(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/015 20060101AFI20240730BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20240730BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/14 301
B41J2/01 403
(21)【出願番号】P 2020123517
(22)【出願日】2020-07-20
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】牧田 秀史
(72)【発明者】
【氏名】福田 真子
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-228803(JP,A)
【文献】特開2017-114049(JP,A)
【文献】特開2015-044404(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0274648(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出装置であって、
ノズルと、前記ノズルに連通する圧力室と、前記圧力室内の液体に圧力変動を生じさ
せる圧力発生手段と、を有するヘッドと、
繰り返しの周期の中に複数の駆動パルスを含む第1駆動信号と、前記繰り返しの周期
の中に複数の駆動パルスを含む第2駆動信号と、を同期させて繰り返し生成する駆動信号
生成部と、
前記第1駆動信号または前記第2駆動信号に含まれる複数の駆動パルスの中から選択
されたパルスを前記圧力発生手段に供給する駆動制御部と、を備え、
前記複数の駆動パルスは、
前記ノズルから液体が吐出されるように前記圧力変動を生じさせる第1吐出パルスお
よび第2吐出パルスと、
前記ノズルから液体が吐出されないように前記圧力変動を生じさせる第1微振動パル
スおよび第2微振動パルスと、を含み、
前記第1駆動信号は、前記繰り返し周期に含まれる第1期間に、前記第1吐出パルスと
前記第1微振動パルスのうち一方を含み、前記繰り返し周期に含まれ前記第1期間より後
の第2期間に、前記第2吐出パルスと前記第2微振動パルスのうち一方を含み、
前記第2駆動信号は、前記第1期間に、前記第1吐出パルスと前記第1微振動パルスの
うち他方を含み、前記第2期間に、前記第2吐出パルスと前記第2微振動パルスのうち他
方を含み、
前記第1期間の開始から前記第1微振動パルスの開始までの期間の長さと、前記第2期
間の開始から前記第2微振動パルスの開始までの期間の長さとは、異なり、
前記第1駆動信号または前記第2駆動信号のうちいずれかは、前記第1期間において、
前記第1微振動パルスと、前記第1微振動パルスより後に配置され、前記ノズルから液体
が吐出されるように前記圧力変動を生じさせる第3吐出パルスと、を含み、
前記第1駆動信号または前記第2駆動信号のうちいずれかは、前記第2期間において、
前記第2微振動パルスと、前記第2微振動パルスより後に配置され、前記ノズルから液体
が吐出されるように前記圧力変動を生じさせる第4吐出パルスと、を含み、
前記第1期間の開始から前記第3吐出パルスの開始までの期間の長さは、前記第2期間
の開始から前記第4吐出パルスの開始までの期間の長さと等しい、液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1記載の液体吐出装置であって、
前記第1期間の開始から前記第1微振動パルスの開始までの期間の長さは、前記第2期
間の開始から前記第2微振動パルスの開始までの期間の長さより、大きい、液体吐出装置
。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液体吐出装置であって、
前記第1期間の開始から前記第1吐出パルスの開始までの期間の長さと、前記第2期間
の開始から前記第2吐出パルスの開始までの期間の長さは、等しい、液体吐出装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の液体吐出装置であって、
前記第1吐出パルスの波形は、
前記第2吐出パルスの波形と同じ、液体吐出装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の液体吐出装置であって、
前記第1微振動パルスの波形は、前記第2微振動パルスの波形と同じ、液体吐出装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の液体吐出装置であって、
前記第1期間と前記第2期間とは、それぞれ1画素のための液体が吐出される期間であ
る、液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷媒体に対する印刷ヘッドの相対位置を変化させつつ、印刷ヘッドから印刷媒体に液滴を吐出するプリンターが存在する。そのようなプリンターにおいては、印刷媒体と印刷ヘッドの相対位置の変化に応じてタイミング信号が繰り返し生成される。そのタイミング信号に応じたタイミングで、駆動波形が生成され、液体を送出する素子に供給される。
【0003】
特許文献1の技術においては、繰り返し生成されるタイミング信号の1区間内に、2画素にドットを記録するための駆動波形を含む駆動信号が生成される。駆動信号は、タイミング信号の1区間内に含まれる第1期間と第2期間に、それぞれ、印刷ヘッドのノズルから液体を吐出させるための吐出パルスを含む。第1期間と第2期間とは、それぞれ1画素に対応する。
【0004】
駆動信号は、タイミング信号の1区間内に含まれる第1期間と第2期間の一方または両方に、吐出パルスに代えて微振動パルスを含み得る。微振動パルスは、印刷ヘッドのノズルから液体を吐出させず、印刷ヘッドのノズル内の液体を振動させるためのパルスである。印刷媒体に形成すべき画像を表す画像データに応じて、第1期間と第2期間のそれぞれにおいて、駆動信号に含まれる吐出パルスまたは微振動パルスが選択され、液体を送出する素子に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
繰り返される第1期間と第2期間において選択されるパルスの組み合わせによっては、後の吐出パルスによる液体の吐出が不安定になってしまう場合があった。具体的には、吐出される液体の量、吐出方向、および液体が吐出されるタイミングが、想定された量、方向、およびタイミングとは異なってしまう場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態によれば、液体吐出装置が提供される。この液体吐出装置は、ノズルと、前記ノズルに連通する圧力室と、前記圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生手段と、を有するヘッドと、繰り返しの周期の中に複数の駆動パルスを含む第1駆動信号と、前記繰り返しの周期の中に複数の駆動パルスを含む第2駆動信号と、を同期させて繰り返し生成する駆動信号生成部と、前記第1駆動信号または前記第2駆動信号に含まれる複数の駆動パルスの中から選択されたパルスを前記圧力発生手段に供給する駆動制御部と、を備える。前記複数の駆動パルスは、前記ノズルから液体が吐出されるように前記圧力変動を生じさせる第1吐出パルスおよび第2吐出パルスと、前記ノズルから液体が吐出されないように前記圧力変動を生じさせる第1微振動パルスおよび第2微振動パルスと、を含む。前記第1駆動信号は、前記繰り返し周期に含まれる第1期間に、前記第1吐出パルスと前記第1微振動パルスのうち一方を含み、前記繰り返し周期に含まれ前記第1期間より後の第2期間に、前記第2吐出パルスと前記第2微振動パルスのうち一方を含む。前記第2駆動信号は、前記第1期間に、前記第1吐出パルスと前記第1微振動パルスのうち他方を含み、前記第2期間に、前記第2吐出パルスと前記第2微振動パルスのうち他方を含む。前記第1期間の開始から前記第1微振動パルスの開始までの期間の長さと、前記第2期間の開始から前記第2微振動パルスの開始までの期間の長さとは、異なる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の液体吐出装置100を示す説明図である。
【
図3】
図2のIII-IIIの断面における断面図である。
【
図4】液体吐出装置100の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図5】第1駆動信号COM-Aおよび第2駆動信号COM-Bの構成を示すチャートである。
