(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】樹脂粒子及び樹脂粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20240730BHJP
C01B 33/18 20060101ALI20240730BHJP
C09C 3/08 20060101ALI20240730BHJP
C09C 3/06 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C08J3/12 Z CER
C08J3/12 CEZ
C01B33/18 C
C09C3/08
C09C3/06
(21)【出願番号】P 2020121632
(22)【出願日】2020-07-15
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 孝治
(72)【発明者】
【氏名】水口 卓裕
(72)【発明者】
【氏名】銭谷 優香
(72)【発明者】
【氏名】竹内 栄
(72)【発明者】
【氏名】恵利 祥史
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-151944(JP,A)
【文献】特開2021-151938(JP,A)
【文献】特開2017-039618(JP,A)
【文献】特開平09-127721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28;99/00
C01B 33/00-33/193
C09C 1/00- 3/12
C09D 15/00-17/00
G03G 9/00-9/10;9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂母粒子と、
前記樹脂母粒子の表面に存在し、四級アンモニウム塩を含有し、且つ、表面が疎水化処理されたシリカ粒子と、を有し、
洗浄前の樹脂粒子における熱分解質量分析によって得られる四級アンモニウム塩の熱分解物に由来する検出温度を検出温度Aとし、洗浄後の樹脂粒子における熱分解質量分析によって得られる四級アンモニウム塩の熱分解物に由来する検出温度を検出温度Bとした場合における、
前記洗浄後の樹脂粒子は、50mlのラボスクリュー管に樹脂粒子を2g、エタノール10g及びイオン交換水10gを入れ、振動数45Hzの超音波洗浄機で混合し、得られた混合物を、遠心分離機に10000rpm、30分間かけ、上澄みを廃棄した後、沈降した樹脂粒子を取り出す作業を2回繰り返し、乾燥させた樹脂粒子であり、
前記検出温度Aと前記検出温度Bとの差(検出温度A-検出温度B)が50℃超過である樹脂粒子。
【請求項2】
樹脂母粒子と、
前記樹脂母粒子の表面に存在し、四級アンモニウム塩を含有し、且つ、表面が疎水化処理されたシリカ粒子と、を有し、
前記シリカ粒子の細孔直径2nm以下の頻度の最大値の比(下記F
BEFORE/下記F
AFTER)が0.9以上1.1以下であり、前記シリカ粒子の細孔直径2nm以下の頻度の最大値の比(下記F
SINTERING/下記F
BEFORE)が5以上20以下である、
請求項1に記載の樹脂粒子。
F
BEFORE:洗浄前のシリカ粒子における窒素ガス吸着法の細孔分布曲線から求める細孔直径2nm以下の頻度の最大値。
F
AFTER:洗浄後のシリカ粒子における窒素ガス吸着法の細孔分布曲線から求める細孔直径2nm以下の頻度の最大値。
前記洗浄後のシリカ粒子は、20mlのラボスクリュー管にシリカ粒子を1g、エタノール2.5g及びイオン交換水2.5gを入れ、振動数45Hzの超音波洗浄機で混合し、得られた混合物を、遠心分離機に10000rpm、30分間かけ、上澄みを廃棄した後、沈降したシリカ粒子を取り出す作業を2回繰り返し、乾燥させたシリカ粒子である。
F
SINTERING:洗浄前のシリカ粒子を700℃で焼成した後のシリカ粒子における窒素ガス吸着法の細孔分布曲線から求める細孔直径2nm以下の頻度の最大値。
【請求項3】
前記四級アンモニウム塩が、下記一般式(AM)で表される化合物を含む、請求項1又は請求項2に記載の樹脂粒子。
【化1】
(一般式(AM)中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表し、X
-は陰イオンを表す。一般式(AM)中、R
1、R
2、R
3及びR
4の2つ以上が互いに連結して環を形成していてもよい。)
【請求項4】
前記シリカ粒子の数平均粒径D50pが5nm以上200nm以下である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の樹脂粒子。
【請求項5】
前記シリカ粒子の数平均粒径D50pが5nm以上100nm以下である、請求項4に記載の樹脂粒子。
【請求項6】
前記シリカ粒子の、酸素・窒素分析で検出される窒素元素の存在量Nの割合(N/シリカ粒子×100)が、0.01以上1.0以下である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の樹脂粒子。
【請求項7】
前記シリカ粒子の平均細孔径が0.55nm以上2.00nm以下である請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の樹脂粒子。
【請求項8】
前記樹脂粒子の静電容量の比(下記C
AFTER/下記C
BEFORE)が1.5以下である請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の樹脂粒子。
C
BEFORE:洗浄前の樹脂粒子と、ガラス粒子とを、特定条件で混合し混合物とした後、前記混合物から分離された樹脂粒子の静電容量。
C
AFTER:洗浄後の樹脂粒子と、ガラス粒子とを、特定条件で混合し混合物とした後、前記混合物から分離された樹脂粒子の静電容量。
前記洗浄後の樹脂粒子は、50mlのラボスクリュー管に樹脂粒子を2g、エタノール10g及びイオン交換水10gを入れ、振動数45Hzの超音波洗浄機で混合し、得られた混合物を、遠心分離機に10000rpm、30分間かけ、上澄みを廃棄した後、沈降した樹脂粒子を取り出す作業を2回繰り返し、乾燥させた樹脂粒子である。
【請求項9】
前記シリカ粒子が、更にアルミニウム原子を含有するシリカ粒子である請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の樹脂粒子。
【請求項10】
前記アルミニウム原子を含有するシリカ粒子が、アルミニウム化合物により表面処理されたシリカ粒子である、請求項9に記載の樹脂粒子。
【請求項11】
前記アルミニウム原子を含有するシリカ粒子におけるX線光電子分光分析で検出されるアルミニウム元素の存在量Alに対する、X線光電子分光分析で検出されるケイ素元素の存在量Siの割合(Si/Al)が、0.01以上0.30以下である、請求項9又は請求項10に記載の樹脂粒子。
【請求項12】
前記樹脂母粒子の体積平均粒径D50vが1μm以上40μm以下である請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の樹脂粒子。
【請求項13】
前記樹脂母粒子が、ビニル系樹脂及び縮重合系樹脂の少なくとも1種を含む請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の樹脂粒子。
【請求項14】
前記検出温度Aと前記検出温度Bとの差(検出温度A-検出温度B)が、60℃以上120℃以下である請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の樹脂粒子。
【請求項15】
シリカ粒子を含む懸濁液を準備する準備工程、前記懸濁液と四級アンモニウム塩とを混合し前記シリカ粒子を四級アンモニウム塩により表面処理する第一表面処理工程、及び、前記四級アンモニウム塩により表面処理されたシリカ粒子を有機ケイ素化合物により超臨界処理を用いて表面処理する第二表面処理工程を経てシリカ粒子を作製する工程と、
作製された前記シリカ粒子を樹脂粒子本体の表面に付着する工程と、
を有する請求項1~請求項14のいずれか1項に記載の樹脂粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子及び樹脂粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「繰返し単位として「Si-O」結合を有するシリカ構造中に四級アンモニウム塩が導入されたシリカ粒子を複数含む、シリカ粉体」が提案されている。
【0003】
特許文献2には、「疎水性シリカ粉末であって、(1)疎水化度が50%以上であり、(2)メタノール及びメタンスルホン酸水溶液の混合溶媒による、第四級アンモニウムイオン、モノアゾ系錯体及び鉱酸イオンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物の抽出量Xが0.1質量%以上であり、(3)前記Xと、水による前記化合物の抽出量Yとが、Y/X<0.15の関係を満たすことを特徴とする疎水性シリカ粉末」が提案されている。
【0004】
特許文献3には、「ジエン系ゴムをゴム成分とし、表面処理されたゼオライトの微粒子を含有することを特徴とするゴム組成物」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-39618号公報
【文献】特開2019-73418号公報
【文献】特開2009-114338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、樹脂母粒子と、前記樹脂母粒子の表面に存在するシリカ粒子と、を含有する樹脂粒子であって、前記シリカ粒子が四級アンモニウム塩を含有し、且つ、表面が疎水化処理されたシリカ粒子である場合において、洗浄前の樹脂粒子における熱分解質量分析によって得られる四級アンモニウム塩の熱分解物に由来する検出温度を検出温度Aとし、洗浄後の樹脂粒子における熱分解質量分析によって得られる四級アンモニウム塩の熱分解物に由来する検出温度を検出温度Bとした場合における、前記検出温度Aと前記検出温度Bとの差(検出温度A-検出温度B)が50℃以下である、前記シリカ粒子の細孔直径2nm以下の頻度の最大値の比(下記FBEFORE/下記FAFTER)が0.9未満若しくは1.1超過である、又は、前記シリカ粒子の細孔直径2nm以下の頻度の最大値の比(下記FSINTERING/下記FBEFORE)が5未満若しくは20超過である場合と比較して、帯電量が少なく、且つ、疎水性材料への分散性が良い樹脂粒子及び樹脂粒子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち
<1> 樹脂母粒子と、
前記樹脂母粒子の表面に存在し、四級アンモニウム塩を含有し、且つ、表面が疎水化処理されたシリカ粒子と、を有し、
洗浄前の樹脂粒子における熱分解質量分析によって得られる四級アンモニウム塩の熱分解物に由来する検出温度を検出温度Aとし、洗浄後の樹脂粒子における熱分解質量分析によって得られる四級アンモニウム塩の熱分解物に由来する検出温度を検出温度Bとした場合における、前記検出温度Aと前記検出温度Bとの差(検出温度A-検出温度B)が50℃超過である樹脂粒子。
<2> 樹脂母粒子と、
前記樹脂母粒子の表面に存在し、四級アンモニウム塩を含有し、且つ、表面が疎水化処理されたシリカ粒子と、を有し、
前記シリカ粒子の細孔直径2nm以下の頻度の最大値の比(下記F
BEFORE/下記F
AFTER)が0.9以上1.1以下であり、前記シリカ粒子の細孔直径2nm以下の頻度の最大値の比(下記F
SINTERING/下記F
BEFORE)が5以上20以下である樹脂粒子。
F
BEFORE:洗浄前のシリカ粒子における窒素ガス吸着法の細孔分布曲線から求める細孔直径2nm以下の頻度の最大値。
F
AFTER:洗浄後のシリカ粒子における窒素ガス吸着法の細孔分布曲線から求める細孔直径2nm以下の頻度の最大値。
