(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】フィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20240730BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20240730BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20240730BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
B32B27/36
C08J7/04 Z
G01N21/27 B
(21)【出願番号】P 2020187045
(22)【出願日】2020-11-10
【審査請求日】2023-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】増田 嘉丈
(72)【発明者】
【氏名】宇都 孝行
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/127335(WO,A1)
【文献】特開2014-108570(JP,A)
【文献】特開2019-057481(JP,A)
【文献】特開2006-165493(JP,A)
【文献】特開2015-004686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/22、7/04-7/06
G01N 21/00-21/61
G01S 7/48-17/95
G02B 5/20-5/28
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長900nm~1000nmの光および波長1500nm~1600nmの光を照射したときの最小透過率が共に70%以上であり、少なくとも一方の面において、分光測色計の反射物体色測定で測定される彩度が20以上であ
り、少なくとも一方の面について、30%以上の反射率が波長幅20nm以上にわたって連続する反射帯域を少なくとも一つ有することを特徴とする、フィルム。
【請求項2】
波長900nm~1000nmの光を照射したときの最小透過率が70%以上であり、少なくとも一方の面に波長400nm~1200nmの光を照射した際に反射率が4%以下となる最小反射波長が800~1100nmの間に存在することを特徴とする、フィルム。
【請求項3】
少なくとも一方の面に波長400nm~1200nmの光を照射した際に反射率が4%以下となる最小反射波長が800nm~1100nmの間に存在する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
少なくとも一方の面において、分光測色計の反射物体色測定で測定される彩度が20以上であることを特徴とする、請求項2に記載のフィルム。
【請求項5】
波長380nm~780nmの光の平均透過率が30%以下である、請求項1~4のいずれかに記載のフィルム
。
【請求項6】
一方の面と、その反対側の面の色差が20よりも高い、請求項1~
5のいずれかに記載のフィルム。
【請求項7】
ポリエステル樹脂(樹脂A)を主成分とする層(A層)と、前記樹脂Aとは異なる熱可塑性樹脂(樹脂B)を主成分とする層(B層)を交互に51層以上積層した積層構成部を有する、請求項1~
6のいずれかに記載のフィルム。
【請求項8】
着色層を少なくとも一方の表層に有するフィルムであって、前記着色層を有する表面側から光を照射した際に、30%以上の反射率が波長幅20nm以上にわたって連続する反射帯域を少なくとも一つ有する、請求項1~
7のいずれかに記載のフィルム。
【請求項9】
前記A層、前記B層、前記着色層のいずれとも異なる2つの層(C層、D層)を有し、前記着色層と前記C層、及び前記D層がこの順に隣接して積層されており、前記C層と前記D層の屈折率が0.02以上異なる、請求項
8に記載のフィルム。
【請求項10】
前記C層および前記D層の厚みが共に0.03μm以上0.15μm以下である、請求項
9に記載のフィルム。
【請求項11】
450MHz~300GHzの周波数範囲における最大電磁波損失が10dB以下である、請求項1~1
0のいずれかに記載のフィルム。
【請求項12】
ピーク波長Anmの光を受光して動作するセンサー受光部と、センサー受光部に設けられたフィルムを含むカバー部材からなる光学センサーであって、前記フィルムが請求項1~1
1のいずれかに記載のフィルムである、光学センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線を透過する高彩度のフィルムおよび光学センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線を用いたセンサーや通信技術は、家電製品のリモコンによる操作、携帯電話やノートパソコンによる情報伝達、3Dテレビ用シャッターメガネの操作や、自動車の自動運転に活用されるLiDAR(Light Detection and Ranging)など、様々な用途で用いられている。
【0003】
これらの用途では、赤外線受発光部を保護する観点から、カバーパネルが設置されているが、カバーパネルが透明である場合、赤外線受発光部が外部から視認されるため意匠性に影響がある。そこで、赤外線受発光部が見えなくなるように、可視光を遮断し赤外光を透過する黒色または暗色の色素を含んだカバーパネルが用いられてきた。しかしながら、この方法では黒色または暗色しか用いることができないため、意匠に制約があった。
【0004】
この問題に対して、In、Sn、Zn等を島状に蒸着することによって赤外光を透過しつつ金属調の意匠性を備える赤外線透過カバーパネルが提案されている(特許文献1)。また、金属酸化物を蒸着した多層膜を用いて可視光の反射率スペクトルを任意に制御し、意匠性を向上させた赤外線受発光部も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-4526号公報
【文献】特開2006-165493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されている金属を蒸着する方法では、可視光の反射スペクトルは蒸着厚みと材料で決まるため、任意に制御することが難しく、自由に意匠性を施すことは困難であった。また、一般的に金属酸化物の多層膜は蒸着回数を減らすために屈折率差の大きな物質が用いられるが、屈折率差が過度に大きくなると、多層膜中の各層の反射スペクトルの幅が広くなる。そのため、特許文献2に記載されている方法では、特定の色のみを反射するような、急峻な反射スペクトルの実現は非常に困難であった。本発明は、かかる問題を解決するべく、可視光を遮断し、センサー光を透過する意匠性の高いフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は次のような構成を有する。すなわち、波長900nm~1000nmの光および波長1500nm~1600nmの光を照射したときの最小透過率が共に70%以上であり、少なくとも一方の面において、分光測色計の反射物体色測定で測定される彩度が20以上であることを特徴とする、フィルムである。若しくは、波長900nm~1000nmの光の最小透過率が70%以上であり、少なくとも一方の面に波長400nm~1200nmの光を照射した際に反射率が4%以下となる最小反射波長が800nm~1100nmの間に存在することを特徴とする、フィルムである。以下、前者のフィルムを本発明の第1のフィルム、後者のフィルムを本発明の第2のフィルムということがあり、また、これらを総称して本発明のフィルムということがある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、センサーからの光を透過しながらも意匠性の高いフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明のフィルムについて詳細を述べるが、本発明は以下の実施例を含む実施の形態に限定して解釈されるものではなく、発明の目的を達成できて、かつ、発明の要旨を逸脱しない範囲内においての種々の態様は当然本発明の範囲に含まれる。
【0010】
本発明の第1のフィルムは、波長900nm~1000nmの光および波長1500nm~1600nmの光を照射したときの最小透過率が共に70%以上であることが重要である。赤外線を用いるセンサーに照射される波長としては、例えば、家電製品のリモコンセンサーであれば940nm~950nmであり、LiDARセンサーであれば900nm~910nmや1550nm等である。そのため、波長900nm~1000nmの光および波長1500nm~1600nmの光を照射したときの最小透過率を共に70%以上とすると、このようなセンサーの反応の阻害を軽減することができる。上記観点から、波長900nm~1000nmの光および波長1500nm~1600nmの光を照射したときの最小透過率は、より好ましくは共に80%以上であり、さらに好ましくは共に90%以上である。
【0011】
ここで「波長900nm~1000nmの光および波長1500nm~1600nmの光を照射したときの最小透過率が共に70%以上」とは、波長900nm~1000nmの光をフィルムに照射したときに最も透過率が低くなる波長における透過率、および波長1500nm~1600nmの光を照射したときに最も透過率が低くなる波長における透過率が、共に70%以上であることをいう。上記の最小透過率は公知の分光光度計で測定することができ、このような分光光度計としては、例えば日立製作所製 分光光度計(U-4100 Spectrophotomater)等が挙げられ、当該分光光度計を用いた場合の測定条件等は後述する。
