IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】封止用シートおよびポリマー組成物層
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240730BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240730BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240730BHJP
   C08L 23/20 20060101ALI20240730BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20240730BHJP
   H01L 31/048 20140101ALI20240730BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20240730BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240730BHJP
【FI】
B32B27/32 A
B32B27/20 Z
B32B27/32 101
C08K3/22
C08L23/20
C08L23/26
H01L31/04 560
H05B33/04
H05B33/14 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020125483
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021714
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122345
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 繁久
(72)【発明者】
【氏名】大橋 賢
(72)【発明者】
【氏名】細井 麻衣
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-513889(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057708(WO,A1)
【文献】特開2018-162418(JP,A)
【文献】国際公開第2011/040441(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/152053(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0017197(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
H05B 33/00-33/28、44/00、45/60
H10K 50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、ポリマー組成物層、および保護シートをこの順に含む積層構造を有する封止用シートであって、
ポリマー組成物層が、架橋構造を有するオレフィン系ポリマーおよび酸化カルシウムを含み、
酸化カルシウムの含有量が、ポリマー組成物層の不揮発分100質量%に対して40質量%以上80質量%以下であり、並びに
ポリマー組成物層の含水率が、ポリマー組成物層全体に対する質量基準で500ppm以下である封止用シート。
【請求項2】
架橋構造を有するオレフィン系ポリマーが、カルボキシ基および/または酸無水物基を有するオレフィン系ポリマーと、エポキシ基を有するオレフィン系ポリマーとから形成されている請求項1に記載の封止用シート。
【請求項3】
支持体および保護シートの水蒸気透過度が、それぞれ、1(g/m/24hr)以下である請求項1または2に記載の封止用シート。
【請求項4】
電子デバイスの封止に用いられる請求項1~のいずれか一項に記載の封止用シート。
【請求項5】
電子デバイスが、有機ELデバイスまたは太陽電池である請求項に記載の封止用シート。
【請求項6】
架橋構造を有するオレフィン系ポリマーおよび酸化カルシウムを含むポリマー組成物層であって、
酸化カルシウムの含有量が、ポリマー組成物層の不揮発分100質量%に対して40質量%以上80質量%以下であり、並びに
ポリマー組成物層の含水率が、ポリマー組成物層全体に対する質量基準で500ppm以下であるポリマー組成物層。
【請求項7】
架橋構造を有するオレフィン系ポリマーが、カルボキシ基および/または酸無水物基を有するオレフィン系ポリマーと、エポキシ基を有するオレフィン系ポリマーとから形成されている請求項に記載のポリマー組成物層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイスの封止に有用な封止用シートおよびポリマー組成物層に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(Electroluminescence)デバイス、太陽電池等の電子デバイスを水分から保護するため、ポリマー組成物層を用いて電子デバイスを封止することが行われている。
【0003】
電子デバイスの封止に適したポリマー組成物層としては、吸湿性フィラーを含有するものが知られている。例えば、特許文献1には、支持体と、吸湿性の金属水酸化物を含むポリマー組成物層とから構成される封止用シートが開示されている。
【0004】
封止用シート(特に、吸湿性フィラーを使用する封止用シート)では、電子デバイスの封止に用いられるポリマー組成物層の表面および内部に存在する水分が電子デバイスに悪影響を及ぼすことを回避するために、封止前に、封止用シートを乾燥することが行われる。例えば、特許文献2では、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、封止体にマイクロ波および遠赤外線を同時照射して、封止体を乾燥することが開示されている。
【0005】
封止用シート(特に、吸湿性フィラーを使用する封止用シート)では、その保管時に、ポリマー組成物層の吸湿を防ぐ必要がある。ポリマー組成物層の吸湿を防ぐために、例えば特許文献3では、水蒸気透過度が1(g/m/24hr)以下である第1フィルムおよび第2フィルムでポリマー組成物層を保護することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2017/057708号
【文献】特開2006-269247号公報
【文献】国際公開第2018/181426号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
封止用シートの封止前の乾燥(以下「事前乾燥」と記載することがある)は、電子デバイスの製造コストの削減の観点から省略することが望まれている。また、低透湿性の支持体、ポリマー組成物層、および低透湿性の保護シートをこの順に含む積層構造を有する封止用シートでは、保護シートを剥離せずにポリマー組成物層を事前乾燥することは困難である。本発明はこのような事情に着目してなされたものであって、本発明の目的は、事前乾燥の省略が可能な、ポリマー組成物層の含水率が充分に低減された封止用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成し得る本発明は、以下の通りである。
