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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ロータおよびロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/28 20060101AFI20240730BHJP
   H02K 1/32 20060101ALI20240730BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20240730BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H02K1/28 A
H02K1/32 Z
H02K9/19 B
H02K15/02 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020122122
(22)【出願日】2020-07-16
(65)【公開番号】P2022018777
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】村上 聡
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-268858(JP,A)
【文献】特開2001-346346(JP,A)
【文献】特開2004-023848(JP,A)
【文献】特開2020-028186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/28
H02K 1/32
H02K 9/19
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のシャフトと、
中心に前記シャフトが挿入される第1貫通孔を有する複数の電磁鋼板が積層されることにより、前記シャフトが配置されるシャフト挿入孔が前記第1貫通孔により形成されている積層コアと、を備え、
前記複数の電磁鋼板の各々の前記第1貫通孔は、前記積層コアの軸方向から見て、非円形形状を有し、
前記積層コアは、前記軸方向から見て前記非円形形状の第1貫通孔の頂点同士が互いに重なるように積層される複数の前記電磁鋼板により構成される鋼板ブロックを複数含み、前記軸方向から見て、隣接する前記鋼板ブロックの前記非円形形状の第1貫通孔の頂点の周方向における位置が互いにずれるように前記鋼板ブロックが積層されている段スキュー構造を有し、
前記シャフトは、前記シャフトの内部に充填された液体が加圧されることによって膨張されるハイドロフォーミングにより、前記積層コアの前記第1貫通孔の内周面にならうように非円形形状に成形されることにより、対応する前記鋼板ブロックに沿った前記非円形形状の頂点の周方向における位置が互いにずれている外周面を有した状態で前記積層コアに固定されている、ロータ。
【請求項2】
前記複数の電磁鋼板の各々の前記第1貫通孔は、前記軸方向から見て、正多角形形状を有しており、
前記軸方向に隣接する前記鋼板ブロック同士の前記第1貫通孔の頂点の周方向における位置のずれ量は、前記軸方向から見て、前記正多角形形状の第1貫通孔の一辺の1/2よりも小さい、請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記シャフトが前記シャフト挿入孔に配置された状態で、前記シャフトの内部に挿入されるオイル射出部をさらに備え、
前記オイル射出部は、スキュー構造を有する前記積層コアの前記シャフト挿入孔に挿入された前記シャフトの内周面に向かって冷却用オイルを射出するように構成されている、請求項1または2に記載のロータ。
【請求項4】
永久磁石をさらに備え、
前記複数の電磁鋼板の各々は、前記永久磁石が挿入され、前記電磁鋼板の径方向外側部分と前記電磁鋼板の径方向内側部分との間において周状に配置される複数の第2貫通孔と、
互いに隣接する前記第2貫通孔同士の間に設けられ、前記径方向外側部分と前記径方向内側部分とを接続するブリッジ部と、を含み、
前記複数の電磁鋼板の各々において、前記ブリッジ部は、前記軸方向から見て、前記第1貫通孔の頂点と周方向において重なる位置に配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項5】
筒状のシャフトと中心に前記シャフトが挿入される第1貫通孔を有する複数の電磁鋼板が積層されることにより、前記シャフトが配置されるシャフト挿入孔が前記第1貫通孔により形成されている積層コアと、を備えるロータの製造方法であって、
前記積層コアの軸方向から見て非円形形状を有する前記第1貫通孔の頂点同士が前記軸方向から見て互いに重なるように積層される複数の前記電磁鋼板により構成される複数の鋼板ブロックを形成する工程と、
前記軸方向から見て、隣接する前記鋼板ブロックの前記非円形形状の第1貫通孔の頂点の周方向における位置が互いにずれるように前記複数の鋼板ブロックを積層することにより、段スキュー構造を有する前記積層コアを形成する工程と、
