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特許7528603内部溢水評価装置、内部溢水評価プログラム及び内部溢水評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】内部溢水評価装置、内部溢水評価プログラム及び内部溢水評価方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/0635 20230101AFI20240730BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20240730BHJP
   G21C 17/00 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
G06Q10/0635
G05B23/02 T
G05B23/02 Z
G21C17/00 110
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020125252
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021587
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直己
(72)【発明者】
【氏名】竹内 崇志
(72)【発明者】
【氏名】島野 亮
(72)【発明者】
【氏名】嘉村 明彦
【審査官】山田 倍司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-032572(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110765561(CN,A)
【文献】原子力発電所の内部溢水影響評価ガイド,原子力規制委員会,2013年06月,https://www.nra.go.jp/data/000069276.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G05B 23/02
G21C 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器が機能を喪失する条件であって、前記機器が設置されていない第一区画と、前記機器が設置されている第二区画とのうち、前記第二区画に流れこんだ溢水の水位の影響により前記機器が機能を喪失する条件を少なくとも示す条件データ、前記機器を含んでいる系統を示す系統データ及び前記機器を含んでいるプラントが有する機能を示す機能データを含む機器データを取得する機器データ取得部と、
記第一区画に関する情報を示す第一区画データ及び前記第二区画に関する情報であって、前記第二区画の床面積と、前記第二区画の床に載置されている専有物の寸法とに少なくとも基づいて算出される前記第二区画の有効面積を少なくとも示す第二区画データを含む区画データを取得する区画データ取得部と、
前記第一区画から前記第二区画に溢水が流れ込む経路に関する情報であって、前記第一区画から前記第二区画まで溢水が流れる経路が保有可能な溢水の量を少なくとも示す経路データを取得する経路データ取得部と、
前記第一区画に存在する溢水源に関する情報であって、前記第一区画に存在する溢水源から単位時間に発生する溢水の量を少なくとも示す溢水源データを取得する溢水源データ取得部と、
前記機器データが示す前記条件、前記区画データが示す前記第二区画の有効面積、前記経路データが示す前記第一区画から前記第二区画まで溢水が流れる経路が保有可能な溢水の量、及び前記溢水源データが示す前記第一区画に存在する溢水源から単位時間に発生する溢水の量、に基づいて、前記第二区画に流れ込む溢水の水位の推定値を算出することにより、前記機器の機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する機器判定処理を実行する機器判定部と、
少なくとも一つの前記機器判定処理の結果に基づいて前記系統が有する機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する系統判定処理を実行する系統判定部と、
少なくとも一つの前記系統判定処理の結果に基づいて前記プラントが有する機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する機能判定処理を実行する機能判定部と、
を備える内部溢水評価装置。
【請求項2】
前記区画データ取得部は、前記第二区画に設けられており、前記第二区画に流れ込んだ溢水の水位を抑制し得る開口に関する情報を示す前記第二区画データを含む前記区画データを取得し、
前記機器判定部は、前記第二区画データにより示される前記開口に関する情報を使用して前記推定値を算出する、
請求項に記載の内部溢水評価装置。
【請求項3】
前記機器データ取得部は、前記機器に溢水が掛かる事象の影響により前記機器が機能を喪失する条件を示す前記条件データを含む前記機器データを取得し、
前記機器判定部は、前記区画データ、前記経路データ及び前記溢水源データに基づいて前記機器に溢水が掛かるか否かを判定し、前記機器に溢水が掛かると判定した場合、前記条件データにより示される対策の内容に基づいて前記機器の機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する、
請求項1または請求項2に記載の内部溢水評価装置。
【請求項4】
前記機器データ取得部は、前記第二区画に溢水としての蒸気が流れ込んだ場合における前記第二区画の温度の影響により前記機器が機能を喪失する条件を示す前記条件データを含む前記機器データを取得し、前記第二区画に溢水としての蒸気が流れ込んだ場合における前記第二区画の温度を示す温度データを更に取得し、
前記機器判定部は、前記温度データにより示される温度が前記条件データにより示される条件を満たしている場合、前記機器の機能が所定の水準で維持され得ないと判定する、
請求項1から請求項のいずれか一つに記載の内部溢水評価装置。
【請求項5】
前記機器データ取得部は、前記第二区画に溢水としての蒸気が流れ込んだ場合における前記第二区画の湿度の影響により前記機器が機能を喪失する条件を示す前記条件データを含む前記機器データを取得し、前記第二区画に溢水としての蒸気が流れ込んだ場合における前記第二区画の湿度を示す湿度データを更に取得し、
前記機器判定部は、前記湿度データにより示される湿度が前記条件データにより示される条件を満たしている場合、前記機器の機能が所定の水準で維持され得ないと判定する、
請求項1から請求項のいずれか一つに記載の内部溢水評価装置。
【請求項6】
前記機器データ取得部は、前記機能データにより示される前記プラントが有する機能が共通する二つ以上の前記機器ごとに前記機器データを取得し、
前記区画データ取得部は、前記機器データが取得された前記機器ごとに前記区画データを取得し、
前記経路データ取得部は、前記区画データごとに前記経路データを取得し、
前記溢水源データ取得部は、前記区画データごとに前記溢水源データを取得し、
前記機器判定部は、前記機器データが取得された前記機器ごとに前記機器判定処理を実行し、
前記系統判定部は、前記機器判定処理が実行された前記機器に対する前記機器の機能が所定の水準で維持されないと判定された前記機器の割合が所定の割合未満である場合、前記プラントが有する機能が所定の水準で維持され得と判定する、
請求項1から請求項のいずれか一つに記載の内部溢水評価装置。
【請求項7】
前記溢水源データ取得部は、前記溢水源が前記第一区画に存在すると判断された理由を示す前記溢水源データを取得する、
請求項1から請求項のいずれか一つに記載の内部溢水評価装置。
【請求項8】
前記機器判定部は、一つの前記第一区画に存在する前記溢水源から二つ以上の前記第二区画に溢水が流れ込み得る場合、一つの前記第一区画に存在する前記溢水源で発生した全ての溢水が一つの前記第二区画に流れ込むという仮定の下、前記溢水源で発生した全ての溢水が流れ込むと仮定された前記第二区画について前記機器判定処理を実行する、
請求項1から請求項のいずれか一つに記載の内部溢水評価装置。
【請求項9】
前記機器判定部は、一つの前記第一区画に存在する前記溢水源から二つ以上の前記第二区画に溢水が流れ込み得る場合、一つの前記第一区画に存在する前記溢水源で発生した溢水が二つ以上の前記第二区画各々に分かれて流れ込むという仮定の下、二つ以上の前記第二区画各々について前記機器判定処理を実行する、
