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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】フィルムヒータ
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/20 20060101AFI20240730BHJP
   H05B 3/86 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
H05B3/20 316
H05B3/86
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020069084
(22)【出願日】2020-04-07
(65)【公開番号】P2021166145
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 隆仁
(72)【発明者】
【氏名】小倉 太郎
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-044869(JP,A)
【文献】特開2000-022437(JP,A)
【文献】特開平04-292243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/20
H05B 3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムヒータであって、
電気絶縁性を有するとともに電波送受信部(4)から送信される電波に含まれる電界の振動方向と交差する方向に延びている少なくとも1つの非導電部(311)と、通電されることにより発熱するとともに光を透過する発熱部(35)とを含む透明導電体(30)と、
前記発熱部に接続されている第1電極(41)と、
前記発熱部に接続されている第2電極(42)と、
を備え、
前記発熱部は、前記非導電部に隣接するとともに前記第1電極と前記第2電極とによって前記発熱部が通電されて前記非導電部が延びている方向に沿って電流が流れることにより発熱する導電部(353)を少なくとも1つ含み、
前記第1電極に接続されている第1リード線(61、63)と、
前記第2電極に接続されている第2リード線(62)と、
をさらに備え、
前記第1リード線は、前記第2リード線とともに前記電界の振動方向と交差する方向の一方側に配置されているフィルムヒータ。
【請求項2】
前記透明導電体は、前記非導電部を複数有しており、
複数の前記非導電部は、前記電界の振動方向に並列しており、
前記発熱部は、複数の前記導電部を含み、
複数の前記導電部は、前記非導電部の並列方向に並列している請求項1に記載のフィルムヒータ。
【請求項3】
フィルムヒータであって、
電気絶縁性を有するとともに電波送受信部(4)から送信される電波に含まれる電界の振動方向と交差する方向に延びている少なくとも1つの非導電部(311)と、通電されることにより発熱するとともに光を透過する発熱部(35)とを含む透明導電体(30)と、
前記発熱部に接続されている第1電極(41)と、
前記発熱部に接続されている第2電極(42)と、
を備え、
前記発熱部は、前記非導電部に隣接するとともに前記第1電極と前記第2電極とによって前記発熱部が通電されて前記非導電部が延びている方向に沿って電流が流れることにより発熱する導電部(353)を少なくとも1つ含み、
前記透明導電体は、前記非導電部を複数有しており、
複数の前記非導電部は、前記電界の振動方向に並列しており、
前記発熱部は、複数の前記導電部を含み、
複数の前記導電部は、前記非導電部の並列方向に並列しており、
前記非導電部が延びている方向における複数の前記導電部のそれぞれの長さは、前記透明導電体の中心(O)から前記非導電部の並列方向に向かうにつれて、大小変化しており、
前記導電部に電流が流れる方向と直交する断面における複数の前記導電部のそれぞれの断面積は、前記透明導電体の中心(O)から前記非導電部の並列方向に向かうにつれて、前記導電部の長さの大小変化と同じ大小変化をしているフィルムヒータ。
【請求項4】
前記第1電極に接続されている第1リード線(61、63)と、
前記第2電極に接続されている第2リード線(62)と、
をさらに備え、
前記第1リード線は、前記第2リード線とともに前記電界の振動方向と交差する方向の一方側に配置されている請求項に記載のフィルムヒータ。
【請求項5】
前記第1電極は、前記第2電極を囲うように前記第2電極に対して前記発熱部の外側に配置されており、
当該フィルムヒータは、電気絶縁性を有するとともに前記第1電極と前記第2電極との間に配置される電極間非導電部(50)をさらに備える請求項1ないし4のいずれか1つに記載のフィルムヒータ。
【請求項6】
前記第1電極、前記第2電極および前記電極間非導電部は、前記発熱部の外縁部(351、352、354、355)に沿う方向に延びている請求項に記載のフィルムヒータ。
【請求項7】
前記電極間非導電部は、前記発熱部との境界部(512、522)を有し、
前記境界部は、前記第1電極のうち前記発熱部との接続部(410)と前記第2電極の端部(421、422)との間に配置されている請求項に記載のフィルムヒータ。
【請求項8】
前記第1電極および前記第2電極は、前記電波送受信部から送信される電波の照射範囲(R)の外側に配置されている請求項1ないしのいずれか1つに記載のフィルムヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルムヒータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、ミリ波透過性を有するエンブレムに用いられるヒータが知られている。このヒータは、通電されることにより発熱する線状の発熱部を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-215243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者等の検討によれば、特許文献1に記載されているようなエンブレム内の温度分布のバラつきを小さくするために、発熱部の形状を線状ではなく面状にすることがある。しかし、発熱部が面状である場合、発熱部が線状である場合と比較して、発熱部の導電部が大きくなる。これにより、面状の発熱部を備えるエンブレムでは、線状の発熱部を備えるエンブレムと比較してミリ波等の電波が吸収されやすくなる。このため、面状の発熱部を備えるエンブレムに向かって送信される電波の減衰は、線状の発熱部を備えるエンブレムに向かって送信される電波と比較して大きくなる。したがって、特許文献1に記載されているようなエンブレムに面状の発熱部を適用すると、エンブレムに向かって送信される電波は、エンブレムを適切に透過しないことがある。
【0005】
