IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

特許7528565振動素子の製造方法、振動素子および振動デバイス
<>
  • 特許-振動素子の製造方法、振動素子および振動デバイス 図1
  • 特許-振動素子の製造方法、振動素子および振動デバイス 図2
  • 特許-振動素子の製造方法、振動素子および振動デバイス 図3
  • 特許-振動素子の製造方法、振動素子および振動デバイス 図4
  • 特許-振動素子の製造方法、振動素子および振動デバイス 図5
  • 特許-振動素子の製造方法、振動素子および振動デバイス 図6
  • 特許-振動素子の製造方法、振動素子および振動デバイス 図7
  • 特許-振動素子の製造方法、振動素子および振動デバイス 図8
  • 特許-振動素子の製造方法、振動素子および振動デバイス 図9
  • 特許-振動素子の製造方法、振動素子および振動デバイス 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】振動素子の製造方法、振動素子および振動デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 3/02 20060101AFI20240730BHJP
   H03H 9/19 20060101ALI20240730BHJP
   H03H 9/215 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H03H3/02 D
H03H9/19 J
H03H9/215
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020112533
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011408
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】小倉 誠一郎
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-197856(JP,A)
【文献】特開2019-128211(JP,A)
【文献】特開2010-213262(JP,A)
【文献】特開2019-012963(JP,A)
【文献】特開2016-086370(JP,A)
【文献】特開2002-164759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-3/10
H03H9/00-9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
前記基部と前記基部に接続されている連結腕との少なくとも一方から延出する腕部と、
前記腕部の先端側に位置し表裏関係にある第1主面および第2主面を有する錘部と、を備
える振動腕と、
前記錘部の前記第1主面に配置された錘膜と、を有し、
前記第1主面第1平面と、前記第1平面に対して傾斜する傾斜面と、前記傾斜面を
介して前記第1平面と接続され、前記第1平面よりも前記第2主面側に位置し、前記第1
平面と平行な第2平面と、を有する振動素子を準備する準備工程と、
前記錘膜にエネルギー線を照射して前記錘膜の一部を除去する除去工程と、を含み、
前記除去工程では、前記エネルギー線を前記第1平面の法線方向から前記錘膜に照射し
、前記傾斜面に配置された前記錘膜を除去せずに、少なくとも前記第1平面に配置された
前記錘膜を除去することを特徴とする振動素子の製造方法。
【請求項2】
前記除去工程では、前記エネルギー線を前記錘膜に照射し、前記第2平面に配置された
前記錘膜を除去せずに、前記第1平面に配置された前記錘膜を除去する請求項に記載の
振動素子の製造方法。
【請求項3】
前記第2平面は、平面視で、前記第1平面に対して前記腕部の延在方向に直交する幅方
向の両側に配置されている請求項またはに記載の振動素子の製造方法。
【請求項4】
前記第1平面は、平面視で、前記第2平面に対して前記腕部の延在方向に直交する幅方
向の両側に配置されている請求項またはに記載の振動素子の製造方法。
【請求項5】
基部と、
前記基部と前記基部に接続されている連結腕との少なくとも一方から延出する腕部と、
前記腕部の先端側に位置し表裏関係にある第1主面および第2主面を有する錘部と、を備
える振動腕と、
前記錘部の前記第1主面に配置された錘膜と、を有し、
前記第1主面第1平面と、前記第1平面に対して傾斜する傾斜面と、前記傾斜面を
介して前記第1平面と接続され、前記第1平面よりも前記第2主面側に位置し、前記第1
平面と平行な第2平面と、を有し、
前記錘膜には、一部が除去されて前記振動腕の厚さ方向に凹んだ加工痕が形成され、
前記加工痕は、前記傾斜面に配置された前記錘膜には形成されず、少なくとも前記第1
平面に配置された前記錘膜に形成されていることを特徴とする振動素子。
【請求項6】
前記加工痕は、前記第2平面に配置された前記錘膜には形成されず、前記第1平面に配
置された前記錘膜に形成されている請求項に記載の振動素子。
【請求項7】
前記第2平面は、平面視で、前記第1平面に対して前記腕部の延在方向に直交する幅方
向の両側に配置されている請求項またはに記載の振動素子。
【請求項8】
前記第1平面は、平面視で、前記第2平面に対して前記腕部の延在方向に直交する幅方
向の両側に配置されている請求項またはに記載の振動素子。
【請求項9】
請求項ないしのいずれか1項に記載の振動素子と、
前記振動素子を収納するパッケージと、を備えることを特徴とする振動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動素子の製造方法、振動素子および振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基部と、基部から延出し、腕部および錘部を備える振動腕と、錘部上に形成された錘膜と、を有する振動素子が開示されている。また、錘部の上面は、凸形状となっており、第1平坦面と、第1平坦面の両側に位置し、第1平坦面よりも下面側に位置する第2平坦面と、第1平坦面と第2平坦面とを接続する傾斜面と、を有する。そして、これら第1平坦面、第2平坦面および傾斜面にわたって錘膜が成膜されている。このような振動素子では、錘膜にレーザー光を照射して錘膜の一部を除去することにより、振動素子の周波数を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-128211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された振動素子では、傾斜面上の錘膜に対してレーザー光が照射されると、傾斜面の傾斜角度に応じてレーザー光が斜めに反射し、反射したレーザー光が意図しない部分に照射され、照射された箇所に意図していない加工が施されてしまうおそれがある。例えば、反射したレーザー光が、隣接する振動腕上の錘膜や配線に照射されて当該部分が加工されてしまうと、振動素子の周波数精度や信頼性が悪化するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の振動素子の製造方法は、基部と、
