(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】車載装置、管理装置、異常判定方法および異常判定プログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 43/0852 20220101AFI20240730BHJP
H04L 12/28 20060101ALI20240730BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H04L43/0852
H04L12/28 100A
B60R16/023 P
(21)【出願番号】P 2020188256
(22)【出願日】2020-11-11
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】渡部 正志
【審査官】前田 健人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/084908(WO,A1)
【文献】特開2017-188756(JP,A)
【文献】特開2008-296669(JP,A)
【文献】特開2000-307603(JP,A)
【文献】特開2020-115620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 43/00
H04L 12/28
H04L 41/00
B60R 16/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載装置であって、
前記車両に搭載される他の車載装置との間におけるデータの伝搬遅延時間を計測する計測部と、
前記計測部により計測された前記伝搬遅延時間に基づいて、前記データの伝送路の異常判定を行う判定部とを備え
、
前記判定部は、前記車両の状態に応じて、前記異常判定の基準を変更する、車載装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記伝搬遅延時間の履歴に基づいて前記異常判定を行う、請求項1に記載の車載装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記伝搬遅延時間および閾値に基づいて前記異常判定を行い、前記車両の状態に応じて、前記閾値を変更する、請求項1または請求項2に記載の車載装置。
【請求項4】
前記計測部は、前記データの伝送路における通信負荷に応じて、前記伝搬遅延時間を計測する処理を行うか否かを決定する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項5】
前記車載装置は、さらに、
前記判定部による判定結果を通知する異常通知動作を行う通知部を備え、
前記通知部は、異常が生じた伝送路の別に応じて、前記異常通知動作の内容を変更する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項6】
車両に搭載される車載装置であって、
前記車両に搭載される他の車載装置との間におけるデータの伝搬遅延時間を計測する計測部を備え、
前記車載装置は、計測した前記伝搬遅延時間が所定条件を満たした場合における前記車両の位置を示す位置情報を管理装置へ送信し、
前記車載装置は、前記管理装置による前記位置情報および他の情報に基づく前記データの伝送路の異常判定の結果を示す判定情報を前記管理装置から受信する、車載装置。
【請求項7】
対象車両に搭載された車載装置間におけるデータの伝搬遅延時間が所定条件を満たした前記対象車両の位置情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記対象車両の位置情報および他の情報に基づいて、前記対象車両におけるデータの伝送路の異常判定を行う判定部とを備える、管理装置。
【請求項8】
前記他の情報は、他の車両に搭載された車載装置間におけるデータの伝搬遅延時間が所定条件を満たした前記他の車両の位置情報である、請求項
7に記載の管理装置。
【請求項9】
車両に搭載される車載装置における異常判定方法であって、
前記車両に搭載される他の車載装置との間におけるデータの伝搬遅延時間を計測するステップと、
計測した前記伝搬遅延時間に基づいて、前記データの伝送路の異常判定を行うステップと
、
前記車両の状態に応じて、前記異常判定の基準を変更するステップとを含む、異常判定方法。
【請求項10】
車両に搭載される車載装置における異常判定方法であって、
前記車両に搭載される他の車載装置との間におけるデータの伝搬遅延時間を計測するステップと、
計測した前記伝搬遅延時間が所定条件を満たした場合における前記車両の位置を示す位置情報を管理装置へ送信するステップと、
前記管理装置による前記位置情報および他の情報に基づく前記データの伝送路の異常判定の結果を示す判定情報を前記管理装置から受信するステップとを含む、異常判定方法。
【請求項11】
管理装置における異常判定方法であって、
対象車両に搭載された車載装置間におけるデータの伝搬遅延時間が所定条件を満たした前記対象車両の位置情報を取得するステップと、
