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  • 特許-複合体、成形体および成形体の製造方法 図1
  • 特許-複合体、成形体および成形体の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】複合体、成形体および成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20240730BHJP
   B27N 3/04 20060101ALI20240730BHJP
   D04H 1/732 20120101ALN20240730BHJP
【FI】
C08J5/04 CEP
B27N3/04 A
B27N3/04 D
D04H1/732
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020059828
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021155657
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】田中 英樹
(72)【発明者】
【氏名】中井 葉子
(72)【発明者】
【氏名】横川 忍
(72)【発明者】
【氏名】樋口 尚孝
(72)【発明者】
【氏名】関 俊一
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-268750(JP,A)
【文献】特開平11-226920(JP,A)
【文献】米国特許第06254814(US,B1)
【文献】特開2000-327840(JP,A)
【文献】米国特許第06709526(US,B1)
【文献】国際公開第2018/043034(WO,A1)
【文献】特表2000-504055(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0108532(US,A1)
【文献】特表平9-508422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27N 1/00-9/00
B29B 11/16
B29B 15/08-15/14
B29C 70/00-70/88
C08J 3/00-3/28
C08J 5/04-5/10
C08J 5/24
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/16
D04H 1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾式成形の原料に用いられる複合体であって、
セルロース繊維と、澱粉とを含み、
前記澱粉の少なくとも一部が前記セルロース繊維に融着しており、
前記澱粉の重量平均分子量が4万以上40万以下であり、前記複合体の総量に対して、前
記澱粉の含有率が30.0質量%以上50.0質量%以下であることを特徴とする複合体
【請求項2】
請求項1に記載の複合体を含むことを特徴とする成形体。
【請求項3】
前記成形体は、シート状をなすものである請求項に記載の成形体。
【請求項4】
繊維および請求項1に記載の複合体を混合して混合物を得る混合工程と、
前記混合物を少なくとも1回加湿する加湿工程と、
加湿された前記混合物を加圧および加熱して成形体を得る成形工程と、
を含むことを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項5】
前記成形体の総量に対して、前記澱粉の含有率が3.0質量%以上20.0質量%以下
である請求項に記載の成形体の製造方法。
【請求項6】
前記加湿工程終了時における前記混合物の含水率が10質量%以上50質量%以下であ
る請求項またはに記載の成形体の製造方法。
【請求項7】
前記成形工程に供される前記複合体は、セルロース繊維と、前記セルロース繊維に融着
した澱粉とを含む複合体シートを解繊して得られた解繊物を含むものである請求項ない
のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合体、成形体および成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
古くから、セルロース繊維を抄造する技術、すなわち、抄紙技術により、紙は製造されてきた。
【0003】
このような抄造法では、セルロース繊維間で水素結合を働かせることにより、セルロース繊維同士を絡み合わせ、結合力を発揮させることにより、十分な強度を有する紙を得ている。
【0004】
しかしながら、このような抄造法では、大量の水を使用する必要があり、また、その製造過程で、脱水・乾燥等の必要が生じ、そのために費やすエネルギーや時間が非常に大きい。さらに、使用した水は排水として適切に処理する必要がある。また、抄造法に用いる装置は、水、電力、排水設備等の大型のユーティリティーやインフラストラクチャーが必要となることが多く、小型化することが困難である。
【0005】
そこで、従来の抄紙法のように多量の水を用いない方法として、乾燥したセルロース繊維と樹脂との混合物を堆積させた後に、加圧加熱することによりシートを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1に記載の方法では、ポリエステル樹脂等の樹脂をセルロース繊維同士の結着に用いることにより、シート状の成形体である紙の強度を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2018/43034号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年、環境問題や埋蔵資源の節約に対応するために、石油由来の材料の使用を抑制することが求められている。
【0009】
これに対し、特許文献1に記載の発明では、セルロース繊維の結着に合成樹脂を用いている。
【0010】
上記のような要求に応えるためには、植物由来のような天然材料を用いることが好ましいが、特許文献1に記載の発明において、単に、合成樹脂の代わりに天然材料を用いると、十分な結着力が得られず、シートの強度を十分に優れたものとすることが困難である。また、合成樹脂の代わりに天然材料を用いた場合、一般に、加工性が低下し、加熱温度をより高くする必要がある等の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することができる。
【0012】
本発明の適用例に係る複合体は、乾式成形の原料に用いられる複合体であって、
セルロース繊維と、澱粉とを含み、
前記澱粉の少なくとも一部が前記セルロース繊維に融着しており、
前記複合体の総量に対して、前記澱粉の含有率が30.0質量%以上50.0質量%以下である。
【0013】
また、本発明の適用例に係る成形体は、本発明に係る複合体を含む。
【0014】
また、本発明の適用例に係る成形体の製造方法は、繊維および本発明に係る複合体を混合して混合物を得る混合工程と、
前記混合物を少なくとも1回加湿する加湿工程と、
加湿された前記混合物を加圧および加熱して成形体を得る成形工程と、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の複合体の好適な実施形態を示す模式的な拡大図である。
図2図2は、成形体製造装置の好適な実施形態を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[1]複合体
まず、本発明の複合体について説明する。
図1は、本発明の複合体の好適な実施形態を示す模式的な拡大図である。
【0017】
本発明の複合体C100は、乾式成形の原料に用いられるものであって、セルロース繊維C1と、澱粉C2とを含み、澱粉C2の少なくとも一部がセルロース繊維C1に融着しており、複合体C100の総量に対して、澱粉C2の含有率が30.0質量%以上50.0質量%以下である。
【0018】