本開示は、電波の減衰を抑制するフィルムヒータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、フィルムヒータであって、電気絶縁性を有するとともに電波送受信部(4)から送信される電波に含まれる電界の振動方向と交差する方向に延びている少なくとも1つの非導電部(311)と、通電されることにより発熱するとともに光を透過する発熱部(35)とを含む透明導電体(30)と、発熱部に接続されている第1電極(41)と、発熱部に接続されている第2電極(42)と、を備え、発熱部は、非導電部に隣接するとともに第1電極と第2電極とによって発熱部が通電されて非導電部が延びている方向に沿って電流が流れることにより発熱する導電部(353)を少なくとも1つ含み、第1電極に接続されている第1リード線(61、63)と、第2電極に接続されている第2リード線(62)と、をさらに備え、第1リード線は、第2リード線とともに電界の振動方向と交差する方向の一方側に配置されているフィルムヒータである。
また、請求項3に記載の発明は、フィルムヒータであって、電気絶縁性を有するとともに電波送受信部(4)から送信される電波に含まれる電界の振動方向と交差する方向に延びている少なくとも1つの非導電部(311)と、通電されることにより発熱するとともに光を透過する発熱部(35)とを含む透明導電体(30)と、発熱部に接続されている第1電極(41)と、発熱部に接続されている第2電極(42)と、を備え、発熱部は、非導電部に隣接するとともに第1電極と第2電極とによって発熱部が通電されて非導電部が延びている方向に沿って電流が流れることにより発熱する導電部(353)を少なくとも1つ含み、透明導電体は、非導電部を複数有しており、複数の非導電部は、電界の振動方向に並列しており、発熱部は、複数の導電部を含み、複数の導電部は、非導電部の並列方向に並列しており、非導電部が延びている方向における複数の導電部のそれぞれの長さは、透明導電体の中心(O)から非導電部の並列方向に向かうにつれて、大小変化しており、導電部に電流が流れる方向と直交する断面における複数の導電部のそれぞれの断面積は、透明導電体の中心(O)から非導電部の並列方向に向かうにつれて、導電部の長さの大小変化と同じ大小変化をしているフィルムヒータである。
【0007】
非導電部は、電気絶縁性を有するため、電波送受信部から送信される電波を吸収しにくい。これにより、電波の減衰が抑制される。また、非導電部は、電波送受信部から送信される電波に含まれる電界の振動方向に交差する方向に延びている。これにより、電界の振動方向における発熱部の導電部の長さは、小さくなる。このため、発熱部のうち電波に含まれる電界の作用によって誘電分極する部分が小さくなる。したがって、電波に含まれる電界の作用による発熱部の誘電分極によって、電波のエネルギーが吸収されて熱エネルギーに変換されることが抑制される。よって、電波の減衰が抑制される。
【0008】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態のフィルムヒータが用いられるエンブレムが取り付けられた車両の構成図。
図2】フィルムヒータの断面図。
図3】フィルムヒータの正面図。
図4図3のIV部拡大図。
図5】第2実施形態のフィルムヒータの正面図。
図6】第3実施形態のフィルムヒータの正面図。
図7】第4実施形態のフィルムヒータの正面図。
図8】第5実施形態のフィルムヒータの正面図。
図9】第6実施形態のフィルムヒータの正面図。
図10】第7実施形態のフィルムヒータの正面図。
図11】第8実施形態のフィルムヒータの正面図。
図12】他の実施形態のフィルムヒータの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態のフィルムヒータ20は、車両1のエンブレム5に用いられる。まず、この車両1について説明する。
【0012】
車両1は、図1および図2に示すように、フロントグリル2、ヘッドライト3、電波送受信部4およびエンブレム5を備える。なお、以下では、説明のために、車両1の前方に対して上側を、単に、上側と適宜記載する。また、車両1の前方に対して下側を、単に、下側と適宜記載する。さらに、車両1の前方に対して左側を、単に、左側と適宜記載する。また、車両1の前方に対して右側を、単に、右側と適宜記載する。
【0013】
フロントグリル2は、車両1のうち前側に配置されている。また、フロントグリル2は、2つのヘッドライト3の間に配置されている。さらに、フロントグリル2は、車両1の外部の空気を車両1のエンジンルームに導入する。
【0014】
電波送受信部4は、図2に示すように、車両1の前方の図示しない物体に電波を送信する。この送信された電波は、後述のエンブレム5を透過して車両1の前方の物体で反射する。また、この物体で反射された電波は、エンブレム5を透過する。そして、電波送受信部4がこの物体で反射された電波を受信する。さらに、電波送受信部4は、この送受信した電波から得られる情報に基づいて、車両1の前方の物体の相対速度および相対位置に応じた信号を出力する。なお、図2において、電波送受信部4から送信される電波の照射範囲Rは、2点鎖線で模式的に示されている。
【0015】
また、電波送受信部4により送信される電波は、例えば、ミリ波である。ミリ波とは、波長が1~10mm、周波数が30~300GHzの電波である。さらに、ここでは、電波送受信部4から送信される電波の進行方向は、車両1の前方に一致する。また、電波に含まれる電界の振動方向は、電波の進行方向に直交する。このため、ここでは、この電波に含まれる電界の振動方向は、車両1の左右方向に一致する。さらに、この電波に含まれる磁界の振動方向は、電波の進行方向とこの電波に含まれる電界の振動方向とに直交する。このため、ここでは、電波に含まれる磁界の振動方向は、車両1の上下方向に一致する。なお、電波の進行方向、電波に含まれる電界の振動方向および電波に含まれる磁界の振動方向は、例えば、電波送受信部4が配置される向き等によって決定される。
【0016】
エンブレム5は、図1に示すように、ここでは、フロントグリル2に配置されている。また、エンブレム5は、図2に示すように、車両1の外部から電波送受信部4が見えないように、電波送受信部4に対して車両1の前側に配置されている。これにより、車両1の見栄えが向上する。
【0017】
以上のように、車両1は構成されている。
【0018】
次に、この車両1に用いられるエンブレム5について説明する。
【0019】
エンブレム5は、図2および図3に示すように、基材10、図示しない意匠層およびフィルムヒータ20を備える。
【0020】
基材10は、楕円板状に樹脂で形成されている。この基材10に用いられる樹脂は、例えば、誘電正接が比較的小さいAESである。なお、誘電正接とは、誘電体内での電気エネルギー損失の度合いを表す指標値である。この誘電正接が小さいほど、ミリ波等の電波が吸収されにくく熱エネルギーに変換されにくい。また、AESとは、アクリロニトリルーエチレンースチレンの共重合体である。
【0021】
図示しない意匠層は、基材10に形成されている。この意匠層により、車両1の見栄えが向上する。
【0022】
フィルムヒータ20は、基材10に配置されている。また、フィルムヒータ20の厚さは、例えば、100~500μmである。具体的には、フィルムヒータ20は、図3に示すように、透明導電膜30、第1電極41、第2電極42、電極間非導電部50、第1リード線61、第2リード線62、第3リード線63および透明絶縁膜70を備える。
【0023】
透明導電膜30は、透明導電体に対応しており、基板に対応する形状、ここでは、楕円状に形成されている。また、透明導電膜30は、ITOまたはカーボンナノチューブ等によって形成されている。このため、透明導電膜30は、透明であるとともに、導電性を有する。具体的には、透明導電膜30は、スリット311および発熱部35を有する。なお、ITOは、酸化インジウムスズの略称である。