F
SINTERING:洗浄前のシリカ粒子を700℃で焼成した後のシリカ粒子における窒素ガス吸着法の細孔分布曲線から求める細孔直径2nm以下の頻度の最大値。
<3> 前記四級アンモニウム塩が、下記一般式(AM)で表される化合物を含む、前記<1>又は<2>に記載の樹脂粒子。
【化1】
(一般式(AM)中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表し、X
-は陰イオンを表す。一般式(AM)中、R
1、R
2、R
3及びR
4の2つ以上が互いに連結して環を形成していてもよい。)
<4> 前記シリカ粒子の数平均粒径D50pが5nm以上200nm以下である前記<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂粒子。
<5> 前記シリカ粒子の数平均粒径D50pが5nm以上100nm以下である、前記<4>に記載の樹脂粒子。
<6> 前記シリカ粒子の、酸素・窒素分析で検出される窒素元素の存在量Nの割合(N/シリカ粒子×100)が、0.01以上1.0以下である、前記<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂粒子。
<7> 前記シリカ粒子の平均細孔径が0.55nm以上2.00nm以下である前記<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂粒子。
<8> 前記樹脂粒子の静電容量の比(下記C
AFTER/下記C
BEFORE)が1.5以下である前記<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂粒子。
C
BEFORE:洗浄前の樹脂粒子と、ガラス粒子とを、特定条件で混合し混合物とした後、前記混合物から分離された樹脂粒子の静電容量。
C
AFTER:洗浄後の樹脂粒子と、ガラス粒子とを、特定条件で混合し混合物とした後、前記混合物から分離された樹脂粒子の静電容量。
<9> 前記シリカ粒子が、更にアルミニウム原子を含有するシリカ粒子である前記<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂粒子。
<10> 前記アルミニウム原子を含有するシリカ粒子が、アルミニウム化合物により表面処理されたシリカ粒子である、前記<9>に記載の樹脂粒子。
<11> 前記アルミニウム原子を含有するシリカ粒子におけるX線光電子分光分析で検出されるアルミニウム元素の存在量Alに対する、X線光電子分光分析で検出されるケイ素元素の存在量Siの割合(Si/Al)が、0.01以上0.30以下である、前記<9>又は<10>に記載の樹脂粒子。
<12> 前記樹脂母粒子の体積平均粒径D50vが1μm以上40μm以下である前記<1>~<11>のいずれか1つに記載の樹脂粒子。
<13> 前記樹脂母粒子が、ビニル系樹脂及び縮重合系樹脂の少なくとも1種を含む前記<1>~<12>のいずれか1つに記載の樹脂粒子。
<14> 前記検出温度Aと前記検出温度Bとの差(検出温度A-検出温度B)が、60℃以上120℃以下である前記<1>~<13>のいずれか1つに記載の樹脂粒子。
<15> シリカ粒子を含む懸濁液を準備する準備工程、前記懸濁液と四級アンモニウム塩とを混合し前記シリカ粒子を四級アンモニウム塩により表面処理する第一表面処理工程、及び、前記四級アンモニウム塩により表面処理されたシリカ粒子を有機ケイ素化合物により超臨界処理を用いて表面処理する第二表面処理工程を経てシリカ粒子を作製する工程と、
作製された前記シリカ粒子を樹脂粒子本体の表面に付着する工程と、
を有する前記<1>~<14>のいずれか1つに記載の樹脂粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
<1>、<3>、<9>及び<10>に係る発明によれば、樹脂母粒子と、前記樹脂母粒子の表面に存在するシリカ粒子と、を含有する樹脂粒子であって、前記シリカ粒子が四級アンモニウム塩を含有し、且つ、表面が疎水化処理されたシリカ粒子である場合において、洗浄前の樹脂粒子における熱分解質量分析によって得られる四級アンモニウム塩の熱分解物に由来する検出温度を検出温度Aとし、洗浄後の樹脂粒子における熱分解質量分析によって得られる四級アンモニウム塩の熱分解物に由来する検出温度を検出温度Bとした場合における、前記検出温度Aと前記検出温度Bとの差(検出温度A-検出温度B)が50℃以下である場合と比較して、帯電量が少なく、且つ、疎水性材料への分散性が良い樹脂粒子が提供される。
【0009】
<2>に係る発明によれば、樹脂母粒子と、前記樹脂母粒子の表面に存在するシリカ粒子と、を含有する樹脂粒子であって、前記シリカ粒子が四級アンモニウム塩を含有し、且つ、表面が疎水化処理されたシリカ粒子である場合において、前記シリカ粒子の細孔直径2nm以下の頻度の最大値の比(前記FBEFORE/前記FAFTER)が0.9未満若しくは1.1超過である、又は、前記シリカ粒子の細孔直径2nm以下の頻度の最大値の比(前記FSINTERING/前記FBEFORE)が5未満若しくは20超過である場合と比較して、帯電量が少なく、且つ、疎水性材料への分散性が良い樹脂粒子が提供される。
【0010】
<4>に係る発明によれば、前記シリカ粒子の数平均粒径D50pが5nm未満又は200nm超過である場合と比較して、帯電量が少なく、且つ、疎水性材料への分散性が良い樹脂粒子が提供される。
【0011】
<5>に係る発明によれば、前記シリカ粒子の数平均粒径D50pが5nm未満又は100nm超過である場合と比較して、帯電量が少なく、且つ、疎水性材料への分散性が良い樹脂粒子が提供される。
【0012】
<6>に係る発明によれば、前記シリカ粒子の、酸素・窒素分析で検出される窒素元素の存在量Nの割合(N/シリカ粒子×100)が、0.01未満又は1.0超過である場合と比較して、帯電量が少なく、且つ、疎水性材料への分散性が良い樹脂粒子が提供される。
【0013】
<7>に係る発明によれば、前記シリカ粒子の平均細孔径が0.55nm未満又は2.00nm超過である場合と比較して、帯電量が少なく、且つ、疎水性材料への分散性が良い樹脂粒子が提供される。
【0014】
<8>に係る発明によれば、前記樹脂粒子の静電容量の比(前記CAFTER/前記CBEFORE)が1.5超過である場合と比較して、帯電量が少なく、且つ、疎水性材料への分散性が良い樹脂粒子が提供される。
【0015】
<11>に係る発明によれば、前記アルミニウム原子を含有するシリカ粒子におけるX線光電子分光分析で検出されるアルミニウム元素の存在量Alに対する、X線光電子分光分析で検出されるケイ素元素の存在量Siの割合(Si/Al)が、0.01未満又は0.30超過である場合と比較して、帯電量が少なく、且つ、疎水性材料への分散性が良い樹脂粒子が提供される。
【0016】
<12>に係る発明によれば、前記樹脂母粒子の体積平均粒径D50vが1μm未満40μm超過である場合と比較して、帯電量が少なく、且つ、疎水性材料への分散性が良い樹脂粒子が提供される。
【0017】
<13>に係る発明によれば、前記樹脂母粒子がビニル系樹脂及び縮合系樹脂以外の樹脂を含有する場合と比較して、帯電量が少なく、且つ、疎水性材料への分散性が良い樹脂粒子が提供される。
【0018】
<14>に係る発明によれば、前記検出温度Aと前記検出温度Bとの差(検出温度A-検出温度B)が、60℃未満又は120℃超過である場合と比較して、帯電量が少なく、且つ、疎水性材料への分散性が良い樹脂粒子が提供される。
【0019】
<15>に係る発明によれば、帯電量が少なく、且つ、疎水性材料への分散性が良い樹脂粒子が得られる製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0021】
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0022】
本明細書において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
本明細書において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
本明細書において、「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0023】
<樹脂粒子>
第一の実施形態に係る樹脂粒子は、樹脂母粒子と、前記樹脂母粒子の表面に存在するシリカ粒子と、を含有する。
そして、第一の実施形態に係る樹脂粒子に含まれる前記シリカ粒子は、四級アンモニウム塩を含有し、且つ、表面が疎水化処理されたシリカ粒子である。
さらに、第一の実施形態に係る樹脂粒子は、洗浄前の樹脂粒子における熱分解質量分析によって得られる四級アンモニウム塩の熱分解物に由来する検出温度を検出温度Aとし、洗浄後の樹脂粒子における熱分解質量分析によって得られる四級アンモニウム塩の熱分解物に由来する検出温度を検出温度Bとした場合における、前記検出温度Aと前記検出温度Bとの差(検出温度A-検出温度B)が50℃超過である。
【0024】
第二の実施形態に係る樹脂粒子は、樹脂母粒子と、前記樹脂母粒子の表面に存在するシリカ粒子と、を含有する。
そして、第二の実施形態に係る樹脂粒子に含まれる前記シリカ粒子は、四級アンモニウム塩を含有し、且つ、表面が疎水化処理されたシリカ粒子である。
さらに、第二の実施形態に係る樹脂粒子に含まれる前記シリカ粒子は、シリカ粒子の細孔直径2nm以下の頻度の最大値の比(下記FBEFORE/下記FAFTER)が0.9以上1.1以下であり、シリカ粒子の細孔直径2nm以下の頻度の最大値の比(下記FSINTERING/下記FBEFORE)が5以上20以下である。
【0025】
FBEFORE:洗浄前のシリカ粒子における窒素ガス吸着法の細孔分布曲線から求める細孔直径2nm以下の頻度の最大値。
FAFTER:洗浄後のシリカ粒子における窒素ガス吸着法の細孔分布曲線から求める細孔直径2nm以下の頻度の最大値。
FSINTERING:洗浄前のシリカ粒子を700℃で焼成した後のシリカ粒子における窒素ガス吸着法の細孔分布曲線から求める細孔直径2nm以下の頻度の最大値。
【0026】
以下、第一の実施形態に係る樹脂粒子と、第二の実施形態に係る樹脂粒子と、を合わせて本実施形態に係る樹脂粒子とも称す。
【0027】
シリカ粒子は、充填剤、チキソトロピー性付与剤等の様々な用途で疎水性材料に添加される。しかしながら、従来のシリカ粒子は、粒子表面における帯電量が多い傾向にあった。そのため、シリカ粒子と疎水性材料とを含む混合物において、シリカ粒子が帯電し、ひいては混合物の帯電を引き起こすことがあった。
さらに、シリカ粒子は、混合物中で凝集しやすいことがあった。そのため、混合物は、シリカ粒子が凝集した部分で局所的に大きく帯電しやすいことがあった。そのため、混合物は、シリカ粒子が偏在した部分で静電気を蓄積しやすいということがあった。
【0028】
本実施形態に係る樹脂粒子は、上記構成を有することにより、帯電量が少なく、且つ、疎水性材料への分散性が良い樹脂粒子となる。
そして、例えば、本実施形態に係る樹脂粒子を疎水性材料に添加して混合物とした場合、シリカ粒子を凝集が抑制された状態で疎水性材料中に添加することができる。
この要因は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
【0029】
本実施形態に係る樹脂粒子に含まれるシリカ粒子は、四級アンモニウム塩を含有する。四級アンモニウム塩は、正電荷を有しており、この四級アンモニウム塩を含むシリカ粒子は、四級アンモニウム塩を含まないシリカ粒子に比べ、粒子表面においてシリカ表面と逆極電荷が存在するためバルク全体として摩擦帯電しづらい傾向にある。それにより、四級アンモニウム塩を含有するシリカ粒子は帯電量が少ない。それに伴い、四級アンモニウム塩を含有するシリカ粒子を有する樹脂粒子も帯電量が少なくなる。
【0030】