取得した前記対象車両の位置情報および他の情報に基づいて、前記対象車両におけるデータの伝送路の異常判定を行うステップとを含む、異常判定方法。
【請求項12】
車両に搭載される車載装置において用いられる異常判定プログラムであって、
コンピュータを、
前記車両に搭載される他の車載装置との間におけるデータの伝搬遅延時間を計測する計測部と、
前記計測部により計測された前記伝搬遅延時間に基づいて、前記データの伝送路の異常判定を行う判定部、
として機能させるための
プログラムであり、
前記判定部は、前記車両の状態に応じて、前記異常判定の基準を変更する、異常判定プログラム。
【請求項13】
車両に搭載される車載装置において用いられる異常判定プログラムであって、
コンピュータに、
前記車両に搭載される他の車載装置との間におけるデータの伝搬遅延時間を計測するステップと、
計測した前記伝搬遅延時間が所定条件を満たした場合における前記車両の位置を示す位置情報を管理装置へ送信するステップと、
前記管理装置による前記位置情報および他の情報に基づく前記データの伝送路の異常判定の結果を示す判定情報を前記管理装置から受信するステップとを実行させるための、異常判定プログラム。
【請求項14】
管理装置において用いられる異常判定プログラムであって、
コンピュータを、
対象車両に搭載された車載装置間におけるデータの伝搬遅延時間が所定条件を満たした前記対象車両の位置情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記対象車両の位置情報および他の情報に基づいて、前記対象車両におけるデータの伝送路の異常判定を行う判定部、
として機能させるための、異常判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載装置、管理装置、異常判定方法および異常判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の車載装置を備える車載ネットワークに関する技術が開発されている。たとえば、特開2013-168865号公報(特許文献1)には、以下のような車載ネットワークシステムが開示されている。すなわち、車載ネットワークシステムは、車載ネットワーク上で用いられる通信規約のうち前記車載ネットワーク上における実装に依拠する部分を定義する定義データを格納するメモリを備えた車載制御装置と、前記車載制御装置に対して前記定義データを発行する通信規約発行装置とを備える。前記通信規約発行装置は、前記車載制御装置を前記車載ネットワークに参加させる登録装置から、前記車載制御装置を前記車載ネットワークに参加させるよう要求する登録要求を受け取ると、前記登録装置に対する認証を実施した上で、前記車載ネットワークに上における実装に準拠した前記定義データを作成して前記登録装置に返信する。前記登録装置は、前記通信規約発行装置が送信した前記定義データを受け取り、受け取った前記定義データを前記メモリ上に格納するよう前記車載制御装置に対して要求する。そして、前記車載制御装置は、前記登録装置から定義データを受け取って前記メモリ上に格納し、前記定義データが定義する前記部分にしたがって、前記通信規約に準拠して前記車載ネットワークを用いて通信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の車載ネットワークでは、複数の車載装置間においてデータの送受信が行われる。しかしながら、車載装置間におけるデータの伝送路に異常が発生すると、これら車載装置間における通信が正常に行われず、車両の制御を正常に行うことができない等の問題が生じるおそれがある。
【0005】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、車両における故障を事前に検知することのできる車載装置、管理装置、異常判定方法および異常判定プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車載装置は、車両に搭載される車載装置であって、前記車両に搭載される他の車載装置との間におけるデータの伝搬遅延時間を計測する計測部と、前記計測部により計測された前記伝搬遅延時間に基づいて、前記データの伝送路の異常判定を行う判定部とを備える。
【0007】
本開示の管理装置は、対象車両に搭載された車載装置間におけるデータの伝搬遅延時間が所定条件を満たした前記対象車両の位置情報を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記対象車両の位置情報および他の情報に基づいて、前記対象車両におけるデータの伝送路の異常判定を行う判定部とを備える。
【0008】
本開示の異常判定方法は、車両に搭載される車載装置における異常判定方法であって、前記車両に搭載される他の車載装置との間におけるデータの伝搬遅延時間を計測するステップと、計測した前記伝搬遅延時間に基づいて、前記データの伝送路の異常判定を行うステップとを含む。
【0009】
本開示の異常判定方法は、管理装置における異常判定方法であって、対象車両に搭載された車載装置間におけるデータの伝搬遅延時間が所定条件を満たした前記対象車両の位置情報を取得するステップと、取得した前記対象車両の位置情報および他の情報に基づいて、前記対象車両におけるデータの伝送路の異常判定を行うステップとを含む。
