棟で緩やかに区切りつつも建築物全体の一体感を保持することができる。
【0011】
本発明の第2の建築物によると、2つの木造棟は、一方の木造棟が学童保育施設であるとともに、他方の木造棟が児童館及び子育て支援センターであるので、接続棟によって役割の異なる2つの木造棟同士を緩やかに区切りつつも、見通しの良い第1ホール及び第2ホールによって児童福祉施設全体としての一体感を保持することができ、各施設を利用する子ども達に安心感を与えることができる。
【0012】
本発明の第3の建築物によると、2つの木造棟は、それぞれ室内に木質梁又は木質柱が露出し、且つ、居室の床材を無垢材としているので、各施設を利用する子ども達に木材を身近に感じさせるとともに木資源への親しみを深めさせることができ、木育を効果的に促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る建築物の実施形態について各図を参照しつつ説明する。なお、本願において「東」「西」「南」「北」とは、
図1、
図4、
図6、及び
図8における「右」「左」「下」「上」を指す。
【0015】
図1に示すように、本願の建築物1は、東西方向へ細長な平屋建ての建築物であり、児童福祉に関する事業を行う施設を複数備えた複合施設である。またこの建築物1は、施設を利用する子ども達に木材との触れ合いを通じて木資源への親しみや木の文化への理解を深める所謂「木育」を推進する施設でもある。
【0016】
建築物1は、それぞれ建物用途が異なる2つの木造棟2、3と、当該2つの木造棟2、3同士を接続する耐火棟4と、を有している。2つの木造棟2、3のうち、西側に配置される第1木造棟2は、主に小学生児童に対して小学校授業終了後に遊びや生活の場を与える学童保育施設として使用される棟である。また、耐火棟4を挟んで第1木造棟2と対向するもう一方の木造棟、第2木造棟3は、主に第1木造棟2の学童保育施設を利用する小学生から地域の中高校生までの児童が遊びや学びを通じて交流を深める児童館5、及び地域の子育て家庭に対して子育てに関する支援を行う子育て支援センター6からなる棟である。各棟への来館者は、第1木造棟2及び第2木造棟3の南側にそれぞれ設けられた学童用出入口D1、及びエントランス出入口D2から建築物1へ出入りすることができる。
【0017】
図1及び
図2に示すように、耐火棟4は平面視略矩形状の建物であり、周囲を建築基準法上の耐火性能に適合する耐火壁体Wfによって包囲されている。耐火壁体Wfは、
図3に示すように、一定間隔を空けて立設する複数の木質柱4aの屋内外に厚さ21mmの石膏ボードからなる防火被覆材4bを二重張りすることによって所定の耐火性能を保持している。また木質柱4aの屋外側には、屋内側から順に防水シート4c、防火被覆材4b、15~20mm程度の通気層4d、及び外装仕上材4eを設置している。耐火壁体Wfは、各木造棟2、3と離間して隙間Sを形成しており、この隙間Sは屋外側に設置される板金4f及び屋内側に設置される杉板材4gによって閉塞される。このとき、耐火壁体Wfは壁体自体で耐火性能を満たしているので、板金4fや杉板材4gは耐火帯としての特別な性能を必要とされず、また隙間Sを塞ぐために特別な工法を用いることもない。したがって、風雨を遮断するために屋外側に設置される閉塞材も、通常外壁廻りに使用される板金4fを各木造棟2、3のそれぞれの壁体W1の縁端Waに嵌め込むという従来工法を用いて設置することができ、部材費や施工費の上昇を抑えるとともに、建築物1全体の外観意匠に統一感をもたらすことができる。なお、図示例では耐火壁体Wfと第1木造棟2との間に形成された隙間Sを示しているが、耐火壁体Wfと第2木造棟3との間にも同様の隙間Sが形成されており、板金4f及び杉板材4gによって隙間Sを閉塞することができる。
【0018】
