(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】結束機
(51)【国際特許分類】
B65B 13/28 20060101AFI20240730BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20240730BHJP
B21F 15/06 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B65B13/28
E04G21/12 105E
B21F15/06
(21)【出願番号】P 2020131158
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森村 好一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 祐介
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0293902(US,A1)
【文献】特開2018-109299(JP,A)
【文献】実開昭62-168302(JP,U)
【文献】特開2003-267307(JP,A)
【文献】実開平03-024551(JP,U)
【文献】特開平01-009115(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0025526(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 13/00
E04G 21/00
B21F 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤを送るワイヤ送り部と、
前記ワイヤ送り部で正方向に送られるワイヤに巻き癖をつけるカールガイドと、
前記ワイヤ送り部で逆方向に送られて結束物に巻き付けられたワイヤを捩じる結束部とを備え、
前記結束部は、前記ワイヤ送り部で正方向に送られ、前記カールガイドで巻き癖が付けられて結束物の周囲に巻き回されたワイヤの先端側を係止するワイヤ係止体を備え、
結束物の周囲に巻き回され、先端を係止されたワイヤのうち、前記カールガイドに位置する第1側のワイヤより、結束物に対して前記カールガイドと反対側に位置する第2側のワイヤを、先に結束物の方向に引き寄せる引き寄せ手段を備え
、
前記引き寄せ手段は、前記ワイヤ送り部で正方向に送られ、前記カールガイドで巻き癖が付けられて、結束物の周囲に巻き回されるワイヤをガイドするガイド部材を前記カールガイドに備えると共に、
前記ガイド部材を、結束物の周囲に巻き回されるワイヤをガイドし、また、第1側のワイヤが結束物の方向に移動することを規制するガイド位置と、ガイド位置から退避する退避位置との間で移動させるガイド部材移動機構を備え、
前記ワイヤ送り部で逆方向にワイヤを送る動作を開始した後、前記ガイド部材移動機構で前記ガイド部材をガイド位置から退避位置に移動させる
結束機。
【請求項2】
前記カールガイドで巻き癖を付けられたワイヤを前記結束部に誘導する誘導ガイドを備え、
前記引き寄せ手段は、前記カールガイドに沿った前記第1側のワイヤより、前記誘導ガイドに沿った前記第2側のワイヤを、先に結束物の方向に引き寄せる
請求項1に記載の結束機。
【請求項3】
前記ワイヤを捩る前記結束部の動作と連動して、前記ガイド部材移動機構で前記ガイド部材をガイド位置から退避位置に移動させる
請求項1または請求項2に記載の結束機。
【請求項4】
前記ワイヤ送り部で逆方向にワイヤを送る動作を開始した後、時間の経過、または/及びワイヤの送り量、または/及びワイヤに掛かる負荷に基づき、前記ガイド部材移動機構で前記ガイド部材をガイド位置から退避位置に移動させる
請求項1~請求項3
の何れか1項に記載の結束機。
【請求項5】
前記ワイヤ送り部で逆方向にワイヤを送る動作を開始した後、前記ガイド部材移動機構で前記ガイド部材をガイド位置から退避位置に移動させる前に、前記ワイヤ送り部で正方向にワイヤを送る
請求項1~請求項3
の何れか1項に記載の結束機。
【請求項6】
ワイヤを送るワイヤ送り部と、
前記ワイヤ送り部で正方向に送られるワイヤに巻き癖をつけるカールガイドと、
前記ワイヤ送り部で逆方向に送られて結束物に巻き付けられたワイヤを捩じる結束部とを備え、
前記結束部は、前記ワイヤ送り部で正方向に送られ、前記カールガイドで巻き癖が付けられて結束物の周囲に巻き回されたワイヤの先端側を係止するワイヤ係止体を備え、
結束物の周囲に巻き回され、先端を係止されたワイヤのうち、前記カールガイドに位置する第1側のワイヤより、結束物に対して前記カールガイドと反対側に位置する第2側のワイヤを、先に結束物の方向に引き寄せる引き寄せ手段を備え、
前記引き寄せ手段は、第1側のワイヤが結束物の方向に移動することを規制するガイド部材を前記カールガイドに備えると共に、
前記ガイド部材を、第1側のワイヤが結束物の方向に移動することを規制するガイド位置へ移動する方向へ付勢するガイド部材移動機構を備え、
前記ガイド部材は、前記ワイヤ送り部で逆方向に送られるワイヤが接することで、前記ガイド部材をガイド位置から退避する退避位置へ移動させる力を生じさせる誘導部を備えた
結束機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
鉄筋等の結束物をワイヤで結束する結束機に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート建造物には強度を向上させるために鉄筋が使用されており、コンクリート打設時に鉄筋が所定の位置からずれないように、ワイヤで結束している。
【0003】
従来から、2本以上の鉄筋にワイヤを巻き、鉄筋に巻いたワイヤを捩じって当該2本以上の鉄筋をワイヤで結束する鉄筋結束機と称す結束機が提案されている。結束機は、リールに巻かれたワイヤを送り出して鉄筋に巻き回す結束線送り機構と、鉄筋に巻回されたワイヤを掴む把持機構と、把持機構を回転駆動してワイヤを捩じる結束線捩り機構とを備えており、トリガ操作によりワイヤ送り機構と把持機構とワイヤ捩り機構とが順に動作して1サイクルの結束動作を行う。
【0004】
鉄筋をワイヤで結束する場合、結束が緩いと、鉄筋同士がずれてしまうため、鉄筋同士を強固に保持することが求められている。そこで、鉄筋の周囲に巻き回されたワイヤを逆方向に送り、鉄筋に巻き付けるようにした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の結束機では、ノーズ及び下側ガイドアームに沿って鉄筋の周囲にワイヤを巻き回した状態で、このワイヤをクランプ装置で係止した後、ワイヤを逆方向に送っていた。
【0007】
この場合、鉄筋の周囲に巻き回されたワイヤにおいて、ノーズに沿った部位のワイヤから、鉄筋に近づく方向へ移動する。ノーズに沿った部位のワイヤが鉄筋に接する位置まで移動すると、ワイヤと鉄筋との間の摩擦により、ワイヤを逆方向に送る負荷が大きくなる。このため、下側ガイドアームに沿った部位のワイヤを十分に引き戻すことができなくなり、ワイヤを鉄筋に巻き付けることができない可能性があった。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためなされたもので、ワイヤを結束物に巻き付けられるようにした結束機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は、ワイヤを送るワイヤ送り部と、ワイヤ送り部で正方向に送られるワイヤに巻き癖をつけるカールガイドと、ワイヤ送り部で逆方向に送られて結束物に巻き付けられたワイヤを捩じる結束部とを備え、結束部は、ワイヤ送り部で正方向に送られ、カールガイドで巻き癖が付けられて結束物の周囲に巻き回されたワイヤの先端側を係止するワイヤ係止体を備え、結束物の周囲に巻き回され、先端を係止されたワイヤのうち、カールガイドに位置する第1側のワイヤより、結束物に対してカールガイドと反対側に位置する第2側のワイヤを、先に結束物の方向に引き寄せる引き寄せ手段を備え、引き寄せ手段は、ワイヤ送り部で正方向に送られ、カールガイドで巻き癖が付けられて、結束物の周囲に巻き回されるワイヤをガイドするガイド部材を前記カールガイドに備えると共に、ガイド部材を、結束物の周囲に巻き回されるワイヤをガイドし、また、第1側のワイヤが結束物の方向に移動することを規制するガイド位置と、ガイド位置から退避する退避位置との間で移動させるガイド部材移動機構を備え、ワイヤ送り部で逆方向にワイヤを送る動作を開始した後、ガイド部材移動機構ガイド部材をガイド位置から退避位置に移動させる結束機である。
