(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】マルチコア光ファイバおよびマルチコア光ファイバケーブル
(51)【国際特許分類】
G02B 6/02 20060101AFI20240730BHJP
G02B 6/44 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G02B6/02 461
G02B6/44 366
(21)【出願番号】P 2020171407
(22)【出願日】2020-10-09
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】林 哲也
【審査官】岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/063800(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/035883(WO,A1)
【文献】特開2015-163972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02、6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通クラッドと、前記共通クラッド
内に配置された複数のコアと、を備えるとともに、前記複数のコアが中心軸に沿ってそれぞれ延びる12個のコア
のみで構成されたマルチコア光ファイバであって、
前記中心軸に直交する当該マルチコア光ファイバの断面において、前記共通クラッドは、円形の外周を有し、
前記断面上において、前記12個のコアは、
前記12個のコアから選択された特定のコアを基準として、前記特定のコアに対して隣接関係にあるコア同士の間に隣接関係が成立しないように配置されるとともに、前記中心軸と交差するとともに前記12個のコアのいずれの中心も通過しない軸を対称軸として、前記12個のコアの中心が線対称となるようにそれぞれ配置され、
前記断面上において、前記12個のコアの中心の配置は、いかなる点を回転の中心としても、1回を超える回転対称性を有さ
ず、
格子点間隔Λ
nominal
を有する正方格子であって、最小の正方形を構成する4個の内周格子点と前記4個の内周格子点を取り囲むとともに前記4個の内周格子点のいずれかと隣接関係が成立する8個の外周格子点を有し、前記中心軸から前記4個の内周格子点までの距離がそれぞれ等しくなる様に前記断面上に設定された正方格子に対して、前記12個のコアは、前記4個の内周格子点に割り当てられた4個の内周コアと、前記8個の外周格子点に割り当てられた8個の外周コアと、により構成され、
前記4個の内周コアの中心位置それぞれと前記4個の内周格子点のうち対応する内周格子点との距離は0.5μm以下であり、
前記8個の外周コアそれぞれは、前記8個の外周格子点のうち対応する外周格子点との距離が0.5μm以下となる位置にその中心が配置された格子点配置コア、および、前記対応する外周格子点から2μmよりも離れた位置にその中心が配置された格子点非配置コアのいずれかに属し、
前記格子点配置コアの数と前記格子点非配置コアの数の比は、2個対6個、4個対4個、または6個対2個であり、
前記格子点非配置コアそれぞれは、前記4個の内周格子点のうち前記対応する外周格子点と隣接関係にある特定内周格子点からΛ
nominal
±0.5μm離れた位置にその中心が配置され、
前記格子点非配置コアそれぞれの中心は、対応する特定内周格子点からの距離よりも前記対応する外周格子点と隣接関係にある特定外周格子点からの距離が長くなるように配置され、かつ、残りの外周コアのいずれの中心からもΛ
nominal
+3μm以上離れている、
マルチコア光ファイバ。
【請求項2】
前記格子点非配置コアそれぞれは、前記対応する外周格子点と前記特定内周格子点を結ぶ線分と、前記格子点非配置コアの中心と前記特定内周格子点を結ぶ線分とのなす角度θが3度以上30度以下となるよう配置されている、
請求項1に記載のマルチコア光ファイバ。
【請求項3】
前記格子点非配置コアの数は2個であり、前記2個の格子点非配置コアが割り当てられた2個の外周格子点は隣接関係が成立している、
請求項1または
請求項2に記載のマルチコア光ファイバ。
【請求項4】
共通クラッドと、前記共通クラッド内に配置された複数のコアと、を備えるとともに、前記複数のコアが中心軸に沿ってそれぞれ延びる12個のコアのみで構成されたマルチコア光ファイバであって、
前記中心軸に直交する当該マルチコア光ファイバの断面において、前記共通クラッドは、円形の外周を有し、
前記断面上において、前記12個のコアは、前記12個のコアから選択された特定のコアを基準として前記特定のコアに対して隣接関係にあるコア同士の間に隣接関係が成立しないように配置されるとともに、前記中心軸と交差するとともに前記12個のコアのいずれの中心も通過しない軸を対称軸として、前記12個のコアの中心が線対称となるようにそれぞれ配置され、
前記断面上において、前記12個のコアの中心の配置は、いかなる点を回転の中心としても、1回を超える回転対称性を有さず、
前記共通クラッドの外周を覆い、250±15μmの外径を有する樹脂被覆をさらに備え、
195μm以下の所定のクラッド直径公称値CD
nominal[μm]に対して、前記共通クラッドの直径CDはCD
nominal±1μmであり、
22mのファイバ長で測定された前記12個のコアそれぞれにおけるケーブルカットオフ波長λ
ccは1260nm以下または1360nm以下であり、
前記12個のコアそれぞれにおける零分散波長は1312nm以上1340nm以下の範囲の値を基準として±12nmの範囲に収まり、
前記零分散波長における前記12個のコアそれぞれにおける分散スロープは0.092ps/(nm
2・km)以下であり、
波長1310nmにおける前記12個のコアそれぞれにおけるモードフィールド径MFD[μm]と前記ケーブルカットオフ波長λ
cc[μm]の比に対し、前記12個のコアの中心から前記樹脂被覆と前記共通クラッドとの界面までの最短距離d
coat[μm]が以下の式(1):
【数1】
の関係を満たし、
以下の第1条件または第2条件を満たし、
前記第1条件は、前記12個のコアそれぞれにおいて、対象コアと隣接関係にあるコアから前記対象コアへの波長1360nmにおける総クロストークが-6.7dB/10km以下であり、
前記12個のコアのうち隣接関係にあるコア間の中心間隔Λ[μm]が以下の式(2):
【数2】
を満たすとともに前記クラッド直径公称値CD
nominal[μm]が以下の式(3):
【数3】
を満たすことにより定義され、
前記第2条件は、前記12個のコアそれぞれにおいて、前記対象コアと隣接関係にあるコアから前記対象コアへの波長1360nmにおける総クロストークが-16.7dB/10km以下であり、
前記隣接関係にあるコア間の前記中心間隔Λ[μm]が以下の式(4):
【数4】
の関係を満たすとともに前記クラッド直径公称値CD
nominal[μm]が以下の式(5):
【数5】
の関係を満たすことにより定義される、
マルチコア光ファイバ。
【請求項5】
前記12個のコアに含まれる4個のコアであって前記中心軸を最短距離で取り囲む4個のコアのうちいずれかのコアへの波長1360nmにおける総クロストークが-6.7dB/10km以下であり、
前記モードフィールド径MFD[μm]が8.6±0.4μmであり、
前記ケーブルカットオフ波長λ
ccが1260nm以下であり、
前記モードフィールド径MFD[μm]と前記ケーブルカットオフ波長λ
cc[μm]が以下の式(6)から式(10)のうちいずれかの式:
【数6】
【数7】
【数8】
【数9】
【数10】
の関係を満たす、
請求項4に記載のマルチコア光ファイバ。
【請求項6】
前記12個のコアに含まれる4個のコアであって前記中心軸を最短距離で取り囲む4個のコアのうちいずれかのコアへの波長1360nmにおける総クロストークが-16.7dB/10km以下であり、
前記モードフィールド径MFDが8.2±0.4μmであり、
前記ケーブルカットオフ波長λ
ccが1260nm以下であり、
前記モードフィールド径MFD[μm]と前記ケーブルカットオフ波長λ
cc[μm]が以下の式(11)から式(15)のうちいずれかの式:
【数11】
【数12】
【数13】
【数14】
【数15】
の関係を満たす、
請求項4に記載のマルチコア光ファイバ。
【請求項7】
前記モードフィールド径MFDが8.6±0.4μmであり、
前記12個のコアに含まれる4個のコアであって前記中心軸を最短距離で取り囲む4個のコアのうちいずれかのコアへの波長1360nmにおける総クロストークが-16.7dB/10km以下であり、
前記ケーブルカットオフ波長λ
ccが1360nm以下であり、
前記モードフィールド径MFD[μm]と前記ケーブルカットオフ波長λ
cc[μm]が以下の式(16)から式(20)のうちいずれかの式:
【数16】
【数17】
【数18】
【数19】
【数20】
の関係を満たす、
請求項4に記載のマルチコア光ファイバ。
【請求項8】
請求項1から
請求項7のいずれか一項に記載のマルチコア光ファイバを含む複数のマルチコア光ファイバを有するマルチコア光ファイバケーブル。
【請求項9】
請求項1から
請求項7のいずれか一項に記載のマルチコア光ファイバを含む複数のマルチコア光ファイバを間欠的に接着したマルチコア光ファイバリボンを内蔵するマルチコア光ファイバケーブル。
【請求項10】
前記マルチコア光ファイバリボンを、螺旋状に捩じられた状態で内蔵する
請求項9に記載のマルチコア光ファイバケーブル。
【請求項11】
ファイバ長手方向に沿った曲げ半径の平均が0.03m以上0.14m以下または0.14m以上0.3m以下の前記マルチコア光ファイバを含む、
請求項8から
請求項10のいずれか一項に記載のマルチコア光ファイバケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マルチコア光ファイバ(以下、「MCF」と記す)およびマルチコア光ファイバケーブル(以下、「MCFケーブル」と記す)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、双方向通信に適用可能なMCFが開示されている。
【0003】
非特許文献1には、中心コアと、該中心コアの周辺に円環状に配置された7個のコアと、有する8コアファイバが開示されている。なお、この8コアファイバにおいて、中心コアの周辺に感情に配置された7個のコアは、隣接するコア間の中心間間隔(コア間隔)が一部異なるよう配置されている。
【0004】
非特許文献2には、147μmの外径を有するクラッドと、ファイバ断面上で定義されるコア配置が正方格子を構成するよう配置された12個のコアと、を備えた12コアファイバと、145μmの外径を有するクラッドと、ファイバ断面上で定義されるコア配置が六方格子を構成するよう配置された12個のコアと、を備えた12コアファイバと、が開示されている。いずれの12コアファイバも、トレンチ構造は備えていない。各コアにおけるモードフィールド径(以下、「MFD」と記す)は、波長1310nmにおいて5.4μmであり、波長1550nmにおいて6.1μmである。カットオフ波長は1.26μmである。各コアにおける零分散波長は1.41μmである。波長1565nmでのクラッドから被覆への漏洩損は0.01dB/2kmである。波長1565nmにおけるコア間のクロストーク(以下、「XT」と記す)は-30dB/2kmである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-106135号公報(日本国特許第5842556号)
【非特許文献】
【0006】
【文献】Y. Sasaki,etal., “Asymmetrically Arranged 8-core Fibers with Center Core Suitable forSide-view Alignment in Datacenter Networks”, OFC2020, T4J.1.
【文献】YusukeSasaki, et al., “High Density Multicore Fibers Employing Small MFD Cores forDatacenters”, OECC2018, Technical Digest, P2-07, July 02-06, 2018, Jeju, Korea.
【文献】R.J. Black and C. Pask, J. Opt. Soc. Am. A, JOSAA 1(11), 1129-1131 (1984).
