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特許7528676液体噴射装置及び液体噴射装置のワイピング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】液体噴射装置及び液体噴射装置のワイピング方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
B41J2/165 303
B41J2/165 101
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020161006
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2022054044
(43)【公開日】2022-04-06
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】森腰 耕司
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-184192(JP,A)
【文献】特開2005-007711(JP,A)
【文献】特開2001-096757(JP,A)
【文献】特開2020-059276(JP,A)
【文献】特開平03-262646(JP,A)
【文献】特開2006-218702(JP,A)
【文献】特開2020-059275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する複数のノズルを含む第1領域と、前記第1領域よりも外側の第2領域と、を含む払拭面を有する液体噴射ヘッドと、前記払拭面を払拭するワイピング機構と、前記複数のノズルを囲むようにして配置された前記払拭面のシール部に当接可能なキャップと、を備え、
前記ワイピング機構が前記払拭面に対して第1方向に相対移動することによって、前記第1領域及び前記第2領域を払拭する第1払拭動作と、
前記第1払拭動作の前に前記ワイピング機構が前記払拭面に対して前記第1方向とは反対方向である第2方向に相対移動することによって、前記第2領域のうち前記第1領域に対して前記第2方向に配置された上流部分を含む領域を払拭する第2払拭動作と、を実行し、
前記第2払拭動作では、前記第1領域を払拭せず、且つ、前記シール部よりも内側から前記ワイピング機構の前記第2方向への相対移動を開始し、
前記ワイピング機構は、前記第1払拭動作および前記第2払拭動作で使用される共通の払拭部材を有する、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
液体を噴射する複数のノズルを含む第1領域と、前記第1領域よりも外側の第2領域と、を含む払拭面を有する液体噴射ヘッドと、前記払拭面を払拭するワイピング機構と、前記複数のノズルを囲むようにして前記払拭面のシール部に当接可能なキャップと、を備え、
前記ワイピング機構は、第1払拭部材と、第2払拭部材と、前記第1払拭部材を昇降させる第1昇降機構と、前記第1昇降機構とは別の昇降機構であって前記第2払拭部材を昇降させる第2昇降機構と、を有し、
前記第1払拭部材が前記払拭面に対して第1方向に相対移動することによって、前記第1領域及び前記第2領域を払拭する第1払拭動作と、
前記第1払拭動作の前に前記第2払拭部材が前記払拭面に対して前記第1方向とは交差する第3方向に相対移動することによって、前記第2領域のうち前記第1領域に対して前記第1方向とは反対方向である第2方向に配置された上流部分を含む領域のみを払拭する第2払拭動作と、を実行し、
前記第2払拭動作によって払拭される前記第2領域の前記上流部分を含む領域には、前記シール部の内側の領域が含まれ、
前記第2払拭部材の前記第3方向に直交する方向の幅は、前記第1払拭部材の前記第1方向に直交する方向の幅よりも小さい、ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項3】
前記ワイピング機構は、前記第2払拭部材を前記第3方向に沿って往復移動させるための搬送装置を有し、前記第1払拭部材を前記第1方向に沿って往復移動させる搬送装置を備えない、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
液体を噴射する複数のノズルを含む第1領域と、前記第1領域よりも外側の第2領域と、を含む払拭面を有する液体噴射ヘッドと、前記払拭面を払拭するワイピング機構と、を備え、
前記ワイピング機構が前記払拭面に対して第1方向に相対移動することによって、前記第1領域及び前記第2領域を払拭する第1払拭動作と、
前記第1払拭動作の前に前記ワイピング機構が前記払拭面に対して前記第1方向とは交差する方向に相対移動することによって、前記第2領域のうち前記第1領域に対して前記第1方向とは反対方向である第2方向に配置された上流部分を含む領域を払拭する第2払拭動作と、を実行し、
前記ワイピング機構は、前記第1払拭動作および前記第2払拭動作で使用される共通の払拭部材と、前記払拭部材を回転させる回転装置と、を有する、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項5】
前記第2払拭動作では、前記第1領域を払拭しない、
