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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240730BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240730BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20240730BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H01M10/48 P
H01M10/42 P
B60R16/04 W
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020149097
(22)【出願日】2020-09-04
(65)【公開番号】P2022043687
(43)【公開日】2022-03-16
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】横山 亘
【審査官】新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-333662(JP,A)
【文献】特開2016-114584(JP,A)
【文献】特開2009-042157(JP,A)
【文献】特開2013-241095(JP,A)
【文献】特開2008-220080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H01M 10/48
H01M 10/42
B60R 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電源装置であって、
第1入出力端及び第2入出力端を備え、前記第1入出力端に高圧バッテリが電気的に接続された双方向DC/DCコンバータと、
電装品と前記双方向DC/DCコンバータの前記第2入出力端とを電気的に接続する接続線と、
前記接続線に電気的に接続され、前記高圧バッテリより電圧が低い低圧バッテリと、
前記低圧バッテリの放電電流を検出する電流検出部と、
前記低圧バッテリの電圧である低圧バッテリ電圧を検出する電圧検出部と、
前記双方向DC/DCコンバータを制御する制御部と、
前記電流検出部により検出された前記放電電流と前記電圧検出部により検出された前記低圧バッテリ電圧に基づいて前記低圧バッテリが劣化しているか否かを判定する劣化判定部と、を有し、
前記低圧バッテリは、前記電装品に電力を供給可能であり、
前記制御部は、前記車両の起動時に、前記低圧バッテリから前記第2入出力端に出力された直流電力を昇圧して前記第1入出力端に出力するように前記双方向DC/DCコンバータを制御し、前記劣化判定部は、前記車両の起動時に、前記低圧バッテリから前記第2入出力端に流れる前記放電電流と、当該放電電流が流れることで生じる前記低圧バッテリの電圧降下の値とに基づいて前記低圧バッテリが劣化しているか否かを判定し、
前記制御部は、前記車両の起動時に前記双方向DC/DCコンバータを制御する際に、前記低圧バッテリの電圧が前記低圧バッテリの劣化判定を行うことができるような値で、かつ、前記電装品を駆動させるために必要な値である所定値以下とならないように前記双方向DC/DCコンバータを制御する電源装置。
【請求項2】
前記低圧バッテリは、前記双方向DC/DCコンバータから前記電装品へ電力供給できない場合、前記電装品へ電力を供給するものであり、
前記劣化判定部により前記低圧バッテリが劣化していると判定された場合、前記電装品の使用を禁止する電装品使用禁止部を備える請求項1に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示のように、車両は、電装品と、電装品に電力を供給するバッテリと、を備える。電装品は、バッテリから供給される電力によって駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-101590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリが劣化すると、バッテリの内部抵抗が上昇したり、バッテリの容量が低下する。このため、車両は、バッテリの劣化判定を行う劣化判定部を備えている場合がある。劣化判定部は、バッテリの放電電流からバッテリの内部抵抗を算出することでバッテリの劣化判定を行う。この際、バッテリの放電電流が小さいと、バッテリの劣化判定を行いにくい。
【0005】