【文献】T.Matsui et al., in Eur. Conf. Opt. Commun. (ECOC) (2017), p. W.1.B.2.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者は、上述の従来技術について検討した結果、以下のような課題を発見した。すなわち、上記特許文献1から非特許文献2に開示されたMCFのコア配置は、いずれも2回以上の回転対称性を有することから、コアの識別のためにマーカーが必要になる。また、コア配置に線対称性がないか、または、線対称であっても対称軸上にコアが存在するため、MCF同士の接続に関しては伝送リンクにおいて極性(コアごとに接続されるべきコアが指定された状態)を考慮する必要がある。例えば、偶数本の光ファイバリボンを実装した多芯コネクタを例にとると、左から半数の光ファイバを送信用光ファイバとし、右から半数の光ファイバを受信用光ファイバとすれば、両端で構成を変える必要がなく、極性の問題が生じない。しかしながら、例えば、クラッド中心にコアの有るMCFの場合、クラッド中心のコアを片端で送信用にしたら、他端では受信用にする必要があり、極性を考慮した接続・リンク構成を行う必要がある(両端で異なる構成のファンイン・ファンアウトを用いたり、異なる構成の送受信器を用いる必要がある)。さらに、波長1310nmでのMFDが非常に小さいため、曲げ損失が増大する。
【0008】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、短距離のOバンド伝送に使用可能で、かつ、汎用SMF同等のMFDで標準被覆径を有するMCFであって、マーカーおよび極性の双方がなくともファイバ間接続が可能であり、かつ、対向伝搬に使用可能な12コアを備えたMCFファイバを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本開示のMCFは、中心軸に沿ってそれぞれ延びる12個のコアと、該12個のコアそれぞれを覆う共通クラッドと、を備える。特に、中心軸に直交する当該MCFの断面において、共通クラッドは、円形の外周を有する。断面上において、12個のコアは、任意のコアに対して隣接関係にあるコア同士の間に隣接関係が成立しないように配置される。また、12個のコアは、中心軸と交差するとともに12個のコアのいずれの中心も通過しない軸を対称軸として、該12個のコアの中心が線対称となるようにそれぞれ配置される。さらに、断面上において、12個のコアの中心の配置は、いかなる点を回転の中心としても、1回を超える回転対称性を有さない。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、短距離Oバンド伝送に使用可能で、かつ、汎用SMF同等のMFDで標準被覆径を有する12コアを備えたMCFであって、マーカーおよび極性の双方がなくともファイバ間接続が可能であり、かつ、対向伝搬に使用可能な12コアを備えたMCFファイバが実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示のMCFケーブル(本開示のMCFを含む)の種々の構造を示す図である。
【
図2】本開示のMCFにおけるコア配置を決定するための諸条件を説明するための図である。
【
図3】本開示のMCFにおけるコア配置の一例を示す図である。
【
図4】本開示のMCFの第1変形例および第2変形例におけるコア配置を示す図である。
【
図5】本開示のMCFの第3変形例および第4変形例におけるコア配置を示す図である。
【
図6】比較例に係るMCFの種々のコア配置を示す図である。
【
図7】本明細書で使用される主な用語を説明するための図である。
【
図8】本開示のMCFに適用可能な各コア周辺の屈折率プロファイルを示す図である。
【
図9】12個のコアが正方格子を構成するよう配置されたMCF(以下、「12コアMCF」と記す)において、10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の波長1360nmでの対向伝搬XTが-20dB(=-20dB/10km)となるときの隣接コア間の中心間隔ΛとMFD/λ
ccの関係を示すグラフである。
【
図10】12コアMCFにおいて、10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の波長1360nmでの対向伝搬XTが-40dB(=-40dB/10km)となるときの隣接コア間の中心間隔ΛとMFD/λ
ccの関係を示すグラフである。
【
図11】12コアMCFにおいて、波長1360nmでの被覆への漏洩損失が0.01dB/kmとなるときのd
coatとMFD/λ
ccの関係を示すグラフである。
【
図12】12コアMCFにおいて、波長1360nmでの被覆への漏洩損失が0.01dB/kmとなるときのd
coatに1μmのマージンを加え、また、10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の波長1360nmでの対向伝搬XTが-20dB(=-20dB/10km)となるΛに1μmのマージンを加えた場合の、CD(許容最小クラッド径)とMFD/λ
ccの関係を示すグラフである。
【
図13】10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の波長1360nmでの対向伝搬XTが-20dB(=-20dB/10km)、あるいは、10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の並行伝搬XT(通常の同方向伝搬時のXT)が-20dB(=-20dB/10km)となる条件下での12コアMCFの場合について、波長1360nmでの被覆への漏洩損失が0.01dB/kmとなるときのd
coatに1μmのマージンを加えるとともにΛに1μmのマージンを加えた場合のCD(許容最小クラッド径)とMFD/λ
ccの関係を示すグラフである。
【
図14】12コアMCFにおいて、波長1360nmでの被覆への漏洩損失が0.01dB/kmとなるときのd
coatに1μmのマージンを加え、また10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の波長1360nmでの対向伝搬XTが-40dB(=-40dB/10km)となるΛに1μmのマージンを加えた場合のCD(許容最小クラッド径)とMFD/λ
ccの関係を示すグラフである。
【
図15】10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の波長1360nmでの対向伝搬XTが-40dB(=-40dB/10km)、あるいは、10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の並行伝搬XTが-40dB(=-40dB/10km)となる条件化での12コアMCFの場合について、波長1360nmでの被覆への漏洩損失が0.01dB/kmとなるときのd
coatに1μmのマージンを加えるとともにΛに1μmのマージンを加えた場合のCD(許容最小クラッド径)とMFD/λ
ccの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容をそれぞれ個別に列挙して説明する。
【0013】
(1) 本開示のMCFは、その一態様として、中心軸に沿ってそれぞれ延びる12個のコアと、該12個のコアそれぞれを覆う共通クラッドと、を備える。特に、中心軸に直交する当該MCFの断面において、共通クラッドは、円形の外周を有する。断面上において、12個のコアは、任意のコアに対して隣接関係にあるコア同士の間に隣接関係が成立しないように配置される。また、12個のコアは、中心軸と交差するとともに12個のコアのいずれの中心も通過しない軸を対称軸として、該12個のコアの中心が線対称となるようにそれぞれ配置される。さらに、断面上において、12個のコアの中心の配置は、いかなる点を回転の中心としても、1回を超える回転対称性を有さない。換言すれば、断面上において、12個のコアの中心の配置は、いかなる点を中心に回転させたとしても、360度回転させたときのみ自身と同じ配置となる。
【0014】
上述のように、当該MCFは12個のコアが共通クラッドに内臓されるため、1回の融着当たり12ファイバリボンと同等以上のコア数の接続が可能になる。また、共通クラッドの外周形状(当該MCFの断面で規定)が円形であるため、対向伝搬に適したコア配置の実現が可能になる。12個のコアは、任意のコアに対して隣接関係にあるコア同士の間に隣接関係が成立しないように配置されており、これにより、極性(コアごとに設定される光信号の伝送方向の組み合わせ)なしに同種のMCF同士をどちらの端面でも接続できる。さらに、12個のコアは、中心軸と交差するとともに12個のコアのいずれの中心も通過しない軸を対称軸として、該12個のコアの中心が線対称となるようにそれぞれ配置される。これにより、マーカーなしにコア識別および対照(comparison)が可能になる。
【0015】
(2)本開示の一態様として、12個のコアそれぞれは、以下のような内周コアと外周コアのいずれかに分類される。具体的には、格子点間隔Λnominalを有する正方格子であって、最小の正方形を構成する4個の内周格子点と該4個の内周格子点を取り囲むとともに該4個の内周格子点のいずれかと隣接関係が成立する8個の外周格子点を有し、中心軸から該4個の内周格子点までの距離がそれぞれ等しくなる様に断面上に設定された正方格子に対して、12個のコアは、4個の内周格子点に割り当てられた4個の内周コアと、8個の外周格子点に割り当てられた8個の外周コアと、により構成される。換言すれば、4個の内周コアそれぞれは、8個の外周コアのうち2個の外周コアと隣接関係が成立している。また、4個の内周コアの中心位置それぞれと4個の内周格子点のうち対応する内周格子点との距離は0.5μm以下である。一方、8個の外周コアそれぞれは、格子点配置コアと格子点非配置コアのいずれかに属する。格子点配置コアは、8個の外周格子点のうち対応する外周格子点との距離が0.5μm以下となる位置にその中心が配置されたコアである。また、格子点非配置コアは、対応する外周格子点から2μmよりも離れた位置にその中心が配置されたコアである。格子点配置コアの数と格子点非配置コアの数の比は、2個対6個、4個対4個、または6個対2個であるのが好ましい。格子点非配置コアそれぞれは、4個の内周格子点のうち対応する外周格子点と隣接関係にある特定内周格子点からΛnominal±0.5μm離れた位置にその中心が配置される。格子点非配置コアそれぞれの中心は、対応する特定内周格子点からの距離よりも前記対応する外周格子点と隣接関係にある特定外周格子点からの距離が長くなるように配置され、かつ、残りの外周コアのいずれの中心からもΛnominal+3μm以上離れている。
【0016】
対応する内周格子点と0.5μm以下の距離となる位置にその中心が位置するように4個の内周コアがそれぞれ配置される。これにより、4個の内周コアは正方配置され、隣接関係にあるコア間の中心間隔Λを一定以上に保ちつつ、外周コアが共通クラッドの中心位置から過剰に離れること(被覆に近づくこと)を避けられる。また、格子点非配置コアの中心が対応する外周格子点から2μm以上離れることにより、当該MCFのコア配置(当該MCFの断面上で定義)に対して十分な非対称性を持たせることが可能になる。格子点非配置コアそれぞれの中心が対応する外周格子点からの距離よりも特定外周格子点(対応する外周格子点との間で隣接関係が成立する別の外周格子点)からの距離が長くなるように配置される。この場合、8個の外周コア同士が近付かないようなコア配置が実現できる。さらに、格子点非配置コアそれぞれの中心は、残りの格子点非配置コアのいずれの中心からもΛnominal+3μm以上離れている。この場合、任意の内周コアに対して隣接関係にある外周コアと該任意の内周コアに対して隣接関係にある別の外周コアが近づきすぎることにより、これら2個の外周コアの間に隣接関係が成立しないように十分な距離が確保される。
【0017】
(3) 本開示の一態様として、格子点非配置コアそれぞれは、対応する外周格子点と上記特定内周格子点を結ぶ線分と、該格子点非配置コアの中心と特定内周格子点を結ぶ線分とのなす角度θが3度以上30度以下、3度以上25度以下、または、3度以上20度以下となるよう配置されている。この場合、当該MCFのコア配置に対して非対称性持たせつつ、任意の内周コアに対して隣接関係にある外周コアと該任意の内周コアに対して隣接関係にある別の外周コアが近づきすぎることが防止される(これら2個の外周コアの間に隣接関係が成立しないように十分な距離が確保される)。
【0018】
