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特許7528680インク吐出装置、インク吐出方法、およびインク吐出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】インク吐出装置、インク吐出方法、およびインク吐出プログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
B41J2/165 207
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020162947
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022055491
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 美喜雄
(72)【発明者】
【氏名】森 政貴
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-064115(JP,A)
【文献】特開2007-144647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを貯留するタンクと、
前記タンクからのインクを用いて液滴を吐出するノズル、前記ノズルに連通した圧力室、および前記圧力室のインクに圧力を付与するアクチュエータを有する吐出ヘッドと、
前記タンクと前記吐出ヘッドとを繋ぐチューブと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
画像データに基づいて前記アクチュエータを駆動して前記ノズルから液滴を吐出させ、被吐出媒体上に画像を形成する印刷処理を実行する印刷処理部と、
前記印刷処理の実行中に、前記アクチュエータを駆動して前記ノズルから所定体積の液滴を吐出させるフラッシングを実行するフラッシング部と、
前記インクが前記タンクから前記チューブを介して前記ノズルに供給されるまでの時間である流れ時間に応じて、前記フラッシングで吐出される液滴の単位時間当たりの体積であるフラッシング体積を変更するフラッシング体積変更部と、を備え
前記制御装置は、印刷ジョブに基づき印刷時間を推定する印刷時間推定部をさらに有し、
前記フラッシング体積変更部は、前記印刷時間が所定時間未満である場合に、パス間の主走査方向におけるズレ量と前記印刷時間との関係が1次関数となるように前記フラッシング体積を変更する、インク吐出装置。
【請求項2】
前記フラッシング体積変更部は、前記印刷時間が所定時間以上である場合に、前記ズレ量が所定時間一定値となるように前記フラッシング体積を変更する、請求項に記載のインク吐出装置。
【請求項3】
前記一定値は、第1値を含み、
前記フラッシング体積変更部は、印刷モードが画質重視モードである場合に前記ズレ量が前記第1値となるように前記フラッシング体積を変更する、請求項に記載のインク吐出装置。
【請求項4】
前記一定値は、前記第1値よりも大きい第2値を含み、
前記フラッシング体積変更部は、印刷モードが速度重視モードである場合に前記ズレ量が前記第2値となるように前記フラッシング体積を変更する、請求項に記載のインク吐出装置。
【請求項5】
インクを貯留するタンクと、
前記タンクからのインクを用いて液滴を吐出するノズル、前記ノズルに連通した圧力室、および前記圧力室のインクに圧力を付与するアクチュエータを有する吐出ヘッドと、
前記タンクと前記吐出ヘッドとを繋ぐチューブと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
画像データに基づいて前記アクチュエータを駆動して前記ノズルから液滴を吐出させ、被吐出媒体上に画像を形成する印刷処理を実行する印刷処理部と、
前記印刷処理の実行中に、前記アクチュエータを駆動して前記ノズルから所定体積の液滴を吐出させるフラッシングを実行するフラッシング部と、
前記インクが前記タンクから前記チューブを介して前記ノズルに供給されるまでの時間である流れ時間に応じて、前記フラッシングで吐出される液滴の単位時間当たりの体積であるフラッシング体積を変更するフラッシング体積変更部と、を備え、
記憶部をさらに備え、
前記記憶部は、前記流れ時間と前記フラッシング体積との関係性として1次関数である第1関係性を印刷モードごとに記憶し、
前記フラッシング体積変更部は、前記第1関係性に基づき前記印刷モードごとに前記フラッシング体積を変更し、
前記制御装置は、使用した前記インクの量に応じて前記フラッシング体積を補正するフラッシング体積補正部をさらに有する、インク吐出装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記ノズルから吐出された前記液滴の速度である液滴速度を取得する液滴速度取得部をさらに備え、
前記フラッシング体積変更部は、前記流れ時間と前記液滴速度との関係性であって液滴温度ごとの1次関数である第2関係性に基づき前記液滴温度ごとに前記フラッシング体積を変更する、請求項1乃至の何れか1項に記載のインク吐出装置。
【請求項7】
インクを貯留するタンクと、
前記タンクからのインクを用いて液滴を吐出するノズル、前記ノズルに連通した圧力室、および前記圧力室のインクに圧力を付与するアクチュエータを有する吐出ヘッドと、前記タンクと前記吐出ヘッドとを繋ぐチューブと、を備えるインク吐出装置を用いたインク吐出方法であって、
画像データに基づいて前記アクチュエータを駆動して前記ノズルから液滴を吐出させ、被吐出媒体上に画像を形成する印刷処理を実行する印刷処理工程と、
前記印刷処理工程の実行中に、前記アクチュエータを駆動して前記ノズルから所定体積の液滴を吐出させるフラッシングを実行するフラッシング工程と、