前記積層コアの前記シャフト挿入孔に前記シャフトが挿入された状態で、前記シャフトの内部に充填された液体が加圧されることによって前記シャフトを膨張するハイドロフォーミングにより、前記積層コアの前記第1貫通孔の内周面にならうように非円形形状に成形することにより、対応する前記鋼板ブロックに沿った前記非円形形状の頂点の周方向における位置が互いにずれている前記シャフトの外周面を成形するとともに前記積層コアに固定する工程と、を備える、ロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータおよびロータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シャフトと、シャフトが挿入される積層コアと、を備えるロータおよびロータの製造方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、パイプ構造を有した中空形状の回転軸(シャフト)と、回転軸が挿入された積層鉄心(積層コア)とを備えるモータ用ロータが開示されている。回転軸は、積層鉄心の中央に設けられた貫通孔に挿入されている。また、回転軸には、ハイドロフォーミング法により形成された抜止部が設けられている。抜止部は、ハイドロフォーミング法により、回転軸が外径側に膨張することによって形成されている。また、抜止部は、積層鉄心の軸方向の一方側と他方側とに、積層鉄心を軸方向に挟み込むように2つ設けられている。すなわち、2つの抜止部は、積層鉄心の軸方向の端面よりも外側に設けられている。これにより、積層鉄心と回転軸とが2つの抜止部により軸方向に固定(位置決め)され、回転軸が積層鉄心から軸方向に抜けるのが防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-268858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のモータ用ロータでは、積層鉄心(積層コア)と回転軸(シャフト)とを固定(位置決め)する2つの抜止部が、積層鉄心の軸方向の端面よりも外側に設けられているため、モータ用ロータの軸方向の長さが、抜止部の軸方向の長さの分、大きくなるという問題点がある。
【0006】
この発明は、ロータの軸方向の長さが大きくなるのを防止しながら、シャフトが積層コアから軸方向に抜けるのを防止することが可能なロータおよびロータの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面におけるロータは、筒状のシャフトと、中心にシャフトが挿入される第1貫通孔を有する複数の電磁鋼板が積層されることにより、シャフトが配置されるシャフト挿入孔が第1貫通孔により形成されている積層コアと、を備え、複数の電磁鋼板の各々の第1貫通孔は、積層コアの軸方向から見て、非円形形状を有し、積層コアは、軸方向から見て非円形形状の第1貫通孔の頂点同士が互いに重なるように積層される複数の電磁鋼板により構成される鋼板ブロックを複数含み、軸方向から見て、隣接する鋼板ブロックの非円形形状の第1貫通孔の頂点の周方向における位置が互いにずれるように鋼板ブロックが積層されている段スキュー構造を有し、シャフトは、シャフトの内部に充填された液体が加圧されることによって膨張されるハイドロフォーミングにより、積層コアの前記第1貫通孔の内周面にならうように非円形形状に成形されることにより、対応する鋼板ブロックに沿った非円形形状の頂点の周方向における位置が互いにずれている外周面を有した状態で積層コアに固定されている。
【0008】
この発明の第1の局面によるロータでは、上記のように、積層コアは、軸方向から見て、隣接する鋼板ブロックの非円形形状の第1貫通孔の頂点の周方向における位置が互いにずれるように鋼板ブロックが積層されている段スキュー構造を有している。また、シャフトは、シャフトの内部に充填された液体が加圧されることによって膨張されるハイドロフォーミングにより、積層コアの第1貫通孔の内周面にならうように成形されて積層コアに固定されている。これにより、軸方向から見て、互いに隣接する鋼板ブロックの一方の第1貫通孔の頂点が、互いに隣接する鋼板ブロックの他方の第1貫通孔の頂点同士の間の辺と、周方向において同じ位置に設けられる。したがって、軸方向から見て、ハイドロフォーミングによって膨張したシャフトのうち上記一方の鋼板ブロックの第1貫通孔の頂点にならうように膨張した部分が、上記他方の鋼板ブロックの上記辺と重なるように設けられる。すなわち、シャフトは、上記頂点にならうように膨張した部分において、上記他方の鋼板ブロックにより軸方向の移動を規制される。この場合、シャフトの軸方向における移動を規制する部分は、積層コアの内側に設けられる。これにより、積層コアの軸方向の外側に積層コアの抜け止めを設ける場合に比べてロータの軸方向の長さが大きくなるのを防止しながら、シャフトが積層コアから抜けるのを防止することができる。
【0009】
この発明の第2の局面におけるロータの製造方法は、筒状のシャフトと中心にシャフトが挿入される第1貫通孔を有する複数の電磁鋼板が積層されることにより、シャフトが配置されるシャフト挿入孔が第1貫通孔により形成されている積層コアと、を備えるロータの製造方法であって、積層コアの軸方向から見て非円形形状を有する第1貫通孔の頂点同士が軸方向から見て互いに重なるように積層される複数の電磁鋼板により構成される複数の鋼板ブロックを形成する工程と、軸方向から見て、隣接する鋼板ブロックの非円形形状の第1貫通孔の頂点の周方向における位置が互いにずれるように複数の鋼板ブロックを積層することにより、段スキュー構造を有する積層コアを形成する工程と、積層コアのシャフト挿入孔にシャフトが挿入された状態で、シャフトの内部に充填された液体が加圧されることによってシャフトを膨張するハイドロフォーミングにより、積層コアの第1貫通孔の内周面にならうように非円形形状に成形することにより、対応する鋼板ブロックに沿った非円形形状の頂点の周方向における位置が互いにずれているシャフトの外周面を成形するとともに積層コアに固定する工程と、を備える。