請求項1から請求項のいずれか一つに記載の内部溢水評価装置。
【請求項10】
コンピュータに、
機器が溢水の影響により機能を喪失する条件であって、前記機器が設置されていない第一区画と、前記機器が設置されている第二区画とのうち、前記第二区画に流れこんだ溢水の水位の影響により前記機器が機能を喪失する条件を少なくとも示す条件データ、前記機器を含んでいる系統を示す系統データ及び前記機器を含んでいるプラントが有する機能を示す機能データを含む機器データを取得する機器データ取得機能と、
記第一区画に関する情報を示す第一区画データ及び前記第二区画に関する情報であって、前記第二区画の床面積と、前記第二区画の床に載置されている専有物の寸法とに少なくとも基づいて算出される前記第二区画の有効面積を少なくとも示す第二区画データを含む区画データを取得する区画データ取得機能と、
前記第一区画から前記第二区画に溢水が流れ込む経路に関する情報であって、前記第一区画から前記第二区画まで溢水が流れる経路が保有可能な溢水の量を少なくとも示す経路データを取得する経路データ取得機能と、
前記第一区画に存在する溢水源に関する情報であって、前記第一区画に存在する溢水源から単位時間に発生する溢水の量を少なくとも示す溢水源データを取得する溢水源データ取得機能と、
前記機器データが示す前記条件、前記区画データが示す前記第二区画の有効面積、前記経路データが示す前記第一区画から前記第二区画まで溢水が流れる経路が保有可能な溢水の量、及び前記溢水源データが示す前記第一区画に存在する溢水源から単位時間に発生する溢水の量、に基づいて、前記第二区画に流れ込む溢水の水位の推定値を算出することにより、前記機器の機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する機器判定処理を実行する機器判定機能と、
少なくとも一つの前記機器判定処理の結果に基づいて前記系統が有する機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する系統判定処理を実行する系統判定機能と、
少なくとも一つの前記系統判定処理の結果に基づいて前記プラントが有する機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する機能判定処理を実行する機能判定部と、
を実現させる内部溢水評価プログラム。
【請求項11】
コンピュータ装置が、溢水の影響により機器が機能を喪失する条件であって、前記機器が設置されていない第一区画と、前記機器が設置されている第二区画とのうち、前記第二区画に流れこんだ溢水の水位の影響により前記機器が機能を喪失する条件を少なくとも示す条件データ、前記機器を含んでいる系統を示す系統データ及び前記機器を含んでいるプラントが有する機能を示す機能データを含む機器データを取得する機器データ取得ステップと、
コンピュータ装置が、記第一区画に関する情報を示す第一区画データ及び前記第二区画に関する情報であって、前記第二区画の床面積と、前記第二区画の床に載置されている専有物の寸法とに少なくとも基づいて算出される前記第二区画の有効面積を少なくとも示す第二区画データを含む区画データを取得する区画データ取得ステップと、
コンピュータ装置が、前記第一区画から前記第二区画に溢水が流れ込む経路に関する情報であって、前記第一区画から前記第二区画まで溢水が流れる経路が保有可能な溢水の量を少なくとも示す経路データを取得する経路データ取得ステップと、
コンピュータ装置が、前記第一区画に存在する溢水源に関する情報であって、前記第一区画に存在する溢水源から単位時間に発生する溢水の量を少なくとも示す溢水源データを取得する溢水源データ取得ステップと、
コンピュータ装置が、前記機器データが示す前記条件、前記区画データが示す前記第二区画の有効面積、前記経路データが示す前記第一区画から前記第二区画まで溢水が流れる経路が保有可能な溢水の量、及び前記溢水源データが示す前記第一区画に存在する溢水源から単位時間に発生する溢水の量、に基づいて、前記第二区画に流れ込む溢水の水位の推定値を算出することにより、前記機器の機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する機器判定処理を実行する機器判定ステップと、
コンピュータ装置が、少なくとも一つの前記機器判定処理の結果に基づいて前記系統が有する機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する系統判定処理を実行する系統判定ステップと、
コンピュータ装置が、少なくとも一つの前記系統判定処理の結果に基づいて前記プラントが有する機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する機能判定処理を実行する機能判定部と、を含む内部溢水評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部溢水評価装置、内部溢水評価プログラム及び内部溢水評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、原子力発電所等のプラントの内部で溢水が発生した場合であってもプラントの円滑な運転を可能にするために、溢水が当該プラントに与える影響を事前に評価する技術の重要性が高まっている。このような技術の一例として、例えば、特許文献1に開示されている溢水影響評価装置が挙げられる。この溢水影響評価装置は、入力部と、記憶部と、演算部と、出力部とを備える。入力部は、区画それぞれの大きさを含む区画情報と、溢水経路での水の流れの計算に必要な情報を含む経路情報と、溢水源の位置および溢水量を含む溢水源情報と、を受け入れる。記憶部は、入力された区画情報と経路情報と溢水源情報とを記憶する。演算部は、区画情報と経路情報と溢水源情報とに基づいて、区画それぞれの没水水位を計算する。出力部は、演算部で計算された区画それぞれの没水水位を出力する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-032572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した溢水影響評価装置は、プラントの内部の区画における没水水位を計算することができるものの、溢水がプラントに設置されている機器に与える影響を評価することができない。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑み、プラントの内部で発生した溢水がプラントに設置されている機器及び当該機器を含んでいる系統に与える影響を評価し、溢水がプラントの運転に与える影響を直接的に評価することができる内部溢水評価装置、内部溢水評価プログラム及び内部溢水評価方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、機器が機能を喪失する条件であって、前記機器が設置されていない第一区画と、前記機器が設置されている第二区画とのうち、前記第二区画に流れこんだ溢水の水位の影響により前記機器が機能を喪失する条件を少なくとも示す条件データ、前記機器を含んでいる系統を示す系統データ及び前記機器を含んでいるプラントが有する機能を示す機能データを含む機器データを取得する機器データ取得部と、前記第一区画に関する情報を示す第一区画データ及び前記第二区画に関する情報であって、前記第二区画の床面積と、前記第二区画の床に載置されている専有物の寸法とに少なくとも基づいて算出される前記第二区画の有効面積を少なくとも示す第二区画データを含む区画データを取得する区画データ取得部と、前記第一区画から前記第二区画に溢水が流れ込む経路に関する情報であって、前記第一区画から前記第二区画まで溢水が流れる経路が保有可能な溢水の量を少なくとも示す経路データを取得する経路データ取得部と、前記第一区画に存在する溢水源に関する情報であって、前記第一区画に存在する溢水源から単位時間に発生する溢水の量を少なくとも示す溢水源データを取得する溢水源データ取得部と、前記機器データが示す前記条件、前記区画データが示す前記第二区画の有効面積、前記経路データが示す前記第一区画から前記第二区画まで溢水が流れる経路が保有可能な溢水の量、及び前記溢水源データが示す前記第一区画に存在する溢水源から単位時間に発生する溢水の量、に基づいて、前記第二区画に流れ込む溢水の水位の推定値を算出することにより、前記機器の機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する機器判定処理を実行する機器判定部と、少なくとも一つの前記機器判定処理の結果に基づいて前記系統が有する機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する系統判定処理を実行する系統判定部と、少なくとも一つの前記系統判定処理の結果に基づいて前記プラントが有する機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する機能判定処理を実行する機能判定部と、を備える内部溢水評価装置である。