ことを特徴とする請求項2乃至4の何れか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
液体を噴射する複数のノズルを含む第1領域と、前記第1領域よりも外側に位置する第2領域と、を含む払拭面を有する液体噴射ヘッドと、前記払拭面を払拭する払拭部材を有するワイピング機構と、前記複数のノズルを囲むようにして配置された前記払拭面のシール部に当接可能なキャップと、を備える液体噴射装置のワイピング方法であって、
前記払拭部材を前記払拭面に対して第1方向に相対移動させて、前記液体噴射ヘッドの前記第1領域及び前記第2領域を払拭する第1払拭動作と、
前記第1払拭動作の前に前記第1払拭動作使用される共通の前記払拭部材を前記払拭面に対して前記第1方向とは反対方向である第2方向に相対移動させて、前記第2領域のうち前記第1領域に対して前記第2方向に配置された上流部分を含む領域を払拭する第2払拭動作と、を実行し、
前記第2払拭動作では、前記第1領域を払拭せず、且つ、前記シール部よりも内側から前記ワイピング機構の前記第2方向への相対移動を開始する、ことを特徴とする液体噴射装置のワイピング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を噴射する液体噴射装置及び液体噴射装置のワイピング方法に関し、特に液体としてインクを噴射するインクジェット式記録装置及びインクジェット式記録装置のワイピング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被噴射媒体に液体を噴射する液体噴射装置には、液体としてインクを噴射させて紙や記録シートなどの被噴射媒体(被記録媒体)に印刷を行うインクジェット式記録装置が知られている。
【0003】
このようなインクジェット式記録装置に搭載されるインクジェット式記録ヘッドは、ノズルからインク滴を噴射するため、ノズル近傍にインクが付着することにより、また付着したインクが増粘することにより、インク滴の噴射方向が安定しないという問題やインク滴が噴射されないなどの吐出不良が発生するという問題がある。
【0004】
このため、インクジェット式記録装置には、インクジェット式記録ヘッドのノズルが設けられたノズル面をワイプ部材でワイピングすることにより、定期的にメンテナンスするようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に係る発明では、ワイピングにより払拭される払拭面であるノズル面に対し、その一端から他端まで一方向にワイプ部材を移動させ、ノズル面に付着したインク等を掻き取る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-156813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、払拭面には、インクだけでなく、例えば、紙粉や埃、固化したインクなどの異物が付着することがある。特に、払拭面の外周部にはこのような異物が付着し易い。このため、特許文献1に記載のように、払拭面の一端から他端までワイプ部材を一方向に移動させて払拭面をワイピングすると、払拭面の外周部に付着した異物を巻き込んでしまい、払拭面のノズルが開口する領域を傷つけてしまう虞があり、それに起因してインク滴の噴射方向が安定しないといった問題が発生する虞がある。
【0007】
なお、このような問題は、インクジェット式記録装置だけでなく、インク以外の液体を噴射する液体噴射装置においても同様に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の一つの態様は、液体を噴射する複数のノズルを含む第1領域と、前記第1領域よりも外側の第2領域と、を含む払拭面を有する液体噴射ヘッドと、前記払拭面を払拭するワイピング機構と、を備え、前記ワイピング機構が前記払拭面に対して第1方向に相対移動することによって、前記第1領域及び前記第2領域を払拭する第1払拭動作と、前記第1払拭動作の前に前記ワイピング機構が前記払拭面に対して前記第1方向とは異なる方向に相対移動することによって、前記第2領域のうち前記第1領域に対して前記第1方向とは反対方向である第2方向に配置された上流部分を含む領域を払拭する第2払拭動作と、を実行する、ことを特徴とする液体噴射装置にある。
【0009】
また本発明の他の態様は、液体を噴射する複数のノズルを含む第1領域と、前記第1領域よりも外側に位置する第2領域と、を含む払拭面を有する液体噴射ヘッドと、前記払拭面を払拭するワイピング機構と、を備える液体噴射装置のワイピング方法であって、前記ワイピング機構を前記払拭面に対して第1方向に相対移動させて、前記液体噴射ヘッドの前記第1領域及び前記第2領域を払拭する第1払拭動作と、前記第1払拭動作の前に前記ワイピング機構を前記払拭面に対して前記第1方向とは異なる方向に相対移動させて、前記第2領域のうち前記第1領域に対して前記第1方向とは反対方向である第2方向に配置された上流部分を含む領域を払拭する第2払拭動作と、を実行する、ことを特徴とする液体噴射装置のワイピング方法にある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1に係る記録装置の概略構成を説明する斜視図である。
図2】実施形態1に係る記録ヘッドの概略構成を説明する分解斜視図である。
