(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】印刷用カセット
(51)【国際特許分類】
B41J 17/32 20060101AFI20240730BHJP
B41J 3/36 20060101ALI20240730BHJP
B65H 19/12 20060101ALI20240730BHJP
B41J 15/04 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B41J17/32 A
B41J3/36 T
B65H19/12 B
B41J15/04
(21)【出願番号】P 2020164214
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 信次
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-088077(JP,A)
【文献】特開2011-207194(JP,A)
【文献】特開2015-096324(JP,A)
【文献】特開2011-245696(JP,A)
【文献】特開昭61-078273(JP,A)
【文献】特開2005-280060(JP,A)
【文献】米国特許第06019528(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 17/32
B41J 3/36
B65H 19/12
B41J 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1スプールと、
前記第1スプールに巻回された印刷に供される補助テープの第1ロールと、
前記補助テープを巻き取る第2スプールと、
前記第1スプールから前記第2スプールへ駆動力を伝達する第1駆動伝達部と、
を備え
、
前記第1駆動伝達部は、前記第2スプールにおける前記補助テープの巻取速度を前記第1スプールにおける前記補助テープの搬送速度よりも大きくする増速機構を含む、印刷用カセット。
【請求項2】
前記第1駆動伝達部は、
前記第1スプールに連結されると共に、前記第1スプールと同軸上に配置された第1ギアと、
前記第2スプールに連結されると共に、前記第2スプールと同軸上に配置された第2ギアと、
を有する、請求項1に記載の印刷用カセット。
【請求項3】
前記第1ギアは、前記第2ギアと係合する、請求項2に記載の印刷用カセット。
【請求項4】
前記第1駆動伝達部は、前記第1ギアに取り付けられたクラッチバネを有する、請求項2又は請求項3に記載の印刷用カセット。
【請求項5】
前記第1駆動伝達部は、前記第2ギアに取り付けられたクラッチバネを有する、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の印刷用カセット。
【請求項6】
第1スプールと、
前記第1スプールに巻回された印刷に供される補助テープの第1ロールと、
前記補助テープを巻き取る第2スプールと、
前記第1スプールから前記第2スプールへ駆動力を伝達する第1駆動伝達部と、
前記補助テープによって印刷される印刷用テープの第2ロール
と、
を備え、
前記第1スプールの少なくとも一部及び前記第2スプールの少なくとも一部は、前記第2スプールの回転軸心と平行な第1方向において、前記第2ロールと重なる
、印刷用カセット。
【請求項7】
前記第1スプールの回転軸心と前記第2スプールの回転軸心と前記第2ロールの巻回軸心とは平行である、請求項
6に記載の印刷用カセット。
【請求項8】
外部から入力された駆動力を、前記印刷用テープの搬送に供される駆動力として出力する第2駆動伝達部をさらに備える、請求項
7に記載の印刷用カセット。
【請求項9】
前記第2駆動伝達部は、
駆動力が入力される入力ギアと、
駆動力を出力する出力ギアと、
を有する、請求項
8に記載の印刷用カセット。
【請求項10】
前記印刷用テープの印刷が行われるヘッド開口をさらに備え、
前記第2ロールから引き出された前記印刷用テープは、前記ヘッド開口において前記補助テープと重ね合わされる、請求項
6から請求項
9のいずれか1項に記載の印刷用カセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印刷用カセットに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷用テープに印刷を行う印刷装置では、インクリボンを収容したカセットを印刷装置本体に着脱することで、インクリボンの交換及び供給が行われる(特許文献1参照)。インクリボンは、印刷に使用された後、カセット内で巻取スプールによって巻き取られる。
