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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】スピーカーシステム
(51)【国際特許分類】
   H04R 9/02 20060101AFI20240730BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H04R9/02 101C
G10K11/16 160
H04R9/02 102E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020151351
(22)【出願日】2020-09-09
(65)【公開番号】P2022045650
(43)【公開日】2022-03-22
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明善
【審査官】中嶋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-318133(JP,A)
【文献】実開昭58-028491(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 9/02
G10K 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場を生じさせる磁気回路と、
入力される電気信号に応じ前記磁気回路に対して相対的に変位可能なボイスコイルと、
前記ボイスコイルに接続された振動板と、
前記磁気回路および前記振動板と接続してこれらを保持するスピーカーフレームと、
を備えるスピーカーシステムであって、
前記磁気回路と前記スピーカーフレームとの前記接続にバネ状部材を用いたスピーカーシステムであって、
前記バネ状部材は、前記磁気回路の軸線と平行な方向の弾性率が、前記磁気回路の軸線と垂直な方向の弾性率と比較して小さく、
前記磁気回路の前記スピーカーフレームに対する変位が、前記ボイスコイルの前記スピーカーフレームに対する変位より小さくなるように、前記磁気回路と前記ボイスコイルとの重量比又は前記バネ状部材の前記磁気回路の軸線方向の弾性率の少なくとも一方が規定される
スピーカーシステム
【請求項2】
磁場を生じさせる磁気回路と、
入力される電気信号に応じ前記磁気回路に対して相対的に変位可能なボイスコイルと、
前記ボイスコイルに接続された振動板と、
前記磁気回路および前記振動板と接続してこれらを保持するスピーカーフレームと、
を備えるスピーカーシステムであって、
前記磁気回路と前記スピーカーフレームとの前記接続にバネ状部材を用いたスピーカーシステムであって、
前記スピーカーフレームは、前記磁気回路の軸線方向における移動を抑制するストッパー部を有する
スピーカーシステム
【請求項3】
前記振動板の外周に沿って設けられ、弾性を有するエッジ部を備え、
前記振動板は、前記エッジ部を介して前記スピーカーフレームに対して連結される
請求項1または2に記載のスピーカーシステム。
【請求項4】
前記バネ状部材は、第1の板バネを備え、
前記第1の板バネの板厚方向は、前記磁気回路の軸線方向に平行である請求項1~3のいずれか一項に記載のスピーカーシステム。
【請求項5】
前記バネ状部材は、前記第1の板バネと、前記第1の板バネから前記軸線方向に離間して配置された第2の板バネを備え、
前記第1の板バネと前記第2の板バネとは、前記軸線方向における前記磁気回路の両端面に各々設けられる請求項4に記載のスピーカーシステム。
【請求項6】
前記スピーカーフレームは、前記磁気回路の軸線方向に連続し、前記軸線方向と交差する径方向外側から前記磁気回路を覆う磁気回路収容部を含む
請求項1~5のいずれか一項に記載のスピーカーシステム。
【請求項7】
前記磁気回路は、前記軸線方向と交差する径方向の外側に張り出すフランジ部を含み、
前記ストッパー部は、前記軸線方向において前記フランジ部に当接可能な当接面を含む
請求項2に記載のスピーカーシステム。
【請求項8】
前記軸線方向において前記ストッパー部と前記フランジ部との間に配置されたダンパー
を更に備える請求項7に記載のスピーカーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スピーカーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカーにおいて、磁気回路と鉄製フレームとの間にゴム等の非磁性弾性体を介在させたものがある(例えば、特許文献1参照)。内箱及び外箱を備えたスピーカーにおいて、内箱と外箱との間にコイル状のバネ部材を介在させたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公昭58-28491号公報
