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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】荷役装置及び荷役装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/22 20060101AFI20240730BHJP
   B66C 13/48 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B66C13/22 V
B66C13/48 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020165396
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057249
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】野▲崎▼ 優介
(72)【発明者】
【氏名】渋川 文哉
(72)【発明者】
【氏名】坂野 肇
(72)【発明者】
【氏名】山崎 峻一
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-071090(JP,A)
【文献】特開昭52-077369(JP,A)
【文献】特開平07-061772(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0232274(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸が床面と平行な円筒形又は円柱形の荷を吊り上げて搬送する荷役装置であって、
前記床面と平行な平面上で移動するトロリーと、
前記トロリーに支持され、前記荷を把持して昇降する把持部と、
前記トロリーの移動範囲内にある構造体に設置され、前記床面の側にある物体までの距離を計測する距離センサと、
前記トロリー及び前記把持部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記荷は、前記床面の側にある前記荷の断面方向としての第1方向において互いに隣り合い、かつ、前記荷の軸方向としての第2方向に沿って各々延伸する2つの枕木を介して前記床面に載置され、
前記制御部は、前記床面の側に前記荷を搬入する場合には、前記距離センサに、前記第1方向に沿った複数の計測点で各々の距離を計測させ、複数の前記計測点のうち予め設定された高さ位置に基づいて前記枕木の位置を特定した後、前記第1方向における2つの前記枕木の中間位置を、搬入対象としての前記荷を載置する位置と決定して、前記トロリーを移動させる位置の候補とする、荷役装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記距離センサに、前記第2方向に沿った複数の計測点で各々の距離を計測させて、前記枕木の前記第2方向の端部を特定し、一方の前記端部と他方の前記端部との中間位置を、前記把持部を昇降させる位置と決定する、請求項に記載の荷役装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、荷役装置及び荷役装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼板コイル等の円筒形の荷を吊り上げて搬送する荷役装置がある。特許文献1は、搬出対象であるコイルに吊り具を位置合わせするときに、例えばTOF(Time-of-Flight)カメラを用いてコイルの形状を画像認識した結果を利用することで、運転者の操作を支援する荷役装置に関する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-43780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されている技術では、荷の形状を画像認識するという処理を要する分、運転者の操作を支援するための制御が高度化する。また、TOFカメラは、一般に撮影距離レンジによって距離分解能が異なる。そのため、鉄板コイルを持ち上げて搬送するような荷役装置では、TOFカメラを用いてコイルの形状を画像認識させようとすると、実際上、おおよそ想定される撮影距離に対して必要な距離分解能を得ることが難しい。特に、特許文献1に開示されている技術では、TOFカメラによりコイルの形状を画像認識できなかった場合も想定されている。つまり、画像認識不能の場合には、運転者の操作を支援するという効果が低減することも考えられる。
【0005】
そこで、本開示は、運転者の操作を支援するための制御の簡易化に有利な荷役装置及び荷役装置の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、中心軸が床面と平行な円筒形又は円柱形の荷を吊り上げて搬送する荷役装置であって、床面と平行な平面上で移動するトロリーと、トロリーに支持され、荷を把持して昇降する把持部と、トロリーの移動範囲内にある構造体に設置され、床面の側にある物体までの距離を計測する距離センサと、トロリー及び把持部の動作を制御する制御部と、を備え、荷は、床面の側にある荷の断面方向としての第1方向において互いに隣り合い、かつ、荷の軸方向としての第2方向に沿って各々延伸する2つの枕木を介して床面に載置され、制御部は、床面の側に荷を搬入する場合には、距離センサに、第1方向に沿った複数の計測点で各々の距離を計測させ、複数の計測点のうち予め設定された高さ位置に基づいて枕木の位置を特定した後、第1方向における2つの枕木の中間位置を、搬入対象としての荷を載置する位置と決定して、トロリーを移動させる位置の候補とする
【0007】
上記の荷役装置では、御部は、距離センサに、第2方向に沿った複数の計測点で各々の距離を計測させて、枕木の第2方向の端部を特定し、一方の端部と他方の端部との中間位置を、把持部を昇降させる位置と決定してもよい。
【0008】
また、本開示の他の態様は、中心軸が床面と平行な円筒形又は円柱形の荷を吊り上げて搬送する荷役装置の運転方法であって、荷を把持して昇降する把持部を支持して床面と平行な平面上で移動するトロリーの移動範囲内にある構造体に設置された距離センサに、床面の側にある荷の断面方向に沿った複数の計測点で各々の距離を計測させる第1計測工程と、第1計測工程で計測された複数の計測点のうち極大値となる位置を特定する極大値特定工程と、極大値特定工程で特定された極大値に基づいて、トロリーを移動させる位置の候補を決定してリスト化する候補リスト生成工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、運転者の操作を支援するための制御の簡易化に有利な荷役装置及び荷役装置の運転方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る荷役装置の構成を示す図である。