【
図6】一つの印刷周期Tcに対応する二つの画素のうち、一つの画素において、大ドット、中ドット、小ドット、非記録の印刷をする場合の駆動信号Voutを示すチャートである。
【
図7】一つの印刷周期Tcに対応する二つの画素のうち、一つ目の画素に大ドットを形成し、二つ目の画素にドットを形成しない場合の駆動信号Voutを示すチャートである。
【
図8】他の実施形態1にかかる第1駆動信号COM-Aおよび第2駆動信号COM-Bの構成を示すチャートである。
【
図9】他の実施形態1の変形例にかかる第1駆動信号COM-Aおよび第2駆動信号COM-Bの構成を示すチャートである。
【
図10】他の実施形態3にかかる第1駆動信号COM-Aおよび第2駆動信号COM-Bの構成を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
(1)液体吐出装置の機械的な構成:
図1は、第1実施形態の液体吐出装置100を示す説明図である。液体吐出装置100は、液体であるインクを媒体PMに吐出するインクジェット方式の印刷装置である。液体吐出装置100は、インクを貯留する液体容器2を取りつけられ、媒体PMをセットされることができる。液体吐出装置100は、液体容器2内のインクを、媒体PMに向けて吐出することができる。液体吐出装置100は、液体吐出ヘッド1と、移動機構24と、搬送機構8と、制御ユニット121と、を備える。
【0010】
液体吐出ヘッド1は、複数のノズルを備える。液体吐出ヘッド1は、液体容器2から供給される液体のインクを、複数のノズルから吐出する。ノズルから吐出されたインクは、液体吐出装置100において所定の位置に配された媒体PMに着弾する。液体吐出ヘッド1の構成については、後に詳細に説明する。
【0011】
移動機構24は、輪状のベルト24bと、ベルト24bに固定されており、液体吐出ヘッド1を保持することができるキャリッジ24cと、を備える。移動機構24は、輪状のベルト24bを双方向に回転させることにより、液体吐出ヘッド1をX方向に沿って往復させることができる。X方向に沿ったキャリッジ24cの位置は、液体吐出装置100に設けられたエンコーダーが送出するパルスに基づいて、検出される。
【0012】
搬送機構8は、移動機構24による液体吐出ヘッド1の複数回の移動の間に、媒体PMを-Y方向に沿って搬送する。Y方向は、X方向と直交する方向である。その結果、X方向とY方向で張られる仮想面に向かって吐出されたインクによって、媒体PM上に、画像が形成される。
【0013】
X方向およびY方向に垂直な方向をZ方向とする。液体吐出ヘッド1は、X方向に沿って搬送されている間に、Z方向に沿ってインクを吐出する。
【0014】
制御ユニット121は、液体吐出ヘッド1からのインクの吐出動作を制御する。制御ユニット121は、搬送機構8と、移動機構24と、液体吐出ヘッド1と、を制御して、媒体PM上に画像を形成させる。
【0015】
図2は、液体吐出ヘッド1の平面図である。本実施形態の液体吐出ヘッド1は、インクジェット式記録ヘッドである。液体吐出ヘッド1は、ノズル21からインク滴を吐出する。ノズル21は、XY平面に平行に配されているノズルプレート20において、Y方向に沿って直線状に配されている。
【0016】
図3は、
図2のIII-IIIの断面における断面図である。液体吐出ヘッド1は、流路形成基板10と、連通板15と、ノズルプレート20と、コンプライアンス基板49と、振動板50と、圧電アクチュエーター300と、保護基板30と、ケース部材40と、を備える。
【0017】
流路形成基板10は、複数の圧力室12を備える(
図3の下段中央参照)。複数の圧力室12は、Y方向に沿って並んで配されている。一つの圧力室12は、一つのノズル21に連通している。
【0018】
連通板15は、流路形成基板10に対してZ方向+側に、流路形成基板10に接して配されている。連通板15は、第1連通板151と第2連通板152とから構成される。連通板15は、一つの第1連通部16と、一つの第2連通部17と、一つの第3連通部18と、複数の第1流路201と、複数の第2流路202と、複数の供給路203と、を有する。
【0019】
第1連通部16は、ケース部材40の第1液室部41と連通している(
図3の下段右部参照)。連通板15内において、インクは、第1連通部16から、複数組の供給路203と圧力室12と第2流路202と第1流路201とを経て、第3連通部18に至る。供給路203と圧力室12と第2流路202と第1流路201とを、まとめて個別流路200とも呼ぶ。一つの個別流路200は、一つのノズル21と接続されている。複数の個別流路200を流れたインクは、一つの第3連通部18を経て、一つの第2連通部17に至る。第2連通部17は、ケース部材40の第2液室部42と連通している(
図3の下段左部参照)。
図3においてインクが流通する方向を、空隙内に配した矢印で示す。
【0020】
ノズルプレート20は、連通板15に対してZ方向+側に、連通板15に接して配されている(
図3の下段参照)。ノズルプレート20は、連通板15においてそれぞれZ方向+側に開口している、第1流路201と第2流路202と第3連通部18とを、連通板15のZ方向+側において塞いでいる。
【0021】
ノズルプレート20は、第1流路201を塞ぐ部分に、ノズル21を備えている。ノズル21は、XY平面に平行に配されているノズルプレート20において、Y方向に沿って直線状に配されている(
図2参照)。
【0022】
コンプライアンス基板49は、連通板15に対してZ方向+側に、連通板15に接して配されている(
図3の下段参照)。コンプライアンス基板49は、連通板15においてZ方向+側に開口している第1連通部16を、Z方向+側において塞いでいる(
図3の下段右部参照)。コンプライアンス基板49は、封止膜491と、固定基板492と、から構成されている。
【0023】
コンプライアンス基板49のうち、連通板15の第1連通部16を封止する部分には、封止膜491は設けられているが、固定基板492は設けられていない(
図3の下段右部参照)。封止膜491は、弾性変形することにより、第1連通部16内の圧力変動を緩和する。コンプライアンス基板49のうち連通板15の第1連通部16を封止する部分を、コンプライアンス部494とも呼ぶ。
【0024】
振動板50は、流路形成基板10に対してZ方向-側に、流路形成基板10に接して配されている(
図3の中央部参照)。振動板50は、流路形成基板10においてZ方向-側に開口している圧力室12を、流路形成基板10のZ方向-側において塞いでいる。
【0025】
圧電アクチュエーター300は、振動板50に対してZ方向-側に、振動板50に接して配されている(
図3の中央部参照)。複数の圧電アクチュエーター300が、振動板50を挟んで、複数の圧力室12とそれぞれ向かい合う位置に、設けられている。圧電アクチュエーター300は、第1電極60と、圧電体層70と、第2電極80と、を有する。
【0026】
第2電極80には、リード電極90がそれぞれ接続されている(
図3の中央部参照)。リード電極90を介して、各圧電アクチュエーター300に、選択的に電圧が印加される。第1電極60と第2電極80によって圧電体層70に電圧が付与されると、圧電体層70は変形する。圧電アクチュエーター300に接して配されている振動板50は、圧電体層70の変形によって変形され、圧力室12内のインクに圧力を付与する。その結果、圧力室12内のインクに圧力変動が生じる。第2流路202内のインクを介して、第1流路201内のインクに圧力が伝達され、ノズル21からインクが吐出される。
【0027】
保護基板30は、振動板50に対してZ方向-側に、その一部を振動板50に接して配されている(
図3の中央部参照)。保護基板30は、複数の圧電アクチュエーター300を収容する空隙である圧電アクチュエーター保持部31を有する。圧電アクチュエーター保持部31は、Z方向+側に開口している一つの凹部である。圧電アクチュエーター保持部31内において、複数の圧電アクチュエーター300は変形することができる。
【0028】
リード電極90の一部には、フレキシブルケーブル120が接続されている。フレキシブルケーブル120は、半導体素子である駆動回路126a,126bを備える。
【0029】
ケース部材40は、連通板15および保護基板30に対してZ方向-側に、連通板15および保護基板30に接して配されている(
図3の上段参照)。ケース部材40は、第1液室部41と、第2液室部42と、導入口43と、排出口44と、接続孔45と、を備える。
【0030】
ケース部材40において、インクは、導入口43から導入され、第1液室部41を経て、連通板15に供給される(
