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特許7528518遮光部材とその製造方法、遮光部材を有するレンズユニット並びにカメラモジュール、および電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】遮光部材とその製造方法、遮光部材を有するレンズユニット並びにカメラモジュール、および電子機器
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20240730BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G02B7/02 D
G02B5/00 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020078398
(22)【出願日】2020-04-27
(65)【公開番号】P2021173897
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】西辻 清明
(72)【発明者】
【氏名】島村 槙一
(72)【発明者】
【氏名】相澤 弘康
【審査官】東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-072151(JP,A)
【文献】特開2017-015815(JP,A)
【文献】特開2016-109959(JP,A)
【文献】特開2011-085625(JP,A)
【文献】特開2017-181893(JP,A)
【文献】特開2002-229095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 9/00- 9/07
G02B 7/02- 7/16
G02B 5/00- 5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズをレンズホルダ内部に積み重ねて構成されるレンズユニットに配置される薄板状の金属製基材からなる遮光部材において、前記遮光部材には、隣接するレンズの光学面に対応する位置に略円形の開口部が形成されており、
前記開口部は断面視において、光の入射側にあたる表面から、反対側の裏面に向けて先細る形状を有する第2孔と、前記裏面から前記表面に向けて先細る形状を有して前記第2孔に繋がる第1孔とを備えてなり、
前記第2孔の開口サイズは前記第1孔の開口サイズよりも大きく、
厚さ10~100μmの前記金属製基材を用いて成形してなり、
前記金属製基材を形成する材料は、インバーまたはスーパーインバーであり、
前記表面と直交する平面に沿う断面において、前記第2孔を区画する側面が弧状であり、かつ、前記第2孔を区画する前記側面の曲率中心が、前記遮光部材の外側に位置することを特徴とする遮光部材。
【請求項2】
前記金属製基材の比重[g/cm3 ]がA、線膨張係数[×10-6/℃]がBである場合、
数値[B/A2]が3.28以下となる条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載の遮光部材。
【請求項3】
前記遮光部材の全面に、マクベス濃度計にて2.0以上の光学濃度を示す黒化処理層を施してなる構成であることを特徴とする請求項1または2に記載の遮光部材。
【請求項4】
請求項1~の何れかに記載の遮光部材を複数のレンズに近接配置してレンズホルダ内部に積み重ねて構成されるカメラモジュール用レンズユニット。
【請求項5】
光の入射側が開口サイズの大きい前記遮光部材の第2孔側となる様に、複数の遮光部材がレンズユニットに配置されてなる構成である請求項記載のカメラモジュール用レンズユニット。
【請求項6】
請求項または記載のレンズユニットと撮像素子から構成されるカメラモジュール。
【請求項7】
請求項記載のカメラモジュールが搭載される電子機器。
【請求項8】
2段階のエッチング方式により、厚さ10~100μmの金属製基材の第1の面と第2の面に異なるサイズの開口を形成して貫通する加工を行なう遮光部材の製造方法において、
前記遮光部材は、
複数のレンズをレンズホルダ内部に積み重ねて構成されるレンズユニットに配置される薄板状の前記金属製基材からなる前記遮光部材であって、前記遮光部材には、隣接するレンズの光学面に対応する位置に略円形の開口部が形成されており、
前記開口部は断面視において、光の入射側にあたる表面から、反対側の裏面に向けて先細る形状を有する第2孔と、前記裏面から前記表面に向けて先細る形状を有して前記第2孔に繋がる第1孔とを備えてなり、
前記第2孔の開口サイズは前記第1孔の開口サイズよりも大きく、
前記金属製基材を形成する材料は、インバーまたはスーパーインバーであり、
前記表面と直交する平面に沿う断面において、前記第2孔を区画する側面が弧状であり、かつ、前記第2孔を区画する前記側面の曲率中心が、前記遮光部材の外側に位置し、
前記製造方法は、
