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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】車両用電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/249 20210101AFI20240730BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20240730BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240730BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240730BHJP
   H01M 10/652 20140101ALI20240730BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20240730BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20240730BHJP
   H01M 10/667 20140101ALI20240730BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240730BHJP
【FI】
H01M50/249
B60K1/04 Z
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/652
H01M10/6556
H01M10/6563
H01M10/667
H01M50/204 201
H01M50/204 401H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020062975
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021128925
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2020020267
(32)【優先日】2020-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 華子
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】北村 亮介
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-179190(JP,A)
【文献】特開2009-119936(JP,A)
【文献】特開2015-222701(JP,A)
【文献】特開2014-103051(JP,A)
【文献】特開2018-116813(JP,A)
【文献】特開2014-165004(JP,A)
【文献】特開2015-153689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/249
B60K 1/04
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/652
H01M 10/6556
H01M 10/6563
H01M 10/667
H01M 50/204
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレイ部材の上方にカバー部材が組み合わされて構成され、内部に空気を導入させるための導入口と前記内部から空気を流出させる排出口とを有するパック筐体と、
前記パック筐体の内部に収容されて車両に搭載される二次電池と、
前記パック筐体の内部において前記二次電池に隣接して配置される電気機器と、
前記トレイ部材に設けられ、前記パック筐体の内部に存在する液体を前記二次電池から遠ざける離隔構造と、を備え
前記離隔構造は、前記トレイ部材の底面部に形成され前記二次電池から離隔するほど下方に向かって傾斜した第1斜面部を含み、
前記第1斜面部は、前記二次電池側から前記電気機器側に向かって下降傾斜するとともに、前記二次電池と前記電気機器との間で、前記二次電池の直下の傾斜角度よりも大きな角度で傾斜した段差部を有する
ことを特徴とする、車両用電池パック
【請求項2】
前記離隔構造は、前記底面部に設けられ、前記液体が集まる最下部を含み、
前記第1斜面部は、前記二次電池側から前記最下部に向かって下降傾斜
前記段差部は、前記二次電池側から前記最下部に向かう途中に位置する
