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特許7528622ゴム付きコード成型装置及びその成型方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ゴム付きコード成型装置及びその成型方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/34 20190101AFI20240730BHJP
   B29D 30/38 20060101ALI20240730BHJP
   B29C 48/154 20190101ALI20240730BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20240730BHJP
   B29C 48/88 20190101ALI20240730BHJP
   B29K 21/00 20060101ALN20240730BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
B29C48/34
B29D30/38
B29C48/154
B29C48/92
B29C48/88
B29K21:00
B29L9:00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020133569
(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公開番号】P2022029953
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 浩二
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-035174(JP,A)
【文献】特開2010-143022(JP,A)
【文献】特開2020-066160(JP,A)
【文献】特開2020-090060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00-70/88
B29C 48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のフィラメントを撚り合わせたコードにゴム材料を被覆してゴム付きコードに成形するためのゴム付きコード成型装置であって、
前記コードに張力を付与する張力付与具と、
前記張力が付与された前記コードを通過させるための貫通孔を具えたバッフルと、
前記貫通孔を通過した前記コードに前記ゴム材料を被覆するためのゴム被覆部とを含み、
前記貫通孔の内径は、前記張力を付与する前の前記コードの外接円最大径よりも小さく、
前記ゴム付きコードを冷却するための冷却具をさらに含み、
前記ゴム付きコードが巻き掛けられるローラーをさらに含み、
前記冷却具は、前記ローラーの外周面を冷却する、
ゴム付きコード成型装置。
【請求項2】
前記貫通孔の内径は、前記張力を付与する前の前記コードの外接円平均径よりも小さい、請求項1に記載のゴム付きコード成型装置。
【請求項3】
前記張力付与具は、前記コードに10~20Nの前記張力を付与する、請求項1又は2に記載のゴム付きコード成型装置。
【請求項4】
前記コードは、平行に引き揃えられた複数本であり、
前記バッフルは、前記複数本のコードに対応して前記貫通孔を複数具えている、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のゴム付きコード成型装置。
【請求項5】
前記ゴム付きコードを巻き取るための巻取リールと、前記巻取リールへの前記ゴム付きコードの巻取径に基づいて、前記ゴム付きコードの巻取張力を制御する制御具とを含む、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のゴム付きコード成型装置。
【請求項6】
複数本のフィラメントを撚り合わせたコードにゴム材料を被覆してゴム付きコードに成形するためのゴム付きコード成型方法であって、
張力が付与された前記コードをバッフルの貫通孔に通過させる工程と、
前記貫通孔を通過した前記コードに前記ゴム材料を被覆する工程とを含み、
前記貫通孔の内径が、前記張力を付与する前の前記コードの外接円最大径よりも小さく、
前記ゴム付きコードを冷却具で冷却する工程をさらに含み、
前記冷却する工程は、前記ゴム付きコードが巻き掛けられるローラーの外周面を冷却する、
ゴム付きコード成型方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム付きコード成型装置及びその成型方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、単線からなる複数本のスチールコードと、前記スチールコードを被覆するゴム材料とで構成される帯状部材の製造装置が記載されている。前記スチールコードは、前記帯状部材の幅方向に引き揃えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-25445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、このような帯状部材の補強コードとして、複数本のフィラメントを撚り合わせたコード(以下、単に「撚線コード」という場合がある。)の利用が普及しつつある。このような撚線コードは、撚り係数などを適宜調整することで、様々なSSカーブ特性をもたせることができる。