[1] 支持体、ポリマー組成物層、および保護シートをこの順に含む積層構造を有する封止用シートであって、
ポリマー組成物層が、架橋構造を有するオレフィン系ポリマーおよび酸化カルシウムを含み、
酸化カルシウムの含有量が、ポリマー組成物層の不揮発分100質量%に対して40質量%以上であり、並びに
ポリマー組成物層の含水率が、ポリマー組成物層全体に対する質量基準で500ppm以下である封止用シート。
[2] 酸化カルシウムの含有量が、ポリマー組成物層の不揮発分100質量%に対して80質量%以下である前記[1]に記載の封止用シート。
[3] 架橋構造を有するオレフィン系ポリマーが、カルボキシ基および/または酸無水物基を有するオレフィン系ポリマーと、エポキシ基を有するオレフィン系ポリマーとから形成されている前記[1]または[2]に記載の封止用シート。
[4] 支持体および保護シートの水蒸気透過度が、それぞれ、1(g/m/24hr)以下である前記[1]~[3]のいずれか一つに記載の封止用シート。
[5] 電子デバイスの封止に用いられる前記[1]~[4]のいずれか一つに記載の封止用シート。
[6] 電子デバイスが、有機ELデバイスまたは太陽電池である前記[5]に記載の封止用シート。
[7] 架橋構造を有するオレフィン系ポリマーおよび酸化カルシウムを含むポリマー組成物層であって、
酸化カルシウムの含有量が、ポリマー組成物層の不揮発分100質量%に対して40質量%以上であり、並びに
ポリマー組成物層の含水率が、ポリマー組成物層全体に対する質量基準で500ppm以下であるポリマー組成物層。
[8] 酸化カルシウムの含有量が、ポリマー組成物層の不揮発分100質量%に対して80質量%以下である前記[7]に記載のポリマー組成物層。
[9] 架橋構造を有するオレフィン系ポリマーが、カルボキシ基および/または酸無水物基を有するオレフィン系ポリマーと、エポキシ基を有するオレフィン系ポリマーとから形成されている前記[7]または[8]に記載のポリマー組成物層。
【発明の効果】
【0009】
本発明の封止用シートのポリマー組成物層は含水率が充分に低く、事前乾燥の省略が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、支持体、ポリマー組成物層、および保護シートをこの順に含む積層構造を有する封止用シートを提供する。支持体とポリマー組成物層との間、およびポリマー組成物層と保護シートとの間に、他の層(例えば離型層)が存在していてもよい。また、本発明は、ポリマー組成物層自体も提供する。
【0011】
ポリマー組成物層の含水率が、ポリマー組成物層全体に対する質量基準で500ppm以下であることが、本発明の特徴の一つである。このようにポリマー組成物層の含水率が充分に低い本発明の封止用シートでは、事前乾燥を省略することが可能である。前記含水率は、低いほど好ましく(理想的には0ppm)、ポリマー組成物層全体に対する質量基準で、好ましくは250ppm以下、より好ましくは100ppm以下である。前記含水率は、後述の実施例欄に記載するようにして測定することができる。
【0012】
ポリマー組成物層が多量の酸化カルシウムを吸湿性フィラーとして含有することが、本発明の特徴の一つである。多量の酸化カルシウムを使用することによって、封止用シートの製造時(特にエージング時)にポリマー組成物層の含水率を充分に低減させることができる。
【0013】
ポリマー組成物層の含水率を充分に低減させるために、酸化カルシウムの含有量は、ポリマー組成物層の不揮発分100質量%に対して40質量%以上、好ましくは41質量%以上、より好ましくは42質量%以上である。一方、ポリマー組成物層の粘着性の観点から、酸化カルシウムの含有量は、ポリマー組成物層の不揮発分100質量%に対して、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
【0014】
酸化カルシウムは、市販品を使用することができる。市販品としては、例えば、井上石灰工業社製「QC-X」;三共製粉社製「モイストップ#10」;吉澤石灰工業社製「HAL-G」、「HAL-J」、「HAL-F」;Filgen社製「CaO Nano Powder」等が挙げられる。
【0015】
本発明では、酸化カルシウムを含む混合物を、吸湿性フィラーとして用いてもよい。そのような混合物としては、例えば、焼成ドロマイト(酸化カルシウムおよび酸化マグネシウムを含む混合物)が挙げられる。焼成ドロマイトは、例えば、吉澤石灰工業社等から入手することができる。
【0016】
酸化カルシウムの粒子径および酸化カルシウムを含む混合物(以下「酸化カルシウム等」と記載することがある)の粒子径は、封止工程で酸化カルシウム等が電子デバイスを損傷することを防止するため、および酸化カルシウム等とポリマーとの界面結合力を高めるために、それぞれ、好ましくは0.03~10μm、より好ましくは0.05~5μm、さらに好ましくは0.1~3μmである。これらの粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定(JIS Z 8825)により粒度分布を体積基準で作成したときの該粒度分布のメジアン径である。
【0017】
ポリマー組成物層は、酸化カルシウム以外の吸湿性フィラー(以下「他の吸湿性フィラー」と記載することがある)を含んでいてもよい。他の吸湿性フィラーとしては、例えば、半焼成ハイドロタルサイト、焼成ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、モレキュラーシーブ等が挙げられる。他の吸湿性フィラーは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。酸化カルシウム以外の吸湿性フィラーの含有量は、ポリマー組成物層の不揮発分100質量%に対して、好ましくは0~40質量%、好ましくは0~30質量%、より好ましくは0~20質量%である。
【0018】
ポリマー組成物層が、架橋構造を有するオレフィン系ポリマー(以下「架橋オレフィン系ポリマー」と記載することがある)を含むことが、本発明の特徴の一つである。このような架橋オレフィン系ポリマーを使用することによって、高湿および高温条件下で保存されても接着強度の低下を抑制し得る(即ち、湿熱耐性が良好な)ポリマー組成物層を得ることができる。架橋オレフィン系ポリマーは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
湿熱耐性の観点から、架橋オレフィン系ポリマーの含有量は、ポリマー組成物層の不揮発分100質量%に対して、好ましくは1~40質量%、より好ましくは2~35質量%、さらに好ましくは3~30質量%である。
【0020】
架橋オレフィン系ポリマーは、カルボキシ基および/または酸無水物基(即ち、カルボニルオキシカルボニル基(-CO-O-CO-))を有するオレフィン系ポリマーと、エポキシ基を有するオレフィン系ポリマーとから形成されていることが好ましく、酸無水物基を有するオレフィン系ポリマーと、エポキシ基を有するオレフィン系ポリマーとから形成されていることがより好ましい。カルボキシ基および/または酸無水物基を有するオレフィン系ポリマーおよびエポキシ基を有するオレフィン系ポリマーは、いずれも1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
