(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 15/04 20060101AFI20240730BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240730BHJP
B41J 11/70 20060101ALI20240730BHJP
B65H 7/14 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B41J15/04
B41J2/01 305
B41J11/70
B65H7/14
(21)【出願番号】P 2020143304
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】伊東 瞬
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-097527(JP,A)
【文献】特開2006-082418(JP,A)
【文献】特開2013-240891(JP,A)
【文献】特開2010-137366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 15/04
B41J 2/01
B41J 11/70
B65H 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状の長尺媒体である記録媒体に記録を行う記録部と、
前記記録部に対向して配置され前記記録媒体を支持する支持部と、
前記記録媒体の搬送方向において、前記支持部の下流で前記長尺媒体を切断して単票媒
体とする切断部と、
ストレート面と曲面とを有し、前記搬送方向において、前記切断部の下流で前記記録媒
体を案内する案内部材と、
前記搬送方向において、前記案内部材の下流で前記長尺媒体を巻き取る巻取部と、
前記搬送方向において、前記案内部材の下流で前記単票媒体を収容する着脱可能な媒体
収容部と、を備え、
前記案内部材は、前記媒体収容部に搬送される前記記録媒体を
前記ストレート面で支持
する第1支持位置と、前記巻取部に搬送される前記長尺媒体を
前記曲面で支持し、前記第
1支持位置より上方となる第2支持位置とに変位可能であることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置であって、
前記案内部材は、前記第1支持位置に配置された場合、前記支持部が前記記録媒体を支
持する位置よりも下方に排出される前記単票媒体を支持して前記媒体収容部に案内するこ
とを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の記録装置であって、
前記媒体収容部は、前記案内部材の前記第1支持位置より下方に設置され、前記単票媒
体を収容することを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項1に記載の記録装置であって、
前記案内部材は、前記第2支持位置に配置された場合、前記支持部が前記記録媒体を支
持する高さ位置で前記長尺媒体を支持し、前記巻取部に案内することを特徴とする記録装
置。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の記録装置であって、
前記切断部の下流に排出ローラー対を有し、
前記案内部材の前記長尺媒体を案内する
前記曲面の曲率は、前記排出ローラー対のうち
下側に配置されるローラーの外周の曲率よりも小さいことを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項5に記載の記録装置であって、
前記案内部材は、前記第2支持位置に配置された状態において、前記排出ローラー対が
前記長尺媒体を挟持する高さ位置で当該長尺媒体を案内することを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の記録装置であって、
前記案内部材は、前記第2支持位置に配置された状態において、前記搬送方向の下流側
から前記記録部に前記単票媒体を供給する際に、前記単票媒体を支持することを特徴とす
る記録装置。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の記録装置であって、
前記案内部材は、前記第2支持位置より上方で、前記記録装置の内部にアクセス可能な
開放位置に変位可能であることを特徴とする記録装置。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の記録装置であって、
前記案内部材は、前記搬送方向の上流側に回動軸を有し、前記回動軸を中心に回転して
変位することを特徴とする記録装置。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の記録装置であって、
前記案内部材の位置を検出する検出センサーを備え、前記案内部材の位置と、出力モー
ドとが不一致の場合に報知することを特徴とする記録装置。
【請求項11】
請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の記録装置であって、
前記案内部材に設置される係合部と、
前記記録装置の内部に設置され、前記係合部を受ける係合受け部と、を有し、
前記案内部材は、前記係合部が前記係合受け部に係合することにより、それぞれの位置
に位置決めされることを特徴とする記録装置。
【請求項12】
請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の記録装置であって、
前記案内部材の変位を制御する制御部と、
前記案内部材を、前記第1支持位置と前記第2支持位置とに変位させる駆動部と、を備
え、
前記制御部は、排出される前記記録媒体の態様に応じて前記駆動部を駆動させ、前記案
内部材を、前記第1支持位置と前記第2支持位置とに変位させることを特徴とする記録装
置。
【請求項13】
請求項12に記載の記録装置であって、
前記制御部は、排出される前記記録媒体の態様を、切断処理の有無、前記媒体収容部の
装着の有無により判断することを特徴とする記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロール紙への印刷を行う印刷装置が知られている。例えば、特許文献1の印刷装置では、ロール紙を排出する際に下方から媒体を支持して下方に設置されるスタッカーに案内する案内部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、案内部材は、排出される媒体の排出先や媒体の態様などに応じて案内部材の位置が変位するなどの構成は開示されていない。従って、排出先がスタッカーやロール状の筒である場合や、または、媒体の種類などに応じて対応することができず、適切な排出が行えないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
