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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】定着装置、定着装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240730BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G21/00 502
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020113806
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2021081703
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2019208440
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】原田 侑弥
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-235132(JP,A)
【文献】特開平11-167307(JP,A)
【文献】特開2010-096969(JP,A)
【文献】特開平09-325644(JP,A)
【文献】特開2002-304087(JP,A)
【文献】特開2019-132998(JP,A)
【文献】特開2018-066857(JP,A)
【文献】特開平02-287382(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0185977(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを加熱する加熱部と、
前記加熱部の第1領域を加熱する第1ヒータと、
前記加熱部の前記第1領域と異なる領域である第2領域を加熱する第2ヒータと、
前記第1領域の温度を検出する第1温度検出部と、
前記第2領域の温度を検出する第2温度検出部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1領域の温度に基づいて前記第1ヒータを通電することにより前記第1領域の温度を所定の第1温度範囲にするとともに、前記第2領域の温度に基づいて前記第2ヒータを通電することにより前記第2領域の温度を所定の第2温度範囲にする加熱制御を行い、
前記加熱制御において、
検出された前記第1領域の温度が前記第1温度範囲を下回っておりかつ検出された前記第2領域の温度が前記第2温度範囲内である場合、又は検出された前記第2領域の温度が前記第2温度範囲を下回っておりかつ検出された前記第1領域の温度が前記第1温度範囲内である場合に、前記第1ヒータを通電する第1通電処理を行い、
前記第1通電処理の終了したタイミングにおいて、前記第2ヒータを通電する第2通電処理を行い、
前記第2通電処理において、検出された前記第2領域の温度が、前記第2温度範囲の上限温度である第2上限温度を上回った場合に、前記第2ヒータの通電を停止し、
前回の前記第2通電処理の実施後に検出された前記第2領域の温度が、前記第2上限温度よりも高い温度であるオーバーシュート温度を上回った場合に、今回の前記第2通電処理において前記第2ヒータを所定の通電時間だけ通電する定着装置。
【請求項2】
シートを加熱する加熱部と、
前記加熱部の第1領域を加熱する第1ヒータと、
前記加熱部の前記第1領域と異なる領域である第2領域を加熱する第2ヒータと、
前記第1領域の温度を検出する第1温度検出部と、
前記第2領域の温度を検出する第2温度検出部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1領域の温度に基づいて前記第1ヒータを通電することにより前記第1領域の温度を所定の第1温度範囲にするとともに、前記第2領域の温度に基づいて前記第2ヒータを通電することにより前記第2領域の温度を所定の第2温度範囲にする加熱制御を行い、
前記加熱制御において、
検出された前記第1領域の温度が前記第1温度範囲を下回っておりかつ検出された前記第2領域の温度が前記第2温度範囲内である場合、又は検出された前記第2領域の温度が前記第2温度範囲を下回っておりかつ検出された前記第1領域の温度が前記第1温度範囲内である場合に、前記第1ヒータを通電する第1通電処理を行い、
前記第1通電処理の終了したタイミングにおいて、前記第2ヒータを通電する第2通電処理を行い、
前記第2通電処理において、前記第2ヒータを所定の通電期間だけ通電した後に、前記第2ヒータの通電を停止し、
前回の前記第2通電処理の実施後に検出された前記第2領域の温度が、前記第2温度範囲の下限温度よりも低い温度であるアンダーシュート温度を下回った場合に、今回の前記第2通電処理において前記第2ヒータを前記第2温度範囲の上限温度である第2上限温度を上回ったことを条件に、前記第2ヒータの通電を停止する定着装置。
【請求項3】
前記制御部は、
検出された前記第1領域の温度が前記第1温度範囲を下回っており、かつ検出された前記第2領域の温度が前記第2温度範囲を上回っている場合は、前記第1通電処理のみを行い、
検出された前記第2領域の温度が前記第2温度範囲を下回っており、かつ検出された前記第1領域の温度が前記第1温度範囲を上回っている場合は、前記第2通電処理のみを行う請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記第1ヒータは、前記第2ヒータよりも消費電力が小さい請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項5】
シートを加熱する加熱部と、
前記加熱部の第1領域を加熱する第1ヒータと、
前記加熱部の前記第1領域と異なる領域である第2領域を加熱する第2ヒータと、
前記第1領域の温度を検出する第1温度検出部と、
前記第2領域の温度を検出する第2温度検出部と、
制御部と、
を備え、
前記第1ヒータには交流電力が給電され、
前記制御部は、
前記第1領域の温度に基づいて前記第1ヒータを通電することにより前記第1領域の温度を所定の第1温度範囲にするとともに、前記第2領域の温度に基づいて前記第2ヒータを通電することにより前記第2領域の温度を所定の第2温度範囲にする加熱制御を行い、
前記加熱制御において、
検出された前記第1領域の温度が前記第1温度範囲を下回っておりかつ検出された前記第2領域の温度が前記第2温度範囲内である場合、又は検出された前記第2領域の温度が前記第2温度範囲を下回っておりかつ検出された前記第1領域の温度が前記第1温度範囲内である場合に、前記第1ヒータを通電する第1通電処理を行い、
前記第1通電処理の終了したタイミングにおいて、前記第2ヒータを通電する第2通電処理を行い、
