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特許7528574位置検出システム、位置検出装置及び位置検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】位置検出システム、位置検出装置及び位置検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/02 20100101AFI20240730BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020115425
(22)【出願日】2020-07-03
(65)【公開番号】P2022013097
(43)【公開日】2022-01-18
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【弁理士】
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】中澤 美樹
(72)【発明者】
【氏名】寺山 直人
(72)【発明者】
【氏名】宮川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】神谷 洋一
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-200112(JP,A)
【文献】特開2006-127355(JP,A)
【文献】特開2001-356160(JP,A)
【文献】特開平10-221426(JP,A)
【文献】特開2011-185646(JP,A)
【文献】特開2007-300572(JP,A)
【文献】特開2002-345011(JP,A)
【文献】特開平11-113047(JP,A)
【文献】特開2006-258468(JP,A)
【文献】特表2002-517050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/68
G01S 5/00-5/14
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のエリア内を移動する移動体に取り付けられ、前記移動体の周囲に電波を送出するICタグと、
前記エリア内においてそれぞれ異なる位置に配置され、前記電波を受信可能な複数のアンテナ装置と、
前記複数のアンテナ装置のうちのいずれか1つのアンテナ装置が前記電波を受信した場合に当該1つのアンテナ装置の位置に基づいて前記移動体の位置を検出する位置検出装置と、
を備え
前記位置検出装置は、前記複数のアンテナ装置のそれぞれによる前記電波の受信感度を同期させて互いに同じ感度で段階的に変化させることにより、いずれかの受信感度において、前記複数のアンテナ装置のうちのいずれか1つのアンテナ装置に前記電波を受信させる制御を行い、
前記複数のアンテナ装置の前記受信感度を段階的に変化させたとき、いずれかの受信感度において、前記複数のアンテナ装置のうちのいずれか1つのアンテナ装置が前記電波を受信した状態を検出することができず、前記複数のアンテナ装置のうちの2以上のアンテナ装置が前記電波を同時に受信した状態を検出した場合に、受信感度を変化させる際の段階数を増加させることを特徴とする位置検出システム。
【請求項2】
前記ICタグは、前記電波を送出するときに当該ICタグを識別可能な識別情報を送出し、
前記位置検出装置は、前記識別情報に基づき、1つのICタグから送出された前記電波を1つのアンテナ装置が受信したか否かを判別することを特徴とする請求項に記載の位置検出システム。
【請求項3】
前記位置検出装置は、前記複数のアンテナ装置の前記受信感度を変化させる制御を周期的に繰り返し行い、一周期毎に前記移動体の位置を検出する処理を繰り返し行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の位置検出システム。
【請求項4】
前記位置検出装置は、前記複数のアンテナ装置の前記受信感度を変化させる周期を変更可能であることを特徴とする請求項に記載の位置検出システム。
【請求項5】
前記位置検出装置は、前記移動体の位置を検出する処理を繰り返し行うことにより、前記移動体の移動軌跡を特定することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の位置検出システム。
【請求項6】
前記位置検出装置は、前記複数のアンテナ装置の前記受信感度を変化させるとき、所定の初期感度から最大感度まで前記受信感度を上昇させていくことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の位置検出システム。
【請求項7】
前記位置検出装置は、前記初期感度を変更可能であることを特徴とする請求項に記載の位置検出システム。
【請求項8】
前記位置検出装置は、前記最大感度を変更可能であることを特徴とする請求項又はに記載の位置検出システム。
【請求項9】
前記位置検出装置は、前記複数のアンテナ装置の配置間隔に合わせて予め前記最大感度が設定されることを特徴とする請求項に記載の位置検出システム。
【請求項10】
前記位置検出装置は、前記電波を1つのアンテナ装置が受信したときの前記受信感度に基づいて前記1つのアンテナ装置が前記電波を受信可能な領域を特定し、前記移動体の位置が前記領域内であることを検出することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の位置検出システム。
【請求項11】
前記位置検出装置は、前記電波を1つのアンテナ装置が受信したとき、前記1つのアンテナ装置が前記電波を受信可能な領域のうちから、他のアンテナ装置が前記電波を受信可能な領域を除いた検知領域を特定し、前記移動体の位置が前記検知領域内であることを検出することを特徴とする請求項10に記載の位置検出システム。
【請求項12】
前記位置検出装置は、前記受信感度が第1の感度であるときに前記電波を1つのアンテナ装置が受信した後、前記受信感度が前記第1の感度よりも上昇した第2の感度であるときに前記電波を他のアンテナ装置が受信した場合、前記1つのアンテナ装置が前記第1の感度であるときに特定した前記検知領域と、前記他のアンテナ装置が前記第2の感度であるときに前記電波を受信可能な領域とが重複する重複領域を特定し、前記移動体の位置が前記重複領域内であることを検出することを特徴とする請求項11に記載の位置検出システム。
【請求項13】
前記位置検出装置は、前記受信感度が第1の感度であるときに前記電波を1つのアンテナ装置が受信した後、前記受信感度が前記第1の感度よりも上昇した第2の感度であるときに前記電波を他のアンテナ装置が受信した場合、前記1つのアンテナ装置が前記第1の感度であるときに前記電波を受信可能な領域と、前記他のアンテナ装置が前記第2の感度であるときに前記電波を受信可能な領域とが重複する重複領域を特定し、前記移動体の位置が前記重複領域内であることを検出することを特徴とする請求項10に記載の位置検出システム。
【請求項14】
所定のエリア内を移動する移動体に取り付けられ、前記移動体の周囲に電波を送出するICタグと、
前記エリア内においてそれぞれ異なる位置に配置され、前記電波を受信可能な複数のアンテナ装置と、
を備える位置検出システムにおいて、前記移動体の位置を検出する位置検出装置であって、
前記複数のアンテナ装置のそれぞれによる前記電波の受信感度を同期させて互いに同じ感度で段階的に変化させることにより、いずれかの受信感度において、前記複数のアンテナ装置のうちのいずれか1つのアンテナ装置に前記電波を受信させる制御を行うアンテナ制御手段と、
前記アンテナ制御手段が前記受信感度を段階的に変化させることに伴い、前記複数のアンテナ装置のうちのいずれか1つのアンテナ装置が前記電波を受信した場合当該1つのアンテナ装置の位置に基づいて前記移動体の位置を検出する位置検出手段と、
を備え
前記アンテナ制御手段は、前記複数のアンテナ装置の前記受信感度を段階的に変化させたとき、いずれかの受信感度において、前記複数のアンテナ装置のうちのいずれか1つのアンテナ装置が前記電波を受信した状態を検出することができず、前記複数のアンテナ装置のうちの2以上のアンテナ装置が前記電波を同時に受信した状態を検出した場合に、受信感度を変化させる際の段階数を増加させることを特徴とする位置検出装置。
【請求項15】
所定のエリア内を移動する移動体に取り付けられ、前記移動体の周囲に電波を送出するICタグと、
前記エリア内においてそれぞれ異なる位置に配置され、前記電波を受信可能な複数のアンテナ装置と、
を備える位置検出システムにおいて、前記移動体の位置を検出する位置検出方法であって、
前記複数のアンテナ装置のそれぞれによる前記電波の受信感度を同期させて互いに同じ感度で段階的に変化させることにより、いずれかの受信感度において、前記複数のアンテナ装置のうちのいずれか1つのアンテナ装置に前記電波を受信させる制御を行うアンテナ制御ステップと、
