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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】画像記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/46 20060101AFI20240730BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20240730BHJP
   B41J 11/00 20060101ALI20240730BHJP
   H02P 29/028 20160101ALI20240730BHJP
【FI】
B41J29/46 G
B41J29/38 301
B41J11/00 Z
H02P29/028
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020097967
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021187140
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】荒川 悠太
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-186847(JP,A)
【文献】特開2010-029013(JP,A)
【文献】特開2015-126690(JP,A)
【文献】特開2020-049893(JP,A)
【文献】特開2020-032639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/00 - 29/70
B41J 2/01 - 2/215
B41J 11/00 - 11/70
H02P 29/00 - 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と、
上記電源から電力が供給されて駆動する駆動部と、
ヘッドと、
上記電源から電力が供給されて駆動するモータと、
上記ヘッドを搭載しており、上記モータの駆動力が伝達されて移動するキャリッジと、
上記キャリッジの動作に応じた信号を出力するセンサと、
コントローラと、を具備しており、
上記コントローラは、
上記駆動部により被記録媒体を搬送し、上記ヘッドにより画像記録を行う記録処理において、
上記電源から可変の第1駆動電流を流して上記駆動部を駆動させ、
上記電源から可変の第2駆動電流を流して上記モータを駆動させ、
上記電源の許容電流から上記第1駆動電流を減算した電流を上記モータに流すことが可能な最大電流である制限電流に設定し、
上記駆動部へ上記第1駆動電流を流しつつ、上記最大電流を超えない上記第2駆動電流を流して上記モータを駆動させ、
上記センサが出力する信号に基づいて、上記キャリッジの動作がエラー条件に合致すると判定したとき、少なくとも上記駆動部が目標搬送動作を終了していることを条件としてエラー報知を実行し、少なくとも上記駆動部が上記目標搬送動作を終了していないことを条件として、エラー報知を行わずに上記キャリッジの動作を続行する画像記録装置。
【請求項2】
上記コントローラは、
上記センサが出力する信号に基づいて、上記キャリッジの動作がエラー条件に合致すると判定し、上記駆動部が上記目標搬送動作を終了していないことを条件として、上記モータの駆動を停止し、上記モータの駆動を停止した後に上記駆動部が上記目標搬送動作を終了したことを条件として、上記モータを駆動して、上記キャリッジの動作を続行する請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
メモリを更に具備しており、
上記コントローラは、
上記センサが出力する信号に基づいて、上記キャリッジの動作がエラー条件に合致すると判定したとき、上記駆動部が上記目標搬送動作を終了してから上記メモリに記憶されている時間が経過していないことを条件として、エラー報知を行わずに上記キャリッジの動作を続行する請求項1または2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
上記コントローラは、上記センサが出力する信号に基づいて、上記キャリッジが上記モータによる移動向きと反対向きへ移動したと判定したことを条件として、エラー報知を実行する請求項1からのいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項5】
上記エラー条件は、上記キャリッジの速度低下又は停止である請求項1からのいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項6】
上記駆動部は、
上記電源から電力が供給されて駆動する搬送モータと、
上記搬送モータから駆動が伝達されて回転する搬送ローラと、を有する請求項1からのいずれかに記載の画像記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに画像記録する画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像記録装置は、通常、複数の駆動部(ローラを駆動するためのモータなど)を備えている。画像記録の高速化の観点から、複数の駆動部が同時に駆動されることが望ましいことがある。
【0003】
例えば、画像記録装置の一例として、ヘッドに設けられたノズルからインク滴を吐出してシートに画像を記録するインクジェット記録装置がある。インクジェット記録装置は、ローラによるシートの所定長の搬送動作と、ヘッドが搭載されたキャリッジを移動させつつヘッドからインク滴を吐出する記録動作とを交互に実行する。画像記録の高速化の観点から、ローラの駆動の一部とキャリッジの移動の一部とは、同時に実行されることが望ましい。