【0005】
ところで、上述のような撚線コードは、フィラメントを内包するコード外接円径が、コード長手方向において変化する。換言すると、前記撚線コードのコード外接円径は、コード長手方向のある位置では大きく、コード長手方向の別の位置では小さく形成される。このような撚線コードを従来の製造装置でゴム被覆すると、コード外接円径の大きい箇所が十分にゴムで被覆されず前記フィラメントが露出し、また、撚線コードからゴムが剥離する、いわゆるゴム剥げが生じ、ゴム付きコードの品質が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、品質の低下を抑制することができるゴム付きコード成型装置及びその成型方法を提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数本のフィラメントを撚り合わせたコードにゴム材料を被覆してゴム付きコードに成形するためのゴム付きコード成型装置であって、前記コードに張力を付与する張力付与具と、前記張力が付与された前記コードを通過させるための貫通孔を具えたバッフルと、前記貫通孔を通過した前記コードに前記ゴム材料を被覆するためのゴム被覆部とを含み、前記貫通孔の内径は、前記張力を付与する前の前記コードの外接円最大径よりも小さい。
【0008】
本発明に係るゴム付きコード成型装置は、前記貫通孔の内径が、前記張力を付与する前のコードの外接円平均径よりも小さい、のが望ましい。
【0009】
本発明に係るゴム付きコード成型装置は、前記張力付与具が、前記コードに10~20Nの張力を付与する、のが望ましい。
【0010】
本発明に係るゴム付きコード成型装置は、前記コードが、平行に引き揃えられた複数本であり、前記バッフルは、前記複数本のコードに対応して前記貫通孔を複数具えている、のが望ましい。
【0011】
本発明に係るゴム付きコード成型装置は、前記ゴム付きコードを冷却するための冷却具をさらに含む、のが望ましい。
【0012】
本発明に係るゴム付きコード成型装置は、前記ゴム付きコードが巻き掛けられるローラーをさらに含み、前記冷却具は、前記ローラーの外周面を冷却する、のが望ましい。
【0013】
本発明に係るゴム付きコード成型装置は、前記ゴム付きコードを巻き取るための巻取リールと、前記巻取リールへの前記ゴム付きコードの巻取径に基づいて、前記ゴム付きコードの巻取張力を制御する制御具とを含む、のが望ましい。
【0014】
本発明は、複数本のフィラメントを撚り合わせたコードにゴム材料を被覆してゴム付きコードに成形するためのゴム付きコード成型方法であって、張力が付与された前記コードをバッフルの貫通孔に通過させる工程と、前記貫通孔を通過した前記コードに前記ゴム材料を被覆する工程とを含み、前記貫通孔の内径が、前記張力を付与する前の前記コードの外接円最大径よりも小さい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のゴム付きコード成型装置及びその成型方法は、上記の構成を採用することで、ゴム付きコードの品質の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のゴム付きコード成型装置の一実施形態を概念的に説明する側面図である。
図2】ゴム付きコードの斜視図である。
図3】(a)は、コードの側面図、(b)は、(a)のA-A線断面図、(c)は、(a)のB-B線断面図である。
図4】ゴム押出機の部分斜視図である。
図5】ゴム被覆部及びバッフルの断面図である。
図6】ゴム被覆部の成形口の正面図である。
図7】本発明のゴム付きコード成型方法の一実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のゴム付きコード成型装置(以下、単に「成型装置」という場合がある。)1を概念的に説明する側面図である。本発明の成型装置1では、例えば、タイヤの構成部材(図示省略)を形成するためのゴム付きコード30が成形される。前記タイヤの構成部材としては、タイヤを補強するための補強層、例えば、バンド層などが好適に採用される。但し、本発明は、タイヤの構成部材を形成するものに限定されるものではない。
【0018】
図2は、本実施形態のゴム付きコード30の斜視図である。図2に示されるように、ゴム付きコード30は、本実施形態では、コード32にゴム材料33を被覆したものである。ゴム付きコード30は、例えば、平行に引き揃えられた複数本(図2では4本)のコード32を含んでいる。特に限定されるものではないが、ゴム付きコード30の幅Wは、4.0~6.0mmが望ましい。また、ゴム付きコード30の厚さHは、0.9~1.3mmが望ましい。なお、ゴム付きコード30は、このような態様に限定されるものではなく、種々の形状が採用される。