前記金属製基材の前記第1の面であって、前記表面および前記裏面の一方である前記第1の面、前記第2の面であって、前記表面および前記裏面の他方である前記第2の面とそれぞれ開口サイズの異なるレジストパターンを形成し、そのレジストパターンをマスクとして前記金属製基材をエッチングする際、エッチング加工が行なわれない側の前記金属製基材が露出した前記レジストパターンの開口に、耐エッチング性およびアルカリ溶解性の相反する特性を満足するエッチング保護用感光性組成物を形成しておき、
前記金属製基材を一方の前記第1の面側からのみ途中までエッチングした後、一旦エッチングを中断し、
エッチング加工した凹部に、前記エッチング保護用感光性組成物を埋め込み、
次いで前記金属製基材を前記第2の面側からのみ前記エッチング保護用感光性組成物に達するまで再度エッチングして、前記金属製基材に前記第1孔と前記第2孔とを備える貫通孔を形成する工程を備える、遮光部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラモジュール用レンズユニットを構成する遮光部材の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラなどの光学機器、携帯情報端末装置やパーソナルコンピュータなどの電子機器等に搭載されるカメラモジュールには、複数のレンズをレンズホルダ(鏡筒)内部に積み重ねた上で固体撮像素子(CCD,CMOSなどのイメージセンサ)と組み合わせるレンズユニットが含まれる。このようなレンズユニットにおいて、レンズとレンズの間に遮光やアパーチャー決め(絞りを規定する開口)のための遮光部材が用いられる。
【0003】
遮光性能に優れた遮光部材を製造する上で、アルミニウム(Al),銅(Cu),錫(Sn),SUS(ステンレス鋼)等の金属製基材を用いて製造される遮光部材についての先行技術が開示されている。(例えば、特許文献1参照)特許文献1では、遮光性能を一層確実にするため、遮光部材の表面に、所定サイズ,ピッチ,向きで配列された錐体状の複数の突部(モスアイ構造)が形成される。このような遮光部材は、カメラモジュールのレンズユニットにおいては、迷光の進入およびフレアやゴーストの発生を防止するなど、撮影に有害な光を遮断して撮像性能を向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-15815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
厚みを持つ金属製基材を用いて遮光部材を製造する際、打ち抜き加工では、製造物に歪みや皺が発生してしまう。また、切断加工では、切断加工に応じて断裁面の金属光沢が露出してしまい、何れも遮光性能の低下を招く。特に撮像性能に及ぼす影響の大きいアパーチャー部の成形面における遮光性能の低下に及ぼす影響は大きい。
【0006】
金属製基材を用いて遮光部材を製造する手法では、フォトエッチングの採用も考えられる。等方的なフォトエッチングでは、エッチング加工の進行方向と垂直な方向へのサイドエッチングを伴うため、厚みを持つ金属製基材に垂直に貫通した貫通孔を形成することは困難であるが、金属製基材の表裏両面からのフォトエッチングを組み合わせて、サイドエッチングを積極的に応用することによる加工部の断面形状の制御も可能である。
【0007】
フレアやゴーストを解消するためのアパーチャー部の成形面と、遮光部材の外形を規定する成形面とは、それぞれに好適な断面形状を有している。金属製基材の表裏両面からの等方的なフォトエッチングの組み合わせでは、金属製基材の内部に向ってそれぞれ略円弧を描くようにエッチングが進行するので、表裏両面から進む円弧が交差する貫通箇所では、断面視でエッチングの交点であるエッジ(頂部)が形成される。
【0008】
本発明では、リング状の遮光部材の内周縁(アパーチャー部)および外周縁(外形)を規定する内径および外径をフォトエッチングでの貫通孔により形成するにあたり、レンズユニットの薄型化,軽量化に好適であり、遮光特性と機械的強度に優れた遮光部材を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による遮光部材は、
複数のレンズをレンズホルダ内部に積み重ねて構成されるレンズユニットに配置される薄板状の金属製基材からなる遮光部材において、
前記遮光部材には、隣接するレンズの光学面に対応する位置に略円形の開口部が形成されており、
前記開口部は断面視において、光の入射側にあたる表面から、反対側の裏面に向けて先細る形状を有する第2孔と、前記裏面から前記表面に向けて先細る形状を有して前記第2孔に繋がる第1孔とを備えてなり、
前記第2孔の開口サイズは前記第1孔の開口サイズよりも大きく形成されており、
厚さ10~100μmの金属製基材を用いて成形してなることを特徴とする。
【0010】
金属製基材は、アルミニウム,鉄,銅,クロム,ニッケル,コバルトおよびそれらの合金からなる群から選択される。
【0011】
金属製基材の合金は、前記鉄-ニッケル系合金がインバーであり、前記鉄-ニッケル-コバルト系合金がスーパーインバーであることが好適である。
【0012】
金属製基材の比重[g/cm3] がA,線膨張係数[×10-6/℃]がBである場合、
数値[B/A2]が3.28以下であることが好適である。
【0013】