ことを特徴とする、請求項記載の車両用電池パック。
【請求項3】
前記最下部の周囲に、前記最下部に向かって下降傾斜し、前記第1斜面部と共に前記トレイ部材の底面部上の液体を前記最下部に流下させる第2斜面部が形成されている
ことを特徴とする、請求項記載の車両用電池パック。
【請求項4】
前記パック筐体の内部には、前記車両に搭載された電気回路と前記二次電池との間で電圧を変換する前記電気機器としてのコンバーターと、前記内部に空気の流れを生成するファンとが配設され、
前記二次電池は、前記導入口から前記内部に流入する空気が直接的に当たる位置に配置され、
前記コンバーターは、前記二次電池よりも前記空気の流れの下流側に配置され、
前記ファンは、前記コンバーターの直上に配置されるとともにダクトを介して前記排出口に接続され、
前記最下部は、前記コンバーターの直下に設けられる
ことを特徴とする、請求項又は記載の車両用電池パック。
【請求項5】
前記二次電池の下面と前記トレイ部材の底面部との間には前記空気が流通する隙間がある
ことを特徴とする、請求項記載の車両用電池パック。
【請求項6】
前記導入口及び前記排出口は、車室内に連通している
ことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の車両用電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される二次電池の電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される二次電池(セル,セルスタックなど)をファンで空冷することで、温度上昇による二次電池の劣化や性能低下を抑制する技術が存在する。例えば、冷却ファンを電池パックに内蔵させ、電池パック内で空気を循環させて二次電池を冷却するものが知られている。また、冷却風を電池パックの外部から取り込むことで冷却効率を高めたものや、電池パック内にエバポレータを配置したものも知られている(特許文献1参照)。
【0003】
二次電池だけでなくコンバーターや制御回路が電池パックに内蔵される場合には、それらについても冷却することが好ましい。このような課題を踏まえて、特許文献2に記載の技術では、二次電池とコンバーターとの間に区画壁を設け、冷却風の流路を分離することで風量バランスを維持することが記載されている。これにより、二次電池とコンバーターとの両方が効率的に冷却され、冷却性能が確保されうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-179190号公報
【文献】国際公開第2016/157263号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電池パック内に車室内の空気(エアコン雰囲気)を引き込んで二次電池を冷却する構成では、冬場などで二次電池の表面温度が低い場合、暖かい空気が二次電池の表面に当たることで結露が発生することがある。結露による水が二次電池の導電部分に接触すると漏電を引き起こす可能性があることから、結露が発生したとしてもその水を二次電池から遠ざけることが望まれる。なお、このような課題は結露による水に限らず、液体であれば同様に生じうる。
【0006】
本件の目的の一つは、上記のような課題に鑑みて創案されたものであり、電池パック内に存在する液体を二次電池から遠ざけることができるようにした車両用電池パックを提供することである。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)ここで開示する車両用電池パックは、トレイ部材の上方にカバー部材が組み合わされて構成され、内部に空気を導入させるための導入口と前記内部から空気を流出させる排出口とを有するパック筐体と、前記パック筐体の内部に収容されて車両に搭載される二次電池と、前記パック筐体の内部において前記二次電池に隣接して配置される電気機器と、前記トレイ部材に設けられ、前記パック筐体の内部に存在する液体を前記二次電池から遠ざける離隔構造と、を備えている。前記離隔構造は、前記トレイ部材の底面部に形成され前記二次電池から離隔するほど下方に向かって傾斜した第1斜面部を含み、前記第1斜面部は、前記二次電池側から前記電気機器側に向かって下降傾斜するとともに、前記二次電池と前記電気機器との間で、前記二次電池の直下の傾斜角度よりも大きな角度で傾斜した段差部を有する。
【0008】
(2)前記離隔構造は、前記底面部に設けられ、前記液体が集まる最下部を含み、前記第1斜面部は、前記二次電池側から前記最下部に向かって下降傾斜前記段差部は、前記二次電池側から前記最下部に向かう途中に位置することが好ましい。