【0003】
巻取スプールには、印刷装置本体の駆動シャフトが内部に係合される。巻取スプールは、駆動シャフトから伝達される駆動力によって回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のカセットでは、印刷装置本体の駆動シャフトと係合可能な位置に巻取スプールが配置される必要がある。そのため、カセット内での巻取スプールの配置における制約が大きくなる。
【0006】
本開示の一局面は、巻取スプールの配置における制約を低減できる印刷用カセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、第1スプールと、第1スプールに巻回された印刷に供される補助テープの第1ロールと、補助テープを巻き取る第2スプールと、第1スプールから第2スプールへ駆動力を伝達する第1駆動伝達部と、備える印刷用カセットである。
【0008】
このような構成によれば、補助テープの引き出しに伴う第1スプールの回転力を利用して第2スプールを回転させることができる。これにより、第2スプールを印刷装置本体の駆動シャフトに係合させる必要がなくなる。そのため、印刷用カセット内での第2スプールの配置における制約が低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1Aは、実施形態における印刷装置を示す模式的な斜視図であり、
図1Bは、
図1Aの印刷装置本体を示す模式的な斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1Aの印刷用カセットの内部構造を示す模式的な平面図である。
【
図3】
図3は、
図2の印刷用カセットを左方から視た時の内部構造を示す模式的な側面図である。
【
図4】
図4は、
図3のクラッチ機構を示す模式的な斜視図である。
【
図5】
図5は、
図3の第1駆動伝達部のクラッチバネを示す模式的な斜視図である。
【
図6】
図6は、
図2とは異なる実施形態における印刷用カセットの内部構造を示す模式的な平面図である。
【
図7】
図7は、
図6の印刷用カセットを左方から視た時の内部構造を示す模式的な側面図である。
【
図8】
図8は、
図2及び
図6とは異なる実施形態における印刷用カセットの内部構造を示す模式的な平面図である。
【
図9】
図9は、
図8の印刷用カセットを後方から視た時の内部構造を示す模式的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1Aに示す印刷装置1は、印刷用カセット10と、印刷装置本体100とを備える。印刷装置1は、テープ状の印刷媒体に印刷を行う装置である。
【0011】
本実施形態では、出力ギア31の軸方向を上下方向とし、上下方向と直交する方向のうち出力ギア31と入力ギア32とが並ぶ方向を前後方向とし、上下方向と前後方向との双方に直交する方向を左右方向とする。
【0012】
<印刷装置本体>
印刷装置本体100は、
図1Bに示すように、カセット収納部101と、印刷ヘッド102と、プラテンローラ103と、プラテンギア104と、駆動シャフト105と、駆動源107と、筐体110とを備える。
【0013】
(カセット収納部)
カセット収納部101は、印刷用カセット10が装着される凹部である。カセット収納部101は、印刷用カセット10の位置決め機能を有する。カセット収納部101は、筐体110に設けられている。
【0014】
(印刷ヘッド)
印刷ヘッド102は、カセット収納部101の内部に配置されている。印刷ヘッド102は、個別に発熱が制御される複数の発熱素子を有する。
【0015】
(プラテンローラ)
プラテンローラ103は、カセット収納部101の内部において、印刷ヘッド102と対向するように印刷ヘッド102の近傍に配置されている。プラテンローラ103は、印刷ヘッド102に対し、近づく方向又は離れる方向に揺動可能である。プラテンローラ103の回転軸心L1は、上下方向と平行である。
【0016】
(プラテンギア)
プラテンギア104は、プラテンローラ103に連結されている。本実施形態では、プラテンギア104の回転軸心L2は、プラテンローラ103の回転軸心L1と同一線上に配置されている。プラテンギア104は、プラテンローラ103と共に揺動可能である。
【0017】
(駆動シャフト)
駆動シャフト105は、印刷用カセット10の入力ギア32に挿入される。駆動シャフト105は、入力ギア32を回転させる。
【0018】
駆動シャフト105は、カセット収納部101の内部に配置されている。駆動シャフト105の回転軸心L3は、上下方向と平行である。駆動シャフト105は、駆動源107によって回転軸心L3を中心に回転する。
