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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/18 20060101AFI20240730BHJP
   A61M 1/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61L 101/06 20060101ALN20240730BHJP
   A61L 101/36 20060101ALN20240730BHJP
   A61L 101/32 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
A61L2/18
A61L2/18 102
A61M1/00
A61L101:06
A61L101:36
A61L101:32
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020082367
(22)【出願日】2020-05-08
(65)【公開番号】P2021176415
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 玲恵
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】杉本 和志
(72)【発明者】
【氏名】田代 憲史
(72)【発明者】
【氏名】村井 克之
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-135123(JP,A)
【文献】特開平03-032740(JP,A)
【文献】特開昭61-090673(JP,A)
【文献】特開昭50-067378(JP,A)
【文献】特開平08-224299(JP,A)
【文献】特開2002-360689(JP,A)
【文献】特開2004-130006(JP,A)
【文献】特開2006-158518(JP,A)
【文献】特開2005-296158(JP,A)
【文献】特開平08-196625(JP,A)
【文献】特開平07-116247(JP,A)
【文献】特開平10-081610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L2/00-2/28
A61L11/00-12/14
A61M1/00-1/38
A61M60/00-60/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の洗浄用組成物を用いて洗浄する第1の洗浄工程と、
第2の洗浄用組成物を用いて洗浄する第2の洗浄工程と、
を代わる代わる実施することを含む、洗浄方法であって、
前記第1の洗浄用組成物は、少なくとも、酸、殺菌剤、及びタンパク質除去剤からなる群より選択される1種以上を含み、
前記第2の洗浄用組成物は、少なくとも、酸、殺菌剤、及びタンパク質除去剤からなる群より選択される1種以上を含み、
第1の洗浄用組成物と第2の洗浄用組成物とは、異なる組成物であり、
前記第1の洗浄用組成物及び前記第2の洗浄用組成物のpH値は、それぞれ独立して4.0~10.0であり、
前記酸が、過有機酸及び/又はその塩、次亜塩素酸及び/又はその塩、並びに有機酸及び/又はその塩からなる群より選択される1種以上を含み、
過有機酸及び/又はその塩を0.001~0.1質量%、次亜塩素酸及び/又はその塩を0.002~0.1質量%、有機酸及び/又はその塩を0.02~10質量%の量で含み、
前記第1の洗浄用組成物および前記第2の洗浄用組成物の少なくともいずれかは、酸を含み、当該酸は有機酸及び/又はその塩であり、
洗浄対象物が、医療用器具及び/又は配管である、洗浄方法。
【請求項2】
前記過有機酸及び/又はその塩が0.002~0.05質量%の量で含まれる、請求項に記載の洗浄方法。
【請求項3】
前記次亜塩素酸及び/又はその塩が0.002~0.05質量%の量で含まれる、請求項に記載の洗浄方法。
【請求項4】
前記有機酸及び/又はその塩が0.05~8質量%の量で含まれる、請求項に記載の洗浄方法。
【請求項5】
前記有機酸が、下記式:
RCH(OH)(CHCOOH)COOH
で表され、式中、
Rは、H、OH及び炭素数1~7のアルキル基から選択され、
pは、0~2の整数であり、
qは、0~1の整数であり、
rは、0~2の整数であり、
p+q+r=2を満たす、
請求項に記載の洗浄方法。
【請求項6】
前記有機酸が、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、及びオクタン酸からなる群より選択される1種以上である、請求項に記載の洗浄方法。
【請求項7】
前記第1の洗浄工程の後、及び/又は前記第2の洗浄工程の後に水で洗浄する工程をさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の洗浄方法。
【請求項8】
前記洗浄方法が、浸漬法、噴霧法、塗布法、通液法、循環法、及び封入法から選択される方法を用いて実施される、請求項1~のいずれか1項に記載の洗浄方法。
【請求項9】
洗浄後の廃液を処理することなくそのまま配管に流すことをさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の洗浄方法。
【請求項10】
前記医療用器具が、透析用器具である、請求項1~のいずれか1項のいずれか1項に記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄方法に関する。より詳細には、本発明は、医療機器等の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療機器の殺菌・洗浄には、酸性やアルカリ性の薬品が使用されている。しかしながら、酸性やアルカリ性の薬品が使用されるために、その廃液が下水排除基準を満たさないまま排水されて、コンクリート製の下水道管が損傷している例が後を絶たない。下水道管の損傷は、下水への排水ができなくなると共に、道路陥没を引き起こす可能性もあり、早急な対応が必要である。このような背景のもと、東京都下水道局は、2019年1月に、透析排水と下水道管についての注意喚起を発表した。東京都下水道局では、排水についての下水排除基準を水素イオン濃度(pH)が5を超え9未満の範囲内に収めることを求めている。
【0003】
