(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/39 20180101AFI20240730BHJP
F21S 41/29 20180101ALI20240730BHJP
F21S 41/47 20180101ALI20240730BHJP
F21S 45/47 20180101ALI20240730BHJP
F21S 41/62 20180101ALI20240730BHJP
F21V 17/00 20060101ALI20240730BHJP
F21S 41/148 20180101ALI20240730BHJP
F21W 102/00 20180101ALN20240730BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240730BHJP
【FI】
F21S41/39
F21S41/29
F21S41/47
F21S45/47
F21S41/62
F21V17/00 250
F21S41/148
F21W102:00
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2020113416
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】武藤 孝志
(72)【発明者】
【氏名】井上 克彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英治
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-049730(JP,A)
【文献】特開2010-086969(JP,A)
【文献】特開2017-139145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/00
F21S 45/47
F21V 17/00
F21W 102/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源の配設されたヒートシンクと、
前記光源から放射される光を車両の前方に向かって反射するリフレクタと、
前記リフレクタからの反射光を車両の前方に投射するレンズと、を備える車両用灯具であって、
前記レンズおよび前記リフレクタの間に、前記リフレクタからの反射光の一部を遮るシェードが配置され、ブラケットを介して車体側の部材に取り付けられ、
少なくとも前記リフレクタが、
前記シェードの上端縁における水平部分に対して前記レンズの光軸周りに車両の左右いずれかに選択的に傾斜されて、前記ブラケットに取り付けられている、車両用灯具。
【請求項2】
前記リフレクタが前記レンズの光軸を通る鉛直軸を基準に路肩側に
下がるように傾斜した状態で前記ブラケットに取り付けられている、請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記レンズがレンズホルダを介して前記リフレクタに連結され、一体的に車両の左右いずれかに傾斜している、請求項1または2のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記リフレクタが前記ヒートシンクに取り付けられ、
前記ブラケットまたは前記ヒートシンクの一方には、車両の左右で対をなす位置決め穴が設けられ、他方には車両の左右で対をなす位置決め凸部が設けられ、
前記ブラケットの左右の位置決め穴の中心同士を結ぶ中心線が、車両の前後方向に見て前記シェードの上端縁における水平部分に対し傾斜している、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源からの放射光をリフレクタにより反射させて車両前方に照射するようにした車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より車両用灯具としては、光源からの光を反射し、所定の配光パターンとして車両前方に照射するリフレクタを備えたものが知られている。例えば特許文献1に記載のプロジェクタタイプの車両用前照灯では、灯具ボディと前面カバーで画成された灯室内に、光源とその放射光を前方に反射するリフレクタとをヒートシンクに搭載一体化して、光源ユニットとして収容している。
【0003】
このような前照灯をロービーム用とする場合、リフレクタとその前方のレンズとの間にリフレクタからの反射光の一部を遮るためのシェードを設け、所定のカットオフラインを有するロービーム配光パターンとして前方へ照射する。また、そうして照射する光の向き(光軸)を調整するために、灯室内で光源ユニットを上下、左右に傾動させて固定するエイミング機構を備えている。
【0004】