そして、第一の実施形態に係る樹脂粒子は、洗浄前後で測定される熱分解質量分析で得られる四級アンモニウム塩の熱分解物に由来する検出温度である、前記検出温度Aと前記検出温度Bとの差(検出温度A-検出温度B)が50℃超過である。樹脂粒子の洗浄前後において、シリカ粒子中における四級アンモニウム塩の配置が異なることから、洗浄前後において四級アンモニウム塩の検出温度が異なる。そして、前記検出温度Aと前記検出温度Bとの差(検出温度A-検出温度B)が50℃超過であることは、四級アンモニウム塩はシリカ粒子から遊離しにくい状態であることを示す。これは、洗浄前の樹脂粒子においてシリカ粒子に含まれる四級アンモニウム塩が、シリカ粒子が有する細孔の奥に存在するためである。
上述のことから、第一の実施形態に係る樹脂粒子は、疎水性材料等に添加された場合においても、四級アンモニウム塩がシリカ粒子から遊離しにくく、シリカ粒子の帯電量が少ない状態が維持される。それに伴い、当該シリカ粒子を有する樹脂粒子も帯電量が少なくなる。
【0031】
第二の実施形態に係る樹脂粒子は、洗浄前後におけるシリカ粒子の細孔直径2nm以下の頻度の最大値の比(前記FBEFORE/前記FAFTER)が0.9以上1.1以下であり、焼成前後におけるシリカ粒子の細孔直径2nm以下の頻度の最大値の比(前記FSINTERING/前記FBEFORE)が5以上20以下である。
先ず、焼成前後におけるシリカ粒子の細孔直径2nm以下の頻度の最大値の比(前記FSINTERING/前記FBEFORE)が5以上20以下であることは、焼成前のシリカ粒子は細孔内部に四級アンモニウム塩が存在するため細孔が埋められている場合が多いが、焼成工程により四級アンモニウム塩を除くとシリカ表面には細孔が表れやすくなることを示す。つまり、第二の実施形態に係る樹脂粒子に含まれるシリカ粒子は、細孔内部に四級アンモニウム塩が含まれる傾向にあることを示す。
そして、洗浄前後におけるシリカ粒子の細孔直径2nm以下の頻度の最大値の比(前記FBEFORE/前記FAFTER)が0.9以上1.1以下であることは、洗浄前後のシリカ粒子の細孔に入り込んだ四級アンモニウム塩の量が変化しにくいことを示す。つまり、洗浄を行ってもシリカ粒子の細孔内部に含まれる四級アンモニウム塩が遊離しにくいことを示す。
上述のことから、第二の実施形態に係る樹脂粒子は、シリカ粒子の細孔に入り込んだ四級アンモニウム塩がシリカ粒子から遊離しにくい状態にある。よって、第二の実施形態に係る樹脂粒子は、疎水性材料等に添加された場合においても、四級アンモニウム塩がシリカ粒子から遊離しにくく、シリカ粒子の帯電量が少ない状態が維持される。それに伴い、当該シリカ粒子を有する樹脂粒子も帯電量が少なくなる。
【0032】
また、本実施形態に係る樹脂粒子に含まれるシリカ粒子は、表面が疎水化処理されており、疎水性材料とのなじみが良い傾向にある。そして、本実施形態に係る樹脂粒子は、表面に疎水処理されたシリカ粒子を有しているため、疎水性材料へのなじみが良好となる。よって、本実施形態に係る樹脂粒子を疎水性材料等に添加した場合、疎水性材料中における樹脂粒子の分散性が向上する。
【0033】
以上のことから、本実施形態に係る樹脂粒子は、上記構成を有することにより、帯電量が少なく、且つ、疎水性材料への分散性が良い樹脂粒子となる。
そして、例えば、本実施形態に係る樹脂粒子を疎水性材料に添加して混合物とした場合、樹脂粒子は疎水性材料中に良好に分散する。それにより、樹脂粒子に含まれるシリカ粒子は凝集が抑制された状態で疎水性材料中に含有される。また、本実施形態に係る樹脂粒子は帯電量が少ないため、混合物の帯電も抑制される。
【0034】
以下、本実施形態に係る樹脂粒子の一例について詳細に説明する。なお、本実施形態に係る樹脂粒子は、第一及び第二の実施形態に係る樹脂粒子のいずれか一方に該当する樹脂粒子であればよい。
【0035】
(樹脂母粒子)
樹脂母粒子とは、シリカ粒子を付着させる対象となる粒子である。
樹脂母粒子は、シリカ粒子が樹脂母粒子の表面に付着しうる形状、粒子径、及び材料(成分)であれば特に制限されず、本実施形態に係る樹脂粒子の使用の用途やシリカ粒子との関係に応じて、決定されればよい。
【0036】
樹脂母粒子は、樹脂を含有する。
樹脂母粒子が含有する樹脂としては、各種の天然または合成高分子物質よりなる熱可塑性樹脂が挙げられる。
樹脂母粒子が含有する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)等のポリスチレン樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル樹脂;ポリブタジエン、ポリイソプレン等のゴム状(共)重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;塩化ビニル樹脂、ビニル芳香族樹脂、ポリビニル樹脂等のビニル系樹脂;エポキシ樹脂;共役ジエン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリウレタン樹脂;フッ素樹脂;などが、単独または混合して用いられる。
【0037】
樹脂母粒子が含有する樹脂としては、シリカ粒子の帯電量に影響を与えにくく、且つ、疎水性材料への分散性が良い樹脂粒子を得る観点から、ビニル系樹脂及び縮重合系樹脂の少なくとも1種であることが好ましい。
【0038】
ビニル系樹脂とは、ビニル基を有する単量体を重合して得られる樹脂を指す。
ビニル系樹脂としては、具体的には、スチレン骨格を有する単量体(例えば、スチレン、パラクロロスチレン、α-メチルスチレン等);(メタ)アクリル酸エステル骨格を有する単量体(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等);エチレン性不飽和ニトリル骨格を有する単量体(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等);ビニルエーテル骨格を有する単量体(例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等);ビニルケトン骨格を有する単量体(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等);オレフィン骨格を有する単量体(例えば、エチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体等が挙げられる。
【0039】
縮重合系樹脂とは、縮合反応によって得られる樹脂を指す。
縮重合系樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
縮重合系樹脂としては、ポリエステル樹脂であることがより好ましい。
ポリエステル樹脂としては、具体的には、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。
【0040】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸、この無水物又はこの低級アルキルエステルを少なくとも用いることが好ましく、脂肪族ジカルボン酸、この無水物又はこの低級アルキルエステルと、芳香族ジカルボン酸、この無水物又はこの低級アルキルエステルとを用いることがより好ましい。
多価カルボン酸としては、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)、芳香族ジオール(例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。これらの中でも、多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール、脂環式ジオールが好ましく、より好ましくは脂肪族ジオールである。
多価アルコールとしては、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上の多価アルコールを併用してもよい。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
多価アルコールは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
樹脂母粒子の体積平均粒径D50vは、シリカ粒子の帯電量に影響を与えにくく、且つ、疎水性材料への分散性が良い樹脂粒子を得る観点から、1μm以上40μm以下であることが好ましく、3μm以上20μm以下であることがより好ましく、4μm以上10μm以下であることが更に好ましい。
【0043】
樹脂母粒子の体積平均粒径D50vは、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、電解液はISOTON-II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5質量%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子について、各々の粒径を測定する。サンプリングする粒子数は50000個である。
測定された粒径について、小径側から体積基準の累積分布を描いて、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vと定義する。
【0044】
樹脂母粒子の重量平均分子量は5,000以上100,000以下であることが好ましく、10,000以上60,000以下であることがより好ましく、20,000以上30,000以下であることが更に好ましい。
【0045】
質量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法で測定される値として定義する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー(株)製GPC・HLC-8120GPCを用い、東ソー(株)製カラム・TSKgel SuperHM-M(15cm)を使用し、テトラヒドロフラン(THF)溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0046】
なお、樹脂母粒子は、目的の用途に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0047】
(シリカ粒子)
以下、樹脂母粒子の表面に存在するシリカ粒子の詳細について説明する。
ここで、シリカ粒子を、樹脂母粒子の表面に存在させる方法としては、後述のシリカ粒子と樹脂母粒子とを混合させる方法が挙げられる。
【0048】
-シリカ粒子の組成-
シリカ粒子は、四級アンモニウム塩を含有し、且つ、表面が疎水化処理されたシリカ粒子である。
ここで、シリカ粒子の表面を疎水化処理する方法としては、後述のシリカ粒子の製造方法に記載する。
【0049】
・四級アンモニウム塩
シリカ粒子は、四級アンモニウム塩を含有する。
四級アンモニウム塩は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
四級アンモニウム塩は、特に制限されず、公知の四級アンモニウム塩が適用できる。
【0050】
四級アンモニウム塩は、樹脂粒子の帯電量をより小さくする観点から、一般式(AM)で表される化合物を含むことが好ましい。一般式(AM)で表される化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0051】
【化2】
一般式(AM)中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表し、X
-は陰イオンを表す。
【0052】
R1~R4で表されるアルキル基としては、炭素数1以上20以下の直鎖状のアルキル基、炭素数3以上20以下の分岐状のアルキル基が挙げられる。
炭素数1以上20以下の直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基等が挙げられる。
