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特許7528491危険運転警告装置、危険運転警告システム、及び危険運転警告方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】危険運転警告装置、危険運転警告システム、及び危険運転警告方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240730BHJP
   G08B 21/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G08G1/16 F
G08B21/00 H
G08B21/00 J
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020052864
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021152749
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】湯舟 秀太
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-205773(JP,A)
【文献】特開2019-199176(JP,A)
【文献】特開2020-024580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 60/00
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が、該自車両の周辺を走行する他車両に対して煽り行為を行っていることを警告する危険運転警告装置であって、
前記自車両の走行情報、前記自車両の運転者の生体情報、前記自車両の運転者の表情、のうちの少なくとも一つを含む自車両情報を取得する自車両情報取得部と、
無線通信により、前記他車両が前記自車両から煽り行為を受けている可能性の度合いを示す煽られ度を取得する通信部と、
前記自車両情報に基づいて、前記自車両が前記他車両に対して煽り行為を行っている可能性の度合いを示す煽り度を算出する煽り度算出部と、
前記煽られ度、及び前記煽り度に基づいて、前記自車両が前記他車両に対して煽り行為を行っているか否かを含む危険度を求める危険度判断部と、
前記煽られ度を所定の段階に区分した前記危険度の第1の評価値が所定以上の際に、前記煽り度を所定の段階に区分した前記危険度の第2の評価値に応じた警告の内容を警告する提示部と、
を備えたことを特徴とする危険運転警告装置。
【請求項2】
自車両が、該自車両の周辺を走行する他車両に対して煽り行為を行っていることを警告する危険運転警告装置であって、
前記自車両の走行情報、前記自車両の運転者の生体情報、前記自車両の運転者の表情、のうちの少なくとも一つを含む自車両情報を取得する自車両情報取得部と、
無線通信により、前記他車両の走行情報、前記他車両の運転者の生体情報、前記他車両の運転者の表情、のうちの少なくとも一つを含む他車両情報を取得する通信部と、
前記自車両情報に基づいて、前記自車両が前記他車両に対して前記煽り行為を行っている可能性の度合いを示す煽り度を算出する煽り度算出部と、
前記他車両情報に基づいて、前記他車両が前記自車両から前記煽り行為を受けている可能性の度合いを示す煽られ度を算出する煽られ度算出部と、
前記煽られ度、及び前記煽り度に基づいて、前記自車両が前記他車両に対して前記煽り行為を行っているか否かを含む危険度を求める危険度判断部と、
前記煽られ度を所定の段階に区分した前記危険度の第1の評価値が所定以上の際に、前記煽り度を所定の段階に区分した前記危険度の第2の評価値に応じた警告の内容を警告する提示部と、
を備えたことを特徴とする危険運転警告装置。
【請求項3】
前記自車両情報は更に、前記自車両の車種の情報、違反履歴の情報、事故履歴の情報、前記自車両が走行する車線情報のうちの少なくとも一つを含むこと
を特徴とする請求項1または2に記載の危険運転警告装置。
【請求項4】
前記他車両情報は更に、前記他車両の車種の情報、前記車両が走行する車線情報のうちの少なくとも一つを含むこと
を特徴とする請求項2に記載の危険運転警告装置。
【請求項5】
前記走行情報は、車両の速度、単位時間内の急加速の回数、急加速の度合い、脇見運転の頻度、及び単位時間当たりの急ハンドル回数のうちの少なくとも一つを含み、前記生体情報は、運転者の心拍数、呼吸数、及び血圧のうちの少なくとも一つを含むこと
を特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の危険運転警告装置。
【請求項6】
自車両に搭載された自車両装置と、前記自車両の周辺を走行する他車両に搭載された他車両装置、及び前記自車両装置と前記他車両装置にネットワークを経由して接続されたサーバと、を備え、前記自車両が、前記他車両に対して煽り行為を行っていることを警告する危険運転警告システムであって、
前記自車両装置は、
前記自車両の走行情報、前記自車両の運転者の生体情報、前記自車両の運転者の表情のうちの少なくとも一つを含む自車両情報を取得する自車両情報取得部と、
ネットワークを経由して前記サーバまたは前記他車両装置との間の通信を行う自車両側通信部と、を備え、
前記自車両装置及び前記サーバの少なくとも一方は、
前記自車両情報に基づいて、前記自車両が前記他車両に対して煽り行為を行っている可能性の度合いを示す煽り度を算出する煽り度算出部を備え、
前記他車両装置は、
前記他車両の走行情報、前記他車両の運転者の生体情報、前記他車両の運転者の表情のうちの少なくとも一つを含む他車両情報を取得する他車両情報取得部と、
前記ネットワークを経由して前記サーバまたは前記自車両装置との間の通信を行う他車両側通信部と、を備え、
前記他車両装置及び前記サーバの少なくとも一方は、
前記他車両情報に基づいて、前記他車両が前記自車両から煽り行為を受けている可能性の度合いを示す煽られ度を算出する煽られ度算出部を備え、
前記自車両装置は更に、
前記煽り度、及び煽られ度に基づいて、前記自車両が前記他車両に対して煽り行為を行っているか否かを含む危険度を求める危険度判断部と、
前記煽られ度を所定の段階に区分した前記危険度の第1の評価値が所定以上の際に、前記煽り度を所定の段階に区分した前記危険度の第2の評価値に応じた警告の内容を前記自車両にて警告する提示部と、
を備えたことを特徴とする危険運転警告システム。
【請求項7】
前記自車両情報は、前記自車両の車種の情報、違反履歴の情報、事故履歴の情報、前記自車両が走行する車線情報のうちの少なくとも一つを含むこと
を特徴とする請求項6に記載の危険運転警告システム。
【請求項8】
前記他車両情報は、前記他車両の車種の情報、前記車両が走行する車線情報のうちの少なくとも一つを含むこと
を特徴とする請求項6または7に記載の危険運転警告システム。
【請求項9】
前記走行情報は、車両の速度、単位時間内の急加速の回数、急加速の度合い、脇見運転の頻度、及び単位時間当たりの急ハンドル回数のうちの少なくとも一つを含み、前記生体情報は、運転者の心拍数、呼吸数、及び血圧のうちの少なくとも一つを含むこと
を特徴とする請求項6~8のいずれか1項に記載の危険運転警告システム。
【請求項10】
自車両が、該自車両の周辺を走行する他車両対して煽り行為を行っていることを警告する危険運転警告方法であって、
前記自車両にて、自車両の走行情報、前記自車両の運転者の生体情報、前記自車両の運転者の表情のうちの少なくとも一つを含む自車両情報を取得するステップと、
前記自車両情報に基づいて、前記自車両が前記他車両に対して煽り行為を行っている可能性の度合いを示す煽り度を算出するステップと、
前記他車両の走行情報、前記他車両の運転者の生体情報、前記他車両の運転者の表情のうちの少なくとも一つを含む他車両情報を取得するステップと、
前記他車両情報に基づいて、前記他車両が前記自車両から煽り行為を受けている可能性の度合いを示す煽られ度を算出するステップと、
前記煽り度、及び前記煽られ度に基づいて、前記自車両が前記他車両に対して煽り行為を行っているか否かを含む危険度を求めるステップと、
前記煽られ度を所定の段階に区分した前記危険度の第1の評価値が所定以上の際に、前記煽り度を所定の段階に区分した前記危険度の第2の評価値に応じた警告の内容を前記自車両て警告するステップと、
危険運転警告システムが実行することを特徴とする危険運転警告方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、危険運転警告装置、危険運転警告システム、及び危険運転警告方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両の運転時に、周辺を走行する他車両から急な割り込み、急な減速、異常接近などの危険行為(以下、「煽り行為」という)を受けることが社会問題化している。このような煽り行為を受けていることは、自車両の安全な運転を確保する上で、自車両の運転者に迅速に通知することが望ましい。他方、自車両の運転者が無意識、或いは感情の昂ぶりなどにより、他車両に対して煽り行為を行ってしまうことがある。このような場合においても、自車両の運転者に警告することが望ましい。
【0003】
このような技術に関連する発明として、特許文献1には運転者の心理状態を総合的に判断し、その判断結果に基づいた車両制御を実施する技術が開示されている。しかし、特許文献1に開示された技術は、自車両、或いは他車両が煽り行為を行っていることを警告するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-70965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、特許文献1には、運転者の心理状態を総合的に判断して、車両制御を実施することが開示されているものの、自車両、或いは他車両が煽り行為を行っていることを警告するものではない。