【0008】
また、上述した内部溢水評価装置において、前記区画データ取得部は、前記第二区画に設けられており、前記第二区画に流れ込んだ溢水の水位を抑制し得る開口に関する情報を示す前記第二区画データを含む前記区画データを取得し、前記機器判定部が、前記第二区画データにより示される前記開口に関する情報を使用して前記推定値を算出してもよい。
【0009】
また、上述した内部溢水評価装置において、前記機器データ取得部は、前記機器に溢水が掛かる事象の影響により前記機器が機能を喪失する条件を示す前記条件データを含む前記機器データを取得し、前記機器判定部は、前記区画データ、前記経路データ及び前記溢水源データに基づいて前記機器に溢水が掛かるか否かを判定し、前記機器に溢水が掛かると判定した場合、前記条件データにより示される対策の内容に基づいて前記機器の機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定してもよい。
【0010】
また、上述した内部溢水評価装置において、前記機器データ取得部は、前記第二区画に溢水としての蒸気が流れ込んだ場合における前記第二区画の温度の影響により前記機器が機能を喪失する条件を示す前記条件データを含む前記機器データを取得し、前記第二区画に溢水としての蒸気が流れ込んだ場合における前記第二区画の温度を示す温度データを更に取得し、前記機器判定部は、前記温度データにより示される温度が前記条件データにより示される条件を満たしている場合、前記機器の機能が所定の水準で維持され得ないと判定してもよい。
【0011】
また、上述した内部溢水評価装置において、前記機器データ取得部は、前記機能データにより示される前記プラントが有する機能が共通する二つ以上の前記機器ごとに前記機器データを取得し、前記区画データ取得部は、前記機器データが取得された前記機器ごとに前記区画データを取得し、前記経路データ取得部は、前記区画データごとに前記経路データを取得し、前記溢水源データ取得部は、前記区画データごとに前記溢水源データを取得し、前記機器判定部は、前記機器データが取得された前記機器ごとに前記機器判定処理を実行し、前記系統判定部は、前記機器判定処理が実行された前記機器に対する前記機器の機能が所定の水準で維持されないと判定された前記機器の割合が所定の割合未満である場合、前記プラントが有する機能が所定の水準で維持され得と判定してもよい。
【0012】
また、上述した内部溢水評価装置において、前記機器データ取得部は、前記機能データにより示される前記プラントが有する機能が共通する二つ以上の前記機器ごとに前記機器データを取得し、前記区画データ取得部は、前記機器データが取得された前記機器ごとに前記区画データを取得し、前記経路データ取得部は、前記区画データごとに前記経路データを取得し、前記溢水源データ取得部は、前記区画データごとに前記溢水源データを取得し、前記機器判定部は、前記機器データが取得された前記機器ごとに前記機器判定処理を実行し、前記系統判定部は、前記機器判定処理が実行された前記機器に対する前記機器の機能が所定の水準で維持されないと判定された前記機器の割合が所定の割合未満である場合、前記プラントが有する機能が所定の水準で維持され得ないと判定してもよい。
【0013】
また、上述した内部溢水評価装置において、前記溢水源データ取得部は、前記溢水源が前記第一区画に存在すると判断された理由を示す前記溢水源データを取得してもよい。
【0014】
また、上述した内部溢水評価装置において、前記機器判定部は、一つの前記第一区画に存在する前記溢水源から二つ以上の前記第二区画に溢水が流れ込み得る場合、一つの前記第一区画に存在する前記溢水源で発生した全ての溢水が一つの前記第二区画に流れ込むという仮定の下、前記溢水源で発生した全ての溢水が流れ込むと仮定された前記第二区画について前記機器判定処理を実行してもよい。
【0015】
また、上述した内部溢水評価装置において、前記機器判定部は、一つの前記第一区画に存在する前記溢水源から二つ以上の前記第二区画に溢水が流れ込み得る場合、一つの前記第一区画に存在する前記溢水源で発生した溢水が二つ以上の前記第二区画各々に分かれて流れ込むという仮定の下、二つ以上の前記第二区画各々について前記機器判定処理を実行してもよい。
【0016】
本発明の一態様は、コンピュータに、機器が溢水の影響により機能を喪失する条件であって、前記機器が設置されていない第一区画と、前記機器が設置されている第二区画とのうち、前記第二区画に流れこんだ溢水の水位の影響により前記機器が機能を喪失する条件を少なくとも示す条件データ、前記機器を含んでいる系統を示す系統データ及び前記機器を含んでいるプラントが有する機能を示す機能データを含む機器データを取得する機器データ取得機能と、前記第一区画に関する情報を示す第一区画データ及び前記第二区画に関する情報であって、前記第二区画の床面積と、前記第二区画の床に載置されている専有物の寸法とに少なくとも基づいて算出される前記第二区画の有効面積を少なくとも示す第二区画データを含む区画データを取得する区画データ取得機能と、前記第一区画から前記第二区画に溢水が流れ込む経路に関する情報であって、前記第一区画から前記第二区画まで溢水が流れる経路が保有可能な溢水の量を少なくとも示す経路データを取得する経路データ取得機能と、前記第一区画に存在する溢水源に関する情報であって、前記第一区画に存在する溢水源から単位時間に発生する溢水の量を少なくとも示す溢水源データを取得する溢水源データ取得機能と、前記機器データが示す前記条件、前記区画データが示す前記第二区画の有効面積、前記経路データが示す前記第一区画から前記第二区画まで溢水が流れる経路が保有可能な溢水の量、及び前記溢水源データが示す前記第一区画に存在する溢水源から単位時間に発生する溢水の量、に基づいて、前記第二区画に流れ込む溢水の水位の推定値を算出することにより、前記機器の機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する機器判定処理を実行する機器判定機能と、少なくとも一つの前記機器判定処理の結果に基づいて前記系統が有する機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する系統判定処理を実行する系統判定機能と、少なくとも一つの前記系統判定処理の結果に基づいて前記プラントが有する機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する機能判定処理を実行する機能判定部と、を実現させる内部溢水評価プログラムである。
【0017】
本発明の一態様は、コンピュータ装置が、溢水の影響により機器が機能を喪失する条件であって、前記機器が設置されていない第一区画と、前記機器が設置されている第二区画とのうち、前記第二区画に流れこんだ溢水の水位の影響により前記機器が機能を喪失する条件を少なくとも示す条件データ、前記機器を含んでいる系統を示す系統データ及び前記機器を含んでいるプラントが有する機能を示す機能データを含む機器データを取得する機器データ取得ステップと、コンピュータ装置が、記第一区画に関する情報を示す第一区画データ及び前記第二区画に関する情報であって、前記第二区画の床面積と、前記第二区画の床に載置されている専有物の寸法とに少なくとも基づいて算出される前記第二区画の有効面積を少なくとも示す第二区画データを含む区画データを取得する区画データ取得ステップと、コンピュータ装置が、前記第一区画から前記第二区画に溢水が流れ込む経路に関する情報であって、前記第一区画から前記第二区画まで溢水が流れる経路が保有可能な溢水の量を少なくとも示す経路データを取得する経路データ取得ステップと、コンピュータ装置が、前記第一区画に存在する溢水源に関する情報であって、前記第一区画に存在する溢水源から単位時間に発生する溢水の量を少なくとも示す溢水源データを取得する溢水源データ取得ステップと、コンピュータ装