【文献】特許第6424963号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スピーカーフレームが取り付けられる取り付け先の部材に対して、スピーカーの振動がスピーカーフレームを介して伝達されることがある。そのため、取り付け先の部材が共振したり、びびりによる異音が発生したりするおそれがある。本開示は、スピーカーフレームへの振動の伝達が抑制可能なスピーカーシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のスピーカーシステムは、磁場を生じさせる磁気回路と、入力される電気信号に応じ前記磁気回路に対して相対的に変位可能なボイスコイルと、前記ボイスコイルに接続された振動板と、前記磁気回路および前記振動板と接続してこれらを保持するスピーカーフレームと、を備えるスピーカーシステムであって、前記磁気回路と前記スピーカーフレームとの前記接続にバネ状部材が用いられる。
【0006】
接続されとは、直接的に接続される場合と、間接的に接続される場合の双方を含む。直接的に接続されとは、2つの部材が接触する場合、及び2つの部材が接触する状態と同視できる状態を含む。2つの部材が接触する状態と同視できる状態とは、例えば、接着剤で固定される状態である。間接的に接続されとは、2つの部材の間に他の部材が配置されることを意味する
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係るスピーカーシステムの正面図である
図2】第1実施形態に係るスピーカーシステムの断面図である。
図3】バネ状部材の正面図である。
図4】第2実施形態に係るスピーカーシステムの断面図である。
図5】実施形態に係るスピーカーシステムを備えた車両ドアを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の第1実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面において各部の寸法及び縮尺は実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に記載する実施形態は、本発明の好適な具体例である。このため、本実施形態には、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかし、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0009】
図1は、第1実施形態に係るスピーカーシステムの正面図である。図2は、第1実施形態に係るスピーカーシステムの断面図である。図1および図2に示されるスピーカーシステム1は、例えば、図5に示されるように、自動車等の車両に搭載される車載用のスピーカーシステムとして使用される。スピーカーシステム1は、例えば、ドアトリムを介して、車両のドアに取り付けられてもよい。なお、スピーカーシステム1の用途は、車載用に限定されず、他の用途でもよい。スピーカーシステム1が取り付けられる物体は、ドアトリムに限定されない。スピーカーシステム1が取り付けられる物体には、振動板2に対向する開口部が形成される。例えば、後述するスピーカーフレーム4のフランジ部が、開口部を取り囲む周縁部に固定されて、スピーカーシステム1が取り付け先の物体に固定される。
【0010】
図2では、スピーカーシステム1の一部が断面で示される。この断面は、スピーカーシステム1の軸線Oに沿って切断した断面である。なお、軸線Oは、後述する振動板2の振動方向に平行で、かつ、振動板2の中心を通る線分である。軸線Oと交差する方向は、スピーカーの径方向Yである。軸線O方向において、振動板2が配置される側は、正面側であり、反対側は背面側である。スピーカーの軸線Oは、後述する磁気回路5の軸線Oである。
【0011】
スピーカーシステム1は、振動板2と駆動部3とスピーカーフレーム4とを有し、これらをユニット化した構造体である。
【0012】
振動板2は、シート材で構成され、振動により放音する振動体である。当該シート材は、例えば、樹脂材料を繊維基材に含浸させた状態で硬化または固化することで得られる。当該樹脂材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、変性ゴム樹脂およびフェノール樹脂等が挙げられる。当該繊維基材としては、例えば、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、シリカ繊維、金属繊維、チタン酸カリウム繊維、ジルコニア繊維、ポリアクリレート繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、綿繊維、麻繊維およびセルロース繊維等が挙げられる。