医療機器の殺菌・洗浄に用いる殺菌及び洗浄用過酢酸組成物としては、酸性の過酢酸水溶液(特許文献1)、アルミニウム腐食抑制性の酸性酸化剤含有組成物(特許文献2)、アルカリ性の殺菌洗浄用製剤(特許文献3)、スルファミン酸及び有機カルボン酸を含む薬剤(特許文献4)、次亜塩素酸ナトリウム等を含む塩素系の薬剤(特許文献5)などが知られている。しかしながら、これらの組成物は、必ずしも排水についての下水排除基準を満たすものとは言えない。
【0004】
また、医療機器等の殺菌・洗浄においては、殺菌と共に、タンパク質除去やスケール除去も必要とされる。医療機器等の殺菌・洗浄においてこれらの全ての効果を十分に達成することができる薬剤および洗浄方法はこれまで開発されていない。よって、排水が下水排除基準を満たしつつ、殺菌と共に、タンパク質除去やスケール除去も効果的に行うことができる洗浄方法の開発が依然として望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-184868号公報
【文献】WO2010/095231号公報
【文献】特表2016-532634号公報
【文献】特開2000-064069号公報
【文献】特開2004-351037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
排水が下水排除基準を満たしつつ、殺菌と共に、タンパク質除去やスケール除去も効果的に行うことができる洗浄方法の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、排水が下水排除基準を満たしつつ、殺菌と共に、タンパク質除去やスケール除去も効果的に行うことができる洗浄方法を提供することができることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の実施形態を含む。
【0009】
<1>
第1の洗浄用組成物を用いて洗浄する第1の洗浄工程と、
第2の洗浄用組成物を用いて洗浄する第2の洗浄工程と、
を代わる代わる実施することを含む、洗浄方法であって、
前記第1の洗浄用組成物は、少なくとも、酸、殺菌剤、及びタンパク質除去剤からなる群より選択される1種以上を含み、
前記第2の洗浄用組成物は、少なくとも、酸、殺菌剤、及びタンパク質除去剤からなる群より選択される1種以上を含み、
第1の洗浄用組成物と第2の洗浄用組成物とは、異なる組成物であり、
前記第1の洗浄用組成物及び前記第2の洗浄用組成物のpH値は、それぞれ独立して4.0~10.0である、洗浄方法。
<2>
前記酸が、過有機酸及び/又はその塩、次亜塩素酸及び/又はその塩、並びに有機酸及び/又はその塩からなる群より選択される1種以上を含む、<1>に記載の洗浄方法。
<3>
前記過有機酸及び/又はその塩が0.001~0.1質量%の量で含まれる、<2>に記載の洗浄方法。
<4>
前記次亜塩素酸及び/又はその塩が0.002~0.1質量%の量で含まれる、<2>に記載の洗浄方法。
<5>
前記有機酸及び/又はその塩が0.02~10質量%の量で含まれる、<2>に記載の洗浄方法。
<6>
前記有機酸が、下記式:
RCH(OH)(CHCOOH)COOH
で表され、式中、
Rは、H、OH及び炭素数1~7のアルキル基から選択され、
pは、0~2の整数であり、
qは、0~1の整数であり、
rは、0~2の整数であり、
p+q+r=2を満たす、
<5>に記載の洗浄方法。
<7>
前記有機酸が、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、及びオクタン酸からなる群より選択される1種以上である、<6>に記載の洗浄方法。
<8>
前記酸が、過有機酸及び/又はその塩、次亜塩素酸及び/又はその塩、並びに有機酸及び/又はその塩からなる群より選択される1種以上を含み、
過有機酸及び/又はその塩を0.001~0.1質量%、次亜塩素酸及び/又はその塩を0.002~0.1質量%、有機酸及び/又はその塩を0.02~10質量%の量で含む、<1>~<7>のいずれかに記載の洗浄方法。
<9>
前記第1の洗浄工程の後、及び/又は前記第2の洗浄工程の後に水で洗浄する工程をさらに含む、<1>~<8>のいずれかに記載の洗浄方法。
<10>
洗浄対象物が、医療用器具及び/又は配管である、<1>~<9>のいずれかに記載の洗浄方法。
<11>
前記洗浄方法が、浸漬法、噴霧法、塗布法、通液法、循環法、及び封入法から選択される方法を用いて実施される、<10>に記載の洗浄方法。
<12>
洗浄後の廃液を処理することなくそのまま配管に流すことをさらに含む、<10>又は<11>に記載の洗浄方法。
<13>
前記医療用器具が、透析用器具である、<10>~<12>のいずれかに記載の洗浄方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、排水が下水排除基準を満たしつつ、殺菌と共に、タンパク質除去やスケール除去も効果的に行うことができる洗浄方法を提供することができる。本発明の洗浄方法は、排水のpH値が下水排除基準を満たすため、使用後の廃液を中和処理する必要なく排水することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.本発明の洗浄方法
本発明の洗浄方法は、
第1の洗浄用組成物を用いて洗浄する第1の洗浄工程と、
第2の洗浄用組成物を用いて洗浄する第2の洗浄工程と、
を代わる代わる実施することを含む。本発明の上記洗浄方法において、
前記第1の洗浄用組成物は、少なくとも、酸、殺菌剤、及びタンパク質除去剤からなる群より選択される1種以上を含むものであってよく、
前記第2の洗浄用組成物は、少なくとも、酸、殺菌剤、及びタンパク質除去剤からなる群より選択される1種以上を含むものであってよく、
第1の洗浄用組成物と第2の洗浄用組成物とは、異なる組成物である。
【0012】
