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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】断熱容器及び保存食入り容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/38 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
B65D81/38 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020147871
(22)【出願日】2020-09-02
(65)【公開番号】P2022042431
(43)【公開日】2022-03-14
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 卓久
(72)【発明者】
【氏名】吉野 修弘
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-168361(JP,A)
【文献】特開2005-291296(JP,A)
【文献】特開2019-196223(JP,A)
【文献】特開2013-019475(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0325915(US,A1)
【文献】特開2014-234239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体状に配置され、それぞれ真空断熱材を含む6つの面部材を備えた断熱容器と、
前記断熱容器に収容された保存食と、
前記断熱容器の前記6つの面部材によって形成される内部空間に配置され、飲料水を収容した水入り容器と、を備え、
前記飲料水の体積は、前記内部空間の体積の20%以上60%以下となる、保存食入り容器
【請求項2】
前記6つの面部材を収容する収容箱を更に備えた、請求項1に記載の保存食入り容器
【請求項3】
前記6つの面部材は、第1面部材と、第2面部材と、第3面部材と、第4面部材と、第5面部材と、第6面部材と、を含み、
前記第1面部材と前記第2面部材とが互いに対向し、前記第3面部材と前記第4面部材とが互いに対向し、前記第5面部材と前記第6面部材とが互いに対向し、
前記第1面部材と前記第3面部材と前記第4面部材とが互いに一体となって第1真空断熱部材を構成し、
前記第2面部材と前記第5面部材と前記第6面部材とが互いに一体となって第2真空断熱部材を構成し、
前記第1真空断熱部材と前記第2真空断熱部材とが、互いに別部材から構成される、請求項1又は2に記載の保存食入り容器
【請求項4】
前記断熱容器の前記内部空間に保冷剤が配置されていない、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の保存食入り容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施の形態は、断熱容器及び保存食入り容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、災害に備えて、防災倉庫等の密閉空間内に防災用品を常備しておきたいという要望がある。防災用品の中には、保存食や飲料水を含むものも含まれる。しかしながら、夏季等の高温となる時期に、防災倉庫等の密閉空間内に保存食や飲料水等を放置しておくと、密閉空間内の温度が上昇してしまう。この場合、保存食や飲料水の品質の低下が速くなるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-196223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、夏季等の高温となる時期に、密閉空間内に放置した場合でも、内容物の過度な温度上昇を抑制することが可能な、断熱容器及び保存食入り容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施の形態による断熱容器は、直方体状に配置され、それぞれ真空断熱材を含む6つの面部材と、前記6つの面部材によって形成される内部空間に配置され、水を収容した水入り容器と、を備え、前記水の体積は、前記内部空間の体積の20%以上となる。
【0006】
