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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】印刷物処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/12 20060101AFI20240730BHJP
   H04N 1/387 20060101ALI20240730BHJP
   B41J 21/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G06F3/12 356
G06F3/12 342
G06F3/12 308
G06F3/12 353
G06F3/12 385
H04N1/387 110
B41J21/00 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020163760
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022056001
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加峯 茉以子
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 英樹
【審査官】漆原 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-056894(JP,A)
【文献】特開2007-241648(JP,A)
【文献】特開2017-211691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/12
H04N 1/387
B41J 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷物が設置される環境の画像データを取得する取得部と、
プロセッサと、
表示部と、
を備え、前記プロセッサは、プログラムを実行することで、
前記取得部で取得された前記画像データを入力し、
前記環境に前記印刷物が設置された場合に、どのように見えるかを、前記印刷物の印刷条件に対応させて前記画像データ中に前記印刷物を合成した合成画像を前記表示部に表示し、
ユーザ操作に応じて前記印刷物の印刷条件を変更して表示することで前記印刷物の印刷条件を決定し、前記画像データを出力することなく前記印刷物の印刷条件を出力し、
前記取得部は、前記画像データをネットワークから検索して取得する、
印刷物処理装置。
【請求項2】
前記印刷条件は、前記印刷物の寸法、色、模様、フォント、解像度の少なくともいずれかを含む、
請求項1に記載の印刷物処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
入力した前記画像データから前記環境の画像データに対する前記印刷物の少なくとも適応寸法を推定し、
推定した適応寸法で前記画像データ中に前記印刷物を合成して前記表示部に表示する、
請求項1,2のいずれかに記載の印刷物処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記画像データ内の対象物の既知寸法に基づいて前記適応寸法を推定する、
請求項3に記載の印刷物処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
機械学習モデルを用いて前記画像データから前記適応寸法を推定する、
請求項3に記載の印刷物処理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、さらに、
ユーザ操作に応じて前記合成画像の全体を対象とした色相、彩度、明度の少なくともいずれかを含むパラメータを調整して前記表示部に表示し、
前記パラメータの調整を行うことなく前記印刷物の印刷条件を出力する、
請求項1,2のいずれかに記載の印刷物処理装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、さらに、
ユーザ操作に応じて前記パラメータを調整した上で前記印刷物の印刷条件を変更して表示し、
前記パラメータの調整を行うことなく、かつ変更後の前記印刷条件をプリンタに出力する、
請求項6に記載の印刷物処理装置。
【請求項8】
前記取得部は、前記環境の写真データを前記画像データとして取得する、
請求項1に記載の印刷物処理装置。
【請求項9】
前記取得部は、前記環境の画像データが存在しない場合に、前記環境に類似する環境の画像データを取得する、
請求項1に記載の印刷物処理装置。
【請求項10】
前記印刷物は、掲示物、壁紙、ポスター、カバーのいずれかである、
請求項1~9のいずれかに記載の印刷物処理装置。
【請求項11】
コンピュータに、
印刷物が設置される環境の画像データを入力するステップと、
前記環境に前記印刷物が設置された場合に、どのように見えるかを、前記印刷物の印刷条件に対応させて前記画像データ中に前記印刷物を合成した合成画像を表示部に表示するステップと、
ユーザ操作に応じて前記印刷物の印刷条件を変更して表示することで前記印刷物の印刷条件を決定し、前記画像データを出力することなく前記印刷物の印刷条件を出力するステップと、
