(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/143 20180101AFI20240730BHJP
F21V 29/76 20150101ALI20240730BHJP
F21V 29/503 20150101ALI20240730BHJP
F21S 41/37 20180101ALI20240730BHJP
F21V 17/00 20060101ALI20240730BHJP
F21V 29/83 20150101ALI20240730BHJP
F21S 41/24 20180101ALI20240730BHJP
F21S 43/237 20180101ALI20240730BHJP
F21S 41/25 20180101ALI20240730BHJP
F21W 102/135 20180101ALN20240730BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240730BHJP
F21W 102/16 20180101ALN20240730BHJP
F21W 103/55 20180101ALN20240730BHJP
【FI】
F21S41/143
F21V29/76
F21V29/503 100
F21S41/37
F21V17/00 400
F21V29/83
F21S41/24
F21S43/237
F21S41/25
F21W102:135
F21Y115:10
F21W102:16
F21W103:55
(21)【出願番号】P 2020050797
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】崎野 克郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 克彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英治
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-100304(JP,U)
【文献】特開2016-048625(JP,A)
【文献】特開2010-118241(JP,A)
【文献】特開2018-092883(JP,A)
【文献】特開2016-018643(JP,A)
【文献】特開2008-166145(JP,A)
【文献】特開2004-273353(JP,A)
【文献】特開2015-204232(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0047660(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0265793(US,A1)
【文献】特開2014-007049(JP,A)
【文献】特開2018-085217(JP,A)
【文献】特開2015-198019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/143
F21V 29/76
F21V 29/503
F21S 41/37
F21V 17/00
F21V 29/83
F21S 41/24
F21S 43/237
F21S 41/25
F21W 102/135
F21Y 115/10
F21W 102/16
F21W 103/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の照射パターンを形成する光を出射する主光源と、
前記主光源から出射された光を照射方向の前側に進行させて前記照射パターンを形成する光学部材と、
前記主光源からの熱を外部に逃がす放熱部材と、
前記主光源とは別体として設けられた副光源からの光を導く導光部材と、を備え、
前記放熱部材は、前記主光源が設けられた設置面を開口する開口部が設けられ、
前記導光部材は、前記開口部を通して前記副光源から前記設置面側へと光を案内
し、
前記導光部材は、前記副光源からの光を入射させる入射面と、前記設置面側へ向けて光を出射させる出射面と、を有し、
前記出射面は、前記設置面に沿って設けられ、
前記光学部材は、前記主光源から出射された光を前記照射方向の前側に投影させる投影レンズであり、
前記出射面は、前記主光源に向けて光を出射させることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
所定の照射パターンを形成する光を出射する主光源と、
前記主光源から出射された光を照射方向の前側に進行させて前記照射パターンを形成する光学部材と、
前記主光源からの熱を外部に逃がす放熱部材と、
前記主光源とは別体として設けられた副光源からの光を導く導光部材と、を備え、
前記放熱部材は、前記主光源が設けられた設置面を開口する開口部が設けられ、
前記導光部材は、前記開口部を通して前記副光源から前記設置面側へと光を案内し、