【0013】
振動板2は、軸線Oに沿う方向に振動する。振動板2は、コーン型である。なお、振動板2の形状は、コーン型に限定されず、例えば、ドーム型等でもよい。
【0014】
駆動部3は、入力される電気信号に基づいて振動板2を駆動する機構である。駆動部3は、磁場を生じさせる磁気回路5と、振動板2に接続されるボイスコイル6とを含む。
【0015】
磁気回路5は、マグネット10とヨーク11とセンターポール12とを含む。マグネット10は円盤状を成す。マグネット10の厚み方向は、軸線O方向に沿う。ヨーク11及びセンターポール12は磁性材料から成る。
【0016】
ヨーク11は、円盤部13と円筒部14とを含む。円盤部13の厚み方向は、軸線O方向に沿う。円盤部13は、マグネット10の背面側に配置される。円筒部14は、円盤部13から正面側に張り出す。円筒部14は、軸線O周りに形成される。円筒部14の背面側の開口は円盤部13によって閉じられる。軸線O方向から見て、マグネット10は、円筒部14内に配置される。円筒部14は、軸線O方向において、マグネット10よりも正面側まで形成される。
【0017】
センターポール12は、円柱状を成し、マグネット10の正面側に配置される。センターポール12は、軸線O上に配置される。軸線O方向において、センターポール12は、ヨーク11の円筒部14内に配置される。
【0018】
マグネット10から生じる磁束は、ヨーク11及びセンターポール12を通過する。磁気回路5を通過する磁束により、磁気回路5の周囲に磁場が形成される。ボイスコイル6は、磁気回路5による磁場内に配置される。
【0019】
スピーカーシステム1は、ボイスコイル6が巻回されるボビン15を備える。ボビン15は、筒状部16及びセンターキャップ17を含む。センターキャップ17は、筒状部16の正面側の開口を閉じる。センターキャップ17の軸線Oに沿う断面形状は、円弧状を成す。センターキャップ17は、正面側に張り出すように膨らむ。センターキャップ17は、軸線O方向において、磁気回路5の第1端面5aよりも正面側に張り出す。軸線O方向において、磁気回路5の第1端面5aは正面側に配置され、第2端面5bは背面側に配置される。
【0020】
ボイスコイル6は、ボビン15の筒状部16の外周面に沿って巻回される。ボイスコイル6は、ボビン15に対して固定され、ボビン15と一体として移動可能である。ボイスコイル6は、ボビン15を介して、振動板2に接続される。
【0021】
振動板2は、軸線O方向から見て、センターキャップ17の周囲に形成される。振動板2の内周2aは、センターキャップ17の外周に接続される。
【0022】
スピーカーシステム1は、弾性を有するエッジ部18を備える。エッジ部18は、リング状を成し、振動板2の外周2bに沿って設けられる。振動板2の外周2bは、エッジ部18に接続される。振動板2は、エッジ部18を介して、スピーカーフレーム4に連結される。
【0023】
ボイスコイル6は、磁気回路5に対して、相対的に変位可能である。軸線O方向及び径方向Yにおいて、磁気回路5とボイスコイル6との間には隙間が形成される。
【0024】
磁気回路5は、径方向Yに張り出すフランジ部19を有する。フランジ部19は、円筒部14から張り出す。ヨーク11はフランジ部19含む。ヨーク11は、磁気回路5の周方向において全周に形成される。軸線O方向に沿う断面において、フランジ部19は板状を成す。
【0025】
スピーカーフレーム4は、振動板2及び磁気回路5を保持する。スピーカーフレーム4は、鉄または金属材料または樹脂材料で構成される。スピーカーフレーム4の形状は、振動板2及び磁気回路5を保持できればよく、図2に示す形状に限定されず、任意である
【0026】
スピーカーフレーム4は、第1フレーム20及び第2フレーム21を備える。軸線O方向において、第1フレーム20は第2フレーム21の正面側に配置される。第1フレーム20は、振動板2を収容するコーン部分22と、磁気回路5の一部を収容する延長部分23とを有する。コーン部分22の内径は、背面側から正面側に向かって、大きくなる。軸線O方向において、コーン部分22の長さは、振動板2の長さと粗同じである。
【0027】