を実行させ、前記画像データをネットワークから検索して入力する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、印刷プレビューにより、実際に紙に出力されるイメージを画面上で事前に確認できる機能が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、印刷媒体の印刷面に対する正確な印刷位置が反映された印刷プレビュー画像を表示することのできる情報処理装置が記載されている。情報処理装置は、記録媒体を供給する供給手段を備える画像形成装置の個体差に応じて設定されるマージン設定情報を取得する取得手段と、前記取得手段が取得した前記マージン設定情報と印刷対象の印刷データにかかわるマージン設定情報とを基に印刷位置を算出する算出手段と、前記算出手段が算出した印刷位置を基に前記印刷データに関するプレビュー画像を表示手段に表示させる表示制御手段とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-165008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、イベント会場等に設置する印刷物を出力する場合、印刷物が設置されるときのイメージを把握することが困難であり、複数の寸法で試し印刷する、実際に会場に印刷物を仮設置して寸法を修正した上で再印刷する、あるいは不適切な寸法のまま設置する等の不都合があった。
【0006】
本発明の目的は、イベント会場等の環境に設置される印刷物を印刷する際に、無駄な印刷を排除し、かつ前記環境に対して適切な印刷物を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、印刷物が設置される環境の画像データを取得する取得部と、プロセッサと、表示部と、を備え、前記プロセッサは、プログラムを実行することで、前記取得部で取得された前記画像データを入力し、前記環境に前記印刷物が設置された場合に、どのように見えるかを、前記印刷物の印刷条件に対応させて前記画像データ中に前記印刷物を合成した合成画像を前記表示部に表示し、ユーザ操作に応じて前記印刷物の印刷条件を変更して表示することで前記印刷物の印刷条件を決定し、前記画像データを出力することなく前記印刷物の印刷条件を出力する、印刷物処理装置である。
【0008】
ここで、前記取得部は、前記画像データをネットワークから検索して取得する。
【0009】
請求項に記載の発明は、前記印刷条件は、前記印刷物の寸法、色、模様、フォント、解像度の少なくともいずれかを含む、請求項1に記載の印刷物処理装置である。
【0010】
請求項に記載の発明は、前記プロセッサは、入力した前記画像データから前記環境の画像データに対する前記印刷物の少なくとも適応寸法を推定し、推定した適応寸法で前記画像データ中に前記印刷物を合成して前記表示部に表示する、請求項1,2のいずれかに記載の印刷物処理装置である。
【0011】
請求項に記載の発明は、前記プロセッサは、前記画像データ内の対象物の既知寸法に基づいて前記適応寸法を推定する、請求項に記載の印刷物処理装置である。
【0012】
請求項に記載の発明は、前記プロセッサは、機械学習モデルを用いて前記画像データから前記適応寸法を推定する、請求項に記載の印刷物処理装置である。
【0013】
請求項に記載の発明は、前記プロセッサは、さらに、ユーザ操作に応じて前記合成画像の全体を対象とした色相、彩度、明度の少なくともいずれかを含むパラメータを調整して前記表示部に表示し、前記パラメータの調整を行うことなく前記印刷物の印刷条件をプリンタに出力する、請求項1,2のいずれかに記載の印刷物処理装置である。
【0014】
請求項に記載の発明は、前記プロセッサは、さらに、ユーザ操作に応じて前記パラメータを調整した上で前記印刷物の印刷条件を変更して表示し、前記パラメータの調整を行うことなく、かつ変更後の前記印刷条件を出力する、請求項に記載の印刷物処理装置である。
【0015】
請求項に記載の発明は、前記取得部は、前記環境の写真データを前記画像データとして取得する、請求項1に記載の印刷物処理装置である。
【0016】
請求項に記載の発明は、前記取得部は、前記環境の画像データが存在しない場合に、前記環境に類似する環境の画像データを取得する、請求項1に記載の印刷物処理装置である。
【0017】
請求項10に記載の発明は、前記印刷物は、掲示物、壁紙、ポスター、カバーのいずれかである、請求項1~のいずれかに記載の印刷物処理装置である。
【0018】
請求項11に記載の発明は、コンピュータに、印刷物が設置される環境の画像データを入力するステップと、前記環境に前記印刷物が設置された場合に、どのように見えるかを、前記印刷物の印刷条件に対応させて前記画像データ中に前記印刷物を合成した合成画像を表示部に表示するステップと、ユーザ操作に応じて前記印刷物の印刷条件を変更して表示することで前記印刷物の印刷条件を決定し、前記画像データを出力することなく前記印刷物の印刷条件を出力するステップと、を実行させ、前記画像データをネットワークから検索して入力する、プログラムである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1,11に記載の発明によれば、印刷物が設置されるときのイメージを把握することが困難な場合であっても、適切な印刷物を得ることができる。
【0020】
請求項に記載の発明によれば、さらに、印刷物の寸法、色、模様、フォント、解像度の少なくともいずれかを決定することができる。
【0021】
請求項3,4,5に記載の発明によれば、さらに、印刷物の寸法を決定することができる。
【0022】
請求項6,7に記載の発明によれば、さらに、合成画像の全体を対象としたシミュレーションを行い、適切な印刷物を得ることができる。
【0023】
請求項に記載の発明によれば、さらに、環境の写真データを用いて適切な印刷物を得ることができる。
【0024】
請求項に記載の発明によれば、さらに、環境の画像データが存在しない場合にも適切な印刷物を得ることができる。
【0025】
請求項10に記載の発明によれば、さらに、掲示物、壁紙、ポスター、カバーのいずれかを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態のシステム構成図である。
図2】実施形態の掲示物画像のシミュレーション説明図である。
図3】実施形態の印刷物処理装置の構成ブロック図である。
図4】実施形態のユーザ操作の処理フローチャートである。
図5】実施形態の会場写真検索説明図である。
図6】実施形態の合成位置の決定説明図である。
図7】実施形態のプロセッサの処理フローチャートである。
図8】実施形態の表示装置の表示画面説明図である。