また、本発明は、ワイヤを送るワイヤ送り部と、ワイヤ送り部で正方向に送られるワイヤに巻き癖をつけるカールガイドと、ワイヤ送り部で逆方向に送られて結束物に巻き付けられたワイヤを捩じる結束部とを備え、結束部は、ワイヤ送り部で正方向に送られ、カールガイドで巻き癖が付けられて結束物の周囲に巻き回されたワイヤの先端側を係止するワイヤ係止体を備え、結束物の周囲に巻き回され、先端を係止されたワイヤのうち、カールガイドに位置する第1側のワイヤより、結束物に対してカールガイドと反対側に位置する第2側のワイヤを、先に結束物の方向に引き寄せる引き寄せ手段を備え、引き寄せ手段は、第1側のワイヤが結束物の方向に移動することを規制するガイド部材をカールガイドに備えると共に、ガイド部材を、第1側のワイヤが結束物の方向に移動することを規制するガイド位置へ移動する方向へ付勢するガイド部材移動機構を備え、ガイド部材は、ワイヤ送り部で逆方向に送られるワイヤが接することで、ガイド部材をガイド位置から退避する退避位置へ移動させる力を生じさせる誘導部を備えた結束機である。
【0010】
本発明では、結束物の周囲に巻き回され、先端を係止されたワイヤのうち、結束物に対してカールガイドと反対側に位置する第2側のワイヤを、先に結束物の方向に引き寄せてから、カールガイドに位置する第1側のワイヤを結束物の方向に引き寄せる。
【発明の効果】
【0011】
結束物の周囲に巻き回され、先端を係止されたワイヤのうち、カールガイドに位置する第1側のワイヤは、ワイヤを逆方向に送る動作で、ワイヤが結束物と接することによる摩擦の影響が少ない。これにより、結束物に対してカールガイドと反対側に位置する第2側のワイヤを、先に結束物の方向に引き寄せてから、カールガイドに位置する第1側のワイヤを結束物の方向に引き寄せることで、ワイヤを確実に結束物に巻き付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】鉄筋結束機の全体構成の一例を示す側面から見た構成図である。
【
図3A】第1の実施の形態のガイド部材退避機構の一例を示す側面図である。
【
図3B】第1の実施の形態のガイド部材退避機構の動作例を示す下面断面図である。
【
図3C】第1の実施の形態のガイド部材退避機構の動作例を示す下面断面図である。
【
図3D】第1の実施の形態のガイド部材退避機構の動作例を示す正面断面図である。
【
図3E】第1の実施の形態のガイド部材退避機構の動作例を示す正面断面図である。
【
図4】鉄筋結束機の制御機能の一例を示すブロック図である。
【
図5A】鉄筋結束機で鉄筋を結束する動作の一例を示す動作説明図である。
【
図5B】鉄筋結束機で鉄筋を結束する動作の一例を示す動作説明図である。
【
図5C】鉄筋結束機で鉄筋を結束する動作の一例を示す動作説明図である。
【
図5D】鉄筋結束機で鉄筋を結束する動作の一例を示す動作説明図である。
【
図5E】鉄筋結束機で鉄筋を結束する動作の一例を示す動作説明図である。
【
図5F】鉄筋結束機で鉄筋を結束する動作の一例を示す動作説明図である。
【
図6A】第2の実施の形態のガイド部材退避機構の一例を示す側面図である。
【
図6B】第2の実施の形態のガイド部材退避機構の動作例を示す下面断面図である。
【
図6C】第2の実施の形態のガイド部材退避機構の動作例を示す下面断面図である。
【
図6D】第2の実施の形態のガイド部材退避機構の動作例を示す正面断面図である。
【
図6E】第2の実施の形態のガイド部材退避機構の動作例を示す正面断面図である。
【
図7A】第3の実施の形態のガイド部材退避機構の一例を示す側面図である。
【
図7B】第3の実施の形態のガイド部材退避機構の動作例を示す下面断面図である。
【
図7C】第3の実施の形態のガイド部材退避機構の動作例を示す正面断面図である。
【
図7D】第3の実施の形態のガイド部材退避機構の動作例を示す正面断面図である。
【
図7E】第3の実施の形態のガイド部材退避機構の動作例を示す正面断面図である。
【
図7F】第3の実施の形態のガイド部材退避機構の動作例を示す正面断面図である。
【
図8A】他の変形例のガイド部材の一例を示す側面図である。
【
図8B】他の変形例のガイド部材の動作例を示す正面断面図である。
【
図10】結束機の他の変形例を示す要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の結束機の実施の形態としての鉄筋結束機の一例について説明する。
【0014】
<鉄筋結束機の構成例>
図1は、鉄筋結束機の全体構成の一例を示す側面から見た構成図である。鉄筋結束機1Aは、作業者が手に持って使用する形態であり、本体部10Aとハンドル部11Aを備える。
【0015】
また、鉄筋結束機1Aは、ワイヤWを矢印Fで示す正方向に送り、結束物である鉄筋Sの周囲に巻き回し、鉄筋Sの周囲に巻き回されたワイヤWを、矢印Rで示す逆方向に送って鉄筋Sに巻き付けた後、ワイヤWを捩じり、鉄筋SをワイヤWで結束する。
【0016】
鉄筋結束機1Aは、上述した機能を実現するため、ワイヤWが収容されるマガジン2Aと、ワイヤWを送るワイヤ送り部3Aを備える。また、鉄筋結束機1Aは、ワイヤ送り部3Aで送られるワイヤWを鉄筋Sの周囲に巻き回す経路を構成するカール形成部5Aと、鉄筋Sに巻き付けられたワイヤWを切断する切断部6Aを備える。更に、鉄筋結束機1Aは、鉄筋Sに巻き付けられたワイヤWを捩じる結束部7Aと、結束部7Aを駆動する駆動部8Aを備える。
【0017】
マガジン2Aは、長尺状のワイヤWが繰り出し可能に巻かれたリール20が回転、着脱可能に収納される。ワイヤWは、塑性変形し得る金属線で構成されたワイヤ、金属線が樹脂で被覆されたワイヤ、あるいは撚り線のワイヤが使用される。リール20は、1本または複数本のワイヤWが図示しないハブ部に巻かれ、リール20から1本または同時に複数本のワイヤWを引き出せるようになっている。
【0018】
ワイヤ送り部3Aは、1本または並列された複数本のワイヤWを挟持して送る一対の送りギア30を備える。ワイヤ送り部3Aは、図示しない送りモータの回転動作が伝達されて送りギア30が回転する。これにより、ワイヤ送り部3Aは、一対の送りギア30の間に挟持したワイヤWを、ワイヤWの延在方向に沿って送る。複数本、例えば2本のワイヤWを送る構成では、2本のワイヤWが並列された状態で送られる。
【0019】
ワイヤ送り部3Aは、図示しない送りモータの回転方向の正逆を切り替えることで、送りギア30の回転方向が切り替えられ、ワイヤWの送り方向の正逆が切り替えられる。
【0020】
カール形成部5Aは、ワイヤ送り部30で送られるワイヤWに巻き癖をつける第1のガイド部の一例であるカールガイド50と、カールガイド50で巻き癖を付けられたワイヤWを結束部7Aに誘導する第2のガイド部の一例である誘導ガイド51を備える。鉄筋結束機1Aでは、ワイヤ送り部3Aで送られるワイヤWの経路がカール形成部5Aで規制されることで、ワイヤWの軌跡が
図1に破線で示すようなループRuとなり、ワイヤWが鉄筋Sの周囲に巻き回される。
【0021】
カール形成部5Aは、正方向に送られるワイヤWをガイドし、ワイヤWに巻き癖をつけるガイド部材53、53bを備える。ガイド部材53は、ワイヤ送り部3Aとの協働で所定の側からワイヤWを引き寄せる引き寄せ手段を構成する。ガイド部材53は、カールガイド50においてワイヤ送り部3Aで送られるワイヤWの導入部側に設けられ、ワイヤWにより形成されるループRuの径方向の内側に配置される。ガイド部材53は、ワイヤWがループRuの径方向の内側に入り込まないように、ワイヤWを規制する。