前記導光部材は、前記副光源からの光を入射させる入射面と、前記設置面側へ向けて光を出射させる出射面と、を有し、
前記出射面は、前記設置面に沿って設けられ
、
前記光学部材は、前記主光源から出射された光を前記照射方向の前側に反射させるリフレクタであり、
前記出射面は、前記リフレクタに向けて光を出射させることを特徴とす
る車両用灯具。
【請求項3】
前記導光部材は、前記開口部の近傍の第1固定部で前記設置面に固定されているとともに、前記主光源を挟んだ前記第1固定部とは反対側の第2固定部で前記設置面に固定されていることを特徴とする
請求項1または請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記開口部は、前記設置面の端部を切り欠いて形成されていることを特徴とする
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記開口部は、前記設置面を貫通して形成されていることを特徴とする請求項1から
請求項3までのいずれか1項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具は、所定の照射パターンを形成する灯具ユニットが備えるものがある。このような車両用灯具は、点灯時には灯具ユニットが明るく見え、非点灯時には走行灯具ユニットが暗く見えることとなり、点灯時と非点灯時とで見え方が変化してしまう。
【0003】
そこで、車両用灯具では、非点灯時であっても灯具ユニットを明るく見せるものが考えられている(例えば、特許文献1等参照)。この従来の車両用灯具は、すれ違い用配光パターンを形成するすれ違い灯具ユニットと、走行用配光パターンを形成する走行灯具ユニットと、を備えている。この従来の車両用灯具は、すれ違い灯具ユニットの光源からの光の一部を案内する案内リフレクタを設け、その光を走行灯具ユニットへと導いて副光源とすることで、非点灯時の走行灯具ユニットから照射方向の前側へと出射させる。このため、従来の車両用灯具は、走行灯具ユニットにおいて、非点灯時であっても副光源からの光により明るく見せることができ、点灯時と非点灯時とでの見え方の変化を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、従来の車両用灯具は、光源からの熱を外部に逃がす放熱部材が設けられており、その放熱部材の設置面に光源を設けている。このため、従来の車両用灯具は、放熱部材に対して設置面側とは異なる位置に副光源を設けようとすると、副光源からの光を設置面側へと案内する構成の複雑化や全体構成の大型化を招いてしまい、そのことを避けようとすると副光源の設置位置の自由度を抑制してしまう。
【0006】
本開示は、上記の事情に鑑みて為されたもので、複雑化や大型化を招くことなく副光源の設置位置の自由度を高めつつ、点灯時と非点灯時とでの見え方の変化を抑制することのできる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の車両用灯具は、所定の照射パターンを形成する光を出射する主光源と、前記主光源から出射された光を照射方向の前側に進行させて前記照射パターンを形成する光学部材と、前記主光源からの熱を外部に逃がす放熱部材と、前記主光源とは別体として設けられた副光源からの光を前記放熱部材において前記主光源が設けられた設置面側へと導く導光部材と、を備え、前記放熱部材は、前記設置面を開口する開口部が設けられ、前記導光部材は、前記開口部を通して前記副光源から前記設置面側へ向けて配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示の車両用灯具によれば、複雑化や大型化を招くことなく副光源の設置位置の自由度を高めつつ、点灯時と非点灯時とでの見え方の変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示に係る実施例1の車両用灯具の構成を示す説明図である。
【
図2】車両用灯具の構成を断面で示す説明図である。
【
図3】車両用灯具における放熱部材の周辺の構成を示す斜視図である。
【
図4】
図3の車両用灯具を出射方向前側から見た様子を示す説明図である。
【
図5】本開示に係る実施例2の車両用灯具を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る車両用灯具の各実施例について
図1から
図5を参照しつつ説明する。なお、
図2および
図5では、導光部材30、30Aの出射面35、35Aから出射された光が進行する様子を模式的に示しており、必ずしも実際の態様と一致するものではない。
【実施例1】
【0011】
車両用灯具10は、自動車等の車両の灯具として用いられるもので、例えば、ヘッドランプやフォグランプ等に用いられる。車両用灯具10は、