前記アンテナ制御ステップによって前記受信感度を段階的に変化させることに伴い、前記複数のアンテナ装置のうちのいずれか1つのアンテナ装置が前記電波を受信した場合当該1つのアンテナ装置の位置に基づいて前記移動体の位置を検出する位置検出ステップと、
を有し、
前記アンテナ制御ステップは、前記複数のアンテナ装置の前記受信感度を段階的に変化させたとき、いずれかの受信感度において、前記複数のアンテナ装置のうちのいずれか1つのアンテナ装置が前記電波を受信した状態を検出することができず、前記複数のアンテナ装置のうちの2以上のアンテナ装置が前記電波を同時に受信した状態を検出した場合に、受信感度を変化させる際の段階数を増加させることを特徴とする位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のエリア内を移動する移動体の位置を検出する位置検出システム、位置検出装置及び位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RFID(Radio Frequency Identifier)を利用して所定のエリア内を移動する移動体の位置を検出する技術が知られている。RFIDとは、電波による非接触通信を利用して対象物を識別する技術をいう。
【0003】
従来、移動体が移動するエリア内の床面に複数の位置タグを所定間隔で格子状に予め配置しておくと共に、同エリア内の天井の複数箇所にRFIDの質問器(アンテナ装置)を配置しておくことで、エリア内を移動する物品の位置を検出する位置検出システムが提案されている(例えば特許文献1)。この従来技術では、エリア内を移動する物品に物品タグが貼付される。エリア内に配置された複数の質問器は、位置タグ及び物品タグが応答可能な質問波(電波)の出力強度を変動させながら、質問波をエリア内に順次送信していく。各質問器は、質問波を送信することにより、位置タグ又は物品タグから応答情報を受信する。そして移動体の位置検出は、複数の質問波によって重複検知されている位置タグ及び物品タグを特定することにより行われる。すなわち、複数の質問波によって重複検知されている位置タグ及び物品タグが存在すれば、その位置タグの位置情報に基づいて移動体の位置を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-85826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来技術では、移動体が移動するエリア内の床面などに複数の位置タグを格子状に配置しておく必要があり、導入コストが高いという問題がある。
【0006】
また、上記従来技術では、質問波の出力強度を変動させて質問波が届く範囲を逐次変化させることにより、質問波に応答する位置タグや物品タグを変動させるようにしている。しかし、これはパッシブ型RFIDに限られる技術であり、アクティブ型RFIDには適用することができず、汎用性に欠ける。
【0007】
また、上記従来技術は、位置タグや物品タグの送信特性が等しいことが前提である。しかし、位置タグや物品タグなどのICタグは、タグに汚れや水分が付着していたり、近くに金属やその他の遮蔽物が存在していたりすると、電波の送信特性が変化する。そのような状況では、複数の位置タグや物品タグの送信特性が互いに異なるため、上述した従来のシステムでは、正確な位置検出を行うことができないという問題もある。
【0008】
そこで本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、導入コストを抑え、汎用性の高い位置検出を可能にすると共に、タグから出力される電波強度に差がある場合であっても正確に移動体の位置を検出できるようにした位置検出システム、位置検出装置及び位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、位置検出システムであって、所定のエリア内を移動する移動体に取り付けられ、前記移動体の周囲に電波を送出するICタグと、前記エリア内においてそれぞれ異なる位置に配置され、前記電波を受信可能な複数のアンテナ装置と、前記複数のアンテナ装置のうちのいずれか1つのアンテナ装置が前記電波を受信した場合に当該1つのアンテナ装置の位置に基づいて前記移動体の位置を検出する位置検出装置と、を備え、前記位置検出装置は、前記複数のアンテナ装置のそれぞれによる前記電波の受信感度を同期させて互いに同じ感度で段階的に変化させることにより、いずれかの受信感度において、前記複数のアンテナ装置のうちのいずれか1つのアンテナ装置に前記電波を受信させる制御を行い、前記複数のアンテナ装置の前記受信感度を段階的に変化させたとき、いずれかの受信感度において、前記複数のアンテナ装置のうちのいずれか1つのアンテナ装置が前記電波を受信した状態を検出することができず、前記複数のアンテナ装置のうちの2以上のアンテナ装置が前記電波を同時に受信した状態を検出した場合に、受信感度を変化させる際の段階数を増加させることを特徴とする構成である。
【0012】
請求項に係る発明は、請求項の位置検出システムにおいて、前記ICタグは、前記電波を送出するときに当該ICタグを識別可能な識別情報を送出し、前記位置検出装置は、前記識別情報に基づき、1つのICタグから送出された前記電波を1つのアンテナ装置が受信したか否かを判別することを特徴とする構成である。
【0013】
請求項に係る発明は、請求項1又は2の位置検出システムにおいて、前記位置検出装置は、前記複数のアンテナ装置の前記受信感度を変化させる制御を周期的に繰り返し行い、一周期毎に前記移動体の位置を検出する処理を繰り返し行うことを特徴とする構成である。
【0014】
請求項に係る発明は、請求項の位置検出システムにおいて、前記位置検出装置は、前記複数のアンテナ装置の前記受信感度を変化させる周期を変更可能であることを特徴とする構成である。
【0015】
請求項に係る発明は、請求項1乃至のいずれかの位置検出システムにおいて、前記位置検出装置は、前記移動体の位置を検出する処理を繰り返し行うことにより、前記移動体の移動軌跡を特定することを特徴とする構成である。
【0016】
請求項に係る発明は、請求項1乃至のいずれかの位置検出システムにおいて、前記位置検出装置は、前記複数のアンテナ装置の前記受信感度を変化させるとき、所定の初期感度から最大感度まで前記受信感度を上昇させていくことを特徴とする構成である。
【0017】
請求項に係る発明は、請求項の位置検出システムにおいて、前記位置検出装置は、前記初期感度を変更可能であることを特徴とする構成である。
【0018】
請求項に係る発明は、請求項又はの位置検出システムにおいて、前記位置検出装置は、前記最大感度を変更可能であることを特徴とする構成である。
【0019】
請求項に係る発明は、請求項の位置検出システムにおいて、前記位置検出装置は、前記複数のアンテナ装置の配置間隔に合わせて予め前記最大感度が設定されることを特徴とする構成である。
【0023】
請求項10に係る発明は、請求項1乃至のいずれかの位置検出システムにおいて、前記位置検出装置は、前記電波を1つのアンテナ装置が受信したときの前記受信感度に基づいて前記1つのアンテナ装置が前記電波を受信可能な領域を特定し、前記移動体の位置が前記領域内であることを検出することを特徴とする構成である。
【0024】
請求項11に係る発明は、請求項10の位置検出システムにおいて、前記位置検出装置は、前記電波を1つのアンテナ装置が受信したとき、前記1つのアンテナ装置が前記電波を受信可能な領域のうちから、他のアンテナ装置が前記電波を受信可能な領域を除いた検知領域を特定し、前記移動体の位置が前記検知領域内であることを検出することを特徴とする構成である。
【0025】
請求項12に係る発明は、請求項11の位置検出システムにおいて、前記位置検出装置は、前記受信感度が第1の感度であるときに前記電波を1つのアンテナ装置が受信した後、前記受信感度が前記第1の感度よりも上昇した第2の感度であるときに前記電波を他のアンテナ装置が受信した場合、前記1つのアンテナ装置が前記第1の感度であるときに特定した前記検知領域と、前記他のアンテナ装置が前記第2の感度であるときに前記電波を受信可能な領域とが重複する重複領域を特定し、前記移動体の位置が前記重複領域内であることを検出することを特徴とする構成である。
【0026】
請求項13に係る発明は、請求項10の位置検出システムにおいて、前記位置検出装置は、前記受信感度が第1の感度であるときに前記電波を1つのアンテナ装置が受信した後、前記受信感度が前記第1の感度よりも上昇した第2の感度であるときに前記電波を他のアンテナ装置が受信した場合、前記1つのアンテナ装置が前記第1の感度であるときに前記電波を受信可能な領域と、前記他のアンテナ装置が前記第2の感度であるときに前記電波を受信可能な領域とが重複する重複領域を特定し、前記移動体の位置が前記重複領域内であることを検出することを特徴とする構成である。
【0027】
