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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】硬貨検知装置及び現金取扱装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 1/00 20060101AFI20240730BHJP
   G07D 5/08 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G07D1/00 Z
G07D5/08 103
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020160181
(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2022053378
(43)【公開日】2022-04-05
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】金井 拓也
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-160122(JP,A)
【文献】実開昭63-179569(JP,U)
【文献】特開平09-073569(JP,A)
【文献】実開昭59-165062(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00
G07D 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流の供給により発生する磁束が、硬貨を収容する硬貨収容器の底部を通過する位置に設けられた第1コイルと、
前記電流の供給により発生する磁束が、前記底部及び前記第1コイルの内側を通過する位置に設けられた第2コイルと、
前記第1コイルにより形成される磁界と前記第2コイルにより形成される磁界とが打ち消し合わないように、当該第1コイル及び当該第2コイルに前記電流を供給する電源部と、
前記第1コイルから第1磁気出力を検出し、前記第2コイルから第2磁気出力を検出する磁気出力検出部と、
前記第1磁気出力及び前記第2磁気出力を基に、前記硬貨収容器内における前記硬貨の有無を判定すると共に、該硬貨収容器の前記底部における該硬貨の位置を判定する判定部と
を具えることを特徴とする硬貨検知装置。
【請求項2】
前記電源部は、前記第1コイル及び前記第2コイルに対し前記電流を交互に供給する
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨検知装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記第1磁気出力を所定のレベル閾値と比較した結果と、前記第2磁気出力を該レベル閾値と比較した結果とを基に、前記底部における前記硬貨の位置を判定する
ことを特徴とする請求項に記載の硬貨検知装置。
【請求項4】
電流の供給により発生する磁束が、硬貨を収容する硬貨収容器の底部を通過する位置に設けられた第1コイルと、
前記電流の供給により発生する磁束が、前記底部及び前記第1コイルの内側を通過する位置に設けられた第2コイルと、
前記第1コイルにより形成される磁界と前記第2コイルにより形成される磁界とが打ち消し合わないように、当該第1コイル及び当該第2コイルに前記電流を供給する電源部と、
前記第1コイルから第1磁気出力を検出し、前記第2コイルから第2磁気出力を検出する磁気出力検出部と、
前記第1磁気出力及び前記第2磁気出力を基に、前記硬貨収容器内における前記硬貨の有無を判定する判定部と
を具え、
前記第2コイルは、該第2コイルの中心軸に沿って前記底部に投影した場合に形成される第2コイル投影像が、前記第1コイルの中心軸に沿って前記底部に投影した場合に形成される第1コイル投影像の内側に位置するように配置され、
前記第1コイルの内側に、複数の前記第2コイルが設けられている
ことを特徴とする硬貨検知装置。
【請求項5】
硬貨収容器に投入された硬貨を1枚ずつに分離して繰り出す硬貨投入部と、
前記硬貨に関する情報を通知する通知部と、
前記硬貨投入部及び前記通知部を制御する制御部と
を具える現金取扱装置であって、
前記硬貨投入部は、
電流の供給により発生する磁束が、前記硬貨収容器の底部を通過する位置に設けられた第1コイルと、
前記電流の供給により発生する磁束が、前記底部及び前記第1コイルの内側を通過する位置に設けられた第2コイルと、
前記第1コイルにより形成される磁界と前記第2コイルにより形成される磁界とが打ち消し合わないように、当該第1コイル及び当該第2コイルに前記電流を供給する電源部と、
前記第1コイルから第1磁気出力を検出し、前記第2コイルから第2磁気出力を検出する磁気出力検出部と、
前記第1磁気出力及び前記第2磁気出力を基に、前記硬貨収容器内における前記硬貨の有無を判定すると共に、該硬貨収容器の前記底部における該硬貨の位置を判定する判定部と
を具え、
前記制御部は、前記判定部により判定された前記硬貨の位置を前記通知部により通知させる
ことを特徴とする現金取扱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬貨検知装置及び現金取扱装置に関し、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストア等のような小売店舗の精算所において使用されるレジ釣銭機に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、レジ釣銭機においては、POS(Point Of Sales)システム等に接続されたレジスタ部に、媒体としての紙幣や硬貨の入出金処理を行う釣銭処理部が組み合わされたものが普及しつつある。この釣銭処理部のうち、硬貨を処理する硬貨処理部は、例えばレジ係員に硬貨を投入させる硬貨投入部、硬貨を搬送する搬送部、硬貨の種類を鑑別する鑑別部、硬貨を収納する収納部、及び釣銭用の硬貨を排出する排出部等を有している。
【0003】
硬貨投入部は、投入された硬貨を収容する収容空間や、硬貨を1枚ずつに分離する分離機構、及び収容空間における硬貨の有無を検知するセンサ(以下、硬貨検知装置と呼ぶ)等を有している。例えば硬貨投入部は、収容空間内に硬貨があることを硬貨検知装置により検知すると、分離機構の分離動作により硬貨を1枚ずつに分離して搬送部に引き渡し、やがて収容空間内から硬貨が無くなったことを検知すると、分離動作を停止させる。
【0004】
この硬貨検知装置として、光を利用するもの、すなわち光を発光する発光素子とこの光を受光する受光素子とを組み合わせた光学式のものが知られている。硬貨投入部は、この光学式の硬貨検知装置を設ける場合、例えば収容空間の内壁等に微小な孔を形成することにより、光を通過させると共に硬貨を収容空間内に留めることができる。しかしながら硬貨投入部では、投入される硬貨から剥がれ落ちた異物や、当該硬貨から発生する粉塵等が孔やその周辺に付着し、これにより光が遮られて硬貨の検知精度が低下する可能性がある。
【0005】
そこで、硬貨検知装置として、光に代えて磁気を利用することにより、異物や粉塵による影響を受けることなく硬貨の有無を検知するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1では、硬貨を出金する出金部において、磁気センサの周囲に金属製部材を配置した硬貨検知装置を構成することにより、磁気センサ単体を用いる場合と比較して、硬貨の検知範囲を拡張し得るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-88053号公報(図2等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、かかる構成の硬貨検知装置では、金属部材の配置により拡張し得る検知範囲に限りが有るため、組み込まれる出金部や硬貨投入部等の大きさや形状によっては、必ずしも硬貨を精度良く検知し得ない場合がある、という問題があった。
【0008】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、広い検知範囲から高い精度で硬貨を検知し得る硬貨検知装置及び現金取扱装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため本発明の硬貨検知装置においては、電流の供給により発生する磁束が、硬貨を収容する硬貨収容器の底部を通過する位置に設けられた第1コイルと、電流の供給により発生する磁束が、底部及び第1コイルの内側を通過する位置に設けられた第2コイルと、第1コイルにより形成される磁界と第2コイルにより形成される磁界とが打ち消し合わないように、当該第1コイル及び当該第2コイルに電流を供給する電源部と、第1コイルから第1磁気出力を検出し、第2コイルから第2磁気出力を検出する磁気出力検出部と、第1磁気出力及び第2磁気出力を基に、硬貨収容器内における硬貨の有無を判定すると共に、該硬貨収容器の底部における該硬貨の位置を判定する判定部とを設けるようにした。