前記の特許文献1に記載の車両用前照灯のエイミング機構は、光源ユニットを支持するエイミング用ブラケット、3本のエイミングスクリューおよび3個のベアリングナットによって構成されており、エイミングスクリューの回動操作により、光源ユニットを水平傾動軸および鉛直傾動軸の周りにそれぞれ傾動させて、光軸を左右方向および上下方向に傾動調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、自動車などの車両は、日本国内では左側通行である一方、海外では左側通行の地域と右側通行の地域とが存在し、望ましい配光パターンも国や地域などによって異なっている。そのため、車両用灯具も国や地域の要請に合致した配光パターンが得られるように、日本国内や欧州、北米で種々の異なるリフレクタ、レンズ、シェード等が用いられていた。
【0007】
具体的には、例えば日本国内のように左側通行の地域では、対向車を幻惑しないように配光パターンにおけるカットオフラインを右側(対向車側)で低くするとともに、右側への光量も少なめにする一方、左側は、より遠くまで照射できるように光量を多めにしたいので、そうなうようにレンズやリフレクタを設計する。右側通行の地域ではその反対になる。そのための構成として、光源からの光をレンズの後側焦点に配置されたシェードにより遮光することにより配光パターンを形成する構成となっており、シェードにより遮光される光自体はレンズの光軸を中心として左右対称形状となっている。
しかしながら、そのような構成では光源から照射される光の多くを遮光してしまうこととなり、光源の光束を十分に利用することができていなかった。
【0008】
かかる問題点を考慮して本発明の目的は、プロジェクタタイプの車両用灯具において、シェードを通過するリフレクタからの反射光の形状を配光パターンの形成に適したものとすることで、光源から照射される光の利用効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本発明は、以下のような態様を有する。
(1)本発明に係る1つの態様は、光源の配設されたヒートシンクと、前記光源から放射される光を車両の前方に向かって反射するリフレクタと、前記リフレクタからの反射光を車両の前方に投射するレンズと、を備える車両用灯具であって、前記レンズおよび前記リフレクタの間に、前記リフレクタからの反射光の一部を遮るシェードが配置され、ブラケットを介して車体側の部材に取り付けられ、少なくとも前記リフレクタが、前記レンズの光軸周りに車両の左右いずれかに選択的に傾斜されて、前記ブラケットに取り付けられているものである。
(2)前記(1)の態様において、前記リフレクタが前記レンズの光軸を通る鉛直軸を基準に路肩側に傾斜した状態で前記ブラケットに取り付けられていてもよい。
(3)前記(1)または(2)の態様において、前記レンズがレンズホルダを介して前記リフレクタに連結され、一体的に車両の左右いずれかに傾斜していてもよい。
(4)前記(1)~(3)のいずれかの態様において、前記リフレクタが前記ヒートシンクに取り付けられ、前記ブラケットまたは前記ヒートシンクの一方には、車両の左右で対をなす位置決め穴が設けられ、他方には車両の左右で対をなす位置決め凸部が設けられ、前記ブラケットの左右の位置決め穴の中心同士を結ぶ中心線が、車両の前後方向に見て前記シェードの上端縁における水平部分に対し傾斜していてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プロジェクタタイプの車両用灯具において、シェードを通過するリフレクタからの反射光の形状を配光パターンの形成に適したものとすることで、光源から照射される光の利用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る実施形態の車両用灯具を備えた車両の一例を示す平面図である。
【
図2】灯具ユニットの構成を説明するための一部分解斜視図である。
【
図3】灯具ユニットの構成を説明するための縦断面図である。
【
図4】灯具ユニットの可動シェードを車両前方から見た正面図である。
【
図5A】右側に傾斜してブラケットに取り付けられた灯具ユニットの正面図である。
【
図5B】左側に傾斜してブラケットに取り付けられた灯具ユニットの正面図である。
【
図6A】基本的な左右対称の配光パターンを示す説明図である。
【
図6B】日本国内仕様の左側に傾斜した配光パターンを示す説明図である。
【
図6C】米国内仕様の右側に傾斜した配光パターンを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、添付図面では、見易さのために、複数存在する同一属性の部位には、一部のみしか参照符号が付されていない場合がある。
【0013】
また、特に断りがない場合、「前」、「後」は、各々、車両の「前進方向」、「後進方向」を示し、「上」、「下」、「左」、「右」は、各々、車両に乗車する運転者から見た方向を示す。また、「上」、「下」は鉛直方向での「上」、「下」でもあり、「左」、「右」は水平方向での「左」、「右」でもある。また、車両外側とは、車両の左右方向の中心を通る車両の前後軸に対して、車両の左右方向で外側を指し、車両内側とは、車両の左右方向で当該前後軸に近い側を指す。
【0014】
[車両用灯具の全体的な構成]
図1は、本実施形態の車両用灯具を備えた車両102の平面図である。図示のように本実施形態の車両用灯具は、車両102の前側の左右のそれぞれに設けられる前照灯101L、101Rであるが、以下では単に車両用灯具と記載する。