【0019】
図3(a)は、張力が付与される前のコード32の側面図である。図3(b)は、図3(a)のA-A線断面図、図3(c)は、図3(a)のB-B線断面図である。図3に示されるように、コード32は、例えば、複数本のフィラメント31(図2では4本)を撚り合わせて形成されている。フィラメント径は、例えば、0.15~0.27mmが望ましい。コード32は、本実施形態では、外接円径dが、コード長手方向において変化する。外接円径dは、本明細書では、コード32の横断面において、全てのフィラメント31を内部に含む、最小となる円の直径である。また、本明細書において、外接円最大径dx(図3(c)に示す)は、コード32の長手方向における外接円径dの最大値である。さらに、本明細書において、外接円平均径dvは、コード32の長手方向における外接円径dの最小値diと、外接円最大径dxとの間の中間の値ある。
【0020】
このように、本実施形態では、撚り合わされたコード32が使用される。このようなコード32は、低荷重域で良く伸びる(圧縮剛性が小さい。)。このため、本実施形態のゴム付きコード30は、例えば、トレッドプロファイルの曲率半径が相対的に小さい、自動二輪車用空気入りタイヤのジョイントレスのバンド層を成形するための帯状プライ用として、好適に採用される。
【0021】
図1に示されるように、本実施形態の成型装置1は、張力付与具2とバッフル3とゴム被覆部4とを含んでいる。張力付与具2は、コード32に張力を付与する機能を有している。バッフル3は、コード32の位置を決める機能を有している。ゴム被覆部4は、コード32にゴム材料33を被覆してゴム付きコード30を成形するための機能を有している。本実施形態の成型装置1では、複数本のコード32が同時に搬送されて、複数本のゴム付きコード30に成形される。
【0022】
また、成型装置1は、例えば、冷却具6と巻取リール8と制御具9とを含んでいる。成型装置1は、本実施形態では、さらに、リールスタンド10とフェスツーン11とを含んでいる。
【0023】
リールスタンド10は、例えば、コード32が巻き取られた複数のリール12と、各リール12を回転自在に保持するスタンド部13と、リール12に巻き取られたコード32を案内するためのガイドローラ14とを備えている。リール12及びスタンド部13は、例えば、周知の構造で構成されている。
【0024】
本実施形態のガイドローラ14は、複数本のコード32を平行に引き揃える機能を有する。ガイドローラ14は、例えば、コード32に作用する張力を測定するためのテンションセンサー14aを含んでいる。テンションセンサー14aとしては、例えば、株式会社イマダ製のTS-1シリーズが好適である。テンションセンサー14aは、例えば、測定した張力に基づく情報を電気信号に変換して出力することができる。
【0025】
張力付与具2は、本実施形態では、回転自在に保持されたローラー7を含んでいる。ローラー7は、例えば、図示しない周知構造のモータ等の電動具に接続されて、回転駆動し得る。これにより、ローラー7は、リールスタンド10のリール12に巻き取られたコード32を引っ張ることでコード32に張力を付与しつつ搬送し得る。本実施形態の張力付与具2は、例えば、コード32(ゴム付きコード30)が巻き回される一対のローラー7を有している。
【0026】
張力付与具2は、コード32に10~20Nの張力を付与するのが望ましい。張力が付与されたコード32は、張力が付与される前のコード32よりも外接円径dが小さくなる。
【0027】
張力付与具2は、例えば、ゴム被覆部4よりもコード32の搬送方向(以下、単に「搬送方向」という場合がある。)の下流側に配されている。これにより、ローラー7は、ゴム被覆部4で成形されたゴム付きコード30と接触して、これを搬送し得る。
【0028】
バッフル3とゴム被覆部4とは、本実施形態では、ゴム押出機5に含まれている。本実施形態のゴム押出機5は、ゴム被覆部4へゴム材料33を押し出す機能を有している。なお、バッフル3とゴム被覆部4とは、ゴム押出機5に含まれるものに限定されるものではない。
【0029】
ゴム押出機5は、例えば、搬送方向において、張力付与具2とリールスタンド10との間に配されている。換言すると、ゴム被覆部4にてゴム材料33が被覆されるコード32には、張力付与具2による張力が付与されている。
【0030】
図4は、ゴム押出機5の部分斜視図である。図4に示されるように、ゴム押出機5は、例えば、ゴム投入口を設けたシリンダ5Aと、シリンダ5Aの前端に配される押出ヘッド5Bとを含んでいる。シリンダ5A内には、スクリュー軸(図示省略)が収納されている。ゴム材料33は、前記スクリュー軸の回転駆動によって可塑化されながら押出ヘッド5Bへ押し出される。
【0031】