前記インクが前記タンクから前記チューブを介して前記ノズルに供給されるまでの時間である流れ時間に応じて、前記フラッシングで吐出される液滴の単位時間当たりの体積であるフラッシング体積を変更するフラッシング体積変更工程と、を備え
前記フラッシング体積変更工程において、印刷ジョブに基づき推定される印刷時間が所定時間未満である場合に、パス間の主走査方向におけるズレ量と前記印刷時間との関係が1次関数となるように前記フラッシング体積を変更する、インク吐出方法。
【請求項8】
インクを貯留するタンクと、
前記タンクからのインクを用いて液滴を吐出するノズル、前記ノズルに連通した圧力室、および前記圧力室のインクに圧力を付与するアクチュエータを有する吐出ヘッドと、
前記タンクと前記吐出ヘッドとを繋ぐチューブと、を備えるインク吐出装置におけるコンピュータに実行させるインク吐出プログラムであって、
前記コンピュータを、
画像データに基づいて前記アクチュエータを駆動して前記ノズルから液滴を吐出させ、被吐出媒体上に画像を形成する印刷処理を実行する印刷処理手段、
前記印刷処理の実行中に、前記アクチュエータを駆動して前記ノズルから所定体積の液滴を吐出させるフラッシングを実行するフラッシング手段、および、
前記インクが前記タンクから前記チューブを介して前記ノズルに供給されるまでの時間である流れ時間に応じて、前記フラッシングで吐出される液滴の単位時間当たりの体積であるフラッシング体積を変更するフラッシング体積変更手段、として機能させ
前記フラッシング体積変更手段は、印刷ジョブに基づき推定される印刷時間が所定時間未満である場合に、パス間の主走査方向におけるズレ量と前記印刷時間との関係が1次関数となるように前記フラッシング体積を変更する、インク吐出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェットプリンタ等の画像記録装置に用いられるインク吐出装置、インク吐出方法、およびインク吐出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、ノズル開口における液体の増粘を抑える液体噴射装置が開示されている。この液体噴射装置は、圧力室に連通したノズル開口および圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生素子を有する液体噴射ヘッドと、駆動パルスを含んだ駆動信号を発生する駆動信号発生手段とを備えている。上記の駆動パルスは、液滴を吐出させる吐出パルスと、液滴を吐出させない程度にノズル開口のメニスカスを微振動させる微振動パルスを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-280199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フラッシングには上記のように液滴を吐出させない程度で行うもの(非吐出フラッシング)と液滴を吐出させて行うもの(吐出フラッシング)がある。ここで、インクはノズルに至るまでの流路においてその水分が蒸発していく。そのため、インクは、上記流路の最終地点であるノズル面においてはさらに蒸発し易くなっており、粘度が上昇してしまう。このため、上記吐出フラッシングは印字品質を保つために考えられ得る最大蒸発率に基づいて実行していた。
【0005】
しかしながら、上記のように最大蒸発率に基づくフラッシングを行う態様では、実際の蒸発率が上記最大蒸発率を下回る場合には、余分にインクを捨てることになってしまうという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、捨てるインクの量を抑制することができるインク吐出装置、インク吐出方法、およびインク吐出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のインク吐出装置は、インクを貯留するタンクと、前記タンクからのインクを用いて液滴を吐出するノズル、前記ノズルに連通した圧力室、および前記圧力室のインクに圧力を付与するアクチュエータを有する吐出ヘッドと、前記タンクと前記吐出ヘッドとを繋ぐチューブと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、画像データに基づいて前記アクチュエータを駆動して前記ノズルから液滴を吐出させ、被吐出媒体上に画像を形成する印刷処理を実行する印刷処理部と、前記印刷処理の実行中に、前記アクチュエータを駆動して前記ノズルから所定体積の液滴を吐出させるフラッシングを実行するフラッシング部と、前記インクが前記タンクから前記チューブを介して前記ノズルに供給されるまでの時間である流れ時間に応じて、前記フラッシングで吐出される液滴の単位時間当たりの体積であるフラッシング体積を変更するフラッシング体積変更部と、を備えるものである。
【0008】
本発明に従えば、フラッシング体積変更部によって、上記流れ時間に応じて実行されるフラッシングによるフラッシング体積が変更されるようになっている。すなわち、インクは流れ時間に基づきその蒸発率が変わるため、その流れ時間を考慮してフラッシング体積を変更することができる。これによって、インクを余分に捨てることが抑制されるため、捨てるインクの量(廃液量)を従来よりも抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、捨てるインクの量を抑制することができるインク吐出装置、インク吐出方法、およびインク吐出プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る液体吐出装置の概略構成を示す平面図である。
図2図1の吐出ヘッドの構成を示す断面図である。