本発明の一実施形態において、上記第1の洗浄用組成物及び上記第2の洗浄用組成物は、そのpH値がそれぞれ独立して4.0~10.0であってよい。本発明の一実施形態において、上記第1の洗浄用組成物及び上記第2の洗浄用組成物のpH値はそれぞれ独立して、例えば、4.0、4.5、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0,8.5、9.0,9.5、10.0などであってよいが、これらの値に限定されない。本発明の一実施形態において、上記第1の洗浄用組成物及び上記第2の洗浄用組成物のpH値はそれぞれ独立して、例えば、4.0~10.0、4.0~9.5、4.0~9.0、4.0~8.5、4.0~8.0、4.0~7.5、4.0~7.0、4.0~6.5、4.0~6.0であってよい。本発明の一実施形態において、上記第1の洗浄用組成物及び上記第2の洗浄用組成物のpH値はそれぞれ独立して、4.5~10.0、4.5~9.5、4.5~9.0、4.5~8.5、4.5~8.0、4.5~7.5、4.5~7.0、4.5~6.5、4.5~6.0であってよい。本発明の一実施形態において、上記第1の洗浄用組成物及び上記第2の洗浄用組成物のpH値はそれぞれ独立して、5.0~10.0、5.0~9.5、5.0~9.0、5.0~8.5、5.0~8.0、5.0~7.5、5.0~7.0、5.0~6.5、5.0~6.0であってよい。本発明の一実施形態において、上記第1の洗浄用組成物及び上記第2の洗浄用組成物のpH値はそれぞれ独立して、5.1~10.0、5.1~9.5、5.1~9.0、5.1~8.5、5.1~8.0、5.1~7.5、5.1~7.0、5.1~6.5、5.1~6.0であってよい。本発明の一実施形態において、上記第1の洗浄用組成物及び上記第2の洗浄用組成物のpH値はそれぞれ独立して、5.2~10.0、5.2~9.5、5.2~9.0、5.2~8.5、5.2~8.0、5.2~7.5、5.2~7.0、5.2~6.5、5.2~6.0であってよい。本発明の一実施形態において、上記第1の洗浄用組成物及び上記第2の洗浄用組成物のpH値はそれぞれ独立して、5.3~10.0、5.3~9.5、5.3~9.0、5.3~8.5、5.3~8.0、5.3~7.5、5.3~7.0、5.3~6.5、5.3~6.0であってよい。本発明の一実施形態において、上記第1の洗浄用組成物及び上記第2の洗浄用組成物のpH値はそれぞれ独立して、5.4~10.0、5.4~9.5、5.4~9.0、5.4~8.5、5.4~8.0、5.4~7.5、5.4~7.0、5.4~6.5、5.4~6.0であってよい。本発明の一実施形態において、上記第1の洗浄用組成物及び上記第2の洗浄用組成物のpH値はそれぞれ独立して、5.5~10.0、5.5~9.5、5.5~9.0、5.5~8.5、5.5~8.0、5.5~7.5、5.5~7.0、5.5~6.5、5.5~6.0であってよい。本発明の好ましい実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、5.0~9.0である。本発明の好ましい実施形態において、上記第1の洗浄用組成物及び上記第2の洗浄用組成物のpH値はそれぞれ独立して、5.0超である。本発明の好ましい実施形態において、上記第1の洗浄用組成物及び上記第2の洗浄用組成物のpH値はそれぞれ独立して、5超10以下である。本発明の好ましい別の実施形態において、上記第1の洗浄用組成物及び上記第2の洗浄用組成物のpH値はそれぞれ独立して、5超9以下である。
【0013】
本発明の一実施形態において、上記の洗浄方法は、
第1の洗浄用組成物を用いて洗浄する第1の洗浄工程と、
第2の洗浄用組成物を用いて洗浄する第2の洗浄工程と、
を代わる代わる実施することを含む、洗浄方法であって、
前記第1の洗浄用組成物は、少なくとも、酸、殺菌剤、及びタンパク質除去剤からなる群より選択される1種以上を含み、
前記第2の洗浄用組成物は、少なくとも、酸、殺菌剤、及びタンパク質除去剤からなる群より選択される1種以上を含み、
第1の洗浄用組成物と第2の洗浄用組成物とは、異なる組成物であり、
前記第1の洗浄用組成物及び前記第2の洗浄用組成物のpH値は、それぞれ独立して4.0~10.0である、洗浄方法であってよい。
【0014】
本発明の一実施形態において、上記の洗浄方法は、前記第1の洗浄工程の後、及び/又は前記第2の洗浄工程の後に、水で洗浄する工程をさらに含んでよい。本発明のこの実施形態において、本発明の洗浄方法は、前記第1の洗浄工程の後に、水で洗浄する工程をさらに含み得る。また、本発明のこの実施形態において、本発明の洗浄方法は、前記第2の洗浄工程の後に、水で洗浄する工程をさらに含み得る。本発明の好ましい実施形態において、本発明の洗浄方法は、前記第1の洗浄工程の後に水で洗浄する工程をさらに含み、前記第2の洗浄工程の後に水で洗浄する工程をさらに含み得る。
【0015】
本発明の一実施形態において、上記の洗浄方法は、洗浄後の廃液を処理することなくそのまま配管に流すことをさらに含んでよい。上述のように、上記第1の洗浄用組成物及び上記第2の洗浄用組成物のpH値は、それぞれ独立して4.0~10.0であるから、本発明の洗浄方法は、排水のpH値が下水排除基準を満たすため、使用後の廃液を中和処理する必要なく排水することができる。
【0016】
本発明の洗浄方法において、上記第1の洗浄用組成物及び上記第2の洗浄用組成物は、洗浄剤原液を希釈することなくそのまま用いるか、あるいは任意の濃度に希釈して、例えば、医療用器具、配管、飲料食品容器、工業排水、空調設備の冷却水、衣類、調理器具、食器、浴室、台所、洗濯槽、風呂釜、家具、ペットの殺菌、洗浄等に用いることができる。本発明の好ましい実施形態において、本発明の洗浄方法における洗浄対象物は、医療用器具及び/又は配管であってよい。
【0017】
本発明の一実施形態において、上記第1の洗浄用組成物及び上記第2の洗浄用組成物を用いて代わる代わる洗浄する工程を含む、医療用器具の殺菌及び洗浄方法が提供される。本発明の洗浄方法において、上記の第1の洗浄用組成物を用いて洗浄する第1の洗浄工程、及び上記の第2の洗浄用組成物を用いて洗浄する第2の洗浄工程は、それぞれ独立して、浸漬法、噴霧法、塗布法、通液法、循環法、及び封入法のいずれであってもよい。本発明の洗浄方法において、用いる洗浄用組成物の量、希釈率や、洗浄する時間は、微生物の種類や量、洗浄用組成物の濃度などに従って、適宜選択することができる。
【0018】
本発明の洗浄方法において、前記医療用器具としては、透析用器具、内視鏡用器具、外科手術器具、産科・泌尿器科用器具、麻酔装置類、人工呼吸装置類、歯科用器具、注射針などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の洗浄方法において、前記医療用器具は、好ましくは透析用器具である。
【0019】
2.第1の洗浄用組成物及び第2の洗浄用組成物
本発明の洗浄方法において、
前記第1の洗浄用組成物は、少なくとも、酸、殺菌剤、及びタンパク質除去剤からなる群より選択される1種以上を含み得るものであり、
前記第2の洗浄用組成物は、少なくとも、酸、殺菌剤、及びタンパク質除去剤からなる群より選択される1種以上を含み得るものであり、