【0024】
スリット311は、非導電部に対応しており、電波送受信部4から送信される電波の進行方向とこの電波に含まれる電界の振動方向とに交差する方向に延びている。具体的には、スリット311は、電波送受信部4から送信される電波の進行方向とその電波に含まれる電界の振動方向とに直交する方向、ここでは、車両1の上下方向に延びている。また、スリット311は、この電波に含まれる磁界の振動方向に平行に延びている。さらに、複数のスリット311は、この電波に含まれる電界の振動方向、ここでは、車両1の左右方向に等間隔に並列している。これにより、互いに隣り合うスリット311同士の間には、後述する発熱部35の導電部353が形成されている。また、これらのスリット311には、例えば、電気絶縁性を有する空気等が入っているため、スリット311は、電気絶縁性を有する。さらに、スリット311の幅、ここでは、車両1の左右方向におけるスリット311の長さは、例えば、25μm以上である。また、ここでは、透明導電膜30が楕円状であるため、車両1の上下方向における透明導電膜30の長さは、透明導電膜30の中心Oから車両1の左右方向に向かって小さくなっている。これに対応して、車両1の上下方向における複数のスリット311のそれぞれの長さは、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、小さくなっている。
【0025】
発熱部35は、面状に形成されており、発熱部35に電流が流れることにより熱を発生させる。具体的には、発熱部35は、上側外縁部351、下側外縁部352および複数の導電部353を含む。
【0026】
上側外縁部351は、発熱部35のうち車両1の左右方向に延びる水平中心線Ohに対して上側の外縁周辺部である。
【0027】
下側外縁部352は、発熱部35のうち車両1の左右方向に延びる水平中心線Ohに対して下側の外縁周辺部である。
【0028】
導電部353は、上側外縁部351と下側外縁部352とに接続されている。複数の導電部353は、スリット311によって発熱部35の内部が分割されることにより形成されており、スリット311に隣接する。このため、導電部353は、スリット311が延びている方向に延びている。具体的には、導電部353は、電波送受信部4から送信される電波の進行方向とこの電波に含まれる電界の振動方向とに直交する方向、ここでは、車両1の上下方向に延びている。さらに、導電部353は、この電波に含まれる磁界の振動方向に平行に延びている。また、複数の導電部353は、スリット311の並列方向に並列している。さらに、導電部353の幅、ここでは、車両1の左右方向における導電部353の長さは、例えば、25μm以上、500μm以下である。また、複数の導電部353のそれぞれの幅は、ここでは、等しくなっている。さらに、ここでは、上記したように、車両1の上下方向における複数のスリット311のそれぞれの長さは、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、小さくなっている。これに対応して、車両1の上下方向における複数の導電部353のそれぞれの長さは、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、小さくなっている。
【0029】
第1電極41は、ここでは、正極である。また、第1電極41は、図2に示すように、電波送受信部4から送信される電波の照射範囲Rの外側に配置されている。さらに、第1電極41は、発熱部35に接続されている。具体的には、第1電極41は、図3に示すように、接続部410、第1リード部411および第2リード部412を有する。
【0030】
接続部410は、発熱部35の上側外縁部351に接続されている。また、接続部410は、この上側外縁部351に沿う方向に延びている。
【0031】
第1リード部411は、接続部410のうち右側の端部に接続されている。また、第1リード部411は、接続部410のうち右側の端部から下側外縁部352に沿う方向に延びている。
【0032】
第2リード部412は、接続部410のうち左側の端部に接続されている。また、第2リード部412は、接続部410のうち左側の端部から下側外縁部352に沿う方向に延びている。
【0033】
第2電極42は、ここでは、負極である。また、第2電極42は、図2に示すように、電波送受信部4から送信される電波の照射範囲Rの外側に配置されている。さらに、第2電極42は、図3に示すように、発熱部35の下側外縁部352に接続されている。また、第2電極42は、第1電極41の第1リード部411および第2リード部412に対して、発熱部35の内側に配置されている。これにより、第2電極42は、第1電極41に囲われつつ、第1電極41の第1リード部411および第2リード部412と、後述の電極間非導電部50を隔てて対向する。
【0034】
電極間非導電部50は、第1電極41と第2電極42との間に配置されており、電気絶縁性を有する。具体的には、電極間非導電部50は、第1隙間511、第1境界部512、第2隙間521および第2境界部522を有する。
【0035】
第1隙間511は、第1電極41の第1リード部411と第2電極42との間に形成されている。また、第1隙間511は、第1電極41の第1リード部411と第2電極42とに沿う方向に延びている。さらに、この第1隙間511には、電気絶縁性を有する空気等が入っているため、電極間非導電部50は、電気絶縁性を有する。
【0036】
第1境界部512は、透明導電膜30の発熱部35と第1隙間511との境界部である。また、第1境界部512の一部は、図4に示すように、第1電極41の接続部410に接続されている。さらに、第1境界部512は、第1電極41の接続部410と第2電極42のうち右側の第1端部421との間に位置している。
【0037】
第2隙間521は、図3に示すように、第1電極41の第2リード部412と第2電極42との間に形成されている。また、第2隙間521は、第1電極41の第2リード部412と第2電極42とに沿う方向に延びている。さらに、この第2隙間521には、電気絶縁性を有する空気等が入っているため、電極間非導電部50は、電気絶縁性を有する。
【0038】
第2境界部522は、透明導電膜30の発熱部35と第2隙間521との境界部である。また、第2境界部522の一部は、第1電極41の接続部410に接続されている。さらに、第2境界部522は、第1境界部512と同様に、第1電極41の接続部410と第2電極42のうち左側の第2端部422との間に位置している。
【0039】
第1リード線61は、第1電極41の第1リード部411のうち左側の端部、すなわち、第1電極41全体のうち下側の端部に接続されている。また、第1リード線61は、第1電極41の第1リード部411のうち左側の端部から下方に延びており、図示しない電源に接続されている。
【0040】
第2リード線62は、第1電極41の第2リード部412のうち右側の端部、すなわち、第1電極41全体のうち下側の端部に接続されている。また、第2リード線62は、第1電極41の第2リード部412のうち右側の端部から下方に延びており、図示しない電源に接続されている。
【0041】