【0012】
なお、最小透過率の測定に際しては、光の照射は分光により上記波長帯域のみの光を照射して測定しても、上記波長帯域を全て含む光を照射して上記波長帯域の透過率のデータより測定してもよい。以下、特定の波長帯域における反射率、透過率やこれらの値から特定する各測定値については同様である。
【0013】
波長900nm~1000nmの光および波長1500nm~1600nmの光を照射したときの最小透過率を共に70%以上又は上記の好ましい範囲とする手段としては、例えば、フィルムに金属蒸着をせず、熱可塑性樹脂を主成分とする層により構成されるフィルムとする手段を用いることができる。
【0014】
また、本発明の第1のフィルムは、少なくとも一方の面において、分光測色計の反射物体色測定で測定される彩度が20以上であることが重要である。なお、以下「分光測色計の反射物体色測定で測定される彩度」を単に「彩度」ということがある。このような態様とすることで、色付きが豊かで、意匠性の高いフィルムとすることができる。上記観点から、少なくとも一方の面における彩度は、より好ましくは50以上、更に好ましくは70以上である。なお、彩度の上限は理論上100となる。彩度は、公知の分光測色計により測定することができ、例えばコニカミノルタセンシング株式会社製、分光測色計CM-3600dを用いることができる。同装置を用いたときの測定条件は後述する。
【0015】
本発明の第1のフィルムにおいて、少なくとも一方の面における彩度を20以上又は上記好ましい範囲とする方法は特に限られるものではないが、例えば、フィルムに樹脂、着色剤、有機溶剤などにより着色した層(着色層)を設ける方法等が挙げられる。本発明のフィルムの着色層形成に用いられる着色樹脂組成物は、樹脂、着色剤および有機溶剤を含有することが好ましく、その詳細は後述する。また、後述する本発明の第2のフィルムにおいても、本発明の第1のフィルムと同様に着色層を設けることができる。
【0016】
本発明の第2のフィルムは、赤外線を用いるセンサーの反応の阻害を軽減する観点から、波長900nm~1000nmの光を照射したときの最小透過率が70%以上であることが重要である。ここで「波長900nm~1000nmの光を照射したときの最小透過率」とは、波長900nm~1000nmの光をフィルムに照射したときに最も透過率が低くなる波長における透過率をいう。このような態様とすることで、当該範囲の波長で反応する家電製品のリモコンセンサーの反応の阻害が軽減される。上記観点から、波長900nm~1000nmの光を照射したときの最小透過率は、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは96%以上である。本発明の第2のフィルムにおいて、波長900nm~1000nmの光の最小透過率を70%以上又は上記の好ましい範囲とする手段としては、フィルムに金属蒸着をせず、熱可塑性樹脂を主成分とする層により構成されるフィルムとする手段が挙げられる。
【0017】
本発明の第2のフィルムは、少なくとも一方の面に波長400nm~1200nmの光を照射した際に反射率が4%以下となる最小反射波長が800nm~1100nmの間に存在することが重要である。当該最小反射波長の反射率は、より好ましくは3%以下であり、更に好ましくは2%以下である。このような態様とすることで、通常では空気とフィルムの界面で約10%程度反射する光の反射をさらに低減することが可能となり、前述の赤外線を利用するセンサーの応答性が飛躍的に向上する。
【0018】
ここで「波長400nm~1200nmの光を照射した際に反射率が4%以下となる最小反射波長が800nm~1100nmの間に存在する」とは、波長400nm~1200nmの光をフィルムに照射したときに、反射率の最小値が4%以下であり、かつ反射率が最小となる波長が800nm~1100nmの間に存在することをいう。なお、かつ反射率が最小値となる波長が複数存在する場合は、その少なくとも一つが800nm~1100nmの範囲にあれば上記要件を充足するとみなすことができ、以下最小反射率については同様とする。上記の最小反射波長は公知の分光光度計で各波長の光の反射率を測定した結果より特定することができ、反射率の測定装置としては、例えば日立製作所製 分光光度計(U-4100 Spectrophotomater)等を用いることができる。当該測定装置を用いた場合の測定条件等は後述する。
【0019】
また、少なくとも一方の面に波長400nm~1200nmの光を照射した際に反射率が4%以下となる最小反射波長が800nm~1100nmの間に存在する態様とする方法は、例えば、波長800nm~1100nmの間に最小反射波長を有するように反射防止層(後述)を設ける方法が挙げられる。
【0020】
本発明のフィルムは、波長380nm~780nmの光の平均透過率が30%以下であることが好ましい。ここで「波長380nm~780nmの光の平均透過率」とは、同波長帯域の光をフィルムに照射したときの各波長における透過率の平均値をいう。なお、上記の平均透過率は公知の分光光度計で測定することができ、測定装置としては、上述のものを使用することができる。
【0021】
波長380nm~780nmの光の平均透過率を30%以下とすると、本発明のフィルムをセンサーの受発光部に用いた際、センサー受発光部が外部から視認されることを防止しつつ、センサーが受発光する波長の光を透過することでセンサーの機能を維持することができる。上記観点から、波長380nm~780nmの光の平均透過率は、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。このようなフィルムとする方法は、例えば、後述の通り少なくとも一方のフィルム表面において、波長380nm~780nmの範囲の光の平均反射率を70%以上とする方法が挙げられる。
【0022】
本発明のフィルムは、彩度を高めて意匠性を向上させる観点から、着色層を少なくとも一方の表層に有することが好ましい。ここで着色層とは、後述する着色剤を少なくとも一つ含む層をいう。着色層における樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、カルド樹脂、シロキサン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミド前駆体、ポリアミド樹脂、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、塩酢ビニル樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ニトロセルロース、環化ゴム、塩化ゴム、ロジン、ロジン誘導体などの樹脂を単独で又は組み合わせて使用することができる。これらの中でも、着色樹脂組成物の貯蔵安定性や着色膜の耐熱性の観点から、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シロキサン樹脂を単独でまたは組み合わせて用いることが好ましく、なかでもアクリル樹脂を用いることがより好ましい。
【0023】
また、着色層の屈折率は、1.3以上1.6以下であることが好ましく、より好ましくは1.3以上1.5以下であり、さらに好ましくは1.3以上1.4以下である。このような態様とすることで、後述の反射防止層を設けた場合にフィルムの反射率を低く抑えることができる。着色層の屈折率は、例えば使用する樹脂の選択により調整することができる。なお、着色層の屈折率はアッベ屈折率計により測定することができる。
【0024】
着色層における着色剤としては、例えば、有機顔料、無機顔料、又は染料が挙げられるが、着色層の耐熱性、信頼性および耐光性を向上させるためには、有機顔料、無機顔料が好ましい。なお、これらの着色剤は、本発明の効果を損なわない限り適宜組み合わせて用いることができる。
【0025】
有機顔料としては、例えば、ジケトピロロピロール系顔料;アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料;銅フタロシアニン、ハロゲン化銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料;アミノアントラキノン、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系顔料;キナクリドン系顔料;ジオキサジン系顔料;ペリノン系顔料;ペリレン系顔料;チオインジゴ系顔料;イソインドリン系顔料;イソインドリノン系顔料;キノフタロン系顔料;スレン系顔料;金属錯体系顔料などが挙げられる。
【0026】
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ホワイトカーボン、アルミナホワイト、カオリンクレー、タルク、ベントナイト、黒色酸化鉄、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、モリブデートオレンジ、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、ビクトリアグリーン、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトシリカブルー、コバルト亜鉛シリカブルー、マンガンバイオレット、コバルトバイオレットなどが挙げられる。
【0027】
染料としては、例えば、アゾ染料、アントラキノン染料、縮合多環芳香族カルボニル染料、インジゴイド染料、カルボニウム染料、フタロシアニン染料、メチン染料、ポリメチン染料などが挙げられる。