第1の洗浄用組成物と第2の洗浄用組成物とは、異なる組成物であり、
上述のように、前記第1の洗浄用組成物及び前記第2の洗浄用組成物のpH値は、それぞれ独立して4.0~10.0であってよい。
【0020】
以下、第1の洗浄用組成物及び第2の洗浄用組成物をそれぞれ構成し得る各成分について説明する。
【0021】
第1の洗浄用組成物及び第2の洗浄用組成物はそれぞれ独立して、少なくとも、酸、殺菌剤、及びタンパク質除去剤からなる群より選択される1種以上を含み得る。本発明の一実施形態において、第1の洗浄用組成物及び第2の洗浄用組成物はそれぞれ独立して、少なくとも酸を含み得る。本発明の一実施形態において、第1の洗浄用組成物及び第2の洗浄用組成物はそれぞれ独立して、少なくとも殺菌剤を含み得る。本発明の一実施形態において、第1の洗浄用組成物及び第2の洗浄用組成物はそれぞれ独立して、少なくともタンパク質除去剤を含み得る。
【0022】
(1)酸
第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物に用いられ得る酸は、上記のような洗浄対象物に対して用いることができる酸であれば特に限定されないが、それぞれ独立して、例えば、過有機酸及び/又はその塩、次亜塩素酸及び/又はその塩、並びに有機酸及び/又はその塩などが挙げられる。本発明の一実施形態において、上記の酸は、過有機酸及び/又はその塩、次亜塩素酸及び/又はその塩、並びに有機酸及び/又はその塩からなる群より選択される1種以上を含むものであってよい。本発明の一実施形態において、上記の酸は、過有機酸及び/又はその塩を含み得る。本発明の一実施形態において、上記の酸は、次亜塩素酸及び/又はその塩を含み得る。本発明の一実施形態において、上記の酸は、有機酸及び/又はその塩を含み得る。
【0023】
<過有機酸及び/又はその塩>
第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物において用いられ得る有機酸及び/又はその塩としては、例えば、過酢酸及び/又はその塩、過ギ酸及び/又はその塩、過プロピオン酸及び/又はその塩、過ブタン酸及び/又はその塩、過ペンタン酸及び/又はその塩、過ヘキサン酸及び/又はその塩、過ヘプタン酸及び/又はその塩、過オクタン酸及び/又はその塩、過クエン酸及び/又はその塩、過リンゴ酸及び/又はその塩、過乳酸及び/又はその塩、過コハク酸及び/又はその塩、過グルタル酸及び/又はその塩などの過カルボン酸が挙げられるが、これらに限定されない。第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物において用いられる過有機酸としては、当技術分野で通常用いられるものを用いることができる。
【0024】
本発明の一実施形態において、過有機酸及び/又はその塩は、過酢酸及び/又はその塩であってよい。第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物において用いられる過酢酸及び/又はその塩としては、当技術分野で通常用いられるものを用いることができる。
【0025】
第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物における過有機酸及び/又はその塩の濃度は、それぞれ独立して、0.001~0.1質量%であってよい。本発明の一実施形態において、第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物における過有機酸及び/又はその塩の濃度は、それぞれ独立して、例えば、0.001質量%、0.005質量%、0.01質量%、0.02質量%、0.03質量%、0.04質量%、0.05質量%、0.1質量%、などであってよいが、これらに限定されない。本発明の一実施形態において、第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物における過有機酸及び/又はその塩の濃度は、好ましくは0.002~0.05質量%であってよく、より好ましくは0.003~0.04質量%であってよく、さらにより好ましくは0.003~0.03質量%であってよい。
【0026】
<次亜塩素酸及び/又はその塩>
第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物において用いられ得る次亜塩素酸及び/又はその塩としては、当技術分野で通常用いられるものを用いることができる。第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物において用いられ得る次亜塩素酸及び/又はその塩としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素カルシウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸水、微酸性次亜塩素酸水、弱酸性次亜塩素酸水などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0027】
第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物において用いられ得る次亜塩素酸及び/又はその塩の濃度は、それぞれ独立して、0.002~0.1質量%であってよい。本発明の一実施形態において、第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物において用いられ得る次亜塩素酸及び/又はその塩の濃度は、それぞれ独立して、例えば、0.002質量%、0.003質量%、0.004質量%、0.005質量%、0.01質量%、0.02質量%、0.03質量%、0.04質量%、0.05質量%、0.1質量%、などであってよいが、これらに限定されない。本発明の一実施形態において、第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物における次亜塩素酸及び/又はその塩の濃度は、好ましくは0.002~0.05質量%であってよく、より好ましくは0.003~0.04質量%であってよく、さらにより好ましくは0.003~0.03質量%であってよい。
【0028】
<有機酸及び/又はその塩>
第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物において用いられ得る有機酸及び/又はその塩としては、当技術分野で通常用いられるものを用いることができる。