【0004】
また、ローラを回転させるモータや、キャリッジを移動させるモータなどの複数の駆動部へ電流を流す電源のコストを下げることが求められている。しかし、電源のコストを下げると、電源の許容電流が低くなる。すると、各駆動部へ同時に電流を流した場合に、許容電流を超える可能性が高まる。
【0005】
そこで、複数の駆動部を同時駆動する場合に、各駆動部の電流を監視して、電流が所定の閾値を超えた駆動部を停止するといった手段がとられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-126690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
駆動部に流れる電流が一定でない場合、正確な電流値を推定することが困難である。そのため、上記の所定の閾値を、電流の推定値のばらつきを考慮して低く設定する必要がある。これにより、電源の性能を有効に用いて複数のモータを駆動することができない。これに対して、複数の駆動部に流れる電流の合計が許容電流を超えないように、一方の駆動部の制限電流を、他方の駆動部に流れる可変の電流に基づいて可変に設定することが考案される。これにより、制限電流を不必要に低く設定する必要がなくなる。その結果、電源に流れる電流が許容電流に近い値となるまで、一方の駆動部に流す電流を大きくすることができる。
【0008】
しかしながら、一方の駆動部の制限電流が低くなれば、一方の駆動部の動作が不安定になるおそれがある。例えば、一方の駆動部がキャリッジを駆動するモータであれば、制限電流が低くなれば、キャリッジの速度が低下したり一時的に停止したりするおそれがある。このような制限電流に起因するキャリッジの不安定な動作を、紙詰まりなどと同様にエラーとすると、紙詰まりが生じておらず、動作が再開可能な状態でもエラーとして動作が中止することとなる。その結果、画像記録動作が中止する頻度が多くなるという問題が生じる。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電源の性能を有効に用いて複数の駆動部を駆動しつつ、制限電流に起因する駆動部の不安定な動作により画像記録を中止しない画像記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明に係る画像記録装置は、電源と、上記電源から電力が供給されて駆動する駆動部と、ヘッドと、上記電源から電力が供給されて駆動するモータと、上記ヘッドを搭載しており、上記モータの駆動力が伝達されて移動するキャリッジと、上記キャリッジの動作に応じた信号を出力するセンサと、コントローラと、を具備する。上記コントローラは、上記駆動部により被記録媒体を搬送し、上記ヘッドにより画像記録を行う記録処理において、上記電源から可変の第1駆動電流を流して上記駆動部を駆動させ、上記電源から可変の第2駆動電流を流して上記モータを駆動させ、上記電源の許容電流から上記第1駆動電流を減算した電流を上記モータに流すことが可能な最大電流である制限電流に設定し、上記駆動部へ上記第1駆動電流を流しつつ、上記最大電流を超えない上記第2駆動電流を流して上記モータを駆動させ、上記センサが出力する信号に基づいて、上記キャリッジの動作がエラー条件に合致すると判定したとき、上記駆動部が目標搬送動作を終了していることを条件としてエラー報知を実行し、上記駆動部が上記目標搬送動作を終了していないことを条件として、エラー報知を行わずに上記キャリッジの動作を続行する。
【0011】
駆動部が目標動作を終了するまでにキャリッジの動作がエラー条件に合致したとき、その原因は、第2駆動電流が最大電流以下に制限されていることの可能性が高い。その場合には、エラー報知を行わずにキャリッジの動作を続行する。他方、駆動部が目標動作を終了しているときは、キャリッジと被記録媒体とが接触しているなどが原因である可能性が高いので、エラー報知を実行する。
【0012】
(2) 好ましくは、上記コントローラは、上記センサが出力する信号に基づいて、上記キャリッジの動作がエラー条件に合致すると判定し、上記駆動部が上記目標搬送動作を終了していないことを条件として、上記モータの駆動を停止し、上記駆動部が上記目標搬送動作を終了したことを条件として、上記モータを駆動して、上記キャリッジの動作を続行する。
【0013】
駆動部が目標動作を終了するまでにキャリッジの動作がエラー条件に合致したときは、駆動部が目標搬送動作を終了してからキャリッジの動作を続行することにより、第2駆動電流が最大電流に制限されることなくモータに流れてモータが駆動する。これにより、最大電流に制限されることによるキャリッジの動作不良が再び生じにくい。
【0014】
(3) 好ましくは、上記コントローラは、上記駆動部が上記目標搬送動作を終了したことを条件として、上記モータを駆動して、上記キャリッジの動作を続行したときに、上記センサが出力する信号に基づいて、上記キャリッジの動作がエラー条件に合致すると判定したことを条件として、エラー報知を実行する。
【0015】
(4) 好ましくは、上記画像記録装置は、メモリを更に具備しており、上記コントローラは、上記センサが出力する信号に基づいて、上記キャリッジの動作がエラー条件に合致すると判定したとき、上記駆動部が目標搬送動作を終了してから上記メモリに記憶されている時間が経過していないことを条件として、エラー報知を行わずに上記キャリッジの動作を続行する。
【0016】
駆動部が目標搬送動作を終了した直後に、最大電流の制限が解除されて過大な第2駆動電流がモータに流れ、キャリッジの動作が不安定になる恐れがある。このような一時的なキャリッジの乱れをエラーと判定せずに、キャリッジの動作を続行する。
【0017】
(5) 好ましくは、上記コントローラは、上記センサが出力する信号に基づいて、上記キャリッジが上記モータによる移動向きと反対向きへ移動したと判定したことを条件として、エラー報知を実行する。