図3図1の液体吐出装置を備えた画像記録装置の構成を示すブロック図である。
図4】印刷時間とズレ量との関係を示すグラフである。
図5】インク蒸発率とフラッシング体積との関係を印刷モードごとに示すテーブル(高品質テーブル)をグラフ化したものである。
図6】液滴速度とインク蒸発率との関係を温度ごとに示すグラフである。
図7】第1実施形態におけるフラッシング制御方法を説明するためのフローチャートである。
図8】第2実施形態におけるフラッシング体積の決定方法を説明するためのグラフである。
図9】第2実施形態におけるフラッシング制御方法を説明するためのフローチャートである。
図10】インク蒸発率とフラッシング体積との関係を印刷モードごとに示すテーブル(高速テーブル)をグラフ化したものである。
図11】第3実施形態におけるフラッシング制御方法を説明するためのフローチャートである。
図12】フラッシング間隔とフラッシング体積との関係をインク蒸発率ごとに示すグラフである。
図13】インク蒸発率とフラッシング体積との関係を温度ごとに示すノーマルモード用のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る液体吐出装置、液体吐出方法、および液体吐出プログラムについて図面を参照しながら説明する。以下に説明する液体吐出装置、液体吐出方法、および液体吐出プログラムは本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。
【0012】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態の液体吐出装置10は、液体の一例としてインクを吐出するものであって、タンクに相当する貯留タンク12、キャリッジ16、吐出ヘッド20、一対の搬送ローラ15、一対のガイドレール17、およびサブタンク18を備えている。なお、液体吐出装置10において図略のプラテン上に被吐出媒体としての用紙14が配置される。
【0013】
キャリッジ16にはサブタンク18を含む吐出ヘッド20が搭載されている。キャリッジ16は、用紙14の搬送方向に直交する主走査方向に延在する一対のガイドレール17に支持され、当該ガイドレール17に沿って主走査方向に往復動する。これにより、吐出ヘッド20は主走査方向に往復動する。このような吐出ヘッド20はチューブ12aを介して貯留タンク12に接続されている。
【0014】
一対の搬送ローラ15は主走査方向に沿って互いに平行に配置されている。搬送ローラ15は図略の搬送モータが駆動されると回転し、これによりプラテン上の用紙14が搬送方向に搬送されるようになっている。
【0015】
貯留タンク12にはインクが貯留されている。貯留タンク12は、吐出ヘッド20にインクを供給すべくインク流路を介して吐出ヘッド20に接続されている。また、貯留タンク12は、インクの種類ごとに設けられている。貯留タンク12は、例えば4つ設けられ、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクがそれぞれ貯留されている。
【0016】
吐出ヘッド20は搬送方向に直交する主走査方向に移動する。図2に示すように、吐出ヘッド20は貯留タンク12からのインクを用いて液滴を吐出する複数のノズル21を有する。吐出ヘッド20は流路形成体と容積変更部の積層体を有している。流路形成体には、その内部に液体流路が形成され、その下面である吐出面40aに複数のノズル孔21aが開口して設けられている。また、上記の容積変更部は、駆動されて液体流路の容積を変更する。このとき、ノズル孔21aではメニスカスが振動してインクが吐出される。以下、吐出ヘッド20の構成について詳細に説明する。
【0017】
図2に示すように、吐出ヘッド20の上述の流路形成体は複数のプレートの積層体であり、容積変更部は振動板55およびアクチュエータ(圧電素子)60を含む。振動板55の上には絶縁膜56が接続されており、当該絶縁膜56の上には後述の共通電極61が接続されている。
【0018】
複数のプレートは、下から順に、ノズルプレート46、スペーサプレート47、第1流路プレート48、第2流路プレート49、第3流路プレート50、第4流路プレート51、第5流路プレート52、第6流路プレート53、および第7流路プレート54を含んで積層されている。上記の第1流路プレート48、第2流路プレート49、第3流路プレート50、第4流路プレート51、および第5流路プレート52がマニホールド用プレート44を構成する。
【0019】
各プレートには、大小種々の孔および溝が形成されている。各プレートが積層された流路形成体の内部では孔および溝が組み合わされて、複数のノズル21、複数の個別流路64およびマニホールド22が液体流路として形成されている。
【0020】
ノズル21はノズルプレート46を積層方向に貫通し形成されている。ノズルプレート46の吐出面40aには、ノズル21の先端である複数のノズル孔21aが配列方向に複数並んでノズル列を形成している。上記の配列方向は積層方向に直交する方向である。
【0021】
マニホールド22は、液体の吐出圧力が付与される後述の圧力室28に対して液体を供給する。マニホールド22は、配列方向に延在しており、複数の個別流路64の各一端にそれぞれ接続されている。すなわち、マニホールド22は液体の共通流路として機能する。マニホールド22は、第1流路プレート48~第4流路プレート51を積層方向に貫通した貫通孔および第5流路プレート52の下面から窪んだ窪みが積層方向に重なって形成されている。
【0022】
ノズルプレート46はスペーサプレート47の下方に配置されている。そのスペーサプレート47は例えばステンレス鋼材で形成される。スペーサプレート47は、例えばハーフエッチングによりノズルプレート46側の面からスペーサプレート47の厚み方向に凹むことで、ダンパ部47aを成す薄肉部分とダンパ空間47bとが形成される凹部45を有している。このような構成により、マニホールド22とノズルプレート46との間には、バッファー空間としてのダンパ空間47bが形成される。