【0029】
本発明の一実施形態において、第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物に用いられ得る有機酸は、下記式:
RCH(OH)(CHCOOH)COOH
で表され、式中、
Rは、H、OH及び炭素数1~7のアルキル基から選択され、
pは、0~2の整数であり、
qは、0~1の整数であり、
rは、0~2の整数であり、
p+q+r=2を満たすものであってよい。
【0030】
上記の式中、Rは、H、OH、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル(3-メチルブチル)、sec-ペンチル(1-メチルブチル)、3-ペンチル(1-エチルプロピル)、tert-ペンチル(1,1-ジメチルプロピル)、ネオペンチル(2,2-ジメチルプロピル)、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、tert-ヘキシル、ネオヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、sec-ヘプチル、tert-ヘプチル、ネオヘプチルから選択され得る。
【0031】
上記の式中、pは、0~2の整数であってよく、0、1、2の中から適宜選択され得る。上記の式中、qは、0~1の整数であってよく、0、1の中から適宜選択され得る。上記の式中、rは、0~2の整数であってよく、0、1、2の中から適宜選択され得る。但し、上記の式中、p、q、rはp+q+r=2を満たすものであってよい。
【0032】
第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物において用いられ得る有機酸及び/又はその塩としては、例えば、酢酸及び/又はその塩、クエン酸及び/又はその塩、リンゴ酸及び/又はその塩、乳酸及び/又はその塩、コハク酸及び又はその塩、グルタル酸及び又はその塩、2-ヒドロキシイソ酪酸及び又はその塩、プロピオン酸及び又はその塩、ブタン酸及び/又はその塩、ペンタン酸及び/又はその塩、ヘキサン酸及び/又はその塩、ヘプタン酸及び/又はその塩、オクタン酸及び/又はその塩などのカルボン酸が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の一実施形態において、第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物に用いられ得る有機酸及び/又はその塩は、酢酸及び/又はその塩、クエン酸及び/又はその塩、リンゴ酸及び/又はその塩、乳酸及び/又はその塩、オクタン酸及び/又はその塩から選択することができる。第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物において用いられる有機酸及び/又はその塩としては、当技術分野で通常用いられるものを用いることができる。
【0033】
本発明の好ましい実施形態において、第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物に用いられる有機酸及び/又はその塩は、酢酸及び/又はその塩であってよい。有機酸が酢酸である場合、
式: RCH(OH)(CHCOOH)COOH
において、RはH、p=2、q=0、r=0、p+q+r=2である。第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物に用いられる酢酸及び/又はその塩としては、当技術分野で通常用いられるものを用いることができる。酢酸の塩としては、水溶液とした際にアルカリ性である酢酸塩であれば特に限定されず、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ベリリウム、酢酸マグネシウム、酢酸アルミニウム、酢酸カルシウム、酢酸ルビジウム、酢酸ストロンチウム、酢酸セシウム、酢酸バリウム、酢酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0034】
本発明の別の好ましい実施形態において、第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物に用いられる有機酸及び/又はその塩は、クエン酸及び/又はその塩であってよい。有機酸がクエン酸である場合、
式: RCH(OH)(CHCOOH)COOH
において、RはOH、p=0、q=0、r=2、p+q+r=2である。第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物に用いられるクエン酸及び/又はその塩としては、当技術分野で通常用いられるものを用いることができる。クエン酸の塩としては、水溶液とした際にアルカリ性であるクエン酸塩であれば特に限定されず、例えば、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸二カリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸リチウム、クエン酸ベリリウム、クエン酸マグネシウム、クエン酸アルミニウム、クエン酸カルシウム、クエン酸ルビジウム、クエン酸ストロンチウム、クエン酸セシウム、クエン酸バリウム、クエン酸一アンモニウム、クエン酸二アンモニウム、クエン酸三アンモニウムなどが挙げられる。
【0035】
本発明のさらに別の好ましい実施形態において、第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物に用いられる有機酸及び/又はその塩は、リンゴ酸及び/又はその塩であってよい。有機酸がリンゴ酸である場合、
式: RCH(OH)(CHCOOH)COOH
において、RはH、p=0、q=1、r=1、p+q+r=2である。第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物に用いられるリンゴ酸及び/又はその塩としては、当技術分野で通常用いられるものを用いることができる。リンゴ酸の塩としては、水溶液とした際にアルカリ性であるリンゴ酸塩であれば特に限定されず、例えば、リンゴ酸一ナトリウム、リンゴ酸二ナトリウム、リンゴ酸一カリウム、リンゴ酸二カリウム、リンゴ酸リチウム、リンゴ酸ベリリウム、リンゴ酸マグネシウム、リンゴ酸アルミニウム、リンゴ酸カルシウム、リンゴ酸ルビジウム、リンゴ酸ストロンチウム、リンゴ酸セシウム、リンゴ酸バリウム、リンゴ酸一アンモニウム、リンゴ酸二アンモニウムなどが挙げられる。