請求項14に係る発明は、所定のエリア内を移動する移動体に取り付けられ、前記移動体の周囲に電波を送出するICタグと、前記エリア内においてそれぞれ異なる位置に配置され、前記電波を受信可能な複数のアンテナ装置と、を備える位置検出システムにおいて、前記移動体の位置を検出する位置検出装置であって、前記複数のアンテナ装置のそれぞれによる前記電波の受信感度を同期させて互いに同じ感度で段階的に変化させることにより、いずれかの受信感度において、前記複数のアンテナ装置のうちのいずれか1つのアンテナ装置に前記電波を受信させる制御を行うアンテナ制御手段と、前記アンテナ制御手段が前記受信感度を段階的に変化させることに伴い、前記複数のアンテナ装置のうちのいずれか1つのアンテナ装置が前記電波を受信した場合当該1つのアンテナ装置の位置に基づいて前記移動体の位置を検出する位置検出手段と、を備え、前記アンテナ制御手段は、前記複数のアンテナ装置の前記受信感度を段階的に変化させたとき、いずれかの受信感度において、前記複数のアンテナ装置のうちのいずれか1つのアンテナ装置が前記電波を受信した状態を検出することができず、前記複数のアンテナ装置のうちの2以上のアンテナ装置が前記電波を同時に受信した状態を検出した場合に、受信感度を変化させる際の段階数を増加させることを特徴とする構成である。
【0028】
請求項15に係る発明は、所定のエリア内を移動する移動体に取り付けられ、前記移動体の周囲に電波を送出するICタグと、前記エリア内においてそれぞれ異なる位置に配置され、前記電波を受信可能な複数のアンテナ装置と、を備える位置検出システムにおいて、前記移動体の位置を検出する位置検出方法であって、前記複数のアンテナ装置のそれぞれによる前記電波の受信感度を同期させて互いに同じ感度で段階的に変化させることにより、いずれかの受信感度において、前記複数のアンテナ装置のうちのいずれか1つのアンテナ装置に前記電波を受信させる制御を行うアンテナ制御ステップと、前記アンテナ制御ステップによって前記受信感度を段階的に変化させることに伴い、前記複数のアンテナ装置のうちのいずれか1つのアンテナ装置が前記電波を受信した場合当該1つのアンテナ装置の位置に基づいて前記移動体の位置を検出する位置検出ステップと、を有し、前記アンテナ制御ステップは、前記複数のアンテナ装置の前記受信感度を段階的に変化させたとき、いずれかの受信感度において、前記複数のアンテナ装置のうちのいずれか1つのアンテナ装置が前記電波を受信した状態を検出することができず、前記複数のアンテナ装置のうちの2以上のアンテナ装置が前記電波を同時に受信した状態を検出した場合に、受信感度を変化させる際の段階数を増加させることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、導入コストを抑え、汎用性の高い位置検出を可能にすると共に、ICタグから出力される電波強度に差がある場合であっても正確に移動体の位置を検出することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】位置検出システムの一構成例を示す図である。
図2】アンテナ装置の構成例を示すブロック図である。
図3】ICタグの構成例を示すブロック図である。
図4】アンテナ装置がICタグを検出する原理を示す図である。
図5】アンテナ装置の受信感度を変化させる例を示す図である。
図6】複数のアンテナ装置の受信感度がレベル1である状態を示す図である。
図7】複数のアンテナ装置の受信感度がレベル2である状態を示す図である。
図8】複数のアンテナ装置の受信感度がレベル3である状態を示す図である。
図9】複数のアンテナ装置の受信感度がレベル4である状態を示す図である。
図10】複数のアンテナ装置の受信感度がレベル5である状態を示す図である。
図11】検出情報の一例を示す図である。
図12】移動体が移動した後の状態を示す図である。
図13】受信感度を変化させる周期を変化させる例を示す図である。
図14】最大感度及びレベル差を変更する例を示す図である。
図15】受信感度の段階数を変更する例を示す図である。
図16】位置検出装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図17】位置検出処理の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。
図18】、移動体の位置を特定する処理の一例を示す図である。
図19】移動体が存在する領域を絞り込む第1の例を示す図である。
図20】移動体が存在する領域を絞り込む第2の例を示す図である。
図21】移動体が存在する領域を絞り込む第3の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に関する好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態において互いに共通する要素には同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態における位置検出システム1の構成例を示す図である。この位置検出システム1は、例えば、RFIDの技術を利用して所定のエリア100内を移動する移動体4の位置を検出するシステムである。本実施形態における移動体4は、エリア100内における位置検出の対象となるものであり、例えば物品などの無生物であっても良いし、人などの生物であっても良い。また、移動体4は、自力ではエリア100内を移動できず、例えば図1に示すように台車などの荷台6に載せられた状態で人力などの他力によってエリア100内を移動するものであっても良い。また、移動体4は、例えばロボットなどのように、エリア100内を自力で移動するものであっても良い。
【0033】
位置検出システム1は、位置検出装置2と、エリア100内においてそれぞれ異なる位置に配置される複数のアンテナ装置3a,3b,3cと、エリア100内を移動する移動体4に取り付けられ、移動体4の周囲の所定範囲内に電波8を送出するIC(Integrated Circuit)タグ5とを備えている。この位置検出システム1は、位置検出装置2がICタグ5の位置を検出することにより、エリア100内における移動体4の位置を特定する。
【0034】
ICタグ5は、エリア100内を移動する移動体4ごとに取り付けられる。例えば、ICタグ5は、移動体4に交換可能に取り付けられるものであっても良いし、移動体4に埋め込まれたものであっても良い。本実施形態におけるICタグ5は、例えばパッシブ型RFIDのICタグであり、アンテナ装置3a,3b,3cから送出される電波7を受信すると、その電波7によって駆動され、移動体4の周囲に対して電波8を送出する。ICタグ5は、電波8を送出するとき、タグに予め記録されている識別情報を重畳させて送出する。識別情報は、ICタグ5の個体を識別するための情報である。例えば、エリア100内を複数のICタグ5が同時に移動する場合、それら複数のICタグ5のそれぞれに記録されている識別情報は互いに異なる情報である。
【0035】
複数のアンテナ装置3a,3b,3cは、位置検出装置2によって制御され、エリア100内を移動するICタグ5と無線による通信を行う。複数のアンテナ装置3a,3b,3cのそれぞれは、エリア100内においてICタグ5を駆動するための電波7を送出する。各アンテナ装置3a,3b,3cが送出する電波7の電波強度は一定である。複数のアンテナ装置3a,3b,3cは、それぞれ異なる位置に設置されているため、各アンテナ装置3a,3b,3cから送出される電波7はエリア100内の異なる領域に送出される。ただし、複数のアンテナ装置3a,3b,3cのそれぞれから送出される電波7が届く範囲は、エリア100内において互いに重複するように予め設定される。そのため、移動体4がエリア100内を移動するとき、ICタグ5は、少なくとも1つのアンテナ装置から送出される電波7を受信する。尚、本実施形態では、エリア100内に3つのアンテナ装置3a,3b,3cが設けられている場合を例示するが、アンテナ装置3a,3b,3cの数は3つに限られるものではない。
【0036】
複数のアンテナ装置3a,3b,3cのうちの少なくとも1つのアンテナ装置から送出される電波7が届く範囲内に移動体4が進入すると、その移動体4に取り付けられたICタグ5が作動する。そしてICタグ5は、周囲に電波8を送出する。各アンテナ装置3a,3b,3cは、ICタグ5から送出される電波8を検知することにより、ICタグ5を検出する。ただし、ICタグ5に汚れや水分が付着していたり、ICタグ5の近くに金属やその他の遮蔽物が存在していたりすると、ICタグ5から送出される電波8の強度が低下する。そのため、各アンテナ装置3a,3b,3cは、電波8の受信感度を変化させることが可能なように構成されており、電波8の受信感度を上げていくことにより、ICタグ5から送出される電波8が微弱な場合であっても、その微弱な電波8を検知することができる。
【0037】
位置検出装置2は、エリア100内に設置される複数のアンテナ装置3a,3b,3cのそれぞれを制御し、エリア100内を移動する移動体4の位置を検出する装置である。すなわち、位置検出装置2は、各アンテナ装置3a,3b,3cにおける電波8の受信状況を判別することにより、ICタグ5(移動体4)の位置を検出する。尚、位置検出装置2が複数のアンテナ装置3a,3b,3cのそれぞれと行う通信は、有線通信であっても良いし、無線通信であっても良い。
