(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20240730BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20240730BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/80 B
(21)【出願番号】P 2020154656
(22)【出願日】2020-09-15
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】西口 賢弥
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-330601(JP,A)
【文献】特表2003-534665(JP,A)
【文献】特開2019-117919(JP,A)
【文献】特開平10-098180(JP,A)
【文献】特開2017-163082(JP,A)
【文献】特開2020-072218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 21/338
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられ、チャネル層を含む半導体層と、
前記チャネル層に接続し、シート抵抗が前記チャネル層のシート抵抗より低いソース領域と、
前記チャネル層に接続し、シート抵抗が前記チャネル層のシート抵抗より低いドレイン領域と、
前記ソース領域と前記ドレイン領域との間に設けられ、前記ソース領域と前記ドレイン領域との配列方向に交差する方向に配列し、前記半導体層の上面から少なくとも前記チャネル層まで埋め込まれた複数のゲートと、
を備え、
前記ソース領域の一部は、前記複数のゲートのうち隣接する2つのゲート間に向かい、前記隣接する2つのゲートを介して対向する前記ドレイン領域の方向に突出する凸部を
有し、
前記凸部の幅は前記ソース領域の一部から前記対向するドレイン領域の方向に向かって狭くなる半導体装置。
【請求項2】
前記凸部は、平面視において前記隣接する2つのゲートの中心を通り前記配列方向に延伸する直線に重ならず、前記隣接する2つのゲートの間の中点を通り前記配列方向に延伸する直線に重なる請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記凸部の前記配列方向の長さは前記隣接する2つのゲートの中心を通り前記配列方向に延伸する直線における前記ソース領域と前記隣接する2つのゲートの距離の1/10以上かつ1以下である請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記隣接する2つのゲートの間において前記対向するドレイン領域の一部は前記ソース領域の一部の方向に向かって突出する請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体層は、前記チャネル層の
伝導帯底のエネルギーより高い
伝導帯底のエネルギーを有し、前記チャネル層に積層されたバリア層を備える請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体層は積層された複数の前記チャネル層を有する請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ソース領域とドレイン領域との間において、チャネル層内のキャリアの伝導方向に交差するように配列され、チャネル層まで埋め込まれた複数のゲートを有するFET(Field Effect Transistor)が知られている(例えば、特許文献1および非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第10388746号明細書
【文献】米国特許第10249711号明細書
【非特許文献】
【0004】
【文献】2019 IEEE/MTT-S International Microwave Symposium p. 1133-1135
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなFETでは、埋込ゲートから平面方向に伸びる空乏層により、ゲート間のチャネルの幅を制御することで、ソースとドレインとの間を流れる電流を制御する。FET特性を向上させるためソース抵抗を低減することが求められる。ソース抵抗を低減するため、ソース領域とゲートとの距離を短くするとゲートとソースとの間の寄生容量が大きくなりFET特性が向上しない。このように、ソース抵抗と寄生容量とがトレードオフとなり、FET特性を向上させることが難しい。
【0006】