【0022】
ガイド部材53bは、カールガイド50においてワイヤ送り部3Aで送られるワイヤWの排出部側に設けられ、ワイヤWにより形成されるループRuの径方向の外側に配置される。
【0023】
カール形成部5Aは、ガイド部材53を退避させるガイド部材移動機構54Aを備える。ガイド部材移動機構54Aは、ワイヤ送り部3Aとの協働で所定の側からワイヤWを引き寄せる引き寄せ手段を構成し、ワイヤWが鉄筋Sに巻き回された後、結束部7Aの動作と連動して、ガイド部材53を退避させる。
【0024】
切断部6Aは、固定刃部60と、固定刃部60との協働でワイヤWを切断する可動刃部61と、結束部7Aの動作を可動刃部61に伝達する伝達機構62を備える。切断部6Aは、固定刃部60を支点軸とした可動刃部61の回転動作でワイヤWを切断する。伝達機構62は、結束部7Aの動作を、移動部材83を介して可動刃部61に伝達し、結束部7Aの動作と連動して可動刃部61を回転させ、ワイヤWを切断する。
【0025】
結束部7Aは、ワイヤWが係止されるワイヤ係止体70を備える。結束部7Aの詳細な実施形態は後述する。駆動部8Aは、モータ80と、減速及びトルクの増幅を行う減速機81を備える。
【0026】
鉄筋結束機1Aは、ワイヤ係止体70で係止されるワイヤWの送り経路に、ワイヤWの先端が突き当てられる送り規制部90を備える。また、鉄筋結束機1Aは、上述したカール形成部5Aのカールガイド50と誘導ガイド51が、本体部10Aの前側の端部に設けられる。更に、鉄筋結束機1Aは、鉄筋Sが突き当てられる突き当て部91が、本体部10Aの前側の端部で、カールガイド50と誘導ガイド51との間に設けられる。
【0027】
また、鉄筋結束機1Aは、ハンドル部11Aが本体部10Aから下方向に延在する。更に、ハンドル部11Aの下部にバッテリ15Aが着脱可能に取り付けられる。また、鉄筋結束機1Aは、マガジン2Aがハンドル部11Aの前方に設けられる。鉄筋結束機1Aは、上述したワイヤ送り部3A、切断部6A、結束部7A,結束部7Aを駆動する駆動部8A等が本体部10Aに収納される。
【0028】
鉄筋結束機1Aは、ハンドル部11Aの前側にトリガ12Aが設けられ、ハンドル部11Aの内部にスイッチ13Aが設けられる。また、本体部10Aに制御部を構成する回路が実装された基板100が設けられる。
【0029】
図2Aは、結束部の一例を示す斜視図、
図2B、
図2Cは、結束部の一例を示す断面平面図であり、次に、各図を参照して、結束部の構成について説明する。
【0030】
結束部7Aは、ワイヤWが係止されるワイヤ係止体70と、ワイヤ係止体70を作動させる回転軸72を備える。結束部7Aと駆動部8Aは、回転軸72とモータ80が減速機81を介して連結され、回転軸72が、減速機81を介してモータ80に駆動される。
【0031】
ワイヤ係止体70は、回転軸72と連結されるセンターフック70Cと、センターフック70Cに対して開閉する第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lと、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lを作動させると共に、ワイヤWを所望の形状に成形するスリーブ71とを備える。
【0032】
結束部7Aにおいて、センターフック70C及び第1のサイドフック70R、第2のサイドフック70Lが設けられた側を前側、回転軸72が減速機81と連結される側を後側とする。
【0033】
センターフック70Cは、回転軸72の一方の端部である前端に、回転軸72に対して回転可能、かつ、回転軸72と一体的に軸方向への移動が可能な構成を介して連結される。
【0034】
第1のサイドフック70Rは、回転軸72の軸方向に沿った一方の端部である先端側が、センターフック70Cに対して一方の側部に位置する。また、第1のサイドフック70Rは、回転軸72の軸方向に沿った他方の端部である後端側が、センターフック70Cに軸71bで回転可能に支持される。
【0035】
第2のサイドフック70Lは、回転軸72の軸方向に沿った一方の端部である先端側が、センターフック70Cに対して他方の側部に位置する。また、第2のサイドフック70Lは、回転軸72の軸方向に沿った他方の端部である後端側が、センターフック70Cに軸71bで回転可能に支持される。
【0036】
これにより、ワイヤ係止体70は、軸71bを支点とした回転動作で、第1のサイドフック70Rの先端側がセンターフック70Cに対して離接する方向に開閉する。また、第2のサイドフック70Lの先端側がセンターフック70Cに対して離接する方向に開閉する。
【0037】
回転軸72は、減速機81と一体的に回転可能、かつ、減速機81に対して軸方向に移動可能とする構成を有した連結部72bを介して、他方の端部である後端が減速機81に連結される。連結部72bは、回転軸72を減速機81に近づく方向である後方へ付勢するバネ72cを備える。これにより、回転軸72は、バネ72cにより後方へ引っ張られる力を受けながら、減速機81から離れる方向である前方へ移動可能に構成される。
【0038】
スリーブ71は、支持枠76により回転及び軸方向に摺動可能に支持される。支持枠76は、環状の部材であり、周方向に回転不可及び軸方向に移動不可となる形態で、本体部10Aに取り付けられる。
【0039】
スリーブ71は、回転軸72が挿入される空間の内周面に突出する図示しない凸部を有し、この凸部が、回転軸72の外周に軸方向に沿って形成された送りネジ72aの溝部に入る。スリーブ71は、回転軸72が回転すると、図示しない凸部と回転軸72の送りネジ72aの作用により、回転軸72の軸方向に沿った方向である前後方向へ、回転軸72の回転方向に応じて移動する。また、スリーブ71は、回転軸72と一体的に回転する。
【0040】
スリーブ71は、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lを開閉する開閉ピン71aを備える。
【0041】
開閉ピン71aは、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lに設けられた開閉ガイド孔73に挿入される。開閉ガイド孔73は、スリーブ71の移動方向に沿って延在し、スリーブ71と連動して移動する開閉ピン71aの直線方向の動きを、軸71bを支点とした第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lの回転による開閉動作に変換する形状を有する。
【0042】
ワイヤ係止体70は、スリーブ71が矢印A2で示す後方向に移動することで、開閉ピン71aの軌跡と開閉ガイド孔73の形状により、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lが、軸71bを支点とした回転動作でセンターフック70Cから離れる方向に移動する。
【0043】
これにより、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lが、センターフック70Cに対して開き、第1のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間、第2のサイドフック70Lとセンターフック材70Cとの間に、ワイヤWが通る送り経路が形成される。
【0044】
第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lが、センターフック70Cに対して開いた状態では、ワイヤ送り部3Aで送られるワイヤWは、センターフック70Cと第1のサイドフック70Rの間を通る。センターフック70Cと第1のサイドフック70Rとの間を通るワイヤWは、カール形成部5Aに誘導される。そして、カール形成部5Aで巻き癖が付けられ、結束部7Aに誘導されたワイヤWは、センターフック70Cと第2のサイドフック70Lの間を通る。