以下、架橋オレフィン系ポリマー、カルボキシ基および/または酸無水物基を有するオレフィン系ポリマーおよびエポキシ基を有するオレフィン系ポリマーの「オレフィン系ポリマー」部分について、説明する。
【0022】
オレフィン系ポリマーのオレフィン単位としては、1個のオレフィン性炭素-炭素二重結合を有するモノオレフィンおよび/または2個のオレフィン性炭素-炭素二重結合を有するジオレフィンに由来するものが好ましい。モノオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン(イソブテン)、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等のα-オレフィンが挙げられる。ジオレフィンとしては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン等が挙げられる。
【0023】
オレフィン系ポリマーは、単独重合体でもよく、ランダム共重合体、ブロック共重合体等の共重合体でもよい。共重合体としては、2種以上のオレフィンの共重合体、およびオレフィンと非共役ジエン、スチレン等のオレフィン以外のモノマーとの共重合体が挙げられる。好ましい共重合体の例として、エチレン-非共役ジエン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン-ブテン-非共役ジエン共重合体、スチレン-イソブチレン共重合体、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体、イソブチレン-イソプレン共重合体等が挙げられる。
【0024】
オレフィン系ポリマーとしては、ブテン系ポリマーおよびプロピレン系ポリマーが好ましい。ここで、「ブテン系ポリマー」とは、ポリマーを構成する全オレフィンモノマー単位のうちの主単位(最大含有量の単位)がブテン由来であるポリマーを指す。ブテンとしては、例えば1-ブテン、イソブチレン(イソブテン)等が挙げられる。「プロピレン系ポリマー」とは、ポリマーを構成する全オレフィンモノマー単位のうちの主単位(最大含有量の単位)がプロピレン由来であるポリマーを指す。
【0025】
ブテン系ポリマーが共重合体である場合、ブテン以外のモノマーとしては、例えば、スチレン、エチレン、プロピレン、イソプレン等が挙げられる。プロピレン系ポリマーが共重合体である場合、プロピレン以外のモノマーとしては、例えば、エチレン、ブテン、イソプレン等が挙げられる。
【0026】
オレフィン系ポリマーは、ワニスの増粘による流動性の低下を抑制する観点から非晶性であることが好ましい。ここで、非晶性とは、オレフィン系ポリマーが明確な融点を有しないことを意味し、例えば、オレフィン系ポリマーのDSC(示差走査熱量測定)で融点を測定した場合に明確なピークが観察されないものを使用することができる。
【0027】
次に、カルボキシ基および/または酸無水物基を有するオレフィン系ポリマーについて説明する。酸無水物基としては、例えば、無水コハク酸に由来する基、無水マレイン酸に由来する基、無水グルタル酸に由来する基等が挙げられる。カルボキシ基および/または酸無水物基を有するオレフィン系ポリマーとしては、カルボキシ基および/または酸無水物基を有するブテン系ポリマー、並びにカルボキシ基および/または酸無水物基を有するプロピレン系ポリマーが好ましく、酸無水物基を有するブテン系ポリマーおよび酸無水物基を有するプロピレン系ポリマーがより好ましい。
【0028】
カルボキシ基を有するオレフィン系ポリマー中のカルボキシ基の濃度は、0.05~10mmol/gが好ましく、0.1~5mmol/gがより好ましい。カルボキシ基の濃度は、JIS K 2501の記載に従い、ポリマー1g中に存在する酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数として定義される酸価の値より得られる。
【0029】
酸無水物基を有するオレフィン系ポリマー中の酸無水物基の濃度は、0.05~10mmol/gが好ましく、0.1~5mmol/gがより好ましい。酸無水物基の濃度は、JIS K 2501の記載に従い、ポリマー1g中に存在する酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数として定義される酸価の値より得られる。
【0030】
カルボキシ基および酸無水物基の両方を有するオレフィン系ポリマー中のカルボキシ基の濃度と酸無水物基の濃度との合計は、0.05~10mmol/gが好ましく、0.1~5mmol/gがより好ましい。
【0031】
カルボキシ基および/または酸無水物基を有するオレフィン系ポリマーは、例えば、カルボキシ基および/または酸無水物基を有する不飽和化合物で、オレフィン系ポリマーをラジカル反応条件下にてグラフト変性することによって得ることができる。また、カルボキシ基および/または酸無水物基を有する不飽和化合物を、オレフィン等とともにラジカル共重合することによって、酸無水物基を有するオレフィン系ポリマーを得ることができる。
【0032】
カルボキシ基および/または酸無水物基を有するオレフィン系ポリマーは市販品を使用してもよい。その市販品としては、例えば、星光PMC社製「T-YP279」(無水マレイン酸変性プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン単位とブテン単位の合計あたりのブテン単位の量:36質量%、酸無水物基濃度:0.464mmol/g、数平均分子量:35,000)、星光PMC社製「T-YP312」(無水マレイン酸変性プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン単位とブテン単位の合計あたりのブテン単位の量:29質量%、酸無水物基濃度:0.464mmol/g、数平均分子量:60,900)、星光PMC社製「ER661」(無水マレイン酸変性イソブチレン-イソプレンランダム共重合体、酸無水物基濃度0.87mmol/g、数平均分子量:39,700)、東邦化学工業社製「HV-300M」(無水マレイン酸変性液状ポリブテン(「HV-300」(数平均分子量:1,400)の変性品)、数平均分子量:2,100、酸無水物基を構成するカルボキシ基の数:3.2個/1分子、酸価:43.4mgKOH/g、酸無水物基濃度:0.77mmol/g)等が挙げられる。
【0033】
次に、エポキシ基を有するオレフィン系ポリマーについて説明する。エポキシ基を有するオレフィン系ポリマーとしては、エポキシ基を有するブテン系ポリマーおよびエポキシ基を有するプロピレン系ポリマーが好ましい。
【0034】
エポキシ基を有するオレフィン系ポリマー中のエポキシ基の濃度は、0.05~10mmol/gが好ましく、0.1~5mmol/gがより好ましい。エポキシ基濃度は、JIS K 7236-1995に基づいて得られるエポキシ当量から求められる。
【0035】
エポキシ基を有するオレフィン系ポリマーは、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する不飽和化合物で、オレフィン系ポリマーをラジカル反応条件下にてグラフト変性することによって得ることができる。また、エポキシ基を有する不飽和化合物を、オレフィン等とともにラジカル共重合することによって、エポキシ基を有するオレフィン系ポリマーを得ることができる。
【0036】