図3の上段右部の矢印IN参照)。連通板15から供給されたインクは、第2液室部42を経て、排出口44から一時貯留部に排出される(
図3の上段左部の矢印OUT参照)。一時貯留部に排出されたインクは、再度、導入口43から導入される。すなわち、本実施形態においては、インクは、液体吐出ヘッド1と液体吐出ヘッド1の外部に設けられた一時貯留室との間を循環する。
【0031】
接続孔45は、Z方向にケース部材40を貫通している孔である(
図3の上段中央部参照)。露出しているリード電極90の一部は、接続孔45内を通って配されるフレキシブルケーブル120に接続されている。
【0032】
(2)液体吐出装置100の電気的な構成:
図4は、液体吐出装置100の電気的な構成を示すブロック図である。制御ユニット121は、液体吐出ヘッド1の圧電アクチュエーター300に電気信号を印加することにより、圧電アクチュエーター300の駆動を制御する。
【0033】
制御ユニット121は、制御信号Ctr、駆動信号COM-A、COM-B、および電圧VBSの保持信号を液体吐出ヘッド1に供給する(
図4の左部参照)。液体吐出ヘッド1は、制御ユニット121から受け取った制御信号Ctr、駆動信号COM-A、COM-B、および電圧VBSに応じて、圧電アクチュエーター300を駆動し、ノズル21からインクを吐出させる。
【0034】
制御ユニット121は、制御部122と、駆動回路126a、126bと、電圧生成回路124とを含む。制御部122は、CPUやRAM、ROMなどを有するマイクロコンピューターである(
図4の上段左部参照)。制御部122は、CPUで所定のプログラムを実行することによって、画像データに基づいて、液体吐出装置100の各部を制御するための各種の制御信号等を出力することができる。
【0035】
制御部122は、移動機構24および搬送機構8を制御する(
図1参照)。制御部122は、キャリッジ24cの走査位置に応じてエンコーダーから出力されるエンコーダーパルスに基づいて、キャリッジ24cに搭載された液体吐出ヘッド1の走査位置を認識できる。制御部122は、エンコーダーパルスに基づいてタイミング信号PTSを生成し、タイミングパルスPTSに同期させて、液体吐出ヘッド1に、各種の制御信号Ctrを供給する(
図4の上段参照)。制御信号Ctrには、「大ドット」、「中ドット」、「小ドット」及び「非記録」の何れかを示す印刷データ信号、印刷データのラッチタイミングを規定するLAT信号、および第1駆動信号COM-Aおよび第2駆動信号COM-Bに含まれる各駆動パルスの選択タイミングを規定するCH信号等のノズル21からのインクの吐出を制御する複数種類の制御信号と、印刷データの転送に用いるクロック信号等が含まれる。制御部122は、タイミングパルスPTSに基づいて1つ目のLAT信号であるLATp11を発生し、その後、規定時間の経過を条件に2つ目のLAT信号であるLATp12を生成し、LATp11およびLATp12からの規定時間経過を条件に各チェンジ信号CHを生成する。制御部122は、駆動回路126aにデジタルのデータdAを供給する(
図4の上段左部参照)。制御部122は、駆動回路126bにデジタルのデータdBを供給する。
【0036】
駆動回路126aは、データdAをアナログ変換し、さらに増幅して、第1駆動信号COM-Aとして液体吐出ヘッド1に出力する(
図4の上段左部参照)。駆動回路126bは、データdBをアナログ変換し、さらに増幅して、第2駆動信号COM-Bとして液体吐出ヘッド1に出力する。その結果、制御ユニット121において、複数の駆動パルスを含む第1駆動信号COM-Aと、複数の駆動パルスを含む第2駆動信号COM-Bと、が、タイミング信号PTSに同期されて繰り返し生成される。この繰り返しの周期を「印刷周期」とも呼ぶ。駆動回路126a、126bのハードウェア構成は同一である。
【0037】
電圧生成回路124は、一定の電圧VBSを有する保持信号を生成して、液体吐出ヘッド1に出力する(
図4の下段左部参照)。保持信号は、アクチュエーター基板1Aにおける複数の圧電アクチュエーター300の共通の電極(
図4の圧電アクチュエーター300の右側、および
図3の60参照)の電位を、一定に保持する。
【0038】
液体吐出ヘッド1は、アクチュエーター基板1Aと駆動IC1Dを有する(
図4の右部参照)。なお、アクチュエーター基板1Aと駆動IC1Dとは、電気的な構成における概念的な区分であり、これらの呼称は、必ずしもそれらの構成が一つの基板や一つのICによって実現されていることを意味するものではない。
【0039】
駆動IC1Dは、アクチュエーター基板1Aの各圧電アクチュエーター300の個別の電極に駆動信号を供給する(
図4の圧電アクチュエーター300の左側、および
図3の80参照)。駆動IC1Dは、制御ユニット121の電圧生成回路124から受け取った保持信号を、アクチュエーター基板1Aの各圧電アクチュエーター300の共通の電極(
図4の圧電アクチュエーター300の右側、および
図3の60参照)に中継する。
【0040】
駆動IC1Dは、選択制御部1D1と、圧電アクチュエーター300に一対一に対応した選択部1D2と、を有する(
図4の右部参照)。選択制御部1D1は、各選択部1D2のそれぞれに対して第1駆動信号COM-Aおよび第2駆動信号COM-Bのいずれを選択すべきかを、制御部122から出力されるクロック信号、印刷データ信号、LAT信号およびCH信号によって指示する。より具体的には、選択制御部1D1は、制御部122からクロック信号に同期して供給される印刷データ信号を、液体吐出ヘッド1の圧電アクチュエーター300の数の分、シフトレジスターに蓄積する。そして、選択制御部1D1は、LAT信号が入力されると印刷データ信号をラッチ回路でラッチし、デコーダーで印刷データ信号からデコードされた選択信号を、LAT信号やCH信号で規定されるタイミングで、各選択部1D2に対して出力する。
【0041】
各選択部1D2は、選択制御部1D1からの指示にしたがって、駆動信号COM-A、COM-Bのいずれかを選択し、または、選択せずに、電圧Voutの駆動信号として、対応する圧電アクチュエーター300の個別の電極に印加する(
図4の圧電アクチュエーター300の左側参照)。第1駆動信号COM-Aおよび第2駆動信号COM-Bに含まれる複数の駆動パルスの中から選択されたパルスが、駆動IC1Dから圧電アクチュエーター300に供給される。電圧Voutの駆動信号は、具体的には、圧電アクチュエーター300の第2電極80に印加される(
図3参照)。
【0042】
アクチュエーター基板1Aは、複数の圧電アクチュエーター300を有する。各圧電アクチュエーター300の一方の第2電極80は個別に設けられているのに対して、他方の第1電極60は、複数の圧電アクチュエーター300について共通の電極として設けられる。複数の圧電アクチュエーター300の個別の第2電極80に対しては、駆動信号として、形成すべきドットの大きさに応じて異なる波形の電圧Voutが付与される(
図4の圧電アクチュエーター300の左側参照)。複数の圧電アクチュエーター300の共通の第1電極60に対しては、配線パターン1Lを介して、保持信号によって一定の電圧VBSが付与される(
図4の圧電アクチュエーター300の右側参照)。
【0043】
(3)駆動信号の構成:
図5は、第1駆動信号COM-Aおよび第2駆動信号COM-Bの構成を示すチャートである。前述のように、制御ユニット121は、複数の駆動パルスを含む第1駆動信号COM-Aと、複数の駆動パルスを含む第2駆動信号COM-Bと、を同期させて繰り返し生成する(
図5の上段、および
図4の中央部参照)。なお、
図5に示す第1駆動信号COM-Aおよび第2駆動信号COM-Bの波形は、技術の理解を容易にするために簡略化されたものであり、実際の波形を忠実に表すものではない。
【0044】
制御ユニット121は、媒体PMと液体吐出ヘッド1の相対位置の変化に応じてタイミング信号PTSを繰り返し生成する(
図5の下段参照)。具体的には、タイミング信号PTSは、キャリッジ24cの位置を検出するためのエンコーダーから送出される信号に基づいて、生成される。隣り合うタイミング信号PTSの間の時間区間においてノズル21から吐出されるインクによって、媒体PM上に、2画素分のドットが記録される。
図5において、ある印刷周期Tcの前端を規定するタイミング信号PTSのパルスをPTSp1で示す(
図5の下段左部参照)。ある印刷周期Tcの後端および次の印刷周期Tcの前端を規定するタイミング信号PTSのパルスをPTSp2で示す(
図5の下段右部参照)。
【0045】