本実施の形態による断熱容器において、前記6つの面部材を収容する収容箱を更に備えていてもよい。
【0007】
本実施の形態による断熱容器において、前記6つの面部材は、第1面部材と、第2面部材と、第3面部材と、第4面部材と、第5面部材と、第6面部材と、を含み、前記第1面部材と前記第2面部材とが互いに対向し、前記第3面部材と前記第4面部材とが互いに対向し、前記第5面部材と前記第6面部材とが互いに対向し、前記第1面部材と前記第3面部材と前記第4面部材とが互いに一体となって第1真空断熱部材を構成し、前記第2面部材と前記第5面部材と前記第6面部材とが互いに一体となって第2真空断熱部材を構成し、前記第1真空断熱部材と前記第2真空断熱部材とが、互いに別部材から構成されてもよい。
【0008】
本実施の形態による保存食入り容器は、本実施の形態による断熱容器と、前記断熱容器に収容された保存食と、を備えている。
【0009】
本実施の形態による保存食入り容器において、前記水は、飲料水であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本実施の形態によれば、夏季等の高温となる時期に、断熱容器を密閉空間内に放置した場合でも、内容物の過度な温度上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施の形態による保存食入り容器及び断熱容器を示す分解斜視図である。
図2】一実施の形態による保存食入り容器及び断熱容器を示す斜視図である。
図3】一実施の形態による保存食入り容器及び断熱容器を示す水平断面図(図2のIII-III線断面図)である。
図4】一実施の形態による保存食入り容器及び断熱容器を示す垂直断面図(図2のIV-IV線断面図)である。
図5】一実施の形態による保存食入り容器及び断熱容器を示す垂直断面図(図2のV-V線断面図)である。
図6】面部材に含まれる真空断熱材を示す断面図である。
図7】断熱容器Aについて、内部空間の体積に占める水の体積の割合[%]を変化させたときの水温の変化をシミュレーションしたグラフである。
図8】断熱容器Bについて、内部空間の体積に占める水の体積の割合[%]を変化させたときの水温の変化をシミュレーションしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら一実施の形態について説明する。以下に示す各図は、模式的に示したものである。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、技術思想を逸脱しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。なお、以下に示す各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。また、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名は、実施の形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含むものとする。
【0013】
また、以下の実施の形態において、「X方向」とは、断熱容器を構成する直方体の一辺に平行な方向であり、「Y方向」とは、断熱容器を構成する直方体の他の一辺に平行かつX方向に垂直な方向である。「Z方向」とは、断熱容器を構成する直方体の更に他の一辺に平行かつX方向及びY方向の両方に垂直な方向である。
【0014】
本実施の形態による保存食入り容器及び断熱容器の構成について、図1乃至図5を用いて説明する。図1は、保存食入り容器及び断熱容器を示す分解斜視図である。図2は、保存食入り容器及び断熱容器を示す斜視図であり、図3乃至図5は、保存食入り容器を示す断面図である。なお、図2において、収容箱30の表示を省略している。
【0015】
図1乃至図5に示すように、本実施の形態による保存食入り容器50は、断熱容器10と、断熱容器10に収容された保存食Fと、を備えている。このうち断熱容器10は、6つの面部材11~16と、水を収容した水入り容器21とを有する。6つの面部材11~16は、直方体状に配置され、それぞれ真空断熱材を含む。水入り容器21は、6つの面部材11~16によって形成される内部空間Sに配置されている。水入り容器21に収容された水の体積Vwは、内部空間Sの体積Vsの20%以上となっている。また、6つの面部材11~16は、収容箱30に収容されている。