【0038】
位置検出装置2は、CPU10と、記憶部11とを備えている。CPU10は、コンピュータプログラムを実行するハードウェアプロセッサである。CPU10は、コンピュータプログラムを実行することにより、アンテナ制御部15及び位置検出部16として機能する。記憶部11は、アンテナ位置情報12、検出情報13及び移動履歴情報14を記憶する不揮発性の記憶デバイスである。アンテナ位置情報12は、エリア100内における複数のアンテナ装置3a,3b,3cの設置位置が予め登録された情報である。検出情報13は、エリア100内において各アンテナ装置3a,3b,3cが行ったICタグ5の検出処理の結果を記録した情報である。移動履歴情報14は、エリア100内における移動体4の位置及び移動軌跡を記録した情報である。
【0039】
アンテナ制御部15は、複数のアンテナ装置3a,3b,3cを制御する。アンテナ制御部15は、各アンテナ装置3a,3b,3cを駆動し、各アンテナ装置3a,3b,3cから一定の電波強度の電波7をエリア100内に定常的に送出させる。また、アンテナ制御部15は、各アンテナ装置3a,3b,3cの受信感度を逐次変化させる。アンテナ制御部15は、各アンテナ装置3a,3b,3cの受信感度を変化させていく過程において、各アンテナ装置3a,3b,3cがICタグ5を検出するための処理を行った検出結果を逐次取得する。
【0040】
位置検出部16は、アンテナ制御部15が各アンテナ装置3a,3b,3cから取得する検出結果に基づき、移動体4の位置を検出する。例えば、アンテナ制御部15が各アンテナ装置3a,3b,3cの受信感度を変化させることに伴い、複数のアンテナ装置3a,3b,3cのうちの1つのアンテナ装置3aがICタグ5からの電波8を受信した場合、位置検出部16は、アンテナ位置情報12を参照し、その1つのアンテナ装置3aの位置を特定し、その特定した位置に基づいて移動体4の現在位置を検出する。また、位置検出部16は、移動体4の位置検出処理を繰り返し行うことにより、エリア100内における移動体4の移動軌跡を特定することも可能である。
【0041】
尚、エリア100内には、複数の移動体4が同時に移動していることもある。その場合、位置検出部16は、各アンテナ装置3a,3b,3cがICタグ5から受信する識別情報に基づいて個体を識別することにより、ICタグ5ごとの位置検出を行うことが可能である。
【0042】
図2は、アンテナ装置3a,3b,3cの構成例を示すブロック図である。アンテナ装置3a,3b,3cは、アンテナ20と、電波送出部21と、電波受信部22と、通信部23と、感度設定部24とを備えている。アンテナ20は、エリア100に対して電波7を送出したり、エリア100内においてICタグ5から送出される電波8を受信したりするためのアンテナである。電波送出部21は、アンテナ20を介して、ICタグ5を駆動するための所定周波数の電波7を送出する。電波受信部22は、アンテナ20を介して、ICタグ5から送出される電波8を受信する。通信部23は、位置検出装置2と通信を行うためのものである。感度設定部24は、電波受信部22がICタグ5から送出された電波8を受信するときの受信感度の設定及び設定変更を行う。
【0043】
電波受信部22は、図2に示すように、周波数フィルタ25と、増幅回路26と、復調回路27と、出力回路28とを有している。
【0044】
周波数フィルタ25は、アンテナ20が受信した信号から電波7と同じ周波成分の信号を抽出して出力するフィルタであり、例えばバンドパスフィルタによって構成される。増幅回路26は、周波数フィルタ25から出力される信号を増幅する回路である。増幅回路26における増幅率は、感度設定部24によって設定又は設定変更される。増幅回路26における増幅率が変更されることにより、電波8の受信感度が変わる。復調回路27は、増幅回路26から出力される信号を復調し、出力回路28へ出力する。出力回路28は、復調回路27で復調された信号をデジタル信号に変換し、通信部23を介して位置検出装置2へ出力する。尚、電波受信部22によってICタグ5から送出された電波8が検知された場合、出力回路28から出力される信号には、ICタグ5の識別情報が含まれる。
【0045】
感度設定部24は、位置検出装置2から感度変更命令を受信した場合に、増幅回路26の増幅率を感度変更命令に基づいて変化させることにより、ICタグ5から送出される電波8の受信感度を変化させる。例えば、増幅回路26の増幅率が第1の増幅率であるときに、ICタグ5から送出される微弱な電波8を検出することができなかったとしても、感度設定部24が増幅回路26の増幅率を第1の増幅率よりも高い第2の増幅率に変更することで微弱な電波8を検出可能となることがある。
【0046】
このように各アンテナ装置3a,3b,3cは、位置検出装置2からの命令に基づいて、ICタグ5から送出される電波8を受信するときの受信感度を変化させるように構成されている。
【0047】
次に、図3は、ICタグ5の構成例を示すブロック図である。ICタグ5は、アンテナ30と、電圧発生部31と、ICチップ32と、電波送出部33とを備えている。アンテナ30は、アンテナ装置3a,3b,3cから送出される電波8を受信したり、移動体4の周囲に対して電波8を送出したりするためのアンテナである。電圧発生部31は、アンテナ装置3a,3b,3cからの電波8を受信すると、その電波8によって電圧を発生させてICチップ32及び電波送出部33へ供給し、ICチップ32及び電波送出部33を駆動する。ICチップ32は、ICタグ5に予め設定された固有の識別情報35を記憶しており、電圧発生部31から電圧駆動されると、識別情報35を読み出して電波送出部33へ出力する。電波送出部33は、電圧発生部31によって駆動されると、ICチップ32から出力される識別情報35を電波8に重畳させてアンテナ30を介して外部へ送出する。すなわち、電波送出部33は、アンテナ装置3a,3b,3cから受信する電波7を搬送波とし、その搬送波に識別情報35を重畳させた電波8を生成してアンテナ30から送出する。
【0048】
次に、図4は、アンテナ装置3aを例示してアンテナ装置3aがICタグ5を検出する原理を示す図である。アンテナ装置3aは、所定の領域Raの範囲内にICタグ5が応答する電波7を送出する。アンテナ装置3aは一定強度の電波7を送出するため、電波7が届く領域Raはアンテナ装置3aを中心とする所定半径の円領域である。ただし、アンテナ装置3aの周囲に壁や床、天井などの遮蔽物が存在すると、領域Raは必ずしも円形の領域とはならない。
【0049】
ICタグ5が取り付けられた移動体4が領域Raに進入すると、ICタグ5は、電波7を受信することによって移動体4の周囲に電波8を送出する。ICタグ5から送出される電波8は、ICタグ5の状況や環境に応じて強度が変わる。これを模式的に図示すると、例えば図4に示すように、ICタグ5から発せられる電波8は、ICタグ5の近傍の所定領域Rbの範囲内しか届かない微弱な電波となる。アンテナ装置3aは、電波8の受信感度を逐次変化させていくことでICタグ5から発せられる微弱な電波8を検知する。
【0050】
図5は、アンテナ装置3a,3b,3cの受信感度を変化させる例を示す図である。例えば図5(a)に示すように、各アンテナ装置3a,3b,3cは、位置検出装置2からの命令に基づき、電波8の受信感度を、レベル1、レベル2、レベル3、レベル4及びレベル5の順で段階的に変化させていく。すなわち、各アンテナ装置3a,3b,3cは、受信感度が最も低いレベル1から受信感度が最も高いレベル5まで一定の時間間隔でレベルを1段階ずつ上げていく動作を周期的に繰り返す。
【0051】
図5(b)は、レベル1からレベル5の受信感度に対応する受信可能領域R1~R5を示している。例えば、受信感度が最も低いレベル1であるとき、アンテナ装置3aは、第1の領域R1内に電波8が届いていれば、その電波8を検知することができる。言い換えると、ICタグ5から発せられる電波8が第1の領域R1に届いていない場合、アンテナ装置3aは、受信感度がレベル1であるときに電波8を検出することができない。一方、受信感度が上昇すると、アンテナ装置3aが電波8を受信可能な領域が広がる。そのため、受信感度がレベル2であるとき、アンテナ装置3aは、第1の領域R1よりも広い第2の領域R2内に電波8が届いていれば、その電波8を検知することが可能である。また、受信感度がレベル3であるとき、アンテナ装置3aは、第2の領域R2よりも広い第3の領域R3内に電波8が届いていれば、その電波8を検知することができる。また、受信感度がレベル4であるとき、アンテナ装置3aは、第3の領域R3よりも広い第4の領域R4内に電波8が届いていれば、その電波8を検知することができる。更に、受信感度が最大のレベル5であるとき、アンテナ装置3aは、第4の領域R4よりも広い第5の領域R5内に電波8が届いていれば、その電波8を検知することができる。
【0052】