また本発明の硬貨検知装置においては、電流の供給により発生する磁束が、硬貨を収容する硬貨収容器の底部を通過する位置に設けられた第1コイルと、電流の供給により発生する磁束が、底部及び第1コイルの内側を通過する位置に設けられた第2コイルと、第1コイルにより形成される磁界と第2コイルにより形成される磁界とが打ち消し合わないように、当該第1コイル及び当該第2コイルに電流を供給する電源部と、第1コイルから第1磁気出力を検出し、第2コイルから第2磁気出力を検出する磁気出力検出部と、第1磁気出力及び第2磁気出力を基に、硬貨収容器内における硬貨の有無を判定する判定部とを設け、第2コイルは、該第2コイルの中心軸に沿って底部に投影した場合に形成される第2コイル投影像が、第1コイルの中心軸に沿って底部に投影した場合に形成される第1コイル投影像の内側に位置するように配置され、第1コイルの内側に、複数の第2コイルが設けられているようにした。
【0010】
さらに本発明の現金取扱装置においては、硬貨収容器に投入された硬貨を1枚ずつに分離して繰り出す硬貨投入部と、硬貨に関する情報を通知する通知部と、硬貨投入部及び通知部を制御する制御部とを設けた現金取扱装置であって、硬貨投入部は、電流の供給により発生する磁束が、硬貨収容器の底部を通過する位置に設けられた第1コイルと、電流の供給により発生する磁束が、底部及び第1コイルの内側を通過する位置に設けられた第2コイルと、第1コイルにより形成される磁界と第2コイルにより形成される磁界とが打ち消し合わないように、当該第1コイル及び当該第2コイルに電流を供給する電源部と、第1コイルから第1磁気出力を検出し、第2コイルから第2磁気出力を検出する磁気出力検出部と、第1磁気出力及び第2磁気出力を基に、硬貨収容器内における硬貨の有無を判定すると共に、該硬貨収容器の底部における該硬貨の位置を判定する判定部とを設け、制御部は、判定部により判定された硬貨の位置を通知部により通知させるようにした。
【0011】
本発明は、第1コイルによる磁界と第2コイルによる磁界とが互いに打ち消し合うことが無いため、第1コイルから得られた第1磁気出力と、第2コイルから得られた第2磁気出力とを組み合わせることにより、硬貨収容器の底部における様々な箇所における硬貨の有無に加えて該底部における該硬貨の位置を検知できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、広い検知範囲から高い精度で硬貨を検知し得る硬貨検知装置及び現金取扱装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】レジ釣銭機の全体構成を示す略線的斜視図である。
図2】硬貨処理部の構成を示す略線図である。
図3】硬貨投入部の構成を示す略線図である。
図4】大コイル及び小コイルの構成を示す略線図である。
図5】第1の実施の形態による硬貨検知部の構成を示す略線的ブロック図である。
図6】大コイルにより形成される磁束の様子を示す略線図である。
図7】小コイルにより形成される磁束の様子を示す略線図である。
図8】各コイルの配置並びに位置と磁気出力との関係を示す略線図である。
図9】大コイル及び小コイルにより形成される磁束の様子を示す略線図である。
図10】各種制御信号のタイミングを示すタイミングチャートである。
図11】第2の実施の形態による硬貨検知部の構成を示す略線的ブロック図である。
図12】位置と磁気出力との関係並びに閾値の設定を示す略線図である。
図13】残留位置判定テーブルの構成を示す略線図である。
図14】各コイルの配置と硬貨の位置との関係を示す略線図である。
図15】第2の実施の形態による残留検知処理手順を示すフローチャートである。
図16】第3の実施の形態による各コイルの配置を示す略線図である。
図17】第3の実施の形態による硬貨検知部の構成を示す略線的ブロック図である。
図18】第3の実施の形態における小コイルにより形成される磁束の様子を示す略線図である。
図19】第4の実施の形態による各コイルの配置を示す略線図である。
図20】第5の実施の形態による各コイルの配置を示す略線図である。
図21】第5の実施の形態における各コイルにより形成される磁束の様子を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0015】
[1.第1の実施の形態]
[1-1.レジ釣銭機の構成]
図1に外観を示すように、現金取扱装置としてのレジ釣銭機1は、大きく分けて上側のレジスタ部2と、下側の釣銭処理部3とにより構成されている。このレジ釣銭機1は、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストアのような小売店舗の精算所(いわゆるレジ)において、顧客が購入したい商品を精算する際に、レジ係員により操作される。
【0016】
なお以下では、レジ係員が対峙する一側面及びその反対面をそれぞれ前面及び後面とし、さらに当該レジ係員から見て左右及び上下を定義して説明する。
【0017】
レジスタ部2は、制御部5、表示操作部6、バーコードリーダ(図示せず)、及びレシート処理部7等が設けられている。制御部5は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を有しており、フラッシュメモリ等でなる記憶部(図示せず)から所定のプログラムを読み出して実行することにより、レジ釣銭機1全体を統括的に制御する。
【0018】
通知部としての表示操作部6は、液晶ディスプレイ等でなる表示部と、当該液晶ディスプレイに重ねて配置されたタッチパネル等でなる操作部とにより構成されている。この表示操作部6は、認識した商品の名称や金額等を液晶ディスプレイに表示する。また表示操作部6は、表示画面の一部に数字等の入力キーを表示しており、タッチパネル上の入力キーに対応する箇所が押下操作されると、当該入力キーに対応した入力操作を受け付けて制御部5へ送信する。これに応じて制御部5は、商品の数量の増減や金額の修正等の各処理を行う。
【0019】
バーコードリーダ(図示せず)は、所定の光を発光する発光部や、光を受光する受光部等が組み込まれており、商品に付されたバーコードに対し光を照射し、戻ってきた光を受光することにより、このバーコードを読み取り、当該商品を認識する。レシート処理部7は、認識した商品の名称や金額等をレシートに印字し、これをレシート排出口7Aから排出する。
【0020】
一方、釣銭処理部3は、大きく分けて、左側の硬貨処理部11と、右側の紙幣処理部12と、前側上部の表示操作部13とにより構成されている。このうち硬貨処理部11は、硬貨に関する種々の処理を行う(詳しくは後述する)。紙幣処理部12は、レジ係員により紙幣入出口15から投入された紙幣を紙幣鑑別部(図示せず)により鑑別して内部の紙幣収納庫に収納すると共に、制御部5から指示された紙幣を内部の紙幣収納庫から取り出し、これを紙幣入出口15から釣銭として排出する。
【0021】
表示操作部13は、所定の表示パネル及び所定の操作ボタンの組み合わせにより構成されている。表示操作部13の表示パネルは、硬貨処理部11及び紙幣処理部12における稼働状況として、例えば硬貨処理部11において釣銭用の硬貨が不足していることや、光学検出部(後述する)により異常を検出したこと、或いはその箇所等を表示する。表示操作部13の操作ボタンは、レジ係員等による押下操作を介して、例えば硬貨の搬送等に関する指示を受け付ける。
【0022】
[1-2.硬貨処理部の構成]
硬貨処理部11は、図2に平面図を示すように、硬貨処理部筐体20内に硬貨制御部21、硬貨投入部22、硬貨鑑別部23、投入搬送部24、硬貨リジェクト部25、6個の硬貨収納部26A~26F、排出搬送部27及び硬貨排出部28等が設けられている。因みに図中の矢印は、硬貨の進行経路を表している。
【0023】
硬貨制御部21は、図示しないCPU、ROM及びRAM等を有しており、該CPUが該ROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、硬貨処理部11を統括的に制御する。
【0024】
硬貨投入部22は、硬貨処理部筐体20の前側に設けられており、上側が開放され硬貨を収容可能な硬貨収容器31を有している。実際の精算処理において、レジ係員等が顧客から商品の代金として硬貨を預かると、この硬貨は、レジ係員等によりまとめて硬貨投入部22の硬貨収容器31内へ投入される。硬貨投入部22は、硬貨が投入されたことを検知すると、硬貨制御部21の制御に基づき、硬貨を1枚ずつに分離して硬貨鑑別部23に引き渡す。
【0025】
硬貨鑑別部23は、硬貨の金種(例えば1円、5円、10円、50円、100円及び500円の6種類)及び真偽等を鑑別し、異常と鑑別された硬貨や、硬貨以外の異物等を硬貨リジェクト部25へ送出し、硬貨処理部筐体20の前側から排出する。また硬貨鑑別部23は、当該硬貨が正常であれば、後方の投入搬送部24に引き渡す。さらに硬貨鑑別部23は、当該硬貨の鑑別結果を硬貨制御部21へ通知する。