前記基部から延出する腕部と、前記腕部の先端側に位置し表裏関係にある第1主面および第2主面を有する錘部と、を備える振動腕と、
前記錘部の前記第1主面に配置された錘膜と、を有し、
前記第1主面は、平面と、前記平面に対して傾斜する傾斜面と、を有する振動素子を準備する準備工程と、
前記錘膜にエネルギー線を照射して前記錘膜の一部を除去する除去工程と、を含み、
前記除去工程では、前記エネルギー線を前記平面の法線方向から前記錘膜に照射し、前記傾斜面に配置された前記錘膜を除去せずに、前記平面に配置された前記錘膜を除去する。
【0006】
本発明の振動素子は、基部と、
前記基部から延出する腕部と、前記腕部の先端側に位置し表裏関係にある第1主面および第2主面を有する錘部と、を備える振動腕と、
前記錘部の前記第1主面に配置された錘膜と、を有し、
前記第1主面は、平面と、前記平面に対して傾斜する傾斜面と、を有し、
前記錘膜には、一部が除去されて前記振動腕の厚さ方向に凹んだ加工痕が形成され、
前記加工痕は、前記傾斜面に配置された前記錘膜には形成されず、前記平面に配置された前記錘膜に形成されている。
【0007】
本発明の振動デバイスは、上述の振動素子と、
前記振動素子を収納するパッケージと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係る振動デバイスを示す断面図である。
図2図1の振動デバイスが有する振動素子を示す平面図である。
図3図2中のA-A線断面図である。
図4図2中のB-B線断面図である。
図5】振動素子の駆動振動モードを示す模式図である。
図6】振動素子の検出振動モードを示す模式図である。
図7】駆動腕が有する錘部を示す断面図である。
図8】振動デバイスの製造工程を示す図である。
図9】水晶ウエハ上に形成された振動素子を示す平面図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る振動素子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の振動素子の製造方法、振動素子および電子デバイスを添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る振動デバイスを示す断面図である。図2は、図1の振動デバイスが有する振動素子を示す平面図である。図3は、図2中のA-A線断面図である。図4は、図2中のB-B線断面図である。図5は、振動素子の駆動振動モードを示す模式図である。図6は、振動素子の検出振動モードを示す模式図である。図7は、駆動腕が有する錘部を示す断面図である。図8は、振動デバイスの製造工程を示す図である。図9は、水晶ウエハ上に形成された振動素子を示す平面図である。
【0011】
なお、説明の便宜上、図8を除く各図には、互いに直交する3軸であるX軸、Y軸およびZ軸を示す。また、X軸に沿う方向を「X軸方向」とも言い、Y軸に沿う方向を「Y軸方向」とも言い、Z軸に沿う方向を「Z軸方向」とも言う。また、各軸の矢印側をプラス側とも言い、反対側をマイナス側とも言う。また、Z軸方向のプラス側を「上」とも言い、マイナス側を「下」とも言う。また、Z軸方向からの平面視を、単に「平面視」とも言う。また、X軸、Y軸およびZ軸は、後述するように、水晶の結晶軸にも相当する。
【0012】
また、本願明細書に記載の「平行」とは、互いの面または線同士が平行な場合の他、技術常識的に見て平行と同一視できる程度の範囲内において平行から若干ずれている場合も含む。「直交」についても同様に、互いの面または線同士が直交する場合の他、技術常識的に見て直交と同一視できる程度の範囲内において直交から若干ずれている場合も含む。
【0013】
図1に示す振動デバイス100は、Z軸を検出軸とする角速度ωzを検出する物理量センサーである。振動デバイス100を物理量センサーに適用することにより、振動デバイス100を各種電子機器、移動体等に幅広く搭載することができ、高い需要を有する利便性の高い振動デバイス100となる。振動デバイス100は、パッケージ6と、パッケージ6に収納された回路素子7、支持基板8および振動素子1と、を有する。
【0014】
パッケージ6は、上面に開口する凹部611を備えるベース61と、凹部611の開口を塞いでベース61の上面に接合部材63を介して接合されているリッド62と、を有する。パッケージ6の内側には内部空間Sが形成され、この内部空間Sに回路素子7、支持基板8および振動素子1がそれぞれ収容されている。内部空間Sは、気密であり、減圧状態、好ましくはより真空に近い状態である。ただし、内部空間Sの雰囲気は、特に限定されず、例えば、大気圧状態、加圧状態となっていてもよい。
【0015】
また、凹部611は、複数の凹部で構成され、ベース61の上面に開口する凹部611aと、凹部611aの底面に開口し、凹部611aよりも開口幅が小さい凹部611bと、凹部611bの底面に開口し、凹部611bよりも開口幅が小さい凹部611cと、を有する。そして、凹部611aの底面に、振動素子1を支持した状態で支持基板8が固定され、凹部611cの底面に回路素子7が固定されている。
【0016】
回路素子7は、振動素子1を駆動する駆動回路および振動素子1から出力される信号に基づいて振動素子1に加わった角速度ωzを検出する検出回路を含む。支持基板8は、振動素子1をベース61に実装するための基板である。支持基板8は、枠状の基板81と、基板81に設けられた複数のリード82と、を有する。基板81は、凹部611aの底面に固定されている。また、各リード82の先端部には振動素子1が固定され、各リード82およびベース61に形成された図示しない内部配線を介して、振動素子1と回路素子7とが電気的に接続されている。
【0017】
振動素子1は、角速度ωzを検出する角速度検出素子である。図2に示すように、振動素子1は、振動片2と、振動片2上に配置された電極膜4と、電極膜4上に配置された錘膜3と、を有する。
【0018】