(4) 本開示の一態様として、格子点非配置コアの数は2個であり、該2個の格子点非配置コアが割り当てられた2個の外周格子点は隣接関係が成立している。なお、この場合、隣接関係にある2個の外周コアは、それぞれ異なる内周コアと隣接関係にある。このように配置される格子点非配置コアは、格子点配置コアよりも共通クラッドの中心(中心軸)から遠くなり(θが大きいほど遠くなる)OCT(Outer Cladding Thickness)が劣化する(小さく)か、該OCTの劣化を抑えるために共通クラッドの外径を大きくする必要がある。これに対し、本態様の構成では、隣接関係にある2個の外周格子にそれぞれ割り当てられた2個の外周コアのうち一方が格子点非配置コアである場合の中心間隔と比べ、小さなθでも該2個の外周コアそれぞれが格子点非配置コアである場合の中心間隔をさらに大きく話すことができる。その結果、小さなθでも当該MCFのコア配置の非対称性の視認性が高められる。
【0019】
(5) 本開示の一態様として、共通クラッドの外周を覆い、250±15μmの外径を有する樹脂被覆をさらに備えもよい。195μm以下の所定のクラッド直径公称値CD
nominal[μm]に対して、共通クラッドの直径CDはCD
nominal±1μmであり、22mのファイバ長で測定された12個のコアそれぞれにおけるケーブルカットオフ波長λ
ccは1260nm以下または1360nm以下であり、12個のコアそれぞれにおける零分散波長は1312nm以上1340nm以下の範囲の値を基準として±12nmの範囲に収まり、該零分散波長における12個のコアそれぞれにおける分散スロープは0.092ps/(nm
2・km)以下である。さらに、波長1310nmにおける12個のコアそれぞれにおけるMFD[μm]とケーブルカットオフ波長λ
cc[μm]の比に対し、12個のコアの中心から樹脂被覆と共通クラッドとの界面(以下、「被覆-クラッド界面」と記す)までの最短距離d
coat[μm](上記OCTと同義)が以下の式(1):
【数1】
の関係を満たす。また、当該MCFは以下の第1条件または第2条件を満たす。
【0020】
なお、上記第1条件は、12個のコアそれぞれについて、対象コアと隣接関係にあるコアから該対象コアへの波長1360nmにおける総クロストークが-6.7dB/10km以下であり、該12個のコアのうち隣接関係にあるコア間の中心間隔Λ[μm]が以下の式(2):
【数2】
を満たすとともにクラッド直径公称値CD
nominal[μm]が以下の式(3):
【数3】
を満たすことにより定義される。
【0021】
上記第2条件は、12個のコアそれぞれにおいて、対象コアと隣接関係にあるコアから該対象コアへの波長1360nmにおける総クロストークが-16.7dB/10km以下であり、隣接関係にあるコア間の中心間隔Λ[μm]が以下の式(4):
【数4】
の関係を満たすとともにクラッド直径公称値CD
nominal[μm]が以下の式(5):
【数5】
の関係を満たすことにより定義される。この構成によれば、量産性に優れ、接続コストおよび伝送損失の増加の効果的な抑制が可能なMCFが得られる。
【0022】
(6) 本開示の一態様として、12個のコアに含まれる4個のコアであって中心軸を最短距離で取り囲む4個のコアのうちいずれかのコア(実質的に所定の内周コア)への波長1360nmにおける総クロストークが-6.7dB/10km以下であり、MFD[μm]が8.6±0.4μmであり、ケーブルカットオフ波長λ
ccが1260nm以下であるのが好ましい。また、MFD[μm]とケーブルカットオフ波長λ
cc[μm]が以下の式(6)から式(10)のうちいずれかの式:
【数6】
【数7】
【数8】
【数9】
【数10】
の関係を満たすのが好ましい。この場合、量産性に優れ、接続コストおよび伝送損失の増加の効果的な抑制が可能なMCFが得られる。
【0023】
(7) 本開示の一態様として、12個のコアに含まれる4個のコアであって中心軸を最短距離で取り囲む4個のコアのうちいずれかのコア(実質的に所定の内周コア)への波長1360nmにおける総クロストークが-16.7dB/10km以下であり、MFDが8.2±0.4μmであり、ケーブルカットオフ波長λ
ccが1260nm以下である。また、MFD[μm]とケーブルカットオフ波長λ
cc[μm]が以下の式(11)から式(15)のうちいずれかの式:
【数11】
【数12】
【数13】
【数14】
【数15】
の関係を満たすのが好ましい。この場合、量産性に優れ、接続コストおよび伝送損失の増加の効果的な抑制が可能なMCFが得られる。
【0024】
(8) 本開示の一態様として、MFDが8.6±0.4μmであり、12個のコアに含まれる4個のコアであって中心軸を最短距離で取り囲む4個のコアのうちいずれかのコア(実質的に所定の内周コア)への波長1360nmにおける総クロストークが-16.7dB/10km以下であり、ケーブルカットオフ波長λ
ccが1360nm以下である。また、MFD[μm]とケーブルカットオフ波長λ
cc[μm]が以下の式(16)から式(20)のうちいずれかの式:
【数16】
【数17】
【数18】
【数19】
【数20】
の関係を満たすのが好ましい。この場合、量産性に優れ、接続コストおよび伝送損失の増加の効果的な抑制が可能なMCFが得られる。
【0025】
(9) 本開示のMCFケーブルは、その一態様として、上述の構造を有するMCFを含む複数のMCFを有する。また、本開示のMCFケーブルは、これら複数のMCFが間欠的に接着されたマルチコア光ファイバリボンを内蔵してもよい。本開示のMCFケーブルは、その一態様として、マルチコア光ファイバリボンを螺旋状に捩じられた状態で内蔵してもよい。本開示のMCFケーブルは、その一態様として、ファイバ長手方向に沿った曲げ半径の平均が0.03m以上0.14m以下または0.14m以上0.3m以下のMCFを含んでもよい。いずれの構成によっても伝送容量の大幅に増大させることが可能になる。
【0026】
以上、この[本開示の実施形態の説明]の欄に列挙された各態様は、残りの全ての態様のそれぞれに対して、または、これら残りの態様の全ての組み合わせに対して適用可能である。
【0027】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示に係るMCF(マルチコア光ファイバ)およびMCFケーブル(マルチコア光ファイバケーブル)の具体例を、以下に添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、これら例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図されている。また、図面の説明において同一の要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0028】
図1は、本開示のMCFケーブル(本開示のMCFを含む)の種々の構造を示す図である。
【0029】
構造(A)を有するMCFケーブル1Aは、当該MCFケーブル1Aの長手方向に沿って延びるMCF収納空間を含む外被300と、複数のMCF100(本開示のMCF)と、を備える。外皮300は、MCF収納空間に沿って延びる2本の抗張力線(tension member)400A、400Bが埋め込まれている。MCF100それぞれは、その外周面が樹脂被覆により覆われたガラスファイバ200を含む。
【0030】
一方、構造(B)を有するMCFケーブル1Bは、当該MCFケーブル1Bの長手方向に沿って延びるMCF収納空間を含む外皮500と、MCF収納空間を複数に分割するスロッテッドコア600と、複数のMCF100(本開示のMCF)と、を備える。外被500内には、MCF収納空間を複数に分割するスロッテッドコア600(slotted core)が収納されている。スロッテッドコア600は、当該MCFケーブル1Bの長手方向に沿って延びる抗張力線700が埋め込まれている。複数のMCF100は、スロッテッドコア600により分割されたいずれかの空間内に収納される。
【0031】
図2は、本開示のMCFにおけるコア配置を決定するための諸条件を説明するための図である。
図2の上段には、MCF100の断面上において定義される正方格子800が示され、下段には、1個の内周コアに対して隣接関係が維持されている2個の外周コアの配置状態を説明するための図が示されている。
【0032】
本開示のMCF12個のコアを備えるのが好ましい。これにより、MCFを1本ずつ回転調心を行い融着を行う場合であっても、超多コアケーブルを接続する際に12ファイバリボンを多数内蔵するケーブルにおけるリボン融着(12ファイバ一括融着)に比べて、融着1回当たりの接続コア数を同等にすることが可能になる。
【0033】
また、本開示のMCFは、所定のコアに対して隣接関係にある複数のコア同士には隣接関係が成立しないコア配置を有するのが好ましい。これにより、隣接関係にあるコア(以下、「隣接コア」と記す)の間で異なる伝搬方向に信号を伝送する双方向通信において、所定のコアの隣接コアに対してさらに隣接関係にある別のコアから、該所定のコアへのXT(対向伝搬XT)を低減することができる。ここで、所定のコアの隣接コアとは、後述するが(
図7参照)、所定のコアへの並行伝搬XT(同じ方向に光を伝搬する場合の通常のXT)の影響が大きいコアを意味し、具体的には,コア間の中心間隔が、所定のコアと最も近いコアおよびそれと同等(差異が2μm以下)の中心間隔を持つコアが隣接コアに該当する。
【0034】
一例として、
図2の例のように、12個のコアのうち一部のコアを格子点からずらしたような正方格子類似のコア配置(任意のコアに対して隣接関係にある隣接コア同士では隣接関係が成立しない)となるように、12個のコアが配置されるのが好ましい。このとき、当該MCFの断面上において、共通クラッドの中心(ファイバ軸)を通り、かつ、各コアの中心を通らない所定の軸を対称軸として各コアの中心は線対称の位置に配置されるのが好ましい。これにより、MCF接続時に「極性」を意識することなく、あるMCFの所定の端部を別のMCFのいずれの端部にも接続することが可能になる。本開示のMCFのコア配置は1回の回転対称性を有する(2回以上の回転対称性を有さない)ことが好ましい。これにより、コア以外の「マーカー」を加えなくても、どのコアがどのコアなのか判別できるようになる。
【0035】
また、
図2ではコア位置のばらつきを考慮していないが、コア位置(コアの中心)は所定の格子点から0.5μm以内でばらついてもよい。これにより製造トレランスを大きく可能になる。実際のMCFにおいて、内周コアと外周コアがそれぞれ割り当てられる格子点(内周格子点と外周格子点)の位置は、コアの中心それぞれと対応する格子点の位置ずれの二乗誤差の和が最小になるように、正方格子の格子点間隔、向き、および位置を最適化することで求めることができる。あるいは、正方格子の格子点間隔は公称値(設計値)を用い、正方格子の向きおよび位置を最適化してもよい。
【0036】
具体的に、
図2に示されたMCF100は、中心軸(ファイバ軸AX)に沿って延びるガラスファイバ200と、該ガラスファイバ200を覆う樹脂被覆130を備える。ガラスファイバ200は、ファイバ軸AXに沿ってそれぞれ延びる12個のコア110と、該12個のコアそれぞれを覆う共通クラッド120と、を備える。
【0037】
図2の上段に示された、コア配置の基準となる正方格子800は、ファイバ軸AXに直交する当該MCF100の断面上に定義される。なお、共通クラッド120の外周210の形状(当該MCF100の断面上で定義される)は、円形である。すなわち、正方格子800は、格子点間隔Λ
nominalを有する正方格子であって4個の内周格子点が最短距離で中心軸を取り囲むように該中心軸に対して点対称に配置された複数の格子点で構成されている。より具体的には、正方格子800は、4個の内周格子点80と、該4個の内周格子点810を取り囲むとともに該4個の内周格子点810のいずれかと隣接関係が成立する8個の外周格子点820かを含む。なお、4個の内周格子点810のいずれとも隣接関係にない格子点830にはコアは配置されない。
【0038】
12個のコアそれぞれは、4個の内周格子点810に割り当てられた内周コア110A(以下、単に「12個のコア」に言及する場合にはコア110と記す)と、8個の外周格子点820に割り当てられた外周コアのいずれかに属する。4個の内周コア110Aの中心位置それぞれと4個の内周格子点810のうち対応する内周格子点との距離は0.5μm以下である。一方、8個の外周コアそれぞれは、格子点配置コア110Baと格子点非配置コア110Bbのいずれかに属する。格子点配置コア110Baは、8個の外周格子点820のうち対応する外周格子点との距離が0.5μm以下となる位置にその中心が配置されたコアである。また、格子点非配置コア110Bbは、対応する外周格子点から距離D1(D1>2μm)の位置にその中心が配置されたコアである。また、格子点非配置コア110Bbそれぞれは、対応する外周格子点と特定内周格子点(4個の内周格子点のうち該対応する外周格子点と隣接関係にある内周格子点)を結ぶ線分と、当該格子点非配置コアの中心と特定内周格子点を結ぶ線分とのなす角度θ(以下、「ずれ角」と記す)が3度以上30度以下、3度以上25度以下、または、3度以上20度以下となるよう配置されている。また、格子点配置コア110Baの数と格子点非配置コア110Bbの数の比は、