【0026】
投入搬送部24は、概ね水平な搬送面に沿って硬貨を後方へ向けて搬送する。また投入搬送部24の搬送面には、前後方向に沿って、硬貨の金種ごとの直径よりも僅かに大きな孔径でなる選別孔24Aが複数穿設されている。この選別孔24Aは、前方から後方へ向かうに連れて孔径が順次大きくなるように、例えば1円、50円、5円、100円、10円及び500円の順に配置されている。このため投入搬送部24は、硬貨を後方へ搬送しながら、対応する選別孔24Aから適宜落下させることにより、当該硬貨を金種ごとに選別することができる。
【0027】
硬貨収納部26A~26F(以下、まとめて硬貨収納部26と呼ぶ)は、投入搬送部24の下側乃至左側に位置しており、前後方向に沿って整列するように配置されている。各硬貨収納部26は、投入搬送部24の選別孔24Aから落下してきた硬貨、すなわち選別された1つの金種の硬貨を収納する。また各硬貨収納部26は、図示しない排出機構を有しており、硬貨制御部21からの命令に従い、収納している硬貨を指示された枚数だけ排出し、排出搬送部27に引き渡す。
【0028】
排出搬送部27は、硬貨収納部26から繰り出された硬貨を前方へ搬送し、硬貨排出部28へ落とし込む。硬貨排出部28は、硬貨処理部11の前面下部から前方へ突出すると共に上部中央が椀状にえぐられたような形状であり、排出搬送部27から落とし込まれた硬貨を受け止めて保持する。硬貨排出部28内に落とし込まれた硬貨は、硬貨処理部11の前方に対峙するレジ係員により取り出され、釣銭として顧客に渡される。
【0029】
このように硬貨処理部11は、顧客から商品等の代金として支払われ硬貨投入部22に投入された硬貨を、金種ごとに分別して硬貨収納部26に収納すると共に、釣銭として渡すべき硬貨を、硬貨収納部26から繰り出して硬貨排出部28から排出するようになっている。
【0030】
[1-3.硬貨投入部の構成]
次に、硬貨投入部22の構成について説明する。図3に模式的な側面図を示すと共に図4に模式的な平面図を示すように、硬貨投入部22は、硬貨投入部筐体30に対し、硬貨収容器31、駆動部32、硬貨分離部33及び硬貨検知部34等が設けられた構成となっている。
【0031】
硬貨収容器31は、中空の円筒状に形成されており、下側が底部31Bにより閉塞される一方、上側が開放されている。因みに底部31Bは、上側から見て円板状に形成されている。このため硬貨収容器31は、レジ係員等により投入される硬貨を内部に収容することができる。また硬貨収容器31は、硬貨投入部筐体30により、中心軸31Xを中心として回転し得るように支持されると共に、側面の一部に硬貨を通過させ得る繰出孔(図示せず)が形成されている。
【0032】
駆動部32は、図示しないモータやギヤ等を有しており、硬貨制御部21(図2)の制御に基づき、駆動力を生成して硬貨収容器31に伝達することにより、該硬貨収容器31を回転させることができる。このとき硬貨収容器31は、硬貨を収容していれば、回転に伴って遠心力が作用する硬貨を外周側に寄せ、繰出孔から少しずつ繰り出していく。硬貨分離部33は、回転する硬貨収容器31の繰出孔から繰り出される硬貨を1枚ずつに分離し、後方の硬貨鑑別部23(図2)に引き渡す。
【0033】
硬貨検知部34は、図3に示したように、大コイル41及び小コイル42と、硬貨検知回路部43とにより構成されている。第1コイルとしての大コイル41(図3及び図4)は、硬貨収容器31の底部31Bよりも下側に位置しており、該底部31Bと比較して直径が僅かに小さい円環状に形成されている。第2コイルとしての小コイル42(図3及び図4)は、硬貨収容器31の底部31Bよりも下側であって、且つ大コイル41の内側に位置しており、該底部31Bや大コイル41と比較して直径が格段に小さい円環状に形成されている。
【0034】
大コイル41及び小コイル42は、何れもいわゆる空芯コイルであり、線材を円周状に複数回巻回させた構成となっている。このため大コイル41及び小コイル42は、それぞれ電流が供給されると、上側及び下側の何れか一方をN極とし、他方をS極とするようにして磁力を発生させることができる。また大コイル41及び小コイル42は、何れもそれぞれの中心軸を硬貨収容器31の中心軸31Xと一致させるように設置されている。
【0035】
ここで図4は、硬貨収容器31を上側から見下ろし、且つ底部31Bを省略した場合における、大コイル41及び小コイル42の様子を表した図と見なすことができる。また図4は、あたかも硬貨収容器31の中心軸31Xに沿って底部31Bに対し大コイル41及び小コイル42をそれぞれ投影させた場合における、それぞれの投影像を表した図と見なすこともできる。さらに図4は、大コイル41の中心軸に沿って該大コイル41を底部31Bに投影させた場合に形成される投影像と、小コイル42の中心軸に沿って該小コイル42を底部31Bに投影させた場合に形成される投影像とを表した図と見なすこともできる。以下、このようにして形成された大コイル41及び小コイル42の投影像を、それぞれ第1コイル投影像及び第2コイル投影像とも呼ぶ。
【0036】
硬貨検知回路部43は、図5に模式的な回路図を示すように、大コイル磁気出力検出部45、小コイル磁気出力検出部46、電流制御部47及び残留検知部48を有している。
【0037】
大コイル磁気出力検出部45は、大コイル41と接続されており、該大コイル41に電流を供給すると共に、該大コイル41に流れる電流や生じる電位差等を基に、該大コイル41からの磁気出力を検出して大コイル磁気出力M1(以下これを第1磁気出力とも呼ぶ)として、これを残留検知部48に供給する。
【0038】
小コイル磁気出力検出部46は、小コイル42と接続されており、該小コイル42に電流を供給すると共に、該小コイル42に流れる電流や生じる電位差等を基に、該小コイル42からの磁気出力を検出して小コイル磁気出力M2(以下これを第2磁気出力とも呼ぶ)とし、これを残留検知部48に供給する。
【0039】
電流制御部47は、大コイル磁気出力検出部45から大コイル41に供給させる電流を制御すると共に、小コイル磁気出力検出部46から小コイル42に供給させる電流を制御する。残留検知部48は、大コイル磁気出力検出部45から供給される大コイル磁気出力M1及び小コイル磁気出力検出部46から供給される小コイル磁気出力M2を基に、硬貨収容器31内に硬貨が残留しているか否かを判定する。以下では、硬貨収容器31内に残留している硬貨を残留硬貨と呼ぶ。
【0040】
[1-4.硬貨の検知]
次に、硬貨投入部22の硬貨検知部34による硬貨の検知について説明する。硬貨検知部34は、大コイル磁気出力検出部45及び小コイル磁気出力検出部46から大コイル41及び小コイル42にそれぞれ電流を供給させると、該大コイル41及び該小コイル42によりそれぞれ磁気を発生させることができる。
【0041】
ここで図6に模式図を示すように、大コイル41に電流を供給して磁気を発生させ、且つ該大コイル41の内側を通過する磁束を上方向に向ける場合を想定する。なお、図6において矢印は磁力線(磁束)を表している。この場合、大コイル41の中心付近、すなわち小コイル42の内側において、磁束が上方向を向いている。
【0042】
次に、図6と対応する図7に示すように、小コイル42に電流を供給して磁気を発生させ、且つコイルの内部を通過する磁力線(磁束)を上方向に向ける場合を想定する。この場合、小コイル42の中心付近(すなわち該小コイル42の内側)において、磁束が上方向を向いている。
【0043】
硬貨検知部34では、仮に大コイル41のみに電流を供給して磁気を発生させる場合、すなわち磁界を形成する場合、図8に示すように、大コイル磁気出力M1が、概ね当該大コイル41からの距離に応じて、すなわち硬貨収容器31内における直径方向の位置に応じて変化する。また硬貨検知部34では、仮に小コイル42のみに電流を供給して磁気を発生させる場合、図8に重ねて示すように、小コイル磁気出力M2が、概ね当該小コイル42からの距離に応じて、すなわち硬貨収容器31内における直径方向の位置に応じて変化する。
【0044】
硬貨検知部34では、大コイル磁気出力M1の値が大きくなるに連れて、残留検知部48(図5)による硬貨の検知精度を高めることができる。従って硬貨検知部34は、仮に大コイル磁気出力M1のみを用いる場合、硬貨収容器31内における外周側の部分において高い精度で硬貨を検出し得るものの、中心側の部分では硬貨の検出精度が低下してしまう。また硬貨検知部34は、仮に小コイル磁気出力M2のみを用いる場合、硬貨収容器31内における中心側の部分において高い精度で硬貨を検出し得るものの、外周側の部分では硬貨の検出精度が低下してしまう。
【0045】
そこで硬貨検知部34では、大コイル磁気出力M1及び小コイル磁気出力M2を組み合わせて用いることが考えられる。例えば、図6及び図7と対応する図9に示すように、大コイル41及び小コイル42の双方に対し、同時に電流を供給してそれぞれに磁気を発生させ、且つ何れもコイルの内部を通過する磁束を上方向に向ける場合を想定する。この場合、硬貨収容器31の中心付近となる小コイル42の内側では、大コイル41による磁力線の方向と小コイル42による磁力線の方向が同一となるため、安定した強力な磁場を形成することができる。