【0016】
次に、断熱容器10について説明する。断熱容器10は、上述したように真空断熱材を含む6つの面部材11~16と、水を収容した水入り容器21とを有する。6つの面部材11~16は、略直方体状に形成されている。面部材11~16は、第1面部材11と、第2面部材12と、第3面部材13と、第4面部材14と、第5面部材15と、第6面部材16と、を含む。本明細書において、第1面部材11と、第2面部材12と、第3面部材13と、第4面部材14と、第5面部材15と、第6面部材16とをまとめて、面部材11~16ともいう。
【0017】
第1面部材11と第2面部材12とは、内部空間Sを介して互いに対向している。また第3面部材13と第4面部材14とは、内部空間Sを介して互いに対向している。第5面部材15と第6面部材16とは、内部空間Sを介して互いに対向している。
【0018】
第1面部材11は、断熱容器10の天面側(Z方向プラス側)に配置される。第1面部材11は、板状の部材であって、平面視で長方形形状を有している。
【0019】
第2面部材12は、断熱容器10の底面側(Z方向マイナス側)に配置される。第2面部材12は、第1面部材11と平行に位置する。第2面部材12は、板状の部材であって、平面視で長方形形状を有している。第2面部材12上に、水入り容器21と保存食Fとが載置される。なお、第1面部材11と第2面部材12の形状(平面形状及び/又は厚み)は、互いに同一としても良く、互いに異なっても良い。
【0020】
第3面部材13は、断熱容器10の右側面側(X方向プラス側)に配置される。第3面部材13は、第1面部材11及び第2面部材12に対して垂直に位置する。第3面部材13は、板状の部材であって、平面視で長方形形状を有している。
【0021】
第4面部材14は、断熱容器10の左側面側(X方向マイナス側)に配置される。第4面部材14は、第3面部材13に対して平行に位置する。第4面部材14は、板状の部材であって、平面視で長方形形状を有している。なお、第3面部材13と第4面部材14の形状(平面形状及び/又は厚み)は、互いに同一としても良く、互いに異なっても良い。
【0022】
第5面部材15は、断熱容器10の正面側(Y方向マイナス側)に配置される。第5面部材15は、第1面部材11及び第2面部材12に対して垂直、かつ第3面部材13及び第4面部材14に対して垂直に位置する。第5面部材15は、板状の部材であって、平面視で長方形形状を有している。
【0023】
第6面部材16は、断熱容器10の背面側(Y方向プラス側)に配置される。第6面部材16は、第5面部材15に対して平行に位置する。第6面部材16は、板状の部材であって、平面視で長方形形状を有している。なお、第5面部材15と第6面部材16の形状(平面形状及び/又は厚み)は、互いに同一としても良く、互いに異なっても良い。
【0024】
各面部材11~16の厚みT1(図5参照)は、それぞれ例えば3mm以上30mm以下とすることが好ましく、5mm以上15mm以下とすることがより好ましい。なお、各面部材11~16の厚みT1とは、各面部材11~16の主たる面に対して垂直な方向の距離であり、主たる面の面内で最も厚い部分における厚みをいう。各面部材11~16の厚みT1は、互いに同一であっても良く、各面部材11~16の厚みT1が互いに異なっていても良い。
【0025】
本実施の形態において、第1面部材11と第3面部材13と第4面部材14とが互いに一体となって第1真空断熱部材17を構成している。また第2面部材12と第5面部材15と第6面部材16とが互いに一体となって第2真空断熱部材18を構成している。第1真空断熱部材17と第2真空断熱部材18とは、互いに別部材から構成されている。
【0026】
第1真空断熱部材17は、正面側(Y方向マイナス側)から見て、底面側(Z方向マイナス側)に開放された逆U字状(コ字状)となっている。第1面部材11のX方向両側にそれぞれ第3面部材13と第4面部材14とが連結され、第1真空断熱部材17が構成されている。第1面部材11と第3面部材13との間には、溝部26aが形成されている。また第1面部材11と第4面部材14との間には、溝部26bが形成されている。第1真空断熱部材17は、真空断熱材を含む1枚の板状の部材を2つの溝部26a、26bでそれぞれ折り曲げることにより、逆U字状(コ字状)に形成される(図1の仮想線参照)。このとき、第3面部材13及び第4面部材14は、それぞれ第1面部材11に対して直角となるように折れ曲がる。