制御部122は、(i)タイミング信号PTSのパルスを受信した時刻と、(ii)タイミング信号PTSのパルスを受信した時刻から、タイミング信号PTSの繰り返しの周期の基準値Tc0の1/2よりも短い一定の時間が経過した時刻と、において、LAT信号のパルスを出力する(
図5の下段参照)。繰り返しの周期の基準値Tc0とは、液体吐出ヘッド1を搭載したキャリッジ24cが、X方向に沿って理想的に往復された場合のタイミング信号PTSの繰り返しの周期Tcである。隣り合うLAT信号のパルスの間の時間区間においてノズル21から吐出されるインクによって、媒体PM上に、1画素分のドットが記録される。
【0046】
一つの印刷周期Tcは、LAT信号のパルスによって区切られる第1期間LAT1と第2期間LAT2と、を含む(
図5の下段参照)。第1期間LAT1は、印刷周期Tcの前端を含む時間区間である(
図5の上段参照)。第2期間LAT2は、第1期間LAT1の後に位置する期間である。第2期間LAT2は、印刷周期Tcの後端を含む時間区間である。第1期間LAT1と第2期間LAT2とは、それぞれ1画素のためのインクが吐出される期間に相当する。
【0047】
図5において、ある印刷周期Tcの前端と一致する第1期間LAT1の前端を規定するLAT信号のパルスをLATp11で示す(
図5の下段左部参照)。その第1期間LAT1の後端および次の第2期間LAT2の前端を規定するLAT信号のパルスをLATp12で示す(
図5の下段中央部参照)。その第2期間LAT2の後端および次の第1期間LAT1の前端を規定するLAT信号のパルスをLATp21で示す(
図5の下段中央部参照)。第1期間LAT1と第2期間LAT2とを区別せずに言及する場合には、「LAT期間」と表記する。
【0048】
制御部122は、(i)タイミング信号PTSのパルスを受信した時刻から、第1期間LAT1に含まれる駆動パルス間に至るまでの時間が経過した時刻と、(ii)タイミング信号PTSのパルスを受信した時刻から、第2期間LAT2に含まれる駆動パルス間に至るまでの時間が経過した時刻と、において、CH信号を出力する(
図5の下段、および
図4の右部参照)。CH信号は、第1駆動信号COM-Aおよび第2駆動信号COM-Bに含まれる各駆動パルスの選択タイミングを規定する信号である。
【0049】
図5において、第1期間LAT1の略中間の時刻を表すCH信号のパルスをCHp11で示す(
図5の下段左部参照)。第2期間LAT2の略中間の時刻を表すCH信号のパルスをCHp12で示す(
図5の下段左部参照)。
【0050】
第1駆動信号COM-Aに含まれる複数の駆動パルスは、第1吐出パルスPeA11と、第2吐出パルスPeA21と、を含む(
図5の上段右部参照)。第1駆動信号COM-Aに含まれる複数の駆動パルスは、さらに、第5吐出パルスPeA12と、第6吐出パルスPeA22と、を含む(
図5の上段中央部参照)。
【0051】
第1吐出パルスPeA11は、第1期間LAT1内に配置され、ノズル21から液体が吐出されるように圧力変動を生じさせる。第2吐出パルスPeA21は、第2期間LAT2内に配置され、ノズル21から液体が吐出されるように圧力変動を生じさせる。第1吐出パルスPeA11の波形と、第2吐出パルスPeA21の波形とは、同じである(
図5の上段右部参照)。
【0052】
第1期間LAT1の開始から第1吐出パルスPeA11の開始までの期間の長さC1と、第2期間LAT2の開始から第2吐出パルスPeA21の開始までの期間の長さC2とは、等しい。このような構成とすることにより、第1期間LAT1において第1吐出パルスPeA11によって形成される画素内のドットの位置と、第2期間LAT2において第2吐出パルスPeA21によって形成される画素内のドットの位置と、をほぼ一致させることができる。
【0053】
第5吐出パルスPeA12は、第1期間LAT1において第1吐出パルスPeA11より後に配置され、ノズル21から液体が吐出されるように圧力変動を生じさせる。第6吐出パルスPeA22は、第2期間LAT2において第2吐出パルスPeA21より後に配置され、ノズル21から液体が吐出されるように圧力変動を生じさせる。第5吐出パルスPeA12の波形、第6吐出パルスPeA22の波形とは、同じである(
図5の上段中央部参照)。
【0054】
第1期間LAT1の開始から第5吐出パルスPeA12の開始までの期間の長さD1と、第2期間LAT2の開始から第6吐出パルスPeA22の開始までの期間の長さD2とは、等しい。このような構成とすることにより、第1期間LAT1において第5吐出パルスPeA12によって形成される画素内のドットの位置と、第2期間LAT2において第6吐出パルスPeA22によって形成される画素内のドットの位置と、をほぼ一致させることができる。
【0055】
第2駆動信号COM-Bに含まれる複数の駆動パルスは、第1微振動パルスPsB11と、第2微振動パルスPsB21と、を含む(
図5の中段右部参照)。第2駆動信号COM-Bに含まれる複数の駆動パルスは、さらに、第3吐出パルスPeB12と、第4吐出パルスPeB22と、を含む(
図5の中段中央部参照)。
【0056】
第1微振動パルスPsB11は、第1期間LAT1に配置され、ノズル21から液体が吐出されないように圧力変動を生じさせる。第2微振動パルスPsB21は、第2期間LAT2に配置され、ノズル21から液体が吐出されないように圧力変動を生じさせる。第1微振動パルスPsB11の波形と、第2微振動パルスPsB21の波形とは、同じである(
図5の上段中央部参照)。
【0057】
第1期間LAT1の開始から第1微振動パルスPsB11の開始までの期間の長さA1と、第2期間LAT2の開始から第2微振動パルスPsB21の開始までの期間の長さA2とは、異なる。より具体的には、第1期間LAT1の開始から第1微振動パルスPsB11の開始までの期間の長さA1は、第2期間LAT2の開始から第2微振動パルスPsB21の開始までの期間の長さA2より、大きい。
【0058】
第3吐出パルスPeB12は、第1期間LAT1において第1微振動パルスPsB11より後に配置され、ノズル21から液体が吐出されるように圧力変動を生じさせる。第4吐出パルスPeB22は、第2期間LAT2において第2微振動パルスPsB21より後に配置され、ノズル21から液体が吐出されるように圧力変動を生じさせる。第3吐出パルスPeB12および第4吐出パルスPeB22の波形は、駆動信号COM-Aの第1吐出パルスPeA11および第2吐出パルスPeA21の波形と同じである(
図5の中段中央部参照)。
【0059】
第1期間LAT1の開始から第3吐出パルスPeB12の開始までの期間の長さB1と、第2期間LAT2の開始から第4吐出パルスPeB22の開始までの期間の長さB2とは、等しい。このような構成とすることにより、第1期間LAT1において第3吐出パルスPeB12によって形成される画素内のドットの位置と、第2期間LAT2において第4吐出パルスPeB22によって形成される画素内のドットの位置と、をほぼ一致させることができる。
【0060】
(4)パルスの選択とドットの形成:
本実施形態では、第1駆動信号COM-Aおよび第2駆動信号COM-Bの駆動周期内には、第1期間LAT1で1画素分のドットを記録し、第2期間LAT2で1画素分のドットを記録するが、各期間においてドットのサイズに応じて選択される駆動パルスは同様であるため、説明を簡単にするため、
図6に、一つの画素における、「大ドット」、「中ドット」、「小ドット」および「非記録」に対応する駆動パルスの選択を示して説明する。つまり、
図6は、駆動信号Voutにおける第1期間LAT1または第2期間LAT2の部分を示す。また、本実施形態では、第1期間LAT1と第2期間LAT2との長さが異なるが、説明の簡略化のため、同一長さで説明する。
【0061】
ある画素に「大ドット」を形成すべき場合には、その画素に対応するLAT期間の前半に吐出パルスが選択され、LAT期間の後半にも吐出パルスが選択される。具体的には、第1期間LAT1で「大ドット」を吐出する場合に対応する駆動信号Voutは、LATp11からCHp11までの期間に第1駆動信号COM-Aの第1吐出パルスPeA11が選択され、CHp11からLATp12までの期間に第2駆動信号COM-Bの第3吐出パルスPeB12が選択される。第2期間LAT2で「大ドット」を吐出する場合に対応する駆動信号Voutは、LATp12からCHp12までの期間に第1駆動信号COM-Aの第2吐出パルスPeA21が選択され、CHp12から印刷周期Tcの終端までの期間に第2駆動信号COM-Bの第4吐出パルスPeB22が選択される。その結果、1つのLAT期間において、中程度の量のインク滴が2回、吐出される。それらのインク滴のインクにより大ドットが形成される。