【0045】
ワイヤ係止体70は、スリーブ71が矢印A1で示す前方向に移動することで、開閉ピン71aの軌跡と開閉ガイド孔73の形状により、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lが、軸71bを支点とした回転動作でセンターフック70Cに近づく方向に移動する。これにより、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lが、センターフック70Cに対して閉じる。
【0046】
第1のサイドフック70Rがセンターフック70Cに対して閉じると、第1のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間に挟まれたワイヤWが、第1のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間を移動することが可能な形態で係止される。また、第2のサイドフック70Lがセンターフック70Cに対して閉じると、第2のサイドフック70Lとセンターフック70Cとの間に挟まれたワイヤWが、第2のサイドフック70Lとセンターフック70Cとの間から抜けない形態で係止される。
【0047】
スリーブ71は、ワイヤWの一方の端部である先端側を所定の方向に押して曲げることで、ワイヤWを所定の形状に成形する曲げ部71c1と、切断部6Aで切断されたワイヤWの他方の端部である終端側を所定の方向に押して曲げることで、ワイヤWを所定の形状に成形する曲げ部71c2を備える。
【0048】
スリーブ71は、矢印A1で示す前方向に移動することで、センターフック70Cと第2のサイドフック70Lで係止されたワイヤWの先端側を曲げ部71c1で押して、鉄筋S側へ曲げる。また、スリーブ71は、矢印A1で示す前方向に移動することで、センターフック70Cと第1のサイドフック70Rで係止され、切断部6Aで切断されたワイヤWの終端側を曲げ部71c2で押して、鉄筋S側へ曲げる。
【0049】
結束部7Aは、回転軸72の回転動作と連動したワイヤ係止体70及びスリーブ71の回転を規制する回転規制部74を備える。回転規制部74は、スリーブ71に回転規制羽根74aが設けられ、本体部10Aに回転規制爪74bが設けられる。
【0050】
回転規制羽根74aは、スリーブ71の外周から径方向に突出する複数の凸部を、スリーブ71の周方向に所定の間隔で設けて構成される。回転規制羽根74aは、スリーブ71に固定され、スリーブ71と一体的に移動、回転する。
【0051】
回転規制爪74bは、回転規制羽根74aが通過可能な間隔で対向する一対の爪部として第1の爪部74b1及び第2の爪部74b2を備える。第1の爪部74b1及び第2の爪部74b2は、回転規制羽根74aの回転方向に応じて回転規制羽根74aに押されることで、回転規制羽根74aの軌跡上から退避可能に構成される。
【0052】
回転規制部74は、回転規制羽根74aが回転規制爪74bに係止されると、回転軸72の回転に連動したスリーブ71の回転が規制され、回転軸72の回転動作でスリーブ71が前後方向へ移動する。また、回転規制羽根74aの回転規制爪74bとの係止が解除されると、回転軸72の回転に連動してスリーブ71が回転する。
【0053】
図3Aは、第1の実施の形態のガイド部材移動機構の一例を示す側面図、
図3B、
図3Cは、第1の実施の形態のガイド部材移動機構の動作例を示す下面断面図、
図3D、
図3Eは、第1の実施の形態のガイド部材移動機構の動作例を示す正面断面図であり、次に、各図を参照して、第1の実施の形態のガイド部材移動機構の一例について説明する。なお、
図3B、
図3Cは、
図3AのA-A断面を示し、
図3D、
図3Eは、
図3AのB-B断面を示す。
【0054】
第1の実施の形態のガイド部材移動機構54Aは、ガイド部材53が取り付けられるガイド部材支持部55Aと、ガイド部材支持部55Aを作動させるガイド部材作動部56Aを備える、
【0055】
ガイド部材支持部55Aは、
図2B、
図2C等に示す回転軸72の軸方向に延伸する形態で、一方の端部にガイド部材53を備える。ガイド部材53は、本例では円柱状のピンであり、ガイド部材支持部55Aから側方に向けて突出する。また、ガイド部材支持部55Aは、一方の端部側と他方の端部側の間の部位が、軸55Gにより回転可能に支持される。軸55Gの延伸する方向である軸方向は、ガイド部材53の延伸方向と直交する上下方向である。更に、ガイド部材支持部55Aは、ガイド部材作動部56Aに押されることで、軸55Gを支点とした回転動作の規制及び規制の解除を行う被作用部55Hを、他方の端部側に備える。
【0056】
ガイド部材53は、軸55Gを支点としたガイド部材支持部55Aの回転動作で、カールガイド50におけるワイヤWの送り経路に突出し、ワイヤWに巻き癖をつけるガイド位置と、カールガイド50におけるワイヤWの送り経路から側方に退避する退位位置との間を移動する。
【0057】
ガイド部材作動部56Aは、回転軸72の軸方向に延伸する形態で、一方の端部側と他方の端部側の間が、回転軸72の軸方向であるスリーブ71の移動方向に沿って移動可能に、ガイド凸部56Fで支持される。ガイド部材作動部56Aは、回転軸72の回転で移動するスリーブ71と連動して、回転軸72の軸方向である前後方向に移動する。また、ガイド部材作動部56Aは、ガイド部材支持部55Aの被作用部55Hを押す作用部56Hを一方の端部側に備える。更に、ガイド部材作動部56Aは、スリーブ71と係合する係合部56Gを他方の端部側に備える。
【0058】
ガイド部材移動機構54Aは、ガイド部材53が退避位置へ移動する方向へガイド部材55Aを付勢するバネ57Aを備える。
【0059】
ガイド部材移動機構54Aは、
図3Bに示すように、ガイド部材作動部56Aの作用部56Hがガイド部材支持部55Aの被作用部55Hを押す位置にガイド部材作動部56Aが移動すると、軸55Gを支点としたガイド部材支持部55Aの回転が規制される。これにより、
図3B,
図3Dに示すように、ガイド部材53がガイド位置に移動する。
【0060】
これに対し、ガイド部材移動機構54Aは、
図3Cに示すように、ガイド部材作動部56Aの作用部56Hがガイド部材支持部55Aの被作用部55Hから離れる位置にガイド部材作動部56Aが移動すると、軸55Gを支点としたガイド部材支持部55Aの回転の規制が解除される。これにより、
図3C、
図3Eに示すように、ガイド部材支持部55Aがバネ57Aに付勢されて回転し、ガイド部材53がガイド位置から退避位置に移動する。
【0061】
次に、スリーブ71の動作と、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70L。ガイド部材53及び可動刃部61の動作の連動について説明する。
【0062】
スリーブ71が回転軸72の軸方向に沿って非回転で前後方向へ移動する動作域では、スリーブ71の移動と連動して、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lが開閉する。また、ガイド部材53がワイヤWのガイド位置と退避位置との間で移動する。更に、可動刃部61が退避位置と切断位置との間で移動する。
【0063】
スリーブ71が回転軸82の軸方向に沿って非回転で前後方向へ移動する動作域の中で、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lを開閉する動作域を第1の動作域と称す。また、ガイド部材53をワイヤWのガイド位置と退避位置との間で移動させる動作域を第2の動作域と称す。更に、可動刃部61を退避位置と切断位置との間で移動させる動作域を第3の動作域と称す。
【0064】
スリーブ71が第1の動作域の始点位置から第1の動作域の終点位置に向けて移動すると、
図2Cに示すように、第1のサイドフック70Rがセンターフック70Cに対して閉じ、第2のサイドフック70Lがセンターフック70Cに対して閉じる。