尚、最大感度のレベル5に対応する第5の領域R5は、アンテナ装置3aが送出する電波7が届く領域Raの範囲内に設定しておくことが好ましい。なぜなら、電波7が届く領域Raの外側にまで受信可能領域が及んでいたとしても、ICタグ5が電波7を受信していなければ、ICタグ5から電波8が送出されないからである。
【0053】
次に、本実施形態の位置検出システム1による移動体4の位置検出動作について説明する。本実施形態の位置検出装置2は、複数のアンテナ装置3a,3b,3cのそれぞれの受信感度を同一レベルに保持しつつ、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの受信感度を互いに同期させて変化させる。例えば、位置検出装置2は、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの受信感度を同じタイミングで変化させる。ただし、位置検出装置2は、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの受信感度を同時に変化させるものに限られない。例えば、位置検出装置2は、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの受信感度を1つずつ順番に変化させていき、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの受信感度が全て同一レベルとなるように制御するものであっても構わない。そして位置検出装置2は、各アンテナ装置3a,3b,3cの受信感度が同一レベルであるときに、各アンテナ装置3a,3b,3cにICタグ5の検出処理を行わせる。
【0054】
図6は、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの受信感度がレベル1である状態を示す図である。尚、図6乃至図10では、複数のアンテナ装置3a,3b,3cがエリア100内の通路に設置されており、その通路を移動体4が移動する場合を例示している。各アンテナ装置3a,3b,3cの受信感度がレベル1であるとき、各アンテナ装置3a,3b,3cが電波8を受信可能な領域は、図6に示すように第1の領域R1である。図6に示すように各アンテナ装置3a,3b,3cが電波8を受信可能な第1の領域R1は、移動体4に取り付けられたICタグ5からの電波8が送出される領域Rbに達していないため、各アンテナ装置3a,3b,3cはICタグ5を検知することができない。したがって、各アンテナ装置3a,3b,3cは、レベル1での検出結果として、位置検出装置2に「検知なし」を送出する。
【0055】
次に、図7は、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの受信感度がレベル2である状態を示す図である。各アンテナ装置3a,3b,3cの受信感度がレベル2であるとき、各アンテナ装置3a,3b,3cが電波8を受信可能な領域は、図7に示すように第2の領域R2である。図7に示すように、受信感度がレベル2になると、アンテナ装置3aが電波8を受信可能な第2の領域R2は、移動体4に取り付けられたICタグ5からの電波8が送出される領域Rbに達している。そのため、アンテナ装置3aは、ICタグ5を検知することができる。これに対し、他のアンテナ装置3b,3cが電波8を受信可能な第2の領域R2は、移動体4に取り付けられたICタグ5からの電波8が送出される領域Rbに達していない。そのため、他のアンテナ装置3b,3cはICタグ5を検知することができない。つまり、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの受信感度がレベル2であるとき、1つのアンテナ装置3aのみがICタグ5を検知した状態となる。したがって、アンテナ装置3aは、レベル2での検出結果として、位置検出装置2に「検知あり」を送出し、他のアンテナ装置3b,3cは、レベル2での検出結果として、位置検出装置2に「検知なし」を送出する。尚、アンテナ装置3aは、ICタグ5を検知すると、ICタグ5から受信した識別情報35を位置検出装置2へ送出する。
【0056】
次に、図8は、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの受信感度がレベル3である状態を示す図である。各アンテナ装置3a,3b,3cの受信感度がレベル3であるとき、各アンテナ装置3a,3b,3cが電波8を受信可能な領域は、図8に示すように第3の領域R3である。図8に示すように、受信感度がレベル3であるとき、アンテナ装置3aが電波8を受信可能な第2の領域R2は、移動体4に取り付けられたICタグ5からの電波8が送出される領域Rbに達している。そのため、アンテナ装置3aは、ICタグ5を検知することができる。これに対し、他のアンテナ装置3b,3cが電波8を受信可能な第2の領域R2は、依然として、移動体4に取り付けられたICタグ5からの電波8が送出される領域Rbに達していない。そのため、他のアンテナ装置3b,3cはICタグ5を検知することができない。つまり、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの受信感度がレベル3であるときも、1つのアンテナ装置3aのみがICタグ5を検知した状態となる。このときも、アンテナ装置3aは、レベル3での検出結果として、位置検出装置2に「検知あり」を送出し、他のアンテナ装置3b,3cは、レベル3での検出結果として、位置検出装置2に「検知なし」を送出する。
【0057】
次に、図9は、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの受信感度がレベル4である状態を示す図である。各アンテナ装置3a,3b,3cの受信感度がレベル4であるとき、各アンテナ装置3a,3b,3cが電波8を受信可能な領域は、図9に示すように第4の領域R4である。図9に示すように、受信感度がレベル4であるとき、アンテナ装置3a,3cが電波8を受信可能な第2の領域R2は、移動体4に取り付けられたICタグ5からの電波8が送出される領域Rbに達している。そのため、アンテナ装置3a,3cは、ICタグ5を検知することができる。これに対し、他のアンテナ装置3bが電波8を受信可能な第2の領域R2は、依然として、移動体4に取り付けられたICタグ5からの電波8が送出される領域Rbに達していない。そのため、他のアンテナ装置3bはICタグ5を検知することができない。つまり、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの受信感度がレベル4であるとき、2つのアンテナ装置3a,3cがICタグ5を検知した状態となる。したがって、アンテナ装置3a,3cは、レベル4での検出結果として、位置検出装置2に「検知あり」を送出し、他のアンテナ装置3bは、レベル4での検出結果として、位置検出装置2に「検知なし」を送出する。
【0058】
次に、図10は、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの受信感度がレベル5である状態を示す図である。各アンテナ装置3a,3b,3cの受信感度がレベル5であるとき、各アンテナ装置3a,3b,3cが電波8を受信可能な領域は、図10に示すように第5の領域R5である。図10に示すように、受信感度がレベル5であるとき、各アンテナ装置3a,3b,3cが電波8を受信可能な第5の領域R5は、移動体4に取り付けられたICタグ5からの電波8が送出される領域Rbに達している。そのため、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの全てが、ICタグ5を検知することができる。したがって、各アンテナ装置3a,3b,3cは、レベル5での検出結果として、位置検出装置2に「検知あり」を送出する。
【0059】
位置検出装置2のアンテナ制御部15は、上記のように複数のアンテナ装置3a,3b,3cの受信感度を変化させていく過程において、各アンテナ装置3a,3b,3cから各レベルでの検出結果を取得する。そしてアンテナ制御部15は、各アンテナ装置3a,3b,3cにおける各レベルでの検出結果を検出情報13に逐次記録していく。
【0060】
図11は、検出情報13の一例を示す図である。例えば、検出情報13には、各アンテナ装置3a,3b,3cにおいてICタグ5の検出処理が行われた時間と、その検出処理が行われたときの受信感度と、検出結果(「検出なし」又は「検出あり」)とが記録される。また、各アンテナ装置3a,3b,3cがICタグ5を検知した場合には、検出結果としてICタグ5から取得した識別情報35が記録される。
【0061】
位置検出装置2の位置検出部16は、例えば、アンテナ制御部15によってレベル1からレベル5までの一周期分の検出処理が行われる都度、検出情報13を読み出して移動体4(ICタグ5)の位置を検出する処理を行う。例えば、位置検出部16は、最新のレベル1からレベル5までの一周期分の検出結果に基づき、いずれかの受信感度において、複数のアンテナ装置3a,3b,3cのうちの1つのアンテナ装置のみがICタグ5からの電波8を検知しているか否かを判断する。その結果、いずれかの受信感度において1つのアンテナ装置のみが電波8を検知していることが判明した場合、位置検出部16は、アンテナ位置情報12を参照し、電波8を受信したアンテナ装置の位置を特定し、その特定した位置、又は、その特定した位置の近傍に移動体4(ICタグ5)が存在していることを検出する。