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、自車両が、該自車両の周囲を走行する他車両に対して煽り行為を行っていることを通知することが可能な危険運転警告装置、危険運転警告システム、及び危険運転警告方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る第1の危険運転警告装置は、自車両が、該自車両の周辺を走行する他車両に対して煽り行為を行っていることを警告する危険運転警告装置であって、前記自車両の走行情報、前記自車両の運転者の生体情報、前記自車両の運転者の表情、のうちの少なくとも一つを含む自車両情報を取得する自車両情報取得部と、無線通信により、前記他車両が前記自車両から煽り行為を受けている可能性の度合いを示す煽られ度を取得する通信部と、前記自車両情報に基づいて、前記自車両が前記他車両に対して煽り行為を行っている可能性の度合いを示す煽り度を算出する煽り度算出部と、前記煽られ度、及び前記煽り度に基づいて、前記自車両が前記他車両に対して煽り行為を行っているか否かを含む危険度を求める危険度判断部と、前記煽られ度を所定の段階に区分した前記危険度の第1の評価値が所定以上の際に、前記煽り度を所定の段階に区分した前記危険度の第2の評価値に応じた警告の内容を警告する提示部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る第2の危険運転警告装置は、自車両が、該自車両の周辺を走行する他車両に対して煽り行為を行っていることを警告する危険運転警告装置であって、前記自車両の走行情報、前記自車両の運転者の生体情報、前記自車両の運転者の表情、のうちの少なくとも一つを含む自車両情報を取得する自車両情報取得部と、無線通信により、前記他車両の走行情報、前記他車両の運転者の生体情報、前記他車両の運転者の表情、のうちの少なくとも一つを含む他車両情報を取得する通信部と、前記自車両情報に基づいて、前記自車両が前記他車両に対して前記煽り行為を行っている可能性の度合いを示す煽り度を算出する煽り度算出部と、前記他車両情報に基づいて、前記他車両が前記自車両から前記煽り行為を受けている可能性の度合いを示す煽られ度を算出する煽られ度算出部と、前記煽られ度、及び前記煽り度に基づいて、前記自車両が前記他車両に対して前記煽り行為を行っているか否かを含む危険度を求める危険度判断部と、前記煽られ度を所定の段階に区分した前記危険度の第1の評価値が所定以上の際に、前記煽り度を所定の段階に区分した前記危険度の第2の評価値に応じた警告の内容を警告する提示部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る危険運転警告システムは、自車両に搭載された自車両装置と、前記自車両の周辺を走行する他車両に搭載された他車両装置、及び前記自車両装置と前記他車両装置にネットワークを経由して接続されたサーバと、を備え、前記自車両が、前記他車両に対して煽り行為を行っていることを警告する危険運転警告システムであって、前記自車両装置は、前記自車両の走行情報、前記自車両の運転者の生体情報、前記自車両の運転者の表情のうちの少なくとも一つを含む自車両情報を取得する自車両情報取得部と、ネットワークを経由して前記サーバまたは前記他車両装置との間の通信を行う自車両側通信部と、を備え、前記自車両装置及び前記サーバの少なくとも一方は、前記自車両情報に基づいて、前記自車両が前記他車両に対して煽り行為を行っている可能性の度合いを示す煽り度を算出する煽り度算出部を備え、前記他車両装置は、前記他車両の走行情報、前記他車両の運転者の生体情報、前記他車両の運転者の表情のうちの少なくとも一つを含む他車両情報を取得する他車両情報取得部と、前記ネットワークを経由して前記サーバまたは前記自車両装置との間の通信を行う他車両側通信部と、を備え、前記他車両装置及び前記サーバの少なくとも一方は、前記他車両情報に基づいて、前記他車両が前記自車両から煽り行為を受けている可能性の度合いを示す煽られ度を算出する煽られ度算出部を備え、前記自車両装置は更に、前記煽り度、及び煽られ度に基づいて、前記自車両が前記他車両に対して煽り行為を行っているか否かを含む危険度を求める危険度判断部と、前記煽られ度を所定の段階に区分した前記危険度の第1の評価値が所定以上の際に、前記煽り度を所定の段階に区分した前記危険度の第2の評価値に応じた警告の内容を前記自車両にて警告する提示部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る危険運転警告方法は、自車両が、該自車両の周辺を走行する他車両対して煽り行為を行っていることを警告する危険運転警告方法であって、前記自車両にて、自車両の走行情報、前記自車両の運転者の生体情報、前記自車両の運転者の表情のうちの少なくとも一つを含む自車両情報を取得するステップと、前記自車両情報に基づいて、前記自車両が前記他車両に対して煽り行為を行っている可能性の度合いを示す煽り度を算出するステップと、前記他車両の走行情報、前記他車両の運転者の生体情報、前記他車両の運転者の表情のうちの少なくとも一つを含む他車両情報を取得するステップと、前記他車両情報に基づいて、前記他車両が前記自車両から煽り行為を受けている可能性の度合いを示す煽られ度を算出するステップと、前記煽り度、及び前記煽られ度に基づいて、前記自車両が前記他車両に対して煽り行為を行っているか否かを含む危険度を求めるステップと、前記煽られ度を所定の段階に区分した前記危険度の第1の評価値が所定以上の際に、前記煽り度を所定の段階に区分した前記危険度の第2の評価値に応じた警告の内容を前記自車両て警告するステップと、を危険運転警告システムが実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、自車両が、該自車両の周囲を走行する他車両に対して煽り行為を行っていることを通知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施形態に係る危険運転警告システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る危険運転警告システムに搭載される自車両装置の詳細な構成を示すブロック図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る危険運転警告システムに搭載される他車両装置の詳細な構成を示すブロック図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る危険運転警告システムに搭載されるサーバの詳細な構成を示すブロック図である。
図5A図5Aは、煽られ度対応テーブルTb1に設定されている生体情報テーブルを示す説明図である。
図5B図5Bは、煽られ度対応テーブルTb1に設定されている車両情報テーブルを示す説明図である。
図6A図6Aは、煽り度対応テーブルTb2に設定されている生体情報テーブルを示す説明図である。
図6B図6Bは、煽り度対応テーブルTb2に設定されている車両情報テーブルを示す説明図である。
図7A図7Aは、煽られ度と評価値との関係を示す第1評価値テーブルを示す説明図である。
図7B図7Bは、煽り度と評価値との関係を示す第2評価値テーブルを示す説明図である。
図8A図8Aは、煽り行為を受けている車両に警告する内容と評価値との対応を示す説明図である。
図8B図8Bは、煽り行為を行っている車両に警告する内容と評価値との対応を示す説明図である。
図9図9は、本発明の第1実施形態に係る危険運転警告システムの処理手順を示すフローチャートである。
図10図10は、本発明の第1実施形態の第2変形例に係る危険運転警告システムの処理手順を示すフローチャートである。
図11図11は、本発明の第2実施形態に係る危険運転警告システムの処理手順を示すフローチャートである。
図12図12は、本発明の第2実施形態の第2変形例に係る危険運転警告システムの処理手順を示すフローチャートである。
図13図13は、本発明の第3実施形態に係る危険運転警告システムの処理手順を示すフローチャートである。
図14図14は、本発明の第3実施形態の第2変形例に係る危険運転警告システムの処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
[第1実施形態の説明]
図1は、本発明の実施形態に係る危険運転警告システムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、実施形態に係る危険運転警告システム101は、自車両VAの走行中において、他車両VBから煽り行為を受けていることや、他車両VBに対して煽り行為を行っていることを警告するシステムである。危険運転警告システム101は、自車両VAに搭載される自車両装置1A(危険運転警告装置)と、自車両VAの前後、左右などの周辺を走行する一または複数の他車両VBに搭載される他車両装置1Bと、自車両装置1A及び他車両装置1Bとの間でネットワーク4を経由して接続されるサーバ3と、を備えている。自車両装置1Aと他車両装置1Bはサーバ3を経由して無線通信により接続されている。
【0015】
図2は、自車両装置1Aの詳細な構成を示すブロック図である。以下、図2を参照して自車両装置1Aの構成について説明する。図2に示すように、自車両装置1Aは、制御器11Aと、カメラ部12Aと、生体情報センサ13Aと、走行情報センサ14Aと、レーザレーダ15Aと、を備えている。
【0016】
カメラ部12Aは、自車両VAの周囲画像を撮像する車外カメラ121Aと、自車両VAの運転者の顔画像を撮像する車内カメラ122Aと、を備えている。
【0017】
車外カメラ121Aは、例えば、自車両VAの前部、後部、及び左右の側部に設置され、該自車両VAの周囲を撮像する。車外カメラ121Aは、撮像した画像データを制御器11Aに送信する。車外カメラ121Aとして、光学カメラ、CCD(Charge-Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)などを使用することができる。自車両VAが自動運転車両である場合には、車外カメラ121Aを、自動運転で使用する周囲画像の撮像用のカメラと兼用してもよい。
【0018】
車内カメラ122Aは、例えば自車両VAのフロントガラス上部或いはインパネ近傍に設置され、運転者の顔画像を撮像する。車内カメラ122Aは、撮像した画像データを制御器11Aに送信する。車内カメラ122Aとして、光学カメラ、CCD、CMOSなどを使用することができる。
【0019】
生体情報センサ13Aは、自車両の運転者の各種生体情報を検出する。生体情報センサ13Aの具体例として、運転者の単位時間当たりの心拍数を測定する心拍数センサ、単位時間当たりの呼吸数を測定する呼吸数センサ、及び、運転者の血圧を測定する血圧センサを用いることができる。生体情報センサ13Aで測定された情報、即ち、心拍数、呼吸数、血圧の情報は、制御器11Aに送信される。心拍数、呼吸数、血圧の測定は、例えば、車両の座席に埋め込んだセンサを用いて、運転者の人体に非接触で検出する。
【0020】
走行情報センサ14Aは、例えば、自車両VAに搭載される速度センサ、及び加速度センサであり、検出した速度、加速度の情報を制御器11Aに送信する。走行情報センサ14Aはまた、自車両VAに搭載されるGPS受信機より、自車両VAが走行する走行路の情報、車線の情報を取得する。具体的に、自車両VAが2車線以上の走行路を走行する場合に、自車両VAが走行する車線が走行車線であるか、或いは追い越し車線であるかの情報を取得する。走行する車線の情報を制御器11Aに送信する。
【0021】
車外カメラ121A、車内カメラ122A、生体情報センサ13A、走行情報センサ14A、及びレーザレーダ15Aは、自車両情報を取得する自車両情報取得部の一例である。
【0022】
レーザレーダ15Aは、例えば自車両の前側、後側に取り付けられるライダー(Laser Imaging Detection and Ranging)である。レーザレーダ15Aは、自車両VAの前方及び後方に向けてレーザを照射し、前方車両、後方車両で反射したレーザを受信して、先行車両との車間距離、及び、後続車両との車間距離を測定する。レーザレーダ15Aは、検出した車間距離の情報を制御器11Aに送信する。
【0023】
制御器11Aは、演算処理部31Aと、通信部32A(自車両側通信部)と、提示部33Aと、を備えている。制御器11Aは、例えば、中央演算ユニット(CPU)や、RAM、ROM、ハードディスク等の記憶手段からなる一体型のコンピュータとして構成することができる。
【0024】
演算処理部31Aは、画像認識部311Aと、危険度判断部312Aと、煽られ度算出部313Aと、煽り度算出部314Aと、記憶部315Aと、を備えている。
【0025】
画像認識部311Aは、車外カメラ121Aで撮像された自車両VAの周囲画像に基づいて、自車両VAの前側、後側、右側、左側の各方向に存在する他車両VBの動作を認識する。
【0026】