本開示の目的は、低圧バッテリの劣化判定を行うことができる電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する電源装置は、車両に搭載される電源装置であって、第1入出力端及び第2入出力端を備え、前記第1入出力端に高圧バッテリが電気的に接続された双方向DC/DCコンバータと、電装品と前記双方向DC/DCコンバータの前記第2入出力端とを電気的に接続する接続線と、前記接続線に電気的に接続され、前記高圧バッテリより電圧が低い低圧バッテリと、前記低圧バッテリの放電電流を検出する電流検出部と、前記低圧バッテリの電圧である低圧バッテリ電圧を検出する電圧検出部と、前記双方向DC/DCコンバータを制御する制御部と、前記電流検出部により検出された前記放電電流と前記電圧検出部により検出された前記低圧バッテリ電圧に基づいて前記低圧バッテリが劣化しているか否かを判定する劣化判定部と、を有し、前記制御部は、前記車両の起動時に、前記低圧バッテリから前記第2入出力端に出力された直流電力を昇圧して前記第1入出力端に出力するように前記双方向DC/DCコンバータを制御し、前記劣化判定部は、前記車両の起動時に、前記低圧バッテリから前記第2入出力端に流れる前記放電電流と、当該放電電流が流れることで生じる前記低圧バッテリの電圧降下の値とに基づいて前記低圧バッテリが劣化しているか否かを判定する。
【0007】
車両の起動時に、低圧バッテリから第2入出力端に出力された直流電力を昇圧して第1入出力端に出力するように双方向DC/DCコンバータを制御することで、双方向DC/DCコンバータによって低圧バッテリを放電させることができる。この際の放電電流と、当該放電電流によって生じる電圧降下の値に基づき、低圧バッテリが劣化しているか否かを判定できる。従って、低圧バッテリの劣化判定を行うことができる。
【0008】
上記電源装置について、前記低圧バッテリは、前記双方向DC/DCコンバータから前記電装品へ電力供給できない場合、前記電装品へ電力を供給するものであり、前記劣化判定部により前記低圧バッテリが劣化していると判定された場合、前記電装品の使用を禁止する電装品使用禁止部を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低圧バッテリの劣化判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の電源装置を概略的に示すブロック図。
図2】制御装置が行う処理を示すフローチャート。
図3】第2実施形態の電源装置を概略的に示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、電源装置の第1実施形態について説明する。
図1に示すように、車両Vは、スタートスイッチ11と、電装品12と、操作部14と、高圧バッテリBと、電源装置10と、を備える。車両Vは、自動運転車両である。自動運転車両には、自動運転レベル3~自動運転レベル5の車両に限られず、自動運転レベル1及び自動運転レベル2の車両も含まれる。即ち、自動運転車両には、搭乗者による運転操作を必要とせずに運転が行われる車両に限られず、搭乗者による運転操作を主体とし、搭乗者に対する運転支援が行われる車両も含む。自動運転車両は、搭乗者の運転操作による手動運転が行われる手動運転モードと、自動運転が行われる自動運転モードとを切替可能である。自動運転モードでは、自動運転支援機能が発揮され、ハンドル操作やブレーキ動作が自動で行われる。
【0012】
スタートスイッチ11は、車両Vの起動状態と停止状態とを切り替えるためのスイッチである。スタートスイッチ11は、例えば、車両Vの搭乗者により操作される。起動状態とは、車両Vの走行が可能な状態である。停止状態とは、車両Vの走行を行えない状態である。スタートスイッチ11は、イグニッションスイッチやシステム起動スイッチ等と呼称されることもある。起動状態はイグニッションオン、停止状態はイグニッションオフと呼称されることもある。
【0013】
電装品12は、電源装置10から供給される電力によって駆動する装置である。電装品12は、複数設けられている。本実施形態の電装品12は、自動運転の際に用いられる電装品を含む。自動運転の際に用いられる電装品とは、自動運転の際に使用されればよく、手動運転の際に使用されるものであっても、手動運転の際には使用されないものであってもよい。電装品12は、例えば、12[V]で駆動する。
【0014】
操作部14は、自動運転支援機能を使用するか否かを切り替えるための部材である。操作部14は、例えば、車両Vの搭乗者により操作される。スタートスイッチ11により車両Vを起動状態とした後に、操作部14を操作することで自動運転支援機能が発揮される。
【0015】
高圧バッテリBは、例えば、公称電圧が200[V]のバッテリである。高圧バッテリBは、例えば、車両Vを走行させるモータの電力源となる。高圧バッテリBとしては、例えば、充放電可能な蓄電装置を複数接続したものが挙げられる。本実施形態の車両Vは、高圧バッテリBの電力によって駆動するモータによって走行可能な電気自動車又はハイブリッド自動車である。