置が、前記機器データが示す前記条件、前記区画データが示す前記第二区画の有効面積、前記経路データが示す前記第一区画から前記第二区画まで溢水が流れる経路が保有可能な溢水の量、及び前記溢水源データが示す前記第一区画に存在する溢水源から単位時間に発生する溢水の量、に基づいて、前記第二区画に流れ込む溢水の水位の推定値を算出することにより、前記機器の機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する機器判定処理を実行する機器判定ステップと、コンピュータ装置が、少なくとも一つの前記機器判定処理の結果に基づいて前記系統が有する機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する系統判定処理を実行する系統判定ステップと、コンピュータ装置が、少なくとも一つの前記系統判定処理の結果に基づいて前記プラントが有する機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する機能判定処理を実行する機能判定部と、を含む内部溢水評価方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、プラントの内部で発生した溢水がプラントに設置されている機器及び当該機器を含んでいる系統に与える影響を評価し、溢水がプラントの運転に与える影響を直接的に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る内部溢水評価システムの構成の一例を示す図である。
図2】実施形態に係るプラントが有する機能、系統の名称及び機器識別コードの入力に使用されるグラフィカルユーザインターフェースの一例を示す図である。
図3】実施形態に係る条件データの入力に使用されるグラフィカルユーザインターフェースの一例を示す図である。
図4】実施形態に係る条件データの入力に使用されるグラフィカルユーザインターフェースの一例を示す図である。
図5】実施形態に係る条件データの入力に使用されるグラフィカルユーザインターフェースの一例を示す図である。
図6】実施形態に係る条件データの入力に使用されるグラフィカルユーザインターフェースの一例を示す図である。
図7】実施形態に係る区画の有効面積を説明するための図である。
図8】実施形態に係る第二区画に形成されており、第二区画に流れ込んだ溢水の水位を抑制し得る開口の一例を示す図である。
図9】実施形態に係る内部溢水評価装置が実行する機器判定処理の結果の一例を示す図である。
図10】実施形態に係る内部溢水評価装置が系統判定処理及び機能判定処理で使用するフォルトツリーの一例を示す図である。
図11】実施形態に係る内部溢水評価装置が実行する機能判定処理の結果の一例を示す図である。
図12】実施形態に係る内部溢水評価装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[実施形態]
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る内部溢水評価システムの構成の一例を示す図である。図1に示すように、内部溢水評価システム1は、端末10-1、端末10-2、…及び端末10-N(N:1以上の整数)と、内部溢水評価装置20とを備える。端末10-1、端末10-2、…、端末10-N及び内部溢水評価装置20は、いずれもネットワークNWに接続されている。ネットワークNWは、例えば、イントラネット、LAN(Local Area Network)である。
【0021】
端末10-1、端末10-2、…及び端末10-Nは、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレットであり、原子力発電所等のプラントの内部で発生した溢水が当該プラントの運転に与える影響を評価する作業を実施する作業員により使用される。ここで言う溢水は、水及び蒸気だけではなく、油、薬液等の水以外の液体及び水以外の液体が気化したものも含まれる。また、以下の説明では、プラントが原子力発電プラントである場合を例に挙げて説明する。
【0022】
図1に示すように、内部溢水評価装置20は、機器データ取得部21と、区画データ取得部22と、経路データ取得部23と、溢水源データ取得部24と、機器判定部25と、系統判定部26と、機能判定部27とを備える。
【0023】
機器データ取得部21は、機器データを取得する。機器データ取得部21は、例えば、端末10-1に搭載されたディスプレイに表示されたグラフィカルユーザインターフェース(GUI:Graphical User Interface)を使用して入力された機器データを端末10-1から受信する。或いは、機器データ取得部21は、端末10-1に接続されたディスプレイに表示されたグラフィカルユーザインターフェースを使用して入力された機器データを端末10-1から受信する。また、機器データ取得部21は、端末10-2、…及び端末10-Nの少なくとも一つからも同様の手法により機器データを受信する。
【0024】
機器データは、機能データ、系統データ及び条件データを含む。機能データは、プラントが有する機能を示すデータである。系統データは、プラントが有する機能の一つを実現させるための系統を示すデータである。条件データは、当該系統に含まれる機器が溢水の影響により機能を喪失する条件を示すデータである。
【0025】
図2は、実施形態に係るプラントが有する機能、系統の名称及び機器識別コードの入力に使用されるグラフィカルユーザインターフェースの一例を示す図である。
【0026】
図2の左側の列は、プラントが有する機能を表示する領域である。図2の左側の列は、原子力発電プラントが有する機能の一例として、原子炉の冷却機能、原子炉の緊急停止機能等を表示しており、点線で描かれた矩形により原子炉の冷却機能が選択されていることを示している。上述した機能データは、例えば、図2の左側の列から選択された機能を示すデータである。
【0027】
図2の中央の列は、系統の名称を表示する領域である。図2の中央の列は、原子力発電プラントに含まれる系統の一例として、冷却水循環系統、冷却水循環制御系統等を表示しており、点線で描かれた矩形により冷却水循環機能が選択されていることを示している。上述した系統データは、例えば、図2の中央の列から選択された系統を示すデータである。
【0028】
図2の右側の列は、図2の中央において選択されている系統に含まれる各機器に固有の機器識別コードを表示する領域である。図2の右側の列は、冷却水循環系統に含まれるポンプに割り当てられている機器識別コード「P001」、「P002」、「P003」等を表示しており、点線で描かれた矩形により「P002」が選択されていることを示している。機器識別コードは、プラントに含まれる機器を示すデータとして機器データ取得部21に取得されてもよい。
【0029】
上述した条件データは、プラントに設置されている機器が溢水の影響により機能を喪失する条件を示すデータである。条件データは、例えば、図3から図6に示したグラフィカルユーザインターフェースを使用して入力される。図3から図6は、実施形態に係る条件データの入力に使用されるグラフィカルユーザインターフェースの一例を示す図である。
【0030】
図3は、没水の影響によりプラントに設置されている機器が機能を喪失する条件を入力するために使用されるグラフィカルユーザインターフェースG3の一例を示している。ここで言う没水は、機器が設置されておらず、溢水源が存在する第一区画から機器が設置されている第二区画に溢水が流れ込むことにより当該区画内の水位が上昇し、当該区画内に設置されている機器が溢水に浸かる事象を指す。また、ここで言う区画は、プラント内で発生する溢水の影響を評価する時に任意に設定される領域である。没水が発生する場合、区画は、例えば、プラント内で少なくとも床と壁、段差等とにより区切られている領域となる。ただし、この場合、例えば、床は、多数の孔が形成されている網目状の床であってよい。グラフィカルユーザインターフェースG3を使用して入力された条件データは、第二区画に流れこんだ溢水の水位の影響により機器が機能を喪失する条件を示すデータである。
【0031】