【0028】
本発明のフィルムにおいて黒色の意匠が求められる場合は、黒色を実現できる着色剤を用いることが好ましい。このような着色剤としては、例えば、黒色有機顔料、混色有機顔料、無機顔料等が挙げられ、これらを単独で又は適宜組み合わせて用いることができる。黒色有機顔料としては、例えば、カーボンブラック、ペリレンブラック、アニリンブラック、ベンゾフラノン系顔料などが挙げられる。混色有機顔料としては、例えば、赤、青、緑、紫、黄色、マゼンダ、シアンなどの色を有する2種以上の顔料を混色して疑似黒色化したものが挙げられる。黒色無機顔料としては、例えば、グラファイト;チタン、銅、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛、カルシウム、銀等の金属の微粒子;上記金属の酸化物、複合酸化物、硫化物、窒化物、酸窒化物などが挙げられる。
【0029】
一方、白色の意匠が求められる場合は、白色の着色剤を用いることが好ましい。白色の着色剤としては、例えば、二酸化チタン、炭酸バリウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナホワイト、二酸化珪素などが挙げられ、これらは単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0030】
着色層を形成するための着色樹脂組成物の製造方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。先ず、分散機を用いて樹脂、着色剤、必要に応じて有機溶剤を含有する樹脂溶液を混合して各成分を分散させ、着色剤濃度の高い着色剤分散液を予め調製する。その後、さらに樹脂や必要に応じて感光剤などの他の成分を添加して撹拌し、着色樹脂組成物を得る。また、必要に応じて樹脂溶液の濾過を行ってもよい。
【0031】
上記樹脂溶液中に各成分を分散させる分散機としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー、3本ロールミル、高速度衝撃ミルなどを用いることができる。これらの中でも、分散効率化や微分散化のため、ビーズミルを用いることが好ましい。ビーズミルとしては、例えば、コボールミル、バスケットミル、ピンミル、ダイノーミルなどが挙げられる。ビーズミルのビーズとしては、例えば、チタニアビーズ、ジルコニアビーズ、ジルコンビーズなどが挙げられる。
【0032】
本発明のフィルムにおいて、着色層は、上記着色樹脂組成物の硬化又は乾燥により形成される層であることが好ましい。着色樹脂組成物において樹脂に架橋性基が含有される場合、架橋性基は熱および/または光により架橋され、実質的に残存していないことが好ましい。かかる着色層は、例えば、着色層形成前のフィルムの表面に着色樹脂組成物の塗膜を形成し、これを熱風オーブン等により加熱処理することにより得ることができる。
【0033】
着色樹脂組成物における着色剤の含有量は、固形成分全量100質量%に対して、1質量%以上60質量%以下が好ましい。ここで、固形成分とは樹脂および着色剤とする。固形成分に占める着色剤の含有量を1質量%以上とすることにより、層を薄くしつつ可視光遮断性を高めることができる。上記観点から、固形成分に占める着色剤の含有量は10質量%以上がより好ましい。一方、固形成分に占める着色剤の含有量を60質量%以下とすることにより、着色剤の分散安定性を向上させることができ、また、着色層と他の層との界面における入射光の反射を抑制し、近赤外線透過性をより向上させることもできる。上記観点から、固形成分に占める着色剤の含有量は40質量%以下が好ましく、17質量%以下がより好ましい。
【0034】
着色樹脂組成物における有機溶剤としては、例えば、エーテル類、アセテート類、エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素類、アミド類、アルコール類などが挙げられ、これらは単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0035】
エーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0036】
アセテート類としては、例えば、ブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、シクロヘキサノールアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、1,4-ブタンジオールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート等が挙げられる。
【0037】
エステル類としては、例えば、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、蟻酸n-ペンチル、酢酸i-ペンチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸i-プロピル、酪酸n-ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル等が挙げられる。
【0038】
ケトン類としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等が挙げられる。芳香族炭化水素類としては、例えば、トルエン、キシレンなどが挙げられる。アミド類としては、例えば、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0039】
アルコール類としては、例えば、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンタノ-ル、4-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジアセトンアルコール等などが挙げられる。
【0040】
これらの中でも、着色剤をより分散安定化させるため、有機溶剤がアセテート類を含むことが好ましい。同様の観点から、有機溶剤全体に占めるアセテート類の含有量は、50質量%以上100質量%以下が好ましく、70質量%以上100質量%以下がより好ましい。
【0041】
着色樹脂組成物は、固形成分の分散性を高める観点から、さらに高分子分散剤を含有することも好ましい。高分子分散剤とは、顔料表面への化学的結合または吸着作用を有する顔料親和性基と、親溶媒性を有する高分子鎖または基とを併せ持つ成分をいう。高分子分散剤は、後述の湿式メディア分散処理において、顔料の分散媒への濡れ性を向上させて顔料の解凝集を促進し、立体障害および/または静電反発効果により粒度および粘度を安定化させ、さらに、着色樹脂組成物の貯蔵時あるいは塗布時の色分離の発生を抑制する効果を奏する。
【0042】
高分子分散剤としては、例えば、ポリエステル系高分子分散剤、アクリル系高分子分散剤、ポリウレタン系高分子分散剤、ポリアリルアミン系高分子分散剤、カルボジイミド系分散剤、ポリアミド系高分子分散剤などが挙げられる。これらの中でも、アクリル系高分子分散剤、ポリアミド系高分子分散剤がより好ましい。ポリアミド系高分子分散剤としては、ポリエステル鎖からなる側鎖を複数有する櫛型構造のものが好ましく、より具体的には、ポリアルキレンイミンなどの多数の窒素原子を有する構造を主鎖に有し、その窒素原子を介してアミド結合したポリエステル鎖の側鎖を複数有する化合物が好ましい。このような櫛型構造のポリアミド系分散剤としては、例えば、“DISPERBYK”(登録商標)2200(ビックケミー社製)、“SOLSPERSE”(登録商標)11200、28000(いずれもルーブリゾール(株)製))などが挙げられる。
【0043】
高分子分散剤は、アミン価が1mgKOH/g以上であり酸価が1mgKOH/g未満である分散剤、酸価が1mgKOH/g以上でありアミン価が1mgKOH/g未満である分散剤、アミン価が1mgKOH/g以上であり酸価が1mgKOH/g以上である分散剤、アミン価が1mgKOH/g未満であり酸価が1mgKOH/g未満である分散剤に分類される。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、アミン価が1mgKOH/g以上である分散剤が好ましい。
【0044】
アミン価が1mgKOH/g以上であり酸価が1mgKOH/g未満である高分子分散剤としては、例えば、“DISPERBYK”(登録商標)102,160,161,162,2163,164,2164,166,167,168,2000,2050,2150,2155,9075,9077、“BYK”(登録商標)-LP N6919,“DISPERBYK”(登録商標)-LP N21116,“DISPERBYK”(登録商標)-LP N21234(以上、いずれもビックケミー社製)、“EFKA”(登録商標)4015,4020,4046,4047,4050,4055,4060,4080,4300,4330,4340,4400,4401,4402,4403,4800(以上、いずれもBASF社製)、“アジスパー”(登録商標)PB711(味の素ファインテクノ(株)製)、“SOLSPERSE”(登録商標)13240,13940,20000,71000,76500(以上、いずれもルーブリゾール(株)製)などが挙げられる。
【0045】