第3リード線63は、第2電極42のうち下側に接続されている。これにより、第3リード線63は、第1リード線61および第2リード線62とともに、電波送受信部4から送信される電波に含まれる電界の振動方向と交差する方向の一方側、ここでは、フィルムヒータ20のうち下側に配置されている。また、第3リード線63は、第2電極42との接続箇所から下方に延びており、図示しない電源に接続されている。
【0042】
透明絶縁膜70は、例えば、透明導電膜30、第1電極41および第2電極42を覆うように形成されており、電気絶縁性を有する。この透明絶縁膜70は、例えば、ポリカーボネート等の樹脂で形成されている。
【0043】
以上のように、エンブレム5は構成されている。このエンブレム5では、フィルムヒータ20により加熱されつつ、ミリ波等の電波の減衰が抑制される。
【0044】
次に、このフィルムヒータ20による加熱について説明する。
【0045】
ここでは、第1電極41は、正極であって、第2電極42が負極である。このため、図示しない電源がフィルムヒータ20に電力を供給すると、図示しない電源から第1リード線61、第1電極41の第1リード部411および接続部410を経由して、発熱部35の上側外縁部351に電流が流れる。また、図示しない電源から、第2リード線62、第1電極41の第2リード部412および接続部410を経由して、発熱部35の上側外縁部351に電流が流れる。
【0046】
また、発熱部35において、この上側外縁部351は、並列する複数の導電部353のそれぞれに接続されている。これにより、この上側外縁部351を流れる電流は、複数の導電部353のそれぞれに流れる。また、それぞれの導電部353は、上側外縁部351からスリット311が延びている方向に延びており、下側外縁部352に接続されている。このため、それぞれの導電部353を流れる電流は、スリット311が延びている方向に沿って流れて、下側外縁部352に流れる。また、下側外縁部352を流れる電流は、第2電極42を経由して第3リード線63に流れる。
【0047】
よって、ここでは、発熱部35において、並列する複数の導電部353のそれぞれに電流が流れるため、第1電極41、発熱部35および第2電極42を流れる電流の回路は、並列回路になっている。
【0048】
また、上記のように、それぞれの導電部353に電流が流れることにより、面状の発熱部35全体で熱が発生する。これにより、フィルムヒータ20内の温度分布のバラつきを比較的小さくできるため、フィルムヒータ20は、エンブレム5内の温度分布のバラつきを低減させることができる。このため、エンブレム5は、エンブレム5に付着する雪や雨等の水を均一に除去することができる。
【0049】
このように、フィルムヒータ20によって熱が発生する。また、このフィルムヒータ20では、ミリ波等の電波の減衰が抑制される。以下では、この電波の減衰の抑制について説明する。
【0050】
フィルムヒータ20の透明導電膜30は、スリット311および発熱部35を有する。
スリット311は、電気絶縁性を有するため、電波送受信部4から送信される電波を吸収しにくい。これにより、ミリ波等の電波の減衰が抑制される。
【0051】
また、スリット311は、電波送受信部4から送信される電波に含まれる電界の振動方向に交差する方向に延びている。これにより、電界の振動方向における発熱部35の長さ、ここでは、電界の振動方向における導電部353の長さは、小さくなる。このため、発熱部35のうち、電波に含まれる電界の作用によって誘電分極する部分が小さくなる。したがって、電波に含まれる電界の作用による発熱部35の誘電分極によって、電波のエネルギーが吸収されて熱エネルギーに変換されることが抑制される。よって、ミリ波等の電波の減衰が抑制される。
【0052】
また、このフィルムヒータ20は、以下に説明するような効果も奏する。
【0053】
[1]第1リード線61、第2リード線62および第3リード線63は、電波送受信部4から送信される電波に含まれる電界の振動方向と交差する方向に延びている。具体的には、第1リード線61、第2リード線62および第3リード線63は、車両1の下方に延びており、車両1の左右方向に一致する電界の振動方向と交差している。これにより、電界の振動方向における第1リード線61、第2リード線62および第3リード線63のそれぞれの長さを小さくすることができる。このため、上記と同様に、電波に含まれる電界の作用による第1リード線61、第2リード線62および第3リード線63の誘電分極によって、電波のエネルギーが吸収されて熱エネルギーに変換されることが抑制される。したがって、ミリ波等の電波の減衰が抑制される。また、第1リード線61は、第2リード線62と第3リード線63とともに、フィルムヒータ20のうち電波送受信部4から送信される電波に含まれる電界の振動方向と交差する方向の一方側に配置されている。具体的には、第1リード線61は、第2リード線62と第3リード線63とともに、フィルムヒータ20のうち下側に配置されている。これにより、上記と同様に、電界の振動方向における第1リード線61、第2リード線62および第3リード線63のそれぞれの長さを小さくすることができる。したがって、上記と同様に、ミリ波等の電波の減衰が抑制される。
【0054】
[2]また、第1リード線61は、第2リード線62と第3リード線63とともに、フィルムヒータ20のうち一方側に配置されている。これにより、第1リード線61と第2リード線62と第3リード線63とが集約されるため、図示しない電源との接続が容易になる。
【0055】
[3]第1電極41は、第2電極42を囲うように第2電極42に対して発熱部35の外側に配置されている。また、第1電極41と第2電極42との間には、電極間非導電部50が配置されている。さらに、電極間非導電部50と発熱部35との境界部は、第1電極41の接続部410と第2電極42の端部との間に配置されている。具体的には、電極間非導電部50の第1境界部512は、第1電極41の接続部410と第2電極42のうち右側の第1端部421との間に位置している。電極間非導電部50の第2境界部522は、第1電極41の接続部410と第2電極42のうち左側の第2端部422との間に位置している。これにより、第1電極41と第2電極42とが導通して短絡することが抑制される。
【0056】
[4]第1電極41および第2電極42は、電波送受信部4から送信される電波の照射範囲Rの外側に配置されている。これにより、電波に含まれる電界の作用による第1電極41および第2電極42の誘電分極によって、電波のエネルギーが吸収されて熱エネルギーに変換されることが抑制される。したがって、ミリ波等の電波の減衰が抑制される。
【0057】
[5]ここで、線状の発熱体においては、発熱体の長さが長くなっていることにより電気抵抗が比較的大きくなるため、この発熱体に一定の電圧が印加される場合、発熱量は、比較的小さくなる。
【0058】
ここでは、面状の発熱部35において。複数の導電部353は、スリット311の並列方向に並んでいる。また、この並列する複数の導電部353のそれぞれが発熱部35の上側外縁部351と下側外縁部352とに接続されているため、第1電極41、発熱部35および第2電極42を流れる電流の回路は、並列回路になっている。これにより、図示しない電源により第1電極41と第2電極42との間に一定の電圧が印加されると、複数の導電部353のそれぞれに印加される電圧は、同じになる。したがって、この並列回路上において、並列する複数の導電部353により、発熱部35の全体抵抗の逆数を大きくできるため、発熱部35の全体抵抗を小さくすることができる。よって、図示しない電源によって第1電極41と第2電極42との間に一定の電圧が印加される場合、線状の発熱体と比較して、発熱部35の発熱量を大きくすることができる。これにより、例えば、第1電極41と第2電極42との間に一定の電圧が小さい場合でも、線状の発熱体と比較して、発熱部35の発熱量を大きくすることができる。