【0065】
スリーブ71が第1の動作域を移動する間、
図3Bに示すように、ガイド部材作動部56Aの作用部56Hがガイド部材支持部55Aの被作用部55Hを押す位置にガイド部材作動部56Aが移動している。これにより、軸55Gを支点としたガイド部材支持部55Aの回転が規制され、
図3B,
図3Dに示すように、ガイド部材53がガイド位置に移動した状態となる。
【0066】
また、スリーブ71が第1の動作域の終点位置である第2の動作域の始点位置から第2の動作域の終点位置に向けて移動すると、
図3Cに示すように、ガイド部材作動部56Aの作用部56Hがガイド部材支持部55Aの被作用部55Hから離れる位置にガイド部材作動部56Aが移動し、軸55Gを支点としたガイド部材支持部55Aの回転の規制が解除される。これにより、
図3C、
図3Eに示すように、ガイド部材支持部55Aがバネ57Aに付勢されて回転し、ガイド部材53がガイド位置から退避位置に移動する。
【0067】
よって、スリーブ71が第1の動作域の終点位置まで移動すると、ワイヤ係止体70でワイヤWが係止される。また、スリーブ71が第2の動作域の終点位置まで移動すると、ガイド部材53がワイヤWのガイド位置から退避位置に移動する。更に、スリーブ71が第3の動作域の終点位置まで移動すると、可動刃部61が退避位置から切断位置に移動する。
【0068】
そして、スリーブ71が第3の動作域の終点位置まで移動すると、回転規制羽根74aの回転規制爪74bとの係止が解除される。回転規制羽根74aの回転規制爪74bとの係止が解除されると、回転軸72の回転に連動してスリーブ71が回転する。ワイヤ係止体70は、スリーブ71の回転と連動して、ワイヤWを係止したセンターフック70C、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lが回転する。
【0069】
図4は、鉄筋結束機の制御機能の一例を示すブロック図である。鉄筋結束機1Aは、
図1に示すトリガ12Aの操作で押されるスイッチ13Aの状態に応じて、制御部14Aがモータ80及び送りギア30を駆動する送りモータ31を制御する。制御部14Aは、モータ80の回転量を制御することで、スリーブ71の位置を制御する。また、制御部14Aは、送りモータ31の正転及び逆転を制御する。
【0070】
制御部14Aは、モータ80の回転量を制御することにより、スリーブ71を第1の動作域の終点位置に移動させる動作で、ワイヤ係止部70でワイヤWを係止する。また、制御部14Aは、スリーブ71を第2の動作域の終点位置に移動させる動作で、ガイド部材53をガイド位置から退避位置へ移動させる。更に、制御部14Aは、スリーブ71を第3の動作域の終点位置に移動させる動作で、ワイヤWを切断する。
【0071】
そして、制御部14Aは、ワイヤ係止部70でワイヤWを係止した後、ガイド部材53をワイヤWのガイド位置から退避位置に移動させる動作に、送りモータ31を逆転させることによりワイヤWを逆方向に送る動作を連動させて、鉄筋SにワイヤWを巻き付ける。
【0072】
<鉄筋結束機の動作例>
図5A~
図5Fは、鉄筋結束機で鉄筋を結束する動作の一例を示す動作説明図で、次に、各図を参照して、鉄筋結束機1Aにより鉄筋SをワイヤWで結束する動作について説明する。
【0073】
鉄筋結束機1Aは、ワイヤWが一対の送りギア30の間に挟持され、このワイヤWの先端が、送りギア30の挟持位置と、切断部6Aの固定刃部60との間に位置した状態が待機状態となる。また、鉄筋結束機1Aは、待機状態では、
図2A、
図2Bに示すように、第1のサイドフック70Rがセンターフック70Cに対して開き、第2のサイドフック70Lがセンターフック70Cに対して開いた状態である。
【0074】
鉄筋Sがカール形成部5Aのカールガイド50と誘導ガイド51との間に入れられ、トリガ12Aが操作されると、制御部14Aは、送りモータ31を正回転方向に駆動し、ワイヤ送り部3AでワイヤWを矢印Fで示す正方向に送る。
【0075】
複数本、例えば2本のワイヤWを送る構成の場合、図示しないワイヤガイドにより、2本のワイヤWが当該ワイヤWにより形成されるループRuの軸方向に沿って並列された状態で送られる。
【0076】
正方向に送られるワイヤWは、センターフック70Cと第1のサイドフック70Rの間を通り、カール形成部5Aのカールガイド50に送られる。ワイヤWは、カールガイド50を通ることで、鉄筋Sの周囲に巻き回される巻き癖が付けられる。
【0077】
カールガイド50で巻き癖が付けられたワイヤWは、
図5Aに示すように誘導ガイド51に誘導され、更にワイヤ送り部3Aで正方向に送られることで、誘導ガイド51によりセンターフック70Cと第2のサイドフック70Lの間に誘導される。そして、ワイヤWは、
図5Bに示すように、先端が送り規制部90に突き当てられるまで送られる。ワイヤWの先端が送り規制部90に突き当てられる位置まで送られると、制御部14Aは、送りモータ31の駆動を停止する。
【0078】
ワイヤWの正方向への送りを停止した後、制御部14Aは、モータ80を正回転方向に駆動する。スリーブ71は、ワイヤ係止体70でワイヤWを係止する第1の動作域では、回転規制羽根74aが回転規制爪74bに係止されることで、回転軸72の回転に連動したスリーブ71の回転が規制される。これにより、スリーブ71は、モータ80の回転が直線移動に変換され、前方向である矢印A1方向に移動する。
【0079】
スリーブ71が前方向に移動すると、開閉ピン71aが開閉ガイド孔73を通過する。これにより、
図2Cに示すように、第1のサイドフック70Rは、軸71bを支点とした回転動作で、センターフック70Cに近づく方向に移動する。第1のサイドフック70Rがセンターフック70Cに対して閉じると、第1のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間に挟まれたワイヤWが、第1のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間を移動することが可能な形態で係止される。
【0080】
また、第2のサイドフック70Lは、軸71bを支点とした回転動作で、センターフック70Cに近づく方向に移動する。第2のサイドフック70Lがセンターフック70Cに対して閉じると、第2のサイドフック70Lとセンターフック70Cとの間に挟まれたワイヤWが、第2のサイドフック70Lとセンターフック70Cとの間から抜けない形態で係止される。
【0081】
第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lが閉じる動作でワイヤWを係止する第1の動作域の終点位置までスリーブ71を前進させた後、制御部14Aは、モータ80の回転を一時停止し、送りモータ31を逆回転方向に駆動する。これにより、一対の送りギア30が逆転する。
【0082】
よって、一対の送りギア30の間に挟持されたワイヤWが、矢印Rで示す逆方向に送られる。
【0083】
鉄筋Sの周囲に巻き回され、ワイヤ係止体70で係止されたワイヤWは、第2のサイドフック70Lとセンターフック70Cの間に挟まれた先端側の部位が、第2のサイドフック70Lとセンターフック70Cとの間から抜けない形態で係止される。また、ワイヤ係止体70で係止されたワイヤWは、第1のサイドフック70Rとセンターフック70Cの間に挟まれた部位が、第1のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間をワイヤWの送り経路に沿ったループRuの周方向に移動することが可能な形態、かつ、ワイヤWのループRuの径方向への移動は規制された形態で係止される。
【0084】