アミン価が1mgKOH/g以上であり酸価が1mgKOH/g以上である高分子分散剤としては、例えば、“DISPERBYK”(登録商標)142,145,2001,2010,2020,2025,9076、Anti-Terra-205(以上、いずれもビックケミー社製)、“SOLSPERSE”(登録商標)24000(ルーブリゾール(株)社製)、“アジスパー”(登録商標)PB821,PB880,PB881(以上、いずれも味の素ファインテクノ(株)製)、“SOLSPERSE”(登録商標)9000,11200,13650,24000SC,24000GR,32000,32500,32550,326000,33000,34750,35100,35200,37500,39000、56000(ルーブリゾール(株)製)などが挙げられる。
【0046】
高分子分散剤の含有量は、固形成分の分散安定性を向上させる観点から、着色剤全体100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましい。一方、高分子分散剤の含有量は、着色膜の耐熱性や密着性を向上させる観点から、着色剤全体100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましい。
【0047】
着色樹脂組成物は、熱架橋剤を含有してもよい。熱架橋剤を含有することにより、最終的に得られる塗膜強度を向上させることができる。熱架橋剤としては、アルコキシメチル基および/またはメチロール基を2つ以上有する化合物、エポキシ基を2つ以上有する化合物などが挙げられる。なお、これらを2種以上含有してもよい。
【0048】
また、着色樹脂組成物は、レベリング剤を含有してもよい。レベリング剤を含有することにより、塗布性や着色層の表面平滑性を向上させることができる。レベリング剤としては、例えば、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン等の陰イオン界面活性剤;ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤;ラウリルジメチルアミンオキサイド、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ソルビタンモノステアレート等の非イオン界面活性剤;ポリジメチルシロキサン等を主骨格とするシリコーン系界面活性剤;フッ素系界面活性剤などが挙げられる。なお、これらを2種以上含有してもよい。界面活性剤の市販品としては、例えば、“BYK”(登録商標)-302、“BYK”(登録商標)-333、“BYK”(登録商標)-3550、“BYK”(登録商標)-392(以上、いずれもビックケミー社製)が挙げられる。
【0049】
着色樹脂組成物は、樹脂としてアルカリ可溶性樹脂を含有し、さらに感光剤を含有することにより、感光性を付与することができる。露光マスクを介したパターン露光により露光部のアルカリ溶解性を低下させて、アルカリ現像液により未露光部を除去してパターン形成する、いわゆるネガ型の感光性を有してもよいし、露光マスクを介したパターン露光により露光部のアルカリ溶解性を未露光部のアルカリ溶解性よりも高くし、アルカリ現像液により露光部を除去してパターン形成する、いわゆるポジ型の感光性を有してもよい。
【0050】
着色層は、印刷層、ハードコート層、ポリマー層もしくは、接着層であることが好ましい。印刷層の形成方法としては、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、パッド印刷、凸版印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷等が挙げられる。ハードコート層の形成方法としては、グラビアコート、ロールコート、リバースロールコート、ロールドクタコート、バーコート、カーテンフローコート、ダイコート、スピンコート、エアドクタコート等を用いて顔料や染料を分散させた塗剤を塗布する方法が挙げられる。ポリマー層の形成方法としては、顔料や染料を分散させたポリマーフィルムを積層する方法が挙げられ、その方法として、インサート成形や、ウェットラミネート法、ドライラミネート法、ホットメルトラミネート法、テープラミネート法等の接着剤を用いた方法が挙げられる。接着層の形成方法としては、ウェットラミネート法、ドライラミネート法、ホットメルトラミネート法等が挙げられる。
【0051】
テープラミネート法等に用いられる接着層の形成には、顔料や染料を分散させたものを用いることや、顔料や染料を分散させたプライマー層(接着促進層)を設けること等などができる。プライマー層の形成方法としては、グラビアコート、ロールコート、リバースロールコート、ロールドクタコート、バーコート、カーテンフローコート、ダイコート、スピンコート、エアドクタコート等を用いて顔料や染料を分散させた塗剤を塗布する方法が挙げられる。また、プライマー層には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等の高分子、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤等の架橋剤、シリカ粒子等の無機粒子等が含まれることが好ましい。
【0052】
本発明のフィルムは、少なくとも一方の面について、30%以上の反射率が波長幅20nm以上にわたって連続する反射帯域を少なくとも一つ有することが好ましい。当該反射帯域における反射率は、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上である。当該反射帯域における反射率が高いほど彩度が高く、意匠性に優れるフィルムとすることができる。30%以上の反射率が波長幅20nm以上にわたって連続する反射帯域を少なくとも一つ有するか否かは、分光光度計で各波長における反射率を測定した結果より判断することができ、分光光度計としては、例えば、前述のものを使用することができる。
【0053】
このようなフィルムとするためには、後述の通り積層構成部において光学特性の異なる2種以上の樹脂の面内屈折率の差を大きくすることや、少なくとも一方の表層に前述の着色層を設けることが効果的である。なお、意匠性の観点からは、少なくとも一方の表層に着色層を有する場合、着色層を有する表面側から光を照射した際に、30%以上の反射率が波長幅20nm以上にわたって連続する反射帯域を少なくとも一つ有することが好ましい。
【0054】
本発明のフィルムの好ましい態様においては、可視光を遮断する部分を有するが、着色層は可視光領域の特定の波長のみを反射または吸収することによって着色している。そのため、着色層とは別に可視光を遮断する部分を有することが好ましい。また、可視光を遮断する部分は可視光の波長全体を遮断するために、無色に近いことが求められる。
【0055】
そのため、本発明のフィルムは、一方の面と、その反対側の面の色差が20よりも高いことが好ましい。ここで色差とは、分光測色計の反射物体色測定で測定した色差をいい、色差(ΔE)は下記式(1)で示される。このような色差を実現する方法としては、積層構成部を有し、かつ片面のみに着色層を形成する方法が簡便である。上記観点から当該色差はより好ましくは、50以上であり、さらに好ましくは70以上である。当該色差を20以上とすることによって、着色層とは別に可視光を遮断することが可能となり、意匠性の向上も図ることができる。
【0056】
【0057】
ここで、L1
*、a1
*、b1
*は着色層側の面のCIE1976色空間におけるL*,a*,b*値、L2
*、a2
*、b2
*は着色層とは反対側の面のCIE1976色空間におけるL*,a*,b*値である。なお、両面に着色層を有する場合は、彩度の高い方を着色層側の面とみなす。
【0058】
本発明のフィルムは、干渉反射により30%以上の反射率が波長幅20nm以上にわたって連続する反射帯域を少なくとも一つ有する観点から、ポリエステル樹脂(樹脂A)を主成分とする層(A層)と、樹脂Aとは異なる熱可塑性樹脂(樹脂B)を主成分とする層(B層)を交互に51層以上積層した積層構成部を有することが好ましい。
【0059】
樹脂Aと樹脂Bが異なるとは、樹脂Aと樹脂Bが異なる融点または結晶化温度を有することを表す。異なる融点または結晶化温度とは、後述の測定方法によって求められる融点と結晶化温度のいずれかが3℃以上異なることをいう。なお、一方の樹脂が融点を有しており、もう一方の樹脂が融点を有していない場合や、一方の樹脂が結晶化温度を有しており、もう一方の樹脂が結晶化温度を有していない場合も異なる融点または結晶化温度を有するものとみなす。樹脂Aと樹脂Bの組み合わせは、異なる融点を有し、かつ異なる結晶化温度を有する組み合わせとすることがより好ましい。
【0060】
また、本発明のフィルムにおける積層構成部は、A層とB層が交互に51層以上積層されている。ここでいう交互に積層とは、A層とB層が厚み方向に規則的な配列で積層されていることをいい、例えば、A(BA)n(nは自然数)といったように規則的な配列で積層されたものである。また、51層以上とは、A層とB層の合計数が51以上であることをいう。
【0061】
このように融点や結晶化温度の異なる樹脂は、通常、光学的性質も異なる。そのため、このような樹脂が交互に積層されることにより、各層の屈折率の差と層厚みとの関係よって特定される特定の波長の光を反射させることが容易となる。また、積層する層数が多いほど広い帯域にわたり高い反射率を得ることができる。この観点から、積層構成部の層数は好ましくは101層以上であり、より好ましくは201層以上である。このような反射(干渉反射)は、A層とB層の合計層数が増えるほどより広い波長帯域の光に対して高い反射率を達成できるようになり、高い光線カット性能を備えた積層構成部が得られるようになる。そのため、層数に上限はないものの、層数が増えるに従い製造装置の大型化に伴う製造コストの増加や、フィルム厚みが厚くなることでのハンドリング性の悪化が生じるために、現実的にはそれぞれ1001層以内が実用範囲となる。