【0036】
本発明の別の好ましい実施形態において、第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物に用いられる有機酸及び/又はその塩は、乳酸及び/又はその塩であってよい。有機酸が乳酸である場合、
式: RCH(OH)(CHCOOH)COOH
において、RはCH3、p=1、q=1、r=0、p+q+r=2である。第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物に用いられる乳酸及び/又はその塩としては、当技術分野で通常用いられるものを用いることができる。乳酸の塩としては、水溶液とした際にアルカリ性である乳酸塩であれば特に限定されず、例えば、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸リチウム、乳酸ベリリウム、乳酸マグネシウム、乳酸アルミニウム、乳酸カルシウム、乳酸ルビジウム、乳酸ストロンチウム、乳酸セシウム、乳酸バリウム、乳酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0037】
本発明の更に別の好ましい実施形態において、第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物に用いられる有機酸及び/又はその塩は、オクタン酸及び/又はその塩であってよい。有機酸がオクタン酸である場合、
式: RCH(OH)(CHCOOH)COOH
において、RはCH(CH、p=2、q=0、r=0、p+q+r=2である。第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物に用いられるオクタン酸及び/又はその塩としては、当技術分野で通常用いられるものを用いることができる。オクタン酸の塩としては、水溶液とした際にアルカリ性であるオクタン酸塩であれば特に限定されず、例えば、オクタン酸ナトリウム、オクタン酸カリウム、オクタン酸リチウム、オクタン酸ベリリウム、オクタン酸マグネシウム、オクタン酸アルミニウム、オクタン酸カルシウム、オクタン酸ルビジウム、オクタン酸ストロンチウム、オクタン酸セシウム、オクタン酸バリウム、オクタン酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0038】
第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物において用いられ得る有機酸及び/又はその塩の濃度は、0.02~10質量%であってよい。本発明の一実施形態において、第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物において用いられ得る有機酸及び/又はその塩の濃度は、それぞれ独立して、例えば、0.02質量%、0.03質量%、0.04質量%、0.05質量%、0.1質量%、0.15質量%、0.2質量%、0.25質量%、0.3質量%、0.35質量%、0.4質量%、0.45質量%、0.5質量%、0.6質量%、0.7質量%、0.8質量%、0.9質量%、1質量%、1.5質量%、2質量%、3質量%、4質量%、5質量%、6質量%、7質量%、8質量%、9質量%、10質量%、などであってよいが、これらに限定されない。本発明の一実施形態において、第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物における有機酸及び/又はその塩の濃度は、好ましくは0.05~8質量%であってよく、より好ましくは0.1~6質量%であってよく、さらにより好ましくは0.2~5質量%であってよい。
【0039】
本発明の一実施形態において、
前記酸が、過有機酸及び/又はその塩、次亜塩素酸及び/又はその塩、並びに有機酸及び/又はその塩からなる群より選択される1種以上を含み、
過有機酸及び/又はその塩を0.001~0.1質量%、次亜塩素酸及び/又はその塩を0.002~0.1質量%、有機酸及び/又はその塩を0.02~10質量%の量で含む、上記の洗浄方法が提供される。
【0040】
(2)殺菌剤
第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物に用いられ得る殺菌剤は、上記のような洗浄対象物に対して用いることができる殺菌剤であれば特に限定されない。なお、上述した酸及び/又はその塩も殺菌作用を有し得るが、本明細書において、殺菌剤は、上述した酸及び/又はその塩には該当しないものを指す。第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物に用いられ得る殺菌剤としては、それぞれ独立して、例えば、過酸化水素、ヨウ素剤、アルコール類、フェノール類、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
本発明の好ましい実施形態において、第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物に用いられ得る殺菌剤は、過酸化水素であってよい。過酸化水素は、それ自体、殺菌・洗浄能力を有するため、組成物全体の殺菌・洗浄効果を高めるのに寄与するだけでなく、酢酸との平衡反応により十分な量の過酢酸の生成及び維持(水溶液中における安定性)に寄与している。よって、酢酸と過酸化水素との組み合わせにより、さらに本発明の組成物の殺菌・洗浄効果を高めることができる。
【0042】
第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物における過酸化水素の濃度は、それぞれ独立して、0.001~25質量%であってよく、好ましくは0.005~20質量%、より好ましくは0.01~15質量%、さらにより好ましくは0.02~10質量%であってよい。過酸化水素の濃度が低すぎると酢酸との平衡反応により生成する過酢酸の量が十分でなく、本発明の殺菌・洗浄効果が十分に発揮されない場合がある。一方、過酸化水素の濃度が高すぎても前記効果は高まらず、かえって安全性に問題が生じる場合がある。
【0043】
(3)タンパク質除去剤