【0010】
本開示の異常判定プログラムは、車両に搭載される車載装置において用いられる異常判定プログラムであって、コンピュータを、前記車両に搭載される他の車載装置との間におけるデータの伝搬遅延時間を計測する計測部と、前記計測部により計測された前記伝搬遅延時間に基づいて、前記データの伝送路の異常判定を行う判定部、として機能させるためのプログラムである。
【0011】
本開示の異常判定プログラムは、管理装置において用いられる異常判定プログラムであって、コンピュータを、対象車両に搭載された車載装置間におけるデータの伝搬遅延時間が所定条件を満たした前記対象車両の位置情報を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記対象車両の位置情報および他の情報に基づいて、前記対象車両におけるデータの伝送路の異常判定を行う判定部、として機能させるためのプログラムである。
【0012】
本開示は、このような特徴的な処理部を備える車載装置として実現できるだけでなく、車載装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、車載装置を含む車載ネットワークシステムとして実現され得る。
【0013】
また、本開示は、このような特徴的な処理部を備える管理装置として実現できるだけでなく、管理装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、管理装置を含む通信システムとして実現され得る。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、車両における故障を事前に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る車載ネットワークシステムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の第1の実施の形態に係るスイッチ装置の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の第1の実施の形態に係る機能部の構成を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の第1の実施の形態に係る車載装置間におけるデータの伝搬遅延時間の初期値の計測方法を説明するための図である。
【
図5】
図5は、本開示の第1の実施の形態に係る車載装置間における、出荷検査以降の伝搬遅延時間の計測方法を説明するための図である。
【
図6】
図6は、本開示の第1の実施の形態に係るスイッチ装置および機能部間における通信データの伝送路の構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の第1の実施の形態に係るスイッチ装置における判定部による異常判定の例1を説明するための図である。
【
図8】
図8は、本開示の第1の実施の形態に係るスイッチ装置における判定部による異常判定の例2を説明するための図である。
【
図9】
図9は、本開示の第1の実施の形態に係るスイッチ装置における判定部により設定される閾値と車両の状態との対応関係を示す対応テーブルの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、本開示の第1の実施の形態に係るスイッチ装置における判定部による異常判定の例3を説明するための図である。
【
図11】
図11は、本開示の第1の実施の形態に係るスイッチ装置による、伝送路の異常判定、および判定結果の通知を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【
図12】
図12は、本開示の第1の実施の形態に係るスイッチ装置による、伝送路の異常判定、および判定結果の通知を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【
図13】
図13は、本開示の第1の実施の形態に係るスイッチ装置による、伝送路の異常判定、および判定結果の通知を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【
図14】
図14は、本開示の第2の実施の形態に係る通信システムの構成を示す図である。
【
図15】
図15は、本開示の第2の実施の形態に係る管理装置の構成を示す図である。
【
図16】
図16は、本開示の第2の実施の形態に係る管理装置による異常判定の例1を説明するための図である。
【
図17】
図17は、本開示の第2の実施の形態に係る管理装置による異常判定の例1を説明するための図である。
【
図18】
図18は、本開示の第2の実施の形態に係る管理装置による異常判定の例2を説明するための図である。
【
図19】
図19は、本開示の第2の実施の形態に係る通信システムにおける、対象車両に対する異常判定を行う処理のシーケンスの一例を示す図である。
【
図20】
図20は、本開示の第2の実施の形態に係る管理装置による異常判定を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【