【0059】
(第2実施形態)
第2実施形態では、電波送受信部4から送信される電波に含まれる電界の振動方向が異なる。また、スリット311、発熱部35、第1電極41、第2電極42、電極間非導電部50、第1リード線61、第2リード線62および第3リード線63の形態が異なる。これら以外は、第1実施形態と同様である。
【0060】
電波送受信部4から送信される電波の進行方向は、上記と同様に、車両1の前方に一致する。また、ここでは、この電波に含まれる電界の振動方向は、図5に示すように、車両1の上下方向に一致する。この場合、この電波に含まれる磁界の振動方向は、車両1の左右方向に一致する。
【0061】
スリット311は、この電波に含まれる電界の振動方向に直交しており、ここでは、車両1の左右方向に延びている。また、スリット311は、電波送受信部4から送信される電波に含まれる磁界の振動方向、ここでは、車両1の左右方向に平行に延びている。さらに、複数のスリット311は、電波送受信部4から送信される電波に含まれる電界の振動方向、ここでは、車両1の上下方向に並列している。また、ここでは、透明導電膜30が楕円状であるため、車両1の左右方向における透明導電膜30の長さは、透明導電膜30の中心Oから車両1の上下方向に向かって小さくなっている。これに対応して、車両1の左右方向における複数のスリット311のそれぞれの長さは、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、小さくなっている。
【0062】
発熱部35は、左側外縁部354、右側外縁部355および複数の導電部353を含む。
【0063】
左側外縁部354は、発熱部35のうち車両1の上下方向に延びる鉛直中心線Ovに対して左側の外縁周辺部である。
【0064】
右側外縁部355は、発熱部35のうち車両1の上下方向に延びる鉛直中心線Ovに対して右側の外縁周辺部である。
【0065】
導電部353は、スリット311が延びている方向、ここでは、車両1の左右方向に延びている。また、複数の導電部353は、複数のスリット311の並列方向、ここでは、車両1の上下方向に並列している。さらに、車両1の左右方向における複数の導電部353のそれぞれの長さは、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、小さくなっている。
【0066】
第1電極41は、上記と同様に、正極である。また、第1電極41は、電波送受信部4から送信される電波の照射範囲Rの外側に配置されている。具体的には、第1電極41は、接続部410、第1リード部411および第2リード部412を有する。
【0067】
接続部410は、ここでは、発熱部35の左側外縁部354に接続されている。また、接続部410は、左側外縁部354に沿う方向に延びている。
【0068】
第1リード部411は、ここでは、接続部410のうち下側の端部に接続されている。また、第1リード部411は、接続部410のうち下側の端部から右側外縁部355に沿う方向に延びている。
【0069】
第2リード部412は、ここでは、接続部410のうち上側の端部に接続されている。また、第2リード部412は、接続部410のうち上側の端部から右側外縁部355に沿う方向に延びている。
【0070】
第2電極42は、上記と同様に、負極である。また、第2電極42は、電波送受信部4から送信される電波の照射範囲Rの外側に配置されている。さらに、第2電極42は、ここでは、発熱部35の右側外縁部355に接続されている。
【0071】
電極間非導電部50は、第1電極41と第2電極42との間に形成されている。電極間非導電部50は、第1隙間511、第1境界部512、第2隙間521および第2境界部522を有する。
【0072】
第1隙間511は、上記と同様に、第1電極41の第1リード部411と第2電極42との間に形成されている。
【0073】
第1境界部512は、上記と同様に、透明導電膜30の発熱部35と第1隙間511との境界部である。また、第1境界部512は、ここでは、第1電極41の接続部410と第2電極42のうち下側の第1端部421との間に位置している。
【0074】
第2隙間521は、上記と同様に、第1電極41の第2リード部412と第2電極42との間に形成されている。
【0075】
第2境界部522は、上記と同様に、透明導電膜30の発熱部35と第2隙間521との境界部である。また、第2境界部522は、ここでは、第1電極41の接続部410と第2電極42のうち上側の第2端部422との間に位置している。
【0076】
第1リード線61は、第1電極41の第1リード部411のうち上側の端部、すなわち、第1電極41全体のうち左側の端部に接続されている。また、第1リード線61は、第1電極41の第1リード部411のうち上側の端部から左方に延びており、図示しない電源に接続されている。
【0077】
第2リード線62は、第1電極41の第2リード部412のうち下側の端部、すなわち、第1電極41全体のうち左側の端部に接続されている。また、第2リード線62は、第1電極41の第2リード部412のうち下側の端部から左方に延びており、図示しない電源に接続されている。
【0078】
第3リード線63は、第2電極42のうち左側に接続されている。これにより、第3リード線63は、第1リード線61および第2リード線62とともに、電波送受信部4から送信される電波に含まれる電界の振動方向と交差する方向の一方側、ここでは、フィルムヒータ20のうち左側に配置されている。また、第3リード線63は、第2電極42との接続箇所から左方に延びており、図示しない電源に接続されている。
【0079】
このように、第2実施形態は構成されている。第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0080】
(第3実施形態)
第3実施形態では、透明導電膜30のスリット311および発熱部35の形態が異なる。これ以外は、第1実施形態と同様である。
【0081】
複数のスリット311は、上記と同様に、電波送受信部4から送信される電波に含まれる電界の振動方向、ここでは、車両1の左右方向に並列している。さらに、複数のスリット311のそれぞれの幅は、上記と同様に、等しくなっている。
【0082】
また、ここでは、図6に示すように、複数のスリット311が並ぶ間隔が等間隔ではなく、互いに隣り合うスリット311同士の間のそれぞれの距離は、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、小さくなっている。これにより、複数の導電部353のそれぞれの幅は、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、小さくなっている。
【0083】
このように、第3実施形態は構成されている。第3実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、第3実施形態では、以下に説明する効果も奏する。