このような複合体C100を用いることにより、石油由来の材料の使用を抑制しつつ、少量の水を用いるだけで、セルロース繊維を含む材料で構成され、強度に優れ、所望の形状を有する成形体を好適に製造することができる。すなわち、乾式の成形方法に好適に適用することができる。したがって、成形体の生産性や生産コスト、省エネルギー、成形体の製造設備の小型化等の観点からも有利である。より詳しく説明すると、澱粉C2の少なくとも一部がセルロース繊維C1に融着していることにより、複合体C100が、水を含む液体のミストや加湿された気体と接触した際に、澱粉C2が気体や液体のミストから直接吸収する水分と、セルロース繊維C1が吸収した水分であり、当該セルロース繊維C1から澱粉C2に供給される水分とによって、澱粉C2中の含水量を速やかにかつ十分に高めることができる。特に、水を含む液体に複合体C100を浸漬する等の処理を施さず、少量の水と接触した場合であっても、澱粉C2中の含水量を速やかにかつ十分に高めることができる。その結果、このように含水量が高められた澱粉C2、すなわち、加湿された澱粉C2は、加熱によりα化が好適に進行する。したがって、複合体C100を用いた成形体の生産性を優れたものとすることができる。また、上記のように、少量の水と加熱により、澱粉C2のα化が好適に進行するとともに、セルロース繊維C1との間で、水素結合のような非共有結合で結合力を発揮し、セルロース繊維C1との結合力に優れ、セルロース繊維C1に対して優れた被覆性を示すため、複合体C100を用いて製造される成形体の強度等を優れたものとすることができる。また、澱粉C2の少なくとも一部がセルロース繊維C1に融着していることにより、複合体C100を用いた成形体の製造時におけるセルロース繊維C1の飛散等をより効果的に防止することができる。また、このような複合体C100や複合体C100を用いて製造される成形体は、生分解性にも優れている。また、成形体を製造する装置の小型化にも寄与することができる。さらに、少量の水分で澱粉の結着力を発現できるので、製造される成形体を用いて再度成形体を乾式製造する際のリサイクル性にも優れる。なお、ここでいうリサイクル性とは、繊維と澱粉とを含む成形体を解繊して得た原料から再度乾式成形体を製造した場合の、製造された成形体の性能の劣化の度合いを指す。すなわち、再度製造された成形体の引張強度等が優れていればリサイクル性に優れており、劣っていればリサイクル性に劣るものとする。
【0019】
これに対し、上記の条件を満たさない場合には、満足のいく結果が得られない。
例えば、繊維と澱粉とを含む複合体であっても、複合体中に繊維に融着している澱粉が含まれていないと、複合体を少量の水と接触させただけでは、澱粉に十分に吸水させること、言い換えると澱粉中の含水量を十分に高めることが困難となり、その後の加熱処理によっても澱粉のα化を十分に進行させることができず、複合体を用いて製造される成形体の強度を十分に優れたものとすることができない。また、澱粉のα化を十分に進行させるためには、多量の水を用いたり、水との接触時間を長くしたりする必要があり、成形体の生産性が著しく低下する。また、成形体の製造装置の小型化も困難となる。
【0020】
また、セルロース繊維と、セルロース繊維に融着している澱粉とを含む複合体であっても、複合体の総量に対する澱粉の含有率が前記下限値未満であると、澱粉が有する特長を十分に発揮させることができず、複合体を用いて製造される成形体の強度を十分に優れたものとすることができない。
【0021】
また、セルロース繊維と、セルロース繊維に融着している澱粉とを含む複合体であっても、複合体の総量に対する澱粉の含有率が前記上限値を超えると、セルロース繊維から吸水されて澱粉に供給される水の量が減るため、複合体に水分を付与した際の澱粉の吸水性が低下し、澱粉をα化させるために、加熱前にあらかじめ多量の水で処理することが必要となり、複合体を用いた成形体の生産性、生産コストが著しく悪化するとともに、成形体の製造設備も大型化し、省エネルギーの観点からも好ましくない。また、複合体に多量の水分を付与する必要があるため、かかる複合体を用いて成形体を製造した場合、さらにその成形体を用いて再度成形体を乾式製造する場合のリサイクル性に劣る。
【0022】
なお、本発明において、乾式成形とは、成形体を製造する過程において、セルロース繊維を含む材料を、水を含む液体中に浸漬することのない方法のことを言い、少量の水を用いる方法、例えば、セルロース繊維を含む材料等に水を含む液体を噴霧する方法等も、乾式の成形方法に含まれることとする。
【0023】
[1-1]セルロース繊維
複合体C100は、セルロース繊維C1を含んでいる。
【0024】
セルロース繊維C1は、通常、複合体C100を用いて製造される成形体の主成分であり、成形体の形状の保持に大きく寄与するとともに、成形体の強度等の特性に大きな影響を与える成分である。
【0025】
セルロース繊維C1を構成するセルロースは、分子内に多数の水酸基を有しており、水素結合を好適に形成することができる化合物である。したがって、複合体C100を用いて製造される成形体は、セルロース繊維C1同士の結合力、および、セルロース繊維C1と澱粉C2との結合力のいずれにも優れたものとなり、全体としての強度、例えば、シート状の成形体の引っ張り強度等をより優れたものとすることができる。
【0026】
また、セルロース繊維C1は、バイオマス由来繊維であり、環境問題や埋蔵資源の節約等に好適に対応することができる。
【0027】
また、セルロースは、植物由来で豊富な天然素材であり、環境問題や埋蔵資源の節約等に特に好適に対応することができるとともに、複合体C100やそれを用いて製造される成形体の安定供給、コスト低減等の観点からも好ましい。また、セルロース繊維は、各種繊維の中でも、理論上の強度が特に高いものであり、成形体の強度のさらなる向上の観点からも有利である。
【0028】
セルロース繊維は、通常、主としてセルロースで構成されたものであるが、セルロース以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、ヘミセルロース、リグニン等が挙げられる。
また、セルロース繊維としては、漂白等の処理が施されたものを用いてもよい。
【0029】
複合体C100は、セルロース繊維C1とともに、澱粉C2を含み、澱粉C2の少なくとも一部がセルロース繊維C1に融着しているが、複合体C100は、澱粉C2が融着しているセルロース繊維C1とともに、澱粉C2が融着していないセルロース繊維C1を含んでいてもよい。
【0030】
セルロース繊維C1の平均長さは、特に限定されないが、0.1mm以上50mm以下であるのが好ましく、0.2mm以上5.0mm以下であるのがより好ましく、0.3mm以上3.0mm以下であるのがさらに好ましい。
【0031】
これにより、複合体C100を用いて製造される成形体の形状の安定性、強度等をより優れたものとすることができる。
【0032】
セルロース繊維C1の平均太さは、特に限定されないが、0.005mm以上0.5mm以下であるのが好ましく、0.010mm以上0.050mm以下であるのがより好ましい。
【0033】
これにより、複合体C100を用いて製造される成形体の形状の安定性、強度等をより優れたものとすることができる。また、複合体C100を用いて製造される成形体の表面に不本意な凹凸が生じることをより効果的に防止することができる。
【0034】
複合体C100中におけるセルロース繊維C1の含有率は、特に限定されないが、50.0質量%以上70.0質量%以下であるのが好ましく、52.0質量%以上68.0質量%以下であるのがより好ましく、54.0質量%以上66.0質量%以下であるのがさらに好ましく、56.0質量%以上64.0質量%以下であるのがもっとも好ましい。
【0035】
これにより、複合体C100を用いて製造される成形体の形状の安定性や強度等の特性をより優れたものとすることができる。また、成形体の製造時の成形性をより優れたものとすることができ、成形体の生産性を向上させる上でも有利である。
【0036】
[1-2]澱粉
複合体C100は、澱粉C2を所定の割合で含んでいる。また、澱粉C2の少なくとも一部は、前述したセルロース繊維C1に融着している。
【0037】
澱粉C2は、複合体C100を用いて製造される成形体において、セルロース繊維C1同士を結合する結合材として機能する成分である。特に、澱粉C2は、バイオマス由来の原料であるため、澱粉C2を用いることにより、環境問題や埋蔵資源の節約等に好適に対応することができる。また、澱粉C2が前述したような割合で複合体C100中に含まれることにより、吸水性が向上し、水分を付与した場合に当該水分を速やかに吸収することができる。また、澱粉量に対して少量の水分を与えた場合であっても、比較的低温で好適にα化し、優れた結合性を発揮することができる。