炭素数3以上20以下の分岐状のアルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基等が挙げられる。
上記の中でも、R1~R4で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、テトラデシル基等の炭素数1以上15以下のアルキル基であることが好ましい。
【0053】
R1~R4で表されるアラルキル基としては、炭素数7以上30以下のアラルキル基が挙げられる。
炭素数7以上30以下のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、4-フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル 基、フェニルオクチル基、フェニルノニル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、アントラチルメチル基、フェニル-シクロペンチルメチル基等が挙げられる。
上記の中でも、R1~R4で表されるアラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、4-フェニルブチル基等の炭素数7以上15以下のアラルキル基であることが好ましい。
【0054】
R1~R4で表されるアリール基としては、炭素数6以上20以下のアリール基等が挙げられる。
炭素数6~20のアリール基としては、例えば、フェニル基、ピリジル基、ナフチル基、基等が挙げられる。
上記の中でも、R1~R4で表されるアリール基としては、フェニル基等の炭素数6以上10以下のアリール基であることが好ましい。
【0055】
X-で表される陰イオンとしては、有機陰イオン、無機陰イオンが挙げられる。
有機陰イオンとしては、ポリフルオロアルキルスルホン酸イオン、ポリフルオロアルキルカルボン酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、芳香族カルボン酸イオン、芳香族スルホン酸イオン(1-ナフトール-4-スルホン酸イオン等)などが挙げられる。
無機陰イオンとしては、MoO4
2-、OH-、F-、Fe(CN)6
3-、Cl-、Br-、NO2
-、NO3
-、CO3
2-、PO4
3-、SO4
2-等が挙げられる。
【0056】
一般式(AM)中、R1、R2、R3及びR4の2つ以上が互いに連結して環を形成していてもよい。R1、R2、R3及びR4の2つ以上が互いに連結して形成される環としては、炭素数2以上20以下の脂環、炭素数2以上20以下の複素環式アミン等が挙げられる。
【0057】
本実施形態に係るシリカ粒子は、樹脂粒子の帯電量をより小さくする観点から、一般式(AM)で表される化合物中、R1、R2、R3及びR4が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい、炭素数1以上16以下のアルキル基又は炭素数7以上10以下のアラルキル基を表すことが好ましい。
【0058】
一般式(AM)で表される化合物におけるX-以外の構造の例示を以下に示すが、本実施形態はこれに限定されない。
【0059】
【0060】
・アルミニウム原子
シリカ粒子は、アルミニウム原子を含有するシリカ粒子であることが好ましい。
アルミニウム原子を含有するシリカ粒子は、アルミニウム原子が四級アンモニウム塩と相互作用する傾向にあり、これにより、四級アンモニウム塩がシリカ粒子にさらに固定されやすくなる傾向にある。そのため、四級アンモニウム塩がシリカ粒子から更に遊離しにくく、シリカ粒子の帯電量が少ない状態がより維持される。それにより、アルミニウム原子を含有するシリカ粒子を有する樹脂粒子は、帯電量が少ない状態がより維持される。
【0061】
樹脂粒子の帯電量を少ない状態に維持する観点から、アルミニウム原子は、アルミニウム化合物により表面処理されることにより、シリカ粒子中に含有されていてもよい。
アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウム原子が酸素原子を介して有機基と結合している化合物が挙げられる。
【0062】
アルミニウム化合物における酸素原子を介してアルミニウム原子に結合する有機基(前記酸素原子を含む)としては、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルキルアセトアセテート基(アルキルアセトアセテート化合物のアニオン)、アセチルアセトナート基(アセチルアセトン化合物のアニオン)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基が好ましく挙げられ、アルコキシ基、アルキルアセトアセテート基(アルキルアセトアセテート化合物のアニオン)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基がより好ましく挙げられる。
【0063】
アルミニウム原子に酸素原子を介して有機基が結合しているアルミニウム化合物の具体例としては、例えば、アルミニウムメトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムn-プロポキシド、アルミニウムi-プロポキシド、アルミニウムn-ブトキシド、アルミニウムi-ブトキシド、アルミニウムsec-ブトキシド、アルミニウムtert-ブトキシド等のアルミニウムアルコキシド類;アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等のキレート類;アルミニウムオキサイド2-エチルヘキサノエート、アルミニウムオキサイドラウレート等のアルミニウムオキサイドアシレート類;アセチルアセトナート等のβ-ジケトン類とアルミニウムの錯体;エチルアセトアセテート等のβ-ケトエステル類とアルミニウムとの錯体;酢酸、酪酸、乳酸、クエン酸等のカルボン酸類とアルミニウムとの錯体;などが挙げられる。
【0064】
前記アルミニウム化合物は、反応速度の制御性や得られるシリカ粒子の形状、粒径、粒度分布等の点から、アルコキシ基を1個以上(より好ましく2個以上)有するアルミニウム化合物であることが好ましい。つまり、アルミニウム化合物は、アルコキシ基(酸素原子1個を介してアルミニウム原子に結合するアルキル基)がアルミニウム原子に1個以上(より好ましくは2個以上)結合しているアルミニウム化合物であることが好ましい。アルコキシ基の炭素数は、反応速度の制御性や得られるシリカ複合粒子の形状、粒径、粒度分布等の点から、8以下が好ましく、2以上4以下がより好ましい。
【0065】
中でも、前記アルミニウム化合物は、硬度均一性の観点から、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネートよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが特に好ましい。
【0066】
ここで、シリカ粒子をアルミニウム化合物により表面処理する方法としては、後述のシリカ粒子の製造方法に記載する。
【0067】
・窒素元素の存在量Nの割合(N/シリカ粒子×100)
シリカ粒子は、酸素・窒素分析で検出される四級アンモニウム塩由来の窒素元素の存在量Nの割合(N/シリカ粒子×100)が、樹脂粒子の帯電量をより小さくする観点から、0.01%以上であることが好ましく、0.02%以上1.00%以下であることがより好ましく、0.03%以上0.80%以下であることがさらに好ましい。
【0068】
前記割合(N/シリカ粒子×100)を、上記範囲内とする具体的な手法は特に制限されないが、例えば、シリカ粒子の製造において、シリカ粒子を含む懸濁液と四級アンモニウム塩とを混合する割合、時間等を調整する手法などが挙げられる。
【0069】
酸素・窒素分析は、酸素・窒素分析装置(例えば、株式会社堀場製作所社製のEMGA-920)を用いて積算時間45秒測定し、窒素元素の存在量Nの割合(N/粒子全体×100)を得る。粒子製造工程で、アンモニア等、窒素元素を含む材料を触媒として使用している場合は、ガスクロマトグラフ質量分析計(例えば、島津製作所社製 GCMS-TQ8040NX)を用いて、既知の材料の検量線から製造工程で使用した窒素元素含有物の窒素元素の存在量Nの割合(N/粒子全体×100)を得、差分を取ることで、四級アンモニウム塩由来の窒素元素の存在量とする。
【0070】
・ケイ素元素の存在量Siの割合(Si/Al)
アルミニウム原子を含有するシリカ粒子は、X線光電子分光分析で検出されるアルミニウム元素の存在量Alに対する、X線光電子分光分析で検出されるケイ素元素の存在量Siの割合(Si/Al)が、樹脂粒子の帯電量をより小さくする観点から、0.01以上0.30以下であることが好ましく、0.03以上0.2以下であることがより好ましく、0.05以上0.1以下であることがさらに好ましい。
【0071】
前記割合(Si/Al)を、上記範囲内とする具体的な手法は特に制限されないが、例えば、シリカ粒子の製造において、未処理のシリカ粒子を含む懸濁液と、アルミニウム化合物とを混合する割合、時間等を調整する手法などが挙げられる。
【0072】
-シリカ粒子の性質-
・窒素ガス吸着法の細孔分布曲線から求める頻度の最大値
シリカ粒子は、樹脂粒子の帯電量をより小さくする観点から、シリカ粒子の細孔直径2nm以下の頻度の最大値の比(下記FBEFORE/下記FAFTER)が0.9以上1.1以下であることが好ましく、0.95以上1.1以下であることがより好ましく、0.97以上1.15以下であることがさらに好ましい。
また、シリカ粒子は、樹脂粒子の帯電量をより小さくする観点から、シリカ粒子の細孔直径2nm以下の頻度の最大値の比(下記FSINTERING/下記FBEFORE)が5以上20以下であることが好ましく、5以上15以下であることがより好ましく、7以上12以下であることが更に好ましい。
【0073】
FBEFORE:洗浄前のシリカ粒子における窒素ガス吸着法の細孔分布曲線から求める細孔直径2nm以下の頻度の最大値。
FAFTER:洗浄後のシリカ粒子における窒素ガス吸着法の細孔分布曲線から求める細孔直径2nm以下の頻度の最大値。
FSINTERING:洗浄前のシリカ粒子を700℃で焼成した後のシリカ粒子における窒素ガス吸着法の細孔分布曲線から求める細孔直径2nm以下の頻度の最大値。
【0074】
洗浄前後における前記比(FBEFORE/FAFTER)を、上記範囲内とする具体的な手法は特に制限されないが、例えば、シリカ粒子の製造において、超臨界流体を用いて四級アンモニウム塩によりシリカ粒子を表面処理する手法等が挙げられる。
焼成前後における前記比(FSINTERING/FBEFORE)を、上記範囲内とする具体的な手法は特に制限されないが、例えば、シリカ粒子の製造において、超臨界流体を用いて四級アンモニウム塩によりシリカ粒子を表面処理する手法等が挙げられる。
【0075】
窒素ガス吸着法の細孔径分布曲線は、窒素ガスの吸着量測定により得られる吸着等温線から種々の計算式で導かれる。まず、吸着材であるシリカ粒子を、液体窒素温度(-196℃)に冷却して、窒素ガスを導入し、その吸着量を定容量法あるいは重量法で求める。導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットすることにより吸着等温線を作成する。この吸着等温線から、MP法、HK法、SF法、CY法等の計算式により、縦軸が頻度、横軸が細孔直径で表される細孔径分布曲線を求める。得られた細孔径分布曲線から、細孔直径2nm以下のときの頻度の最大値を求める。
【0076】
・窒素ガス吸着法の細孔分布曲線から求める頻度の最大値測定におけるシリカ粒子の洗浄方法
シリカ粒子の洗浄は、以下のようにして行う。
20mlのラボスクリュー管にシリカ粒子を1g、エタノール2.5g及びイオン交換水2.5gを入れ、超音波洗浄機(例えば、本多電子株式会社製の卓上型超音波洗浄機W-113、振動数45Hz)で混合し、混合物を得る。その後、前記混合物を、遠心分離機(例えば、KURABO社製、FB-4000)に10000rpm、30分間かけ、上澄みを廃棄した後、沈降したシリカ粒子を取り出す作業を2回繰り返し、シリカ粒子を乾燥させる。これを洗浄後のシリカ粒子とする。