この車両用灯具は、前側に開口したハウジング(図示せず)と、開口を覆うようにハウジングに取り付けられるアウターレンズ(図示せず)とを備え、ハウジングとアウターレンズとで形成される灯室内に灯具ユニット10(
図2、3を参照)が配置されている。
【0015】
図2は、本実施形態の車両用灯具の灯具ユニット10の構成を示す一部分解斜視図であり、
図3は、灯具ユニット10をレンズ50の光軸Zを通る鉛直面において切断した断面図である。なお、
図3では見やすくするために断面上に位置するものだけを記載し、断面よりも奥側に見える部分についての記載を省略している。
【0016】
図2、3に表れているように、灯具ユニット10は、光源20(
図3にのみ示す)と、光源20を配置するヒートシンク30と、ヒートシンク30上に配置され、光源20からの光を前方側に反射するリフレクタ40と、光源20よりも前方に配置され、光を前方に照射するレンズ50と、レンズ50および光源20の間に配置され、ロービームおよびハイビームに配光パターンを切り替える可動シェード60と、を備えている。
【0017】
(光源20)
光源20は、基板上に発光チップが設けられた半導体型の光源であり、本実施形態ではLEDを用いているが、LDやEL(有機EL)等を用いてもよい。基板に用いられる発光チップの形状や個数は特に限定されるものではなく、例えば、正方形状の発光チップを1つだけ基板上に配置してもよいし、複数横に並べるように基板上に配置して、長方形状の発光面を形成してもよいし、長方形状の発光チップを1つだけ基板上に配置してもよい。
【0018】
(ヒートシンク30)
ヒートシンク30は、光源20を配置するベース部31と、ベース部31から鉛直下側に突出するとともに、それぞれ左右方向(車幅方向)に延びて、前後後方向に並ぶように設けられた複数の放熱フィン32と、を備えている。また、ヒートシンク30は、ベース部31や放熱フィン32よりも前方において左右にそれぞれ設けられ、可動シェード60やレンズホルダ52を取り付ける取付部33も備えている。
【0019】
図2に表れているように左右それぞれの取付部33には、上下に離れて2つのネジ固定穴33a設けられている。言い換えると、水平方向で左右二対、合計4つのネジ固定穴33aが設けられ、詳しくは後述するが、それぞれにネジ34が螺合されることで、ヒートシンク30にレンズ(レンズホルダ52)および可動シェード60が取り付けられるようになっている。
【0020】
また、左右それぞれの取付部33に1つずつ、言い換えると水平方向で左右一対の位置決めピン33b(位置決め凸部)が設けられ、詳しくは後述するが、それぞれが位置決め穴54bや位置決め穴61bに挿入されることで、ヒートシンク30とレンズホルダ52および可動シェード60の相互の位置決めがなされる。つまり、ヒートシンク30に取り付けられるリフレクタ40やレンズ50の可動シェード60に対する位置決めがなされる。
【0021】
(リフレクタ40)
リフレクタ40は、
図2、3に表れているように、光源20上を覆う半ドーム状とされ、ヒートシンク30のベース部31に取り付けられている。リフレクタ40の内面には、光源20からの光を前方側に反射する反射面が設けられている。なお、反射面の第1焦点は、光源20の発光面の中心またはその近傍に位置づけられ、第2焦点は、可動シェード60のシェード部62の上端近傍に位置付けられている。
【0022】
また、リフレクタ40の反射面は一例として左右対称に形成され、光源20からの光を前方側に反射して、左右対称の配光パターンPを形成する(
図6Aを参照)。そして、リフレクタ40の取り付けられたヒートシンク30が、前記のように可動シェード60に対して位置決めされることで、詳しくは後述するが、リフレクタ40の反射面は、前記レンズの光軸を通る鉛直軸を基準に路肩側に傾斜した状態になり、日本国内や米国等、車両の仕向け地別の望ましい配光パターン(
図6B,6Cを参照)を形成する。
【0023】
(レンズ50)
レンズ50は、リフレクタ40によって反射された光源20からの光を前方に投射するものであり、例えば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびガラス等の透明な材料で形成されている。一例としてレンズ50は、
図3に示すように、前方に突出した曲面からなる出射面50aと略平坦な入射面50bとを備えた非球面レンズとすればよいが、これには限定されない。
【0024】
また、
図2に表れているように、レンズ50の外周部には、レンズホルダ52に挟持されるフランジ部51が設けられている。レンズホルダ52は、概略円筒状のレンズ固定部53を備え、このレンズ固定部53の前側の周縁部にレンズ50のフランジ部51が当接する。そして、周方向に間隔を空けて設けられた複数の挟持片53aによって、周縁部との間にレンズ50のフランジ部51が挟持される。
【0025】
一方、レンズ固定部53の後側には、ヒートシンク30の左右の取付部33に対応して、左右一対の取付部54が設けられていて、それぞれ、ヒートシンク30の取付部33に設けられたネジ固定穴33aに対応するように、上下に離れて2つのネジ穴54aが設けられるとともに、それらの中間には、位置決めピン33bに対応するように位置決め穴54bが設けられている。