【0018】
キャリッジが移動向きと反対向きへ移動することは、第2駆動電流が制限電流以下に制限されていることが原因ではないので、エラー報知を実行することが好適である。
【0019】
(6) 好ましくは、上記エラー条件は、上記キャリッジの速度低下又は停止である。
【0020】
(7) 好ましくは、上記駆動部は、上記電源から電力が供給されて駆動する搬送モータと、上記搬送モータから駆動が伝達されて回転する搬送ローラと、を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電源の性能を有効に用いて複数の駆動部を駆動しつつ、制限電流に起因する駆動部の不安定な動作により画像記録を中止することが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の実施形態の一例である複合機10の斜視図である。
図2図2は、プリンタ部11の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
図3図3は、キャリッジ40及びガイドレール56、57の平面図である。
図4図4は、複合機10の機能ブロック図である。
図5図5は、第1駆動電流と第2駆動電流と制限電流の時間に対する特性の例を示す図である。
図6図6は、キャリッジ40の位置に対する移動速度の特性を示す図である。
図7図7は、画像記録制御の処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、複合機10が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、開口13が設けられている面を前面23として前後方向8が定義され、複合機10を前方から視て左右方向9が定義される。上下方向7、前後方向8、及び左右方向9は互いに直交している。
【0024】
[複合機10の全体構造]
図1に示されるように、複合機10(画像記録装置の一例)は、概ね直方体形状である。複合機10の下部にプリンタ部11が設けられている。複合機10は、スキャン機能、ファクシミリ機能、及びプリント機能などの各種の機能を有している。複合機10は、プリント機能として、インクジェット方式で用紙12(図2参照、シートの一例)の片面に画像記録する機能を有している。なお、複合機10は、用紙12の両面に画像記録するものであってもよい。プリンタ部11の上部には、操作部17が配置されている。操作部17は、画像記録の指示や各種設定のために操作されるボタン171や、各種情報が表示される液晶ディスプレイ172などによって構成されている。
【0025】
また、図2に示されるように、プリンタ部11は、給送トレイ20、給送部16、外ガイド部材18、内ガイド部材19、プラテン42、記録部24、搬送ローラ対59、排出ローラ対44、ロータリーエンコーダ(不図示)、電源160(図4参照)、コントローラ130(図4参照)、及びメモリ140(図4参照)を備えている。
【0026】
[給送トレイ20]
図1に示されるように、プリンタ部11の正面には、開口13が形成されている。給送トレイ20が、前後方向8へ移動することによって、開口13を介してプリンタ部11に対して挿入及び抜去可能である。給送トレイ20は、上方が開放された箱形状の部材であり、用紙12を収容する。図2に示されるように、給送トレイ20の底板22に、用紙12が重ねられた状態で支持される。給送トレイ20の前部の上方には、排出トレイ21が配置されている。排出トレイ21の上面には、記録部24によって画像記録されて排出された用紙12が支持される。
【0027】
[給送部16]
図2に示されるように、給送部16は、記録部24の下方且つ給送トレイ20の底板22の上方に配置されている。給送部16は、給送ローラ25、給送アーム26、駆動伝達機構27、及び軸28を備えている。給送ローラ25は、給送アーム26の先端部で回転可能に支持されている。給送アーム26は、基端部に設けられた軸28を中心として、矢印29の方向へ回動する。これにより、給送ローラ25は、給送トレイ20または給送トレイ20に支持された用紙12に対して、当接及び離間が可能である。
【0028】
給送ローラ25は、複数のギヤが噛合されてなる駆動伝達機構27によって、給送モータ(不図示)の駆動力が伝達されて回転する。これにより、給送トレイ20の底板22に支持された用紙12のうち、給送ローラ25と当接している最上の用紙12が、搬送路65へ給送される。なお、駆動伝達機構27は、複数のギヤが噛合されている形態に限らず、例えば軸28と給送ローラ25の軸とに架け渡されたベルトであってもよい。
【0029】
なお、給送ローラ25は、後述する搬送モータ101の駆動力が伝達されて回転してもよい。この場合、搬送モータ101から、各ローラへの駆動伝達経路が切替可能に構成される。
【0030】
[搬送路65]
図2に示されるように、給送トレイ20の後端部から搬送路65が延出されている。搬送路65は、湾曲部33と直線部34とを備える。湾曲部33は、上方へ向かいつつ後方から前方へUターンするように延びている。直線部34は、概ね前後方向8に沿って延びている。
【0031】
湾曲部33は、所定間隔を隔てて互いに対向する外ガイド部材18と内ガイド部材19とによって形成されている。外ガイド部材18及び内ガイド部材19は、図2における紙面と直交する方向である左右方向9へ延設されている。直線部34は、記録部24が配置されている位置では所定間隔を隔てて互いに対向する記録部24とプラテン42とによって形成されている。
【0032】
給送トレイ20に支持された用紙12は、給送ローラ25によって湾曲部33を搬送されて、後述する搬送ローラ対59に到達する。搬送ローラ対59に挟持された用紙12は、直線部34を記録部24へ向けて前方へ搬送される。記録部24の直下に到達した用紙12は、記録部24により画像記録される。画像記録された用紙12は、直線部34を前方へ搬送されて排出トレイ21に排出される。以上より、用紙12は、図2に一点鎖線の矢印で示される搬送向き15に沿って搬送される。