図9】変形例のシミュレーション説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0028】
図1は、本実施形態に係る印刷物処理システムの構成ブロック図である。本実施形態の印刷物処理システムは、印刷物処理装置10と、プリンタ12を備える。
【0029】
印刷物処理装置10は、イベント会場等の特定環境に設置される印刷物の印刷条件を決定してプリンタ12に印刷制御データを出力する。プリンタ12は、印刷物処理装置10からの印刷制御データに従い、印刷物を印刷して出力する。イベント会場等の特定環境に設置される印刷物は任意であるが、例えば、イベント会場に掲示される横断幕や垂れ幕等の掲示物、特定施設の壁に貼付される壁紙、ポスター、あるいはテーブルに敷設されるカバー等である。
【0030】
本実施形態では、印刷物としてイベント会場に掲示される横断幕等の掲示物を例にとり説明するが、これに限定されない。
【0031】
印刷物処理装置10は、イベント会場を示す画像データ50と、ユーザにより設定された印刷物の印字内容52を入力する。
【0032】
画像データ50は、例えばイベント会場を撮影した会場写真である。画像データ50には、掲示物が掲示されるべき位置あるいは領域が含まれている。また、イベント会場の実際の寸法を推定するためのオブジェクトが含まれているのが好ましい。掲示物が掲示されるべき位置は、ステージ上の横断幕や垂れ幕が設置される位置や領域、あるいは看板等が設置される位置や領域である。
【0033】
また、イベント会場の実際の寸法を推定するためのオブジェクトは、寸法が規格化あるいは標準化されているオブジェクトや寸法が既知のオブジェクト等である。これらに該当するオブジェクトとして、例えばスポーツ用のコート、信号機、交通標識、体育館や劇場等の建物の種別毎の舞台の高さ、照明器具、オフィス用の机やキャビネット、ピアノ、バイオリン、ギター等の楽器、非常口のサイン、消火器や消火栓、ランドセル等が挙げられる。また、男女/年齢/人種等毎に層別された人、乗用車/トラック/バス/電車等の種別毎に層別された交通手段を用いることもできる。
イベント会場の実際の寸法を推定するためのオブジェクトは、後述するように、掲示物の実際の寸法を推定し、掲示物の画像を画像データ50に合成するために用いられる。
【0034】
印刷物の印字内容52は、掲示物に印刷されるべき内容(コンテンツ)であり、例えば単語、標語、キャッチフレーズ、イベント内容、スケジュール、式次第等である。図1では、印字内容の一例として「Happy」なる英単語を挙げている。
【0035】
印刷物処理装置10は、画像データ50と印字内容52を入力すると、印字内容を掲示物に印刷してイベント会場に掲示したと想定したときの、掲示物の寸法やフォント、色等をシミュレーションして画像データ50に合成して表示する。図1には、例として、4つの合成画像が示されている。
【0036】
画像54は、画像データ50と、印字内容52を印字した掲示物を初期寸法でイベント会場に掲示したと想定して合成した画像である。初期寸法は、印刷物処理装置10が画像データ50から得られるイベント会場の実際の寸法に適応すると推定される掲示物の寸法であり、ユーザの操作指示により適宜変更され得る寸法である。
【0037】
また、画像56は、画像データ50と、画像54の場合よりも掲示物の寸法を縮小してイベント会場に掲示したと想定して合成した画像である。
【0038】
また、画像58は、画像データ50と、画像56の場合の掲示物の寸法を維持し、印字内容のフォントを変更してイベント会場に掲示したと想定して合成した画像である。
【0039】
さらに、画像60は、画像データ50と、画像58の場合の掲示物の寸法及びフォントを維持し、印字内容の背景色を変更してイベント会場に掲示したと想定して合成した画像である。
【0040】
印刷物処理装置10は、ユーザからの操作に応じ、シミュレーションして得られたこれらの合成画像54,56,58,60を順次、表示装置に表示してユーザに提示する。ユーザは、これらの合成画像54,56,58,60を視認することで、掲示物が掲示された場合のイベント会場の様子を合成画像上で確認することができ、掲示物の寸法やフォント、背景色がイベント会場の環境に適しているか否かを判断できる。
【0041】
より具体的には、ユーザは、合成画像54を表示装置で視認した場合、イベント会場のステージ上に掲示する掲示物として、周りのオブジェクトが遮蔽されるため寸法が大き過ぎると感じるであろう。このとき、ユーザは、掲示物の寸法をより小さくするように印刷物処理装置10に操作指示する。
【0042】
印刷物処理装置10は、ユーザからの掲示物寸法の縮小操作指示を受けて、掲示物の寸法を所定量、あるいは操作指示量だけ小さくして掲示物の画像を作成し、イベント会場の画像データ50と合成することで合成画像56を作成し表示装置に再表示する。
【0043】
次に、ユーザは、合成画像56を表示装置で視認した場合、イベント会場に掲示する掲示物の寸法は適当であると判断するが、他方で、掲示物の文字のフォントが適当でないと判断すると、掲示物のフォントを変更するように印刷物処理装置10に操作指示する。
【0044】
印刷物処理装置10は、ユーザからの掲示物フォントの変更操作指示を受けて、掲示物のフォントを別のフォントに変更して掲示物の画像を作成し、イベント会場の画像データと合成して合成画像58を作成し表示装置に再表示する。
【0045】
次に、ユーザは、合成画像58を表示装置で視認した場合、イベント会場に掲示する掲示物のフォントは適当であると判断するが、さらに、ユーザは、掲示物の背景色を変えてみようと欲すると、ユーザは、掲示物の背景色を変更するように印刷物処理装置10に操作指示する。
【0046】
印刷物処理装置10は、ユーザからの背景色の変更操作指示を受けて、掲示物の背景色を変更して掲示物の画像を作成し、イベント会場の画像データ50と合成して合成画像60を作成し表示装置に表示する。例えば、背景色を青色からオレンジ色に変更して合成画像60を作成する。
【0047】