【0046】
その一方で、大コイル41及び小コイル42の間、すなわち小コイル42の外側であり、且つ大コイル41の内側となる領域(以下これを中間領域と呼ぶ)では、大コイル41による磁力線H1の方向と小コイル42による磁力線H2の方向とが互いに反対となる。この場合、大コイル41及び小コイル42は、中間領域において互いの磁力が打ち消し合うため、磁気出力が大幅に低下してしまい、硬貨の検出精度も格段に低下してしまう。
【0047】
そこで硬貨検知部34では、電流制御部47により、大コイル磁気出力検出部45から大コイル41に対する電流の供給と、小コイル磁気出力検出部46から小コイル42に対する電流の供給とを、順次切り替え、交互に行うようになっている。これを換言すれば、硬貨検知部34は、硬貨収容器31内において、大コイル41及び小コイル42に対し同時に電流を供給させないよう制御することにより、該大コイル41のみによる磁界(図6)と、該小コイル42のみによる磁界(図7)とが、互いに打ち消し合わないようにしている。
【0048】
具体的に電流制御部47は、図10(A)~(E)に各種制御信号のタイミングチャートを示すように、周期時間TA(例えば100~1000[ms]程度)を1つの周期として、各部に対する制御を繰り返している。
【0049】
図10(A)に示す大コイル電流供給制御信号C1は、大コイル磁気出力検出部45から大コイル41に対する電流の供給を制御する信号であり、ハイレベルとなっている期間、すなわち供給時間TB(例えば数百[ms])の間だけ電流を供給させることを表している。図10(B)に示す小コイル電流供給制御信号C2は、小コイル磁気出力検出部46から小コイル42に対する電流の供給を制御する信号であり、大コイル電流供給制御信号C1と半周期だけずれたタイミングで、大コイル41と重複しないように、供給時間TBの間だけ電流を供給することを表している。
【0050】
図10(C)に示す大コイル磁気検知制御信号C3は、大コイル磁気出力検出部45による磁気出力(すなわち大コイル磁気出力M1)の検知を制御する信号であり、ハイレベルとなっている期間に磁気出力を検知させることを表している。この大コイル磁気検知制御信号C3は、大コイル電流供給制御信号C1がハイレベルに立ち上がった時点から所定の待機時間TC(例えば数十[ms])だけ経過した後に立ち上がり、検知時間TD(例えば数百[ms])に渡ってハイレベルを継続した後、該大コイル電流供給制御信号C1が立ち下がると同時に立ち下がっている。
【0051】
すなわち電流制御部47は、大コイル41に対する電流の供給が開始されてから、該電流が安定するまでの時間に相当する待機時間TCだけ待機した後、比較的長い検知時間TDに渡り、該大コイル41からの磁気出力である大コイル磁気出力M1を検知させている。
【0052】
図10(D)に示す小コイル磁気検知制御信号C4は、小コイル磁気出力検出部46による磁気出力(すなわち小コイル磁気出力M2)の検知を制御する信号であり、大コイル磁気検知制御信号C3と半周期だけずれたタイミングで、該大コイル磁気検知制御信号C3と同様の波形を描いている。
【0053】
図10(E)に示すデータ送信制御信号C5は、残留検知部48から硬貨制御部21に対しするデータの送信を制御する信号であり、大コイル41に対する電流を供給する期間と小コイル42に電流を供給する期間との間に、比較的短いデータ送信時間TE(例えば数十[ms])だけ立ち上がる波形となっている。
【0054】
このように硬貨検知部34では、大コイル41に対し供給時間TBだけ電流を供給し、データ送信時間TEの間だけ電流の供給を停止し、小コイル42に対し供給時間TBだけ電流を供給し、データ送信時間TEの間だけ電流の供給を停止する、といった動作を1つの周期として、この一連の動作を繰り返すようになっている。
【0055】
[1-5.効果等]
以上の構成において、第1の実施の形態によるレジ釣銭機1の硬貨処理部11は、硬貨投入部22の硬貨収容器31内に残留している硬貨を、硬貨検知部34により検知するようにした。
【0056】
硬貨検知部34は、仮に大コイル41のみを設けた場合、硬貨収容器31の中心側に残留している硬貨の検知精度が低下する恐れがあった(図8)。また硬貨検知部34は、仮に小コイル42のみを設けた場合、硬貨収容器31の外周側に残留している硬貨の検知精度が低下する恐れがあった(図8)。
【0057】
さらに硬貨検知部34は、仮に大コイル41及び小コイル42を設けた上で、双方に同時に電流を供給した場合、両コイルの間となる中間領域において、互いの磁力線の方向が反対となり、形成する磁界を打ち消し合うために、硬貨の検知精度が低下する恐れがあった(図9)。
【0058】
そこで硬貨検知部34は、直径が比較的大きい大コイル41と、直径が比較的小さい小コイル42とを設けた上で、電流制御部47により、両コイルに対し電流を交互に供給するようにした(図10)。このため硬貨検知部34は、大コイル41及び小コイル42により互いの磁界を打ち消し合うこと無く、硬貨収容器31における様々な箇所から、硬貨を精度良く検知することができる。
【0059】
これによりレジ釣銭機1では、硬貨投入部22の硬貨収容器31内に硬貨が残留していることをレジ係員等に通知でき、投入された硬貨が該硬貨投入部22から取り込まれずに残留したまま精算処理を進めてしまう、といった問題の発生を未然に防止できる。
【0060】
他の観点から見ると、硬貨検知部34では、硬貨収容器31の底部31Bにおける全範囲をできるだけ偏り無くカバーするべく、コイルから極端に遠い箇所を形成せず、またできるだけ一様な磁場を形成することが望ましい。そうすると硬貨検知部34では、1個の円形のコイルのみでは実現が困難であるため、特殊な形状のコイルを用いるか、あるいは複数のコイルを組み合わせて配置することが考えられる。
【0061】
硬貨検知部34では、仮に特殊な形状のコイルを用いる場合、コイルから極端に遠い場所が形成されにくいものの、複雑な磁場が形成されることになるため、硬貨の検出精度が場所ごとに大きく異なる可能性がある。このため硬貨検知部34では、良好な磁場を形成する観点から、円形又はこれに近い形状(楕円形や正方形等)のコイルを用いることが望ましいといえる。また硬貨検知部34では、仮に複数のコイルを組み合わせて配置する場合でも、コイルの大きさや形状によっては、何れのコイルからも遠いために磁気出力が小さい場所が形成されてしまい、このような場所において硬貨の検知精度が低下してしまう。
【0062】
そこで硬貨検知部34では、直径が比較的大きい大コイル41と直径が比較的小さい小コイル42とを用い、且つ大コイル41の内部に小コイル42を配置し、両者の中心を硬貨収容器31の中心軸31Xと一致させるようにした。これにより硬貨検知部34では、硬貨収容器31の底部31B内において、コイルから極端に遠い場所を形成することが無く、硬貨の検知精度が極端に低い箇所を形成せずに済む。
【0063】
また硬貨検知部34では、大コイル41及び小コイル42に対し交互に電流を供給するため、互いのコイルによる磁場が互いに異なる時間に形成されており、この磁場同士が干渉し合うことが無い。すなわち硬貨検知部34では、各コイルによる磁場が個別に最適となるように、コイルの直径や巻き数、及び供給する電流等をそれぞれに設定するだけで、全体としての硬貨の検知精度を最大限に高めることができる。
【0064】
ところで硬貨検知部34では、仮に小コイル42の外径が大コイル41の内径よりも大きい場合、両コイルの一部を上下方向に重ねる必要が生じるため、底部31Bに対する上下方向の距離に関して、何れか一方のコイルが他方のコイルよりも遠方に位置することになる。そうすると硬貨検知部34では、底部31Bに対して遠方に位置するコイルにおいて、供給する電流の増加や巻き数の増加等により、該底部31B上において十分な磁気出力を得る必要が生じ、これにより消費電力の増加や製造コストの増加等を招く恐れがあった。
【0065】
この点において硬貨検知部34では、小コイル42の外径を大コイル41の内径よりも小さくし、該小コイル42を大コイル41の内側に配置したため、両コイルを底部31Bから極めて近い位置に配置することができる。これにより硬貨検知部34では、各コイルにより底部31B上に十分な磁気出力を得る場合に、供給する電流を比較的少なく抑えることや、巻き数を比較的少なく抑えることができる。また硬貨検知部34では、仮に磁気出力の最適化等の目的により、底部31Bから各コイルまでの距離を調整したい場合であっても、他方のコイルとの物理的な干渉を生じること無く、任意の距離となるように配置することもできる。
【0066】
以上の構成によれば、第1の実施の形態によるレジ釣銭機1の硬貨処理部11は、硬貨投入部22の硬貨検知部34において、大コイル41の内側に小コイル42を配置し、両コイルに対し電流を交互に供給するようにした。これにより硬貨検知部34は、大コイル41及び小コイル42により互いの磁界を打ち消し合うこと無く、交互にそれぞれの磁界を形成でき、硬貨収容器31の外周側及び中心側それぞれから、十分な磁気出力を得ることができる。この結果、硬貨検知部34は、硬貨収容器31内における様々な位置に残留している硬貨を精度良く検知することができる。