エポキシ基を有するオレフィン系ポリマーは市販品を使用してもよい。その市販品としては、例えば、星光PMC社製「T-YP341」(グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン単位とブテン単位の合計あたりのブテン単位の量:29質量%、エポキシ基濃度:0.638mmol/g、数平均分子量:155,000)、星光PMC社製「T-YP276」(グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン単位とブテン単位の合計あたりのブテン単位の量:36質量%、エポキシ基濃度:0.638mmol/g、数平均分子量:57,000)、星光PMC社製「T-YP313」(グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン単位とブテン単位の合計あたりのブテン単位の量:29質量%、エポキシ基濃度:0.638mmol/g、数平均分子量:155,000)、星光PMC社製「ER850」(グリシジルメタクリレート変性イソブチレン-イソプレンランダム共重合体、エポキシ基濃度:0.654mmol/g、数平均分子量:99,200)等が挙げられる。
【0037】
カルボキシ基を有するオレフィン系ポリマーと、エポキシ基を有するオレフィン系ポリマーとの使用量は、架橋構造が形成できれば特に限定されないが、エポキシ基の量(mol)とカルボキシ基の量(mol)との比(即ち、エポキシ基の量(mol):カルボキシ基の量(mol))は、好ましくは100:10~100:500、より好ましくは100:25~100:475、さらに好ましくは100:40~100:450である。
【0038】
酸無水物基を有するオレフィン系ポリマーと、エポキシ基を有するオレフィン系ポリマーとの使用量は、架橋構造が形成できれば特に限定されないが、エポキシ基の量(mol)と酸無水物基の量(mol)との比(即ち、エポキシ基の量(mol):酸無水物基の量(mol))は、好ましくは100:10~100:500、より好ましくは100:25~100:475、さらに好ましくは100:40~100:450である。
【0039】
カルボキシ基および酸無水物基の両方を有するオレフィン系ポリマーと、エポキシ基を有するオレフィン系ポリマーとの使用量は、架橋構造が形成できれば特に限定されないが、「エポキシ基の量(mol)」と「カルボキシ基の量(mol)および酸無水物基の量(mol)の合計」との比(即ち、エポキシ基の量(mol):(カルボキシ基の量(mol)+酸無水物基の量(mol)))は、好ましくは100:10~100:500、より好ましくは100:25~100:475、さらに好ましくは100:40~100:450である。
【0040】
ポリマー組成物層は、粘着性および柔軟性の観点から、架橋構造を有さないオレフィン系ポリマー(以下「非架橋オレフィン系ポリマー」と記載することがある)を含むことが好ましい。非架橋オレフィン系ポリマーは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。非架橋オレフィン系ポリマーの「オレフィン系ポリマー」部分の説明は、上述した架橋オレフィン系ポリマー等の「オレフィン系ポリマー」部分の説明と同様である。
【0041】
ポリマー組成物層の粘着性および柔軟性の観点から、非架橋オレフィン系ポリマーの含有量は、ポリマー組成物層の不揮発分100質量%に対して、好ましくは5~50質量%、より好ましくは10~45質量%、さらに好ましくは15~40質量%である。
【0042】
非架橋オレフィン系ポリマーは市販品を使用してもよい。その市販品としては、例えば、ENEOS社製「HV-300」(液状ポリブテン、数平均分子量1,400)、ENEOS社製「HV-1900」(液状ポリブテン、数平均分子量:2,900)、三井化学社製「X1102C」(プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン単位とブテン単位の合計あたりのブテン単位の量:29質量%)、BASF社製「オパノールB100」(ポリイソブチレン、粘度平均分子量:1,110,000)、BASF社製「N50SF」(ポリイソブチレン、粘度平均分子量:400,000)、ENEOS社製「テトラックス3T」(ポリイソブチレン、粘度平均分子量:30,000)、ENEOS社製「テトラックス6T」(ポリイソブチレン、粘度平均分子量:60,000)が挙げられる。
【0043】
上述の酸無水物基を有するオレフィン系ポリマー、エポキシ基を有するオレフィン系ポリマーおよび非架橋オレフィン系ポリマーの数平均分子量は、ポリマー組成物のワニスの良好な塗工性等の観点から、それぞれ、1,000,000以下が好ましく、750,000以下がより好ましく、500,000以下がより一層好ましく、400,000以下がさらに好ましく、300,000以下がさらに一層好ましく、200,000以下が特に好ましい。一方、ポリマー組成物のワニスの塗工時のハジキを防止し、形成されるポリマー組成物層の封止性能を発現させ、機械強度を向上させるという観点から、この数平均分子量は、1,000以上が好ましく、2,000以上がより好ましい。なお、本発明における数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン換算)で測定される。GPC法による数平均分子量は、具体的には、測定装置として島津製作所社製「LC-9A/RID-6A」を、カラムとして昭和電工社製「Shodex K-800P/K-804L/K-804L」を、移動相としてトルエン等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0044】
ポリマー組成物層は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上述のもの以外の成分(以下「他の成分」と記載することがある)を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、粘着付与剤、硬化促進剤、酸化防止剤、可塑剤等が挙げられる。これらは、いずれも1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
粘着付与剤は、ポリマー組成物層に粘着性を付与する成分である。粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂(水素添加テルペン樹脂、テルペンフェノール共重合樹脂、芳香族変性テルペン樹脂等)、石油樹脂(脂肪族系石油樹脂、水添系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂)、クマロン-インデン樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。
【0046】
粘着付与剤は市販品を使用することができる。その市販品としては、例えば、以下のものが挙げられる。ロジン系樹脂としては、例えば、パインクリスタル ME-H、パインクリスタルME-D、パインクリスタル ME-G、パインクリスタル KR-85、パインクリスタル KE-311、パインクリスタル KE-359、パインクリスタル D-6011、パインクリスタル PE-590、パインクリスタル KE-604、パインクリスタル PR-580(いずれも荒川化学工業社製)等が挙げられる。
【0047】