記録装置は、ロール状の長尺媒体である記録媒体に記録を行う記録部と、前記記録部に対向して配置され前記記録媒体を支持する支持部と、前記記録媒体の搬送方向において、前記支持部の下流で前記長尺媒体を切断して単票媒体とする切断部と、前記搬送方向において、前記切断部の下流で前記記録媒体を案内する案内部材と、前記搬送方向において、前記案内部材の下流で前記長尺媒体を巻き取る巻取部と、前記搬送方向において、前記案内部材の下流で前記単票媒体を収容する着脱可能な媒体収容部と、を備え、前記案内部材は、前記媒体収容部に搬送される前記記録媒体を支持する第1支持位置と、前記巻取部に搬送される前記長尺媒体を支持し、前記第1支持位置より上方となる第2支持位置とに変位可能である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係る記録装置を前面側から見た斜視図。
【
図3】案内部材を変位させる係合部と係合受け部の動作を示す概側面図。
【
図4】案内部材を変位させる係合部と係合受け部の動作を示す概側面図。
【
図9】案内部材が第1支持位置に位置する場合の記録媒体の排出を示す側断面図。
【
図10】案内部材が第2支持位置に位置する場合の記録媒体の排出を示す側断面図。
【
図11】案内部材が開放位置に位置する場合の廃液ボックスを示す側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
1.実施形態
実施形態に係る記録装置1の概略構成について説明する。
本実施形態の記録装置1は、ロール状の長尺媒体である記録媒体(用紙)に液体としてのインクを吐出して記録(印刷)するインクジェット方式の記録装置である。また、記録装置1は、
図1、
図2に示すように、筒状の芯部材25に記録媒体としての長尺媒体Sがロール状に巻き重ねられた円筒形状を有するロール紙Rを使用する。本実施形態の記録装置1は、短辺幅がA3(297mm)以上の長尺媒体Sに印刷を行う大判用の記録装置である。
【0008】
詳細には、ロール紙Rを構成する長尺媒体Sの種類は複数ある。例えば、写真用紙などの曲げ剛性が大きい長尺媒体Sや、普通紙などの写真用紙に比べて曲げ剛性が小さい長尺媒体Sが使用される。また、長尺媒体Sのサイズも複数ある。例えば、A0サイズ~A3サイズの長尺媒体Sが使用される。また、本実施形態の記録装置1は、記録用の媒体としてロール紙Rのみではなく、矩形状の単票紙やボード紙なども、筐体10内部に供給することによって記録することができる。
【0009】
以降の図面では、記録装置1が水平面上に載置された状態とし、水平面に沿う方向として、記録装置1の前後方向をX方向とし、X方向に直交する左右方向(又は長尺媒体Sの幅方向)をY方向とする。また、水平面に対して鉛直方向(上下方向)をZ方向とする。また、前方向を+X方向、後方向を-X方向、右方向を+Y方向、左方向を-Y方向、上方向を+Z方向、下方向を-Z方向とする。
【0010】
以降では、ロール紙Rから繰り出される長尺媒体Sを主に記録装置1を説明する。
図1、
図2に示すように、記録装置1は、直方体形状の筐体10、及び記録装置1の各部を支持するフレーム27を備えている。筐体10はフレーム27に連結される。また、フレーム27は、脚部を構成する複数のキャスター28により支持されている。
【0011】
記録装置1は、ロール紙Rを収容する収容部11と、収容部11に収容されるロール紙Rから繰り出された長尺媒体Sを記録部13に搬送する搬送部12と、長尺媒体Sに記録を行う記録部13と、を備えている。また、記録装置1は、記録部13に対向して配置され、長尺媒体Sを支持する支持部14と、記録された長尺媒体Sを切断する切断部15とを備えている。ここで、長尺媒体Sを切断して単票媒体となったものを以降では、単票媒体S1と呼称する。
【0012】
なお、本実施形態の記録装置1は、ロール紙Rから繰り出された長尺媒体Sを記録後に切断する場合や、切断せずに巻き取る場合がある。また、単票紙やボード紙などに記録を行う場合には切断しない。切断部15の動作の有無は、ユーザーの操作パネル20への指示入力や、制御部24に記憶される出力モードなどで制御される。
【0013】
記録装置1は、切断部15で切断された長尺媒体S(単票媒体S1)などを、筐体10の前方向の装置外部に排出する排出部17を備えている。記録装置1は、長尺媒体Sの搬送方向Aにおいて、支持部14の搬送方向Aの下流で長尺媒体Sを案内する案内部材30を備えている。案内部材30は、排出部17から排出される長尺媒体Sを案内する。
なお、以降の説明において、搬送方向Aの下流を単に「下流」として表記する。同様に、搬送方向Aの上流を単に「上流」と表記する。
【0014】
収容部11は、筐体10の前側で、左右方向の略中央部に開口部111を有すると共に、前側から後側に向かって延びた空間を有し、ロール紙Rを着脱自在に収容する。また、収容部11は、前側に2つのロール紙Rを高さ方向に並べて収容する。ロール紙Rは、ロール紙Rを回転可能に保持する保持部材26を両端部にそれぞれ設置する。そして、開口部111の左右方向及び下方向に固定される保持部112に保持部材26が保持される。保持部材26は、駆動部(図示省略)によって回転駆動されることにより、保持部材26が保持するロール紙Rを芯部材25の中心軸回りに回転させる。
【0015】
保持部112は、上段のロール紙Rと下段のロール紙Rとに対応させて、上段と下段との2つに分離されている。そして、上段の保持部112は、開口部111に固定されており、下段のロール紙Rは、保持部材26を設置して所定の位置に前側から挿入することで設置する。下段の保持部112は、前後方向に移動可能に形成されており、前方向に引き出した後、保持部材26を設置したロール紙Rを保持部112の所定の位置に上側から挿入し、保持部112を後方向に押し戻すことで、下段のロール紙Rが収容部11に設置される。また、それぞれのロール紙Rを収容部11(保持部112)から取外す場合には、それぞれ設置する場合とは逆の手順により取外すことができる。
【0016】
搬送部12は、ロール紙Rから繰り出された長尺媒体Sを支持部14(記録部13)に向けて搬送する。搬送部12は、搬送経路形成部122、中間ローラー対123、及び搬送ローラー対124などを有している。搬送部12は、駆動モーター(図示省略)の正転駆動により、中間ローラー対123及び搬送ローラー対124を回転駆動することで、搬送経路121を通じて長尺媒体Sを支持部14へ搬送すると共に、支持部14の上面となる支持面141上を排出部17に向けて搬送する。