図3から
図5に示された例のように、2個対6個、4個対4個、または6個対2個であるのが好ましい。格子点非配置コア110Bbそれぞれは、4個の内周格子点810のうち対応する外周格子点と隣接関係にある特定内周格子点から距離D3(Λ
nominal-0.5μm≦D3≦Λ
nominal+0.5μm)離れた位置にその中心が配置される(特定内周格子点を中心とした円周上に配置される)。格子点非配置コア110Bbそれぞれの中心は、対応する外周格子点からの距離D1よりも該対応する外周格子点と隣接関係にある特定外周格子点(
図2の上段に隣接関係が示された外周格子点の対を参照)からの距離が長くなるように配置され、かつ、残りの格子点非配置コア110Bbのいずれの中心からも距離D2(≧Λ
nominal+3μm)だけ離れている。本明細書では、上述の条件を満たす場合において、格子点非配置コア110Bbについても、格子点間の隣接関係と同様に、他のコア(内周コア110Aや他の外周コア)との隣接関係が維持されるものと定義する。
【0039】
図3は、本開示のMCF(12コアMCF100A)におけるコア配置の一例を示す図である。
図4および
図5は、本開示の12コアMCFの第1変形例から第4変形例におけるコア配置を示す図である。また、
図6は、比較例に係る12コアMCFの種々のコア配置を示す図である。なお、
図3から
図6は、視認を容易にするため、コア位置やコアの寸法は実際の縮尺に基づかない模式図として示している。また、
図3から
図6のいずれにも、線対称に12個のコア110が配置されていることを確認できるよう、対称軸LAが示されている。
【0040】
図3に示された12コアMCF100Aは、ガラスファイバ200Aと、該ガラスファイバ200Aを覆う樹脂被覆130とを備える。ガラスファイバ200Aは、中心軸(ファイバ軸AX1)に沿って延びる12個のコア110と、これら12個のコア110それぞれを覆う共通クラッド120とを備える。12個のコア110は、割り当てられる格子点の種類によって、4個の内周コア110Aと、8個の外周コアに分類される。また、8個の外周コアは、格子点配置コア110Baと、格子点非配置コア110Bbに分類される。
【0041】
12コアMCF100Aにおいて、8個の外周コアは、6個の格子点配置コア110Baと2個の格子点非配置コア110Bbに分類される。2個の格子点非配置コア110Bbは、互いに隣接関係にある外周格子点820に割り当てられており、図示されたように、それぞれ角度θだけ対応する外周格子点820からその中心がずれている。
【0042】
第1変形例に係る12コアMCF100B(
図4の上段)、第2変形例に係る12コアMCF100C(
図4の下段)、第3変形例に係る12コアMCF100D(
図5の上段)、第4変形例に係る12コアMCF100E(
図5の下段)、第1比較例に係る12コアMCF900A(
図6の上段)、および第2比較例に係る12コアMCF900B(
図6の下段)は、コア配置を除き、
図3に示された12コアMCF100Aと同様の構造を備える。すなわち、12コアMCF100Bから100Eは、上記ガラスファイバ200Aに対応するガラスファイバ200Bから200Eと、樹脂被覆130とを備える。12コアMCF900Aおよび900Bも、同様に、上記ガラスファイバ200Aに対応するガラスファイバ950Aおよび950Bと、樹脂被覆130とを備える。
【0043】
ガラスファイバ200Bから200Eそれぞれは、中心軸(ファイバ軸AX2からAX5)に沿って延びる12個のコア110と、これら12個のコア110それぞれを覆う共通クラッド120とを備える。中心軸に直交するガラスファイバ200Bから200Eそれぞれの断面上において、共通クラッド120は円形の外周を有する。12個のコア110は、割り当てられる格子点の種類によって、4個の内周コア110Aと、8個の外周コアに分類される。また、8個の外周コアは、格子点配置コア110Baと、格子点非配置コア110Bbに分類される。
【0044】
一方、ガラスファイバ950Aおよび950Bそれぞれは、中心軸(ファイバ軸AX6およびAX7)に沿って延びる12個のコアと、これら12個のコアそれぞれを覆う共通クラッド120とを備える。なお、
図6に示された比較例では、12コアは、互いに光の伝搬方向が異なる第1コア110aと第2コア110bで構成されたコア配置が示されている。中心軸に直交するガラスファイバ950Aおよび950Bそれぞれの断面上において、共通クラッド120は円形の外周を有する。12個のコア(第1コア110aと第2コア110b)は、割り当てられる格子点の種類によって、4個の内周コア110Aと、8個の外周コアに分類される。また、第2比較例のように、8個の外周コアは、格子点配置コア110Baと、格子点非配置コア110Bbに分類される。
【0045】
第1変形例に係る12コアMCF100B(
図4の上段)において、ファイバ軸AX2に直交する断面上に設定された正方格子の内周格子点810上に4個の内周コア110Aがそれぞれ配置される(内周格子点810とコア中心の距離は0.5μm以下)。これら4個の内周コア110Aの周辺に8個の外周コアが配置される。8個の外周コアのうち、6個の外周コアは、格子点配置コア110Baとして、それぞれが割り当てられた外周格子点820とコア中心との距離が0.5μm以下になるように配置される。残る2個の外周コアは、格子点非配置コア110Bbとして、
図2の下段に示された隣接関係を維持した状態で、それぞれが割り当てられた外周格子点820に対してコア中心がずれた状態で配置される。したがって、この12コアMCF100Bでは、格子点配置コアの数と格子点非配置コアの数の比は、6個対2個である。なお、それぞれのずれ各θは対を成す2個の格子点非配置コア110Bb間で一致しており、該2個の格子点非配置コア110Bbは、対称軸LAに対して線対称となる位置に配置される(第1変形例では1対)。ただし、この12コアMCF100Bにおけるコア配置は、ファイバ軸AX2を中心とした2回以上の回転対称性を有していない。
【0046】
さらに、
図3の12コアMCF100Aと第1変形例に係る12コアMCF100Bのコア配置を比較すると、隣接関係にある2個の外周格子点820にそれぞれ割り当てられた外周コアが格子点非配置コア110Bbとなっている12コアMCF100Aは、隣接関係にある2個の外周格子点820にそれぞれ割り当てられた外周コアのうち一方のみが格子点非配置コア110Bbとなっている12コアMCF100Bよりも非対称性が増大している。
【0047】
第2変形例に係る12コアMCF100C(
図4の下段)も同様に、ファイバ軸AX3に直交する断面上に設定された正方格子の内周格子点810上に4個の内周コア110Aがそれぞれ配置され、その周辺に8個の外周コアが配置される。8個の外周コアのうち、4個の外周コアは、格子点配置コア110Baとして、それぞれが割り当てられた外周格子点820上に配置される。残る4個の外周コアは、格子点非配置コア110Bbとして、
図2の下段に示された隣接関係を維持した状態で、それぞれが割り当てられた外周格子点820に対してコア中心がずれた状態で配置される。したがって、この12コアMCF100Cでは、格子点配置コアの数と格子点非配置コアの数の比は、4個対4個である。なお、対を成す2個の格子点非配置コア110Bbは、対称軸LAに対して線対称となる位置に配置されるが、この12コアMCF100Cにおけるコア配置は、ファイバ軸AX3を中心とした2回以上の回転対称性を有していない。また、線対称に配置された格子点非配置コア110Bbの対に関し(第2変形例では2対)、一方の対のずれ角はθ
1であり、他方の対のずれ角はθ
2(θ
1と一致する必要はない)である。
【0048】
第3変形例に係る12コアMCF100D(
図5の上段)も同様に、ファイバ軸AX4に直交する断面上に設定された正方格子の内周格子点810上に4個の内周コア110Aがそれぞれ配置され、その周辺に8個の外周コアが配置される。8個の外周コアのうち、2個の外周コアは、格子点配置コア110Baとして、それぞれが割り当てられた外周格子点820上に配置される。残る6個の外周コアは、格子点非配置コア110Bbとして、
図2の下段に示された隣接関係を維持した状態で、それぞれが割り当てられた外周格子点820に対してコア中心がずれた状態で配置される。したがって、この12コアMCF100Dでは、格子点配置コアの数と格子点非配置コアの数の比は、2個対6個である。なお、対を成す2個の格子点非配置コア110Bbは、対称軸LAに対して線対称となる位置に配置されるが、この12コアMCF100Dにおけるコア配置は、ファイバ軸AX4を中心とした2回以上の回転対称性を有していない。また、線対称に配置された格子点非配置コア110Bbの対に関し(第3変形例では3対)、1番目の対のずれ角はθ
1であり、2番目の対のずれ角はθ
2であり、3番目の対のずれ角はθ
3である。ずれ角θ
1、θ
2、θ
3は互いに一致する必要はない。
【0049】
第4変形例に係る12コアMCF100E(
図5の下段)も同様に、ファイバ軸AX5に直交する断面上に設定された正方格子の内周格子点810上に4個の内周コア110Aがそれぞれ配置され、その周辺に8個の外周コアが配置される。第3変形例と同様に、8個の外周コアのうち、2個の外周コアは、格子点配置コア110Baとして、それぞれが割り当てられた外周格子点820上に配置される。残る6個の外周コアは、格子点非配置コア110Bbとして、
図2の下段に示された隣接関係を維持した状態で、それぞれが割り当てられた外周格子点820に対してコア中心がずれた状態で配置される。したがって、この12コアMCF100Eでは、格子点配置コアの数と格子点非配置コアの数の比は、2個対6個である。対を成す2個の格子点非配置コア110Bbは、対称軸LAに対して線対称となる位置に配置されるが、この12コアMCF100Eにおけるコア配置は、ファイバ軸AX5を中心とした2回以上の回転対称性を有していない。また、線対称に配置された格子点非配置コア110Bbの対に関し(第4変形例では3対)、1番目の対のずれ角はθ
1であり、2番目の対のずれ角はθ
2であり、3番目の対のずれ角はθ
3である。ずれ角θ
1、θ
2、θ
3は互いに一致する必要はない。
【0050】
第1比較例に係る12コアMCF900A(
図6の上段)は、8個の外周コアに格子点非配置コアが含まれない例であり、第2比較例に係る12コアMCF900B(
図6の下段)は、8個の外周コアのうち4個の格子点非配置コアを含んでいる。また、12コアMCF900Aおよび900Bのいずれのコア配置も、極性を考慮しなければ、線対称に配置された12個のコアで構成されている。ただし、12コアMCF900Aおよび900Bのいずれのコア配置も、ファイバ軸AX6およびAX7を中心として2回以上の回転対称性を有している。
【0051】
図7は、本明細書で使用される主な用語(内周コアの隣接関係、コア周辺の断面構造、並行伝搬と並行伝搬XT(クロストーク)、および対向伝搬XT(クロストーク))を説明するための図である。
【0052】
(内周コアの隣接関係)
本明細書において、コア間の隣接関係は、MCFの断面上に配置された12コアのうち1個の特定コアに着目したとき、該特定コアに対して最小中心間隔および該最小中心間隔との差が2μm以下のコアを、該特定コアに対して隣接関係にあるコアと定義する。特に、
図7には、格子点間隔Λでファイバ軸を取り囲む4個の内周格子点810上に配置された4個の内周コア110A(コア110)について説明する。これら4個の内周コア110Aのうち、正方格子の各辺を構成する内周コア110A対は隣接関係にある(隣接関係にある内周コア110A同士の中心間隔は実質的にΛ)。一方、正方格子の対角線上に位置する内周コア110A対には隣接関係は成立しない。
【0053】
(コア周辺の断面構造)
12コアMCF100Aから100Eそれぞれにおいて、各コア110(内周コア110A、格子点配置コア110Ba、および格子点非配置コア110Bbを含む)の周辺の断面構造は、コア110の外周を共通クラッド120が取り囲んでいる。共通クラッド120は、コア110に直接接触するよう設けられてもよいが、共通クラッド120と、コア110と、の間に光学クラッド121が設けられてもよい。また、光学クラッド121と共通クラッド120との間に小さな比屈折率差Δ3を有するトレンチ層122が設けられてもよい。なお、光学クラッド121は、各コア110に対して用意され、共通クラッド120の屈折率に対して-0.1%以上0.1%以下の比屈折率差Δ2を有するのが好ましい。また、トレンチ層122が設けられる場合、該トレンチ層122は、共通クラッド120の屈折率に対して-2.0%以上-1.0%未満、-1.0%以上-0.7%未満、-0.7%以上-0.4%未満、または、-0.4%以上0%未満の比屈折率差Δ3を有するのが好ましい。
【0054】
(並行伝搬および並行伝搬XT)