【0062】
ある画素に「中ドット」を形成すべき場合には、その画素に対応するLAT期間の前半に吐出パルスが選択され、LAT期間の後半にいずれのパルスも選択されない。具体的には、第1期間LAT1で「中ドット」を吐出する場合に対応する駆動信号Voutは、LATp11からCHp11までの期間に第1駆動信号COM-Aの第1吐出パルスPeA11が選択され、CHp11からLATp12までの期間に第1及び第2駆動信号COM-A、COM-Bのいずれも選択されない。第2期間LAT2で「中ドット」を吐出する場合に対応する駆動信号Voutは、LATp12からCHp12までの期間に第1駆動信号COM-Aの第2吐出パルスPeA21が選択され、CHp12から印刷周期Tcの終端までの期間に第1及び第2駆動信号COM-A、COM-Bのいずれも選択されない。その結果、1つのLAT期間において、中程度の量のインク滴が1回、吐出される。そのインク滴により、媒体PM上に中ドットが形成される。
【0063】
ある画素に「小ドット」を形成すべき場合には、その画素に対応するLAT期間の前半にいずれのパルスも選択されず、LAT期間の後半に吐出パルスが選択される。具体的には、第1期間LAT1で「小ドット」を吐出する場合に対応する駆動信号Voutは、LATp11からCHp11までの期間に第1および第2駆動信号COM-A、COM-Bのいずれも選択されず、CHp11からLATp12までの期間に第1駆動信号COM-Aの第5吐出パルスPeA12が選択される。第2期間LAT2で「小ドット」を吐出する場合に対応する駆動信号Voutは、LATp12からCHp12までの期間に第1および第2駆動信号COM-A、COM-Bのいずれも選択されず、CHp12から印刷周期Tcの終端までの期間に第1駆動信号COM-Aの第6吐出パルスPeA22が選択される。その結果、1つのLAT期間において、小程度の量のインク滴が1回、吐出される。そのインク滴により、媒体PM上に小ドットが形成される。
【0064】
ある画素にドットを記録しない「非記録」の場合には、その画素に対応するLAT期間の前半に微振動パルスが選択され、LAT期間の後半にいずれのパルスも選択されない。具体的には、第1期間LAT1で「非記録」の場合に対応する駆動信号Voutは、LATp11からCHp11までの期間に第2駆動信号COM-Bの第1微振動パルスPsB11が選択され、CHp11からLATp12までの期間に第1および第2駆動信号COM-A、COM-Bのいずれも選択されない。その結果、1つのLAT期間において当該ノズル21の付近のインクが微振動し、インクは吐出されない。このインクの微振動により、ノズル21からインクを吐出させないLAT期間においても、ノズル21内のインクを流動させることができる。その結果、一部のインクが長期にわたってノズル21内に滞留し、インクの粘度の増大する事態を防止できる。
【0065】
実際には、第1期間LAT1において、大ドット、中ドット、小ドット、および非記録のうちいずれかに対応して選択された駆動パルスと、第2期間LAT2において、大ドット、中ドット、小ドット、および非記録のうちいずれかに対応して選択された駆動パルスと、が印刷周期Tcに含まれたVoutが圧電アクチュエーター300に印加される。
【0066】
図7は、第1期間LAT1と第2期間LAT2とを含むVoutの一例として、一つの印刷周期Tcに対応する二つの画素のうち、一つ目の画素に大ドットを形成し、二つ目の画素にドットを形成しない場合の駆動信号Voutを示すチャートである(
図4の右部参照)。
【0067】
図7は、第1期間LAT1と第2期間LAT2とを含むVoutの一例を示す。
図7は、第1期間LAT1において、大ドットを形成し、第2期間LAT2はドットを記録しない「非記録」の例を示す。第1期間LAT1の前半に、第1駆動信号COM-Aの第1吐出パルスPeA11が選択され、後半に第2駆動信号COM-Bの第3吐出パルスPeB12が選択される。第2期間LAT2の前半に、第2駆動信号COM-Bの第2微振動パルスPsB21が選択され、後半には、駆動信号COM-A、COM-Bのいずれも選択されない。その結果、第1期間LAT1において、中程度の量のインク滴が2回、吐出され、それらのインク滴のインクが媒体PM上で大ドットを形成し、第2期間LAT2の前半において当該ノズル21の付近のインクが微振動し、インクは吐出されない。
【0068】
(5)第1期間LAT1の長さと第2期間LAT2の長さ:
キャリッジ24cを移動させるベルト24bの製造誤差や、キャリッジ24cの位置を検出するエンコーダーの製造誤差により、タイミング信号PTSが厳密には等間隔に生成されない場合がある(
図1参照)。
図5において、後側のタイミング信号のパルスPTSp2が最も早く送出された場合のパルスPTSp2をPTSp2sとして示す(
図5の下段中央部参照)。タイミング信号のパルスPTSp2sのタイミングは、実験的に得ることができる。
【0069】
図5において、タイミング信号のパルスPTSp2sに対応するLAT信号のパルスをLATp21sとして示す(
図5の下段中央部参照)。このとき、前側のタイミング信号パルスPTSp1から後側のタイミング信号パルスPTSp2sまでの印刷周期Tcは、理想的な長さに対して最も短くなっている。繰り返しの周期Tcが最も短くなった場合の周期Tcを、周期Tcminとして
図5に示す(
図5の上段中央部参照)。そのときの、次の周期の第1駆動信号COM-Aの第1吐出パルスPeA11を第1吐出パルスPeA11sとして破線で示す(
図5の上段右部参照)。次の周期の第2駆動信号COM-Bの第1微振動パルスPsB11sとして破線で示す(
図5の中段右部参照)。
【0070】
制御部122は、(i)タイミング信号PTSのパルスを受信した時刻と、(ii)タイミング信号PTSのパルスを受信した時刻から、タイミング信号PTSの繰り返しの周期の基準値Tc0の1/2よりも短い一定の時間が経過した時刻と、において、LAT信号のパルスを出力する(
図5の下段参照)。印刷周期Tcの基準値Tc0の1/2よりも短い一定の時間は、前側のタイミング信号PTSに対して後側のタイミング信号PTSの生成タイミングが最も早い場合の印刷周期Tcminに基づいて、定めることができる。印刷周期Tcminは、実験によって得られる。Tcminが基準値Tc0のR%であるとき、基準値Tc0の1/2よりも短い一定の時間は、たとえば、基準値Tc0の1/2のR%の値とすることができる。
【0071】
このような態様においては、前側のタイミング信号PTSの生成タイミングから印刷周期Tcの基準値Tc0が経過した時点で後側のタイミング信号PTSが生成された場合に、第2期間LAT2の長さは、第1期間LAT1の長さより長くなる(
図5の下段参照)。
【0072】
このような構成とすることにより、前側のタイミング信号PTSの生成タイミングから最も短い間隔で次のタイミング信号PTSが生成された場合に第2期間LAT2の駆動パルスが印加されるように後側にマージン期間を設けることができる。その結果、前側のタイミング信号PTSに同期している一組の第1駆動信号COM-Aと第2駆動信号COM-Bとを生成した後、印刷周期Tcminに対応する早いタイミングで生成された次のタイミング信号PTSに同期して次の一組の第1駆動信号COM-Aと第2駆動信号COM-Bとを生成した場合に、以下のような効果が得られる(
図5のPeA11s,PsB11s参照)。すなわち、最も短い印刷周期Tcminの場合でも、第1駆動信号COM-Aおよび第2駆動信号COM-Bに含まれる駆動パルスを1印刷周期内で圧電アクチュエーター300に印加させることができる。
【0073】
(6)第1微振動パルスPsB11と第2微振動パルスPsB21の発生タイミング:
本実施形態においては、第1期間LAT1の開始から第1微振動パルスPsB11の開始までの期間の長さA1と、第2期間LAT2の開始から第2微振動パルスPsB21の開始までの期間の長さA2とは、異なる(
図5の中段左部参照)。
【0074】
上述のとおり、第1微振動パルスPsB11および第2微振動パルスPsB21は、LAT期間の開始から駆動パルスの開始までの期間の長さA1とA2が一致していなくても、媒体PM上に形成される画像の品質に影響を与えることはない。したがって、第1期間LAT1の開始から第1微振動パルスPsB11の開始までの期間の長さA1に拘束されることなく、第2期間LAT2の開始から第2微振動パルスPsB21の開始までの期間の長さA2、すなわち、第2微振動パルスPsB21の開始タイミングを、設定することができる。その結果、繰り返しの周期Tcの変動にかかわらず、第2微振動パルスPsB21に起因してその後の第1期間LAT1におけるパルスが不安定になる事態が生じにくいように、第2微振動パルスPsB21の開始タイミングを、設定することができる(