ユーザは、合成画像60を表示装置で視認した場合、イベント会場に掲示する掲示物の背景色としてはオレンジ色よりもむしろ変更前の青色の方が適当であると判断する。そして、最終的に合成画像58が最もイベント会場のステージ上に掲示する掲示物として適当であると判断すると、その旨を印刷物処理装置10に操作指示する。図1では、合成画像58に太枠が表示されており、合成画像58がユーザにより最終的に最も適当と選択されたことを示す。
【0048】
なお、印刷物処理装置10は、合成画像54~60を1つずつ表示装置に順次表示するのではなく、表示装置に並列表示してもよく、これによりユーザは合成画像54~60を直接対比観察し得る。
【0049】
印刷物処理装置10は、ユーザからの指示を受けて、合成画像58で規定される掲示物の寸法、フォント、及び背景色を掲示物の印刷条件として確定し、当該印刷条件を含む印刷制御データをプリンタ12に出力する。プリンタ12は、印刷物処理装置10からの印刷制御データに基づいて掲示物62を出力する。プリンタ12は、横断幕や垂れ幕等の印刷が可能な大判プリンタが望ましいが、必ずしもこれに限定されない。
【0050】
このように、本実施形態では、印刷物処理装置10は、環境掲示物を掲示した場合にどのように見えるかを合成画像でシミュレーションし、ユーザに提示(プレビュー)する。ユーザは、合成画像を視認しながら、掲示物の寸法やフォント、色等の印刷条件を種々変更し、掲示するのに最も適切な印刷条件を探索することができる。
【0051】
これにより、本実施形態では、印刷物が設置されるときのイメージを把握することが困難な場合であっても、効率的な掲示物印刷が可能となる。
【0052】
ここで、本実施形態では、印刷物処理装置10は、イベント会場の画像データ50と、掲示物の画像との合成画像54~60を表示装置に表示してユーザに提示するが、プリンタ12に対しては掲示物の印刷条件を含む印刷制御データのみを出力し、プリンタ12では掲示物のみを印刷出力する点に留意されたい。すなわち、プリンタ12の印刷対象はあくまで掲示物、すなわちイベント会場に掲示される実物であり、イベント会場の画像データ50でも合成画像54~60のいずれかでもない。
【0053】
図2は、印刷物処理装置10における、掲示物の印刷条件の変更のみを抽出して示す。
ユーザは、掲示物の印字内容52を決定して印刷物処理装置10に入力する。印字内容52は、例えば「Happy」であり、キーボード等から入力される。このとき、ユーザは、初期値として、文字のフォントや背景色等を指定してもよいし、デフォルトのフォントや背景色でもよい。
【0054】
また、印刷物処理装置10は、イベント会場の画像データを検索して取得し、取得したイベント会場の画像データに対する掲示物の適応寸法を推定して、掲示物の画像54aを生成する。例えば、イベント会場のステージ上に掲示する横断幕の場合、イベント会場のステージの大きさを推定し、当該ステージに掲示する横断幕の適応寸法を長さ10m、幅1m等と推定し、推定した適応寸法に基づいて印字内容52を配置して初期の画像54aを生成する。初期の画像54aは、イベント会場の画像データ50に合成され、合成画像54として表示装置に表示される。イベント会場の画像データ50に対する画像54aの合成位置は、例えばユーザが画像データ50を視認しつつ決定して印刷物処理装置10に操作指示する。
【0055】
印刷物処理装置10は、ユーザから合成画像54に対する寸法変更の操作指示、例えば寸法縮小の指示を受けると、当該ステージに掲示する横断幕の適応寸法を長さ10m、幅1mから長さ8m、幅80cm等に変更し、変更した寸法に基づいて印字内容52を配置して画像56aを生成する。画像56aは、イベント会場の画像データ50に合成され、合成画像56として表示装置に表示される。イベント会場の画像データに対する画像56aの合成位置は、先にユーザが決定して印刷物処理装置10に操作指示した位置である。
【0056】
印刷物処理装置10は、ユーザからフォント変更の操作指示を受けると、当該ステージに掲示する横断幕の適応寸法を長さ8m、幅80cmのまま維持し、印字内容52のフォントを変更して画像58aを生成する。画像58aは、イベント会場の画像データに合成され、合成画像58として表示装置に表示される。イベント会場の画像データに対する画像58aの合成位置は、先にユーザが決定して印刷物処理装置10に操作指示した位置である。
【0057】
印刷物処理装置10は、ユーザからさらに背景色変更の操作指示を受けると、当該ステージに掲示する横断幕の寸法及びフォントを維持し、印字内容52の背景色を例えば青色からオレンジ色に変更して画像60aを生成する。画像60aは、イベント会場の画像データに合成され、合成画像60として表示装置に表示される。イベント会場の画像データに対する画像60の合成位置は、先にユーザが決定して印刷物処理装置10に操作指示した位置である。
【0058】
ユーザが最終的に合成画像58を最も適当であると判断して決定すると、印刷物処理装置10は、合成画像58を作成する際に用いた画像58aの寸法(長さ8m、幅80cm)、フォント、背景色(青色)を印刷条件として確定し、プリンタ12に印刷制御データを出力する。印刷制御データには、イベント会場の画像データに関する情報は含まれない。
【0059】
なお、この例では、ユーザは基本的に複数の合成画像54~60のうち、最も適当と判断する1個の合成画像を選択することで1つの印刷条件を確定しているが、場合によっては複数の合成画像を選択することで複数の印刷条件を確定することもできる。但し、無駄な印刷を排除する観点からはその上限を設定してもよい。
【0060】
次に、本実施形態の印刷物処理装置10の具体的構成について説明する。
【0061】
図3は、印刷物処理装置10の構成ブロック図である。印刷物処理装置10は、コンピュータで構成され、プロセッサ16、ROM18、RAM20、通信インターフェイス(I/F)22、入力装置24、表示装置26、及び記憶装置28を備える。
【0062】