【0067】
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態によるレジ釣銭機201(図1)は、第1の実施の形態によるレジ釣銭機1と比較して、硬貨処理部11に代わる硬貨処理部211を有する点において相違する。硬貨処理部211(図2)は、第1の実施の形態による硬貨処理部11と比較して、硬貨制御部21及び硬貨投入部22に代わる硬貨制御部221及び硬貨投入部222を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0068】
硬貨制御部221は、第1の実施の形態による硬貨制御部21と同様、図示しないCPU、ROM及びRAM、並びにフラッシュメモリ等を有している。この硬貨制御部221は、所定の硬貨投入処理プログラムを実行することにより、図5と対応する図11に示すように、その内部に機能ブロックとして通知処理部261を形成する。この通知処理部261は、レジスタ部2の制御部5(図1)と連携することにより、表示操作部6の表示部に対して種々の情報を表示させることができる。
【0069】
硬貨投入部222(図3)は、第1の実施の形態による硬貨投入部22と比較して、硬貨検知部34に代わる硬貨検知部234を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。硬貨検知部234(図3)は、第1の実施の形態による硬貨検知部34と比較して、硬貨検知回路部43に代わる硬貨検知回路部243を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0070】
[2-1.残留検知回路の構成]
硬貨検知回路部243は、図11に示したように、第1の実施の形態による硬貨検知回路部43(図5)と比較して、残留検知部48に代わる残留検知部248を有する点、及び記憶部249を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。残留検知部248には、さらに残留検知制御部251、磁気出力取得部252、レベル判定部253及び残留位置判定部254が設けられている。また記憶部249は、例えばフラッシュメモリでなり、種々の情報を記憶する。
【0071】
残留検知制御部251は、硬貨制御部221等と同様、図示しないCPU、ROM及びRAM、並びにフラッシュメモリ等を有している。この残留検知制御部251は、記憶部249から所定の残留検知プログラムを読み出して実行することにより、残留検知部248による残留検知処理を統括的に制御する。
【0072】
磁気出力取得部252は、大コイル磁気出力検出部45及び小コイル磁気出力検出部46から大コイル磁気出力M1及び小コイル磁気出力M2をそれぞれ取得し、アナログ・ディジタル変換処理等の処理を施した上で、必要に応じて記憶部249に記憶させる。
【0073】
レベル判定部253は、大コイル磁気出力M1及び小コイル磁気出力M2を所定の有無閾値TH1と比較する。ここで有無閾値TH1は、図8(B)と対応する図12に示すように、比較的小さい値であり、硬貨収容器31(図3)内に硬貨が残留している場合に得られる最小限の磁気出力の値となっている。このため、例えば大コイル磁気出力M1及び小コイル磁気出力M2のうち少なくとも一方が有無閾値TH1以上であれば、このことは硬貨収容器31内に硬貨が残留していることを意味する。
【0074】
またレベル判定部253は、大コイル磁気出力M1及び小コイル磁気出力M2が有無閾値TH1以上であった場合、さらにこれらを所定のレベル閾値TH2と比較し、該レベル閾値TH2以上を意味する「高レベル」又は該レベル閾値TH2未満を意味する「低レベル」の何れであるかを判定する。ここでレベル閾値TH2は、図12に示すように、有無閾値TH1よりも大きい値であり、大コイル磁気出力M1及び小コイル磁気出力M2の波形が互いに交差するときの磁気出力の値として設定されている。
【0075】
さらに図12では、硬貨収容器31内における位置(横軸)に関して、大コイル磁気出力M1とレベル閾値TH2とが交差する箇所ごとにゾーンを区切っている。比較的外側のゾーンZ1及びこれよりも内側のゾーンZ2において、大コイル磁気出力M1は、小コイル磁気出力M2よりも大きい値となっている。一方、中心付近に相当するゾーンZ3において、大コイル磁気出力M1は、小コイル磁気出力M2よりも小さい値となっている。
【0076】
すなわち硬貨検知回路部243では、仮に硬貨収容器31内において硬貨がゾーンZ1に残留していた場合、大コイル磁気出力M1及び小コイル磁気出力M2が何れもレベル閾値TH2未満となる。また硬貨検知回路部243では、仮に硬貨収容器31内において硬貨がゾーンZ2に残留していた場合、大コイル磁気出力M1がレベル閾値TH2以上となり、且つ小コイル磁気出力M2がレベル閾値TH2未満となる。さらに硬貨検知回路部243では、仮に硬貨収容器31内において硬貨がゾーンZ3に残留していた場合、大コイル磁気出力M1がレベル閾値TH2未満となり、且つ小コイル磁気出力M2がレベル閾値TH2以上となる。このように硬貨検知回路部243では、大コイル磁気出力M1及び小コイル磁気出力M2とレベル閾値TH2とを比較した結果の組み合わせが、ゾーンZ1、Z2及びZ3において、それぞれ相違している。
【0077】
そこで記憶部249は、図13に示すように、大コイル磁気出力M1及び小コイル磁気出力M2とレベル閾値TH2とを比較した結果と各ゾーンとの関係を表す残留位置判定テーブルTBL1を予め記憶している。この残留位置判定テーブルTBL1には、ゾーンごとに、大コイル磁気出力M1及び小コイル磁気出力M2それぞれがレベル閾値TH2以上であることを意味する「高レベル」又はレベル閾値TH2未満であることを表す「低レベル」が格納されている。また残留位置判定テーブルTBL1では、硬貨収容器31内に残留している硬貨のおおよその位置を意味する硬貨残留位置として、ゾーンZ1及びZ2については「外周側」が格納され、ゾーンZ3については「中心側」が格納されている。
【0078】
残留位置判定部254(図11)は、大コイル磁気出力M1及び小コイル磁気出力M2とレベル閾値TH2とを比較した結果を用い、記憶部249の残留位置判定テーブルTBL1(図13)を参照することにより、硬貨収容器31内に残留している硬貨のおおよその位置である硬貨残留位置が、外周側又は内周側の何れであるかを判定する。
【0079】
例えば図4と対応する図14に示すように、硬貨収容器31内における比較的外周側に硬貨CN1が残留していた場合、レベル判定部253は、大コイル磁気出力M1を低レベル又は高レベルと判定し、且つ小コイル磁気出力M2を低レベルと判定する。このとき残留位置判定部254は、硬貨残留位置を外周側と判定することができる。
【0080】
また図14に示すように、硬貨収容器31内における比較的中心側に硬貨CN2が残留していた場合、レベル判定部253は、大コイル磁気出力M1を低レベルと判定し、且つ小コイル磁気出力M2を高レベルと判定する。このとき残留位置判定部254は、硬貨残留位置を中心側と判定することができる。
【0081】
[2-2.残留検知処理]
次に、残留検知部248による残留検知処理について、図15のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。残留検知部248の残留検知制御部251(図11)は、記憶部249から残留検知プログラムを読み出して実行することにより、残留検知処理手順RT1(図15)を開始してステップSP1に移る。
【0082】
ステップSP1において残留検知制御部251は、磁気出力取得部252(図11)により、大コイル磁気出力検出部45から大コイル磁気出力M1を取得させると共に、小コイル磁気出力検出部46から小コイル磁気出力M2を取得させ、次のステップSP2に移る。このとき磁気出力取得部252は、大コイル磁気出力M1及び小コイル磁気出力M2に対するアナログ・ディジタル変換処理等の処理を行い、また必要に応じてこれらを記憶部249に記憶させる。
【0083】
ステップSP2において残留検知制御部251は、レベル判定部253(図11)により、大コイル磁気出力M1及び小コイル磁気出力M2をそれぞれ有無閾値TH1と比較させた上で、少なくとも一方が有無閾値TH1以上であるか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは大コイル磁気出力M1及び小コイル磁気出力M2のうち少なくとも一方が有無閾値TH1以上であり、硬貨収容器31内における何れかの位置に硬貨が残留している可能性があることを表している。このとき残留検知制御部251は、次のステップSP3に移る。
【0084】
