(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】印刷用カセット及び印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 17/32 20060101AFI20240730BHJP
B41J 3/36 20060101ALI20240730BHJP
B65H 19/12 20060101ALI20240730BHJP
B41J 15/02 20060101ALI20240730BHJP
B41J 15/16 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B41J17/32 A
B41J3/36 T
B65H19/12 B
B41J15/02
B41J15/16
(21)【出願番号】P 2020164716
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田上 裕也
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-240090(JP,A)
【文献】特開昭59-095180(JP,A)
【文献】特開昭60-078778(JP,A)
【文献】米国特許第03672603(US,A)
【文献】実開昭62-185059(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 17/00 - 17/42
B41J 27/00 - 27/22
B41J 31/00 - 35/38
B41J 3/01 - 3/54
B41J 15/00 - 15/24
B65H 19/00 - 19/30
B65H 21/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷用テープの第1ロールと、
前記印刷用テープの印刷が行われるヘッド開口と、
を備え、
前記印刷用テープは、前記第1ロールから前記ヘッド開口に向けて引き出され、
前記ヘッド開口における前記印刷用テープの幅方向と平行な第1方向において、前記第1ロールの少なくとも一部が前記ヘッド開口と異なる位置に配置され、
前記第1ロールの巻回軸心は、前記第1方向に対して傾斜する、印刷用カセット。
【請求項2】
前記印刷用テープは、前記第1方向において前記第1ロールから前記ヘッド開口に近づく方向に引き出される、請求項1に記載の印刷用カセット。
【請求項3】
前記印刷用テープを外部に排出する排出口をさらに備え、
前記第1ロールの前記巻回軸心は、前記排出口での前記印刷用テープの排出方向と直交する仮想面内において前記第1方向に対して傾斜し、
前記第1ロールは、前記第1方向と直交しかつ前記仮想面と平行な第2方向において前記ヘッド開口に近い部位ほど、前記第1方向における前記ヘッド開口との距離が大きくなるように配置される、請求項1又は請求項2に記載の印刷用カセット。
【請求項4】
前記第1ロールが巻回されたスプールをさらに備え、
前記第1方向において、前記印刷用テープの前記第1ロールからの引き出し部分は、前記スプールのうち前記ヘッド開口から最も離れた点よりも前記ヘッド開口に近い、請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の印刷用カセット。
【請求項5】
印刷用テープの第1ロールと、
前記印刷用テープの印刷に供される補助テープの第2ロールと、
を備え、
前記第2ロールの巻回軸心と平行な第1方向において、前記第1ロールの少なくとも一部が前記第2ロールと異なる位置に配置され、
前記印刷用テープは、前記第1ロールから前記補助テープと重なる位置に向けて引き出され、
前記第1ロールの巻回軸心は、前記第1方向に対して傾斜する、印刷用カセット。
【請求項6】
前記印刷用テープは、前記第1ロールから前記第2ロールに近づく方向に引き出される、請求項
5に記載の印刷用カセット。
【請求項7】
前記第1ロールが巻回されたスプールをさらに備え、
前記第1方向において、前記印刷用テープの前記第1ロールからの引き出し部分は、前記スプールのうち前記第2ロールから最も離れた点よりも前記第2ロールに近い、請求項
5又は請求項
6に記載の印刷用カセット。
【請求項8】