【0062】
例えば、図11に示す検出情報13を参照すると、時間09:14:13~09:14:16までの一周期分のデータD1において、受信感度がレベル2とレベル3のときに、1つのアンテナ装置3aがICタグ5を検知しており、他のアンテナ装置3b,3cはICタグ5を検知していない。また、時間09:14:17~09:14:21までの一周期分のデータD2においても、受信感度がレベル2とレベル3のときに、1つのアンテナ装置3aがICタグ5を検知しており、他のアンテナ装置3b,3cはICタグ5を検知していない。そのため、位置検出部16は、時間「09:14:13」、「09:14:14」、「09:14:18」、「09:14:19」のときに、移動体4(ICタグ)がアンテナ装置3aの近傍に位置していたことを検出する。また、位置検出部16は、一周期分のデータD1(又はD2)を取得した期間において、移動体4(ICタグ)がアンテナ装置3aの近傍に位置していたことを検出するようにしても良い。
【0063】
また、位置検出部16は、アンテナ装置3aがICタグ5を検知したときの受信感度に基づいてICタグ5からの電波8を受信した領域を特定することができる。例えば、受信感度がレベル2であれば、アンテナ装置3aが電波8を受信した領域は、アンテナ装置3aを中心とする第2の領域R2である。そのため、位置検出部16は、アンテナ装置3aがICタグ5を検知したときの電波8を受信可能な領域のサイズに基づいて移動体4(ICタグ5)の位置を検出するようにしても良い。このとき、移動体4(ICタグ5)が存在する位置を絞り込むという観点から、受信感度が低いときの領域を採用することが好ましい。例えば、時間09:14:13~09:14:16までの一周期分のデータD1に着目すると、受信感度がレベル2及びレベル3のときに、1つのアンテナ装置3aがICタグ5を検知している。受信感度がレベル2のときには電波8を受信可能な領域が第2の領域R2であり、受信感度がレベル3のときの第3の領域R3よりもサイズが小さい。そのため、位置検出部16は、一周期分のデータD1を取得した期間において、移動体4(ICタグ)がアンテナ装置3aを中心とする第2の領域R2の内側に位置していたことを検出するようにしても良い。これにより、第3の領域R3よりも狭い第2の領域R2に、移動体4の位置を絞り込むことができる。
【0064】
また、検出情報13には、それぞれ異なる複数のICタグ5を検知した結果が記録されていることもある。そのため、位置検出部16は、検出情報13に記録されている識別情報35に基づいて1つのICタグ5を特定し、その特定した1つのICタグ5から送出された電波8を1つのアンテナ装置で受信しているか否かを判別する。
【0065】
位置検出部16は、上記のようにして移動体4の位置を検出すると、その検出した位置を移動履歴情報14に記録する。したがって、位置検出部16が移動体4の位置を繰り返し検出することにより、移動履歴情報14には、移動体4の移動履歴が蓄積されることになる。
【0066】
図12は、図6乃至図10に示す状態から移動体4が移動した後の状態を示す図である。図12に示すように移動体4が移動した状態では、受信感度がレベル3のときに、1つのアンテナ装置3bのみがICタグ5からの電波8を受信する。他のアンテナ装置3a,3cは、受信感度がレベル3からレベル4に変化したときに、ICタグ5からの電波8を受信するようになる。そのため、図12に示す状態のとき、位置検出装置2は、アンテナ装置3bの受信感度がレベル3であるときの第3の領域R3の範囲内に移動体4(ICタグ5)が存在することを検出する。したがって、位置検出装置2の位置検出部16は、移動体4(ICタグ5)がアンテナ装置3aの近傍位置からアンテナ装置3bの近傍位置へ移動したことを検出する。
【0067】
このように本実施形態の位置検出システム1は、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの受信感度を段階的に変化させる制御を周期的に繰り返し行い、一周期毎に移動体4の位置を検出する処理を繰り返し行うことで、エリア100内を移動体4が移動した移動軌跡を特定するように構成される。つまり、位置検出システム1は、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの受信感度を段階的に変化させる動作を一周期分行うことによって移動体4の現在位置を検出することが可能である。
【0068】
また、位置検出システム1は、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの受信感度を変化させるとき、所定の初期感度(レベル1)から最大感度(レベル5)まで受信感度を上昇させていくことにより、複数のアンテナ装置3a,3b,3cのうちのいずれかが最初にICタグ5を検知したときに他のアンテナ装置がICタグ5を検知していなければ、ICタグ5の位置を特定することが可能であり、しかもICタグ5が位置する領域を絞り込んで特定することができる。また、初期感度(レベル1)から最大感度(レベル5)まで受信感度を順次上昇させていくことにより、各アンテナ装置3a,3b,3cがICタグ5を検知可能な領域を徐々に広げていくことができる。そのため、ある受信感度で1つのアンテナ装置3aがICタグ5を検知すれば、その後に受信感度が変化した場合であっても、その1つのアンテナ装置3aは、エリア100内を移動するICタグ5を適切に検知し続けることができるという利点がある。
【0069】
ところで、移動体4の移動速度に比較して受信感度を段階的に変化させる周期が長い場合、一周期の期間内に移動体4が各アンテナ装置3a,3b,3cによる検知可能領域を通過してしまい、正常な位置検出を行うことができなくことが想定される。これを防止するため、アンテナ制御部15は、各アンテナ装置3a,3b,3cの受信感度を変化させる周期を変更可能とすることが好ましい。
【0070】
図13は、受信感度を変化させる周期を変化させる例を示す図である。例えば、図13(a)は、受信感度を変化させる周期のデフォルト値を示す図である。すなわち、デフォルト値では、受信感度を変化させる周期がTaに設定されている。しかし、移動体4の移動速度が所定速度以上である場合、周期Taで受信感度を変化させたとしても、各周期において移動体4の位置を正常に検出することができないことがある。そのような場合、アンテナ制御部15は、図13(b)に示すように受信感度を変化させる周期をTbに変更することができる。図13(b)の例では、周期Tbは、周期Taの約1/2となっている。そのため、周期Taで検出可能な移動体4の移動速度がVaであるとすれば、図13(b)に示す周期Tbのときには、約2倍の移動速度2Vaで移動する移動体4の位置を正常に検出することができるようになる。
【0071】
例えば、アンテナ制御部15は、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの制御を開始する前に、検出対象となる移動体4の移動速度に応じた周期を設定し、その設定した周期で各アンテナ装置3a,3b,3cの受信感度を変化させる制御を開始する。この場合、受信感度を変化させる周期は、管理者などによって指定されるものであっても構わない。
【0072】
また、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの配置間隔が広い場合には、各アンテナ装置3a,3b,3cが電波8を検知可能な領域を広げる必要がある。そのため、アンテナ制御部15は、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの配置間隔に応じて最大感度であるレベル5の受信感度と、各レベル差とを変更可能とすることが好ましい。
【0073】
図14は、最大感度及び各レベル差を変更する例を示す図である。例えば、図14(a)は、最大感度及び各レベル差を変更する前のデフォルト値を示す図である。すなわち、図14(a)に示すデフォルト値では、最大感度であるレベル5が所定感度に設定されており、また各レベルのレベル差も所定値に設定されている。このデフォルト値では、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの配置間隔が所定値以下である場合に適切に移動体4の位置を検出することができる。しかし、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの配置間隔が所定値を超える場合、受信感度を最大感度であるレベル5に設定したとしても、いずれのアンテナ装置3a,3b,3cでもICタグ5が送出する電波8を検知することができないことがある。そのような場合、アンテナ制御部15は、図14(b)に示すように最大感度であるレベル5の受信感度と、各レベル差とを変更する。すなわち、アンテナ制御部15は、最大感度であるレベル5の受信感度を上昇させると共に、各レベルのレベル差を拡大させるのである。これにより、各レベルで電波8を検知可能な領域を広げることが可能であり、ICタグ5が送出する電波8の検知漏れを無くすことができる。