【0023】
マニホールド22には供給ポート22aが連通している。供給ポート22aは例えば筒状に形成され、配列方向(マニホールド22の長手方向)の一方端に設けられている。なお、マニホールド22と供給ポート22aとは、第5流路プレート52の上側部分、第6流路プレート53、および第7流路プレート54をそれぞれ貫通して設けられた図略の流路により繋がっている。
【0024】
複数の個別流路64はマニホールド22にそれぞれ接続されている。個別流路64は、その上流端がマニホールド22に接続され、その下流端がノズル21の基端に接続されている。個別流路64は、第1連通孔25、個別絞り路である供給絞り路26、第2連通孔27、圧力室28、およびディセンダ29で構成されており、これらの構成要素はこの順で配置される。
【0025】
第1連通孔25は、その下端がマニホールド22の上端に接続し、マニホールド22から積層方向の上方に延び、第5流路プレート52における上側部分を積層方向に貫通している。
【0026】
供給絞り路26の上流端は第1連通孔25の上端に接続されている。供給絞り路26は、例えばハーフエッチングにより形成され、第6流路プレート53の下面から窪んだ溝により構成されている。また、第2連通孔27は、その上流端が供給絞り路26の下流端に接続され、供給絞り路26から積層方向の上方に延び、第6流路プレート53を積層方向に貫通して形成されている。
【0027】
圧力室28は、その上流端が第2連通孔27の下流端に接続されている。圧力室28は、第7流路プレート54を積層方向に貫通して形成されている。
【0028】
ディセンダ29は、スペーサプレート47、第1流路プレート48、第2流路プレート49、第3流路プレート50、第4流路プレート51、第5流路プレート52、および第6流路プレート53を積層方向に貫通して形成され、幅方向においてマニホールド22よりも図2において左側に配置されている。ディセンダ29は、その上流端が圧力室28の下流端に接続され、下流端がノズル21の基端に接続されている。ノズル21は、例えば積層方向においてディセンダ29に重なり、当該積層方向に直交する方向(幅方向)においてディセンダ29の中央に配置されている。
【0029】
振動板55は、第7流路プレート54の上に積層されており、圧力室28の上端開口を覆っている。
【0030】
アクチュエータ60は、共通電極61、圧電層62および個別電極63を含み、これらはこの順で配置されている。共通電極61は、絶縁膜56を介して振動板55の全面を覆っている。圧電層62は、圧力室28ごとに設けられ、当該圧力室28に重なるように共通電極61上に配置されている。個別電極63は、圧力室28ごとに設けられ、圧電層62上に配置されている。1つの個別電極63、共通電極61および両電極で挟まれた部分の圧電層62により1つのアクチュエータ60が構成される。
【0031】
個別電極63はドライバICに電気的に接続されている。このドライバICは、図略の制御部から制御信号を受けて、駆動信号(電圧信号)を生成し、個別電極63に印加する。これに対し、共通電極61は常にグランド電位に保持されている。このような構成において、駆動信号に応じて、圧電層62の活性部が、2つの電極61,63と共に面方向に伸縮する。これに応じて、振動板55が協働して変形し、圧力室28の容積を増減する方向に変化する。これにより、液体をノズル21から吐出させる吐出圧力が圧力室28に付与される。
【0032】
以上のような吐出ヘッド20において、供給ポート22aは配管を介してサブタンク18に接続されている。配管に設けられた加圧ポンプが駆動すると、液体はサブタンク18から配管を通り、供給ポート22aを介してマニホールド22に流入する。そして、液体はマニホールド22から第1連通孔25を介して供給絞り路26に流入し、供給絞り路26から第2連通孔27を介して圧力室28に流入する。そして、液体はディセンダ29を流れ、ノズル21に流入する。ここで、アクチュエータ60により圧力室28に吐出圧力が付与されると、液体はノズル孔21aから吐出される。
【0033】
次いで、本実施形態の液体吐出装置10を備える、例えばインクジェットプリンタ等の画像記録装置1について、図面を参照しつつ説明する。
【0034】
図3に示すように、画像記録装置1は、上記の液体吐出装置10の他に、ネットワークインターフェース(I/F)70、CPU等で構成される制御装置71、RAM72、ROM73、ヘッドドライバIC74、温度センサ75、記録媒体読取り装置77、モータドライバIC30,32、搬送モータ31、およびキャリッジモータ33を備えている。なお、RAM72およびROM73は記憶部に相当する。
【0035】
制御装置71は、その機能的構成として、温度補正部71a、印刷処理部71b、フラッシング体積変更部71c、フラッシング部71d、印刷時間推定部71e、液滴速度取得部71f、およびフラッシング体積補正部71gを有している。制御装置71が所定のプログラムを実行することによって、上記の温度補正部71a、印刷処理部71b、フラッシング体積変更部71c、フラッシング部71d、印刷時間推定部71e、液滴速度取得部71f、およびフラッシング体積補正部71gが機能的に実現されるようになっている。なお、印刷処理部71bは印刷処理手段に相当し、フラッシング部71dはフラッシング手段に相当し、フラッシング体積変更部71cはフラッシング体積変更手段に相当する。
【0036】
温度センサ75はキャリッジ16上に設けられる。温度センサ75はキャリッジ16付近の雰囲気温度を検知する。なお、温度センサ75は温度検知部に相当する。