図3】実施形態1に係る記録ヘッドの払拭面を示す平面図である。
図4】実施形態1に係るワイピング機構の概略構成を示す模式図である。
図5】実施形態1に係る記録装置が備えるキャップの構成を説明する図である。
図6】実施形態1に係る記録ヘッドの払拭面を説明する平面図である。
図7】実施形態1に係る記録装置のワイピング方法を説明する図である。
図8】実施形態1に係る記録装置のワイピング方法を説明する図である。
図9】実施形態1に係る記録装置のワイピング方法を説明する図である。
図10】実施形態1に係る記録装置のワイピング方法を説明する図である。
図11】実施形態1に係る記録装置のワイピング方法を説明する図である。
図12】実施形態2に係るワイピング機構の概略構成を示す模式図である。
図13】実施形態2に係るワイピング機構によるワイピング方法を説明する図である。
図14】実施形態2に係るワイピング機構によるワイピング方法を説明する図である。
図15】実施形態2に係るワイピング機構によるワイピング方法を説明する図である。
図16】実施形態3に係るワイピング機構の概略構成を示す模式図である。
図17】実施形態3に係る記録装置のワイピング方法を説明する図である。
図18】実施形態3に係る記録装置のワイピング方法を説明する図である。
図19】他の実施形態に係る記録ヘッドの払拭面を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下で説明する構成は、本発明の一態様に過ぎず、本発明の範囲内で任意に変更可能である。また各図において同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
また各図においてX、Y、Zは、互いに直交する3つの空間軸を表している。本明細書では、これらの軸に沿った方向をX方向、Y方向及びZ方向とする。各図の矢印が向かう方向を正(+)方向、矢印とは反対に向かう方向を負(-)方向として説明する。
【0013】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置を模式的に示す図である。図2は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図である。図3は、実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの払拭面を示す平面図である。また図4は、インクジェット式記録ヘッドが備えるワイピング機構の概略構成を示す模式図である。図5は、インクジェット式記録装置が備えるキャップの概略構成を説明する図である。図6は、実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの払拭面を説明する平面図である。
【0014】
図1に示すように液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置1は、液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドとも言う)2を備え、この記録ヘッド2から液体の一種であるインクをインク滴として噴射して印刷用紙等の被噴射媒体S(以降、媒体Sとも言う)に着弾させ、この媒体Sに形成されるドットの配列により画像等の印刷を行う印刷装置である。なお、媒体Sとしては、記録用紙の他、樹脂フィルムや布等の任意の材質を用いることができる。
【0015】
なお以下の説明では、X方向、Y方向、Z方向のうち、記録ヘッド2の移動方向(いわゆる主走査方向)をX方向とし、主走査方向と直交する媒体Sの搬送方向をY方向とする。また記録ヘッド2のノズルが開口するノズル面に平行な面をXY平面とし、XY平面に交差する方向をZ方向とし、インク滴は+Z方向に噴射されるものとする。本実施形態では、Z方向は、XY平面に直交する方向としている。
【0016】
このインクジェット式記録装置1は、記録ヘッド2を具備すると共に、液体容器3と、搬送機構4と、移動機構5と、制御部である制御ユニット6と、を具備する。
【0017】
液体容器3は、記録ヘッド2から噴射されるインクが貯留される。液体容器3としては、例えば、インクジェット式記録装置1に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、インクを補充可能なインクタンクなどが挙げられる。本実施形態では、液体容器3として、記録ヘッド2に着脱可能に設けられたカートリッジを採用する。また、液体容器3には、色や種類の異なる複数種類のインクが個別に貯留される。
【0018】
搬送機構4は、媒体Sを+X方向に搬送するものであり、例えば、搬送ローラー4aを有する。なお、媒体Sを搬送する搬送機構4は、搬送ローラー4aに限らず、ベルトやドラムによって媒体Sを搬送するものであってもよい。
【0019】
移動機構5は、記録ヘッド2をY方向に沿って往復移動させる。移動機構5によって記録ヘッド2が往復するY方向は、媒体Sが搬送されるX方向に直交する方向である。本実施形態の移動機構5は、搬送体7と搬送ベルト8及び駆動モーター8aとガイドレール9とを具備する。搬送体7は、記録ヘッド2を収容する略箱形の構造体、いわゆるキャリッジであり、搬送ベルト8に固定される。搬送ベルト8は、Y方向に沿って架設された無端ベルトであり、駆動モーター8aの駆動力によって回転する。搬送ベルト8が回転することで記録ヘッド2が搬送体7と共にY方向に延びるガイドレール9に沿って往復移動する。なお、液体容器3は、記録ヘッド2とは別に装置本体10内に載置することも可能である。