図21】
図21は、本開示の第2の実施の形態に係る管理装置による異常判定を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本開示の実施の形態に係る車載装置は、車両に搭載される車載装置であって、前記車両に搭載される他の車載装置との間におけるデータの伝搬遅延時間を計測する計測部と、前記計測部により計測された前記伝搬遅延時間に基づいて、前記データの伝送路の異常判定を行う判定部とを備える。
【0017】
このような構成により、データの伝搬遅延時間を利用して車載装置間の伝送路における異常の有無を判定することができるため、車両における故障を事前に検知することができる。
【0018】
(2)好ましくは、前記判定部は、前記伝搬遅延時間の履歴に基づいて前記異常判定を行う。
【0019】
このような構成により、ノイズの影響等により一時的に伝搬遅延時間が大きくなった場合には、伝送路に異常は生じていないと判定することができるため、より正確な判定結果を得ることができる。
【0020】
(3)好ましくは、前記判定部は、前記伝搬遅延時間および閾値に基づいて前記異常判定を行い、前記車両の状態に応じて、前記閾値を変更する。
【0021】
このような構成により、たとえば、車両における通信負荷が大きい状態においては、伝送路に異常が生じていない場合であっても伝搬遅延時間が大きくなる傾向にあるため、閾値を大きい値に設定することにより誤判定を抑制し、車両の状態に応じたより正確な判定結果を得ることができる。
【0022】
(4)好ましくは、前記計測部は、前記データの伝送路における通信負荷に応じて、前記伝搬遅延時間を計測する処理を行うか否かを決定する。
【0023】
このような構成により、たとえば、伝送路における通信負荷が大きい状況、すなわち伝搬遅延時間が大きくなりやすい状況を避けて、伝搬遅延時間に基づく異常判定を行うことができるため、誤判定を抑制し、より正確な判定結果を得ることができる。また、伝搬遅延時間の計測回数を減らすことにより、車載装置における処理負荷を低減させることができる。
【0024】
(5)好ましくは、前記車載装置は、さらに、前記判定部による判定結果を通知する異常通知動作を行う通知部を備え、前記通知部は、異常が生じた伝送路の別に応じて、前記異常通知動作の内容を変更する。
【0025】
このような構成により、たとえばユーザへの通知の必要性の大小に応じた、より適切な通知を行うことができる。
【0026】
(6)本開示の実施の形態に係る管理装置は、対象車両に搭載された車載装置間におけるデータの伝搬遅延時間が所定条件を満たした前記対象車両の位置情報を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記対象車両の位置情報および他の情報に基づいて、前記対象車両におけるデータの伝送路の異常判定を行う判定部とを備える。
【0027】
このような構成により、たとえば、対象車両における伝搬遅延時間が大きい要因が、対象車両の伝送路にあるのか、または対象車両の走行環境にあるのかを切り分けることができるため、対象車両の伝送路における異常の有無をより正確に判定することができる。したがって、車両における故障を事前に検知することができる。
【0028】
(7)好ましくは、前記他の情報は、他の車両に搭載された車載装置間におけるデータの伝搬遅延時間が所定条件を満たした前記他の車両の位置情報である。
【0029】
このように、対象車両を含む複数の車両の位置情報に基づいて異常判定を行う構成により、たとえば、伝搬遅延時間が大きくなる傾向にあるエリアを特定して、より正確な判定結果を得ることができる。
【0030】
(8)本開示の実施の形態に係る異常判定方法は、車両に搭載される車載装置における異常判定方法であって、前記車両に搭載される他の車載装置との間におけるデータの伝搬遅延時間を計測するステップと、計測した前記伝搬遅延時間に基づいて、前記データの伝送路の異常判定を行うステップとを含む。
【0031】
このような方法により、データの伝搬遅延時間を利用して車載装置間の伝送路における異常の有無を判定することができるため、車両における故障を事前に検知することができる。
【0032】
(9)本開示の実施の形態に係る異常判定方法は、管理装置における異常判定方法であって、対象車両に搭載された車載装置間におけるデータの伝搬遅延時間が所定条件を満たした前記対象車両の位置情報を取得するステップと、取得した前記対象車両の位置情報および他の情報に基づいて、前記対象車両におけるデータの伝送路の異常判定を行うステップとを含む。
【0033】
このような方法により、たとえば、対象車両における伝搬遅延時間が大きい要因が、対象車両の伝送路にあるのか、または対象車両の走行環境にあるのかを切り分けることができるため、対象車両の伝送路における異常の有無をより正確に判定することができる。したがって、車両における故障を事前に検知することができる。
【0034】