【0037】
制御装置71の温度補正部71aは、温度センサ75による検知結果が液体の実際の温度と同値又は近似値となるように当該検知結果を補正する。これにより、液体の実際の温度を直接検知せずとも液体の実際の温度と同値又は近似値を得ることができる。
【0038】
印刷処理部71bは、外部装置であるコンピュータ200等から送信される画像データに基づき、上述のアクチュエータ60を駆動してノズル21から液滴を吐出させ、用紙14上に画像を形成する印刷処理を実行する。
【0039】
フラッシング体積変更部71cは、インク蒸発率に応じて、フラッシングで吐出される液滴の単位時間当たりの体積であるフラッシング体積を変更する。上記インク蒸発率は、インクが貯留タンク12からチューブ12aを介してノズル21に供給されるまでの時間である流れ時間に基づき取得し得るものである。本実施形態では、上記の流れ時間がインク蒸発率に相当する。上記の流れ時間と、使用するインクの単位時間当たりの蒸発率((使用前のインクの重量-現在のインクの重量)/使用前のインクの重量×100(%))が予め取得されており、これらの値からインク蒸発率が算出される。また、フラッシング体積変更部71cは、印刷ジョブに示される印刷モードからフラッシング間隔を決定する。この場合、印刷モードが画質重視モードである場合のフラッシング間隔は例えば5秒であり、印刷モードがノーマルモードである場合のフラッシング間隔は例えば30秒であり、印刷モードが速度重視モードである場合のフラッシング間隔は例えば60秒である。このフラッシング間隔は一例であり、これに限定されるものではない。なお、フラッシング体積変更部71cの機能の詳細については後で説明する。
【0040】
フラッシング部71dは、インクの高粘性化に起因する印字品質の低下の抑制のために、印刷処理の実行中にアクチュエータ60を駆動してノズル21から所定体積の液滴を吐出させるフラッシング(吐出フラッシング)を実行する。このフラッシングの際の上記所定体積の液滴は、上述のフラッシング体積変更部71cにより得られるフラッシング体積である。
【0041】
印刷時間推定部71eは、外部装置であるコンピュータ200等から送信される印刷ジョブに基づき印刷時間を推定する。印刷時間推定部71eにより推定される上記印刷時間を、以下、単に印刷時間と記載する。
【0042】
液滴速度取得部71fは、ノズル21から吐出された液滴の速度である液滴速度を取得する。この場合、ノズル21のノズル孔21aの外側に、吐出された液滴を検知する電極を設ける。ノズル孔21aと電極との距離は既知となる。液滴速度取得部71fは、圧力室28にて圧力を付与した時間に基づき吐出時間を取得し、当該吐出時間および上記距離から上記液滴速度を取得することができる。なお、液滴速度取得部71fにより取得された液滴速度の用途については後述する。
【0043】
フラッシング体積補正部71gは、印刷に使用したインクの量に応じてフラッシング体積を補正する。この場合、フラッシング体積補正部71gは、圧力室28への圧力の付与回数等に基づき印刷に使用したインクの量を演算し、当該インク量に応じてフラッシング体積を補正する。或いは、印刷に使用したインクの量が所定範囲を超えた場合に、フラッシング体積補正部71gはフラッシング体積を減らすように補正してもよく、印刷に使用したインクの量が所定範囲を超えない場合には、フラッシング体積補正部71gはフラッシング体積を増やすように補正してもよい。
【0044】
RAM72は、外部のパーソナルコンピュータ等のコンピュータ200からネットワークインターフェース70を介して受信した印刷ジョブを一時的に記憶する。また、RAM72は吐出データ等を一時的に記憶する。
【0045】
ROM73は、本実施形態の液体吐出プログラムや各種データ処理を行うための制御プログラムを記憶する。
【0046】
ヘッドドライバIC74は制御装置71からの指示を受けて吐出ヘッド20に液滴を吐出させる。同様に、モータドライバIC30は制御装置71からの指示を受けて搬送モータ31の駆動制御を行う。搬送モータ31は、搬送ローラ15を動作させることで用紙14を搬送方向に搬送する。また、モータドライバIC32は制御装置71からの指示を受けてキャリッジモータ33の駆動制御を行う。キャリッジモータ33は、キャリッジ16を動作させることで吐出ヘッド20を主走査方向に移動させる。
【0047】
記録媒体読取り装置77は、例えば、フレキシブルディスク、CD(CD-ROM,CD-R,CD-RW等)、DVD(DVD-ROM,DVD-RAM,DVD-R,DVD+R,DVD-RW,DVD+RW等)、ブルーレイディスク、磁気ディスク、光ディスク、および光磁気ディスク等のコンピュータ読取可能な記録媒体KBから液体吐出プログラムを読み出す装置である。この記録媒体読取り装置77は、例えばUSBフラッシュメモリ等の記録媒体から液体吐出プログラムを読み出す装置であってもよい。読み出された液体吐出プログラムはROM73に保存され、制御装置71により実行される。なお、本実施形態の液体吐出プログラムは、外部のコンピュータ200からネットワークインターフェース70を介してROM73に保存してもよいし、或いはインターネットからダウンロードしてROM73に保存してもよい。
【0048】
以下、本実施形態において捨てるインクの量を抑制する方法について、図面を参照しながら詳しく説明する。
【0049】
図4は印刷時間とズレ量との関係を示すグラフである。上述した通り、本実施形態では、フラッシング体積変更部71によりインク蒸発率に応じてフラッシング体積が変更される。このようにインク蒸発率に応じてフラッシング体積を変更することで、印刷時間とズレ量との関係は図4に示すようなものとなる。ズレ量とは、罫線のパス間の主走査方向におけるズレ量を意味するラギッドネスとも称呼され、当該ズレ量が30μm以下であれば、紙面から例えば30cm離れた位置から目視した場合でも罫線のズレが目立ち難い。