【0038】
澱粉C2は、複数のα-グルコース分子がグリコシド結合によって重合した高分子材料である。
澱粉C2は、アミロース、アミロペクチンの少なくとも一方を含む。
【0039】
前述したように、複合体C100中における澱粉C2の含有率は、30.0質量%以上50.0質量%以下であるが、32.0質量%以上48.0質量%以下であるのが好ましく、34.0質量%以上46.0質量%以下であるのがより好ましく、36.0質量%以上44.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0040】
複合体C100中における、セルロース繊維C1:100質量部に対する澱粉C2の含有量は、20質量部以上100質量部以下であるのが好ましく、25質量部以上80質量部以下であるのがより好ましく、52質量部以上85質量部以下であるのがさらに好まく、30質量部以上60質量部以下であるのがもっとも好ましい。
これにより、前述した本発明による効果がより顕著に発揮される。
【0041】
澱粉C2の重量平均分子量は、特に限定されないが、4万以上40万以下であるのが好ましく、6万以上35万以下であるのがより好ましく、8万以上30万以下であるのがさらに好ましい。
【0042】
これにより、澱粉の吸水性が向上し、水との接触時間をより短時間にした場合や、複合体C100と接触する水の量、例えば、複合体を曝露する雰囲気の湿度を比較的低くした場合であっても、より効率よく吸水することができ、加熱によるα化がより好適に進行する。その結果、複合体C100を用いた成形体の生産性を優れたものとすることができ、成形体の強度をより優れたものとすることができる。また、上記のような所定の分子量の澱粉C2は、水分付与による不本意な変性を特に生じにくく、複合体C100を用いて製造される成形体はリサイクル性にも優れたものとなる。複合体C100や複合体C100を用いて製造される成形体の生分解性をより優れたものとすることができる。
【0043】
上記のような分子量の澱粉C2は、例えば、天然の澱粉に対して、水に懸濁したのち硫酸、塩酸、あるいは次亜塩素酸ナトリウムを澱粉が糊化しない条件下で作用させる、または、天然の澱粉を直接、あるいはごく少量の塩酸などの揮発酸を水で希釈し加えて、よく混和、熟成、低温の乾燥した後120~180℃に加熱する、または、天然の澱粉を水とともに加熱した糊液を酸または酵素で加水分解するという処理を施すことにより、好適に得ることができる。
【0044】
なお、澱粉C2の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定から求めることができる。後述する実施例で示す重量平均分子量も、ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定から求められた値である。
【0045】
澱粉C2の原料となる天然の澱粉としては、例えば、各種植物由来のものを用いることができ、より具体的には、例えば、トウモロコシ、小麦、米等の穀類、ソラマメ、緑豆、小豆等の豆類、ジャガイモ、サツマイモ、タピオカ等のイモ類、カタクリ、ワラビ、葛等の野草類、サゴヤシ等のヤシ類を由来とするものを用いることができる。
【0046】
上述したように、複合体C100は、セルロース繊維C1とともに、澱粉C2を含み、澱粉C2の少なくとも一部がセルロース繊維C1に融着しているが、セルロース繊維C1に融着している澱粉C2とともに、セルロース繊維C1に融着していない澱粉C2を含んでいてもよい。
【0047】
[1-3]その他の成分
複合体C100は、前述したセルロース繊維C1および澱粉C2以外の成分を含んでいてもよい。
【0048】
このような成分としては、例えば、エーテル化タマリンドガム、エーテル化ローカストビーンガム、エーテル化グアガム、アカシアアラビヤ系ガム等の天然ガム糊;エーテル化カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の繊維素誘導糊;グリコーゲン、ヒアルロン酸、エーテル化澱粉、エステル化澱粉等の多糖類;アルギン酸ソーダ、寒天等の海藻類;コラーゲン、ゼラチン、加水分解コラーゲン等の動物性蛋白質;サイズ剤;セルロース繊維C1由来の不純物;澱粉C2由来の不純物等が挙げられる。
【0049】
ただし、複合体C100中におけるセルロース繊維C1および澱粉C2以外の成分の含有率は、10質量%以下であるのが好ましく、5.0質量%以下であるのがより好ましく、2.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0050】
本発明の複合体の形状は、特に限定されず、例えば、シート状、ブロック状、綿状、ペレット状、小片状、粉状等が挙げられる。綿状をなす本発明の複合体は、例えば、シート状や小片状をなす本発明の複合体を解繊することにより、好適に得ることができる。
【0051】
[2]成形体
次に、本発明の成形体について説明する。
本発明の成形体は、前述した本発明の複合体C100を含んで構成されている。
【0052】
これにより、石油由来の材料の使用を抑制しつつ、セルロース繊維を含む材料で構成され、強度に優れ、所望の形状を有する成形体を提供することができる。また、このような成形体は、生分解性にも優れている。
【0053】
本発明の成形体の形状は、特に限定されず、例えば、シート状、ブロック状、球状、三次元立体形状等、いかなるものであってもよいが、本発明の成形体は、シート状をなすものであるのが好ましい。なお、ここでいうシート状とは、厚さが30μm以上30mm以下、密度が0.05g/cm以上1.5g/cm以下となるように成形された成形体を指すとする。
【0054】
これにより、例えば、成形体を記録媒体等として好適に用いることができる。また、後述するような製造方法、製造装置を用いることにより、より効率よく製造することができる。
【0055】
本発明の成形体がシート状の記録媒体である場合、その厚さは、30μm以上3mm以下であるのが好ましい。
【0056】
これにより、成形体を記録媒体としてより好適に用いることができる。また、後述するような製造方法、製造装置を用いることにより、より効率よく製造することができる。
【0057】
本発明の成形体が液体吸収剤である場合、その厚さは、0.3mm以上30mm以下であるのが好ましい。
【0058】
これにより、成形体を液体吸収体としてより好適に用いることができる。また、後述するような製造方法、製造装置を用いることにより、より効率よく製造することができる。
【0059】
本発明の成形体がシート状の記録媒体である場合、その密度は、0.6g/m以上1.0g/m以下であるのが好ましい。
これにより、成形体を記録媒体としてより好適に用いることができる。
【0060】
本発明の成形体が液体吸収体である場合、その密度は、0.05g/m以上0.4g/m以下であるのが好ましい。
これにより、成形体を液体吸収体としてより好適に用いることができる。
【0061】
本発明の成形体は、その少なくとも一部が前述した本発明の複合体C100で構成されていればよく、本発明の複合体C100で構成されていない部位を有するものであってもよい。
【0062】
本発明の成形体の用途は、特に限定されず、例えば、記録媒体、液体吸収体、緩衝材、吸音材等が挙げられる。
【0063】
また、本発明の成形体は、成形工程の後に、切断等の機械加工や、各種化学処理が施されて、用いられるものであってもよい。
【0064】
[3]成形体の製造方法
次に、本発明の成形体の製造方法について説明する。
【0065】
本発明の成形体の製造方法は、繊維および前述した本発明の複合体を混合して混合物を得る混合工程と、前記混合物を少なくとも1回加湿する加湿工程と、加湿された前記混合物を加圧および加熱して成形体を得る成形工程とを含む。本発明の製造方法では、加湿のために水を利用するものの、従来の抄紙技術とは異なり、水の使用量は、被処理物である混合物に対して十分に少ない割合である。言い換えると、本発明の製造方法は、乾式成形を用いた方法である。
【0066】
これにより、石油由来の材料の使用を抑制しつつ、少量の水を用いるだけで、セルロース繊維を含む材料で構成され、強度に優れ、所望の形状を有する成形体を好適に製造することができる成形体の製造方法を提供することができる。また、成形体の製造時におけるセルロース繊維の飛散等をより効果的に防止することができる。また、生分解性にも優る成形体を製造することができる。また、成形体を製造する装置の小型化にも寄与することができる。