【0027】
第2真空断熱部材18は、側面側(X方向プラス側)から見て、天面側(Z方向プラス側)に開放されたU字状(コ字状)となっている。第2面部材12のY方向両側にそれぞれ第5面部材15と第6面部材16とが連結され、第2真空断熱部材18が構成されている。第2面部材12と第5面部材15との間には、溝部27aが形成されている。また第2面部材12と第6面部材16との間には、溝部27bが形成されている。第2真空断熱部材18は、真空断熱材を含む1枚の板状の部材を2つの溝部27a、27bでそれぞれ折り曲げることにより、U字状(コ字状)に形成される(図1の仮想線参照)。このとき、第5面部材15及び第6面部材16は、それぞれ第2面部材12に対して直角となるように折れ曲がる。
【0028】
このように別体に構成された第1真空断熱部材17と第2真空断熱部材18とを互いに組合せることにより、6つの面部材11~16が略直方体状に形成される。このとき、第1真空断熱部材17の第3面部材13及び第4面部材14と、第2真空断熱部材18の第5面部材15及び第6面部材16とが、互いに直交するように配置される。また、第1真空断熱部材17と第2真空断熱部材18とは、互いに着脱自在になっている。したがって、例えば第1真空断熱部材17を第2真空断熱部材18から取り外すことにより、保存食F又は水入り容器21を取り出すことができる。その後、第1真空断熱部材17を第2真空断熱部材18に被せるように取り付けることにより、6つの面部材11~16が直方体状となり、断熱性をもつ内部空間Sが形成される。
【0029】
なお、6つの面部材11~16は、必ずしも2つのU字状(コ字状)の真空断熱部材(第1真空断熱部材17及び第2真空断熱部材18)から構成されていなくても良い。例えば、6つの面部材11~16が全体として一つの部材から構成されていても良い。また6つの面部材11~16がそれぞれ独立して別体に構成され、この6つの面部材11~16を組合せて略直方体状に構成しても良い。
【0030】
次に、面部材11~16に含まれる真空断熱材について説明する。図6に示すように、面部材11~16に含まれる真空断熱材40は、芯材41と外装材42とを有していても良い。このうち芯材41としては、例えば、シリカ等の粉体、ウレタンポリマー等の発泡体、グラスウール等の繊維体等の多孔質体を使用してもよい。また外装材42は、芯材41の外周を覆う部材であり、芯材41から熱溶着層、ガスバリア層が順に積層された可撓性を有するシートを使用してもよい。ガスバリア層は、金属箔、樹脂シートの片面に蒸着層が形成された蒸着シート等を使用してもよい。金属箔は、例えばアルミニウムを使用することができる。蒸着層は、例えば、アルミニウム、アルミニウム酸化物、ケイ素酸化物を使用することができる。
【0031】
次に、図3及び図4を参照して、断熱容器10の寸法について説明する。断熱容器10の寸法は、内部に保存食F及び水入り容器21を収容できる程度の大きさであれば良く、用途(例えば、保存食F等の種類や必要とされる量、保存食入り容器50を保存する場所等)に応じて、適宜設定することができる。
【0032】
一例として、6つの面部材11~16によって構成される直方体のX方向に沿う長さL1(外寸)は、50mm以上1000mm以下としても良く、200mm以上500mm以下とすることが好ましい。また、上記直方体のY方向に沿う長さL2(外寸)は、50mm以上1000mm以下としても良く、200mm以上500mm以下とすることが好ましい。さらに、上記直方体のZ方向に沿う長さL3(外寸)は、30mm以上500mm以下としても良く、50mm以上300mm以下とすることが好ましい。
【0033】
また、6つの面部材11~16によって取り囲まれる内部空間SのX方向に沿う長さL4は、30mm以上800mm以下としても良く、160mm以上400mm以下とすることが好ましい。また、内部空間SのY方向に沿う長さL5は、30mm以上800mm以下としても良く、200mm以上500mm以下とすることが好ましい。さらに、内部空間SのZ方向に沿う長さL6は、20mm以上400mm以下としても良く、40mm以上250mm以下とすることが好ましい。
【0034】