図5は、押出ヘッド5Bの断面図(図4のC-C線断面図)である。図5に示されるように、押出ヘッド5Bは、本実施形態では、バッフル3とゴム被覆部4とを含んでいる。ゴム被覆部4は、バッフル3よりも搬送方向の下流側に配されている。
【0032】
図6は、ゴム被覆部4の正面図である。図6には、便宜上、バッフル3の貫通孔3aが示されている。図5及び図6に示されるように、バッフル3は、コード32を通過させるための貫通孔3aを具えている。
【0033】
貫通孔3aの内径Dは、張力を付与する前のコード32の外接円最大径dxよりも小さく構成されている。このため、張力が付与されたコード32は、バッフル3を通過できるとともに、外接円径dのコード長手方向でのばらつきが小さくなり、その状態で、ゴム被覆される。したがって、コード32の外周にゴム材料33を均一に被覆することが可能になる。また、貫通孔3aの内径Dをこのように規定することにより、相対的に大きな外接円径dとなる撚線のコード32を使用しつつ、厚さHが小さいゴム付きコード30を成形することができる。特に限定されるものではないが、張力を付与する前のコード32の外接円最大径dxは、貫通孔3aの内径Dの120%以上が望ましく、130%以上がさらに望ましく、160%以下が望ましく、150%以下がさらに望ましい。
【0034】
ゴム付きコード30の品質と剛性とを高めるために、貫通孔3aの内径Dは、張力を付与する前のコード32の外接円平均径dvよりも小さいのが望ましい。張力を付与する前のコード32の外接円径dは、例えば、0.6~1.3mmが望ましい。
【0035】
また、張力を付与された後のコード32の外接円平均径dvは、貫通孔3aの内径Dの60%以上が望ましく、70%以上がさらに望ましく、90%以下が望ましく、80%以下がさらに望ましい。
【0036】
特に限定されるものではないが、貫通孔3aの内径Dは、例えば、0.80~1.20mmが望ましく、0.85~1.10mmがさらに望ましく、0.90~1.00mmが一層望ましい。また、隣接する貫通孔3aのピッチpは、貫通孔3aの内径Dよりも大きいのが望ましい。貫通孔3aのピッチpは、例えば、0.90~1.30mmが望ましく、0.95~1.25mmがさらに望ましく、1.00~1.20mmが一層望ましい。
【0037】
貫通孔3aは、本実施形態では、複数本のコード32に対応して複数設けられている。各貫通孔3aは、例えば、平行に揃えられており、それぞれ、張力が付与された1本のコード32が通過される。貫通孔3aは、本実施形態では、搬送方向に直線状に延びている。
【0038】
本実施形態のゴム被覆部4は、ゴム押出機5からのゴム材料33が案内されるプリフォーマ15と、コード32とゴム材料33とが通るダイプレート16とを含んでいる。
【0039】
プリフォーマ15は、本実施形態では、上の流路15aと、上の流路15aよりも下方に配された下の流路15bとを含んでいる。上の流路15aと下の流路15bとに分けて流れたゴム材料33は、バッフル3よりも搬送方向の下流側で合流して、コード32とともにダイプレート16に搬送される。
【0040】
ダイプレート16は、例えば、バッフル3の先端に取り付けられた板状の部材である。ダイプレート16の中央には、ゴム付きコード30を所定の形状、寸法で押出成形するための成形口17が形成されている。
【0041】
本実施形態の成形口17は、4つの貫通孔3a、換言すると、4本のコード32が通過するように成形されている。成形口17は、例えば、ダイプレート16に複数(図では3つ)設けられており、それぞれ、水平に並べられている。
【0042】
成形口17は、本実施形態では、貫通孔3aよりも大きな開口高さHaを有している。これにより、コード32にゴム材料33が確実に被覆される。また、開口高さHaは、例えば、巻取リール8で巻き付けられるゴム付きコード30の厚さHよりも小さく形成されている。換言すると、ゴム被覆部4で形成されたゴム付きコード30は、巻取リール8にて巻き取られるときに厚さHが大きくなる。本実施形態では、成形口17で、コード32にゴム材料33が確実に被覆されているので、巻取リール8においても、コード32の露出等の品質不良が抑制される。
【0043】
図1に示されるように、本実施形態の冷却具6は、ローラー7の外周面7aを冷却する機能を有している。これにより、ゴム付きコード30が冷却されて、ゴム剥げやゴム焼け等の品質低下が抑制される。冷却具6は、外周面7aを5~15℃程度、好ましくは10℃に冷却する。これにより、外周面7aに接触したゴム付きコード30は、20~30℃程度、好ましくは25℃に冷却される。冷却具6は、例えば、冷却された液体又は気体を外周面7aに送る機能を有している。冷却具6としては、例えば、周知構造の水噴霧機や送風機を含むものが望ましい。
【0044】
巻取リール8は、搬送されたゴム付きコード30を巻き取るためのものである。巻取リール8は、本実施形態では、図示しない保持具に、取り外し可能かつ回転自在に保持されている。また、巻取リール8は、例えば、図示しないモータ等の電動具に回転駆動可能に接続されている。これにより、巻取リール8は、ゴム付きコード30に張力(以下、この張力を「巻取張力」という。)を付与する。巻取リール8は、例えば、1~3Nの張力をゴム付きコード30に付与するのが望ましい。巻取リール8は、本実施形態では、ゴム付きコード30が巻き付けられることによりその巻取径が変化する、周知構造のものが採用される。