【0077】
・窒素ガス吸着法の細孔分布曲線から求める頻度の最大値測定におけるシリカ粒子の焼成方法
シリカ粒子の焼成は、以下のようにして行う。
20mlの焼成用るつぼにシリカ粒子を1g入れ、焼成機(例えば、アドバンテック東洋株式会社製のKM-100)を用いて窒素雰囲気下、600℃、1時間の条件でシリカ粒子を焼成し、得られた焼成物を、焼成後のシリカ粒子とする。
【0078】
・シリカ粒子の数平均粒径D50p
シリカ粒子の数平均粒径D50pは、樹脂粒子の帯電量をより小さくする観点から、5nm以上200nm以下であることが好ましく、5nm以上100nm以下であることがより好ましく、10nm以上80nm以下であることが更に好ましい。
【0079】
シリカ粒子の数平均粒径D50pは、以下の様にして求める。
シリカ粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮像し、画像解析によって、任意に選んだ一次粒子100個それぞれの円相当径(nm)を求める。そして、円相当径の分布における小径側から累積50%(50個目)の円相当径を数平均粒径D50pとする。
【0080】
・シリカ粒子の平均細孔径
シリカ粒子の平均細孔径は、樹脂粒子の帯電量をより小さくする観点から、0.55nm以上2.00nm以下であることが好ましく、0.55nm以上1.50nm以下であることがより好ましく、0.55nm以上1.00nm以下であることがさらに好ましい。
【0081】
シリカ粒子の平均細孔径は、窒素ガスの吸着量測定により得られる吸着等温線から種々の計算式で導かれる。まず、吸着材であるシリカ粒子を、液体窒素温度(-196℃)に冷却して、窒素ガスを導入し、その吸着量を定容量法あるいは重量法で求める。導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットすることにより吸着等温線を作成する。この吸着等温線から、MP法、HK法、SF法、CY法等の計算式により、平均細孔径を求める。
窒素ガスの吸着測定は、高精度ガス吸着量測定装置(例えば、マイクロトラックベル社のBELSORP MAX II)、超高純度窒素ガスを用い、液体窒素下(77.4K)で実施する。
【0082】
シリカ粒子における平均細孔径を、上記範囲内とする具体的な手法は特に制限されないが、例えば、1)造粒時の液組成を調整する手法;2)粒子造粒時の滴下速度を調整する手法;3)乾燥温度を調整する手法などが挙げられる。
【0083】
-シリカ粒子の製造方法-
シリカ粒子の製造方法は、シリカ粒子を含む懸濁液を準備する準備工程と、前記懸濁液と四級アンモニウム塩とを混合し前記シリカ粒子を四級アンモニウム塩により表面処理する第一表面処理工程と、前記四級アンモニウム塩により表面処理されたシリカ粒子を有機ケイ素化合物により表面処理する第二表面処理工程をこの順で含む。
【0084】
シリカ粒子の製造方法は、第一表面処理工程を有する。第一表面処理工程では、シリカ粒子の表面に四級アンモニウム塩が固定化される。そのため、四級アンモニウム塩により粒子表面においてシリカ表面と逆極電荷が存在するため摩擦帯電しづらく、帯電量が少ないシリカ粒子が製造され易くなる。
【0085】
また、シリカ粒子の製造方法は、第二表面処理工程を有する。第二表面処理工程では、前記四級アンモニウム塩により表面処理されたシリカ粒子の表面が疎水化処理される。そのため、シリカ粒子は疎水性材料とのなじみが良好となる。そして、当該シリカ粒子を表面に有する本実施形態に係る樹脂粒子を疎水性材料等に添加した場合、疎水性材料中における樹脂粒子の分散性が向上する。
【0086】
以下、シリカ粒子の製造方法の工程を詳細に説明する。
【0087】
・準備工程
シリカ粒子の製造方法は、準備工程を含む。
準備工程では、シリカ粒子を含む懸濁液を準備する。
【0088】
準備工程としては、例えば、シリカ粒子を含むシリカ粒子懸濁液を準備する工程(1-a)を含む。
また、準備工程としては、必要に応じて、前記工程(1-a)に続いて、前記シリカ粒子懸濁液とアルミニウム化合物とを混合して、前記シリカ粒子を前記アルミニウム化合物によりアルミニウム複合処理する工程(1-b)を含んでいてもよい。
【0089】
工程(1-a)としては、例えば、
(i)アルコールを含む溶媒とシリカ粒子とを混合してシリカ粒子懸濁液を準備する工程
(ii)シリカ粒子をゾルゲル法により造粒してシリカ粒子懸濁液を得る工程
等が挙げられる。
前記(i)に用いるシリカ粒子としては、ゾルゲルシリカ粒子(ゾルゲル法により得られたシリカ粒子)、水性コロイダルシリカ粒子、アルコール性シリカ粒子、気相法により得られるフェームドシリカ粒子、溶融シリカ粒子等が挙げられる。
前記(i)に用いるアルコールを含む溶媒は、アルコール単独の溶媒であってもよいし、アルコールとその他の溶媒との混合溶媒であってもよい。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコールが挙げられる。その他の溶媒としては、水;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸セロソルブ等のセロソルブ類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;などが挙げられる。混合溶媒の場合、アルコールの割合は80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
【0090】
工程(1-a)は、シリカ粒子をゾルゲル法により造粒してシリカ粒子懸濁液を得る工程であることが好ましい。
より具体的に、工程(1-a)は、例えば、
アルコールを含む溶媒中にアルカリ触媒が含まれるアルカリ触媒溶液を準備するアルカリ触媒溶液準備工程と、
アルカリ触媒溶液中にテトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒を供給して、シリカ粒子を生成させるシリカ粒子生成工程と、
を含むゾルゲル法であることが好ましい。
【0091】
アルカリ触媒溶液準備工程は、アルコールを含む溶媒を準備し、この溶媒とアルカリ触媒とを混合して、アルカリ触媒溶液を得る工程であることが好ましい。
【0092】
アルコールを含む溶媒は、アルコール単独の溶媒であってもよいし、アルコールとその他の溶媒との混合溶媒であってもよい。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコールが挙げられる。その他の溶媒としては、水;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸セロソルブ等のセロソルブ類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;などが挙げられる。混合溶媒の場合、アルコールの割合は80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
【0093】
アルカリ触媒は、テトラアルコキシシランの反応(加水分解反応と縮合反応)を促進させるための触媒であり、例えば、アンモニア、尿素、モノアミン等の塩基性触媒が挙げられ、特にアンモニアが好ましい。
【0094】
アルカリ触媒溶液におけるアルカリ触媒の濃度は、生成されるシリカ粒子の粒径の均一性及び円形度を高める観点から、0.5mol/L以上1.0mol/L以下が好ましく、0.6mol/L以上0.8mol/L以下がより好ましく、0.65mol/L以上0.75mol/L以下がより好ましい。
【0095】
シリカ粒子生成工程は、アルカリ触媒溶液中にテトラアルコキシシランとアルカリ触媒とをそれぞれ供給し、アルカリ触媒溶液中でテトラアルコキシシランを反応(加水分解反応と縮合反応)させて、シリカ粒子を生成する工程である。
【0096】
シリカ粒子生成工程では、テトラアルコキシシランの供給初期にテトラアルコキシシランの反応により核粒子が生成した後(核粒子生成段階)、この核粒子の成長を経て(核粒子成長段階)、シリカ粒子が生成する。
【0097】
テトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。反応速度の制御性又は生成するシリカ粒子の形状の均一性の観点から、テトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランが好ましい。
【0098】
アルカリ触媒溶液中に供給するアルカリ触媒としては、例えば、アンモニア、尿素、モノアミン、四級アンモニウム塩等の塩基性触媒が挙げられ、特にアンモニアが好ましい。テトラアルコキシシランと共に供給されるアルカリ触媒は、アルカリ触媒溶液中に予め含まれるアルカリ触媒と同じ種類のものであってもよいし、異なる種類のものであってもよいが、同じ種類のものであることがよい。
【0099】
アルカリ触媒溶液中にテトラアルコキシシランとアルカリ触媒とをそれぞれ供給する供給方式は、連続的に供給する方式であってもよいし、間欠的に供給する方式であってもよい。
【0100】
シリカ粒子生成工程において、アルカリ触媒溶液の温度(供給時の温度)は、5℃以上50℃以下が好ましく、15℃以上40℃以下がより好ましい。
【0101】
シリカ粒子生成工程において、アルカリ触媒溶液の温度(供給時の温度)は、5℃以上50℃以下が好ましく、15℃以上40℃以下がより好ましい。
【0102】
工程(1-b)は、シリカ粒子懸濁液とアルミニウム化合物とを混合して、シリカ粒子をアルミニウム化合物によりアルミニウム複合処理する工程である。
工程(1-b)を経ることによって、アルミニウム化合物の官能基(例えば、アルコキシ基等の有機基)とシリカ粒子表面のシラノール基とが反応し、アルミニウム化合物により表面処理されたシリカ粒子が生成する。
【0103】
工程(1-b)は、例えば、シリカ粒子懸濁液にアルミニウム化合物を添加し、攪拌下において、例えば20℃以上80℃以下の温度範囲で反応させる方法により実施される。
【0104】
アルミニウム化合物としては、アルミニウム原子に酸素原子を介して結合した有機基を有する化合物が好ましい。該化合物としては、例えば、アルミニウムメトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムn-プロポキシド、アルミニウムi-プロポキシド、アルミニウムn-ブトキシド、アルミニウムi-ブトキシド、アルミニウムsec-ブトキシド、アルミニウムtert-ブトキシド等のアルミニウムアルコキシド類;アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等のキレート類;アルミニウムオキサイド2-エチルヘキサノエート、アルミニウムオキサイドラウレート等のアルミニウムオキサイドアシレート類;アセチルアセトナート等のβ-ジケトン類とアルミニウムの錯体;エチルアセトアセテート等のβ-ケトエステル類とアルミニウムの錯体;トリエタノールアミン等のアミン類とアルミニウムの錯体;酢酸、酪酸、乳酸、クエン酸等のカルボン酸類とアルミニウムの錯体;などが挙げられる。
【0105】
アルミニウム化合物は、反応速度の制御性又は生成するアルミニウム結合シリカ粒子の形状、粒径、粒度分布等の観点から、アルコキシ基を1個以上(好ましくは2個以上)有するアルミニウム化合物であることが好ましい。つまり、アルミニウム化合物は、アルコキシ基(酸素原子1個を介してアルミニウム原子に結合するアルキル基)がアルミニウム原子に1個以上(好ましくは2個以上)結合しているアルミニウム化合物であることが好ましい。アルコキシ基の炭素数は、反応速度の制御性又は生成するアルミニウム結合シリカ粒子の形状、粒径、粒度分布等の観点から、8以下が好ましく、2以上4以下がより好ましい。
【0106】
アルミニウム化合物の好ましい具体例としては、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等のキレート類が挙げられる。