振動片2は、Zカットの水晶基板から構成されている。Zカット水晶基板は、水晶の結晶軸である電気軸としてのX軸および機械軸としてのY軸で規定されるX-Y平面に広がりを有し、光軸としてのZ軸に沿った方向に厚みを有する。ただし、振動片2は、水晶以外の圧電体材料で構成されていてもよい。水晶以外の圧電体材料としては、例えば、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、ホウ酸リチウム、チタン酸バリウム等が挙げられる。また、振動片2の構成によっては、振動片2をZカット以外のカット角の水晶板で構成してもよい。また、振動片2は、圧電性を有しない材料、例えば、シリコン等で構成されていてもよく、この場合、後述する各腕部上に通電により伸縮する圧電素子を配置すればよい。
【0019】
振動片2は、素子中央部に位置する基部21と、基部21からY軸方向両側に延出する一対の検出腕22、23と、基部21からX軸方向両側に延出する一対の連結腕24、25と、連結腕24の先端部からY軸方向両側に延出する一対の駆動腕26、27と、連結腕25の先端部からY軸方向両側に延出する一対の駆動腕28、29と、を有する。本実施形態では、駆動腕26、27、28、29が本発明の「振動腕」に相当する。
【0020】
検出腕22は、基部21からY軸方向プラス側に延出する腕部221と、腕部221の先端側に位置し、腕部221よりもX軸方向の幅が大きい錘部222と、腕部221の上下面に形成された一対の溝220と、を有する。同様に、検出腕23は、基部21からY軸方向マイナス側に延出する腕部231と、腕部231の先端側に位置し、腕部231よりもX軸方向の幅が大きい錘部232と、腕部231の上下面に形成された一対の溝230と、を有する。これら検出腕22、23は、基部21に対して対称に形成されている。
【0021】
また、駆動腕26は、連結腕24の先端部からY軸方向プラス側に延出する腕部261と、腕部261の先端側に位置し、腕部261よりもX軸方向の幅が大きい錘部262と、腕部261の上下面に形成された一対の溝260と、を有する。同様に、駆動腕27は、連結腕24の先端部からY軸方向マイナス側に延出する腕部271と、腕部271の先端側に位置し、腕部271よりもX軸方向の幅が大きい錘部272と、腕部271の上下面に形成された一対の溝270と、を有する。これら駆動腕26、27は、連結腕24に対して対称に形成されている。
【0022】
また、駆動腕28は、連結腕25の先端部からY軸方向プラス側に延出する腕部281と、腕部281の先端側に位置し、腕部281よりもX軸方向の幅が大きい錘部282と、腕部281の上下面に形成された一対の溝280と、を有する。同様に、駆動腕29は、連結腕25の先端部からY軸方向マイナス側に延出する腕部291と、腕部291の先端側に位置し、腕部291よりもX軸方向の幅が大きい錘部292と、腕部291の上下面に形成された一対の溝290と、を有する。これら駆動腕28、29は、連結腕25に対して対称に形成されている。
【0023】
また、このような振動片2の表面に成膜された電極膜4は、図3および図4に示すように、駆動信号電極41と、駆動接地電極42と、第1検出信号電極43と、第1検出接地電極44と、第2検出信号電極45と、第2検出接地電極46と、を有する。
【0024】
駆動信号電極41は、腕部261、271の両側面と、腕部281、291の上下面と、に配置されている。一方、駆動接地電極42は、腕部261、271の上下面と、腕部281、291の両側面と、に配置されている。また、第1検出信号電極43は、腕部221の上下面に配置され、第1検出接地電極44は、腕部221の両側面に配置されている。一方、第2検出信号電極45は、腕部231の上下面に配置され、第2検出接地電極46は、腕部231の両側面に配置されている。図示しないが、これら電極41~46は、それぞれ、基部21の下面まで引き回され、複数のリード82のうちの対応するものと電気的に接続されている。
【0025】
また、電極膜4は、錘部222、232、262、272、282、292にも配置されている。そして、錘部222では、当該部分に配置された電極膜4によって腕部221の両側面に配置された第1検出接地電極44同士が電気的に接続され、同様に、錘部232では、当該部分に配置された電極膜4によって腕部231の両側面に配置された第2検出接地電極46同士が電気的に接続されている。また、錘部262では、当該部分に配置された電極膜4によって腕部261の両側面に配置された駆動信号電極41同士が電気的に接続され、同様に、錘部272では、当該部分に配置された電極膜4によって腕部271の両側面に配置された駆動信号電極41同士が電気的に接続されている。また、錘部282では、当該部分に配置された電極膜4によって腕部281の両側面に配置された駆動接地電極42同士が電気的に接続され、同様に、錘部292では、当該部分に配置された電極膜4によって腕部291の両側面に配置された駆動接地電極42同士が電気的に接続されている。
【0026】
このような構成の振動素子1は、次のようにして角速度ωzを検出する。まず、駆動信号電極41および駆動接地電極42間に駆動信号を印加すると、駆動腕26~29が図5中の矢印aに示すようにX-Y平面に沿ってX軸方向に屈曲振動する。以下、この駆動モードを駆動振動モードと言う。そして、駆動振動モードで駆動している状態で、振動素子1に角速度ωzが加わると、図6に示す検出振動モードが新たに励振される。検出振動モードでは、駆動腕26~29に振動方向であるX軸および入力軸であるZ軸に直交するY軸方向のコリオリの力が作用して矢印bに示す方向の振動が励振され、この振動に呼応して、検出腕22、23が矢印cに示す方向に屈曲振動である検出振動が生じる。
【0027】
そして、検出振動モードによって検出腕22に発生した電荷を第1検出信号電極43および第1検出接地電極44の間から第1検出信号として取り出し、検出腕23に発生した電荷を第2検出信号電極45および第2検出接地電極46の間から第2検出信号として取り出し、これら第1、第2検出信号に基づいて角速度ωzを検出することができる。
【0028】
図2に示すように、錘膜3は、錘部222、232、262、272、282、292の上面に配置されている。このうち、錘部262、272、282、292上の錘膜3は、駆動振動モードの共振周波数(各駆動腕26~29の共振周波数)および振動バランスを調整するための錘であり、錘部222、232上の錘膜3は、検出振動モードの共振周波数(各検出腕22、23の共振周波数)および振動バランスを調整するための錘である。
【0029】
次に、錘部262、272、282、292の構成について詳細について説明する。ただし、錘部262、272、282、292は、互いに同様の構成であるため、以下では、説明の便宜上、錘部262について代表して説明し、他の錘部272、282、292の構成についてはその説明を省略する。
【0030】
