(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ゴルフクラブ
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20240730BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20240730BHJP
【FI】
A63B53/04 E
A63B53/04 A
A63B102:32
(21)【出願番号】P 2020084013
(22)【出願日】2020-05-12
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】島原 佑樹
【審査官】相川 俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-112893(JP,A)
【文献】特開昭63-102779(JP,A)
【文献】特開2015-154813(JP,A)
【文献】実開平04-007863(JP,U)
【文献】特開平10-071221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/04
A63B 102/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブであって、
シャフト差込孔を備えたホーゼル部を有するゴルフクラブヘッドと、
前記シャフト差込孔に装着されたシャフトと、
前記シャフト差込孔に配置されたウエイト部材とを含み、
前記ウエイト部材は、比重が3.0以上の材料からなり、
前記ウエイト部材は、シャフト軸線に沿って上下方向に延びる縦長形状であり、
ゴルフクラブの基準状態において、前記ウエイト部材は、クラブ上方に位置する第1部分と、前記第1部分の下方に位置する第2部分とを少なくとも含み、
前記シャフト軸線と直交する向きにおいて、前記第1部分の断面積が前記第2部分の断面積よりも大
きく、
前記シャフトは、中空部を有するパイプ状であり、
前記ウエイト部材の前記第1部分及び前記第2部分は、前記シャフトの前記中空部に配されており、
前記ウエイト部材の重心が前記ウエイト部材の前記シャフト軸線に沿った長さの中心位置よりも上方に位置する、
ゴルフクラブ。
【請求項2】
前記ウエイト部材は、固着手段を介して接続され、かつ、互いに分離可能な上方部材と下方部材とを含む、請求項1に記載のゴルフクラブ。
【請求項3】
前記上方部材は、前記第1部分からなり、前記下方部材は、前記ウエイト部材の残余の部分を構成しており、
前記上方部材は、前記下方部材よりも比重が大きい材料で構成されている、請求項2に記載のゴルフクラブ。
【請求項4】
前記第1部分の外周面は、前記シャフトの内周面と直接接触しないように配置されている、
請求項1ないし3のいずれかに記載のゴルフクラブ。
【請求項5】
前記第1部分の外周面と、前記シャフトの前記内周面との間に、接着剤が配されている、請求項4に記載のゴルフクラブ。
【請求項6】
前記ウエイト部材は、前記第2部分の下方に位置する第3部分をさらに含み、
前記第3部分は、前記シャフトの外部で前記シャフトの下端と接触している、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のゴルフクラブ。
【請求項7】
前記シャフト軸線と直交する向きにおいて、前記第3部分は、前記第1部分の前記断面積よりも大きい断面積を有する、請求項6に記載のゴルフクラブ。
【請求項8】
前記第3部分は、前記シャフト差込孔の底部と、前記シャフトの前記下端との間で保持されている、請求項6又は7に記載のゴルフクラブ。
【請求項9】
前記シャフト軸線の方向において、前記ウエイト部材の上端は、前記ホーゼル部の上端を上方に越えない位置にある、請求項1ないし8のいずれか1項に記載のゴルフクラブ。
【請求項10】
前記第1部分の外周面と、前記シャフトの前記内周面との間に、ゴム状弾性体が配されている、請求項4に記載のゴルフクラブ。
【請求項11】
前記ゴム状弾性体が圧縮状態で配されている、請求項10に記載のゴルフクラブ。
【請求項12】
前記ゴルフクラブヘッドがアイアン型ゴルフクラブヘッドである、請求項1ないし11のいずれか1項に記載のゴルフクラブ。
【請求項13】