図1に示すように、所定の照射パターンとして走行用配光パターンを形成する走行灯具ユニット2を備えている。車両用灯具10は、車両の前部の左右両側で、ランプハウジングの開放された前端がアウターレンズで覆われて形成される灯室1に、上下方向用光軸調整機構や幅方向用光軸調整機構を介して設けられる。以下の説明では、車両用灯具10において、車両の直進時の進行方向であって光を照射する方向を照射方向(図面ではZとする)とし、車両に搭載された状態での鉛直方向を上下方向(図面ではYとする)とし、照射方向および上下方向に直交する方向を幅方向(図面ではXとする)とする。
【0012】
実施例1の車両用灯具10では、上縁にカットオフラインを有するすれ違い用配光パターンを形成するすれ違い灯具ユニット3が設けられている。このすれ違い灯具ユニット3は、実施例1では走行灯具ユニット2とともに車両用灯具10を構成して同じ灯室1に設けているが、車両用灯具10(走行灯具ユニット2)とは別体で設けてもよい。車両用灯具10は、すれ違い灯具ユニット3のみを点灯させてすれ違い用配光パターンを形成することで、すれ違い時の配光(所謂ロービーム)にできる。また、車両では、すれ違い灯具ユニット3と併せて走行灯具ユニット2も点灯させて、すれ違い用配光パターンの上端部に下端部を重ねて走行用配光パターンを形成することで、走行時の配光(所謂ハイビーム)にできる。
【0013】
次に、車両用灯具10の全体構成について説明する。車両用灯具10は、
図2に示すように、主光源11と放熱部材12と反射部材13と投影レンズ14とを備え、レンズ直射型(ダイレクトプロジェクタタイプ)の前照灯ユニットを構成する。
【0014】
主光源11は、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子で構成され、基板15に実装されている。その基板15は、放熱部材12の後述する設置面12cに固定されている。これにより、主光源11は、基板15を介して放熱部材12に位置決めされた状態で取り付けられて、光の出射光軸(それが伸びる出射方向Di)が照射方向と略一致される。実施例1では、照射方向の前側(すれ違い用配光パターンが形成される側)が出射方向Diの前側となる。この主光源11は、点灯制御回路から電力が基板15を介して供給されて適宜点灯される。主光源11は、一例として、基板15上で幅方向に複数の発光素子11aが整列されて構成されており(
図3、
図4参照)、各発光素子11aに個別に点灯制御回路からの電力が供給されることで、適宜一斉にまたは個別に点灯される。
【0015】
放熱部材12は、主光源11で発生する熱を外部に逃がす(放散させる)ヒートシンク部材であり、熱伝導性を有するアルミダイカストや樹脂で形成される。放熱部材12は、設置箇所12aと放熱フィン12bとを有する。設置箇所12aは、主光源11(その基板15)が設置される箇所であり、その出射方向Diに直交する平板状とされる。設置箇所12aでは、基板15を介して主光源11が設けられる面(出射方向Diの前側の面)を設置面12cとする。放熱フィン12bは、設置箇所12aから出射方向Diの後側へと突出して複数設けられ、設置箇所12aに設置された主光源11で発生した熱を外部に逃がす。基板15に実装された主光源11の上下方向の下側に反射部材13が設けられる。なお、実際の放熱部材12では、放熱フィン12bの他に設置箇所12aでも放熱しており、放熱フィン12bのみで放熱しているものではない。
【0016】
反射部材13は、主光源11の下方において、設置箇所12aから前方斜め下方に伸びて設けられ、上面が反射面13aとされている。反射面13aは、主光源11から出射された光の一部を投影レンズ14から上側へ向けて出射させるべく投影レンズ14へと反射させて、走行用配光パターンの一部を形成する。この反射面13aは、反射部材13の上面に表面処理が施されて形成されている。この表面処理は、形成する走行用配光パターンの一部をぼやけさせたり主に上下方向に拡散させたりするもので、光を拡散させつつ反射するように行われる。なお、表面処理は、形成する走行用配光パターンの一部に求められる大きさや形状や明るさ等に応じて、拡散の度合いや反射率を適宜設定すればよい。
【0017】
投影レンズ14は、基板15上における主光源11の近傍に、後側焦点が設定されている。投影レンズ14は、主光源11から出射された光を車両の前方へ投影して、走行用配光パターンを形成する。投影レンズ14は、レンズホルダに支持される。レンズホルダは、放熱部材12よりも熱伝導率が低い(熱抵抗が大きい)樹脂部材で構成され、主光源11や反射部材13に対して投影レンズ14を位置決めした状態で、放熱部材12に組み付けられる。
【0018】