【0016】
電源装置10は、双方向DC/DCコンバータ20と、接続線L1と、低圧バッテリ31と、検出部32と、制御装置33と、を備える。
双方向DC/DCコンバータ20は、第1入出力端21と、第2入出力端22と、を備える。双方向DC/DCコンバータ20は、入力された直流電力を異なる電圧の直流電力に変換して出力する。双方向DC/DCコンバータ20は、第1入出力端21から入力された直流電力を降圧して第2入出力端22から出力可能であり、かつ、第2入出力端22から入力された直流電力を昇圧して第1入出力端21から出力可能である。第1入出力端21は、高圧バッテリBに電気的に接続されている。なお、本実施形態における「電気的に接続」とは、複数の部材同士が別部材を介して間接的に接続されるものも別部材を介さず直接接続されるものも含むものとする。
【0017】
接続線L1は、第2入出力端22と電装品12とを電気的に接続している。接続線L1を介して、双方向DC/DCコンバータ20の出力した直流電力は電装品12に供給される。
【0018】
低圧バッテリ31は、高圧バッテリBよりも電圧が低い。低圧バッテリ31は、接続線L1に電気的に接続されている。本実施形態においては、電装品12と並列接続されるように接続線L1に接続されている。
【0019】
低圧バッテリ31としては、鉛蓄電池やリチウムイオン蓄電池等、充放電可能なものであればどのようなものでもよい。低圧バッテリ31は、双方向DC/DCコンバータ20を駆動していない場合や、双方向DC/DCコンバータ20から電力を出力できない場合に双方向DC/DCコンバータ20に代わり電装品12に電力を供給したり、双方向DC/DCコンバータ20の出力電力だけでは所望の電力に満たない場合に、双方向DC/DCコンバータ20の出力電力と合わせた合成電力を電装品12へ供給するものである。なお、電装品12の所望の電力とは、電装品12を駆動するために必要な電力であり、電装品12が複数ある場合は、少なくとも1つの電装品12が駆動するために必要な電力であってもよい。
【0020】
検出部32は、低圧バッテリ31の状態を検出するためのセンサである。検出部32は、低圧バッテリ31の放電電流を検出する電流検出部及び低圧バッテリ31の電圧である低圧バッテリ電圧を検出する電圧検出部を含む。
【0021】
制御装置33は、プロセッサと、記憶部と、を備える。プロセッサとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)が用いられる。記憶部は、RAM(Random access memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部は、処理をプロセッサに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御装置33は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御装置33は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0022】
制御装置33は、双方向DC/DCコンバータ20を制御することで第1入出力端21及び第2入出力端22のいずれから直流電力を出力するかを選択可能である。制御装置33は、検出部32の検出結果を取得可能である。
【0023】
車両Vの起動時に制御装置33が行う起動時制御について説明する。
図2に示すように、ステップS10において、制御装置33は、車両Vが起動状態になったか否かを判定する。即ち、制御装置33は、スタートスイッチ11の操作によって停止状態が起動状態に切り替えられたか否かを判定する。起動時制御は、車両Vの起動時に行われればよく、車両Vの起動に合わせて制御装置33が起動する場合、制御装置33が起動した段階で起動時制御を行えばよく、ステップS10の処理を行わなくてもよい。ステップS10の判定結果が肯定になると、制御装置33はステップS20の処理を行う。
【0024】
ステップS20において、制御装置33は低圧バッテリ31を放電させる。制御装置33は、低圧バッテリ31から第2入出力端22に出力された直流電力を昇圧して第1入出力端21に出力するように双方向DC/DCコンバータ20を制御する。制御装置33は、低圧バッテリ31の電圧が所定値以下にならないように双方向DC/DCコンバータ20を制御する。所定値としては、予め定められた値であって、低圧バッテリ31の劣化判定を行うことができるような値に設定されている。所定値は、例えば、11[V]である。なお、所定値は、低圧バッテリ31の劣化判定を行うことができるような値で、かつ、電装品12を駆動させるために必要な値に設定されていてもよい。双方向DC/DCコンバータ20の第1入出力端21から出力された直流電力は高圧バッテリBに供給され、高圧バッテリBが充電される。ステップS20の処理を行うことで、制御装置33は制御部を備えているといえる。