【0050】
図4において、線L1~L4は、一例としてインク蒸発率がそれぞれ0%である場合において、1度のフラッシングにおけるフラッシング体積を1800plとし、フラッシング頻度ごとの印刷時間とズレ量との関係性を示すものである。線L1はフラッシング頻度が1800pl/5secである場合の上記関係性を示し、線L2はフラッシング頻度が1800pl/15secである場合の同関係性を示し、線L3はフラッシング頻度が1800pl/30secである場合の同関係性を示し、線L4はフラッシング頻度が1800pl/60secである場合の同関係性を示している。なお、図4に示した例はあくまで一例であり、インク蒸発率が0%である場合の他にも、インク蒸発率が例えば7.5%である場合等も同様の関係性が示される。
【0051】
図4の線L1~L3で示すように、フラッシング体積変更部71cは、印刷時間推定部71eによる印刷時間が所定時間未満である場合に、ズレ量と印刷時間との関係が1次関数となるようにフラッシング体積を変更する。一方、フラッシング体積変更部71cは、印刷時間が所定時間以上である場合には、ズレ量が所定時間一定値となるようにフラッシング体積を変更する。なお、図4の線L4に係る条件(フラッシング体積が1800pl/60sec)においては、フラッシング体積変更部71cは、印刷時間に関わらずズレ量と印刷時間との関係が1次関数となるようにフラッシング体積を変更する。以上のように、フラッシング体積変更部71cによるフラッシング体積の制御はインク蒸発率を基に実行され、その結果として図4の印刷時間とズレ量との関係性が得られる。つまり、インク蒸発率が0%である場合において、印刷時間に関わらずフラッシング頻度を1800pl/5sec又は1800pl/15sec(線L1,l2のケース)とすれば、ズレ量を30μm以下にすることが可能となる。
【0052】
ここで、本実施形態の画像記録装置1には印刷モードとして例えば画質重視モード、ノーマルモードおよび速度重視モードが設けられている。この場合、図4に示すように、フラッシング体積変更部71cは、印刷モードが画質重視モードである場合には、ズレ量が上述の一定値として第1値となるようにフラッシング体積を制御する。また、フラッシング体積変更部71cは、印刷モードが速度重視モードである場合には、ズレ量が上述の一定値として上記第1値よりも大きい第2値となるようにフラッシング体積を変更する。
【0053】
以上の通り印刷時間とズレ量との関係が図4のようになるようにインク蒸発率に応じてフラッシング体が変更される。以下、本実施形態においてインク蒸発率に応じてフラッシング体積を変更する態様について詳しく説明する。図5はインク蒸発率とフラッシング体積との関係性を印刷モードごとに示すグラフである。図5に示すインク蒸発率とフラッシング体積との関係性として1次関数である複数の第1関係性が印刷モードごとにテーブル(以下、高品質テーブルと呼ぶ)としてRAM72およびROM73の少なくとも一方に記憶されている。フラッシング体積変更部71cは、上記の第1関係性に基づき印刷モードごとにフラッシング体積を変更する。
【0054】
ここで、フラッシング体積を変更にする際に必要とされる上記インク蒸発率の求め方は、以下の通りである。図6は液滴速度とインク蒸発率との関係を温度ごとに示すグラフである。図6に示す液滴速度とインク蒸発率との関係性として1次関数である複数の第2関係性が温度ごとにRAM72およびROM73の少なくとも一方に記憶されている。フラッシング体積変更部71cは、上記の第2関係性に基づき液滴温度ごとにフラッシング体積を変更する。詳しく説明する。フラッシング体積変更部71cは、液滴速度取得部71fにより取得された液滴速度、および温度センサ75により検知された温度から、図6の第2関係性によりインク蒸発率を取得する。この場合、図6に示すように、温度センサ75による検知結果としての温度が常温であれば、第2関係性として線Ltaが用いられ、温度が常温よりも高温又は低温である場合には、線Ltaと同じ傾きでシフトされた各線が用いられることで、温度に応じてインク蒸発率が取得される。このように取得されたインク蒸発率に基づき、上述の図5のテーブルからフラッシング体積を取得することができる。
【0055】
図7は第1実施形態におけるフラッシング制御方法を説明するためのフローチャートである。
【0056】
図7に示すように、制御装置71はまず外部装置であるコンピュータ200から送信される印刷ジョブを受信する(ステップS1)。次に、制御装置71のフラッシング体積変更部71cは、印刷ジョブに示される印刷モードからフラッシング間隔を決定する(ステップS2)。
【0057】
次いで、フラッシング体積変更部71cは上述の方法によりインク蒸発率を取得する(ステップS3)。そして、フラッシング体積変更部71cは取得したインク蒸発率に基づき上述の方法によりフラッシング体積を取得する(ステップS4)。その後、フラッシング部71dは、上記の通り決定されたフラッシング間隔およびフラッシング体積に基づきフラッシング制御を実行する(ステップS5)。
【0058】
以上のように、本実施形態の液体吐出装置10によれば、フラッシング体積変更部71cによって、インク蒸発率に応じて実行されるフラッシングによるフラッシング体積が変更されるようになっている。すなわち、インクは上述の流れ時間に基づきその蒸発率が変わるため、その流れ時間を考慮してフラッシング体積を変更することができる。これによって、インクを余分に捨てることが抑制されるため、捨てるインクの量を従来よりも抑えることが可能となる。
【0059】