前記第1方向に対する前記第1ロールの前記巻回軸心の傾斜角は、前記第1方向と直交する方向に対する前記第1ロールからの引き出し部分における前記印刷用テープの引き出し方向の傾斜角と等しい、請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載の印刷用カセット。
【請求項9】
前記第1ロールから引き出された前記印刷用テープが最初に巻き掛けられるガイド部をさらに備え、
前記第1ロールの径が小さくなるに連れて、前記ガイド部における前記印刷用テープの巻き付け角度が増大する、請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載の印刷用カセット。
【請求項10】
請求項1から請求項
9のいずれか1項に記載の印刷用カセットと、
前記印刷用カセットが装着される印刷装置本体と、
を備える、印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印刷用カセット及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷用テープに印刷を行う印刷装置では、印刷用テープを収容したカセットを印刷装置本体に着脱することで、印刷用テープの交換及び供給が行われる(特許文献1参照)。印刷用テープは、テープロールから印刷が行われるヘッド開口に向かって引き出される。
【0003】
カセットのヘッド開口はテープロールに対し、ヘッド開口における印刷用テープの幅方向において異なる位置に配置される。そのため、印刷用テープは、カセット内において3次元的に搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のカセットにおいて、カセット内での印刷用テープの搬送抵抗が大きくなると、印刷用テープの搬送状態が安定しない。そのため、印刷用テープの印刷品質が低下するおそれがある。
【0006】
本開示の一局面は、印刷用テープを安定して搬送できる印刷用カセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、印刷用テープの第1ロールと、印刷用テープの印刷が行われるヘッド開口と、を備える印刷用カセットである。印刷用テープは、第1ロールからヘッド開口に向けて引き出される。ヘッド開口における印刷用テープの幅方向と平行な第1方向において、第1ロールの少なくとも一部がヘッド開口と異なる位置に配置される。第1ロールの巻回軸心は、第1方向に対して傾斜する。
【0008】
本開示の別の態様は、印刷用テープの第1ロールと、印刷用テープの印刷に供される補助テープの第2ロールと、を備える印刷用カセットである。第2ロールの巻回軸心と平行な第1方向において、第1ロールの少なくとも一部が第2ロールと異なる位置に配置される。印刷用テープは、第1ロールから補助テープと重なる位置に向けて引き出される。第1ロールの巻回軸心は、第1方向に対して傾斜する。
【0009】
本開示の別の態様は、印刷用カセットと、印刷用カセットが装着される印刷装置本体と、を備える印刷装置である。
【0010】
これらのような構成によれば、第1ロールの巻回軸心が第1方向に対して傾斜して配置されることで、第1ロールからヘッド開口又は補助テープと重なる位置への印刷用テープの引き出し抵抗が低減される。その結果、印刷用カセット内において、印刷用テープを安定して搬送できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1Aは、実施形態における印刷装置を示す模式的な斜視図であり、
図1Bは、
図1Aの印刷装置本体を示す模式的な斜視図である。
【
図5】
図5は、
図2Aの印刷用カセットにおける印刷用テープ及びインクリボンの経路を説明する模式図である。
【
図8】
図8は、
図1Aの印刷装置における出力ギアとプラテンギアとの係合状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1Aに示す印刷装置1は、印刷用カセット10と、印刷装置本体100とを備える。印刷装置1は、テープ状の印刷媒体に印刷を行う装置である。
【0013】
本実施形態では、出力ギア21の軸方向を上下方向とし、上下方向と垂直な方向のうち出力ギア21と巻取スプール16とが並ぶ方向を前後方向とし、上下方向と前後方向との双方に垂直な方向を左右方向とする。
【0014】
<印刷装置本体>
印刷装置本体100は、
図1Bに示すように、カセット収納部101と、印刷ヘッド102と、プラテンローラ103と、プラテンギア104と、駆動シャフト105と、駆動源107と、筐体110とを備える。