図5のPeA11s、PsB11s参照)。
【0075】
同様に、第1期間LAT1の開始から第1微振動パルスPsB11の開始までの期間の長さA1も、第2期間LAT2の開始から第2微振動パルスPsB21の開始までの期間の長さA2に拘束されることなく、設定することができる。その結果、第1微振動パルスPsB11に起因してその後の第2期間LAT2におけるパルスが不安定になる事態が生じにくいように、第1微振動パルスPsB11の開始タイミングを、設定することができる。
【0076】
上述のとおり、圧電アクチュエーター300に駆動パルスが印加されると、圧力室12内のインクに圧力変動が生じる。その圧力変動が生じた後、圧力室12内のインクには残留振動が発生する。例えば、
図7に例示するVoutが圧電アクチュエーター300に印加された場合、第3吐出パルスPeB12の印加後には残留振動が生じる。その後、前記残留振動に第2微振動パルスPsB21による圧力変動が重なり、第2微振動パルスPsB21の印加後に残留振動が生じる。さらにその後に続く印刷周期に印加される駆動パルスによる圧力変動が、さらに重なった残留振動が生じる。
【0077】
ここで、圧電アクチュエーター300に駆動パルスが印加された後に圧力室12内に生じる残留振動は、振幅を繰り返しながら減衰していく。残留振動が生じている状態で次の駆動パルスが印加される場合、駆動パルスが印加されるタイミングでの、当該残留振動の振幅の大きさ及び位相によって、ノズル21内のインクの液面であるメニスカスの挙動が異なる。例えば、残留振動によりノズル21内のメニスカスが圧力室12側に引き込まれる状態で、駆動パルスにより圧電体層70が圧力室12の体積を増加させるように変形すると、圧力室12内のインクの圧力変動は励振される。一方、残留振動によりノズル21内のメニスカスが圧力室12側とは反対側に押し出される状態で、駆動パルスにより圧電体層70が圧力室12の体積を増加させるように変形すると、圧力室12内のインクの圧力変動は制振される。さらに、駆動パルスが印加されるタイミングでの、当該残留振動の振幅の大きさと、駆動パルスによる圧力室12内のインクに与えられる圧力変動の大きさとの関係により、圧力室12内およびノズル21内のインクの流動が異なる。
【0078】
したがって、第1期間LAT1の開始から第1微振動パルスPsB11の開始までの期間の長さA1と、第2期間LAT2の開始から第2微振動パルスPsB21の開始までの期間の長さA2とは、それぞれの微振動パルスが印加される前のLAT期間で駆動パルスが印加されるかどうかにかかわらず微振動パルスの印加後に生じる残留振動が、タイミング信号PTSの生成タイミングのずれによらず、大きく変動しないように、定められることが好ましい。
【0079】
本実施形態においては、具体的には、第1期間LAT1の開始から第1微振動パルスPsB11の開始までの期間の長さA1は、第2期間LAT2の開始から第2微振動パルスPsB21の開始までの期間の長さA2より、大きい(
図5の中段右部参照)。
【0080】
図5の例において、第2駆動信号COM-Bにおいて、第1期間LAT1の最後のパルスである第3吐出パルスPeB12の終了時刻から、第2期間LAT2の最初のパルスである第2微振動パルスPsB21の開始時刻までの時間を、時間T12とする(
図5の中央部参照)。この時間T12は、第1期間LAT1で、第5吐出パルスPeA12が印加された場合、および第1吐出パルスPeA11および第3吐出パルスPeB12が印加された場合の残留振動に対して、所望のタイミングで第2微振動パルスPsB21が印加できるように、実験やシミュレーションに基づいて設定できる。また、第2駆動信号COM-Bにおいて、前の印刷周期Tcの第2期間LAT2の最後のパルスである第4吐出パルスPeB22の終了時刻から、次のタイミング信号のパルスPTSp2sが最も早く送出された場合の次の第1期間LAT1の最初のパルスである第1微振動パルスPsB11sの開始時刻までの時間を、時間T21sとする。この時間T21sは、前の印刷周期Tcminの第2期間LAT2で、第6吐出パルスPeA22が印加された場合および第2吐出パルスPeA21および第4吐出パルスPeB22が印加された場合の残留振動に対して、所望のタイミングで第1微振動パルスPsB11が印加できるように、実験やシミュレーションに基づいて設定できる。本実施形態では、第1期間LAT1の開始から第1微振動パルスPsB11の開始までの期間の長さA1は、時間T12と時間T21sとが等しくなるように、定められることが好ましい。これにより、前の印刷周期Tcminの第2期間LAT2で生じた残留振動の振幅および位相に適したタイミングで、第1微振動パルスPsB11を印加し、これにより次の第2期間LAT2で吐出パルスを印加する場合でも良好に吐出することができる。なお、第1駆動信号COM-Aにおいて、前の印刷周期Tcの第2期間LAT2の最後のパルスである第6吐出パルスPeA22の終了時刻から、次のタイミング信号のパルスPTSp2sが最も早く送出された場合の次の第1期間LAT1の最初のパルスである第1微振動パルスPsB11sの開始時刻までの時間も、時間T21sとすることが好ましい。
【0081】
このような構成とすることにより、繰り返しの周期Tcが印刷周期Tcminまで短くなった場合にも、前の印刷周期の第2期間LAT2での駆動パルスの選択の有無にかかわらず、今回の印刷周期の第1期間LAT1で第1微振動パルスPsB11の印加後に生じる残留振動に対して、第2期間LAT2で吐出パルスを良好なタイミングで印加し液滴を良好に吐出できる。
【0082】
本実施形態では、第1期間LAT1および第2期間LAT2のいずれにも、吐出パルスと微振動パルスとが配置されることで、第1期間LAT1および第2期間LAT2それぞれで1画素に対応する印刷を可能とする。また、第1期間LAT1において、吐出パルスと微振動パルスとのうち一方が第1駆動信号COM-Aに含まれ、他方が第2駆動信号COM-Bに含まれ、第2期間LAT2において、吐出パルスと微振動パルスとのうち一方が第1駆動信号COM-Aに含まれ、他方が第2駆動信号COM-Bに含まれることで、1つの駆動信号において、第1期間LAT1内に吐出パルスと微振動パルスとを含み、第2期間LAT2内に吐出パルスと微振動パルスとを含む場合より、駆動信号の繰り返し周期を短くでき、印刷速度を向上させることができる。さらに印刷速度を向上させた場合でも、駆動パルスの印加後に生じる残留振動による吐出不良を防止して印刷品質の劣化を抑制できる。
【0083】
本実施形態における液体吐出ヘッド1を、「ヘッド」とも呼ぶ。圧電アクチュエーター300を、「圧力発生手段」とも呼ぶ。制御ユニット121を、「駆動信号生成部」とも呼ぶ。駆動IC1Dを、「駆動制御部」とも呼ぶ。
【0084】
B.他の実施形態:
B1.他の実施形態1:
(1)上記実施形態においては、第1微振動パルスPsB11と第2微振動パルスPsB21との両方が、第2駆動信号COM-Bに含まれる。しかし、第1微振動パルスPsB11と第2微振動パルスPsB21との少なくとも一方が、第1駆動信号COM-Aに含まれていても良い。
図8は、第1微振動パルスPsB11が第1駆動信号COM-Aに含まれ、第2微振動パルスPsB21が第2駆動信号COM-Bに含まれる例を示す。
【0085】
図8は、本実施形態の第1駆動信号COM-A′および第2駆動信号COM-B′の構成を示すチャートである。第1駆動信号COM-A′に含まれる複数の駆動パルスは、第1微振動パルスPsB11と、第2吐出パルスPeA21と、第5吐出パルスPeA12と、第6吐出パルスPeB22と、を含む。さらに、第2駆動信号COM-B′に含まれる複数の駆動パルスは、第1吐出パルスPeA11と、第3吐出パルスPeB12と、第2微振動パルスPsB21と、第4吐出パルスPeA22と、を含む。その他の特徴は前記実施形態と同様である。
【0086】
またさらに、上記実施形態の第1駆動信号COM-Aに含まれる複数の駆動パルスを、第2駆動信号COM-Bに含み、上記実施形態の第2駆動信号COM-Bに含まれる複数の駆動パルスを、第1駆動信号COM-Aに含むこともできる。
【0087】
またさらに、