【0107】
工程(1-b)は、シリカ粒子懸濁液と、アルコール中にアルミニウム化合物が含まれるアルコール液とを混合することにより実施されることが好ましい。したがって、シリカ粒子の製造方法は、アルコール中にアルミニウム化合物が含まれるアルコール液を準備する工程をさらに含み、予め該工程を実施しておくことが好ましい。
【0108】
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコールが挙げられる。
【0109】
アルミニウム化合物がアルコキシ基を有する化合物である場合、反応速度の制御性又は生成するアルミニウム結合シリカ粒子の形状、粒径、粒度分布等の観点から、アルコールは、アルミニウム化合物のアルコキシ基の炭素数よりも小さい炭素数(具体的には、例えば、炭素数差が2以上4以下)のアルコールであることが好ましい。
【0110】
アルコールは、シリカ粒子懸濁液に含まれるアルコールと同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよいが、同じ種類であることがより好ましい。
【0111】
アルコール中にアルミニウム化合物が含まれるアルコール液において、アルミニウム化合物濃度は0.05質量%以上10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0112】
アルミニウム化合物の総量は、反応速度の制御性又は生成するアルミニウム結合シリカ粒子の形状、粒径、粒度分布等の観点から、シリカ粒子懸濁液の固形分に対して、下限としては0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、上限としては10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。
【0113】
アルミニウム化合物によるシリカ粒子の表面処理条件は、特に制限はなく、例えば、攪拌下において5℃以上50℃以下の温度範囲で、アルミニウム化合物を反応させることで行う。
【0114】
[第一表面処理工程]
シリカ粒子の製造方法は、第一表面処理工程を含む。
第一表面処理工程では、前記懸濁液と四級アンモニウム塩とを混合し、前記シリカ粒子を四級アンモニウム塩により表面処理された粉体を得る。
第一表面処理工程において、超臨界流体を用いる工程を用いると、四級アンモニウム塩がシリカ粒子の細孔へ浸透しやすくなり、洗浄してもシリカ粒子に含有される四級アンモニウム塩が脱離し難いシリカ粒子が得られる。
また、スプレードライ法によっても洗浄してもシリカ粒子に含有される四級アンモニウム塩が脱離し難いシリカ粒子が得られる。
【0115】
四級アンモニウム塩の好ましい例としては、上述のシリカ粒子に含有される四級アンモニウム塩で例示したものと同様のものが挙げられる。
【0116】
四級アンモニウム塩の総量は、シリカ粒子を含む懸濁液の固形分に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上5質量%以下であることが更に好ましい。
【0117】
四級アンモニウム塩によるシリカ粒子の表面処理条件は、特に制限はなく、例えば、攪拌下において20℃以上50℃以下の温度範囲で、四級アンモニウム塩を反応させることで行う。
【0118】
第一表面処理工程は、例えば、シリカ粒子懸濁液と、アルコール中に四級アンモニウム塩が含まれるアルコール液とを混合することにより行う。また、超臨界流体を流通させることにより実施されることが好ましい。したがって、シリカ粒子の製造方法は、アルコール中に四級アンモニウム塩が含まれるアルコール液を準備する工程をさらに含み、予め該工程を実施しておくことが好ましい。
【0119】
アルコールは、シリカ粒子懸濁液に含まれるアルコールと同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよいが、同じ種類であることがより好ましい。
【0120】
アルコール中に四級アンモニウム塩が含まれるアルコール液において、四級アンモニウム塩の濃度は0.05質量%以上10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上6質量%以下がより好ましい。
【0121】
超臨界流体として用いられる物質としては、二酸化炭素、水、メタノール、エタノール、アセトン等が挙げられる。第一表面処理工程は、処理効率の観点と、粗大粒子の発生を抑制する観点とから、超臨界二酸化炭素を用いる工程であることが好ましい。
【0122】
第一表面処理工程は、具体的には、例えば以下の操作によって行う。
密閉反応器に、前記シリカ粒子を含む懸濁液と四級アンモニウム塩とを収容し、混合する。次いで、この密閉反応器に対し、液化二酸化炭素を導入した後、密閉反応器を加熱すると共に高圧ポンプにより密閉反応器内を昇圧させ、密閉反応器内の二酸化炭素を超臨界状態とする。そして、密閉反応器に液化二酸化炭素を流入させ、密閉反応器から超臨界二酸化炭素を流出させることで、密閉反応器内において懸濁液に超臨界二酸化炭素を流通させる。懸濁液に超臨界二酸化炭素が流通する間に、溶媒が超臨界二酸化炭素に溶解し、密閉反応器外へ流出する超臨界二酸化炭素に同伴して溶媒が除去される。
上記の密閉反応器内の温度及び圧力は、二酸化炭素を超臨界状態にする温度及び圧力とする。二酸化炭素の臨界点が31.1℃/7.38MPaであるところ、例えば、温度40℃以上200℃以下/圧力10MPa以上30MPa以下の温度及び圧力とする。
【0123】
第一表面処理工程における超臨界流体の流量は、80mL/秒以上240mL/秒以下であることが好ましい。
【0124】
[第二表面処理工程]
シリカ粒子の製造方法は、前記第一表面処理工程の後に、第二表面処理工程を更に含む。
第二表面処理工程では、前記四級アンモニウム塩により表面処理されたシリカ粒子を有機ケイ素化合物により表面処理する。
第二表面処理工程を経ることによって、有機ケイ素化合物の官能基とシリカ粒子表面のOH基とが反応し、例えば、表面に-Si-O-Si-R(Rは有機基)なる原子団を含むシリカ粒子が生成される傾向にある。
第二表面処理工程は、湿式処理を用いてもよいし、超臨界処理を用いてもよい。
第二表面処理工程は、疎水性材料への分散性が良い樹脂粒子を得る観点から、超臨界処理を用いることが好ましい。
第二表面処理工程を経ることで、表面が疎水化処理されたシリカ粒子を得ることができる。
【0125】
湿式処理による第二表面処理工程は、具体的には、例えば以下の操作によって行う。第一表面処理工程の後のシリカ粒子懸濁液を撹拌機で混合しながら60℃に加熱し有機ケイ素化合物を添加、表面処理を行う。撹拌を持続する時間は、10分間以上24時間以下が好ましく、20分間以上120分間以下がより好ましく、20分間以上90分間以下が更に好ましい。
【0126】
超臨界処理による第二表面処理工程は、具体的には、例えば以下の操作によって行う。
超臨界流体を用いると、有機ケイ素化合物とシリカ粒子表面との反応効率がよく、高度の表面処理がなされると考えられる。
超臨界流体として用いられる物質としては、二酸化炭素、水、メタノール、エタノール、アセトン等が挙げられる。第二表面処理工程は、処理効率の観点と、粗大粒子の発生を抑制する観点とから、超臨界二酸化炭素を用いる工程であることが好ましい。
【0127】
攪拌機を備えた密閉反応器に、粉体、つまり、四級アンモニウム塩で表面処理されたシリカ粒子と有機ケイ素化合物とを収容し、次いで、液化二酸化炭素を導入した後、密閉反応器を加熱すると共に高圧ポンプにより密閉反応器内を昇圧させ、密閉反応器内の二酸化炭素を超臨界状態とする。そして、攪拌機を運転し、反応系内を攪拌する。
上記の密閉反応器内の温度及び圧力は、二酸化炭素を超臨界状態にする温度及び圧力とする。二酸化炭素の臨界点が31.1℃/7.38MPaであるところ、例えば、温度40℃以上200℃以下/圧力10MPa以上30MPa以下の温度及び圧力とする。攪拌を持続する時間は、10分間以上24時間以下が好ましく、20分間以上120分間以下がより好ましく、20分間以上90分間以下が更に好ましい。
【0128】
有機ケイ素化合物としては、例えば、
メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン等の低級アルキル基を有するシラン化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するシラン化合物;
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基を有するシラン化合物;
p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン等のスチリル基を有するシラン化合物;
N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノアルキル基を有するシラン化合物;
3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネートアルキル基を有するシラン化合物;
ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン等のシラザン化合物;なども挙げられる。
【0129】
[溶媒除去工程]
シリカ粒子の製造方法は、必要に応じて、溶媒除去工程を更に含んでいてもよい。
溶媒除去工程では、前記四級アンモニウム塩により表面処理されたシリカ粒子を含む懸濁液を、乾燥して溶媒を除去して粉体を得る。乾燥としては、例えば、熱乾燥、噴霧乾燥、超臨界乾燥が挙げられる。
【0130】
熱乾燥、噴霧乾燥は、乾燥終点において粒子間で表面張力が働きやすくなるため、粒子凝集により粗大粒子が発生し易いが有機ケイ素化合物にて表面処理を施す事により、粗大粒子の発生を抑制する事が可能となる。
【0131】
噴霧乾燥は、市販のスプレイドライヤー(ディスク回転式やノズル式等がある)を用いた従来公知の方法で行うことができる。例えば、熱風気流中に0.2リットル/時間以上1リットル/時間以下の速度で噴霧液を噴霧することによって行われる。この際、熱風の温度は、入口温度で70℃以上400℃以下、出口温度で40℃以上120℃以下の範囲にあることが好ましい。ここで、入口温度が70℃未満であると、分散液中に含まれる固形分の乾燥が不充分となる。また400℃を超えると、噴霧乾燥時に粒子の形状が歪んでしまう。また、出口温度が40℃未満であると、固形分の乾燥度合いが悪くて装置内に付着してしまう。より好ましい入口温度は、100℃以上300℃以下の範囲である。
噴霧乾燥時のシリカ粒子懸濁液のシリカ粒子濃度は、固形分で10重量%以上30重量%以下の範囲が好ましい。
【0132】
超臨界乾燥は、超臨界流体によって溶媒を除去することにより、粒子間での表面張力が働き難く、懸濁液中に含まれる一次粒子が、凝集が抑制された状態で乾燥される。そのため、粒径の均一性が高い、四級アンモニウム塩で表面処理されたシリカ粒子が得られ易くなる。
【0133】
超臨界流体として用いられる物質としては、二酸化炭素、水、メタノール、エタノール、アセトン等が挙げられる。溶媒除去工程は、処理効率の観点と、粗大粒子の発生を抑制する観点とから、超臨界二酸化炭素を用いる工程であることが好ましい。
【0134】
溶媒除去工程は、具体的には、例えば以下の操作によって行う。
密閉反応器に懸濁液を収容し、次いで液化二酸化炭素を導入した後、密閉反応器を加熱すると共に高圧ポンプにより密閉反応器内を昇圧させ、密閉反応器内の二酸化炭素を超臨界状態とする。そして、密閉反応器に液化二酸化炭素を流入させ、密閉反応器から超臨界二酸化炭素を流出させることで、密閉反応器内において懸濁液に超臨界二酸化炭素を流通させる。懸濁液に超臨界二酸化炭素が流通する間に、溶媒が超臨界二酸化炭素に溶解し、密閉反応器外へ流出する超臨界二酸化炭素に同伴して溶媒が除去される。