次に、収容箱30について説明する。図1図3乃至図5に示すように、収容箱30は、箱本体31と、箱本体31に開閉自在に取り付けられる蓋部材34とを有している。箱本体31は、箱底面32と、箱底面32の周囲に位置する4つの箱側面33とを有している。箱底面32には、第2面部材12が載置される。4つの箱側面33は、それぞれ第3面部材13、第4面部材14、第5面部材15及び第6面部材16の周囲に配置される。また、蓋部材34は、蓋天面35と、蓋天面35の周囲に位置する4つの蓋側面36とを有している。蓋天面35は、第1面部材11上に配置される。4つの蓋側面36は、4つの箱側面33の周囲に配置される。
【0035】
収容箱30には、6つの面部材11~16が収容される。収容箱30は、6つの面部材11~16が直方体状になった状態で安定して保持するために設けられている。したがって、6つの面部材11~16自体で安定して直方体状になる場合には、収容箱30は必ずしも設けられていなくても良い。また、収容箱30は、2つの部材(箱本体31及び蓋部材34)から構成されていなくても良く、例えば、底面と4つの側面と天面とを含む1つの部材から構成されていても良い。また、収容箱30は、箱本体31から構成され、蓋部材34を有していなくても良い。この場合、収容箱30は、その天面(第1面部材11)側が開放されていても良い。
【0036】
収容箱30の寸法は、6つの面部材11~16を安定して保持できれば良い。収容箱30の各辺の長さは、6つの面部材11~16によって構成される直方体の各辺よりもわずかに大きいことが好ましい。例えば、収容箱30の各辺の長さは、6つの面部材11~16によって構成される直方体の長さ(上述した長さL1、L2、L3)よりも5mm以上20mm以下程度長いことが好ましい。また、収容箱30は、必ずしも高い断熱性を有していなくても良い。収容箱30の材料としては、コートボール紙、段ボール紙等の紙、木、合成樹脂等を用いても良い。
【0037】
断熱容器10に収容される保存食Fは、比較的長期間(数か月から数年程度)にわたって貯蔵できるよう、腐敗を抑制する加工や処理がされた食品であっても良い。保存食Fは、袋等の容器に収容された状態で、6つの面部材11~16内の内部空間Sに配置される。この場合、保存食Fは、内部空間Sに複数収容されても良く、X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれに複数並んで配置されても良い。また、保存食Fは、2つの水入り容器21の間に配置される。しかしながらこれに限らず、保存食Fは、1つ以上の任意の個数であっても良い。また、保存食Fは、内部空間S内のいずれの位置に配置されても良い。
【0038】
水入り容器21は、水を収容した容器である。容器の材料は、例えば熱可塑性樹脂等の樹脂であっても良い。このような熱可塑性樹脂としては、例えばPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PC(ポリカーボネート)やアイオノマー樹脂を使用することが好ましい。水入り容器21に収容される水は、人が飲料可能な飲料水であることが好ましい。飲料水とは、人体に有益な成分を含有している飲料可能な水であり、人の飲用として、あるいは食物の調理用として、または炊飯用として使用可能なものであることが好ましい。具体的には、飲料水は、水道水、ミネラルウォーター等であっても良い。あるいは、水入り容器21に収容される水は、ジュース等、水を主成分とする飲用可能な飲料であっても良い。
【0039】
この場合、内部空間Sに2つの水入り容器21が配置されているが、水入り容器21の個数は1つ以上の任意の個数であっても良い。また、水入り容器21は、内部空間Sのいずれの位置に配置されていても良い。なお、水入り容器21を、内部空間Sを構成する直方体の各辺近傍に配置した場合、水入り容器21の水が面部材11~16の隙間から進入する熱を効率良く吸収することができ、内部空間Sの断熱性をより高めることができる。
【0040】
本実施の形態において、水入り容器21に収容された水の体積Vwは、内部空間Sの体積Vsの20%以上となっている(Vw/Vs≧0.2)。この水の体積Vwとは、内部空間Sに収容された全ての水入り容器21の水の体積の合計であり、常温・常圧(25℃・1atm)で測定された体積をいう。また、内部空間Sの体積Vsとは、内部に何も配置されていない状態で、6つの面部材11~16によって形成される内部空間Sの体積をいう。例えば、本実施の形態のように内部空間Sが直方体状である場合、内部空間Sの体積Vsは、L4×L5×L6によって求めることができる。