【0067】
[3-1]混合工程
混合工程では、繊維と本発明の複合体とを混合して混合物を得る。以下の説明では、本発明の複合体を構成するセルロース繊維を「第1の繊維」、混合工程で本発明の複合体と混合される繊維を「第2の繊維」ということもある。
【0068】
本工程で、本発明の複合体と混合される第2の繊維は、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン等の合成樹脂で構成された合成繊維であってもよいが、天然由来の繊維、すなわち、バイオマス由来繊維であるのが好ましく、セルロース繊維であるのがより好ましい。
【0069】
これにより、環境問題や埋蔵資源の節約等により好適に対応することができる。
特に、第2の繊維がセルロース繊維である場合には、以下のような効果も得られる。
【0070】
すなわち、セルロースは、植物由来で豊富な天然素材であり、繊維として、セルロース繊維を用いることにより、環境問題や埋蔵資源の節約等にさらに好適に対応することができるとともに、成形体の安定供給、コスト低減等の観点からも好ましい。また、セルロース繊維は、各種繊維の中でも、理論上の強度が特に高いものであり、成形体の強度のさらなる向上の観点からも有利である。
【0071】
本発明の複合体と混合される第2の繊維は、例えば、古紙等の紙のような成形体やその粗砕物の形態のものであってもよいし、綿状の形態、例えば、古紙等の紙のような成形体やその粗砕物の解繊物等であってもよい。
【0072】
本工程における、本発明の複合体に対する第2の繊維の混合割合は、質量比で200%以上1000%以下であるのが好ましく、250%以上900%以下であるのがより好ましく、300%以上500%以下であるのがさらに好ましい。
【0073】
これにより、製造される成形体の強度をより優れたものとすることができる。また、例えば、第2の繊維として古紙由来のものを用いることにより、古紙のリサイクル効率をより優れたものとすることができる。
【0074】
本工程においては、少なくとも、本発明の複合体と第2の繊維とを混合すればよいが、これらとともに、本発明の複合体および第2の繊維以外の成分を混合してもよい。
【0075】
このような成分としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン等の白色材、5‐クロロ‐2‐メチル‐4‐イソチアゾリン‐3‐オン等の殺菌剤等が挙げられる。
【0076】
ただし、本工程で得られる混合物中における本発明の複合体および第2の繊維以外の成分の含有率は、10.0質量%以下であるのが好ましく、5.0質量%以下であるのがより好ましく、1.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0077】
[3-2]加湿工程
加湿工程では、本発明の複合体および第2の繊維を含む混合物を加湿する。
【0078】
これにより、後述する成形工程で、第1の繊維としてのセルロース繊維と澱粉との接合強度や、澱粉を介した第1の繊維としてのセルロース繊維同士の接合強度、第2の繊維と澱粉との接合強度、澱粉を介した第2の繊維同士の接合強度、澱粉を介した第1の繊維としてのセルロース繊維と第2の繊維との接合強度等を優れたものとすることができ、最終的に得られる成形体の強度等を十分に優れたものとすることができる。また、成形工程での成形を比較的穏やかな条件で好適に行うことができる。
【0079】
前記混合物を加湿する方法は、特に限定されないが、前記混合物に対して非接触で行うのが好ましく、例えば、前記混合物を高湿度雰囲気下に置く方法、高湿度空間に前記混合物を通過させる方法、前記混合物に水を含む液体のミストを吹きかける方法、水を含む液体のミストが浮遊する空間に前記混合物を通過させる方法等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上の方法を組み合わせて行うことができる。なお、水を含む液体中には、例えば、防腐剤、防カビ剤、殺菌剤、殺虫剤等が含まれていてもよい。
【0080】
前記混合物の加湿は、例えば、成形体を製造する過程において、複数の段階で行ってもよい。
【0081】
上記のように、成形体を製造する過程において複数の段階で前記混合物の加湿を行うことにより、例えば、各段階での加湿量を必要以上に高める必要がなくなる。その結果、例えば、成形体製造装置での前記混合物等の搬送速度を高めることができ、成形体の生産性をより優れたものとすることができる。
【0082】
前記混合物の加湿に先立ち、前記混合物の原料、例えば、第1の繊維や、本発明の複合体に対して加湿を行ってもよい。
【0083】
これにより、例えば、前記混合物に対する加湿量を必要以上に高める必要がなくなる。その結果、例えば、成形体製造装置での前記混合物等の搬送速度を高めることができ、成形体の生産性をより優れたものとすることができる。
【0084】
加湿工程で、前記混合物に付与する水分量は、特に限定されないが、加湿工程終了時における前記混合物の含水率、すなわち、加湿工程終了時における前記混合物の質量に対する、当該混合物が含む水分の質量の割合は、10質量%以上50質量%以下であるのが好ましく、13質量%以上45質量%以下であるのがより好ましく、15質量%以上40質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0085】
これにより、より好適に澱粉に吸水させることができ、後の成形工程をより好適に行うことができる。その結果、最終的に得られる成形体の強度、信頼性等をより優れたものとすることができる。また、澱粉の吸水に要する時間を比較的短いものとすることができるため、成形体の生産性をより優れたものとすることができる。
【0086】
なお、水分含有量は、A&D社製の加熱乾燥式水分計等を用いた測定により求めることができる。
【0087】
[3-3]成形工程
成形工程では、加湿された前記混合物を加熱加圧して所定の形状に成形する。これにより、融着した澱粉により繊維同士が結合した本発明の成形体、すなわち、融着した澱粉により第1の繊維同士、第2の繊維同士、第1の繊維と第2の繊維が結合した成形体が得られる。なお、加湿工程と成形工程とは、同時進行的に行ってもよい。
【0088】
前述したように、複合体は、第1の繊維としてのセルロース繊維と、澱粉とを含み、澱粉の少なくとも一部が第1の繊維としてのセルロース繊維に融着しており、澱粉の含有率が30.0質量%以上50.0質量%以下のものであればよいが、成形工程に供される時点において、第1の繊維としてのセルロース繊維と、当該セルロース繊維に融着した澱粉とを含む複合体シートを解繊して得られた解繊物を含むものであるのが好ましい。
【0089】
このような解繊物は、通常、綿状をなし、種々の形状、厚さの成形体の製造により好適に対応することができる。また、解繊物の原料としてシート状の複合体を用いることにより、混合物の調製が容易となる。また、必要時に必要な量だけ、シート状の複合体である複合体シートから混合物を容易に調製することができるため、その結果、原料の保管に要する空間を狭くすることができ、成形体製造装置のさらなる小型化にも寄与する。また、シート状の複合体が記録媒体等として用いられた古紙であり、これから、シート状の成形体を製造する場合、複合体の再利用回数、リサイクルの回数をより好適に増やすことができ好ましい。
【0090】
成形工程における加熱温度は、特に限定されないが、60℃以上180℃以下であるのが好ましく、70℃以上170℃以下であるのがより好ましく、80℃以上160℃以下であるのがさらに好ましい。
【0091】
これにより、吸水している澱粉のα化を好適に進行させることができるとともに、成形体の構成材料が不本意に劣化してしまうこと等を効果的に防止することができ、また、省エネルギーの観点からも好ましい。また、得られる成形体の耐熱性や室温等の比較的低温での機械的強度等をより優れたものとすることができる。なお、上記の温度は、合成樹脂であるポリエステルを結合材として用いた場合よりも、十分に低い温度である。
【0092】
成形工程での加圧は、0.1MPa以上100MPa以下で行うのが好ましく、0.3MPa以上20MPa以下で行うのがより好ましい。
本工程は、例えば、熱プレス、熱ローラー等を用いて行うことができる。