【0025】
次に、ステップS30において、制御装置33は劣化診断を行う。劣化診断は、低圧バッテリ31の放電電流及び当該放電電流が流れることで生じる低圧バッテリ31の電圧降下の値に基づいて低圧バッテリ31の内部抵抗を算出することで行われる。例えば、制御装置33は、次の式(1)から内部抵抗を算出する。
【0026】
内部抵抗=(放電前の低圧バッテリ電圧-放電中の低圧バッテリ電圧)/低圧バッテリ31の放電電流値…(1)
低圧バッテリ電圧及び低圧バッテリ31の放電電流値は検出部32から取得することができる。
【0027】
次に、ステップS40において、制御装置33は低圧バッテリ31が劣化しているか否かを判定する。低圧バッテリ31が劣化しているか否かは、低圧バッテリ31の内部抵抗から判定することができる。制御装置33は、低圧バッテリ31の内部抵抗が閾値以上の場合には低圧バッテリ31は劣化しているとみなす。制御装置33は、低圧バッテリ31の内部抵抗が閾値未満の場合には低圧バッテリ31は劣化していないとみなす。ステップS40の判定結果が肯定、即ち、低圧バッテリ31が劣化している場合、制御装置33はステップS50の処理を行う。ステップS40の判定結果が否定の場合、即ち、低圧バッテリ31が劣化していない場合、制御装置33は起動時制御を終了する。ステップS30及びステップS40の処理を行うことで制御装置33は、低圧バッテリ31の劣化判定を行う劣化判定部を備えているといえる。
【0028】
ステップS50において、制御装置33は電装品12の使用を禁止する。例えば、制御装置33は、自動運転支援機能の使用を禁止する。制御装置33は、操作部14が操作されても、自動運転支援機能を発揮させない状態になる。これにより、自動運転の際にのみ用いられる電装品の使用が禁止される。なお、自動運転支援機能を発揮させない場合であっても、車両Vの搭乗者による運転を行うことは可能である。制御装置33は、電装品12の使用を禁止することができればよく、例えば、リレー等により電装品12への電力供給を遮断することで電装品12の使用を禁止してもよい。
【0029】
また、制御装置33は、低圧バッテリ31が劣化していることを車両Vの搭乗者に通知する。通知は、例えば、搭乗者の所持する携帯端末や車両Vの備える表示部に低圧バッテリ31の交換を促す表示を行ったり、搭乗者の視認可能なランプを点灯させたり、音声により低圧バッテリ31の交換を促すことで行われる。ステップS50の処理を終えると、制御装置33は起動時制御を終了する。ステップS50の処理を行うことで、制御装置33は電装品使用禁止部を備えているといえる。
【0030】
起動時制御を終えると、制御装置33は、第1入出力端21から入力された直流電力を降圧して第2入出力端22から出力するように双方向DC/DCコンバータ20を制御する。これにより、高圧バッテリBからの直流電力を電装品12に供給可能となり、車両Vの走行が可能になる。低圧バッテリ31の劣化判定は、車両Vを起動状態にさせた際に行われるといえる。
【0031】
第1実施形態の作用について説明する。
制御装置33が劣化判定を行う際には、双方向DC/DCコンバータ20により低圧バッテリ31を放電させる。低圧バッテリ電圧及び低圧バッテリ31の放電電流を検出部32により検出することで、制御装置33は低圧バッテリ31の劣化判定を行うことができる。
【0032】
内部抵抗は、放電電流による電圧降下を利用して算出されるため、放電電流が小さいと、電圧降下の値も小さくなり、低圧バッテリ31の劣化判定を行いにくい。低圧バッテリ31から電装品12に流れる放電電流により低圧バッテリ31の劣化判定を行うことも考えられるが、この場合、放電電流が小さく、劣化判定を行いにくい。特に、電気自動車やハイブリッド自動車の場合には劣化判定を行いにくい。エンジン車で起動時にスターターを用いる場合、スターターを駆動するためにバッテリからスターターへ大きな電力を供給する必要があるため、バッテリからの放電電流が大きく、バッテリの劣化判定を行いやすい。一方、起動時にスターターを用いない電気自動車やハイブリッド自動車の場合、起動時に低圧バッテリ31から他の装置に電力を供給する必要がなく、放電電流を得ることができない。起動時に低圧バッテリ31の劣化判定を行うために、低圧バッテリ31から電装品12へ電力供給することで、放電電流を得る方法も考えられるが、電装品12を駆動するための電力は低圧バッテリ31の劣化判定を行うために必要な電力よりも低い場合が多く、電装品12に依存してしまう。