【0010】
この発明の第2の局面におけるロータの製造方法では、上記のように、軸方向から見て、隣接する鋼板ブロックの非円形形状の第1貫通孔の頂点の周方向における位置が互いにずれるように積層コアが形成される。また、シャフトの内部に充填された液体が加圧されることによって膨張されるハイドロフォーミングにより、シャフトが積層コアの第1貫通孔の内周面にならうように成形されて積層コアに固定される。これにより、軸方向から見て、互いに隣接する鋼板ブロックの一方の第1貫通孔の頂点が、互いに隣接する鋼板ブロックの他方の第1貫通孔の頂点同士の間の辺と、周方向において同じ位置に設けられる。したがって、軸方向から見て、ハイドロフォーミングによって膨張したシャフトのうち上記一方の鋼板ブロックの第1貫通孔の頂点にならうように膨張した部分が、上記他方の鋼板ブロックの上記辺と重なるように設けられる。すなわち、シャフトは、上記頂点にならうように膨張した部分において、上記他方の鋼板ブロックにより軸方向の移動を規制される。この場合、シャフトの軸方向における移動を規制する部分は、積層コアの内側に設けられる。これにより、積層コアの軸方向の外側に積層コアの抜け止めを設ける場合に比べてロータの軸方向の長さが大きくなるのを防止しながら、シャフトが積層コアから抜けるのを防止することが可能なロータの製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ロータの軸方向の長さが大きくなるのを防止しながら、シャフトが積層コアから軸方向に抜けるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態によるロータ(回転電機)の構成を示す平面図である。
図2図1の電磁鋼板の頂点近傍の部分拡大図である。
図3】本実施形態によるロータコアの構成を示す断面斜視図である。
図4】本実施形態によるシャフトの構成を示す断面斜視図である。
図5】本実施形態による積層コアの構成を示す断面斜視図である。
図6】本実施形態による磁石挿入孔の径方向視における軸方向に沿った断面図である。
図7】本実施形態によるロータの製造方法を示したフロー図である。
図8】本実施形態によるシャフトが積層コアのシャフト挿入孔に配置された状態の断面図である。
図9】本実施形態によるハイドロフォーミングを行っている際の積層コアおよびシャフトの断面図である。
図10】本実施形態の変形例による電磁鋼板の頂点近傍の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
[本実施形態]
図1図9を参照して、本実施形態によるロータ1およびロータ1の製造方法について説明する。
【0015】
本願明細書では、「軸方向」とは、ロータ1の回転軸線Cに沿った方向を意味し、図中のZ方向を意味する。また、「径方向」とは、ロータ1の径方向(R1方向またはR2方向)を意味し、「周方向」は、ロータ1の周方向(E1方向またはE2方向)を意味する。
【0016】
(ロータの構造)
まず、図1を参照して、本実施形態のロータ1の構造について説明する。
【0017】
図1に示すように、回転電機100は、ロータ1とステータ2とを備える。また、ロータ1およびステータ2は、それぞれ、円環状に形成されている。そして、ロータ1は、ステータ2の径方向内側に対向して配置されている。すなわち、本実施形態では、回転電機100は、インナーロータ型の回転電機として構成されている。また、ロータ1(ロータコア4)は、筒状のシャフト3を備える。シャフト3は、ロータコア4の径方向内側に配置されている。シャフト3は、ギア等の回転力伝達部材を介して、エンジンや車軸等に接続されている。たとえば、回転電機100は、モータ、ジェネレータ、または、モータ兼ジェネレータとして構成されており、車両に搭載されるように構成されている。
【0018】
また、ロータ1は、ロータコア4を備える。ロータコア4は、複数の電磁鋼板4a(図2参照)が積層される積層コア4bを含む。電磁鋼板4aには、中心にシャフト3が挿入される貫通孔4cが設けられている。積層コア4bでは、複数の電磁鋼板4aが積層されることにより、シャフト3が配置されるシャフト挿入孔4dが貫通孔4cにより形成されている。すなわち、複数の貫通孔4cが積み重なるように設けられることにより、シャフト挿入孔4dが形成されている。なお、貫通孔4cは、特許請求の範囲の「第1貫通孔」の一例である。
【0019】
また、複数の電磁鋼板4aの各々は、電磁鋼板4aの径方向外側部分4eと電磁鋼板4aの径方向内側部分4fとの間において周状に配置される複数の貫通孔4gを含む。複数の貫通孔4gの各々には、後述する永久磁石5が挿入される。また、積層コア4bは、複数の電磁鋼板4aが積層されることによって軸方向に重なるように配置される複数の貫通孔4gにより形成される複数の磁石挿入孔4hを含む。なお、貫通孔4gは、特許請求の範囲の「第2貫通孔」の一例である。
【0020】
また、ロータ1は、永久磁石5を備える。永久磁石5は、複数の磁石挿入孔4hの各々に配置されている。磁石挿入孔4hは、積層コア4bに複数(本実施形態では16個)設けられている。