遮光部材の全面に、マクベス濃度計にて2.0以上の光学濃度を示す黒化処理層を施してなる構成であることが好適である。
【0014】
上記の何れかに記載の遮光部材を複数のレンズに近接配置してレンズホルダ内部に積み重ねてカメラモジュール用レンズユニットが構成される。
【0015】
上記のカメラモジュール用レンズユニットは、光の入射側が開口サイズの大きい遮光部材の第2孔側となる様に、複数の遮光部材がレンズユニットに配置されてなる構成であることが好適である。
【0016】
上記のレンズユニットと撮像素子からカメラモジュールが構成される。
【0017】
電子機器には、上記のカメラモジュールが搭載される。
【0018】
上記遮光部材の好適な製造方法は、
2段階のエッチング方式により、厚さ10~100μmの金属製基材の第1の面と第2の面に異なるサイズの開口を形成して貫通する加工を行なう遮光部材の製造方法において、
前記金属製基材の第1の面と第2の面にそれぞれ開口サイズの異なるレジストパターンを形成し、そのレジストパターンをマスクとして前記金属製基材をエッチングする際、エッチング加工が行なわれない側の前記金属製基材が露出したレジストパターンの開口に、耐エッチング性およびアルカリ溶解性の相反する特性を満足するエッチング保護用感光性組成物を形成しておき、
前記金属製基材を一方の第1の面側からのみ途中までエッチングした後、一旦エッチングを中断し、
エッチング加工した凹部に、前記エッチング保護用感光性組成物を埋め込み、
次いで前記金属製基材を第2の面側からのみ前記エッチング保護用感光性組成物に達するまで再度エッチングして、前記金属製基材に貫通孔を形成する工程を備える。
【発明の効果】
【0019】
薄板状の遮光部材の内周縁(アパーチャー部)および外周縁(外形)を規定する内径および外径をフォトエッチングでの貫通孔により形成するにあたり、レンズユニットの薄型化,軽量化に好適であり、遮光特性と機械的強度に優れた遮光部材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】遮光部材10を示す平面図。
図2】遮光部材10の表面10Fと直交する断面における構造を示す説明図。
図3】本実施形態における遮光部材10の断面構造を示す説明図。
図4】表面に直交する断面において、孔を区画する側面が表面と直交する方向に沿って延びる例における断面構造を示す説明図。
図5】遮光部材が採用されたカメラモジュールの一例を示す説明図。
図6】遮光部材33を示す平面図。
図7】エッチング手順の一例を示す説明図。
図8】遮光部材33の内周と外周の端面を、それぞれの断面形状を対比する上で好適な様に便宜的に近づけて示す説明図。
図9】設計変更に応じた遮光部材の光学特性について図示する概念図。
図10】板状の金属製基材の主表面に遮光部材を多面付け成形する手法の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明による遮光部材の一実施形態を説明する。
図1が示すように、金属製の遮光部材10は、表面10Fと、裏面10Rと、孔10Hとを備えている。表面10Fは、光の入射側に位置する面である。裏面10Rは、表面10Fとは反対側の面である。孔10Hは、表面10Fと裏面10Rとの間を貫通している。遮光部材10は、例えばステンレス鋼製であるが、ステンレス鋼以外の金属から形成されてもよい。
なお、遮光部材10は、表面10F、裏面10R、および、孔10Hを区画する側面が、図示されない反射防止膜によって覆われている。反射防止膜は、遮光部材10を形成する金属よりも低い反射率を有し、かつ、反射防止膜に照射された光の一部を吸収する機能を有している。また、遮光部材10が反射防止膜によって覆われていても、遮光部材10における光の反射を完全になくすことはできない。
【0022】
遮光部材10は、遮光部材10が覆うレンズの形状に応じた円形状を有している。孔10Hは、孔10Hが対向するレンズの形状に応じた円形状を有している。尚、孔10Hはレンズの絞りに相当するが、必ずしも真円形状である必要はない。また、遮光部材10の外形も必ずしも円形状である必要もなく、任意の外径が選択される。
【0023】
図2は、遮光部材10の表面10Fと直交する断面における遮光部材10の構造を示している。孔10Hは、第1孔10H1および第2孔10H2を備えている。第1孔10H1は、裏面10Rに裏面開口H1Rを有し、裏面10Rから表面10Fに向けて先細る形状を有している。第2孔10H2は、表面10Fに裏面開口H1Rよりも大きい表面開口H2Fを有している。第2孔10H2は、表面10Fから裏面10Rに向けて先細る形状を有して、第1孔10H1に繋がっている。本実施形態では、表面10Fと直交する平面に沿う断面において、第2孔10H2を区画する側面が弧状であり、かつ、第2孔10H2を区画する側面の曲率中心が、遮光部材10の外側に位置している。第1孔10H1を区画する側面が弧状であり、第1孔10H1を区画する側面の曲率中心が、遮光部材10の外側に位置している。
【0024】
遮光部材10において、第1孔10H1の直径が第1直径DH1であり、第2孔10H