【0017】
なお、
図2では、2つのロール紙Rの双方から長尺媒体Sが繰り出されている状態を図示しているが、実際の印刷時には一方のロール紙Rから長尺媒体Sが繰り出される。また、本実施形態の記録装置1は、一方(本実施形態では上段)のロール紙Rを保持部112から取外して、保持部材26を設置した芯部材25を設置することができる。そして、他方の(本実施形態では下段)のロール紙Rから長尺媒体Sを繰り出して記録を行い、記録の終了した長尺媒体Sを切断せずに、保持部112に設置した芯部材25に巻き取って行く巻取部18として使用することが可能である。詳細は後述する。
【0018】
記録部13は、
図2に示すように、長尺媒体Sに記録(印刷)を行う。記録部13は、長尺媒体Sに向かってインクを吐出するヘッド131と、ヘッド131を搭載するキャリッジ132と、幅方向に沿って配置されたガイドレール133とを備える。また、記録部13は、キャリッジ132をガイドレール133に沿って往復移動させる移動機構(図示省略)を備える。なお、ヘッド131と対向する位置には、長尺媒体Sを支持面141で支持する支持部14が設置されている。ヘッド131は、キャリッジ132と共に、長尺媒体Sの幅方向に往復移動しながらインクを吐出することで、支持部14に支持された長尺媒体Sに記録を行う。
【0019】
記録装置1は、支持部14に対して長尺媒体Sの下流側に、切断部15と排出ローラー対16と、案内部材30とを備えている。支持部14(支持面141)は、記録部13のヘッド131の往復移動する領域に相対して、左右方向及び前後方向に延びて形成されるだけでなく、下流に設置される切断部15の近傍に至るまで延びて形成されている。
【0020】
切断部15は、
図2に示すように、記録が終了した長尺媒体Sを切断する。切断部15は、排出部17よりも後面側で、記録部13よりも前面側に位置する。切断部15は、幅方向(左右方向)に切断刃(図示省略)が往復移動することで、長尺媒体Sを切断位置で幅方向にわたって切断する。
【0021】
切断部15の下流には、排出ローラー対16が設置される。排出ローラー対16は、駆動する駆動ローラー161と、駆動ローラー161の回転に従動して回転する従動ローラー162とで構成されている。排出ローラー対16は、記録媒体を排出する際、駆動ローラー161と従動ローラー162との間に記録媒体を挟持する。
【0022】
排出ローラー対16の直ぐ下流には案内部材30が設置されている。案内部材30は、支持部14を通過した長尺媒体Sを支持すると共に、長尺媒体Sを排出部17に案内する。案内部材30は、排出部17を構成すると共に、筐体10の前側に露出している。なお、駆動モーター(図示省略)の正転駆動により、排出ローラー対16を回転駆動することで、長尺媒体Sは案内部材30に案内されて排出部17の排出口171から排出される。
【0023】
上下方向において、案内部材30と収容部11(開口部111)との間には、簡易的な簡易スタッカー19が筐体10の内部に収容されている。簡易スタッカー19は、左右方向の長さが案内部材30と略同様で、例えば矩形のフレーム状に構成され、その内側には単票媒体S1を収容する布製のネット(図示省略)が巻取機構(図示省略)に巻き取られて設置されている。簡易スタッカー19は前方向に移動可能となっている。なお、筐体10内部に収容された状態では、簡易スタッカー19の前方向の端面は、筐体10から突出しない。
【0024】
簡易スタッカー19を使用する場合、簡易スタッカー19を前方向に引き出し、出し切った状態で使用する。なお、簡易スタッカー19の前方向への移動に従動して、ネットが巻取装置から巻き解かれる。この状態で、単票媒体S1を排出口171から排出することにより、簡易スタッカー19の前後方向で凹状に垂れ下がる形態のネット(図示省略)に長尺媒体Sが収容される。なお、簡易スタッカー19は、排出時に必ず使用しなければならない部材ではない。簡易スタッカー19を使用しない場合には、前述と逆の動作を行い、筐体10内部に収容される。なお、簡易スタッカー19を後方向に移動させることにより、ネットは巻取機構に巻き取られる構成となっている。
【0025】
筐体10の収容部11(開口部111)の右方向の前側には、インク用カバー21が回動可能に設置されている。インク用カバー21は、左端側の上下方向に設けられた回動軸(図示省略)を中心に右端側が前方向へ回動した場合、内部が露出する構成となっている。インク用カバー21の右端側が前方向へ回動した場合、液体の一例としてのインクを収容するインクカートリッジが着脱可能に設置されるカートリッジホルダー(いずれも図示省略)が露出する。この状態で、ユーザーは、記録装置1の前方向からインクカートリッジを交換することができる。
【0026】
筐体10の天面10eで、右端部の前方向には、記録装置1への操作指示が行える操作パネル20が設置されている。操作パネル20は、チルト機構(図示省略)を備えているため、操作パネル20を操作しやすい位置に傾けて使用することも可能である。ユーザーは、前方向から記録装置1に対して出力モードなどの操作指示を行うことができる。
【0027】
記録装置1は、制御部24を備えている。制御部24は、複数の電子部品から構成される電気回路として形成されている。制御部24は、筐体10の後側の下部に設置される回路基板241に構成されている。制御部24は、操作パネル20と電気的に接続されており、ユーザーの操作指示入力に基づいて記録装置1の制御を行う。制御部24は、記録装置1を構成する各部の動作を統括制御する。制御部24は、表示部を兼ねる操作パネル20やインジケーター(図示省略)や報音部(図示省略)などを通して、ユーザーに情報を表示することや、報知することができる。
【0028】
案内部材30の構成について説明する。
案内部材30は、上述したように、排出ローラー対16の直ぐ下流に設置され、長尺媒体Sを排出部17に案内する。本実施形態の案内部材30は、上流側に回動軸31を有し、回動軸31を中心にして、3つの位置に変位(回転)させることが可能である。
【0029】
図6は、案内部材30の第1支持位置を示す概斜視図であり、案内部材30を左側の前方向から視た場合の斜視図である。
案内部材30は、
図6に示すように、排出口171と同様の幅寸法で、幅方向に沿って形成されている。案内部材30は、前方向の面において、側面視で所定の曲率で形成される曲面を有し、この曲面が幅方向にわたって繋がる第1案内部32を備えている。第1案内部32の上方には、幅方向にわたって所定のピッチで、第1案内部32の曲面と同様の曲面がつながる端面を有し、前後方向で上方向に突出してリブ形状に形成される第2案内部33が複数形成される。
【0030】