本開示は、上記課題に鑑みなされたものであり、特性を向上させた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態は、基板上に設けられ、チャネル層を含む半導体層と、前記チャネル層に接続し、シート抵抗が前記チャネル層のシート抵抗より低いソース領域と、前記チャネル層に接続し、シート抵抗が前記チャネル層のシート抵抗より低いドレイン領域と、前記ソース領域と前記ドレイン領域との間に設けられ、前記ソース領域と前記ドレイン領域との配列方向に交差する方向に配列し、前記半導体層の上面から少なくとも前記チャネル層まで埋め込まれた複数のゲートと、を備え、前記ソース領域の一部は、前記複数のゲートのうち隣接する2つのゲート間に向かい、前記隣接する2つのゲートを介して対向する前記ドレイン領域の方向に突出する凸部を有する半導体装置である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、特性を向上させた半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例1に係る半導体装置の平面図である。
【
図4A】
図4Aは、実施例1の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図4B】
図4Bは、実施例1の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図4C】
図4Cは、実施例1の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図4D】
図4Dは、実施例1の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図5】
図5は、実施例1の製造方法を示す平面図である。
【
図6】
図6は、比較例1に係る半導体装置の平面拡大図である。
【
図7】
図7は、比較例1に係る半導体装置の平面拡大図である。
【
図8】
図8は、比較例2に係る半導体装置の平面拡大図である。
【
図9】
図9は、実施例1に係る半導体装置の平面拡大図である。
【
図10】
図10は、実施例1に係る半導体装置の平面拡大図である。
【
図11】
図11は、実施例1の変形例1に係る半導体装置の平面拡大図である。
【
図12】
図12は、実施例1の変形例2に係る半導体装置の平面図である。
【
図13】
図13は、実施例1の変形例3に係る半導体装置の平面図である。
【
図14】
図14は、実施例1の変形例4に係る半導体装置の平面図である。
【
図16】
図16は、実施例1の変形例5に係る半導体装置の断面図である。
【
図17】
図17は、実施例1の変形例6に係る半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本開示の一実施形態は、基板上に設けられ、チャネル層を含む半導体層と、前記チャネル層に接続し、シート抵抗が前記チャネル層のシート抵抗より低いソース領域と、前記チャネル層に接続し、シート抵抗が前記チャネル層のシート抵抗より低いドレイン領域と、前記ソース領域と前記ドレイン領域との間に設けられ、前記ソース領域と前記ドレイン領域との配列方向に交差する方向に配列し、前記半導体層の上面から少なくとも前記チャネル層まで埋め込まれた複数のゲートと、を備え、前記ソース領域の一部は、前記複数のゲートのうち隣接する2つのゲート間に向かい、前記隣接する2つのゲートを介して対向する前記ドレイン領域の方向に突出する凸部を有する半導体装置である。これにより、半導体装置の特性を向上させることができる。
(2)前記凸部は、平面視において前記隣接する2つのゲートの中心を通り前記配列方向に延伸する直線に重ならず、前記隣接する2つのゲートの間の中点を通り前記配列方向に延伸する直線に重なることが好ましい。
(3)前記凸部の前記配列方向の長さは前記隣接する2つのゲートの中心を通り前記配列方向に延伸する直線における前記ソース領域と前記隣接する2つのゲートの距離の1/10以上かつ1以下であることが好ましい。
(4)前記凸部の幅は前記ソース領域の一部から前記対向するドレイン領域の方向に向かって狭くなることが好ましい。
(5)前記隣接する2つのゲートの間において前記対向するドレイン領域の一部は前記ソース領域の一部の方向に向かって突出することが好ましい。
(6)前記半導体層は、前記チャネル層の伝導帯底のエネルギーより高い伝導帯底のエネルギーを有し、前記チャネル層に積層されたバリア層を備えることが好ましい。
(7)前記半導体層は積層された複数の前記チャネル層を有することが好ましい。