【0021】
回転電機100は、埋込永久磁石型モータ(IPMモータ:Interior Permanent Magnet Motor)として構成されている。また、電磁鋼板4aにおいては、永久磁石5の一の極に対応する一対の貫通孔4gが、周状に複数(本実施形態では8つ)設けられている。一対の貫通孔4gは、軸方向から見て、V字状に配置されている。一対の貫通孔4gは、軸方向から見て、周方向に沿って、等角度間隔に設けられている。なお、貫通孔4gの配置は、これに限られない。
【0022】
複数の電磁鋼板4aの各々は、互いに隣接する貫通孔4g同士の間に設けられ、径方向外側部分4eと径方向内側部分4fとを接続するブリッジ部4i(図2参照)を含む。具体的には、ブリッジ部4iは、一対の貫通孔4gを構成する貫通孔4g同士の間に設けられている。
【0023】
ロータコア4は、回転軸線C回りに回転される。ロータコア4は、シャフト3の回転力が伝達され、回転するように構成されている。
【0024】
また、シャフト3は、シャフト3の内部に充填された液体800(図9参照)が加圧されることによって膨張されるハイドロフォーミングにより、積層コア4b(ロータコア4)に固定されている。
【0025】
また、ステータ2は、ステータコア2aと、ステータコア2aに巻回(配置)されたコイル2bとを含む。ステータコア2aは、ロータコア4(積層コア4b)の径方向外側に配置されている。ステータコア2aは、たとえば、複数の電磁鋼板(珪素鋼板)が軸方向に積層されており、磁束を通過可能に構成されている。コイル2bは、外部の電源部に接続されており、電力(たとえば、3相交流の電力)が供給されるように構成されている。そして、コイル2bは、電力が供給されることにより、磁界を発生させるように構成されている。また、ロータ1およびシャフト3は、コイル2bに電力が供給されない場合でも、エンジン等の駆動に伴って、ステータ2に対して回転するように構成されている。なお、図1では、コイル2bの一部のみを図示しているが、コイル2bは、ステータコア2aの全周に亘って配置されている。
【0026】
永久磁石5は、軸方向に直交する断面が長方形形状を有している。たとえば、永久磁石5は、磁化方向(着磁方向)が短手方向となるように構成されている。
【0027】
また、ロータ1は、磁石挿入孔4hに充填されている樹脂材6を備える。樹脂材6は、磁石挿入孔4hに配置されている永久磁石5を固定するように設けられている。
【0028】
また、複数の電磁鋼板4aの各々の貫通孔4cは、軸方向(Z1方向側)から見て、多角形形状を有している。たとえば、貫通孔4cは、軸方向から見て、正16角形形状を有している。
【0029】
ここで、本実施形態では、図2に示すように、積層コア4bは、軸方向から見て、複数の電磁鋼板4aのうち少なくとも一部の貫通孔4cの頂点4jの周方向における位置と、他の電磁鋼板4a(図2の破線)の貫通孔4cの頂点の周方向における位置とが互いにずれるように設けられるスキュー構造を有する。すなわち、複数の電磁鋼板4aのうちの少なくとも一部において、軸方向に隣接する電磁鋼板4aは、貫通孔4cの頂点4j同士が周方向においてずれるように設けられる。
【0030】
これにより、頂点4j同士が周方向にずれて配置される電磁鋼板4a同士の間において、軸方向から見て、頂点4jが、頂点4j同士を結ぶ辺4kよりも径方向外側に配置される。その結果、一の電磁鋼板4aにおいて頂点4jにならうように膨張したシャフト3の角部3cと、一の電磁鋼板4aと頂点4jがずれて配置される他の電磁鋼板4aのうち辺4kの近傍の部分とが、軸方向において重なるように設けられる。なお、図2では、実線の電磁鋼板4aに対して頂点4jの位置がずれている電磁鋼板4aを破線で図示している。
【0031】
なお、貫通孔4cの頂点4jとは、隣接する辺4k同士の交点に相当する部分であり、必ずしもピン角ではなく、一定の曲率を有していてもよい。また、辺4kとは、必ずしも直線である必要はなく、一定の曲率を有していてもよい。
【0032】
また、本実施形態では、軸方向に隣接する鋼板ブロック40同士の貫通孔4cの頂点4jの周方向における位置のずれ量は、軸方向から見て、多角形形状の貫通孔4cの一辺の1/2よりも小さい。具体的には、貫通孔4cは、正16角形形状を有しているので、貫通孔4cの頂点4jの周方向における位置のずれ角度は、11.25度(360÷16÷2)よりも小さい。
【0033】
また、図3に示すように、シャフト3は、シャフト3の内部に充填された液体が加圧されることによって膨張されるハイドロフォーミングにより、積層コア4bの貫通孔4cの内周面4l(図2参照)にならうように成形されて積層コア4bに固定されている。これにより、シャフト3の外周面3a(図4参照)は、積層コア4bのシャフト挿入孔4dの内周面4m(図5参照)と同じ形状になるように変形される。
【0034】
また、図2に示すように、ハイドロフォーミングにより膨張されたシャフト3の外周面3a(内周面3b)は、軸方向に直交する断面視において、電磁鋼板4aの貫通孔4cにならうように正16角形形状を有する。その結果、電磁鋼板4aの貫通孔4cが円形形状を有している場合と異なり、シャフト3の積層コア4bに対する相対的な回転が、シャフト3の外周面3aの角(正16角形の頂点)によって規制される。これにより、電磁鋼板4aの貫通孔4cが円形形状を有している場合に比べて、シャフト3が積層コア4bに対して周方向に相対的に回転するのをより確実に防止することが可能である。なお、電磁鋼板4aの貫通孔4cは、軸方向から見て正16角形形状以外の多角形形状(たとえば正32角形形状)を有していてもよい。