)前記最下部の周囲に、前記最下部に向かって下降傾斜し、前記第1斜面部と共に前記トレイ部材の底面部上の液体を前記最下部に流下させる第2斜面部が形成されていることが好ましい。
【0009】
)前記パック筐体の内部には、前記車両に搭載された電気回路と前記二次電池との間で電圧を変換する前記電気機器としてのコンバーターと、前記内部に空気の流れを生成するファンとが配設され、前記二次電池は、前記導入口から前記内部に流入する空気が直接的に当たる位置に配置され、前記コンバーターは、前記二次電池よりも前記空気の流れの下流側に配置され、前記ファンは、前記コンバーターの直上に配置されるとともにダクトを介して前記排出口に接続され、前記最下部は、前記コンバーターの直下に設けられることが好ましい。
)前記二次電池の下面と前記トレイ部材の底面部との間には前記空気が流通する隙間があることが好ましい。
)前記導入口及び前記排出口は、車室内に連通していることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
離隔構造によって、パック筐体の内部に存在する液体(例えば結露により生じた水)を二次電池から遠ざけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】車両用電池パックの模式的な分解斜視図である。
図2】車両用電池パックの模式的な断面図である。
図3】車両用電池パックの内部構造を示す模式的な上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[1.構成]
図1は、実施例としての電池パック1(車両用電池パック)の構造を分解して示す斜視図である。また、図2は電池パック1の縦断面図であり、図3は電池パック1の上面図である。図1図3中に矢印で示す前後(FR及びRR),左右(LH及びRH),及び上下(UP及びDN)の各方向は、電池パック1が搭載された車両が水平で傾いていない状態にある場合の運転者を基準にして定められる方向を表す。したがって、下方(DN)は重力方向を示す。また、図2中に示す黒塗り矢印は空気が流れる方向を表し、白抜き矢印は水滴Wの流れる方向を表す。
【0013】
電池パック1は、車両のフロア下や車室内,荷室内などに搭載される。電池パック1が搭載される車両の種類には、電気自動車やハイブリッド自動車だけでなく、エンジン車両(例えば、ガソリン自動車,ディーゼル自動車など)が含まれる。車両には、少なくとも電池パック1の電力が供給される電気回路(例えば、モーター駆動回路や電装品駆動回路など)が搭載される。図1図3に示すように、電池パック1は、パック筐体1Aの内部に二次電池2,コンバーター(冷却を要する電気機器)3,ファン4を備えた構造を持つ。パック筐体1Aは、トレイ部材6の上方にカバー部材5が組み合わされて構成される。パック筐体1Aは、水平方向、即ち、左右方向及び前後方向に広がっている。
【0014】
二次電池2は、例えばリチウムイオン二次電池やリチウムイオンポリマー電池,ニッケル水素二次電池,鉛蓄電池などである。ここでいう二次電池2には、単電池(電池セル)だけでなく組電池(電池モジュール)が含まれる。二次電池2の電圧(開放電圧)は、電池パック1の電力が供給される電気回路に応じて設定される。例えば、電池パック1がマイルドハイブリッド自動車に搭載される場合には、二次電池2の電圧が48[V]前後に設定される。なお、マイルドハイブリッド自動車には、走行用モーターを駆動するための第一電気回路(48ボルト動力回路)と、補機類を駆動するための第二電気回路(12ボルト動力回路)とが設けられる。二次電池2に蓄えられている電力は、第一電気回路に対して直接的に供給される。第二電気回路に対しては、コンバーター3を介して降圧された後に供給されることになる。
【0015】
図2に示すように、二次電池2はパック筐体1Aの内部で上方寄りの位置に配置される。二次電池2の周囲のパック筐体1Aの内面との間には隙間が形成される。特に、二次電池2の下面及び上面とパック筐体1Aの内面との間には、それぞれ隙間21,22が形成される。第一隙間21は、二次電池2とトレイ部材6(後述する)との間の隙間であり、第二隙間22は、二次電池2とカバー部材5(後述する)との間の隙間である。これにより、パック筐体1Aに取り入れた空気が二次電池2の上下を通過する。本実施形態の二次電池2は組電池であり、電池セル20が二次電池2の下面側に露出している。電池セル20を第一隙間21に対して露出させることで、電池セル20の放熱性が改善される。