図3に示されている「機能喪失部位」は、機器を構成している各部位のうち没水により不具合を起こした場合に機器の機能を喪失させ得る部位を指す。図3は、プルダウンメニューに含まれている「盤内計器類の下端」が選択されている様子を示している。図3に示されている「床面高さ」は、機器が設置されている区画の床面の高さを指す。図3は、床面高さとして「31.700m」が入力されている様子を示している。図3に示されている「機器設置基準」は、機器が設置されている高さの区画内における基準を指す。図3は、機器設置基準として「床面」がラジオボタンにより選択されている様子を示している。図3に示されている「機器設置高さ」は、機器が設置されている高さを指す。また、図3に示されている「機器設置高さ」は、機器設置基準から計測された高さである。図3は、機器設置高さとして「0.250m」が入力されている様子を示している。
【0032】
図4は、被水の影響によりプラントに設置されている機器が機能を喪失する条件を入力するために使用されるグラフィカルユーザインターフェースG4の一例を示している。ここで言う被水は、機器に溢水が掛かる事象を指す。被水が発生する場合、区画は、プラント内で少なくとも床及び壁により区切られている領域であってもよいし、壁及び天井の少なくとも一方で区切られていない領域であってもよい。グラフィカルユーザインターフェースG4を使用して入力された条件データは、機器に溢水が掛かる事象の影響により機器が機能を喪失する条件を示すデータである。
【0033】
図4に示されている「上方伝搬被水」は、上方から機器に溢水が掛かった場合に当該機器が機能を喪失するか否かを指す。図4は、プルダウンメニューに含まれている「〇(機能を喪失しない)」が選択されている様子を示している。図4に示されている「防滴仕様」は、機器に施されている防滴仕様の詳細を指す。図4は、プルダウンメニューに含まれている「xxx」が選択されている様子を示している。図4に示されている「被水防止対策」は、機器への被水を防止する対策が機器の周辺の少なくとも一方に施されているか否かを示している。図4は、被水防止対策が有ることがラジオボタンにより選択されている様子を示している。図4に示されている「被水防止対策内容」は、機器への被水を防止する対策の具体的な内容を入力する欄である。図4に示されている「耐被水性能」は、機器に施されている被水への対策の有無を示している。図4は、耐被水性能が有ることが表示されている様子を示している。
【0034】
図5は、蒸気による温度の上昇によりプラントに設置されている機器が機能を喪失する条件を入力するために使用されるグラフィカルユーザインターフェースG5の一例を示している。溢水が蒸気である場合、区画は、プラント内で少なくとも床及び壁により区切られている領域であってもよいし、壁及び天井の少なくとも一方で区切られていない領域であってもよい。グラフィカルユーザインターフェースG5を使用して入力された条件データは、第二区画に溢水としての蒸気が流れ込んだ場合における第二区画の温度の影響により機器が機能を喪失する条件を示すデータである。
【0035】
図5に示されている「耐環境仕様温度」は、機器が耐えられる温度を指す。図5に示されている「耐環境仕様温度継続時間」は、機器が耐環境仕様温度の環境に置かれた場合に機能を維持し続けられる時間を指す。図5に示されている「試験実施条件温度」は、蒸気により温度を上昇させた環境に機器を置く試験を実施した際の環境の温度を指す。図5に示されている「試験実施条件温度継続時間」は、当該試験で機器が性能を維持し続けた時間を指す。
【0036】
図5に示されている「影響防止対策設計温度」は、機器が確実に耐えられると想定されている温度を指す。図5に示されている「影響防止対策設計温度継続時間」は、機器が影響防止対策設計温度の環境に置かれた場合に機能を維持し続けられると想定されている時間を指す。図5に示されている「機能喪失温度」は、機器が機能を喪失する温度を指す。図5に示されている「機能喪失温度継続時間」は、機器が機能喪失温度の環境に置かれた場合に機能を維持し続けられる時間を指す。
【0037】
グラフィカルユーザインターフェースG5は、上述した八つの項目について入力欄(1)から入力欄(5)を表示しており、温度と継続時間との組み合わせを最大で五つ入力することを可能にしている。例えば、耐環境仕様温度が120℃であり、耐環境仕様温度継続時間が1時間である場合、機器は、蒸気により120℃となった環境で1時間機能を維持し続けられる。
【0038】
また、機器データ取得部21は、グラフィカルユーザインターフェースG5を使用して入力された条件データを取得する場合、第二区画に溢水としての蒸気が流れ込んだ場合における第二区画の温度を示す温度データを取得する。温度データは、例えば、熱流動解析に使用されるソフトウェアにより生成されるデータである。
【0039】
図6は、蒸気による湿度の上昇によりプラントに設置されている機器が機能を喪失する条件を入力するために使用されるグラフィカルユーザインターフェースG6の一例を示している。グラフィカルユーザインターフェースG6を使用して入力された条件データは、第二区画に溢水としての蒸気が流れ込んだ場合における第二区画の湿度の影響により機器が機能を喪失する条件を示すデータである。
【0040】
図6に示されている「耐環境仕様湿度」は、機器が耐えられる湿度を指す。図6に示されている「耐環境仕様湿度継続時間」は、機器が耐環境仕様湿度の環境に置かれた場合に機能を維持し続けられる時間を指す。図6に示されている「試験実施条件湿度」は、蒸気により湿度を上昇させた環境に機器を置く試験を実施した際の環境の湿度を指す。図6に示されている「試験実施条件湿度継続時間」は、当該試験で機器が性能を維持し続けた時間を指す。
【0041】
図6に示されている「影響防止対策設計湿度」は、機器が確実に耐えられると想定されている湿度を指す。図6に示されている「影響防止対策設計湿度継続時間」は、機器が影響防止対策設計湿度の環境に置かれた場合に機能を維持し続けられると想定されている時間を指す。図6に示されている「機能喪失湿度」は、機器が機能を喪失する湿度を指す。図6に示されている「機能喪失湿度継続時間」は、機器が機能喪失湿度の環境に置かれた場合に機能を維持し続けられる時間を指す。
【0042】
グラフィカルユーザインターフェースG6は、上述した八つの項目について入力欄(1)から入力欄(5)を表示しており、湿度と継続時間との組み合わせを最大で五つ入力することを可能にしている。例えば、耐環境仕様湿度が90%であり、耐環境仕様湿度継続時間が2時間である場合、機器は、蒸気により90%となった環境で2時間機能を維持し続けられる。
【0043】
また、機器データ取得部21は、グラフィカルユーザインターフェースG6を使用して入力された条件データを取得する場合、第二区画に溢水としての蒸気が流れ込んだ場合における第二区画の湿度を示す湿度データを取得する。湿度データは、例えば、熱流動解析に使用されるソフトウェアにより生成されるデータである。
【0044】
なお、機器データ取得部21は、機能データにより示されるプラントが有する機能が共通する二つ以上の機器ごとに機器データを取得してもよい。
【0045】
区画データ取得部22は、機器データが取得された機器ごとに区画データを取得する。区画データ取得部22は、例えば、端末10-1にインストールされた設計支援ソフトを使用して入力された区画データを端末10-1から受信する。また、区画データ取得部22は、端末10-2、…及び端末10-Nの少なくとも一つからも同様の手法により区画データを受信する。区画データは、第一区画データ及び第二区画データを含む。
【0046】
第一区画データは、機器が設置されておらず、溢水源が存在する第一区画に関する情報を示すデータである。ここで言う第一区画に関する情報は、例えば、第一区画を特定する情報、第一区画に存在する専有物の寸法、第一区画の床面積、第一区画の床面積か専有物に専有されている面積を差し引いた有効面積、第一区画が属する区分、床漏洩検出器の有無、温度検出器の有無及び管理区域及び非管理区域の別の少なくとも一つを含む情報である。なお、第一区画には、内部溢水評価装置20により実行される一つの機器判定処理の対象ではない他の機器が設置されていてもよいし、このような機器が設置されていなくてもよい。
【0047】
第二区画データは、機器が設置されており、当該溢水源から溢水が流れ込む第二区画に関する情報を示すデータである。ここで言う第二区画に関する情報は、例えば、第二区画を特定する情報、第二区画に存在する専有物の寸法、第二区画の床面積、第二区画の床面積か専有物に専有されている面積を差し引いた有効面積、第二区画が属する区分、床漏洩検出器の有無、温度検出器の有無及び管理区域及び非管理区域の別の少なくとも一つを含む情報である。また、第二区画データは、第二区画に設けられており、第二区画に流れ込んだ溢水の水位を抑制し得る開口に関する情報を更に示すデータであってもよい。なお、第二区画には、内部溢水評価装置20により実行される一つの機器判定処理の対象ではない他の機器が設置されていてもよいし、このような機器が設置されていなくてもよい。