【0041】
水入り容器21に収容された水の体積Vwが、内部空間Sの体積Vsの20%以上となることにより、内部空間Sの内部の温度が食品の品質に影響する温度に達しないようにすることが可能となる。具体的には、夏季等の高温となる時期に、保存食入り容器50を倉庫等の密閉空間に放置した場合でも、内部空間Sの温度が40℃を上回らないようにすることができる。なお、水の体積Vwは、内部空間Sの体積Vsの25%以上、30%以上、35%以上、40%以上となっていても良い。また水の体積Vwは、内部空間Sの体積Vsの100%未満であればよく、60%以下、50%以下となっていても良い。水の体積Vwを内部空間Sの体積Vsの割合を上記範囲とすることで、保存食Fを収容する空間を十分に確保することができる。例えば、水の体積Vwは、内部空間Sの体積Vsの20%以上40%以下、20%以上60%以下、30%以上50%以下とすることができる。
【0042】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
【0043】
まず、保存食入り容器50を組み立てる。この場合、まず収容箱30の箱本体31を準備し、この箱本体31に第2真空断熱部材18を収容する。このとき、第2面部材12が箱底面32側にくるように、第2真空断熱部材18を配置する。次に、第2面部材12上に、保存食F及び水入り容器21を並べて配置する。続いて、箱本体31に第1真空断熱部材17を収容する。このとき、第1面部材11が天面側となるように、第1真空断熱部材17を配置する。これにより、6つの面部材11~16が直方体状に形成され、内部に断熱された内部空間Sが形成される。このように、6つの面部材11~16と、内部空間Sに配置された水入り容器21とにより、断熱容器10が構成される。その後、蓋部材34を箱本体31に装着することにより、保存食入り容器50の組み立てが完了する。
【0044】
このようにして得られた保存食入り容器50は、防災倉庫等の密閉空間内に備蓄され、長期間(数か月から数年程度)にわたって放置される場合がある。この間、夏季等の高温となる時期には、密閉空間の温度が上昇し、外気の温度以上に達することが想定される。具体的には、密閉空間の温度は、45℃以上、50℃以上、あるいは55℃程度まで上昇することもありうる。このような状況の下、密閉空間内に保存食入り容器50を放置しておくと、保存食入り容器50内の保存食Fや水入り容器21内の水の品質が低下することが考えられる。
【0045】
これに対して本実施の形態においては、断熱容器10は、それぞれ真空断熱材を含む6つの面部材11~16を備えており、保存食F及び水入り容器21は、この6つの面部材11~16によって形成される内部空間Sに収容されている。真空断熱材は、薄型である一方、高い断熱性を有する。6つの面部材11~16によって形成される内部空間Sの全域が、真空断熱材によって取り囲まれていることにより、内部空間Sの断熱性を高めることができる。これにより、内部空間Sに配置された保存食F及び水の温度上昇を抑えることができる。
【0046】
さらに本実施の形態においては、内部空間Sに水入り容器21が配置され、この水入り容器21に収容された水の体積Vwは、内部空間Sの体積Vsの20%以上となっている。比熱容量の大きい水が、内部空間Sの体積の一定の割合を占めることにより、内部空間Sの温度上昇を更に抑えることができる。これにより、内部空間Sに配置された保存食F及び水の温度上昇を抑えることができる。
【0047】
具体的には、夏季等の高温となる時期に、保存食入り容器50を倉庫等の密閉空間に放置した場合でも、内部空間Sの温度が40℃を上回らないようにすることができる。一般に、保存食F及び水の温度が40℃を超えると、品質の劣化が速くなるとされている。夏季等の高温となる時期における密閉空間の温度は、日中をピークに上昇し、日没に伴い下降する。密閉空間内の温度変化に伴い、保存食F及び水の温度も変化するが、品質維持のためには、目安となる40℃以下を維持することが求められる。本実施の形態においては、6つの面部材11~16によって形成される内部空間Sの全域が、真空断熱材によって取り囲まれ、かつ水入り容器21に収容された水の体積Vwは、内部空間Sの体積Vsの20%以上となっている。これにより、真空断熱材の高断熱性と水の熱容量とにより、内部空間Sの温度を40℃以下に維持することが可能となる。