【0020】
制御ユニット6は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の制御装置と、半導体メモリー等の記憶装置とを含んで構成される。制御ユニット6は、記憶装置に記憶されたプログラムを制御装置が実行することでインクジェット式記録装置1の各要素、すなわち、記録ヘッド2、搬送機構4、移動機構5等を統括的に制御する。
【0021】
記録ヘッド2は、図2に示すように、保持部材20と複数の駆動部21とカバーヘッド22とを具備する。
【0022】
保持部材20は、-Z側の面にインクカートリッジからなる液体容器3が装着される液体容器装着部20aを有する。液体容器装着部20aには、液体容器3に接続される接続部20bが設けられる。本実施形態では、接続部20bとして、液体容器3に挿入される針状に突出したものを用いる。この接続部20bの-Z側の先端には、保持部材20内に設けられた図示しない流路が開口する。なお保持部材20の内部には、インクに含まれる異物や気泡を捕捉するフィルターが設けられてもよい。
【0023】
保持部材20の+Z側の面には、液体としてインクを噴射する複数の駆動部21が固定される。本実施形態では1つの記録ヘッド2は、4つの駆動部21を具備する。各駆動部21の+Z側の面には、図3に示すように、液体であるインクがインク滴として噴射されるノズル23が設けられる。各駆動部21には、複数のノズル23がX方向に並ぶ1列のノズル列24が設けられる。記録ヘッド2には、4つの駆動部21が設けられるため、合計4列のノズル列24が設けられる。また複数の駆動部21は、ノズル列24を構成するノズル23同士がY方向で同じ位置となるように配置される。なお図3では、保持部材20の図示を省略する。
【0024】
本実施形態では、1つの駆動部21に1列のノズル列24を設けたが、1つの駆動部21に形成されるノズル列24の数は、特に限定されず、例えば、2列以上であってもよい。また、駆動部21に設けられたノズル列24は、X方向に並ぶノズル23によって構成されるものに限定されず、ノズル23が開口するノズル面の面内であるXY平面内において、X方向及びY方向に対して傾斜する方向にノズル23が並ぶものであってもよい。
【0025】
駆動部21の内部には、図示は省略するが、ノズル23に連通する流路と、流路内のインクに圧力変化を生じさせる圧力発生手段と、が設けられる。圧力発生手段としては、例えば、電気機械変換機能を呈する圧電材料を有する圧電アクチュエーターの変形によって液体流路の容積を変化させて液体流路内のインクに圧力変化を生じさせてノズル23からインク滴を噴射させるものを用いることができる。
【0026】
圧力発生手段としては、例えば、流路内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル23からインク滴を噴射するものを用いることができる。さらに、圧力発生手段としては、例えば、振動板と電極との間に静電気力を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル23からインク滴を噴射させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
【0027】
また記録ヘッド2は、+Z側にカバーヘッド22を備える。カバーヘッド22は、複数の駆動部21のノズル23が開口するノズル面側を保護する。なお、ノズル面とは、記録ヘッド2のインクを噴射するノズル23が開口する面のこといい、カバーヘッド22は、各駆動部21のノズル列24をそれぞれ開口する露出開口部25が設けられている。本実施形態では、カバーヘッド22には、4つの駆動部21に対応する4つの露出開口部25がY方向に並設されている。
【0028】
さらにインクジェット式記録装置1は、記録ヘッド2の主走査方向であるY方向における一側の領域、本実施形態では+Y側の領域には、記録ヘッド2の払拭面100を払拭するワイピング機構11を備えている。ここで、払拭面100とは、ワイピング機構11によって払拭される記録ヘッド2の一方の表面全体をいう。本実施形態では、記録ヘッド2が備える各駆動部21のノズル23が開口するノズル面と、ノズル面を保護するカバーヘッド22の+Z側を向く面と、を含む面が払拭面100となる。
【0029】
ワイピング機構11は、図4に示すように、払拭部材としてのワイパー12と、このワイパー12を昇降させる昇降装置13とを備える。ワイパー12は、例えばゴムやエラストマー等の弾性を有する板状の部材により構成され、X方向において記録ヘッド2の払拭面100よりも広い幅で形成される。昇降装置13は、例えば、モーター等の駆動手段を備え、ワイパー12が払拭面100に接触しない第1の位置(図7参照)と、第1の位置よりも上方でワイパー12が払拭面100に接触する第2の位置(図8参照)との間でワイパー12を昇降させる。
【0030】
詳しくは後述するが、記録ヘッド2の払拭面100を払拭するワイピング動作では、ワイパー12の先端部が払拭面100に接触した状態で、ワイパー12を記録ヘッド2に対して相対移動させることにより、ワイパー12によって記録ヘッド2の払拭面100を払拭する。