【0033】
本実施形態では、双方向DC/DCコンバータ20を使用して低圧バッテリ31から高圧バッテリBに電力を出力することによって、低圧バッテリ31の劣化判定に必要な電力(放電電流)を得ることができるため、車両Vの起動時に、低圧バッテリ31から低圧バッテリ31の劣化判定に必要な大きさの電流を放電する必要がない車両Vに搭載される電源装置であっても、電装品12に依存することなく、低圧バッテリ31の劣化判定を行うことができる。
【0034】
第1実施形態の効果について説明する。
(1-1)高圧バッテリBからの直流電力を降圧して電装品12に供給するDC/DCコンバータとして双方向DC/DCコンバータ20を用いているため、双方向DC/DCコンバータ20を使用して低圧バッテリ31から高圧バッテリBに大きな電力を出力することができる。したがって、低圧バッテリ31の劣化判定に必要な大きさの放電電流を得ることができるため、車両Vの起動時に、低圧バッテリ31から低圧バッテリ31の劣化判定に必要な大きさの電流を放電する必要がない車両Vに搭載された電源装置であっても、低圧バッテリ31の劣化判定を行うことが可能になり、電源装置10の信頼性を向上させることができる。
【0035】
(1-2)低圧バッテリ31が劣化している場合には、電装品12を使用中に電装品12が急に使えなくなってしまうおそれがあるため、電装品12の使用を禁止している。
特に、低圧バッテリ31が自動運転の際に用いられる電装品に電力供給する場合、自動運転中に急に自動運転支援機能が使用できなくなってしまうおそれがある。そこで本実施形態では、低圧バッテリ31が劣化している場合には、電装品12の使用を禁止している。
【0036】
(1-3)低圧バッテリ31が劣化している場合に搭乗者に通知を行うことで、低圧バッテリ31の交換を促すことができる。適切な交換時期に低圧バッテリ31を新たな低圧バッテリに交換することができる。
【0037】
(1-4)双方向DC/DCコンバータ20の第1入出力端21から出力された直流電力は高圧バッテリBに供給され、高圧バッテリBが充電される。したがって、低圧バッテリ31からの出力電力を有効活用できる。
【0038】
(第2実施形態)
以下、電源装置の第2実施形態について説明する。以下の説明において、第1実施形態と同様の部材については同一符号を付すことで説明を省略する。
【0039】
図3に示すように、車両Vは、スタートスイッチ11と、操作部14と、第1電装品15と、第2電装品13と、高圧バッテリBと、電源装置60と、を備える。
第1電装品15及び第2電装品13は、自動運転の際に用いられる電装品を含む。本実施形態では、第1電装品15と第2電装品13とで自動運転に関する機能冗長を図っている。詳細にいえば、同一機能を発揮する異なる電装品を第1電装品15と第2電装品13に分けて設けることで、自動運転の異種冗長化を図っている。
【0040】
第1電装品15及び第2電装品13は、それぞれ、外部認識機能を発揮する装置や旋回機能を発揮する装置を含む。外部認識機能を発揮する装置としては、例えば、ミリ波レーダーやLIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)を挙げることができる。旋回機能を発揮する装置としては、例えば、アンチロックブレーキシステム(ABS)や横滑り防止装置(ECS)を挙げることができる。自動運転に用いられる電装品として、一例として、外部認識機能を発揮する装置及び旋回機能を発揮する装置を挙げたが、第1電装品15及び第2電装品13には自動運転を行うのに必要となる機能を発揮する種々の電装品が含まれる。
【0041】
電源装置60は、DC/DCコンバータ40と、第1接続線L11と、双方向DC/DCコンバータ50と、第2接続線L12と、第1低圧バッテリ41と、第2低圧バッテリ42と、バックアップ装置43と、を備える。
【0042】
DC/DCコンバータ40は、高圧バッテリBから入力された直流電力を降圧させて出力する。
第1接続線L11は、DC/DCコンバータ40と第1電装品15とを電気的に接続している。第1接続線L11を介して、DC/DCコンバータ40の出力した直流電力は第1電装品15に供給される。
【0043】
第1低圧バッテリ41は、第1接続線L11に電気的に接続されている。第1低圧バッテリ41としては、鉛蓄電池やリチウムイオン蓄電池等、充放電可能なものであればどのようなものでもよい。
【0044】
第1低圧バッテリ41は、DC/DCコンバータ40を駆動していない場合や、DC/DCコンバータ40から電力を出力できない場合にDC/DCコンバータ40に代わり第1電装品15に電力を供給したり、DC/DCコンバータ40の出力電力だけでは所望の電力に満たない場合に、DC/DCコンバータ40の出力電力と合わせた合成電力を第1電装品15へ供給するものである。なお、第1電装品15の所望の電力とは、第1電装品15を駆動するために必要な電力であり、第1電装品15が複数ある場合は、少なくとも1つの第1電装品15が駆動するために必要な電力であってもよい。