【0084】
ここで、上記したように、透明導電膜30が楕円状であるため、車両1の上下方向における透明導電膜30の長さは、透明導電膜30の中心Oから車両1の左右方向に向かうにつれて、小さくなっている。このため、車両1の上下方向における複数のスリット311のそれぞれの長さは、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、小さくなっている。これに対応して、車両1の上下方向における複数の導電部353のそれぞれの長さは、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、小さくなっている。
【0085】
これにより、複数の導電部353のそれぞれの電気抵抗は、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、小さくなっている。このため、複数の導電部353のそれぞれの発熱量は、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、大きくなっている。
【0086】
また、これにより、複数の導電部353のそれぞれの表面積は、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、小さくなっている。
【0087】
よって、複数の導電部353のそれぞれの発熱密度は、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、大きくなっている。なお、発熱密度とは、ここでは、単位表面積あたりの発熱量である。
【0088】
しかし、第3実施形態では、複数の導電部353のそれぞれの幅は、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、小さくなっている。このため、導電部353に電流が流れる方向と直交する断面において、複数の導電部353のそれぞれの断面積は、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、小さくなっている。
【0089】
これにより、複数の導電部353のそれぞれの幅が一定の場合と比較して、複数の導電部353のそれぞれの電気抵抗は、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、大きくなる。この場合、図示しない電源により第1電極41と第2電極42との間に一定の電圧が印加されると、複数の導電部353のそれぞれの発熱量は、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、小さくなる。このため、複数の導電部353のそれぞれの幅が一定の場合と比較して、複数の導電部353のそれぞれの発熱密度を、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、小さくすることができる。
【0090】
したがって、導電部353の長さが小さくなることによって増加する発熱密度を減少させることができるため、複数の導電部353同士の発熱密度の差を小さくできる。よって、複数の導電部353同士の温度差を小さくできるため、発熱部35の温度が均一になることにより、エンブレム5に付着する雪や雨等の水を均一に除去することができる。
【0091】
(第4実施形態)
第4実施形態では、第1電極41、第2電極42、電極間非導電部50、第1リード線61および第2リード線62の形態が異なる。また、フィルムヒータ20は、第3リード線63を備えていない。これら以外は、第1実施形態と同様である。
【0092】
第1電極41は、図7に示すように、発熱部35の下側外縁部352に接続されている。また、第1電極41は、下側外縁部352に沿う方向に延びている。
【0093】
第2電極42は、発熱部35の上側外縁部351に接続されている。また、第2電極42は、上側外縁部351に沿う方向に延びている。
【0094】
電極間非導電部50は、第1隙間511および第2隙間521を有する。
【0095】
第1隙間511は、第1電極41のうち右側の端部と第2電極42のうち右側の端部との間に配置されている。
【0096】
第2隙間521は、第1電極41のうち左側の端部と第2電極42のうち左側の端部との間に配置されている。これらの第1隙間511および第2隙間521により、第1電極41と第2電極42とが導通して短絡することが抑制される。
【0097】
第1リード線61は、第1電極41のうち左側の端部に接続されている。また、第1リード線61は、第1電極41のうち左側の端部から車両1の左方に延びている。
【0098】
第2リード線62は、第2電極42のうち左側の端部に接続されている。また、第2リード線62は、第2電極42のうち左側の端部から車両1の左方に延びている。したがって、ここでは、第2リード線62は、第1リード線61とともに電波送受信部4から送信される電波に含まれる電界の振動方向に延びている。
【0099】
このように、第4実施形態は構成されている。第4実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。なお、第4実施形態では、第1リード線61が第2リード線62とともに電波送受信部4から送信される電波に含まれる電界の振動方向に延びている。また、第1リード線61が第2リード線62とともにフィルムヒータ20のうち電界の振動方向側に配置されている。このため、上記[1]に記載した効果を奏しない。
【0100】
(第5実施形態)
第5実施形態では、第1リード線61の形態が異なる。これ以外は、第4実施形態と同様である。
【0101】
第1リード線61は、図8に示すように、第1電極41のうち左側の端部に接続されている。また、第1リード線61は、第1電極41のうち左側の端部から左方に延びている。これにより、第1リード線61は、第2リード線62が延びている方向とは反対方向に延びている。
【0102】
このように、第5実施形態は構成されている。第5実施形態においても、第4実施形態と同様の効果を奏する。なお、第5実施形態では、第1リード線61が透明導電膜30に対して右側に配置されており、第2リード線62が透明導電膜30に対して左側に配置されているため、第1リード線61と第2リード線62とが集約されていない。このため、第5実施形態は、第4実施形態と比較して上記[2]に記載した効果を奏しない。
【0103】
(第6実施形態)
第6実施形態では、第1電極41、第2電極42、電極間非導電部50、第1リード線61および第2リード線62の形態が異なる。また、フィルムヒータ20は、第3リード線63を備えていない。これら以外は、第2実施形態と同様である。
【0104】
第1電極41は、図9に示すように、発熱部35の左側外縁部354に接続されている。また、第1電極41は、左側外縁部354に沿う方向に延びている。
【0105】
第2電極42は、発熱部35に右側外縁部355に接続されている。また、第2電極42は、右側外縁部355に沿う方向に延びている。
【0106】
電極間非導電部50は、第1隙間511および第2隙間521を有する。
【0107】
第1隙間511は、第1電極41のうち上側の端部と第2電極42のうち上側の端部との間に配置されている。
【0108】