【0048】
図7は、実施形態に係る区画の有効面積を説明するための図である。図7は、区画K1、区画K2、区画K3及び区画K4を示している。区画K1は、床に専有物P11、専有物P12及び専有物P13が載置されている。このため、区画K1の有効面積は、区画K1の床面積から専有物P11に専有されている面積、専有物P12に専有されている面積及び専有物P13に専有されている面積を差し引いた面積となる。一方、区画K2、区画K3及び区画K4は、床に専有物が載置されていない。このため、区画K2の有効面積は、区画K2の床面積に等しい。同様に、区画K3の有効面積は、区画K3の床面積に等しい。また、区画K4の有効面積は、区画K4の床面積に等しい。
【0049】
また、第二区画は、流れ込んだ溢水の水位を抑制し得る開口が形成されていることがある。図8は、実施形態に係る第二区画に形成されており、第二区画に流れ込んだ溢水の水位を抑制し得る開口の一例を示す図である。図8に示した第二区画K5は、床面F、堰K51及び壁K52で区切られた区画であり、堰K51と壁K52とで形成された開口Hを有する。また、堰K51の高さがhであり、開口Hの高さがhであり、開口Hの幅がBであり、第二区画K5に流れ込んだ溢水の水位がhである場合、開口Hからの溢水の流出流量Qは、流量計数Cを含む次の式(1)で表される。
【0050】
【数1】
【0051】
経路データ取得部23は、区画データごとに経路データを取得する。経路データ取得部23は、例えば、端末10-1に搭載されたディスプレイに表示されたグラフィカルユーザインターフェースを使用して入力された経路データを端末10-1から受信する。或いは、経路データ取得部23は、端末10-1に接続されたディスプレイに表示されたグラフィカルユーザインターフェースを使用して入力された経路データを端末10-1から受信する。また、経路データ取得部23は、端末10-2、…及び端末10-Nの少なくとも一つからも同様の手法により経路データを受信する。
【0052】
経路データは、第一区画から第二区画に溢水が流れ込む経路に関する情報を示すデータである。ここで言う経路に関する情報は、例えば、経路自体を特定する情報及び経路が保有可能な溢水の量の少なくとも一つを示す情報である。また、第一区画から第二区画までの経路は、途中に他の区画を含んでいてもよい。
【0053】
溢水源データ取得部24は、区画データごとに溢水源データを取得する。溢水源データ取得部24は、例えば、端末10-1に搭載されたディスプレイに表示されたグラフィカルユーザインターフェースを使用して入力された溢水源データを端末10-1から受信する。或いは、溢水源データ取得部24は、端末10-1に接続されたディスプレイに表示されたグラフィカルユーザインターフェースを使用して入力された溢水源データを端末10-1から受信する。また、溢水源データ取得部24は、端末10-2、…及び端末10-Nの少なくとも一つからも同様の手法により溢水源データを受信する。
【0054】
溢水源データは、第一区画に存在する溢水源に関する情報を示すデータである。ここで言う第一区画に存在する溢水源に関する情報は、例えば、溢水源の種類、溢水源から発生する溢水の単位時間当たりの量及び溢水源から発生する溢水の種類の少なくとも一つを含む。
【0055】
溢水源の種類は、例えば、第一区画の床、壁又は天井に空いた穴、第一区画の床、壁又は天井に発生したひび割れ、第一区画を通る配管のうち破損した部分、プラント内に配置されているプール、プラント内に設置されているタンクである。また、溢水源は、例えば、第一区画の床、壁又は天井、第一区画を通り配管等の破損、プラント内で発生した火災を消火するための消火活動、地震によりプールに溜まった水がこぼれる事象により発生する。また、溢水の種類は、上述した没水、被水及び蒸気に加え、水以外の液体及び当該液体が気化したものも含んでいる。
【0056】
また、溢水源データは、溢水源が第一区画に存在すると判断された理由を示していてもよい。
【0057】
機器判定部25は、機器データ、区画データ、経路データ及び溢水源データに基づいて機器の機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する機器判定処理を実行する。具体的には、機器判定部25は、区画データ、経路データ及び溢水源データを使用して第二区画に流れ込む溢水の量、種類等を判定し、当該判定の結果と機器データとを使用して第二区画に設置されている機器が当該溢水により機能を喪失するか否かを判定する。また、機器判定部25は、機器データが取得された機器ごとに機器判定処理を実行してもよい。
【0058】
例えば、機器判定部25は、第二区画に流れこんだ溢水の水位の影響により機器が機能を喪失する条件を示す条件データを含む機器データが取得されている場合、区画データ、経路データ及び溢水源データに基づいて第二区画に流れ込む溢水の水位の推定値を算出する。機器判定部25は、例えば、第二区画の有効面積、第一区画に存在する溢水源から単位時間に発生する溢水の量、第一区画から第二区画まで溢水が流れる経路が保有可能な溢水の量、第二区画に設けられている開口に関する情報を使用して当該推定値を算出する。
【0059】
そして、機器判定部25は、当該推定値が条件データにより示される条件を満たしている場合、機器の機能が所定の水準で維持され得ないと判定する。具体的には、機器判定部25は、当該推定値が図3に示したグラフィカルユーザインターフェースG3を使用して入力された機器設置高さを超えている場合、機器の機能が所定の水準で維持され得ないと判定する。
【0060】
或いは、機器判定部25は、機器に溢水が掛かる事象の影響により機器が機能を喪失する条件を示す条件データを含む機器データが取得されている場合、区画データ、経路データ及び溢水源データに基づいて機器に溢水が掛かるか否かを判定する。そして、機器判定部25は、機器に溢水が掛かると判定した場合、条件データにより示される対策の内容に基づいて機器の機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する。
【0061】
或いは、機器判定部25は、第二区画に溢水としての蒸気が流れ込んだ場合における第二区画の温度の影響により機器が機能を喪失する条件を示す条件データを含む機器データと温度データとが取得されている場合、温度データにより示される温度が条件データにより示される条件を満たしているか否かを判定する。
【0062】
そして、機器判定部25は、温度データにより示される温度が条件データにより示される条件を満たしていると判定した場合、機器の機能が所定の水準で維持され得ないと判定する。一方、機器判定部25は、温度データにより示される温度が条件データにより示される条件を満たしていないと判定した場合、機器の機能が所定の水準で維持され得ると判定する。
【0063】
或いは、機器判定部25は、第二区画に溢水としての蒸気が流れ込んだ場合における第二区画の湿度の影響により機器が機能を喪失する条件を示す条件データを含む機器データと湿度データとが取得されている場合、湿度データにより示される湿度が条件データにより示される条件を満たしているか否かを判定する。
【0064】
そして、機器判定部25は、湿度データにより示される湿度が条件データにより示される条件を満たしていると判定した場合、機器の機能が所定の水準で維持され得ないと判定する。一方、機器判定部25は、湿度データにより示される湿度が条件データにより示される条件を満たしていないと判定した場合、機器の機能が所定の水準で維持され得ると判定する。
【0065】
また、機器判定部25は、一つの第一区画に存在する溢水源から二つ以上の第二区画に溢水が流れ込み得る場合、一つの第一区画に存在する溢水源で発生した全ての溢水が一つの第二区画に流れ込むという仮定の下、溢水源で発生した全ての溢水が流れ込むと仮定された第二区画について機器判定処理を実行してもよい。なお、ここで言う全ての溢水は、溢水源で発生した溢水の全量を含んでいてもよいし、溢水源で発生した溢水の全量から第二区画に流れ込む可能性が無い溢水の量を差し引いた量の溢水であってもよい。
【0066】