【0019】
(駆動源)
駆動源107は、駆動シャフト105を回転駆動させる。駆動源107としては、例え
ばモータとギアとを組み合わせた機構が使用できる。
【0020】
<印刷用カセット>
印刷用カセット10は、印刷媒体(つまり印刷用テープ11A)を格納している。印刷用カセット10は、印刷装置本体100に着脱可能である。印刷用カセット10の交換により、印刷媒体の補給、及び印刷媒体の種類(例えば、サイズ、色、材質等)の変更ができる。
【0021】
図2に示すように、印刷用カセット10は、印刷用テープ11Aの少なくとも一部及びインクリボン14A(補助テープの一例)の少なくとも一部が収容されるケース40を備える。
【0022】
印刷用カセット10の外形(つまり、ケース40の形状)は、上下方向に平行な辺と、前後方向に平行な辺と、左右方向に平行な辺とを有する直方体状である。ケース40は、下方に向かってカセット収納部101へ挿入される。
【0023】
印刷用カセット10は、印刷用テープロール11(第2ロールの一例)と、印刷用テープスプール12と、インクリボンロール14(第1ロールの一例)と、インクリボンスプール15(第1スプールの一例)と、巻取スプール16(第2スプールの一例)と、第1駆動伝達部20と、第2駆動伝達部30とを備える。
【0024】
(印刷用テープロール)
印刷用テープロール11は、印刷が行われる印刷用テープ11Aが印刷用テープスプール12に巻回されたものである。印刷用テープ11Aの表面には、印刷装置本体100の印刷ヘッド102及びインクリボン14Aによって印刷が行われる。印刷用テープロール11の巻回軸心は、上下方向と平行である。
【0025】
(印刷用テープスプール)
印刷用テープスプール12は、上下方向と平行な回転軸心周りに回転可能である。印刷用テープスプール12は、印刷装置本体100のプラテンローラ103による印刷用テープ11Aの搬送に伴って回転することで、印刷用テープ11Aを印刷ヘッド102に供給する。
【0026】
(インクリボンロール)
インクリボンロール14は、印刷用テープ11Aの印刷に供される前のインクリボン14Aがインクリボンスプール15に巻回されたものである。
【0027】
インクリボン14Aは、ヘッド開口41において、印刷用テープ11Aと重ね合わされ、印刷ヘッド102による印刷に供される。印刷に使用されたインクリボン14Aは、巻取スプール16に巻き取られる。
【0028】
(インクリボンスプール)
インクリボンスプール15は、印刷用テープスプール12の回転軸心と平行、つまり上下方向と平行な回転軸心周りに回転可能である。インクリボンスプール15は、インクリボン14Aの巻取スプール16による巻き取りに伴って回転することで、インクリボン14Aを印刷ヘッド102に供給する。
【0029】
インクリボンスプール15の少なくとも一部は、上下方向において、印刷用テープロール11と重なっている。
【0030】
図3に示すように、インクリボンスプール15には、インクリボン14Aにバックテンションを付加するためのクラッチ機構17が取り付けられている。クラッチ機構17は、インクリボンスプール15の中空部に配置されている。クラッチ機構17は、
図4に示すように、バネホルダ71と、コイルバネ72とを有する。
【0031】
バネホルダ71は、第1円筒部71Aと、第2円筒部71Bと、突起71Cとを有する。第2円筒部71Bは、第1円筒部71Aよりも外径が小さい。また、第2円筒部71Bの中心軸は、第1円筒部71Aの中心軸と同一直線上に配置されている。突起71Cは、第1円筒部71Aの外周面から第1円筒部71Aの径方向外側に突出している。
【0032】
コイルバネ72は、コイル部72Aと、第1係合部72Bと、第2係合部72Cとを有する。コイル部72Aは、第2円筒部71Bの外周面に螺旋状に巻回された線状体で構成されている。第1係合部72B及び第2係合部72Cは、それぞれ、コイル部72Aを形成している線状体の端部が第2円筒部71Bの径方向外側に突出することで構成されている。第1係合部72B及び第2係合部72Cの少なくとも一方は、ケース40の内壁に係合している。
【0033】
バネホルダ71の突起71Cは、インクリボンスプール15の内周面に形成された溝に係合している。そのため、バネホルダ71は、インクリボンスプール15と共にインクリボンスプール15の回転軸心周りに回転する。
【0034】