前記第1通電処理において、前記第1ヒータの通電のデューティ比が50%未満の条件で位相制御する定着装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1通電処理において、検出された前記第1領域の温度が、前記第1温度範囲の上限温度である第1上限温度を上回った場合に、前記第1ヒータの通電を停止する請求項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第2通電処理において、検出された前記第2領域の温度が、前記第2温度範囲の上限温度である第2上限温度を上回った場合に、前記第2ヒータの通電を停止する請求項又はに記載の定着装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第2通電処理において、前記第2ヒータを所定の通電期間だけ通電した後に、前記第2ヒータの通電を停止する請求項又はに記載の定着装置。
【請求項9】
前記制御部は、前回の前記第2通電処理の実施後に検出された前記第2領域の温度に基づいて、今回の前記第2通電処理における前記通電期間を変更する請求項に記載の定着装置。
【請求項10】
シートを加熱する加熱部と、
前記加熱部の第1領域を加熱する第1ヒータと、
前記加熱部の前記第1領域と異なる領域である第2領域を加熱する第2ヒータと、
前記第1領域の温度を検出する第1温度検出部と、
前記第2領域の温度を検出する第2温度検出部と、
前記シートを、前記加熱部に向けて所定の搬送方向で搬送する搬送部と、
制御部と、
を備え、
前記第1領域は、前記加熱部のうち、前記搬送方向に搬送される前記シートの面に平行であり、かつ前記搬送方向に交差する方向である幅方向の中央部であり、
前記第2領域は、前記加熱部のうち、前記第1領域に対して前記幅方向の両端部であり、
前記第1ヒータ及び前記第2ヒータは、通電により発熱するフィラメントを有するハロゲンヒータであり、前記幅方向に延びるように前記加熱部の内部に配置されており、
前記第1ヒータは、前記第1領域に位置する前記フィラメントの密度が、前記第2領域に位置する前記フィラメントの密度よりも高く、
前記第2ヒータは、前記第2領域に位置する前記フィラメントの密度が、前記第1領域に位置する前記フィラメントの密度よりも高く、
前記制御部は、
前記第1領域の温度に基づいて前記第1ヒータを通電することにより前記第1領域の温度を所定の第1温度範囲にするとともに、前記第2領域の温度に基づいて前記第2ヒータを通電することにより前記第2領域の温度を所定の第2温度範囲にする加熱制御を行い、
前記加熱制御において、
検出された前記第1領域の温度が前記第1温度範囲を下回っておりかつ検出された前記第2領域の温度が前記第2温度範囲内である場合、又は検出された前記第2領域の温度が前記第2温度範囲を下回っておりかつ検出された前記第1領域の温度が前記第1温度範囲内である場合に、前記第1ヒータを通電する第1通電処理を行い、
前記第1通電処理の終了したタイミングにおいて、前記第2ヒータを通電する第2通電処理を行う定着装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記第1通電処理において、検出された前記第1領域の温度が、前記第1温度範囲の上限温度である第1上限温度を上回った場合に、前記第1ヒータの通電を停止する請求項10に記載の定着装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記第2通電処理において、検出された前記第2領域の温度が、前記第2温度範囲の上限温度である第2上限温度を上回った場合に、前記第2ヒータの通電を停止する請求項10又は11に記載の定着装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記第2通電処理において、前記第2ヒータを所定の通電期間だけ通電した後に、前記第2ヒータの通電を停止する請求項10又は11に記載の定着装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記シートに現像剤を定着させる場合に、前記第1領域を目標温度である第1定着温度に制御し、前記第2領域を目標温度である第2定着温度に制御し、
前記第1温度範囲は、前記第1定着温度よりも低い温度範囲であり、前記第2温度範囲は、前記第2定着温度よりも低い温度範囲である請求項10に記載の定着装置。
【請求項15】
前記第1温度検出部の応答速度は、前記第2温度検出部の応答速度よりも速い請求項10に記載の定着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに現像剤を定着させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
シートに対して、現像剤を定着させる定着装置が知られている。定着装置は、シートを加熱する加熱部と、加圧部とを備えており、加熱部と加熱部とで現像剤が記録されたシートを挟むことにより、現像剤をシートに定着させる。特許文献1には、加熱部の温度を検出する複数の温度検出部と、加熱部を加熱する複数のヒータと、各検出部により検出された温度を用いて各ヒータの通電量を制御する制御部とを備える定着装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-132998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒータの通電開始に伴い、ヒータに突入電流が流れることにより、ヒータに電圧を供給する電源に電圧降下を発生させる場合がある。特に、複数のヒータを有する構成では、各ヒータの通電開始毎に電圧降下を発生させることが懸念される。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みたものであり、加熱部を複数のヒータにより加熱する定着装置において、ヒータの通電開始に伴う電圧降下の発生頻度を抑制する定着装置及び定着装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明に係る定着装置は、シートを加熱する加熱部と、加熱部の第1領域を加熱する第1ヒータと、加熱部の第1領域と異なる領域である第2領域を加熱する第2ヒータと、第1領域の温度を検出する第1温度検出部と、第2領域の温度を検出する第2温度検出部と、制御部と、を備える。制御部は、第1領域の温度に基づいて第1ヒータを通電することにより第1領域の温度を所定の第1温度範囲にするとともに、第2領域の温度に基づいて第2ヒータを通電することにより第2領域の温度を所定の第2温度範囲にする加熱制御を行う。加熱制御において、第1領域の温度が第1温度範囲を下回っておりかつ第2領域の温度が第2温度範囲内である場合、又は第2領域の温度が第2温度範囲内を下回っておりかつ第1領域の温度が第1温度範囲内である場合に、第1ヒータを通電する第1通電処理を行い、第1通電処理の終了したタイミングにおいて、第2ヒータを通電する第2通電処理を行う。