第1案内部32の曲面がつながる第2案内部33の上方向の端部から、幅方向にわたって、また、上流側にわたって、側面視で緩やかな凹形状となる板状の壁部34が形成される。壁部34は、上流側(後方向)に進むに従って下方向に傾斜する形態となる。その壁部34の上面には、幅方向にわたり所定のピッチで、ストレートな端面を有し、前後方向で上方向に突出してリブ形状に形成される第3案内部35が複数形成される。
【0031】
なお、第1案内部32と第2案内部33との曲面は、搬送される長尺媒体Sを案内する案内面30aとして機能する。そして、案内部材30の第1案内部32と第2案内部33とが有する曲面(案内面30a)の曲率は、排出ローラー対16のうち、下側に配置されるローラーとなる駆動ローラー161の外周の曲率よりも小さく形成される。
【0032】
案内部材30の幅方向の両側の端部36は、第1案内部32の曲面(案内面30a)と同様の曲率の曲面を有し、第2案内部33よりも上方向に延び、前側から上側にかけて側面視でR形状に形成されている。また、両側の端部36は、
図3~
図5に示すように、上流側でフレーム27に設置される回動軸31を囲む状態に形成されている。
【0033】
図3~
図5に示すように、案内部材30の両側の端部36には、案内部材30が回動軸31を中心として回動し、案内部材30自身の位置を変位させる機構として、係合部50がそれぞれ構成されている。また、係合部50を受ける係合受け部70(係合受けピン71)がフレーム27に固定されている。案内部材30の両側の端部36に構成される案内部材30自身の位置を変位させる機構は、それぞれ同様に構成されるため、以降では、右側の端部36に構成される機構を取り上げて説明する。
【0034】
案内部材30は、係合部50を用いて変位させ、フレーム27に固定される係合受け部70に係合させることにより、それぞれの位置(3つの位置)に位置決めされる。
【0035】
係合部50は、端部36の右側の側面36aにおいて、回動軸31の下流側に設置される。係合部50は、多角形の外形を有し、板状に形成される係合板51を有している。係合板51は、中央部で上下方向に、回動軸31を軸中心とする同心円状でスリット状となる、変位用スリット孔52が形成される。そして、変位用スリット孔52に接続して後方向に延びるスリット状の孔となる、第1係合スリット孔53、第2係合スリット孔54、第3係合スリット孔55の3つのスリット孔が形成される。
【0036】
第1係合スリット孔53は、変位用スリット孔52の上端部に形成され、第3係合スリット孔55は、変位用スリット孔52の下端部に形成される。そして、第2係合スリット孔54は、第1係合スリット孔53と第3係合スリット孔55との間で、第3係合スリット孔55寄りに形成される。第1係合スリット孔53は、案内部材30を後述する第1支持位置に固定する際の位置に対応している。また、第2係合スリット孔54は、案内部材30を後述する第2支持位置に固定する際の位置に対応している。そして、第3係合スリット孔55は、案内部材30を後述する開放位置に固定する際の位置に対応している。
【0037】
案内部材30が回動軸31を中心に回動する際に、固定されている係合受けピン71は、この変位用スリット孔52に位置する。案内部材30を2つの支持位置と1つの開放位置に変位(回転)させて固定する場合には、必ずこの3つのスリット孔(第1係合スリット孔53~第3係合スリット孔55)のいずれかに係合受けピン71が位置するように回転させる。
【0038】
係合板51には、案内部材30を変位させる際に、係合受けピン71を変位用スリット孔52に位置させるために、係合板51を上流側にスライドさせるスライド孔となる第1スライド孔56、第2スライド孔57が形成されている。第1スライド孔56、第2スライド孔57は、回動軸31の軸中心に向かって長孔に形成されている。
【0039】
この第1スライド孔56と第2スライド孔57とに対応させて、端部36の側面36aには、第1固定ネジSC1と第2固定ネジSC2とが設置される。なお、第1固定ネジSC1と第2固定ネジSC2とのそれぞれの頭部の径が、第1スライド孔56と第2スライド孔57とのそれぞれの短手方向の幅より大きく構成される。これにより、係合板51は、端部36の側面36aに固定され、第1固定ネジSC1と第2固定ネジSC2を基準にして上流側、下流側にスライド可能となる。
【0040】
また、案内部材30を変位させる際には、係合板51をスライドさせることで、係合状態にある係合板51と係合受けピン71との係合を解除させることが必要となる。その係合板51をスライドさせて係合を解除させる部材が、係合解除板60である。係合解除板60は、係合板51の下流側に設置される棒状で板状に形成される。係合解除板60は、下方向の端部に回動軸61を有している。そして、上方向の先端部62は、曲面を有する先端面62aで形成されている。
【0041】
なお、係合板51は、下流側の下方向にコイルばね65の一方の端部を固定するばね固定部58が形成されている。また、端部36の側面36aには、コイルばね65の他方の端部を固定するばね固定部(図示省略)が形成されている。
【0042】
ここで、
図3、
図4は、案内部材30の動作を示す概側面図である。詳細には、
図3は、案内部材30が第1支持位置に固定された場合の係合板51、係合受けピン71、係合解除板60などを示す。
図4は、案内部材30を第1支持位置から第2支持位置や開放位置に変位させる場合の、係合板51、係合受けピン71、係合解除板60などの動作を示す。
【0043】
案内部材30には、
図1に示すように、案内部材30の左右方向の中央部の下側に取っ手部38が形成されている。ユーザーは、案内部材30を変位させる場合、この取っ手部38に手を差し入れ、内側に設置されるレバー(図示省略)を前側に移動させる。このレバーは、案内部材30の内部で、継手部材(図示省略)などを介して係合解除板60に連結されており、レバーを前側に移動させた場合、
図4に示すように、係合解除板60は、回動軸61を中心に、右方向からの平面視で時計回り方向に回転する。
【0044】
この動作により、
図4に示すように、係合解除板60の先端面62aは、係合板51の端面50aを押圧しながら端面50aを摺動する。これに対して、係合板51は、第1固定ネジSC1、第2固定ネジSC2を基準にして、また、コイルばね65の引張力に抗して、第1スライド孔56、第2スライド孔57に沿って、上流側に移動する。
【0045】
また、
図3~
図5に示すように、案内部材30の端部36には、回動軸31の上流側で、扇形状で上流側に延出する遮光板37が形成されている。遮光板37は、
図5に示すように、案内部材30が所定の支持位置及び開放位置に位置した場合に、後述する光学式の検出センサー40の光を遮光することで、その位置を検出する際に用いる。