【0045】
双方向DC/DCコンバータ50は、入力された直流電力を異なる電圧の直流電力に変換して出力する。双方向DC/DCコンバータ50とDC/DCコンバータ40とは互いに並列接続されている。双方向DC/DCコンバータ50は、第1入出力端51と、第2入出力端52と、を備える。双方向DC/DCコンバータ50は、第1実施形態の双方向DC/DCコンバータ20と同様のものである。双方向DC/DCコンバータ50は、第1入出力端51から入力された直流電力を降圧して第2入出力端52から出力可能であり、かつ、第2入出力端52から入力された直流電力を昇圧して第1入出力端51から出力可能である。双方向DC/DCコンバータ50の第1入出力端51には高圧バッテリBが電気的に接続されている。
【0046】
第2接続線L12は、双方向DC/DCコンバータ50の第2入出力端52に電気的に接続されている。第2接続線L12は、双方向DC/DCコンバータ50と第2電装品13とを電気的に接続している。第2接続線L12を介して、双方向DC/DCコンバータ50の出力した直流電力は第2電装品13に供給される。
【0047】
バックアップ装置43は、第2接続線L12に電気的に接続されている。バックアップ装置43は、双方向DC/DCコンバータ50からの電力供給が失陥した場合に第2低圧バッテリ42の出力電力を第2電装品13に供給するためのものである。バックアップ装置43としては、例えば、スイッチであってもよいし、電力変換回路であってもよい。バックアップ装置43がスイッチの場合、双方向DC/DCコンバータ50からの電力供給が失陥した場合にスイッチがオンすることで、バックアップ装置43を介して第2低圧バッテリ42の出力電力が第2接続線L12に供給される。バックアップ装置43が電力変換回路の場合、電力変換回路は、第2低圧バッテリ42から供給された直流電力を異なる電圧の直流電力に変換して第2接続線L12に出力する。電力変換回路の出力電圧は、双方向DC/DCコンバータ50の出力電圧よりも低い値であり、かつ、第2電装品13を駆動できる電圧である。したがって、双方向DC/DCコンバータ50から第2接続線L12に電力が供給されている場合、バックアップ装置43から第2接続線L12に電力が供給されない。双方向DC/DCコンバータ50から第2接続線L12に電力が供給されなくなると、バックアップ装置43から第2接続線L12に電力が供給され、第2電装品13が第2低圧バッテリ42の出力電力によって駆動する。上記したように、双方向DC/DCコンバータ50からの電力供給が失陥していない場合には第2低圧バッテリ42から第2接続線L12への電力供給が行われにくく、バックアップ装置43によって第2低圧バッテリ42の放電は抑制されている。
【0048】
第2低圧バッテリ42は、バックアップ装置43に電気的に接続されている。第2低圧バッテリ42は、バックアップ装置43を介して第2接続線L12に電気的に接続されているといえる。第2低圧バッテリ42は、バックアップ用の低圧バッテリである。第2低圧バッテリ42としては、鉛蓄電池やリチウムイオン蓄電池等、充放電可能なものであればどのようなものでもよい。
【0049】
検出部32は、第2低圧バッテリ42に電気的に接続されており、第2低圧バッテリ42の放電電流及び第2低圧バッテリ42の電圧を検出する。第2実施形態において、制御装置33は、第1実施形態と同様の手法によって第2低圧バッテリ42の劣化判定を行う。第2実施形態では、第2低圧バッテリ42が低圧バッテリ、第2電装品13が電装品、第2接続線L12が接続線である。
【0050】
第2実施形態の作用について説明する。
制御装置33は、第2低圧バッテリ42の劣化判定を行う際には、第2低圧バッテリ42から双方向DC/DCコンバータ50の第2入出力端52に電力を供給し、双方向DC/DCコンバータ50は第2入出力端52に入力された直流電力を昇圧して第1入出力端51から出力させるように電源装置60を制御する。これにより、制御装置33は、劣化判定を行うことができる。
【0051】
第2実施形態では、第1入出力端51から出力された直流電力を高圧バッテリBに供給して高圧バッテリBを充電することもできるし、第1入出力端51から出力された直流電力をDC/DCコンバータ40に供給して第1電装品15を駆動することもできる。仮に、高圧バッテリB及び第1低圧バッテリ41が放電不可能な状態になっても第2低圧バッテリ42を用いることで、第1電装品15を駆動することができる。
【0052】