画像認識部311Aはまた、車内カメラ122Aで撮像された運転者の顔画像を取得し、取得した顔画像を解析して自車両VAの運転者の表情を検出する。具体的に、運転者の表情を、怒り、驚き、怯え、悲しみ、疲労、楽しみ、憎悪、などに分類する。顔画像を解析する手法については公知の技術を採用することができる。
【0027】
記憶部315Aは、上述した運転者の表情、生体情報センサ13Aで検出された各種の生体情報、走行情報センサ14Aで検出された車両の走行情報(速度、加速度の情報)、走行する車線の情報、レーザレーダ15Aで検出された車間距離の情報を記憶する。また、記憶部315Aは、自車両VAの車種の情報を記憶する。「車種」とは、乗用車と軽自動車の区分、排気量の区分、国産車両と外国車両の区分、具体的な車種名、具体的な車両番号を含む概念である。
【0028】
更に、記憶部315Aは、自車両VAの運転者の表情、運転者の生体情報、自車両VAの走行情報、走行する車線の情報、車間距離の情報、及び自車両VAの車種の情報に基づいて、自車両VAがその周囲を走行する他車両VBから煽り行為を受けている度合いを数値化するための「煽られ度対応テーブルTb1」を記憶している。
【0029】
煽られ度対応テーブルTb1はまた、他車両VBの運転者の表情、運転者の生体情報、他車両VBの走行情報、走行する車線の情報、車間距離の情報、及び他車両VBの車種の情報に基づいて、他車両VBが自車両VAから煽り行為を受けている度合いを数値化する際にも用いられる。
【0030】
加えて、記憶部315Aは、自車両VAの運転者の表情、運転者の生体情報、自車両VAの走行情報、走行する車線の情報、車間距離の情報、及び自車両VAの車種の情報に基づいて、自車両VAが他車両VBに対して煽り行為を行っている度合いを数値化するための「煽り度対応テーブルTb2」を記憶している。
【0031】
煽り度対応テーブルTb2はまた、他車両VBの運転者の表情、運転者の生体情報、他車両VBの走行情報、走行する車線の情報、車間距離の情報、及び他車両VBの車種の情報に基づいて、他車両VBが自車両VAに対して煽り行為を行っている度合いを数値化する際においても用いられる。
【0032】
煽られ度対応テーブルTb1及び煽り度対応テーブルTb2の詳細については、図5A図5B図6A図6Bを参照して後述する。
【0033】
記憶部315Aはまた、自車両VAが周囲を走行する他車両VBから煽り行為を受けている度合い(以下、「煽られ度」という)、及び、自車両VAが周囲を走行する他車両VBに対して煽り行為を行っている度合い(以下、「煽り度」という)を4段階に区分した評価値を設定する第1評価値テーブルTB1、及び第2評価値テーブルTB2を記憶している。各評価値テーブルTB1、TB2の詳細については、図7A図7Bを参照して後述する。
【0034】
煽られ度算出部313Aは、自車両装置1Aの生体情報センサ13Aで検出された各種の生体情報、走行情報センサ14Aで検出された各種の車両情報、走行する車線の情報、及びレーザレーダ15Aで検出された車間距離、に基づき、煽られ度対応テーブルTb1を参照して、自車両VAが他車両VBから受ける煽り行為の度合いである煽られ度を算出する。
【0035】
煽られ度算出部313Aはまた、他車両装置1Bの生体情報センサ13Bで検出された各種の生体情報、走行情報センサ14Bで検出された各種の車両情報、走行する車線の情報、及びレーザレーダ15Bで検出された車間距離、に基づき、煽られ度対応テーブルTb1を参照して、他車両VBが自車両VAから受ける煽り行為の度合いである煽られ度を算出する。
【0036】
煽り度算出部314Aは、自車両VAの運転者の生体情報、自車両VAの車両情報、走行する車線の情報、及び車間距離の情報に基づいて、自車両VAが他車両VBに対して行う煽り行為の度合いである煽り度を算出する。
【0037】
煽り度算出部314Aはまた、他車両VBより、該他車両VBの運転者の生体情報、他車両VBの車両情報、走行する車線の情報、及び車間距離の情報が送信された際には、これらの情報に基づいて、他車両VBが自車両VAに対して行う煽り行為の度合いである煽り度を算出する。煽られ度、煽り度、及びこれらの算出方法については後述する。
【0038】
危険度判断部312Aは、煽り度と煽られ度に基づいて自車両VAが他車両VBから煽り行為を受けている度合い(後述する第1の評価値Xp)、及び、自車両VAが他車両VBに対して煽り行為を行っている度合い(後述する第2の評価値Yp)を判断する。
【0039】
通信部32Aは、ネットワーク4を経由してサーバ3との間での通信を行う。具体的に、画像認識部311Aで認識した自車両VAの運転者の表情の情報、生体情報センサ13Aで検出された各種の生体情報、走行情報センサ14Aで検出された自車両VAの走行情報、レーザレーダ15Aで検出された車間距離の情報、走行する車線の情報をサーバ3に送信する。また、サーバ3の通信部22(後述)より送信されるデータを受信する。
【0040】
通信部32Aはまた、サーバ3、及びネットワーク4を経由して、他車両VBが自車両VAに対して煽り行為を行っている度合いを示す煽り度を取得する。
【0041】
提示部33Aは、例えば車内に搭載されるディスプレイであり、危険度判断部312Aにより、自車両VAが他車両VBから煽り行為を受けていると判断されたとき、自車両VAが他車両VBに対して煽り行為を行っていると判断されたとき、自車両VA及び他車両VBが互いに煽り行為を行っていると判断されたとき、に警告を示す画像を表示する。また、画像を表示する以外にも警告を音声、光、振動などで知らせることもできる。
【0042】
即ち、提示部33Aは、自車両VAが他車両VBに対して煽り行為を行っていると判断された際に、煽り行為を行ったことによる危険度を自車両VAにて警告する。例えば、「前方の車両に煽り行為を行っています」のように、具体的に危険を示す状況を音声或いは文字で提示して警告する。或いは、危険度を10段階の数値で区分し、現在の危険度がどの段階であるかを提示して警告する。或いは、「青色」~「赤色」の間で表示色を連続的に変化させることにより、危険度を警告する。
【0043】
図3は他車両装置1Bの詳細な構成を示すブロック図である。図3に示すように、他車両装置1Bは、制御器11Bと、車外カメラ121B及び車内カメラ122Bを有するカメラ部12Bと、生体情報センサ13Bと、走行情報センサ14Bと、レーザレーダ15Bと、を備えている。また、制御器11Bは、演算処理部31Bと、通信部32B(他車両側通信部)と、提示部33Bと、を備えている。
【0044】
車外カメラ121B、車内カメラ122B、生体情報センサ13B、走行情報センサ14B、及びレーザレーダ15Bは、他車両情報を取得する他車両情報取得部の一例である。
【0045】
他車両装置1Bは、前述した自車両装置1Aと同一の構成を有している。従って、各構成要素のサフィックス「A」を「B」として示し、詳細な説明を省略する。
【0046】
図4は、図1に示したサーバ3の構成を示すブロック図である。図3に示すように、サーバ3は、制御部21と、通信部22と、記憶部23と、を備えている。
【0047】
通信部22は、ネットワーク4を経由して、自車両装置1A、及び少なくとも一つの他車両装置1Bと接続されている。通信部22は、ネットワーク4を経由して、自車両装置1A及び少なくとも一つの他車両装置1Bとの間で通信を行う。
【0048】
記憶部23は、自車両装置1Aの通信部32A、及び他車両装置1Bの通信部32Bより送信された各種のデータを記憶する。具体的に、自車両装置1Aより送信された運転者の表情、各種の生体情報、自車両VAの走行情報、車間距離の情報、自車両VAの車種の情報等を記憶する。更に、他車両装置1Bより送信された運転者の表情、各種の生体情報、他車両VBの走行情報、車間距離の情報、他車両VBの車種の情報等を記憶する。
【0049】
制御部21は、自車両装置1A、及び他車両装置1Bより送信される各種の情報を受信する。また、受信した各種の情報を自車両装置1A、及び他車両装置1Bに送信する制御を行う。また、後述する第1実施形態の第2変形例、第2実施形態の第2変形例、第3実施形態の第2変形例では、前述した危険度判断部312A、煽られ度算出部313A、煽り度算出部314Aと同様の処理を実行する。
【0050】
制御部21は、例えば、中央演算ユニット(CPU)や、RAM、ROM、ハードディスク等の記憶手段からなる一体型のコンピュータとして構成することができる。
【0051】
[煽られ度対応テーブルTb1の説明]
次に、図5A図5B参照して、記憶部315Aに記憶されている煽られ度対応テーブルTb1について説明する。
【0052】
図5A図5Bは、自車両VA(または、他車両VB)が、他車両VB(または、自車両VA)から煽り行為を受けている度合いである煽られ度を数値化するために用いる煽られ度対応テーブルTb1を示す説明図である。図5Aは運転者の生体情報に基づく数値が設定された生体情報テーブル、図5Bは自車両VAの情報に基づく数値が設定された車両情報テーブルを示している。
【0053】
図5Aに示すように、生体情報テーブルには、心拍数[回/分]、呼吸数[回/分]、血圧(上側)[mmHg]、表情(怒り、悲しみ、疲労)の信頼度[%]と、それぞれの数値の点数、及び係数が設定されている。例えば、自車両VAの運転者の心拍数が75~80[回/分]の範囲である場合には、点数は「1」、係数は「2」である。また、呼吸数が40[回/分]以上である場合には、点数は「5」、係数は「1.5」である。
【0054】
一方、図5B(a)に示すように、車両情報テーブルには、自車両の速度[km/h]、単位時間当たり(ここでは、10秒間とする)の急加速の回数、急加速の度合い(ここでは、1秒間における速度の変化量[%])、脇見運転の頻度(ここでは、1分間に視線が前方から前後、左右に30度以上それた時間の割合[%])、急ハンドルの回数(ここでは、1分間における回数[回/分])と、それぞれの数値の点数、及び係数が設定されている。例えば、速度が40~60[km/h]である場合には、標準的な速度で走行していると考えられるので、他車両VBから煽り行為を受ける可能性は低く点数は「0」である。
【0055】
また、速度が30~40[km/h]である場合には、速度が低く煽り行為を受けやすいので点数を「4」とし、速度が30[km/h]以下の場合には、より一層煽り行為を受けやすいので点数を「5」としている。また、係数を「1.5」に設定している。
【0056】
更に、単位時間当たり(例えば、10秒間)における急加速の回数が多いほど、点数を高く設定している。例えば、急加速の回数が10秒間に5回以上である場合には、点数を「5」に設定している。また、係数は「2」である。また、脇見運転の頻度が高いほど点数を高くし、急ハンドルの回数が多いほど点数を高くしている。
【0057】
図5B(b)に示すように、車両情報テーブルには、自車両VAの車種情報に対する乗算係数が「1」~「1.5」の範囲で設定されている。更に、走行する車線情報に対する乗算係数が「1」及び「2.25」のいずれかに設定されている。乗算係数とは、後述する「α」、「γ」であり、煽られ度を算出する際に使用する係数である。従って、乗算係数が大きいほど、煽られ度は大きい数値となる。
【0058】
自車両VAの車種情報として、例えば前述したように、車両の排気量の大小、及び国産車両と外国車両で区分することができる。一例として、外国車で排気量が2000[cc]以上の場合は「A」、2000[cc]未満の場合は「B」とする。また、国産車両で排気量が3000[cc]以上の場合は「C」、2000~3000[cc]の場合は「D」、1000~2000[cc]の場合は「E」、1000[cc]以下の場合は「F」とする。即ち、軽自動車のように排気量が小さい車両は煽り行為を受けやすいと考えられるので、乗算係数を高く設定し、排気量の大きい外国車両は煽り行為を受け難いと考えられるので、乗算係数を低く設定している。