【0033】
[プラテン42]
図2に示されるように、プラテン42は、搬送路65の直線部34に配置されている。プラテン42は、上下方向7において記録部24に対向している。プラテン42は、搬送路65を搬送される用紙12を下方から支持する。
【0034】
[記録部24]
図2に示されるように、記録部24は、直線部34の上方に配置されている。記録部24は、キャリッジ40と記録ヘッド38(ヘッドの一例)とを備えている。
【0035】
キャリッジ40は、前後方向8に間隔を空けて配置された2つのガイドレール56、57によって搬送向き15と直交する左右方向9に沿って移動可能に支持されている。キャリッジ40は、キャリッジ40の下面67及び記録ヘッド38の下面68がプラテン42と上下方向7に対向するように左右方向9に移動する。なお、キャリッジ40の移動方向は、左右方向9に限らず、搬送向き15と平行で且つ搬送向き15と交差する方向であればよい。
【0036】
ガイドレール56は、記録ヘッド38よりも搬送向き15の上流に配置されている。ガイドレール57は、記録ヘッド38よりも搬送向き15の下流に配置されている。ガイドレール56、57は、左右方向9において搬送路65の直線部34の外に配置された一対のサイドフレーム(不図示)によって支持されている。キャリッジ40は、キャリッジモータ103(図4参照)から駆動伝達されることにより移動する。
【0037】
図3に示されるように、ガイドレール57には、エンコーダストリップ155が配設されている。エンコーダストリップ155は、透明な樹脂からなる帯状のものである。エンコーダストリップ155は、その右端部及び左端部を支持用リブ(不図示)に係止されることによって、左右方向9に架設されている。
【0038】
エンコーダストリップ155には、光を透過させる透光部と光を遮断する遮光部とが、長手方向に等ピッチで交互に配置されたパターンが記されている。キャリッジ40のエンコーダストリップ155に対応する位置には、透過型センサである光学センサ156が設けられている。エンコーダストリップ155と光学センサ156とによって、キャリッジ40の位置を検知するためのリニアエンコーダ157が構成される。光学センサ156は、キャリッジ40の移動する過程においてエンコーダストリップ155を読み取ってパルス信号を生成し、生成したパルス信号をコントローラ130(図4参照)へ出力する。キャリッジ40の移動量が多い程、生成されるパルス信号は長くなる。つまり、リニアエンコーダ157は、キャリッジ40の移動量に応じた信号を出力する。
【0039】
図2に示されるように、記録ヘッド38は、キャリッジ40に搭載されている。記録ヘッド38は、複数のサブタンク(不図示)と、複数のノズル39と、インク流路(不図示)と、圧電素子45(図4参照)とを備えている。
【0040】
複数のノズル39は、記録ヘッド38の下面68に開口されている。インク流路は、複数のサブタンクと複数のノズル39とを繋ぐ。図4に示される圧電素子45は、インク流路の一部を変形させることでノズル39からインク滴を吐出させる。圧電素子45は、コントローラ130(図4参照)により給電されることで動作する。インク滴の吐出により、用紙12に画像記録される。
【0041】
[搬送ローラ対59及び排出ローラ対44]
図2に示されるように、直線部34における記録ヘッド38及びプラテン42よりも搬送向き15の上流には、搬送ローラ対59が配置されている。直線部34における記録ヘッド38及びプラテン42よりも搬送向き15の下流には、排出ローラ対44が配置されている。
【0042】
搬送ローラ対59は、搬送ローラ60と、搬送ローラ60の下方に搬送ローラ60と対向して配置されたピンチローラ61とを備えている。ピンチローラ61は、コイルバネなどの弾性部材(不図示)によって搬送ローラ60に押圧されている。搬送ローラ対59は、用紙12を挟持可能である。
【0043】
排出ローラ対44は、排出ローラ62と、排出ローラ62の上方に排出ローラ62と対向して配置された拍車ローラ63とを備えている。拍車ローラ63は、コイルバネなどの弾性部材(不図示)によって排出ローラ62へ向けて押圧されている。排出ローラ対44は、用紙12を挟持可能である。
【0044】
搬送ローラ60及び排出ローラ62は、搬送モータ101(駆動部の一例、図4参照)から駆動力を付与されて回転する。搬送ローラ対59に用紙12が挟持されている状態で搬送ローラ60が回転すると、当該用紙12は、搬送ローラ対59によって搬送向き15へ搬送され、プラテン42上、つまり記録ヘッド38と対向する位置に搬送される。排出ローラ対44に用紙12が挟持されている状態で排出ローラ62が回転すると、当該用紙12は、排出ローラ対44によって搬送向き15へ搬送され、排出トレイ21上に排出される。なお、本実施形態では、搬送モータ101から搬送ローラ60へ駆動伝達されており、搬送ローラ60から排出ローラ62へ駆動伝達されている。
【0045】
なお、用紙12を搬送させるものは、上述したようなローラ対に限らない。例えば、搬送ローラ対59及び排出ローラ対44の代わりに、搬送ベルトが配置されていてもよい。
【0046】
[ロータリーエンコーダ]
搬送モータ101には、搬送モータ101の回転量を検出するロータリーエンコーダ(不図示)が設けられている。ロータリーエンコーダは、搬送モータ101の軸に設けられて搬送モータ101と共に回転するエンコーダディスク(不図示)と光学センサ75(図4参照)とからなる。エンコーダディスクには、光が透過される透過部と光が透過されない非透過部とが円周方向に等ピッチで交互に配置されたパターンが形成されている。エンコーダディスクが回転すると、光学センサ75によって透過部と非透過部とが検出される毎にパルス信号が生成される。生成されたパルス信号は、コントローラ130(図4参照)に出力される。コントローラ130は、当該パルス信号に基づいて、搬送モータ101の回転量を算出する。なお、ロータリーエンコーダは、搬送モータ101以外、例えば搬送ローラ60に設けられていてもよい。