【0074】
例えば、アンテナ制御部15は、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの制御を開始する前に、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの配置間隔に適合するように予め最大感度及び各レベル差を設定し、その設定した最大感度及びレベル差で各アンテナ装置3a,3b,3cの受信感度を変化させる制御を開始する。この場合、最大感度及びレベル差は、管理者などによって指定されるものであっても構わない。
【0075】
また、アンテナ制御部15は、受信感度を変化させるときの初期感度であるレベル1の受信感度を変更可能としても良い。この場合、レベル1を上昇させることによりレベル1で電波8を受信可能な領域を広げるようにしても良いし、これとは逆にレベル1を低下させることによりレベル1で電波8を受信可能な領域を狭くするようにしても良い。例えば、初期感度であるレベル1のときに、既に複数のアンテナ装置がICタグ5を同時に検知するような場合には、初期感度であるレベル1を低下させることが有効である。
【0076】
また、アンテナ制御部15が各アンテナ装置3a,3b,3cの受信感度を変化させるとき、各レベルのレベル差が大きいと、電波8を受信可能な1レベル毎の領域が広くなり、近隣に配置されている複数のアンテナ装置3a,3bが最初に且つ同時に同じICタグ5を検知することが起こり得る。そのような場合、ICタグ5が複数のアンテナ装置3a,3bのうちのいずれに近いかを特定することができず、移動体4の位置を正常に検出することができない。そのため、アンテナ制御部15は、受信感度を変化させる段階数を変更可能とすることが好ましい。これにより、アンテナ制御部15は、受信感度を変化させている過程において複数のアンテナ装置3a,3bが最初に且つ同時に同じICタグ5を検知した場合には、受信感度を変化させる段階数を増加させることができるようになり、ICタグ5を検知する際の各アンテナ装置3a,3b,3cの分解能を上げることが可能である。
【0077】
図15は、受信感度の段階数を変更する例を示す図である。尚、図15では、受信感度の段階数を上げる場合を例示している。例えば、図15(a)は、受信感度の段階数を変更する前のデフォルト値を示す図である。すなわち、図15(a)に示すデフォルト値では、受信感度の段階数はレベル1~レベル5の5段階となっている。例えば、受信感度の段階数がデフォルト値であるとき、ICタグ5が2つのアンテナ装置3a,3bのほぼ中間位置に近い位置にあれば、受信感度がレベル2からレベル3に切り替わったときに、2つのアンテナ装置3a,3bが同時にICタグ5を検知してしまい、ICタグ5が2つのアンテナ装置3a,3bのうちのいずれに近いかを特定することができない。そのような場合、アンテナ制御部15は、図15(b)に示すように受信感度の段階数を5段階から9段階に変更する。これにより、受信感度が1段階上昇することに伴って電波8を受信可能な領域が広がる幅を小さくすることが可能であり、2つのアンテナ装置3a,3bのうちのいずれか一方のアンテナ装置のみが最初にICタグ5を検知する可能性が高くなる。そのため、ICタグ5が2つのアンテナ装置3a,3bのほぼ中間位置に近い位置にある場合であっても、ICタグ5の位置を正常に検出できるようになる。
【0078】
例えば、アンテナ制御部15は、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの受信感度を段階的に変化させていく過程において、電波8を1つのアンテナ装置だけが受信した状態を検出することができず、電波8を2以上のアンテナ装置が同時に受信した状態を検出した場合に、受信感度の段階数を増加させる。これにより、ICタグ5から送出される電波8を1つのアンテナ装置が受信できる状態を作出できるため、ICタグ5の位置を正常に検出することが可能である。
【0079】
次に、図16は、位置検出装置2の処理手順の一例を示すフローチャートである。位置検出装置2は、この処理を開始すると、感度調整範囲を設定する(ステップS1)。すなわち、位置検出装置2は、例えば管理者などの指示に基づき、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの受信感度を調整する処理を行う。この処理では、例えば受信感度の初期感度や最大感度に対応するレベル、受信感度を変更する際の段階数、各レベルのレベル差などが設定される。感度調整範囲の設定が終了すると、位置検出装置2は、管理者などの指示に基づき、移動体4の位置を検出する位置検出動作を開始する(ステップS2)。
【0080】
位置検出装置2は、位置検出動作を開始すると、まず、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの受信感度を初期感度であるレベル1に設定する(ステップS3)。すなわち、位置検出装置2は、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの受信感度を最も低いレベルに設定する。続いて、位置検出装置2は、各アンテナ装置3a,3b,3cにICタグ5が応答する電波7を送信させる(ステップS4)。これにより、エリア100内を移動している移動体4が複数のアンテナ装置3a,3b,3cのいずれかから送出された電波7を受信可能な領域にあれば、移動体4に取り付けられているICタグ5が識別情報35を含む電波8を送出する。そして位置検出装置2は、複数のアンテナ装置3a,3b,3cのうちのいずれかのアンテナ装置がICタグ5からの電波8を受信したか否かを判断する(ステップS5)。
【0081】
複数のアンテナ装置3a,3b,3cのうちのいずれかのアンテナ装置がICタグ5からの電波8を受信した場合(ステップS5でYES)、位置検出装置2は、電波8を受信したアンテナ装置を特定する(ステップS7)。そして位置検出装置2は、アンテナ装置が取得したICタグ5の識別情報35を取得し(ステップS8)、検出情報13に検出結果を記録する(ステップS9)。尚、位置検出装置2は、ICタグ5からの電波8を受信しなかったアンテナ装置が存在する場合には、そのアンテナ装置の検知結果として「検知なし」を記録する。
【0082】
また、全てのアンテナ装置3a,3b,3cがICタグ5からの電波を受信しなかった場合(ステップS5でNO)、位置検出装置2は、全てのアンテナ装置3a,3b,3cの検知結果として「検知なし」を記録する。
【0083】
次に、位置検出装置2は、現在の受信感度が最大レベルであるか否かを判断し(ステップS10)、最大レベルではない場合(ステップS10でNO)、受信感度のレベルを変更する(ステップS11)。すなわち、位置検出装置2は、各アンテナ装置3a,3b,3cの受信感度を1段階上げる。その後、位置検出装置2による処理は、ステップS4に戻り、現在の受信感度でICタグ5を検知する処理を行う。
【0084】
一方、現在の受信感度が最大レベルである場合(ステップS10でYES)、受信感度を段階的に変化させながらICタグ5を検知する一周期分の動作が終了したことになる。この場合、位置検出装置2は、位置検出処理を実行する(ステップS12)。この位置検出処理は、検出情報13に記録された情報に基づき、移動体4(ICタグ5)の現在位置と移動軌跡を検出する処理である。
【0085】
図17は、位置検出処理(ステップS12)の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。位置検出装置2は、この処理を開始すると、まず一周期分の動作を終了した時点でICタグ5を検出したアンテナ装置が存在するか否かを判断する(ステップS20)。その結果、ICタグ5を検知したアンテナ装置が存在しない場合(ステップS20でNO)、位置検出処理が終了する。
【0086】
これに対し、ICタグ5を検知したアンテナ装置が存在する場合(ステップS20でYES)、位置検出装置2は、特定の受信感度で1つのアンテナ装置のみがICタグ5からの電波8を受信しているか否かを判断する(ステップS21)。その結果、特定の受信感度で1つのアンテナ装置のみが電波8を受信している記録が存在しない場合(ステップS21でNO)、位置検出装置2は、各アンテナ装置3a,3b,3cの受信感度の段階数を増加させる(ステップS22)。その後、位置検出装置2による処理は、図16のフローチャートのステップS3へ進む。
【0087】