前記ゴルフクラブヘッドがウッド型ゴルフクラブヘッドである、請求項1ないし11のいずれか1項に記載のゴルフクラブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高重心のゴルフクラブヘッドが要求される場合がある。例えば、高重心のゴルフクラブヘッドは、ボール打撃時のギア効果によって、打球により多くのバックスピンを与える傾向がある。したがって、このようなゴルフクラブヘッドは、打球の停止位置を正確にコントロールしたいショートアイアン等のゴルフクラブに特に適する。
【0003】
高重心のゴルフクラブヘッドを得るために、例えば、ゴルフクラブヘッドのホーゼル部(「ネック部」と称される場合もある。)をより長く設計することが提案されている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゴルフクラブは、通常、各番手に予めクラブ全長が決まっている。このため、ゴルフクラブヘッドのホーゼル部が長く設計されると、ホーゼル部から外方にはみ出したシャフトの長さであるシャフト実効長が短くなる。シャフト実効長が変化すると、シャフトのしなりやスイングフィーリングも異なったものとなるため、これらに影響を与えずにゴルフクラブヘッドを高重心化することが望まれていた。
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、スイングフィーリング等を悪化させることなく、高重心のゴルフクラブヘッドを実現しうるゴルフクラブを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明、ゴルフクラブであって、シャフト差込孔を備えたホーゼル部を有するゴルフクラブヘッドと、前記シャフト差込孔に装着されたシャフトと、前記シャフト差込孔に配置されたウエイト部材とを含み、前記ウエイト部材は、比重が3.0以上の材料からなり、前記ウエイト部材は、シャフト軸線に沿って上下方向に延びる縦長形状であり、ゴルフクラブの基準状態において、前記ウエイト部材は、クラブ上方に位置する第1部分と、前記第1部分の下方に位置する第2部分とを少なくとも含み、前記シャフト軸線と直交する向きにおいて、前記第1部分の断面積が前記第2部分の断面積よりも大きい、ゴルフクラブである。
【0008】
本発明の他の態様では、前記シャフトは、中空部を有するパイプ状であり、前記ウエイト部材の少なくとも前記第1部分の一部は、前記シャフトの前記中空部に配されても良い。
【0009】
本発明の他の態様では、前記ウエイト部材の前記第1部分及び前記第2部分は、前記シャフトの前記中空部に配されても良い。
【0010】
本発明の他の態様では、前記第1部分の外周面は、前記シャフトの内周面と直接接触しないように配置されても良い。
【0011】
本発明の他の態様では、前記第1部分の外周面と、前記シャフトの前記内周面との間に、接着剤が配されても良い。
【0012】
本発明の他の態様では、前記ウエイト部材は、前記第2部分の下方に位置する第3部分をさらに含み、前記第3部分は、前記シャフトの外部で前記シャフトの下端と接触していても良い。
【0013】
本発明の他の態様では、前記シャフト軸線と直交する向きにおいて、前記第3部分は、前記第1部分の前記断面積よりも大きい断面積を有しても良い。
【0014】
本発明の他の態様では、前記第3部分は、前記シャフト差込孔の底部と、前記シャフトの前記下端との間で保持されても良い。
【0015】
本発明の他の態様では、前記シャフト軸線の方向において、前記ウエイト部材の上端は、前記ホーゼル部の上端を上方に越えない位置にあっても良い。
【0016】
本発明の他の態様では、前記第1部分の外周面と、前記シャフトの前記内周面との間に、ゴム状弾性体が配されても良い。
【0017】
本発明の他の態様では、前記ゴム状弾性体が圧縮状態で配されても良い。
【0018】
本発明の他の態様では、前記ゴルフクラブヘッドがアイアン型ゴルフクラブヘッドであっても良い。
【0019】
本発明の他の態様では、前記ゴルフクラブヘッドがウッド型ゴルフクラブヘッドであっても良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明のゴルフクラブは、上記の構成のウエイト部材を採用したことにより、スイングフィーリング等を悪化させることなく、高重心のゴルフクラブヘッドを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態のゴルフクラブの基準状態の正面図である。