図7に示すように、錘部262は、駆動腕26の厚さ方向であるZ軸方向に対向して配置され、互いに表裏関係にある第1主面としての上面263および第2主面としての下面264を有する。また、錘部262は、平面視で、腕部261の延長線上に位置し、厚さが腕部261と同じ厚肉部265と、厚肉部265の幅方向すなわちX軸方向の両側に位置し、厚肉部265よりも厚さが薄い一対の薄肉部266、267と、厚肉部265と薄肉部266との間に位置し、その厚さが厚肉部265側から薄肉部266側に向けて減少する傾斜部268と、厚肉部265と薄肉部267との間に位置し、その厚さが厚肉部265側から薄肉部267側に向けて減少する傾斜部269と、を有する。
【0031】
また、薄肉部266、267は、下面264側に偏って配置されている。そして、下面264側では、厚肉部265、薄肉部266、267および傾斜部268、269が段差なく連続して接続されている。そのため、錘部262の下面264は、X-Y平面からなる平坦面で構成されている。これに対して、上面263側では、厚肉部265と薄肉部266、267との間に傾斜部268、269で構成された段差が形成されている。そのため、錘部262の上面263は、凸形状となっている。このように、薄肉部266、267が下面264側に偏っているため、錘部262の重心G1は、駆動腕26の厚さ方向の中心Cと交わるX-Y平面である中心面CPに対して下面264側に位置する。
【0032】
凸形状の上面263は、X-Y平面で構成された平面F0と、平面F0に対して傾斜した傾斜面F3と、を有する。また、平面F0は、振動片2の上面と面一である第1平面F1と、第1平面F1のX軸方向両側に位置し、第1平面F1よりも下面264側に位置する一対の第2平面F21、F22と、を有する。第1平面F1は、厚肉部265の上面で構成され、第2平面F21は、薄肉部266の上面で構成され、第2平面F22は、薄肉部267の上面で構成されている。これら第1平面F1および第2平面F21、F22は、互いに平行であり、振動片2の厚さ方向であるZ軸方向に直交するX-Y平面で構成されている。
【0033】
また、傾斜面F3は、第1平面F1と第2平面F21との間に位置し、これらを接続する第1傾斜面F31と、第1平面F1と第2平面F22との間に位置し、これらを接続する第2傾斜面F32と、を有する。第1傾斜面F31は、傾斜部268の上面で構成されており、第2傾斜面F32は、傾斜部269の上面で構成されている。これら第1傾斜面F31および第2傾斜面F32は、それぞれ、X-Y平面をY軸まわりに回転させた少なくとも1つの平面で構成されている。
【0034】
後述する振動デバイス100の製造方法でも説明するが、振動片2は、研磨加工によって予め振動片2の厚さに調整された水晶ウエハをウェットエッチングでパターニングすることにより、その外形形状を形成すると共に、上面263の凸形状を形成する。そのため、上面263のうち、第1平面F1は、研磨面で構成され、その他の面すなわち第2平面F21、F22および第1、第2傾斜面F31、F32は、それぞれ、エッチング面で構成されている。なお、当該エッチング面は、ウェットエッチングにより出現する水晶の結晶面である。図の構成では、第1傾斜面F31が傾きの異なる2つの結晶面で構成されているが、第1傾斜面F31に現れる結晶面の数は、エッチングスピードやエッチング深さによって異なり、特に限定されない。第2傾斜面F32についても同様である。
【0035】
次に、錘膜3について説明する。図2に示すように、錘膜3は、検出腕22の錘部222上に配置された錘膜32と、検出腕23の錘部232上に配置された錘膜33と、駆動腕26の錘部262上に配置された錘膜36と、駆動腕27の錘部272上に配置された錘膜37と、駆動腕28の錘部282上に配置された錘膜38と、駆動腕29の錘部292上に配置された錘膜39と、を有する。
【0036】
錘膜36、37、38、39は、駆動振動モードの共振周波数および振動バランスを調整するための膜であり、エネルギー線であるレーザー光Lの照射によってその一部を除去することにより共振周波数および振動バランスを調整する。また、錘膜32、33は、検出振動モードの共振周波数および振動バランスを調整するための膜であり、エネルギー線であるレーザー光Lの照射によってその一部を除去することにより共振周波数および振動バランスを調整する。
【0037】
次に、錘膜36、37、38、39の構成について説明する。ただし、錘膜36、37、38、39は、互いに同様の構成であるため、以下では、説明の便宜上、錘膜36について代表して説明し、他の錘膜37、38、39の構成については、その説明を省略する。
【0038】
図7に示すように、錘膜36は、錘部262の上面263に配置されおり、下面264および側面には配置されていない。また、錘膜36は、錘部262の基端側の一部を除いて錘部262の幅方向すなわちX軸方向の全域にわたって設けられている。そのため、錘膜36の重心G2は、駆動腕26の中心面CPに対して上面263側に位置する。つまり、重心G2は、中心面CPに対して錘部262の重心G1と反対側に位置する。これにより、錘部262および錘膜36からなる構造体全体の重心G0を中心面CPに近づけることができ、好ましくは図示のように一致させることができる。そのため、駆動振動モードにおける駆動腕26の不要振動、特に、Z軸方向への屈曲振動を低減することができ、振動漏れが低減され、角速度ωzの検出精度が高まる。
【0039】
錘膜36の位置、大きさおよび範囲等は、図示の位置、大きさおよび範囲等に限定されない。例えば、錘膜36は、上面263に加えて、錘部262の下面264や側面に配置されていてもよい。この場合、錘膜36の重心G2が中心面CPよりも上面263側に位置するように、その厚さおよび配置等を調整すればよい。また、錘膜36は、錘部262の長さ方向すなわちY軸方向の全域にわたって設けられていてもよい。
【0040】
錘膜3の構成材料としては、特に限定されず、例えば、金属、無機化合物、樹脂等を用いることができるが、金属または無機化合物を用いるのが好ましい。金属または無機化合物は、気相成膜法により簡単かつ高精度に成膜することができる。また、金属または無機化合物で構成された錘膜3は、エネルギー線であるレーザー光Lの照射により効率的かつ高精度に除去することができる。
【0041】
なお、レーザー光Lとしては、例えば、YAG、YVO4、エキシマレーザー等のパルスレーザー、炭酸ガスレーザー等の連続発振レーザー等を用いることができる。また、エネルギー線としては、レーザー光Lの他にも、例えば、FIB(Focused Ion Beam)、IBF(Ion Beam Figuring)等のイオンビーム等を用いることができる。