第2隙間521は、第1電極41のうち下側の端部と第2電極42のうち下側の端部との間に配置されている。これらの第1隙間511および第2隙間521により、第1電極41と第2電極42とが導通して短絡することが抑制される。
【0109】
第1リード線61は、第1電極41のうち下側の端部に接続されている。また、第1リード線61は、第1電極41のうち下側の端部から車両1の下方に延びている。
【0110】
第2リード線62は、第2電極42のうち下側の端部に接続されている。また、第2リード線62は、第2電極42のうち下側の端部から車両1の下方に延びている。したがって、ここでは、第2リード線62は、第1リード線61とともに電波送受信部4から送信される電波に含まれる電界の振動方向に延びている。
【0111】
このように、第6実施形態は構成されている。第6実施形態においても、第2実施形態と同様の効果を奏する。なお、第6実施形態では、第1リード線61が第2リード線62とともに電波送受信部4から送信される電波に含まれる電界の振動方向に延びている。また、第1リード線61が第2リード線62とともにフィルムヒータ20のうち電界の振動方向側に配置されている。このため、上記[1]に記載した効果を奏しない。
【0112】
(第7実施形態)
第7実施形態では、第1リード線61の形態が異なる。これ以外は、第6実施形態と同様である。
【0113】
第1リード線61は、図10に示すように、第1電極41のうち上側の端部に接続されている。また、また、第1リード線61は、第1電極41のうち上側の端部から車両1の上方に延びている。これにより、第1リード線61は、第2リード線62が延びている方向とは反対方向に延びている。
【0114】
このように、第7実施形態は構成されている。第7実施形態においても、第6実施形態と同様の効果を奏する。なお、第7実施形態では、第1リード線61が透明導電膜30に対して上側に配置されており、第2リード線62が透明導電膜30に対して下側に配置されているため、第1リード線61と第2リード線62とが集約されていない。このため、第7実施形態は、第6実施形態と比較して上記[2]に記載した効果を奏しない。
【0115】
(第8実施形態)
第8実施形態では、第1電極41および第2電極42の形態が異なる。これ以外は、第6実施形態と同様である。
【0116】
第1電極41は、図11に示すように、発熱部35の上側外縁部351に接続されている。第2電極42の長さは、第1電極41の長さよりも大きくなっている。このため、第2電極42は、発熱部35の上側外縁部351と下側外縁部352とに接続されている。これにより、第1リード線61は、第2リード線62とともに、発熱部35の鉛直中心線Ovに対して右側に位置している。
【0117】
このように、第8実施形態は構成されている。第8実施形態においても、第6実施形態と同様の効果を奏する。
【0118】
(他の実施形態)
本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態に対して、適宜変更が可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0119】
上記実施形態では、エンブレム5は、車両1のフロントグリル2に配置されている。これに対して、エンブレム5は、車両1のフロントグリル2に配置されることに限定されないで、例えば、車両1のボディに配置されてもよい。
【0120】
上記実施形態では、エンブレム5の基材10は、楕円板状に形成されている。これに対して、基材10は、楕円板状に形成されることに限定されないで、例えば、基材10は、円板状や多角形の板状に形成されてもよい。
【0121】
上記実施形態では、フィルムヒータ20は、エンブレム5に配置されている。これに対して、フィルムヒータ20は、エンブレム5に配置されることに限定されない。例えば、車両1のフロントガラス付近の車室内やヘッドライト3等に電波送受信機が配置される場合には、フィルムヒータ20は、フロントガラスやヘッドライト3に配置されてもよい。
【0122】
上記実施形態では、フィルムヒータ20の第1電極41は、正極であって、かつ、第2電極42が負極である。これに対して、第1電極41が正極であってかつ第2電極42が負極であることに限定されない。第1電極41は、負極であって、かつ、第2電極42が正極であってもよい。
【0123】
上記実施形態では、スリット311には、電気絶縁性を有する空気等が入っている。これに対して、スリット311には、空気等の気体が入っていることに限定されない。例えば、スリット311には、電気絶縁性を有する樹脂等の固体が埋められてもよい。
【0124】
上記実施形態では、電極間非導電部50の第1隙間511および第2隙間521には、電気絶縁性を有する空気等が入っている。これに対して、電極間非導電部50の第1隙間511および第2隙間521には、空気等の気体が入っていることに限定されない。上記と同様に、電極間非導電部50の第1隙間511および第2隙間521には、電気絶縁性を有する樹脂等の固体が埋められてもよい。
【0125】
上記実施形態では、透明導電膜30は、複数のスリット311を含む。これに対して、スリット311の数は、複数であることに限定されない。スリット311の数は、1つであってもよい。したがって、スリット311の数は、少なくとも1つであればよい。なお、スリット311の数が1つである場合、発熱部35は、2つに分割されるため、導電部353の数は、2つになる。
【0126】
上記第3実施形態では、互いに隣り合うスリット311同士の間のそれぞれの距離は、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、小さくなっている。これにより、複数の導電部353のそれぞれの幅は、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、小さくなっている。これに対して、互いに隣り合うスリット311同士の間のそれぞれの距離は、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、小さくなっていることに限定されない。例えば、図12に示すように、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、互いに隣り合うスリット311同士の間のそれぞれの距離が小さくなるとともに、複数のスリット311のそれぞれの幅が大きくなってもよい。これにより、上記と同様に、複数の導電部353のそれぞれの幅は、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、小さくなる。なお、複数のスリット311が並ぶ間隔が等間隔であって、かつ、複数のスリット311のそれぞれの幅が透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、大きくなってもよい。
【0127】