【0026】
すなわち、レンズホルダ52の左右一対の取付部54には、水平方向で左右二対、合計4つのネジ穴54aと、水平方向で左右一対の位置決め穴54bとが設けられている。そして、詳しくは後述するが、それぞれのネジ穴54aに挿入されるネジ34がヒートシンク30のネジ固定穴33aに螺合されることで、ヒートシンク30、レンズホルダ52および可動シェード60が一体化される。
【0027】
その際に、左右一対の取付部54と、ヒートシンク30の左右一対の取付部33とは、間に可動シェード60のブラケット61の左右に設けられた一対のフランジ部61aを挟んで、共締めで締結される。また、フランジ部61aのそれぞれに設けられた位置決め穴61bに、ヒートシンク30の位置決めピン33bが挿入されることで、ヒートシンク30、レンズホルダ52および可動シェード60の相互の位置決めがなされる。
【0028】
(可動シェード60)
図4は、可動シェード60を前方から見た正面図であり、光源20から放射され、リフレクタ40で反射された光の一部を遮るロービーム位置の状態を示している。本実施形態の可動シェード60は、ブラケット61とシェード部62と、を備えており、シェード部62は、左右に延びる長方形の板状とされ、その上端縁62aがロービーム配光パターンのカットオフラインCF(
図6A~C参照)を生成する形状とされている。
【0029】
また、シェード部62は、軸部63によって前後方向に回動可能に支持されるとともに、ロービーム位置に向かうようにねじりコイルばね(図示せず)によって前方に回動付勢されている。そして、シェード部62は、ブラケット61に前方に突出するように取り付けられたソレノイド64によって、軸部63の周りに後方に回動され、リフレクタ40からの反射光を遮らない倒れた状態(ハイビーム位置)に切り替わる。
【0030】
すなわち、前記軸部63とソレノイド64のプランジャ65との間には、線材やワイヤ等の動力伝達部材66が配設されて、ソレノイド64の発生する力をシェード部62に対して前後方向の回動力として伝達するようになっている。そして、ソレノイド64に電力が供給されると、動力伝達部材66が水平方向に回動し、シェード部62が軸部63の周りを後方に回動して、ハイビーム位置に切り替わる。
【0031】
そのように位置の切り替わるシェード部62が取り付けられるブラケット61には、
図3、4に表れているように、左右一対のフランジ部61aが設けられている。それぞれのフランジ部61aは、レンズホルダ52の取付部54とヒートシンク30の取付部33との間に挟み込まれて、締結される。そのためにフランジ部61aには、ヒートシンク30の位置決めピン33bに対応する位置に、位置決め穴61bが設けられている。
【0032】
そして、
図2に表れているように可動シェード60の位置決め穴61bにヒートシンク30の位置決めピン33bを挿入して、可動シェード60をヒートシンク30に組み付けた後に、そのヒートシンク30の位置決めピン33bを、レンズ50を取り付けたレンズホルダ52の位置決め穴54bに挿入して、レンズホルダ52もヒートシンク30に組み付ける。
【0033】
その後、レンズホルダ52のネジ穴54aにネジ34を挿入して、ヒートシンク30のネジ固定穴33aに螺合させる。これにより、レンズホルダ52の取付部54とヒートシンク30の取付部33との間に可動シェード60のフランジ部61aを挟み込んで共締めする。こうして灯具ユニット10の組み付けが終了し、可動シェード60を介して車両用灯具のハウジング(車体側の部材)に固定される。なお、可動シェード60のフランジ部61aにネジ挿入孔を設けて、レンズホルダ52と可動シェード60をヒートシンク30のネジ固定孔33aにネジ34により螺合させて共締めすることとしてもよい。
【0034】
(灯具ユニットの傾斜配置)
ところで、前記のようにブラケット61に設けられる左右一対の位置決め穴61bは、
図4に表れているように前後方向に見て、車両右側(図では左側)の位置決め穴61bが車両左側(図では右側)よりも高い位置にある。このため、左右一対の位置決め穴61bの中心同士を結ぶ線C(中心線C)が、前後方向に見てシェード部62の上端縁62aにおける水平部分に対し、予め設定した角度αだけ図では右下がりに傾斜している。
【0035】
一方、それらの位置決め穴61bにそれぞれ挿入されるヒートシンク30の左右一対の位置決めピン33bは、略同じ高さに位置している。よって、上述したように灯具ユニット10の組み付けが終了すると、レンズ50、ヒートシンク30およびリフレクタ40は、可動シェード60のブラケット61に対して、レンズ50の光軸Z周りに車両左側に角度αだけ傾斜して取り付けられることになる。
【0036】
すなわち、
図5Aには前方から見た正面視で示すように、左側通行の日本国内向け仕様では、レンズ50およびリフレクタ40を含む灯具ユニット10全体が、車両の左側(図の右側)に予め設定した前記角度αだけ傾斜している。そして、上述したように本実施形態では、リフレクタ40の反射面が左右対称に形成されていて、その基本的な配光パターンは、