或いは、機器判定部25は、一つの第一区画に存在する溢水源から二つ以上の第二区画に溢水が流れ込み得る場合、一つの第一区画に存在する溢水源で発生した溢水が二つ以上の第二区画各々に分かれて流れ込むという仮定の下、二つ以上の第二区画各々について機器判定処理を実行してもよい。なお、ここで言う全ての溢水は、溢水源で発生した溢水の全量を含んでいてもよいし、溢水源で発生した溢水の全量から第二区画に流れ込む可能性が無い溢水の量を差し引いた量の溢水であってもよい。
【0067】
図9は、実施形態に係る内部溢水評価装置が実行する機器判定処理の結果の一例を示す図である。図9は、第二区画「K123」に存在する三つの機器に関して実行された機器判定処理の結果を示している。図9に示した三つの機器は、それぞれ機器識別コード「P001」、機器識別コード「P002」及び機器識別コード「P003」が割り当てられている。
【0068】
図9の上から二行目は、機器識別コード「P001」が割り当てられている機器が第二区画の区分「I」に属しており、溢水の水位が3.00[m]であり、当該機器が機能を喪失する溢水の水位が4.32[m]であることを示している。当該機器は、溢水に浸かっていないため、左から六列目に没水により機能を喪失しないことを示す「〇」が示されている。また、当該機器は、溢水が掛かる事象が発生しないため、左から七列目に被水による影響を考慮する必要が無いことを示す「‐」が示されている。
【0069】
図9の上から三行目は、機器識別コード「P002」が割り当てられている機器が第二区画の区分「II」に属しており、溢水の水位が3.00[m]であり、当該機器が機能を喪失する溢水の水位が0.37[m]であることを示している。当該機器は、溢水に浸かっていないため、左から六列目に没水により機能を喪失することを示す「×」が示されている。また、当該機器は、溢水が掛からない等の条件を満たしているため、左から七列目に被水により機能を喪失しないことを示す「〇」が示されている。
【0070】
図9の上から四行目は、機器識別コード「P003」が割り当てられている機器が第二区画の区分「III」に属しており、溢水の水位が3.00[m]であり、当該機器が機能を喪失する溢水の水位が3.02[m]であることを示している。当該機器は、溢水に浸かっていないため、左から六列目に没水により機能を喪失することを示す「×」が示されている。また、当該機器は、溢水が掛からない等の条件を満たしているため、左から七列目に被水により機能を喪失しないことを示す「〇」が示されている。
【0071】
系統判定部26は、少なくとも一つの機器判定処理の結果に基づいて系統が有する機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する系統判定処理を実行する。機能判定部27は、少なくとも一つの系統判定処理の結果に基づいてプラントが有する機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する機能判定処理を実行する。
【0072】
図10は、実施形態に係る内部溢水評価装置が系統判定処理及び機能判定処理で使用するフォルトツリーの一例を示す図である。図10に示したフォルトツリーTは、記号MAと、記号MBと、記号Mとを含んでいる。記号MAは、下方に連なる要素の全てが機能を喪失した場合に上方の要素が機能を喪失することを示している。つまり、図10において、記号MAは、機器A1及び機器A2の両方が機能を喪失した場合に系統Aが機能を喪失することを示している。記号MB及び記号Mは、可能に連なる要素の一つ以上が機能を喪失した場合に上方の要素が機能を喪失することを示している。つまり、図10において、記号MBは、機器B1及び機器B2の少なくとも一方が機能を喪失した場合に系統Bが機能を喪失することを示している。同様に、図10において、記号Mは、系統A及び系統Bの少なくとも一方が機能を喪失した場合に機能Gが喪失されることを示している。
【0073】
系統判定部26は、複数の機器判定処理の結果に図10に示したフォルトツリーT等の枠組みを適用して各機器の機能が所定の水準で維持されるか否かを判定し、系統が有する機能が所定の水準で維持されるか否かを判定する。例えば、系統判定部26は、機器判定処理が実行された機器に対する機器の機能が所定の水準で維持されないと判定された機器の割合が所定の割合未満である場合、系統が有する機能が所定の水準で維持され得と判定する。一方、系統判定部26は、機器判定処理が実行された機器に対する機器の機能が所定の水準で維持されないと判定された機器の割合が所定の割合以上である場合、系統が有する機能が所定の水準で維持され得ないと判定する。
【0074】
機能判定部27は、複数の系統判定処理の結果に図10に示したフォルトツリーT等の枠組みを適用して各系統の機能が所定の水準で維持されるか否かを判定し、プラントが有する機能が所定の水準で維持されるか否かを判定する。例えば、機能判定部27は、系統判定処理が実行された系統に対する系統の機能が所定の水準で維持されないと判定された系統の割合が所定の割合未満である場合、プラントが有する機能が所定の水準で維持され得と判定する。一方、機能判定部27は、系統判定処理が実行された系統に対する系統の機能が所定の水準で維持されないと判定された系統の割合が所定の割合以上である場合、プラントが有する機能が所定の水準で維持され得ないと判定する。
【0075】
図11は、実施形態に係る内部溢水評価装置が実行する機能判定処理の結果の一例を示す図である。図11の下から一行目は、各機器判定処理の結果を示している。図11の下から二行目は、機器判定処理が実行された各機器が属する区分を示している。図11の下から三行目は、図11の下から一行目に機器判定処理の結果が示されている機器により構成されている系統の名称を示している。図11の下から四行目は、図11の下から三行目に示した系統各々に関する機能判定処理の結果を示している。
【0076】
次に、図12を参照しながら実施形態に係る内部溢水評価装置が実行する処理の一例を説明する。図12は、実施形態に係る内部溢水評価装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0077】
ステップS10において、機器データ取得部21は、機器が溢水の影響により機能を喪失する条件を示す条件データ、機器を含んでいる系統を示す系統データ及び系統の機能を示す機能データを含む機器データを取得する。
【0078】
ステップS20において、区画データ取得部22は、機器が設置されていない第一区画に関する情報を示す第一区画データ及び機器が設置されている第二区画に関する情報を示す第二区画に関する情報を示す第二区画データを含む区画データを取得する。
【0079】
ステップS30において、経路データ取得部23は、第一区画から第二区画に溢水が流れ込む経路に関する情報を示す経路データを取得する。
【0080】
ステップS40において、溢水源データ取得部24は、第一区画に存在する溢水源に関する情報を示す溢水源データを取得する。
【0081】
ステップS50において、機器判定部25は、機器データ、区画データ、経路データ及び溢水源データに基づいて機器の機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する機器判定処理を実行する。
【0082】
ステップS60において、機器判定部25は、機器データが取得されていない機器について機器データを取得する必要があるか否かを判定する。機器判定部25は、機器データが取得されていない機器について機器データを取得する必要があると判定した場合(ステップS60:YES)、処理をステップS10に戻す。一方、機器判定部25は、機器データが取得されていない機器について機器データを取得する必要があると判定した場合(ステップS60:NO)、処理をステップS70に進める。
【0083】
ステップS70において、系統判定部26は、機器データが取得された機器ごとに実行された機器判定処理の結果に基づいて系統の機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する系統判定処理を実行する。
【0084】
ステップS80において、系統判定部26は、機器データが取得されていない系統について機器データを取得する必要があるか否かを判定する。系統判定部26は、機器データが取得されていない系統について機器データを取得する必要があると判定した場合(ステップS80:YES)、処理をステップS10に戻す。一方、系統判定部26は、機器データが取得されていない系統について機器データを取得する必要がないと判定した場合(ステップS80:NO)、処理をステップS90に進める。