【0059】
車線情報は、自車両VAが走行車線を走行しているか、或いは追い越し車線を走行しているかの情報である。自車両VAが継続して走行車線を走行している場合には乗算係数を「1」とし、例えば5分間遡った時間内に、30秒以上追い越し車線を走行している場合には、乗算係数を「2.25」とする。即ち、自車両VAが追い越し車線を走行している場合には、他車両VBから煽り行為を受ける可能性が高まるので、乗算係数を高く設定している。自車両VAが片側1車線道路を走行する場合には乗算係数を「1」とする。
【0060】
上記の点数、係数、乗算係数は、煽られ度及び煽り度を算出する演算式(後述)で使用する。
【0061】
なお、上記した説明では、自車両装置1Aに搭載される記憶部315Aに記憶されている煽られ度対応テーブルTb1について説明したが、他車両装置1Bに搭載される記憶部315Bについても同様の煽られ度対応テーブルTb1が記憶されている。
【0062】
[煽り度対応テーブルTb2の説明]
次に、図6A図6Bを参照して記憶部315Aに記憶されている煽り度対応テーブルTb2について説明する。
【0063】
図6A図6Bは、自車両VA(または、他車両VB)が、他車両VB(または、自車両)に対して煽り行為を行っている度合いである煽り度を数値化するために用いる煽り度対応テーブルTb2を示す説明図である。図6Aは、運転者の生体情報に基づく数値が設定された生体情報テーブルを示し、図6Bは、自車両の情報に基づく数値が設定された車両情報テーブルを示している。
【0064】
図6Aに示すように、生体情報テーブルには、心拍数[回/分]、呼吸数[回/分]、血圧(上側)[mmHg]、表情(怒り)の信頼度[%]と、それぞれの数値の点数、及び係数が設定されている。例えば、心拍数が75~80[回/分]の範囲である場合には、点数は「1」、係数は「2」である。また、呼吸数が40[回/分]以上である場合には、点数は「5」、係数は「1.5」である。
【0065】
一方、図6B(a)に示すように、車両情報テーブルには、自車両の速度[km/h]、単位時間当たり(ここでは、10秒間とする)の急加速の回数、急加速の度合い(ここでは、1秒間における速度の変化量[%])、脇見運転の頻度(ここでは、1分間に視線が前方から前後、左右に30度以上それた時間の割合[%])、急ハンドルの回数(ここでは、1分間における回数[回/分])と、それぞれの数値の点数、及び係数が設定されている。例えば、速度が60~70[km/h]である場合には、点数は「1」、係数は「1.5」である。また、急加速の回数が10秒間に5回以上である場合には、点数「5」に設定している。また、係数は「2」である。
【0066】
また、図6(b)に示すように、車両情報テーブルには、自車両VAの車種情報、及び車体情報に対する乗算係数が「1」~「1.5」の範囲でそれぞれ設定されている。自車両VAの車種情報として、車両の排気量の大小、及び国産車両と外国車両で区分することができる。一例として、国産車両で排気量が1000[cc]以下の場合は「A」、1000~2000[cc]の場合は「B」、2000~3000[cc]の場合は「C」、3000[cc]以上の場合は「D」とする。また、外国車で排気量が2000[cc]以下の場合は「E」、2000[cc]以上の場合は「F」とする。
【0067】
即ち、排気量の大きい車両、或いは外国車両は、煽り行為を行いやすいと考えられるので、乗算係数を高く設定し、軽自動車のように排気量の小さい国産車両は煽り行為を行い難いと考えられるので、乗算係数を低く設定している。
【0068】
車体情報は、過去における違反履歴、事故履歴の情報である。そして、過去の違反回数、事故回数がゼロの場合を「A」とし、多くなるほど「B」、「C」、「D」、「E」、「F」とする。即ち、過去において違反回数や事故回数が多い車両は、他の車両を煽りやすいと考えられるので、違反回数、事故回数が多いほど乗算係数を高く設定している。例えば、過去に違反、事故が多い車種は、乗算係数を高く設定する。また、過去に違反や事故が多い車両番号の車両は、乗算係数を高く設定する。
【0069】
車線情報は、自車両VAが走行車線を走行しているか、或いは追い越し車線を走行しているかの情報である。自車両VAが継続して走行車線を走行している場合には乗算係数を「1」とし、例えば5分間遡った時間帯に、30秒以上追い越し車線を走行している場合には、乗算係数を「1.5」とする。即ち、自車両VAが追い越し車線を走行している場合には、他車両VBに対して煽り行為を行う可能性が高まるので、乗算係数を高く設定している。自車両VAが片側1車線道路を走行する場合には乗算係数を「1」とする。また、周囲に存在する他車両の数が多いほど、乗算係数を高く設定してもよい。
【0070】
上記の点数、係数、乗算係数は、煽られ度及び煽り度を算出する演算式(後述)で使用する。
【0071】
なお、上記した説明では、自車両装置1Aに搭載される記憶部315Aに記憶されている煽り度対応テーブルTb2について説明したが、他車両装置1Bに搭載される記憶部315Bについても同様の煽り度対応テーブルTb2が記憶されている。
【0072】
そして、第1実施形態では、図5A図5Bに示した煽られ度対応テーブルTb1を用いて、自車両VAが他車両VBから煽り行為を受けているときの煽られ度(これを「Q1」とする)を算出する。更に、図6A図6Bに示した煽り度対応テーブルTb2を用いて、他車両VBが自車両VAに対して煽り行為を行っているときの煽り度(これを「Q2」とする)を算出する。算出した煽られ度Q1と煽り度Q2に基づいて、自車両VAが他車両VBから受けている煽り行為による危険度の評価値、及び、他車両VBが自車両VAに対して行う煽り行為による危険度の評価値を算出し、各評価値に応じた警告を自車両VAの運転者に提示する。「評価値」の詳細については後述する。
【0073】
また、第2実施形態では、煽られ度対応テーブルTb1を用いて、他車両VBが自車両VAから煽り行為を受けているときの煽られ度Q1を算出する。更に、煽り度対応テーブルTb2を用いて、自車両VAが他車両VBに対して煽り行為を行っているときの煽り度Q2を算出する。算出した煽られ度Q1と煽り度Q2に基づいて、他車両VBが自車両VAから受けている煽り行為による危険度の評価値、及び、自車両VAが他車両VBに対して行っている煽り行為による危険度の評価値を算出し、各評価値に応じた警告を自車両VAの運転者に提示する。
【0074】
更に、第3実施形態では、煽り度対応テーブルTb2を用いて、自車両VAが他車両VBに対して煽り行為を行っているときの煽り度Q2(第1の煽り度)、及び、他車両VBが自車両VAに対して煽り行為を行っているときの煽り度Q2’(第2の煽り度)を算出する。算出した第1の煽り度Q2と第2の煽り度Q2’に基づいて、他車両VBが自車両VAに対して行っている煽り行為による危険度の評価値、及び、自車両VAが他車両VBに対して行っている煽り行為による危険度の評価値を算出し、各評価値に応じた警告を自車両VAの運転者に提示する。
【0075】
[煽られ度の算出方法の説明]
次に、煽られ度算出部313Aが、上述した煽られ度対応テーブルTb1を参照して、自車両VAが他車両VBから煽り行為を受けているときの煽られ度Q1を算出する方法について説明する。
【0076】
煽られ度算出部313Aは、自車両装置1Aで検出される各種の情報に基づいて、図5A図5Bに示した各項目の点数及び係数に基づき、以下の(1)式を用いてパラメータq1を算出する。
【0077】
q1=(心拍数の点数)*2+(呼吸数の点数)*1.5+(血圧の点数)*2
+(表情の点数)*1.5+(速度の点数)*1.5+(急加速回数の点数)*2
+(急加速度合いの点数)*1.5+(脇見運転の頻度)*1.5
+(急ハンドルの回数)*2 …(1)
(1)式において、点数が全て最大値である「5」である場合には、q1=77.5となる。
【0078】
更に、パラメータq1に、自車両VAの車種情報に応じた乗算係数(これを「α」とする)、車線情報に応じた点数(これを「γ」とする)を乗じて、以下に示す(2)式により、煽られ度Q1を算出する。αは1~1.5の数値、γは1または2.25の数値である。
【0079】
Q1=α*γ*q1 …(2)
(2)式において、煽られ度Q1は、0~261.6の間の数値となる。
【0080】
[煽り度の算出方法の説明]
次に、煽り度算出部314Aが、図6A図6Bに示した煽り度対応テーブルTb2を参照して、自車両VAが他車両VBに対して煽り行為を行っているときの、煽り度Q2を算出する方法について説明する。
【0081】
煽り度算出部314Aは、自車両VAの運転者の表情、運転者の生体情報、自車両VAの運転情報に基づいて、図6A図6Bに示した点数及び係数に基づき、以下の(3)式を用いてパラメータq2を算出する。
【0082】
q2=(心拍数の点数)*2+(呼吸数の点数)*1.5+(血圧の点数)*2
+(表情の点数)*1.5+(速度の点数)*1.5+(急加速回数の点数)*2
+(急加速度合いの点数)*1.5 …(3)
(3)式において、点数が全て最大値である「5」である場合には、q2=77.5となる。
【0083】
更に、パラメータq2に、自車両VAの車種情報に応じた点数(これを「α」とする)、車体情報に応じた点数(これを「β」とする)、車線情報に応じた点数(これを「γ」とする)を乗じて、以下に示す(4)式により、煽り度Q2を算出する。α、βは、1~1.5の数値、γは1または1.5の数値である。
【0084】
Q2=α*β*γ*q2 …(4)
(4)式において、煽り度Q2は、0~261.6の間の数値となる。
【0085】
[評価値テーブルの説明]
次に、評価値テーブルについて説明する。図2に示した記憶部315Aには、自車両VAが他車両VBから受ける煽られ度Q1を4段階に区分して設定した評価値との対応示す第1評価値テーブル、及び、自車両VAが他車両VBに対して煽り行為を行う煽り度Q2を4段階に区分して設定した評価値との対応を示す第2評価値テーブルが記憶されている。
【0086】
図7Aは、第1評価値テーブルTB1を示す説明図である。図7Aに示すように、第1評価値テーブルTB1には、「0~202.5」の範囲で変化する煽られ度Q1と、評価値Xpとの関係が設定されている。具体的に、煽られ度Q1を4段階に区分し、それぞれの評価値Xpとして、X0~X3を設定している。例えば、煽られ度Q1が0~50の範囲であれば、評価値XpはX0である。
【0087】
図7Bは、第2評価値テーブルTB2を示す説明図である。図7Bに示すように、第2評価値テーブルTB2には、「0~202.5」の範囲で変化する煽り度Q2と、評価値Ypとの関係が設定されている。具体的に、煽り度Q2を4段階に区分し、それぞれの評価値Ypとして、Y0~Y3を設定している。例えば、煽り度Q1が150以上であれば、評価値YpはY3である。
【0088】
危険度判断部312Aは、煽られ度Q1に基づき、第1評価値テーブルTB1を参照して評価値Xp(これを第1の評価値Xpとする)を決定する。また、煽り度Q2に基づき、第2評価値テーブルTB2を参照して評価値Yp(これを第2の評価値Ypとする)を決定する。
【0089】
危険度判断部312Aは更に、決定した第1の評価値Xp、及び第2の評価値Ypに基づいて、自車両VAの運転者に警告の内容(図8A図8B参照)を決定し提示部33Aに出力する。