次に、車両用灯具10の要部構成について説明する。車両用灯具10では、副光源20と、そこからの光を放熱部材12の設置面12c側へと導く導光部材30と、が設けられている。その副光源20は、主光源11とは別体として設置面12cとは異なる箇所に設けられたもので、放熱部材12の設置箇所12aに対して主光源11の出射方向Diの後側に設けられている。副光源20は、実施例1ではLED等の発光素子で構成されて外部基板21に実装されており、光の出射光軸が略主光源11の出射方向Diに沿うように配置され、点灯制御回路から電力が外部基板21を介して供給されて適宜点灯される。
【0019】
なお、副光源20は、設置面12c側へと導かれる光を出射するものであれば、他の構成でもよく、実施例1の構成に限定されない。そのとき、副光源20の出射光軸は、適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。他の一例として、すれ違い灯具ユニット3における光源からの光の一部を副光源20として用いることができる。この場合、すれ違い灯具ユニット3において、例えば、カットオフラインの形成のためにシェードにより遮光される光を用いれば、すれ違い用配光パターンに何らの影響を及ぼすことなく副光源20として利用できる。
【0020】
車両用灯具10では、
図3、
図4に示すように、導光部材30の設置のために、放熱部材12の設置箇所12aに開口部22が設けられている。この開口部22は、設置箇所12aに対して出射方向Diの後側に設けられた副光源20から、放熱部材12の設置面12c側へと至る経路の短縮を可能とするように、設置箇所12aを出射方向Diに貫通して設置面12cを開口する。実施例1の開口部22は、設置箇所12aにおいて、
図3、
図4を正面視して上下方向の中間位置における左側の端部を切り欠いた切欠部とされている。これに伴い、放熱部材12では、
図3に示すように、開口部22に対して出射方向Diの後側に配置空間12dが形成されている。この配置空間12dは、開口部22に対する出射方向Diの後側を、部分的に放熱フィン12bを設けていない箇所とすることにより形成されている。
【0021】
導光部材30は、副光源20から出射された光を設置面12c側へと導くもので、
図2から
図4に示すように、長尺な棒状とされている。この導光部材30は、光の透過を許す無色の透明な樹脂材料(透過部材)で形成されている。ここで、無色の透明な材料とは、副光源20から出射された光の色を変化させることなく透過させることをいう。
【0022】
導光部材30は、断面が略円形の長尺な棒状とされ、一端が入射部31とされ、他端が出射部32とされ、その中間が導光本体部33とされている。入射部31は、副光源20(その出射面)と対向された入射面34を有する。入射面34は、副光源20から出射された光を導光部材30の内部へと入射させるもので、実施例1では平坦な面としている。入射面34は、副光源20からの光を効率良く入射させるものであれば、レンズの形状は適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0023】
導光本体部33は、入射面34(入射部31)から入射された光を、全反射を利用することで外部へと出射させることなく自らが伸びる方向へと進行させて、出射部32へと導く。なお、導光部材30は、外周面に蒸着や塗装等によりアルミや銀等を接着させることで光を反射させるものとしてもよい。実施例1の導光本体部33は、入射部31(入射面34)から出射方向Diの前側に伸びており、放熱部材12の配置空間12dに配置されるとともに、開口部22を通した後に主光源11側に向けて湾曲されており、放熱部材12の設置面12c側へと伸びている。導光本体部33は、設置面12c側へと伸びる端部が出射部32に接続されている。このため、導光本体部33は、一端の入射部31(入射面34)から入射された光を、多端の出射部32へと進行させる。
【0024】
その出射部32は、主光源11に対して出射方向Diの前側で斜め上方であって、その主光源11が設けられた放熱部材12と投影レンズ14との間に設けられている。出射部32は、主光源11から出射された光が投影レンズ14へと入射することを遮ることのない位置で、設置面12cと平行とされて主光源11の複数の発光素子11aに沿って幅方向に伸びている。出射部32は、主光源11と対向する面が出射面35とされているとともに、その反対側の面に反射箇所36が設けられている。反射箇所36は、導光部材30が伸びる方向と直交する方向に延びる凹部および凸部が、導光部材30が伸びる方向で交互に並んで形成されている(
図3、
図4参照)。反射箇所36は、出射部32へと導かれた光を凹部および凸部の形状に従って全反射を利用して拡散しつつ出射面35側に反射する。なお、反射箇所36は、出射面35側に反射するものであれば、蒸着や塗装等によりアルミや銀等を接着させることで光を反射させてもよく、他の形状でもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0025】