【
図2】
図1のゴルフクラブヘッドの部分拡大図である。
【
図5】他の実施形態を示すウエイト部材及びシャフトの断面図である。
【
図6】他の実施形態を示すウエイト部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図面は、本発明の理解を助けるために、誇張表現や、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれていることが理解されなければならない。また、各実施形態を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。さらに、実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本発明の内容理解のためのものであって、本発明は、図示されている具体的な構成に限定されるものではない。
【0023】
[ゴルフクラブ]
図1は、本実施形態のゴルフクラブ1の基準状態の正面図である。
図1に示されるように、本実施形態のゴルフクラブ1は、ゴルフクラブヘッド2と、シャフト3と、ウエイト部材4とを含む。
【0024】
図1では、ゴルフクラブ1は、基準状態とされている。本明細書において、ゴルフクラブ1の基準状態とは、ゴルフクラブヘッド2のフェース21に形成されたスコアライン26と水平面HPとが平行とされた状態で、ゴルフクラブヘッド2が水平面HP上に置かれた状態として定義される。基準状態では、シャフト軸線CLが基準垂直面(図示省略)内に配される。基準垂直面は、水平面HPに対して垂直な平面である。したがって、基準状態では、スコアライン26は水平面HP及び基準垂直面の両方に平行とされる。本明細書において、特に言及されていない場合、ゴルフクラブ1は、基準状態に置かれているものとして、各部の説明がなされている。
【0025】
[ゴルフクラブヘッド]
図2は、
図1のゴルフクラブヘッドの部分拡大図であり、
図3は、その要部拡大断面図である。
図1ないし3に示されるように、本実施形態のゴルフクラブヘッド2は、例えば、アイアン型ゴルフクラブヘッドとして構成されている。他の形態では、ゴルフクラブヘッド2は、ウッド型ゴルフクラブヘッドであっても良い(図示省略)。さらに、他の態様では、ゴルフクラブヘッド2は、ハイブリッド型ゴルフクラブヘッドやパター型ゴルフクラブヘッド等であっても良い(いずれも図示省略)。
【0026】
本実施形態のゴルフクラブヘッド2は、フェース21、トップ22、ソール23、トウ24及びホーゼル部25を含んでおり、例えば、金属材料で形成されている。
【0027】
フェース21は、ボールを打撃するための単一の平面を構成している。フェース21には、ボールとの摩擦等を高めるために、トウ・ヒール方向に延びる複数本のスコアライン26が設けられている。
【0028】
トップ22は、フェース21の上縁から後方にのびているゴルフクラブヘッド2の上面部分である。
【0029】
ソール23は、フェース21の下縁から後方にのびているゴルフクラブヘッド2の底面部分である。トウ24は、ホーゼル部25から最も離れた部分である。
【0030】
ホーゼル部25は、例えば、フェース21のヒール側に設けられており、本実施形態では、斜め上方に延びている。
図3に示されるように、ホーゼル部25は、シャフト3を固着するためのシャフト差込孔27を備えた筒状に形成されている。シャフト差込孔27は、上部が開口している。シャフト差込孔27の下部は、例えば、底部28によって閉じられている。ホーゼル部25のシャフト軸線CLに沿った長さは、ゴルフクラブ1のシャフト実効長を過度に短くしない程度に、慣例にしたがって適宜決定されれば良い。
【0031】
[シャフト]
図3に示されるように、シャフト3は、例えば、外周面3oと内周面3iとを有するパイプ状(円筒状)で構成されている。したがって、シャフト3は、内部に中空部iを画定する。本実施形態のシャフト3は、例えば、繊維強化樹脂で形成されている。他の態様では、シャフト3は、スチールで形成されても良い。
【0032】