【0047】
[電源160]
図4に示されるように、複合機10は、電源160を有する。電源160は、電源プラグを通じて外部電源から供給される電源電圧を所望の電圧値まで昇圧するレギュレータ回路や、レギュレータ回路によって昇圧された電圧を保持するコンデンサなどを含む周知の電子回路で構成されている。電子回路の配線は、プリンタ基板の各層に形成されており、コンデンサなどの電子部品は、プリンタ基板に実装されている。
【0048】
[コントローラ130及びメモリ140]
以下、図4が参照されて、コントローラ130及びメモリ140の構成が説明される。コントローラ130が後述するフローチャートにしたがった処理を行うことによって、本発明が実現される。コントローラ130は、複合機10の全体動作を制御するものである。コントローラ130は、CPU131と、ASIC135とを備えている。メモリ140は、ROM132、RAM133、及びEEPROM134を備えている。CPU131、ASIC135、ROM132、RAM133、及びEEPROM134は、内部バス137によって接続されている。
【0049】
ROM132には、CPU131が各種動作を制御するためのプログラムなどが格納されている。RAM133は、CPU131が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域、或いはデータ処理の作業領域として使用される。EEPROM134には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
【0050】
ASIC135は、第1駆動回路121と第2駆動回路122とを備えている。
【0051】
第1駆動回路121は、電源160から搬送モータ101へ流す電流を制御する電流制御回路である。CPU131は、搬送モータ101を回転させるための駆動信号を第1駆動回路121へ送る。第1駆動回路121は、CPU131から取得した駆動信号に応じた電流である第1駆動電流が電源160から搬送モータ101へ供給されるよう、電源160を制御する。ここで、駆動信号は可変であるため、第1駆動電流も可変である。
【0052】
搬送モータ101は、供給された第1駆動電流に応じて回転する。つまり、コントローラ130は、電源160から可変の第1駆動電流を流して搬送モータ101を駆動させる。搬送モータ101の回転速度は、供給された第1駆動電流が大きい程に速い。搬送モータ101の回転速度が速い程、搬送ローラ60は高速で回転して、用紙12の搬送速度が速くなる。
【0053】
第2駆動回路122は、電源160からキャリッジモータ103へ印加する電圧を制御する電圧制御回路である。CPU131は、搬送モータ101を回転させるための駆動信号を第2駆動回路122へ送る。第2駆動回路122は、CPU131から取得した駆動信号に応じた駆動電圧が電源160からキャリッジモータ103へ印加されるよう、電源160を制御する。ここで、駆動信号は可変であるため、駆動電圧も可変である。
【0054】
キャリッジモータ103は、印加された駆動電圧に応じて回転する。ここで、駆動電圧が電源160からキャリッジモータ103へ印加されているとき、電源160からキャリッジモータ103へ電流(以下、第2駆動電流と記す。)が流れる。第2駆動電流は、駆動電圧に応じて異なる大きさとなる。つまり、コントローラ130は、電源160から可変の第2駆動電流を流してキャリッジモータ103を駆動させる。キャリッジモータ103の回転速度は、印加された駆動電圧が大きい程に速い。キャリッジモータ103の回転速度が速い程、キャリッジ40は高速で移動する。
【0055】
第2駆動回路122は、電流制限回路123を備える。電流制限回路123は、電源160からキャリッジモータ103へ流される第2駆動電流のうち制限電流を超える部分をカットする保護回路である。制限電流は、キャリッジモータ103に流すことが可能な最大電流である。電流制限回路123としては、上記の制限電流の値を調整可能なもの、つまり制限電流の値が可変であるものが用いられる。制限電流の値の調整は、例えば、電流制限回路123を含む第2駆動回路122を構成するICチップの制限電流用のピンへの入力値を変えることによってなされる。
【0056】
コントローラ130は、上記の制限電流を、電源160の許容電流から第1駆動電流を減算した電流に設定する。電源160の許容電流は、使用する電源の性能によって規定された固定値である。第1駆動電流は、上述したように可変値である。よって、制限電流は、可変値である。例えば、上述したICチップの制限電流用のピンへ、前記の減算によって算出された電流値に応じた信号が入力されることによって、制限電流は当該信号の変化に応じて変化する。
【0057】
例えば、図5に示されるように、第2駆動電流の値I2が制限電流の値I0より小さい一定値である場合に、時間TA-TB間において第1駆動電流の値が増加すると、制限電流は当該増加に応じて相対的に減少する。その結果、時間TC-TD間において、第2駆動電流の値I2は、制限電流より大きくなる。しかし、電流制限回路123によって、この大きくなっている部分がカットされる。その結果、第2駆動電流の値は、時間TC-TD間において、値I2より小さい値となる。
【0058】
なお、上述した、第1駆動回路121(電流制御回路)、第2駆動回路122(電圧制御回路)、及び電流制限回路123には、公知の回路が採用可能である。
【0059】
ASIC135には、ロータリーエンコーダの光学センサ75が接続されている。コントローラ130は、光学センサ75から受け取った電気信号に基づいて、搬送モータ101の回転量を算出する。