【0046】
次に、案内部材30が、第1支持位置に位置する場合について説明する。
図5は、案内部材30が第1支持位置に位置する場合を示している。
【0047】
記録装置1において、案内部材30が初期的に設定される位置が第1支持位置である。記録装置1は、主に、案内部材30を第1支持位置に固定して使用される。第1支持位置は、ロール紙Rから繰り出された普通紙などの曲げ剛性が小さい長尺媒体Sを切断部15で切断し、単票媒体S1として排出口171から排出する場合の位置となる。第1支持位置において、案内部材30の係合板51は、係合受けピン71を、第1係合スリット孔53に係合させている。
【0048】
案内部材30を、他の位置から第1支持位置に変位させる場合の操作を説明する。
ユーザーは、最初に案内部材30の前側の取っ手部38に手を差し込み、レバーを前側に移動させることで、係合解除板60を動作させ、係合板51を上流側にスライドさせる。これにより、他の位置に係合されていた係合受けピン71が、変位用スリット孔52に移動する。言い換えると、係合板51を上流側にスライドさせて、第2係合スリット孔54や、第3係合スリット孔55に位置していた係合受けピン71を、変位用スリット孔52に移動させる。
【0049】
その後、ユーザーは、案内部材30が第1支持位置となるように、取っ手部38を支えて押し下げる。このときには、ユーザーはレバーを前側に移動させていなくてもよい。この動作により、案内部材30は、回動軸31を中心に下方向に回転し、係合受けピン71が、変位用スリット孔52の上端部に当たる。
【0050】
係合受けピン71が、変位用スリット孔52の上端部に当たると、変位用スリット孔52の上端部に接続する第1係合スリット孔53に係合受けピン71が位置することで、コイルばね65の引っ張り力により、係合解除板60が初期位置(
図3参照)に戻る。これに併せて、係合解除板60に押圧されて上流側にスライドしていた係合板51が、下流側にスライドすることで、係合受けピン71は、第1係合スリット孔53に係合する。この動作により、案内部材30は、第1支持位置に変位して固定される。
【0051】
次に、案内部材30が、第2支持位置に位置する場合について説明する。
図7は、案内部材30が第2支持位置に位置する場合を示している。なお、第2支持位置は、第1支持位置よりも上方に位置する。
【0052】
第2支持位置は、ロール紙Rから繰り出された写真用紙などの曲げ剛性が大きい長尺媒体Sを、案内する場合の位置となる。そして、記録された長尺媒体Sは、案内部材30の下方(搬送方向Aの下流)で、収容部11の上段の保持部112に設置された、保持部材26が設置された芯部材25に巻き取られる。なお、保持部材26が設置された芯部材25などにより、巻取部18が構成される。第2支持位置において、案内部材30の係合板51は、係合受けピン71を、第2係合スリット孔54に係合させている。
【0053】
案内部材30を第1支持位置から第2支持位置に変位させるには、上述したと同様に、案内部材30の取っ手部38に手を差し込み、レバーを引き、係合解除板60を回転させることにより、係合板51をスライドさせ、第1支持位置の係合(第1係合スリット孔53と係合受けピン71との係合)を解除する。
【0054】
その後、案内部材30を上方向に回動させ、第2係合スリット孔54に接続する変位用スリット孔52の位置に、係合受けピン71を位置させると、コイルばね65の引っ張り力により、係合解除板60が初期位置に戻る。これに併せて、係合解除板60に押圧されて上流側にスライドしていた係合板51が、下流側にスライドすることで、係合受けピン71は、第2係合スリット孔54に係合する。この動作により、案内部材30は、第2支持位置に変位して固定される。
【0055】
なお、本実施形態の係合板51は、
図4に示すように、第1係合スリット孔53において、その下方の外形が下方向に傾斜して広がるテーパT1を有して、変位用スリット孔52に接続している。この形状により、案内部材30の取っ手部38に手を差し込み、レバーを引かなくても、そのまま、取っ手部38を上方向に持ち上げると、係合受けピン71がこの第1係合スリット孔53のテーパT1を摺動して変位用スリット孔52に移動させることができる。
【0056】
従って、ユーザーは、案内部材30の取っ手部38に手を差し込み、そのまま上方向に持ち上げることで、案内部材30を第1支持位置から第2支持位置に変位させることが可能となっている。言い換えると、案内部材30を第1支持位置から第2支持位置に変位(上昇)させる場合は、係合解除板60で係合を解除しなくても、変位させることができる。なお、案内部材30を第2支持位置から第1支持位置に変位(下降)させる場合は、通常通りに係合解除板60で係合を解除して変位させることになる。
【0057】
なお、第2支持位置は、写真用紙などの曲げ剛性が大きい長尺媒体Sを、案内するだけではなく、ロール紙Rは用いずに、単票紙やボード紙などの単票媒体を、搬送方向Aの下流側から上流側(搬送方向Aとは反対方向)に向かって記録部13に単票媒体を供給する際に、単票媒体を支持する位置ともなる。
【0058】
詳細には、本実施形態では、単票紙やボード紙などの単票媒体を、排出口171から記録部13に向けて搬送方向Aとは反対方向に搬送させることができる。この場合には、各ローラーは搬送方向Aとは反対方向に搬送するように回転する。そして、第2支持位置に固定される案内部材30は、排出口171から単票媒体を挿入する際に単票媒体を支持する。
【0059】
なお、供給された単票紙やボード紙などの単票媒体の上流側端部は、一旦、筐体10の後面側から装置外部に出た後、搬送方向Aに搬送されて記録が行われる。記録が行われた単票紙やボード紙などの単票媒体は、再度、案内部材30に支持され排出口171から排出される。
【0060】
次に、案内部材30が、開放位置に位置する場合について説明する。
図8は、案内部材30が開放位置に位置する場合を示している。なお、開放位置は、第2支持位置よりも上方に位置する。
【0061】
開放位置は、案内部材30が排出口171を略塞ぐ位置となる。従って、案内部材30が開放位置に位置する場合、記録媒体は排出されない。案内部材30が開放位置に位置する場合、案内部材30の下方が開放される状態となり、記録装置1の内部にアクセスすることが可能となる。
【0062】
詳細には、案内部材30の下方で、記録装置1の内部には、メンテナンス用の廃液ボックス90が着脱可能に設置されている。そして、案内部材30を開放位置に変位させることにより、この廃液ボックス90を前方向に引き出すことで、記録装置1から取り外すことができる。また、廃液ボックス90を元の位置に装着することができる。開放位置において、案内部材30の係合板51は、係合受けピン71を、第3係合スリット孔55に係合させている。