図2】建屋内の敷地における複数のコイルの配置例を示す図である。
図3】一実施形態に係る荷役装置の制御ブロック図である。
図4】コイル搬出時の荷役装置の動作の流れを示すフローチャートである。
図5】第1計測工程を実施している荷役装置の状態を説明する図である。
図6】コイル搬出時の第1計測工程で取得された計測データを例示する図である。
図7】第2計測工程で取得された計測データを例示する図である。
図8】コイル搬入時の荷役装置の前半動作の流れを示すフローチャートである。
図9】コイル搬入時の荷役装置の後半動作の流れを示すフローチャートである。
図10】コイル搬入時の第1計測工程で取得された計測データを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。ここで、実施形態に示す寸法、材料、その他、具体的な数値等は例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。また、実質的に同一の機能および構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、本開示に直接関係のない要素については図示を省略する。
【0012】
図1は、一実施形態に係る荷役装置1の構成を示す概略斜視図である。本実施形態における荷役装置1は、工場又は倉庫等の建屋内の上部に設置される天井クレーンである。荷役装置1が搬送対象とする荷は、一例として、薄い鋼板が円筒状に巻かれた鉄板コイル(以下、単に「コイル」という)である。複数のコイルCは、建屋内の敷地で一時的に保管される。荷役装置1は、コイルCを吊り上げて移動させることで、別の場所からコイルCを当該敷地に搬入させることができるとともに、当該敷地からコイルCを別の場所へ搬出させることができる。
【0013】
図2は、建屋内の敷地における複数のコイルCの配置例を示す斜視図である。敷地には、XY平面として表される床面100がある。複数のコイルCは、各々のコイルCの中心軸が床面100と平行となる姿勢で、床面100の側に設置される。本実施形態では、複数のコイルCが床面100の側に設置されているとき、各々のコイルCの軸方向は、Y方向に沿っている。また、複数のコイルCが床面100の側に設置されているとき、各々のコイルCは、Y方向に対して垂直なX方向に沿って並ぶ。この場合、コイルCの断面方向は、X方向に沿っている。更に、複数のコイルCは、XY平面に対して垂直なZ方向に沿って2段に積載される。このうち、下段側のコイルCは、それぞれ、一組を構成する2つの棒状の枕木110を介して床面100上に載置される。枕木110の延伸方向は、コイルCの軸方向に沿っている。また、一組を構成する2つの枕木は、コイルCの断面方向で互いに隣り合う。このような枕木110の組は、載置するコイルCの位置決めを行うことができ、また、コイルCの転がりを抑止することができる。一方、上段側のコイルCは、それぞれ、X方向で互いに隣り合う2つの下段側のコイルCに直接支えられながら、下段側のコイルC上に載置される。
【0014】
荷役装置1は、図1に示すように、ガーダー2と、ランウェイ3と、トロリー4と、トング5と、距離センサ6と、運転室7と、制御部8(図3参照)とを備える。
【0015】
ガーダー2は、建屋内の天井付近で、トロリー4を移動自在に支持する構造体である。ガーダー2は、XY平面上の第1方向に沿ってそれぞれ延び、かつ、XY平面上で第1方向とは直交する第2方向で離間しつつ互いに対向する2つの直線状の剛体部を含む。本実施形態では、一例として、第1方向はX方向であり、第2方向はY方向である。この場合、2つの剛体部は、X方向の一方の端部と他方の端部との両側で互いに一体化されている(不図示)。ガーダー2のX方向の少なくとも一方の端部は、モータ等のガーダー用アクチュエータ25(図3参照)を備える。
【0016】
ランウェイ3は、建屋内の天井付近で、ガーダー2を移動自在に支持する走行レーンである。ランウェイ3は、Y方向に沿ってそれぞれ延び、かつ、X方向で離間しつつ互いに対向する2箇所の位置に設置されている。ランウェイ3は、例えば、建屋の壁部に設置される場合もあるし、建屋内の床面100上に設けられた高架台に設置される場合もある。ガーダー2のX方向の一方の端部は、一方のランウェイ3上に位置し、ガーダー2のX方向の他方の端部は、他方のランウェイ3上に位置する。ガーダー用アクチュエータ25が制御部8からの移動指令に基づいて駆動することで、ガーダー2は、ランウェイ3上をY方向に沿って移動することができる。
【0017】
トロリー4は、ガーダー2上で2つの剛体部に支持されながらX方向に沿って移動自在で、かつ、トング5をZ方向に沿って移動自在に支持する構造体である。トロリー4は、モータ等のトロリー用アクチュエータ26(図3参照)を備える。トロリー用アクチュエータ26が制御部8からの移動指令に基づいて駆動することで、トロリー4は、ガーダー2の剛体部上をX方向に沿って移動することができる。ガーダー2は、Y方向に沿って移動することができるので、トロリー4は、XY平面上の目標とする位置に移動することができる。
【0018】
トング5は、コイルCを把持して昇降する把持部である。ここで、トロリー4は、ワイヤーロープ9を介してトング5を吊り上げたり吊り下げたりするための回転ドラム(不図示)と、回転ドラムに回転力を与えるモータ等のトング用アクチュエータ27(図3参照)とを備える。トング用アクチュエータ27が制御部8からの昇降指令に基づいて駆動することで、トング5は、トロリー4の高さ位置を基準としてZ方向に沿って移動することができる。
【0019】
また、トング5は、基部10と、一対のアームである第1アーム11a及び第2アーム11bとを備える。基部10は、ワイヤーロープ9に接続され、かつ、第1アーム11a及び第2アーム11bを支持する。第1アーム11a及び第2アーム11bは、それぞれ、基部10からZ方向に沿って下方に延びており、互いにY方向で対向する。第1アーム11aは、基部10のY方向の一方の端部に接続され、第2アーム11bは、基部10のY方向の他方の端部に接続される。第1アーム11a及び第2アーム11bは、それぞれ、Z方向に沿った姿勢を維持しながら、Y方向に沿ってスライドすることができる。