【0035】
また、図3に示すように、積層コア4bは、複数の電磁鋼板4aが積層されることにより構成される複数(本実施形態では5つ)の鋼板ブロック40を含む。複数の鋼板ブロック40の各々において、軸方向から見て、複数の電磁鋼板4aの貫通孔4cの頂点4j同士が互いに重なっている。言い換えると、複数の鋼板ブロック40の各々において、複数の電磁鋼板4aの貫通孔4cの頂点4jの周方向における位置は互いに同じである。なお、本実施形態では、積層コア4bは、5つの鋼板ブロック40が積層されることにより形成されている。
【0036】
ここで、本実施形態では、積層コア4bは、軸方向から見て、隣接する鋼板ブロック40の多角形形状の貫通孔4cの頂点4jの周方向における位置が互いにずれるように鋼板ブロック40が積層されている段スキュー構造を有する。具体的には、積層コア4bは、軸方向から見て、複数(5つ)の鋼板ブロック40のうちのいずれの隣接する鋼板ブロック40同士においても、貫通孔4cの頂点4jの周方向における位置が互いにずれるように構成されている。詳細には、隣接する鋼板ブロック40同士のずらし量(スキュー角度)は、いずれの隣接する鋼板ブロック40同士の間においても互いに略等しい。
【0037】
これにより、本実施形態では、図6に示すように、複数の磁石挿入孔4hの各々は、スキュー構造を有する積層コア4bにおいて積層される複数の電磁鋼板4a同士(鋼板ブロック40同士)のスキュー角度に対応するように軸方向に対して傾斜する方向に沿うように形成されている。具体的には、磁石挿入孔4hは、鋼板ブロック40ごとに形成された挿入孔4nが積み重なるように配置されることにより構成されている。それぞれの挿入孔4nは、軸方向に沿うように設けられている。磁石挿入孔4hは、複数の挿入孔4nが階段状に配置されることにより、軸方向に対して傾斜する方向に沿うように設けられている。具体的には、磁石挿入孔4hは、V字状に形成されている。なお、磁石挿入孔4hの形状はこれに限られず、たとえば直線状に傾斜するように構成されていてもよい。
【0038】
なお、図6では、永久磁石5が、それぞれの挿入孔4nに配置される分割磁石5aにより構成されている例を図示しているが、1つの永久磁石5が磁石挿入孔4hに挿入されていてもよい。言い換えると、1つの永久磁石5が、5つの挿入孔4nを貫通するように設けられていてもよい。
【0039】
また、図2に示すように、複数の電磁鋼板4aの各々において、ブリッジ部4iは、軸方向から見て、貫通孔4cの頂点4jと周方向において重なる位置に配置されている。具体的には、全ての(8つの)ブリッジ部4iの各々は、軸方向から見て、貫通孔4cの頂点4jと周方向において重なるように配置されている。
【0040】
また、複数の電磁鋼板4aの各々において、複数の(16個の)貫通孔4gの各々は、軸方向から見て、貫通孔4cの辺4kと周方向において重なるように配置されている。ここで、シャフト3がハイドロフォーミングにより膨張される場合、シャフト3は、貫通孔4cの辺4kに最初に接触し、その後に貫通孔4cの頂点4jに接触するように膨張する。これにより、電磁鋼板4aにおいて、貫通孔4cの頂点4jに対応する部分にかかる圧力よりも、貫通孔4cの辺4kに対応する部分にかかる圧力の方が大きい。したがって、貫通孔4gに永久磁石5を挿入する前にハイドロフォーミングをする場合には、貫通孔4g(磁石挿入孔4h)における空隙により、貫通孔4cの辺4kに対応する部分にかかるハイドロフォーミングの圧力を効果的に吸収することが可能である。
【0041】
また、図3に示すように、ロータ1は、シャフト3がシャフト挿入孔4d(図1参照)に配置された状態で、シャフト3の内部に挿入されるオイル射出部7を備える。オイル射出部7の先端部7aは、シャフト3の軸方向中央部に配置されている。オイル射出部7の先端部7aには、冷却用オイルを射出(噴射)する射出口7bが設けられている。
【0042】
また、シャフト3は、シャフト3の内部を流通する冷却用オイルをシャフト3の外部に排出するためのオイル排出孔3dを含む。オイル排出孔3dは、Z1側およびZ2側の各々に設けられている。また、オイル排出孔3dは、軸方向において積層コア4bの外側に設けられている。
【0043】
ここで、本実施形態では、オイル射出部7は、スキュー構造を有する積層コア4bのシャフト挿入孔4dに挿入されたシャフト3の内周面3bに向かって冷却用オイルを射出するように構成されている。すなわち、オイル射出部7から射出された冷却用オイルは、スキュー状に形成(変形)されたシャフト3の内周面3bに沿って流れる。これにより、冷却用オイルは、シャフト3の内周面3bに沿ってシャフト3の中央部から端部側に向かって螺旋状に流れ、最終的にオイル排出孔3dからシャフト3の外部に排出される。冷却用オイルは、シャフト3内を螺旋状に流れている間に、シャフト3を介して積層コア4bを冷却する。
【0044】
(ロータの製造方法)
次に、図7図9を参照して、ロータ1の製造方法について説明する。
【0045】