【0062】
本発明のフィルムに含まれる積層構成部においては、少なくとも一方のフィルム表面が、波長380nm~780nmの範囲の光の平均反射率が70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。このような特性は、光学特性の異なる2種以上の樹脂の面内屈折率の差を大きくすることにより実現できるので、二軸延伸フィルムとする場合は結晶性であるポリエステル樹脂からなる層と、延伸時に非晶性を保持もしくは熱処理工程で融解される低屈折率の共重合ポリエステルからなる層が交互に積層された積層構成部とすることが好ましい。
【0063】
本発明のフィルムの樹脂A、樹脂Bに用いられるジカルボン酸構成成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸(1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸)、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。ジオール成分としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタジオール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2-ビス(4’-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。この中でもジカルボン酸成分としてテレフタル酸や2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分としてエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ポリアルキレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを由来として重合されることが好ましい。A層とB層の屈折率差を大きくするために、一方の樹脂は非晶性樹脂であることが好ましい。樹脂Aと樹脂Bの好ましい組み合わせとしては、樹脂Aとしてポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートの共重合体、樹脂Bとしてポリエチレンテレフタレートの1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合体が挙げられる。
【0064】
本発明のフィルムにおいては、A層とB層の面内平均屈折率の差が0.05以上であることが好ましい。より好ましくは0.10以上であり、さらに好ましくは0.15以上0.35以下である。面内平均屈折率の差が0.05より小さい場合には、反射率が30%以上となる反射帯域を有することが困難となることがある。A層とB層の面内平均屈折率の差を上記の好ましい範囲とする樹脂Aと樹脂Bの組み合わせは、例えば、樹脂Aが結晶性であり、かつ樹脂Bが非晶性もしくは非晶性熱可塑性樹脂と結晶性熱可塑性樹脂の混合物である組み合わせである。この場合、フィルムの製造における延伸、熱処理工程において容易に屈折率差を設けることが可能となる。面内平均屈折率の差が0.35より大きい場合には、樹脂の積層性が悪化して積層自体が困難になり、また耐熱性やハンドリング性に劣ったフィルムとなることがある。
【0065】
本発明のフィルムは、示差走査熱量測定により求められる融解熱量が5J/g以上であることが好ましい。より好ましくは10J/g以上であり、更に好ましくは20J/g以上である。このような構成とすることで、A層とB層の屈折率差をより高くすることができる。このようなフィルムとするためには、樹脂Aと樹脂Bのうち、屈折率の高い方の樹脂の結晶性を高くすることが好ましい。
【0066】
本発明のフィルムは、着色層とは反対の面に、ペリレン系顔料を含む黒色層を有することが好ましい。一般的に黒色や暗色を実現する場合は、複数の色素を混合させる必要があるため、色素の混合ムラによって色ムラが起こる可能性がある。一方、ペリレン系顔料は可視光を均一に吸収し、赤外線透過率が高いことを特徴としており、1成分のみでこれらの色を実現できる特徴がある。このような構成とすることで、波長380nm~780nmの範囲の光の平均透過率を30%以下とすることが容易となり、30%よりも更に低くすることもできる。
【0067】
本発明のフィルムは、450MHz~300GHzの周波数範囲における最大電磁波損失が10dB以下であることが好ましく、より好ましくは1dB以下であり、さらに好ましくは0.1dB以下である。携帯電話は800MHz帯、1.5GHz帯、1.9GHz帯、2.0GHz帯の電磁波を、無線LANでは2.4~2.5GHz帯、5~5.8GHz帯、ミリ波レーダーでは30~300GHz帯、5G通信では3.6~6GHz、28GHzの電磁波が使用されており、その他の周波数帯においても使用または使用予定がある。
【0068】
一般的に赤外線通信と電磁波通信の両方を行う機器は多数存在するため、赤外線カバーパネルが電磁波を通さない場合、赤外線カバーパネルに電磁波透過用の窓を設けるか、電磁波通信部を赤外線通信部と離れた位置に設計する必要がある。しかしながら、このような設計を強いられることは、意匠性や装置設計に制限が加わるため好ましくなく、装置を小型化する場合はさらに好ましくない。本発明のフィルムにおいて、450MHz~300GHzの周波数範囲における最大電磁波損失が10dB以下であれば上記の問題が軽減されるため、意匠性が高く、自由な装置設計、さらには装置の小型化が容易となる。450MHz~300GHzの周波数範囲における最大電磁波損失を10dB以下又は上記の好ましい範囲とする方法は、例えば、本発明のフィルムの材料として誘電体を用いることであり、前述の材料からなる構成とすることで達成できる。
【0069】
本発明のフィルムを用いた好ましい例として、赤外線発光部または、赤外線受光部の外部からの視認を防止するように配置された構成を有する赤外線遠隔操作機器が挙げられる。別の好ましい例としては、センサー受発光部の外部からの視認を防止するように、本発明のフィルムが配置された構成を有する小型通信機器などの電子機器、赤外線感知器が挙げられる。
【0070】
更に好ましい例としては、ピーク波長Anmの光を受光して動作するセンサー受光部と、センサー受光部に設けられた本発明のフィルムを含むカバー部材からなる光学センサーが挙げられる。赤外線を利用するセンサーは前述の通り、リモコンやLiDERセンサーなどセンサーの種類に応じて異なる波長の光が用いられる。そのため、ピーク波長Anmの光を受光して動作するセンサー受光部を有するセンサーに使用される本発明のフィルムは、波長Anmでの透過率が70%以上であることが好ましい。より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは96%以上である。なお、ここでいうカバー部材とはセンサー受光部をカバーするために設けられる部材を指し、センサー受光部を外部から視認されないように用いられる本発明のフィルムを積層することが好ましい。フィルムを積層する方法としては、接着剤や粘着剤を用いることや、インサート成型することが挙げられる。カバー部材の材料としては、波長900nm~1000nmおよび1500nm~1600nmの光の透過率が70%以上であることが好ましく、例えば、ガラスやポリカーボネートが好ましい。
【0071】
本発明の第1のフィルムは、少なくとも一方の面に波長400nm~1200nmの光を照射した際に反射率が4%以下となる最小反射波長が800nm~1100nmの間に存在することが好ましい。最小反射波長の反射率は、より好ましくは3%以下であり、更に好ましくは2%以下である。このようにすることで、通常では空気とフィルムの界面で約10%程度反射する光をさらに低減することが可能となり、前述の赤外線を利用するセンサーの応答性を飛躍的に向上することが可能となる。
【0072】
また、ここでいう波長400nm~1200nmの光を照射した際に反射率が4%以下となる最小反射波長が800nm~1100nmの間に存在するのは、前述の着色層が設けられた面側から光を照射した場合であることが好ましい。また、着色層を構成する樹脂として好適に用いることができる樹脂は前述のとおりであり、屈折率は前述の通り1.3以上1.6以下が好ましい。このような樹脂は、通常はポリエステルなどの熱可塑性樹脂よりも屈折率が低いため、このような構成とすることで、後述の反射防止層による反射率の低減効果を高めることが可能となる。
【0073】
少なくとも一方の面に波長400nm~1200nmの光を照射した際に反射率が4%以下となる最小反射波長が800nm~1100nmの間に存在する手段としては、例えば、波長800nm~1100nmの間に最小反射波長を有するように反射防止層を設ける方法が挙げられる。
【0074】
本発明の第2のフィルムは、少なくとも一方の面において、分光測色計の反射物体色測定で測定される彩度が20以上であることが好ましい。なお、以下「分光測色計の反射物体色測定で測定される彩度」を単に「彩度」ということがある。このような態様とすることで、色付きが豊かで、意匠性の高いフィルムとすることができる。上記観点から、少なくとも一方の面における彩度は、より好ましくは50以上、更に好ましくは70以上である。なお、彩度の上限は理論上100となる。彩度は、公知の分光測色計により測定することができ、例えばコニカミノルタセンシング株式会社製、分光測色計CM-3600dを用いることができる。同装置を用いたときの測定条件は後述する。
【0075】