プロセッサ16は、ROM18等のプログラムメモリに記憶されたプログラムを読み込み、RAM20をワーキングメモリとして用いて当該プログラムを実行することで、各種処理を実現する。プロセッサ16の処理は、具体的には以下の通りである。
・イベント会場の画像データを検索して取得する
・印字内容を入力する
・イベント会場に掲示物が掲示された場合に、どのように見えるかを示す合成画像を生成して表示装置26に表示する
・ユーザ操作に応じて掲示物の印刷条件を変更して合成画像を生成して表示装置26に表示する
・ユーザ操作に応じて掲示物の印刷条件を確定して印刷制御データをプリンタ12に出力する
通信I/F22は、ネットワーク14を介してプリンタ12及びネットワークサーバ13とデータを送受信する。プロセッサ16は、通信I/F22及びネットワーク14を介してネットワークサーバ13に接続してイベント会場の画像データを検索して取得する。また、プロセッサ16は、通信I/F22及びネットワーク14を介してプリンタ12に印刷制御データを出力する。
【0063】
入力装置24は、イベント会場の画像データを検索する際の検索キーワード及び印字内容を入力する。入力装置24は、キーボードやマウス、タッチパネル、スキャナ等で構成される。
【0064】
表示装置26は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等で構成される。タッチパネルで構成されてもよい。
【0065】
記憶装置28は、HDDやSSD等で構成され、入力された画像データや印字内容、合成画像、印刷条件等を記憶する。
【0066】
ネットワーク14は、有線/無線を問わず、公衆回線/専用回線を問わない。ネットワーク14の一例は無線LAN(ローカルエリアネットワーク)である。
【0067】
図3では、印刷物処理装置10とプリンタ12がネットワーク14で接続されているが、さらに、ユーザ端末と印刷物処理装置10とプリンタ12がネットワーク14で接続されていてもよい。この場合、図3における印刷物処理装置10の入力装置24及び表示装置26の機能をユーザ端末が担い得る。ユーザ端末はスマートフォン等の携帯端末でもよく、PCやタブレット端末等でもよい。
【0068】
また、後述するように、プロセッサ16は、機械学習モデルを用いてイベント会場の画像から当該イベント会場及び掲示物の実際の寸法を推定するが、この際の学習用データセットは、ネットワーク14に接続された別のサーバコンピュータから取得してもよい。学習用データセット及び機械学習モデルの各種パラメータは、記憶装置28に記憶され得る。
【0069】
次に、本実施形態における処理を詳細に説明する。
【0070】
図4は、本実施形態の処理フローチャートであり、印刷物処理装置10を利用するユーザの操作フローチャートである。
【0071】
まず、ユーザは、イベント会場に掲示すべき掲示物を決定する(S101)。具体的には、イベント会場のステージに掲示する横断幕等である。
【0072】
次に、ユーザは、イベント会場の写真をネットワークサーバ13から検索する(S102)。検索は、所望のイベント会場に関するフリーキーワードを用いて行うことができる。例えば、イベント会場が特定の会場、具体的には特定の学校であれば、「●川第一中学校」等と入力する等である。さらに、イベントの目的を検索キーワードに含めて検索してもよく、「●川第一中学校 入学式」等としてもよい。勿論、既にイベント会場の写真が存在すれば、検索することなくその写真を用いればよい。
【0073】
次に、ユーザは、印刷物処理装置10にインストールされている処理プログラム(アプリケーション)を起動し、掲示物に印字されるべき印字内容52を入力装置24から入力する(S103)。印字内容52は、単語や標語、フレーズ、式次第等である。ここでは、「Happy」なる英単語を入力したとする。プロセッサ16は、印字内容52を入力すると、記憶装置28に記憶するとともに、表示装置26に表示する。印字内容52とともに、印字内容52が印字されるべき印刷媒体を特定して入力してもよい。例えば、「横断幕」、「垂れ幕」、「看板」等である。また、掲示物の基本的な形状を入力してもよい。「矩形」、「横長」、「縦長」等である。
【0074】
ユーザは、表示装置26に表示された印字内容52を確認し(S104)、印字内容52が正しければ次に進み、そうでなければ適宜、入力装置24から変更内容を入力する。
【0075】
印字内容52を確認した後、ユーザは、S102で検索して取得した会場写真をイベント会場の画像データ50として入力装置24から入力する(S105)。このとき、入力装置24は画像データ50の取得部として機能する。検索して得られた複数の画像データを表示装置26に表示し、ユーザがマウス等でいずれかの画像データをクリックする等して選択してもよい。
【0076】
図5は、S102及びS105の処理を模式的に示す。図5(a)に示すように、ユーザが入力装置24から検索キーワード30として
「●川第一中学校 入学式」
と入力すると、プロセッサ16は、ネットワークサーバ13にアクセスして検索キーワードに合致する複数の画像データを取得し、これらの画像データをサムネイル32として表示装置26に一覧表示する。ネットワークサーバ13は、SNS(ソーシャルネットワーキング)のサーバコンピュータでもよく、あるいは印刷物処理装置10を管理する企業のサーバコンピュータでもよい。後者の場合、過去に印刷物処理装置10で処理した画像データとその履歴データをメタデータとして併せて管理してもよい。
【0077】
ユーザは、サムネイル32として一覧表示された複数の画像データのいずれかをマウスでクリックする等して選択すると、プロセッサ16は、図5(b)に示すように、選択されたサムネイルに対応する画像データを拡大して表示装置26に表示する。また、プロセッサ16は、選択された画像データにメタデータが存在する場合には、当該メタデータも併せて表示する。メタデータには、例えば
・撮影場所
・撮影日時
・天候
・印刷データ
が含まれる。印刷データは、過去に当該画像データを用いて掲示物が印刷処理された場合の当該掲示物の印刷条件に関するデータである。印刷データとして、例えば