まず、図7に示すように、ステップS1において、複数の鋼板ブロック40(図3参照)を形成する工程が行われる。具体的には、複数の鋼板ブロック40の各々は、複数の電磁鋼板4aを、多角形形状の貫通孔4c(図2参照)の頂点4j同士が軸方向から見て互いに重なるように積層することにより形成される。また、ステップS1では、複数の鋼板ブロック40の各々において、複数の挿入孔4nの各々に分割磁石5aが配置される。
【0046】
次に、ステップS2において、積層コア4bを形成する工程が行われる。具体的には、複数の電磁鋼板4aのうち少なくとも一部の電磁鋼板4aの多角形形状の貫通孔4cの頂点4jの周方向における位置と、他の電磁鋼板4aの多角形形状の貫通孔4cの頂点4jの周方向における位置とが互いにずれるように設けられるスキュー構造(図2参照)を有する積層コア4bを形成する。詳細には、ステップS2の積層コア4bを形成する工程では、軸方向から見て、隣接する鋼板ブロック40の多角形形状の貫通孔4cの頂点4jの周方向における位置が互いにずれるように複数の鋼板ブロック40を積層することにより、段スキュー構造を有する積層コア4bが形成される。
【0047】
次に、ステップS3において、図8に示すように、シャフト3を積層コア4bに配置する工程が行われる。具体的には、シャフト3が、積層コア4bのシャフト挿入孔4dに軸方向(Z方向)に挿入される。
【0048】
そして、ステップS4において、積層コア4bのシャフト挿入孔4dにシャフト3が挿入された状態で、ハイドロフォーミングにより、積層コア4bの貫通孔4cの内周面4l(図2参照)にならうようにシャフト3を成形するとともに積層コア4bに固定する。
【0049】
具体的には、図9に示すように、積層コア4bのシャフト挿入孔4dにシャフト3が配置された状態で、シャフト3の内部に充填された液体800が加圧されることによってハイドロフォーミングが行われる。この際、積層コア4bおよびシャフト3は、ハイドロフォーミング成形機900に配置(セット)されている。
【0050】
このハイドロフォーミングにより、シャフト3が、積層コア4bのシャフト挿入孔4dの内周面4m(電磁鋼板4aの貫通孔4cの内周面4l)にならうように膨張する。これにより、頂点4j同士が周方向にずれて配置される電磁鋼板4a(鋼板ブロック40)同士(図2参照)の間において、一の電磁鋼板4a(鋼板ブロック40)において頂点4jにならうように膨張したシャフト3の角部3cと、一の電磁鋼板4a(鋼板ブロック40)と頂点4jがずれて配置される他の電磁鋼板4a(鋼板ブロック40)のうち辺4kの近傍の部分とが、軸方向において重なるように設けられる。
【0051】
また、ハイドロフォーミング成形機900は、積層コア4bをZ1側から押圧する上型901と、積層コア4bをZ2側から押圧する下型902とを含む。また、ハイドロフォーミング成形機900は、積層コア4bの径方向の移動を径方向外側から規制する規制部903を含む。
【0052】
また、ハイドロフォーミング成形機900は、シャフト3のZ1側の端部をシールする上側シール部904と、シャフト3のZ2側の端部をシールする下側シール部905とを含む。上側シール部904および下側シール部905には、それぞれ、シャフト3の内部に液体800を導入するための導入路904aおよび905aが設けられている。
【0053】
そして、ハイドロフォーミングが完了した後、ハイドロフォーミング成形機900からロータ1が解放される。ハイドロフォーミング成形機900からロータ1が解放された後も、積層コア4bとシャフト3とが固定された状態が保持される。
【0054】
[本実施形態の効果]
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0055】
(ロータの効果)
本実施形態では、上記のように、積層コア(4b)は、軸方向から見て非円形形状の第1貫通孔(4c)の頂点(4j)同士が互いに重なるように積層される複数の電磁鋼板(4a)により構成される鋼板ブロック(40)を複数含み、軸方向から見て、隣接する鋼板ブロック(40)の非円形形状の第1貫通孔(4c)の頂点(4j)の周方向における位置が互いにずれるように鋼板ブロック(40)が積層されている段スキュー構造を有する。また、シャフト(3)は、シャフト(3)の内部に充填された液体(800)が加圧されることによって膨張されるハイドロフォーミングにより、積層コア(4b)の第1貫通孔(4c)の内周面(4l)にならうように成形されて積層コア(4b)に固定されている。これにより、軸方向から見て、互いに隣接する鋼板ブロック(40)の一方の第1貫通孔(4c)の頂点(4j)が、互いに隣接する鋼板ブロック(40)の他方の第1貫通孔(4c)の頂点(4j)同士の間の辺(4k)と、周方向において同じ位置に設けられる。したがって、軸方向から見て、ハイドロフォーミングによって膨張したシャフト(3)のうち上記一方の鋼板ブロック(40)の第1貫通孔(4c)の頂点(4j)にならうように膨張した部分(角部(3c))が、上記他方の鋼板ブロック(40)の上記辺(4k)と重なるように設けられる。すなわち、シャフト(3)は、上記頂点(4j)にならうように膨張した部分(角部(3c))において、上記他方の鋼板ブロック(40)により軸方向の移動を規制される。この場合、シャフト(3)の軸方向における移動を規制する部分は、積層コア(4b)の内側に設けられる。これにより、積層コア(4b)の軸方向の外側に積層コア(4b)の抜け止めを設ける場合に比べてロータ(1)の軸方向の長さが大きくなるのを防止しながら、シャフト(3)が積層コア(4b)から抜けるのを防止することができる。