このため、出射部32は、導光本体部33により導かれた光を反射箇所36で反射することで、出射面35からそこに対向する主光源11(各発光素子11a)へ向けて出射させる。これにより、導光部材30は、副光源20からの光で、主光源11すなわち基板15において主光源11が設けられた幅方向に伸びる領域全体を照明することができる。
【0026】
出射部32には、
図3、
図4に示すように、第1固定部37と第2固定部38とが設けられている。両固定部(37、38)は、出射部32を放熱部材12の設置箇所12a(設置面12c)へと固定するために設けられており、実施例1ではネジ部材39による固定を可能とする。第1固定部37は、開口部22の近傍、すなわち出射部32における導光本体部33側の端部に設けられている。第2固定部38は、出射部32の先端の近傍、すなわち出射部32における導光本体部33側の端部に設けられている。
【0027】
このため、出射部32は、第1固定部37と第2固定部38とが設置箇所12aに固定されることにより、主光源11から出射された光が投影レンズ14へと入射することを遮ることのない位置で、出射面35が両固定部(37、38)の間で主光源11(各発光素子11a)を架け渡す状態とされる。これにより、出射部32は、主光源11に対する出射面35の位置関係を適切なものにできるとともに、振動等が生じてもその位置関係を維持できる。
【0028】
また、導光部材30は、第1固定部37を開口部22の近傍に設けているので、配置空間12dに配置されて開口部22に通される導光本体部33の開口部22に対する位置関係を適切なものにでき、振動等が生じても導光本体部33の開口部22への接触を防止できる。
【0029】
この車両用灯具10は、次のように動作する。車両用灯具10は、点灯制御回路からの電力を基板15から主光源11に供給することで、主光源11(その各発光素子11a)を適宜点灯させる。これにより、車両用灯具10は、主光源11からの光を直接または反射部材13で反射した後に投影レンズ14で投影することで、走行用配光パターンを形成する。このとき、車両用灯具10は、すれ違い灯具ユニット3が点灯されることで、走行用配光パターンの下端部に部分的に重ねてすれ違い用配光パターンを形成でき、走行時の配光にできる。このため、車両用灯具10では、投影レンズ14が主光源11からの光を照射方向の前側に投影させて所定の照射パターンを形成する光学部材として機能し、投影レンズ14が照射方向の前側から見て発光する発光箇所となる。
【0030】
そして、車両用灯具10は、すれ違い灯具ユニット3のみが点灯されてすれ違い用配光パターンを形成する場面では、主光源11を消灯させるとともに、点灯制御回路からの電力を外部基板21から副光源20に供給して副光源20を点灯させる。すると、車両用灯具10は、副光源20からの光を、入射面34から導光部材30の内方へと入射させ、導光本体部33により出射部32へと導いて出射面35から主光源11へ向けて出射させる。これにより、車両用灯具10は、副光源20からの光で、主光源11を全体に亘り照明する。
【0031】
このため、車両用灯具10は、主光源11を点灯させていない場合であっても、副光源20からの光で主光源11を照明できる。ここで、車両用灯具10では、主光源11から出射された光を投影レンズ14で投影することで走行用配光パターンを形成するように設定されている。このため、車両用灯具10は、主光源11を点灯させている場合と比較して光量は低減するが、主光源11を全体に亘り照明することで、走行用配光パターンを形成しているときと略同じように、光を投影レンズ14で投影することができ、投影レンズ14を全体に明るく見せることができる。これにより、車両用灯具10は、主光源11を消灯している場合であっても、副光源20を点灯するだけで投影レンズ14を全体に明るくすることができ、被視認性を向上できるとともに意匠性(見た目)を向上できる。特に、車両用灯具10は、副光源20をすれ違い灯具ユニット3の光源からの光の一部としている場合には、主光源11の点灯の有無に拘らずすれ違い灯具ユニット3が点灯されているときに投影レンズ14を明るくできるので、すれ違い時の配光時と走行時の配光時との見た目を似たものにできる。
【0032】
ここで、従来の車両用灯具は、主光源の出射方向Diの後側に放熱部材が設けられているため、放熱部材を避けて副光源を設ける必要があるので、配置の自由度の低減を招いてしまう。または、従来の車両用灯具は、放熱部材を回避しつつ設置面側へと導くように導光部材を配置する必要があるので、回避させた導光部材の分だけ全体構成の大型化を招いてしまう。特に、従来の車両用灯具は、副光源としてすれ違い灯具ユニット3の光源からの光の一部を用いる場合には、すれ違い灯具ユニット3との配置関係に制限を生じさせてしまったり、導光部材を複雑な形状とさせてしまったりする虞がある。加えて、従来の車両用灯具は、光を内部に進行させて導く導光部材を用いる場合、意図しない箇所からの光の漏れを防ぐためには湾曲箇所の曲率を小さくする(湾曲度合いを緩やかにする)必要がある。すると、従来の車両用灯具は、曲率を小さくした導光部材で放熱部材を回避させると、導光部材が大きくはみ出すことで、全体構成を大型化させてしまう。