【0015】
(カセット収納部)
カセット収納部101は、印刷用カセット10が装着される凹部である。カセット収納部101は、印刷用カセット10の位置決め機能を有する。カセット収納部101は、筐体110に設けられている。
【0016】
(印刷ヘッド)
印刷ヘッド102は、カセット収納部101の内部に配置されている。印刷ヘッド102は、個別に発熱が制御される複数の発熱素子を有する。
【0017】
(プラテンローラ)
プラテンローラ103は、カセット収納部101の内部において、印刷ヘッド102と対向するように印刷ヘッド102の近傍に配置されている。プラテンローラ103は、印刷ヘッド102に対し、近づく方向又は離れる方向に揺動可能である。プラテンローラ103の回転軸心L1は、上下方向と平行である。
【0018】
(プラテンギア)
プラテンギア104は、プラテンローラ103に連結されている。本実施形態では、プ
ラテンギア104の回転軸心L2は、プラテンローラ103の回転軸心L1と同一線上に配置されている。プラテンギア104は、プラテンローラ103と共に揺動可能である。
【0019】
(駆動シャフト)
駆動シャフト105は、印刷用カセット10の巻取スプール16と入力ギア22とに挿入される。駆動シャフト105は、巻取スプール16と入力ギア22とを回転させる。
【0020】
駆動シャフト105は、カセット収納部101の内部に配置されている。駆動シャフト105の回転軸心L3は、上下方向と平行である。駆動シャフト105は、駆動源107によって回転軸心L3を中心に回転する。
【0021】
(駆動源)
駆動源107は、駆動シャフト105を回転駆動させる。駆動源107としては、例えばモータとギアとを組み合わせた機構が使用できる。
【0022】
<印刷用カセット>
印刷用カセット10は、印刷媒体(つまり印刷用テープ11A)を格納している。印刷用カセット10は、印刷装置本体100への装着及び印刷装置本体100からの脱離が可能である。印刷用カセット10の交換により、印刷媒体の補給、及び印刷媒体の種類(例えば、サイズ、色、材質等)の変更ができる。
【0023】
印刷用カセット10は、
図2A,2B,2Cに示すように、印刷用テープ11Aの少なくとも一部及びインクリボン14A(補助テープの一例)の少なくとも一部が収容されるケース35を備える。
【0024】
印刷用カセット10の外形(つまり、ケース35の形状)は、上下方向に平行な辺と、前後方向に平行な辺と、左右方向に平行な辺とを有する直方体状である。ケース35は、下方に向かってカセット収納部101へ挿入される。ケース35は、第1蓋部31と、第1枠部32と、第2枠部33と、第2蓋部34とを有する。
【0025】
印刷用カセット10は、
図3A,3Bに示すように、第1ロール11と、第1供給スプール12と、第2ロール14と、第2供給スプール15と、巻取スプール16と、クラッチバネホルダ17と、伝達機構20とを備える。
【0026】
(第1ロール)
第1ロール11は、印刷が行われる印刷用テープ11Aを第1供給スプール12に巻回したものである。印刷用テープ11Aの表面には、印刷装置本体100の印刷ヘッド102及びインクリボン14Aによって印刷が行われる。印刷用テープ11Aは、第1ロール11からヘッド開口33Bに向けて引き出される。
【0027】
(第1供給スプール)
第1供給スプール12は、回転軸心L4周りに回転可能である。第1供給スプール12は、印刷装置本体100のプラテンローラ103による印刷用テープ11Aの搬送に伴って回転することで、印刷用テープ11Aを印刷ヘッド102に供給する。
【0028】
第1供給スプール12の回転軸心L4は、第1ロール11の巻回軸心と一致する。第1供給スプール12の回転軸心L4及び第1ロール11の巻回軸心は、上下方向に対して傾斜している。
【0029】
(第2ロール)
第2ロール14は、印刷用テープ11Aの印刷に用いられるインクリボン14Aを第2供給スプール15に巻回したものである。
【0030】
インクリボン14Aは、ヘッド開口33Bにおいて、印刷用テープ11Aと重ね合わされ、印刷ヘッド102による印刷に供される。印刷に使用されたインクリボン14Aは、巻取スプール16に巻き取られる。
【0031】
第2ロール14には、クラッチバネホルダ17に保持されたクラッチバネ(図示省略)によって回転抵抗が付される。第2ロール14の少なくとも一部は、上下方向において、第1ロール11と重なる位置に配置されている。