ステップSP3において残留検知制御部251は、大コイル磁気出力M1及び小コイル磁気出力M2のうち少なくとも一方が有無閾値TH1以上である状態(以下これを暫定検知状態と呼ぶ)が、所定の残留判定時間(例えば数百[ms])以上継続しているか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは暫定検知状態が比較的長く継続していることから、誤検知等の可能性が低く、硬貨が確実に残留していると見なし得ることを表している。このとき残留検知制御部251は、次のステップSP4に移る。
【0085】
ステップSP4において残留検知制御部251は、レベル判定部253により、大コイル磁気出力M1及び小コイル磁気出力M2それぞれをレベル閾値TH2と比較することにより、両者のレベルが高レベル又は低レベルの何れであるかを判定し、次のステップSP5に移る。
【0086】
ステップSP5において残留検知制御部251は、残留位置判定部254(図11)により、大コイル磁気出力M1及び小コイル磁気出力M2それぞれのレベルと、残留位置判定テーブルTBL1(図13)とを基に、硬貨の残留位置が外周側又は中心側の何れであるかを判定し、次のステップSP6に移る。ステップSP6において残留検知制御部251は、判定結果を硬貨制御部221に通知し、次のステップSP7に移る。
【0087】
これに応じて硬貨制御部221は、通知処理部261により、残留位置を文字や画像等により説明する通知画面(図示せず)を表す画像データを生成し、これをレジスタ部2の表示操作部6(図1)に供給することにより該通知画像を表示させる。レジ係員等は、この通知画像を視認することにより、硬貨収容器31内に硬貨が残留していること、及びそのおおよその位置(すなわち外周側又は中心側の何れであるか)を認識し、該硬貨を取り除く。
【0088】
一方、ステップSP2において否定結果が得られると、このことは大コイル磁気出力M1及び小コイル磁気出力M2が何れも有無閾値TH1未満であるため、硬貨収容器31内に硬貨が残留している可能性が極めて低いことを表している。このとき残留検知制御部251は、次のステップSP7に移る。
【0089】
また、ステップSP3において否定結果が得られると、このことは大コイル磁気出力M1又は小コイル磁気出力M2の少なくとも一方が高レベルである暫定検知状態の継続時間が比較的短いため、硬貨を検知している可能性に加えて、一時的な磁場の変動等により短期的に暫定検知状態となっている可能性が含まれることを表している。このとき残留検知制御部251は、次のステップSP7に移る。
【0090】
ステップSP7において残留検知制御部251は、残留検知処理手順RT1を終了する。因みに残留検知部248は、所定の待機時間が経過した後、該残留検知処理手順RT1を再度実行することにより、一連の残留検知処理を定期的に繰り返すようになっている。
【0091】
[2-3.効果等]
以上の構成において、第2の実施の形態によるレジ釣銭機201の硬貨処理部211は、硬貨投入部222の硬貨収容器31内に残留している硬貨を、硬貨検知部234により検知するようにした。
【0092】
その際に硬貨検知部234の残留検知制御部251は、残留検知処理手順RT1(図15)を実行することにより、大コイル磁気出力M1及び小コイル磁気出力M2のレベルを基に、残留している硬貨の位置が外周側又は中心側の何れであるかを判定し、得られた判定結果を硬貨制御部221に通知する。これに応じて硬貨制御部221は、残留位置を説明する通知画面をレジスタ部2の表示操作部6(図1)に表示させ、レジ係員等に視認させる。
【0093】
これにより硬貨検知部234は、硬貨収容器31内に硬貨が残留しているか否かに加えて、該硬貨収容器31内における硬貨のおおよその位置(外周側又は中心側)をレジ係員等に認識させることができ、当該硬貨を容易に且つ迅速に取り除かせることができる。
【0094】
また硬貨検知部234は、第1の実施の形態による硬貨検知部34と比較して、硬貨収容器31、大コイル41及び小コイル42等を変更する必要が無く、硬貨検知回路部43の残留検知部48に代わる硬貨検知回路部243の残留検知部248を設ければ良いため、変更箇所を僅かに抑えることができる。
【0095】
その他の点においても、第2の実施の形態によるレジ釣銭機201は、第1の実施の形態によるレジ釣銭機1と同様の作用効果を奏し得る。
【0096】
以上の構成によれば、第2の実施の形態によるレジ釣銭機201の硬貨処理部211は、硬貨投入部222の硬貨検知部234において、大コイル41の内側に小コイル42を配置し、両コイルに対し電流を交互に供給するようにした。また硬貨検知回路部243の残留検知部248は、大コイル磁気出力M1及び小コイル磁気出力M2のレベルを基に、残留している硬貨のおおよその位置を検知し、レジスタ部2の表示操作部6により通知する。これにより硬貨検知部234は、硬貨収容器31の外周側及び中心側それぞれから、十分な磁気出力を得て硬貨を精度良く検知でき、且つそのおおよその位置を通知することができる。
【0097】
[3.第3の実施の形態]
第3の実施の形態によるレジ釣銭機301(図1)は、第1の実施の形態によるレジ釣銭機1と比較して、硬貨処理部11に代わる硬貨処理部311を有する点において相違する。硬貨処理部311(図2)は、第1の実施の形態による硬貨処理部11と比較して、硬貨投入部22に代わる硬貨投入部322を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0098】
硬貨投入部322(図3)は、第1の実施の形態による硬貨投入部22と比較して、硬貨検知部34に代わる硬貨検知部334を有する点において相違する。硬貨検知部334は、1個の小コイル42に代わる4個の小コイル342A、342B、342C及び342Dを有する点、及び硬貨検知回路部43に代わる硬貨検知回路部343を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0099】
図4と対応する図16に示すように、小コイル342A、342B、342C及び342D(以下、これらをまとめて小コイル342とも呼ぶ)は、それぞれが第1の実施の形態による小コイル42(図4)と同様の円環状に巻回されたコイルであり、その直径が大コイル41の約1/3~2/5程度となっている。この小コイル342A、342B、342C及び342Dは、大コイル41の内側に位置しており、且つ互いに重ならないように配置されている。
【0100】
図5と対応する図17に示すように、硬貨検知回路部343は、第1の実施の形態による硬貨検知回路部43と比較して、小コイル磁気出力検出部46に代わる小コイル磁気出力検出部346A、346B、346C及び346Dと、電流制御部47及び残留検知部48に代わる電流制御部347及び残留検知部348とを有している。小コイル磁気出力検出部346A、346B、346C及び346Dは、小コイル342A、342B、342C及び342Dとそれぞれ接続されており、それぞれの小コイル磁気出力M2A、M2B、M2C及びM2Dを検出して残留検知部348に供給する。
【0101】
電流制御部347は、第1の実施の形態による電流制御部47と類似した構成となっており、大コイル磁気出力検出部45から大コイル41に供給させる電流を制御すると共に、小コイル磁気出力検出部346A、346B、346C及び346Dから小コイル342A、342B、342C及び342Dにそれぞれ供給させる電流を制御する。
【0102】
また電流制御部347は、第1の実施の形態と同様に、大コイル41に対する供給時間TB(図10)に渡る電流の供給と、小コイル342A、342B、342C及び342Dに対する供給時間TBに渡る電流の供給とを交互に繰り返す。すなわち4個の小コイル342A、342B、342C及び342Dは、同時に電流が供給されることにより同時に磁界を発生させている。このため硬貨検知回路部343では、小コイル磁気出力M2A、M2B、M2C及びM2Dが同時に生成されており、それぞれ残留検知部348に供給されている。
【0103】
残留検知部348は、第1の実施の形態による残留検知部48と類似した構成となっており、大コイル磁気出力M1並びに小コイル磁気出力M2A、M2B、M2C及びM2Dを基に、硬貨収容器31内に硬貨が残留しているか否かを判定する。
【0104】
このように構成された硬貨検知部334において、小コイル342A、342B、342C及び342Dは、例えば図7と対応する図18に示すように、ある時点において同時に電流が供給され、同時に磁界を形成する。このとき電流制御部347は、例えば図中に細破線の矢印として示すように、ある時点で各小コイル342に流れる電流の方向を、上側から見て何れも時計回りとする等、供給される電流の向きを互いに同一の周回方向とするように制御する。このため硬貨検知部334では、各小コイル342の外側に同時に形成される磁束の方向を統一できるため、特に大コイル41の中心付近において強力な磁場を形成できる。
【0105】