【0033】
これに対して、車両用灯具10は、放熱部材12の設置箇所12aに設置面12cを開口する開口部22を設けている。このため、車両用灯具10は、設置箇所12aに対して出射方向Diの後側に副光源20を設けても、開口部22を通して導光部材30を配置することで、副光源20からの光を設置面12c側へと導くことができる。このため、車両用灯具10は、副光源20の配置の自由度の低減を抑制できるとともに、導光部材30を効率良く設けることができて全体構成の大型化を抑制できる。特に、車両用灯具10は、放熱部材12における開口部22の出射方向Diの後側に配置空間12dを設けているので、より効率良く導光部材30を設けることができる。加えて、車両用灯具10は、光を内部に進行させて導く導光部材30を用いているが、その導光本体部33の湾曲箇所の曲率を小さくしても、開口部22を通すことで導光部材30が大きくはみ出すことを防止でき、光の利用効率を高めつつ全体構成の大型化を抑制できる。さらに、車両用灯具10は、入射面34から内部に進行させた光を出射面35から出射させる導光部材30を用いているので、副光源20からの光の進行(光路)が他の部材に遮られることを防止できる。加えて、車両用灯具10は、副光源20をすれ違い灯具ユニット3の光源からの光の一部としている場合には、すれ違い灯具ユニット3に対する位置関係の自由度を高めることができ、全体としてのデザインの自由度を確保できる。
【0034】
実施例1の車両用灯具10は、以下の各作用効果を得ることができる。
【0035】
車両用灯具10は、設置面12cを開口する開口部22を放熱部材12に設け、開口部22を通して副光源20から設置面12c側へと光を案内する導光部材30を配置している。このため、車両用灯具10は、主光源11を消灯しても導光部材30により副光源20からの光で設置面12c側を照明できるとともに、副光源20と放熱部材12との位置関係に拘らず導光部材30を効率良く設けることができる。よって、車両用灯具10は、複雑化や大型化を招くことなく副光源20の設置位置の自由度を高めることができ、点灯時と非点灯時とでの見え方の変化を抑制できる。
【0036】
車両用灯具10は、導光部材30の出射面35を、設置面12cに沿って設けている。このため、車両用灯具10は、出射面35の全域に亘って主光源11との間隔を略等しいものにでき、出射面35における出射箇所の変化に拘らず副光源20からの光を略等しく設置面12c側へと案内でき、非点灯時であっても点灯時と略同様に明るく見せることができる。
【0037】
車両用灯具10は、光学部材として主光源11から出射された光を照射方向の前側に投影させる投影レンズ14を用いており、出射面35が主光源11に向けて光を出射させる。このため、車両用灯具10は、所定の配光パターン(実施例1では走行用配光パターン)を形成しているときと略同じように、光を投影レンズ14で投影することができ、投影レンズ14を全体に明るく見せることができる。
【0038】
車両用灯具10は、開口部22の近傍の第1固定部37で設置面12cに固定されているとともに、主光源11を挟んだ第1固定部37とは反対側の第2固定部38で設置面12cに固定されて、導光部材30を設けている。このため、車両用灯具10は、主光源11に対する導光部材30すなわち出射面35の位置関係を適切なものにできる、換言すると、主光源11に対して出射面35を精度良く位置決めすることができるので、簡易な構成としつつ副光源20からの光を導くことができる。
【0039】
車両用灯具10は、設置面12c(設置箇所12a)の端部を切り欠いて開口部22を形成している。このため、車両用灯具10は、切り欠くことで開放された側方から導光部材30を開口部22内へと配置できるので、組み付けを容易なものにできる。
【0040】
したがって、本開示に係る車両用灯具10としての実施例1の車両用灯具10は、複雑化や大型化を招くことなく副光源20の設置位置の自由度を高めつつ、点灯時と非点灯時とでの見え方の変化を抑制することができる。
【0041】
なお、実施例1では、主光源11を照明するように、副光源20からの光を導光部材30で案内している。しかしながら、導光部材30は、副光源20からの光を、放熱部材12において主光源11が設けられた設置面12c側へと案内するものであれば、例えば、直接投影レンズ14から出射させてもよく、他の箇所を照明させてもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0042】