【0093】
このようにして得られる成形体中における、成形体の総量に対する澱粉の含有率は、3.0質量%以上20.0質量%以下であるのが好ましく、4.0質量%以上18.0質量%以下であるのがより好ましく、5.0質量%以上16.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0094】
これにより、成形体の強度をより優れたものとすることができる。また、例えば、第2の繊維として古紙由来のものを用いた場合に、古紙のリサイクル効率をより優れたものとすることができる。
【0095】
[3-4]成形体製造装置
次に、本発明の成形体の製造方法に好適に適用することができる成形体製造装置について説明する。
【0096】
図2は、成形体製造装置の好適な実施形態を示す概略側面図である。
なお、以下では、図2の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言うことがある。
【0097】
なお、図2は、概略構成図であり、成形体製造装置100の各部の位置関係は、図示の位置関係とは異なる。また、各図において、原料M1A、原料M1B、粗砕片M2、解繊物M3、第1選別物M4-1、第2選別物M4-2、第1ウェブM5、細分体M6、第2ウェブM8、シートSが搬送される方向、すなわち、矢印で示す方向を搬送方向とも言う。また、矢印の先端側を搬送方向下流側、矢印の基端側を搬送方向上流側とも言う。
【0098】
図2に示す成形体製造装置100は、原料M1Aおよび原料M1Bを粗砕、解繊し、堆積させ、この堆積物を成形部20によって成形することで成形体を得る装置である。
【0099】
また、成形体製造装置100により製造される成形体は、例えば、再生紙のようなシート状をなしていてもよく、ブロック状をなしていてもよい。また、成形体の密度も特に限定されず、シートのような繊維の密度が比較的高い成形体であってもよく、スポンジ体のような繊維の密度が比較的低い成形体であってもよく、これらの特性が混在する成形体であってもよい。
【0100】
原料M1Aとしては、本発明の複合体、すなわち、第1の繊維としてのセルロース繊維と、澱粉とを含み、前記澱粉の少なくとも一部が前記セルロース繊維に融着しており、前記複合体の総量に対して、前記澱粉の含有率が30.0質量%以上50.0質量%以下である複合体を用いる。特に、本実施形態では、原料M1Aは、シート状をなすものである。原料M1Bとしては、例えば、使用済みまたは不要となった古紙を利用することができる。原料M1Aおよび原料M1Bは、例えば、再生紙であってもよいし、非再生紙であってもよい。
【0101】
以下の説明では、シート状をなす本発明の複合体で構成された原料M1Aと、使用済みまたは不要となった古紙である原料M1Bとを用い、製造される成形体が、再生紙であるシートSである場合について中心的に説明する。
【0102】
図2に示す成形体製造装置100は、原料供給部11と、粗砕部12と、解繊部13と、選別部14と、第1ウェブ形成部15と、細分部16と、分散部18と、第2ウェブ形成部19と、成形部20と、切断部21と、ストック部22と、回収部27と、これらの作動を制御する制御部28と、を備えている。粗砕部12、解繊部13、選別部14、第1ウェブ形成部15、細分部16、分散部18、第2ウェブ形成部19、成形部20、切断部21およびストック部22の各々が、シートを処理する処理部である。
【0103】
また、原料供給部11と、粗砕部12または解繊部13とにより、シート処理装置10Aが構成される。また、シート処理装置10Aと、第2ウェブ形成部19とにより、繊維体堆積装置10Bが構成される。
【0104】
また、成形体製造装置100は、加湿部231と、加湿部232と、加湿部233と、加湿部234と、加湿部235と、加湿部236とを備えている。その他、成形体製造装置100は、ブロアー261と、ブロアー262と、ブロアー263とを備えている。
【0105】
また、加湿部231~加湿部236およびブロアー261~ブロアー263は、制御部28と電気的に接続されており、CPU281および記憶部282を備える制御部28によってその作動が制御される。すなわち、本実施形態では、1つの制御部28によって成形体製造装置100の各部の作動が制御される構成である。ただし、これに限定されず、例えば、原料供給部11の各部の作動を制御する制御部と、原料供給部11以外の部位の作動を制御する制御部と、をそれぞれ有する構成であってもよい。
【0106】
また、成形体製造装置100では、原料供給工程と、粗砕工程と、解繊工程と、選別工程と、第1ウェブ形成工程と、分断工程と、放出工程と、堆積工程と、シート形成工程と、切断工程とがこの順に実行される。粗砕工程が本発明の成形体の製造方法での混合工程に該当し、シート形成工程が本発明の成形体の製造方法での成形工程に該当する。また、後に詳述する各加湿部で加湿する工程が加湿工程に該当する。また、粗砕工程で得られた混合物である粗砕片M2を得、この混合物である粗砕片M2は、成形体製造装置100の各部で、順次、解繊物M3、第1選別物M4-1、第2選別物M4-2、第1ウェブM5、細分体M6、第2ウェブM8への形態を変化させる。これらは、いずれも、本発明の成形体の製造方法での混合物に該当する。
【0107】
以下、各部の構成について説明する。
原料供給部11は、粗砕部12に主原料である原料M1Bおよび補助原料である原料M1Aを供給する原料供給工程を行う部分である。
【0108】
また、本実施形態では、原料M1Aおよび原料M1Bは、シート状をなしている場合について説明するが、これに限定されず、例えば、ブロック状、ペレット状、綿状、小片状をなしていてもよい。
【0109】
図示の構成では、原料供給部11は、原料M1Aを貯留する第1貯留部11Aと、原料M1Bを貯留する第2貯留部11Bとを有する構成であるが、原料M1Aおよび原料M1Bを一括して貯留する貯留部を有する構成であってもよい。
【0110】
粗砕部12は、原料供給部11から供給された原料M1Aおよび原料M1Bを大気中等の気中で粗砕する粗砕工程を行う部分である。粗砕部12は、一対の粗砕刃121と、シュート122とを有している。
【0111】
一対の粗砕刃121は、互いに反対方向に回転することにより、これらの間で原料M1Aおよび原料M1Bを粗砕して、すなわち、裁断して粗砕片M2にすることができる。粗砕片M2の形状や大きさは、解繊部13における解繊処理に適しているのが好ましく、例えば、1辺の長さが100mm以下の小片であるのが好ましく、10mm以上70mm以下の小片であるのがより好ましい。
【0112】
シュート122は、一対の粗砕刃121の下方に配置され、例えば漏斗状をなすものとなっている。これにより、シュート122は、粗砕刃121によって粗砕されて落下してきた粗砕片M2を受けることができる。
【0113】
また、シュート122の上方には、加湿部231が一対の粗砕刃121に隣り合って配置されている。加湿部231は、シュート122内の粗砕片M2を加湿するものである。この加湿部231は、水分を含むフィルターを有し、フィルターに空気を通過させることにより、湿度を高めた加湿空気を粗砕片M2に供給する気化式の加湿器で構成されている。加湿空気が粗砕片M2に供給されることにより、上記[3-2]で説明した加湿工程を行うことができ、上記のような効果を得ることができる。また、粗砕片M2が静電気によってシュート122等に付着するのを抑制することができる。
【0114】
シュート122は、管241を介して、解繊部13に接続されている。シュート122に集められた粗砕片M2は、管241を通過して、解繊部13に搬送される。
【0115】
解繊部13は、粗砕片M2を気中で、すなわち、乾式で解繊する解繊工程を行う部分である。この解繊部13での解繊処理により、粗砕片M2から解繊物M3を生成することができる。ここで「解繊する」とは、複数の繊維が結着されてなる粗砕片M2を、繊維1本1本に解きほぐすことをいう。そして、この解きほぐされたものが解繊物M3となる。解繊物M3の形状は、線状や帯状である。また、解繊物M3同士は、絡み合って塊状となった状態、すなわち、いわゆる「ダマ」を形成している状態で存在してもよい。
【0116】
解繊部13は、例えば本実施形態では、高速回転する回転刃と、回転刃の外周に位置するライナーとを有するインペラーミルで構成されている。解繊部13に流入してきた粗砕片M2は、回転刃とライナーとの間に挟まれて解繊される。
