(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】注出口栓
(51)【国際特許分類】
B65D 51/22 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
B65D51/22 110
(21)【出願番号】P 2020090355
(22)【出願日】2020-05-25
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲野 祐輔
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-209106(JP,A)
【文献】特開2005-059933(JP,A)
【文献】特開2019-137462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 51/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外ネジを有する円筒形の筒部と、前記筒部の内部を閉鎖する隔壁とを有するスパウトと、
内ネジを有する円筒形の周壁部と、前記周壁部の一端を閉鎖する天面部とを有し、前記外ネジ及び前記内ネジが螺合した状態で前記スパウトに取り付けられたキャップとを備え、
前記隔壁には、前記筒部の内周面に沿う環状の薄肉部が設けられており、
前記スパウトの前記隔壁と、前記キャップの前記天面部の内面とが、
前記スパウトの中心軸から偏心した位置に設けられる2以上の柱状のリブにより接続されて
おり、
前記リブの各々は、
一端が前記スパウトの前記隔壁に接続され、前記筒部の軸方向に延び、他端が開放された中空部を有する筒形状の第1の柱状体と、
一端が前記キャップの前記天面部の内面に接続されると共に、前記キャップの軸方向に延び、前記第1の柱状体の前記中空部に係合する第2の柱状体とを含み、
前記第2の柱状体の外径が前記第1の柱状体の前記中空部の内径より僅かに大きく、前記第2の柱状体が前記中空部に圧入されている、注出口栓。
【請求項2】
前記リブの各々は、前記薄肉部の形成箇所の近傍に設けられる、請求項
1に記載の注出口栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装容器に設けられる注出口栓に関する。
【背景技術】
【0002】
酒類や調味料等の流動性のある内容物の包装容器として、樹脂製の注出口栓を設けたものが広く使用されている。注出口栓は、円筒形の筒部を有するスパウトと、スパウトに着脱自在に取り付けられるキャップとを備える。スパウトには、筒部の内部を閉塞する隔壁が設けられ、未開栓の包装容器の内部を密閉状態に維持することができる。隔壁には環状のハーフカット等からなる薄肉部とプルリングが設けられ、開栓時には、プルリングを引っ張って薄肉部を破断させることにより隔壁を取り除くことができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献2には、キャップの天面部及びスパウトの隔壁に、中心軸周りの相対回転を規制した状態で互いに係合するキャップ側係合部及び隔壁側係合部をそれぞれ設け、キャップの回転操作に伴って薄肉部を破断させることにより、プルリングなしで開栓可能とした注出口栓が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-296865号公報
【文献】特開2019-34760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の注出口栓では、隔壁に設ける薄肉部の形状を工夫することにより、開栓時に必要なトルクの低減が図られている。
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載のキャップ側係合部及び隔壁側係合部の構造では、達成できるトルクの大きさに限界があり、更なる改善の余地があった。
【0007】
それ故に、本発明は、開栓が容易な注出口栓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る注出口栓は、外ネジを有する円筒形の筒部と、筒部の内部を閉鎖する隔壁とを有するスパウトと、内ネジを有する円筒形の周壁部と、周壁部の一端を閉鎖する天面部とを有し、外ネジ及び内ネジが螺合した状態でスパウトに取り付けられたキャップとを備え、隔壁には、筒部の内周面に沿う環状薄肉部が設けられており、前記スパウトの前記隔壁と、前記キャップの前記天面部の内面とが、スパウトの中心軸から偏心した位置に設けられる2以上の柱状のリブにより接続されており、リブの各々は、一端がスパウトの隔壁に接続され、筒部の軸方向に延び、他端が開放された中空部を有する筒形状の第1の柱状体と、一端がキャップの天面部の内面に接続されると共に、キャップの軸方向に延び、第1の柱状体の中空部に係合する第2の柱状体とを含み、第2の柱状体の外径が第1の柱状体の中空部の内径より僅かに大きく、第2の柱状体が中空部に圧入されているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、開栓が容易な注出口栓を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る注出口栓の概略構成を示す断面図
【
図2】
図1に示した注出口栓を構成するスパウトの上面図
【
図3】
図1に示した注出口栓を構成するキャップの底面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施形態に係る注出口栓の概略構成を示す断面図であり、
図2は、
図1に示した注出口栓を構成するスパウトの上面図であり、
図3は、
図1に示した注出口栓を構成するキャップの底面図である。
【0012】
注出口栓1は、スパウト2とスパウト2に取り付けられたキャップ3とを備える。
【0013】
スパウト2は、筒部4、隔壁5及びフランジ部6を備える。筒部4は、スパウト2が取り付けられた包装容器から内容物を注出するための円筒形状の部材である。筒部4の外周面には、キャップ3を螺合させるための外ネジ15が設けられる。隔壁5は、筒部4の内部を閉鎖し、未開栓時における包装容器の内部を密閉状態に維持する。隔壁5には、筒部4の内周面に沿って、円環状のハーフカット等からなる薄肉部7が設けられている。薄肉部7は、開栓時における隔壁5の除去の際に、破断のきっかけとなる部分である。フランジ部6は、筒部4の一方の端部(