【0090】
[第1実施形態の作用の説明]
次に、第1実施形態の作用を、図9に示すフローチャートを参照して説明する。図9は、第1実施形態に係る危険運転警告システム101の処理手順を示すフローチャートである。初めに、図9のステップS11において、制御器11Aは、自車両装置1Aに搭載されるカメラ部12A、生体情報センサ13A、走行情報センサ14A、及びレーザレーダ15Aで検出される各情報を取得する。
【0091】
ステップS12において、制御器11Aは、ステップS11の処理で取得された各情報を記憶部315Aに記憶する。
【0092】
ステップS13において、煽られ度算出部313Aは、煽られ度対応テーブルTb1を参照して上記の各情報を数値化する。例えば、図5Bに示したように、自車両VAの走行速度が60~70[km/h]である場合には、点数は「1」である。
【0093】
ステップS14において、煽られ度算出部313Aは煽られ度Q1を算出する。具体的に、煽られ度算出部313Aは、前述した(2)式により自車両VAが他車両VBから煽り行為を受けている度合いである煽られ度Q1を算出する。煽られ度Q1は、判定時刻(瞬時)における数値を用いて算出することができる。また、それ以外にも、例えば判定時刻から所定時間(例えば、10秒間)だけ遡った時間帯を設定し、この時間帯における煽られ度Q1の平均値、ピーク値、中央値などの代表値を用いることも可能である。また、上記時間帯におけるピーク値を所定時間(例えば10秒間)保持して、煽られ度Q1とすることも可能である。
【0094】
ステップS15において、通信部32Aは、他車両装置1Bにて算出される煽り度Q2のデータを取得する。前述したように、他車両装置1Bでは、煽り度算出部314Bにより、他車両VBが自車両VAに対して煽り行為を行っているときの煽り度Q2が算出される。具体的に、前述した(4)式により煽り度Q2が算出される。この煽り度Q2のデータは、ネットワーク4を経由してサーバ3に送信され、更に、自車両装置1Aに送信される。通信部32Aは、この煽り度Q2のデータを受信する。煽り度Q2は、前述した煽られ度Q1と同様に、判定時刻(瞬時)における数値を用いて算出することができる。また、それ以外にも、判定時刻から所定時間(例えば、10秒間)だけ遡った時間帯を設定し、この時間帯における煽り度Q2の平均値、ピーク値、中央値などの代表値を用いることも可能である。また、上記時間帯の、ピーク値を所定時間(例えば、10秒間)保持して煽り度Q2とすることも可能である。
【0095】
ステップS16において、危険度判断部312Aは、ステップS14の処理で算出された煽られ度Q1に基づいて、第1の評価値Xpを設定する。具体的に図7Aに示したX0~X3のうちのいずれかを第1の評価値Xpとして設定する。
【0096】
ステップS17において、危険度判断部312Aは、ステップS15の処理で取得した煽り度Q2に基づいて、第2の評価値Ypを設定する。具体的に図7Bに示したY0~Y3のうちのいずれかを第2の評価値Ypとして設定する。
【0097】
ステップS18において、危険度判断部312Aは、自車両VAと他車両VBとの間の車間距離に基づき、車間距離が予め設定した閾値距離Lthよりも短いか否かを判断する。短い場合には(S18;YES)、ステップS21に処理を進め、そうでなければ(S18;NO)、ステップS19に処理を進める。
【0098】
ステップS19において、危険度判断部312Aは、第1の評価値Xp及び第2の評価値Ypに基づいて、自車両VAの運転者への警告内容を設定する。例えば、第2の評価値YpがY1以上であることを条件とし、第1の評価値Xpに応じて警告内容を決定する。
【0099】
図8Aは、自車両VAが他車両VBから煽り行為を受けているときの警告の内容を示す説明図である。図8Aに示すように、第1の評価値XpがX0の場合には「警告なし」とする。また、第1の評価値XpがX1~X3の場合には、各評価値に応じた警告の内容を設定する。
【0100】
ステップS20において、危険度判断部312Aは、煽り行為を受けていることを自車両VAの運転者に対して警告するか否かを判断する。第2の評価値YpがY0である場合、或いは、第1の評価値XpがX0である場合には警告しないので(S20;NO)、本処理を終了する。
【0101】
一方、第2の評価値YpがY1以上で、且つ第1の評価値XpがX1以上である場合には、ステップS21において、危険度判断部312Aは、第1の評価値Xpに応じた警告を提示部33Aにて提示する。
【0102】
提示部33Aがディスプレイである場合を例に挙げると、第1の評価値XpがX1のときには「安全運転に心がけてください」を表示する。第1の評価値XpがX2のときには、「走行にご注意ください」を表示する。第1の評価値XpがX3のときには、「危険運転を検知しました、周辺車両に注意してください」を表示する。即ち、第1の評価値Xpが高いほど、より強い注意喚起を行う。
【0103】
更には、車間距離が閾値距離以下となった場合には(S18;YES)、例えば「異常接近している車両があります。注意してください」などの文字、或いは音声を提示する。即ち、車間距離が短く、他車両VBが自車両VAに対して異常接近している場合には、煽られ度Q1の大きさに関係なく、警告を表示する。その後、本処理を終了する。
【0104】
こうして、自車両VAに関する各種の情報、及び他車両VBに関する各種の情報に基づいて、自車両VAが他車両VBから煽り行為を受けているか否かを判断し、煽られ度Q1に応じた内容の警告を自車両VAの運転者に提示することができるのである。
【0105】
[第1実施形態の効果の説明]
このようにして、第1実施形態に係る危険運転警告システム101では、以下に示す効果を達成することが可能となる。
【0106】
(1)
自車両VAが他車両VBから煽り行為を受けている度合いを示す煽られ度Q1を算出し、更に、他車両VBが自車両VAに対して煽り行為を行っている度合いを示す煽り度Q2を算出する。そして、煽られ度Q1と煽り度Q2に基づいて、自車両VAの運転者が煽り行為を受けたことが警告される。従って、自車両VAの運転者は、自車両VAが煽り行為を受けていることを即時に認識することができ、迅速に危険回避への対応をとることができる。
【0107】
(2)
他車両VBが自車両VAに対して煽り行為を行っているときの煽り度Q2は、他車両VBの煽り度算出部314Bにて算出され、ネットワーク4を経由した通信により自車両装置1Aにて取得されるので、自車両装置1Aにおける演算負荷を低減することができる。
【0108】
(3)
自車両VAの情報として、車種の情報、及び、走行する車線情報を含んでいる。例えば、自車両VAが軽自動車である場合、自車両VAが追い越し車線を走行している場合などには、煽り行為を受けやすいと判断されるので、煽られ度Q1を算出する際の乗算係数をより高い数値に設定している。従って、煽られ度Q1をより高い精度で算出することが可能となる。
【0109】
(4)
他車両VBの情報として、車種情報、車体情報、及び走行する車線情報を含んでいる。例えば、他車両VBが大型車である場合や、追い越し車線を走行している場合は、煽り行為を行いやすいと判断されるので、煽り度Q2を算出する際の乗算係数をより高い数値に設定している。更に、他車両VBが過去に多くの事故や違反を起こしている場合には、煽り行為を行いやすいと判断されるので、煽り度Q2を算出する際の乗算係数をより高い数値に設定している。従って、煽り度Q2をより高い精度で算出することが可能となる。
【0110】
(5)
車両情報として、車両の走行速度、急加速の回数、加速の度合い、脇見運転の頻度、及び急ハンドルの回数を用いて煽られ度Q1及び煽り度Q2を算出している。走行速度が高い、急加速の回数が多い、或いは、加速の度合いが大きい場合には、煽り行為を受けていたり、煽り行為を行っている可能性が高いと判断されるので、煽られ度Q1及び煽り度Q2を算出する際の点数を高く設定している。従って、煽られ度Q1及び煽り度Q2を高い精度で算出することができる。
【0111】
(6)
生体情報として、運転者の心拍数、呼吸数、及び血圧を用いて煽られ度Q1及び煽り度Q2を算出している。運転者の心拍数が高い、呼吸数が多い、及び血圧が高い場合には、煽り行為を受けていたり、煽り行為を行っている可能性が高いと判断されるので、煽られ度Q1及び煽り度Q2を算出する際の点数を高く設定している。従って、煽られ度Q1及び煽り度Q2を高い精度で算出することができる。
【0112】
[第1実施形態の第1変形例の説明]
次に、前述した第1実施形態の第1変形例について説明する。第1変形例では、図4に示したサーバ3の制御部21が危険度判断部を備える構成としている。また、煽られ度対応テーブルTb1、及び煽り度対応テーブルTb2、第1評価値テーブルTB1、第2評価値テーブルTB2がサーバ3の記憶部23に記憶されている点で前述した第1実施形態と相違している。
【0113】
第1変形例では、自車両装置1Aで検出された各種の情報(生体情報、走行情報、画像、レーザレーダの情報など)を通信部32Aからネットワーク4を経由してサーバ3に送信し、サーバ3の制御部21において煽られ度Q1を算出する。また、他車両装置1Bで検出された各種の情報を通信部32Bからネットワーク4を経由してサーバ3に送信し、サーバ3の制御部21において、煽り度Q2を算出する。それ以外の構成は前述した第1実施形態と同様である。
【0114】
このように、第1変形例に係る危険運転警告システム101では、煽られ度対応テーブルTb1、及び煽り度対応テーブルTb2がサーバ3に設けられており、サーバ3において、煽られ度Q1及び煽り度Q2が算出される。従って、自車両装置1A及び他車両装置1Bに搭載される記憶部315A、315Bの記憶容量、及び演算負荷を低減させることが可能となる。
【0115】
[第1実施形態の第2変形例の説明]
次に、前述した第1実施形態の第2変形例について説明する。装置構成は前述した図1図4と同様であるので構成説明を省略する。
【0116】
前述した第1実施形態では、他車両VBに搭載されている煽り度算出部314Bにて、当該他車両VBの自車両VAに対する煽り度Q2を算出し、算出した煽り度Q2をネットワーク4を経由して自車両VAに送信する構成とした。これに対して、第2変形例では、他車両装置1Bで検出された各種の情報をネットワーク4を経由して自車両装置1Aに送信する。そして、自車両装置1Aに搭載された煽り度算出部314Aにより、他車両VBによる煽り度Q2を算出する点で相違する。
【0117】
以下、第2変形例に係る危険運転警告システム101の処理手順を、図10に示すフローチャートを参照して説明する。
【0118】
初めに、図10のステップS31において、自車両装置1Aに搭載される制御器11Aは、カメラ部12A、生体情報センサ13A、走行情報センサ14A、及びレーザレーダ15Aで検出される各情報を取得する。
【0119】
ステップS32において、制御器11Aは、ステップS31の処理で取得された各情報を記憶部315Aに記憶する。
【0120】
ステップS33において、煽られ度算出部313Aは、煽られ度対応テーブルTb1を参照して上記の各情報を数値化する。
【0121】
ステップS34において、自車両装置1Aの制御器11Aは、他車両装置1Bに搭載されるカメラ部12B、生体情報センサ13B、走行情報センサ14B、及びレーザレーダ15Bで検出される各情報を取得する。具体的に、他車両装置1Bの通信部32Bより送信される各種のデータを、自車両装置1Aの通信部32Aにて受信する。
【0122】