【0011】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態にかかる半導体装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0012】
[実施例1]
図1は、実施例1に係る半導体装置の平面図、
図2および
図3は、
図1のそれぞれA-A断面図およびB-B断面図である。
図1では、空乏層30を破線で図示しソース電極22、ドレイン電極24および絶縁膜28の図示を省略している。基板10および半導体層12の積層方向をZ方向、基板10および半導体層の上面(主面)に平行な方向であって、ソース領域18からドレイン領域20にキャリアが伝導する方向(すなわちソース領域18とドレイン領域20の配列方向)をX方向、X方向に直交しゲート26が配列される方向をY方向とする。
【0013】
図1から
図3に示すように、基板10上に半導体層12が設けられている。半導体層12として、基板10側から核生成層11、バッファ層13a、チャネル層13b、バリア層16、チャネル層14とバリア層16が交互に3層、およびキャップ層15が積層されている。半導体層12に上面からバッファ層13aに達するソース領域18およびドレイン領域20が形成されている。ソース領域18およびドレイン領域20上にソース領域18およびドレイン領域20とそれぞれ電気的に接触するソース電極22およびドレイン電極24が設けられている。ソース領域18とドレイン領域20の間の半導体層12上に絶縁膜28が設けられている。複数のゲート26はソース領域18とドレイン領域20の間に設けられ、Y方向に配列されている。ゲート26の平面形状は円形状である。ゲート26の間においてソース領域18はX方向に突出する凸部18aを備えている。凸部18aの平面形状は+X方向に行くに従いY方向の幅が狭くなる台形状である。
【0014】
基板10は、例えばSiC基板、サファイア基板またはGaN基板である。基板10の上面は例えば(0001)面である。半導体層12は例えば窒化物半導体層である。核生成層11は例えばAlN層である。バッファ層13aおよびチャネル層13bは例えば厚さが292nmのGaN層13である。バッファ層13aとチャネル層13bは同じGaN層13であるが、GaN層13の下部はバッファ層13aとして機能し、上部はチャネル層13bとして機能する。このため、便宜上バッファ層13aおよびチャネル層13bとして説明する。
【0015】
チャネル層14は例えば厚さが15nmのGaN層である。キャップ層15は例えば厚さが3nmのGaN層である。バリア層16は例えば厚さが15nmのAlGaN層である。バッファ層13a、チャネル層13b、14、キャップ層15およびバリア層16には意図的にドーパントは添加されておらず、ドーパント濃度は例えば1×1016cm-3以下である。バリア層16には意図的にドーパントが添加されていてもよい。バリア層16におけるドーパント濃度は例えば1×1016cm-3以上でもよい。
【0016】
ソース領域18およびドレイン領域20は、シート抵抗が半導体層12のシート抵抗より低い領域であり、例えばドーパントとしてシリコンが添加されており、ドーパント濃度は例えば1×1019cm-3以上である。一例では、ソース領域18とドレイン領域20の間の半導体層12のシート抵抗は500Ω/□以上であり、ソース領域18およびドレイン領域20のシート抵抗は100Ω/□以下である。なお、半導体層12のうちキャリアの伝導に寄与するのはチャネル層13bおよび14である。よって、半導体層12のシート抵抗はチャネル層13bおよび14の合計のシート抵抗にほぼ等しい。
【0017】
ソース電極22およびドレイン電極24は例えば半導体層12側からチタン膜およびアルミニウム膜である。ゲート26は例えば半導体層12側からニッケル膜および金膜である。絶縁膜28は例えば窒化シリコン膜、酸化シリコン膜または窒化酸化シリコン膜である。
【0018】
チャネル層13bおよび14のバンドギャップはバリア層16のバンドギャップより小さく、チャネル層13bおよび14の伝導帯底のエネルギーはバリア層16の伝導帯底のエネルギーより低い。チャネル層13bおよび14とバリア層16との界面にはチャネル層13bおよび14とバリア層16との分極差に相当する2次元電子ガス(2DEG:Two Dimensional Elecrton Gas)17が生成される。チャネル層13bおよび14では2DEG17が電子の伝導に寄与する。
【0019】