【0031】
なお払拭面100を払拭する払拭部材であるワイパー12は、板状の弾性部材等からなる構成に限定されず、例えば、スポンジ等の多孔質材料や織物、不織布等で構成されていてもよい。
【0032】
また搬送体7の待機位置であるホームポジションであるワイパー12の+Y側には、ワイパー12に隣接してキャップ14が配設される(図1参照)。キャップ14は、昇降可能に構成され、図5に示すように、記録ヘッド2の払拭面100に当接し得るトレイ状に形成される。このキャップ14は、内部の空間が封止空部として機能し、この封止空部内に記録ヘッド2のノズル23を臨ませた状態で払拭面100に密着可能に構成される。また、このキャップ14には、廃液チューブ15を介してポンプ16が接続され、このポンプ16の駆動によってキャップ14の封止空部内を負圧化することができる。
【0033】
このように払拭面100にキャップ14を当接させて記録ヘッド2のノズル23を塞ぐことで、ノズル23付近のインクの増粘を抑えてノズル詰まり等の発生を抑制することができる。
【0034】
ところで、記録ヘッド2の払拭面100には、例えば、紙粉や埃の異物が付着することがある。払拭面100にキャップ14を当接させることで、払拭面100のキャップ14で覆われている部分への異物の付着は抑制できる。しかしながら、払拭面100にキャップ14を当接させていても、払拭面100の外周部、つまり払拭面100のキャップ14によって覆われていない部分には、異物200が付着する虞がある。
【0035】
更に、キャップ14と当接する後述の払拭面100のシール部103(図6参照)には、シール部103にインクが付着した状態でシール部103とキャップ14の先端との離当接が繰り返されることによって、このインクに含まれる顔料等の成分が凝集して堆積し、異物200となってシール部103に付着する虞がある。
【0036】
このように、払拭面100の外周部に異物200が付着すると、その後、記録ヘッド2の払拭面100からキャップ14を外し、払拭面100の一端からワイパー12を一方向に移動させて払拭面100を払拭すると、ワイパー12によって異物200を巻き込み、例えば、異物200によってノズル23を傷つけたり、異物200をノズル23に擦り込んだり、それらに起因して吐出不良が発生する虞がある。
【0037】
しかしながら、本発明に係るインクジェット式記録装置1によれば、以下に説明するように、払拭面100の表面、特に払拭面100の外周部に付着した異物200に起因する吐出不良の発生を抑制することができる。
【0038】
ここで、記録ヘッド2の払拭面100は、図6に示すように、記録ヘッド2のノズル23を含む第1領域101と、第1領域101よりも外側の第2領域102と、を含むものとする。第1領域101は、各駆動部21の全てのノズル23を含み最小面積となるように直線で囲む領域である。第2領域102は、第1領域101の外側の領域、つまり払拭面100の外周部の領域である。言い換えれば、第2領域102は、払拭面100の第1領域101を除く部分であり、第1領域101の周囲に連続的する領域である。
【0039】
上述したキャップ14は、払拭面100のうちの第2領域102に当接して各ノズル23の乾燥等を抑制する。キャップ14は、図6に示すように、第2領域102内に位置するシール部103にて払拭面100に当接し、このシール部103の内側の領域がキャップ14によって封止されるシール領域となる。
【0040】
そして、記録ヘッド2の払拭面100を払拭するワイピング動作を実行する際には、ワイピング機構11が払拭面100に対して第1の方向である+Y方向にて相対移動することによって第1領域101及び第2領域102を払拭する第1払拭動作と、第1払拭動作の直前に、ワイピング機構11が払拭面100に対して第1方向である+Y方向とは異なる方向に相対移動することによって、第2領域102のうち第1領域101に対して第1方向である+Y方向とは反対方向である第2方向に配置された上流部分を含む領域を払拭する第2払拭動作と、を実行する。
【0041】
本ワイピングである第1払拭動作では、ワイピング機構11が備えるワイパー12が、記録ヘッド2に対して第1の方向である+Y方向に相対移動することによって払拭面100の第1領域101及び第2領域102を払拭する。本実施形態では、移動機構5によって記録ヘッド2を-Y方向に移動させることで、ワイパー12を記録ヘッド2に対して+Y方向に相対移動させる。つまり本実施形態の構成では、移動機構5はワイピング機構11の一部としても機能する。
【0042】
事前ワイピングである第2払拭動作では、ワイピング機構11が備えるワイパー12が、記録ヘッド2に対して第1方向とは異なる方向、本実施形態では第2方向である-Y方向に相対移動することによって、第2領域102のうち第2方向である-Y方向に配置された上流部分を含む領域を払拭する。
【0043】