【0056】
また、本実施形態では、上記のように、複数の電磁鋼板(4a)の各々の第1貫通孔(4c)は、軸方向から見て、正多角形形状を有している。また、軸方向に隣接する鋼板ブロック(40)同士の第1貫通孔(4c)の頂点(4j)の周方向における位置のずれ量は、軸方向から見て、正多角形形状の第1貫通孔(4c)の一辺の1/2よりも小さい。このように構成すれば、上記ずれ量が第1貫通孔(4c)の一辺の1/2以上である場合に比べて、シャフト(3)がハイドロフォーミングにより膨張する際に、軸方向から見て比較的近い部分(角部(3c))同士を膨張させることができる。その結果、上記比較的近い部分同士を互いに追従するように変形させることができる。これにより、比較的低い圧力のハイドロフォーミングにより、シャフト(3)を容易に膨張させることができる。
【0057】
また、本実施形態では、上記のように、ロータ(1)は、シャフト(3)がシャフト挿入孔(4d)に配置された状態で、シャフト(3)の内部に挿入されるオイル射出部(7)を備える。また、オイル射出部(7)は、スキュー構造を有する積層コア(4b)のシャフト挿入孔(4d)に挿入されたシャフト(3)の内周面(3b)に向かって冷却用オイルを射出するように構成されている。ここで、第1貫通孔(4c)の頂点(4j)にならうように膨張することにより形成されたシャフト(3)の内周面(3b)における角部には、冷却用オイルが溜まりやすい。そこで、積層コア(4b)がスキュー構造を有することによって、シャフト(3)の内周面(3b)もスキュー状に形成されるので、軸方向から見て、上記角部の周方向における位置が、隣接する電磁鋼板(4a)間でずれる部分が生じる。これにより、シャフト(3)が回転することに伴って、冷却用オイルは、上記のように周方向にずれた角部間を移動(シャフト(3)に対して相対的の移動)するように流れる。その結果、冷却用オイルが角部に溜まってシャフト(3)に対して相対的に移動しない場合と異なり、角部に溜まった冷却用オイルがシャフト(3)と共に回転されないので、冷却用オイルを回転させるのに必要なエネルギーの分、エネルギー損失を低減することができる。
【0058】
また、本実施形態では、上記のように、ロータ(1)は、永久磁石(5)を備える。また、複数の電磁鋼板(4a)の各々は、永久磁石(5)が挿入され、電磁鋼板(4a)の径方向外側部分(4e)と電磁鋼板(4a)の径方向内側部分(4f)との間において周状に配置される複数の第2貫通孔(4g)と、互いに隣接する第2貫通孔(4g)同士の間に設けられ、径方向外側部分(4e)と径方向内側部分(4f)とを接続するブリッジ部(4i)と、を含む。また、複数の電磁鋼板(4a)の各々において、ブリッジ部(4i)は、軸方向から見て、第1貫通孔(4c)の頂点(4j)と周方向において重なる位置に配置されている。ここで、多角形形状の第1貫通孔(4c)においてシャフト(3)が膨張する際、最初に第1貫通孔(4c)の辺(4k)にシャフト(3)が接触した後に、第1貫通孔(4c)の頂点(4j)に対応する部分にならうようにシャフト(3)が膨張する。すなわち、シャフト(3)の膨張に起因する応力は、第1貫通孔(4c)の頂点(4j)の方が第1貫通孔(4c)の辺(4k)よりも小さい。したがって、ブリッジ部(4i)が第1貫通孔(4c)の頂点(4j)と周方向において重なる位置に配置されていることによって、シャフト(3)の膨張に起因してブリッジ部(4i)に加わる応力を比較的小さくすることができる。その結果、ブリッジ部(4i)に残る残留応力を小さくすることができるので、ロータ(1)が回転した際にブリッジ部(4i)が残留応力に起因して破断するのを防止することができる。
【0059】
(ロータの製造方法の効果)
また、本実施形態では、上記のように、ロータ(1)の製造方法は、積層コア(4b)の軸方向から見て非円形形状を有する第1貫通孔(4c)の頂点(4j)同士が軸方向から見て互いに重なるように積層される複数の電磁鋼板(4a)により構成される複数の鋼板ブロック(40)を形成する工程を備える。また、ロータ(1)の製造方法は、軸方向から見て、隣接する鋼板ブロック(40)の非円形形状の第1貫通孔(4c)の頂点の周方向における位置が互いにずれるように複数の鋼板ブロック(40)を積層することにより、段スキュー構造を有する積層コア(4b)を形成する工程を備える。また、ロータ(1)の製造方法は、積層コア(4b)のシャフト挿入孔(4d)にシャフト(3)が挿入された状態で、シャフト(3)の内部に充填された液体が加圧されることによってシャフト(3)を膨張するハイドロフォーミングにより、積層コア(4b)の第1貫通孔(4c)の内周面(4l)にならうようにシャフト(3)を成形するとともに積層コア(4b)に固定する工程を備える。これにより、軸方向から見て、互いに隣接する鋼板ブロック(40)の一方の第1貫通孔(4c)の頂点(4j)が、互いに隣接する鋼板ブロック(40)の他方の第1貫通孔(4c)の頂点(4j)同士の間の辺(4k)と、周方向において同じ位置に設けられる。したがって、軸方向から見て、ハイドロフォーミングによって膨張したシャフト(3)のうち上記一方の鋼板ブロック(40)の第1貫通孔(4c)の頂点(4j)にならうように膨張した部分(角部(3c))が、上記他方の鋼板ブロック(40)の上記辺(4k)と重なるように設けられる。すなわち、シャフト(3)は、上記頂点(4j)にならうように膨張した部分において、上記他方の鋼板ブロック(40)により軸方向の移動を規制される。この場合、シャフト(3)の軸方向における移動を規制する部分は、積層コア(4b)の内側に設けられる。これにより、積層コア(4b)の軸方向の外側に積層コア(4b)の抜け止めを設ける場合に比べてロータ(1)の軸方向の長さが大きくなるのを防止しながら、シャフト(3)が積層コア(4b)から抜けるのを防止することが可能なロータ(1)の製造方法を提供することができる。