上記の密閉反応器内の温度及び圧力は、二酸化炭素を超臨界状態にする温度及び圧力とする。二酸化炭素の臨界点が31.1℃/7.38MPaであるところ、例えば、温度40℃以上200℃以下/圧力10MPa以上30MPa以下の温度及び圧力とする。
【0135】
溶媒除去工程における超臨界流体の流量は、80mL/秒以上240mL/秒以下であることが好ましい。
【0136】
得られたシリカ粒子に対しては、必要に応じて解砕又は篩分を行って、粗大粒子や凝集物の除去を行うことが好ましい。解砕は、例えば、ジェットミル、振動ミル、ボールミル、ピンミル等の乾式粉砕装置により行う。篩分は、例えば、振動篩、風力篩分機等により行う。
【0137】
(樹脂粒子の特性)
-樹脂粒子の熱分解質量分析-
本実施形態に係る樹脂粒子は、洗浄前の樹脂粒子における熱分解質量分析によって得られる四級アンモニウム塩の熱分解物に由来する検出温度を検出温度Aとし、洗浄後の樹脂粒子における熱分解質量分析によって得られる四級アンモニウム塩の熱分解物に由来する検出温度を検出温度Bとした場合における、前記検出温度Aと前記検出温度Bとの差(検出温度A-検出温度B)が50℃超過である。
【0138】
前記検出温度Aと前記検出温度Bとの差(検出温度A-検出温度B)が50℃超過であることにより、四級アンモニウム塩がシリカ粒子から遊離しにくくなる。そのため、前記検出温度Aと前記検出温度Bとの差(検出温度A-検出温度B)が50℃超過であることにより、樹脂粒子の帯電量が少ない状態が維持される。
【0139】
樹脂粒子の帯電量が少ない状態を維持する観点から、前記検出温度Aと前記検出温度Bとの差(検出温度A-検出温度B)は50℃超過250℃以下であることが好ましく、50℃超過200℃以下であることがより好ましく、60℃以上175℃以下であることが更に好ましく、75℃以上150℃以下であることが特に好ましく、75℃以上120℃以下であることが最も好ましい。
【0140】
樹脂粒子の帯電量が少ない状態を維持する観点から、前記検出温度Aは200℃以上700℃以下であることが好ましく、300℃以上500℃以下であることがより好ましく、300℃以上400℃以下であることが更に好ましく、300℃以上350℃以下であることが最も好ましい。
また、樹脂粒子の帯電量が少ない状態を維持する観点から、前記検出温度Bは150℃以上600℃以下であることが好ましく、200℃以上400℃以下であることがより好ましく、200℃以上350℃以下であることが更に好ましく、200℃以上300℃以下であることが最も好ましい。
【0141】
ここで、「四級アンモニウム塩の熱分解物」とは、後述の熱分解装置によって樹脂粒子を加熱した際に発生する、樹脂粒子中のシリカ粒子に含有される四級アンモニウム塩が分解し、ガスとして揮発した成分を指す。四級アンモニウム塩の熱分解物としては、例えば、四級アンモニウム塩の窒素原子に結合する4つの置換基の内、1つの置換基が脱離して生じる三級アミン;四級アンモニウム塩の窒素原子に結合する4つの置換基の内、2つの置換基が脱離して生じる二級アミン;四級アンモニウム塩の窒素原子に結合する4つの置換基の内、3つの置換基が脱離して生じる一級アミン;等が挙げられる。
【0142】
「四級アンモニウム塩の熱分解物に由来する検出温度」とは、後述の熱分解装置によって得られるEGAサーモグラムの内、四級アンモニウム塩の熱分解物に由来するピークのピーク頂点に該当する温度を指す。
【0143】
以下に、前記検出温度A及び前記検出温度Bの測定方法について説明する。
前記検出温度A及び前記検出温度Bの測定には、株式会社島津製作所製のGCMS-QP2020 NXを使用する。
樹脂粒子10mgを秤量し、熱分解装置に入れる。熱分解装置及びガスクロマトグラフ質量分析装置を下記条件に設定し熱分解質量分析を行い、樹脂粒子から生じる熱分解物のEGAサーモグラム及びMSスペクトルを得る。続いて、MSスペクトルの測定結果から、得られたEGAサーモグラムのピークに含まれる成分を同定する。そして、EGAサーモグラムのピークの中から、四級アンモニウム塩の熱分解物に由来するピークを特定し、当該ピーク頂点に該当する温度を検出温度Aとする。
検出温度Bの測定は、後述の洗浄を行った樹脂粒子を10mg秤量して、熱分解装置に入れること以外は、検出温度Aの測定手順と同様の手順で行う。
【0144】
ここで、EGAサーモグラムのピークの中から、四級アンモニウム塩の熱分解物に由来するピークを特定する方法は次の通りである。
EGAサーモグラムの各ピークに由来する成分について、ガスクロマトグラフ質量分析を行うことで得られるMSスペクトルを確認する。そして、四級アンモニウム塩の熱分解物から発生するフラグメントイオンが検出されているMSスペクトルを特定する。EGAサーモグラムのうち、四級アンモニウム塩の熱分解物から発生するフラグメントイオンが検出されているMSスペクトルに対応するピークが、四級アンモニウム塩の熱分解物に由来するピークと特定する。
【0145】
なお、前記検出温度A及び前記検出温度Bの測定は、シリカ粒子単独で行ってもよい。シリカ粒子単独で測定する場合、熱分解装置に入れるシリカ粒子の量を0.5mgとすること以外は上述と同様の手順で前記検出温度A及び前記検出温度Bの測定を行う。
なお、後述の洗浄は、樹脂粒子に変えてシリカ粒子を0.5mg添加して行うこと以外は同様の手順で行う。
【0146】
シリカ粒子が四級アンモニウム塩の熱分解物と同一の化合物をあらかじめ含有する場合、前記検出温度A及び前記検出温度Bの測定をシリカ粒子単独で行う際、下記工程にてシリカ粒子を予備洗浄した後に、上述の熱分解質量分析を行う。
【0147】
・予備洗浄
20mlのラボスクリュー管にシリカ粒子を1g、洗浄液としてメタノール5.0gを入れ、超音波洗浄機(例えば、本多電子株式会社製の卓上型超音波洗浄機W-113、振動数45Hz)で混合し、混合物を得る。その後、前記混合物を、遠心分離機(例えば、KURABO社製、FB-4000)に10000rpm、30分間かけ、上澄みを廃棄した後、沈降したシリカ粒子を取り出す作業を2回繰り返し、シリカ粒子を乾燥させる。
【0148】
なお、シリカ粒子が四級アンモニウム塩の熱分解物と同一の化合物(例えば、トリアルキルアミン)をあらかじめ含有する場合、四級アンモニウム塩の熱分解物と同一の化合物の同定は、前記予備洗浄における超音波洗浄後の洗浄液をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で分析することで行う。
【0149】
-静電容量の比-
樹脂粒子は、樹脂粒子の帯電量をより小さくする観点から、静電容量の比(下記CAFTER/下記CBEFORE)が1.5以下であることが好ましく、1.3以下であることがより好ましく、1.1以下であることがさらに好ましい。
【0150】
CBEFORE:洗浄前の樹脂粒子と、ガラス粒子とを、特定条件で混合し混合物とした後、前記混合物から分離された樹脂粒子の静電容量。
CAFTER:洗浄後の樹脂粒子と、ガラス粒子とを、特定条件で混合し混合物とした後、前記混合物から分離された樹脂粒子の静電容量。
【0151】
洗浄前後における前記比(CAFTER/CBEFORE)を、上記範囲内とする具体的な手法は特に制限されないが、例えば、シリカ粒子の製造において、超臨界流体を用いて四級アンモニウム塩によりシリカ粒子を表面処理する手法等が挙げられる。
【0152】
ガラス粒子は、特には限定されないが、ユニチカ社製 SPLシリーズを用いる。
特定条件とは、以下の条件を指す。
質量比率:樹脂粒子/ガラス粒子=1/10
混合温度:室温(10℃)
混合装置:ヘンシェルミキサー(例えば、日本コークス社製のFMミキサ)
混合時間:5分
混合速度:49rpm
【0153】
静電容量は、以下のようにして測定する。
上記ターブラシェーカー・ミキサーで撹拌後のサンプル2gを、20μmメッシュステンレス製金網を張った金属容器に入れ、帯電量測定装置(例えば、東芝ケミカル社製のTB-200)により測定する。
【0154】
-検出温度Bの測定及び静電容量の測定における樹脂粒子の洗浄方法-
樹脂粒子の洗浄は、以下のようにして行う。
50mlのラボスクリュー管に樹脂粒子を2g、エタノール10g及びイオン交換水10gを入れ、超音波洗浄機(例えば、本多電子株式会社製の卓上型超音波洗浄機W-113、振動数45Hz)で混合し、混合物を得る。その後、前記混合物を、遠心分離機(例えば、KURABO社製、FB-4000)に10000rpm、30分間かけ、上澄みを廃棄した後、沈降した樹脂粒子を取り出す作業を2回繰り返し、樹脂粒子を乾燥させる。これを洗浄後の樹脂粒子とする。
【0155】
-粒径の比-
樹脂母粒子の体積平均粒径D50vに対する、シリカ粒子の数平均粒径D50pの比(シリカ粒子の数平均粒径D50p/樹脂母粒子の体積平均粒径D50v)は、0.002以上0.05以下であることが好ましく、0.004以上0.02以下であることがより好ましく、0.008以上0.015以下であることが更に好ましい。
【0156】
(樹脂粒子の製造方法)
本実施形態に係る樹脂粒子は、シリカ粒子を、樹脂母粒子の表面に付着することで得られる。
シリカ粒子を樹脂母粒子の表面に付着させる方法としては、例えば、シリカ粒子と、樹脂母粒子と、をV型ブレンダーやヘンシェルミキサー、レディゲミキサー等に添加して攪拌する方法が挙げられ、段階を分けてシリカ粒子を樹脂母粒子の表面に付着させてもよい。
【0157】
本実施形態に係る樹脂粒子は、既述のとおり、樹脂母粒子の表面に計算被覆率が5%以上80%以下となる範囲でシリカ粒子を付着していることが好ましい。
シリカ粒子の付着量を上記範囲とするには、V型ブレンダーやヘンシェルミキサー、レディゲミキサー等には、樹脂母粒子の全質量に対して、0.1質量%以上10質量%以下のシリカ粒子を添加すればよい。
【実施例】
【0158】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0159】
<シリカ粒子の製造>
[シリカ粒子S1~S9]
(準備工程)
以下に示すようにして、シリカ粒子を含む懸濁液を準備した。
【0160】
-アルカリ触媒溶液の準備-
金属製攪拌棒、滴下ノズル及び温度計を備えたガラス製反応容器に、表1に示す量のメタノール、イオン交換水、及び10%アンモニア水(NH4OH)を入れ、攪拌混合して、アルカリ触媒溶液を得た。
【0161】
-ゾルゲル法によるシリカ粒子の造粒-
アルカリ触媒溶液の温度を25℃に調整し、アルカリ触媒溶液を窒素置換した。次いで、アルカリ触媒溶液を攪拌しながら、表1に示す量のテトラメトキシシラン(TMOS)と、触媒(NH3)濃度4.4%のアンモニア水(NH4OH)176質量部とを、同時に滴下し、シリカ粒子懸濁液を得た。
【0162】
-四級アンモニウム塩を含むアルコール液の準備-
表1に示す種類の四級アンモニウム塩をブタノールで希釈したアルコール液を作製した。
【0163】
(第一表面処理工程)
前記シリカ粒子の懸濁液の温度を25℃に調整し、25℃に調整した前記アルコール液を添加した。この際、アルコール液の添加は、シリカ粒子懸濁液の固形分100質量部に対して四級アンモニウム塩の部数が表1に示す量となるように行った。次いで、30℃で30分間攪拌し、四級アンモニウム塩を含有するシリカ粒子を含む懸濁液を得た。
【0164】
続いて、反応槽に、前記四級アンモニウム塩を含有するシリカ粒子を含む懸濁液を、300質量部収容し、攪拌しながらCO2を入れ、反応槽内を120℃/20MPaまで昇温昇圧した。温度と圧力を維持した状態で攪拌しながら、CO2を流量5L/minにて流入及び流出させた。その後、120分間かけて溶媒を除去し、粉体を得た。
【0165】
(第二表面処理工程)
反応槽内に残った粉体100質量部に対して、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を100質量部投入した。材料を攪拌しながら、反応槽内をCO2で満たし、反応槽内を150℃/15MPaまで昇温昇圧した。温度と圧力を維持した状態で、30分間攪拌を続けた。次いで、圧力を大気圧まで開放し、室温(25℃)まで冷却した。その後、攪拌機を停止し、粉体であるシリカ粒子を得た。