第2実施形態の効果について説明する。第2実施形態では、第1実施形態の各効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(2-1)制御装置33は、バックアップ用の低圧バッテリである第2低圧バッテリ42の劣化判定を行う。第2低圧バッテリ42は、バックアップ装置43により放電が抑制されているため、意図的に放電を行わない場合には劣化判定を行いにくい。双方向DC/DCコンバータ50によって第2低圧バッテリ42を意図的に放電させて劣化判定を行うことができるため、バックアップ用の第2低圧バッテリ42の劣化判定を行うことができる。
【0053】
(2-2)高圧バッテリB及び第1低圧バッテリ41が放電不可能であっても、双方向DC/DCコンバータ50の第1入出力端51から出力された直流電力によって第1電装品15を駆動できる。このため、電源装置60の信頼性を向上させることができる。
【0054】
各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。各実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○各実施形態において、制御装置33は、低圧バッテリ31,42が劣化していると判定した場合、電装品12の使用禁止のみを行い、搭乗者への通知を行わなくてもよい。
【0055】
○各実施形態において、制御装置33は、低圧バッテリ31,42が劣化していると判定した場合、搭乗者への通知のみを行い、電装品12の使用を禁止しなくてもよい。
○各実施形態において、電源装置10,60は、低圧バッテリ31,42の状態を監視するためのバッテリマネジメントシステムを備えていてもよい。この場合、バッテリマネジメントシステムが検出部32を備えていてもよい。また、バッテリマネジメントシステムは、検出部32の検出結果から低圧バッテリ31,42の状態を監視する監視部を備える。監視部は、例えば、プロセッサや記憶部を備える。監視部は、検出部32の検出結果から低圧バッテリ31,42の劣化を判定してもよい。この場合、監視部が劣化判定部として機能する。
【0056】
○各実施形態において、制御装置33は、双方向DC/DCコンバータ20,50が備える制御装置であってもよい。
○各実施形態において、車両Vは、双方向DC/DCコンバータ20,50の制御を行う制御装置、劣化判定を行う制御装置、車両Vの走行に関する制御を行う制御装置を個別に備えていてもよい。
【0057】
○各実施形態において、検出部32として双方向DC/DCコンバータ20,50が備えるセンサを用いてもよい。双方向DC/DCコンバータ20,50は、入力電圧や出力電圧を検出するための電圧検出部を備える。制御装置33は、双方向DC/DCコンバータ20,50が備える電圧センサの検出結果を取得して劣化の判定を行ってもよい。双方向DC/DCコンバータ20,50は、入力電流や出力電流を検出するための電流検出部を備える。制御装置33は、電流検出部から検出結果を取得し、配線の電圧降下を考慮して低圧バッテリ31,42の電圧を推定してもよい。
【0058】
○各実施形態において、制御部、劣化判定部、及び電装品使用禁止部は別々の装置であってもよい。
○第2実施形態において、電源装置60はバックアップ装置43を備えていなくてもよい。
【0059】
○第2実施形態において、制御装置33は、第1低圧バッテリ41の劣化を判定してもよい。制御装置33は、第1低圧バッテリ41及び第2低圧バッテリ42の両方の劣化を判定してもよいし、第1低圧バッテリ41の劣化を判定し、第2低圧バッテリ42の劣化を判定しなくてもよい。この場合、DC/DCコンバータ40として双方向DC/DCコンバータを用いる。また、第1低圧バッテリ41の放電電流及び電圧を検出できるように検出部を設ける。
【0060】
○各実施形態において、車両Vは自動運転支援機能を備えていなくてもよい。
○各実施形態において、車両Vは、電気自動車やハイブリッド自動車以外の車両であってもよい。車両Vは、例えば、エンジンにより走行する車両や燃料電池の電力により走行する車両であってもよい。
【0061】
○各実施形態において、制御装置33は、4端子抵抗測定法等、放電電流を利用した劣化判定法であれば、どのような手法により劣化判定を行ってもよい。
【符号の説明】
【0062】
B…高圧バッテリ、L1…接続線、L12…接続線としての第2接続線、V…車両、10,60…電源装置、12…電装品、13…電装品としての第2電装品、20,50…双方向DC/DCコンバータ、21,51…第1入出力端、22,52…第2入出力端、31…低圧バッテリ、32…電流検出部及び電圧検出部としての検出部、33…制御部、劣化判定部、及び電装品使用禁止部としての制御装置、42…低圧バッテリとしての第2低圧バッテリ。
図1
図2
図3