シャフト3の下端3aの側は、ゴルフクラブヘッド2のシャフト差込孔27に装着されている。具体的には、シャフト3は、シャフト差込孔27に挿入され、シャフト差込孔27の内面に、接着剤を介して固着されている。なお、
図1に示されるように、シャフト3の上端3bの側には、例えば、ゴルファーによって把持されるグリップ5が装着されている。
【0033】
[ウエイト部材]
ウエイト部材4は、ゴルフクラブヘッド2の重心を調整するためのウエイトであり、
図3に示されるように、本実施形態では、ゴルフクラブヘッド2のシャフト差込孔27に配置されている。また、ウエイト部材4は、ゴルフクラブヘッド2のシャフト差込孔27に配置されてゴルフクラブヘッド2と一体化されている。したがって、ウエイト部材4の重量はゴルフクラブヘッド2の重量とみなすことができる。
【0034】
ウエイト部材4は、ゴルフクラブヘッド2の重心を効果的に調整するために、その比重が3.0以上とされる。ウエイト部材4の比重は、大きいほど望ましく、好ましくは6.0以上とされ、より好ましくは8.0以上とされる。本実施形態のウエイト部材4は、真鍮で構成されており、その比重は8.6である。ウエイト部材4の材料は、特に限定されるものではなく、上記の比重の要件を満たす限り、銅、モリブデン、タングステン等の各種の高比重材料が採用され得る。
【0035】
図4は、ウエイト部材4の斜視図である。
図3及び
図4に示されるように、ウエイト部材4は、シャフト軸線CLに沿って上下方向に延びる縦長形状である。ウエイト部材4は、クラブ上方に位置する第1部分41と、第1部分41の下方に位置する第2部分42とを少なくとも含む。そして、
図4にそれぞれ仮想線で示されるように、シャフト軸線CLと直交する向きにおいて、第1部分41の断面積A1が第2部分42の断面積A2よりも大きく形成されている。
【0036】
以上のように構成されたウエイト部材4は、その上部側の第1部分41の重量が大きい。したがって、本実施形態では、ホーゼル部25を特に改変することなく、ゴルフクラブヘッド2の上部側により多くの重量を配分し、その高重心化を図ることができる。したがって、本実施形態のゴルフクラブ1は、スイングフィーリング等を悪化させることなく、高重心のゴルフクラブヘッド2を提供することができる。
【0037】
高重量のゴルフクラブヘッド2は、打球により多くのバックスピンを与えやすい点で望ましい。例えば、アイアン型のゴルフクラブの場合、グリーン上の狭いエリアを狙う機会が多いところ、本発明をアイアン型ゴルフクラブに適用することで、グリーン落下後に止まりやすい打球を提供することができる。また、ウッド型ゴルフクラブでは、例えば、フェース21の上方でボールを打撃する傾向があるゴルファーに対して、打点とスイートスポットとを近づけて、打球の初速を高くするのに役立つ。
【0038】
また、ウエイト部材4は、例えば、第1部分41と第2部分42の長さや断面積を適宜変更することで、所望の性能を達成するように、ゴルフクラブヘッド2の重心高さを容易に変えることができる。好ましい態様では、ウエイト部材4の重心g(
図3)は、ウエイト部材4の全長(シャフト軸線CLに沿った長さ)の中心位置よりも上方に位置するように、第1部分41及び第2部分42が構成される。
【0039】
さらに、ゴルフクラブ1を製造ないし改造するにあたり、予め、形状が異なる複数種類のウエイト部材4が準備されるのが望ましい。そして、ゴルフクラブの番手、スペック、ユーザのニーズ等に応じて、最適な重心位置を提供できるウエイト部材4を選択し、ゴルフクラブ1に組み込むことができる。このような方法によれば、ゴルフクラブヘッド2の重心を、所望の高さに容易に調整することができる。
【0040】
ウエイト部材4の重量は、特に限定されるものではない。効果的な高重心化を図るために、ウエイト部材4の重量は、好ましくは4.0g以上、より好ましくは5.0g以上とされる。なお、ウエイト部材4に割り当てることができる重量の上限は、ゴルフクラブ1の総重量等の制約にしたがって適宜決定されれば良い。
【0041】
ゴルフクラブヘッド2を高重心化するために、第1部分41により多くの重量を配分することが望まれる。このような観点より、第1部分41の断面積A1と第2部分42の面積A2との比(A1/A2)は、例えば、1.10倍以上、好ましくは1.2倍以上、より好ましくは1.30倍以上とされるのが望ましい。