テルペン樹脂としては、例えばYSレジンPX1000、YSレジンPX1150、YSレジンPX1150N、YSレジンPX1250、YSレジンTH130、YSレジンTR105、YSレジンLP、YSレジンCP(いずれもヤスハラケミカル社製)等が挙げられる。
【0048】
水素添加テルペン樹脂としては、例えばクリアロンP、クリアロンM、クリアロンKシリーズ(いずれもヤスハラケミカル社製)等が挙げられる。
【0049】
テルペンフェノール共重合樹脂としては、例えばYSポリスター2000、ポリスターU、ポリスターT、ポリスターS、マイティエースG(いずれもヤスハラケミカル社製)等が挙げられる。
【0050】
芳香族変性テルペン樹脂としては、例えばYSレジンTO85、YSレジンTO105、YSレジンTO115、YSレジンTO125(いずれもヤスハラケミカル社製)等が挙げられる。
【0051】
水添系石油樹脂としては、例えばEscorez5300シリーズ、5600シリーズ(いずれもエクソンモービル社製);T-REZ OP501、T-REZ PR803、T-REZ HA085、T-REZ HA103、T-REZ HA105、T-REZ HA125、(いずれも水添ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ENEOS社製);Quintone1325、Quintone1345(いずれも日本ゼオン社製);アイマーブS-100、アイマーブS-110、アイマーブP-100、アイマーブP-125、アイマーブP-140(いずれも水添ジシクロペンタジエン系石油樹脂、出光興産社製);アルコン P-90、アルコン P-100、アルコン P-115、アルコンP-125、アルコン P-140、アルコン M-90、アルコン M-100、アルコン M-115、アルコン M-135、TFS13-030(いずれも荒川化学工業社製)等が挙げられる。
【0052】
芳香族系石油樹脂としては、例えばENDEX155(イーストマン社製);ネオポリマー L-90、ネオポリマー120、ネオポリマー130、ネオポリマー140、ネオポリマー150、ネオポリマー170S、ネオポリマー160、ネオポリマー E-100、ネオポリマー E-130、ネオポリマー M-1、ネオポリマー S、ネオポリマー S100、ネオポリマー 120S、ネオポリマー 130S、ネオポリマー EP-140(いずれもENEOS社製);ペトコール LX、ペトコール 120、ペトコール130、ペトコール140(いずれも東ソー社製);T-REZ RB093、T-REZ RC100、T-REZ RC115、T-REZ RC093,T-REZ RE100(いずれもENEOS社製)等が挙げられる。
【0053】
共重合系石油樹脂としては、T-REZ HB103、T-REZ HB125、T-REZ PR801、T-REZ PR802、T-REZ RD104(いずれもENEOS社製);ペトロタック60、ペトロタック70、ペトロタック 90、ペトロタック90HS、ペトロタック 90V、ペトロタック100V(いずれも東ソー社製);QuintoneD100(日本ゼオン社製)等が挙げられる。
【0054】
粘着付与剤の軟化点は、ポリマー組成物層の耐熱性等の観点から、50~200℃が好ましく、90~180℃がより好ましく、100~150℃がさらに好ましい。なお、軟化点は、JIS K2207に従い環球法により測定される。
【0055】
粘着付与剤の含有量は、ポリマー組成物層の粘着性および封止性の観点から、ポリマー組成物層の不揮発分100質量%に対して、好ましくは0~50質量%、より好ましくは0~40質量%、さらに好ましくは0~30質量%である。
【0056】
硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物、3級・4級アミン系化合物、ジメチルウレア化合物、有機ホスフィン化合物等が挙げられる。
【0057】
イミダゾール化合物としては、例えば、1H-イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-(2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン、2-フェニル-4,5-ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ドデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。イミダゾール化合物の具体例としては、キュアゾール2MZ、2P4MZ、2E4MZ、2E4MZ-CN、C11Z、C11Z-CN、C11Z-CNS、C11Z-A、2PHZ、1B2MZ、1B2PZ、2PZ、C17Z、1.2DMZ、2P4MHZ-PW、2MZ-A、2MA-OK(いずれも四国化成工業社製)等が挙げられる。
【0058】
3級・4級アミン系化合物としては、特に制限はないが、例えば、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩;DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7)、DBN(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5)、DBU-フェノール塩、DBU-オクチル酸塩、DBU-p-トルエンスルホン酸塩、DBU-ギ酸塩、DBU-フェノールノボラック樹脂塩等のジアザビシクロ化合物;ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(TAP)等の3級アミンまたはそれらの塩、芳香族ジメチルウレア、脂肪族ジメチルウレア等のジメチルウレア化合物;等が挙げられる。
【0059】
ジメチルウレア化合物としては、例えば、DCMU(3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア)、U-CAT3512T(サンアプロ社製)等の芳香族ジメチルウレア;U-CAT3503N(サンアプロ社製)等の脂肪族ジメチルウレア等が挙げられる。中でも硬化性の点から、芳香族ジメチルウレアが好ましく用いられる。
【0060】
有機ホスフィン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン等が挙げられる。有機ホスフィン化合物の具体例としては、TPP、TPP-MK、TPP-K、TTBuP-K、TPP-SCN、TPP-S(いずれも北興化学工業社製)等が挙げられる。
【0061】
硬化促進剤を使用する場合、その含有量は、架橋構造を有するオレフィン系ポリマーの形成促進等のために、ポリマー組成物層の不揮発分100質量%に対して、好ましくは0.001~5質量%、より好ましくは0.001~2.5質量%、さらに好ましくは0.001~1質量%である。
【0062】
本発明において酸化防止剤に特に限定はなく、公知のものを使用することができる。酸化防止剤を使用する場合、その含有量は、ポリマー組成物層の不揮発分100質量%に対して、好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.05~2.5質量%、さらに好ましくは0.1~2質量%である。
【0063】