【0042】
なお、本実施形態では、レーザー光Lとしてパルス状レーザー光を用いる。つまり、スポット状に集光されたレーザー光Lを連続して照射することにより、錘膜36の加工を行う。このように、レーザー光Lとしてパルス状レーザー光を用いることにより、レーザー光Lの強度を変化させることなく一定としたまま、照射時間や照射ピッチを変更することにより、錘膜36に対する単位面積当たりのレーザー光Lの照射量すなわちエネルギー量を制御することができる。そのため、レーザー光Lが安定し、錘膜36を精度よく加工することができる。
【0043】
図7に示すように、レーザー光Lを錘膜36に照射すると、照射された部分の一部または全部が除去されて表面から凹んだ加工痕30が形成される。なお、レーザー光Lが照射された部分の一部が除去されれば、当該部分の錘膜36が薄膜化されて、図示のように加工痕30が凹部で構成される。また、レーザー光Lが照射された部分の全部が除去されれば、加工痕30が貫通孔で構成される。加工痕30としては、このいずれであってもよい。また、前述したように、レーザー光Lとしてパルス状レーザー光を用いるため、加工痕30は、略円形のスポット状となる。ただし、加工痕30の平面視形状は、特に限定されない。
【0044】
振動素子1では、加工痕30を形成する位置に特徴を有する。具体的には、図7に示すように、上面263に含まれる傾斜面F3上の錘膜36には加工痕30を形成せず、平面F0上の錘膜36に加工痕30を形成する。傾斜面F3上の錘膜36に対してZ軸方向からレーザー光Lが照射されると、傾斜面F3の傾斜角度に応じてレーザー光LがX軸方向に反射し、反射したレーザー光Lが振動素子1の他の部分に意図せず照射され、照射された箇所に意図しない加工痕30が形成される。例えば、図示するように、傾斜面F3上の錘膜36で反射したレーザー光Lが、隣接する検出腕22の錘膜32に照射されて錘膜32の一部が除去されてしまうと、離調周波数が設定値からずれたり、検出振動モードの振動バランスが悪化したりするおそれがある。
【0045】
また、傾斜面F3上の錘膜36で反射したレーザー光Lが、隣接する検出腕22の電極膜4に照射され、第1検出信号電極43や第1検出接地電極44の一部が除去されてしまうと、これら電極43、44が断線し、角速度ωzを検出できない或いは検出精度が著しく低下した不良品となるおそれがある。そのため、振動デバイス100の製造歩留まりが低下する。また、出荷時には良品であったとしても、ユーザー側の使用中に意図しない加工痕30を起点として断線が生じ、振動デバイス100が故障するといったことも考えられ、振動デバイス100の信頼性の低下にもつながる。
【0046】
特に、本実施形態では、傾斜面F3がエッチング面で構成されており、研磨面で構成された第1平面F1と比べて表面粗さが大きい。そのため、傾斜面F3上の錘膜36についても表面粗さが大きくなり易い。したがって、傾斜面F3上の錘膜36で反射したレーザー光Lが鏡面反射のみならず様々な方向に拡散反射し、駆動腕26の周囲に位置する各部位に広範囲にわたって照射される。そのため、上述した問題がより顕著となるおそれがある。また、錘膜36の表面の凹凸形状によってレーザー光Lの反射方向が変化するため、反射したレーザー光Lが振動素子1の他の部分に照射されないようにレーザー光Lを照射する向きを調整するといった制御も困難である。
【0047】
そこで、傾斜面F3上の錘膜36にはレーザー光Lを照射することなく、平面F0上の錘膜36にレーザー光Lを照射する。つまり、傾斜面F3上の錘膜36には加工痕30を形成せず、平面F0上の錘膜36に加工痕30を形成する。これにより、レーザー光Lが振動素子1の厚さ方向であるZ軸方向に反射するため、反射したレーザー光Lが駆動腕26の周囲に位置する他の部位に意図せずに照射され、当該部分に意図しない加工痕30が形成されてしまうことを効果的に抑制することができる。したがって、優れた振動特性および信頼性を有する振動素子1となる。
【0048】
本実施形態の平面F0は、第1平面F1と、そのX軸方向の両側に位置する第2平面F21、F22と、を有する。このような構成によれば、レーザー光Lを照射するエリアをより大きく確保することができ、より大きな調整幅を有する錘膜36となる。また、レーザー光Lを照射する面を、第1平面F1および第2平面F21、F22から選択することで、重心G0のX軸方向の位置を調整することができ、構造体全体の幅方向の質量バランスをより容易に整えることができる。
【0049】
なお、前述したように、第2平面F21、F22は、エッチング面で構成されているため、研磨面で構成された第1平面F1と比べて表面粗さが大きい。そのため、第2平面F21、F22上の錘膜36についても、傾斜面F3と同様に表面粗さが大きくなり易い。また、第2平面F21、F22は、第1平面F1よりも下面264側に凹んで位置している。そのため、第1平面F1上の錘膜36で反射したレーザー光Lと比べて、第2平面F21、F22上の錘膜36で反射したレーザー光Lは、拡散反射し易く、傾斜面F3上の錘膜36で反射したレーザー光L程ではないが、駆動腕26の周囲に位置する他の部位に照射されるおそれがある。
【0050】
したがって、第2平面F21、F22上の錘膜36にはレーザー光Lを照射することなく、第1平面F1上の錘膜36にレーザー光Lを照射することが特に好ましい。すなわち、第2平面F21、F22上の錘膜36には加工痕30を形成せず、第1平面F1上の錘膜36に加工痕30を形成することが好ましい。これにより、錘膜36で反射したレーザー光Lが駆動腕26の周囲に位置する他の部位に意図せずに照射され、当該部分に加工痕30が形成されてしまうことをより効果的に抑制することができる。
【0051】
以上、振動デバイス100の構成について説明した。次に、この振動デバイス100の製造方法について説明しつつ、振動素子1の製造方法についても合わせて説明する。図8に示すように、振動デバイス100の製造方法は、振動素子1を準備する準備工程と、水晶ウエハ10上で振動素子1の周波数を調整する第1周波数調整工程と、振動素子1をベース61にマウントするマウント工程と、ベース61上で振動素子1の周波数を調整する第2周波数調整工程と、ベース61にリッド62を接合する封止工程と、を含む。振動素子1の製造方法は、これら工程のうち、準備工程と、第1周波数調整工程および第2周波数調整工程からなる除去工程と、を含む。
【0052】
[準備工程]
まず、水晶ウエハ10を準備し、その両主面に対してラッピング加工、ポリッシング加工等の各種研磨加工を行うことにより、水晶ウエハ10の両主面を平坦化すると共に、水晶ウエハ10の厚さを振動片2の厚さとする。次に、ウェットエッチング(異方性エッチング)によって水晶ウエハ10をパターニングし、水晶ウエハ10に複数の振動片2を形成する。このように形成された振動片2では、錘部262の上面263のうち、第1平面F1が研磨面で構成され、その他の第2平面F21、F22および第1、第2傾斜面F31、F32がそれぞれエッチング面で構成される。