図1のように、ゲート26の周囲にはゲート26に印加されるゲート電圧に応じた空乏層30が形成される。空乏層30内のチャネル層13bおよび14には2DEG17はほとんど形成されない。空乏層30以外の領域のチャネル層13bおよび14には2DEG17が形成される。領域32内の2DEG17がソース領域18からドレイン領域20へのキャリアの伝導(矢印38)に主に寄与している。領域32以外の領域の2DEG17はキャリアの伝導にあまり寄与しない。凸部18aは領域32の外には設けられていない。領域32aは、領域32のうち隣接する2つのゲート26によって挟まれた領域であり、隣接する2つの空乏層30によりY方向の幅が制御される実効的なチャネル領域である。
【0020】
図3のように、領域32aのX方向におけるソース電極22側の端とソース電極22との間の抵抗はソース抵抗Rsであり、Rs=Rc+Rn
++Rshである。Rcはソース電極22とソース領域18との接触抵抗、Rn
+はソース領域18とX方向に突出する凸部18aを合わせた抵抗、Rshはチャネル層13bおよび14部分の抵抗である。
【0021】
[実施例1の製造方法の例1]
図4A~
図4Dは、実施例1の製造方法を示す断面図、
図5は、実施例1の製造方法を示す平面図である。
図4A~
図4Dは、
図1および
図5のA-A断面に相当する。
【0022】
図4Aに示すように、基板10上に半導体層12を例えばMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法を用い形成する。半導体層12の層構造は
図2および
図3と同じである。半導体層12上に絶縁膜28を例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用い形成する。
【0023】
図4Bおよび
図5に示すように、絶縁膜28を例えばドライエッチング法を用い除去することで開口40を形成する。開口40はソース領域18およびドレイン領域20が形成されるべき領域に形成する。これにより、開口40から半導体層12の上面が露出する。
【0024】
図4Cに示すように、絶縁膜28をマスクに半導体層12に溝42を形成する。溝42は、開口40により画定し、少なくともチャネル層13bおよび14を貫通するように形成される。
【0025】
図4Dに示すように、絶縁膜28をマスクに溝42内にソース領域18およびドレイン領域20として例えばシリコンを1×10
19cm
3以上含むGaN層を再成長する。ソース領域18およびドレイン領域20の成長には例えばMOCVD法を用いる。その後、絶縁膜28および半導体層12に穴を形成し穴内にゲート26を形成する。ソース領域18およびドレイン領域20上にそれぞれソース電極22およびドレイン電極24を形成する。以上により、実施例1に係る半導体装置が形成される。
【0026】
[実施例1の製造方法の例2]
実施例1の製造方法の例2では、
図4Bの後、絶縁膜28をマスクに半導体層12にシリコン等のドーパントをイオン注入する。その後、ドーパントの活性化のための熱処理することで、
図4Dのように、半導体層12内にソース領域18およびドレイン領域20を形成する。その他の工程は実施例1の製造方法の例1と同じであり説明を省略する。
【0027】
[比較例1]
図6および
図7は、比較例1に係る半導体装置の平面拡大図である。2つのゲート26付近を拡大して図示している。
図6に示すように、キャリア(電子)は領域32のチャネル層13bおよび14を伝導する。ゲート26間の領域32はY方向両側のゲート26から広がる空乏層30により領域32aの幅Wch(チャネル幅)が定まる。
【0028】
図7に示すように、ゲート26に負の電圧を印加すると、矢印35のように空乏層30が広がる。これにより、領域32aの幅Wchが狭くなる。このように、ゲート26の電圧により空乏層30の幅が制御され領域32aを流れる電流が制御される。
【0029】
図6および
図7のように、領域32aのソース電極22側の端とドレイン電極24側の端との間の抵抗をRchとする。領域32aのソース電極22側の端とソース領域18との間の抵抗をRshとする。ゲート26が領域32aの幅Wchを変化させるためのゲート-ソース容量Cgsを真正容量Cgsiとする。真正容量Cgsi以外のソース領域18とゲート26との間の容量を寄生容量Cgsfとする。寄生容量Cgsfには、半導体層12外におけるゲート26とソース電極22との容量と半導体層12内におけるゲート26とソース領域18との容量のうち真正容量Cgsiを除いた容量とが含まれる。ソース領域18とゲート26との距離はLsgである。
【0030】
FETの高周波特性の指標として遮断周波数fTはfT≒gm/(2πCgs)で表される。ここで、gmは相互コンダクタンスである。Cgsはゲート-ソース容量であリ、Cgs=Cgsi+Cgsfである。抵抗Rshが高くなるとgmが小さくなりfTが低くなってしまう。また、抵抗Rshが高いとオン抵抗(非飽和ソース-ドレイン電流)が高くなる。
【0031】
[比較例2]