【0007】
上記構成により、加熱部の第1領域又は第2領域に対してヒータによる加熱が必要となった場合に、第1ヒータを通電することにより加熱部に対する加熱が開始される。そして、第1ヒータに対する通電が終了したタイミングで第2ヒータによる加熱部の加熱が開始される。これにより、第1ヒータの通電と第2ヒータの通電とが個別に制御される場合と比べて、突入電流の発生頻度を下げることができ、ひいては、各ヒータの通電開始毎に生じる電圧降下の発生頻度を抑制することができる。
【0008】
本発明は、種々の形態により実現することが可能であり、定着装置といった装置の発明以外にも、この定着装置を制御する制御方法の発明としても実現することができる。
【発明の効果】
【0009】
通電に伴う電圧降下の発生頻度を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】プリンタの構成図。
図2】第1ヒータ及び第2ヒータを説明する図。
図3】プリンタの機能ブロック図。
図4】第1領域及び第2領域の温度を説明する図。
図5】加熱制御の手順を示すフローチャート。
図6】ステップS14での詳細な処理を示すフローチャート。
図7】ステップS15での詳細な処理を示すフローチャート。
図8】第2実施形態に係るステップS14での詳細な処理を示すフローチャート。
図9】第3実施形態に係る加熱制御の手順を説明するフローチャート。
図10】ステップS51での詳細な処理を示すフローチャート。
図11】ステップS52での詳細な処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態に係るプリンタを、図面を参照しつつ説明する。プリンタは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色の現像剤を用いて、記録用紙やOHPシート等のシートに画像を形成するレーザプリンタである。
【0012】
図1に示すように、プリンタ1は、シート供給部3と、露光部4と、プロセス部6と、定着部8と、制御部10と、上記各部3,4,6,8,10を収容する筐体2とを備えている。本実施形態では、シート供給部3と、定着部8と、制御部10とにより定着装置が構成されている。
【0013】
シート供給部3は、シートSを収容する供給トレイ31と、シート押圧板32と、供給機構33とを備えている。供給機構33は、ピックアップローラ33Aと、分離ローラ33Bと、第1搬送ローラ33Cと、レジストレーションローラ33Dとを備えている。シート供給部3では、供給トレイ31内のシートSが、シート押圧板32によってピックアップローラ33Aに寄せられ、ピックアップローラ33Aによって分離ローラ33Bに送られる。シートSは、分離ローラ33Bによって1枚に分離され、第1搬送ローラ33Cによって搬送される。レジストレーションローラ33Dは、シートSの先端の位置を揃えた後、プロセス部6に向けてシートSを搬送する。
【0014】
露光部4は、図示しないレーザ光源や、符号を省略して示すポリゴンミラー、レンズ、反射鏡などを備えている。露光部4では、レーザ光源から出射される画像データに基づくレーザ光が、後述するプロセス部6の感光体ドラム61の表面で走査されることで、感光体ドラム61に静電潜像が形成される。
【0015】
プロセス部6は、シートSに現像剤像を形成する。プロセス部6は、筐体2内において露光部4の下方に配置されている。プロセス部6は、感光体ドラム61と、帯電器62と、転写ローラ63と、現像ローラ71と、供給ローラ72と、現像剤としての乾式トナーを収容するトナー収容部74とを備えている。
【0016】
プロセス部6では、感光体ドラム61の表面が帯電器62により一様に帯電された後、露光部からのレーザ光によって感光体ドラム61に画像データに基づく静電潜像が形成される。また、トナー収容部74内のトナーは、供給ローラ72を介して現像ローラ71に供給される。現像ローラ71は、トナーを静電潜像が形成された感光体ドラム61に供給する。これにより、静電潜像が可視像化され、感光体ドラム61上に現像剤像が形成される。その後、シート供給部3から供給されたシートSが、感光体ドラム61と転写ローラ63の間を搬送されることにより、感光体ドラム61上に形成された現像剤像がシートS上に転写される。
【0017】
現像剤像が転写されたシートSは、感光体ドラム61及び転写ローラ63によって、定着部8に搬送される。定着部8は、プロセス部6から搬送されてくるシートS上に現像剤像を定着させる。定着部8は、シートSを加熱する加熱部81と、加熱部81との間でシートSを挟む加圧部82とを有している。加熱部81は、筐体2内において回転可能に保持された円筒形状のローラである。加圧部82は、筐体2の内部において回転可能に保持されたローラである。定着部8では、現像剤像が転写されたシートSが、加熱部81と加圧部82の間で搬送されることで、現像剤像がシートS上に熱定着される。現像剤像が熱定着されたシートSは、第2搬送ローラ23および排出ローラ24によって排出トレイ22上に排出される。
【0018】
筐体2内において、供給トレイ31から排出トレイ22に至るまでのシートSの経路を搬送経路Pと称す。搬送経路Pのうち、感光体ドラム61及び転写ローラ63から定着部8までの経路に沿った方向を搬送方向Xと称す。また、筐体2内において、搬送方向Xに交差する方向のうち、感光体ドラム61及び転写ローラ63により搬送されるシートSの面に平行な方向を幅方向Yと称す。本実施形態では、感光体ドラム61及び転写ローラ63が搬送部の一例である。
【0019】
図2は、加熱部81の内部を示している。加熱部81は、筐体2内において、回転軸の延びる方向を幅方向Yに向けて配置されている。加熱部81におけるシートSが接する外周面において、幅方向Yの中心Y0を基準に幅方向Yの一方向と他方向とにそれぞれ所定長さだけ延びる領域を第1領域81Aと称す。また、加熱部81の外周面において、第1領域81Aに対して幅方向Yの一方向で隣り合う領域を第2領域81Bと称し、幅方向Yの他方向で隣り合う領域を第2領域81Cと称す。本実施形態では、幅方向Yにおける第1領域81Aの長さ寸法は、各第2領域81B,81Cの長さ寸法よりも長い。なお、第2領域81Bと第2領域81Cとの幅方向Yにおける長さ寸法は同じである。
【0020】
加熱部81の内側にある収容空間81Dには、第1ヒータ83と、第2ヒータ84とが配置されている。第1,第2ヒータ83,84は、本実施形態ではハロゲンランプである。第1,第2ヒータ83,84は、加熱部81における幅方向Yでの長さ寸法と略同じ長さ寸法で延びた形状であり、加熱部81における収容空間81D内に並んで配置されている。第1ヒータ83は、ガラス管内に設けられたフィラメント83Aを有している。また、第2ヒータ84は、ガラス管内に設けられたフィラメント84Aを有している。