第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物に用いられ得るタンパク質除去剤は、上記のような洗浄対象物に対して用いることができるタンパク質除去剤であれば特に限定されない。なお、上述した有機酸及び/又はその塩や過有機酸及び/又はその塩もタンパク質除去作用を有し得るが、本明細書において、タンパク質除去剤は、上述した有機酸及び/又はその塩や過有機酸及び/又はその塩には該当しないものを指す。第1の洗浄用組成物及び/又は第2の洗浄用組成物に用いられ得るタンパク質除去剤としては、それぞれ独立して、例えば、パパイン、リパーゼ、アミラーゼ、マルターゼ、スクラーゼ、ラクターゼ、ペプシン、トリプシン、キモトリプシン、エステラーゼ、アミノアシラーゼ、ペプチターゼ、プロメラインなどのタンパク質分解酵素;炭水化物分解酵素;脂肪分解酵素などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
(4)その他の成分
第1の洗浄用組成物及び第2の洗浄用組成物には、さらに必要に応じて、一般的な殺菌及び洗浄用薬剤等に使用される添加剤など、例えば安定剤、界面活性剤、増粘剤、香料、着色剤、加水分解酵素等が適宜配合されていてもよい。第1の洗浄用組成物及び第2の洗浄用組成物において、酸、殺菌剤、タンパク質除去剤、及び必要に応じて添加する安定剤その他の添加剤以外の残分は、主として水である。
【0045】
本発明の洗浄方法において、上記第1の洗浄用組成物及び上記第2の洗浄用組成物は、上述のように、洗浄剤原液を希釈することなくそのまま用いるか、あるいは任意の濃度に希釈して殺菌及び洗浄用希釈組成物とすることができる。希釈剤としては通常、水が用いられる。希釈剤として用いられる水は、例えば純水、超純水、蒸留水、精製水、注射用水、水道水などが用いられ得る。希釈倍率は、殺菌及び洗浄用希釈組成物として殺菌及び洗浄効果を発揮する濃度にすることができる希釈倍率であればよく、特に限定されないが、好ましくは1~10000倍、より好ましくは1~1000倍である。
【0046】
3.第1の洗浄用組成物及び第2の洗浄用組成物の製造方法
本発明の一実施形態において、上記第1の洗浄用組成物及び上記第2の洗浄用組成物は、それぞれ、少なくとも、酸、殺菌剤、及びタンパク質除去剤からなる群より選択される1種以上を混合する混合工程を含むものであってよい。各成分については上述した通りである。各成分を混合する順序は任意であってよく、本発明の殺菌及び洗浄用組成物では、混合した各成分が平衡状態となっている。
【実施例
【0047】
以下に、本発明の実施例を示す。しかしながら、これらの実施例は、本発明の実施形態を例示するものであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0048】
<pH測定>
洗浄用組成物を純水で適宜希釈し、試料液50gを調製した。各試料液のpHをpHメーター(LAQUA、D-71S、株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。
○:4~10
×:4未満、10より大きい
【0049】
<芽胞懸濁液の調整>
セレウス菌標準菌株(Microbiologics社製、製品名:Bacillus cereus ATCC10876)をMYP寒天(AZONE株式会社製、製品名:サニスペック生培地)に塗布し、35℃で7日間培養した。この寒天培地に減菌蒸留水を加え、菌体をコンラージ棒で掻き取り採取し、遠心分離により減菌蒸留水で洗浄した。芽胞型のみを得るため80℃で10分間加熱し生残した菌を芽胞懸濁液とした。
【0050】
<殺菌試験>
洗浄用組成物を減菌蒸留水で適宜希釈し、試料液を調製した。各試料液4.5mLに1質量%アルブミン溶液を0.5mL,芽胞懸濁液50μLを加え、25℃で120分間作用させた。作用後、0.1mol/L減菌チオ硫酸ナトリウム溶液で10倍に希釈し、セレウス菌検出用培地(日水製薬株式会社製、製品名:コンパクトドライX-BC)を用いて35℃で48時間培養し生菌数を測定した。また、芽胞懸濁液の生菌数を測定し、開始時の生菌数とした。殺菌率は開始時の生菌数を100とし、120分後の生菌数の比率により算出した。
【0051】
<第1及び第2の洗浄工程後の殺菌率>
以下の式より第1の洗浄工程及び第2の洗浄工程を経た後の殺菌率を算出した。
第1及び第2の洗浄工程後の殺菌率
=100-{[100-殺菌率(第1の洗浄工程)]×[100-殺菌率(第2の洗浄工程)]}÷100
◎:80%以上
○:50%以上
△:30%以上
×:30%未満
【0052】
<タンパク質除去試験>
洗浄用組成物を純水で適宜希釈し、試料液50gを調製した。各試料液に洗浄評価インジケータ(ネスコスIC W・I、株式会社サクラクレパス製)を60分間浸漬した後、純水10mLで洗浄し、常温で乾燥した。C光源、2度視野に設定したハンディ型分光色差計(NF555、日本電色工業株式会社製)を用いて洗浄評価インジケータの汚れの付着していない白色部からの色差(ΔEab)を測定した。タンパク質除去率は未洗浄の洗浄評価インジケータの色差を100とし、洗浄後の色差の比率により算出した。
【0053】
<第1及び第2の洗浄工程後のタンパク質除去率>
以下の式より第1の洗浄工程及び第2の洗浄工程を経た後のタンパク質除去率を算出した。
第1及び第2の洗浄工程後のタンパク質除去率
=100-{[100-タンパク質除去率(第1の洗浄工程)]×[100-タンパク質除去率(第2の洗浄工程)]}÷100
◎:90%以上
○:65%以上
△:50%以上
×:50%未満
【0054】
<炭酸Ca溶解量試験>
洗浄用組成物を純水で適宜希釈し、試料液50gを調製した。各試料液に炭酸Ca(富士フイルム和光純薬株式会社製)を少量ずつ添加し、溶解した重量を炭酸Ca溶解量とした。
【0055】
<第1及び第2の洗浄工程後の炭酸Ca溶解量>
以下の式より第1の洗浄工程及び第2の洗浄工程を経た後の炭酸Ca溶解量を算出した。
第1及び第2の洗浄工程後の炭酸Ca溶解量
=100-{[100-炭酸Ca溶解量(第1の洗浄工程)]×[100-炭酸Ca溶解量(第2の洗浄工程)]}÷100
◎:50mg以上
○:20mg以上
△:10mg以上
×:10mg未満
【0056】
<製造例1:過酢酸含有組成物A(洗浄用組成物PA-1~PA-6)>