図7に示された例では、隣接関係が成立している3本のコア(いずれも同一方向に光を伝搬させる第1コア110a)が示されている。すなわち、左側コアと中央のコアとの間で隣接関係が成立するとともに、中央のコアと右側コアとの間で隣接関係が成立している。すなわち、隣接関係の成立したコアそれぞれが、同一方向に光を伝搬する状態を「並行伝搬」と記す。この場合、同一方向に光を伝搬させる隣接コア間で通常のコア間XT(並行伝搬XT)が発生する。
【0055】
(対向伝搬および対向伝搬XT)
一方、対向伝搬は、隣接関係が成立している2本のコアで互いに異なる方向に光を伝搬する。すなわち、
図7の例では、左側のコアと中央のコアには隣接関係が成立しているが、左側のコアは、第1コア110aとして機能し、中央のコアは、第1コア110aとは異なる方向に光を伝搬させる第2コア110bとして機能する。これら左側コアと中央のコアとの間で発生する通常のXTは通信品質へ影響しにくい。同様に、中央のコアに対して隣接関係が成立している右側のコアは、第1コア110aとして機能し、これら右側のコアと中央のコアとの間で発生する通常のXTは通信品質へ影響しにくい。このように、隣接関係が成立しているコアそれぞれが異なる方向に光を伝搬する状態を「対向伝搬」と記す。ただし、左側のコアと右側のコア(いずれも第1コア110aとして機能する)との間では、中央のコア(第2コア110bとして機能する)を介してXTが通信品質に影響する。このように、隣接関係が成立しかつ逆方向へ光を伝搬するコアを介して、同一方向へ光を伝搬するコア間のXTを「対向伝搬XT」と記す。
【0056】
なお、以下の説明では
図7に示された「並行伝搬」および「対向伝搬」の例を参照ながら説明するが、ファイバ長L1での隣接関係が成立しているコア(以下、「隣接コア」と記す)間のXT(並行伝搬XT:XT
co)をXT
co(L1)とすると、XTをデシベル値で表す場合、以下の式(21):
【数21】
と表せ、距離10倍でXTは10dB増える。
【0057】
XTをデシベル値で表す場合、例えば、
図7に示された対向伝搬の例において、中央のコアを介して右側のコアから左側のコアへのXT(対向伝搬XT:XT
counter)は、左側のコアと中央のコアとの間、および、中央のコアと右側のコアとの間の並行伝搬XT:XT
coを用いて、以下の式(22):
【数22】
と表すことができる。
【0058】
ファイバ長L1での対向伝搬XTを、XT
counter(L1)とすると、XTをデシベル値で表す場合、ファイバ長L2での対向伝搬XTは、以下の式(23):
【数23】
と表せ、距離10倍でXT
counterが20dB増える。
【0059】
所定のコアへの隣接コアからのXT
coの合計XT
co,totは、所定のコアの隣接コアの数をNとすると、以下の式(24):
【数24】
となる。上記式(24)は隣接コア間のXT
coが均一であることを前提としている。隣接コア間のXT
coの差異が無視できない場合は、所定のコアへのN個の隣接コアからのうちコアnからのXT
coのをXT
co,nとすると合計XT
co,totは、以下の式(25):
【数25】
となる。
【0060】
所定のコアへの対向伝搬XTの合計XT
counter,totは、所定のコアも「隣接コアの隣接コア(
図7に示された対向伝搬の例では、所定のコアを左側のコアとすると、右側のコアに相当)」の数をMとすると、以下の式(26):
【数26】
となりそうだが、そうはならず、所定のコア(左側のコア)のN個の隣接コア(中央のコア)のうちのコアnに対しての隣接コア(所定のコアを含む)の数をK
nとすると、XT
counter,totは、以下の式(27):
【数27】
となることを、発明者は発見した。そのため、12コアMCFでは、内周コア群に属する4個のコアのいずれかへのXT
counter,totは、以下の式(28):
【数28】
と表すことができる。
【0061】
このことから、12コアMCFで10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の対向伝搬XTを-20dB(=-20dB/10km)以下にするためには、ファイバ長L(km)換算での隣接コア間の並行伝搬XT(XT
co)は、以下の式(29):
【数29】
であることが好ましく、また、内周コア群に属する4個のコアのいずれかへの隣接関係のある4個のコアからの並行伝搬XTの和は、以下の式(30):
【数30】
であることが好ましい。
【0062】
12コアMCFで10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の対向伝搬XTを-40dB(=-40dB/10km)以下にするには、ファイバ長L(km)換算での隣接コア間の並行伝搬XT(XT
co)は、以下の式(31):
【数31】
であることが好ましく、また、内周コア群に属する4個のコアのいずれかへの隣接関係のある4個のコアからの並行伝搬XTの和は、以下の式(32):
【数32】
であるのが好ましい。
【0063】
続いて、本開示のMCFに適用可能なプロファイル構造について説明する。
図8は、本開示のMCFに適用可能な各コア周辺の屈折率プロファイルを示す図である。なお、特別の断りがない場合、「比屈折率差Δ」は共通クラッドの屈折率に対する比屈折率差を意味するものとする(したがって、純シリカガラスの屈折率に対する比屈折率差ではい)。
【0064】
本開示のMCFにおけるコア構造に関し、コアの屈折率プロファイルやそれに伴う光学特性については、用途に応じて適正な構造を選択することができ、例えば、
図8に示されたパターン(A)からパターン(K)の屈折率プロファイルが適用可能である。なお、
図8において、Δは、共通クラッドの屈折率を基準とした比屈折率差であり、rは、各コア中心からの動径(radius)であり、各コア中心・Δ=0%を原点Oとする局所座標系で示している。構造はコア間で一致していてもよく、また、異なっていてもよい。
【0065】
図8に示されたパターン(A)はステップ型の屈折率プロファイル、パターン(B)はリング型の屈折率プロファイル、パターン(C)は2重ステップ型の屈折率プロファイル、パターン(D)はグレーデッド型の屈折率プロファイル、パターン(E)は裾だれ型の屈折率プロファイルであり、これらは、本開示のMCFにおけるコア構造に適用可能である。さらに、コアの周囲にDepressed型の屈折率プロファイルが設けられたパターン(F)およびパターン(H)、コアの周囲にRaised型の屈折率プロファイルが設けられたパターン(G)、パターン(I)およびパターン(J)、コアの周囲にMatched型の屈折率プロファイルが設けられたパターン(E)についても、コア構造に適用可能である。
【0066】
パターン(A)のステップ型の屈折率プロファイル以外の屈折率プロファイルにはESI(Equivalent-step-index)近似を用いて,ステップ型で近似した場合のコア半径aやコアのΔ(Δ1)を求めることができる(上記非特許文献3)。
上記非特許文献3は、コアとクラッドの境界が明瞭な場合には容易に適用できるが、パターン(E)の裾だれ型の屈折率プロファイルのように,コアとクラッド(共通クラッド120または光学クラッド121)の境界が不明瞭な場合への適用は難しく、例えばパターン(E)におけるbをコアの半径と見做して上記非特許文献3の手法をそのまま適用するとESI近似が上手くいかない。このような場合、屈折率プロファイルの傾き(∂Δ/∂r)が最も絶対値の大きな負の値とるrにおけるΔの2/5のΔをとるrをコア半径aと見做し、上記非特許文献3を適用することが好ましい。このときクラッド(共通クラッド120または光学クラッド121)の屈折率はrが、以下の式(33)で示された、aからbまでの範囲のΔの単純平均:
【数33】
あるいは、以下の式(34)で示されたrによる重みづけ平均:
【数34】
で求めた値を用いて、上記非特許文献3に基づいた計算でaやΔ1(第1および第2コア110a、110bの最大比屈折率差)を求めることができる。Δ2(光学クラッド121の比屈折率差)は,-0.10%以上0.10%以下であることが好ましい。製造性が大幅に向上するからである。
【0067】
光学クラッド121の周囲に該光学クラッド121および共通クラッド120よりも低い屈折率を有するトレンチ層122が設けられてもよい(
図8のパターン(K))。ただし、共通クラッド120の屈折率を基準としたトレンチ層122の比屈折率差Δ3が-0.5%以下である場合、製造性が大きく劣化するため、Δ3≧-0.4%であることが好ましく、Δ3≧-0.3%であることがより好ましく、Δ3≧-0.2%であることがさらに好ましい。なお、製造性の観点からはトレンチ層がない方がより好ましい。
【0068】
コアおよびクラッド(光学クラッド121または共通クラッド120)の材料に関しては、シリカガラスを主成分とするガラス製であることが、低い伝送損失と高い機械信頼性を実現できるため好ましい。コアにはGeが添加されていることにより,コアとクラッドの屈折率差が生じていることが好ましい。または、クラッドにFを添加することにより、コアとクラッドの屈折率差が生じていることが好ましい。コアおよび光学クラッドに微量のFが添加されることにより、製造性良くDepressed型のプロファイルを実現できるため好ましい。コアやクラッドにClが添加されていてもよい。これによりOH基を抑制できるとともにOH基に起因した吸収損失を抑制することが可能になる。コアやクラッドに微量のPが含まれてもよい。これにより一部のガラス合成プロセスにおける製造性を高めることが可能になる。
【0069】
なお、
図2から
図5に示された断面構造を有する本開示のMCFは、樹脂被覆130を有し、該樹脂被覆130直径は250±15μmであることが好ましい。これにより、既存のケーブル化設備などに大きな変更を加えることなく本開示のMCFのケーブル化が可能になる。
【0070】
なお、典型的な汎用SMFにおいて、クラッド直径(ガラスファイバ200の直径)の公称値CDnominalは125μmであり、樹脂被覆130の直径の公称値(直径公称値)は245μm以上250μm程度であるが、被覆細径型SMFにおいては、樹脂被覆の直径公称値が180μm、190μm、200μmのものもみられる。このとき、樹脂被覆130の厚みの公称値(被覆厚公称値)は、それぞれ27.5μm、32.5μm、37.5μmである。樹脂被覆130の厚みが薄くなると、砂やほこりなどが被覆表面を傷つけた場合に傷がガラス製のクラッドまで達することで光ファイバの強度が弱くなることがあるため、十分な被覆厚公称値が望まれる。
【0071】
本開示のMCFにおいて、樹脂被覆130の直径公称値が250μmで被覆厚公称値が27.5μm以上を実現するためには、クラッド直径の公称値CDnominalは195μm以下であることが好ましい。
【0072】
また、樹脂被覆130の直径公称値が245μmで被覆厚公称値が27.5μm以上を実現するためには、CDnominalは190μm以下であることがさらに好ましい。樹脂被覆130の直径公称値が50μmで被覆厚公称値が32.5μm以上を実現するためには、CDnominalは185μm以下であることが好ましい。樹脂被覆130の直径公称値が245μmで被覆厚公称値が32.5μm以上を実現するためには、CDnominalは180μm以下であることが好ましい。樹脂被覆130の直径公称値が250μmで被覆厚公称値が37.5μm以上を実現するためには、CDnominalは175μm以下であることが好ましい。さらに、樹脂被覆130の直径公称値が245μmで被覆厚公称値が37.5μm以上を実現するためには、CDnominalは170μm以下であることが好ましい。それぞれの場合において、被覆厚のトレランスは±15μm以下であることが好ましく、±10μm以下であることがより好ましい。
【0073】
本開示のMCFにおける各コアは、波長1310nmにおいて8.6μm以上9.2μm以下の値を基準として±0.4μmの範囲に収まるMFDを有するのが好ましい。この場合、ITU-T G.652に規定される汎用SMFのうち、特にMFDの公称値MFDnominalが小さく(MFDnominal ≒ 8.6μm、かつ、曲げ損失が抑制されたタイプの汎用SMF同士の接続損失と比較して、本開示のMCF同士の軸ずれに起因する接続損失(所定の軸ずれを与えた場合)を同等以下に抑えることが可能になる。
【0074】
本開示のMCFにおける各コアは、波長1310nmにおいて8.6μm±0.4μmのMFDを有するのが好ましい。これにより、ITU-T G.652に規定される汎用SMFのうち、MFDの公称値が小さく、かつ、曲げ損失が抑制されたタイプの汎用SMFと本開示のMCFとの接続に関し、コア中心軸ずれ(軸ずれ)に起因する接続損失(所定の軸ずれを与えた場合)を同等にすることが可能になる。
【0075】