本発明の第2のフィルムにおいて、少なくとも一方の面における彩度を20以上又は上記好ましい範囲とする方法は特に限られるものではないが、例えば、フィルムに樹脂、着色剤、有機溶剤などにより着色した層(着色層)を設ける方法等が挙げられる。なお、本発明の第2のフィルムにおける着色樹脂組成物は、本発明の第1のフィルムと同様のものを用いることができる。
【0076】
本発明のフィルムにおける反射防止層は、通常フィルム表面での外光の反射や映り込みを抑える目的で形成される機能層のことであり、例えば、フィルム上に屈折率の異なる2つの層を設けることで形成される。このような反射防止層においては、形成された反射防止層とフィルム界面で反射する光が、反射防止層の表面で反射する光と同振幅・逆位相となるように反射防止層の屈折率や厚みを制御することで、干渉によって反射を抑えることができる。
【0077】
通常、反射防止層は視感反射率を低減する目的で550nmを中心とした可視光領域の波長の光の反射率を低くする目的で用いられるが、本願では赤外線センサーの応答性を向上させるために少なくとも一方の面に波長400nm~1200nmの光を照射した際に反射率が4%以下となる最小反射波長が800nm~1100nmの間に存在するように形成されることが好ましい。可視光を反射するための反射防止層は、外光の反射や映り込みを防止する目的で設けられるため片面のみに形成されることがあるが、本願では赤外線センサーの応答性を向上させるために形成されるため、両面に形成されていてもよい。
【0078】
本発明のフィルムにおいては、A層、B層、着色層のいずれとも異なる2つの層(C層、D層)を有し、着色層とC層、及びD層がこの順に隣接して積層されており、C層とD層の屈折率が0.02以上異なることが好ましい。このようにC層とD層を形成することで、これらの2つの層が反射防止層として機能するため、前述の最小反射波長が800nm~1100nmの間に存在する態様とすることが容易となる。C層とD層は、本願の目的を達成する範囲では、どちらが厚くてもよく、どちらが高屈折率であってもよい。C層およびD層のうち、高屈折率となる層は、屈折率が1.20以上1.90以下であることが好ましく、低屈折率となる層は、屈折率が1.18以上1.50以下であることが好ましい。これらの範囲を逸脱する場合、波長400nm~1200nmの光を照射した際に反射率が4%以下となる最小反射波長を800nm~1100nmの間に存在させることが困難となることがある。
【0079】
また、C層およびD層の厚みが共に0.03μm以上0.15μm以下であることが好ましい。0.03μm以下であると塗布厚みおよび反射波長の制御が困難となることがあり、0.15μm以上であると前記最小反射波長での反射率が4%以下とすることが困難となることがある。なお、C層およびD層の厚みの調節は、例えば、これらの層を形成するための塗剤の量を調整することにより行うことができる。
【0080】
C層およびD層の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、ウェットコーティング法によって形成することが挙げられる。ウェットコーティング法としては、例えばグラビアコート法、ダイコート法、スピンコート法、リバースコート法、スプレーコート法、バーコート法等の塗布方法を用いることができる。
【0081】
C層およびD層は樹脂を含有することが好ましく、アクリル樹脂やウレタン樹脂、ポリエステル樹脂やシラノールなどから選択され、その種類は特に限定されるものではなく、これらを単体、もしくは組み合わせて使用される。アクリル樹脂を例にとって説明すると、例えば、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシルグリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、4-ヒドロキシブチルメタアクリレートグリシジルエーテル、フェニルグリシジルアクリレート、エポキシアクリレート、エポキシメタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等を用いることが好ましい。
【0082】
また、開始剤や硬化剤や触媒を含むと樹脂の硬化がより促進されるため好ましい。開始剤としては、アニオン、カチオン、ラジカル反応等による重合、縮合または架橋反応を開始あるいは促進できるものが好ましい。開始剤、硬化剤および触媒は種々のものを使用できる。また、開始剤、硬化剤および触媒はそれぞれ単独で用いてもよく、複数の開始剤、硬化剤および触媒を同時に用いてもよい。さらに、酸性触媒や、熱重合開始剤や光重合開始剤を併用してもよいが、中でも光重合開始剤が好ましい。酸性触媒の例としては、塩酸水溶液、蟻酸、酢酸などが挙げられる。熱重合開始剤の例としては、過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。また、光重合開始剤の例としては、アルキルフェノン系化合物、含硫黄系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アミン系化合物などが挙げられる。光重合開始剤としては、硬化性の点から、アルキルフェノン系化合物が好ましい。
【0083】
アルキルフェノン形化合物の具体例としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2.2-ジメトキシ-1.2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-フェニル)-1-ブタン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-(4-フェニル)-1-ブタン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタン、1-シクロヒキシル-フェニルケトン、2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-エトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、などが挙げられる。
【0084】
C層またはD層のうち屈折率の高い方の屈折率を1.20以上1.90以下とすることは、例えば、層中に金属酸化物微粒子を含有させることで達成することができ、さらに金属酸化物微粒子の種類や含有量によって屈折率を制御することが可能となる。金属酸化物微粒子の含有量としては、透明性や塗膜の安定性の観点から、C層またはD層の全固形分100質量%に対して40質量%以上90質量%以下であることが好ましい。
【0085】
金属酸化物微粒子としては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)等が挙げられる。これらの中でも、酸化ジルコニウムあるいは酸化チタンが好ましく用いられる。これらの金属酸化物微粒子は単独で用いてもよく、複数用いてもよい。また、これらの数平均粒子径は、透明性や製造安定性の観点から5nmから150nmであることが好ましい。
【0086】
C層またはD層のうち屈折率の低い方の屈折率を1.18以上1.50以下とする場合には、例えば、層中に無機微粒子や含フッ素化合物を含有させることで達成することができ、特に無機微粒子を用いることが好ましい。無機微粒子の種類や含有量によって屈折率を制御することが可能となる。無機微粒子の含有量としては、透明性や塗膜の安定性の観点から、C層またはD層の全固形分100質量%に対して10質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
【0087】
無機微粒子としては、例えば、シリカやフッ化マグネシウム等の無機微粒子が好ましい。さらにこれらの無機微粒子は中空状や多孔質のものが好ましい。特に中空状のシリカやフッ化マグネシウムが好ましく用いられる。中空シリカ粒子の数平均粒子径は、好ましくは5nmから200nmである。これらの無機微粒子の屈折率は、1.20~1.35であることが好ましい。
【0088】
以下、第1のフィルムおよび第2のフィルムの好ましい製造方法を、A層を構成する熱可塑性樹脂Aとしてポリエチレンテレフタレートを用い、B層を構成する熱可塑性樹脂Bとしてポリエチレンテレフタレートの共重合体(シクロヘキサンジメタノール成分20~40mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート)を用いたフィルムを例にとり以下に説明する。もちろん本発明のフィルムは係る例に限定して解釈されるものではない。また、このフィルムの積層構造は、特開2007-307893号公報の〔0053〕~〔0063〕段に記載の内容と同様の方法により簡便に実現できるものである。
【0089】
熱可塑性樹脂をペレットなどの形態で用意する。ペレットは、必要に応じて、熱風中あるいは真空下で乾燥された後、別々の押出機に供給される。押出機内において、280~300℃で加熱溶融された樹脂は、ギヤポンプ等で樹脂の押出量を均一化され、フィルター等を介して異物や変性した樹脂などを取り除かれる。これらの樹脂はダイにて目的の形状に成形された後、吐出される。そして、ダイから吐出された多層に積層されたシートは、キャスティングドラム等の冷却体上に押し出され、冷却固化されてキャスティングフィルムとなる。この際、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力によりキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させることが好ましい。また、スリット状、スポット状、面状の装置からエアーを吹き出してキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させたり、ニップロールにて冷却体に密着させ急冷固化させたりする方法も好ましい。