カールガイド50及び誘導ガイド51に沿って鉄筋Sの周囲に巻き回され、先端をワイヤ係止体70で係止されたワイヤWは、カールガイド50に位置する第1側のワイヤであるカールガイド50に沿った部位のワイヤW1より、鉄筋Sに対してカールガイド50と反対側に位置する第2側のワイヤである誘導ガイド51に沿った部位のワイヤW2の方が、第2のサイドフック70Lとセンターフック70CとによるワイヤWの係止位置に近い。一方、鉄筋Sの周囲に巻き回されたワイヤWは、ワイヤWの送り経路に沿った方向において、カールガイド50に沿った部位のワイヤW1の方が、誘導ガイド51に沿った部位のワイヤW2より、ワイヤ送り部3Aに近い。
【0085】
これにより、鉄筋Sの周囲に巻き回されたワイヤWは、ワイヤWを矢印Rで示す逆方向に送る動作で、まず、カールガイド50に沿った部位のワイヤW1が、ワイヤ送り部3Aの方向へ引っ張られることで、カールガイド50に沿った部位のワイヤW1から鉄筋Sに近づく方向へ移動する。
【0086】
さて、スリーブ71の移動と連動して開閉するガイド部材53は、スリーブ71が第1の動作域の終点位置にある場合、ワイヤWのガイド位置から退避しておらず、
図3B、
図3Dに示すように、鉄筋Sの周囲に巻き回されるワイヤWのループRuの径方向の内側に突出している。
【0087】
これにより、
図5Cに示すように、ワイヤWを矢印Rで示す逆方向に送る動作で、カールガイド50に沿った部位のワイヤW1は、ガイド部材53から内側に入ることができない。この状態で、ワイヤWを逆方向に送ることで、誘導ガイド51に沿った部位のワイヤW2は、カールガイド50側に引っ張られる形態となり、誘導ガイド51に沿った部位のワイヤW2が鉄筋Sに近づく。
【0088】
ワイヤWが所定量引き戻され、誘導ガイド51に沿った側のワイヤW2が鉄筋Sに接するまで送りモータ31を逆回転させると、制御部14Aは、送りモータ31の逆回転方向の駆動を停止させる。ワイヤWの逆方向への送りを停止するタイミングは、送りモータ31の逆回転方向の駆動を開始してからの時間の経過、送りモータ31の回転量等で検出されるワイヤWの送り量、送りモータ31に掛かる負荷等で検出されるワイヤWに掛かる負荷の何れか、または、これらの組み合わせに基づき、制御部14Aが判断する。
【0089】
送りモータ31の逆回転方向の駆動を停止させた後、送りモータ31を正回転方向に駆動することで、
図5Dに示すように、カールガイド50側のワイヤW1を弛ませて、ガイド部材53がワイヤWによって押圧されている場合にこれを解消する。
【0090】
カールガイド50側のワイヤW1が所定量弛むまで送りモータ31を正回転させると、制御部14Aは、送りモータ31の正回転方向の駆動を停止した後、モータ80を正回転方向に駆動することで、
図5Eに示すように、ガイド部材53をガイド位置から退避位置に移動させる第2の動作域の終点位置まで、スリーブ71を矢印A1で示す前方向に移動させる。
【0091】
スリーブ71が第2の動作域の終点位置まで矢印A1で示す前方向に移動すると、
図3C、
図3Eに示すように、ガイド部材53がワイヤWのガイド位置から退避する。ガイド部材53を退避させる動作の前に、カールガイド50側のワイヤWを弛ませて、ガイド部材53がワイヤWによって押圧されている場合にこれを解消する。そうすることで、ガイド部材53に対してワイヤWによる負荷が掛かることが抑制され、ガイド部材53の退避位置への移動が確実に行われる。
【0092】
スリーブ71が第2の動作域の終点位置に移動するまでモータ80を正回転させると、制御部14Aは、モータ80の正回転方向の駆動を停止した後、送りモータ31を逆回転方向に駆動することで、ワイヤWを矢印Rで示す逆方向に送る。
【0093】
スリーブ71の移動と連動して開閉するガイド部材53は、スリーブ71が第2の動作域の終点位置に移動すると、上述したようにワイヤWのガイド位置から退避位置に移動する。よって、鉄筋Sの周囲に巻き回されるワイヤWのループRuの径方向の内側に向けてのワイヤWの移動を阻害する突出物は存在しない。
【0094】
これにより、
図5Fに示すように、ワイヤWを逆方向に送る動作で、カールガイド50に沿った側のワイヤW1が、ワイヤ送り部3Aの方向へ引っ張られることで、鉄筋Sに近づく方向へ移動し、ワイヤWが鉄筋Sに巻き付けられる。
【0095】
ワイヤWを鉄筋Sに巻き付ける位置までワイヤWを引き戻すと、制御部14Aは、送りモータ31の逆回転方向の駆動を停止した後、モータ80を正回転方向に駆動することで、スリーブ71を矢印A1で示す前方向に移動させる。スリーブ71が前方向に移動する動作が伝達機構62で切断部6Aに伝達されることで可動刃部61が回転し、スリーブ71が第3の動作域の終点位置まで移動すると、第1のサイドフック70Rとセンターフック70Cで係止されたワイヤWが、固定刃部60と可動刃部61の動作で切断される。
【0096】
ワイヤWを切断するとほぼ同時に曲げ部71c1、71c2が鉄筋Sに接近する方向へ移動する。これにより、センターフック70Cと第2のサイドフック70Lで係止されたワイヤWの先端側を、曲げ部71c1で鉄筋S側へ押圧して、係止位置を支点として鉄筋S側へ曲げる。スリーブ71が更に前方向に移動することで、第2のサイドフック70Lとセンターフック70Cとの間で係止されたワイヤWが、曲げ部71c1で挟まれた状態で保持される。
【0097】
また、センターフック70Cと第1のサイドフック70Rで係止され、切断部6Aで切断されたワイヤWの終端側を、曲げ部71c2で鉄筋S側へ押圧して、係止位置を支点として鉄筋S側へ曲げる。スリーブ71が更に前方向に移動することで、第1のサイドフック70Rとセンターフックとの間で係止されたワイヤWが、曲げ部71c2で挟まれた状態で保持される。
【0098】
ワイヤWの先端側及び終端側を鉄筋S側に折り曲げた後、モータ80が更に正回転方向に駆動されることで、スリーブ71が更に前方向に移動する。スリーブ71が所定の位置まで移動することで、ワイヤ係止体70で係止したワイヤWを捩じる動作域に到達すると、回転規制羽根74aの回転規制爪74bとの係止が解除される。
【0099】
これにより、モータ80が更に正回転方向に駆動されることで、回転軸72と連動してワイヤ係止体70が回転し、ワイヤWを捩じる。
【0100】
結束部7Aは、スリーブ71が回転する動作域では、鉄筋Sが突き当て部91に突き当てられ、鉄筋Sが結束部7A方向に近づく方向である後方への移動が規制されるので、ワイヤWが捩じられることで、ワイヤ係止体70を回転軸72の軸方向に沿って前方に引っ張られる力が加わる。
【0101】
回転軸72は、軸方向に沿って前方に移動させる力がワイヤ係止体70に加わると、バネ72cにより後方へ押される力を受けながら前方へ移動可能に構成される。これにより、結束部7Aは、スリーブ71が回転する動作域では、ワイヤ係止体70及び回転軸72が前方に移動しながらワイヤWを捩じる。
【0102】
制御部14Aは、モータ80に掛かる負荷を検知し、モータに掛かる負荷が所定値、例えば負荷が最大となったことを検知すると、所定のタイミングでモータ80の正方向の回転を停止させる。
【0103】
次に、制御部14Aは、モータ80を逆回転させる。モータ80が逆回転方向に駆動されると、回転規制羽根74aが回転規制爪74bに係止されていることで、回転軸72の回転に連動したスリーブ71の回転が規制され、スリーブ71は、後方向である矢印A2方向に移動する。
【0104】
スリーブ71が後方向に移動すると、曲げ部71c1、71c2がワイヤWから離れ、曲げ部71c1、71c2によるワイヤWの保持が解消される。また、スリーブ71が後方向に移動すると、開閉ピン71aが開閉ガイド孔73を通過する。これにより、第1のサイドフック70Rは、軸71bを支点とした回転動作で、センターフック70Cから離れる方向に移動する。また、第2のサイドフック70Lは、軸71bを支点とした回転動作で、センターフック70Cから離れる方向に移動する。これにより、ワイヤ係止体70からワイヤWが抜ける。
【0105】
<鉄筋結束機の作用効果例>
従来の結束機では、カールガイド50及び誘導ガイド51に沿って鉄筋Sの周囲にワイヤWを巻き回した状態で、このワイヤWをワイヤ係止体70で係止した後、ワイヤWのガイド位置から退避位置にガイド部材53を移動させた状態でワイヤWを逆方向に送っていた。