図1における下端部)に連設され、筒部4の外方側に延びる部材であり、紙パックやパウチ等の容器本体にシールするために用いられる。
【0014】
キャップ3は、円筒形状の周壁部8及び円形状の天面部9を備える。周壁部8の内周面には、スパウト2の外ネジ15と螺合する内ネジ16が設けられる。また、天面部9の内面には、環状のインナーリング17が設けられている。インナーリング17は、キャップ3をスパウト2に螺合させた状態において、スパウト2の筒部4の内部に嵌合すると共に、筒部4の内周面に当接することによって、開栓後の包装容器を密閉する機能を有する。
【0015】
更に、スパウト2及びキャップ3には、第1の柱状体11及び第2の柱状体12がそれぞれ2本ずつ設けられている。
【0016】
スパウト2に設けられた第1の柱状体11は、一端が隔壁5に接続され、筒部4の注出端側(
図1における上端側)に向かって筒部4の軸方向に沿って延びるように形成されている。本実施形態では、第1の柱状体11は、筒形状に形成されており、隔壁5に接続された端部とは反対側の端部が開放された中空部18を有する。また、2本の第1の柱状体11は、隔壁5の中心に対して点対称に、かつ、隔壁5の径方向に整列するように配置されている。
【0017】
キャップ3に設けられた第2の柱状体12は、一端が天面部9に接続され、周壁部8の開放端側に向かって周壁部8の軸方向に沿って延びるように形成されている。本実施形態では、2本の第2の柱状体12は、天面部9の中心に対して点対称に、かつ、天面部9の径方向に第1の柱状体11における一対の中空部18と同間隔で整列するように配置されている。また、第2の柱状体12は、第1の柱状体11の中空部18とほぼ同形状に形成されており、第1の柱状体11の中空部に係合している。
【0018】
第1の柱状体11及び第2の柱状体12は、互いに係合することにより、キャップ3の天面部9及びスパウト2の隔壁5の対向面同士を接続するリブ10を構成する(
図1参照)。本実施形態においては、2本のリブ10は、スパウト2の中心軸から偏心しており、薄肉部7が形成された箇所の近傍に配置されている。
【0019】
スパウト2及びキャップ3は、それぞれ樹脂の射出成型により一体成型される。スパウト2の成型材料としては、例えば、ポリエチレンを用いることができ、キャップ3の成型材料としては、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレンを用いることができる。別個に成型されたスパウト2及びキャップ3は、打栓により組み合わされる。すなわち、治具で支持したスパウト2に対して、第1の柱状体11の中空部18と第2の柱状体12とが対応するようにキャップ3を位置合わせした後、キャップ3をスパウト2側に打ち込むことにより、外ネジ16に内ネジ15を乗り越えさせ、外ネジ16及び内ネジ15を螺合させた状態とする。同時に、第2の柱状体12は、第1の柱状体11の中空部18に係合する。
【0020】
上述したとおり、本実施形態に係る注出口栓1には、スパウト2の隔壁5とキャップ3の天面部9とを接続する2本の柱状のリブ10が設けられている。開栓時に、キャップ3を回転させると、柱状のリブ10は、よじれて撓むため、隔壁5におけるリブ10の根元(第1の柱状体11の接続部)近傍の部分には、撓んだリブ10から上下方向に力が加わる。この上下方向の力により、隔壁5に設けられた薄肉部7を容易に破断させることができる。キャップ3を更に回転させると、キャップ3の回転に伴うリブ10の軸中心周りの回転と軸方向への移動(
図1における上方向への移動)により、薄肉部7の破断が進行し、最終的に薄肉部7が全周に渡って破断し、隔壁5が筒部4から完全に分離する。本実施形態に係る注出口栓1においては、2本のリブ10のよじれにより生じた上下方向の力により薄肉部7が破断しやすいため、開栓に要するトルクを小さくすることができる。したがって、本実施形態によれば、従来の注出口栓と比べて小さい力で開栓が可能な注出口栓1を構成することができる。
【0021】
尚、上記の実施形態では、スパウト2の隔壁5とキャップ3の天面部9とを2本のリブ10で接続した例を説明したが、リブ10の数は、3本以上であっても良い。ただし、スパウト2にキャップ3を打栓する際に、第1の柱状体11及び第2の柱状体12の位置合わせが必要であるので、リブ10の数を2~4本とすることが注出口栓1の生産効率の面で好ましい。
【0022】
また、上記の実施形態では、第1の柱状体11を中空の筒形状とし、第1の柱状体111の中空部18に第2の柱状体12を係合させた例を説明したが、第2の柱状体12を中空の筒形状とし、第1の柱状体12を第2の柱状体12に設けた中空部に係合させても良い。
【0023】
また、第1の柱状体11及び第2の柱状体12の断面形状は特に限定されず、任意の形状で良い。
【0024】
また、第1の柱状体11及び第2の柱状体12は、開栓後のキャップ3からの隔壁5が容易に離脱しない程度に係合していれば良い。例えば、第2の柱状体12の外径を第1の柱状体11に設けた中空部18の内径より僅かに大きく成型し、打栓時に第2の柱状体12を中空部18に圧入することにより、第1の柱状体11及び第2の柱状体12の軸方向における相対移動を規制することができる。
【実施例】
【0025】
図2に示したスパウト及び
図3に示したキャップを成型し、打栓により両者を係合させて
図1に示した注出口栓を作製した。スパウト2は、弾性率が140MPaの低密度ポリエチレンで成型し、円環状のハーフカットの半径を8mm、ハーフカットの厚みを0.15mmとした。キャップは、ポリプロピレンにて成型した。
【0026】
作製した注出口栓1の開栓トルクを測定したところ、45N・cmであり、小さな力で開栓可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、紙パックやパウチ等の包装容器に利用できる。
【符号の説明】
【0028】
1 注出口栓
2 スパウト
3 キャップ
4 筒部
5 隔壁
7 薄肉部
8 周壁部
9 天面部
10 リブ
11 第1の柱状体
12 第2の柱状体
15 外ネジ
16 内ネジ
18 中空部