すなわち硬貨検知部334では、大コイル41の中心付近において、該大コイル41からの距離が比較的大きい(遠い)ために、該大コイル41により形成される磁場が比較的弱く、硬貨の検知精度が低下する恐れがあった。この点において硬貨検知部334では、4個の小コイル342により、大コイル41の中心付近において強力な磁場を形成することができるため、中心付近においても、硬貨を精度良く検知することができる。
【0106】
その他の点においても、第3の実施の形態によるレジ釣銭機301は、第1の実施の形態によるレジ釣銭機1と同様の作用効果を奏し得る。
【0107】
以上の構成によれば、第3の実施の形態によるレジ釣銭機301の硬貨処理部311は、硬貨投入部322の硬貨検知部334において、大コイル41の内側に4個の小コイル342を配置し、大コイル41に対する電流の供給と、4個の小コイル342に対する電流の供給とを交互に行うようにした。これにより硬貨検知部334は、大コイル41及び小コイル342により互いの磁界を打ち消し合うこと無く、交互にそれぞれの磁界を形成でき、硬貨収容器31の外周側及び中心側それぞれから、十分な磁気出力を得ることができる。この結果、硬貨検知部334は、硬貨収容器31内における様々な位置に残留している硬貨を精度良く検知することができる。
【0108】
[4.第4の実施の形態]
第4の実施の形態によるレジ釣銭機401(図1)は、第1の実施の形態によるレジ釣銭機1と比較して、硬貨処理部11に代わる硬貨処理部411を有する点において相違する。硬貨処理部411(図2)は、第1の実施の形態による硬貨処理部11と比較して、硬貨投入部22に代わる硬貨投入部422を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0109】
硬貨投入部422は、図3の一部と対応する図19に模式的な側面図を示すように、第1の実施の形態による硬貨投入部22と比較して、小コイル42に代わる小コイル442を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。小コイル442は、第1の実施の形態による小コイル42と同等の大きさ及び形状であり、また大コイル41に対する水平方向の位置は同等であるものの、大コイル41の下側に、すなわち硬貨収容器31の底部31Bを基準として該大コイル41よりも遠方に配置されている。
【0110】
ここで、大コイル41や小コイル442のようなコイルと、硬貨のような導体との間に成立する関係について説明する。一般にコイルは、交流などの電流が供給されると磁気を発生し、このとき導体内部で渦状に流れる電流、いわゆる渦電流を誘導して発生させる。さらに導体では、この渦電流により新たな磁界が発生し、この新たな磁界によりコイル内に新たな電流を生じさせる。
【0111】
このように導体内の渦電流を基にコイル内に新たに生じた電流は、当該コイルに当初供給された電流と合流して流れる。このとき、コイルに流れる電流の大きさを計測していると、コイルの近傍に導体が存在しない場合に電流値が供給された値から殆ど増減しないものの、該コイルの近傍に該導体が存在する場合に電流値が供給された値に対して増減することになる。このため、コイルに対し大コイル磁気出力検出部45(図5)等のような検出回路を接続すれば、増減した電流の有無や大きさ等を検出でき、これを基に磁気出力を得ることができる。
【0112】
またコイルでは、導体との距離が大きくなる(遠くなる)に連れて、当該導体を基に得られる磁気出力の大きさ、すなわち測定感度が減少することになる。また導体内では、表面に加えてその内部でも渦電流が発生することになるものの、いわゆる表皮効果により、該導体の表面部分と比較して電流が小さくなる。ここで、渦電流が導体の表面における電流密度の(1/e)倍、すなわち0.368倍に減少する点での表面からの距離(深さ)を電流の浸透深さδ[m]と呼ぶ。ただしeは自然対数である。この浸透深さδは、次の(1)式により算出される。
【0113】
【数1】
【0114】
ここでfは交流の周波数[Hz]であり、μは導体の透磁率[H/m]であり、σは導体の導電率[×10S/m]であり、ρは導体の抵抗率[×10-8Ω・m]である。この(1)式から分かるように、浸透深さδは、周波数fの平方根の逆数と比例関係にある。
【0115】
そこで硬貨検知部434では、小コイル442に供給する交流の電流における周波数fを比較的小さい値とすること、すなわち低周波とすることにより、浸透深さδの値を大きくし、該小コイル442から比較的離れている硬貨収容器31内の硬貨を適切に検知することが可能となる。
【0116】
これにより硬貨検知部534は、例えば硬貨収容器31を回転させるための駆動部32や軸受等との干渉を回避する、といった理由により該硬貨収容器31の底部31Bからやや離れた位置に小コイル542を配置する場合であっても、該小コイル542に比較的低周波の交流電流を供給することにより、硬貨を適切に検知することができる。またレジ釣銭機501は、第1の実施の形態によるレジ釣銭機1と同様の作用効果を奏し得る。
【0117】
[5.第5の実施の形態]
第5の実施の形態によるレジ釣銭機501(図1)は、第1の実施の形態によるレジ釣銭機1と比較して、硬貨処理部11に代わる硬貨処理部511を有する点において相違する。硬貨処理部511(図2)は、第1の実施の形態による硬貨処理部11と比較して、硬貨投入部22に代わる硬貨投入部522を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0118】
硬貨投入部522(図3)は、第1の実施の形態による硬貨投入部22と比較して、硬貨検知部34に代わる硬貨検知部534を有する点において相違する。硬貨検知部534は、大コイル41及び小コイル42に代わるコイル561、562及び563を有する点、及び硬貨検知回路部43に代わる硬貨検知回路部543(図3)を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0119】
図4と対応する図20に示すように、コイル561、562及び563は、何れも上側から見て長方形状に巻回されている。このコイル561、562及び563は、硬貨収容器31における底部31Bの下側において、該底部31Bにおける所定の直径方向(すなわち図の上下方向)に沿うようにして、互いの長辺を隣接させ、且つ互いに重なること無く整列するように配置されている。
【0120】
硬貨検知回路部543は、第1の実施の形態による硬貨検知回路部43(図5)と類似した構成となっており、大コイル磁気出力検出部45及び小コイル磁気出力検出部46に代えて、3個のコイル磁気出力検出部(図示せず)が設けられている。またこの硬貨検知回路部543では、電流制御部47に代えて設けられた電流制御部(図示せず)により、図21(A)、(B)及び(C)に示すように、3個のコイル561、562及び563に対して電流を順次供給させ、3種類の磁気出力を順次生成させるように制御している。
【0121】
これにより硬貨検知部534は、第1の実施の形態による硬貨検知部34と同様、硬貨収容器31内の各部において、残留している硬貨の有無を精度良く検知することができる。またレジ釣銭機501は、第1の実施の形態によるレジ釣銭機1と同様の作用効果を奏し得る。
【0122】
[6.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、硬貨検知部34に大コイル41及び小コイル42といった大きさが異なる2個のコイルを同心円状に配置する場合について述べた(図4)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば大きさが異なる3個以上のコイルを同心円状に配置しても良い。この場合、各コイルに対して順次電流を供給するよう制御することにより、各コイルにより交替で磁界を形成させる等、コイル同士の間で互いの磁界を打ち消し合わないようにすれば良い。また、例えば小コイル42の中心軸が大コイル41の中心軸と異なる位置となるように、すなわち同心円状とならないように、該小コイル42を配置しても良い。第2~第4の実施の形態についても同様である。
【0123】
また上述した第1の実施の形態においては、大コイル41及び小コイル42に交流の電流を供給する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば大コイル41及び小コイル42に直流の電流を供給しても良い。またこの場合、大コイル41及び小コイル42によりそれぞれ形成される磁束の方向を、互いに反対方向としても良い。第2~第5の実施の形態についても同様である。
【0124】
さらに上述した第1の実施の形態においては、大コイル41に電流を供給して磁界を形成し、硬貨収容器31内の硬貨内において渦電流を発生させ、これに起因して該大コイル41内を流れる電流の変化を検出することにより、当該硬貨を検知する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば該大コイル41の他に検知用のコイルを設け、硬貨内を流れる渦電流に起因した磁界の変化を該検知用のコイルにより検知するようにしても良い。小コイル42についても同様であり、また第2~第5の実施の形態についても同様である。