2の直径が第2直径DH2である。第1直径DH1は、遮光部材10が搭載されるカメラユニットに応じて設定される値である。第1直径DH1は、遮光部材10が例えばスマートフォンのカメラユニットに搭載される場合には、0.4mm以上1.0mm以下であってよい。また、第1直径DH1は、遮光部材10が例えば車載カメラに搭載される場合には、2.0mm以上7.0mm以下であってよい。第2直径DH2に対する第1直径DH1の百分率(DH1/DH2×100)は、例えば80%以上99%以下であってよい。
【0025】
遮光部材10が、スマートフォン、タブレット型パーソナルコンピューター、および、ノート型パーソナルコンピューターの前面に設置されるカメラモジュールを構成するレンズユニットに搭載される場合には、カメラが、被写体を近距離で撮影することが多い。そのため、画角が大きくなるが、レンズが被写体の焦点を結ぶ上では、遮光部材10には大きな内径が必要とされない。また、カメラモジュールが配置される空間の制約から、遮光部材10の外径を大きくすることも難しい。そのため、第2直径DH2に対する第1直径DH1の百分率は、80%以上90%以下であってよい。
【0026】
これに対して、遮光部材10が、車載カメラ用途のカメラモジュールを構成するレンズユニットに搭載される場合には、車載カメラが、被写体を中距離から遠距離で撮影することが多い。そのため、画角が小さくなるが、カメラモジュールが配置される空間の制約が小さいため、レンズユニットが備えるレンズの径が大きくなる。これにより、レンズに対して広い範囲の光を集めるために、遮光部材10において、第2直径DH2に対する第1直径DH1の比は、90%以上99%以下であってよい。
【0027】
また、遮光部材板10が、スマートフォンの背面に設置されるカメラモジュールを構成するレンズユニットに搭載される場合には、カメラが、被写体を近距離から遠距離で撮影することが多い。そのため、画角が大きくなる場合に対応する上では、第2直径DH2に対する第1直径DH1の比は、80%以上90%以下であってよく、画角が小さくなる場合に対応する上では、第2直径DH2に対する第1直径DH1の比は、90%以上99%以下であってよい。
【0028】
遮光部材10の厚さTは、例えば10μm以上100μm以下であってよい。遮光部材10の厚さが10μm以上である場合には、金属箔の反りが遮光部材10の形状に対して影響を与えることが抑えられる。また、遮光部材10の厚さが100μm以下である場合には、孔10Hを形成する際のエッチングの精度が低下することが抑えられる。
【0029】
図3は、本実施形態における遮光部材10の断面構造を示している。一方で、図4は、表面に直交する断面において、孔を区画する側面が表面と直交する方向に沿って延びる例における断面構造を示している。なお、図3および図4では、図示の便宜上、遮光部材の厚さに対する第1直径が縮小されている。
【0030】
図3が示すように、遮光部材10に対して表面10Fに直交する方向から入射した光は、表面10Fに形成された表面開口H2Fから孔10Hに入る。そして、孔10Hを通った光は裏面10Rに形成された裏面開口H1Rから出ることによって、レンズLNに到達する。一方で、遮光部材10において、第2孔10H2が表面10Fから裏面10Rに向けて先細る形状を有するため、表面10Fの斜め上方から孔10Hに入射した光は、第1孔10H1を区画する側面において遮光部材10の表面10Fに向けて反射されやすい。
【0031】
図4が示すように、遮光部材100に対して表面100Fに直交する方向から入射した光は、遮光部材10に対して表面10Fに直交する方向から入射した光と同様、表面100Fに形成された開口から孔100H内に入る。そして、孔100Hを通った光は裏面100Rに形成された開口から出ることによって、レンズLNに到達する。これに対して、
表面100Fの斜め上方から表面100Fに入射した光の一部は、表面100Fに形成された開口から孔100H内に入射し、かつ、孔100Hを区画する側面において反射される。側面に入射した光のほとんどは正反射の方向に反射されるため、側面に入射した光は、側面からレンズLNに向けて反射される。これにより、意図しない光がレンズLNを通じて撮像部に入射してしまう。
【0032】
個体撮像素子を備える撮像部で意図しないノイズ光を受光させない上では、カメラモジュール用レンズユニット内では、遮光部材100は図3に示す配置が望ましい。すなわち、光の入射側が開口サイズの大きい遮光部材の孔H2F側となり、レンズLN側に面する光の出射側が開口サイズの小さい遮光部材の孔H1R側となる様に、複数の遮光部材がレンズユニットに配置する構成が好適である。
【0033】
以上説明した遮光部材10は、上述したカメラモジュールを構成するレンズユニットに1つ以上備えられる。また、遮光部材10を備えるカメラモジュールは、各種の電子機器に搭載される。カメラモジュールを備える電子機器は、例えば、スマートフォン、タブレット型パーソナルコンピューター、および、ノート型パーソナルコンピューターなどであってよい。
【0034】