【0053】
次に、スパッタリング等によって振動片2の表面に電極膜4を形成し、さらに、蒸着等によって電極膜4上に錘膜3を形成する。これにより、図9に示すように、水晶ウエハ10に複数の振動素子1が一体形成された状態となる。なお、図9では、説明の便宜上、振動素子1を簡略化して図示しており、各振動素子1が連結梁10Aを介してフレーム10Bに接続されている。
【0054】
[第1周波数調整工程]
次に、水晶ウエハ10上で振動素子1の共振周波数および振動バランスを調整する。具体的には、錘膜36、37、38、39にレーザー光Lを照射して、錘膜36、37、38、39の一部を除去して駆動腕26、27、28、29の質量を減少させることにより、振動素子1の駆動振動モードの共振周波数を調整すると共に、駆動腕26、27、28、29の振動バランスを整えて、駆動振動モードでの振動漏れを低減する。また、錘膜32、33にレーザー光Lを照射して、錘膜32、33の一部を除去して検出腕22、23の質量を減少させることにより、振動素子1の検出振動モードの共振周波数を調整して離調周波数を所定範囲に合わせ込むと共に、検出腕22、23の振動バランスを整えて、検出振動モードでの振動漏れを低減する。なお、本工程は、必要に応じて行えばよく、本工程を行う場合には、錘膜32、33、36、37、38、39毎に除去が必要か否か、除去が必要な場合には、除去量および加工痕30の形成位置を選択することができる。
【0055】
なお、本工程は、必要がなければ省略してもよい。また、本実施形態とは異なる方法で振動素子1の共振周波数や振動バランスを調整してもよい。異なる方法を用いる場合にも、前述と同様に傾斜面F3上の錘膜3にはエネルギー線を照射しないことが好ましい。異なる方法としては、例えば、レーザー光に替えて、エネルギー線としてイオンビームを用いて錘膜3を除去する方法が挙げられる。この場合、イオンビームをレーザー光Lのようにスポット状に絞り込むことが困難なため、イオンビームが傾斜面F3上の錘膜3に照射されないように、マスクを介してイオンビームを照射すればよい。
【0056】
レーザー光Lの照射方法については、前述した通りであるため、以下では、前述した図7を参照しつつ、錘膜36を代表にして簡単に説明する。本工程では、平面F0の法線方向であるZ軸方向からレーザー光Lを照射する。また、レーザー光Lは、傾斜面F3上の錘膜36には照射せず、平面F0上の錘膜36に照射する。これにより、錘膜36で反射したレーザー光Lがその振動素子1或いは水晶ウエハ10に形成された他の振動素子1の意図しない部分に照射され、照射された箇所が意図せず加工されてしまうのを効果的に抑制することができる。そのため、振動素子1の振動特性および信頼性の低下を効果的に抑制することができる。
【0057】
特に、本実施形態では、傾斜面F3がエッチング面で構成されており、研磨面で構成された第1平面F1と比べて表面粗さが大きい。そのため、傾斜面F3上の錘膜36についても、表面粗さが大きくなり易い。したがって、傾斜面F3上の錘膜36で反射したレーザー光Lが鏡面反射のみならず様々な方向に拡散反射し、駆動腕26の周囲に位置する各部位に広範囲にわたって照射される。そのため、上述した問題がより顕著となる。
【0058】
本実施形態の平面F0は、第1平面F1と、そのX軸方向の両側に位置する第2平面F21、F22と、を有する。そのため、レーザー光Lを照射するエリアをより大きく確保することができ、より大きな調整幅を有する錘膜36となる。また、レーザー光Lを照射する面を、第1平面F1および第2平面F21、F22から選択することで、重心G0のX軸方向の位置を調整することができ、構造体全体の幅方向の質量バランスをより容易に整えることができる。
【0059】
なお、第2平面F21、F22は、エッチング面で構成されているため、研磨面で構成された第1平面F1と比べて表面粗さが大きい。そのため、第2平面F21、F22上の錘膜36についても、傾斜面F3と同様に表面粗さが大きくなり易い。また、第2平面F21、F22は、第1平面F1よりも下面264側に凹んで位置している。そのため、第1平面F1上の錘膜36で反射したレーザー光Lと比べて、第2平面F21、F22上の錘膜36で反射したレーザー光Lは、拡散反射し易く、傾斜面F3上の錘膜36で反射したレーザー光L程ではないが、駆動腕26の周囲に位置する他の部位に照射されるおそれがある。
【0060】
したがって、第2平面F21、F22上の錘膜36にはレーザー光Lを照射することなく、第1平面F1上の錘膜36にレーザー光Lを照射することが特に好ましい。これにより、錘膜36で反射したレーザー光Lが駆動腕26の周囲に位置する他の部位に意図せずに照射され、当該部分に加工痕30が形成されてしまうことをより効果的に抑制することができる。
【0061】
[マウント工程]
次に、振動素子1を水晶ウエハ10から折り取って、折り取った振動素子1を支持基板8を介してベース61に接合する。
【0062】
[第2周波数調整工程]
マウント工程において振動素子1をベース61に固定することにより、振動素子1の駆動振動モードや検出振動モードの共振周波数や振動バランスが水晶ウエハ10上でのそれから変動するおそれがある。また、共振周波数や振動バランスの粗調整を第1周波数調整工程で行い、微調整を本工程で行う場合もある。そのため、本工程では、前述した第1周波数調整工程と同様の方法で錘膜3の一部を除去し、振動素子1の共振周波数や振動バランスを調整する。なお、本工程は、必要がなければ省略してもよい。また、第1周波数調整工程とは異なる方法で振動素子1の共振周波数や振動バランスを調整してもよい。異なる方法を用いる場合にも、前述と同様に、傾斜面F3上の錘膜3にはエネルギー線を照射しないことが好ましい。
【0063】
[封止工程]
次に、真空状態で、例えば、シームリングからなる接合部材63を介してリッド62をベース61の上面にシーム溶接する。これにより、内部空間Sが気密封止され、振動デバイス100が得られる。
【0064】
以上、振動デバイス100の製造方法について説明した。このような製造方法によれば、製造中に振動素子1の意図しない箇所がレーザー光Lによって加工されてしまうことを抑制することができるため、振動素子1の駆動特性および信頼性の低下を抑制することができる。
【0065】