図8は、比較例2に係る半導体装置の平面拡大図である。
図8に示すように、ソース領域18とゲート26との距離Lsgを短くする。これにより、抵抗Rshが低くなり、gmが高くなりかつオン抵抗が低くなる。しかし、距離Lsgが短くなると寄生容量Cgsfが大きくなる。例えば、GaNの比誘電率を9.5としたとき、Lsgを1μmとし平行平板近似を用いCgsfを算出すると約8.5nF/cm
2である。Lsgを0.8μmとするとCgsfは約10.5nF/cm
2である。このように、距離Lsgを短くすることで、抵抗Rshを低くし、gmを高くかつオン抵抗を低くしようとすると、寄生容量Cgsfが増大しf
Tが低下してしまう。このように、ソース抵抗Rsと寄生容量Cgsfとがトレードオフとなり、FET特性を向上させることが難しい。
【0032】
図9および
図10は、実施例1に係る半導体装置の平面拡大図である。
図9に示すように、実施例1では、ソース領域18は凸部18aを有している。凸部18aは領域32に含まれるように設けられている。距離Lsgを比較例1と同程度とすると寄生容量Cgsfは比較例1と同程度である。一方、凸部18aにおけるシート抵抗は領域32におけるシート抵抗より低い。よって、凸部18aの抵抗Rn
+の部分の抵抗が低くなるため、実施例1では比較例1よりソース抵抗Rsが小さくなる。これにより、gmを高くかつオン抵抗を低くし、かつ寄生容量Cgsfを低くしf
Tを高くできる。
【0033】
以上のように、実施例1によれば、半導体層12はチャネル層13bおよび14を含む。ソース領域18およびドレイン領域20はチャネル層13bおよび14に接続されている。ソース領域18およびドレイン領域20のシート抵抗はチャネル層13bおよび14のシート抵抗より低い。複数のゲート26は、ソース領域18とドレイン領域20との間に設けられ、ソース領域18とドレイン領域20との配列方向(X方向)に交差する方向に配列し、半導体層12の上面から少なくともチャネル層13bおよび14まで埋め込まれている。
【0034】
このような構成において、ソース領域18の一部は、複数のゲート26のうち隣接する2つのゲート26間に向かい、隣接するゲート26を介して対向するドレイン領域20の方向に突出する凸部18aを有する。これにより、gmを高くかつオン抵抗を低くし、かつ寄生容量Cgsfを低くしfTを高くできる。よって、FETの特性を向上できる。ソース抵抗Rsを低くするため、ソース領域18およびドレイン領域20のシート抵抗はチャネル層13bおよび14のシート抵抗の1/2以下が好ましく、1/5以下がより好ましい。チャネル層13bおよび14のシート抵抗が高くなりすぎないように、ソース領域18およびドレイン領域20のシート抵抗はチャネル層13bおよび14のシート抵抗の1/100以上が好ましい。
【0035】
図10に示すように、隣接する2つのゲート26の対向する外周同士のY方向の間隔をW1、隣接する2つのゲート26の中心26a同士のY方向の間隔をW2、凸部18aのX方向の長さをLa、凸部18aのY方向の最小幅をWa1、Y方向の最大幅をWa2とする。間隔W1は、例えば100nm~500nmであり一例として250nmである。間隔W2は、例えば200nm~1000nmであり一例として400nmである。
【0036】
凸部18aの平面形状を大きくするとソース抵抗Rsが低下する。しかし、凸部18aが領域32の外に位置すると寄生容量Cgsfが比較例1より大きくなる。特に凸部18aが空乏層30に含まれると寄生容量Cgsfはより大きくなる。寄生容量Cgsfを小さくする観点から凸部18aのX方向の長さLaは距離Lsg以下が好ましく、0.8×Lsg以下がより好ましい。ソース抵抗Rsを低下させる観点から、長さLaは1/10×Lsg以上が好ましく、1/5×Lsg以上がより好ましい。ソース抵抗Rsを低減する観点から凸部18aはゲート26の間の中点26bを通りX方向に延伸する直線44と重なることが好ましく、幅Wa1は1/10×W1以上が好ましく、幅Wa2は1/10×W2以上が好ましい。寄生容量Cgsfを小さくする観点から凸部18aはゲート26の中心26aを通りX方向に延伸する直線46とは重ならないことが好ましく、幅Wa1は1/2×W1以下が好ましく、幅Wa2は1/2×W2以下が好ましい。
【0037】
[実施例1の変形例1]
図11は、実施例1の変形例1に係る半導体装置の平面拡大図である。
図11に示すように、ゲート26の平面形状は略矩形でもよい。矩形の長辺はX方向に延伸し、短辺はY方向に延伸することが好ましい。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。ゲート26の平面形状は円形および略矩形以外に楕円形または長円形などでもよい。