図9は、本実施形態の変形例の第1駆動信号COM-A’’および第2駆動信号COM-B’’の構成を示すチャートである。第1駆動信号COM-A’’に含まれる複数の駆動パルスは、第1吐出パルスPeA11と、第2微振動パルスPsB21’’と、を含む。さらに、第2駆動信号COM-B’’に含まれる複数の駆動パルスは、第1微振動パルスPsB11と、第2吐出パルスPeA21’’と、を含む。上記実施形態では、第1駆動信号COM-Aおよび第2駆動信号COM-Bが、第1期間LAT1および第2期間LATにそれぞれ複数の駆動パルスを含んでいたが、本変形例では、第1駆動信号COM-A’’および第2駆動信号COM-B’’は、第1期間LAT1および第2期間LATにそれぞれ1つずつの駆動パルスを含む。
【0088】
本変形例でも、第1駆動信号COM-A’’および第2駆動信号COM-B’’の駆動周期内において、第1期間LAT1内の駆動パルスで1画素分のドットを記録し、第2期間LAT2内の駆動パルスで1画素分のドットを記録する。本変形例では、一つの画素において、吐出パルスを選択すると「中ドット」を印刷し、微振動パルスを選択すると「非記録」となる。
【0089】
第1期間LAT1の開始から第1吐出パルスPeA11の開始までの期間の長さC1と、第2期間LAT2の開始から第2吐出パルスPeA21’’の開始までの期間の長さC2とは、等しい。また、第1期間LAT1の開始から第1微振動パルスPsB11の開始までの期間の長さA1は、第2期間LAT2の開始から第2微振動パルスPsB21‘’の開始までの期間の長さA2より、大きい。
【0090】
第2駆動信号COM-B’’において、前の印刷周期Tcの第2期間LAT2の最後のパルスである第2吐出パルスPeA21の終了時刻から、次のタイミング信号のパルスPTSp2sが最も早く送出された場合の次の第1期間LAT1の最初のパルスである第1微振動パルスPsB11sの開始時刻までの時間を、時間T21sとする。この時間T21sは、前の印刷周期Tcminの第2期間LAT2で、第2吐出パルスPeA21が印加された場合の残留振動に対して、所望のタイミングで第1微振動パルスPsB11が印加できるように、実験やシミュレーションに基づいて設定できる。本実施形態では、第1期間LAT1の開始から第1微振動パルスPsB11の開始までの期間の長さA1は、時間T12と時間T21sとが等しくなるように、定められることが好ましい。これにより、前の印刷周期Tcminの第2期間LAT2で生じた残留振動の振幅および位相に適したタイミングで、第1微振動パルスPsB11を印加し、これにより次の第2期間LAT2で吐出パルスを印加する場合でも良好に吐出することができる。なお、第1期間LAT1および第2期間LAT2のそれぞれに配置される吐出パルスは、中ドットを吐出する吐出パルスに変えて、小ドットを吐出パルスであってもよい。
【0091】
要するに、第1期間LAT1および第2期間LAT2のいずれにも、吐出パルスと微振動パルスとが配置されており、それらが第1駆動信号COM-Aまたは第2駆動信号COM-Bに割り振られていれば、1つの印刷周期Tcで2画素分の印刷することができる。
【0092】
(2)上記実施形態においては、一つの印刷周期Tcは、LAT信号によって区切られる第1期間LAT1と第2期間LAT2と、を含む(
図5の下段参照)。しかし、一つの印刷周期Tcは、第1期間LAT1と第2期間LAT2の間に、他の1以上の期間LATを含んでもよい。そのような他の期間LATは、1以上の駆動パルスを含んでもよいし、駆動パルスを含まなくてもよい。
【0093】
(3)上記実施形態においては、制御ユニット121が、媒体PMと液体吐出ヘッド1の相対位置の変化に応じてタイミング信号PTSを繰り返し生成し、さらにタイミングパルスPTSに基づいて、LAT信号のパルスを出力する(
図5の下段、および
図4の右部参照)。しかし、タイミング信号PTSおよびLAT信号は、他の構成要素が生成しても、いずれかだけを他の構成要素が生成してもよい。
【0094】
B2.他の実施形態2:
上記実施形態においては、具体的には、第1期間LAT1の開始から第1微振動パルスPsB11の開始までの期間の長さA1は、第2期間LAT2の開始から第2微振動パルスPsB21の開始までの期間の長さA2より、大きい(
図5の中段右部参照)。しかし、第1期間の開始から第1微振動パルスの開始までの期間の長さが、第2期間の開始から第2微振動パルスの開始までの期間の長さより、小さい態様とすることもできる。
【0095】
印刷周期Tcが短い印刷周期Tcminの第2期間LAT2で第6吐出パルスPeA22および第4吐出パルスPeB22のいずれかが選択された後の残留振動の振幅がある程度小さく、次の印刷周期の第1期間LATで第1微振動パルスPsB11によるインクへの圧力変動が加えられた際のノズル21内のメニスカスの挙動およびその後の残留振動が、その後の第2期間LAT2の吐出パルスでの吐出に悪影響を与えなければ、第1期間の開始から第1微振動パルスの開始までの期間の長さが、第2期間の開始から第2微振動パルスの開始までの期間の長さより、小さくてもよい。
【0096】
B3.他の実施形態3:
上記実施形態においては、第1期間LAT1の開始から第1微振動パルスPsB11の開始までの期間の長さA1と、第2期間LAT2の開始から第2微振動パルスPsB21の開始までの期間の長さA2とは、異なり、第1期間LAT1の開始から第3吐出パルスPeB12の開始までの期間の長さB1と、第2期間LAT2の開始から第4吐出パルスPeB22の開始までの期間の長さB2とは、等しく、第1期間LAT1の開始から第5吐出パルスPeA12の開始までの期間の長さD1と、第2期間LAT2の開始から第6吐出パルスPeA22の開始までの期間の長さD2とは、等しい。しかし、AとA2とは、等しい値とし、B1とB2とは、互いに異なる値とし、B1とB2とは、互いに異なる値とすることもできる。
【0097】
図10は、本実施形態の第1駆動信号COM-A’’’および第2駆動信号COM-B’’’の構成を示すチャートである。本実施形態では、第1期間LAT1の開始から第1微振動パルスPsB11′の開始までの期間の長さA1′と、第2期間LAT2の開始から第2微振動パルスPsB21の開始までの期間の長さA2とは、等しい。第1期間LAT1の開始から第3吐出パルスPeB12の開始までの期間の長さB1と、第2期間LAT2の開始から第4吐出パルスPeB22′の開始までの期間の長さB2′とは、異なる。さらに、第1期間LAT1の開始から第5吐出パルスPeA12の開始までの期間の長さD1と、第2期間LAT2の開始から第6吐出パルスPeA22′の開始までの期間の長さD2′とは、異なる。その他の特徴は前記実施形態と同様である。
【0098】
図10の例において、第2駆動信号COM-B′′′において、前の印刷周期Tcの第2期間LAT2の最後のパルスである第4吐出パルスPeB22′の終了時刻から、次のタイミング信号のパルスPTSp2sが最も早く送出された場合の次の第1期間LAT1の最初のパルスである第1微振動パルスPsB11s′の開始時刻までの時間を、時間T21s′とする。この時間T21s′は、前の印刷周期Tcminの第2期間LAT2で、第6吐出パルスPeA22′が印加された場合および第2吐出パルスPeA21および第4吐出パルスPeB22′が印加された場合の残留振動に対して、所望のタイミングで第1微振動パルスPsB11′が印加できるように、実験やシミュレーションに基づいて設定できる。本実施形態では、第2期間LAT2の開始から第4吐出パルスPeB22′の開始までの期間の長さB2′は、時間T12と時間T21s′とが等しくなるように、定められることが好ましい。また、本実施形態では、第1駆動信号COM-A′において、前の印刷周期Tcの第2期間LAT2の最後のパルスである第6吐出パルスPeA22’の終了時刻から、次のタイミング信号のパルスPTSp2sが最も早く送出された場合の次の第1期間LAT1の最初のパルスである第1微振動パルスPsB11s′の開始時刻までの時間も、時間T21s′とすることが好ましい。これにより、前の印刷周期Tcminの第2期間LAT2で生じた残留振動の振幅および位相に適したタイミングで、第1微振動パルスPsB11を印加し、これにより次の第2期間LAT2で吐出パルスを印加する場合でも良好に吐出することができる。
【0099】
B4.他の実施形態4:
上記実施形態においては、第1期間LAT1の前端をLAT信号のパルスLATp11で規定し、第2期間LAT2の前端をLAT信号のパルスLATp12で規定した。しかし、第1期間LAT1の前端および第2期間LAT2の前端は、LAT信号以外で規定することもできる。