インクリボンスプール15の回転には、バネホルダ71の第2円筒部71Bとコイルバネ72のコイル部72Aとの間の摺動摩擦によって抵抗が付される。つまり、クラッチ機構17は、インクリボンロール14に回転抵抗を付している。インクリボン14Aを送り出す(つまり巻き取る)ためのトルクは、クラッチ機構17の回転抵抗によって設定することができる。
【0035】
コイルバネ72のコイル部72Aは、第1回転方向にバネホルダ71が回転した際に拡径し、第1回転方向とは反対の第2回転方向にバネホルダ71が回転した際に縮径するようにバネホルダ71に巻回されている。
【0036】
したがって、インクリボン14Aが引き出されることによってインクリボンスプール15が第1回転方向に回転すると、コイル部72Aが拡径するため、コイル部72Aと第2円筒部71Bとの間の摺動摩擦が小さくなる。その結果、インクリボンスプール15の回転抵抗が小さくなる。
【0037】
一方、インクリボンスプール15の回転数が小さくなると、コイル部72Aが縮径するため、インクリボンスプール15の回転抵抗が大きくなる。インクリボンスプール15の回転が停止すると、コイル部72Aと第2円筒部71Bとの間の摺動摩擦は、初期状態に戻る。
【0038】
(巻取スプール)
図2に示す巻取スプール16は、インクリボンスプール15の回転軸心と平行な回転軸心周りに回転可能である。
【0039】
巻取スプール16には、第1駆動伝達部20の第2ギア22が軸方向に連結されている。巻取スプール16は、第2ギア22から出力される駆動力によって回転し、印刷後のインクリボン14Aを巻き取る。巻取スプール16は、印刷装置本体100の駆動シャフト105とは駆動連結されない。
【0040】
巻取スプール16は、巻取スプール16の回転軸心と平行な方向(つまり上下方向)において、印刷用テープロール11と離れて配置されている。具体的には、巻取スプール16は、印刷用テープロール11よりも下方に位置する。また、巻取スプール16の少なくとも一部は、上下方向において印刷用テープロール11と重なっている。
【0041】
(第1駆動伝達部)
第1駆動伝達部20は、インクリボンスプール15から巻取スプール16へ駆動力を伝達する。第1駆動伝達部20は、
図3に示すように、第1ギア21と、第2ギア22と、クラッチバネ23とを有する。
【0042】
印刷用テープロール11、第1駆動伝達部20、及びインクリボンロール14は、上下方向において、印刷用テープロール11、第1駆動伝達部20、及びインクリボンロール14の順に並んで配置されている。つまり、第1駆動伝達部20は、上下方向において、印刷用テープロール11とインクリボンロール14との間に位置する。
【0043】
(第1ギア)
第1ギア21は、外歯ギアであり、インクリボンスプール15から駆動力が入力される入力回転部である。第1ギア21は、インクリボンスプール15の回転を第2ギア22に伝達する。
【0044】
第1ギア21の回転軸心は、インクリボンスプール15の回転軸心と平行である。具体的には、第1ギア21は、インクリボンスプール15と同軸上に配置されている。第1ギア21は、外歯ギアを構成するギア本体21Aと、ギア本体21Aから下方に延伸する軸部21Bとを有する。
【0045】
軸部21Bの下端部は、インクリボンスプール15の内部に挿入され、インクリボンスプール15と連結されている。なお、軸部21Bは、クラッチ機構17とは連結されていない。つまり、第1ギア21は、クラッチ機構17のコイルバネ72による回転抵抗を直接受けない。
【0046】
第1ギア21の少なくとも一部は、上下方向においてインクリボンロール14及び巻取スプール16と重なっている。
【0047】
(第2ギア)
第2ギア22は、外歯ギアであり、巻取スプール16へ駆動力を出力する出力回転部である。第2ギア22は、第1ギア21に直接係合し、第1ギア21から伝達された回転を巻取スプール16に伝達する。
【0048】
第2ギア22の回転軸心は、第1ギア21の回転軸心及び巻取スプール16の回転軸心と平行である。具体的には、第2ギア22は、巻取スプール16と同軸上に配置されている。
【0049】
第2ギア22は、外歯ギアを構成するギア本体22Aと、ギア本体22Aから下方に延伸する軸部22Bとを有する。軸部22Bの下端部は、巻取スプール16の内部に挿入され、巻取スプール16と連結されている。
【0050】
下記式(1)が満たされる場合、第1ギア21及び第2ギア22は、巻取スプール16におけるインクリボン14Aの巻取速度(つまり巻取スプール16の周速)をインクリボンスプール15におけるインクリボン14Aの搬送速度(つまりインクリボンスプール15の周速)よりも大きくする増速機構を構成する。
D1/Z1<D2/Z2 ・・・(1)
【0051】