図2に示すように、耐火棟4は第1木造棟2側に配置されるカウンターコーナー41、第1倉庫42、及び第2木造棟3側に配置される休憩ホール43、から構成されており、来館者は、カウンターコーナー41に設置されたカウンター41aや休憩ホール43の自動販売機43aを利用して小休止することができる。また耐火棟4は、カウンターコーナー41に面する耐火壁体Wfに形成された第1出入口D3を通じて第1木造棟2と行き来可能であるとともに、第1出入口D3に相対向する位置に配置された第2出入口D4によって第2木造棟3と行き来可能となっている。このように建築物1は、耐火棟4を単純に各木造棟2、3同士を接続する通路とするのではなく、各木造棟2、3から使用できる室空間とすることによって、第1木造棟2の空間と第2木造棟3の空間との流れを分断することなく建物全体の一体感を保持することができる。なお、第2出入口D4には、常時開状態となっている防火戸SDが設置されており、またカウンターコーナー41と休憩ホール43との間には各木造棟2、3同士を緩やかに区画する引き戸WDが設置されている。
【0019】
次に、
図1に示す第1木造棟2及び第2木造棟3の構成について説明する。本実施形態において、この2つの木造棟2、3は、それぞれ500平米以上の床面積を有しており、床面積を合計すると1000平米を越えるため、建築基準法施行令第112条に基づき耐火性能を有する耐火壁体Wfや防火戸SDによって防火区画されている。つまり、両木造棟2、3は、建築基準法や条例などで定められる最低限の内装制限規定を遵守すれば特殊な加工を用いていない通常の木質材料を内装材として使用することができる。
【0020】
一方の木造棟である第1木造棟2は、
図1及び
図4に示すように、西側にそれぞれ南北に分かれて配置される第1学童保育室21及び第2学童保育室22、第1学童保育室21よりも東側に配置される職員用トイレ23、第1事務室24、第2学童保育室22よりも東側に配置される倉庫25、第1エントランスホール26、そして、各室同士を結ぶ東西方向へ細長な第1ホール27、とから構成されている。
【0021】
図4に示す第1学童保育室21及び第2学童保育室22は、主として小学校授業終了後に小学生児童が遊びや学習を行う場所である。なお、第1学童保育室21及び第2学童保育室22は、第1ホール27を挟んで対称形に形成された同一機能を備える室であるため、ここでは第1学童保育室21を中心に説明し、第2学童保育室22の説明は省略する。
図4及び
図5に示すように、第1学童保育室21は、子ども達が過ごす保育室210及び学童用トイレ211からなり、保育室210には複数の収納棚210aや子ども達が学習や遊びを行うために使用する複数の机210b及びランドセルや手荷物を保管するランドセル棚210cが適宜設置されている。第1学童保育室21は、子ども達が直接手に触れることのできる箇所、例えば、保育室210の床仕上材、同室210に面する開口部AW廻りに設置された建具枠210d、幅木210e、学童用トイレ211の保育室210側の壁仕上材には杉の無垢材が使用され、またランドセル棚210cの本体枠は檜を使用した集成材で形成されている。そして保育室210の天井の一部には木質梁71が露出しており、子ども達は木材を身近に感じる空間で学習したり遊んだりすることができる。
【0022】
このように形成される各学童保育室21、22同士は、
図4に示すように、幅員の狭い単なる廊下で接続されるのではなく、短手方向の距離L1が3500mm~4500mm程度ある第1ホール27によって接続されている。広い幅で形成された第1ホール27は通路としての機能だけでなく、子ども達の遊び場として使用することができ、それぞれの学童保育室で過ごす子ども達が相対向する別の学童保育室の子ども達と交流し易い構成となっている。
【0023】
図1に示すように第2木造棟3は、南北方向へ延びる区画壁W2を挟んで児童館5と支援センター6とに分かれている。児童館5は、
図6に示すように、北西に位置する遊戯室51、遊戯室51よりも東側に配置される集会室52、南東に位置する図書室53、図書室53の西側に並んで配置される第2エントランスホール54、第2事務室55、来館者用トイレ56、そしてこれら各室同士を結ぶ、又は児童館5と子育て支援センター6とを結ぶ東西方向へ細長な第2ホール57、から構成されており、また、遊戯室51と集会室52との間には第1中庭58が形成されている。そして児童館5に隣接する子育て支援センター6は、