また、本実施形態では、フラッシング体積変更部71cは、印刷時間が所定時間未満である場合に上述のズレ量と印刷時間との関係が1次関数となるようにフラッシング体積を変更する。この点について、印刷時間が所定時間を超えるとインク粘性がそれ以上変化し難いことを勘案し、印刷時間が所定時間未満である場合には、印刷時間が増すにつれて上記ズレ量が増加するものの、印刷時間が増すにつれてフラッシング体積を増加させることができる。
【0060】
また、本実施形態では、フラッシング体積変更部71cは、印刷時間が所定時間以上である場合に上述のズレ量が所定時間一定値となるようにフラッシング体積を変更する。この点、印刷時間が所定時間を超えるとインク粘性がそれ以上変化し難いことに鑑み、印刷時間が所定時間以上である場合にはフラッシング体積を一定とする。
【0061】
また、本実施形態では、フラッシング体積変更部71cは、印刷モードが画質重視モードである場合に、印刷時間が所定時間以上になると、ズレ量が一定値として第1値となるようにフラッシング体積を変更する。これにより、印刷品質の低下を回避することができる。
【0062】
また、本実施形態では、フラッシング体積変更部71cは、印刷モードが速度重視モードである場合に、印刷時間が所定時間以上になると、ズレ量が一定値として上記第1値よりも大きい第2値となるようにフラッシング体積を変更する。これにより、印刷品質の低下を極力抑えつつ印刷速度の上昇を図ることができる。
【0063】
また、本実施形態では、フラッシング体積変更部71cは、上述の第1関係性に基づき印刷モードごとにフラッシング体積を変更する。これにより、各印刷モードに応じてフラッシング体積を適切に変更することができる。
【0064】
また、本実施形態では、フラッシング体積変更部71cは、上述の第2関係性に基づき液滴温度ごとにフラッシング体積を変更する。これにより、各液滴温度に応じてフラッシング体積を適切に変更することができる。
【0065】
さらに、本実施形態では、フラッシング体積補正部71gは、使用したインクの量に応じてフラッシング体積を補正する。これにより、インク量ごとに最適なフラッシング体積を実現することができる。このため、余分な廃液をより抑制することが可能となる。
【0066】
(第2実施形態)
第2実施形態において、次のようにフラッシング体積を決定してもよい。以下、詳しく説明する。
【0067】
図8は第2実施形態におけるフラッシング体積の決定方法を説明するためのグラフである。図8においては、フラッシング体積と印刷時間との関係がインク蒸発率ごとに示される。
【0068】
本実施形態では、印刷時間に基づきフラッシング体積を決定する。詳しくは、第1実施形態と同じ様にインク蒸発率が決定される。ここでは、その決定されたインク蒸発率が例えば5%である場合を説明する。この場合、図8においてインク蒸発率が5%である曲線(フラッシング体積と印刷時間との関係を示す曲線)が用いられる。
【0069】
本実施形態では、印刷時間推定部71eにより得られた上記印刷時間が所定時間以上であるか否かによって、フラッシング体積として、上記曲線上の値を採用するか、或いはフラッシング体積の上限値を採用するかが判別される。具体的には、上記印刷時間が所定時間以上である場合には、インク蒸発率が5%の場合におけるフラッシング体積の上限値vfがフラッシング体積変更部71cにより採用される。これに対して、上記印刷時間が所定時間未満である場合には、上記曲線に基づき、上記印刷時間から、フラッシング体積をvfaがフラッシング体積変更部71cにより採用される。このように印刷時間が所定時間以上である場合にフラッシング体積の上限値vfを用いる趣旨は、印刷時間がある時間を超えるとインク粘性がそれ以上変化し難いため、この点に鑑み、上限値であるフラッシング体積vfを採用する。これにより、必要以上に多くのフラッシングを実行することを回避することができる。
【0070】
図9は第2実施形態におけるフラッシング制御方法を説明するためのフローチャートである。
【0071】
図9に示すように、制御装置71はまず外部装置であるコンピュータ200から送信される印刷ジョブを受信する(ステップS11)。次に、制御装置71のフラッシング体積変更部71cは、印刷ジョブに示される印刷モードからフラッシング間隔を決定する(ステップS12)。
【0072】
続いて、印刷時間推定部71eは、印刷ジョブに基づき印刷時間を算出する(ステップS13)。
【0073】
次に、フラッシング体積変更部71cは上述の方法によりインク蒸発率を取得する(ステップS14)。ここで、フラッシング体積変更部71cは、印刷時間推定部71eにより得られた上記印刷時間が所定時間以上であるか否かを判別する(ステップS15)。上記印刷時間が所定時間以上である場合(ステップS15でYES)、フラッシング体積変更部71cはフラッシング体積をvfとする(ステップS16)。
【0074】
一方、上記印刷時間が所定時間未満である場合(ステップS15でNO)、フラッシング体積変更部71cはフラッシング体積をvfaとする(ステップS17)。
【0075】
以上のステップS16およびステップS17の処理の後、フラッシング部71dは、上記の通り決定されたフラッシング間隔およびフラッシング体積に基づきフラッシング制御を実行する(ステップS18)。
【0076】
以上のように、本実施形態によれば、第1実施形態と同じ効果、すなわち、捨てるインクの量を従来よりも抑えることが可能になるという効果が奏される他、必要以上に多くのフラッシングを実行することを回避することができる。
【0077】
(第3実施形態)