スピーカーフレーム4は、振動板2を収容する振動板収容部24と、磁気回路5を収容する磁気回路収容部25とを含む。振動板収容部24は、第1フレーム20のコーン部分22によって構成される。振動板収容部24は、径方向Y外側から振動板2を覆う。
【0028】
磁気回路収容部25は、第1フレーム20の延長部分23と、第2フレーム21とによって構成される。軸線O方向において、磁気回路5の正面側の部分は、延長部分23に収容され、磁気回路5の背面側の部分は、第2フレーム21に収容される。磁気回路収容部25は、径方向Y外側から磁気回路5を覆う。軸線O方向において、延長部分23の長さと第2フレーム21の長さとは粗同じである。磁気回路収容部25の内径は、磁気回路5の外径よりも大きい。軸線O方向から見て、磁気回路5は、磁気回路収容部25の内側に配置される。磁気回路収容部25の内径とは、後述するストッパー部40が形成されていない部分の内径である。磁気回路5の外径とは、フランジ部19が形成されていない部分の外径である。径方向Yにおいて、スピーカーフレーム4と磁気回路5との間には隙間が形成される。
【0029】
第1フレーム20及び第2フレーム21は、フランジ26及びフランジ27を用いて連結される。フランジ26は、第1フレーム20の背面側の端部に形成される。フランジ27は、第2フレーム21の正面側の端部に形成される。フランジ26,27はねじを用いて連結される。第1フレーム20と第2フレーム21との連結はその他の構成でもよい。
【0030】
ここで、スピーカーシステム1は、磁気回路5をスピーカーフレーム4に対して接続するバネ状部材30を備える。バネ状部材30は、第1の板バネ31及び第2の板バネ32を含む。第1の板バネ31及び第2の板バネ32は、軸線O方向において離間して配置される。第1の板バネ31は、磁気回路5の第1端面5aとスピーカーフレーム4とに接続される。第2の板バネ32は、磁気回路5の第2端面5bとスピーカーフレーム4とに接続される。第1の板バネ31の板厚方向は、軸線O方向に平行である。第2の板バネ32の板厚方向は、軸線O方向に平行である。
【0031】
図3は、板バネの正面図である。図3に示されるように、第1の板バネ31及び第2の板バネ32は同じ構成である。第1の板バネ31及び32は、異なる構成でもよい。以下、第1の板バネ31について説明し、第2の板バネ32の説明は省略する。
【0032】
第1の板バネ31は、第1リング部33、第2リング部34、及び連結部35を備える。第1リング部33は、内周側に配置され、第2リング部34は、外周側に配置される。第1の板バネ31は、連結部35は、径方向Yにおいて、第1リング部33と第2リング部34との間に配置され、第1リング部33と第2リング部34とを連結する。第1の板バネ31は、4個の連結部35を有する。連結部35の数は、4つに限定されず、3つでもよく、5つ以上でもよい。
【0033】
連結部35は、円弧状を成す第1部分35aと、第1部分35aから第1リング部33に向かって突出する第2部分35bと、第1部分35aから第2リング部34に向かって延びる第3部分35cとを含む。第1部分35aは、第1リング部33の周方向において所定の長さを有する。周方向において隣り合う連結部35同士の間には、隙間が形成される。径方向Rにおいて、第1部分35aと第1リング部33との間、及び、第1部分35aと第2リング部34との間には隙間が形成される。
【0034】
第1の板バネ31の第1リング部33は、磁気回路5の第1端面5aに接合され、第2リング部34は、スピーカーフレーム4に接合される。第2リング部34は、磁気回路収容部25の第1端面25aに接合される。磁気回路収容部25の第1端面25aは、第1フレーム20の延長部分23の正面側の端面である。第1の板バネ31は、スピーカーフレーム4に対してねじ止めされてもよく、接着されてもよい。第1の板バネ31は、その他の方法によってスピーカーフレーム4に対して接合されてもよい。
【0035】
第2の板バネ32の第1リング部33は、磁気回路5の第2端面5bに接合され、第2リング部34は、スピーカーフレーム4に接合される。第2リング部34は、磁気回路収容部25の第2端面25bに接合される。磁気回路収容部25の第2端面25bは、第2フレーム29の背面側の端面である。第2の板バネ32は、スピーカーフレーム4に対してねじ止めされてもよく、接着されてもよい。第2の板バネ32は、その他の方法によってスピーカーフレーム4に対して接合されてもよい。
【0036】
軸線O方向における第2リング部34に対する第1リング部33の変位量は、径方向Yにおける第2リング部34に対する第1リング部33の変位量と比較して大きい。第1リング部33は、第2リング部34に対して、径方向Yと比較して軸線O方向に変位し易い。第1の板バネ31は、軸線Oと平行な弾性率が、径方向Yの弾性率と比較して小さい。径方向Yは、軸線Oと垂直な方向である。