・用紙サイズ
・用紙
・フォントサイズ
・フォント種別
が含まれる。用紙サイズや用紙、フォントサイズ、フォント種別は、画像データに関するものではなく、画像データに合成される掲示物に関するものである点に留意されたい。ユーザは、メタデータを視認することで、今回印刷すべき掲示物についての有益な情報を得ることができ、例えばメタデータと同一条件を設定する等の試行も可能である。
【0078】
再び図4に戻り、プロセッサ16は、検索して得られたイベント会場の画像データ50を取得すると、この画像データ50を処理して、イベント会場の寸法、特に掲示物が掲示されるステージの寸法を推定するとともに、当該イベント会場に掲示される掲示物の寸法を推定する。
【0079】
プロセッサ16は、イベント会場の寸法及び掲示物の寸法を推定する場合、機械学習モデルを用いる。モデルを構築するための学習データは、横断幕や垂れ幕等の大判プリンタで作成可能な掲示物が写っている複数の写真データである。これらの写真データにおける、学習データセットとして、当該写真データに写っている掲示物の寸法、絵文字等の属性データ、例えばフォント寸法、フォント種別、及び当該写真データに写っている別のオブジェクトの寸法を用意する。
【0080】
別のオブジェクトは、寸法が規格化されている物と寸法が既知のものが好ましい。規格化されているものの例としては、スポーツ用のコート、信号機、交通標識等が挙げられる。
【0081】
また、寸法が既知のものは東京タワーや東京ドーム等の著名建造物が挙げられる。また、標準的な寸法が決まっているものを用いることもできる。標準的な寸法が決まっているものの例としては、体育館や劇場等の建物の種別毎のステージ、照明器具、オフィスに備えられる机やファイルキャビネット、ピアノ、バイオリンやギター等の楽器、非常口のサイン、消化器や消火栓、ランドセル等が挙げられる。さらに、男女/年齢/人種等毎に層別された人、乗用車/トラック/バス/電車等の種毎に層別された交通手段等を用いてもよい。
【0082】
これらの学習データセットを用いて機械学習されたモデルを用いることによって、寸法のデータを有さない写真から、イベント会場の寸法、絵文字の寸法を推定することができる。また、横断幕等のフォント種別も推定することができる。
【0083】
機械学習モデルを用いるための前処理として、取得して入力した画像データ50に写っているオブジェクトを割り出す物体認識を行い、学習データセットで用いたオブジェクトを検索する。このとき、寸法が規格化されているオブジェクトと寸法が既知のオブジェクトを優先的に検索し、これらが検出できない場合に、標準的な寸法が決まっているオブジェクトを次に優先して検索する。そして、機械学習モデルのうち、検出されたオブジェクトを学習データセットとして用いた機械学習モデルを選択することで、イベント会場の実際の寸法、ひいては当該イベント会場に掲示される掲示物の実際の寸法やフォントを精度良く推定し得る。
【0084】
一例として、各種のイベント会場の写真データにおいて、ステージ及びステージ上に掲示された横断幕や垂れ幕がオブジェクトとして写り込んでいる写真データを学習データセットとして用いて機械学習させ、写真データを入力すれば、掲示物の寸法、さらには掲示物のフォント種別やフォント寸法を出力するような機械学習モデルを生成する。プロセッサ16は、この機械学習モデルに、S105で取得し入力した会場写真を入力データとして入力し、掲示物の寸法、さらには掲示物のフォント種別やフォント寸法を出力データとして出力する。プロセッサ16は、学習用データセット学習器に入力して機械学習モデル、言い換えれば寸法推定モデルを作成するが、学習器は、例えばニューラルネットワーク(NN)や畳み込みニューラルネットワーク(CNN)等を用いることができる。但し、本実施形態の機械学習モデルは特定のモデルに限定されない。
【0085】
プロセッサ16は、機械学習モデルを用いて推定した掲示物の寸法、さらには掲示物のフォント種別やフォント寸法を印字内容52の文字に反映させて掲示物の画像として表示装置26に表示する。
【0086】
ユーザは、表示装置26に表示された掲示物の寸法(サイズ)を確認し(S106)、必要に応じて適宜寸法を増減修正する(S107)。なお、この時点では、未だ掲示物の画像はイベント会場の画像データ50と合成されておらず、掲示物がイベント会場に掲示された場合にどのように見えるかのイメージが具体的に把握できない状態なので、ある程度の修正でよい。
【0087】
次に、ユーザは、寸法が調整された掲示物の画像をS105で入力した会場写真に合成する(S108)。プロセッサ16は、会場写真の画像データ50と寸法調整された掲示物の画像とを共に表示し、ユーザ操作に応じて掲示物の画像の位置を移動させる。例えば、ユーザは、入力装置24としてのマウスを操作し、掲示物画像をドラッグアンドドロップして合成位置を決定する。これ以外にも、上下左右のカーソルキーを操作することで掲示物の画像を上下左右に移動させて合成位置を決定してもよい。また、マウスを操作し、画像を回転させ、画像の傾きを決定することもできる。プロセッサ16は、ユーザ操作により決定された合成位置において、会場写真の画像データ50と掲示物の画像とを合成し、合成画像を表示装置26に表示する。
【0088】
図6は、会場写真の画像データ50と掲示物の画像の合成処理を示す。図6(a)に示すように、会場写真の画像データ50と掲示物の画像54aが表示装置26に並列表示される。ユーザは、例えば掲示物画像54aをマウスでドラッグアンドドロップして画像データ50の所望位置、具体的にはステージ上の横断幕位置まで移動させる。また、掲示物の画像54aの近傍には掲示物の画像54aを回転操作するための操作アイコン55が表示される。ユーザは、この操作アイコン55を操作することで、掲示物の画像54aを所望の角度だけ回転させ、掲示物の画像54aの傾きを決定する。図6(b)は、掲示物の画像54aを移動した後の状態を示す。プロセッサ16は、この位置を合成位置として認識し、その位置情報をRAM20あるいは記憶装置28に記憶する。以後のシミュレーションでは、記憶されたこの位置情報を用いて合成のシミュレーションを実行する。