【0117】
また、解繊部13は、回転刃の回転により、粗砕部12から選別部14に向かう空気の流れ、すなわち、気流を発生させることができる。これにより、粗砕片M2を管241から解繊部13に吸引することができる。また、解繊処理後、解繊物M3を、管242を介して選別部14に送り出すことができる。
【0118】
管242の途中には、ブロアー261が設置されている。ブロアー261は、選別部14に向かう気流を発生させる気流発生装置である。これにより、選別部14への解繊物M3の送り出しが促進される。
【0119】
選別部14は、解繊物M3を、繊維の長さの大小によって選別する選別工程を行う部分である。選別部14では、解繊物M3は、第1選別物M4-1と、第1選別物M4-1よりも大きい第2選別物M4-2とに選別される。第1選別物M4-1は、その後のシートSの製造に適した大きさのものとなっている。その平均長さは、1μm以上30μm以下であるのが好ましい。一方、第2選別物M4-2は、例えば、解繊が不十分なものや、解繊された繊維同士が過剰に凝集したもの等が含まれる。
【0120】
選別部14は、ドラム部141と、ドラム部141を収納するハウジング部142とを有する。
【0121】
ドラム部141は、円筒状をなす網体で構成され、その中心軸回りに回転する篩である。このドラム部141には、解繊物M3が流入してくる。そして、ドラム部141が回転することにより、網の目開きよりも小さい解繊物M3は、第1選別物M4-1として選別され、網の目開き以上の大きさの解繊物M3は、第2選別物M4-2として選別される。
第1選別物M4-1は、ドラム部141から落下する。
【0122】
一方、第2選別物M4-2は、ドラム部141に接続されている管243に送り出される。管243は、ドラム部141と反対側、すなわち、上流側が管241に接続されている。この管243を通過した第2選別物M4-2は、管241内で粗砕片M2と合流して、粗砕片M2とともに解繊部13に流入する。これにより、第2選別物M4-2は、解繊部13に戻されて、粗砕片M2とともに解繊処理される。
【0123】
また、ドラム部141から落下した第1選別物M4-1は、気中に分散しつつ落下して、ドラム部141の下方に位置する第1ウェブ形成部15に向かう。第1ウェブ形成部15は、第1選別物M4-1から第1ウェブM5を形成する第1ウェブ形成工程を行う部分である。第1ウェブ形成部15は、メッシュベルト151と、3つの張架ローラー152と、吸引部153とを有している。
【0124】
メッシュベルト151は、無端ベルトであり、第1選別物M4-1が堆積する。このメッシュベルト151は、3つの張架ローラー152に掛け回されている。そして、張架ローラー152の回転駆動により、メッシュベルト151上の第1選別物M4-1は、下流側に搬送される。
【0125】
第1選別物M4-1は、メッシュベルト151の目開き以上の大きさとなっている。これにより、第1選別物M4-1は、メッシュベルト151の通過が規制され、よって、メッシュベルト151上に堆積することができる。また、第1選別物M4-1は、メッシュベルト151上に堆積しつつ、メッシュベルト151ごと下流側に搬送されるため、層状の第1ウェブM5として形成される。
【0126】
また、第1選別物M4-1には、例えば塵や埃等が混在しているおそれがある。塵や埃は、例えば、粗砕や解繊によって生じることがある。そして、このような塵や埃は、後述する回収部27に回収されることとなる。
【0127】
吸引部153は、メッシュベルト151の下方から空気を吸引するサクション機構である。これにより、メッシュベルト151を通過した塵や埃を空気ごと吸引することができる。
【0128】
また、吸引部153は、管244を介して、回収部27に接続されている。吸引部153で吸引された塵や埃は、回収部27に回収される。
【0129】
回収部27には、管245がさらに接続されている。また、管245の途中には、ブロアー262が設置されている。このブロアー262の作動により、吸引部153で吸引力を生じさせることができる。これにより、メッシュベルト151上における第1ウェブM5の形成が促進される。この第1ウェブM5は、塵や埃等が除去されたものとなる。また、塵や埃は、ブロアー262の作動により、管244を通過して、回収部27まで到達する。
【0130】
ハウジング部142は、加湿部232と接続されている。加湿部232は、気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング部142内には、加湿空気が供給される。この加湿空気により、上記[3-2]で説明した加湿工程を行うことができ、上記のような効果を得ることができる。また、第1選別物M4-1を加湿することができ、よって、第1選別物M4-1がハウジング部142の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することもできる。
【0131】
選別部14の下流側には、加湿部235が配置されている。加湿部235は、水を噴霧する超音波式加湿器で構成されている。これにより、第1ウェブM5に水分を供給することができ、よって、第1ウェブM5の水分量が調整される。この調整により、上記[3-2]で説明した加湿工程を行うことができ、上記のような効果を得ることができる。また、静電力による第1ウェブM5のメッシュベルト151への吸着を抑制することができる。これにより、第1ウェブM5は、メッシュベルト151が張架ローラー152で折り返される位置で、メッシュベルト151から容易に剥離される。
【0132】
加湿部235の下流側には、細分部16が配置されている。細分部16は、メッシュベルト151から剥離した第1ウェブM5を分断する分断工程を行う部分である。細分部16は、回転可能に支持されたプロペラ161と、プロペラ161を収納するハウジング部162とを有している。そして、回転するプロペラ161により、第1ウェブM5を分断することができる。分断された第1ウェブM5は、細分体M6となる。また、細分体M6は、ハウジング部162内を下降する。
【0133】
ハウジング部162は、加湿部233と接続されている。加湿部233は、気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング部162内には、加湿空気が供給される。この加湿空気により、上記[3-2]で説明した加湿工程を行うことができ、上記のような効果を得ることができる。また、細分体M6がプロペラ161やハウジング部162の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することもできる。
【0134】
細分部16の下流側には、管172と、ブロアー173とが配されている。
管172は、細分部16のハウジング部162と、分散部18のハウジング182とを接続しており、細分体M6中の第1の繊維であるセルロース繊維、澱粉および第2の繊維が十分に攪拌、混合された細分体M6が通過する流路である。
【0135】
また、管172の途中には、ブロアー173が設置されている。ブロアー173が有する羽根等の回転部の作用により、細分体M6中の第1の繊維であるセルロース繊維、澱粉および第2の繊維の混合が促進される。また、ブロアー173は、分散部18に向かう気流を発生させることができる。この気流により、管172内で、細分体M6中の第1の繊維であるセルロース繊維、澱粉および第2の繊維を撹拌することができる。これにより、細分体M6中の第1の繊維であるセルロース繊維、澱粉および第2の繊維が均一に分散した状態で、分散部18に搬送される。また、細分体M6中の第1の繊維であるセルロース繊維および第2の繊維は、管172内を通過する過程でほぐされて、より細かい繊維状となる。
【0136】
なお、図2に示すように、ブロアー173は、制御部28と電気的に接続されており、その作動が制御される。また、ブロアー173の送風量を調整することにより、ドラム181内に送り込む空気の量を調整することができる。
【0137】
なお、図示はしないが、管172は、ドラム181側の端部が2股に分岐しており、分岐した端部は、ドラム181の端面に形成された図示しない導入口にそれぞれ接続されている。
【0138】