図6Aに示すように左右対称になっている。
【0037】
このため、前記のように灯具ユニット10がレンズ50の光軸Z周りに車両左側に(即ち、左側通行の日本国内では路肩側に)傾斜して取り付けられると、リフレクタ40の反射面も前記レンズの光軸を通る鉛直軸を基準に左側に傾斜した状態になり、
図6Bに一例を示すように右側に傾斜した配光パターンPを形成する。これにより、カットオフラインCFよりも下側のロービーム配光パターンにおいて、配光パターンPの右側部分においては、シェードにより遮光される量が減ることになり、右側の走行車線(対向車線)であって自車両に近い位置への照射光量が増えることになる(図に斜線を入れて示す)。また、左側の走行車線(自車線)のカットオフラインCFに配光パターンPの直線部分を添わせることにより、左側の走行車線のカットオフラインCF付近への照射光量が増えることになる。
【0038】
これに対し、例えば米国など右側通行の国や地域向けの仕様では、図示は省略するが、前記とは反対にブラケット61の左側の位置決め穴61bが右側の位置決め穴61bよりも高い位置に形成されており、それらの中心同士を結ぶ中心線は、前方から見ると、シェード部62の上端縁62aにおける水平部分に対して角度αだけ右下がりに傾斜することになる。
【0039】
このため、前方から見て
図5Bに示すように、レンズ50およびリフレクタ40を含む灯具ユニット10全体が、車両の右側(図の左側であり、右側通行の地域の路肩側)に角度αだけ傾斜して、
図6Cに一例を示すように左側に傾斜した配光パターンPを形成するようになる。これにより、カットオフラインCFよりも下側のロービーム配光パターンにおいて、配光パターンPの左側部分においては、シェードにより遮光される量が減ることになり、左側の走行車線(対向車線)であって自車両に近い位置への照射光量が増えることになる(図に斜線を入れて示す)。また、右側の走行車線(自車線)のカットオフラインCFに配光パターンPの直線部分を添わせることにより、右側の走行車線のカットオフラインCF付近への照射光量が増えることになる。
【0040】
[実施形態の車両用灯具が奏する効果]
以上、説明したように本実施形態に係る車両用灯具では、灯具ユニット10のヒートシンク30、リフレクタ40およびレンズ50が、レンズ50の光軸Z周りに車両の左右いずれかに選択的に傾斜され、可動シェード60のブラケット61を介してハウジングに取り付けられている。これにより、プロジェクタタイプの車両用前照灯において、光源から照射される光を有効に利用して配光パターンを形成することができ、光源から照射される光の利用効率を向上させることができる。また、日本国内のような左側通行と米国のような右側通行とで複数の部品を共通化でき、コストの低減が図られる。
【0041】
特に本実施形態では、可動シェード60のブラケット61に設ける左右一対の位置決め穴61bを、それらを結ぶ中心線Cが前後方向に見て傾斜するように、左右で異なる高さ位置に設けており、一方、ヒートシンク30の位置決めピン33bやレンズホルダ52の位置決め穴54bは左右で同じ高さ位置としているので、ブラケット61を交換するだけで複数の仕向け地に対応でき、より多くの部品を共通化できる。
【0042】
さらに、本実施形態では、リフレクタ40の反射面により形成される基本的な配光パターンを左右対称とし、リフレクタ40が左右いずれかに傾斜することによって、左側通行および右側通行のそれぞれの場合において対向車を幻惑せずに、自車線のカットオフライン近傍および対向車線の自車両に近い位置への照射光量を増やすことができ、また、これまでシェードにより遮光されていた光を有効に利用することが図られる。
【0043】
[他の実施形態]
以上、本発明の望ましい実施形態について詳述したが、本発明の構成は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形および変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、灯具ユニット10のヒートシンク30、リフレクタ40およびレンズ50が一体となって傾斜されているが、これに限らず、少なくともリフレクタ40を傾斜させれば、ヒートシンク30やレンズ50は傾斜させなくてもよい。
【0044】
また、上述した実施形態では、ヒートシンク30やリフレクタ40等を傾斜させるために、可動シェード60のブラケット61に設ける左右一対の位置決め穴61bの高さを異ならせているが、これにも限定されず、ヒートシンク30に設ける左右一対の位置決めピン33bの高さを異ならせてもよい。
【0045】
さらに、上述した実施形態では、リフレクタ40の反射面を左右対称に形成しているが、これにも限定されず、反射面は左右対称でなくてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 灯具ユニット
20 光源
30 ヒートシンク
40 リフレクタ
50 レンズ
60 可動シェード
61 ブラケット
62 シェード部(シェード)
101L,101R 前照灯(車両用灯具)
102 車両
Z レンズの光軸