【0048】
また本実施の形態によれば、断熱容器10は、6つの面部材11~16を収容する収容箱30を更に備えている。これにより、6つの面部材11~16によって形成される直方体の形状を安定して保持することかできる。このため、6つの面部材11~16の形状が崩れることがなく、面部材11~16の間に隙間が生じて内部空間Sの断熱性が低下することを抑えることができる。
【0049】
また本実施の形態によれば、第1真空断熱部材17と第2真空断熱部材18とが、互いに別部材から構成されている。これにより、第2真空断熱部材18を第1真空断熱部材17から取り外すことにより、保存食F及び水入り容器21を取り出したり、収容したりする作業を容易に行うことができる。また第2真空断熱部材18を第1真空断熱部材17に取り付けることにより、6つの面部材11~16によって直方体状の内部空間Sを容易に形成することができる。
【0050】
また本実施の形態によれば、水入り容器21に収容される水は、飲料水である。この場合、保存用の飲料水を用いて、内部空間Sの温度上昇を抑制することができるので、内部空間Sを効率良く用いることができる。
【0051】
本実施の形態によれば、上述した構成により、断熱容器10の内部空間Sに保冷剤を配置しなくても、内部空間Sの温度上昇を抑えることができる。この場合、保存食入り容器50を簡易に構成することができ、保存食入り容器50のコストが上昇することを抑えることができる。また、保冷剤を配置しないことにより、内部空間Sを有効に利用することができる。しかしながら、これに限らず、断熱容器10の内部空間Sに保冷剤を配置しても良い。
【0052】
(シミュレーション)
次に、シミュレーションにより、断熱容器の内部空間の体積に占める水の体積の割合と、断熱容器の内部空間の温度上昇との関係について説明する。
【0053】
断熱容器の外部の温度が高く、断熱容器の内部空間の温度が低い場合、所定の時間t[hr]の間に断熱容器の外部から内部に流入する熱量Q[J]は、下記の式(1)で示すことができる。
Q=(q+q)×t ・・・式(1)
ここで、qは、断熱容器を構成する面部材を通って流入する単位時間当たりの熱量[J/hr]であり、qは、断熱容器の面部材同士の間等の隙間を通って流入する単位時間当たりの熱量[J/hr]である。
【0054】
断熱容器を構成する面部材を通って流入する単位時間当たりの熱量q[J/hr]は、下記の式(2)で示すことができる。
=U×L×ΔT×3600 ・・・式(2)
ここで、Uは、断熱容器を構成する各々の面部材の熱貫流率[W/(m×K)]の平均であり、Lは、断熱容器の内部側の表面積[m]であり、ΔTは、断熱容器の内部と外部の温度差[K]である。
【0055】
断熱容器の面部材同士の間等の隙間を通って流入する単位時間当たりの熱量q[J/hr]は、下記の式(3)で示すことができる。
=D×a×C×ΔT ・・・式(3)
ここで、Dは、隙間風量[m/hr]であり、換気回数[回/hr]と断熱容器の内部空間の体積[m]との積で表すことができる。また、aは、環境係数であり、Cは、空気の熱容量[J/(m×K)]であり、ΔTは、断熱容器の内部と外部の温度差[K]である。本シミュレーションでは、隙間風量0.5m/hr、環境係数5.34、空気の比熱容量1.0J/(g×K)、空気の密度1.3×10g/mとした。
【0056】
なお、環境係数aは、断熱容器の外部と内部の温度差や断熱容器の外部の風速等の環境要因の影響を反映させるための乗率である。断熱容器の面部材同士の間等の隙間を通って流入する空気の移動は、面部材同士の間の大きさや形状等の断熱容器自体の要因だけでなく、環境要因の影響も受けるためである。
【0057】
断熱容器は、全ての面が真空断熱材を含む面部材に囲まれた2種類の直方体(断熱容器A、断熱容器B)を設定した。断熱容器Aとしては、幅×奥行き×高さが、230mm×180mm×90mmのものを設定し、断熱容器Bとしては、幅×奥行き×高さが、230mm×300mm×60mmのものを設定した。また、面部材は、真空断熱材(熱伝導率0.003W/(m×K)、厚み10mm)を含むものを設定した。なお、この面部材の熱貫流率Uは、0.3(W/(m×K))である。
【0058】
断熱容器の外部の温度は、25℃から55℃まで7時間かけて直線的に上昇し、次いで、55℃の状態を1時間維持し、その後、55℃から25℃まで7時間かけて下降するものとして設定した。なお、この設定は、例えば、日本の夏(最高気温30℃~35℃)に断熱容器を倉庫等の密閉空間に放置した状態を想定したものである。