【0060】
ASIC135には、リニアエンコーダ157の光学センサ156が接続されている。コントローラ130は、光学センサ156から受け取った電気信号に基づいて、キャリッジ40の位置を認識する。また、コントローラ130は、コントローラ130に内蔵されたタイマによってカウントされたキャリッジ40の移動開始からの時間と、認識したキャリッジ40の位置から算出されたキャリッジ40の移動開始からの移動距離(キャリッジ40の位置)とに基づいて、キャリッジ40の移動速度を検知する。つまり、コントローラ130とリニアエンコーダ157は、速度センサとして機能している。
【0061】
ASIC135には、圧電素子45が接続されている。圧電素子45は、不図示のドライブ回路を介してコントローラ130により給電されることで動作する。コントローラ130は、圧電素子45への給電を制御し、複数のノズル39から選択的にインク滴を吐出させる。
【0062】
コントローラ130は、用紙12に画像記録する際、搬送モータ101を制御することによって、搬送ローラ対59及び排出ローラ対44に所定搬送量の用紙12の搬送(改行処理)及び停止を交互に繰り返す間欠搬送処理を実行させる。なお、用紙12の搬送量は、例えば、搬送ローラ60の回転量を上述したロータリーエンコーダでカウントすることによって認識される。
【0063】
コントローラ130は、間欠搬送処理において用紙12が停止している間に、画像記録処理を実行する。画像記録処理は、キャリッジ40を左右方向9に沿って移動させながら、圧電素子45への給電を制御して、ノズル39からインク滴を吐出させる処理である。コントローラ130は、画像記録処理において、キャリッジ40を右向きまたは左向きに移動させながら、ノズル39からインク滴を吐出させる1回の画像記録パスを実行する。これにより、用紙12に対して1パス分の画像記録が実行される。
【0064】
間欠搬送処理と1パス分の画像記録とが交互に繰り返し実行されることによって、用紙12の画像記録可能な全領域に、画像記録することが可能である。つまり、コントローラ130は、複数パスで1枚の用紙12に画像記録させる。
【0065】
なお、コントローラ130は、上記に限らず、CPU131のみが各種処理を行うものであってもよいし、ASIC135のみが各種処理を行うものであってもよいし、CPU131とASIC135とが協働して各種処理を行うものであってもよい。また、コントローラ130は、1つのCPU131が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のCPU131が処理を分担して行うものであってもよい。また、コントローラ130は、1つのASIC135が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のASIC135が処理を分担して行うものであってもよい。
【0066】
ROM132に、図6に実線で示されているような、キャリッジ40の移動開始からの移動距離(キャリッジ40の位置)と、当該移動距離に対するキャリッジ40の移動速度との理想特性が、データテーブルとして記憶されている。なお、理想特性は、EEPROM134に記憶されていてもよい。
【0067】
[コントローラ130による画像記録制御]
上述のように構成されたプリンタ部11では、コントローラ130によって、用紙12が給送されて、給送された用紙12に画像記録される一連の画像記録制御が実行される。以下、画像記録制御の処理が、図7のフローチャートを参照しつつ説明される。
【0068】
複合機10の操作部17(図1参照)や複合機10と接続された外部機器などから、印刷コマンドがコントローラ130へ送られる。印刷コマンドは、画像記録制御を開始する旨のコマンドの他、用紙12のサイズに関する情報や、用紙12へ画像記録される画像データを含んでいる。
【0069】
コントローラ130は、印刷コマンドを取得すると(S10)、給送モータを駆動させる。これにより、給送ローラ25は、給送トレイ20に支持された用紙12を搬送路65へ給送する(S11)。
【0070】
次に、コントローラ130は、頭出しを実行する(S12)。頭出しにおいて、コントローラ130は、第1駆動回路121によって電源160を制御して、電源160から搬送モータ101へ第1駆動電流を供給させる。これにより、搬送モータ101が駆動して、搬送モータ101から駆動伝達された搬送ローラ対59は、用紙12を搬送向き15へ搬送する。コントローラ130は、第1駆動電流の供給を停止させることで搬送ローラ対59を停止させて、用紙12を画像記録開始位置で停止させる。画像記録開始位置とは、用紙12における画像記録領域の搬送向き15の下流端が、複数のノズル39のうち搬送向き15の最下流に配置されたノズル39と対向する位置である。
【0071】
また、コントローラ130は、第2駆動回路122によって電源160を制御して、電源160からキャリッジモータ103へ駆動電圧を印加させる。これにより、電源160からキャリッジモータ103へ第2駆動電流が供給される。これにより、キャリッジモータ103が駆動して、キャリッジモータ103から駆動伝達されたキャリッジ40は左右方向9への移動を開始する(S13)。
【0072】
ここで、本実施形態では、ステップS30において用紙12が画像記録開始位置で停止するよりも前に、キャリッジ40の移動が開始される。つまり、ステップS12、S13の一部は、並行して実行される。そのため、電源160は、第1駆動電流を搬送モータ101へ供給しつつ、第2駆動電流をキャリッジモータ103へ供給する。用紙12が画像記録開始位置で停止するよりも前に実行されるキャリッジ40の移動は、主として、図6に示される加速区間の移動である。本実施形態では、加速区間においては、記録ヘッド38からインクが吐出されない。したがって、用紙12の搬送とキャリッジ40の加速とを並行して実行できる。
【0073】