また、実施例1では、車両用灯具10が、走行用配光パターンを形成する走行灯具ユニット2として構成されている。しかしながら、車両用灯具10は、主光源11からの光で所定の配光パターンを形成するものであれば、すれ違い用配光パターンやDRL(昼間走行灯)としての配光パターン等のように他の配光パターンであってもよく、実施例1の構成に限定されない。
【実施例2】
【0043】
次に、本開示の一実施形態である実施例2の車両用灯具10Aについて、
図5を用いて説明する。車両用灯具10Aは、照射の方式が車両用灯具10とは異なる例である。この車両用灯具10Aは、実施例1の車両用灯具10と基本的な概念および構成が同様であるので、等しい構成の個所には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0044】
実施例2の車両用灯具10Aは、車両用灯具10と同様に、ランプハウジングとアウターレンズとで形成される灯室1に、上下方向用光軸調整機構や左右方向用光軸調整機構を介して設けられる。車両用灯具10Aは、
図5に示すように、主光源11Aと放熱部材12Aとリフレクタ16とシェード17とを備え、レフレクタ型の前照灯ユニットを構成する。リフレクタ16は、主光源11Aを第1焦点とする楕円を基本とした自由曲面の反射面16aを有し、主光源11Aからの光を反射面16aで前方へと反射させて所定の配光パターンを形成する。この所定の配光パターンは、実施例1と同様に走行用配光パターンであってもよく、DRL(昼間走行灯)としての配光パターン等のように他の配光パターンであってもよい。
【0045】
主光源11Aは、LED等の複数の発光素子11aAが幅方向に並べられて構成され(
図5では正面視して手前側の1つのみ図示している)、基板15Aに実装されている。その基板15Aは、放熱部材12Aの設置面12cAに固定され、主光源11Aの光の出射光軸(それが伸びる出射方向Di)を略上下方向の下側としている。実施例2では、上下方向の下側が出射方向Diの前側となる。この主光源11Aは、点灯制御回路から電力が基板15Aを介して供給されて適宜点灯される。
【0046】
放熱部材12Aは、熱を外部に放射させる放熱部材であり、上下方向に直交する板状の金属材料が湾曲されて構成され、設置箇所12aAと放熱箇所12eAとを有する。設置箇所12aAは、主光源11Aが設けられる箇所であり、放熱部材12Aにおいて上下方向の下側の面が、基板15Aを介して主光源11Aが設けられる設置面12cAとなる。
【0047】
放熱箇所12eAは、放熱部材12Aにおいて熱の放熱のために設けられた箇所であり、照射方向の後側で設置箇所12aAと連続されており、上下方向の下側へ向けて湾曲されている。放熱箇所12eAでは、照射方向の後側へ突出させた放熱フィンを適宜設けてもよい。放熱箇所12eAは、リフレクタ16の外側(後側であって光を制御する範囲外)に位置され、設置箇所12aAの熱を放散する。なお、放熱部材12Aでは、設置箇所12aAの上下方向の上側に突出させて適宜放熱フィンを設けてもよく、実施例2の構成に限定されない。
【0048】
この車両用灯具10Aでは、導光部材30Aの設置のために、放熱部材12Aの設置箇所12aAに出射方向Diに貫通する貫通孔とされた開口部22Aが設けられている。その導光部材30Aは、副光源20Aからの光を放熱部材12Aの設置面12cA側へと導く。その副光源20Aは、設置箇所12aAに対して、出射方向Diの後側に設けられている。副光源20Aは、実施例1ではLED等の発光素子で構成されて外部基板21Aに実装されており、点灯制御回路から電力が外部基板21Aを介して供給されて適宜点灯される。なお、副光源20は、設置面12c側へと導かれる光を出射するものであれば、構成等は適宜設定すればよく、実施例2の構成に限定されない。
【0049】
導光部材30Aは、一端の入射部31Aの入射面34Aが副光源20Aと対向され、他端の出射部32Aが開口部22Aの近傍で設置箇所12aAの設置面12cA側に配置されている。その出射部32Aは、主光源11Aの整列された複数の発光素子11aAに沿って幅方向に伸びており、設置面12cAと平行とされている。出射部32Aでは、出射面35Aがリフレクタ16の反射面16aへ向けられているとともに、反射箇所36Aが反射面16aとは反対側に位置されている。導光本体部33Aは、副光源20Aに対向された入射部31Aから、開口部22Aを通して、出射面35Aが反射面16aに向けられた出射部32Aへと伸びるものとされている。
【0050】
シェード17は、設置面12cA側に配置された出射部32Aに対して、照射方向の前側に設けられている。シェード17は、略上下方向に伸びる板状とされており、外方すなわち照射方向の前側から車両用灯具10Aを見た際に出射部32Aが見えることを防止する。シェード17は、主光源11Aや出射部32Aからの光がリフレクタ16の反射面16aで反射されてアウターレンズから出射させることを遮ることのない位置および大きさとされている。
【0051】