上記式(1)中、D1は、インクリボンロール14の初期状態(つまり使用前の状態)における外径である。D2は、巻取スプール16の巻取部分(つまりインクリボン14Aが巻回される部位)の外径である。Z1は、第1ギア21の歯数である。Z2は、第2ギア22の歯数である。
【0052】
第1駆動伝達部20に増速機構が含まれる場合、第2ギア22の径は、第1ギア21の径よりも小さくされる。増速機構によって、適切な速度でインクリボン14Aの巻取(つまりインクリボン14Aの送り出し)を行うことができる。
【0053】
(クラッチバネ)
クラッチバネ23は、第2ギア22及び巻取スプール16に回転抵抗を付している。クラッチバネ23の回転抵抗によって、印刷用カセット10内で搬送されるインクリボン14Aにテンションを加えることができる。
【0054】
クラッチバネ23は、第2ギア22に取り付けられている。具体的には、クラッチバネ23は、
図5に示すように、第2ギア22の軸部22Bの外周面に巻回されたコイル状のバネである。クラッチバネ23は、第1回転方向に第2ギア22が回転した際に拡径し、第1回転方向とは反対の第2回転方向に第2ギア22が回転した際に縮径する。
【0055】
また、クラッチバネ23は、巻取スプール16の内周面に係合している。そのため、クラッチバネ23は、巻取スプール16の回転時に、その回転方向に対応して拡径又は縮径する。
【0056】
第2ギア22と共に巻取スプール16が第1回転方向に回転すると、クラッチバネ23が拡径し、クラッチバネ23と軸部22Bとの間の摺動摩擦が小さくなる。その結果、巻取スプール16の回転抵抗が小さくなる。一方、巻取スプール16の回転数が小さくなると、クラッチバネ23が縮径し、巻取スプール16の回転抵抗が大きくなる。
【0057】
(第2駆動伝達部)
図2に示す第2駆動伝達部30は、印刷用カセット10が印刷装置本体100に装着された際に、駆動シャフト105から入力された駆動源107の駆動力を、印刷用テープ11Aの搬送に供される駆動力としてプラテンローラ103に出力する。第2駆動伝達部30は、出力ギア31と、入力ギア32と、アイドルギア33とを有する。
【0058】
図3に示すように、印刷用テープロール11、第2駆動伝達部30、及びインクリボンロール14は、上下方向において、印刷用テープロール11、第2駆動伝達部30及びインクリボンロール14の順に並んで配置されている。つまり、第2駆動伝達部30は、上下方向において、印刷用テープロール11とインクリボンロール14との間に位置する。
【0059】
(出力ギア)
図2に示す出力ギア31は、印刷用テープ11Aを搬送するための駆動力を外部に出力するための外歯ギアである。具体的には、出力ギア31は、印刷装置本体100のプラテンギア104に駆動力を出力する。
【0060】
出力ギア31の回転軸心は、インクリボンスプール15の回転軸心と平行である。出力ギア31は、印刷用カセット10が印刷装置本体100に装着された状態(つまり、ケース40がカセット収納部101に収納された状態)で、プラテンギア104に係合する。出力ギア31の少なくとも一部は、上下方向において、印刷用テープロール11と重なっ
ている。
【0061】
(入力ギア)
入力ギア32は、アイドルギア33を介して出力ギア31と間接的に係合し、外部から入力された駆動力を出力ギア31に伝達するためのギアである。
【0062】
入力ギア32は、外歯ギア32Aと、外歯ギア32Aの一方の側面に固定されると共に、内周面にスプライン歯を有する円筒状の内歯ギア32Bとを有する。内歯ギア32Bには、駆動シャフト105が係合する。外歯ギア32Aは、内歯ギア32Bに駆動シャフト105を介して入力された駆動源107の駆動力によって、内歯ギア32Bと一体回転する。
【0063】
入力ギア32の回転軸心は、インクリボンスプール15の回転軸心と平行である。入力ギア32の少なくとも一部は、上下方向において、印刷用テープロール11と重なっている。また、入力ギア32の回転軸心は、インクリボンロール14の巻回軸心とずれて配置されている。
【0064】
(アイドルギア)
アイドルギア33は、入力ギア32と出力ギア31とに駆動連結され(つまり係合し)、入力ギア32に入力された駆動力を出力ギア31に伝達する。
【0065】
(ケース)
ケース40は、ヘッド開口41と、第1ケース部42と、第2ケース部43と、第3ケース部44とを有する。
【0066】
ヘッド開口41は、印刷用カセット10が印刷装置本体100に装着された状態で、内部に印刷ヘッド102が配置される空間である。ヘッド開口41において、印刷ヘッド102による印刷用テープ11Aの印刷が行われる。ヘッド開口41は、印刷ヘッド102が下方から挿入可能なように、印刷用カセット10の下方に開口している。