図10は、図5の高品質テーブルの変形例であって、インク蒸発率とフラッシング体積との関係を印刷モードごとに示すテーブル(高速テーブル)をグラフ化したものである。本実施形態においては、図5に示した高品質テーブルおよび図10に示す高速テーブルのうち何れを用いるかについて、ユーザが液体吐出装置10又は画像記録装置1に設けられた選択ボタン等によって予め選択できる態様とする。なお、高速テーブルは高品質テーブルと同様にRAM72およびROM73の少なくとも一方に記憶されている。
【0078】
図10に示す高速テーブルは、図5の高品質テーブルを用いる場合よりも上述のズレ量は若干大きくなるものの、印刷速度を上げるためのものである。したがって、図10の各印刷モードに係る各線の傾きは、それぞれ図5の同印刷モードに係る線の傾きよりも小さくなっている。図5の高品質テーブルを選択すれば、各印刷モードにつき、図10の高速テーブルよりも、印刷速度は低下するものの高品質な印刷が実現可能となる。これに対して、図10の高速テーブルを選択すれば、各印刷モードにつき、図5の高品質テーブルよりも、印刷品質は若干低下するものの高速印刷が実現可能となる。
【0079】
図11は第3実施形態におけるフラッシング制御方法を説明するためのフローチャートである。
【0080】
図11に示すように、制御装置71はまず外部装置であるコンピュータ200から送信される印刷ジョブを受信する(ステップS21)。次に、制御装置71のフラッシング体積変更部71cは、印刷ジョブに示される印刷モードからフラッシング間隔を決定する(ステップS22)。
【0081】
次に、フラッシング体積変更部71cは上述の方法によりインク蒸発率を取得する(ステップS23)。ここで、フラッシング体積変更部71cは、ユーザにより高品質印刷モードが選択されたか否かを判別する(ステップS24)。高品質印刷モードが選択されている場合(ステップS24でYES)、フラッシング体積変更部71cはRAM72又はROM73から高品質テーブルを読み出す(ステップS25)。
【0082】
一方、高品質印刷モードが選択されていない場合(ステップS24でNO)、フラッシング体積変更部71cはRAM72又はROM73から高速テーブルを読み出す(ステップS26)。
【0083】
そして、フラッシング体積変更部71cは読み出したテーブルに基づき、上述と同様の方法により取得したインク蒸発率からフラッシング体積を取得する(ステップS27)。その後、フラッシング部71dは、上記の通り決定されたフラッシング間隔およびフラッシング体積に基づきフラッシング制御を実行する(ステップS28)。
【0084】
以上のように、本実施形態によれば、第1実施形態と同じ効果、すなわち、捨てるインクの量を従来よりも抑えることが可能になるという効果が奏される他、各印刷モードにつき、高品質テーブルによる印刷品質の向上又は高速テーブルによる印刷速度の上昇を選択的に実現することができる。
【0085】
(変形例)
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば以下の通りである。
【0086】
上記第3実施形態では、印刷モードからフラッシング間隔を決定したが、以下のようにフラッシング体積からフラッシング間隔を決定してもよい。図12はフラッシング間隔とフラッシング体積との関係をインク蒸発率ごとに示すグラフである。図12のテーブルは上述の高速テーブルを採用する場合に用いることができる。なお、図12に示すインク蒸発率は例示である。
【0087】
インク蒸発率およびフラッシング体積を取得すれば、図12のテーブルからフラッシング間隔を得ることができる。図12のフラッシング間隔下限値K1は印刷速度を考慮したものであり、フラッシング間隔がK1以下であると印刷速度の低下という点で顕著に影響が出る。また、図12のフラッシング体積vf1は1回のフラッシングで吐出が可能なフラッシング体積の最大値である。以上のように、図12のテーブルからフラッシング間隔を決定することができる。なお、図示は省略するが、高速テーブルを採用する場合だけでなく、上述の高品質テーブルを採用する場合にも、図12と同様なフラッシング間隔とフラッシング体積との関係をインク蒸発率ごとに示すテーブルが用意されている。
【0088】
また、上記第1実施形態では、印刷モードに応じてインク蒸発率からフラッシング体積を取得したが(図5)、温度を考慮してフラッシング体積を決定するためのテーブルを印刷モードごとに用意してもよい。図13はインク蒸発率とフラッシング体積との関係を温度ごとに示すノーマルモード用のテーブルをグラフ化したものである。図13において、インク蒸発率および温度センサ75により検知された温度からフラッシング体積を決定することができる。なお、図13において、線Ltdは例えば常温時におけるインク蒸発率とフラッシング体積との関係を示しており、温度が高温になると線Ltdの傾きよりも大きな傾きの線になり、温度が低温になると線Ltdの傾きよりも小さな傾きの線になる。なお、図13のノーマルモード用のテーブルだけでなく、速度重視モードおよび画質重視モードの各テーブルを同様に用意してもよい。
【0089】
さらに、上記実施形態では、温度センサ75による検知結果を温度補正部71aで補正した補正値を用いたが、これに限らず、温度センサ75による検知結果を直接用いてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 画像記録装置
10 液体吐出装置
12 貯留タンク
12a チューブ
20 吐出ヘッド
21 ノズル
28 圧力室
60 アクチュエータ
71 制御装置
71a 温度補正部
71b 印刷処理部
71c フラッシング体積変更部
71d フラッシング部
71e 印刷時間推定部
71f 液滴速度取得部
71g フラッシング体積補正部
72 RAM
73 ROM
75 温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13