【0090】
このとき、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bは別々の押出機で溶融混練され、異なる流路から多層積層装置に送り込まれる。多層積層装置としては、マルチマニホールドダイやフィードブロックやスタティックミキサー等を用いることができるが、特に、本発明の構成を効率よく得るためには、51個~1001個の微細スリットを有するフィードブロックを用いることが好ましい。このようなフィードブロックを用いると、装置が極端に大型化することがないため、熱劣化による異物が少なく、積層数が51層~1001層であれば高精度な積層が可能となる。また、幅方向の積層精度も従来技術に比較して格段に向上する。また、この装置では、各層の厚みをスリットの形状(長さ、幅)で調整できるため、任意の層厚みを達成することも容易である。このようにして所望の層構成に形成した溶融多層積層体をダイへと導き、上述と同様にキャスティングフィルムが得られる。
【0091】
このようにして得られたキャスティングフィルムは、二軸延伸することが好ましい。ここで、二軸延伸とは、長手方向および幅方向に延伸することをいう。延伸は、逐次に二方向に延伸しても、同時に二方向に延伸してもよい。また、さらに長手方向および/または幅方向に再延伸を行ってもよい。
【0092】
逐次二軸延伸の場合についてまず説明する。逐次二軸延伸の場合は、通常、長手方向への延伸(縦延伸)の後に幅方向への延伸(横延伸)を行う。ここで、長手方向への延伸とは、フィルムに長手方向の分子配向を与えるための延伸をいい、通常は、ロールの周速差により施される。この延伸は1段階で行ってもよく、また、複数本のロール対を使用して多段階に行ってもよい。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2~15倍が好ましく、ポリエチレンテレフタレートを用いる場合には2~7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度はフィルムを構成する樹脂のガラス転移温度~ガラス転移温度+100℃が好ましい。
【0093】
このようにして得られた一軸延伸されたフィルムに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。特に、フィルムと色変換シートを含む積層部材を形成する際には、フィルムの最表層となる熱可塑性樹脂Aよりも低く、色変換部材の最表層となるフィルムの屈折率よりも高い屈折率となる樹脂をインラインコーティングすることが好ましい。
【0094】
幅方向の延伸とは、フィルムに幅方向の配向を与えるための延伸をいい、通常は、テンターにより、フィルムの幅方向両端部を複数のクリップで把持しながら搬送して、幅方向に延伸する。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2~15倍が好ましく、ポリエチレンテレフタレートを用いる場合には2~7倍が特に好ましく用いられる。特に本発明のフィルムでは、横延伸倍率は4倍以上とすることが好ましく、横延伸倍率を高めることで反射帯域の均一性、平均反射率の均一性、相関係数を高めるのに有効である。また、延伸温度としてはフィルムを構成する樹脂のうち最大のガラス転移温度~最大のガラス転移温度+120℃が好ましい。
【0095】
こうして二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内で延伸温度以上、熱可塑性樹脂Aの融点以下の温度で熱処理を行うのが好ましい。熱処理を行うことにより、フィルムの寸法安定性が向上する。フィルムは、このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷の際に弛緩処理などを併用してもよい。
【0096】
同時二軸延伸の場合について次に説明する。同時二軸延伸の場合には、得られたキャストフィルムに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。
【0097】
次に、キャストフィルムを、同時二軸テンターへ導き、フィルムの幅方向両端部をクリップで把持しながら搬送して、長手方向と幅方向に同時および/または段階的に延伸する。同時二軸延伸機として用いることができるテンターの方式は、パンタグラフ方式、スクリュー方式、駆動モーター方式、リニアモーター方式があるが、任意に延伸倍率を変更可能であり、任意の場所で弛緩処理を行うことができる駆動モーター方式もしくはリニアモーター方式が好ましい。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、面積倍率として6~50倍が好ましく、ポリエチレンテレフタレートを用いる場合には面積倍率として8~30倍が特に好ましく用いられる。特に同時二軸延伸の場合には、面内の配向差を抑制するために、長手方向と幅方向の延伸倍率を同一とするとともに、延伸速度もほぼ等しくなるようにすることが好ましい。また、延伸温度としてはフィルムを構成する樹脂のガラス転移温度~ガラス転移温度+120℃が好ましい。
【0098】
こうして二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うのが好ましい。この熱処理の際に、幅方向での主配向軸の分布を抑制するため、熱処理ゾーンに入る直前および/または直後に瞬時に長手方向に弛緩処理することが好ましい。フィルムは、このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷の際に長手方向および/あるいは幅方向に弛緩処理を行ってもよい。好ましくは、熱処理ゾーンに入る直前および/あるいは直後に瞬時に長手方向に1~5%の弛緩処理をする。
【実施例】
【0099】
以下、本発明について、実施例を用いて具体的に説明する。
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
物性値の評価方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
【0100】
(1)反射率・透過率
5cm×5cmで切り出したサンプル(光照射面は表1、2に示す層番号の大きい方側)を日立製作所製 分光光度計(U-4100 Spectrophotomater)に付属の積分球を用いた基本構成、下記測定条件で各波長における反射率・透過率測定を行った。反射率測定では、装置付属の酸化アルミニウムの副白板を基準として、相対反射率として算出した。反射率測定では、サンプルの長手方向を上下方向にして、積分球の後ろに設置した。透過率測定では、サンプルの長手方向を上下方向にして、積分球の前に設置した。得られた各波長における反射率・透過率より、波長900nm~1000nmの光を照射したときの最小透過率、波長1500nm~1600nmの光を照射したときの最小透過率、及び波長380nm~780nmの光の平均透過率を求め、波長400nm~1200nmの光を照射した際に反射率が4%以下となる最小反射波長が800~1100nmの間に存在するか否かを評価し、さらに30%以上の反射率が波長幅20nm以上にわたって連続する反射帯域の有無を評価した。
<測定条件>
スリット:2nm(可視)/自動制御(赤外)
ゲイン:2
走査速度:600nm/分
照射光の波長帯域:240nm~2600nm。
【0101】
(2)電磁波損失
ネットワークアナライザとして、Agilent Technologies製(PNA N5250C)を用いた。450MHz~15GHzの電磁波損失は同軸管法を用いて測定し、40GHz~110GHzの電磁波損失はJISR1679に記載の方法を用いて測定した。測定された50MHz~15GHz及び40GHz~110GHzの周波数範囲における電磁波損失の最大値を電磁波損失値として採用した。
【0102】
(3)彩度・色差
コニカミノルタセンシング株式会社製、分光測色計CM-3600dを用いた。測定径φ8mmのターゲットマスク(CM-A106)条件下で、反射物体色測定モード、SCI方式で各面のL*,a*,b*値、および表1、2に示す層番号の大きい方側の面の彩度を測定し、それぞれn数5の平均値を求め、着色層側の面と、着色層とは反対側の面の色差を下記式(1)に基づき求めた。なお、白色校正板、およびゼロ校正ボックスは下記のものを用いて校正を行った。なお、測色値の計算に用いる光源はD65を選択した。
白色校正板 :CM-A103
ゼロ校正ボックス:CM-A104。
【0103】
【0104】
ここで、L1
*、a1
*、b1
*は着色層側の面のCIE1976色空間におけるL*,a*,b*値、L2
*、a2
*、b2
*は着色層とは反対側の面のCIE1976色空間におけるL*,a*,b*値である。
【0105】
(4)光学センサー応答性
Leishen Intelligent System製のLiDERセンサー「C16 700B」を用いた。実施例および比較例で得られたフィルムをセンサーの一部に貼り合わせ、貼り合わせた部分と貼り合わせていない部分でスキャンされた画像の違いを比較し、以下の基準に基づき評価した。〇以上を良好な結果とした。
◎:貼り合わせた部分と貼り合わせていない部分で違いが見られない。
○:貼り合わせた部分と貼り合わせていない部分で違いがわずかに見られる。
×:貼り合わせた部分と貼り合わせていない部分で明確に異なる。
【0106】