【0060】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0061】
たとえば、上記実施形態では、貫通孔4c(第1貫通孔)が正多角形形状を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、貫通孔4c(第1貫通孔)が正多角形形状ではない多角形形状を有していてもよい。また、貫通孔4c(第1貫通孔)が多角形形状以外の形状であって、頂点を有する形状であってもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、鋼板ブロック40が5つ設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。鋼板ブロック40は2つ以上あればよい。
【0063】
また、上記実施形態では、軸方向に隣接する鋼板ブロック40同士の貫通孔4c(第1貫通孔)の頂点4jの周方向における位置のずれ量が、軸方向から見て、貫通孔4cの一辺の1/2よりも小さい例を示したが、本発明はこれに限られない。上記ずれ量が、軸方向から見て、貫通孔4cの一辺の整数倍でなければ1/2よりも大きくてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、磁石挿入孔4hが階段状に形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。磁石挿入孔4hが直線状に軸方向に対して傾斜していてもよい。また、磁石挿入孔4hが軸方向に沿って延びるように直線状に形成されていてもよい。これらの場合、1つの磁石挿入孔4hに配置される永久磁石5は、分割されずに一体的に形成される。
【0065】
また、上記実施形態では、挿入孔4nに分割磁石5aが配置された鋼板ブロック40を積層することにより、積層コア4bが形成される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、複数の鋼板ブロック40が積層された状態で磁石挿入孔4hに1つの永久磁石5を挿入した後に、鋼板ブロック40同士を周方向にずらしても(スキューさせても)よい。この場合、磁石挿入孔4hに熱硬化性の接着剤等を予め設けた状態で鋼板ブロック40同士をスキューさせることにより、硬化する前の軟体である熱硬化性の接着剤等により永久磁石5が覆われた状態でスキューされるので、永久磁石5が破損するのを防止することが可能である。
【0066】
また、上記実施形態では、複数の電磁鋼板4aの各々において、ブリッジ部4iは、軸方向から見て、貫通孔4c(第1貫通孔)の頂点4jと径方向において重なる位置に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。複数の電磁鋼板4aの各々において、ブリッジ部4iは、軸方向から見て、頂点4jと径方向において重なっていなくてもよい。
【0067】
具体的には、図10に示すように、複数の電磁鋼板4aの各々において、軸方向から見て、貫通孔4c(第1貫通孔)の辺4kが、周方向において積層コア4bのd軸と重なる位置に配置されるように構成されている。図10に示す例では、d軸は、積層コア4bの回転軸線Cからブリッジ部4iに向かう方向に延びる。すなわち、図10に示す例では、軸方向から見て、貫通孔4cの辺4kが、周方向においてブリッジ部4iと重なる位置に配置される。ここで、軸方向から見て、貫通孔4cの辺4kが設けられる周方向位置の方が、貫通孔4cの頂点4jが設けられる周方向位置に比べて、積層コア4b(電磁鋼板4a)の径方向における幅が大きい。したがって、貫通孔4cの辺4kが周方向において積層コア4bのd軸と重なる位置に配置されることによって、磁束が、積層コア4bの径方向における幅が大きい部分を通る。その結果、磁束の低下に起因してモータ出力が低下するのを防止することができる。
【0068】
また、上記実施形態では、5つの鋼板ブロック40のいずれの隣接する鋼板ブロック40同士においても、貫通孔4c(第1貫通孔)の周方向における位置が互いにずらされている例を示したが、本発明はこれに限られない。隣接する鋼板ブロック40のうちの一部の隣接する鋼板ブロック40同士においてだけ、貫通孔4cの周方向における位置が互いにずらされていてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 ロータ
3 シャフト
3b 内周面(シャフトの内周面)
4a 電磁鋼板
4b 積層コア
4c 貫通孔(第1貫通孔)
4d シャフト挿入孔
4e 径方向外側部分
4f 径方向内側部分
4g 貫通孔(第2貫通孔)
4i ブリッジ部
4j 頂点
4l 内周面(第1貫通孔の内周面)
5 永久磁石
7 オイル射出部
40 鋼板ブロック
800 液体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10