可塑剤としては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、流動パラフィン、ワセリン等の鉱物油、ヒマシ油、綿実油、菜種油、大豆油、パーム油、ヤシ油、オリーブ油等の植物油等が挙げられる。
【0064】
本発明の封止用シートは、支持体、ポリマー組成物層、および保護シートをこの順に含む積層構造を有する。支持体および保護シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン;シクロオレフィンポリマー;ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と記載することがある)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリイミド等のプラスチックフィルム等が挙げられる。支持体および保護シートは、いずれも単層フィルムでもよく、積層フィルムでもよい。
【0065】
保護シートでは、ポリマー組成物層と接する面が離型処理されていることが好ましい。一方、支持体は、離型処理されていてもよく、されていなくてもよい。離型処理としては、例えば、シリコーン樹脂系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等の離型剤による離型処理が挙げられる。
【0066】
支持体および保護シートの厚さは、特に限定されないが、封止用シートの取り扱い性等の観点から、それぞれ、好ましくは10~150μm、より好ましくは20~100μmである。なお、支持体および保護シートが積層フィルムである場合、前記厚さは、積層フィルムの厚さである。一方、ポリマー組成物層の厚さは、封止性等の観点から、好ましくは5~200μm、より好ましくは5~150μm、さらに好ましくは5~100μmである。
【0067】
支持体および保護シートの水蒸気透過度(以下「WVTR」と記載することがある)は、それぞれ、好ましくは1(g/m/24hr)以下である。ここでシートの「水蒸気透過度(g/m/24hr)」とは、後述する所定の温度および湿度の条件で、面積1mのシートを、24時間で透過する水蒸気の量(g)を意味する。水蒸気透過度が1(g/m/24hr)以下である低透湿性の支持体および低透湿性の保護シートを使用することにより、封止用シートの保管時に、ポリマー組成物層の吸湿を防ぐことができる。なお、低透湿性の支持体および低透湿性の保護シートを使用すれば、一般に、封止用シートの事前乾燥が困難である。この点、本発明では、上述したように多量の酸化カルシウムを使用するすることによって封止用シートの製造時(特にエージング時)にポリマー組成物層の含水率を充分に低減させることができるため、封止用シートの事前乾燥を省略できる。
【0068】
シートの「水蒸気透過度(g/m/24hr)」は、MOCON社製水蒸気透過率測定装置PERMATRANシリーズ(ISO 15106-2、JIS K7129Bに従う)によって測定できる。具体的には、シートを50cmに切断し、シリコーングリースを使用して治具にセットした後、超純水を用いて温度40度および湿度90%RHの条件に調節して、水蒸気透過度が定常状態になるまで測定する。
【0069】
低透湿性の支持体および低透湿性の保護シートとして、例えば、バリア層を有するフィルム、またはバリア層を有するフィルムと別のフィルムとの積層フィルムを使用することができる。バリア層としては、例えば、シリカ蒸着膜、窒化ケイ素膜、酸化ケイ素膜等の無機膜が挙げられる。バリア層は、複数の無機膜の複数層(例えば、シリカ蒸着膜)で構成されていてもよい。また、バリア層は、有機物と無機物から構成されていてもよく、有機層と無機膜の複合多層であってもよい。
【0070】
バリア層を有するフィルムとしては、例えば、WVTRが0.0005(g/m/24hr)以下である高バリア性プラスチックフィルムを使用することができる。高バリア性プラスチックフィルムとしては、例えば、プラスチックフィルム表面に酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ケイ素、窒化酸化ケイ素、SiCN、アモルファスシリコン等の無機膜を、化学気相成長法(例えば、熱、プラズマ、紫外線、真空熱、真空プラズマまたは真空紫外線による化学気相成長法)、または物理気相成長法(例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザー堆積法、分子線エピタキシー法等)により単層または複層で積層することによって製造されたものが挙げられる(例えば、特開2016-185705号公報、特許第5719106号公報、特許第5712509号公報、特許第5292358号公報等参照)。無機膜のクラックを防止するため、無機膜と透明平坦化層(例えば、透明プラスチック層)を交互に積層することが好ましい。
【0071】
また、バリア層を有するフィルムとしては、例えば、WVTRが0.01(g/m/24hr)以上1(g/m/24hr)以下である中バリア性プラスチックフィルムを使用することができる。中バリア性プラスチックフィルムとしては、例えば、バリア層として、基材表面に酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ケイ素、窒化酸化ケイ素、SiCN、アモルファスシリコン等の無機物を含む無機膜を蒸着する方法、または基材に金属酸化物とバリア性を有する有機樹脂からなるコーティング液を塗布し、乾燥する方法等で製造されたものが挙げられる(例えば、特開2013-108103号公報、特許第4028353号公報等参照)。
【0072】
バリア層を有するフィルムとしては市販品を使用してもよい。中バリア性プラスチックフィルムの市販品としては、例えば、クラレ社製「クラリスタCI」、三菱ケミカル社製「テックバリアHX」、「テックバリアLX」および「テックバリアL」、大日本印刷社製「IB-PET-PXB」、凸版印刷社製「GL,GXシリーズ」等が挙げられる、高バリア性プラスチックフィルムの市販品としては、例えば、三菱ケミカル社製「X-BARRIER」等が挙げられる。
【0073】
本発明の封止用シートおよびポリマー組成物層は、例えば、(1)上述の成分を有機溶剤に溶かして、ポリマー組成物のワニスを調製し、(2)得られたワニスを支持体上に塗布して塗膜を形成し、(3)得られた塗膜を乾燥してポリマー組成物層(乾燥塗膜)を形成し、(4)得られたポリマー組成物層に保護シートを積層して積層体を形成し、(5)得られた積層体を加熱するエージングでポリマー組成物層の含水率を低減させることによって、製造することができる。
【0074】
ワニスの調製に使用し得る有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類;セロソルブ等のセロソルブ類;ブチルカルビトール等のカルビトール類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンのアミド類;等を挙げることができる。有機溶剤は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。有機溶剤として市販品を使用してもよい。その市販品としては、例えば、丸善石油化学社製「スワゾール」、出光興産社製「イプゾール」等が挙げられる。ワニスの塗布は、公知の方法(例えば、ダイコーターを使用する方法)で行えばよく、塗布方法に特に限定はない。
【0075】