例えば、第1期間LAT1の前端を、第1駆動信号COM-Aおよび第2駆動信号COM-Bのうち1画素目に対応する吐出パルスの中で最も早いタイミングで現れる吐出パルスの開始から所定期間C’遡った時刻を、第1期間LAT1の前端と特定することができる。この場合、第2期間LAT2の前端は、第1駆動信号COM-Aおよび第2駆動信号COM-Bのうち2画素目に対応する吐出パルスの中で最も早いタイミングで現れる吐出パルスの開始から所定期間C’遡った時刻を、第2期間LAT2の前端と特定することができる。
【0100】
C.さらに他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0101】
(1)本開示の一形態によれば、液体吐出装置が提供される。この液体吐出装置は、ノズルと、前記ノズルに連通する圧力室と、前記圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生手段と、を有するヘッドと、繰り返しの周期の中に複数の駆動パルスを含む第1駆動信号と、前記繰り返しの周期の中に複数の駆動パルスを含む第2駆動信号と、を同期させて繰り返し生成する駆動信号生成部と、前記第1駆動信号または前記第2駆動信号に含まれる複数の駆動パルスの中から選択されたパルスを前記圧力発生手段に供給する駆動制御部と、を備える。前記複数の駆動パルスは、前記ノズルから液体が吐出されるように前記圧力変動を生じさせる第1吐出パルスおよび第2吐出パルスと、前記ノズルから液体が吐出されないように前記圧力変動を生じさせる第1微振動パルスおよび第2微振動パルスと、を含む。前記第1駆動信号は、前記繰り返し周期に含まれる第1期間に、前記第1吐出パルスと前記第1微振動パルスのうち一方を含み、前記繰り返し周期に含まれ前記第1期間より後の第2期間に、前記第2吐出パルスと前記第2微振動パルスのうち一方を含む。前記第2駆動信号は、前記第1期間に、前記第1吐出パルスと前記第1微振動パルスのうち他方を含み、前記第2期間に、前記第2吐出パルスと前記第2微振動パルスのうち他方を含む。前記第1期間の開始から前記第1微振動パルスの開始までの期間の長さと、前記第2期間の開始から前記第2微振動パルスの開始までの期間の長さとは、異なる。
このような態様においては、第1期間の開始から第1微振動パルスの開始までの期間に拘束されることなく、第2期間の開始から第2微振動パルスの開始までの期間、すなわち、第2微振動パルスの開始タイミングを、設定することができる。その結果、繰り返しの周期の変動にかかわらず、前の繰り返し周期で生じた残留振動に対して適正なタイミングで次の繰り返し周期の微振動パルスを印加できるので、微振動パルスの印加後の吐出が不安定になることを抑制することができる。
【0102】
(2)上記形態の液体吐出装置において、前記第1期間の開始から前記第1微振動パルスの開始までの期間の長さは、前記第2期間の開始から前記第2微振動パルスの開始までの期間の長さより、大きい、態様とすることができる。
このような態様とすれば、繰り返しの周期が短くなった場合にも、前の繰り返し周期で生じた残留振動が減衰したタイミングで次の繰り返し周期の微振動パルスを印加できるので、微振動パルスの印加後の吐出が不安定になることを抑制することができる。
【0103】
(3)上記形態の液体吐出装置において、前記第1期間の開始から前記第1吐出パルスの開始までの期間の長さと、前記第2期間の開始から前記第2吐出パルスの開始までの期間の長さが、等しい、態様とすることができる。
【0104】
(4)上記形態の液体吐出装置において、前記第1駆動信号または前記第2駆動信号のうちいずれかは、前記第1期間において、前記第1微振動パルスと、前記第1微振動パルスより後に配置され、前記ノズルから液体が吐出されるように前記圧力変動を生じさせる第3吐出パルスと、を含み、前記第1駆動信号または前記第2駆動信号のうちいずれかは、前記第2期間において、前記第2微振動パルスと、前記第2微振動パルスより後に配置され、前記ノズルから液体が吐出されるように前記圧力変動を生じさせる第4吐出パルスと、を含み、前記第1期間の開始から前記第3吐出パルスの開始までの期間の長さは、前記第2期間の開始から前記第4吐出パルスの開始までの期間の長さと等しい、態様とすることができる。
【0105】
なお、上記形態の液体吐出装置において、前記第2期間が、前記繰り返しの周期の後端を含み、前記駆動信号生成部が前記第1駆動信号と前記第2駆動信号とを一定の周期で繰り返し生成した場合に、前記第2期間の長さは、前記第1期間の長さより長い、態様とすることができる。
このような態様においては、繰り返し周期が短い場合でも、第2期間における最後のパルスが終了した後、繰り返しの周期の後端までの時間を長くとることができる。その結果、同期している一組の第1駆動信号と第2駆動信号とを生成した後、駆動信号生成部が想定よりも早いタイミングで次の一組の第1駆動信号と第2駆動信号とを生成した場合に、以下のような効果が得られる。すなわち、前の周期の最後に生成されたパルスが、次の周期のパルスによる圧力変動に与える影響を、小さくすることができる。
【0106】
本開示は、液体吐出装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、印刷装置、液体吐出装置の制御方法、印刷装置の制御方法、印刷方法、それらの方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0107】
1…液体吐出ヘッド、1A…アクチュエーター基板、1D…駆動IC、1D1…選択制御部、1D2…選択部、1L…配線パターン、2…液体容器、8…搬送機構、10…流路形成基板、12…圧力室、15…連通板、16…第1連通部、17…第2連通部、18…第3連通部、20…ノズルプレート、21…ノズル、24…移動機構、24b…ベルト、24c…キャリッジ、30…保護基板、31…圧電アクチュエーター保持部、40…ケース部材、41…第1液室部、42…第2液室部、43…導入口、44…排出口、45…接続孔、49…コンプライアンス基板、50…振動板、60…第1電極、70…圧電体層、80…第2電極、90…リード電極、100…液体吐出装置、120…フレキシブルケーブル、121…制御ユニット、122…制御部、124…電圧生成回路、126a…駆動回路、126b…駆動回路、151…第1連通板、152…第2連通板、200…個別流路、201…第1流路、202…第2流路、203…供給路、300…圧電アクチュエーター、491…封止膜、492…固定基板、494…コンプライアンス部、A1…第1期間LAT1の開始から第1微振動パルスPsB11までの期間の長さ、A2…第2期間LAT2の開始から第2微振動パルスPsB21までの期間の長さ、B1…第1期間LAT1の開始から第3吐出パルスPeB12までの期間の長さ、B2…第2期間LAT2の開始から第4吐出パルスPeB22までの期間の長さ、C1…第1期間LAT1の開始から第1吐出パルスPeA11までの期間の長さ、C2…第2期間LAT2の開始から第2吐出パルスPeA21までの期間の長さ、CH…隣り合うLAT信号のパルスの略中間の時刻を表す信号、CHp11…第1期間LAT1の略中間の時刻を表すCH信号のパルス、CHp12…第2期間LAT2の略中間の時刻を表すCH信号のパルス、COM-A…第1駆動信号、COM-B…第2駆動信号、Ctr…制御信号、D1…第1期間LAT1の開始から第5吐出パルスPeA12までの期間の長さ、D2…第2期間LAT2の開始から第6吐出パルスPeA22までの期間の長さ、IN…インクの流れを示す矢印、LAT1…第1期間、LAT2…第2期間、LATp11…印刷周期Tcの前端と一致する第1期間LAT1の前端を規定するLAT信号のパルス、LATp12…第2期間LAT2の前端を規定するLAT信号のパルス、LATp21…次の第1期間LAT1の前端を規定するLAT信号のパルス、LATp21s…タイミング信号のパルスPTSp2ssに対応するLAT信号のパルス、OUT…インクの流れを示す矢印、PM…媒体、PTS…タイミング信号、PTSp1…タイミング信号、PTSp2…タイミング信号、PTSp2s…タイミング信号、PeA11…第1吐出パルス、PeA11s…第1吐出パルス、PeA12…第5吐出パルス、PeA21…第2吐出パルス、PeA22…第6吐出パルス、PeB12…第3吐出パルス、PeB22…第4吐出パルス、PsB11…第1微振動パルス、PsB11s…第1微振動パルス、PsB21…第2微振動パルス、T12…第3吐出パルスPeB12の終了時刻から第2微振動パルスPsB21の開始時刻までの時間、T21…第4吐出パルスPeB22の終了時刻からタイミング信号のパルスPTSp2sが最も早く送出された場合の第1微振動パルスPsB11sの開始時刻までの時間、Tc…印刷周期、Tc0…基準値、Tcmin…印刷周期の最小値、VBS…電圧、Vout…駆動信号、dA…データ、dB…データ