純水23.0gと60質量%の1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP、イタルマッチジャパン株式会社製、製品名:デイクエスト2010)を0.02g、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム・二水和物(EDTA・2Na・2HO、MP Biomedicals,Inc.製)を0.01g、ポリオキシエチレン(4.5)ラウリルエーテル酢酸(花王株式会社製、製品名:カオーアキポRLM-45)を0.01g、80質量%酢酸(昭和電工株式会社製)を10.0g、35質量%の過酸化水素(三菱ガス化学株式会社製、製品名:ダイヤパワーHP)を17.4g、酢酸ナトリウム三水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)を49.6g、PE容器内で混合した。混合後、25℃で7日間熟成することで過酸化水素5.8質量%、酢酸7.6質量%、過酢酸0.4質量%、酢酸ナトリウム29.9質量%、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸0.01質量%、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01質量%、ポリオキシエチレン(4.5)ラウリルエーテル酢酸0.01質量%の過酢酸含有組成物Aを得た。得られた過酢酸含有組成物Aを純水で希釈して表1に記載の洗浄用組成物PA-1を調製した。同様にして、表1に記載された組成の洗浄用組成物PA-2~PA-6を調製した。
【0057】
<製造例2:過酢酸含有組成物B(洗浄用組成物PA-7)>
純水20.9gとピロリン酸(純正化学株式会社製、製品名:二りん酸)を0.2g、80質量%酢酸(昭和電工株式会社製)を46.5g、35質量%の過酸化水素(三菱ガス化学株式会社製、製品名:ダイヤパワーHP)を32.4g、PE容器内で混合した。混合後、25℃で7日間熟成することで過酸化水素8.0質量%、酢酸32.5質量%、過酢酸6.0質量%、ピロリン酸0.2質量%の過酢酸含有組成物Bを得た。得られた過酢酸含有組成物Bを純水で希釈して表1に記載の洗浄用組成物PA-7を調製した。
【0058】
<製造例3:洗浄用組成物Cl-1~Cl-2、Cl-4~Cl-5>
純水97.8g、5質量%次亜塩素酸Na溶液(富士フイルム和光純薬株式会社製)を2.0g、80質量%酢酸(昭和電工株式会社製)を0.22g、PE容器内で混合し、Cl-1を調製した。Cl-1を純水で希釈して表1に記載された洗浄用組成物Cl-2を調製した。同様にして、表1に記載された洗浄用組成物Cl-4~Cl-5を調製した。
【0059】
<製造例4:洗浄用組成物Cl-3>
純水を99.6g、5質量%次亜塩素酸Na溶液(富士フイルム和光純薬株式会社製)を0.40g、80質量%酢酸(昭和電工株式会社製)を0.0038g、PE容器内で混合し、Cl-3を調製した。
【0060】
<製造例5:洗浄用組成物Cl-6>
5質量%次亜塩素酸Na溶液(富士フイルム和光純薬株式会社製)を純水で希釈して表1に記載の洗浄用組成物Cl-6を調製した。
【0061】
<製造例6:有機酸含有組成物A(洗浄用組成物OA-1~OA-5)>
純水39.9gと80質量%酢酸(昭和電工株式会社製)を10.0g、酢酸ナトリウム三水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)を50.1g、PE容器内で混合し、酢酸8.0質量%、酢酸ナトリウム30.2質量%の有機酸含有組成物Aを得た。有機酸含有組成物Aを純水で希釈して表1に記載された洗浄用組成物OA-1を調製した。同様にして、表1に記載された洗浄用組成物OA-2~OA-5を調製した。
【0062】
<製造例7:洗浄用組成物OA-6>
80質量%酢酸(昭和電工株式会社製)を純水で希釈して、表1に記載の洗浄用組成物OA-6を調製した。
【0063】
<製造例8:有機酸含有組成物B(洗浄用組成物OA-7~OA-8)>
純水62.7gとクエン酸一水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)を8.8g、クエン酸三ナトリウム二水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)を28.5g、PE容器内で混合し、クエン酸8.0質量%、クエン酸三ナトリウム25.0質量%の有機酸含有組成物Bを得た。有機酸含有組成物Bを純水で希釈して表1に記載の洗浄用組成物OA-7を調製した。同様にして、表1に記載された洗浄用組成物OA-8を調製した。
【0064】
<製造例9:洗浄用組成物OA-9>
純水98.9gとクエン酸一水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)を1.1g、PE容器内で混合し、表1に記載の洗浄用組成物OA-9を調製した。
【0065】
<製造例10:洗浄用組成物EN-1~EN-4>
純水99.0gとパパイン(富士フイルム和光純薬株式会社製)を1.0g、PE容器内で混合し、表1に記載の洗浄用組成物EN-1を調製した。洗浄用組成物EN-1を純水で希釈して表1に記載の洗浄用組成物EN-2を調製した。同様にして、表1に記載された組成の洗浄用組成物EN-3~EN-4を調製した。
【0066】
<製造例11:洗浄用組成物EN-5>
純水99.0gとリパーゼ(富士フイルム和光純薬株式会社製)を1.0g、PE容器内で混合し、表1に記載の洗浄用組成物EN-5を調製した。
【0067】
<製造例12:洗浄用組成物EN-6>
純水99.0gとα-アミラーゼ(富士フイルム和光純薬株式会社製)を1.0g、PE容器内で混合し、表1に記載の洗浄用組成物EN-6を調製した。
【0068】
上記のようにして得られた洗浄用組成物それぞれについて、pH測定、殺菌試験、タンパク質除去試験、炭酸Ca溶解量試験を実施した。その結果を表1~表4に示した。
【0069】
<実施例1>
第1の洗浄用組成物としてPA-1、第2の洗浄用組成物としてCl-1を用いた場合について、第1の洗浄工程及び第2の洗浄工程を経た後の殺菌率、タンパク質除去率、炭酸Ca溶解量を算出した。結果を表5に示した。
【0070】
<実施例2~18、比較例1~26>
実施例1と同様にして、第1の洗浄用組成物及び第2の洗浄用組成物として表5に記載された洗浄用組成物を用いた場合について、第1の洗浄工程及び第2の洗浄工程を経た後の殺菌率、タンパク質除去率、炭酸Ca溶解量を算出した。結果を表5及び表6に示した。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
【表5】
【0076】
【表6】
【0077】
上記の通り、本発明によれば、排水が下水排除基準を満たしつつ、殺菌と共に、タンパク質除去やスケール除去も効果的に行うことができる洗浄方法を提供することができることが示された。