このとき、第2駆動電流は、電流制限回路123によって制限電流を超える部分をカットされる。制限電流は、電源160の許容電流から第1駆動電流を減算した大きさである。そのため、第1駆動電流と第2駆動電流の合計が許容電流を超えることがないため、電源160の動作に支障は生じない。しかし、第2駆動電流において制限電流を超える部分がカットされると、カットされた第2駆動電流を供給されたキャリッジ40の移動速度が想定(上述した理想特性における速度)よりも小さくなるおそれがある。そこで、コントローラ130は、キャリッジ40の移動を開始した後、キャリッジ40の移動速度に基づいてエラー条件1,2に合致するかを判定する(S14,S16)。
【0074】
エラー条件1は、キャリッジ40の移動向きが逆向きになったか否かである。例えば、移動範囲の左端に停止していたキャリッジ40が右向きへの移動を開始した後、左向きに移動したとき、エラー条件1を満たすと判定される。このようなキャリッジ40の挙動は、例えば、キャリッジ40が用紙12に当接して、キャリッジ40とガイドレール56,57との間において紙詰まりが生じた場合に起こり得る。コントローラ130は、キャリッジ40の移動向きを、リニアエンコーダ157が出力する信号に基づいて判定する。
【0075】
エラー条件2は、キャリッジ40の移動速度が低下若しくは増加したか否か、または、キャリッジ40が停止したか否かである。このようなキャリッジ40の挙動は、例えば、キャリッジ40が用紙12に当接した場合に起こり得るが、前述したように、第2駆動電流において制限電流を超える部分がカットされた場合にも起こり得る。
【0076】
コントローラ130は、キャリッジ40の移動速度を、リニアエンコーダ157が出力する信号に基づいて判定する。そして、コントローラ130は、キャリッジ40が移動開始してから加速しているときの実特性と、図6に示される理想特性とを比較して、理想特性からの乖離量の積分値が、予め設定された閾値より大きいか否かによって、キャリッジ40の移動速度が低下又は増加しているかを判定する。閾値は、例えば、ROM132またはEEPROM134に記憶される。
【0077】
コントローラ130は、キャリッジ40の移動がエラー条件1に合致したと判定すると(S14:Yes)、液晶ディスプレイ172においてエラー報知を行い、搬送モータ101及びキャリッジモータ103を停止する(S15)。これにより、複合機10の動作が停止して、液晶ディスプレイ172を見たユーザは、紙詰まりを解消する作業を行うこととなる。
【0078】
コントローラ130は、キャリッジ40の移動がエラー条件2に合致していないと判定すると(S14:No)、頭出し又は改行が終了したかを判定する(S17)。コントローラ130は、搬送モータ101の回転をリニアエンコーダの光学センサ75が出力する信号に基づいて監視しており、搬送モータ101が頭出し又は改行のための所定搬送量に対応する回転量だけ回転したか否かによって、頭出し又は改行が終了したかを判定する。コントローラ130は、頭出し又は改行が終了していないと判定すると(S17:No)、S14へ戻る。
【0079】
コントローラ130は、頭出し又は改行が終了したと判定すると(S17:Yes)、S13から継続してキャリッジ40を移動させつつ、圧電素子45を制御することによってノズル39から用紙12へ向けてインク滴を吐出させることによって、用紙12に対して1パス分の画像記録を実行する(S18)。
【0080】
用紙12に対する1パス分の画像記録の後、コントローラ130は、印刷コマンドに含まれる用紙12のサイズに関する情報や画像データに基づいて、現在の用紙12への画像記録が終了したか否かを判断する(S19)。
【0081】
現在の用紙12への画像記録が終了していない場合(S19:No)、改行処理が実行される(S20)。改行処理において、コントローラ130は、S12と同様に搬送モータ101を駆動させて、搬送ローラ対59及び排出ローラ対44に用紙12を所定搬送量だけ搬送させる。以降、用紙12への画像記録が終了するまで(S19:Yes)、1パス分の画像記録と所定搬送量の用紙12の搬送とが繰り返し実行される(S13~S20)。
【0082】
コントローラ130は、用紙12への画像記録が終了したと判断すると(S19:Yes)、搬送ローラ対59及び排出ローラ対44に、用紙12を搬送向き15へ搬送させて、排出トレイ21へ排出させる(S21)。
【0083】
次に、コントローラ130は、印刷コマンドに含まれる画像データに未だ用紙12に記録されていない画像データがあるか否か、換言すると次ページの画像記録があるか否かを判断する(S22)。
【0084】
次ページの画像記録がない場合(S22:No)、コントローラ130は、一連の画像記録制御を終了する。次ページの画像記録がある場合(S22:Yes)、コントローラ130は、後続の用紙12を給送トレイ20から搬送路65へ給送し(S11)、頭出しする(S12)。
【0085】
コントローラ130は、キャリッジ40の移動がエラー条件2に合致したと判定すると(S16:Yes)、頭出し又は改行が終了したかを判定する(S23)。コントローラ130は、頭出し又は改行が終了したと判定すると(S23:Yes)、頭出し又は改行が終了した後、時間T1が経過したかを判定する(S24)。
【0086】
頭出し又は改行が終了すると、コントローラ130は、搬送モータ101を回転させるための駆動信号の出力を終了し、第1駆動回路121は、電源160から搬送モータ101へ供給しないよう、電源160を制御する。図5に示されるように、第1駆動電流が低下して、搬送ローラ60を停止状態に保持するために一定値となると、第2駆動電流が上昇する。この第2駆動電流の上昇により、キャリッジモータ103の回転速度がオーバーシュートして、一時的にキャリッジ40の移動速度が不安定になるおそれがある。時間T1は、このようなキャリッジモータ103の回転速度がオーバーシュートを引き起こすおそれがある時間として、予めROM132またはEEPROM134に記憶されている。