【0032】
(第2供給スプール)
第2供給スプール15は、回転軸心L5周りに回転可能である。第2供給スプール15の回転軸心L5は、上下方向と平行である。第2供給スプール15は、インクリボン14Aの巻取スプール16による巻き取りに伴って回転することで、インクリボン14Aを印刷ヘッド102に供給する。
【0033】
(巻取スプール)
巻取スプール16は、回転軸心L6周りに回転可能である。巻取スプール16の回転軸心L6は、第2供給スプール15の回転軸心L5と平行である。
【0034】
巻取スプール16は、円筒状であり、内周面16Aで規定される中空部を有する。巻取スプール16の内周面16Aにはスプライン歯16Bが設けられている。スプライン歯16Bには、印刷装置本体100の駆動シャフト105が連結される。巻取スプール16は、駆動シャフト105によって回転され、インクリボン14Aを巻き取る。
【0035】
(伝達機構)
伝達機構20は、印刷用カセット10が印刷装置本体100に装着された際に、駆動シャフト105から伝達される駆動源107の駆動力をプラテンローラ103に伝達すると共に、プラテンローラ103を印刷用カセット10ごとに設定された回転速度で回転させる。伝達機構20は、出力ギア21と、入力ギア22と、アイドルギア23とを有する。
【0036】
第1ロール11、伝達機構20、及び第2ロール14は、上下方向において、第1ロール11、伝達機構20、及び第2ロール14の順に並んで配置されている。つまり、伝達機構20は、上下方向において、第1ロール11と第2ロール14との間に位置する。
【0037】
(出力ギア)
出力ギア21は、印刷用テープ11Aの搬送に供される駆動力を外部に出力するための外歯ギアである。具体的には、出力ギア21は、印刷装置本体100のプラテンギア104に外部からの駆動力を伝達する。
【0038】
出力ギア21の回転軸心L7は、第2供給スプール15の回転軸心L5と平行である。出力ギア21の全体は、上下方向においてケース35のカバー部32Bと重なっている。また、出力ギア21は、ヘッド開口33Bと連通する空間に一部が露出している。
【0039】
出力ギア21は、印刷用カセット10が印刷装置本体100に装着された状態(つまりケース35がカセット収納部101に収納された状態)で、ヘッド開口33Bと連通した空間においてプラテンギア104に係合する。
【0040】
(入力ギア)
入力ギア22は、アイドルギア23を介して出力ギア21と間接的に係合し、駆動力を出力ギア21に伝達する。
【0041】
入力ギア22は、外歯ギア22Aと、外歯ギア22Aの一方の側面に固定されると共に、内周面にスプライン歯を有する円筒状の内歯ギアであるスプール22Bとを有する。外歯ギア22Aは、スプール22Bに入力された駆動源107の駆動力によってスプール22Bと一体回転する。
【0042】
入力ギア22の回転軸心L8(つまり、外歯ギア22Aの回転軸心、及びスプール22Bの回転軸心)は、巻取スプール16の回転軸心L6と同一線上に配置されている。
図4に示すように、巻取スプール16、入力ギア22、及び第1ロール11は、上下方向において、巻取スプール16、入力ギア22、及び第1ロール11の順に並んで配置されている。
【0043】
つまり、入力ギア22は、上下方向において、巻取スプール16と第1ロール11との間に位置する。また、入力ギア22の少なくとも一部は、上下方向において、第1ロール11と重なる位置に配置されている。
【0044】
入力ギア22の回転軸心L8は、上下方向において、巻取スプール16の中空部と重なる。そのため、印刷用カセット10が印刷装置本体100に装着された状態では、駆動シャフト105が巻取スプール16と入力ギア22とに同時に挿通される。その結果、入力ギア22は、巻取スプール16と直接連結はされないが、巻取スプール16と共に駆動シャフト105によって回転される。
【0045】
(アイドルギア)
図3A,3Bに示すアイドルギア23は、入力ギア22と出力ギア21とに駆動連結され(つまり係合し)、入力ギア22に入力された駆動力を出力ギア21に伝達する。
【0046】
アイドルギア23は、入力ギア22に係合した上流ギア23Aと、出力ギア21に係合した下流ギア23Bとが同軸上に並んで配置された段ギアである。下流ギア23Bは、上流ギア23Aよりも径が小さい。また、下流ギア23Bは、上下方向において、上流ギア23Aよりも第1ロール11に近い位置(つまり上方)に配置されている。