図5にカメラモジュール200の一例を示す。しかし、本発明はこのカメラモジュール200構成に限定されない。図5において、カメラモジュール200は、レンズユニット50と、撮像素子(イメージセンサ)60等から構成されており、例えばスマートフォンや携帯電話などに内蔵される。レンズユニット50は、第1レンズシート20,第2レンズシート22と、遮光部材31,32,33と、これらのレンズシート20,22および遮光部材31,32,33が組み込まれるレンズホルダ(鏡筒)40等から構成される。
【0035】
図5に示す例では、第1レンズシート20および第2レンズシート22には、それぞれの表裏にレンズ部20a,20bおよび22a,22bが形成された構成であるが、レンズシートの枚数は2に限らず(レンズ部の数は4に限らず)、レンズユニット50の設計に応じて適宜に増減される。遮光部材31~33は、リング状のシートとされ、レンズ部22a上の光の入射面側,レンズ部22bとレンズ部20aとの間,レンズ部20bの光の射出面側と撮像素子(イメージセンサ)60の封止ガラス板7との間に配されて、撮影と無関係な光を遮断する。遮光部材31~33のそれぞれは、隣接するレンズに応じた大きさ(および開口サイズ)とされている。
【0036】
固体撮像素子のシリコン基板1は、その上面の受光素子面に、色分解用のカラーフィルタ26や集光用のマイクロレンズ27が画素毎に形成されている。固体撮像素子にて得られる画像情報の電気信号は、アルミ電極28を経由してスルー・シリコン・ビア(TSV)内に充填もしくは内壁を被覆する導電物質2によりシリコン基板1の裏面に導かれ、パターン化された絶縁層3と導電層4によって、BGA方式による接続端子5にて外部回路との接続を可能とする。シリコン基板1上方は、枠壁6を介して封止ガラス板7を貼りあわせて受光領域を気密とする。枠壁6の厚さは50μm程度の薄いものである。カメラモジュール200の最上部にはカバーガラス板23を貼り合わせている。
【0037】
以下、本発明の主要な特徴部である遮光部材31,32,33の実施形態について説明する。図6の平面図に示すように、本実施形態における遮光部材は開口が形成された略円形の薄板状のシートである。図6(a),図6(b)で示される形状の相違については後述する。遮光部材31~33は、外径,内径,厚さ以外は同様の構成とされているので、遮光部材33について具体的に説明し、遮光部材31,32の説明は略す。
【0038】
遮光部材33の製造にあたっては、打ち抜き法,レーザ加工法,エッチング法の何れで
も可能であるが、本発明においては成形加工面(断面部)を好適な形状に加工する上でエッチング法を採用する。
【0039】
遮光部材33を構成する金属製基材としては、厚さ10~100μmのステンレス製基材(SUS304が代表的なクロムまたはクロムとニッケルを含む合金)が好適であるが、遮光性能がステンレス製基材と同等であれば他の金属であってもよい。
【0040】
遮光部材33を構成する金属性基材として、他の金属としては、アルミニウム,鉄,銅,クロム,ニッケル,コバルト、およびそれらの合金からなる群から選択されうる。黒色系メッキや粗面化などの各種表面処理を行ない、強度などの特性の向上を図る上ではアルミニウムが加工の容易さと取扱い性に優れている。
【0041】
他の合金としては、鉄-ニッケル系合金や鉄-ニッケル-コバルト系合金であってよい。鉄-ニッケル系合金の熱膨張係数は、ステンレスの熱膨張係数より小さい。そのため、鉄-ニッケル系合金製の遮光部材は、外気温の変化に伴う変形が少なく、遮光部材の反りの発生を抑えられる。さらに、遮光部材板自体の反りや熱膨張や熱収縮に伴う内径の変形といったことを要因とする外気温の変化に伴う外光の入射量における変化を抑えることができる。なお、外光の入射量とは、遮光部材を通じてレンズに入射する外光の入射量である。それ故に、遮光部材が鉄-ニッケル系合金によって形成されることは、外光の入射量における変化に伴うゴーストやフレアの抑制に有効である。
【0042】
なお、鉄-ニッケル系合金は、鉄とニッケルとを主成分とし、かつ、例えば、30質量%以上のニッケルと、残余分としての鉄を含む合金である。鉄-ニッケル系合金の中でも、36質量%のニッケルを含む合金、すなわちインバーが、遮光部材を形成するための材料として好ましい。インバーにおいて、36質量%のニッケルに対する残余分は、主成分である鉄以外の添加物を含む場合がある。添加物は、例えば、クロム、マンガン、炭素、および、コバルトなどである。鉄-ニッケル系合金に含まれる添加物は、最大でも1質量%以下である。
【0043】
鉄-ニッケル-コバルト系合金の熱膨張係数は、鉄-ニッケル系合金の熱膨張係数よりも小さい。そのため、鉄-ニッケル-コバルト系合金製の遮光部材は、外気温の変化に伴う変形がより小さく、遮光部材の反りの発生をより抑えられる。さらに、遮光部材自体の反りや熱膨張や熱収縮に伴う内径の変形といったことを要因とする外気温の変化に伴う外光の入射量における変化をより抑えることができる。それ故に、遮光部材が鉄-ニッケル-コバルト系合金によって形成されることは、外光の入射量における変化に伴うゴーストやフレアの抑制にさらに有効である。
【0044】