ステップS35において、制御器11Aは、ステップS34の処理で取得された各情報を記憶部315Aに記憶する。
【0123】
ステップS36において、煽り度算出部314Aは、煽り度対応テーブルTb2を参照して上記の各情報を数値化する。
【0124】
ステップS37において、煽られ度算出部313Aは煽られ度Q1を算出する。具体的に、煽られ度算出部313Aは、前述した(2)式により自車両VAが他車両VBから煽り行為を受けている度合いである煽られ度Q1を算出する。煽られ度Q1は、判定時刻(瞬時)における数値を用いて算出することができる。また、それ以外にも、判定時刻から所定時間(例えば、10秒間)だけ遡った時間帯を設定し、この時間帯における煽られ度Q1の平均値、ピーク値、中央値などの代表値を用いることも可能である。また、上記時間帯の、ピーク値を所定時間(例えば10秒間)保持して煽られ度Q1とすることも可能である。
【0125】
ステップS38において、煽り度算出部314Aは煽り度Q2を算出する。具体的に、煽り度算出部314Aは、前述した(4)式により他車両VBが自車両VAに対して煽り行為を行っているときの煽り度Q2を算出する。煽り度Q2は、判定時刻(瞬時)における数値を用いて算出することができる。また、それ以外にも、判定時刻から所定時間(例えば、10秒間)だけ遡った時間帯を設定し、この時間帯における煽り度Q2の平均値、ピーク値、中央値などの代表値を用いることも可能である。また、上記時間帯の、ピーク値を所定時間(例えば10秒間)保持して煽り度Q2とすることも可能である。
【0126】
ステップS39において、危険度判断部312Aは、ステップS37の処理で算出された煽られ度Q1に基づいて、第1の評価値Xpを設定する。具体的に図7Aに示したX0~X3のうちのいずれかの評価値を第1の評価値Xpとして設定する。
【0127】
ステップS40において、危険度判断部312Aは、ステップS38の処理で取得した煽り度Q2に基づいて、第2の評価値Ypを設定する。具体的に図7Bに示したY0~Y3のうちのいずれかの評価値を第2の評価値Ypとして設定する。
【0128】
ステップS41~S44は、図9に示したステップS18~S21の処理と同一であるので、説明を省略する。
【0129】
このようにして、第1実施形態の第2変形例に係る危険運転警告システム101では、自車両VAが他車両VBから煽り行為を受けているときの煽られ度Q1を、自車両装置1Aの煽られ度算出部313Aにて算出する。また、他車両VBから、該他車両VBの各種の情報を取得し、煽り度算出部314Aにより、取得した情報を用いて他車両VBが自車両VAに対して煽り行為を行っているときの煽り度Q2を算出する。
【0130】
従って、煽られ度Q1及び煽り度Q2を自車両装置1Aで算出できるので、他車両VBでの演算負荷を低減することが可能となる。
【0131】
[第2実施形態の説明]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る危険運転警告システム101は、前述した図1図4に示した危険運転警告システム101と同一であるので、構成説明を省略する。第2実施形態では、自車両VAが他車両VBに対して煽り行為を行っている場合に、自車両VAの運転者に煽り行為を行っていることによる危険度を警告する。
【0132】
以下、第2実施形態に係る危険運転警告システム101の処理手順を、図11に示すフローチャートを参照して説明する。初めに、図11のステップS51において、制御器11Aは、自車両装置1Aに搭載されるカメラ部12A、生体情報センサ13A、走行情報センサ14A、及びレーザレーダ15Aで検出される各情報を取得する。
【0133】
ステップS52において、制御器11Aは、ステップS51の処理で取得された各情報を記憶部315Aに記憶する。
【0134】
ステップS53において、煽り度算出部314Aは、煽り度対応テーブルTb2を参照して上記の各情報を数値化する。例えば、図6Bに示したように、自車両VAの加速度の回数が、10秒間で5回以上である場合には、点数は「5」である。
【0135】
ステップS54において、煽り度算出部314Aは、煽り度Q2を算出する。具体的に、煽り度算出部314A、前述した(4)式により自車両VAが他車両VBに対して煽り行為を行っているときの煽り度Q2を算出する。煽り度Q2は、判定時刻(瞬時)における数値を用いて算出することができる。また、それ以外にも、判定時刻から所定時間(例えば、10秒間)だけ遡った時間帯を設定し、この時間帯における煽り度Q2の平均値、ピーク値、中央値などの代表値を用いることも可能である。また、上記時間帯の、ピーク値を所定時間(例えば10秒間)保持して煽り度Q2とすることも可能である。
【0136】
ステップS55において、通信部32Aは、他車両装置1Bにて算出される煽られ度Q1のデータを取得する。前述したように、他車両装置1Bでは、煽られ度算出部313Bにより、他車両VBが自車両VAから煽り行為を受けているときの煽られ度Q1が算出される。具体的に、前述した(2)式により煽られ度Q1が算出される。この煽られ度Q1のデータは、ネットワーク4を経由してサーバ3に送信され、更に、自車両装置1Aに送信される。通信部32Aは、この煽られ度Q1のデータを受信する。煽られ度Q1は、判定時刻(瞬時)における数値を用いて算出することができる。また、それ以外にも、判定時刻から所定時間(例えば、10秒間)だけ遡った時間帯を設定し、この時間帯における煽られ度Q1の平均値、ピーク値、中央値などの代表値を用いることも可能である。また、上記時間帯の、ピーク値を所定時間(例えば10秒間)保持して煽られ度Q1とすることも可能である。
【0137】
ステップS56において、危険度判断部312Aは、ステップS55の処理で取得した煽られ度Q1に基づいて、第1の評価値Xpを設定する。具体的に図7Aに示したX0~X3のうちのいずれかの評価値を第1の評価値Xpとして設定する。
【0138】
ステップS57において、危険度判断部312Aは、ステップS54の処理で算出された煽り度Q2に基づいて、第2の評価値Ypを設定する。具体的に図7Bに示したY0~Y3のうちのいずれかの評価値を第2の評価値Ypとして設定する。
【0139】
ステップS58において、危険度判断部312Aは、自車両VAと他車両VBとの間の車間距離に基づき、車間距離が予め設定した閾値距離Lthよりも短いか否かを判断する。短い場合には(S58;YES)、ステップS61に処理を進め、そうでなければ(S58;NO)、ステップS59に処理を進める。
【0140】
ステップS59において、危険度判断部312Aは、第1の評価値Xp及び第2の評価値Ypに基づいて、自車両VAの運転者への警告内容を設定する。例えば、第1の評価値XpがX1以上であることを条件とし、第2の評価値Ypに応じて警告内容を決定する。
【0141】
図8Bは、自車両VAが他車両VBに対して煽り行為を行っているときの警告の内容を示す説明図である。図8Bに示すように、第2の評価値YpがY0の場合には「警告なし」とする。また、第2の評価値YpがY1~Y3の場合には、各評価値に応じた警告の内容を設定する。
【0142】
ステップS60において、危険度判断部312Aは、煽り行為を行っていることを自車両VAの運転者に対して警告するか否かを判断する。第1の評価値XpがX0である場合、或いは、第2の評価値YpがY0である場合には警告しないので(S60;NO)、本処理を終了する。
【0143】
一方、第1の評価値XpがX1以上で(即ち、他車両VBの運転者が煽られていると認識している状況下で)、且つ第2の評価値YpがY1以上である場合には、ステップS61において、危険度判断部312Aは、第2の評価値Ypに応じた警告を提示部33Aにて提示する。
【0144】
提示部33Aがディスプレイである場合を例に挙げると、図8Bに示すように、第2の評価値YpがY1のときには「安全運転に心がけてください」を表示する。第2の評価値YpがY2のときには、「走行にご注意ください」を表示する。第2の評価値YpがY3のときには、「危険運転を検知しました、車間をとってください」を表示する。
【0145】
更には、車間距離が閾値距離以下となった場合には(S58;YES)、例えば「先行車に異常接近しています。十分な車間距離をとって運転してください」などの文字、或いは音声を提示する。即ち、車間距離が短く、自車両VAが他車両VBに対して異常接近している場合には、煽り度Q2の大きさに関係なく、警告を表示する。その後、本処理を終了する。
【0146】
こうして、自車両VAに関する各種の情報、及び他車両VBに関する各種の情報に基づいて、自車両VAが他車両VBに対して煽り行為を行っているか否かを判断し、煽り行為の度合いに応じた内容の警告を自車両VAの運転者に提示することができるのである。
【0147】
このようにして、第2実施形態に係る危険運転警告システム101では、以下に示す効果を達成することができる。
【0148】
(1)
自車両VAが他車両VBに対して煽り行為を行っている度合いを示す煽り度Q2を算出し、更に、他車両VBが自車両VAから煽り行為を受けている度合いを示す煽られ度Q1を算出する。そして、煽り度Q2と煽られ度Q1に基づいて、自車両VAにて煽り行為を行っていることが警告される。従って、自車両VAの運転者は無意識のうちに他車両VBに対して煽り行為を行っている場合などに、煽り行為を行っていることを即時に認識することができ、迅速に安全運転への対応をとることができる。
【0149】
(2)
他車両VBが自車両VAから煽り行為を受けているときの煽られ度Q1は、他車両VBの煽られ度算出部313Bにて算出され、ネットワーク4を経由した通信により自車両装置1Aにて取得されるので、自車両装置1Aにおける演算負荷を低減することができる。
【0150】
(3)
自車両VAの情報として、車種の情報、違反回数や事故回数などの車体情報、及び走行する車線情報を含んでいる。例えば、自車両VAが大型車である場合や、追い越し車線を走行している場合などには、煽り行為を行いやすいと判断されるので、煽り度Q2を算出する際の乗算係数をより高い数値に設定している。また、自車両VAが過去に多くの事故や違反を起こしている場合には、煽り行為を行いやすいと判断されるので、煽り度Q2を算出する際の乗算係数をより高い数値に設定している。更に、自車両VAが追い越し車線を走行している場合には、他車両VBに対して煽り行為を行いやすいと判断されるので、煽り度Q2を算出する際の乗算係数を高い数値に設定している。従って、煽り度Q2をより高い精度で算出することが可能となる。
【0151】
(4)
他車両VBの情報として、車種の情報、及び走行する車線情報を含んでいる。例えば、他車両VBが軽自動車である場合や、追い越し車線を走行している場合は、煽り行為を受けやすいと判断されるので、煽られ度Q1を算出する際の乗算係数をより高い数値に設定している。従って、煽られ度Q1をより高い精度で算出することが可能となる。
【0152】
(5)
車両情報として、車両の走行速度、急加速の回数、加速の度合い、脇見運転の頻度、及び急ハンドルの回数を用いて煽り度Q2及び煽られ度Q1を算出している。走行速度が高い、急加速の回数が多い、或いは、加速の度合いが大きい場合には、煽り行為を行っていたり、煽り行為を受けている可能性が高いと判断されるので、煽り度Q2及び煽られ度Q1を算出する際の点数を高く設定している。従って、煽り度Q2及び煽られ度Q1を高い精度で算出することができる。
【0153】
(6)