【0166】
[シリカ粒子CS1]
第二表面処理工程を行なわない仕様とした以外は、シリカ粒子S1と同様の手法によりシリカ粒子を製造した。
【0167】
[シリカ粒子S10]
(準備工程)
-アルカリ触媒溶液の準備-
金属製攪拌棒、滴下ノズル及び温度計を備えたガラス製反応容器に、表1に示す量のメタノール、イオン交換水、及び10%アンモニア水(NH4OH)を入れ、攪拌混合して、アルカリ触媒溶液を得た。
【0168】
-ゾルゲル法によるシリカ粒子の造粒-
アルカリ触媒溶液の温度を45℃に調整し、アルカリ触媒溶液を窒素置換した。次いで、アルカリ触媒溶液を攪拌しながら、表1に示す量のテトラメトキシシラン(TMOS)と、触媒(NH3)濃度4.4%のアンモニア水(NH4OH)186質量部を、同時に滴下し、シリカ粒子懸濁液を製造した。
【0169】
-四級アンモニウム塩を含むアルコール液の準備-
表1に示す種類の四級アンモニウム塩をブタノールで希釈したアルコール液を作製した。
【0170】
-四級アンモニウム塩処理及び表面処理(第一及び第二表面処理工程)-
前記シリカ粒子の懸濁液の温度を25℃に調整し、25℃に調整した前記アルコール液を添加した。この際、アルコール液の添加は、シリカ粒子懸濁液の固形分100質量部に対して四級アンモニウム塩の部数が表1に示す量となるように行った。次いで、30℃で30分間攪拌し、四級アンモニウム塩を含有するシリカ粒子を含む懸濁液を得た。
次いで、懸濁液の温度を55℃に調整し、粉体100質量部に対して、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を100質量部投入した。材料を攪拌しながら、1時間表面処理を行い、シリカ粒子の懸濁液を得た。
【0171】
(溶媒除去工程)
前記シリカ粒子の懸濁液からの溶媒除去は、ミニスプレードライヤー B―290(日本ビュッヒ株式会社製)にて行った。シリンダー内のインプット温度を200℃、シリカ粒子懸濁液を0.2L/時間の送液速度で送液し、噴霧乾燥にて溶媒除去を行い乾燥後のシリカ粒子を得た。
【0172】
[シリカ粒子CS2]
第一表面処理工程を、四級アンモニウム塩による表面処理を行わない仕様、つまり、下記の仕様とした以外は、シリカ粒子S1と同様の手法によりシリカ粒子を製造した。
【0173】
反応槽に、前記シリカ粒子の懸濁液を、300質量部収容し、攪拌しながらCO2を入れ、反応槽内を120℃/20MPaまで昇温昇圧した。温度と圧力を維持した状態で攪拌しながら、CO2を流量5L/min/m3にて流入及び流出させた。その後、120分間かけて溶媒を除去し、粉体を得た。
【0174】
[シリカ粒子CS3]
特開2017-39618号公報の実施例1に記載の製造方法に基づいて、シリカ粒子を製造した。
【0175】
【0176】
[シリカ粒子SA11~SA20]
(準備工程)
まず、以下に示すようにして、各例におけるアルミニウム原子を含有するシリカ粒子を含む懸濁液を準備した。
【0177】
金属製攪拌棒、滴下ノズル及び温度計を備えたガラス製反応容器に、表2に示す量のメタノール、イオン交換水、及び10%アンモニア水(NH4OH)を入れ、攪拌混合して、アルカリ触媒溶液を得た。
【0178】
アルカリ触媒溶液の温度を25℃に調整し、アルカリ触媒溶液を窒素置換した。次いで、アルカリ触媒溶液を攪拌しながら、表2に示す量のテトラメトキシシラン(TMOS)と、触媒(NH3)濃度4.4%のアンモニア水(NH4OH)176質量部とを、同時に滴下し、シリカ粒子懸濁液を得た。
【0179】
アルミニウム化合物(アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、和光純薬工業社製)の濃度が50%となるようにブタノールで希釈したアルコール液を作製した。
【0180】
シリカ粒子懸濁液の温度を25℃に調整し、25℃に調整した前記アルコール液を添加した。この際、アルコール液の添加は、シリカ粒子懸濁液の固形分100質量部に対してアルミニウム化合物が1質量部となるように行った。次いで、30分間攪拌することにより、シリカ粒子の表面にアルミニウム化合物を反応させて表面処理を行い、アルミニウム原子を含むシリカ粒子の懸濁液を得た。
【0181】
(第一表面処理工程)
表2に示す種類及び濃度の四級アンモニウム塩をメタノールで希釈したアルコール液を作製した。
【0182】
前記アルミニウム原子を含むシリカ粒子の懸濁液の温度を25℃に調整し、25℃に調整した前記アルコール液を添加した。この際、アルコール液の添加は、アルミニウム結合シリカ粒子懸濁液の固形分100質量部に対して四級アンモニウム塩の濃度が表2に示す量となるように行った。次いで、30℃で30分間攪拌することにより、アルミニウム結合シリカ粒子の表面に四級アンモニウム塩を反応させて表面処理を行い、四級アンモニウム塩及びアルミニウム原子を含有するシリカ粒子を含む懸濁液を得た。
【0183】
(第二表面処理工程)
前記四級アンモニウム塩及びアルミニウム原子を含有するシリカ粒子を含む懸濁液に対して、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を30質量部投入した。材料を攪拌しながら、反応槽内をCO2で満たし、反応槽内を150℃/15MPaまで昇温昇圧した。温度と圧力を維持した状態で、30分間攪拌しながら、CO2を流量5L/min/m3にて流入及び流出させ、120分間かけて溶媒を除去し、粉体である各例の四級アンモニウム塩及びアルミニウム原子を含有するシリカ粒子を得た。
【0184】
[シリカ粒子CSA4]
第二表面処理工程を行わない仕様とした以外は、シリカ粒子S11と同様の手法によりシリカ複合粒子を製造した。
【0185】
[シリカ粒子CSA5]
第一表面処理工程を行わない仕様とした以外は、シリカ粒子S11と同様の手法によりシリカ複合粒子を製造した。
【0186】
[シリカ粒子CSA6]
準備工程における、ゾルゲル法によるシリカ粒子の造粒を、下記の仕様とした。さらに、第一表面処理工程を有しない仕様とした以外は、シリカ粒子S11と同様の手法とし、シリカ複合粒子を製造した。
アルカリ触媒溶液の温度を25℃に調整し、アルカリ触媒溶液を窒素置換した。次いで、アルカリ触媒溶液を攪拌しながら、表2に示す量のテトラメトキシシラン(TMOS)と、表2に示す量の四級アンモニウム塩を含むアルコール液と、触媒(NH3)濃度4.4%のアンモニア水(NH4OH)176質量部とを、同時に滴下し、シリカ粒子懸濁液を得た。
【0187】
【0188】
各表中の略称は、それぞれ下記の化合物を指す。
・TMBAC:塩化ベンジルトリブチルアンモニウム
・TP-415:N,N-Dimethyl-N-tetradecyl-1-tetradecanaminium, hexa-μ-oxotetra-μ3-oxodi -μ5-oxotetradecaoxooctamolybdate(4-) (4:1)
・P-51:塩化ベンジルトリメチルアンモニウム
・ALCH:アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート
【0189】
<樹脂母粒子の製造>
撹拌機、温度計、コンデンサー、窒素ガス導入管を備えた反応容器中に、テレフタル酸ジメチル23mol%、イソフタル酸10mol%、ドデセニルコハク酸無水物15mol%、トリメリット酸無水物3mol%、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物5mol%、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物45mol%の割合で投入し、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した後、触媒としてジブチルスズオキシド0.06mol%の割合で加え、窒素ガス気流下約190℃で約7時間撹拌反応させ、更に温度を約250℃に上げて約5.0時間撹拌反応させた後、反応容器内を10.0mmHgまで減圧し、減圧下で約0.5時間攪拌反応させて、ポリエステル樹脂を得た。
次に、ポリエステル樹脂100部を、バンバリーミキサー型混練機で溶融混練した。混練物を圧延ロールで厚さ1cm程度の板状に成形し、フィッツミル型粉砕機で数ミリ程度まで粗粉砕し、IDS型粉砕機で微粉砕を行った後、エルボー型分級機で分級を順次行い、体積平均粒径D50v 7μmの樹脂母粒子Aを得た。
【0190】
<実施例1~20、比較例1~6>
表3に記載の組み合わせの樹脂母粒子100部及びシリカ粒子2.0部を、ヘンシェルミキサー(三井三池製作所製)により1,300rpm、3分の条件で混合し、樹脂粒子を得た。
【0191】
<評価>
(帯電性評価)
各例で得られた樹脂粒子の静電容量を、上述した静電容量の比において記載した、洗浄前の樹脂粒子と、ガラス粒子とを、特定条件で混合し混合物とした後、前記混合物から分離された樹脂粒子の静電容量(CBEFORE)の測定手順と同様の手順で測定した。
得られた静電容量(CBEFORE)の値を基に、下記評価基準により帯電性評価を行った。
【0192】
G1:CBEFOREが35μF以下であり、静電容量の上昇が強く抑制されている。
G2:CBEFOREが35μF超過48μF以下であり、静電容量の上昇が抑制されている。
G3:CBEFOREが48μF超過60μF以下であり、静電容量がやや上昇している。
G4:CBEFOREが60μF超過であり、静電容量が上昇している。
【0193】
(摩擦抵抗評価)
各例で得られた樹脂粒子55部及びスチレンブタジエンゴム100部をバンバリーミキサー型混練機で溶融混練した。混練物を圧延ロールで厚さ約1cmの板状に成形し、摩擦抵抗評価サンプルとした。得られた摩擦抵抗評価サンプルに対して、トライボギア荷重変動型摩擦摩耗試験機HHS-2000(新東科学社製)を用いて、摩擦磨耗試験を実施し、1往復目の摩擦力(gf)を測定した。同一の摩擦抵抗評価サンプルに対して、測定位置の異なる合計5か所の摩擦力(gf)を測定し、得られた値の算術平均値及び標準偏差を算出した。算術平均値及び標準偏差を用いて、下記計算式により、算術平均値比(gfave)及び標準偏差比(gfsta)を算出した。
算術平均値比(gfave) = 比較例2の算術平均値÷各例の算術平均値×100
標準偏差比(gfsta) = 比較例2の標準偏差÷各例の標準偏差×100
【0194】
得られた算術平均値比(gfave)及び標準偏差比(gfsta)を基に、下記基準にて摩擦抵抗評価を行った。
なお、摩擦抵抗(gf)の算術平均値比(gfave)の値が高いほど、樹脂粒子の摩擦抵抗抑制効果が大きいことを示す。
また、摩擦抵抗(gf)の標準偏差比(gfsta)の値が高いほど、樹脂粒子がゴム中に良好に分散していることを示す。
【0195】
-算術平均値比(gfave)に基づく評価基準-
G1:算術平均値比(gfave)が106超過であり、摩擦抵抗の上昇が強く抑制されている。
G2:算術平均値比(gfave)が100超過106以下であり、摩擦抵抗の上昇が抑制されている。
G3:算術平均値比(gfave)が97超過100以下であり、摩擦抵抗がやや上昇している。
G4:算術平均値比(gfave)が97以下であり、摩擦抵抗が上昇している。
【0196】
-標準偏差比(gfsta)に基づく評価基準-
G1:標準偏差比(gfsta)が105超過であり、ゴム中における樹脂粒子の分散性が非常に良好である。
G2:標準偏差比(gfsta)が100超過105以下であり、ゴム中における樹脂粒子の分散性が良好である。
G3:標準偏差比(gfsta)が95超過100以下であり、ゴム中における樹脂粒子の分散性がやや不良である。
G4:標準偏差比(gfsta)が95以下であり、ゴム中における樹脂粒子の分散性が不良である。
【0197】
【0198】
上記結果から、本実施例の樹脂粒子は、帯電量が少なく、且つ、疎水性材料への分散性が良いことがわかる。