なお、鉄-ニッケル-コバルト系合金は、鉄、ニッケル、および、コバルトを主成分とし、かつ、例えば、30質量%以上のニッケル、3質量%以上のコバルト、および残余分としての鉄を含む合金である。鉄-ニッケル-コバルト系合金の中でも、32質量%のニッケルと4質量%以上5質量%以下のコバルトを含む合金、すなわちスーパーインバーが、遮光部材を形成するための材料として好ましい。スーパーインバーにおいて、32質量%のニッケル、および、4質量%以上5質量%以下のコバルトに対する残余分は、主成分である鉄以外の添加物を含む場合がある。添加物は、例えば、クロム、マンガン、および、炭素などである。鉄-ニッケル-コバルト系合金に含まれる添加物は、最大でも0.5質量%以下である。
【0045】
また、ステンレスインバーと称されるニッケルとコバルトの含有量が高くクロムも含まれる合金など、熱膨張係数がさらに極小な他の金属の採用も考えられる。
【0046】
内周縁(アパーチャー部)および外周縁(外形)を規定する内径および外径をフォトエッチングで形成するにあたり、レンズユニットの薄型化,軽量化に好適であると共に、遮光特性と機械的強度に優れた遮光部材33を得る上で好適な素材として、上記に例示した金属材料と、本発明における課題解決の上では採用が好適ではない各種の「樹脂材料」の物性のうち、比重(g/cm3)と線膨張係数(×10-6/℃)のデータを以下の表1に対比して示す。表1では指標値として、(線膨張係数)/(比重)2の値を示した。
【0047】
【表1】
【0048】
表1を参照して、金属材料の中では比重が軽く線膨張係数が大きいAl(アルミニウム)が採用可能である。しかしながら、比重,線膨張係数がAlに近い樹脂材料の採用が否定される。その理由は、エッチング加工による断面形状の設計に適さないためである。(線膨張係数)/(比重)2の値を対比してみると、樹脂材料は全て5を超える値である。一方、金属材料ではAlの3.278を上限として全て1未満の値である。単純な材料の線膨張係数と比重だけでは、遮光部材に適した金属材料であるか否かを判別出来ないが、(線膨張係数)/(比重)2を指標とすることで、Alの3.278以下の値を示す材料が好適であることが見て取れる。
【0049】
遮光部材33は、フォトリソグラフィ手法により、板状の金属製基材の主表面に形成したレジストパターンをマスクとして、前記金属製基材のエッチングが可能なエッチャントで前記金属製基材を一方の主表面側(おもて面)からエッチングした後、他方の主表面側(裏面)からエッチングすることにより、所望の形状に切り抜くことにより得られる。
【0050】
2段階のエッチング方式により、金属製基材の第1の面と第2の面に異なるサイズの開口を形成して貫通する加工を行ない、遮光部材33を製造する手法の一例を図7に示す。2段階のエッチング方式は、金属製基材の一方の面からのエッチング加工を行なった後、金属製基材の他方の面からのエッチング加工を行なう手法である。
図7では図示上の制限から、便宜的に断面を省略して、1箇所の貫通孔のみについて記載している。金属製基材11を一方の主表面側からのみ途中までハーフエッチングした後(図7(b))、一旦エッチングを中断し、エッチング加工した凹部に耐エッチング用ニス19を埋め込み(図7(c))、次いで金属製基材11を他方の主表面側からのみ上記耐エッチング用ニス19に達するまで再度エッチングして(図7(d))金属製基材11に貫通孔を形成する(図7(e))。表面のエッチングが耐エッチング用ニス19に到達した後は、金属製基材11に対するエッチング液の供給が、耐エッチング用ニス19によって制御される。これにより、金属製基材11が10μm以上100μm以下の広い範囲において、精度の高い断面形状を形成できる。
【0051】
過剰なサイドエッチングを防止して微細孔を正確な寸法に制御して成形する有効な手段として既知な上記手法を採用することで、エッチング加工される端面の断面形状の制御も可能である。図7においては、レジストパターン12aによる孔径は、レジストパターン12bによる孔径より大となるように形成されており、2段階のエッチングは第1孔(小孔側)→第2孔(大孔側)の順序を採用しているが、これに限るものではなく、同一の孔径でレジストパターン12a,12bを形成しておき、2段階のエッチング時間やエッチャントのスプレー方法などに差異を持たせるなどの変更により、エッチング加工される孔の端面の断面形状の制御も可能である。
【0052】
2段階のエッチング法にて金属板加工する際、最初にエッチングした面を、2回目のエッチング時に保護するために用いられる上記の耐エッチング用ニス19には、パターニング適性が付与されたエッチング保護用感光性組成物が用いられることが好ましい。
【0053】
エッチング保護用感光性組成物は、上記の耐エッチング用ニス19と同様な耐エッチング性が要求される主要な機能であり、感光性組成物の硬化により付与される特性の他に、アルカリ溶解性が必要とされる。これは、工程中のみで使用されて最終製品に残らない部材としてエッチングによる金属加工後に除去する必要があるためであり、金属板加工用途としてはこの相反する特性を満足する感光性組成物が求められている。
【0054】
金属板加工時に耐エッチング性を維持したままアルカリ溶解性を有する経時安定性に優れた金属板加工用感光性組成物の組成例として、
少なくとも
(A)分子中に芳香環もしくはトリシクロデカン骨格を有する光重合性モノマー