【0016】
コンバーター3は、二次電池2と車両に搭載された電気回路との間に介装される変圧器(DC-DCコンバーター)であり、二次電池2に蓄えられた電力を変圧して車両側に給電する機能と、車両側で生成された電力(例えば発電電力や回生電力など)を変圧して二次電池2を充電する機能とを併せ持つ。例えば、電圧が48[V]前後に設定された二次電池2に対し、コンバーター3はその電圧を12[V]に降圧して補機類に供給する役割を担う。なお、コンバーター3における電力の供給方向や電圧の変化方向(昇圧,降圧)はこれに限定されない。
【0017】
コンバーター3は、パック筐体1Aの内部において、二次電池2に対して左右方向(第1方向)に隣接する位置に配置される。コンバーター3の発熱量は二次電池2の発熱量と比較して大きいため、コンバーター3は、二次電池2よりも空気の流れの下流側に配置される。図1に示す二次電池2及びコンバーター3は、車幅方向に並ぶように配置される。二次電池2とコンバーター3との間はバスバー17で接続される。コンバーター3の周囲のパック筐体1Aの内面等との間にも隙間が形成される。また、コンバーター3の上面側には、放熱用のヒートシンク12が設けられる。ヒートシンク12は、伝熱性の高い金属で形成され、空気との接触面積が大きくなる形状(例えば、剣山状や櫛形状などの形状)に形成される。
【0018】
ファン4は、二次電池2とコンバーター3とを冷却する空気の流れを生成するための送風装置である。このファン4は、コンバーター3の直上に配置され、コンバーター3の近傍の空気を二次電池2から離隔する方向に送給する機能を持つ。ファン4の内部には、電動モーターに接続されたフィン(図示せず)が回動可能に設けられる。また、コンバーター3(ヒートシンク12)と対向するファン4の下面側には、フィンが内蔵されるケース4aが開口されて、空気の取り入れ口11が形成される。
【0019】
図1に示すファン4はシロッコファン(遠心式送風機)であり、フィンの回転軸が上下方向に延在するように配置される。フィンを回転させることで、ファン4の下面に設けられた取り入れ口11から空気が吸い込まれ、フィンの遠心方向である水平方向外周側に空気が圧送される。フィンのケース4aには、ファンダクト18が接続され,ファンダクト18の先端の吹き出し口10は排出口8に接続されている。ファン4により圧送された空気は、ファンダクト18を通過してその先端の吹き出し口10から下向きに送給される。言い換えると、ファン4は、ファンダクト18を介して排出口8に接続される。なお、ファンダクト18は、回転軸を中心としてファン4の前面側から見て(上面視で)時計回りに延設され、二次電池2とは反対側(ファン4の右側面側)で開口している。
【0020】
パック筐体1Aは、カバー部材5とトレイ部材6とを組み合わせて形成される電池パック1の外装材である。カバー部材5は、下方が開放された容器状に形成され、トレイ部材6は上方が開放された容器状に形成される。これらの開口部同士を合わせて合体させることで、中空のパック筐体1Aが形成される。パック筐体1Aの材質は、所定の強度や剛性を持った合成樹脂や発泡樹脂とされる。なお、パック筐体1Aの内部は厳密に気密にする必要はないが、保護性を向上させるためには、大きな隙間ができないようにカバー部材5,トレイ部材6の形状を設計することが好ましい。
【0021】
カバー部材5には、空気を内部に導入させるための導入口7が設けられる。導入口7は、カバー部材5の側面に形成される。導入口7の位置は、図3に示すように、上面視で二次電池2を挟んでコンバーター3やファン4とは反対側に設定される。図1図3に示す導入口7の位置は、二次電池2よりも左側である。これにより、導入口7を介してパック筐体1Aの外部から内部へと導入される空気は、コンバーター3の近傍を通過する前に二次電池2の近傍を通過する。したがって、コンバーター3で発生した熱が二次電池2へと伝達されにくくなり、二次電池2の冷却性能が向上する。本実施形態の二次電池2は、導入口7から内部に流入する空気が直接的に当たる位置に配置される。なお、導入口7には車室内に連通したダクト9が接続される。これにより、車室内の空気が電池パック1の冷却風として活用される。
【0022】
トレイ部材6には、ファン4が送給する空気をパック筐体1Aの内部から外部へと流出させる排出口8が設けられる。排出口8は、トレイ部材6の下面(底面)に形成され、車室内に連通して設けられる。排出口8の位置は、上面視でコンバーター3を挟んで二次電池2とは反対側に設定される。図3に示すように、上面視で導入口7と排出口8とを結ぶ仮想線(図3中の二点鎖線)を描いたときに、その仮想線上で二次電池2がコンバーター3よりも導入口7に近接し、コンバーター3が二次電池2よりも排出口8に近接するレイアウトが実現される。