【0020】
第1アーム11aのZ方向下方の端部には、Y方向に沿って第2アーム11bに向かう第1吊り具爪12a(図5参照)が設置されている。第2アーム11bのZ方向下方の端部には、Y方向に沿って第1アーム11aに向かう第2吊り具爪12b(図5参照)が設置されている。つまり、第1吊り具爪12aと第2吊り具爪12bとは、Y方向に沿って互いに対向している。ここで、コイルCの姿勢は、コイルCの軸方向がY方向に沿うように維持されているので、コイルCのコイル孔CHの軸心もY方向に沿っている。そのため、第1アーム11a及び第2アーム11bは、第1吊り具爪12a及び第2吊り具爪12bをコイル孔CHの延長上に位置させた状態で互いに接近することで、第1吊り具爪12a及び第2吊り具爪12bをコイル孔CHに進入させることができる。つまり、第1アーム11a及び第2アーム11bは、互いの接近によりコイルCを把持することができる。以下、第1アーム11a及び第2アーム11bがコイルCを把持する位置にある状態を、アームの閉状態という。一方、第1アーム11a及び第2アーム11bは、互いに離間することで、第1吊り具爪12a及び第2吊り具爪12bをコイル孔CHから退避させて、コイルCの把持を解除することができる。以下、第1アーム11a及び第2アーム11bがコイルCの把持を解除した位置にある状態を、アームの開状態という。トロリー4は、モータ等のコイル把持用アクチュエータ28(図3参照)を備える。コイル把持用アクチュエータ28が制御部8からのアーム開閉指令に基づいて駆動することで、トング5は、アームの開状態と閉状態とを変更することができる。
【0021】
また、不図示であるが、互いに対向する第1吊り具爪12a又は第2吊り具爪12bには、透過型光電センサの発光部又は受光部が設置されてもよい。例えば、第1吊り具爪12aに透過型光電センサの発光部が設置され、第2吊り具爪12bに透過型光電センサの受光部が設置されてもよい。この場合、透過型光電センサによる光の検出信号は、制御部8に伝送される。第1吊り具爪12a及び第2吊り具爪12bがコイル孔CHの近傍にあるとき、コイル孔CHを通る光が検出されれば、制御部8は、第1吊り具爪12a及び第2吊り具爪12bがコイル孔CHの延長上にあることを認識することができる。
【0022】
なお、本実施形態では、コイルCを把持して昇降する把持部として、コイル孔CHに第1吊り具爪12a及び第2吊り具爪12bを係合させた状態で第1アーム11aと第2アーム11bとで挟み込むことでコイルCを把持するトング5を例示している。しかし、コイルCを把持して昇降することができるのであれば、把持部の構成は、このようなものに限らない。例えば、把持部は、コイルCの外周面を直接的に保持するような構成を有するものであってもよい。
【0023】
距離センサ6は、トロリー4の移動範囲内にある少なくともいずれかの構造体に設置され、床面100側にある物体までの距離を計測する。ここで、トロリー4の移動範囲とは、トロリー4がX方向及びY方向で移動することができるXY領域の範囲をいう。トロリー4の移動範囲内にある構造体とは、例えば、トロリー4自体、トング5の基部10、又は、ガーダー2の剛体部をいう。ただし、距離センサ6は、いずれの構造体に設置される場合であっても、下方にある床面100を検出することができる位置に設置される。本実施形態では、距離センサ6は、トロリー4に設置される。この場合、距離センサ6がトロリー4の特に側面の側に設置されるものとすると、トロリー4が支持しているトング5に検出範囲を遮られることがなく、また、トング5がコイルCを把持しているときもコイルCに検出範囲を遮られづらいという利点がある。また、本実施形態では、距離センサ6は、レーザL(図5参照)を用いて距離を計測するレーザ距離センサである。ただし、ある物体までの距離を計測することができるものであれば、距離センサ6の種類等は限定されない。例えば、TOFカメラ等の画像センサを一般にいう距離センサとして代用し、距離センサ6として採用してもよい。
【0024】
運転室7は、ガーダー2の一方の端部に固定され、荷役装置1を運転する運転者を常駐させる。運転室7には、荷役装置1の制御部8やユーザインターフェース20などが設置されている(図3参照)。ユーザインターフェース20は、制御部8から送信された情報を表示することができる。また、ユーザインターフェース20は、運転者が操作する入力部を含み、運転者が入力した指令情報を制御部8へ送信することができる。
【0025】
図3は、荷役装置1における制御の流れを概略的に示す制御ブロック図である。制御部8は、ユーザインターフェース20を介した運転者からの各種指示や、距離センサ6から取得した計測データなどに基づいて、荷役装置1に含まれる各構成要素の動作を制御する。制御部8は、駆動制御部21と、位置演算処理部22とを含む。
【0026】
駆動制御部21は、荷役装置1に含まれる各種アクチュエータに対して動作信号を送信する。まず、入力系統として、駆動制御部21は、以下で詳説する位置演算処理部22より、コイルCの搬出時の搬出対象となるコイルCの位置、又は、コイルCの搬入時の搬入位置を受信することができる。また、駆動制御部21は、ユーザインターフェース20より、運転者が直接的に指定した、各種アクチュエータへ指示する移動位置を受信することができる。次に、出力系統として、駆動制御部21は、ガーダー用アクチュエータ25に対して、ガーダー2の移動目標となる移動位置を指示し、当該移動位置へガーダー2を移動させることができる。駆動制御部21は、トロリー用アクチュエータ26に対して、トロリー4の移動目標となる移動位置を指示し、当該移動位置へトロリー4を移動させることができる。駆動制御部21は、トング用アクチュエータ27に対して、トング5の移動目標となる昇降位置を指示し、当該昇降位置へトング5を移動させることができる。また、駆動制御部21は、コイル把持用アクチュエータ28に対して、トング5におけるアームの所望の開閉状態を指示し、アームを開閉させることができる。
【0027】
位置演算処理部22は、距離センサ6から計測データを取得し、当該計測データに基づいて、コイルCの搬出時の搬出対象となり得るコイルCの候補、又は、コイルCの搬入時の搬入位置となり得る候補を算出することができる。また、位置演算処理部22は、求めた各候補を候補リストとしてまとめ、ユーザインターフェース20に送信することができる。更に、位置演算処理部22は、運転者がユーザインターフェース20上で候補リストから選択した搬出対象のコイルC又はコイルCの搬入位置に関する情報を、ユーザインターフェース20から受信することができる。