この車両用灯具10Aは、点灯制御回路からの電力が供給されて主光源11Aが適宜点灯される。すると、車両用灯具10Aは、主光源11Aからの光をリフレクタ16の反射面16aで前方へと反射させてアウターレンズから出射させることで、所定の配光パターンとして車両の前方を照射する。このため、車両用灯具10Aでは、リフレクタ16が主光源11Aからの光を照射方向の前側に反射させて所定の照射パターンを形成する光学部材として機能し、反射面16aが照射方向の前側から見て発光する発光箇所となる。
【0052】
そして、車両用灯具10Aは、副光源20Aからの光を導光部材30Aで導いて、出射面35Aからそこに対向するリフレクタ16(反射面16a)へ向けて出射させる。これにより、車両用灯具10Aは、副光源20Aからの光で、反射面16aにおいて主光源11Aからの光が反射される領域全体を照明できる。ここで、車両用灯具10Aでは、主光源11Aから出射された光をリフレクタ16(反射面16a)で反射することで所定の配光パターンを形成するように設定されている。このため、車両用灯具10Aは、主光源11Aを点灯させていない場合であっても、副光源20Aからの光で反射面16aを照明できるので、所定の配光パターンを形成しているときと略同じように、反射面16aを全体に明るく見せることができる。これにより、車両用灯具10Aは、リフレクタ16(反射面16a)で反射させて所定の配光パターンを形成する方式であっても、簡易な構成で副光源20Aの配置の自由度の低減や全体構成の大型化を抑制しつつ、主光源11Aの点灯時と非点灯時との見た目を似たものにできる。
【0053】
実施例2の車両用灯具10Aは、以下の各作用効果を得ることができる。この車両用灯具10Aは、基本的に実施例1の車両用灯具10と同様の構成であるので、実施例1と同様の効果を得られる。
【0054】
加えて、車両用灯具10Aは、光学部材として主光源11から出射された光を照射方向の前側に反射させるリフレクタ16を用いており、出射面35がリフレクタ16に向けて光を出射させる。このため、車両用灯具10は、所定の配光パターンを形成しているときと略同じように、光をリフレクタ16で反射させることができ、リフレクタ16(その反射面16a)を全体に明るく見せることができる。
【0055】
また、車両用灯具10Aは、設置面12cA(設置箇所12aA)貫通して開口部22Aを形成している。このため、車両用灯具10は、副光源20Aや出射面35からの光で照射する位置に応じた適切な位置に開口部22Aを設けることができ、全体構成をより簡易なものにできる。
【0056】
したがって、本開示に係る車両用灯具としての実施例2の車両用灯具10Aは、複雑化や大型化を招くことなく副光源20Aの設置位置の自由度を高めつつ、点灯時と非点灯時とでの見え方の変化を抑制することができる。
【0057】
なお、実施例2では、リフレクタ16の反射面16aを照明するように、副光源20Aからの光を導光部材30Aで案内している。しかしながら、導光部材30Aは、副光源20Aからの光を、放熱部材12Aにおいて主光源11Aが設けられた設置面12cA側へと案内するものであれば、例えば、直接アウターレンズから出射させてもよく、他の箇所を照明させてもよく、実施例2の構成に限定されない。
【0058】
以上、本開示の車両用灯具を各実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については各実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0059】
なお、車両用灯具は、実施例1ではレンズ直射型として設置面12c(設置箇所12a)の端部を切り欠いて開口部22を形成し、実施例2ではリフレクタ型として設置面12cA(設置箇所12aA)を貫通させて開口部22Aを形成している。しかしながら、レンズ直射型に対して設置面を貫通させた開口部を設けてもよく、リフレクタ型に対して設置面の端部を切り欠いた開口部を設けてもよく、各実施例の構成に限定されない。
【0060】
また、各実施例では、主光源11、11Aが実装された基板15、15Aとは別体として放熱部材12、12Aを設けている。しかしながら、放熱部材は、主光源からの熱を外部に逃がすものであれば、基板であってもよく、他の部材であってもよく、各実施例の構成に限定されない。
【0061】
さらに、各実施例では、入射面34から内部に進行させた光を出射面35から出射させる導光部材30を用いている。しかしながら、導光部材は、副光源からの光を放熱部材における設置面側へと案内するものであって、設置面を開口する開口部を通すものであれば、他の構成でもよく、各実施例の構成に限定されない。
【符号の説明】
【0062】
10 車両用灯具 11 主光源 12 放熱部材 12c 設置面 14 (光学部材の一例としての)投影レンズ 16 (光学部材の一例としての)リフレクタ 22 開口部 30 導光部材 34 入射面 35 出射面 37 第1固定部 38 第2固定部