(B)カルボキシル基を含有する単官能光重合性モノマー
(C)光重合開始剤
(D)2級以上の多官能チオール化合物
を含有し、
前記(B)カルボキシル基を含有する単官能光重合性モノマーの感光性組成物全固形分中の含有量が、感光性組成物全固形分中の光重合モノマー全量に対して40重量%以上であり、
前記(A)分子中に芳香環もしくはトリシクロデカン骨格を有する単官能光重合性モノマーと(B)カルボキシル基を含有する単官能光重合性モノマーの感光性組成物全固形分中の含有量の和が、感光性組成物中全固形分中の光重合モノマー全量に対して70重量%以上であるエッチング保護用感光性組成物が挙げられる。
【0055】
図6は、遮光部材33の内周(図6に示す開口の外形線であるエッジ先端部16が連なることになる点線)と外周(図6に示すリングの外形線である頂部15が連なることになる一点鎖線)の端面を、それぞれの断面形状を対比する上で好適な様に便宜的に近づけて示す説明図である。
【0056】
遮光部材33に形成される開口(アパーチャー)は、レンズユニットを構成する各レンズの絞りを決定し、レンズユニットの光学特性および撮像性能に直接的に影響するだけに、そのエッジ形状には厳格な設計が要求される。
すなわち、図8右側に示す端面(内周)のエッジ先端部16は、レンズユニット内で直下に隣接するレンズに対して、エッジ先端部16の先端で発生する反射光が入射することなく、加えてエッジ先端部16とレンズとの間に回り込むノイズ光による影響を排除する上で、直下のレンズに隣接する箇所(下側の主表面側)で鋭利な先端形状(尖端)とすることが求められる。そのため、開口部は外光が入射する側がその反対側よりも孔径が大きくなるようにするのが良い。
【0057】
対して、図8左側に示す端面(外周)の頂部15は、レンズユニットの光学特性および撮像性能に及ぼす影響は少ない。頂部15の断面形状は、主にレンズユニットの組み立て(アセンブリ)工程における取扱い性の観点から設計される。
【0058】
図5に示すレンズユニット50では、レンズホルダ(鏡筒)40の内部に、遮光部材31,第1レンズシート20,遮光部材32,第2レンズシート22,遮光部材33,カバーガラス23を順に投入して積層するか、あるいはこの順に積層一体化してなる構造体に鏡筒40をかぶせる手順が採用される。
【0059】
遮光部材(31,32,33)をハンドリングする際、冶具(例えば、ピンセット)にて挟持する操作が行なわれる。遮光部材の開口部(アパーチャー)内壁にあたる図8に示される端面(内周)や精細で鋭利な構造であるエッジ先端部16には冶具を接触させることは損傷の可能性を招くため避けなければならず、冶具の接触部は、図8に示される端面
(外周)でなくてはならない。
【0060】
円形の外周の直径方向での端部2箇所をそれぞれ頂部15で接触して挟持する場合、冶具での挟み込みによる変形,損傷を招かない機械的強度を確保するには、頂部15の先端は極めて鋭利な形状でなく、端面が図示で90°に近い切り立った円筒面(端面のテーパ少)であっても良い。ただし、頂部15が図示で過剰に下方にあると、冶具の接触部が下方となり、レンズユニットの組み立て(アセンブリ)工程では遮光部材を挟持する冶具が直下のレンズ面に接触してしまうリスクを有することになる。そのため、頂部15は遮光部材の下側の主表面から適度に離間した厚さに位置することが望ましい。
【0061】
そのため、頂部の先端から一定距離L置いた面内方向での遮光部材の厚みで表した場合、図8に示される頂部15(外周側)の厚さtoutはエッジ先端部16(内周側)の厚さtinよりも厚いことが要求される。厚さ10~100μmの金属製基材を用いて成形してなる遮光部材の場合には、頂部15(外周側)の厚さtoutは実質的な厚み(ノギス等での計測や冶具で挟持することが可能な箇所)として最小箇所でも3.0μm以上であることが望ましい。
【0062】
頂部15やエッジ先端部16の形状が及ぼす光学的な影響を説明するため、図9に、円弧が交差した端面形状(エッチング成形による)に代えて、外周端面,内周端面が仮想的に直線形状の頂部(頂角=30°,45°,60°,90°の4種類)を有する場合の遮光部材の光学特性について図示する。
【0063】
図9左側は、4種類の頂角を持つ頂部がそれぞれ上下で均等な角度に突き出している状態であり、図9右側は、4種類の頂角を持つ頂部のそれぞれ一辺が遮光部材の下方の主平面に一致する様に突き出している状態(90°の場合を除く)である。
【0064】
図9左側で頂角=90°(本発明で採用される頂角は鋭角であるため90°未満)の場合、頂部の斜面に沿って左下がり45°で入射する撮像不要な有害光は、遮光部材の下方にノイズ光として至ってしまう場合が想定される。頂角=30°,45°,60°の頂部では、同様に頂部の斜面に沿って左下がり45°で入射する撮像不要な有害光は、それぞれの頂部斜面に当たり、上方に反射されることになり、遮光部材の下方には至ることが回避される。
【0065】