【0037】
図2に示されるように、スピーカーシステム1は、磁気回路5の軸線Oにおける移動を抑制するストッパー部40を有する。ストッパー部40は、第1ストッパー41及び第2ストッパー42を含む。第1ストッパー41及び第2ストッパー42は、スピーカーフレーム4から径方向内側に張り出す。軸線O方向に沿う断面において、第1ストッパー41及び第2ストッパー42は、板状を成す。第1ストッパー41及び第2ストッパー42の板厚方向は、軸線O方向に沿う。軸線O方向において、第1ストッパー41と第2ストッパー42との間には、磁気回路5のフランジ部19が挿入される隙間が形成される。
【0038】
第1ストッパー41は、軸線O方向において、磁気回路5のフランジ部19よりも正面側に配置される。第1ストッパー41は、スピーカーフレーム4の周方向において全周に形成される。第1ストッパー41は、径方向Yにおいて、磁気回路5のフランジ部19と重なる位置まで形成される。
【0039】
第1ストッパー41とフランジ部19とは、軸線O方向に対向し、当接可能である。第1ストッパー41は、フランジ部19の正面側の当接面19aに当接可能である。当接可能とは、直接的に接触可能な場合と、間接的に接触可能な場合とを含む。間接的に接触可能な場合とは、他の部材を介して接触可能な場合を含む。後述するダンパー43が、第1ストッパー41とフランジ部19との間に配置されている場合は、第1ストッパー41とフランジ部19が間接的に接触する。
【0040】
第2ストッパー42は、軸線O方向において、磁気回路5のフランジ部19よりも背面側に配置される。第2ストッパー42は、スピーカーフレーム4の周方向において全周に形成される。第2ストッパー42は、径方向Yにおいて、磁気回路5のフランジ部19と重なる位置まで形成される。
【0041】
第2ストッパー42とフランジ部19とは、軸線O方向に対向し、当接可能である。第2ストッパー42は、フランジ部19の背面側の当接面19bに当接可能である。
【0042】
スピーカーシステム1は、ストッパー部40とフランジ部19との間に配置されるダンパー43を備える。ダンパー43は、衝撃を減衰させるクッション材である。ダンパー43は弾性体でもよい。ダンパー43はリング状を成す。軸線O方向に沿う断面において、43は、板状を成す。ダンパー43は、軸線O方向において、フランジ部19の両側にそれぞれ設けられる。
【0043】
本実施形態に係るスピーカーシステム1では、入力される電気信号に応じて磁気回路5に対してボイスコイル6が相対的に変位可能である。入力される電気信号に応じて振動板2が振動すると、ボイスコイル6と磁気回路5との間に反発力が発生する。磁気回路5は、電気信号に応じて、振動板2より長周期(低周波数)で振動(揺動)する。スピーカーシステム1では、この磁気回路5の揺動が、スピーカーシステム1による音に悪影響を及ぼさないように、バネ状部材30の弾性率が規定される。
【0044】
具体的には、磁気回路5のスピーカーフレーム4に対する変位が、ボイスコイル6のスピーカーフレーム4に対する変位より小さいことが好ましい。スピーカーシステム1では、磁気回路5とボイスコイル6との重量比又はバネ状部材30の軸線O方向の弾性率の少なくとも一方が規定される。これにより、スピーカーシステム1では、磁気回路5のスピーカーフレーム4に対する変位を、スピーカーフレーム4に対するボイスコイル6の変位より小さくできる。
【0045】
スピーカーシステム1は、磁気回路5がスピーカーフレーム4に対して、バネ状部材30を介して接続される。スピーカーシステム1によれば、磁気回路5が振動してもスピーカーフレーム4への振動の伝達が抑制される。これにより、スピーカーフレーム4が取り付けられる取り付け先の部材に対して、スピーカーフレーム4の振動の伝達が抑制される。その結果、取り付け先の部材が共振したり、びびりによる異音が発生したりすることが防止される。
【0046】
スピーカーシステム1では、軸線O方向において、磁気回路5の両端面に第1の板バネ31及び第2の板バネ32が設けられる。軸線O方向の両側から第1の板バネ31及び第2の板バネ32によって、磁気回路5が支持されるので、磁気回路5の軸線O方向に対する傾きが抑制される。
【0047】
スピーカーシステム1では、第1の板バネ31及び第2の板バネ32を備え、これらの板厚方向は、軸線O方向に平行である。第1の板バネ31及び第2の板バネ32の径方向Rの変位は、軸線O方向の変位と比較して小さくなる。第1リング部33の径方向Rへの変位は、軸線O方向への変位と比較して小さい。これにより、磁気回路5の径方向Rにおける位置ずれは、軸線O方向における位置ずれと比較して小さくすることができる。