【0021】
第1ヒータ83は、加熱部81の第1領域81Aを加熱するヒータである。第1ヒータ83は、加熱部81の第1領域81Aに対応する部位でのフィラメント83Aの密度が、第2領域81B,81Cに対応する位置でのフィラメントの密度よりも高くなるように、フィラメント83Aが配置されている。これにより、第1ヒータ83は、加熱部81における第1領域81Aに与える熱量が、第2領域81B,81Cに与える熱量より大きくなっている。第2ヒータ84は、加熱部81の第2領域81B,81Cを加熱するヒータである。第2ヒータ84は、加熱部81の第2領域81B,81Cに対応する部位でのフィラメント84Aの密度が、第1領域81Aに対応する位置でのフィラメント84Aの密度よりも高くなるように、フィラメント84Aが配置されている。これにより、第2ヒータ84は、加熱部81における第2領域81B,81Cに与える熱量が、第1領域81Aに与える熱量よりも大きくなっている。
【0022】
本実施形態では、第1ヒータ83の消費電力は、第2ヒータ84の消費電力よりも低くされている。具体的には、等しい温度条件において、第1ヒータ83のインピーダンスは、第2ヒータ84のインピーダンスより大きな値となっている。
【0023】
図2図3に示すように、筐体2内において、加熱部81の付近には、第1温度センサ85を有する第1温度検出部87と、第2温度センサ86を有する第2温度検出部88とが配置されている。第1温度センサ85は、筐体2内において、加熱部81における第1領域81Aの付近に配置されており、第1温度検出部87は、第1領域81Aの温度を第1検出温度T1として検出する。第1温度センサ85は、非接触型のセンサであり、検出部位を加熱部81の第1領域81Aに向けた状態で筐体2内に配置されている。第2温度センサ86は、筐体2内において、加熱部81における第2領域81Bの付近に配置されており、第2温度検出部88は、第2領域81Bの温度を第2検出温度T2として検出する。第2温度センサ86は、接触型のセンサであり、検出部位を加熱部81の第2領域81Bに接触させた状態で筐体2内に配置されている。本実施形態では、第1温度センサは赤外線検出方式のサーミスタであり、第2温度センサは接触式のサーミスタである。第1温度検出部87及び第2温度検出部88の応答速度は、センサの特性と検出部位の配置とに影響を受ける。本実施形態では、第1温度検出部の応答速度は、第2温度検出部の応答速度よりも速い。
【0024】
図3に示すように、制御部10は、シート供給部3と、露光部4と、プロセス部6と、定着部8とに接続されており、各部3,4,6,8の駆動を制御する。具体的には、制御部10は、シート供給部3の各ローラを回転させるモータ、定着部8の加熱部81及び加圧部82を回転させるモータ、更には、プロセス部6の各光源の発光を制御する。制御部10は、第1温度検出部87及び第2温度検出部88が接続されており、第1温度検出部87により検出された第1検出温度T1、及び第2温度検出部88により検出された第2検出温度T2が所定周期で繰返し入力される。
【0025】
制御部10は、第1ヒータ83及び第2ヒータ84に接続されており、加熱部81における第1領域81Aの温度及び第2領域81B,81Cの温度を制御する加熱制御を行う。具体的には、制御部10は、印刷処理においてシートSにトナーを定着させる定着処理を行う場合に、第1領域81Aの温度を第1定着温度に制御し、第2領域81B,81Cの温度を第1定着温度よりも低い温度である第2定着温度に制御する。一方、制御部10は、プリンタ1が印刷処理を行わない待機モードにおいて、第1領域81Aの温度を第1定着温度よりも低い温度に制御し、第2領域81B,81Cの温度を第2定着温度よりも低い温度に制御する。
【0026】
制御部10は、ASIC11と、第1通電回路14と、第2通電回路15とを備えている。第1通電回路14は、スイッチング素子としてのトライアックを有しており、不図示の交流電源から供給された交流電圧を第1ヒータ83に供給する通電状態と、交流電圧を第1ヒータ83に供給しない非通電状態とを切り替える。第2通電回路15は、スイッチング素子としてのトライアックを有しており、不図示の交流電源から供給された交流電圧を第2ヒータ84に供給する通電状態と、交流電圧を第2ヒータ84に供給しない非通電状態とを切り替える。トライアックのデューティ比が高くなるほど、第1,第2ヒータ83,84の通電率が高くなることにより、第1,第2ヒータ83,84の出力が増加する。一方、トライアックのデューティ比が低くなるほど、第1,第2ヒータ83,84の通電率が低くなることにより、第1,第2ヒータ83,84の出力が減少する。
【0027】
ASIC11は、CPU12と、ヒータコントローラ13とを備えている。ASIC11は、加熱制御において、第1ヒータ83の通電のデューティ比を調整する第1通電処理と、第2ヒータ84の通電のデューティ比を調整する第2通電処理とを行う。CPU12は、加熱部81における第1領域81Aの目標温度と、第2領域81B,81Cの目標温度とをヒータコントローラ13に出力する。
【0028】
ヒータコントローラ13は、第1通電処理として、第1温度検出部87により検出された第1検出温度T1が、目標温度に近づくように、第1通電回路14の第1駆動信号を操作量とするフィードバック制御を行う。ヒータコントローラ13は、第2通電処理として、第2温度検出部88により検出された第2検出温度T2が、目標温度に近づくように、第2通電回路15の第2駆動信号を操作量とするフィードバック制御を行う。第1駆動信号は、第1通電回路14のトライアックをオンオフ操作させる信号である。第2駆動信号は、第2通電回路15のトライアックをオンオフ操作させる信号である。
【0029】
上記構成のプリンタ1において、第1,第2ヒータ83,84の通電開始に伴い、第1,第2ヒータ83,84に突入電流が流れることにより、電圧降下が発生する場合がある。特に、第1,第2ヒータ83,84を第1,第2検出温度T1,T2に応じて独立に制御する構成では、第1,第2ヒータ83,84の通電開始毎に電圧降下を発生させることが懸念される。そこで、本実施形態では、制御部10は、加熱部81における第1領域81A又は第2領域81B,81Cの温度がヒータによる加熱が必要となる温度まで下回っているか否かを判断する。制御部10は、第1領域81A又は第2領域81Bの温度がヒータによる加熱が必要となる温度まで下回っていると判断した場合、まず、第1ヒータ83に対する第1通電処理を行うことにより、加熱部81の温度を上昇させる。そして、第1通電処理を停止したタイミングで、第2ヒータ84に対する第2通電処理を行う。
【0030】