本開示のMCFにおける各コアは、波長1310nmにおいて8.2μm以上8.6μm以下の値を基準として±0.4μmの範囲に収まるMFDを有するのが好ましい。これにより、ITU-T G.652に規定される汎用SMFのうち、特にMFDnominalが小さく(MFDnominal ≒ 8.6μm、かつ、曲げ損失が抑制されたタイプの汎用SMFに対して、本開示のMCFの軸ずれに起因する接続損失(所定の軸ずれを与えた場合)を10%以下の上昇に抑えることが可能になる。このことは、曲げ損失が抑制されたタイプの汎用SMFの接続損失が0.15dBとなる軸ずれの場合、本開示のMCFの接続損失は0.15dB以上0.165dB以下となり、曲げ損失が抑制されたタイプの汎用SMFの接続損失が0.25dBとなる軸ずれの場合、本開示のMCFの接続損失は0.25dB以上0.275dB以下となり,曲げ損失が抑制されたタイプの汎用SMFの接続損失が0.50dBとなる軸ずれの場合、本開示のMCFの接続損失は0.50dB以上0.55dB以下となり、曲げ損失が抑制されたタイプの汎用SMFの接続損失が0.75dBとなる軸ずれの場合、本開示のMCFの接続損失は0.75dB以上0.825dB以下となることを意味する。このとき、MFDnominalが小さい方がコアへの光の閉じ込めを強めることができ、コア間XTおよび樹脂被覆への漏洩損失などを抑えることができるので好ましい。
【0076】
本開示のMCFは、1300nm以上1324nm以下の零分散波長を有するのが好ましい。これにより、Oバンドでの伝送後の信号波形の歪みを汎用SMFと同程度に抑制することが可能になる。
【0077】
本開示のMCFは、1312nm以上1340nmの所定の値を基準として±12nmの範囲に収まる零分散波長を有するのが好ましい。これにより、Oバンドでの伝送後の信号波形の歪みを汎用SMFよりも抑制することが可能になる(上記非特許文献4参照)。
【0078】
本開示のMCFは、使用波長帯において、いずれかのコアへの隣接コアからのXTの総和が10km伝搬後(ファイバ長10km相当)でも-20dB(=-20dB/10km)以下であることが好ましい。隣接コア以外からのXTは十分低く無視できるので、これにより、コヒーレント検波を行う場合にも十分な信号対雑音比を実現できる。
【0079】
本開示のMCFは、使用波長帯において、いずれかのコアへの隣接コアからのXTの総和が10km伝搬後(ファイバ長10km相当)でも-40dB(=-40dB/10km))以下であることが好ましい。隣接コア以外からのXTは十分低く無視できるので、これにより、強度変調直接検波を行う場合にも十分な信号対雑音比を実現できる。
【0080】
本開示のMCFは、使用波長帯において、いずれかのコアへの隣接コアからのXTの総和(並行伝搬XT)が10km伝搬後(ファイバ長10km相当)でも-6.8dB(=-6.8dB/10km)以下であることが好ましい。これにより、12個のコアが正方格子状に配置されたコア配置(本実施形態では、4個の内周コアが正方格子上に配置される一方で、8個の外周コアの一部が割り当てられた格子点からその中心がずれたコア配置を「正方コア配置」と記す)を有する12コアMCFにおいて、全ての隣接コアのペアに関して隣接コア同士での信号伝搬方向を逆にする双方向通信を行う場合に、問題となる上述のいずれかのコアへの対向伝搬XT(
図7の例のように、逆方向に光を伝搬する隣接コアを介して到達するXTの総和)を10km伝搬後(ファイバ長10km相当)でも-20dB(=-20dB/10km)以下に抑制することが可能になる。
【0081】
本開示のMCFは、使用波長帯において、並行伝搬XTが10km伝搬後(ファイバ長10km相当)でも-16.8dB(=-16.8dB/10km)以下であることが好ましい。これにより、対向伝搬XTを10km伝搬後(ファイバ長10km相当)でも-40dB(=-40dB/10km)以下に抑制することが可能になる。
【0082】
以下の説明では、
図8のパターン(E)、パターン(H)およびパターン(J)の屈折率プロファイルのコア有するとともに、aが3μm以上5μm以下、Δ1-Δ2が0.3%以上0.6%以下、Δ2が-0.1%以上0.1%以下、b/aが2以上5以下であるMCFについての検討結果について示す。
【0083】
所定の零分散波長とMFDを有するコアの構造は、有限要素法などを用いて基底モードの電界分布と実効屈折率の波長依存性を計算することにより、当業者に設計可能である。例えば、零分散波長λ
0[μm]となるaと(Δ1-Δ2)の関係は、3μm≦a≦5μm、0.3%≦(Δ1-Δ2)≦0.6%の範囲において、以下の式(35):
【数35】
となる。そのため、零分散波長λ
0[μm]がλ
0nominal±12nmとなるためには、aと(Δ1-Δ2)の関係は、以下の式(36)および式(37):
【数36】
【数37】
の両式を満たすことが好ましい。
【0084】
また、波長1310nmでのMFD[μm]に対するaと(Δ1-Δ2)の関係は、3μm≦a≦5μm、0.3%≦(Δ1-Δ2)≦0.6%の範囲において、以下の式(38):
【数38】
となる。そのため、MFD[μm]がMFD
nominal±0.4μmとなるためには、aと(Δ1-Δ2)の関係は、以下の式(39)および式(40):
【数39】
【数40】
の両式を満たすことが好ましい。
【0085】
b/aとΔ2は、λccが1260nm以下あるいは1360nm以下になり、かつ、零分散スロープが0.092ps/(nm2・km)となるように設定されればよい。このためには、Δ2が-0.1%以上0.0%以下、b/aが2以上4以下の範囲であることが好ましい。
【0086】
次に、隣接コア間の好ましい中心間隔Λについて説明する。
図9は、12個のコアが正方格子を構成するよう配置された12コアMCFにおいて、10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の波長1360nmでの対向伝搬XTが-20dB(=-20dB/10km)となるときの隣接コア間の中心間隔ΛとMFD/λ
ccの関係を示すグラフである。なお、MFD/λ
ccは無次元量であり、MFDとλ
ccの単位は揃えて求められる。ここで、ファイバ曲げ半径の平均値Rは0.14mであり、Rが0.14m以下であれば、より低いXTを実現することができる。なお、λ
ccは、ITU-T G.650.1(03/2018)のFigure 12の構成(ケーブル化していないファイバ)で測定を行ったケーブルカットオフ波長のことである。
【0087】
波長1360nmで10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の対向伝搬XTを-20dB以下にするためには、隣接コア間の中心間隔ΛとMFD/λ
ccが、少なくとも、以下の式(41)または式(42):
【数41】
【数42】
を満たし(
図9の下側の破線から上の領域)、さらには、以下の式(43)または式(44):
【数43】
【数44】
を満たすことが好ましい(
図9の上側の破線から上の領域)。
【0088】
各コアの位置が設計中心からばらつくことを許容するためには、Λは、上記式(41)から式(44)に示された範囲から1μmのマージンを取ることが好ましい。よって、Λは、当該Λの公称値をΛ
nominalとすると、少なくとも、以下の式(45):
【数45】
を満たし、さらには、Λは、以下の式(46):
【数46】
を満たすΛ
nominalに対して、以下の式(47):
【数47】
を満たすのが好ましい。これは、コアの位置が独立に設計中心から3σ=0.9μmのガウス分布を確率分布としてばらつく場合の近似と考えることができ、Λが式(41)または式(43)を満たさなくなる確率は、1%以下に抑えられる。さらに、Λは、以下の式(48):
【数48】
を満たすことが好ましい。これは、各コアの位置が独立に設計中心から3σ=0.7μmのガウス分布を確率分布としてばらつく場合の近似と考えることができ、Λが式(41)または式(43)を満たさなくなる確率は、0.1%以下に抑えられる。さらに、Λは、以下の式(49):
【数49】
を満たすことが好ましい。これは、各コアの位置が独立に設計中心から3σ=0.5μmのガウス分布を確率分布としてばらつく場合の近似と考えることができ、Λが式(41)または式(43)を満たさなくなる確率は、0.001%以下に抑えられる。
【0089】
正方コア配置の12コアMCFにおいて、波長1360nmで10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の並行伝搬XTが-20dBとなるときの隣接コア間の中心間隔ΛとMFD/λ
ccの関係について、同様の検討を行うと、波長1360nmでの10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の並行伝搬XTを-20dB以下とするためには、隣接コア間の中心間隔ΛとMFD/λ
ccは、少なくとも、以下の式(50)または式(51):
【数50】
【数51】
を満たし、さらには、以下の式(52)または式(53):
【数52】
【数53】
を満たすことが好ましい。
【0090】
各コアの位置が設計中心からばらつくことを許容するためには、Λが、上記式(50)から式(53)の範囲から1μmのマージンを取ることが好ましい。よって、Λは、Λの公称値をΛ
nominalとすると、少なくとも、以下の式(54):
【数54】
を満たす、さらに、Λは、以下の式(55):
【数55】
を満たすΛ
nominalに対して、以下の式(56):
【数56】
を満たすのが好ましい。これは、各コアの位置が独立に設計中心から3σ=0.9μmのガウス分布を確率分布としてばらつく場合の近似と考えることができ、Λが式(50)または式(52)を満たさなくなる確率は、1%以下に抑えられる。さらに、Λは、以下の式(57):
【数57】
を満たすことが好ましい。これは、各コアの位置が独立に設計中心から3σ=0.7μmのガウス分布を確率分布としてばらつく場合の近似と考えることができ、Λが式(50)または式(52)を満たさなくなる確率は、0.1%以下に抑えられる。さらに、Λは、以下の式(58):
【数58】
を満たすことが好ましい。これは、各コアの位置が独立に設計中心から3σ=0.5μmのガウス分布を確率分布としてばらつく場合の近似と考えることができ、Λが式(50)または式(52)を満たさなくなる確率は、0.001%以下に抑えられる。
【0091】
図10は、正方コア配置の12コアMCFにおいて、10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の波長1360nmでの対向伝搬XTが-40dB(=-40dB/10km)となるときの隣接コア間の中心間隔ΛとMFD/λ
ccの関係を示すグラフである。
【0092】
波長1360nmにおける10km伝搬後の対向伝搬XTを-40dB以下とするためには、隣接コア同士の中心間隔ΛとMFD/λ
ccが、以下の式(59)または式(60):
【数59】
【数60】
を満たし(
図10中の下側の破線から上の領域)、さらには、以下の式(61)または式(62):
【数61】
【数62】
を満たすことが好ましい。(
図10中の上側の破線から上の領域)。
【0093】
各コアの位置が設計中心からばらつくことを許容するためには、上記式(59)から上記式(62)の範囲から少なくとも1μmのΛのマージンを取ることが好ましい。したがって、Λは、該Λの公称値Λ
nominalに対して、少なくとも、以下の式(63):
【数63】
を満たす。さらに、Λは、以下の式(64):
【数64】
を満たすΛ
nominalに対して、以下の式(65):
【数65】
を満たすことが好ましい。この場合、各コアの位置が独立に設計中心から3σ=0.9μmのガウス分布を確率分布としてばらつく場合の近似と考えることができ、このとき、Λが上記式(59)または上記式(61)を満たさなくなる確率は1%以下に抑えられる。さらに、以下の式(66):
【数66】
が満たされる場合は、各コアの位置が独立に設計中心から3σ=0.7μmのガウス分布を確率分布としてばらつく場合の近似と考えることができ、このとき、Λが上記式(59)または上記式(61)を満たさなくなる確率は0.1%以下に抑えられる。さらに、以下の式(67):
【数67】
が満たされる場合は、各コアの位置が独立に設計中心から3σ=0.5μmのガウス分布を確率分布としてばらつく場合の近似と考えることができ、このとき、Λが上記式(59)または上記式(61)を満たさなくなる確率は0.001%以下に抑えられる。
【0094】
正方コア配置の12コアMCFにおいて、波長1360nmにおける10km伝搬後の並行伝搬XTが-40dBになるときの隣接コア同士の中心間隔ΛとMFD/λ
ccの関係について、同様の検討を行うと、波長1360nmにおける10km伝搬後の並行伝搬XTを-40dB以下にするためには、隣接コア同士の中心間隔ΛとMFD/λ
ccが、少なくとも、以下の式(68)または式(69):
【数68】
【数69】
を満たし(
図10中の下側の破線から上の領域)、さらには、以下の式(70)または式(71):
【数70】
【数71】
を満たすことが好ましい(
図10中の上側の破線から上の領域)。
【0095】