(10)本開示の実施の形態に係る異常判定プログラムは、車両に搭載される車載装置において用いられる異常判定プログラムであって、コンピュータを、前記車両に搭載される他の車載装置との間におけるデータの伝搬遅延時間を計測する計測部と、前記計測部により計測された前記伝搬遅延時間に基づいて、前記データの伝送路の異常判定を行う判定部、として機能させるためのプログラムである。
【0035】
このような構成により、データの伝搬遅延時間を利用して車載装置間の伝送路における異常の有無を判定することができるため、車両における故障を事前に検知することができる。
【0036】
(11)本開示の実施の形態に係る異常判定プログラムは、管理装置において用いられる異常判定プログラムであって、コンピュータを、対象車両に搭載された車載装置間におけるデータの伝搬遅延時間が所定条件を満たした前記対象車両の位置情報を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記対象車両の位置情報および他の情報に基づいて、前記対象車両におけるデータの伝送路の異常判定を行う判定部、として機能させるためのプログラムである。
【0037】
このような構成により、たとえば、対象車両における伝搬遅延時間が大きい要因が、対象車両の伝送路にあるのか、または対象車両の走行環境にあるのかを切り分けることができるため、対象車両の伝送路における異常の有無をより正確に判定することができる。したがって、車両における故障を事前に検知することができる。
【0038】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0039】
<第1の実施の形態>
[構成および基本動作]
(全体構成)
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る車載ネットワークシステムの構成を示す図である。
図1を参照して、車載ネットワークシステム301は、車両1に搭載され、スイッチ装置101と、複数の機能部111とを備える。
図1では、一例として、機能部111である2つの機能部111A,111Bを示している。スイッチ装置101および各機能部111は、車載装置であり、たとえばECU(Electronic Control Unit)である。
【0040】
スイッチ装置101は、たとえばイーサネット(登録商標)ケーブル10により複数の機能部111と接続されており、自己に接続された複数の機能部111と通信を行うことが可能である。具体的には、スイッチ装置101は、機能部111からのデータを他の機能部111へ中継する中継処理を行う。スイッチ装置101および機能部111間では、たとえば、IPパケットが格納されたイーサネットフレームを用いて情報のやり取りが行われる。
【0041】
機能部111は、車外通信ECU、センサ、カメラ、ナビゲーション装置、自動運転処理ECU、エンジン制御デバイス、AT(Automatic Transmission)制御デバイス、HEV(Hybrid Electric Vehicle)制御デバイス、ブレーキ制御デバイス、シャーシ制御デバイス、ステアリング制御デバイスおよび計器表示制御デバイス等である。
【0042】
(スイッチ装置および機能部の構成)
(a)スイッチ装置の構成
図2は、本開示の第1の実施の形態に係るスイッチ装置の構成を示す図である。
図2を参照して、スイッチ装置101は、中継部51と、情報処理部52と、記憶部53と、複数の通信ポート54と、通知部55とを備える。中継部51、情報処理部52および通知部55は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)およびDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサにより実現される。記憶部53は、たとえば不揮発性メモリである。中継部51は、スイッチ部61と、制御部62とを含む。情報処理部52は、計測部63と、判定部64とを含む。
【0043】
通信ポート54は、たとえばイーサネットケーブル10を接続可能な端子である。なお、通信ポート54は、集積回路の端子であってもよい。複数の通信ポート54の各々は、イーサネットケーブル10を介して複数の機能部111のうちのいずれか1つに接続されている。この例では、通信ポート54Aが機能部111Aに接続され、通信ポート54Bが機能部111Bに接続されている。
【0044】
記憶部53には、通信ポート54のポート番号と接続先である機能部111のMAC(Media Access Control)アドレスとの対応関係を示すアドレステーブルTb1が保存されている。
【0045】
スイッチ部61は、他の車載装置間のデータを中継する。すなわち、スイッチ部61は、機能部111から送信されたイーサネットフレームを、当該機能部111に対応する通信ポート54経由で受信すると、受信したイーサネットフレームに対して中継処理を行う。
【0046】
より詳細には、スイッチ部61は、記憶部53に保存されているアドレステーブルTb1を参照し、受信したイーサネットフレームに含まれる送信先MACアドレスに対応するポート番号を特定する。そして、スイッチ部61は、受信したイーサネットフレームを、特定したポート番号の通信ポート54から送信する。
【0047】
(b)機能部の構成
図3は、本開示の第1の実施の形態に係る機能部の構成を示す図である。