次に、図4を用いて、第1,第2通電処理により制御される第1領域81A及び第2領域81B,81Cの温度について説明する。図4において、第1目標温度TP1は、プリンタ1の待機モードでの第1領域81Aの目標温度である。第2目標温度TP2は、プリンタ1の待機モードでの第2領域81B,81Cの目標温度である。第1目標温度TP1は第2目標温度TP2よりも高い値に定められている。時刻PCは、第1通電処理が停止された後、第2通電処理が開始されたタイミングを示している。
【0031】
制御部10は、加熱制御により、第1領域81Aの温度を第1温度範囲W1に制御する。第1温度範囲W1は、上限温度である第1上限温度SU1と下限温度である第1目標温度TP1とに挟まれた温度範囲として定められている。本実施形態では、第1上限温度SU1は、第1目標温度TP1に所定の温度幅を加えた温度である。制御部10は、加熱制御により、第2領域81B,81Cの温度を第2温度範囲W2に制御する。第2温度範囲W2は、上限温度である第2上限温度SU2と、下限温度である第2目標温度TP2とに挟まれる温度範囲である。本実施形態では、第2上限温度SU2は、第2目標温度TP2に所定の温度幅を加えた温度であり、第1目標温度TP1よりも低い値に定められている。
【0032】
本実施形態では、第1温度範囲W1は、第1定着温度よりも低い温度範囲であり、第2温度範囲W2は、第2定着温度よりも低い温度範囲である。第1オーバーシュート温度SE1は、第1上限温度SU1よりも高い温度である。この第1オーバーシュート温度SE1となるまで第1領域81Aの温度を上昇させると、第1領域81Aの温度変動が過大となる温度である。第2オーバーシュート温度SE2は、この第2オーバーシュート温度SE2となるまで第2領域81B,81Cの温度を上昇させると、第2領域81B,81Cの温度変動が過大となる温度である。なお、第2オーバーシュート温度SE2は、第2上限温度SU2よりも高く、かつ第1目標温度TP1よりも低い温度に定められている。第2アンダーシュート温度SX2は、第2目標温度TP2よりも低い温度である。第1アンダーシュート温度SX1は、第1目標温度TP1よりも低い温度である。本実施形態では、第1アンダーシュート温度SX1は、第2オーバーシュート温度SE2よりも高い温度に定められている。なお、第1アンダーシュート温度SX1は、第2オーバーシュート温度SE2よりも低い温度として定められていてもよい。
【0033】
次に、図5を用いて加熱制御の手順を説明する。図5に示す処理は、プリンタ1が待機モードである場合に、制御部10により実施される処理である。
【0034】
ステップS11では、第1検出温度T1が第1目標温度TP1を下回ったか否か、又は第2検出温度T2が第2目標温度TP2を下回ったか否かを判断する。第1検出温度T1が第1目標温度TP1を下回っていると判断した場合、又は第2検出温度T2が第2目標温度TP2を下回っていると判断した場合、ステップS12に進む。なお、ステップS11を否定判定した場合は、待機する。
【0035】
ステップS12において、第1検出温度T1が第1目標温度TP1を下回っている場合、ステップS13に進み、第2検出温度T2が第2上限温度SU2以下であるか否かを判断する。ステップS13において、第2検出温度T2が第2上限温度SU2以下である場合、ステップS14に進み、第1ヒータ83に対する第1通電処理と、第2ヒータ84に対する第2通電処理とを行う。
【0036】
図6は、ステップS14で行う処理を詳細に示すフローチャートである。ステップS21では、第1ヒータ83に対する第1通電処理を行う。これは、消費電力が少ない第1ヒータ83からの出力により第2ヒータ84を加熱することにより、第2ヒータ84のインピーダンスを上昇させて、第2ヒータ84の通電開始時における突入電流を抑制するためである。
【0037】
ここで、第1通電処理を行うとき、第1通電回路14を位相制御によって通電するよう制御してもよい。具体的には、位相制御により第1通電回路14のトライアックを50%未満のデューティ比でオンオフ操作させるように、ヒータコントローラ13に第1通電回路14への第1駆動信号を出力させる。より詳細には、トライアックの点弧角を90°及び270°より大きくすることにより、交流電圧のピークタイミングではトライアックをオン操作しないようにさせる。なお、第1ヒータ83の通電開始から所定時間が経過した場合は、交流電圧の半波単位で通電を制御する端数制御や、デューティ比を100%付近でオン操作するようにしてもよい。
【0038】
ステップS22では、第1検出温度T1が第1上限温度SU1を上回っているか否かを判断する。第1検出温度T1が第1上限温度SU1以下である場合、ステップS21に戻り、第1ヒータ83に対する第1通電処理を継続する。一方、ステップS22を肯定判定すると、ステップS23に進み、第1ヒータ83に対する第1通電処理を停止する。
【0039】
ステップS24では、第2ヒータ84に対する第2通電処理を行う。具体的には、第1通電処理を停止したタイミングで第2通電処理を開始する。図4で示すグラフでは、第1検出温度T1が第1上限温度SU1を上回った時刻PCにおいて、第1通電処理が停止されるとともに、第2通電処理が開始されており、時刻PC以後、第2検出温度T2が上昇している。これにより、第1通電処理と第2通電処理とを連続させることができる。即ち、第1ヒータ83への通電と、第2ヒータ84への通電が連続するため、第2ヒータ84に通電を開始するときの突入電流の発生を抑制し、電圧降下の発生頻度が抑制される。
【0040】
ステップS25では、第2検出温度T2が第2上限温度を上回っているか否かを判断する。第2検出温度T2が第2上限温度SU2以下である場合、ステップS24に戻り、第2ヒータ84に対する第2通電処理を継続する。ステップS25において、第2検出温度T2が第2上限温度SU2を上回っている場合、ステップS26に進み、ヒータコントローラ13による第2通電処理を停止する。
【0041】
図5に戻り、ステップS13において、第2検出温度T2が第2上限温度SU2を上回っている場合、ステップS15に進み、第1ヒータ83に対する第1通電処理のみを行う。第2領域81B,81Cの温度が第2上限温度SU2を上回っている状態で、第2通電処理を行うと第2領域81B,81Cの温度が高くなり過ぎることが懸念される。そのため、第2通電処理を行わないことにより、第2領域81B,81Cの温度が上昇し過ぎるのを防止するためである。
【0042】
図7は、ステップS15で行う処理を詳細に示すフローチャートである。ステップS31では、第1ヒータ83に対する第1通電処理を行う。ステップS32では、第1検出温度T1が第1上限温度SU1を上回っているか否かを判断する。第1検出温度T1が第1上限温度SU1以下である場合、ステップS31に戻り、第1通電処理を継続する。即ち、第1領域81Aの温度を第1上限温度SU1まで上昇させる。一方、第1検出温度T1が第1上限温度SU1を上回っていれば、ステップS33に進み、ヒータコントローラ13に第1ヒータ83に対する第1通電処理を停止させる。