【0085】
ステップS90において、機能判定部27は、系統データが取得された系統ごとに実行された系統判定処理の結果に基づいてプラントが有する機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する機能判定処理を実行する。
【0086】
以上、実施形態に係る内部溢水評価システム1について説明した。内部溢水評価装置20は、機器データ、区画データ、経路データ及び溢水源データに基づいて機器の機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する機器判定処理を実行する。次に、内部溢水評価装置20は、少なくとも一つの機器判定処理の結果に基づいて系統が有する機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する系統判定処理を実行する。そして、内部溢水評価装置20は、少なくとも一つの系統判定処理の結果に基づいてプラントが有する機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する機能判定処理を実行する。これにより、内部溢水評価装置20は、プラントの内部で発生した溢水がプラントに設置されている機器及び当該機器を含んでいる系統に与える影響を評価し、溢水がプラントの運転に与える影響を直接的に評価することができる。
【0087】
また、内部溢水評価装置20は、第二区画に流れこんだ溢水の水位の影響により機器が機能を喪失する条件を示す条件データを含む機器データを取得する。そして、内部溢水評価装置20は、区画データ、経路データ及び溢水源データに基づいて第二区画に流れ込む溢水の水位の推定値を算出し、推定値が条件データにより示される条件を満たしている場合、機器の機能が所定の水準で維持され得ないと判定する。これにより、内部溢水評価装置20は、没水がプラントに設置されている機器及び当該機器を含んでいる系統に与える影響を評価し、没水がプラントの運転に与える影響を直接的に評価することができる。
【0088】
また、内部溢水評価装置20は、第二区画に設けられており、第二区画に流れ込んだ溢水の水位を抑制し得る開口に関する情報を示す第二区画データを含む区画データを取得する。次に、内部溢水評価装置20は、第二区画データにより示される開口に関する情報を使用して推定値を算出する。そして、内部溢水評価装置20は、当該推定値を使用して機器判定処理を実行する。これにより、内部溢水評価装置20は、第二区画に存在する開口の影響を考慮した上で没水がプラントに設置されている機器及び当該機器を含んでいる系統に与える影響を評価し、没水がプラントの運転に与える影響を直接的に評価することができる。
【0089】
また、内部溢水評価装置20は、機器に溢水が掛かる事象の影響により機器が機能を喪失する条件を示す条件データを含む機器データを取得する。そして、内部溢水評価装置20は、区画データ、経路データ及び溢水源データに基づいて機器に溢水が掛かるか否かを判定し、機器に溢水が掛かると判定した場合、条件データにより示される対策の内容に基づいて機器の機能が所定の水準で維持され得るか否かを判定する。これにより、内部溢水評価装置20は、被水がプラントに設置されている機器及び当該機器を含んでいる系統に与える影響を評価し、被水がプラントの運転に与える影響を直接的に評価することができる。
【0090】
また、内部溢水評価装置20は、第二区画に溢水としての蒸気が流れ込んだ場合における第二区画の温度の影響により機器が機能を喪失する条件を示す条件データを含む機器データを取得し、第二区画に溢水としての蒸気が流れ込んだ場合における第二区画の温度を示す温度データを取得する。そして、内部溢水評価装置20は、温度データにより示される温度が条件データにより示される条件を満たしている場合、機器の機能が所定の水準で維持され得ないと判定する。これにより、内部溢水評価装置20は、蒸気による温度の上昇がプラントに設置されている機器及び当該機器を含んでいる系統に与える影響を評価し、蒸気による温度の上昇がプラントの運転に与える影響を直接的に評価することができる。
【0091】
また、内部溢水評価装置20は、第二区画に溢水としての蒸気が流れ込んだ場合における第二区画の湿度の影響により機器が機能を喪失する条件を示す条件データを含む機器データを取得し、第二区画に溢水としての蒸気が流れ込んだ場合における第二区画の湿度を示す湿度データを取得する。そして、内部溢水評価装置20は、湿度データにより示される湿度が条件データにより示される条件を満たしている場合、機器の機能が所定の水準で維持され得ないと判定する。これにより、内部溢水評価装置20は、蒸気による湿度の上昇がプラントに設置されている機器及び当該機器を含んでいる系統に与える影響を評価し、蒸気による湿度の上昇がプラントの運転に与える影響を直接的に評価することができる。
【0092】
また、内部溢水評価装置20は、溢水源が第一区画に存在すると判断された理由を示す溢水源データを取得する。これにより、内部溢水評価装置20は、当該判断の理由を考慮して溢水がプラントの運転に与える影響を直接的に評価することができる。
【0093】
また、内部溢水評価装置20は、一つの第一区画に存在する溢水源から二つ以上の第二区画に溢水が流れ込み得る場合、一つの第一区画に存在する溢水源で発生した全ての溢水が一つの第二区画に流れ込むという仮定の下、溢水源で発生した全ての溢水が流れ込むと仮定された第二区画について機器判定処理を実行する。これにより、内部溢水評価装置20は、より重大な事態を想定して溢水がプラントの運転に与える影響を直接的に評価することができる。
【0094】
また、内部溢水評価装置20は、一つの第一区画に存在する溢水源から二つ以上の第二区画に溢水が流れ込み得る場合、一つの第一区画に存在する溢水源で発生した溢水が二つ以上の第二区画各々に分かれて流れ込むという仮定の下、二つ以上の第二区画各々について機器判定処理を実行する。これにより、内部溢水評価装置20は、実情に即した事態を想定して溢水がプラントの運転に与える影響を直接的に評価することができる。
【0095】
また、内部溢水評価装置20が有する機能の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等の回路部(circuitry)を含むハードウェアにより実現されてもよい。
【0096】
また、内部溢水評価装置20が有する機能の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)、ASICが有する機能の少なくとも一部は、これらのハードウェアとソフトウェアとの協働により実現されてもよい。
【0097】
当該ソフトウェアは、例えば、非一過性の記憶媒体を備える記憶装置に格納されており、内部溢水評価装置20により読み出され、実行されてもよい。当該記憶装置は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)、ソリッドステートドライブ(SSD:Solid State Drive)である。
【0098】
或いは、当該ソフトウェアは、着脱可能な非一過性の記憶媒体を備える記憶装置に格納されており、内部溢水評価装置20により読み出され、実行されてもよい。当該記憶装置は、例えば、DVD、CD-ROMである。
【0099】
また、内部溢水評価装置20は、複数の装置に分かれて構成されていてもよい。例えば、内部溢水評価装置20は、機器データ取得部21の機能を有する装置と、区画データ取得部22の機能を有する装置と、経路データ取得部13の機能を有する装置と、溢水源データ取得部24の機能を有する装置と、機器判定部25の機能を有する装置と、系統判定部15の機能を有する装置と、に分かれていてもよい。
【0100】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の組み合わせ、変形、置換及び設計変更の少なくとも一つを加えることができる。
【符号の説明】
【0101】
1…内部溢水評価システム、10-1,10-1,…,10-N…端末、20…内部溢水評価装置、21…機器データ取得部、22…区画データ取得部、23…経路データ取得部、24…溢水源データ取得部、25…機器判定部、26…系統判定部、27…機能判定部、NW…ネットワーク
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