【0023】
二次電池2,コンバーター3,ファン4の前後には、車両の第一横架材13と第二横架材14とが配置される。これらの第一横架材13,第二横架材14は、左右のサイドメンバーに固定されるフレームである。第一横架材13は、二次電池2,コンバーター3,ファン4よりも前方にて車幅方向に延在し、第二横架材14は、それらの後方にて車幅方向に延在する。サイドメンバーは、車長方向に延在するフレームであり、車幅方向に所定の間隔をあけて左右に一対設けられる。二次電池2,コンバーター3,ファン4の各々は、ブラケット16を介して第一横架材13と第二横架材14とに固定される。
【0024】
本実施形態の第一横架材13はシートクロスメンバーであり、乗員用の座席(シート)の足元が第一横架材13に固定されるようになっている。第二横架材14はサブシートクロスメンバーであり、第一横架材13よりも後方において、第一横架材13に対してほぼ平行に配置される。これらの第一横架材13,第二横架材14は、トレイ部材6の側面を貫通するように設けてもよい。あるいは、パック筐体1Aの接合面を第一横架材13,第二横架材14の形状に見合った形に形成しておいてもよい。
【0025】
第一横架材13と第二横架材14との間は、フレーム部材15で接続される。フレーム部材15は、二次電池2とコンバーター3との間に延在するフレームであり、前後方向の荷重(例えば、後突荷重や前突荷重)を支える補強部材として機能する。また、フレーム部材15は、上面視で二次電池2とコンバーター3との間を区画するように配置される。なお、フレーム部材15を省略することで、パック筐体1Aの内部における冷却風の流路抵抗を低減させてもよい。あるいは、図2に示すように、フレーム部材15を二次電池2の下面よりも上方に位置させることで、冷却風の流路抵抗を低減させてもよい。
【0026】
二次電池2は、第一横架材13及び第二横架材14に支持されることで、パック筐体1Aの内部において吊り下げられている。このため、本実施形態では、二次電池2の下面がトレイ部材6に対し非接触な状態とされる。
【0027】
図1及び図2に示すように、電池パック1は、パック筐体1Aの内部に存在する液体を二次電池2から遠ざける離隔構造30を備える。離隔構造30はトレイ部材6の底面部に設けられる。離隔構造30は、底面部に形成された斜面部(第1斜面部)31を含む。斜面部31は、二次電池2から離隔するほど下方に向かって傾斜した部分であり、この斜面部31により、パック筐体1A内で液体が溜まる位置を二次電池2から離隔した位置にコントロールする。なお、パック筐体1A内に存在する可能性がある液体としては、例えば、二次電池2の表面で結露が発生することで生じた水や、車室内でこぼした飲み物等が導入口7から誤って入り込んだ場合の液体が挙げられる。
【0028】
本実施形態の離隔構造30は、底面部のなかで最も低くなるように形成された最下部32を含む。最下部32は、パック筐体1A内の液体が集まる箇所であり、本実施形態ではコンバーター3の直下に設けられる。コンバーター3は通電により温度が高くなるため、最下部32に導かれた液体を蒸発させることができ、ファン4で生成された空気の流れに乗せて、液体をパック筐体1Aの外部へ排出することが可能となる。
【0029】
本実施形態の離隔構造30では、斜面部31が二次電池2側から最下部32に向かって下降傾斜しているが、この傾斜角度が一定ではなく、二次電池2とコンバーター3との間で、二次電池2の直下の傾斜角度よりも大きな角度で傾斜した段差部33が設けられる。これにより、車両の姿勢が傾いた場合であっても、二次電池2から遠ざかるように案内された液体が、二次電池2側に逆流することが防止される。
【0030】
ところで、斜面部31は、二次電池2とコンバーター3とが並ぶ方向(本実施形態では、左右方向)において、二次電池2側からコンバーター3側へ向けて(本実施形態では、右方向へ向けて)下降傾斜しているため、トレイ部材6の底面部上の液体を自重によって二次電池2から遠ざける機能と共に、トレイ部材6の底面部上の液体を最下部32に流下させる機能がある。
【0031】
本実施形態の場合、最下部32はコンバーター3の直下に配置されており、最下部32の周囲の斜面部31を除く部分にもトレイ部材6の底面部が存在する。