【0028】
次に、本実施形態に係る荷役装置1の動作、すなわち、荷役装置1の運転方法について説明する。
【0029】
まず、図4図7を参照し、すでに建屋内の敷地に設置されているコイルCを別の場所に搬出する場合の動作について説明する。図4は、コイルCの搬出時の荷役装置1の動作の流れを示すフローチャートである。制御部8は、運転室7内にいる運転者からの指示により、荷役装置1の運転を開始させる。
【0030】
制御部8は、まず、敷地に設置されている1以上のコイルCのX方向に関する大まかな位置(以下「第1目安位置」という)を特定する(第1目安位置特定工程:ステップS101)。例えば、第1目安位置は、運転者が予め目視により決定し、ユーザインターフェース20を介して制御部8に指示されるものであってもよい。又は、コイルCの配置が予め規定されており、制御部8にデータベースとして登録されている場合には、第1目安位置は、制御部8が当該データベースを参照して自動で特定されるものであってもよい。
【0031】
次に、制御部8は、第1目安位置特定工程で特定された第1目安位置へトロリー4を移動させる(第1計測準備工程:ステップS102)。具体的には、駆動制御部21は、第1目安位置を移動位置として、トロリー用アクチュエータ26に対してトロリー4をX方向に移動させる移動指令を発し、ガーダー用アクチュエータ25に対してガーダー2をY方向に移動させる移動指令を発する。
【0032】
次に、制御部8は、トロリー4に設置されている距離センサ6に対して、コイルCを含む床面100上の領域におけるX方向に沿った複数の計測点で、各々の距離を計測させる(第1計測工程:ステップS103)。本実施形態では、X方向は、床面100の側にあるコイルCの断面方向に沿った方向である。
【0033】
図5は、第1計測工程を実施している荷役装置1の状態を説明する斜視図である。ここでの搬出動作の例では、第1目安位置が設定されている領域に3つのコイルCが設置されているものとする。3つのコイルCのうち、2つのコイルCが、下段側コイルとして互いに隣り合って枕木110上に載置され、残りの1つのコイルCが、上段側コイルとして下段側コイル上に載置されている。また、第1計測工程では、トング5は、一例として、以降のコイル搬出工程(ステップS113)に迅速に移行することができるように、コイルCを把持していないものとする。
【0034】
第1計測工程では、駆動制御部21は、第1目安位置が設定されている領域においてX方向に沿ってトロリー4を移動させる。そして、制御部8は、トロリー4が移動している間、距離センサ6に対して、直下の床面100側までの距離を微小間隔ごとに計測させる。制御部8は、このようなX方向に沿った計測を、ガーダー2をY方向に沿って一定間隔で複数回移動させるごとに繰り返させる。なお、図5では、距離センサ6が、X方向に延伸する1列目の計測が終了し、その後、Y方向にガーダー2を1つの間隔分移動させた後の2列目の計測を行っている状態が示されている。第1計測工程で取得された計測データは、位置演算処理部22に送信される。
【0035】
図6は、第1計測工程で取得された計測データの一例として、X方向に延伸するある1つのデータ列を示す図である。xは、コイルCの断面方向に相当するX方向での計測点の位置である。zは、計測点の高さである。データ列は、複数の計測点での計測値の集合として、点線で示されている。なお、コイルCの搬出動作では、床面100上に載置されている枕木110の位置を考慮しないので、図6に示すデータ列では、枕木110の厳密な高さ位置を無視している。第1目安位置が設定されている領域に、図5に示すように3つのコイルCが設置されているものとすると、データ列には、図6に示すように3つの円弧部分が現れる。これらの3つの円弧部分が、3つのコイルCの各部での高さに対応する。
【0036】
次に、位置演算処理部22は、第1計測工程で取得された計測データを平滑化してノイズ等を除去する(データ平滑化工程:ステップS104)。
【0037】
次に、位置演算処理部22は、データ平滑化工程で平滑化されたデータから極大値となる位置を検出する(極大値検出工程:ステップS105)。具体的には、位置演算処理部22は、平滑化したデータから式(1)及び式(2)を用いて極大値となる位置を算出する。ただし、f(x)は、図6における計測点の高さzに相当する。
【0038】
【数1】
【0039】
【数2】
【0040】
ここで、極大値となる位置は、図6に示すデータ列のうち、丸印で囲まれた3つの部分に相当する。つまり、極大値となる位置は、3つのコイルCの各々の頂点とみなすことができる。このことから、位置演算処理部22は、X方向において、3つの極大値となる位置と、3つのコイルCの各々の中心位置とが合うと仮定する。
【0041】
次に、位置演算処理部22は、極大値検出工程で認定されたコイルCの中心位置に基づいて、搬出対象とし得るコイルCの候補リストを生成する。(候補リスト生成工程:ステップS106)。(表1)は、候補リスト生成工程で生成される候補リストの一例である。ただし、Cは、極大値検出工程で認定されたコイルCの中心位置である。ここでの例であるC~Cは、図6に示す各丸印の位置に相当し、併せて、搬出コイル候補の番号としてそれぞれ対応付けられている。
【0042】
【表1】
【0043】
次に、位置演算処理部22は、候補リスト生成工程で生成された候補リストをユーザインターフェース20に送信して表示させ、運転者に候補リストの中から搬出対象とするコイルCを選択させる。そして、位置演算処理部22は、選択されたコイルCを搬出コイルとして特定する(搬出コイル特定工程:ステップS107)。ここでの例は、位置演算処理部22は、3つのコイルCのうち上段側コイルを搬出コイル(搬出コイル候補C)と特定する。また、位置演算処理部22は、候補リストを参照することで、搬出コイルのX方向の中心位置、すなわち、搬出時のトロリー4のX方向の移動位置を特定することができる(第1移動位置特定工程)。
【0044】
次に、制御部8は、搬出コイル特定工程で特定された搬出コイルの大まかな位置(以下「第2目安位置」という)を特定する(第2目安位置特定工程:ステップS108)。ここで、制御部8は、特に搬出コイルのX方向の位置については、すでに認識している搬出コイルのX方向の中心位置Cを参照することができる。
【0045】