【0067】
印刷用テープ11A及びインクリボン14Aは、ヘッド開口41において左右方向に架け渡される。印刷後の印刷用テープ11Aは、ヘッド開口41を経由して印刷装置1の外部に排出される。
【0068】
図3に示すように、第1ケース部42は、印刷用テープロール11を収納している。第2ケース部43は、第1ケース部42よりも下方に配置され、インクリボンロール14、インクリボンスプール15、及び巻取スプール16を収納している。
【0069】
第3ケース部44は、上下方向において第1ケース部42と第2ケース部43との間に配置され、第1駆動伝達部20及び第2駆動伝達部30それぞれの少なくとも一部を収納している。
【0070】
第1ケース部42内で印刷用テープロール11から引き出された印刷用テープ11Aは、螺旋を描くように第3ケース部44を通過して、第2ケース部43に搬送される。第2ケース部43に到達した印刷用テープ11Aは、ヘッド開口41を通過して印刷用カセット10及び印刷装置本体100の外部へ排出される。
【0071】
<印刷装置本体によるテープ搬送及び印刷>
印刷用カセット10が印刷装置本体100に装着された状態で、印刷ヘッド102は、ヘッド開口41において、印刷用テープ11A及びインクリボン14Aと前後方向に重な
る。
【0072】
印刷用テープロール11から引き出された印刷用テープ11Aは、プラテンローラ103によってヘッド開口41に搬送されると共に、ヘッド開口41においてインクリボン14Aと重ね合わされる。
【0073】
この状態で、印刷用テープ11Aは、プラテンローラ103によって発熱素子が発熱した印刷ヘッド102に押し付けられる。これにより、インクリボン14Aの表面に配置されたインクの一部が印刷用テープ11Aに転写され、印刷用テープ11Aに文字、記号等が印刷される。
【0074】
プラテンローラ103は、印刷後の印刷用テープ11Aを印刷用カセット10内から外部に向けて搬送する。プラテンローラ103は、出力ギア31と係合されたプラテンギア104によって回転する。プラテンローラ103及びプラテンギア104は、印刷用カセット10と離れた位置と、プラテンギア104が出力ギア31に係合した位置との間で揺動可能である。
【0075】
印刷用カセット10のケース40がカセット収納部101に挿入された状態では、駆動シャフト105が入力ギア32に係合すると共にプラテンギア104が出力ギア31に係合する。
【0076】
具体的には、駆動シャフト105が印刷用カセット10の巻取スプール16及び入力ギア32に挿入された状態で、プラテンローラ103及びプラテンギア104が印刷用カセット10のヘッド開口41に向けて揺動することで、プラテンギア104が出力ギア31に係合する。
【0077】
印刷用カセット10が装着された状態で駆動シャフト105により入力ギア32が回転されることで出力ギア31が回転される。さらに、出力ギア31の回転によりプラテンギア104が回転し、プラテンギア104の回転によりプラテンローラ103が回転する。
【0078】
つまり、駆動源107は、駆動シャフト105を介して入力ギア32に駆動力を入力する。また、プラテンローラ103は、出力ギア31から出力される駆動力によって印刷用テープ11Aを搬送する。
【0079】
また、インクリボン14Aが印刷用テープ11Aと共に搬送されることにより、インクリボンスプール15が回転する。その結果、第1駆動伝達部20を介してインクリボンスプール15に駆動連結された巻取スプール16が回転する。これにより、印刷後のインクリボン14Aが巻取スプール16に巻き取られる。
【0080】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)インクリボン14Aの引き出しに伴うインクリボンスプール15の回転力を利用して巻取スプール16を回転させることができる。これにより、巻取スプール16を印刷装置本体100の駆動シャフト105に係合させる必要がなくなる。そのため、印刷用カセット10内での巻取スプール16の配置における制約が低減できる。
【0081】
(1b)インクリボンスプール15の少なくとも一部及び巻取スプール16の少なくとも一部が上下方向において印刷用テープロール11と重なることで、印刷用カセット10の左右方向及び前後方向の寸法を小さくできる。
【0082】
(1c)第1駆動伝達部20が第1ギア21と、第1ギア21に係合する第2ギア22とで構成されることで、印刷用カセット10内に配置される部品の数を低減することができる。
【0083】
(1d)クラッチバネ23が第2ギア22に取り付けられることで、インクリボン14Aの巻取トルクを印刷用カセット10ごとに設定できる。