以上、振動デバイス100および振動デバイス100の製造方法について詳細に説明した。このような振動デバイス100に含まれる振動素子1は、前述したように、基部21と、基部21から延出する腕部261と、腕部261の先端側に位置し表裏関係にある第1主面である上面263および第2主面である下面264を有する錘部262と、を備える振動腕としての駆動腕26と、錘部262の上面263に配置された錘膜36と、を有する。また、上面263は、平面F0と、平面F0に対して傾斜する傾斜面F3と、を有する。そして、錘膜36には、一部が除去されて駆動腕26の厚さ方向に凹んだ加工痕30が形成され、加工痕30は、傾斜面F3に配置された錘膜36には形成されず、平面F0に配置された錘膜36に形成されている。
【0066】
これにより、加工痕30を形成する工程において、錘膜36で反射したレーザー光Lがその振動素子1或いは水晶ウエハ10に形成された他の振動素子1の意図しない部分に照射され、照射された箇所が意図せず加工されてしまうのを効果的に抑制することができる。そのため、振動素子1の振動特性および信頼性の低下を効果的に抑制することができる。
【0067】
また、前述したように、平面F0は、第1平面F1と、傾斜面F3を介して第1平面F1と接続され、第1平面F1よりも下面264側に位置し、第1平面F1と平行な第2平面F21、F22と、を有する。そのため、レーザー光Lを照射するエリアをより大きく確保することができ、より大きな調整幅を有する錘膜36となる。
【0068】
また、前述したように、第2平面F21、F22は、平面視で、第1平面F1に対して腕部261の延在方向であるY軸方向に直交する幅方向すなわちX軸方向の両側に配置されている。このような構成によれば、加工痕30を形成する面を、第1平面F1および第2平面F21、F22から選択することで、重心G0のX軸方向の位置を調整することができ、構造体全体の幅方向の質量バランスをより容易に整えることができる。
【0069】
また、前述したように、加工痕30は、第2平面F21、F22に配置された錘膜36には形成されず、第1平面F1に配置された錘膜36に形成されている。これにより、加工痕30を形成する工程において、錘膜36で反射したレーザー光Lがその振動素子1或いは水晶ウエハ10に形成された他の振動素子1の意図しない部分に照射され、照射された箇所が意図せず加工されてしまうのをより効果的に抑制することができる。そのため、振動素子1の振動特性および信頼性の低下をより効果的に抑制することができる。
【0070】
また、前述したように、振動デバイス100は、振動素子1と、振動素子1を収納するパッケージ6と、を備える。これにより、振動素子1の効果を享受することができ、優れた振動特性および信頼性を有する振動デバイス100となる。
【0071】
また、前述したように、振動デバイス100の製造方法に含まれる振動素子1の製造方法は、基部21と、基部21から延出する腕部261と、腕部261の先端側に位置し表裏関係にある第1主面である上面263および第2主面である下面264を有する錘部262と、を備える振動腕としての駆動腕26と、錘部262の上面263に配置された錘膜36と、を有し、上面263は、平面F0と、平面F0に対して傾斜する傾斜面F3と、を有する振動素子1を準備する準備工程と、錘膜36にエネルギー線であるレーザー光Lを照射して錘膜36の一部を除去する除去工程と、を含む。そして、除去工程では、レーザー光Lを平面F0の法線方向であるZ軸方向から錘膜36に照射し、傾斜面F3に配置された錘膜36を除去せずに、平面F0に配置された錘膜36を除去する。
【0072】
これにより、除去工程において、錘膜36で反射したレーザー光Lがその振動素子1或いは水晶ウエハ10に形成された他の振動素子1の意図しない部分に照射され、照射された箇所が意図せず加工されてしまうのを効果的に抑制することができる。そのため、振動素子1の振動特性および信頼性の低下を効果的に抑制することができる。
【0073】
また、前述したように、平面F0は、第1平面F1と、傾斜面F3を介して第1平面F1と接続され、第1平面F1よりも下面264側に位置し、第1平面F1と平行な第2平面F21、F22と、を有する。そのため、レーザー光Lを照射するエリアをより大きく確保することができ、より大きな調整幅を有する錘膜36となる。
【0074】
また、前述したように、第2平面F21、F22は、平面視で、第1平面F1に対して腕部261の延在方向であるY軸方向に直交する幅方向すなわちX軸方向の両側に配置されている。このような構成によれば、レーザー光Lを照射する面を、第1平面F1および第2平面F21、F22から選択することで、重心G0のX軸方向の位置を調整することができ、構造体全体の幅方向の質量バランスをより容易に整えることができる。
【0075】
また、前述したように、除去工程では、レーザー光Lを錘膜36に照射し、第2平面F21、F22に配置された錘膜36を除去せずに、第1平面F1に配置された錘膜36を除去する。これにより、除去工程において、錘膜36で反射したレーザー光Lがその振動素子1或いは水晶ウエハ10に形成された他の振動素子1の意図しない部分に照射され、照射された箇所が意図せず加工されてしまうのをより効果的に抑制することができる。そのため、振動素子1の振動特性および信頼性の低下をより効果的に抑制することができる。
【0076】
以上、本実施形態について説明した。なお、本実施形態の振動素子1は、振動腕としての駆動腕26、27、28、29を備えているが、これに限定されず、例えば、駆動腕26、27、28、29の少なくとも1つが振動腕であればよい。また、駆動腕26、27、28、29に替えて或いは加えて、検出腕22、23の少なくとも1つが振動腕であってもよい。つまり、検出腕22、23の少なくとも1つが、前述した錘部262および錘膜36と同様の構成となっていてもよい。また、振動素子1の製造方法において、除去工程が第1周波数調整工程と第2周波数調整工程とを含んでいるが、これに限定されず、第1周波数調整工程および第2周波数調整工程の少なくとも1つを含んでいればよい。つまり、除去工程は、水晶ウエハ10上で行ってもよいし、ベース61に搭載された状態で行ってもよい。また、第1周波数調整工程および第2周波数調整工程では、それぞれ、振動バランスと周波数を調整しているが、これに限定されず、これらのうちのいずれか一方だけを調整してもよい。
【0077】
また、例えば、本実施形態では、第1平面F1のX軸方向の両側に第2平面F21、F22が形成されているが、第2平面F21、F22の配置は、これに限定されない。例えば、第1平面F1のY軸方向の一方側または両側に形成されてもよいし、平面視で、第1平面F1の周囲を囲むように枠状に形成されていてもよい。また、第2平面F21、F22の少なくとも一方を省略してもよい。省略する分、第1平面F1が広くなり、第1平面F1だけにレーザー光Lを照射する場合には、その照射エリアが増大するという利点がある。