ここで、第2領域102のうち第2方向に配置された上流部分とは、第1領域101の周囲を囲む第2領域102のうち、本ワイピングである第1払拭動作におけるワイパー12の移動方向の上流側となる部分をいう。図6に示す払拭面100の場合、第1領域101の端部101aよりも-Y方向側の第2領域102が、第2領域102のうち第2方向に配置された上流部分に相当する。また第2払拭動作では、第1領域101の外側の領域、本実施形態では第2領域102のみを払拭する。すなわち第2払拭動作では、第1領域101は払拭しない。勿論、第2払拭動作において、第2領域102と共に第1領域101の一部を含む領域を払拭してもよい。すなわち第2払拭動作は、第1領域101の端部101aよりも+Y方向側から払拭を開始してもよい。
【0044】
このように本発明に係るインクジェット式記録装置1は、例えば、払拭面100からキャップ14を外してワイピング機構11による第1払拭動作を実行する際、その前、好ましくはその直前に、事前ワイピングである第2払拭動作を実行する。これにより、本ワイピング時にワイパー12による異物200の巻き込みを抑制でき、異物200に巻き込みに起因する吐出不良を抑制することができる。
【0045】
なお、ワイピング機構11による第1払拭動作及び第2払拭動作は、実際には、制御ユニット6がワイピング機構11を制御することによって実行される。
【0046】
図7図11は、実施形態1に係るワイピング機構によるワイピング方法を説明する図である。以下、図7図11を参照して、制御ユニット6の制御に基づくワイピング機構11による払拭面100のワイピング方法の一例について説明する。
【0047】
まず第2払拭動作が開始されると、図7及び図9に示すように、ワイパー12が記録ヘッド2に対向する位置となるように、記録ヘッド2に対してワイパー12を相対移動させる。すなわちワイパー12が記録ヘッド2に対向する位置となるように、移動機構5により記録ヘッド2を移動させる。具体的には、払拭面100の第2領域102の第1領域101よりも-Y方向側で且つシール部103よりも+Y方向側の領域に対してワイパー12が対向するように、記録ヘッド2を移動させる。
【0048】
この状態で、昇降装置13によってワイパー12を上昇させて、図8に示すように、ワイパー12の先端部を払拭面100に当接させる。次いで、記録ヘッド2を+Y方向に移動させることで、図10に示すように、払拭面100に対してワイパー12を記録ヘッド2の外側まで相対移動させる。つまりシール部103よりも+Y方向側で且つノズル23よりも-Y方向側の位置から払拭面100に対してワイパー12を記録ヘッド2の外側まで第2方向である-Y方向に相対移動させる。
【0049】
これにより、第2領域102のうち第2方向である-Y方向に配置された上流部分を含む領域が払拭され異物200が除去される。具体的には、第2払拭動作によって払拭される上記上流部分の一部には、シール部103が含まれるので、キャップ14に覆われなかった払拭面100の第2領域102の外周部分に付着した異物200だけではなく、このシール部103に付着した異物も除去される。また第2払拭動作では、第1領域101から離れる方向にワイパー12が払拭面100に対して相対移動し、第1領域101は払拭されないので、第2払拭動作によってノズル23が傷付けられることもない。
【0050】
その後、本ワイピングである第1払拭動作が実行される。すなわち、図11に示すように、ワイパー12が記録ヘッド2の-Y方向外側に位置する状態から、記録ヘッド2を-Y方向に移動させることで、払拭面100に対してワイパー12を記録ヘッド2の+Y方向外側まで相対移動させる。
【0051】
これにより、第1払拭動作における異物200の巻き込みを抑制して、記録ヘッド2の払拭面100を良好に払拭することができる。また事前ワイピングである第2払拭動作では、シール部103の内側から払拭を開始しているため、少なくとも第1領域101の上流側でシール部103よりも外側、つまり-Y方向側の領域は良好に払拭されている。したがって、仮に第2領域102のそれ以外の領域に異物200が付着していたとしても、第1払拭動作における第1領域101への異物200の巻き込みは抑制される。
【0052】
また本実施形態では、一つのワイパー12を用いて第1払拭動作及び第2払拭動作を実行している。すなわちワイピング機構11は、第1払拭動作及び第2払拭動作で使用される共通のワイパー12を有している。このため、部品点数の削減を図ることができ、ひいては製造コストの削減を図ることができる。
【0053】
また本実施形態では、ワイパー12がX方向において記録ヘッド2の払拭面100よりも広い幅で形成されており、第1払拭動作時に、払拭面100の第1領域101の+X方向外側及び-X方向外側の第2領域102についても払拭する。したがって、その後にキャップ14を払拭面100に当接させる際、払拭面100に対するキャップ14のシール性を向上することができる。ただし、第1領域101の+X方向外側及び-X方向外側の第2領域102の払拭は、第1領域101への異物200の巻き込み防止には寄与しないため、必ずしも実施しなくてもよい。
【0054】
また本実施形態では、本ワイピングである第1払拭動作における上流側の領域のみに対して事前ワイピングである第2払拭動作を実施しているため、払拭面100のワイピングを比較的短時間で終了することができる。勿論、第1払拭動作における下流側の領域についても、必要に応じて上流側と同様の事前ワイピングを行うようにしてもよい。
【0055】
(実施形態2)
図12は、実施形態2に係るワイピング機構の概略構成を示す模式図であり、図13~15は、実施形態2に係るワイピング機構によるワイピング方法を説明する図である。