【0045】
制御具9は、本実施形態では、巻取リール8に巻き取られるゴム付きコード30の巻取張力を制御するための機能を有している。制御具9は、例えば、前記巻取径に基づいて巻取張力を制御する。制御具9は、本実施形態では、前記巻取径に基づいて巻取リール8の回転速度を変化させる。これにより、巻取リール8の半径方向に隣接するゴム付きコード30同士のゴム材料33の過度の接着が抑制されてゴム剥げが防止されるとともに、巻取リール8への巻取りが精度良く行われる。前記巻取径は、例えば、図示しない周知構造の非接触型の距離センサーで測定される。前記距離センサーは、例えば、測定した前記巻取径を電気信号に変換して制御具9に出力するのが望ましい。
【0046】
制御具9は、例えば、テンションセンサー14aで測定されたコード32の張力に基づく電気信号が入力されても良い。このような制御具9は、前記電気信号を解析して、最適な張力となるように張力付与具2のローラー7の回転を制御するのが望ましい。
【0047】
制御具9としては、例えば、プログラマブルシーケンサ、マイコン、パーソナルコンピュータ、その他の周知の制御デバイスが好適に用いられる。
【0048】
フェスツーン11は、例えば、張力付与具2よりも搬送方向の下流側に配されている。フェスツーン11は、ゴム付きコード30を一時的に貯える機能を有している。これにより、フェスツーン11は、巻取リール8の回転速度と張力付与具2のローラー7の回転速度との差を吸収する。本実施形態のフェスツーン11は、複数の上のローラー11aと、上のローラー11aよりも下方に配された複数の下のローラー11bとを含む周知構造である。
【0049】
次に、このような成型装置1を用いて、ゴム付きコード30を成形するための成型方法が説明される。図7は、本実施形態の成型方法を示すフローチャートである。図7に示されるように、前記成型方法は、本実施形態では、通過工程S2と被覆工程S3とを含んでいる。また、前記成型方法は、例えば、コード32をリールスタンド10からゴム押出機5まで搬送する第1搬送工程S1と、ゴム付きコード30をゴム押出機5から巻取リール8まで搬送する第2搬送工程S4とを含んでいる。第1搬送工程S1では、例えば、張力付与具2によって、コード32に張力が付与される。通過工程S2及び被覆工程S3は、例えば、第1搬送工程S1と第2搬送工程S4との間に行われる。第1搬送工程S1及び第2搬送工程S4は、種々の周知の方法が採用されるので、その詳細な説明が省略される。
【0050】
第1搬送工程S1の後、通過工程S2が行われる。通過工程S2では、引き続き、コード32に張力が付与されている。そして、通過工程S2は、張力が付与されたコード32を、バッフル3の貫通孔3aに通過させる。コード32に付与された張力は、テンションセンサー14aによって測定される。テンションセンサー14aは、測定した張力を電気信号に変換して制御具9に出力する。制御具9は、入力された電気信号に基づいて、張力付与具2のローラー7の回転速度を制御する。これにより、コード32には、所望する張力が付与される。また、通過工程S2では、複数のコード32が、それぞれ各貫通孔3aに通過される。
【0051】
次に、被覆工程S3が行われる。被覆工程S3では、貫通孔3aを通過したコード32にゴム材料33が被覆される。本実施形態では、貫通孔3aを通過したコード32が、ダイプレート16にて、ゴム押出機5のシリンダ5A内から押し出されたゴム材料33に被覆されて、ゴム付きコード30が成形される。そして、ゴム付きコード30は、ゴム押出機5を経て、ローラー7へ搬送される。
【0052】
以上、本発明の特に好ましい形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例
【0053】
図1の基本構成を有する成型装置によってゴム付きコードが成形され、各ゴム付きコードの品質性能がテストされた。主な共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
【0054】
<品質性能>
各ゴム付きコード100mにおける、ゴム剥げやフィラメントの露出の箇所が、テスターの目視によって確認された。結果は、ゴム剥げやフィラメント露出の発生個数で表される。数値が小さいほど、品質不良個所が少なくて品質性能が良好である。
テストの結果などが表1に示される。
【0055】
【表1】
【0056】
テストの結果、実施例の成型装置は、比較例の成型装置に比べて、品質性能が向上していることが確認できた。
【0057】
1 ゴム付きコード成型装置
2 張力付与具
3 バッフル
3a 貫通孔
4 ゴム被覆部
32 コード
33 ゴム材料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7