【0048】
スピーカーシステム1は、ストッパー部40を備えるので、軸線O方向における磁気回路5の移動を抑制できる。磁気回路5が正面側に移動すると、第1ストッパー41によって、フランジ部19の移動が抑制される。磁気回路5が背面側に移動すると、第2ストッパー42によって、フランジ部19の移動が抑制される。
【0049】
スピーカーシステム1は、ダンパー43を備えるので、フランジ部19のストッパー部40に対する衝撃が抑制される。磁気回路5の振動が好適に減衰される。ストッパー部40及びフランジ部19との接触による力の伝達が抑制されるので、信頼性の向上を図ることができる。
【0050】
スピーカーシステム1は、弾性を有するエッジ部18を備える。振動板2は、エッジ部18を介して、スピーカーフレーム4に接続される。スピーカーシステム1によれば、振動板2による振動がスピーカーフレーム4に伝達されることが抑制される。スピーカーシステム1では、振動板2及び磁気回路5が振動しても、スピーカーフレーム4への振動の伝達が抑制されるので、スピーカーフレーム4から取り付け先への振動の伝達が抑制される。
【0051】
次に、図4を参照して、第2実施形態に係るスピーカーシステム51について説明する。図4は、第2実施形態に係るスピーカーシステムの断面図である。第2実施形態に係るスピーカーシステム51が、第1実施形態に係るスピーカーシステム1と異なる点は、磁気回路55の構成が違う点である。第2実施形態の説明において、第1実施形態と同様の説明を省略する。
【0052】
磁気回路55は、マグネット60とヨーク61とトッププレート62とを含む。ヨーク61及びトッププレート62は磁性材料から成る。マグネット60は、リング状を成す。マグネット60は、軸線O周りに形成される。マグネット60は、径方向Yに張り出すフランジ部69を有する。フランジ部69は、ストッパー部40によって軸線O方向の移動が抑制される。
【0053】
ヨーク61は、円盤部63と円柱部64とを含む。円盤部63の厚み方向は、軸線O方向に沿う。円柱部64は、円盤部63から正面側に突出する。円盤部63は、マグネット60の背面側の開口を閉じる。
【0054】
トッププレート62はリング状を成し、マグネット60の正面側に配置される。軸線O方向から見て、マグネット60及びトッププレート62の中心に、ヨーク61の円柱部64が配置される。
【0055】
マグネット60から生じる磁束は、ヨーク61及びトッププレート62を通過する。磁気回路55を通過する磁束により、磁気回路55の周囲に磁場が形成される。ボイスコイル6は、磁気回路55による磁場内に配置される。
【0056】
磁気回路55は、第1の板バネ31及び第2の板バネ32を介して、スピーカーフレーム4に支持される。第1の板バネ31は、磁気回路55の第1端面55aとスピーカーフレーム4とに接続される。第2の板バネ32は、磁気回路55の第2端面55bとスピーカーフレーム4とに接続される。
【0057】
このような第2実施形態に係るスピーカーシステム51においても第1実施形態のスピーカーシステム1と同様の作用効果を奏する。
【0058】
次にスピーカーシステム1を備えた車両ドアについて説明する。図5は、実施形態に係るスピーカーシステムを備えた車両ドアを示す分解斜視図である。図5に示されるように、車両ドア101は、外部と接するアウタパネルと称される第1パネル102と、車両ドア101において車室側に内装材として設けられ、ドアトリムと称される第2パネル103と、第1パネル102と第2パネル103との間に設けられ、インナパネルと称される第3パネル104と、第2パネル103に取り付けられるスピーカーシステム1とを備える。第1パネル102と第3パネル104には一般的に鋼板が用いられてその前後及び下部の外縁部分が互いに結合される。第1パネル102と第3パネル104には、アルミニウム合金あるいは炭素材を使用することも可能である。第2パネル103には一般的には合成樹脂成形板が用いられる。しかしながら、本開示においては、これらのパネル102、103、104の構成材料は上記のものに限定されない。第1パネル102と第3パネル104の上部には、窓ガラス106を上下動可能に収容した枠体107が設けられる。
【0059】
第3パネル104には、スピーカーシステム1を収容するための開口部104aや、窓ガラス106を上下動させるための不図示のモータやドアロックアクチュエータ等を収容するための複数の開口部104bが設けられる。本実施形態においては、これらの開口部104bの少なくとも一部は不図示のモータやドアロックアクチュエータ等によっては閉塞されず、開口部104bを閉塞する専用の部材も設けられない。