また、上記第3実施形態では、複数の導電部353のそれぞれの幅は、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、小さくなっている。これにより、導電部353に電流が流れる方向と直交する断面において、複数の導電部353のそれぞれの断面積は、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、小さくなっている。これに対して、複数の導電部353のそれぞれの幅は、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、小さくなっていることに限定されない。例えば、複数の導電部353のそれぞれの厚みが、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、小さくなってもよい。これによっても、導電部353に電流が流れる方向と直交する断面において、複数の導電部353のそれぞれの断面積は、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、小さくなる。
【0128】
また、上記第3実施形態では、複数の導電部353のそれぞれのスリット311が延びている方向の長さは、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、小さくなっている。これに対して、複数の導電部353のそれぞれのスリット311が延びている方向の長さは、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、小さくなっていることに限定されない。例えば、複数の導電部353のそれぞれのスリット311が延びている方向の長さは、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、大きくなってもよい。
【0129】
この場合、複数の導電部353のそれぞれの幅または厚みは、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、大きくなる。これにより、導電部353に電流が流れる方向と直交する断面において、複数の導電部353のそれぞれの断面積は、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、大きくなる。
【0130】
このため、複数の導電部353のそれぞれの幅および厚みが一定の場合と比較して、複数の導電部353のそれぞれの電気抵抗は、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、小さくなる。この場合に、図示しない電源により第1電極41と第2電極42との間に一定の電圧が印加されると、複数の導電部353のそれぞれの発熱量は、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、大きくなる。このため、複数の導電部353のそれぞれの幅および厚みが一定の場合と比較して、複数の導電部353のそれぞれの発熱密度を、透明導電膜30の中心Oからスリット311の並列方向に向かうにつれて、大きくすることができる。
【0131】
したがって、導電部353の長さが大きくなることによって減少する発熱密度を増加させることができるため、複数の導電部353同士の発熱密度の差を小さくできる。よって、上記と同様に、複数の導電部353同士の温度差を小さくできるため、発熱部35の温度が均一になることにより、エンブレム5に付着する雪や雨等の水を均一に除去することができる。
【0132】
上記実施形態は、適宜組み合わされてもよい。
【0133】
(まとめ)
上記各実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、フィルムヒータは、電気絶縁性を有するとともに電波送受信部から送信される電波に含まれる電界の振動方向と交差する方向に延びている少なくとも1つの非導電部と、通電されることにより発熱するとともに光を透過する発熱部とを含む透明導電体と、発熱部に接続されている第1電極と、発熱部に接続されている第2電極と、を備え、発熱部は、非導電部に隣接するとともに第1電極と第2電極とによって発熱部が通電されて非導電部が延びている方向に沿って電流が流れることにより発熱する導電部を少なくとも1つ含む。
【0134】
非導電部は、電気絶縁性を有するため、電波送受信部から送信される電波を吸収しにくい。これにより、ミリ波等の電波の減衰が抑制される。また、非導電部は、電波送受信部から送信される電波に含まれる電界の振動方向に交差する方向に延びている。これにより、電界の振動方向における発熱部の導電部の長さは、小さくなる。このため、発熱部のうち電波に含まれる電界の作用によって誘電分極する部分が小さくなる。したがって、電波に含まれる電界の作用による発熱部の誘電分極によって、電波のエネルギーが吸収されて熱エネルギーに変換されることが抑制される。よって、ミリ波等の電波の減衰が抑制される。
【0135】
また、第2の観点によれば、フィルムヒータは、第1電極に接続されている第1リード線と、第2電極に接続されている第2リード線と、をさらに備え、第1リード線は、第2リード線とともに電界の振動方向と交差する方向の一方側に配置されている。これにより、上記と同様に、電界の振動方向における第1リード線および第2リード線のそれぞれの長さを小さくすることができる。したがって、上記と同様に、ミリ波等の電波の減衰が抑制される。また、これにより、第1リード線と第2リード線とが集約されるため、図示しない電源等との接続が容易になる。
【0136】
また、第3の観点によれば、第1電極は、第2電極を囲うように第2電極に対して発熱部の外側に配置されており、当該フィルムヒータは、電気絶縁性を有するとともに第1電極と第2電極との間に配置される電極間非導電部をさらに備える。これにより、第1電極と第2電極とが導通して短絡することが抑制される。
【0137】
また、第4の観点によれば、第1電極、第2電極および電極間非導電部は、発熱部の外縁部に沿う方向に延びている。これにより、第1電極と第2電極とが導通して短絡することが抑制される。
【0138】
また、第5の観点によれば、電極間非導電部は、発熱部との境界部を有し、境界部は、第1電極のうち発熱部との接続部と第2電極の端部との間に配置されている。これにより、第1電極と第2電極とが導通して短絡することが抑制される。
【0139】
また、第6の観点によれば、第1電極および第2電極は、電波送受信部から送信される電波の照射範囲の外側に配置されている。これにより、電波に含まれる電界の作用による第1電極および第2電極の誘電分極によって、電波のエネルギーが吸収されて熱エネルギーに変換されることが抑制される。したがって、ミリ波等の電波の減衰が抑制される。
【0140】
また、第7の観点によれば、透明導電体は、非導電部を複数有しており、複数の非導電部は、電界の振動方向に並列しており、発熱部は、複数の導電部を含み、複数の導電部は、非導電部の並列方向に並列している。
【0141】
また、第8の観点によれば、非導電部が延びている方向における複数の導電部のそれぞれの長さは、透明導電体の中心から非導電部の並列方向に向かうにつれて、大小変化しており、導電部に電流が流れる方向と直交する断面における複数の導電部のそれぞれの断面積は、透明導電体の中心から非導電部の並列方向に向かうにつれて、導電部の長さの大小変化と同じ大小変化をしている。これにより、複数の導電部同士の発熱密度の差を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0142】
4 電波送受信部
30 透明導電膜
311 スリット
35 発熱部
351 導電部
41 第1電極
42 第2電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図11
図12