【0043】
図5に戻り、ステップS19では、プリンタ1の待機モードを継続しているか否かを判断する。待機モードを継続している場合、ステップS11に戻る。
【0044】
ステップS12において第1検出温度T1が第1目標温度TP1を下回っていない場合、即ち第2検出温度T2が第2目標温度TP2を下回っている場合、ステップS16に進む。ステップS16では、第1検出温度T1が第1上限温度SU1以下であるか否かを判断する。ステップS16において、第1検出温度T1が第1上限温度SU1以下である場合、ステップS17に進み、第1通電処理と第2通電処理とをこの順序で行う。ステップS17での詳細な処理は、ステップS14での処理と同じであるため説明を省略する。
【0045】
ステップS16において、第1検出温度T1が第1上限温度SU1を上回っている場合、ステップS18に進み、第2通電処理のみを行う。第1領域81Aの温度が第1上限温度SU1を上回っている状態で、第1通電処理を行うと、第1領域81Aの温度が高くなり過ぎることが懸念される。そのため、第1通電処理を行わないことにより、第1領域81Aの温度が高くなり過ぎるのを防止するためである。
【0046】
ステップS18での詳細な処理を、図7を流用して説明する。まず、第2ヒータ84に対する第2通電処理を行う(図7のステップS31)。第2検出温度T2が第2上限温度SU2を上回っているか否かを判断し、第2検出温度T2が第2上限温度SU2以下である場合(図7のステップS32でNO)、第2通電処理を継続する。一方、第2検出温度T2が第2上限温度SU2を上回っている場合(図7のステップS32でYES)、ヒータコントローラ13による第2通電処理を停止する(図7のステップS33)。
【0047】
図5に戻り、ステップS19において、プリンタ1の待機モードを終了する場合、図5の処理を一旦終了する。
【0048】
以上説明した本実施形態では、以下の効果を奏することができる。制御部10は、第1領域81Aの温度及び第2領域81B,81Cの温度に基づいて、第1ヒータ83及び第2ヒータ84を通電することにより第1領域81Aの温度を所定の第1温度範囲W1にするとともに第2領域81B,81Cの温度を所定の第2温度範囲W2にする加熱制御を行う。制御部10は、加熱制御において、第1領域81Aの温度が第1温度範囲W1の下限値を下回っておりかつ第2領域81B,81Cの温度が第2温度範囲W2内である場合、又は第2領域81B,81Cの温度が第2温度範囲の下限値を下回っておりかつ第1領域81Aの温度が第1温度範囲内である場合に、第1ヒータ83を通電する第1通電処理を行う。制御部10は、第1通電処理の終了したタイミングで第2ヒータ84を通電する第2通電処理を行う。これにより、第1,第2ヒータ83,84の通電を各検出温度T1,T2により別々に制御する場合と比較して、第1ヒータ83への通電と、第2ヒータ84への通電が連続することで、第2ヒータ84に通電を開始するときの突入電流の発生を抑制でき、ひいては電圧降下の発生頻度を抑制することができる。即ち、第1,第2ヒータ83,84に対する見かけ上の通電頻度の増加を抑制することにより、電圧降下の発生頻度を抑制することができる。
【0049】
制御部10は、第1検出温度T1が第1温度範囲W1を下回っており、かつ第2検出温度T2が第2温度範囲W2を上回っている場合は、第1ヒータ83を通電する第1通電処理のみを行う。また、制御部10は、第2検出温度T2が第2温度範囲W2を下回っており、かつ第1検出温度T1が第1温度範囲W1を上回っている場合は、第2ヒータ84を通電する第2通電処理のみを行う。これにより、第1領域81A及び第2領域81B,81Cの温度が上昇し過ぎるのを抑制することができる。
【0050】
制御部10は、第1通電処理において消費電力が小さい第1ヒータ83からの熱により第2ヒータ84の温度を高くすることにより、第2ヒータ84の内部抵抗を上げた後に、消費電力が第1ヒータ83よりも大きい第2ヒータ84の通電を開始する。これにより、第2ヒータの通電に伴う電圧降下の発生頻度をいっそう抑制することができる。
【0051】
制御部10は、第1通電処理において、第1ヒータ83に流れる電流を通電率が50%未満の条件で位相制御する。これにより第1ヒータ83に流れる電流の上限値を制限することができるため、第1ヒータ83の通電開始に伴う電圧降下の発生頻度を抑制することができる。
【0052】
プリンタ1は、シートSを、加熱部81に向けて所定の搬送方向Xで搬送するシート供給部3を備えている。加熱部81における第1領域81Aは、加熱部81の外周面において、搬送方向Xに対して交差する方向である幅方向Yの中央部であり、第2領域81B,81Cは、加熱部81の表面のうち、第1領域81Aに対して幅方向Yの端部に位置する領域である。これにより、シートSの幅に応じて、複数のヒータを配置した構成であっても、通電頻度を低減することができ、ひいては通電に伴う電圧降下の発生頻度を抑制することができる。
【0053】
第1,第2ヒータ83,84の温度が低いほど、第1,第2ヒータ83,84のインピーダンスが小さくなることに起因して、第1,第2ヒータ83,84の通電開始時において電圧降下が発生し易くなることが懸念される。本実施形態では、制御部10は、シートSにトナーを定着させる定着処理を行う場合に、第1領域81Aを第1定着温度に制御し、第2領域81Bを第2定着温度に制御する。第1温度範囲W1は、第1定着温度よりも低い温度範囲であり、第2温度範囲W2は、第2定着温度よりも低い温度範囲である。これにより、プリンタ1の待機モードといった断続的な通電が必要となる場面において、電圧降下の発生頻度を抑制することができる。
【0054】
第1温度検出部87の応答速度は、第2温度検出部88の応答速度よりも速い。これにより、応答速度の速い第1温度検出部87に対応した第1ヒータ83を第2ヒータ84よりも優先して通電することができるため、温度の上昇を早め、電圧降下の発生頻度をいっそう抑制することができる。
【0055】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態と異なる構成を主に説明する。第1実施形態と第2実施形態とで同一の符号を付したものは同一のものを意味し、その説明は繰り返さない。
【0056】
本実施形態では、第2通電処理における第2ヒータ84の通電期間を、時間により判断する時間判断処理を行う。図8は、本実施形態において、図5のステップS14で実施される詳細な処理を示すフローチャートである。
【0057】
ステップS21で、第1ヒータ83に対する第1通電処理を開始した後、ステップS22で、第1検出温度T1が第1上限温度SU1を上回っている場合、ステップS23で、第1ヒータ83に対する第1通電処理を停止する。
【0058】