【0047】
アイドルギア23は、入力ギア22に入力された駆動力の回転速度を減速して出力ギア21に伝達する。つまり、伝達機構20は、入力ギア22の回転速度を出力ギア21の回転速度で除した伝達比を減速比とする減速機構を含んでいる。
【0048】
(ケース)
図3A,3Bに示すように、第1蓋部31は、印刷用カセット10の上端部を構成している。第1枠部32は、第1蓋部31の下方に配置され、第1蓋部31と上下方向に連結されている。第2枠部33は、第1枠部32の下方に配置され、第1枠部32と上下方向に連結されている。第2蓋部34は、印刷用カセット10の下端部を構成している。第2蓋部34は、第2枠部33と上下方向に連結されている。
【0049】
第1蓋部31と第1枠部32とは、第1ロール11を収容する第1収容部41を構成している。つまり、第1ロール11は、第1蓋部31と第1枠部32とで囲まれた空間に配置されている。
【0050】
第2蓋部34と第2枠部33とは、第2ロール14、第2供給スプール15、及び巻取スプール16を収容する第2収容部42を構成している。つまり、第2ロール14、第2
供給スプール15、及び巻取スプール16は、第2蓋部34と第2枠部33とで囲まれた空間に配置されている。
【0051】
第1枠部32と第2枠部33とは、出力ギア21の一部、入力ギア22、及びアイドルギア23を収容する第3収容部43を構成している。つまり、出力ギア21の一部、入力ギア22、及びアイドルギア23は、第1枠部32と第2枠部33とで囲まれた空間に配置されている。第3収容部43は、上下方向において第1収容部41と第2収容部42との間に配置されている。
【0052】
第1蓋部31は、第1側壁31Aを有する。第1側壁31Aは、印刷用カセット10の上下方向と平行な側面を構成すると共に、第1ロール11と、第1枠部32のロール保持部32Cとを第1ロール11の径方向外側から囲っている。
【0053】
第1枠部32は、第2側壁32Aと、カバー部32Bと、ロール保持部32Cと、第1ギア支持部32Dと、第2ギア支持部32Eと、第3ギア支持部32Fとを有する。
第2側壁32Aは、印刷用カセット10の上下方向と平行な側面を構成する。
【0054】
カバー部32Bは、上下方向と垂直な表面を有する部位である。カバー部32Bは、上下方向において出力ギア21と重なる位置に配置されている。本実施形態では、カバー部32Bは、第2側壁32Aの下端部と連続して設けられ、第1枠部32の右前方の角部に配置されている。
【0055】
ロール保持部32Cは、第1ロール11及び第1供給スプール12を保持する円筒状の部位である。ロール保持部32Cは、第2側壁32Aよりも上方に突出している。ロール保持部32Cには、周方向の一部に切欠き32Gが設けられている。
【0056】
切欠き32Gを介して、印刷用テープ11Aはロール保持部32Cの外側に引き出される。本実施形態では、切欠き32Gは、ロール保持部32Cのうち第1ロール11よりも右側の部位に設けられ、第1側壁31Aの右側の内面と対向している。
【0057】
ロール保持部32Cの外周面のうち切欠き32Gから連続する部分は、第1ロール11から引き出された印刷用テープ11Aが最初に巻き掛けられる第1ガイド部32Hを構成している。
【0058】
第1ギア支持部32Dは、出力ギア21を回転可能に支持する。第2ギア支持部32Eは、入力ギア22を回転可能に支持する。第3ギア支持部32Fは、アイドルギア23を回転可能に支持する。
【0059】
第2枠部33は、第3側壁33Aと、ヘッド開口33Bと、排出口33Cと、第2ガイド部33Dとを有する。
第3側壁33Aは、印刷用カセット10の上下方向と平行な側面を構成する。
【0060】
ヘッド開口33Bは、第3側壁33Aの一部を切り欠いた部位である。ヘッド開口33Bは、印刷用カセット10が印刷装置本体100に装着された状態で、内部に印刷ヘッド102が配置される空間である。
【0061】
ヘッド開口33Bにおいて、印刷ヘッド102による印刷用テープ11Aの印刷が行われる。ヘッド開口33Bは、印刷ヘッド102が下方から挿入可能なように、印刷用カセット10の下方に開口している。
【0062】
図5に示すように、ヘッド開口33Bにおいて、印刷用テープ11A及びインクリボン14Aが左右方向に架け渡される。印刷用テープ11Aは、ヘッド開口33Bにおいてケース35の外部に露出すると共に、インクリボン14Aと重なる。印刷後の印刷用テープ11Aは、排出口33Cから印刷装置1の外部に排出される。