そこで、このようなトレイ部材6の底面部における最下部32の周囲にも、最下部32に向かって下降傾斜し、斜面部31と共にトレイ部材6の底面部上の液体を最下部32に流下させる斜面部(第2斜面部)34が形成されている。斜面部34は、斜面部31とは逆に左方向へ向けて傾斜する部分34aや、前方へ向けて傾斜する部分34bや、後方へ向けて傾斜する部分34cを含む。
【0032】
[2.効果]
上述した電池パック1によれば、トレイ部材6に設けられた離隔構造30によって、パック筐体1Aの内部に存在する液体が二次電池2から遠ざけられるため、液体が二次電池2の電気的な部分に接触する可能性を確実に低減でき、漏電のおそれを回避できる。
【0033】
また、上述した離隔構造30によれば、トレイ部材6の底面部に、二次電池2から離隔するほど下方に向かって傾斜した斜面部31が設けられることから、液体を斜面部31に沿わせて二次電池2から遠ざけることができる。このように、重力を利用することで、簡素な構成とすることができる。
【0034】
上述した離隔構造30によれば、トレイ部材6の底面部に液体が集まる最下部32が設けられ斜面部31はこの最下部32に向かって下降傾斜しているため、斜面部31の傾斜により液体を導く位置を最下部32にコントロールできる。また、斜面部31に段差部33が設けられることから、車両の姿勢によらず、集められた液体の逆流を防止できる。
【0035】
また、トレイ部材6の底面部において、斜面部31以外にも、最下部32の周囲に、最下部32に向かって下降傾斜する斜面部34が設けられているので、これらの底面部上の液体を最下部32に流下させ、最下部32に集めることができる。
【0036】
さらに、最下部32はコンバーター3の直下に設けられているため、最下部32に導かれた液体を、コンバーター3の熱とファン4による空気の流れとを利用して蒸発させて排出することができる。これにより、パック筐体1A内に液体が留まることがないため、漏電のおそれをより回避できる。
【0037】
上述した電池パック1では、二次電池2がパック筐体1A内で吊り下げられており、二次電池2の下面とトレイ部材6の底面部との間に隙間21が設けられている。このため、二次電池2を冷却するための空気の流れやすさを確保しつつ、底面部上の液体が離隔構造30により案内されやすくすることができる。
【0038】
導入口7及び排出口8が車室内に連通して設けられる上記の構成では、導入口7から誤って液体がパック筐体1A内に入り込んでしまう可能性があるが、離隔構造30を備えていることにより、こういった液体による漏電のおそれも回避することができる。
なお、パック筐体1Aを樹脂製とすることで、筐体自体の錆の発生を防止できる。
【0039】
[3.変形例]
上記の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、本実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0040】
例えば、トレイ部材6の底面部(好ましくは最下部32)に水抜き穴を設け、集めた液体をパック筐体1Aから積極的に排出する構成としてもよい。この場合、液体を集める位置はコンバーター3の直下に限られない。また、離隔構造は少なくともパック筐体1Aの内部に存在する液体を二次電池2から遠ざけることができる構成であればよく、上記の斜面部31,最下部32,段差部33に加えて又は代えて、例えば液体を導くための溝を設けてもよい。
【0041】
なお、上記実施形態では、第1斜面部31は、二次電池2側からコンバーター3側へ向けて下降傾斜している点のみ規定したが、この下降傾斜する方向(上記実施形態では、右方向)と交差する方向(上記実施形態では、前方又は後方)への傾斜も含めるように第1斜面部31を形成してもよい。例えば、図1に一点鎖線Lで示すように、トレイ部材6の底面部における前後方向の所定位置(図示する例では前後方向の中央)へ向けて下降傾斜させて、トレイ部材6の底面部上の液体を所定位置へ集めながら最下部32へ流下させるようにしてもよい。この場合、液体が最下部32に集まりやすくなり、蒸発や排出をより円滑に行うことができる。
【符号の説明】
【0042】
1 電池パック
1A パック筐体
2 二次電池
3 コンバーター
4 ファン
5 カバー部材
6 トレイ部材
7 導入口
8 排出口
9 ダクト
10 吹き出し口
11 取り入れ口
12 ヒートシンク
13 第一横架材
14 第二横架材
15 フレーム部材
16 ブラケット
17 バスバー
18 ファンダクト
20 電池セル
21 第一隙間
22 第二隙間
30 離隔構造
31 第1斜面部
32 最下部
33 段差部
34,34a,34b,34c 第2斜面部
図1
図2
図3