【0125】
さらに上述した第1の実施の形態においては、大コイル41及び小コイル42に対し、同等の大きさでなり同等の周波数でなる電流をそれぞれ供給する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば大コイル41及び小コイル42の直径や巻き数等に応じて、それぞれに供給する電流の大きさや周波数等を適宜相違させても良い。要は、硬貨収容器31内に硬貨が残留しているか否かを適切に検出できれば良い。第2~第5の実施の形態についても同様である。
【0126】
さらに上述した第1の実施の形態においては、硬貨収容器31を円筒形状とする場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば上側に対して下側の直径が小さいすり鉢状等、種々の形状としても良い。また、硬貨投入部22において硬貨収容器31を回転させる構成に限らず、例えば硬貨収容器31を固定すると共にその底部31Bにベルトを組み込み、該ベルトを走行させることにより硬貨を順次取り込むようにしても良い。この場合、硬貨収容器31は直方体状等の種々の形状とすることができる。第2~第5の実施の形態についても同様である。
【0127】
さらに上述した第2の実施の形態においては、通知する硬貨の位置を外周側又は内周側の2通りとする場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば通知する硬貨の位置をゾーンZ1、Z2又はZ3(図13)の3通りとしても良い。或いは、例えばレベル閾値TH2と異なる値の第2レベル閾値を設定し、各磁気出力を該第2レベル閾値と比較した結果を組み合わせることにより、通知する硬貨の位置を4通り以上としても良い。また硬貨検知部234では、例えば底部31Bにおける内周側及び外周側に区分される部分の径方向の長さや面積の比率を最適化するように、大コイル41及び小コイル42の間で、外径及び内径の大きさ、巻き数、或いは供給する電流の大きさや周波数等を適宜調整しても良い。さらには第4の実施の形態のように、底部31Bからの上下方向の位置を適宜調整しても良い。
【0128】
さらに上述した第2の実施の形態においては、硬貨の位置を通知する通知画面をレジスタ部2の表示操作部6に表示することにより、レジ係員に対し硬貨の残留やその位置を通知する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばアナウンスの音声やアラーム音等により残留硬貨の有無やその位置を通知しても良く、或いは通知内容をレシートに印字しても良い。
【0129】
さらに上述した第3の実施の形態においては、4個の小コイル342(図16)に対して同時に電流を供給する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば4個の小コイル342に対して順次電流を供給するようにしても良い。さらにこの場合、第2の実施の形態と同様に、コイルごとに得られた磁気出力を基に、硬貨収容器31内における硬貨の位置を、例えば「手前側」、「左側」、「右側」、又は「奥側」等のように通知しても良い。
【0130】
さらに上述した第3の実施の形態においては、硬貨検知部334(図17)内に、4個の小コイル342(342A~342D)とそれぞれ対応する4個の小コイル磁気出力検出部346(346A~346D)を設け、これらにより4種類の小コイル磁気出力M2(M2A~M2D)をそれぞれ生成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば硬貨検知部334内に1個の小コイル磁気出力検出部346を設け、これを4個の小コイル342(342A~342D)と接続し、これらから得られたそれぞれの磁気出力を統合して1種類の小コイル磁気出力M2を生成して残留検知部348に供給しても良い。
【0131】
さらに上述した第3の実施の形態においては、1個の大コイル41の内側に4個の小コイル342を配置する場合について述べた(図16)。しかしながら本発明はこれに限らず、大コイル41の内側に2個、3個又は5個以上の小コイル342を配置しても良い。
【0132】
さらに上述した第4の実施の形態においては、小コイル442を大コイル41よりも下方に、すなわち硬貨収容器31の底部31Bに対して遠方に配置する場合について述べた(図19)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば大コイル41を小コイル442よりも下方に配置しても良い。
【0133】
さらに上述した第5の実施の形態においては、何れも長方形状でなるコイル561、562及び563を、底部31Bにおける所定の直径方向に沿うようにして配置する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばそれぞれ扇形状に巻回された複数のコイルを底部31Bにおける周方向に沿って並べるように配置しても良く、また互いに異なる形状に巻回された複数のコイルを適宜組み合わせて底部31Bと対向するように配置しても良い。これらの場合、各コイルに順次電流を供給し、或いは互いに離れたコイル同士により構成したグループごとに電流を順次供給する等の制御を行うことにより、各コイルにより形成される磁界を互いに打ち消し合わないようにすれば良い。
【0134】
さらに上述した第1の実施の形態においては、レジ釣銭機1(図1)の釣銭処理部3に硬貨処理部11、紙幣処理部12及び表示操作部13を設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば釣銭処理部3から紙幣処理部12及び表示操作部13のうち少なくとも一方を省略しても良い。第2~第5の実施の形態についても同様である。
【0135】
さらに上述した第1の実施の形態においては、レジ釣銭機1の硬貨処理部11における硬貨投入部22に硬貨検知部34を組み込む場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば硬貨処理部11における硬貨排出部28のような硬貨を収容する種々の箇所や、現金自動預払機(ATM)や自動販売機のような硬貨を取り扱う種々の装置における硬貨を収容する箇所等、硬貨を収容する種々の箇所に硬貨検知部34を組み込むようにしても良い。第2~第5の実施の形態についても同様である。
【0136】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【0137】
さらに上述した第1の実施の形態においては、第1コイルとしての大コイル41と、第2コイルとしての小コイル42と、電源部としての電流制御部47と、磁気出力検出部としての大コイル磁気出力検出部45及び小コイル磁気出力検出部46と、判定部としての残留検知部48とによって硬貨検知装置としての硬貨検知部34を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる第1コイルと、第2コイルと、電源部と、磁気出力検出部と、判定部とによって硬貨検知装置を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明は、例えば小売店舗の精算所に設置されるレジ釣銭機で利用できる。
【符号の説明】
【0139】
1、201、301、401、501……レジ釣銭機、2……レジスタ部、5……制御部、6……表示操作部、11、211、311、411、511……硬貨処理部、12……紙幣処理部、13……表示操作部、15……紙幣入出口、20……硬貨処理部筐体、21、221……硬貨制御部、22、222、322、422、522……硬貨投入部、30……硬貨投入部筐体、31……硬貨収容器、31B……底部、31X……中心軸、34、234、334、434、534……硬貨検知部、41……大コイル、42、342、342A、342B、342C、342D、442、542……小コイル、43、243、343、543……硬貨検知回路部、45……大コイル磁気出力検出部、46、346、346A、346B、346C、346D……小コイル磁気出力検出部、47、347、……電流制御部、48、248、348……残留検知部、249……記憶部、251……残留検知制御部、252……磁気出力取得部、253……レベル判定部、254……残留位置判定部、261……通知処理部、561、562、563……コイル、C1……大コイル電流供給制御信号、C2……小コイル電流供給制御信号、C3……大コイル磁気検知制御信号、C4……小コイル磁気検知制御信号、C5……データ送信制御信号、CN……硬貨、H1、H2……磁力線、M1……大コイル磁気出力、M2……小コイル磁気出力、TBL1……残留位置判定テーブル、TH1……有無閾値、TH2……レベル閾値、f……周波数、δ……浸透深さ。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21