【0106】
この場合、カールガイド50及び誘導ガイド51に沿って鉄筋Sの周囲に巻き回されたワイヤWの送り経路に沿った方向において、ワイヤ送り部3Aに近いカールガイド50に沿った部位のワイヤW1から、鉄筋Sに近づく方向へ移動する。カールガイド50に沿った部位のワイヤW1が鉄筋Sに接する位置まで移動すると、ワイヤWと鉄筋Sとの間の摩擦により、ワイヤWを逆方向に送る負荷が大きくなる。このため、鉄筋Sに対してカールガイド50と反対側に位置する誘導ガイド51に沿った部位のワイヤW2を十分に引き戻すことができなくなり、ワイヤWを鉄筋Sに巻き付けることができない可能性があった。
【0107】
これに対し、本実施の形態の結束機1Aでは、上述したように、カールガイド50及び誘導ガイド51に沿って鉄筋Sの周囲にワイヤWを巻き回した状態で、このワイヤWをワイヤ係止体70で係止した後、ワイヤWのガイド位置にガイド部材53を突出させた状態でワイヤWを逆方向に送る。
【0108】
これにより、鉄筋Sの周囲に巻き回され、ワイヤ係止体70で係止されたワイヤWにおいて、ワイヤWの送り経路に沿ったループRuの周方向に移動可能なワイヤ送り部3Aに近い部位のワイヤ、すなわち、カールガイド50に沿った部位のワイヤW1が、鉄筋Sに近づく方向へ移動することをガイド部材53で規制した状態となる。この状態で、まず、ワイヤ係止体70で係止されることでワイヤWの送り経路に沿ったループRuの周方向に非移動なワイヤWの先端側に近い部位のワイヤ、すなわち、鉄筋Sに対してカールガイド50と反対側に位置するワイヤである誘導ガイド51に沿った部位のワイヤW2を、鉄筋Sに近づく方向に移動させて、誘導ガイド51に沿った部位のワイヤW2が鉄筋Sに接するようにする。その後、ワイヤWのガイド位置から退位位置へガイド部材53を移動させた状態でワイヤWを更に逆方向に送ることにより、
図5Fに示すように、カールガイド50に沿った部位のワイヤW1を、鉄筋Sに近づく方向に移動させて、カールガイド50に沿った部位のワイヤW1が鉄筋Sに接するようにすることで、確実にワイヤWを鉄筋Sに巻き付けることができる。
【0109】
<鉄筋結束機の変形例>
図6Aは、第2の実施の形態のガイド部材移動機構の一例を示す側面図、
図6B、
図6Cは、第2の実施の形態のガイド部材移動機構の動作例を示す下面断面図、
図6D、
図6Eは、第2の実施の形態のガイド部材移動機構の動作例を示す正面断面図であり、次に、各図を参照して、第2の実施の形態のガイド部材移動機構の一例について説明する。なお、
図6B、
図6Cは、
図6AのC-C断面を示し、
図6D、
図6Eは、
図6AのD-D断面を示す。
【0110】
上述した第1の実施の形態のガイド部材移動機構54Aは、バネの力でガイド部材53を退避位置へ移動させる構成であるのに対し、第2の実施の形態のガイド部材移動機構54Bは、バネの力でガイド部材53をガイド位置に移動させる構成である。
【0111】
第2の実施の形態のガイド部材移動機構54Bは、ガイド部材53が取り付けられるガイド部材支持部55Bと、ガイド部材支持部55Bを作動させるガイド部材作動部56Bを備える。
【0112】
ガイド部材支持部55Bは、
図2B、
図2C等に示す回転軸72の軸方向に延伸する形態で、一方の端部にガイド部材53を備える。ガイド部材53は、例えば直方体形状で、ガイド部材支持部55Bから側方に向けて突出する。また、ガイド部材支持部55Bは、一方の端部側と他方の端部側の間の部位が、軸55Gにより回転可能に支持される。軸55Gの延伸する方向である軸方向は、ガイド部材53の延伸方向と直交する上下方向である。更に、ガイド部材支持部55Bは、ガイド部材作動部56Bに押されることで、軸55Gを支点とした回転動作及び回転動作の解除を行う被作用部55Jを、他方の端部側に備える。
【0113】
ガイド部材53は、軸55Gを支点としたガイド部材支持部55Bの回転動作で、カールガイド50におけるワイヤWの送り経路に突出し、ワイヤWに巻き癖をつけるガイド位置と、カールガイド50におけるワイヤWの送り経路から側方に退避する退位位置との間を移動する。
【0114】
ガイド部材作動部56Bは、回転軸72の軸方向に延伸する形態で、一方の端部側と他方の端部側の間が、回転軸72の軸方向であるスリーブ71の移動方向に沿って移動可能に、ガイド凸部56Fで支持される。ガイド部材作動部56Bは、回転軸72の回転で移動するスリーブ71と連動して、回転軸72の軸方向である前後方向に移動する。また、ガイド部材作動部56Bは、ガイド部材支持部55Bの被作用部55Jを押す作用部56Jを一方の端部側に備える。更に、ガイド部材作動部56Bは、スリーブ71と係合する係合部56Gを他方の端部側に備える。
【0115】
ガイド部材移動機構54Bは、ガイド部材53がガイド位置へ移動する方向へガイド部材55Aを付勢するバネ57Bを備える。バネ57Bは、ねじりコイルバネで構成され、軸55Gに取り付けられる。
【0116】
ガイド部材移動機構54Bは、
図6Bに示すように、ガイド部材作動部56Bの作用部56Jがガイド部材支持部55Bの被作用部55Jから離れる位置にガイド部材作動部56Bが移動すると、軸55Gを支点としたガイド部材支持部55Bの回転の規制が解除される。これにより、
図6B,
図6Dに示すように、ガイド部材53がバネ57Bに付勢されてガイド位置に移動する。
【0117】
これに対し、ガイド部材移動機構54Bは、
図6Cに示すように、ガイド部材作動部56Bの作用部56Jがガイド部材支持部55Bの被作用部55Jを押す位置にガイド部材作動部56Bが移動すると、ガイド部材支持部55Bがガイド部材作動部56Bに押されて回転し、バネ57Bによるガイド部材支持部55Bの回転が規制されて、
図6C、
図6Eに示すように、ガイド部材53がガイド位置から退避位置に移動する。
【0118】
図7Aは、第3の実施の形態のガイド部材移動機構の一例を示す側面図、
図7Bは、第3の実施の形態のガイド部材移動機構の動作例を示す下面断面図、
図7C~
図7Fは、第3の実施の形態のガイド部材移動機構の動作例を示す正面断面図であり、次に、各図を参照して、第3の実施の形態のガイド部材移動機構の一例について説明する。なお、
図7Bは、
図7AのE-E断面を示し、
図7C、
図7Eは、
図7AのF-F断面を示し、
図7D、
図7Fは、
図7AのG-G断面を示す。
【0119】
第3の実施の形態のガイド部材移動機構54Cは、ワイヤWに巻き癖をつけるガイド部材53に加え、ワイヤWの引き戻し時にワイヤWの移動を規制するガイド部材53Cを備える。ガイド部材53Cは、ワイヤ送り部3Aとの協働で所定の側からワイヤWを引き寄せる引き寄せ手段を構成し、ガイド部材53Cを、スリーブ71と独立して動作可能としたものである。なお、ガイド部材53を移動させるガイド部材移動機構54Aについては、
図3A~
図3Eで説明した構成と同じで良い。
【0120】
第3の実施の形態のガイド部材移動機構54Cは、ワイヤWの引き戻し時にワイヤWの移動を規制するガイド位置へ移動する方向へガイド部材53Cを付勢するバネ57Cを備える。ガイド部材53Cは、ワイヤWが接する先端側が例えばテーパ状に構成されて、ガイド位置から退避位置へ移動する力を生じさせる誘導部53Gを備える。ガイド部材53Cは、ワイヤWの引き戻し時にワイヤWが誘導部53Gに接すると、ガイド部材53Cをガイド位置から退避位置へ移動させる方向に押す力が生じる。
【0121】
ガイド部材53を移動せせるガイド部材54Aの動作は上述した通りで、
図7Bに示すように、ガイド部材作動部56Aの作用部56Hがガイド部材支持部55Aの被作用部55Hを押す位置にガイド部材作動部56Aが移動すると、軸55Gを支点としたガイド部材支持部55Aの回転が規制される。これにより、
図7Cに示すように、ガイド部材53がガイド位置に移動する。
【0122】
これに対し、ガイド部材移動機構54Aは、ガイド部材作動部56Aの作用部56Hがガイド部材支持部55Aの被作用部55Hから離れる位置にガイド部材作動部56Aが移動すると、軸55Gを支点としたガイド部材支持部55Aの回転の規制が解除される。これにより、