生体情報として、運転者の心拍数、呼吸数、及び血圧を用いて煽り度Q2及び煽られ度Q1を算出している。運転者の心拍数が高い、呼吸数が多い、及び血圧が高い場合には、煽り行為を行っていたり、煽り行為を受けている可能性が高いと判断されるので、煽り度Q2及び煽られ度Q1を算出する際の点数を高く設定している。従って、煽り度Q2及び煽られ度Q1を高い精度で算出することができる。
【0154】
[第2実施形態の第1変形例の説明]
次に、前述した第2実施形態の第1変形例について説明する。第1変形例では、図4に示したサーバ3の制御部21が危険度判断部を備える構成としている。また、煽られ度対応テーブルTb1、及び煽り度対応テーブルTb2、第1評価値テーブルTB1、第2評価値テーブルTB2がサーバ3の記憶部23に記憶されている点で前述した第2実施形態と相違している。
【0155】
第1変形例では、自車両装置1Aで検出された各種の情報(生体情報、走行情報、画像、レーザレーダの情報など)を通信部32Aからネットワーク4を経由してサーバ3に送信し、サーバ3の制御部21において煽り度Q2を算出する。また、他車両装置1Bで検出された各種の情報を通信部32Bからネットワーク4を経由してサーバ3に送信し、サーバ3の制御部21において、煽られ度Q1を算出する。それ以外の構成は前述した第2実施形態と同様である。
【0156】
このように、第1変形例に係る危険運転警告システム101では、煽られ度対応テーブルTb1、及び煽り度対応テーブルTb2がサーバ3に設けられており、サーバ3において、煽り度Q2及び煽られ度Q1が算出される。従って、自車両装置1A及び他車両装置1Bに搭載される記憶部315A、315Bの記憶容量、及び演算負荷を低減させることが可能となる。
【0157】
[第2実施形態の第2変形例の説明]
次に、前述した第2実施形態の第2変形例について説明する。装置構成は、前述した図1図4と同様であるので構成説明を省略する。
【0158】
前述した第2実施形態では、他車両VBに搭載されている煽られ度算出部313Bにて、当該他車両VBが自車両VAから受けている煽られ度Q1を算出し、算出した煽られ度Q1をネットワーク4を経由して自車両VAに送信する構成とした。これに対して、第2変形例では、他車両装置1Bで検出された各種の情報をネットワーク4を経由して自車両装置1Aに送信する。そして、自車両装置1Aに搭載された演算処理部31Aにより、他車両VBが受けている煽られ度Q1を算出する点で相違する。
【0159】
以下、第2変形例に係る危険運転警告システム101の処理手順を、図12に示すフローチャートを参照して説明する。初めに、図12のステップS71において、制御器11Aは、自車両装置1Aに搭載されるカメラ部12A、生体情報センサ13A、走行情報センサ14A、及びレーザレーダ15Aで検出される各情報を取得する。
【0160】
ステップS72において、制御器11Aは、ステップS71の処理で取得された各情報を記憶部315Aに記憶する。
【0161】
ステップS73において、煽られ度算出部313Aは、煽られ度対応テーブルTb1を参照して上記の各情報を数値化する。
【0162】
ステップS74において、制御器11Aは、他車両装置1Bに搭載されるカメラ部12B、生体情報センサ13B、走行情報センサ14B、及びレーザレーダ15Bで検出される各情報を取得する。具体的に、他車両装置1Bの通信部32Bより送信される各種のデータを、自車両装置1Aの通信部32Aにて受信する。
【0163】
ステップS75において、制御器11Aは、ステップS74の処理で取得された各情報を記憶部315Aに記憶する。
【0164】
ステップS76において、煽り度算出部314Aは、煽り度対応テーブルTb2を参照して上記の各情報を数値化する。
【0165】
ステップS77において、煽り度算出部314Aは煽り度Q2を算出する。具体的に、煽り度算出部314Aは、前述した(4)式により自車両VAが他車両VBに対して煽り行為を行っているときの煽り度Q2を算出する。煽り度Q2は、判定時刻(瞬時)における数値を用いて算出することができる。また、それ以外にも、判定時刻から所定時間(例えば、10秒間)だけ遡った時間帯を設定し、この時間帯における煽り度Q2の平均値、ピーク値、中央値などの代表値を用いることも可能である。また、上記時間帯の、ピーク値を所定時間(例えば10秒間)保持して煽り度Q2とすることも可能である。
【0166】
ステップS78において、煽られ度算出部313Aは煽られ度Q1を算出する。具体的に、煽られ度算出部313Aは、前述した(2)式により他車両VBが自車両VAから煽り行為を受けているときの煽られ度Q1を算出する。煽られ度Q1は、判定時刻(瞬時)における数値を用いて算出することができる。また、それ以外にも、判定時刻から所定時間(例えば、10秒間)だけ遡った時間帯を設定し、この時間帯における煽られ度Q1の平均値、ピーク値、中央値などの代表値を用いることも可能である。また、上記時間帯の、ピーク値を所定時間(例えば10秒間)保持して煽られ度Q1とすることも可能である。
【0167】
ステップS79において、危険度判断部312Aは、ステップS78の処理で取得した煽られ度Q1に基づいて、第1の評価値Xpを設定する。具体的に図7Aに示したX0~X3のうちのいずれかの評価値を第1の評価値Xpとして設定する。
【0168】
ステップS80において、危険度判断部312Aは、ステップS77の処理で算出された煽り度Q2に基づいて、第2の評価値Ypを設定する。具体的に図7Bに示したY0~Y3のうちのいずれかの評価値を第2の評価値Ypとして設定する。
【0169】
ステップS81~S84の処理は、図11に示したステップS58~S61の処理と同一であるので、説明を省略する。
【0170】
このようにして、第2実施形態の第2変形例に係る危険運転警告システム101では、自車両VAが他車両VBに対して煽り行為を行っているときの煽り度Q2を算出する。更に、他車両VBから、該他車両VBの各種の情報を取得し、取得した情報を用いて他車両VBが自車両VAから煽り行為を受けているときの煽られ度Q1を算出する。
【0171】
従って、煽り度Q2及び煽られ度Q1を自車両装置1Aで算出できるので、他車両装置1Bの演算負荷を低減することが可能となる。
【0172】
[第3実施形態の説明]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態に係る危険運転警告システム101は、前述した図1図4に示した危険運転警告システム101と同一であるので、構成説明を省略する。
【0173】
但し、図2に示す煽り度算出部314Aは、自車両VAが他車両VBに対して煽り行為を行っている度合いを示す煽り度Q2(第1の煽り度)を算出する第1煽り度算出部である。また、図3に示す煽り度算出部314Bは、他車両VBが自車両VAに対して煽り行為を行っている度合いを示す煽り度Q2’(第2の煽り度)を算出する第2煽り度算出部である。第3実施形態では、自車両VA及び他車両VBの双方が互いに煽り行為を行っている場合に、自車両VA及び他車両VBの少なくとも一方の運転者に煽り行為を行っていることによる危険度を警告する。
【0174】
即ち、前述した第1実施形態では自車両VAが他車両VBから煽り行為を受けているときの対応について示し、第2実施形態では自車両VAが他車両VBに対して煽り行為を行っているときの対応について示した。これらに対し、第3実施形態では、自車両VA及び他車両VBが互いに煽り行為を行っているときにおいて、自車両VA及び他車両VBの少なくとも一方の運転者に対して警告する処理を実施する。
【0175】
以下、第3実施形態に係る危険運転警告システム101の処理手順を、図13に示すフローチャートを参照して説明する。初めに、図13のステップS91において、制御器11Aは、自車両装置1Aに搭載されるカメラ部12A、生体情報センサ13A、走行情報センサ14A、及びレーザレーダ15Aで検出される各情報を取得する。
【0176】
ステップS92において、制御器11Aは、ステップS91の処理で取得された各情報を記憶部315Aに記憶する。
【0177】
ステップS93において、煽り度算出部314A(第1煽り度算出部)は、煽り度対応テーブルTb2を参照して上記の各情報を数値化する。例えば、図6Bに示したように、自車両VAの加速度の回数が、10秒間で5回以上である場合には、点数は「5」である。
【0178】
ステップS94において、煽り度算出部314Aは煽り度Q2(第1の煽り度)を算出する。具体的に、煽り度算出部314Aは、前述した(4)式により自車両VAが他車両VBに対して煽り行為を行っている度合いである第1の煽り度Q2を算出する。第1の煽り度Q2は、判定時刻(瞬時)における数値を用いて算出することができる。また、それ以外にも、判定時刻から所定時間(例えば、10秒間)だけ遡った時間帯を設定し、この時間帯における第1の煽り度Q2の平均値、ピーク値、中央値などの代表値を用いることも可能である。また、上記時間帯の、ピーク値を所定時間(例えば10秒間)保持して第1の煽り度Q2とすることも可能である。
【0179】
ステップS95において、通信部32Aは、他車両装置1Bの煽り度算出部314B(第2煽り度算出部)にて算出される煽り度(第2の煽り度;これを「Q2’」とする)のデータを取得する。前述したように、他車両装置1Bでは、煽り度算出部314Bにより、他車両VBが自車両VAに対して煽り行為を行っているときの第2の煽り度Q2’が算出される。具体的に、前述した(4)式により第2の煽り度Q2’が算出される。この第2の煽り度Q2’のデータは、ネットワーク4を経由してサーバ3に送信され、更に、自車両装置1Aに送信される。通信部32Aは、この第2の煽り度Q2’のデータを受信する。第2の煽り度Q2’は、判定時刻(瞬時)における数値を用いて算出することができる。また、それ以外にも、判定時刻から所定時間(例えば、10秒間)だけ遡った時間帯を設定し、この時間帯における第2の煽り度Q2’の平均値、ピーク値、中央値などの代表値を用いることも可能である。また、上記時間帯の、ピーク値を所定時間(例えば10秒間)保持して第2の煽り度Q2’とすることも可能である。
【0180】
ステップS96において、危険度判断部312Aは、ステップS94の処理で算出された第1の煽り度Q2に基づいて、自車両VAの第2の評価値(これを、「Yp1」とする)を設定する。具体的に図7Bに示したY0~Y3のうちのいずれかを自車両VAの第2の評価値Yp1として設定する。
【0181】
ステップS97において、危険度判断部312Aは、ステップS95の処理で取得した第2の煽り度Q2’基づいて、他車両VBの第2の評価値(これを、「Yp2」とする)を設定する。具体的に図7Bに示したY0~Y3のうちのいずれかを他車両VBの第2の評価値Yp2として設定する。
【0182】
ステップS98において、危険度判断部312Aは、自車両VAと他車両VBとの間の車間距離に基づき、車間距離が予め設定した閾値距離Lthよりも短いか否かを判断する。短い場合には(S98;YES)、ステップS101に処理を進め、そうでなければ(S98;NO)、ステップS99に処理を進める。
【0183】
ステップS99において、危険度判断部312Aは、自車両VAの第2の評価値Yp1、及び他車両VBの第2の評価値Yp2に基づいて、自車両VAの運転者への警告内容を設定する。例えば、他車両VBの第2の評価値Yp2がY1以上であることを条件とし、自車両VAの第2の評価値Yp1に応じて警告内容を決定する。
【0184】
図8Bに示すように、自車両VAの第2の評価値Yp1がY0の場合には「警告なし」とする。また、自車両VAの第2の評価値Yp1がY1~Y3の場合には、各評価値に応じた警告の内容を設定する。