図3を参照して、機能部111は、通信部81と、情報処理部82と、記憶部83と、通信ポート84とを備える。通信部81および情報処理部82は、たとえば、CPUおよびDSP等のプロセッサにより実現される。記憶部83は、たとえば不揮発性メモリである。通信ポート84は、たとえばイーサネットケーブル10を接続可能な端子である。なお、通信ポート84は、集積回路の端子等であってもよい。通信ポート84は、イーサネットケーブル10を介してスイッチ装置101に接続されている。
【0048】
(c)機能部およびスイッチ装置間におけるデータの伝搬遅延時間の計測
(c-1)伝搬遅延時間の初期値の計測
図4は、本開示の第1の実施の形態に係る車載装置間におけるデータの伝搬遅延時間の初期値の計測方法を説明するための図である。
【0049】
図2~
図4を参照して、スイッチ装置101における計測部63は、スイッチ装置101および各機能部111が正常に動作している状態において、機能部111ごとに、スイッチ装置101との間におけるデータの伝搬遅延時間の初期値を計測する。以下、伝搬遅延時間の初期値を、初期値D1とも称する。
【0050】
より詳細には、計測部63は、たとえば、車両1の出荷検査時において、初期値D1の計測に用いられる時刻情報を要求するための要求メッセージ(Pdelay_Req)を、中継部51および通信ポート54経由で機能部111へ送信する。
【0051】
機能部111における通信部81は、スイッチ装置101から送信された要求メッセージを通信ポート84経由で受信し、受信した要求メッセージを情報処理部82へ出力する。情報処理部82は、通信部81から要求メッセージを受けて、当該要求メッセージに対する応答メッセージ(Pdelay_Resp)を通信部81へ出力する。通信部81は、情報処理部82から受けた応答メッセージを、通信ポート84経由でスイッチ装置101へ送信する。このとき、情報処理部82は、応答メッセージに、要求メッセージの受信時刻t2を含めて送信する。
【0052】
また、情報処理部82は、応答メッセージの送信後、当該応答メッセージの送信時刻t3を含めたフォローアップメッセージ(Pdelay_Resp_Follow_Up)を通信部81へ出力する。通信部81は、情報処理部82から受けたフォローアップメッセージを、通信ポート84経由でスイッチ装置101へ送信する。
【0053】
スイッチ装置101における制御部62は、機能部111から送信された応答メッセージおよびフォローアップメッセージを通信ポート54経由で受信する。そして、制御部62は、当該応答メッセージに含まれる時刻t2、および当該フォローアップメッセージに含まれる時刻t3を情報処理部52に通知する。
【0054】
また、制御部62は、要求メッセージの送信時刻t1および応答メッセージの受信時刻t4を情報処理部52に通知する。より詳細には、スイッチ装置101は、図示しないカウンタを備える。制御部62は、要求メッセージの送信タイミングにおける当該カウンタのカウント値を、送信時刻t1として情報処理部52に通知する。また、制御部62は、応答メッセージの受信タイミングにおける当該カウンタのカウント値を、受信時刻t4として情報処理部52に通知する。
【0055】
情報処理部52における計測部63は、制御部62から通知された時刻t1,t2,t3,t4に基づいて、機能部111およびスイッチ装置101間のデータの伝搬遅延時間の初期値D1を計測する。具体的には、計測部63は、初期値D1=((t4-t1)-(t3-t2))/2を算出する。計測部63は、機能部111ごとに初期値D1を算出し、たとえば、算出した初期値D1と、対応する機能部111の識別情報との組み合わせを記憶部53に保存する。
【0056】
(c-2)出荷検査以降の伝搬遅延時間の計測
図5は、本開示の第1の実施の形態に係る車載装置間における、出荷検査以降の伝搬遅延時間の計測方法を説明するための図である。
【0057】
図2、
図3および
図5を参照して、スイッチ装置101における計測部63は、たとえば車両1の出荷検査以降、機能部111ごとに、スイッチ装置101と機能部111との間におけるデータの伝搬遅延時間DTを計測する。
【0058】
より詳細には、機能部111における情報処理部82は、定期的または不定期に、通信データを通信部81へ出力する。通信部81は、情報処理部82から受けた通信データを通信ポート84経由でスイッチ装置101へ送信する。また、情報処理部82は、次の通信データの送信タイミングにおいて、前回送信した通信データの送信時刻tA1を含めた通信データを通信部81へ出力する。具体的には、情報処理部82は、送信時刻tA1を示すタイムスタンプを付加した通信データを通信部81へ出力する。通信部81は、情報処理部82から受けた通信データを通信ポート84経由でスイッチ装置101へ送信する。
【0059】
スイッチ装置101における制御部62は、機能部111から送信された通信データを通信ポート54経由で受信し、受信した通信データに含まれる時刻tA1を情報処理部52に通知する。このとき、制御部62は、たとえば、当該通信データに含まれる時刻tA1とともに、当該通信データの送信元である機能部111の識別情報を情報処理部52に通知する。