【0056】
本実施形態に係るインクジェット式記録装置は、ワイピング機構が第1払拭動作で使用される第1払拭部材と、第2払拭動作で使用される第2払拭部材と、を有し、第2払拭動作では、第2領域のうち第1領域に対して第1方向とは反対方向である第2方向に配置された上流部分を含む領域に対して第2払拭部材が第1方向とは交差する方向に相対移動するように構成されている。
【0057】
具体的には、図12に示すように、本実施形態に係るワイピング機構11Aは、第1払拭部材である第1ワイパー121と、第2払拭部材である第2ワイパー122とを備えている。第1ワイパー121は、実施形態1におけるワイパー12と実質的に同一の構成であり、X方向で払拭面100よりも広い幅で設けられ、記録ヘッド2に対しY方向において相対移動可能に構成されている。本実施形態では、記録ヘッド2をY方向に移動させることで、払拭面100に対して第1ワイパー121がY方向で相対移動する。
【0058】
一方、第2ワイパー122は、本実施形態では、第1ワイパー121と同一の部材で構成されているが、第1ワイパー121とは交差する向き、例えば、90度回転させた向きで配置されている。この第2ワイパー122は、記録ヘッド2に対し第1方向であるY方向とは直行する第2方向であるX方向に沿って相対移動可能に構成されている。ワイピング機構11Aは、第2ワイパー122をX方向に沿って往復移動させるための搬送装置17を備えている。搬送装置17は、図示は省略するが、例えば、モーター等の動力源を備え、この動力源によって第2ワイパー122をX方向に沿って往復移動可能に構成されている。
【0059】
なお搬送装置17の構成は特に限定されず、既存の構成を採用すればよいため、ここでの詳細な説明は省略する。またワイピング機構11Aは、第1ワイパー121及び第2ワイパー122のそれぞれを昇降させる昇降装置13を備えている。
【0060】
このような本実施形態のワイピング機構11Aによるワイピング方法の一例について説明する。
【0061】
第2払拭動作が開始されると、まずは、記録ヘッド2を第2ワイパー122に対して所定位置となるように移動させる。具体的には、図13に示すように、第2ワイパー122の+Y方向側の端部122aが、第2領域102の第1領域101よりも-Y方向側で且つキャップ14が当接するシール部103よりも+Y方向側、つまりシール部103の内側の領域に位置するように、記録ヘッド2を移動させる。このとき第2ワイパー122は、記録ヘッド2の-X方向外側のホームポジションに配置されている。
【0062】
この状態で、昇降装置13によって第2ワイパー122を、その先端部が払拭面100の第2領域102に当接する位置まで上昇させ、図14に示すように、搬送装置17によって第2ワイパー122を+X方向に移動させる。すなわち、第2ワイパー122を記録ヘッド2の-X方向の外側から+X方向の外側まで移動させる。
【0063】
その後は、実施形態1と同様に、本ワイピングである第1払拭動作が実行される。すなわち、図15に示すように、第1ワイパー121を記録ヘッド2の-Y方向外側に位置する状態から、記録ヘッド2を-Y方向に移動させることで、払拭面100に対して第1ワイパー121を記録ヘッド2の+Y方向外側まで相対移動させる。
【0064】
以上のように本実施形態では、第2払拭動作において、第2領域102のうち第1領域101に対して第2方向である-Y方向に配置された上流部分を含む領域が払拭される。またその際、第2ワイパー122の端部122aがシール部103よりも+Y方向側に位置しているため、シール部103の外側の異物をより確実に除去することができる。したがって、本ワイピング時の異物の巻き込みに起因するノズル詰まり等の発生をさらに抑制することができる。
【0065】
さらに本実施形態に係るワイピング機構11Aは、第1払拭動作で使用される第1ワイパー121と、第2払拭動作で使用される第2ワイパー122の2つのワイパーを備えているが、第1払拭動作及び第2払拭動作で使用される共通のワイパーを備えていてもよい。すなわち、ワイピング機構11Aは、払拭部材である一つのワイパーと、このワイパーをX方向で搬送可能な搬送装置と、ワイパーをXY面で回転可能な回転装置と、を備える構成としてもよい。
【0066】
さらに本実施形態に係るワイピング機構11Aは、第1払拭動作で使用される第1ワイパー121と、第2払拭動作で使用される第2ワイパー122と、が同一の部材で構成されているが、第2ワイパー122のY方向の幅を、第1ワイパー121のX方向の幅よりも小さくしてもよい。これは、第2ワイパー122が払拭する領域、換言すれば第2領域102のうち第1領域101よりも上流部分の、第2ワイパー122がこの上流部分に対して相対移動するX方向に直交するY方向の幅が、第1ワイパー121が払拭する払拭面100のX方向の幅よりも小さいためである。
【0067】
このような構成により、ワイピング機構11Aを小型化することができる。即ち、第2ワイパー122のY方向の幅は、-Y方向側のシール部103の端部から払拭面100の-Y方向側の端部までのY方向の距離以上であれば、-Y方向側の第1領域101の端部から払拭面100の-Y方向側の端部までの距離以下であってもよい。
【0068】
(実施形態3)