【0087】
コントローラ130は、頭出し又は改行が終了した後、時間T1が経過していないと判定すると(S24:No)、キャリッジ40の移動がエラー条件2に合致していても、そのままキャリッジ40の移動を続行する。そして、S13から継続してキャリッジ40を移動させつつ、圧電素子45を制御することによってノズル39から用紙12へ向けてインク滴を吐出させることによって、用紙12に対して1パス分の画像記録を実行する(S18)。
【0088】
コントローラ130は、頭出し又は改行が終了した後、時間T1が経過したと判定すると(S24:Yes)、液晶ディスプレイ172にエラー表示を行い、搬送モータ101及びキャリッジモータ103を停止する(S25)。
【0089】
コントローラ130は、キャリッジ40の移動がエラー条件2に合致したと判定し(S16:Yes)、頭出し又は改行が終了していないとを判定すると(S23:No)、キャリッジモータ103を停止して、キャリッジ40の移動を中断する(S26)。コントローラ130は、キャリッジ40の移動を中断している間も、搬送モータ101を駆動して頭出し又は改行を続行しているので、頭出し又は改行が終了したかを判定する(S23)。
【0090】
コントローラ130は、頭出し又は改行が終了したと判定すると(S27:Yes)、キャリッジモータ103を駆動して、キャリッジ40の移動を再開する(S28)。このとき、コントローラ130は、停止した位置からキャリッジ40の移動を再開してもよいし、移動開始位置またキャリッジ40を戻してからキャリッジ40の移動を再度行う、すなわちリトライしてもよい。そして、コントローラ130は、再開したキャリッジ40の移動を継続しつつ、圧電素子45を制御することによってノズル39から用紙12へ向けてインク滴を吐出させることによって、用紙12に対して1パス分の画像記録を実行する(S18)。
【0091】
[実施形態の作用効果]
前述されたように、搬送ローラ対59が頭出し又改行を終了するまでにキャリッジ40の動作がエラー条件2に合致したとき、その原因は、第2駆動電流が最大電流以下に制限されていることの可能性が高い。その場合には、エラー報知を行わずにキャリッジ40の動作を続行する。他方、搬送ローラ対59が頭出し又改行を終了しているときは、キャリッジ40と用紙12とが接触しているなどが原因である可能性が高いので、エラー報知を実行する。
【0092】
また、搬送ローラ対59が頭出し又改行を終了するまでにキャリッジ40の動作がエラー条件2に合致したときは、搬送ローラ対59が頭出し又改行を終了してからキャリッジ40の動作を続行することにより、第2駆動電流が最大電流に制限されることなくキャリッジモータ103に電源160から電流が流れる。これにより、キャリッジ40の動作不良が再び生じにくい。
【0093】
また、搬送ローラ対59が頭出し又改行を終了した直後に、最大電流の制限が解除されて過大な第2駆動電流がキャリッジモータ103に流れ、キャリッジ40の動作が不安定になる恐れがある。このような一時的なキャリッジ40の動作の乱れをエラーと判定せずに、キャリッジ40の動作を続行することができる。
【0094】
また、キャリッジ40が移動向きと反対向きへ移動すること、すなわちエラー条件1に合致することは、第2駆動電流が制限電流以下に制限されていることが原因ではないので、エラー報知を実行することが好適である。
【0095】
[変形例]
上記実施形態では、エラー条件2に合致したとしても、次の改行においては、再びエラー条件2に合致するかが判定される(S16)。これに代えて、コントローラ130は、エラー条件2に合致すると判定すると、少なくとも印刷コマンドに含まれる画像データが全て用紙12に記録されるまで、つまり印刷コマンドに対応した印刷ジョブが完了するまで、エラー条件2に合致するか否かを判定することなく、頭出し又は改行が終了するまでキャリッジ40の移動を開始しないように制御してもよい。
【0096】
上記実施形態では、搬送モータ101が駆動部に相当しており、第1駆動回路121は、電源160から搬送モータ101へ流す電流を制御する電流制御回路であった。しかし、駆動部は、キャリッジモータ103と同時に駆動する可能性があるものであれば、搬送モータ101に限らず、例えば給送モータや、複合機10に設けられたスキャナのイメージセンサを移動させるモータなどであってもよい。また、駆動部はモータ以外、例えば、圧電素子45であってもよい。つまり、第1駆動回路121は、電源160から圧電素子45へ給電するための回路であってもよい。
【0097】
上記実施形態では、第1駆動回路121が電流制御回路であり、第2駆動回路122が電圧制御回路であったが、これに限らない。例えば、第1駆動回路121が電圧制御回路であり、第2駆動回路122が電流制御回路であってもよいし、第1駆動回路121及び第2駆動回路122の双方が電圧制御回路であってもよいし、第1駆動回路121及び第2駆動回路122の双方が電流制御回路であってもよい。
【0098】
上記実施形態では、複合機10は、インクジェット方式で用紙12に画像記録する機能を有する所謂インクジェットプリンタであった。しかし、複合機10は、用紙12に画像記録する記録ヘッドと、記録ヘッドを搭載するキャリッジとを備えるものであれば、インクジェットプリンタに限らない。例えば、複合機10は、感熱式プリンタや熱転写プリンタなどの所謂サーマルプリンタであってもよい。
【符号の説明】
【0099】
10・・・複合機(画像記録装置)
38・・・記録ヘッド(ヘッド)
40・・・キャリッジ
101・・・搬送モータ(駆動部)
103・・・キャリッジモータ
130・・・コントローラ
160・・・電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7