【0063】
案内部材30を第2支持位置から開放位置に変位させるには、上述したと同様に、案内部材30の取っ手部38に手を差し込み、レバーを引き、係合解除板60を回転させることにより、係合板51をスライドさせ、第2支持位置の係合(第2係合スリット孔54と係合受けピン71との係合)を解除する。
【0064】
その後、案内部材30を上方向に回動させて、係合受けピン71が、変位用スリット孔52の下端部に当たると、変位用スリット孔52の下端部に接続する第3係合スリット孔55に係合受けピン71が位置することで、コイルばね65の引っ張り力により、係合解除板60が初期位置に戻る。これに併せて、係合解除板60に押圧されて上流側にスライドしていた係合板51が、下流側にスライドすることで、係合受けピン71は、第3係合スリット孔55に係合する。この動作により、案内部材30は、開放位置に変位して固定される。
【0065】
なお、本実施形態の係合板51は、
図4に示すように、第2係合スリット孔54において、その下方の外形が下方向に傾斜して広がるテーパT2を有して、変位用スリット孔52に接続している。この形状により、案内部材30の取っ手部38に手を差し込み、レバーを引かなくても、そのまま、取っ手部38を上方向に持ち上げると、係合受けピン71がこの第2係合スリット孔54のテーパT2を摺動して変位用スリット孔52に移動させることができる。
【0066】
従って、ユーザーは、案内部材30の取っ手部38に手を差し込み、そのまま上方向に持ち上げることで、案内部材30を第2支持位置から解放位置に変位させることが可能となっている。言い換えると、案内部材30を第2支持位置から解放位置に変位(上昇)させる場合は、係合解除板60で係合を解除しなくても、変位させることができる。なお、案内部材30を解放位置から第2支持位置に変位(下降)させる場合は、通常通りに係合解除板60で係合を解除して変位させることになる。
【0067】
図9は、案内部材30が第1支持位置に位置する場合の記録媒体の排出を示す側断面図である。案内部材30が第1支持位置に位置する場合の長尺媒体S(単票媒体S1)の排出動作について説明する。
【0068】
案内部材30を第1支持位置に位置させることで、支持部14が記録媒体を支持する位置よりも下方に排出される単票媒体S1を支持して媒体収容部としての大容量スタッカー80に案内する。大容量スタッカー80は、
図9に示すように、搬送方向Aにおいて、案内部材30の下流で着脱可能に筐体10に装着される。また、大容量スタッカー80は、案内部材30の第1支持位置より下方に設置され、単票媒体S1を収容する。
【0069】
大容量スタッカー80は、
図9に示すように、ロール紙Rを用いた場合に、排出部17から排出される単票媒体S1を順次積載するための積載部81と、積載部81を支持する複数の積載用フレーム82と、複数の積載用フレーム82を受けて、高さ方向に延びる例えば4本の脚用フレーム83と、を有する。脚用フレーム83の下端部には、キャスター(図示省略)が取り付けられ、大容量スタッカー80が移動可能となっている。また、積載部81には、単票媒体S1を受ける積載面811が構成される。なお、積載面811は、
図9に示すように、排出方向Bに沿って緩やかに上昇する傾斜面として構成されている。
【0070】
図9では、記録装置1に装着した大容量スタッカー80に、直前に排出された単票媒体S1が積載されている状態を示している。大容量スタッカー80の積載面811に、排出された単票媒体S1が積載される場合、単票媒体S1の搬送方向A(排出方向B)の上流側の端部となる後端部S1bは、案内部材30の第3案内部35上に位置した状態で順次積載される。
【0071】
言い換えると、案内部材30は、第1支持位置に位置することで、大容量スタッカー80に単票媒体S1を積載する際の、積載面811の一部を構成する。更に言い換えると、案内部材30は、積載経路の一部を構成している。
【0072】
そして、次に搬送される長尺媒体Sの搬送方向Aの下流側の端部となる前端部Saは、排出ローラー対16に挟持されて、排出口171から排出方向Bに排出されてくる。その場合、長尺媒体Sの前端部Saが下方向に下がり、側面視で上に凸形状に湾曲しながら排出される。そして、長尺媒体Sは、前端部Saが積載面811に近くなり、積載されている単票媒体S1に当接した場合、先端部Saは、積載されている単票媒体S1の面に沿いながら摺動して排出方向Bに移動していく。
【0073】
そして、記録が終了し、長尺媒体Sが所定の長さになった場合、切断部15で長尺媒体Sが切断され、単票媒体S1が形成され、排出口171から単票媒体S1が排出される。その場合、排出された単票媒体S1の後端部S1bは、案内部材30の第3案内部35上に積載されている単票媒体S1の後端部S1bの上部に同様に位置して積載される。
【0074】
図10は、案内部材30が第2支持位置に位置する場合の記録媒体の排出を示す側断面図である。案内部材30が第2支持位置に位置する場合の長尺媒体Sの排出動作について説明する。
【0075】
案内部材30を第2支持位置に位置させることで、ロール紙Rを用いて記録された長尺媒体Sを切断せずに、巻取部18で巻き取ることができる。なお、案内部材30を第2支持位置に位置させた場合、案内部材30は、支持部14が長尺媒体Sを支持する高さ位置と略同様の位置で長尺媒体Sを支持し、巻取部18に案内する状態となる。また、同様に、案内部材30を第2支持位置に位置させた場合、案内部材30は、排出ローラー対16が長尺媒体Sを挟持する高さ位置と略同様の位置で長尺媒体Sを支持し、巻取部18に案内する状態となる。
【0076】
上述する位置関係により、支持部14から案内部材30に至る間で、長尺媒体Sが下方向に移動することを防いでいる。また、特に、排出ローラー対16の下側のローラーとなる駆動ローラー161は、曲率が大きいため、排出ローラー対16が長尺媒体Sを挟持する高さ位置と略同様の位置で長尺媒体Sを支持することにより、長尺媒体Sが下方向に移動して曲率が大きい駆動ローラー161に巻き付くことを防いでいる。これにより、長尺媒体Sの品質を維持している。
【0077】
巻取部18は、搬送方向Aの下流で、案内部材30の下方となる収容部11において、本実施形態では、上段の保持部112に設置される。また、巻取部18は、保持部材26が設置された芯部材25などからなる巻取りロール体R1、及び巻取りロール体R1を巻取り方向Cに回転させる駆動部(図示省略)などにより構成される。
【0078】
巻き取る際には、長尺媒体Sは、排出ローラー対16の駆動ローラー161と、案内部材30の第1案内部32と第2案内部33とが有する曲面となる案内面30aと、巻取りロール体R1との間で、テンションが掛った状態で、長尺媒体Sの搬送に同期して巻き取られる。