また、特定の受信感度で1つのアンテナ装置のみが電波8を受信している記録が存在する場合(ステップS21でYES)、位置検出装置2は、アンテナ位置情報12を参照し、当該1つのアンテナ装置の位置を特定し、その特定した位置から更に移動体4の現在の位置を特定する(ステップS23)。例えば、位置検出装置2は、ICタグ5からの電波8を受信したアンテナ装置の位置、又は、そのアンテナ装置の近傍に、移動体4が存在していることを特定する。
【0088】
このとき、位置検出装置2は、ICタグ5からの電波8を受信したときの受信感度を特定し、その特定した受信感度でアンテナ装置が電波8を受信可能であった領域を移動体4が存在する位置として特定しても良い。図18は、移動体4の位置を特定する処理の一例を示す図である。例えば図18に示すように、受信感度がレベル3であるときにICタグ5からの電波8を1つのアンテナ装置3aが受信した場合、位置検出装置2は、そのときの受信感度に基づいてアンテナ装置3aが電波8を受信可能な第3の領域R3を特定し、移動体4の位置がその第3の領域R3の内側に存在することを検出する。
【0089】
次に、位置検出装置2は、移動体4の移動軌跡を特定する(ステップS24)。すなわち、同じICタグ5の位置が過去に特定されている場合、位置検出装置2は、その過去の位置と今回特定された位置とを直線又は曲線で結びことにより、移動体4の移動軌跡を特定する。
【0090】
そして位置検出装置2は、移動体4の現在位置と移動軌跡とを移動履歴情報14に記録する(ステップS25)。尚、位置検出装置2は、必要に応じて移動履歴情報14を外部装置へ出力することも可能である。以上で、位置検出処理が終了する。
【0091】
図16のフローチャートに戻り、位置検出装置2は、位置検出処理が終了すると、位置検出動作を終了させるか否かを判断する(ステップS13)。例えば、位置検出装置2は、管理者などによって動作終了が指示されているか否かを判断する。その結果、位置検出動作を継続させる場合(ステップS13でNO)、位置検出装置2による処理は、ステップS3に戻り、上述した処理を繰り返す。これに対し、位置検出動作を終了させる場合(ステップS13でYES)、位置検出装置2による処理が終了する。
【0092】
ところで、上記においては、ICタグ5からの電波8を1つのアンテナ装置3aが受信したときの受信感度に基づいてアンテナ装置3aが電波8を受信可能な領域を特定し、その領域の内側に移動体4が存在することを検出する例を説明した。しかし、電波8を受信した1つのアンテナ装置3aのみに着目するのではなく、他のアンテナ装置3b,3cの検出結果にも着目すれば、移動体4が存在する領域を更に絞り込むことが可能である。
【0093】
図19は、移動体4が存在する領域を絞り込む第1の例を示す図である。例えば、図19に示すように、ICタグ5からの電波8を1つのアンテナ装置3aが受信したとき、移動体4は、その1つのアンテナ装置3aが電波8を受信可能な領域の内側に存在する。このとき、他のアンテナ装置3b,3cは、ICタグ5からの電波8を受信していない。そのため、移動体4は、他のアンテナ装置3b,3cが電波8を受信可能な領域の内側には存在していないことがわかる。そのため、位置検出装置2は、ICタグ5からの電波8を1つのアンテナ装置3aが受信したとき、その1つのアンテナ装置3aが電波8を受信可能な領域のうちから、他のアンテナ装置3b,3cが電波8を受信可能な領域を除いた検知領域Rs(図19において斜線で示す領域)を特定し、移動体4がその検知領域Rsの内側に存在していることを検出するようにしても良い。このようにすれば、移動体4が存在する位置を狭い領域に絞り込むことができる。
【0094】
図20は、移動体4が存在する領域を絞り込む第2の例を示す図である。例えば、図20に示すように、受信感度がレベル3であるときにICタグ5からの電波8を1つのアンテナ装置3aが受信し、その後、受信感度がレベル4に上昇したときにICタグ5からの電波8を2つのアンテナ装置3a,3bが受信することがある。このような場合、移動体4は、上述した検知領域Rsと、アンテナ装置3bがレベル4のときに電波8を受信可能な領域とが重複した領域に存在することがわかる。そのため、位置検出装置2は、受信感度が第1の感度であるときに電波8を1つのアンテナ装置3aが受信した後、受信感度が第1の感度よりも上昇した第2の感度であるときに電波8を他のアンテナ装置3bが受信した場合に、1つのアンテナ装置3aが第1の感度であるときに特定した検知領域Rsと、他のアンテナ装置3bが第2の感度であるときに電波8を受信可能な領域とが重複する重複領域Rt(図20において2つの斜線が重なった領域)を特定し、移動体4がその重複領域Rtの内側に存在していることを検出するようにしても良い。このようにすれば、移動体4が存在する位置を更に狭い領域に絞り込むことができる。
【0095】
図21は、移動体4が存在する領域を絞り込む第3の例を示す図である。例えば、図21に示すように、受信感度がレベル3であるときにICタグ5からの電波8を1つのアンテナ装置3aが受信し、その後、受信感度がレベル4に上昇したときにICタグ5からの電波8を2つのアンテナ装置3a,3bが受信することがある。このような場合、移動体4は、1つのアンテナ装置3aの受信感度がレベル3であるときに電波8を受信可能な領域と、他のアンテナ装置3bの受信感度がレベル4であるときに電波8を受信可能な領域とが重複した領域に存在することがわかる。そのため、位置検出装置2は、受信感度が第1の感度であるときに電波8を1つのアンテナ装置3aが受信した後、受信感度が第1の感度よりも上昇した第2の感度であるときに電波8を他のアンテナ装置3bが受信した場合、1つのアンテナ装置3aが第1の感度であるときに電波8を受信可能な領域と、他のアンテナ装置3bが第2の感度であるときに電波8を受信可能な領域とが重複する重複領域Rt(図21において2つの斜線が重なった領域)を特定し、移動体4がその重複領域Rtの内側に存在していることを検出するようにしても良い。このようにしても、移動体4が存在する位置を狭い領域に絞り込むことができる。
【0096】
以上のように本実施形態の位置検出システム1は、所定のエリア100内を移動する移動体4に取り付けられ、移動体4の周囲の所定範囲内に電波8を送出するICタグ5と、エリア100内においてそれぞれ異なる位置に配置され、電波8を受信可能な複数のアンテナ装置3a,3b,3cと、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの電波8の受信感度を変化させ、電波8を1つのアンテナ装置3aが受信した場合に当該1つのアンテナ装置3aの位置に基づいて移動体4の位置を検出する位置検出装置2と、を備えている。
【0097】
このような構成によれば、従来のように移動体4が移動するエリア100の床面などに複数の位置タグを配置しなくても、移動体4の位置を検出することが可能である。そのため、従来と比較すると、低コストで位置検出システム1を導入することが可能である。
【0098】
また、上記構成によれば、ICタグ5に汚れや水分などが付着している場合や、ICタグ5の近くに金属やその他の遮蔽物が存在する場合であっても、複数のアンテナ装置3a,3b,3cの受信感度を変化させることでICタグ5から送出される電波8を受信することが可能であり、ICタグ5から送出される電波8の電波強度が異なる場合であっても正確に移動体4の位置検出を行うことが可能である。
【0099】
以上、本発明に関する好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記各実施形態において説明した内容のものに限られるものではなく、種々の変形例が適用可能である。
【0100】
例えば上記実施形態の位置検出システム1は、パッシブ型RFIDのICタグ5を用いて移動体4の位置を検出する場合を例示した。しかし、ICタグ5は、パッシブ型に限られず、アクティブ型RFIDのタグであっても構わない。ICタグ5がアクティブ型RFIDである場合、内部にバッテリーが搭載されている。そのため、ICタグ5は、アンテナ装置3a,3b,3cからの電波7を受信しなくても自ら電波8を送出し続けることができる。したがって、アクティブ型RFIDのICタグ5を用いる場合には、各アンテナ装置3a,3b,3cは、ICタグ5に応答させるための電波7を送出する必要がない。このように本実施形態の位置検出システム1は、パッシブ型RFIDに限られずアクティブ型RFIDにも適用可能であり、汎用性の高いシステムとして構築されている。
【0101】
また、上記実施形態では、位置検出装置2が複数のアンテナ装置3a,3b,3cの受信感度を段階的に変化させる場合を例示した。しかし、これに限られるものではなく、位置検出装置2が複数のアンテナ装置3a,3b,3cの受信感度を変化させる際には、無段階で連続的に変化させるようにしても構わない。
【符号の説明】
【0102】
1 位置検出システム
2 位置検出装置
3a,3b,3c アンテナ装置
4 移動体
5 ICタグ
8 電波
15 アンテナ制御部(アンテナ制御手段)
16 位置検出部(位置検出手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21