図2に示す分散部18は、細分体M6における、互いに絡み合った繊維同士をほぐして放出する放出工程を行う部分である。分散部18は、解繊物である細分体M6を導入および放出するドラム181と、ドラム181を収納するハウジング182と、ドラム181を回転駆動する駆動源183と、を有する。
【0139】
ドラム181は、円筒状をなす網体で構成され、その中心軸回りに回転する篩である。ドラム181が回転することにより、細分体M6のうち、網の目開きよりも小さい繊維等が、ドラム181を通過することができる。その際、細分体M6がほぐされて空気とともに放出される。すなわち、ドラム181が、繊維を含む材料を放出する放出部として機能する。
【0140】
駆動源183は、図示はしないが、モーターと、減速機と、ベルトと、を有する。モーターは、モータードライバーを介して制御部28と電気的に接続されている。また、モーターから出力された回転力は、減速機によって減速される。ベルトは、例えば、無端ベルトで構成されており、減速機の出力軸およびドラムの外周に掛け回されている。これにより、減速機の出力軸の回転力がベルトを介してドラム181に伝達される。
【0141】
また、ハウジング182は、加湿部234と接続されている。加湿部234は、気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング182内には、加湿空気が供給される。この加湿空気により、ハウジング182内を加湿することができ、上記[3-2]で説明した加湿工程を行うことができ、上記のような効果を得ることができる。また、細分体M6がハウジング182の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することもできる。
【0142】
また、ドラム181で放出された細分体M6は、気中に分散しつつ落下して、ドラム181の下方に位置する第2ウェブ形成部19に向かう。第2ウェブ形成部19は、細分体M6を堆積させて堆積物である第2ウェブM8を形成する堆積工程を行う部分である。第2ウェブ形成部19は、メッシュベルト191と、張架ローラー192と、吸引部193とを有している。
【0143】
メッシュベルト191は、メッシュ部材であり、図示の構成では、無端ベルトで構成される。また、メッシュベルト191には、分散部18が分散、放出した細分体M6が堆積する。このメッシュベルト191は、4つの張架ローラー192に掛け回されている。そして、張架ローラー192の回転駆動により、メッシュベルト191上の細分体M6は、下流側に搬送される。
【0144】
なお、図示の構成では、メッシュ部材の一例としてメッシュベルト191を用いる構成であるが、本発明ではこれに限定されず、例えば、平板状をなすものであってもよい。
【0145】
また、メッシュベルト191上のほとんどの細分体M6は、メッシュベルト191の目開き以上の大きさである。これにより、細分体M6は、メッシュベルト191を通過してしまうのが規制され、よって、メッシュベルト191上に堆積することができる。また、細分体M6は、メッシュベルト191上に堆積しつつ、メッシュベルト191ごと下流側に搬送されるため、層状の第2ウェブM8として形成される。
【0146】
吸引部193は、メッシュベルト191の下方から空気を吸引するサクション機構である。これにより、メッシュベルト191上に細分体M6を吸引することができ、よって、細分体M6のメッシュベルト191上への堆積が促進される。
【0147】
吸引部193には、管246が接続されている。また、この管246の途中には、ブロアー263が設置されている。このブロアー263の作動により、吸引部193で吸引力を生じさせることができる。
【0148】
分散部18の下流側には、加湿部236が配置されている。加湿部236は、加湿部235と同様の超音波式加湿器で構成されている。これにより、第2ウェブM8に水分を供給することができ、よって、第2ウェブM8の水分量が調整される。この調整により、上記[3-2]で説明した加湿工程を行うことができ、上記のような効果を得ることができる。また、静電力による第2ウェブM8のメッシュベルト191への吸着を抑制することができる。これにより、第2ウェブM8は、メッシュベルト191が張架ローラー192で折り返される位置で、メッシュベルト191から容易に剥離される。
【0149】
なお、加湿部231~加湿部236までに加えられる合計水分量は、特に限定されないが、加湿工程終了時における混合物の含水率、すなわち、加湿部236で加湿された状態の第2ウェブM8の質量に対する、当該第2ウェブM8が含む水分の質量の割合は、15質量%以上50質量%以下であるのが好ましく、15質量%以上30質量%以下であるのがより好ましい。
【0150】
第2ウェブ形成部19の下流側には、成形部20が配置されている。成形部20は、第2ウェブM8からシートSを形成するシート形成工程を行う部分である。この成形部20は、加圧部201と、加熱部202とを有している。
【0151】
加圧部201は、一対のカレンダーローラー203を有し、カレンダーローラー203の間で第2ウェブM8を加熱せずに加圧することができる。これにより、第2ウェブM8の密度が高められる。この第2ウェブM8は、加熱部202に向けて搬送される。なお、一対のカレンダーローラー203のうちの一方は、図示しないモーターの作動により駆動する主動ローラーであり、他方は、従動ローラーである。
【0152】
加熱部202は、一対の加熱ローラー204を有し、加熱ローラー204の間で第2ウェブM8を加熱しつつ、加圧することができる。この加熱加圧により、第2ウェブM8内では、加湿により吸水している澱粉がα化して粘着性を発現し、この粘着性を発現した澱粉を介して繊維同士が結着する。これにより、シートSが形成される。そして、このシートSは、切断部21に向けて搬送される。なお、一対の加熱ローラー204の一方は、図示しないモーターの作動により駆動する主動ローラーであり、他方は、従動ローラーである。
【0153】
成形部20の下流側には、切断部21が配置されている。切断部21は、シートSを切断する切断工程を行う部分である。この切断部21は、第1カッター211と、第2カッター212とを有する。
【0154】
第1カッター211は、シートSの搬送方向と交差する方向、特に直交する方向にシートSを切断するものである。
【0155】
第2カッター212は、第1カッター211の下流側で、シートSの搬送方向に平行な方向にシートSを切断するものである。この切断は、シートSの幅方向の両側端部の不要な部分を除去して、シートSの幅を整えるものであり、切断除去された部分は、いわゆる「みみ」と呼ばれる。
【0156】
このような第1カッター211と第2カッター212との切断により、所望の形状、大きさのシートSが得られる。そして、このシートSは、さらに下流側に搬送されて、ストック部22に蓄積される。
【0157】
なお、成形部20としては、上記のようにシートSに成形する構成に限定されず、例えば、ブロック状、球状等の成形体に成形する構成であってもよい。
【0158】
このような成形体製造装置100が備える各部は、後述する制御部28と電気的に接続されている。そして、これら各部の作動は、制御部28によって制御される。
【0159】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0160】
例えば、成形体の製造に用いる成形体製造装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0161】
また、前述した説明では、成形体製造装置において、加湿工程を複数回行う場合について出し標的に説明したが、成形体の製造過程において、加湿工程は、1回のみ行うものであってもよい。
【0162】
また、本発明の成形体の製造方法は、前述した混合工程と、加湿工程と、成形工程とを有していればよく、前述した成形体製造装置を用いる場合に限らず、いかなる装置を用いてもよい。
【実施例
【0163】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[4]澱粉の調製
【0164】
(調製例1)
重量平均分子量が130万の澱粉(日澱科学株式会社製、G-800)を用意し、この澱粉を水に懸濁したのち、硫酸を澱粉が糊化しない条件下で作用させて、よく混和させて、12時間撹拌した後、50℃で24時間乾燥させ、含水率を10質量%以下となるまで乾燥させた後、120~180℃に加熱することにより、重量平均分子量が40万の澱粉を得た。