図7Eに示すように、ガイド部材支持部55Aがバネ57Aに付勢されて回転し、ガイド部材53がガイド位置から退避位置に移動する。
【0123】
ガイド部材53が退避位置に移動した状態で、ワイヤWが逆方向に送られて引き戻されると、
図7Dに示すように、ガイド部材53Cがガイド位置に移動していることで、カールガイド50に沿った部位のワイヤWが、鉄筋Sに近づく方向へ移動することをガイド部材53Cで規制した状態となる。これにより、まず、誘導ガイド51に沿った部位のワイヤWを、鉄筋Sに近づく方向に移動させて、鉄筋Sに接するようにすることができる。
【0124】
ワイヤWがガイド部材53Cに接した状態から、更にワイヤWを逆方向に送ることで、誘導部53Gがガイド部材53Cをガイド位置から退避位置へ移動させる方向に押す力を生じ、
図7Fに示すように、バネ57Cを圧縮しながらガイド部材53Cが退避位置に移動する。これにより、カールガイド50に沿った部位のワイヤWが、ガイド部材53Cを超えて鉄筋Sに近づく方向に移動し、鉄筋Sに接するようにすることができる。
【0125】
図8Aは、他の変形例のガイド部材の一例を示す側面図、
図8Bは、他の変形例のガイド部材の動作例を示す正面断面図であり、次に、各図を参照して、他の変形例のガイド部材の一例について説明する。なお、
図8Bは、
図8AのH-H断面を示す。
【0126】
他の変形例のガイド部材53Hは、ワイヤWに巻き癖をつける位置に配置され、カールガイド50に固定される。ガイド部材53Hは、ワイヤWの引き戻し時にワイヤWの移動を規制し、ワイヤ送り部3Aとの協働で所定の側からワイヤWを引き寄せる引き寄せ手段を構成する。
【0127】
ガイド部材53Hは、ワイヤ送り部3Aで逆方向に送られるワイヤWが接する部位が例えばテーパ状に構成されて、ワイヤWを誘導する誘導部53Jを備える。ガイド部材53Hは、ワイヤ送り部3Aで逆方向に送られるワイヤWが誘導部53Jに接することで、鉄筋Sの周囲に巻き回されるワイヤWを、この鉄筋Sの周囲に巻き回されるワイヤWにより形成されるループRuの径方向の内側方向に誘導させる。ガイド部材53Hは、誘導部53Jと、対向するカールガイド50との間に、ワイヤWが通ることが可能な隙間が形成される。
【0128】
鉄筋Sの周囲に巻き回されるワイヤWが逆方向に送られて引き戻されると、このワイヤWがガイド部材53Hに接することで、カールガイド50に沿った部位のワイヤWが、鉄筋Sに近づく方向へ移動することをガイド部材53Hで規制した状態となる。これにより、まず、誘導ガイド51に沿った部位のワイヤWを、鉄筋Sに近づく方向に移動させて、鉄筋Sに接するようにすることができる。
【0129】
ワイヤWがガイド部材53Hに接した状態から、更にワイヤWを逆方向に送ることで、ガイド部材53Hに接したワイヤWが、誘導部53Jの形状に倣い、鉄筋Sの周囲に巻き回されるワイヤWにより形成されるループRuの径方向の内側方向へ誘導される。これにより、カールガイド50に沿った部位のワイヤWが、ガイド部材53Hを超えて鉄筋Sに近づく方向に移動可能となり、鉄筋Sに接するようにすることができる。
【0130】
図9は、結束機の変形例を示す要部側面図である。変形例の結束機1Bは、カール形成部5Bが第1のガイド部の一例であるカールガイド50を備え、第2のガイド部の一例である
図1等に示す誘導ガイド51は備えていない構成である。
【0131】
カールガイド50は、ワイヤ送り部30で送られるワイヤWに巻き癖をつけて、ワイヤWを結束部7Aに誘導することで、ワイヤWが鉄筋Sの周囲に巻き回される。
【0132】
結束機1Bでは、カールガイド50に沿って鉄筋Sの周囲にワイヤWを巻き回した状態で、このワイヤWをワイヤ係止体70で係止した後、ワイヤWのガイド位置にガイド部材53を突出させた状態でワイヤWを逆方向に送る。
【0133】
これにより、鉄筋Sの周囲に巻き回され、ワイヤ係止体70で係止されたワイヤWにおいて、ワイヤWの送り経路に沿ったループRuの周方向に移動可能なワイヤ送り部3Aに近い部位のワイヤ、すなわち、カールガイド50に沿った部位のワイヤWが、鉄筋Sに近づく方向へ移動することをガイド部材53で規制した状態となる。この状態で、まず、ワイヤ係止体70で係止されることでワイヤWの送り経路に沿ったループRuの周方向に非移動なワイヤWの先端側に近い部位のワイヤW、すなわち、鉄筋Sに対してカールガイド50と反対側に位置するワイヤWを鉄筋Sに近づく方向に移動させて、鉄筋Sに接するようにする。その後、ワイヤWのガイド位置から退位位置へガイド部材53を移動させた状態でワイヤWを更に逆方向に送ることにより、カールガイド50に沿った部位のワイヤWを、鉄筋Sに近づく方向に移動させて、鉄筋Sに接するようにすることで、確実にワイヤWを鉄筋Sに巻き付けることができる。
【0134】
図10は、結束機の他の変形例を示す要部側面図である。他の変形例の結束機1Cは。カール形成部5Cがカールガイド50Cと誘導ガイド51Cを備える。カール形成部5Cは、カールガイド50Cと誘導ガイド51Cの少なくとも一方が、他方に対して離接する方向に移動して開閉可能に構成され、カールガイド50Cと誘導ガイド51Cが閉じた状態では、カールガイド50Cと誘導ガイド51Cが連結される形態となる。
【0135】
カールガイド50Cは、ワイヤ送り部30で送られるワイヤWに巻き癖をつける。誘導ガイド51Cは、カールガイド50Cで巻き癖を付けられたワイヤWを結束部7Aに誘導する。これにより、ワイヤWが鉄筋Sの周囲に巻き回される。
【0136】
結束機1Cでは、カールガイド50C及び誘導ガイド51Cに沿って鉄筋Sの周囲にワイヤWを巻き回した状態で、このワイヤWをワイヤ係止体70で係止した後、ワイヤWのガイド位置にガイド部材53を突出させた状態でワイヤWを逆方向に送る。
【0137】
これにより、鉄筋Sの周囲に巻き回され、ワイヤ係止体70で係止されたワイヤWにおいて、ワイヤWの送り経路に沿ったループRuの周方向に移動可能なワイヤ送り部3Aに近い部位のワイヤ、すなわち、カールガイド50Cに沿った部位のワイヤWが、鉄筋Sに近づく方向へ移動することをガイド部材53で規制した状態となる。この状態で、まず、ワイヤ係止体70で係止されることでワイヤWの送り経路に沿ったループRuの周方向に非移動なワイヤWの先端側に近い部位のワイヤ、すなわち、鉄筋Sに対してカールガイド50と反対側に位置するワイヤである誘導ガイド51Cに沿った部位のワイヤWを、鉄筋Sに近づく方向に移動させて鉄筋Sに接するようにする。その後、ワイヤWのガイド位置から退位位置へガイド部材53を移動させた状態でワイヤWを更に逆方向に送ることにより、カールガイド50Cに沿った部位のワイヤWを、鉄筋Sに近づく方向に移動させて鉄筋Sに接するようにすることで、確実にワイヤWを鉄筋Sに巻き付けることができる。
【符号の説明】
【0138】
1A、1B、1C・・・鉄筋結束機、10A・・・本体部、14A・・・制御部、2A・・・マガジン、20・・・リール、3A・・・ワイヤ送り部、30・・・送りギア、31・・・送りモータ、5A、5B、5C・・・カール形成部、50、50C・・・カールガイド(第1のガイド部)、51、51C・・・誘導ガイド(第2のガイド部)、53、53C、53H・・・ガイド部材(引き寄せ手段)、53b・・・ガイド部材、53G・・・誘導部、53J・・・誘導部、54A、54B・・・ガイド部材移動機構、55A、55B・・・ガイド部材支持部、55G・・・軸、55H、55J・・・被作用部、56A、56B・・・ガイド部材作動部、56F・・・ガイド凸部、56G・・・係合部、56H、56J・・・作用部、57A、57B、57C・・・バネ、6A・・・切断部、7A・・・結束部、70・・・ワイヤ係止体、70L・・・第1のサイドフック、70R・・・第2のサイドフック、70C・・・センターフック、71・・・スリーブ、72・・・回転軸、8A・・・駆動部、80・・・モータ、81・・・減速機、90・・・突き当て部、W・・・ワイヤ