【0079】
本実施形態での巻取部18に巻き取られる記録媒体は、上述したように、写真用紙などの曲げ剛性が大きい長尺媒体Sとなる。なお、収容部11において、下段の保持部112に設置され、記録媒体を記録部13に供給するロール紙Rは、この写真用紙が巻き重ねられたものである。
【0080】
なお、案内部材30において、第1案内部32と第2案内部33との案内面30aは、搬送される長尺媒体Sを摺動させて案内する。そして、上述したように、案内部材30の第1案内部32と第2案内部33とが有する曲面(案内面30a)の曲率は、排出ローラー対16のうち、下側に配置されるローラーとなる駆動ローラー161の外周の曲率よりも小さく形成されている。
【0081】
また、写真用紙は、記録面となる面に、画像品質を向上させるためのコート層を有している。コート層は、曲率が大きいもの(曲面の半径が小さいもの)に支持されて摺動した場合、コート層が割れやすい特性を有している。本実施形態では、駆動ローラー161の有する曲面に支持されて摺動した場合には、コート層が割れやすくなる。
【0082】
しかし、本実施形態の案内部材30の第1案内部32と第2案内部33とが有する案内面30aに支持されて摺動する場合にはコート層が割れることがない。言い換えると、案内部材30の第1案内部32と第2案内部33とが有する案内面30aの曲率を、コート層が割れない曲率となるように、発明者らの実験などにより設定されている。
【0083】
図11は、案内部材30が開放位置に位置する場合の側断面図である。案内部材30が開放位置に位置する場合について説明する。
【0084】
案内部材30を開放位置に位置させることで、メンテナンス用の廃液ボックス90を取外し、また、装着することができる。廃液ボックス90は、記録媒体に対して縁なし印刷を行った場合に、記録媒体の幅方向の両端部から外側に吐出されたインクを流路(図示省略)などにより集めて廃液ボックス90に流入させる。廃液ボックス90は、案内部材30の幅方向の両端部の下方で、また、支持部14の下方に、着脱可能に1つずつ設置されている。
【0085】
廃液ボックス90は、概略、廃液を収容する箱状の収容部91と、収容部91の前方向に取っ手部92とを備えて構成されている。また、廃液ボックス90は、前後方向に移動可能となるようにフレーム(図示省略)に支持されている。
【0086】
案内部材30を開放位置に変位させることにより、排出口171を塞ぐ状態となる。そして、案内部材30の下方で筐体10の前面側には、記録装置1の内部の廃液ボックス90が露出する状態となる。ユーザーは、この状態で、廃液ボックス90の手前の取っ手部92に指先を掛けて、前方に引き出すことにより、廃液ボックス90を記録装置1から取外すことができる。また、ユーザーは、交換する廃液ボックス90を、取り外した場合とは逆の手順で元の位置に装着することができる。
【0087】
次に、
図5、
図7、
図8を参照して、案内部材30の支持位置を検出するセンサー及び制御部24について説明する。
本実施形態の記録装置1は、案内部材30が変位する位置となる第1支持位置、第2支持位置、及び開放位置の3つの位置を検出する検出センサー40を備えている。検出センサー40は、第1検出センサー41と第2検出センサー42との2つのセンサーで構成されている。
【0088】
検出センサー40は、光学式センサーである。第1検出センサー41は、発光部から射出される光を、発光部と対向する受光部で受光する。第2検出センサー42も第1検出センサー41と同様に構成されている。本実施形態では、受光した場合が「OFF」、受光しない場合が「ON」としている。また、検出センサー40は、案内部材30の端部36で上流側に形成される遮光板37をそれぞれ挟む形態で上側に第1検出センサー41、下側に第2検出センサー42が設置されている。
【0089】
図5に示すように、案内部材30が第1支持位置に位置する場合には、遮光板37は、第1検出センサー41、第2検出センサー42の双方を遮光する。従って、第1検出センサー41、第2検出センサー42ともに「ON」状態となる。
図7に示すように、案内部材30が第2支持位置に位置する場合には、遮光板37は、第1検出センサー41を遮光せず、第2検出センサー42は遮光する。従って、第1検出センサー41は、「OFF」、第2検出センサー42は「ON」となる。また、
図8に示すように、案内部材30が開放位置に位置する場合には、遮光板37は、第1検出センサー41、第2検出センサー42の双方を遮光しない。従って、第1検出センサー41、第2検出センサー42ともに「OFF」状態となる。
【0090】
制御部24は、操作パネル20からの出力モードの入力指示と、これらの検出センサー40の検出結果と、が異なる場合には、操作パネル20やインジケーター(図示省略)や報音部(図示省略)などを通して、ユーザーに情報を表示することや、報知することができる。
【0091】
本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0092】
本実施形態の記録装置1は、ロール状の長尺媒体である記録媒体に記録を行う記録部13と、記録部13に対向して配置され記録媒体を支持する支持部14と、支持部14の下流で長尺媒体Sを切断して単票媒体S1とする切断部15と、を備えている。また、記録装置1は、切断部15の下流で記録媒体を案内する案内部材30と、案内部材30の下流で長尺媒体Sを巻き取る巻取部18と、案内部材30の下流で単票媒体S1を収容する着脱可能な媒体収容部としての大容量スタッカー80と、を備えている。そして、案内部材30は、大容量スタッカー80に搬送される記録媒体を支持する第1支持位置と、巻取部18に搬送される長尺媒体Sを支持し、第1支持位置より上方となる第2支持位置とに変位可能である。
この構成により、案内部材30は、第1支持位置に変位して、大容量スタッカー80に搬送される記録媒体を支持する。また、案内部材30は、第1支持位置より上方となる第2支持位置に変位して、巻取部18に搬送される長尺媒体Sを支持する。従って、案内部材30は、媒体の排出先や媒体の態様などに応じて、適切な排出を行わせることができる。
【0093】
本実施形態の記録装置1において、案内部材30は、第1支持位置に配置された場合、支持部14が記録媒体を支持する位置よりも下方に排出される単票媒体S1を支持して大容量スタッカー80に案内する。
この構成により、記録媒体を支持する支持部14よりも下方に単票媒体S1が排出される際に、案内部材30を第1支持位置に配置することで、低い位置に設置される大容量スタッカー80に導く経路を遮ることを防止することができる。
【0094】