次に、制御部8は、第2目安位置特定工程で特定された第2目安位置へトロリー4を移動させる(第2計測準備工程:ステップS109)。
【0046】
次に、制御部8は、トロリー4に設置されている距離センサ6に対して、搬出コイルを含む床面100上の領域におけるY方向に沿った複数の計測点で、各々の距離を計測させる(第2計測工程:ステップS110)。本実施形態では、Y方向は、床面100の側にある搬出コイルの軸方向に沿った方向である。第2計測工程では、駆動制御部21は、第2目安位置が設定されている領域においてY方向に沿ってガーダー2を移動させる。そして、制御部8は、ガーダー2が移動している間、距離センサ6に対して、直下の床面100側までの距離を微小間隔ごとに計測させる。第2計測工程で取得された計測データは、位置演算処理部22に送信される。
【0047】
図7は、第2計測工程で取得された計測データの一例として、Y方向に延伸するデータ列を示す図である。yは、搬出コイルの軸方向に相当するY方向での計測点の位置である。データ列は、図6と同様に、複数の計測点での計測値の集合として、点線で示されている。
【0048】
次に、位置演算処理部22は、第2計測工程で取得された計測データから、搬出コイルのY方向の端部(エッジ)を検出する(コイル端部検出工程:ステップS111)。ここで、搬出コイルのY方向の端部となる位置は、図7に示すデータ列のうち、丸印で囲まれた2つの部分に相当する。
【0049】
次に、位置演算処理部22は、コイル端部検出工程で検出された搬出コイルの端部となる位置に基づいて、搬出時のトロリー4のY方向の移動位置を特定する(第2移動位置特定工程:ステップS112)。ここで、位置演算処理部22は、例えば式(3)により、Y方向の移動位置を算出することができる。ただし、yCn1は、位置Cにある搬出コイルのY方向の一方の端部の位置であり、yCn2は、位置Cにある搬出コイルのY方向の他方の端部の位置である。この場合、トング5が搬出コイルを把持して持ち上げるときの軸方向の荷重バランスを考慮して、搬出コイルの軸方向の中間位置がトロリー4のY方向の移動位置として設定されることになる。なお、図7では、搬出コイルの軸方向の中間位置yは、三角印が付された位置として示されている。
【0050】
【数3】
【0051】
そして、制御部8は、先の各工程で特定された搬出時のトロリー4の移動位置に基づいてトロリー4を移動させ、最終的に搬出コイルを搬出させる(コイル搬出工程:ステップS113)。具体的には、第1移動位置特定工程において、搬出時のトロリー4のX方向の移動位置が特定されている。一方、第2移動位置特定工程において、搬出時のトロリー4のY方向の移動位置が特定されている。位置演算処理部22は、これら特定されている各方向の移動位置を駆動制御部21に送信する。駆動制御部21は、特定された移動位置にトロリー4が位置するように、トロリー用アクチュエータ26に対してトロリー4をX方向に移動させる移動指令を発し、ガーダー用アクチュエータ25に対してガーダー2をY方向に移動させる移動指令を発する。
【0052】
XY平面上の所望の移動位置にトロリー4が位置した後、次に、駆動制御部21は、トング用アクチュエータ27に対してトング5をZ方向下方に移動させる昇降指令を発し、搬出コイルを把持する位置までトング5を移動させる。次に、駆動制御部21は、コイル把持用アクチュエータ28に対して開状態にあるアームを閉状態とするようアーム開閉指令を発し、トング5に搬出コイルを把持させる。最後に、駆動制御部21は、トング用アクチュエータ27に対してトング5をZ方向上方に移動させる昇降指令を発して搬出コイルを持ち上げさせ、以後、トロリー4を所望の場所へ移動させることで、コイルCを搬出することができる。
【0053】
ここで、XY平面上の所望の移動位置にトロリー4が位置した後に、トング5をZ方向のどの高さ位置まで下降させるかについては、種々の動作が考えられる。例えば、トング5の第1吊り具爪12a及び第2吊り具爪12bがそれぞれ搬出コイルのコイル孔CHの近傍に位置する程度の高さ位置を運転者が予め目視で判断して、ユーザインターフェース20を介して駆動制御部21に指示してもよい。そして、第1吊り具爪12a及び第2吊り具爪12bがそれぞれコイル孔CHの近傍に位置した後、制御部8は、上記の透過型光電センサに光を検出させることでコイル孔CHの位置を具体的に把握し、トング5の把持動作に移行することができる。
【0054】
次に、図8図10を参照し、建屋内の敷地にコイルCを搬入する場合の動作について説明する。図8及び図9は、コイルCの搬入時の荷役装置1の動作の流れを示すフローチャートである。このうち、図8は、前半の動作の流れを示し、図9は、後半の動作の流れを示している。制御部8は、運転室7内にいる運転者からの指示により、荷役装置1の運転を開始させる。
【0055】
制御部8は、まず、図4に示す搬出時の動作におけるステップS101と同様に、第1目安位置を特定する(第1目安位置特定工程:ステップS201)。
【0056】
次に、制御部8は、図4に示す搬出時の動作におけるステップS102と同様に、第1目安位置特定工程で特定された第1目安位置へトロリー4を移動させる(第1計測準備工程:ステップS202)。
【0057】
次に、制御部8は、図4に示す搬出時の動作におけるステップS103と同様に、距離センサ6に対して、コイルCを含む床面100上の領域におけるX方向に沿った複数の計測点で、各々の距離を計測させる(第1計測工程:ステップS203)。搬入時の第1計測工程における荷役装置1の動作は、図4に示す搬出時の動作と同様である。
【0058】
ただし、ここでの搬入動作の例では、第1目安位置が設定されている領域にすでに設置されているコイルC(以下「既設コイル」という)の構成は、図1に示す構成であるものとする。具体的には、第1目安位置が設定されている領域には、5つのコイルCが設置されている。5つのコイルCのうち、4つのコイルCが、下段側コイルとして互いに隣り合って枕木110上に載置され、残りの1つのコイルCが、上段側コイルとして下段側コイル上に載置されている。上段側コイルは、最も端にある下段側コイルの組の上に載置されている。これに対して、上段側コイルが載置されている下段側コイルの組とはX方向で反対側の床面100に、コイルCを1つ載置することができる枕木110の組が載置されている。
【0059】