図16は実施形態3に係るインクジェット式記録装置のワイピング機構の概略構成を示す模式図であり、図17及び図18は、実施形態3に係るワイピング機構によるワイピング方法を説明する図である。
【0069】
図16に示すように、本実施形態に係るワイピング機構11Bは、実施形態2と同様に第1払拭動作で使用される第1ワイパー121と、第2払拭動作で使用される第2ワイパー122とを備えているが、第2ワイパー122の形状が、実施形態2とは相違する。
【0070】
具体的には、本実施形態に係る第2ワイパー122は、弾性を有する板状の部材で形成される第1ブレード123及び第2ブレード124と、これら第1ブレード123及び第2ブレード124を、互いに所定間隔を空けた状態で支持する支持部材125と、で構成されている。第1ブレード123と第2ブレード124との間隔は、払拭面100の第1領域101のY方向の長さよりも若干広くなっている。
【0071】
このため、第2払拭動作において、記録ヘッド2に対して第2ワイパー122を記録ヘッド2に対向する位置まで相対移動させると、図17に示すように、第1ブレード123が払拭面100の第1領域101よりも-Y方向側に配置され、第2ブレード124は第1領域101よりも+Y方向側に配置される。したがって、この状態から、図18に示すように、第2ワイパー122を搬送装置17によってX方向に沿って移動させることで、第2領域102のうち第1領域101の上流部分だけでなく、第1領域101の下流部分も同時に払拭することができる。すなわち第2領域102のうち第1領域101の+Y方向の外側部分及び-Y方向の外側部分を同時に払拭することができる。
【0072】
その後は、実施形態2と同様に、本ワイピングである第1払拭動作が実行される。すなわち、第1ワイパー121を記録ヘッド2の-Y方向外側に位置する状態から、記録ヘッド2を-Y方向に移動させることで、払拭面100に対して第1ワイパー121を記録ヘッド2の+Y方向外側まで相対移動させる(図15参照)。
【0073】
このような本実施形態の構成においても、上述の実施形態と同様に、本ワイピングである第1払拭動作時の異物の巻き込みに起因するノズル詰まり等の発生を抑制することができる。
【0074】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0075】
例えば、上述の実施形態では、払拭面が、ノズルプレートの表面に相当するノズル面とカバーヘッドの表面とを含む構成を例示したが、払拭面は、ワイピングにより払拭される面をいい、その構成は特に限定されない。例えば、記録ヘッドがカバーヘッドを備えていない場合、払拭面はノズル面のみで構成されていてもよい。
【0076】
また上述の実施形態では、ワイピング動作時に、記録ヘッドの移動によって払拭面を払拭するためのワイパーを記録ヘッドに対してY方向で相対移動させるようにしたが、ワイパーを相対移動させる構成は特に限定されない。例えば、ワイピング機構がワイパーをY方向で移動させる搬送装置を備え、ワイピング時にワイパー自体をY方向で移動させてもよい。勿論、記録ヘッド及びワイパーのそれぞれをY方向で移動させてもよい。
【0077】
また例えば、上述の実施形態では、ワイパーをノズル列の並設方向であるY方向に移動させることで本ワイピングである第1払拭動作を実行したが、第1払拭動作におけるワイパーの移動方向は、特に限定されるものではない。ワイパーの移動方向は、Y方向とは交差する方向、例えば、ノズル列方向であるX方向であってもよい。このように、第1払拭動作のワイパーの移動方向を変更する場合には、当然だが第2払拭動作におけるワイピング機構の記録ヘッドに対する相対移動の方向も第1払拭動作のワイパーの移動方向に合わせて変更する。
【0078】
また、上述の実施形態2では、記録ヘッド2に対して第2ワイパー122を第1方向とは直交する第2方向で相対移動させるようにしたが、第2ワイパー122は記録ヘッド2に対して第1方向とは交差する方向に相対移動させればよい。例えば、図19に示すように、記録ヘッド2の各ノズル列24が、Z方向に垂直な方向で且つX方向及び第1方向であるY方向の双方に対して交差するW方向に沿って設けられている場合、第2ワイパー122は、記録ヘッド2に対してノズル列24に沿ってW方向に相対移動させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…インクジェット式記録装置、2…記録ヘッド、3…液体容器、4…搬送機構、4a…搬送ローラー、5…移動機構、6…制御ユニット(制御部)、7…搬送体、8…搬送ベルト、8a…駆動モーター、9…ガイドレール、10…装置本体、11…ワイピング機構、12…ワイパー、13…昇降装置、14…キャップ、15…廃液チューブ、16…ポンプ、17…搬送装置、20…保持部材、20a…液体容器装着部、20b…接続部、21…駆動部、22…カバーヘッド、23…ノズル、24…ノズル列、25…露出開口部、100…払拭面、101…第1領域、102…第2の領域、103…シール部、121…第1ワイパー、122…第2ワイパー、123…第1ブレード、124…第2ブレード、125…支持部材、200…異物、S…被噴射媒体
図1
図2
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図6
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