【0060】
第2パネル103は第3パネル104に対し、連結部材109X、109Yにより、第2パネル103の外縁部分が第3パネル104に着脱可能に固定されることによって取付けられる。第2パネル103の外縁部分には外縁部分に沿って溝状のパッキン取付部が設けられ、パッキン取付部にはパッキン110が嵌め込まれており、このパッキン110が第2パネル103と第3パネル104との間の空間の気密性が保持される。この空間は、第1パネル202と第3パネル104との間で形成された空間と、第3パネル104に設けられた少なくとも一部の開口部により連通する。
【0061】
スピーカーシステム1は、取付部材114を介して第2パネル103に取付けられる。この取付部材114は、円環状をなし、スピーカーシステム1を取り付けるためのねじ孔114aと、取付部材114を第2パネル103に取付けるねじ115を通すための孔114bを有する。スピーカーフレーム4のフランジ4bに設けた孔4cにねじ116を通し、取付部材114に設けられたねじ孔114aにねじ込むことによってスピーカーシステム1に取付部材114が取付けられる。そしてこの取付部材114の孔114bにねじ115を通し、第2パネル103に設けられたねじ孔103bにねじ115をねじ込むことにより、スピーカーシステム1が第2パネル103に取付けられる。スピーカーシステム1が取付けられた第2パネル103の領域には、スピーカーシステム1で発生させる音を車室内に放音するための複数の孔103cが設けられている。
【0062】
なお、前述した実施例は、本開示の代表的な形態を示したに過ぎず、本開示は、前述した実施例に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更、付加が可能である。
【0063】
前述の実施形態では、スピーカーフレーム4は、磁気回路収容部25を備える構成としているが、スピーカーフレーム4は磁気回路収容部25を備えていない構成でもよい。スピーカーシステム1は、振動板収容部24から背面側に延びる支持部を備え、この支持部にストッパー部40が設けられる構成でもよい。この支持部は、スピーカーシステム1の周方向に複数設けられる。
【0064】
前述の実施形態では、磁気回路5が軸線O方向の両側からバネ状部材30によって支持されているが、磁気回路5の正面側および背面側のいずれか一方のみにバネ状部材30が設けられる構成でもよい。バネ状部材30は、第1の板バネ31または第2の板バネ32に限定されず、その他の板バネでもよい。例えば、板バネは皿バネでもよい。バネ状部材30は、板バネに限定されず、その他の弾性体でもよい。
【0065】
前述の実施形態では、磁気回路5の軸線O方向の端面である第1端面5a及び第2端面5bにバネ状部材30が配置されているが、バネ状部材30は、磁気回路5のその他の面に連結されていてもよい。バネ状部材30は、磁気回路5の外周面に連結されていてもよい。
【0066】
スピーカーシステムは、軸線Oと平行な方向の弾性率が、軸線Oと垂直な方向の弾性率と比較して小さいバネ状部材30を備える構成に限定されず、軸線Oと平行な方向の弾性率が、軸線Oと垂直な方向の弾性率と比較して同じでもよく、大きくてもよい。
【0067】
前述の実施形態では、スピーカーシステム1は、エッジ部18を備え、振動板2はエッジ部18を介して、スピーカーフレーム4に連結される構成としているが、振動板2は他の部材を介してスピーカーフレーム4に連結される構成でもよい。
【0068】
前述の実施形態では、スピーカーフレーム4は、ストッパー部40を備える構成としているが、スピーカーフレーム4はストッパー部40を備えていない構成でもよい。ストッパー部40は、フランジ部19の両側に設けられている構成に限定されず、フランジ部19の正面側または背面側のいずれが一方にストッパー部40が設けられる構成でもよい。
【0069】
前述の実施形態では、磁気回路5は、フランジ部19を含む構成としているが、フランジ部19が設けられていない構成でもよい。
【符号の説明】
【0070】
1,51…スピーカーシステム、2…振動板、2b…振動板の外周、4…スピーカーフレーム、5,55…磁気回路、6…ボイスコイル、18…エッジ部、19…フランジ部、19a,19b…当接面、25…磁気回路収容部、30…バネ状部材、31…第1の板バネ、32…第2の板バネ、40…ストッパー部、43…ダンパー、O…磁気回路の軸線、Y…径方向。
図1
図2
図3
図4
図5