図10は、図6に準じた、第1計測工程で取得された計測データの一例として、X方向に延伸するある1つのデータ列を示す図である。ここで、コイルCの搬入動作では、床面100上に載置されている枕木110の位置を考慮する。したがって、第1目安位置が設定されている領域に、図1に示すように5つのコイルCが設置されているものとすると、図10に示すデータ列には、まず、5つのコイルCの各部での高さに対応する5つの円弧部分が現れる。更に、図10に示すデータ列には、枕木110の高さに対応する2つの平面部分が現れる。
【0060】
次に、位置演算処理部22は、第1計測工程で取得された計測データを参照し、計測範囲内に枕木110の組があるかを判断する(ステップS204)。位置演算処理部22は、例えば、予め枕木110の高さ位置に関する情報を取得しておき、当該高さ位置に相当する物体を計測データから認識した場合には、枕木110が存在すると判断してもよい。ステップS204において、位置演算処理部22が、第1目安位置が設定されている領域でのコイルC等の配置が図1の場合とは異なり、枕木110の組がないと判断した場合には(NO)、以降のステップS208に移行する。
【0061】
一方、ステップS204において、位置演算処理部22が、図10に示す計測データのように枕木110の組があると判断した場合には(YES)、次に、枕木110の組のX方向の中間位置を特定する(第1中間位置特定工程:ステップS205)。具体的には、位置演算処理部22は、式(4)より、枕木110の組のX方向の中間位置mを算出することができる。ただし、Sn1は、検出された枕木110のX方向の一方の位置であり、Sn2は、検出された枕木110のX方向の他方の位置である。
【0062】
【数4】
【0063】
次に、位置演算処理部22は、第1中間位置特定工程で特定された中間位置mに基づいて、以下の(表4)に示す搬入位置の候補リストを生成する(第1候補リスト生成工程:ステップS206)。
【0064】
次に、位置演算処理部22は、中間位置mを特定していない枕木110の組が更にあるかを判断する(ステップS207)。ここで、位置演算処理部22が、第1目安位置でのコイルC等の配置が図1の場合とは異なり、枕木110の組が更にあると判断した場合には(YES)、第1中間位置特定工程に戻り、他の枕木110の組の中間位置mの特定を繰り返す。
【0065】
一方、ステップS207において、位置演算処理部22が、中間位置mを特定していない枕木110の組はないと判断した場合には(NO)、次に、第1計測工程で取得された計測データを平滑化してノイズ等を除去する(データ平滑化工程:ステップS208)。
【0066】
次に、位置演算処理部22は、データ平滑化工程で平滑化されたデータから極大値となる位置を検出する(極大値検出工程:ステップS209)。具体的には、位置演算処理部22は、平滑化したデータから式(1)、式(2)及び式(5)を用いて極大値となる位置を算出する。ただし、Dmaxは、コイルCの想定される最大径である。
【0067】
【数5】
【0068】
また、位置演算処理部22は、枕木110に関する情報と併せて、極大値検出工程で取得されたコイルCに関する情報をデータリストとして保存する。(表2)及び(表3)は、図10に示すデータ列に対応したデータリストの一例である。このうち、(表2)は、枕木110に関するデータリストである。(表3)は、コイルCに関するデータリストである。
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
次に、位置演算処理部22は、第1計測工程で取得された計測データを参照し、計測範囲内に既設コイルの組があるかを判断する(ステップS210)。既設コイルの組とは、床面100からの高さが近しくかつX方向で隣り合っている極大点を互いに有するコイルCの組をいう。つまり、既設コイルの組は、上段に別のコイルCを載置することができる。ここで、位置演算処理部22は、既設コイルの組があるかどうかを、式(6)及び式(7)より判断することができる。ただし、Hは、事前調査の上で決定される、コイルCを載せる2点間の高さの許容差である。
【0072】
【数6】
【0073】
【数7】
【0074】
ステップS210において、位置演算処理部22が、第1目安位置でのコイルC等の配置が図1の場合とは異なり、既設コイルの組がないと判断した場合には(NO)、以降のステップS214に移行する。
【0075】
一方、ステップS210において、位置演算処理部22が、図10に示す計測データのように既設コイルの組があると判断した場合には(YES)、次に、既設コイルの組のX方向の中間位置を特定する(第2中間位置特定工程:ステップS211)。具体的には、位置演算処理部22は、式(8)より、既設コイルの組のX方向の中間位置Mを算出することができる。ただし、Cは、既設コイルのX方向の一方の中間位置であり、Cn+1は、既設コイルのX方向の他方の中間位置である。
【0076】
【数8】
【0077】
次に、位置演算処理部22は、第2中間位置特定工程で特定された中間位置Mに基づいて、搬入位置の候補リストを生成する(第2候補リスト生成工程:ステップS212)。(表4)は、第1候補リスト生成工程で追加された枕木110の中間位置を含む、第2候補リスト生成工程で生成される候補リストの一例である。なお、図10では、m、M及びMは、三角印が付された位置として示されている。
【0078】
【表4】
【0079】
次に、位置演算処理部22は、中間位置Mを特定していない既設コイルの組が更にあるかを判断する(ステップS213)。ここでの例では、既設コイルの第1組に係る中間位置Mを特定しても、既設コイルの第2組に係る中間位置Mの特定も要する。このように、位置演算処理部22が、中間位置Mを特定していない既設コイルの組が更にあると判断した場合には(YES)、第2中間位置特定工程に戻り、他の既設コイルの組の中間位置Mの特定を繰り返す。
【0080】
一方、ステップS213において、位置演算処理部22が、中間位置Mを特定していない既設コイルの組はないと判断した場合には(NO)、次のステップS214に移行する。
【0081】
次に、位置演算処理部22は、第2候補リスト生成工程で生成された候補リストをユーザインターフェース20に送信して表示させ、運転者に候補リストの中から搬入位置を選択させ、特定する(搬入位置特定工程:ステップS214)。また、位置演算処理部22は、候補リストを参照することで、X方向の搬入位置、すなわち、搬入時のトロリー4のX方向の移動位置を特定することができる(第1移動位置特定工程)。
【0082】
次に、位置演算処理部22は、搬入位置特定工程で特定された搬入位置が枕木110上であるかどうかを判断する(ステップS215)。
【0083】