各コアの位置が設計中心からばらつくことを許容するためには、上記式(68)から上記式(71)の範囲から少なくとも1μmのΛのマージンを取ることが好ましい。したがって、Λは、該Λの公称値Λ
nominalに対して、少なくとも、以下の式(72):
【数72】
を満たす。さらに、Λは、以下の式(73):
【数73】
を満たすΛ
nominalに対して、以下の式(74):
【数74】
の範囲であることが好ましい。これは、各コアの位置が独立に設計中心から3σ=0.9μmのガウス分布を確率分布としてばらつく場合の近似と考えることができ、このとき、Λが上記式(68)または上記式(70)を満たさなくなる確率は1%以下に抑えられる。さらに、以下の式(75):
【数75】
が満たされる場合は、各コアの位置が独立に設計中心から3σ=0.7μmのガウス分布を確率分布としてばらつく場合の近似と考えることができ、このとき、Λが上記式(68)または上記式(70)を満たさなくなる確率は0.1%以下に抑えられる。さらに、以下の式(76):
【数76】
が満たされる場合は、各コアの位置が独立に設計中心から3σ=0.5μmのガウス分布を確率分布としてばらつく場合の近似と考えることができ、このとき、Λが上記式(68)または上記式(70)を満たさなくなる確率は0.001%以下に抑えられる。
【0096】
図11は、12コアMCFにおいて、波長1360nmでの被覆への漏洩損失が0.01dB/kmとなるときのd
coatとMFD/λ
ccの関係を示すグラフである。
【0097】
波長1360nmにおける被覆への漏洩損失が0.01dB/kmとするためには、d
coatとMFD/λ
ccが、以下の式(77)または式(78):
【数77】
【数78】
を満たし(
図11中の下側の破線から上の領域)、さらには、以下の式(79)または式(80):
【数79】
【数80】
を満たすことが好ましい(
図11中の上側の破線から上の領域)。
【0098】
最外周コアのdcoat(すなわちdcoatの最小値)は、一般に外周クラッド厚(OCT)と呼ばれるが、本明細書におけるdcoatは、各コアについて定義できる値とする。
【0099】
各コアの位置が設計中心からばらつき,かつ,クラッド直径が設計中心からばらつくことを許容するためには,上記式(77)から上記式(80)の範囲から少なくとも1μmのd
coatのマージンを取ることが好ましい。したがって、d
coatは、該d
coatの公称値d
coat,
nominalに対してクラッド直径の公称値CD
nominalが、少なくとも、以下の式(81):
【数81】
を満たし、さらには、以下の式(82):
【数82】
を満たすような範囲であるのが好ましい。このとき、以下の式(83)および式(84):
【数83】
【数84】
の両式が満たされる場合、d
coatが上記式(77)または上記式(79)を満たさなくなる確率は1%以下に抑えられる。また、以下の式(85)および式(86):
【数85】
【数86】
の両式が満たされる場合、d
coatが上記式(77)または上記式(79)を満たさなくなる確率は0.1%以下に抑えられる。さらに、d
coatは、以下の式(87)および式(88):
【数87】
【数88】
の両式が満たされる場合、d
coatが上記式(77)または上記式(79)を満たさなくなる確率は0.001%以下に抑えられる。
【0100】
図12は、12コアMCF(正方コア配置)において、波長1360nmでの被覆への漏洩損失が0.01dB/kmとなるときのd
coatに1μmのマージンを加え、また、10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の波長1360nmでの対向伝搬XTが-20dB(=-20dB/10km)となるΛに1μmのマージンを加えた場合の、CD(許容最小クラッド径)とMFD/λ
ccの関係を示すグラフである。なお、
図12において、MFD/λ
ccを示す軸をx軸としCDを示す軸をy軸とするとき、上側の破線は、y=13.15x+64.88(x=7.606×10
-2y-4.935)で与えられ、下側の破線は、y=13.15x+54.25(x=7.606×10
-2y-4.126)で与えられる。
【0101】
各コアの位置とクラッド外径の寸法のトレランスを考慮した上で、波長1360nmにおける被覆への漏洩損失を0.01dB/km以下にし、10km伝搬後の対向伝搬XTを-20dB以下にするためには、CD
nominalとMFD/λ
ccの関係が、以下の式(89)または式(90):
【数89】
【数90】
を満たし(
図12中の下側の点線から上の領域)、さらには、以下の式(91)または式(92):
【数91】
【数92】
を満たすことが好ましい(
図12中の上側の破線から上の領域)。
【0102】
図13は、10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の波長1360nmでの対向伝搬XTが-20dB(=-20dB/10km)、あるいは、10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の並行伝搬XT(通常の同方向伝搬時のXT)が-20dB(=-20dB/10km)となる条件下での12コアMCF(正方コア配置)の場合について、波長1360nmでの被覆への漏洩損失が0.01dB/kmとなるときのd
coatに1μmのマージンを加えるとともにΛに1μmのマージンを加えた場合のCD(許容最小クラッド径)とMFD/λ
ccの関係を示すグラフである。なお、
図13において、記号「●(
図13では斜線表示)」は、隣接コア間で並行伝搬させる12コアMCFにおける関係、記号「■(
図13では斜線表示)」は、隣接コア間で対向伝搬させる12コアMCFにおける関係をそれぞれ示している。
【0103】
図13から分かるように、伝送方式としては並行伝搬ではなく、対向伝搬が適用された方がCDを10μm強縮小できることから好ましい。
【0104】
この
図13には破線を記載していないが、
図12の場合と同様にして、正方コア配置の12コアMCFにおいて、10km伝搬後の並行伝搬XTを-20dB以下にするためには、CD
nominalとMFD/λ
ccの関係が、以下の式(93)または式(94):
【数93】
【数94】
を満たし、さらには、以下の式(95)または式(96):
【数95】
【数96】
を満たすことが好ましい。
【0105】
CDnominalが195μm、190μm、185μm、180μm、175μm、170μmのとき、12コアMCFにおいて、コア位置とクラッド径の寸法のトレランスを考慮した上で、波長1360nmで樹脂被覆への漏洩損失を0.01dB/km以下にし、対向伝搬XTを10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-20dB以下にするためには、MFD/λccが、上記CDnominalの数値が列挙された順に、9.66以下、9.32以下、8.97以下、8.62以下、8.27以下、7.93以下であることが好ましく、さらに、上記CDnominalの数値が列挙された順に、8.94以下、8.59以下、8.24以下、7.89以下、7.55以下、7.20以下であることが好ましい。
【0106】
CDnominalが195μm、190μm、185μm、180μm、175μm、170μmのとき、12コアMCFにおいて、コア位置とクラッド径の寸法のトレランスを考慮した上で、波長1360nmで樹脂被覆への漏洩損失を0.01dB/km以下にし、対向伝搬XTを10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-20dB以下にするためには、MFD/λccが、上記CDnominalの数値が列挙された順に、10.71以下、10.33以下、9.94以下、9.56以下、9.18以下、8.80以下であることが好ましく、さらに、上記CDnominalの数値が列挙された順に、9.90以下、9.52以下、9.14以下、8.76以下、8.38以下、8.00以下であることが更に好ましい。
【0107】
図14は、12コアMCF(正方コア配置)において、波長1360nmでの被覆への漏洩損失が0.01dB/kmとなるときのd
coatに1μmのマージンを加え、また10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の波長1360nmでの対向伝搬XTが-40dB(=-40dB/10km)となるΛに1μmのマージンを加えた場合のCD(許容最小クラッド径)とMFD/λ
ccの関係を示すグラフである。なお、
図14において、MFD/λ
ccを示す軸をx軸としCDを示す軸をy軸とするとき、上側の破線は、y=14.07x+66.07(x=7.105×10
-2y-4.694)で与えられ、下側の破線は、y=14.07x+55.59(x=7.105×10
-2y-3.950)で与えられる。
【0108】
各コアの位置とクラッド外径の寸法のトレランスを考慮した上で、波長1360nmにおける被覆への漏洩損失を0.01dB/km以下にし、10km伝搬後の対向伝搬XTを-40dB以下にするためには、CD
nominalとMFD/λ
ccの関係が、以下の式(97)または式(98):
【数97】
【数98】
を満たし(
図14中の下側の破線から上の領域)、さらには、以下の式(99)または式(100):
【数99】
【数100】
を満たすことが好ましい(
図14中の上側の破線から上の領域)。
【0109】
図15は、10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の波長1360nmでの対向伝搬XTが-40dB(=-40dB/10km)、あるいは、10km伝搬後(ファイバ長10km相当)の並行伝搬XTが-40dB(=-40dB/10km)となる条件化での12コアMCF(正方コア配置)の場合について、波長1360nmでの被覆への漏洩損失が0.01dB/kmとなるときのd
coatに1μmのマージンを加えるとともにΛに1μmのマージンを加えた場合のCD(許容最小クラッド径)とMFD/λ
ccの関係を示すグラフである。
なお、
図15において、記号「●(
図15では斜線表示)」は、隣接コア間で並行伝搬させる12コアMCFにおける関係、記号「■(
図15では斜線表示)」は、隣接コア間で対向伝搬させる12コアMCFにおける関係をそれぞれ示している。
【0110】
この
図15には破線を記載していないが、
図12等の場合と同様にして、正方コア配置の12コアMCFにおいて、10km伝搬後の並行伝搬XTを-40dB以下にするためには、CD
nominalとMFD/λ
ccの関係が、以下の式(101)または式(102):
【数101】
【数102】
を満たし、さらには、以下の式(103)または式(104):
【数103】
【数104】
を満たすことが好ましい。
【0111】
CDnominalが195μm、190μm、185μm、180μm、175μm、170μmのとき、12コアMCFにおいて、コア位置とクラッド径の寸法のトレランスを考慮した上で、波長1360nmで樹脂被覆への漏洩損失を0.01dB/km以下にし、対向伝搬XTを10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-40dB以下にするためには、MFD/λccが、上記CDnominalの数値が列挙された順に、8.39以下、8.09以下、7.78以下、7.47以下、7.16以下、6.85以下であることが好ましく、さらに、上記CDnominalの数値が列挙された順に、7.77以下、7.46以下、7.15以下、6.85以下、6.54以下、6.23以下であることが好ましい。
【0112】
CDnominalが195μm、190μm、185μm、180μm、175μm、170μmのとき、12コアMCFにおいて、コア位置とクラッド径の寸法のトレランスを考慮した上で、波長1360nmで樹脂被覆への漏洩損失を0.01dB/km以下にし、対向伝搬XTを10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-40dB以下にするためには、MFD/λccが、上記CDnominalの数値が列挙された順に、9.91以下、9.55以下、9.19以下、8.84以下、8.48以下、8.13以下であることが好ましく、さらに、上記CDnominalの数値が列挙された順に、9.16以下、8.80以下、8.45以下、8.09以下、7.74以下、7.38以下であることが好ましい。
【0113】
λccは、1260nm以下であることで、Oバンドでのシングルモード動作が担保できるので好ましい。このとき、MFD/λccを6.2以上とすることで、1260nm以下のλccと8.2μm±0.4μmのMFDを両立できるので好ましい。MFD/λccを6.5以上とすることで、1260nm以下のλccと8.6μm±0.4μmのMFDを両立できるのでさらに好ましい。
【0114】