【0063】
ヘッド開口33B及び排出口33Cは、上下方向において第1ロール11と離れた位置(具体的には下方)に配置されている。出力ギア21は、上下方向において、ヘッド開口33B又は排出口33Cと、第1ロール11との間に配置されている。
【0064】
また、第2ロール14の少なくとも一部は、上下方向と直交する方向において、ヘッド開口33B及び排出口33Cと重なっている。つまり、第2ロール14の少なくとも一部は、上下方向においてヘッド開口33B及び排出口33Cと同じ位置に存在する。
【0065】
第2ガイド部33Dは、ロール保持部32Cから引き出された印刷用テープ11Aが巻き掛けられる部位である。第2ガイド部33Dは、第2ロール14の周方向に沿って離れて配置された複数の板状のリブを有する。複数のリブは、第2ロール14の径方向に突出しており、下方に向かうほど突出量(つまり板幅)が小さくなる。
【0066】
(第1ロールの配置)
図3A,3Bに示すように、ヘッド開口33Bにおける印刷用テープ11Aの幅方向と平行な方向(つまり上下方向)において、第1ロール11の少なくとも一部は、ヘッド開口33B及び第2ロール14と異なる位置に配置されている。
【0067】
具体的には、第1ロール11は、上下方向と直交する方向において、ヘッド開口33B及び第2ロール14の双方と重ならない位置に配置されている。つまり、第1ロール11の下端は、ヘッド開口33Bの上端及び第2ロール14の上端よりも上方に位置する。
【0068】
図6Aに示すように、第1ロール11の巻回軸心(つまり第1供給スプール12の回転軸心L4)は、排出口33Cでの印刷用テープ11Aの排出方向(つまり右方向)と直交する第1仮想面S1(
図6B参照)内において上下方向に対して傾斜している。
【0069】
第1ロール11は、上下方向と直交しかつ第1仮想面S1と平行な方向(つまり前後方向)においてヘッド開口33Bに近い部位ほど、上下方向におけるヘッド開口33Bとの距離が大きくなるように配置される。つまり、第1ロール11は、後部が前部よりも下方に位置するように傾斜して配置されている。
【0070】
第1ロール11から引き出される印刷用テープ11Aは、切欠き32Gを介してロール保持部32Cの外側に送り出される。そのため、印刷用テープ11Aの第1ロール11からの引き出し部分11Bは、第1ロール11の径方向において切欠き32Gと重なる領域に存在する。
【0071】
上下方向において、引き出し部分11Bは、第1供給スプール12の最上点12A(
図6B参照)よりもヘッド開口33B及び第2ロール14に近い。つまり、引き出し部分11Bは、第1供給スプール12の最上点12Aよりも下方に位置する。
【0072】
最上点12Aは、第1供給スプール12のうちヘッド開口33B及び第2ロール14から上下方向において最も離れた点である。最上点12Aは、第1供給スプール12の回転軸心L4と前後方向に重なると共に、回転軸心L4よりも前方に位置する。
【0073】
印刷用テープ11Aは、上下方向において第1ロール11からヘッド開口33B及び第
2ロール14に近づく方向(つまり下方)に引き出される。具体的には、第1ロール11からの引き出し部分11Bにおける印刷用テープ11Aの引き出し方向Dは、下後方である。
【0074】
上下方向に対する第1ロール11の巻回軸心の傾斜角(つまり上下方向と第1ロール11の巻回軸心とがなす鋭角)θ1は、上下方向と直交する方向(例えば前後方向)に対する印刷用テープ11Aの引き出し方向Dの傾斜角(つまり前後方向と引き出し方向Dとがなす鋭角)θ2と等しい。つまり、引き出し方向Dは、第1ロール11の巻回軸心と直交する第2仮想面S2と平行である。
【0075】
図6Aに示すように、第1ロール11から引き出された印刷用テープ11Aは、螺旋を描くように第1ガイド部32Hに第1ロール11の径方向外側から当接しながら下後方に向かって搬送される。
【0076】
このとき、印刷用テープ11Aが消費されて第1ロール11の径が小さくなるに連れて、第1ガイド部32Hにおける印刷用テープ11Aの巻き付け角度が増大する。つまり、第1ロール11の径が小さくなるほど、印刷用テープ11Aと第1ガイド部32Hとの摺動面積が大きくなる。
【0077】
第1ガイド部32Hにガイドされた印刷用テープ11Aは、さらに
図6Bに示すように、第3収容部43を上下方向に跨ぎつつ、左下方に向かって搬送される。