【0038】
[実施例1の変形例2]
図12は、実施例1の変形例2に係る半導体装置の平面図である。
図12に示すように、凸部18aの平面形状は複数の矩形がX方向に接続された形状である。矩形の辺は略X方向および略Y方向に延伸する。+X側の矩形の幅はWa1であり、-X側の矩形の幅はWa2である。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0039】
[実施例1の変形例3]
図13は、実施例1の変形例3に係る半導体装置の平面図である。
図13に示すように、凸部18aの平面形状は矩形であり、矩形の辺は略X方向および略Y方向に延伸する。凸部18aのY方向の幅Wa1はほぼ一定である。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0040】
ソース抵抗は実施例1が最も低く、次に実施例1の変形例2であり、最後に実施例1の変形例3である。凸部18aが領域32から外れると寄生容量Cgsfが大きくなる。よって、寄生容量Cgsfが大きくなるリスクは、実施例1が最も高く、次に実施例1の変形例2であり、最後に実施例1の変形例3である。ゲート26より-X側では領域32のY方向における幅は-X方向に行くにしたがい徐々に大きくなる。よって、実施例1およびその変形例2のように、凸部18aのY方向における幅はソース領域18の一部からドレイン領域20の方向に向かって狭くなることが好ましい。実施例1のように、凸部18aのY方向における幅はソース領域18からドレイン領域20に向かって徐々に狭くなってもよい。実施例1の変形例2のように、凸部18aのY方向における幅はソース領域18からドレイン領域20に向かって段階的に狭くなってもよい。実施例1では、凸部18aのY方向における幅はソース領域18からドレイン領域20に向かって直線的に狭くなっているが、凸部18aのY方向における幅はソース領域18からドレイン領域20に向かって曲線的に狭くなってもよい。
【0041】
[実施例1の変形例4]
図14は、実施例1の変形例4に係る半導体装置の平面図、
図15は、
図14のA-A断面図である。
図15では、ゲート26の位置を破線で示している。
図14および
図15に示すように、実施例1の変形例4では、ドレイン領域20の一部はソース領域18の一部の方向に向けて突出する凸部20aを有している。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0042】
図15のように、領域32aとソース電極22との間のソース抵抗Rsは、Rc+Rn
++Rshである。Rcはソース電極22とソース領域18との接触抵抗、Rn
+はソース領域18の抵抗、Rshはチャネル層13bおよび14の抵抗Rshである。領域32aとドレイン電極24との間のドレイン抵抗Rdは、Rc+Rn
++Rshである。Rcはドレイン電極24とドレイン領域20との接触抵抗、Rn
+はドレイン領域20の抵抗、Rshはチャネル層13bおよび14の抵抗Rshである。抵抗Rn
+は抵抗Rshより低いため、凸部18aおよび20aを設けることで、ソース抵抗Rsおよびドレイン抵抗Rdを低くできる。
【0043】
グラデュアルチャネル近似を用いると、FETの非飽和領域におけるドレイン電流Idは数式1により表される。
【数1】
ここで、Wgはゲート幅、μは2DEG17の移動度、Cgsはゲート-ソース容量、Lgはゲート長、Vthは閾値電圧、Vg´は実効ゲート電圧、Vd´は実効ドレイン電圧、Vgはゲート電圧、Vdはドレイン電圧、Rsはソース抵抗、Rdはドレイン抵抗である。
【0044】
ゲート幅Wgはゲート26の個数に比例する。ゲート長Lgは領域32aのX方向の長さに相当する。ゲート電圧Vgおよびドレイン電圧Vdはソース電極22に対し、それぞれゲート26およびドレイン電極24に印加される電圧である。実効ゲート電圧Vg´および実効ドレイン電圧Vd´は領域32aに実効的に印加される電圧である。
【0045】
実効ゲート電圧Vg´は数式2で表される
Vg´=Vg-Id×Rs (数式2)
実効ドレイン電圧Vd´は数式3で表される。
Vd´=Vd-Id×(Rs+Rd) (数式3)
【0046】
数式2および数式3のように、ソース抵抗Rsおよびドレイン抵抗Rdが低下すると、実効ゲート電圧Vg´および実効ドレイン電圧Vd´はゲート電圧Vgおよびドレイン電圧Vdに近くなる。これにより、数式1のように、ドレイン電流Idが増加する。すなわち、オン抵抗が低くなる。また、低いドレイン電圧Vdにおいてドレイン電流Idが飽和するため、ニー(knee)電圧を低くできる。このように、凸部20aを設けることでFET特性を向上できる。
【0047】