【0165】
(調製例2~6)
重量平均分子量が130万の澱粉(日澱科学株式会社製、G-800)に対する処理条件(硫酸の濃度、撹拌時間)を変更することにより、最終的に得られる澱粉の重量平均分子量が表1に示す値となるように調整した以外は、前記調製例1と同様にして、重量平均分子量が調整された澱粉を得た。
各調製例で得られた重量平均分子量が調整された澱粉の条件を表1にまとめて示す。
【0166】
【表1】
【0167】
[5]複合体の製造
(実施例A1)
まず、図2に示すような成形体製造装置100を用いて、以下のようにして、セルロースの解繊物を得た。
【0168】
すなわち、まず、原料M1Bとして、セルロース繊維で構成されたG80(三菱製紙社製)を複数枚用意し、これらを原料供給部11の第2貯留部11Bに収容した。なお、このとき、原料供給部11の第1貯留部11Aには、何も収容しなかった。
その後、前述したように、成形体製造装置100の運転を行った。
【0169】
このとき、管172に設けられた図示しない添加物供給手段から、前記調製例1で調製した澱粉を所定の割合で管172に供給し、第1ウェブ形成部15で形成されたセルロース繊維からなる第1ウェブM5と、澱粉とが混合された混合物を得た。この混合物を、分散部18、第2ウェブ形成部19、成形部20、切断部21、ストック部22と順次搬送することにより、セルロース繊維と調製例1の澱粉とを含み、澱粉の少なくとも一部がセルロース繊維に融着してなるシート状の複合体が得られた。
【0170】
(実施例A2~A8)
澱粉として表2に示すものを用いるとともに、澱粉と解繊されたセルロース繊維との混合比率を表2に示すようにした以外は、前記実施例A1と同様にして、複合体の製造を行った。
【0171】
(比較例A1~A3)
澱粉と解繊されたセルロース繊維との混合比率を表2に示すようにした以外は、前記実施例A1と同様にして、複合体の製造を行った。
【0172】
前記各実施例および前記各比較例で得られたシート状の複合体の条件を表2にまとめて示す。なお、前記各実施例および各比較例の複合体中に含まれるセルロース繊維は、いずれも、平均長さが0.1mm以上10mm以下であり、平均太さが0.01mm以上0.04mm以下であった。
【0173】
【表2】
【0174】
[6]成形体の製造
(実施例B1)
図2に示すような成形体製造装置100を用いて、以下のようにして、成形体としてのシートSを製造した。
【0175】
まず、原料M1Aとして、前記実施例A1で得られたシート状の複合体を複数枚用意し、これらを原料供給部11の第1貯留部11Aに収容した。また、原料M1Bとして、セルロース繊維で構成されたG80紙(三菱製紙社製)を複数枚用意し、これらを原料供給部11の第2貯留部11Bに収容した。
【0176】
その後、前述したように、成形体製造装置100の運転を行い、成形体としてのシートSの製造を行った。
【0177】
なお、加湿部231と、加湿部232と、加湿部233と、加湿部234と、加湿部235と、加湿部236とで、それぞれ、加湿を行い、加湿部236で加湿された状態の第2ウェブM8の質量に対する、当該第2ウェブM8が含む水分の質量の割合が、20質量%となるようにした。
【0178】
また、原料M1Aとしての複合体と、原料M1BとしてのG80紙(三菱製紙社製)との使用比率、すなわち、本発明の複合体と第2の繊維との混合比率は、質量比で1:5.5であった。
【0179】
また、成形部20での加熱温度は800℃、加熱時間は1秒とし、成形部20での加圧は20MPaで行った。
【0180】
(実施例B2~B8)
原料M1Aとして、前記実施例A1で得られたシート状の複合体の代わりに、それぞれ、前記実施例A2~A8で得られたシート状の複合体を用いた以外は、前記実施例B1と同様にして、成形体の製造を行った。
【0181】
(比較例B1~B3)
原料M1Aとして、前記実施例A1で得られたシート状の複合体の代わりに、それぞれ、前記比較例A1~A3で得られたシート状の複合体を用いた以外は、前記実施例B1と同様にして、成形体の製造を行った。
【0182】
前記実施例B1~B8および比較例B1~B3の成形体の構成を表3にまとめて示す。なお、前記実施例B1~B8および比較例B1~B3で得られた成形体中に含まれるセルロース繊維は、いずれも、平均長さが0.1mm以上2mm以下であり、平均太さが0.01mm以上0.05mm以下であった。
【0183】
【表3】
【0184】
[7]評価
前記実施例B1~B8および比較例B1~B3の成形体について、以下の評価を行った。
【0185】
[7-1]吸水特性
前記実施例B1~B8および比較例B1~B3の成形体を、互いに重なり合わないように、25℃/90%RHの恒温槽に入れ、5分間放置し、その時点での成形体中の含水率を求め、以下の基準に従い評価した。含水率が高いほど、吸水特性に優れているといえる。
【0186】
A:含水率が20質量%以上である。
B:含水率が10質量%以上20質量%未満である。
C:含水率が10質量%未満である。
【0187】
[7-2]比引張強さ
前記実施例B1~B8および比較例B1~B3の成形体について、G80(三菱製紙社製)を用いて、JIS P8113に準じた測定を行い、比引張強さを求め、以下の基準に従い評価した。
【0188】
A:比引張強さが20N・m/g以上である。
B:比引張強さが10N・m/g以上20N・m/g未満である。
C:比引張強さが10N・m/g未満である。
これらの結果を表4にまとめて示す。
【0189】
【表4】
【0190】
表4から明らかなように、前記実施例B1~B8では優れた結果が得られた。また、前記実施例B1~B8では従来に比べて小型の成形体製造装置を用いて好適に成形体を製造することができた。これに対し、前記比較例B1~B3では、満足のいく結果が得られなかった。
【0191】
また、成形工程における加熱温度を60℃以上180℃以下の範囲で種々変更した以外は前記と同様にして成形体の製造を行い、前記と同様の評価を行ったところ、前記と同様の結果が得られた。また、成形工程での加圧を0.1MPa以上100MPa以下の範囲で種々変更した以外は前記と同様にして成形体の製造を行い、前記と同様の評価を行ったところ、前記と同様の結果が得られた。また、各加湿部での加湿量を調整し、加湿部236で加湿された状態の第2ウェブM8の質量に対する、当該第2ウェブM8が含む水分の質量の割合を15質量%以上50質量%以下の範囲で種々変更した以外は前記と同様にして成形体の製造を行い、前記と同様の評価を行ったところ、前記と同様の結果が得られた。また、製造される複合体に対する第2の繊維の混合割合が、質量比で200%以上1000%以下の範囲内の値となるように、原料M1Aと原料M1Bとの使用比率を種々変更し、成形体の総量に対する澱粉の含有率を3.0質量%以上20.0質量%以下の範囲で種々変更した以外は前記と同様にして成形体の製造を行い、前記と同様の評価を行ったところ、前記と同様の結果が得られた。
【符号の説明】
【0192】
C100…複合体、C1…セルロース繊維、C2…澱粉、10A…シート処理装置、10B…繊維体堆積装置、11…原料供給部、11A…第1貯留部、11B…第2貯留部、12…粗砕部、13…解繊部、14…選別部、15…第1ウェブ形成部、16…細分部、18…分散部、19…第2ウェブ形成部、20…成形部、21…切断部、22…ストック部、27…回収部、28…制御部、100…成形体製造装置、121…粗砕刃、122…シュート、141…ドラム部、142…ハウジング部、151…メッシュベルト、152…張架ローラー、153…吸引部、161…プロペラ、162…ハウジング部、172…管、173…ブロアー、181…ドラム、182…ハウジング、183…駆動源、191…メッシュベルト、192…張架ローラー、193…吸引部、201…加圧部、202…加熱部、203…カレンダーローラー、204…加熱ローラー、211…第1カッター、212…第2カッター、231…加湿部、232…加湿部、233…加湿部、234…加湿部、235…加湿部、236…加湿部、241…管、242…管、243…管、244…管、245…管、246…管、261…ブロアー、262…ブロアー、263…ブロアー、281…CPU、282…記憶部、M1A…原料、M1B…原料、M2…粗砕片、M3…解繊物、M4-1…第1選別物、M4-2…第2選別物、M5…第1ウェブ、M6…細分体、M8…第2ウェブ、S…シート
図1
図2