【0078】
第2収容部42に到達した印刷用テープ11Aは、
図7Aに示すように、第2ガイド部33Dに径方向外側から当接しながら下前方に向かって搬送される。印刷用カセット10の下端部に到達した印刷用テープ11Aは、
図7Bに示すように、ヘッド開口33Bを通過して排出口33Cから右方に排出される。
【0079】
<印刷装置本体によるテープ搬送及び印刷>
印刷用カセット10が印刷装置本体100に装着された状態で、印刷ヘッド102は、ヘッド開口33Bにおいて、印刷用テープ11A及びインクリボン14Aと前後方向に重なる位置に配置される。
【0080】
印刷用テープ11Aは、プラテンローラ103によってヘッド開口33Bに搬送されると共に、プラテンローラ103によってインクリボン14Aを介して発熱素子が発熱した印刷ヘッド102に押し付けられる。これにより、インクリボン14Aの表面に配置されたインクの一部が印刷用テープ11Aに転写され、印刷用テープ11Aに文字、記号等が印刷される。
【0081】
プラテンローラ103は、印刷後の印刷用テープ11Aを印刷用カセット10内から外部に向けて搬送する。プラテンローラ103は、出力ギア21と係合されたプラテンギア104によって回転する。プラテンローラ103及びプラテンギア104は、印刷用カセット10と離れた位置と、
図8に示すプラテンギア104が出力ギア21に係合した位置との間で揺動可能である。
【0082】
印刷用カセット10のケース35がカセット収納部101に挿入された状態では、駆動シャフト105が入力ギア22に係合すると共にプラテンギア104が出力ギア21に係合する。
【0083】
具体的には、駆動シャフト105が印刷用カセット10の巻取スプール16及び入力ギア22に挿入された状態で、プラテンローラ103及びプラテンギア104が印刷用カセ
ット10のヘッド開口33Bに向けて揺動することで、プラテンギア104が出力ギア21に係合する。
【0084】
印刷用カセット10が装着された状態で駆動シャフト105により入力ギア22が回転されることで出力ギア21が回転される。さらに、出力ギア21の回転によりプラテンギア104が回転し、プラテンギア104の回転によりプラテンローラ103が回転する。
【0085】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)第1ロール11の巻回軸心が上下方向に対して傾斜して配置されることで、第1ロール11からヘッド開口33B(つまりインクリボン14Aと重なる位置)への印刷用テープ11Aの引き出し抵抗が低減される。その結果、印刷用カセット10内において、印刷用テープ11Aを安定して搬送できる。
【0086】
(1b)印刷用テープ11Aが上下方向において第1ロール11からヘッド開口33B及び第2ロール14に近づく方向に引き出されることで、印刷用テープ11Aの引き出し抵抗の低減効果を高めることができる。
【0087】
(1c)印刷用テープ11Aの引き出し部分11Bが第1供給スプール12の最上点12Aよりも下方に位置することで、印刷用テープ11Aの引き出し抵抗の低減効果を高めることができる。
【0088】
(1d)第1ロール11の後部が前部よりも下方に位置するように第1ロール11の巻回軸心が傾斜することで、引き出し抵抗を低減しつつ、印刷用テープ11Aの経路を短縮することができる。
【0089】
(1e)上下方向に対する第1ロール11の巻回軸心の傾斜角θ1が前後方向に対する印刷用テープ11Aの引き出し方向Dの傾斜角θ2と等しいことで、印刷用テープ11Aの幅方向における圧縮応力又は引張応力の発生を抑制できる。その結果、印刷用テープ11Aの搬送の安定性を高めることができる。
【0090】
(1f)第1ロール11の径が小さくなるに連れて第1ガイド部32Hにおける印刷用テープ11Aの巻き付け角度が増大することで、第1ロール11の径が小さくなることによるトルクの減少が、第1ガイド部32Hにおける摩擦の増大によって相殺される。その結果、印刷用テープ11Aの搬送の安定性を高めることができる。
【0091】
[2.第2実施形態]
[2-1.構成]
図9A,9Bに示す印刷用カセット10Aは、
図2Aの印刷用カセット10における第1ロール11及び第1供給スプール12の配置を変更したものである。なお、
図9A,9Bでは、伝達機構、第1蓋部及び第1枠部の図示は省略されている。
【0092】