図9右側で頂角=90°の頂部の斜面(遮光部材の下方の主平面とは非直角に配置)に沿って右下がり90°弱で入射する撮像不要な有害光は、遮光部材の下方にノイズ光として至ってしまう場合が想定される。頂角=30°,45°,60°の頂部では、同様に頂部の斜面に沿って右下がり90°弱で入射する撮像不要な有害光は、それぞれの頂部に当たり、反射されることになるが、頂角=45°,60°の頂部では、補助線(点線)よりも下方に向かい、遮光部材の下方は至るノイズ光は完全に排除されない。
【0066】
図5に示すレンズユニットの場合、レンズ部(20a,20b,22a,22b)の有効領域外で発生し、遮光部材の外周端面に入射する可能性のある有害光は度外視しても構わないが、遮光部材に形成される開口(アパーチャー)の内側で発生し、レンズ部およびイメージセンサに入射する可能性のある有害光は極力排除する必要がある。そのため、エッジ表面の黒化処理だけでなく、開口(アパーチャー)を決定するエッジ形状については、鋭利な先端形状(尖端)とすることが求められ、その頂角は45°未満であることは必須な設計事項となる。
【0067】
以上説明した断面形状,平面形状を有する金属製基材からなる遮光部材をエッチングで成形した場合、光学濃度(OD)は十分であるが、金属光沢によるノイズ光成分の反射を
低減する必要があり、公知の黒化処理が施される。黒化処理としては、ニッケルを含む電界めっき液を用いた電界めっき法、ホスフィン酸塩を還元剤として用いたNi-P(ニッケル-リン)めっきによる無電界めっき法、それらと酸化処理による酸化膜形成の併用,表面マット化,モスアイ構造の付与などが例示される。黒化処理後の遮光部材には、マクベス濃度計にて光学濃度2.0以上の濃度という遮光性能が要求される。
【0068】
遮光部材(31,32,33)のエッチング成形にあたっては、図10に示すように、板状の金属製基材11の主表面に成形対象となる開口(アパーチャー)サイズがそれぞれ異なる遮光部材(31,32,33)に応じたレジストパターンを多面付け(3列×2行を例示する)して形成した上で各遮光部材(31,32,33)を保持するブリッジ17
を残さないようにエッチングして、所望の形状に切り抜く。エッチング成形~黒化処理後、同図に示す点線のダイシングラインに沿って断裁することで、各遮光部材(31,32,33)が個片化される。ダイシングはダイシングブレードのような物理的に断裁する手段でもよく、レーザーダイシングであってもよい。ダイシングブレードは断裁速度に優れるが、基材の変形等の原因ともなる。レーザーダイシングは基材の変形が抑えられるが、断裁速度はレーザーダイシングよりは劣る。
【0069】
図10でDL1,DL2で例示するダイシングラインは、金属製基材11を断裁する箇所だけでなく遮光部材(31,32,33)の外形が規定される輪帯状の空間部に沿った箇所を通過する割合も多いため、ダイシングブレード(刃)にかかる負荷も小さくなり、個片化の作業上でも優位性を持つ。DL1のダイシングラインに沿って断裁すると、個片化される遮光部材は、図6(a)に示される様にブリッジ17を残さないリング状の構成となり、DL2のダイシングラインに沿って断裁すると、遮光部材は外周部にブリッジ17を残した構成となる。ダイシングラインによる遮光部材の外形は、レンズユニット50を構成する際の鏡筒40の内壁形状(ガイド溝の有無)などに応じて適宜選択される。また、レーザーダイシングは、遮光部材の断裁において、ブリッジやその周辺箇所といった微小領域を断裁するうえで、変形が生じないため有利である。さらに微小領域の断裁であれば、ダイシングブレードのように必然的にブレードといった大きさを有する手段と比較して、精度よい断裁が可能である。
【0070】
同図の下段に示す様に、各遮光部材上に各遮光部材(31,32,33)の仕様を表わす識別記号などをエッチングパターンとして残しておくことで、個片化後のアセンブリにおいて、各遮光部材の認識にあたって誤認がなく、正しい配置箇所で取り扱う上での助力となり得る。スマートフォンなど携帯端末に搭載されるカメラのレンズユニットでは、複数枚組み込まれる遮光部材の開口(アパーチャー)がイメージセンサに近づくにつれて大サイズになっていくことがイメージセンサに映る像を大きくする上では好ましく、配置箇所の異なる遮光部材の識別を間違いなく的確に行なう必要がある。同一の遮光部材であっても、表裏で形成される孔径が異なる場合もあり、表裏の識別の上でも有効である。
【符号の説明】
【0071】
10 遮光部材
10F 表面
10R 裏面
10H 孔
10H1 第1孔
10H2 第2孔
100 遮光部材
200 カメラモジュール
23 カバーガラス板
40 レンズホルダ
50 レンズユニット
20 第1レンズシート
20a,20b レンズ部
22 第2レンズシート
22a,22b レンズ部
31,32,33 遮光部材
11 金属製基材
12a,12b レジストパターン
13,14 エッジ部(サイドエッチング進行の先端部)
15 頂部(外周側)
16 エッジ先端部(内周側)
18 識別記号
19 耐エッチング用ニス
60 イメージセンサ
1 シリコン基板
2 導電物質
3 絶縁層
5 接続端子
6 枠壁
7 封止ガラス板
26 カラーフィルタ
27 マイクロレンズ
28 アルミ電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10