(合成例1 アクリル樹脂(P-1)の合成)
特許第3120476号明細書の実施例1に記載の方法により、メチルメタクリレート/メタクリル酸/スチレン共重合体(重量比30/40/30)を合成した。得られた共重合体100重量部に対し、グリシジルメタクリレート40重量部を付加させ、精製水で再沈し、濾過および乾燥することにより、重量平均分子量15,000、酸価110mgKOH/gのアルカリ可溶性のアクリル樹脂(P-1)を得た。なお、アクリル樹脂の酸価は、アクリル樹脂1gを中和するのに要した水酸化カリウムの量(mg)とし(単位:mgKOH/g)、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC-8220GPC」(東ソー(株)製試験装置)を用いて、キャリヤーをテトラヒドロフランとして、ポリスチレン換算により測定した。
【0107】
(製造例1 塗料Aの製造)
青色顔料としてC.I.Pigment Blue15:6 120g、合成例1により得られたアクリル樹脂(P-1)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)35重量%溶液171g、高分子分散剤としてポリアミド系高分子分散剤“DISPERBYK”2200(BYK-2200)20gおよびPGMEA689gをタンクに仕込み、ホモミキサーで20分撹拌し、予備分散液を得た。ビーズ径1.0mmφのジルコニアビーズを75体積%充填した遠心分離セパレーターを具備した寿工業(株)製分散機ウルトラアペックスミルUAM015に、得られた予備分散液を供給し、回転速度8m/sで90分間分散を行い、固形分濃度20重量%、着色剤/(樹脂+高分子分散剤)(重量比)=60/40の着色剤分散液DP-1を得た。27.08gの着色剤分散液(DP-1)に、アクリルポリマー(P-1)のPGMEA35重量%溶液を29.83g、多官能モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製)を8.74g、密着改良剤としてKBM5103(信越化学(株)製)を0.4g、界面活性剤としてシリコーン系界面活性剤“BYK”333(ビックケミー社製)のPGMEA10重量%溶液0.3gを33.65gのPGMEAに溶解した溶液を添加して、全固形分濃度25重量%、全固形分100重量部に対する着色剤の含有量が13重量部の塗料Aを得た。
【0108】
(製造例2 塗料Bの製造)
青色顔料としてC.I.Pigment Blue15:6の代わりに、赤色顔料としてC.I.Pigment Red254を用いた以外は製造例1と同様にして、塗料Bを得た。
【0109】
(製造例3 塗料Cの製造)
青色顔料としてC.I.Pigment Blue15:6の代わりに、黄色顔料としてC.I.Pigment Yellow138を用いた以外は製造例1と同様にして、塗料Cを得た。
【0110】
(製造例4 塗料Dの製造)
青色顔料としてC.I.Pigment Blue15:6の代わりに、緑色顔料としてC.I.Pigment Green58を用いた以外は製造例1と同様にして、塗料Dを得た。
【0111】
(製造例5 塗料Eの製造)
青色顔料としてC.I.Pigment Blue15:6の代わりに、黒色顔料としてペリレン系のBASF社製Paliogen Black S 0084を用いた以外は製造例1と同様にして、塗料Eを得た。
【0112】
(製造例6 塗料Fの製造)
青色顔料としてC.I.Pigment Blue15:6を仕込まなかった以外は製造例1と同様にして、塗料Fを得た。
【0113】
(製造例7 反射防止層用の塗料Gの製造)
市販の反射防止用塗料(JSR(株)製“オプスター”(登録商標)TU2180)をメチルイソブチルケトンで固形分濃度が3質量%になるように希釈して調製した塗布液を、乾燥厚みが表1の厚みとなるようにグラビアコーターで塗布し、乾燥後、紫外線照射により硬化させて層を形成した。この層の屈折率は1.37であった。
【0114】
(製造例8 反射防止層用の塗料Hの製造)
中空シリカ50質量部と紫外線硬化性アクリル樹脂(ジペンタエリスリトールトリアクリレート)50質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製“イルガキュア”(登録商標)184)2質量部を含み、これらの成分をメチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの混合溶媒に溶解・分散して調整した塗布液(固形分濃度3質量%)を、乾燥厚みが表1の厚みとなるようにグラビアコーターで塗布し、乾燥後、紫外線を照射して硬化させて層を形成した。この低屈折率層の屈折率は1.35であった。
【0115】
(製造例9 反射防止層用の塗料Iの製造)
アンチモンドープ酸化錫(ATO)6質量部、紫外線硬化性アクリル樹脂(ジペンタエリスリトールトリアクリレート)2質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製“イルガキュア”(登録商標)184)0.1質量部、メチルエチルケトン54質量部、イソプロピルアルコール38質量部の混合物を攪拌して用塗料を調製した。この塗料を乾燥厚みが表1の厚みとなるようにグラビアコーターで塗布し、乾燥後、紫外線照射により硬化させて層を形成した。この層の屈折率は1.65であった。
【0116】
(実施例1)
A層を構成する結晶性の熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂Aとも称する)としてポリエチレンテレフタレートを用い、またB層を構成する熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂Bとも称する)としてポリエチレンテレフタレートの共重合体(シクロヘキサンジメタノール成分33mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート)を用いた。熱可塑性樹脂AおよびBを、それぞれの押出機にて280℃で溶融させ、FSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギヤポンプにて吐出比が熱可塑性樹脂A/熱可塑性樹脂B=1/1.07になるように計量しながら、901層フィードブロックにて合流させて、厚み方向に交互に901層積層された積層体とした。A層が451層、B層が450層からなる厚み方向に交互に積層され、A層とB層の層厚みは380nmから780nm波長範囲の反射率スペクトルが平坦となるように設計し、それぞれ表層から反対側の表層に向かって連続的に変化するように積層した。次いで、Tダイに供給し、シート状に成形した後、ワイヤーで8kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、90℃、延伸倍率3.5倍で縦延伸を行い、両端部をクリップで把持するテンターに導き110℃、4.3倍横延伸した後、230℃で熱処理を施し、約5%のTDリラックスを実施し、厚み103μmの積層構成部を得た。この積層構成部に、着色層として、塗料Aを、メタバーを用いて3μmの層厚みで塗布し、80℃の熱風オーブンで2分間乾燥させて着色層を形成した。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0117】
(実施例2~4)
塗料Aの代わりに表1の塗料を用いた以外は、実施例1と同様の条件にてフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0118】
(実施例5~8)
実施例1で得た積層フィルムの着色層とは反対面に、塗料Eを、メタバーを用いて3μmの層厚みで塗布し、80℃の熱風オーブンで2分間乾燥させて黒色層を形成した以外は、表1の通りフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0119】
(実施例9~16)
実施例5の積層構成部の代わりに樹脂A、樹脂Bとしてポリエチレンテレフタレート(東レ(株)製、固有粘度0.65)を用いて単膜のPETフィルムを用いた以外は表1、表2の通りフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表1、2に示す。
【0120】
(実施例17~20、比較例5)
実施例1の着色層の上に、塗料Hからなる層を形成し、さらにその上に塗料Gまたは塗料Iからなる層を形成した以外は、表2の通りフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表2に示す。
【0121】
(比較例1~3)
上記実施例1の方法の通り、構成を表2の通りとしてフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表2に示す。
【0122】
(比較例4)
ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムに、厚さ8nmの銀蒸着を施し、銀蒸着
面と反対側に、着色層として塗料Eをメタバーにより3μmの層厚みで塗布し、80℃の熱風オーブンで2分間乾燥させて着色層を形成した。得られたフィルムの評価結果を表2に示す。
【0123】
【0124】
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、可視光を遮断し、センサーによる光を透過する意匠性の高いフィルムに関するものである。また本発明のフィルムは、センサー受光部又は、赤外線受発光部を有する、遠隔操作機器、小型通信機器、電子機器の部材として好適なものである。