【0042】
図4に示されるように、本実施形態の第1部分41及び第2部分42は、それぞれ、略円柱状に構成されている。第1部分41は、一定の断面積A1でシャフト軸線CLの方向に延びている。同様に、第2部分42は、一定の断面積A2でシャフト軸線CLの方向に延びている。第1部分41と第2部分42とは、互いに一体に形成されている。ただし、第1部分41及び第2部分42の形状は、このような断面形状等に限定されるものではない。
【0043】
図3に示されるように、本実施形態では、ウエイト部材4の少なくとも第1部分41の一部は、シャフト3の中空部iに配されている。換言すると、第1部分41は、シャフト3の下端3aの側から、シャフト3の中空部iに挿入可能なように、その外径が規定されている。換言すると、ウエイト部材4の第1部分41は、シャフト3をホーゼル部25に差し込む際の妨げにならない。したがって、本実施形態のゴルフクラブ1は、ホーゼル部25の長さを過度に大きくすることなく、シャフト3とホーゼル部25との間で十分な接着長さを提供することができる。同様の観点から、本実施形態では、ウエイト部材4の第2部分42も、シャフト3の中空部iに配されている。
【0044】
第1部分41の外周面は、例えば、シャフト3の内周面3iとは直接接触しないように配置されている。本実施形態では、第1部分41の外周面と、シャフト3の内周面3iとの間に、接着剤(の硬化物)が配されている。したがって、例えば、ボール打撃時、ウエイト部材4とシャフトとが直接接触することによる異音の発生等が抑制される。
【0045】
好ましい態様では、ウエイト部材4は、さらに、第2部分42の下方に位置する第3部分43を含んでも良い。
図3に示されるように、第3部分43は、シャフト3の外部でシャフト3の下端3aと接触している。例えば、シャフト軸線CLと直交する向きにおいて、第3部分43は、第1部分41の断面積A1よりも大きい断面積を有する。
【0046】
第3部分43は、ウエイト部材4をシャフト3の下端3a側から中空部iに挿入する際に、シャフト3の下端3aと当接し、いわゆるストッパーとして機能する。したがって、この態様は、シャフト3に対してウエイト部材4を正確に位置決めする他、ウエイト部材4のシャフト3の内部での移動を抑制するのに役立つ。
【0047】
好ましい態様では、ウエイト部材4は、第2部分42と第3部分43との間に第4部分44を備えていても良い。第4部分44のシャフト軸線CLと直交する向きの断面積は、第2部分42の断面積A2よりも大きく、かつ、第3部分43の前記断面積よりも小さく構成されている。本実施形態では、第4部分44は、シャフト3の中空部iに配置されるように形成されており、好ましくは、シャフト3の内周面3iに接触するように形成される。これにより、シャフト3に対するウエイト部材4の位置がさらに安定する。
【0048】
本実施形態のゴルフクラブ1は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、ゴルフクラブヘッド2、シャフト3及びウエイト部材4が準備される。次に、シャフト3の中空部iに、ウエイト部材4が装着される。ウエイト部材4は、シャフト3の下端3a側から中空部iに挿入され、両者が接着される。この際の装着作業性を向上させるために、ウエイト部材4には、シャフト軸線CLに沿った貫通孔46が形成されるのが望ましい。次に、ウエイト部材4が複合化されたシャフト3の下端側が、ゴルフクラブヘッド2のシャフト差込孔27へ装着され、例えば、接着固定される。
【0049】
図3に示されるように、好ましい態様では、第3部分43は、シャフト差込孔27の底部28と、シャフト3の下端3aとの間で保持されるのが望ましい。このような態様では、ウエイト部材4上下方向で保持されることで、その位置がさらに安定し、ひいては、打球時の位置ずれ等に伴う異音の発生をより確実に抑制することができる。
【0050】
好ましい態様では、シャフト軸線CLの方向において、ウエイト部材4の上端4aは、ホーゼル部25の上端25aを上方に越えない位置にあるのが望ましい。このようなウエイト部材4は、ホーゼル部25からはみ出すシャフト3の曲げ剛性やねじり剛性等に実質的に影響を与えることがない。したがって、このような態様は、良好なスイングフィーリングを確保するのに役立つ。