また、λccは1360nm以下であることが好ましい。このとき、Oバンドで高次モードが22m以上伝搬するが、短距離での局所曲げや接続を繰り返さなければ、事実上のシングルモード動作が担保でき、かつ、基底モードをより強くコアへ閉じ込められるので好ましい。また、MFD/λccを6.0以上とすることで、1360nm以下のλccと8.6μm±0.4μmのMFDを両立できるのでさらに好ましい。
【0115】
これらの場合、MFD/λccは、上述のCDnominalから規定される上限と、MFDとλccの範囲から規定される下限の間の値をとることが好ましい。
【0116】
MFDの公称値をMFDnominalとしてトレランスを±0.4μm、零分散波長λ0の公称値をλ0nominalとしてトレランスを±12nmとるとき、MFD/λccの値は、MFDがMFDnominal-0.4μmで、かつ、λ0がλ0nominal-12nmのときに最小となり、MFDがMFDnominal+0.4μmで、かつ、λ0がλ0nominal+12nmのときに最大になる。このとき、「MFD/λccのトレランス」は、MFD/λccの上限値と下限値の差が少なくとも1.9以上とれるMCF構造であることが好ましく、2.5以上とれることがより好ましく、3.0以上とれることが最も好ましい。
【0117】
実際には、各コアの屈折率プロファイルのパラメータ(a、b、Δ1、Δ2、Δ3、あるいはaESI、Δ1ESI、Δ2ESIなど)は、公称値から独立かつランダムにばらつくわけではなく、各コアの屈折率プロファイルを測定してaESI、bを調整することができる。そのため、MFD/λccのトレランスを小さくすることは可能だが、それでもMFD/λccの上限値と下限値の差が1.0以上とれるMCF構造であることが好ましく、1.5以上とれる構造であることが更に好ましい。これにより、MCFの歩留まりを十分な製造性を持つレベルまで向上させることができる。
【0118】
1260nm以下のλccと8.2μm±0.4μmのMFDを両立させる場合、MFD/λccは6.2以上になるので、MFD/λccのトレランスを1.0以上、1.5以上、1.9以上、2.5以上、3.0以上持たせるためには、MFD/λccは上限値が、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、7.2以上、7.7以上、8.1以上、8.7以上、9.2以上を許容するMCF構造であることが好ましい。そのためには、CDnominalは、12コアMCFにおいて、波長1360nmで樹脂被覆への漏洩損失が0.01dB/km以下、波長1360nmでの対向伝搬XTが10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-20dB以下となるように、Λとdcoatにマージンを加えた場合の許容可能なCDnominalは、式(89)から、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、149μm以上、156μm以上、161μm以上、169μm以上、175μm以上であることが好ましく、さらに式(91)から、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、、160μm以上、166μm以上、171μm以上、179μm以上、186μm以上であることが好ましい。このとき、CDnominalは、12コアMCFにおいて、波長1360nmで樹脂被覆への漏洩損失が0.01dB/km以下、波長1360nmでの対向伝搬XTが10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-40dB以下となるように、Λとdcoatにマージンを加えた場合の許容可能なCDnominalは、式(97)から、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、157μm以上、164μm以上、170μm以上、178μm以上、185μm以上であることが好ましく、さらに式(99)から、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、167μm以上、174μm以上、173μm以上、182μm以上、189μm以上であることが好ましい。
【0119】
1260nm以下のλccと8.6μm±0.4μmのMFDを両立させる場合、MFD/λccは6.5以上になるので、MFD/λccのトレランスを1.0以上、1.5以上、1.9以上、2.5以上、3.0以上持たせるためには、MFD/λccの上限値が、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、7.5以上、8.0以上、8.4以上、9.0以上、9.5以上を許容するMCF構造であることが好ましい。そのためには、CDnominalは、12コアMCFにおいて、波長1360nmで樹脂被覆への漏洩損失が0.01dB/km以下、波長1360nmでの対向伝搬XTが10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-20dB以下となるように、Λとdcoatにマージンを加えた場合の許容可能なCDnominalは、式(89)から、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、153μm以上、159μm以上、165μm以上、173μm以上、179μm以上であることが好ましく、さらに式(91)から、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、163μm以上、170μm以上、175μm以上、183μm以上、190μm以上であることが好ましい。このとき、CDnominalは、12コアMCFにおいて、波長1360nmで樹脂被覆への漏洩損失が0.01dB/km以下、波長1360nmでの対向伝搬XTが10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-40dB以下となるように、Λとdcoatにマージンを加えた場合の許容可能なCDnominalは、式(97)から、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、161μm以上、168μm以上、174μm以上、182μm以上、189μm以上であることが好ましく、さらに式(99)から、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、172μm以上、179μm以上、184μm以上、193μm以上、199μm以上であることが好ましい。
【0120】
1360nm以下のλccと8.6μm±0.4μmのMFDを両立させる場合、MFD/λccは6.0以上になるので、MFD/λccのトレランスを少なくとも1.0、1.5、1.9、2.5、あるいは、3.0持たせるためには、MFD/λccの上限値が、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、少なくとも7.0、7.5、7.9、8.5、あるいは、9.0を許容するMCF構造であることが好ましい。そのためには、CDnominalは、12コアMCFにおいて、波長1360nmで樹脂被覆への漏洩損失が0.01dB/km以下、波長1360nmでの対向伝搬XTが10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-20dB以下となるように、Λとdcoatにマージンを加えた場合の許容可能なCDnominalは、式(89)から、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、146μm以上、153μm以上、158μm以上、166μm以上、173μm以上であることが好ましく、さらに式(91)から、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、157μm以上、164μm以上、169μm以上、177μm以上、183μm以上であることが好ましい。このとき、CDnominalは、12コアMCFにおいて、波長1360nmで樹脂被覆への漏洩損失が0.01dB/km以下、波長1360nmでの対向伝搬XTが10km伝搬後(ファイバ長10km相当)に-40dB以下となるように、Λとdcoatにマージンを加えた場合の許容可能なCDnominalは、式(97)から、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、154μm以上、161μm以上、167μm以上、175μm以上、182μm以上であることが好ましく、さらに式(99)から、上記MFD/λccのトレランスの数値が列挙された順に、165μm以上、170μm以上、176μm以上、184μm以上、191μm以上であることが好ましい。
【0121】
λccが1260nmを超え1360nm以下である場合、ITU-T G.650.1(03/2018)のFigure 12の構成(ケーブル化していないファイバ)でサンプルファイバ22m中の20mを曲げ半径140mm以上の曲げを加えて、前記20m区間の前後にそれぞれ半径40mmの曲げを1巻き加えて、全モードを均一に励振した場合に高次モードの強度をPh、基底モードの強度をPfとしたとき、10log10[Ph/(Pf+Ph)]=0.1dBとなる波長をλccとして測定するが、本開示のMCFに関しては、サンプルファイバ22m中の20m区間に加える曲げの半径を半径60mm以上100mm以下に代えて曲げを加えて測定したときのカットオフ波長(λccR)が1260nm以下であることが好ましい。これにより、ケーブル実装後のOバンドにおけるシングルモード動作が担保され得る。また、サンプルファイバの長さLsample[m]が22mを超え1000m以下の範囲で、Lsample-2[m]に曲げ半径140mm以上の曲げを加えて、前記Lsample-2[m]区間の前後にそれぞれ半径40mmの曲げを1巻き加えて、測定したカットオフ波長(λccL)が1260nm以下であることが好ましい。これによりケーブル長がLsample[m]のケーブルにおいて、Oバンドにおけるシングルモード動作が担保され得る。
【0122】
本開示のMCFの各コアは、波長1310nm以上1360nm以下における曲げ損失が、曲げ半径10mmで0.15dB/turn以下であることが好ましく、0.02dB/turn以下であることがより好ましい。これにより、本開示のMCFが間欠接着リボン型の超高密度ケーブルに実装された場合にもケーブル化後の損失増加を抑制することができる。
【0123】
本開示のMCFを内蔵するMCFケーブルは、直線状に(少なくとも曲げ半径1m以上に)伸ばしたときに、ケーブル内に実装されたMCFの平均曲げ半径が0.14m以下であることが好ましく、0.10m以下であることがより好ましい。また、本開示のMCFを内蔵するMCFケーブルは、ケーブル内に実装されたMCFの平均曲げ半径は0.14m以上0.3m以下であることも好ましい。これにより、XTを低減することができる。
【0124】
また、本開示のMCFを内蔵するMCFケーブルは、ケーブル内に実装されたMCFの平均曲げ半径が0.03m以上であることが好ましく、0.06m以上であることがより好ましい。これにより、曲げ起因損失を低減することができる。
【0125】
さらに、本開示のMCFを内蔵するMCFケーブルは、間欠接着リボン型ケーブルであることが好ましい。これにより、柔軟な間欠接着リボンを螺旋状にねじりながらケーブル内に実装することができ、MCFに小さな曲げ半径を付与しながらケーブル化することができるのでXTの低減が可能になる。
【0126】
本開示のMCFを内蔵するMCFケーブルは、リボンスロット型ケーブルであり、スロット部材の中心に抗張力体を有することが好ましい。これにより、MCFの曲げ半径を制御しやすくなり、XTを低減することができる。また、スロット部材中心に抗張力体があることにより、どの向きにもケーブルを曲げやすく、ケーブル敷設作業を容易に行うことができる。
【0127】
本開示のMCFを内蔵するMCFケーブルは、シース内部の空間にスロット部材を設けず、シース内部に抗張力体を有することが好ましい。これにより、シース内部の空間を有効活用することができ、MCFケーブルの断面積当たりのコア数を増やすことができる。
【符号の説明】
【0128】
1A、1B…MCFケーブル、100…MCF、100A、100B、100C、100D、100E…MCF、110…コア、100A…内周コア、110Ba…格子点配置コア(外周コア)、110Bb…格子点非配置コア(外周コア)、110a…第1コア、110b…第2コア、120…共通クラッド、130…樹脂被覆、200、200A、200B、200C…ガラスファイバ、300、500…外皮、400A、400B、700…抗張力線、600…スロッテッドコア、800…正方格子、810…内周格子点、820…外周格子点、830…非外周格子点、AX、AX1、AX2、AX3、AX4、AX5…共通クラッドの中心、LA…対称軸。