塗膜の乾燥は、架橋構造を有するオレフィン系ポリマーを形成するために、加熱によって行うことが好ましい。塗膜の乾燥温度は、好ましくは50~200℃、より好ましくは80~150℃であり、その時間は、好ましくは1~60分、より好ましくは10~30分である。乾燥は、常圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。
【0076】
ポリマー組成物層への保護シートの積層は、公知の機器を使用して行うことができる。この機器としては、例えば、ロールラミネーター、プレス機、真空加圧式ラミネーター等が挙げられる。
【0077】
積層体のエージング温度は、好ましくは80~200℃、より好ましくは100~150℃であり、その時間は、好ましくは10~240分、より好ましくは30~180分である。
【0078】
本発明の封止用シートは、電子デバイスの封止に用いることができる。電子デバイスとしては、例えば、有機ELデバイス、太陽電池、センサーデバイス等が挙げられる。電子デバイスは、より好ましくは有機ELデバイスまたは太陽電池等の水分に弱い電子デバイスである。また、本発明の封止用シートは、導電性基板等の封止に用いることができる。
【実施例
【0079】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、成分の量および共重合単位の量における「部」および「%」は、特に断りがない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を意味する。
【0080】
<成分>
実施例および比較例で用いた成分を以下に示す。
(オレフィン系ポリマー)
「T-YP341」(星光PMC社製、グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン単位/ブテン単位:71%/29%、エポキシ基濃度:0.64mmol/g、数平均分子量:155,000)
「HV-300M」(東邦化学工業社製、無水マレイン酸変性液状ポリブテン、酸無水物基濃度:0.77mmol/g、数平均分子量:2,100)
「HV-1900」(ENEOS社製、液状ポリブテン、数平均分子量:2,900)
【0081】
(吸湿性フィラー)
酸化カルシウム(吉澤石灰工業社製、メジアン径:2.1μm)
酸化カルシウム(吉澤石灰工業社製、メジアン径:1.8μm)
半焼成ハイドロタルサイト(協和化学工業社製「DHT-4C」、粒子径(メジアン径):400nm、BET比表面積:15m/g)
焼成ハイドロタルサイト(協和化学工業社製「KW2200」、粒子径(メジアン径):400nm、BET比表面積:190m/g)
酸化マグネシウム(タテホ化学工業社製「DIPSERMAG」)
モレキュラーシーブ4A(ユニオン昭和社製)
【0082】
(粘着付与剤)
「T-REZ HA105」(ENEOS社製、水添脂環式石油樹脂、軟化点:105℃)
【0083】
(酸化防止剤)
「Irganox 1010」(BASF社製、ヒンダードフェノール系酸化防止剤)
【0084】
(硬化促進剤)
2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(以下「TAP」と略記する。)(化薬ヌーリオン社製)
【0085】
<実施例1>
下記表に示す配合比のワニスを以下の手順で作製し、得られたワニスを用いて封止用シートを作製した。なお、下記表に記載の各成分の使用量(部)は、ワニス中の各成分の不揮発分の量を示す。また、下記表には、ワニスの不揮発分100質量%に対する吸湿性フィラーの添加量を示す。
【0086】
具体的には、水添脂環式石油樹脂(粘着付与剤、ENEOS社製「T-REZ HA105」)のスワゾール溶液(不揮発分:60%)に、無水マレイン酸変性液状ポリブテン(東邦化学工業社製「HV-300M」)、液状ポリブテン(ENEOS社製「HV-1900」)、酸化カルシウム(吉澤石灰工業社製、メジアン径:2.1μm)を3本ロールで分散させて、混合物を得た。得られた混合物に、グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体(星光PMC社製「T-YP341」)のスワゾール溶液(不揮発分:15%)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF社製「Irganox 1010」)、硬化促進剤(TAP、化薬ヌーリオン社製)およびトルエンを配合し、得られた混合物を高速回転ミキサーで均一に分散して、ポリマー組成物のワニス(不揮発分:63%)を得た。
【0087】
片面がシリコーン系離型剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋クロス社製「SP4020」、PETフィルムの厚さ:50μm)と、低透湿性ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製「テックバリアHX」、PETフィルムの厚さ:12μm)とを、SP4020のシリコーン系離型剤で処理されていない面とテックバリアHXとが接触するように貼合せて、積層フィルムを作製し、これを封止用シートの支持体および保護シートとして使用した(積層フィルムの厚さ:62μm、積層フィルムの水蒸気透過度:0.12(g/m/24hr))。以下、「積層フィルムのシリコーン系離型剤で処理された面」を「離型処理面」と記載する。
【0088】
第1の積層フィルムの離型処理面上に、ポリマー組成物のワニスをダイコーターにて均一に塗布し、140℃で30分加熱して、架橋構造を有するオレフィン系ポリマーを含むポリマー組成物層を形成した。
【0089】
その後、第2の積層フィルムを、その離型処理面とポリマー組成物層とが接触するように積層した後、130℃で60分加熱(エージング)し、ポリマー組成物層の含水率を低減させることによって、「支持体(積層フィルム)/ポリマー組成物層/保護シート(積層フィルム)」との積層構造を有する封止用シート(ポリマー組成物層の厚さ:50μm)を得た。
【0090】
<実施例2>
酸化カルシウム(吉澤石灰工業社製、メジアン径:2.1μm)の使用量を200部から260部に変えたこと以外は実施例1と同様の方法にて、ポリマー組成物のワニス、および厚さ50μmのポリマー組成物層を有する封止用シートを作製した。
【0091】
<実施例3>
酸化カルシウム(吉澤石灰工業社製、メジアン径:2.1μm)の使用量を200部から390部に変えたこと以外は実施例1と同様の方法にて、ポリマー組成物のワニス、および厚さ50μmのポリマー組成物層を有する封止用シートを作製した。
【0092】
<実施例4>
酸化カルシウム(吉澤石灰工業社製、メジアン径:2.1μm)を酸化カルシウム(吉澤石灰工業社製、メジアン径:1.8μm)に変えたこと以外は実施例1と同様の方法にて、ポリマー組成物のワニス、および厚さ50μmのポリマー組成物層を有する封止用シートを作製した。
【0093】
<比較例1>
吸湿性フィラーを酸化カルシウム(吉澤石灰工業社製、メジアン径:2.1μm)から半焼成ハイドロタルサイト(協和化学工業社製「DHT-4C」)に変えたこと以外は実施例1と同様の方法にて、ポリマー組成物のワニス、および厚さ50μmのポリマー組成物層を有する封止用シートを作製した。
【0094】
<比較例2>