寄生容量Cgdfを小さくする観点から凸部20aのX方向の長さLbは、直線46におけるゲート26とドレイン領域20との距離Lgd以下が好ましく、0.8×Lgd以下がより好ましい。ドレイン抵抗Rdを低下させる観点から、長さLbは1/10×Lgd以上が好ましく、1/5×Ldg以上がより好ましい。ドレイン抵抗Rdを低減する観点から凸部20aは直線44と重なることが好ましく、凸部20aのY方向の最小幅Wb1は1/10×W1以上が好ましく、凸部20aのY方向の最大幅Wb2は1/10×W2以上が好ましい。寄生容量Cgdfを小さくする観点から凸部20aは直線46とは重ならないことが好ましく、幅Wb1は1/2×W1以下が好ましく、幅Wb2は1/2×W2以下が好ましい。
【0048】
凸部20aの平面形状は、実施例1の変形例2の凸部18aと同様に複数の矩形がX方向に接続された形状でもよい。凸部20aの平面形状は実施例1の変形例3と同様に略矩形でもよい。凸部20aのY方向における幅はドレイン領域20からソース領域18に向かって狭くなることが好ましい。凸部20aのY方向における幅はドレイン領域20からソース領域18に向かって徐々に狭くなってもよい。凸部20aのY方向における幅はドレイン領域20からソース領域18に向かって段階的に狭くなってもよい。
【0049】
[実施例1の変形例5]
図16は、実施例1の変形例5に係る半導体装置の断面図である。
図16に示すように、実施例1の変形例5では、半導体層12は、1層のチャネル層13bとバリア層16を備える。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0050】
実施例1およびその変形例1から5のように、半導体層12は、チャネル層13bおよび14とバリア層16とが積層されたHEMT(High Electron Mobirity Transistor)である。バリア層16の伝導帯底のエネルギーは、チャネル層13bおよび14の伝導帯底のエネルギーより高い。これにより、チャネル層13bおよび14に2DEG17が形成される。2DEG17は移動度が高いため、数式3のように、非飽和領域におけるオン抵抗を低くでき、かつニー電圧を低くできる。チャネル層13bおよび14は意図的に不純物を含まないことが好ましい。例えば不純物濃度は1×1015cm-3以下である。これにより、2DEGは移動度がより高くなり、オン抵抗およびニー電圧を低くできる。
【0051】
実施例1の変形例5のように、チャネル層13bは1層でもよいが、実施例1およびその変形例1~4のように、半導体層12は積層された複数のチャネル層13bおよび14を有することが好ましい。これにより、ドレイン電流が大きくなり、パワー密度を大きくできる。半導体層12が複数のチャネル層13bおよび14を有する場合、半導体層12上にゲートを設けると、チャネル層13bおよび14の制御が難しくなる。ゲート26を半導体層12に埋め込むことにより、
図6および
図7のようにチャネル層13bおよび14の制御が容易となる。しかしながら、寄生容量Cgsfが大きくなる。そこで、ソース領域18に凸部18aを設けることが好ましい。
【0052】
チャネル層13bおよび14としてGaN層、バリア層16としてAlGaN層の例を説明したが、チャネル層13bおよび14はInGaN層でもよい。また、チャネル層13bおよび14はGaAs層またはInGaAs層であり、バリア層16はAlGaAs層でもよい。このように、半導体層12は化合物半導体層であればよい。
【0053】
[実施例1の変形例6]
図17は、実施例1の変形例6に係る半導体装置の断面図である。
図17に示すように、実施例1の変形例6では、半導体層12は、バッファ層13a上にチャネル層13cが設けられている。チャネル層13cにはドーパントとして例えばシリコンが添加されている。チャネル層13cのドーパント濃度は例えば1×10
17cm
-3以上である。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。実施例1の変形例6のように、半導体装置はMESFET(Metal Semiconducor FET)でもよい。
【0054】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0055】
10 基板
11 核生成層
12 半導体層
13 GaN層
13a バッファ層
13b、13c、14 チャネル層
15 キャップ層
16 バリア層
17 2DEG
18a、20a 凸部
18 ソース領域
20 ドレイン領域
22 ソース電極
24 ドレイン電極
26 ゲート
26a ゲートの中心
26b ゲートの間の中点
28 絶縁膜
30 空乏層
32、32a 領域
40 開口
42 溝
44、46 直線