【0185】
ステップS100において、危険度判断部312Aは、煽り行為を行っていることを自車両VAの運転者に対して警告するか否かを判断する。他車両VBの第2の評価値Yp2がY0である場合、或いは、自車両VAの第2の評価値Yp1がY0である場合には警告しないので(S100;NO)、本処理を終了する。
【0186】
一方、他車両VBの第2の評価値Yp2がY1以上で(即ち、他車両VBの運転者が煽り運転を行っている)、且つ自車両VAの第2の評価値Yp1がY1以上である場合には、ステップS101において、危険度判断部312Aは、自車両VAの第2の評価値Yp1に応じた警告を提示部33Aにて提示する。
【0187】
提示部33Aがディスプレイである場合を例に挙げると、図8Bに示すように、自車両VAの第2の評価値Yp1がY1のときには「安全運転に心がけてください」を表示する。第2の評価値Yp1がY2のときには、「走行にご注意ください」を表示する。第2の評価値Yp1がY3のときには、「危険運転を検知しました、車間をとってください」を表示する。
【0188】
更には、車間距離が閾値距離Lth以下となった場合には(S98;YES)、例えば「先行車に異常接近しています。十分な車間距離をとって運転してください。」などの文字、或いは音声を提示する。その後、本処理を終了する。
【0189】
こうして、自車両VAに関する各種の情報、及び他車両VBに関する各種の情報に基づいて、自車両VAと他車両VBが互いに煽り行為を行っているか否かを判断し、煽り行為の度合いに応じた内容の警告を自車両VAの運転者に提示することができるのである。
【0190】
このようにして、第3実施形態に係る危険運転警告システム101では、以下に示す効果を達成することが可能となる。
【0191】
(1)
自車両VAが他車両VBに対して煽り行為を行っている度合いを示す第1の煽り度Q2を算出し、更に、他車両VBが自車両VAに対して煽り行為を行っている度合いを示す第2の煽り度Q2’を算出する。そして、各煽り度Q2、Q2’に基づいて、自車両VAと他車両VBが互いに煽り行為を行っていることが警告される。従って、自車両VAの運転者は、自車両VAと他車両VBが互いに煽り行為を行っていることを即時に認識することができ、迅速に危険回避への対応をとることができる。
【0192】
(2)
他車両VBが自車両VAに対して煽り行為を行っているときの第2の煽り度Q2’は、他車両VBの煽り度算出部314Bにて算出され、通信により自車両装置1Aにて取得されるので、自車両VAにおける演算負荷を低減することができる。
【0193】
(3)
自車両VA、及び他車両VBの情報として、車種の情報、車体情報、及び走行する車線情報を含んでいる。例えば、自車両VAや他車両VBが大型車である場合や、追い越し車線を走行している場合は、煽り行為を行いやすいと判断されるので、各煽り度Q2、Q2’を算出する際の乗算係数をより高い数値に設定している。更に、自車両VAや他車両VBが過去に多くの違反や事故を起こしている車両である場合には、煽り行為を行いやすいと判断されるので、各煽り度Q2、Q2’を算出する際の乗算係数をより高い数値に設定している。従って、各煽り度Q2、Q2’をより高い精度で算出することが可能となる。
【0194】
(4)
車両情報として、車両の走行速度、急加速の回数、加速の度合い、脇見運転の頻度、及び急ハンドルの回数を用いて各煽り度Q2、Q2’を算出している。走行速度が高い、急加速の回数が多い、或いは、加速の度合いが大きい場合には、煽り行為を行っている可能性が高いと判断されるので、各煽り度Q2、Q2’を算出する際の点数を高く設定している。従って、各煽り度Q2、Q2’を高い精度で算出することができる。
【0195】
(5)
生体情報として、運転者の心拍数、呼吸数、及び血圧を用いて各煽り度Q2、Q2’を算出している。運転者の心拍数が高い、呼吸数が多い、及び血圧が高い場合には、煽り行為を行っている可能性が高いと判断されるので、各煽り度Q2、Q2’を算出する際の点数を高く設定している。従って、各煽り度Q2、Q2’を高い精度で算出することができる。
【0196】
[第3実施形態の第1変形例の説明]
次に、前述した第3実施形態の第1変形例について説明する。第1変形例では、図4に示したサーバ3の制御部21が危険度判断部を備える構成としている。また、煽られ度対応テーブルTb1、及び煽り度対応テーブルTb2、第1評価値テーブルTB1、第2評価値テーブルTB2がサーバ3の記憶部23に記憶されている点で前述した第3実施形態と相違している。
【0197】
第1変形例では、自車両装置1Aで検出された各種の情報(生体情報、走行情報、画像、レーザレーダの情報など)を通信部32Aからネットワーク4を経由してサーバ3に送信し、サーバ3の制御部21において自車両VAによる第1の煽り度Q2を算出する。また、他車両装置1Bで検出された各種の情報を通信部32Bからネットワーク4を経由してサーバ3に送信し、サーバ3の制御部21において、他車両VBによる第2の煽り度Q2’を算出する。それ以外の構成は前述した第2実施形態と同様である。
【0198】
このように、第1変形例に係る危険運転警告システム101では、煽られ度対応テーブルTb1、及び煽り度対応テーブルTb2がサーバ3に設けられており、サーバ3において、自車両VAによる第1の煽り度Q2及び他車両VBによる第2の煽り度Q2’が算出される。従って、自車両装置1A及び他車両装置1Bに搭載される記憶部315A、315Bの記憶容量、及び演算負荷を低減させることが可能となる。
【0199】
[第3実施形態の第2変形例の説明]
次に、前述した第3実施形態の第2変形例について説明する。装置構成は、前述した図1図4と同様であるので構成説明を省略する。
【0200】
前述した第3実施形態では、他車両VBに搭載されている煽り度算出部314Bにて、当該他車両VBが自車両VAに対して行っている煽り行為の第2の煽り度Q2’を算出し、算出した第2の煽り度Q2’をネットワーク4を経由して自車両VAに送信する構成とした。これに対して、第2変形例では、他車両装置1Bで検出された各種の情報をネットワーク4を経由して自車両装置1Aに送信する。そして、自車両装置1Aに搭載された演算処理部31Aにより、他車両VBが自車両VAに対して行っている煽り行為の第2の煽り度Q2’を算出する点で相違する。
【0201】
以下、第2変形例に係る危険運転警告システム101の処理手順を、図14に示すフローチャートを参照して説明する。初めに、図14のステップS111において、制御器11Aは、自車両装置1Aに搭載されるカメラ部12A、生体情報センサ13A、走行情報センサ14A、及びレーザレーダ15Aで検出される各情報を取得する。
【0202】
ステップS112において、制御器11Aは、ステップS111の処理で取得された各情報を記憶部315Aに記憶する。
【0203】
ステップS113において、煽り度算出部314Aは、煽り度対応テーブルTb2を参照して上記の各情報を数値化する。
【0204】
ステップS114において、他車両装置1Bに搭載されるカメラ部12B、生体情報センサ13B、走行情報センサ14B、及びレーザレーダ15Bで検出される各情報を取得する。具体的に、他車両装置1Bの通信部32Bより送信される各種のデータを、自車両装置1Aの通信部32Aにて受信する。
【0205】
ステップS115において、制御器11Aは、ステップS114の処理で取得された各情報を記憶部315Aに記憶する。
【0206】
ステップS116において、煽り度算出部314Aは、煽り度対応テーブルTb2を参照して上記の各情報を数値化する。
【0207】
ステップS117において、煽り度算出部314Aは自車両VAの第1の煽り度Q2を算出する。具体的に、煽り度算出部314Aは、前述した(4)式により自車両VAが他車両VBに対して煽り行為を行っている度合いである第1の煽り度Q2を算出する。第1の煽り度Q2は、判定時刻(瞬時)における数値を用いて算出することができる。また、それ以外にも、判定時刻から所定時間(例えば、10秒間)だけ遡った時間帯を設定し、この時間帯における第1の煽り度Q2の平均値、ピーク値、中央値などの代表値を用いることも可能である。また、上記時間帯の、ピーク値を所定時間(例えば10秒間)保持して第1の煽り度Q2とすることも可能である。
【0208】
ステップS118において、煽り度算出部314Aは他車両VBの第2の煽り度Q2’を算出する。具体的に、煽り度算出部314Aは、前述した(4)式により他車両VBが自車両VAに対して行っている煽り行為の度合いである第2の煽り度Q2’を算出する。第2の煽り度Q2’は、判定時刻(瞬時)における数値を用いて算出することができる。また、それ以外にも、判定時刻から所定時間(例えば、10秒間)だけ遡った時間帯を設定し、この時間帯における第2の煽り度Q2’の平均値、ピーク値、中央値などの代表値を用いることも可能である。また、上記時間帯の、ピーク値を所定時間(例えば10秒間)保持して第2の煽り度Q2’とすることも可能である。
【0209】
ステップS119において、危険度判断部312Aは、ステップS117の処理で算出された第1の煽り度Q2に基づいて、自車両VAの第2の評価値Yp1を設定する。具体的に図7Aに示したY0~Y3のうちのいずれかを自車両VAの第2の評価値Yp1として設定する。
【0210】
ステップS120において、危険度判断部312Aは、ステップS118の処理で算出された他車両VBの第2の煽り度Q2’に基づいて、他車両の第2の評価値Yp2を設定する。具体的に図7Bに示したY0~Y3のうちのいずれかを他車両VBの第2の評価値Yp2として設定する。
【0211】
ステップS121~S124の処理は、図13に示したステップS98~S101の処理と同一であるので、説明を省略する。
【0212】
このようにして、第3実施形態の第2変形例に係る危険運転警告システム101では、自車両VAが他車両VBに対して煽り行為を行っているときの第1の煽り度Q2を算出する。更に、他車両VBから、該他車両VBの各種の情報を取得し、取得した情報を用いて他車両VBが自車両VAに対して煽り行為を行っているときの第2の煽り度Q2’を算出する。
【0213】
従って、各煽り度Q2、Q2’を自車両装置1Aで算出できるので、他車両装置1Bの演算負荷を低減することが可能となる。
【0214】
以上、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0215】
1A 自車両装置
1B 他車両装置
3 サーバ
4 ネットワーク
11A、11B 制御器
12A、12B カメラ部
13A、13B 生体情報センサ
14A、14B 走行情報センサ
15A、15B レーザレーダ
21 制御部
22 通信部
23 記憶部
31A、31B 演算処理部
32A、32B 通信部
33A、33B 提示部
101 危険運転警告システム
121A、121B 車外カメラ
122A、122B 車内カメラ
311A、311B 画像認識部
312A、312B 危険度判断部
313A、313B 煽られ度算出部
314A 煽り度算出部(第1煽り度算出部)
314B 煽り度算出部(第2煽り度算出部)
315A、315B 記憶部
Tb1 煽られ度対応テーブル
Tb2 煽り度対応テーブル
TB1 第1評価値テーブル
TB2 第2評価値テーブル
VA 自車両
VB 他車両
Xp 第1の評価値
Yp、Yp1、Yp2 第2の評価値
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14