【0060】
また、制御部62は、当該機能部111から受信した通信データであって、直近で受信した通信データの1つ前に受信した通信データの受信時刻tB1を情報処理部52に通知する。このとき、制御部62は、たとえば、当該通信データの受信時刻tB1とともに、当該通信データの送信元である機能部111の識別情報を情報処理部52に通知する。
【0061】
情報処理部52における計測部63は、制御部62から通知された時刻tA1,tB1に基づいて、対応する機能部111との間におけるデータの伝搬遅延時間DTの計測を行う。より詳細には、計測部63は、伝搬遅延時間DT=tB1-tA1を算出する。そして、計測部63は、たとえば、算出した伝搬遅延時間DT、および対応する機能部111の識別情報を判定部64に通知する。計測部63は、機能部111ごとに、上記のような方法により、伝搬遅延時間DTの計測を行う。
【0062】
なお、計測部63は、スイッチ装置101が機能部111からの通信データを受信するたびに伝搬遅延時間DTの計測を行う構成に限定されない。たとえば、スイッチ装置101における制御部62は、機能部111およびスイッチ装置101間で送受信される通信データを監視して、当該機能部111との間における通信負荷を計測部63に通知する。そして、計測部63は、制御部62から通知された通信負荷に応じて、伝搬遅延時間DTを計測する処理を行うか否かを決定する。たとえば、計測部63は、通信負荷が所定値より大きい場合、伝搬遅延時間DTの計測を行わないことを決定する。
【0063】
また、スイッチ装置101における制御部62は、機能部111との間における通信負荷を当該機能部111に通知してもよい。たとえば、機能部111は、スイッチ装置101から通知された通信負荷が所定値より大きい場合、スイッチ装置101へ送信する通信データに、前回の通信データの送信時刻を含めない。この場合、スイッチ装置101は、機能部111からの通信データに前回の通信データの送信時刻が含まれないため、当該機能部111との間におけるデータの伝搬遅延時間DTの計測を行わない。
【0064】
(伝送路の異常判定)
図6は、本開示の第1の実施の形態に係るスイッチ装置および機能部間における通信データの伝送路の構成の一例を示す図である。
【0065】
図6を参照して、スイッチ装置101および機能部111間における伝送路は、たとえば、スイッチ装置101における通信ポート54と、通信ポート54に接続されたイーサネットケーブル10Aと、機能部111における通信ポート84と、通信ポート84に接続されたイーサネットケーブル10Bと、イーサネットケーブル10Aに接続された中継コネクタ11Aと、イーサネットケーブル10Bに接続された中継コネクタ11Bとを含む。イーサネットケーブル10A,10Bは、イーサネットケーブル10の一例である。中継コネクタ11Aと中継コネクタ11Bとが嵌合されることにより、イーサネットケーブル10Aと、イーサネットケーブル10Bとが連結される。
【0066】
ここで、車両1の振動などにより、中継コネクタ11Aと中継コネクタ11Bとの嵌合箇所、またはイーサネットケーブル10の一部であって、中継コネクタ11との接続のために寄り解かれた箇所等において、インピーダンス不整合が生じたり、クロストークが増大したりすることがある。また、伝送路の一部または全体の経年劣化などが原因となって、インピーダンス不整合が生じたり、クロストークが増大したりすることがある。そして、たとえばこのような状態が継続すると、スイッチ装置101および機能部111間における伝送路に異常が生じて、当該伝送路を介した正常な通信を行うことができない可能性がある。
【0067】
そこで、スイッチ装置101における判定部64は、計測部63により計測された伝搬遅延時間DTに基づいて、機能部111とスイッチ装置101との間におけるデータの伝送路の異常判定を行う。これにより、車両1における故障を事前に検知することが可能となる。以下、判定部64による異常判定の具体例について説明する。
【0068】
(a)例1
図7は、本開示の第1の実施の形態に係るスイッチ装置における判定部による異常判定の例1を説明するための図である。
【0069】
図2および
図7を参照して、スイッチ装置101における判定部64は、伝搬遅延時間DTが初期値D1より大きい場合、対応する伝送路において異常が生じていると判定する。より詳細には、判定部64は、たとえば、伝搬遅延時間DT、および対応する機能部111の識別情報の通知を計測部63から受けると、記憶部53に保存されている機能部111ごとの伝搬遅延時間の初期値D1のうち、当該識別情報に対応する初期値D1を特定する。
【0070】
そして、判定部64は、特定した初期値D1と、計測部63から通知された伝搬遅延時間DTとを比較することにより、対応する機能部111とスイッチ装置101との間におけるデータの伝送路に異常が生じているか否かを判定する。たとえば、判定部64は、伝搬遅延時間DTが初期値D1より大きい場合、対応する伝送路において異常が生じていると判定し、判定結果を示す判定情報を通知部55へ出力する。
【0071】
具体的には、