まず、ステップS215において、位置演算処理部22が、搬入位置が枕木110上であると判断した場合(YES)、制御部8は、搬入位置の大まかな位置(以下「第2目安位置」という)を特定する(第2目安位置特定工程:ステップS216)。ここで、制御部8は、特に搬入位置のX方向の位置については、すでに認識している枕木110の組のX方向の中間位置mを参照することができる。
【0084】
次に、制御部8は、第2目安位置特定工程で特定された第2目安位置へトロリー4を移動させる(第2計測準備工程:ステップS217)。
【0085】
次に、制御部8は、トロリー4に設置されている距離センサ6に対して、床面100上の領域におけるY方向に沿った複数の計測点で、各々の距離を計測させる(第2計測工程:ステップS218)。なお、搬入時の第2計測工程における荷役装置1の動作は、図4に示す搬出時の動作と同様である。
【0086】
次に、位置演算処理部22は、第2計測工程で取得された計測データから、搬入位置となる枕木110の組のそれぞれのY方向の端部(エッジ)を検出する(枕木端部検出工程:ステップS219)。
【0087】
次に、位置演算処理部22は、枕木端部検出工程で検出された枕木110の端部となる位置に基づいて、搬入時のトロリー4のY方向の移動位置を特定する(第2移動位置特定工程:ステップS220)。ここで、位置演算処理部22は、例えば式(9)により、Y方向の移動位置を算出することができる。ただし、ySn1は、位置Sにある第1の枕木110のY方向における一方の端部の位置であり、ySn2は、位置Sにある第1の枕木110のY方向における他方の端部の位置である。また、yS(n+1)1は、位置Sn+1にある第2の枕木110のY方向における一方の端部の位置であり、yS(n+1)2は、位置Sn+1にある第2の枕木110のY方向における他方の端部の位置である。この場合、複数のコイルCは、建屋内の敷地において整列して設置されることになる。
【0088】
【数9】
【0089】
一方、ステップS215において、位置演算処理部22が、搬入位置が枕木110上ではないと判断した場合(NO)、つまり、搬入位置は、既設コイル上であることになる。この場合、制御部8は、搬入位置の大まかな位置(以下「第3目安位置」という)を特定する(第3目安位置特定工程:ステップS221)。ここで、制御部8は、特に搬入位置のX方向の位置については、すでに認識している既設コイルの組のX方向の中間位置M又は中間位置Mを参照することができる。
【0090】
次に、制御部8は、第3目安位置特定工程で特定された第3目安位置へトロリー4を移動させる(第3計測準備工程:ステップS222)。
【0091】
次に、制御部8は、トロリー4に設置されている距離センサ6に対して、床面100上の領域におけるY方向に沿った複数の計測点で、各々の距離を計測させる(第3計測工程:ステップS223)。なお、搬入時の第3計測工程における荷役装置1の動作は、図4に示す搬出時の動作と同様である。
【0092】
次に、位置演算処理部22は、第3計測工程で取得された計測データから、搬入位置となる既設コイルの組のそれぞれのY方向の端部(エッジ)を検出する(既設コイル端部検出工程:ステップS224)。
【0093】
次に、位置演算処理部22は、既設コイル端部検出工程で検出された既設コイルの端部となる位置に基づいて、搬入時のトロリー4のY方向の移動位置を特定する(第3移動位置特定工程:ステップS225)。ここで、位置演算処理部22は、例えば式(10)により、Y方向の移動位置を算出することができる。ただし、yCn1は、位置Cにある第1の既設コイルのY方向における一方の端部の位置であり、yCn2は、位置Cにある第1の既設コイルのY方向における他方の端部の位置である。また、yC(n+1)1は、位置Cn+1にある第2の既設コイルのY方向における一方の端部の位置であり、yC(n+1)2は、位置Cn+1にある第2の既設コイルのY方向における他方の端部の位置である。この場合、複数のコイルCは、建屋内の敷地において整列して設置されることになる。
【0094】
【数10】
【0095】
なお、ステップS215における判断により、搬入位置が既設コイル上であることになった場合には、ステップS221以下の既設コイルの端部の検出を行わなくてもよい場合もあり得る。例えば、位置演算処理部22は、既設コイルの端面に、搬入するコイルCの端面が合うように、搬入時のトロリー4のY方向の移動位置を特定することもできる。
【0096】
そして、制御部8は、先の各工程で特定された搬入時のトロリー4の移動位置に基づいて、コイルCをトング5に把持させたトロリー4を移動させ、最終的に搬入位置にコイルCを搬入させる(コイル搬入工程:ステップS226)。具体的には、第1移動位置特定工程において、搬入時のトロリー4のX方向の移動位置が特定されている。一方、第2移動位置特定工程又は第3移動位置特定工程において、搬入時のトロリー4のY方向の移動位置が特定されている。位置演算処理部22は、これら特定されている各方向の移動位置を駆動制御部21に送信する。駆動制御部21は、特定された移動位置にトロリー4が位置するように、トロリー用アクチュエータ26に対してトロリー4をX方向に移動させる移動指令を発し、ガーダー用アクチュエータ25に対してガーダー2をY方向に移動させる移動指令を発する。
【0097】
XY平面上の所望の移動位置にトロリー4が位置した後、次に、駆動制御部21は、トング用アクチュエータ27に対してトング5をZ方向下方に移動させる昇降指令を発し、搬入位置に向けてトング5を移動させる。次に、駆動制御部21は、コイル把持用アクチュエータ28に対して閉状態にあるアームを開状態とするようアーム開閉指令を発し、トング5にコイルCの把持を解除させることで、コイルCを搬入することができる。最後に、駆動制御部21は、トング用アクチュエータ27に対してトング5をZ方向上方に移動させる昇降指令を発し、搬入位置から退避させる。
【0098】
次に、本実施形態に係る荷役装置1の効果について説明する。
【0099】
荷役装置1は、中心軸が床面100と平行な円筒形又は円柱形の荷を吊り上げて搬送する。荷役装置1は、床面100と平行な平面上で移動するトロリー4と、トロリー4に支持され、荷を把持して昇降する把持部と、トロリー4の移動範囲内にある構造体に設置され、床面100の側にある物体までの距離を計測する距離センサ6を備える。また、荷役装置1は、トロリー4及び把持部の動作を制御する制御部8を備える。制御部8は、距離センサ6に、床面100の側にある荷の断面方向としての第1方向に沿った複数の計測点で各々の距離を計測させ、複数の計測点のうち極大値となる位置に基づいて、トロリー4を移動させる位置の候補を決定する。