印刷用カセット10Aでは、第1ロール11の巻回軸心(つまり第1供給スプール12の回転軸心L4)は、上下方向と直交し、左右方向と平行である。また、第1ロール11は、ヘッド開口33B及び第2ロール14の左側に配置されている。
【0093】
第1ロール11の上部は、上下方向においてヘッド開口33B及び第2ロール14と異なる位置に配置されている。一方、第1ロール11の下部は、上下方向と直交する方向においてヘッド開口33B及び第2ロール14と重なっている。具体的には、第1ロール11の巻回軸心よりも下側の部位は、上下方向においてヘッド開口33B及び第2ロール1
4と同じ位置にある。
【0094】
また、第1ロール11の少なくとも一部は、上下方向と直交する方向において出力ギア21と重なっている。具体的には、第1ロール11の上端部は、出力ギア21よりも上方に位置し、第1ロール11の下端部は、出力ギア21よりも下方に位置する。
【0095】
印刷用テープ11Aの第1ロール11からの引き出し部分は、第1供給スプール12の最上点12Aよりも下方に位置する。また、印刷用テープ11Aの第1ロール11から引き出し方向は、上下方向と平行である。
【0096】
[2-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2a)第1ロール11の少なくとも一部が上下方向と直交する方向においてヘッド開口33B、第2ロール14及び出力ギア21と重なることで、第1ロール11の配置の自由度を高めることができると共に、印刷用テープ11Aの搬送経路を短くすることができる。
【0097】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0098】
(3a)上記実施形態の印刷装置は、インクリボンを用いて印刷するものに限定されない。印刷装置は、印刷用テープの代わりとして帯状の感熱紙を用いてもよい。つまり、印刷用カセットは、必ずしもインクリボンを備えなくてもよい。
【0099】
また、印刷装置は、サーマルヘッドによって印刷パターンの穿孔が行われるステンシルテープを印刷用テープとして用いてもよい。印刷用テープとしてステンシルテープが用いられる場合は、インクリボンに変えて、ステンシルテープを保護する合紙テープが補助テープとして用いられる。
【0100】
この場合、ヘッド開口において、合紙テープはステンシルテープよりも印刷ヘッドに近い位置でステンシルテープに重ね合わせられてもよいし、合紙テープはステンシルテープよりも印刷ヘッドから離れた位置でステンシルテープに重ね合わせられてもよい。
【0101】
(3b)上記実施形態の印刷用カセットにおいて、印刷用テープは、必ずしも上下方向において第1ロールからヘッド開口及び第2ロールに近づく方向に引き出されなくてもよい。例えば、印刷用テープは、第1ロールから上方に引き出されてもよい。
【0102】
(3c)上記実施形態の印刷用カセットにおいて、上下方向に対する第1ロールの巻回軸心の傾斜角は、上下方向と直交する方向に対する印刷用テープの引き出し方向の傾斜角と異なっていてもよい。
【0103】
(3d)第1実施形態の印刷用カセットにおいて、第1ロールの巻回軸心は、必ずしも左右方向と直交する仮想面内において傾斜しなくてもよい。例えば、第1ロールの巻回軸心は、前後方向と直交する仮想面内において傾斜してもよい。
【0104】
また、第2実施形態の印刷用カセットにおいて、第1ロールの巻回軸心は、必ずしも左右方向と平行でなくてもよい。例えば、第1ロールの巻回軸心は、前後方向と平行であってもよい。
【0105】
(3e)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0106】
1…印刷装置、10…印刷用カセット、11…第1ロール、11A…印刷用テープ、
12…第1供給スプール、12A…最上点、14…第2ロール、
14A…インクリボン、15…第2供給スプール、16…巻取スプール、
20…伝達機構、21…出力ギア、22…入力ギア、23…アイドルギア、
31…第1蓋部、32…第1枠部、32C…ロール保持部、32G…切欠き、
32H…第1ガイド部、33…第2枠部、33B…ヘッド開口、33C…排出口、
33D…第2ガイド部、34…第2蓋部、35…ケース、41…第1収容部、
42…第2収容部、43…第3収容部、100…印刷装置本体、
101…カセット収納部、102…印刷ヘッド、103…プラテンローラ、
104…プラテンギア、105…駆動シャフト、107…駆動源、110…筐体。