吸湿性フィラーを酸化カルシウム(吉澤石灰工業社製、メジアン径:2.1μm)から焼成ハイドロタルサイト(協和化学工業社製「KW2200」)に変えたこと以外は実施例1と同様の方法にて、ポリマー組成物のワニス、および厚さ50μmのポリマー組成物層を有する封止用シートを作製した。
【0095】
<比較例3>
吸湿性フィラーを酸化カルシウム(吉澤石灰工業社製、メジアン径:2.1μm)から酸化マグネシウム(タテホ化学工業社製「DISPERMAG」)に変えたこと以外は実施例1と同様の方法にて、ポリマー組成物のワニス、および厚さ50μmのポリマー組成物層を有する封止用シートを作製した。
【0096】
<比較例4>
吸湿性フィラーを酸化カルシウム(吉澤石灰工業社製、メジアン径:2.1μm)からモレキュラーシーブ4A(ユニオン昭和社製)に変えたこと以外は実施例1と同様の方法にて、ポリマー組成物のワニス、および厚さ50μmのポリマー組成物層を有する封止用シートを作製した。
【0097】
<比較例5>
エージングの条件を130℃および24時間に変更したこと以外は、比較例1と同様の方法にて、ポリマー組成物のワニス、および厚さ50μmのポリマー組成物を有する封止用シートを作製した。
【0098】
<比較例6>
エージングの条件を130℃および24時間に変更したこと以外は、比較例2と同様の方法にて、ポリマー組成物のワニス、および厚さ50μmのポリマー組成物を有する封止用シートを作製した。
【0099】
<比較例7>
エージングの条件を130℃および24時間に変更したこと以外は、比較例3と同様の方法にて、ポリマー組成物のワニス、および厚さ50μmのポリマー組成物を有する封止用シートを作製した。
【0100】
<ポリマー組成物層の含水率>
実施例および比較例で作製した封止用シートを長さ70mmおよび幅40mmにカットし、カットした封止用シートから支持体および保護シートを剥離して、得られたポリマー組成物層を乾燥したスクリューバイアルビン(三菱ケミカルアナリテック社製「VABH17」)に折りたたんで入れ、カールフィッシャー測定器(三菱ケミカルアナリテック社製「CA310型」)に直結した電気炉(三菱ケミカルアナリテック社製「VA-236S型」)に入れた。N気流中、電気炉の温度を250℃まで昇温し、測定試料から脱離した水をカールフィッシャー測定液に捕集し、定法にて水の質量を測定した。測定した水の質量から、ポリマー組成物層の含水率(ppm)を、ポリマー組成物層全体に対する質量基準で算出した。結果を下記表に示す。
【0101】
実施例および比較例で得られた各封止用シートのポリマー組成物層について、水蒸気侵入バリア性を以下の方法で評価した。
【0102】
<水蒸気侵入バリア性の評価方法>
支持体として、アルミニウム箔およびポリエチレンテレフタレートフィルムを備える複合フィルム(東海東洋アルミ販売社製「PETツキAL1N30」、アルミニウム箔の厚さ30μm、PETフィルムの厚さ25μm)を用意した(複合フィルムの水蒸気の水蒸気透過度:0.001(g/m/24hr)以下)。
【0103】
前記複合フィルムを支持体として用いたこと以外は、各実施例および比較例と同様にして、「支持体(複合フィルム)/ポリマー組成物層/保護シート(積層フィルム)」との積層構造を有する試験用シートを得た。なお、ポリマー組成物層は、複合フィルムのアルミニウム箔上に形成した。
【0104】
無アルカリガラスで形成された50mm×50mm角のガラス板を用意した。このガラス板を、煮沸したイソプロピルアルコールで5分洗浄し、150℃において30分以上乾燥した。
【0105】
乾燥後のガラス板の片面に、前記ガラス板の端部からの距離0mm~2mmの周縁エリアを覆うマスクを用いて、カルシウムを蒸着した。これにより、ガラス板の片面の、前記ガラス板の端部からの距離0mm~2mmの周縁エリアを除く中央部分に、厚さ200nmのカルシウム膜(純度:99.8%)が形成された。
【0106】
窒素雰囲気内で、上述した試験用シートのポリマー組成物層と、前記ガラス板のカルシウム膜側の面とを、熱ラミネーター(フジプラ社製「ラミパッカーDAiSY A4(LPD2325)」)を用いて貼合せ、積層体を得た。この積層体を評価サンプルとして使用した。
【0107】
一般に、カルシウムが水と接触して酸化カルシウムになると、透明になる。また、前記の評価サンプルでは、ガラス板およびアルミニウム箔が充分に高い水蒸気浸入バリア性を有するので、水分は、通常、ポリマー組成物層の端部を通って面内方向(厚み方向に垂直な方向)に移動して、カルシウム膜に到達する。カルシウム膜に水分が到達すると、カルシウム膜は端部から次第に酸化されて透明になるので、カルシウム膜の縮小が観察される。したがって、評価サンプルへの水分侵入は、評価サンプルの端部からカルシウム膜までの封止距離(mm)を測定することによって、評価できる。そのため、カルシウム膜を含む評価サンプルを、電子デバイスのモデルとして使用できる。
【0108】
まず、評価サンプルの端部からカルシウム膜の端部までの当初封止距離X2(mm)を、顕微鏡(ミツトヨ社製「Measuring Microscope MF-U」)により測定した。
【0109】
次いで、温度85℃湿度85%RHに設定した恒温恒湿槽に、評価サンプルを収納した。恒温恒湿槽に収納された評価サンプルの端部からカルシウム膜の端部までの間の封止距離X1(mm)が、当初封止距離X2よりも0.1mm増加した時点で、評価サンプルを恒温恒湿槽から取り出した。評価サンプルを恒温恒湿槽へ収納した時点から、評価サンプルを恒温恒湿槽から取り出した時点までの時間を、減少開始時間t(時間)として求めた。この減少開始時間tは、評価サンプルを恒温恒湿槽に収納した時点TP1から、恒温恒湿槽に収納された評価サンプルの端部とカルシウム膜の端部との間の封止距離X1(mm)が「X2+0.1mm」となる時点TP2までの時間に相当する。
【0110】
前記の封止距離X1および減少開始時間tを、式(1)のフィックの拡散式にあてはめて、水蒸気浸入バリア性パラメータとしての定数Kを算出した。
【0111】
【数1】
【0112】
得られた定数Kを用いて、ポリマー組成物層が水分の浸入を抑制する能力(水蒸気浸入バリア性)を、下記の基準で評価した。定数Kの値が小さいほど、水蒸気浸入バリア性が高いことを意味する。なお、下記「hr」は、「時間」を意味する。結果を下記表に記載する。なお、下記表中の「(cm/hr^0.5)」は「(cm/hr0.5)」を」意味する。
(水蒸気浸入バリア性の基準)
〇:定数Kが、0.02cm/hr0.5未満
×:定数Kが、0.02cm/hr0.5以上
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
【表3】
【0116】
上記表で示されるように、酸化カルシウムを多量に使用し、且つ架橋構造を有するオレフィン系ポリマーを形成した実施例1~4では、含水率が低く、且つ水蒸気侵入バリア性に優れたポリマー組成物層を形成できた。一方、吸湿性フィラーとして、半焼成ハイドロタルサイト、焼成ハイドロタルサイト、酸化マグネシウムまたはモレキュラーシーブ4Aを使用した比較例1~7では、ポリマー組成物層の含水率を充分に低減できなかった。特に、比較例5~7では、エージングを24時間も行ったが、ポリマー組成物層の含水率を充分に低減できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の封止用シートは、電子デバイス(例えば、有機ELデバイス、太陽電池、センサーデバイス等)、導電性基板等の封止に有用である。