ステップS24では、第2ヒータ84に対する第2通電処理を行う。ステップS41で、第2通電処理によるによる第2ヒータ84の通電期間Hが通電期間判定値SH以上であるか否かを判断する。通電期間判定値SHは、第2ヒータ84への通電を開始してからの時間の長さを判定するための値である。
【0059】
ステップS41において、通電期間Hが通電期間判定値SHよりも短い場合、ステップS24に戻り、第2通電処理を継続する。一方、通電期間Hが通電期間判定値SH以上である場合、ステップS42に進む。ステップS42では、第2通電処理を停止する。
【0060】
ステップS43は、第2温度検出部88により検出された現在の第2検出温度T2を用いて、通電期間判定値SHを設定する。現在の第2検出温度T2が第2上限温度SU2を大きく上回っている場合、第2通電処理による第2ヒータ84の通電期間が長すぎると言える。一方で、現在の第2検出温度T2が第2上限温度SU2を大きく下回っている場合、第2通電処理による第2ヒータ84の通電期間が短すぎると言える。そこで、本実施形態では、現在の第2検出温度T2が第2上限温度SU2を大きく上回っている場合は、ステップS41の判断に用いた通電期間判定値SHを減少側に変更し、現在の第2検出温度T2が第2上限温度SU2を大きく下回っている場合は、通電期間判定値SHを増加側に変更する。
【0061】
例えば、制御部10は、第2検出温度T2と第2上限温度SU2との温度差ΔT2と、通電期間判定値SHを減少側又は増加側に変更する補正値との対応関係を記録する期間補正値テーブルを記憶している。制御部10は、ステップS43において、温度差ΔT2に対応する補正値を期間補正値テーブルから読み出し、読み出した補正値を用いて通電期間判定値SHを変更すればよい。
【0062】
その後、次回のステップS41の処理において、ステップS43で変更された通電期間判定値SHを用いて、第2ヒータ84の通電期間が判断される。
【0063】
以上説明した本実施形態では、以下の効果を奏することができる。制御部10は、第2通電処理において、第2ヒータ84を所定の通電期間Hだけ通電した後に、第2ヒータ84の通電を停止する。制御部10は、前回の第2通電処理の実施後に検出された第2検出温度T2に基づいて、今回の第2通電処理における通電期間を変更する。これにより、第2通電処理における通電期間Hを過不足のない適正な値にすることができる。
【0064】
(第3実施形態)
第3実施形態では、第1実施形態と異なる構成を主に説明する。第1実施形態と第3実施形態とで同一の符号を付したものは同一のものを意味し、その説明は繰り返さない。
【0065】
本実施形態では、第2通電処理における第2ヒータ84の通電期間を、温度により判断する温度判断処理と、時間により判断するする時間判断処理とを切り替える。第2ヒータ84の加熱に伴う第2領域81B,81Cの温度の上昇速度が速いと、第2検出温度T2が上昇しつづける場合がある。そこで、本実施形態では、このような場合にも対応できるように、第2ヒータ84の通電を温度判断処理から時間判断処理に変更している。
【0066】
図9を用いて、本実施形態に係る加熱制御の手順を説明する。図9に示す処理は、プリンタ1が待機モードである場合に、制御部10により実施される処理である。
【0067】
ステップS13において、第2検出温度T2が第2上限温度SU2以下である場合、ステップS50に進む。ステップS50では、現在、第2ヒータ84の通電期間を温度判断処理により判断しているか否かを判断する。本実施形態では、例えば、プリンタ1の電源投入時は、第2ヒータ84の通電期間の制御として温度判断処理が選択されている。ステップS50を肯定判定すると、ステップS51に進む。
【0068】
図10は、ステップS51の詳細な処理を説明するフローチャートである。なお、図10に示す各ステップにおいて、図6で示すステップと同じ処理については、同様のステップ番号を付している。即ち、本実施形態においても、ステップS21,S22,S23において、第1ヒータ83に対する第1通電処理が行われる。その後のステップS24,S25,S26において、第2ヒータ84に対する第2通電処理が行われる。具体的には、ステップS25で、温度判断処理として、第2検出温度T2が第2上限温度SU2を上回るまで、ステップS24での第2通電回路15による第2ヒータ84に対する通電が継続される。
【0069】
ステップS26で第2ヒータ84の通電を停止した後、ステップS60で、第2温度検出部88により検出された現在の第2検出温度T2が第2オーバーシュート温度SE2を下回っているか否かを判断する。図4で示したように、第2オーバーシュート温度SE2は、第2上限温度SU2よりも高い温度である。
【0070】
ステップS60で、現在の第2検出温度T2が第2オーバーシュート温度SE2を下回っている場合、図9に戻り、ステップS19に進む。一方、現在の第2検出温度T2が第2オーバーシュート温度SE2以上である場合、ステップS61に進み、第2ヒータ84の通電期間の判断を時間判断処理に変更する。そして、図9に戻り、ステップS19に進む。
【0071】
図9のステップS50において、第2ヒータ84の通電期間の判断を時間判断処理に変更している場合、ステップS52に進む。図11は、ステップS52の詳細な処理を説明するフローチャートである。ステップS52においても、ステップS21,S22,S23において、第1ヒータ83に対する第1通電処理が行われる。
【0072】
ステップS23で、第1通電処理を停止すると、ステップS70に進む。ステップS70では、前回の第2通電処理の実行後に検出された第2検出温度T2が、第2アンダーシュート温度SX2を上回っているか否かを判断する。本実施形態では、後述するステップS78で設定されるフラグの値に応じて、前回の第2通電処理の実行後に検出された第2検出温度T2が、第2アンダーシュート温度SX2を上回っているか否かを判断する。なお、未だ、第2通電処理の実行後の第2検出温度T2を検出していない場合、又は第2通電処理の実行後に検出された第2検出温度T2が第2アンダーシュート温度SX2を上回っている場合、ステップS70を肯定判定して、ステップS24に進む。
【0073】
ステップS24で、第2ヒータ84の通電を開始した後、ステップS71で、通電期間Hが通電期間判定値SH以上であるか否かを判定する。即ち、第2通電処理において、まずは第2ヒータ84の通電期間を時間判断処理により判断する。通電期間Hが通電期間判定値SHよりも短い場合、ステップS24に戻り、第2通電処理を継続する。通電期間Hが通電期間判定値SH以上である場合、ステップS72に進む。ステップS72では、第2ヒータ84に対する第2通電処理を停止する。
【0074】