【0059】
また、断熱容器の内部に所定の体積の水を配置する場合を想定した。断熱容器の内部空間の体積に占める水の体積の割合(%)は、断熱容器A(230mm×180mm×90mm)及び断熱容器B(230mm×300mm×60mm)のそれぞれについて下記のように変化させた。
【0060】
断熱容器Aについては、断熱容器の内部空間の体積に占める水の体積の割合を、6.7%、15.0%、17.5%、18.0%、20.0%、26.8%、40.3%にそれぞれ設定した。断熱容器Bについては、断熱容器の内部空間の体積に占める水の体積の割合を、12.1%、15.0%、17.5%、20.0%、24.2%、36.2%にそれぞれ設定した。
【0061】
上記より、断熱容器A、断熱容器Bのそれぞれについて、断熱容器の内部に配置された水の温度(水温)が40℃に到達するまでの時間[h]を算出した。具体的には、外部から断熱容器の内部空間に流入する熱量Q[J]が、水が初期温度(25℃)から40℃まで上昇するために必要な熱量Q[J]に達する時間を算出した。この結果を下記の表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
図7は、断熱容器Aについて、内部空間の体積に占める水の体積の割合[%]を変化させたときの水温の変化をシミュレーションした結果である。図7及び上記表1から明らかなように、断熱容器Aの内部空間の体積に占める水の体積の割合[%]が増えるにつれて、断熱容器の内部に配置された水の温度(水温)が40℃に到達する時間が遅くなった。とりわけ、断熱容器Aの内部空間の体積に占める水の体積の割合を20%以上にした場合、水温が40℃に到達することがなかった。
【0064】
図8は、断熱容器Bについて、内部空間の体積に占める水の体積の割合[%]を変化させたときの水温の変化をシミュレーションした結果である。図8及び上記表1から明らかなように、断熱容器Bの内部空間の体積に占める水の体積の割合[%]が増えるにつれて、断熱容器の内部に配置された水の温度(水温)が40℃に到達する時間が遅くなった。とりわけ、断熱容器Bの内部空間の体積に占める水の体積の割合を20%以上にした場合、水温が40℃に到達することがなかった。
【0065】
(実施例)
次に、本実施の形態の具体的実施例について説明する。
【0066】
断熱容器と、断熱容器に収容された保存食とを備えた、保存食入り容器を作製し、下記条件で、シミュレーションと同様の実験を行った。
・断熱容器の寸法:230mm×300mm×60mm
・断熱容器の内容積:4.1×10-3
・水の内容積:1000mL(500mLのペットボトルを2本)
・水の占有率(断熱容器の内部空間の体積に占める水の体積の割合):24.2%
・真空断熱材の厚み:10mm
【0067】
2本のペットボトル(水入り容器)を断熱容器の両側に配置し、2本のペットボトルの間に保存食(米飯入りのパウチ)を配置した。
【0068】
この保存食入り容器を、温度をプログラム設定可能なオーブンに収容し、温度変化を生じさせた。具体的には、オーブン内の温度を25℃から55℃まで7時間かけて直線的に上昇させ、次いで、55℃の状態を1時間維持し、その後、55℃から25℃まで7時間かけて下降させた。また、ペットボトル(水入り容器)の表面に熱電対を貼り付けて、ペットボトル表面の温度を水温として測定した。なお、測定は1秒間隔で行った。
【0069】
この結果、水温が40℃を超えることはなかった。水の最高到達温度は35.8℃であった。
【0070】
上記実施の形態及び変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記実施の形態及び変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0071】
10 断熱容器
11 第1面部材
12 第2面部材
13 第3面部材
14 第4面部材
15 第5面部材
16 第6面部材
17 第1真空断熱部材
18 第2真空断熱部材
21 水入り容器
30 収容箱
31 箱本体
32 箱底面
33 箱側面
34 蓋部材
35 蓋天面
36 蓋側面
50 保存食入り容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8