【0051】
図5には、本発明の他の実施形態が示されている。
図5に示されるように、この実施形態では、ウエイト部材4の第1部分41の外周面と、シャフト3の内周面3iとの間に、ゴム状弾性体10が配されている。したがって、この実施形態は、ウエイト部材4に起因する異音等を抑制する。また、ボール打撃時の衝撃が、ウエイト部材4を介してシャフト3、ひいてはゴルファーの手指に伝達されるのが抑制される。したがって、この実施形態は、さらに良好なスイングフィーリングを提供することができる。上述の作用をさらに高めるために、ゴム状弾性体10は、圧縮状態で第1部分41とシャフト3との間に配されているのが望ましい。
【0052】
図6には、本発明のさらに他の実施形態が示されている。
図6に示されるように、この実施形態では、ウエイト部材4が、互いに分離可能な2つの部材により構成されている。例えば、ウエイト部材4は、上方部材4Aと、下方部材4Bとを含み、これらがネジ等の分離自在な固着手段47によって固定されている。
【0053】
上方部材4Aは、例えば第1部分41からなり、下方部材4Bは、ウエイト部材4の残余の部分を構成している。好ましい態様では、第1部分41は、第2部分42よりも比重が大きい材料で構成されても良い。この場合、ウエイト部材4の重心をより高い位置に設定することが可能である。また、形状が異なる複数種類の上方部材4A及び/又は下方部材4Bを準備しておき、これらを適宜組み合わせることで、重心位置が異なる様々なウエイト部材4を容易に構成することができる。これは、所望の性能を達成するように、ゴルフクラブヘッド2の重心高さを容易に変えるのに役立つ。
【0054】
以上、本発明の実施形態が詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な開示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において、種々変更して実施することができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明のより詳細かつ非限定的な実施例が説明される。
図1~4に示した基本構造を有するアイアン型ゴルフクラブ(7番アイアン、9番アイアン)が、表1の仕様により試作され、各クラブヘッドの重量、スイートスポットの高さ及び上下の慣性モーメントがそれぞれ測定された。
【0056】
各ゴルフクラブヘッドの重量は、ゴルフクラブヘッド及びウエイト部材の合計重量として測定された。
【0057】
各ゴルフクラブヘッドのスイートスポットの高さは、基準状態とされたゴルフクラブについて、水平面からスイートスポットまでの垂直高さとして測定された。また、スイートスポットは、ヘッド重心(ゴルフクラブヘッド及びウエイト部材の重量から定まる重心で以下同じ)からフェースに引いた法線がフェースと交差する点である。
【0058】
上下の慣性モーメントは、ヘッド重心を通り、かつ、トウ・ヒール方向にのびる軸線周りのゴルフクラブヘッド(ゴルフクラブヘッド及びウエイト部材の複合体)の慣性モーメントが測定された。
【0059】
また、ウエイト部材は、実施例及び比較例のいずれについても、真鍮(比重8.6)からなり、重量を6gに揃えた。実施例のウエイト部材は、
図4の形状である。比較例のウエイト部材は、一定外径の円柱状である。
テストの結果などは、表1に示される。
【0060】
【0061】
テストの結果、実施例のヘッドは、比較例に比べて、高重心化され、スイートスポットが高くなっていることが確認できた。これに関連して、実施例のヘッドは、比較例に比べて、ゴルフクラブヘッドの上下の慣性モーメントも大きくなることが確認できた。また、本発明の効果は、ネックが長いゴルフクラブヘッドについて、特に効果が高いことも確認できた。
【符号の説明】
【0062】
1 ゴルフクラブ
2 ゴルフクラブヘッド
3 シャフト
3a シャフトの下端
3b シャフトの上端
3i シャフトの内周面
3o シャフトの外周面
4 ウエイト部材
4a ウエイト部材の上端
10 ゴム状弾性体
25 ホーゼル部
25a ホーゼル部の上端
27 シャフト差込孔
28 シャフト差込孔の底部
41 第1部分
42 第2部分
43 第3部分
A1 第1部分の断面積
A2 第2部分の断面積
CL シャフト軸線
i 中空部