本実施形態の記録装置1において、大容量スタッカー80は、案内部材30の第1支持位置より下方に設置され、単票媒体S1を収容する。
この構成により、単票媒体S1を安定して大容量スタッカー80に導くことができ、単票媒体S1を複数収容することができる。
【0095】
本実施形態の記録装置1において、案内部材30は、第2支持位置に配置された場合、支持部14が記録媒体を支持する高さ位置で長尺媒体Sを支持し、巻取部18に案内する。
この構成により、支持部14から案内部材30に至る間で、記録媒体が下方向に移動することを防ぐことができ、巻取りを行う記録媒体の品質を保護することができる。
【0096】
本実施形態の記録装置1は、切断部15の下流に排出ローラー対16を有し、案内部材30の長尺媒体Sを案内する案内面30aの曲率は、排出ローラー対16のうち下側に配置される駆動ローラー161の外周の曲率よりも小さく設定されている。
この構成により、案内部材30の長尺媒体Sを案内する案内面30aを長尺媒体Sが摺動した場合、長尺媒体Sの品質を保護することができる。特に、写真用紙を巻き取る場合、写真用紙に有するコート層を保護することができる。
【0097】
本実施形態の記録装置1において、案内部材30は、第2支持位置に配置された状態において、排出ローラー対16が長尺媒体Sを挟持する高さ位置で長尺媒体Sを案内する。
この構成により、案内部材30が、排出ローラー対16が長尺媒体Sを挟持する高さ位置で長尺媒体Sを案内することで、排出ローラー対16の下側のローラーとなる駆動ローラー161に長尺媒体Sが巻き付くことを抑制させることができる。
【0098】
本実施形態の記録装置1において、案内部材30は、第2支持位置に配置された状態において、搬送方向Aの下流側から記録部13に単票紙やボード紙などの単票媒体を供給する際に、単票媒体を支持する。
この構成により、案内部材30が第2支持位置に配置された状態で、搬送方向Aの下流側から上流側(搬送方向Aとは反対方向)に向かって記録部13に単票媒体(単票紙やボード紙など)を供給することにより、第1支持位置に配置された状態で、搬送方向Aの下流側から上流側に向かって記録部13に単票媒体を供給することに比べて、容易に供給することができる。従って、搬送方向Aの下流側から上流側に向けて媒体を供給する場合、適正な位置に案内部材30が配置されることにより、搬送方向Aとは反対方向に向けての供給を安定させることができる。
【0099】
本実施形態の記録装置1において、案内部材30は、第2支持位置より上方で、記録装置1の内部にアクセス可能な開放位置に変位可能である。特に、本実施形態では、廃液ボックス90にアクセス可能となり、廃液ボックス90を着脱することができる。
この構成により、案内部材30の利便性を向上させることができる。また、案内部材30の操作と同様に、廃液ボックス90を前方向から操作(着脱)することができ、動作効率を向上させる。
【0100】
本実施形態の記録装置1において、案内部材30は、搬送方向Aの上流側に回動軸31を有し、回動軸31を中心に回転して変位する。
この構成により、案内部材30を変位させる場合、回動軸31を中心に回転することでよいため、案内部材30をスムーズに変位させることができる。
【0101】
本実施形態の記録装置1において、案内部材30の位置を検出する検出センサー40を備え、案内部材30の位置と、出力モードとが不一致の場合に報知する。
この構成により、案内部材30を手動で変位させる場合にも、案内部材30の位置と、出力モードとを一致させることができる。また、案内部材30の位置が不意に変化した場合などにも、適切に対応することができる。
【0102】
本実施形態の記録装置1は、案内部材30に設置される係合部50と、記録装置1の内部に設置され、係合部50を受ける係合受け部70と、を有し、案内部材30は、係合部50が係合受け部70に係合することにより、それぞれの位置に位置決めされる。
この構成により、案内部材30は、適正な位置で固定され、その位置を保持することができる。
【0103】
2.変形例1
本実施形態では、案内部材30が、第1支持位置に位置している状態において、大容量スタッカー80を用いて単票媒体S1を排出している。しかし、これには限られず、大容量スタッカー80を用いずに、排出口171から排出される単票媒体S1をユーザーが受けてもよい。また、記録装置1に内蔵される簡易スタッカー19を用いて、排出口171から排出される単票媒体S1をネットに収容することでもよい。
【0104】
3.変形例2
本実施形態では、巻取部18で巻き取られる記録媒体は、写真用紙などの曲げ剛性が大きい長尺媒体Sとしているが、これには限られず、普通紙を巻き取ることでもよい。
【0105】
4.変形例3
本実施形態では、案内部材30が第2支持位置に位置する場合、搬送方向Aの下流側から上流側(搬送方向Aとは反対方向)に向かって記録部13に単票媒体(単票紙やボード紙など)を供給することができるとしている。しかし、これには限られず、筐体10の後面側に開口部(図示省略)を設け、この開口部から単票媒体(単票紙やボード紙など)を記録部13に供給する構成とすることでもよい。
【0106】
5.変形例4
本実施形態では、手動により案内部材30を変位させている。しかし、これには限られず、自動で変位させることでもよい。その場合、案内部材30の変位を制御する制御部(図示省略)と、案内部材を第1支持位置と第2支持位置とに変位させる駆動部(図示省略)と、を備え、制御部は、排出される記録媒体の態様に応じて駆動部を駆動させ、案内部材を、第1支持位置と第2支持位置とに変位させる構成とすることができる。なお、駆動部は、モーターや各種ギヤ、リンク機構などにより構成し、モーターの回転によりギヤ及びリンク機構などに駆動力が伝達されて、案内部材30を変位させる。
この構成とすることにより、ユーザーが手動で案内部材を変位させる必要が無く、制御部が、排出される記録媒体の態様に応じて駆動部を駆動して、案内部材を第1支持位置と第2支持位置とに変位させることができる。併せて、開放位置にも変位させることでよい。
【0107】
6.変形例5
上記、変形例4において、制御部は、排出される記録媒体の態様を、切断処理の有無、媒体収容部の装着の有無により判断することでもよい。これにより、記録媒体の態様に対応させて、適切に記録媒体を排出させることができる。
【符号の説明】
【0108】
1…記録装置、14…支持部、15…切断部、16…排出ローラー対、18…巻取部、24…制御部、30…案内部材、30a…案内面、31…回動軸、40…検出センサー、50…係合部、60…係合解除板、70…係合受け部、80…媒体収容部としての大容量スタッカー、90…廃液ボックス、161…駆動ローラー、A…搬送方向、R…ロール紙、S…長尺媒体、S1…単票媒体。