【0078】
<第2実施形態>
図10は、本発明の第2実施形態に係る振動素子を示す断面図である。
【0079】
本実施形態に係る振動デバイス100は、振動素子1が有する錘部262、272、282、292の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態の振動デバイス100と同様である。そのため、以下の説明では、第2実施形態の振動デバイス100に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、図10では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。なお、錘部262、272、282、292は、互いに同様の構成であるため、以下では、説明の便宜上、錘部262について代表して説明し、錘部272、282、292については、その説明を省略する。
【0080】
図10に示すように、本実施形態の錘部262では、前述の第1実施形態とは逆に、上面263が凹形状となっている。凹形状の上面263は、X-Y平面で構成された平面F0と、平面F0に対して傾斜した傾斜面F3と、を有する。また、平面F0は、振動片2の上面と面一でありX軸方向に離間して配置された一対の第1平面F11、F12と、一対の第1平面F11、F12の間に位置し、第1平面F1よりも下面264側に位置する第2平面F2と、を有する。第1平面F11、F12および第2平面F2は、互いに平行であり、振動片2の厚さ方向であるZ軸方向に直交するX-Y平面で構成されている。
【0081】
傾斜面F3は、第1平面F11と第2平面F2との間に位置し、これらを接続する第1傾斜面F31と、第1平面F12と第2平面F2との間に位置し、これらを接続する第2傾斜面F32と、を有する。このような構成によれば、レーザー光Lを照射する面を、第1平面F11、F12および第2平面F2から選択することで、重心G0のX軸方向の位置を調整することができ、構造体全体の幅方向の質量バランスをより容易に整えることができる。また、前述した第1実施形態と比べて、錘部262の外周部の機械的強度が高まるため、例えば、過度な力が加わった際の他の部分との意図しない接触等による錘部262の損傷を抑制することができる。
【0082】
また、傾斜面F3上の錘膜36には加工痕30が形成されず、平面F0上の錘膜36に加工痕30が形成されている。つまり、除去工程において、傾斜面F3上の錘膜36にはレーザー光Lを照射することなく、平面F0上の錘膜36にレーザー光Lを照射する。これにより、錘膜36で反射したレーザー光Lが駆動腕26の周囲に位置する他の部位に意図せずに照射され、当該部分に意図しない加工痕30が形成されてしまうことを効果的に抑制することができる。したがって、優れた振動特性および信頼性を有する振動素子1となる。
【0083】
以上のように、本実施形態の振動素子1では、第1平面F11、F12は、平面視で、第2平面F2に対して腕部261の延在方向であるY軸方向に直交する幅方向であるX軸方向の両側に配置されている。このような構成によれば、レーザー光Lを照射する面を、第1平面F1、F12および第2平面F2から選択することで、重心G0のX軸方向の位置を調整することができ、構造体全体の幅方向の質量バランスをより容易に整えることができる。また、前述した第1実施形態と比べて、錘部262の外周部の機械的強度が高まるため、例えば、過度な力が加わった際の他の部分との意図しない接触等による錘部262の損傷を抑制することができる。
【0084】
このような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0085】
なお、本実施形態では、第2平面F2のX軸方向の両側に第1平面F11、F12が形成されているが、第1平面F11、F12の配置は、これに限定されない。例えば、第1平面F11、F12の一方を省略してもよい。また、第2平面F2のY軸方向の一方側または両側に形成されてもよいし、平面視で、第2平面F2の周囲を囲むように枠状に形成されていてもよい。
【0086】
以上、本発明の振動素子の製造方法、振動素子および振動デバイスを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、前述した各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0087】
また、振動素子1としては、前述した実施形態に限定されず、例えば、基部からY軸方向プラス側に延出する一対の検出腕と、基部からY軸方向マイナス側に延出する一対の駆動腕と、を有するH型の角速度検出素子であってもよい。この場合、駆動振動モードでは、一対の駆動腕がX軸方向に互いに逆相で振動し、この状態でY軸まわりの角速度が加わると、コリオリの力が作用して、一対の検出腕がZ軸方向に互いに逆相で振動する。そのため、検出腕から出力される信号に基づいてY軸まわりの角速度を検出することができる。また、振動素子1としては、この他、二脚音叉型、三脚音叉等の角速度検出素子であってもよい。また、振動素子1としては、角速度検出素子に限定されず、例えば、角速度以外の物理量を検出する検出素子であってもよいし、発振器に用いられるような発振素子であってもよい。
【符号の説明】
【0088】
1…振動素子、2…振動片、3…錘膜、4…電極膜、6…パッケージ、7…回路素子、8…支持基板、10…水晶ウエハ、10A…連結梁、10B…フレーム、21…基部、22、23…検出腕、24、25…連結腕、26、27、28、29…駆動腕、30…加工痕、32、33、36、37、38、39…錘膜、41…駆動信号電極、42…駆動接地電極、43…第1検出信号電極、44…第1検出接地電極、45…第2検出信号電極、46…第2検出接地電極、61…ベース、62…リッド、63…接合部材、81…基板、82…リード、100…振動デバイス、220、230、260、270、280、290…溝、221、231、261、271、281、291…腕部、222、232、262、272、282、292…錘部、263…上面、264…下面、265…厚肉部、266、267…薄肉部、268、269…傾斜部、611、611a、611b、611c…凹部、C…中心、CP…中心面、F0…平面、F1、F11、F12…第1平面、F2、F21、F22…第2平面、F3…傾斜面、F31…第1傾斜面、F32…第2傾斜面、G0、G1、G2…重心、L…レーザー光、S…内部空間、a、b、c…矢印、ωz…角速度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10