【0100】
又は、荷役装置1の運転方法は、距離センサ6に、床面100の側にある荷の断面方向に沿った複数の計測点で各々の距離を計測させる第1計測工程と、第1計測工程で計測された複数の計測点のうち極大値となる位置を特定する極大値特定工程とを含む。また、荷役装置1の運転方法は、極大値特定工程で特定された極大値に基づいて、トロリー4を移動させる位置の候補を決定してリスト化する候補リスト生成工程を含む。
【0101】
ここで、把持部は、本実施形態ではトング5である。また、トロリー4の移動範囲内にある構造体は、本実施形態ではトロリー4自体である。
【0102】
まず、荷役装置1では、搬出時に搬出対象となる荷に向けて、又は、搬入時に搬入位置に向けて、それぞれトロリー4を移動させる前に、トロリー4を移動させる位置の候補が予め決定される。したがって、運転者は、荷の搬出時又は搬入時には、予め決定されている候補の中から、搬出したい荷や、荷を搬入したい位置を選択さえすればよく、例えば、その都度目視しながら慎重にトロリー4を移動させる操作を行う必要がない。
【0103】
また、荷役装置1では、すでに床面100の側に載置されている荷の位置は、距離センサ6により得られた単なる距離データを参照した極大値から判断される。特に、荷役装置1が搬送対象とする荷の形状は円筒形又は円柱形である。この場合、荷の外周形状は円弧状となるため、極大値を利用した荷の位置の特定が可能となる。そして、極大値は、簡易的な計算式から算出することができる。したがって、本実施形態では、トロリーを移動させる位置を決定するに際して、従来採用されていたような、床面に載置されている荷の位置や形状を予め認識するための画像処理などの複雑な処理を要しない。
【0104】
このように、本実施形態によれば、運転者の操作を支援するための制御の簡易化に有利な荷役装置1及び荷役装置1の運転方法を提供することができる。
【0105】
また、荷役装置1では、制御部8は、床面100の側に載置されている荷を搬出する場合には、第1方向において、極大値となる位置と、搬出対象としての荷の中心位置とが合うと仮定して、トロリー4を移動させる位置の候補としてもよい。
【0106】
この荷役装置1によれば、特に荷の搬出時にトロリー4を移動させる位置の候補を求めるときの制御処理をより簡易化させるのに有効となり得る。
【0107】
また、荷役装置1では、制御部8は、床面100の側に荷を搬入する場合には、第1方向において、互いに隣り合う2つの極大値の中間位置を、搬入対象としての荷を載置する位置と決定して、トロリー4を移動させる位置の候補としてもよい。
【0108】
この荷役装置1によれば、特に荷の搬入時にトロリー4を移動させる位置の候補を求めるときの制御処理をより簡易化させるのに有効となり得る。
【0109】
また、荷役装置1では、制御部8は、距離センサ6に、床面100の側にある荷の軸方向としての第2方向に沿った複数の計測点で各々の距離を計測させて、荷の第2方向の端部を特定してもよい。そして、制御部8は、荷の第2方向の一方の端部と他方の端部との中間位置を、把持部を昇降させる位置と決定してもよい。
【0110】
この荷役装置1によれば、特に荷の搬出時には、このように把持部を昇降させる位置が決定されることで、把持部が荷を把持して持ち上げるときの軸方向の荷重バランスが良好となるので、より安定した搬出動作が行われ得る。一方、特に荷の搬入時には、すでに床面100側に設置されている荷に対して、搬入する荷を整列させて配置することができる。
【0111】
また、荷役装置1では、荷は、当該荷の軸方向としての第2方向に沿って各々延伸し、かつ、第1方向において互いに隣り合う2つの枕木110を介して床面100に載置されてもよい。このとき、制御部8は、床面100の側に荷を搬入する場合には、距離センサ6に、第1方向に沿った複数の計測点で各々の距離を計測させ、複数の計測点のうち予め設定された高さ位置に基づいて枕木110の位置を特定してもよい。その後、制御部8は、第1方向における2つの枕木110の中間位置を、搬入対象としての荷を載置する位置と決定して、トロリー4を移動させる位置の候補としてもよい。
【0112】
この荷役装置1によれば、特に荷の搬入時の搬入位置の候補として、すでに床面100上に載置されている荷以外にも、床面100に載置されている枕木110も加えることができる。
【0113】
また、荷役装置1では、制御部8は、距離センサ6に、第2方向に沿った複数の計測点で各々の距離を計測させて、枕木110の第2方向の端部を特定し、一方の端部と他方の端部との中間位置を、把持部を昇降させる位置と決定してもよい。
【0114】
この荷役装置1によれば、特に荷の搬入時には、すでに床面100に載置されている枕木110に対して、搬入する荷を整列させて配置することができる。
【0115】
なお、上記の説明では、距離センサ6は、トロリー4の移動範囲内にある構造体の一例としてトロリー4自体に設置されるものとした。これに対して、距離センサ6は、トロリー4の移動範囲内にある構造体としてのトング5の基部10に設置されてもよい。この場合、第1計測工程などの計測時には、トング5が最上部に位置しているときに、距離センサ6が計測するものとすればよい。一方、距離センサ6は、トロリー4の移動範囲内にある構造体としてのガーダー2の剛体部に、剛体部の延伸方向に沿って一定の間隔で複数設置されてもよい。この場合、第1計測工程などの計測時には、トロリー4を移動させながら計測する必要がなく、複数の距離センサ6が計測範囲を分担して、各々計測データを取得してもよい。
【0116】
また、第1計測工程などの計測時では、トング5は、例えば、以降のコイル搬出工程やコイル搬入工程に迅速に移行することができるのであれば、コイルCを把持していない状態であってもよいし、コイルCを把持したままの状態であってもよい。
【0117】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正又は変形をすることが可能である。上記の実施形態のすべての構成要素、および請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0118】
1 荷役装置
4 トロリー
5 トング
6 距離センサ
8 制御部
100 床面
110 枕木
C コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10