【0089】
ユーザは、例えば画像データ50において合成位置や領域をマウスやカーソル等で指定し、プロセッサ16が指定された位置や領域まで掲示物の画像54aを自動的に移動させることで合成してもよい。あるいは、プロセッサ16は、画像データ50内において掲示物の画像54aの合成位置あるいは領域を自動認識し、当該位置あるは領域に掲示物の画像54aを合成してもよい。合成位置の認識は、既述した機械学習を用いて実行し得る。具体的には、学習用データセットからステージ上の横断幕の位置を学習し、画像データ50から横断幕と認識される領域を抽出して掲示物の画像54aを合成する。
【0090】
再び図4に戻り、表示装置26に合成画像が表示されると、ユーザは合成画像を確認する(S109)。そして、合成画像がOKか否かを判断する(S110)。合成画像がOKであれば、ユーザはその旨を入力装置24から入力(例えば表示装置26に表示された「OK」ボタンを操作する等)して印刷条件を確定する(S112)。
【0091】
他方で、ユーザが合成画像はOKでないと判断した場合(S110でNO)、ユーザはその旨を入力装置24から入力(例えば表示装置26に表示された「変更」ボタンを操作する等)し、掲示物の画像54aの寸法やフォント、背景色等の変更を指示する(S111)。以上の処理を合成画像がOKと判断されるまで繰り返し実行する。
【0092】
変更時には変更メニューが表示装置26に表示され、寸法、フォント、色のいずれかを選択し、寸法を選択した場合にはさらに拡大・縮小のメニューが表示され、フォントを選択した場合にはさらにフォント種別が表示され、色を選択した場合には各種の色メニューが表示されてユーザが所望の寸法、フォント、色を順次選択する。
【0093】
図7は、本実施形態の処理フローチャートであり、プロセッサ16のフローチャートである。
【0094】
まず、プロセッサ16は、入力装置24から入力された印字内容52を受信し(S201)、記憶装置28に記憶するとともに、表示装置26に当該印字内容52を表示する(S202)。
【0095】
次に、プロセッサ16は、検索して取得した会場写真の画像データ50を受信し(S203)、記憶装置28に記憶する。
【0096】
次に、プロセッサ16は、会場写真の画像データ50を受信すると、会場写真の画像データに基づいて掲示物の寸法を推定して表示装置26に表示する(S204)。この処理は、図4におけるS106の処理に対応するものであり、機械学習モデルを用いてイベント会場の実際の寸法、及び掲示物の寸法を推定する。そして、ユーザが入力装置24から掲示物の寸法の修正指示を行うと、この修正指示を受信し(S205)、掲示物寸法を修正する(S206)。なお、後に合成画像を視認しながらの修正操作があるので、このステップを省略してもよい。機械学習モデルの精度が高い場合には、このステップを省略し得る。
【0097】
次に、会場写真の画像データ50と掲示物の画像54aを合成する際の、合成位置を決定する(S207)。この処理は、図4におけるS108の処理に対応するものである。合成位置の決定は、ユーザによる手動決定と、プロセッサ16による自動決定のいずれかであるが、ユーザが手動/自動のいずれかを選択できるように構成してもよい。
【0098】
具体的には、プロセッサ16は、表示装置26に「手動」、「自動」のボタンを表示し、ユーザが手動を選択操作した場合には図6に示す手順でユーザが合成位置を手動で決定する。また、ユーザが自動を選択操作した場合には機械学習モデルを用いて合成位置を推定してユーザに提示する。自動決定の場合にも、最終的にはユーザの確認操作を経て決定するのが好ましい。機械学習モデルで画像データ50における合成位置あるいは合成領域を推定して画像データ50の当該位置あるいは領域を強調表示してユーザに提示する等の半自動処理としてもよい。
【0099】
次に、プロセッサ16は、決定した合成位置をRAM20あるいは記憶装置28に記憶し、会場写真の画像データ50と寸法修正された掲示物の画像54aとを画像合成し(S208)、合成画像を表示装置26に表示する(S209)。
【0100】
次に、プロセッサ16は、ユーザからの指示に基づいて合成画像がOKか否かを判定する(S210)。すなわち、表示装置26に「OK」ボタン及び「変更」ボタンを表示し、ユーザが「OK」ボタンを操作すれば合成画像はOKと判定し、そのときに合成画像として表示されている掲示物の画像54aの寸法、フォント、背景色を印刷条件として確定する(S212)。そして、プリンタ12に対してこれらの印刷条件を含む印刷制御データを出力して掲示物を印刷する(S213)。図8は、表示装置26での表示例を示す。例えば合成画像の下部に「OK」ボタン70及び「変更ボタン」72が表示される。ユーザは入力装置24からいずれかのボタンを選択操作して入力する。
【0101】
他方、ユーザが「変更」ボタンを操作すれば合成画像はOKでないと判定し(S210でNO)、プロセッサ16は、ユーザ操作指示に応じて掲示物の画像54aの寸法、フォント、色等を変更して再び合成画像を作成し、表示装置26に表示する(S211)。以上の処理を合成画像がOKとなるまで繰り返し実行する。
【0102】
具体的には、図2に示すように、掲示物画像54aの寸法を縮小して掲示物画像56aとし、掲示物画像56aのフォントを変更して掲示物画像58aとし、掲示物画像58aの背景色を変更して掲示物画像60aとして合成画像54~60を順次生成する等である。
【0103】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0104】
例えば、本実施形態では、印刷条件として寸法、フォント、色(背景色)を例示したが、これ以外にも模様や解像度、用紙の種類、材質等を含めてもよい。模様や解像度等に関しても、機械学習モデルで推定して初期値として模様や解像度等を設定し、ユーザからの変更操作指示に応じて種々変更すればよい。
【0105】