ステップS73では、第2温度検出部88により検出された現在の第2検出温度T2が第2目標温度TP2以上であるか否かを判断する。第2検出温度T2が第2目標温度TP2を下回っている場合、ステップS74に進み、通電期間判定値SHを増加側に変更する。ステップS77に進み、第2通電処理の実施後における第2検出温度T2、即ち現在の第2検出温度T2が第2アンダーシュート温度SX2を下回っているか否かを判断する。現在の第2検出温度T2が第2アンダーシュート温度SX2以上であり、ステップS77を否定判定すると、図11の処理を一旦終了し、ステップS19に進む(図9)。一方、現在の第2検出温度T2が第2アンダーシュート温度SX2を下回っており、ステップS77を肯定判定すると、ステップS78に進む。ステップS78では、判定フラグを、第2通電処理の実行後における第2検出温度T2が第2アンダーシュート温度SX2を下回ったことを示す値に変更する。判定フラグは、ステップS70での判定に用いられる。そして、図11の処理を一旦終了し、図9のステップS19に進む。
【0075】
ステップS73に戻り、第2検出温度T2が第2目標温度TP2以上であると判定すると、ステップS75に進み、現在の第2検出温度T2が第2オーバーシュート温度SE2を下回っているか否かを判断する。現在の第2検出温度T2が第2オーバーシュート温度SE2以上であると判断する場合、ステップS76に進み、通電期間判定値SHを減少側に変更する。
【0076】
次回の処理において、ステップS70に進み、判定フラグの値により、前回の第2通電処理の実行後における第2検出温度T2が第2アンダーシュート温度SX2を下回っていることを判断すると、ステップS79に進む。ステップS79では、第2通電処理を開始する。ステップS80では、第2検出温度T2が第2上限温度SU2を上回ったか否かを判断する。即ち、前回の第2通電処理の実行後における第2検出温度T2が第2アンダーシュート温度SX2を下回っている場合、第2通電処理における通電期間の終了判断が時間判断処理から温度判断処理に変更される。これにより、第2検出温度T2が第2上限温度SU2を上回ったことを条件に、第2ヒータ84に対する第2通電処理が停止される。ステップS80を否定判定する場合、ステップS79に戻り、第2通電処理を継続する。一方、ステップS80を肯定判定すると、ステップS81に進み、第2通電処理を停止する。
【0077】
ステップS82では、通電期間判定値SHを増加側に変更する。これは、第2通電処理の実行後における第2検出温度T2が第2アンダーシュート温度を下回っているため、第2通電処理の通電時間を長くする必要があるためである。ステップS82の処理を終了すると、図11の処理を一旦終了し、図9のステップS19に進む。
【0078】
図9のステップS12において、第1検出温度T2が第1目標温度TP1を下回っていない場合、即ち第2検出温度T2が第2目標温度TP2を下回っている場合、ステップS16に進み、第1検出温度T1が第1上限温度SU1以下であるか否かを判断する。ステップS16を肯定判定し、ステップS53に進む場合、第2ヒータ84の通電期間を温度判断処理により判断しているか否かを判断する。
【0079】
ステップS53を肯定判定すると、ステップS54において、温度判断処理を用いて、第1ヒータ83に対する第1通電処理と、第2ヒータ84に対する第2通電処理とを行う。ステップS54で行う処理は、図10で詳細に示した処理と同様の処理である。即ち、温度判断処理により第2ヒータ84の通電期間が判断される。
【0080】
一方、ステップS53を否定判定すると、ステップS55において、時間判断処理を用いて、第1ヒータ83に対する第1通電処理と、第2ヒータ84に対する第2通電処理とを行う。ステップS55で行う処理は、図11で詳細に示した処理と同様の処理である。即ち、時間判断処理により第2ヒータ84の通電期間が判断される。
【0081】
以上説明した本実施形態では以下の効果を奏することができる。制御部10は、前回の第2通電処理の実施後に検出された第2検出温度T2が、第2上限温度SU2よりも高い温度である第2オーバーシュート温度SE2を上回った場合に、次回の第2通電処理において第2ヒータ84の通電期間を時間により判断する。これにより、例えば、第2領域81B,81Cの温度が高い温度まで上昇し続けることを抑制することができる。
【0082】
制御部10は、前回の第2通電処理の実施後に検出された第2検出温度T2が、第2アンダーシュート温度SX2を下回った場合に、今回の第2通電処理において第2検出温度T2が第2上限温度SU2を上回ったことを条件に、第2ヒータ84に対する第2通電処理を停止する。これにより、第2通電処理における通電期間の終了判断が時間判断処理により行われている場面において、第2ヒータ84に加えられる熱量が不足する場合、通電期間の終了判定が温度判断処理に変更される。これにより、第2ヒータ84を過不足なく目標温度まで上昇させることができる。
【0083】
(その他の実施形態)
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
上述した各実施形態では、第1検出温度T1が第1目標温度TP1を下回った場合、又は第2検出温度T2が第2目標温度TP2を下回った場合のいずれかの場合に第1通電処理と、第2通電処理とを実行した。これに代えて、第1検出温度T1が第1目標温度TP1を下回った場合にのみ、第1ヒータ83に対する第1通電処理と、第2ヒータ84に対する第2通電処理とを行ってもよい。
【0084】
第2目標温度TP2は、第1目標温度TP1よりも高い値であってもよい。また、第2温度範囲W2は第1温度範囲W1よりも高い温度範囲であってもよい。
【0085】
制御部10は、第1,第2通電処理として、位相制御以外の制御により第1,第2ヒータ83,84の通電を制御してもよい。また、制御部10は、フィードバック制御により第1,第2ヒータ83,84の通電を制御することに代えて、オープン制御により第1,第2ヒータ83,84の通電を制御してもよい。第1,第2通電処理は、制御部10により行われればよく、ヒータコントローラ13以外にも、ASIC11の外部のチップにより行われるものであってもよく、CPU12により行われるものであってもよい。
【0086】
第1温度検出部87は、加熱部81と非接触となる温度センサを有する構成としたが、本発明はこれに限定されず、第1温度検出部87は、加熱部81に接触する温度センサを用いてもよい。また、第2温度検出部88が有する温度センサを、加熱部81に非接触としてもよい。
【0087】
プリンタ1は、レーザプリンタに限定されず、複写機や複合機であってもよい。
【0088】
前記した実施形態で説明した各要素を、任意に組み合わせて行いてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1…プリンタ、8…定着部、10…制御部、81…加熱部、83…第1ヒータ、84…第2ヒータ、81A…第1領域、81B,81C…第2領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11