【0084】
(1e)第2駆動伝達部30によって、印刷用カセット10が収納している印刷用テープ11Aの特性(例えば、幅、厚み、材質等)に合わせた速度でプラテンローラ103を回転させることができる。
【0085】
[2.第2実施形態]
[2-1.構成]
図6に示す印刷用カセット10Aは、第1実施形態の印刷用カセット10に替えて、
図1Bの印刷装置本体100に装着される。
【0086】
印刷用カセット10Aは、第1実施形態の印刷用カセット10から、印刷用テープロール11及び印刷用テープスプール12を取り除いたものである。印刷用カセット10Aは、いわゆるリボンカートリッジである。
【0087】
本実施形態では、印刷装置本体100には、印刷用カセット10Aと共に、印刷用テープを収容したテープカートリッジが装着される。印刷用カセット10Aのヘッド開口41には、テープカートリッジから印刷用テープが供給され、インクリボン14Aと重ね合わされる。
【0088】
また、
図7に示すように、本実施形態では、クラッチバネ23が第2ギア22に替えて第1ギア21に取り付けられている。具体的には、クラッチバネ23が第1ギア21とインクリボンスプール15との連結部分(つまり第1ギア21の軸部21B)に配置されている。
【0089】
[2-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2a)第1実施形態と同様の利点を有したまま、インクカートリッジとテープカートリッジとを任意に組み合わせることができる。
【0090】
(2b)クラッチバネ23が第1ギア21に取り付けられることで、インクリボン14Aの巻取トルクを印刷用カセット10ごとに設定できる。
【0091】
[3.第3実施形態]
[3-1.構成]
図8及び
図9に示す印刷用カセット10Bは、第2実施形態の印刷用カセット10Aの変形例である。
【0092】
印刷用カセット10Bは、第2実施形態の印刷用カセット10Aから第2駆動伝達部30を取り除いたインクカートリッジである。印刷用カセット10Bは、第2実施形態の印刷用カセット10Aとは異なる形状のケース40Bを有する。
【0093】
印刷用カセット10Bは、インクリボンロール14から引き出されたインクリボン14Aを左右方向に架け渡す第1ローラ51及び第2ローラ52を有する。インクリボン14Aは、第1ローラ51及び第2ローラ52の間において、テープカートリッジから供給さ
れる印刷用テープに重ね合わされる。
【0094】
[3-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(3a)第2実施形態と同様の利点を有したまま、印刷用カセット10Bの内部構造を簡潔にできる。
【0095】
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0096】
(4a)上記実施形態の印刷用カセットにおいて、第1駆動伝達部及び第2駆動伝達部は、ギア以外の回転体(例えばローラ又はベルト)を有してもよい。また、第1駆動伝達部は、3以上の回転体を有してもよい。第2駆動伝達部は、2又は4以上の回転体を有してもよい。
【0097】
(4b)上記第1実施形態の印刷用カセットにおいて、第2ギアに加えて、又は第2ギアに替えて、第1ギアにクラッチバネを取り付けてもよい。上記第2実施形態の印刷用カセットにおいて、第1ギアに加えて、又は第1ギアに替えて、第2ギアにクラッチバネを取り付けてもよい。
【0098】
(4c)上記実施形態の印刷用カセットは、必ずしも第2駆動伝達部を備えなくてもよい。
【0099】
(4d)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0100】
1…印刷装置、10,10A,10B…印刷用カセット、11…印刷用テープロール、
11A…印刷用テープ、12…印刷用テープスプール、14…インクリボンロール、
14A…インクリボン、15…インクリボンスプール、16…巻取スプール、
17…クラッチ機構、20…第1駆動伝達部、21…第1ギア、21A…ギア本体、
21B…軸部、22…第2ギア、22A…ギア本体、22B…軸部、
23…クラッチバネ、30…第2駆動伝達部、31…出力ギア、32…入力ギア、
32A…外歯ギア、32B…内歯ギア、33…アイドルギア、40,40B…ケース、
41…ヘッド開口、51,52…ローラ、100…印刷装置本体、
101…カセット収納部、102…印刷ヘッド、103…プラテンローラ、
104…プラテンギア、105…駆動シャフト、107…駆動源、110…筐体。