また、本実施形態では、イベント会場の写真をネットワーク上で検索して画像データ50として取得しているが、当該イベント会場の写真が存在しない場合には、当該イベント会場に類似する会場の画像データを検索して取得してもよい。例えば、イベント会場の名称が「●川第一中学校」であり、●川第一中学校の画像データは存在しなくてもこれに類似する画像データ、例えば「●田中学校」あるいは「●●高校」の画像データが検索でヒットすれば、これらを類似する環境の画像データとして用いる等である。「類似」の程度は、検索して得られた画像データを表示装置26に表示し、ユーザが目視で判断すればよい。
【0106】
具体的な処理アルゴリズムとしては、
(1)イベント会場の写真があればそれを画像データ50として用いる
(2)イベント会場の写真がなければ、過去のイベント会場の写真を画像データとして用いる
(3)過去のイベント写真がなければ、インターネット上で検索する
となるが、これに限定されない。インターネットで検索してもイベント会場に類似する画像データが存在しない場合には、その旨をユーザに提示し、ユーザが手動でイベント会場の実際の寸法、ステージの実際の寸法等を入力する。但し、この場合には合成すべき画像データ50が存在しないので、例えば実際の寸法に近いデフォルトのテンプレート画像を画像データ50として用いてこれに掲示物の画像を合成して表示装置26に表示する。
【0107】
また、本実施形態において、S211で掲示物画像のサイズ、フォント、色等の変更が完了した後に、天候や時間帯、季節等を含めた全体の見栄え、つまり画像データ50と掲示物画像とを合成した合成画像の見栄えをシミュレーションして確認してもよい。
【0108】
具体的には、晴れた日の朝、昼、夕方、夜等の光環境の変化特性に合わせた、画像データ50と掲示物画像との合成画像のパラメータを変化させた合成画像の全体の見栄えを調整し、掲示物の見え方を確認する。このとき、朝、昼、夕方、夜の合成画像を並べて表示し、比較することができる。次に、曇りの日、雨の日や季節による光の入り方等を含めて、パラメータを変化させた合成画像の全体の見栄えを調整し、掲示物の見え方を確認する。これらの処理では、全体の見栄え、つまり背景としてのイベント会場写真等の画像データ50と掲示物画像を同時に調整する。ここで、「パラメータ」とは、天候や時間帯、季節等により変化し得る画像の色に関する属性を意味し、色相、彩度、明度の少なくともいずれかを含む。そして、全体の見栄えを調整してユーザが確認した後、全体に対して調整したパラメータを除いた掲示物の印刷条件をプリンタ12に出力する。なお、図示はしないが、印刷条件は直接プリンタに出力するだけに限らない。例えば中間的なサーバなどを経由してもよい。
【0109】
全体の見栄えを調整する際に、合成画像のうちの掲示物画像のみのパラメータをさらに調整できるように構成してもよい。例えば、全体画像の明度を調整した後で、さらに掲示物画像のフォント種別を変更する等である。曇りの日や雨の日で明度が小さい場合に、当初設定したフォントでは若干暗い印象を受けるので、別のフォント種別に変更して明度が小さい場合でも相対的に明瞭に識別できるようにするためである。変更された掲示物画像のみのパラメータは、並べて表示されている合成画像全体に反映される。このとき、全体に対して調整したパラメータは掲示物の印刷条件には反映されないが、掲示物画像に対してのみ行った調整は、掲示物の印刷条件に反映されることになる(フォント種別の変更等)。
【0110】
図9は、合成画像全体に対するパラメータ調整を模式的に示す。図9(a)は、掲示物画像54aに対してサイズやフォント、背景色等を変更した場合を掲示物画像54aに対して付したハッチングで示す。これにより、例えば掲示物画像54aの背景色は青色に設定されたものとする。図9(b)は、画像データ50と掲示物画像54aの合成画像の全体に対し、パラメータとして明度を調整した場合を全体画像に対して付したハッチングで示す。ユーザは、合成画像の全体に対する明度の調整により、掲示物画像54aがどのように見えるかを視認して確認する。全体の明度を調整しても掲示物画像54aの見え方が問題ないとユーザが判断すれば、プロセッサ16は、明度調整前の掲示物画像54aで設定されたサイズやフォント、背景色等を印刷条件として決定してプリンタ12に出力する。他方、全体の明度を調整した結果、掲示物画像54aの見え方に違和感があり、ユーザが背景色を青色からオレンジ色に変更した場合、プロセッサ16は、掲示物の印刷条件のうち背景色を青色からオレンジ色に変更してプリンタ12に出力する。なお、図示はしないが、印刷条件は直接プリンタに出力するだけに限らない。例えば中間的なサーバなどを経由してもよい。
【0111】
以上の処理により、天候や時間帯、季節等を含めたシミュレーションにより掲示物の見栄えを評価して、最も適当な掲示物の印刷条件を決定することができる。
【0112】
また、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えば CPU Central Processing Unit 等)や、専用のプロセッサ(例えば GPU Graphics Processing Unit 、 ASIC Application Specific Integrated Circuit 、 FPGA Field Programmable Gate Array 、 プログラマブル論理デバイス等)を含むものである。
【0113】
また、プロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は実施形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0114】
10 印刷物処理装置(コンピュータ)、12 プリンタ、13 ネットワークサーバ、14 ネットワーク、16 プロセッサ、18 ROM、20 RAM、22 通信I/F、24 入力装置、26 表示装置、28 記憶装置、62 掲示物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9