図1に示すように、北側に配置され、幼児達が食事をするランチールーム61、親子トイレ62、第2倉庫63、ベビールーム64、そしてベビールーム64よりも南側に配置され、木製家具によって各空間ごとに仕切られた図書コーナー65、乳児コーナー66、遊戯コーナー67、によって構成されており、さらに、ランチルーム61と図書コーナー65との間には第2中庭68が形成されている。
【0024】
児童館5及び子育て支援センター6は、先述した各学童保育室21、22と同様、来館する子ども達が木材の温もりを身近に感じられるよう屋内外に木材を多用している。例えば
図6に示す児童館5においては、子ども達が簡単なスポーツを楽しむための遊戯室51、子ども達が放課後に創作活動を行う集会室52、地域住民の交流の中心となる図書室53、及びこれらの室同士を結ぶ第2ホール57の床仕上材が杉の無垢材となっており、また、図書室53、第2ホール57の天井の一部には木質梁71が露出している。特に、第2エントランスホール54に隣接し、子ども達や地域住民の行き来が多い図書室53は、木質柱4aが露出するなど温かみのある空間となっている。そして
図7及び
図8に示す子育て支援センター6においては、図書コーナー65、乳児コーナー66、遊戯コーナー67の床仕上材、幅木6a、各空間に面する開口部に設置された建具枠6bなど内装材に杉の無垢材を多用している。また隣合う各コーナー65、66、67間を複数の木製棚6cで仕切ったり、図書コーナー65に木製の本棚兼ベンチ6dを設置することによって木材の存在感を高めている。なお子育て支援センター6は、
図8に示す腰壁6fの見切り材や幅木6a、建具枠6b、及び各家具類などの角部を曲面仕上げとしており、来館した乳幼児が安全に施設を使用できるよう配慮した仕上げとなっている。
【0025】
さらに、
図7に示す子育て支援センター6の第2中庭68、図書コーナー65や遊戯コーナー67と行き来可能な南側の屋外遊技場9、及び
図6に示す児童館5の第1中庭58には、それぞれ隣接する室の床高さと同一の高さで木製のウッドデッキが設置されており、子ども達は屋外で遊ぶ際にも木材と自然に触れ合うことができる。
【0026】
このように形成される児童館5と子育て支援センター6とを結ぶ
図6の第2ホール57は、単なる通路ではなく来館者同士を繋ぐ交流の場として使用できるよう、先述した第1ホール27と同様、短手方向の距離L2を2500mm~4500mm程度と幅広としている。また
図1に示すように、第1ホール27及び第2ホール57は、耐火棟4を挟んで一直線上に配置され、且つ、対向する木造棟を広く見渡すことができるので、建築物1は、耐火棟4によって第1木造棟2及び第2木造棟3を緩やかに区切りつつも、各木造棟2、3の空間の流れを分断することなく結びつけて施設全体としての一体感を保持することができる。
【0027】
このように本願の建築物1は、防火区画となる耐火棟4によって第1木造棟2及び第2木造棟3同士を接続しているので、2つの木造棟の合計延床面積が建築基準法上厳しい耐火性能を求められる一定面積以上であっても、1つの木造棟の延床面積が一定面積以下であれば耐火建築物や準耐火建築物のような特別な耐火性能を有する建築物とする必要がない。したがって、建築物1を建設する際の施工費や部材制作費を効果的に抑えつつも、より規模の大きな木造施設を構築することができ、また露出させた木質構造材や木材を使用した内装仕上材、及び家具などを通じて子ども達に木資源への関心を高め、木育を促進することができる。なお、建築物1に使用される各木材の種類は特に限定されることはなく、上述した種類以外の木材を使用してもよい。
【0028】
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係る建築物は、より大規模な木造施設を構築し、木育を促進する場合に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 建築物
2 第1木造棟(一方の木造棟、学童保育施設)
27 第1ホール
3 第2木造棟(他方の木造棟)
4 耐火棟(接続棟)
4a 木質柱
5 児童館
57 第2ホール
6 子育て支援センター
71 木質梁
D3 第1出入口
D4 第2出入口