図7に示すように、機能部111が、時刻tA1に通信データをスイッチ装置101へ送信した後、送信時刻tA2に、次の通信データをスイッチ装置101へ送信したとする。時刻tA2に送信された通信データには、前回の通信データの送信時刻tA1が含まれている。
【0072】
ここで、時刻tA2に送信された通信データ、すなわち送信時刻tA1を含む通信データの送信が失敗したとする。この場合、機能部111は、時刻tA2より後の時刻tA2xにおいて、送信時刻tA1を含む通信データを再び送信する。そして、スイッチ装置101が、時刻tA2xに送信された通信データを、時刻tB2に受信したとする。
【0073】
また、機能部111が、時刻tA2xに通信データをスイッチ装置101へ送信した後、送信時刻tA3に、次の通信データをスイッチ装置101へ送信したとする。時刻tA3に送信された通信データには、前回の通信データの送信時刻tA2が含まれている。そして、スイッチ装置101が、時刻tA3に送信された通信データを、時刻tB3に受信したとする。
【0074】
この場合、スイッチ装置101における計測部63は、直近で受信した通信データに含まれる時刻tA2と、当該通信データの1つ前に受信した通信データの受信時刻tB2とを用いて、データの伝搬遅延時間DT(=tB2-tA2)を算出し、算出した伝搬遅延時間DTを判定部64に通知する。
【0075】
上述のとおり、機能部111は、時刻tA2に通信データを送信した後、当該通信データの送信失敗により、時刻tA2xに通信データの再送を行っている。このため、伝搬遅延時間DT(=tB2-tA2)は、正常時における伝搬遅延時間、すなわち伝搬遅延期間の初期値D1よりも大きくなる(DT>D1)。このような場合、スイッチ装置101における判定部64は、対応する伝送路において異常が生じていると判定する。
【0076】
(b)例2
判定部64は、「(a)例1」に示した異常判定を行う代わりに、伝搬遅延時間DTの履歴に基づいて異常判定を行う構成であってもよい。たとえば、判定部64は、伝搬遅延時間DTが大きい傾向にある場合、対応する伝送路において異常が生じていると判定する。
【0077】
具体的には、計測部63は、伝搬遅延時間DTを計測すると、計測した伝搬遅延時間DTと、現在時刻を示す時刻情報とを対応づけて記憶部53に保存する。判定部64は、記憶部53に伝搬遅延時間DTが新たに保存されると、記憶部53に既に保存されている、伝搬遅延時間DTと時刻情報との複数の組み合わせを参照する。そして、判定部64は、伝搬遅延時間DTが閾値Th以上である状態(DT>Th)が所定時間T以上継続した場合、対応する伝送路において異常が生じていると判定する。たとえば、閾値Thは、初期値D1より大きい(Th>D1)。
【0078】
図8は、本開示の第1の実施の形態に係るスイッチ装置における判定部による異常判定の例2を説明するための図である。
図8は、スイッチ装置101における計測部63により計測される伝搬遅延時間DTの時系列変化の一例を示す。
図8において、横軸は経過時間を示し、縦軸は伝搬遅延時間DTを示す。
【0079】
図8を参照して、時刻tx1より前の期間において、伝搬遅延時間DTが閾値Thより小さく(DT<Th)、時刻tx1において一時的に伝搬遅延時間DTが閾値Thより大きくなったとする(DT>Th)。また、時刻tx1の後、時刻tx2より前の期間において、伝搬遅延時間DTが再び閾値Thより小さくなり、時刻tx2以降、所定時間Tよりも長い時間継続して伝搬遅延時間DTが閾値Thより大きくなったとする。
【0080】
この場合、スイッチ装置101における判定部64は、たとえば、時刻tx2から所定時間Tが経過したタイミング以降に行う異常判定において、対応する伝送路において異常が生じていると判定する。
【0081】
なお、判定部64は、伝搬遅延時間DTと閾値Thとの比較を行う代わりに、伝搬遅延時間DTと初期値D1との差(DT-D1)を他の閾値Thxと比較してもよい。この場合、判定部64は、たとえば、差(DT-D1)が閾値Thx以上である状態が所定時間T以上継続した場合、対応する伝送路において異常が生じていると判定する。
【0082】
また、判定部64は、伝搬遅延時間DTと閾値Thとを比較して、伝搬遅延時間DTが閾値Th以上となった回数に基づいて、異常判定を行ってもよい。たとえば、判定部64は、1時間当たりの上記回数が所定値以上である場合、またはイグニッションスイッチがオンに切り替わったタイミングから現在時刻までの期間における上記回数が所定値以上である場合、対応する伝送路において異常が生じていると判定する。
【0083】
また、伝搬遅延時間DTおよび時刻情報の保存は、計測部63の代わりに、判定部64が行ってもよい。すなわち、計測部63が、計測した伝搬遅延時間DTおよび現在時刻を判定部64に通知し、判定部64が、通知された伝搬遅延時間DT、および通知された時刻を示す時刻情報を記憶部53に保存してもよい。また、この場合、判定部64は、通知された伝搬遅延時間DTの保存を行う前に、伝搬遅延時間DTと閾値Thとを比較し、伝搬遅延時間DTが閾値Th以上である場合に、当該伝搬遅延時間DTおよび時刻情報を記憶部53に保存してもよい。
【0084】
(c)例3
判定部64は、伝搬遅延時間DTおよび閾値Thに基づいて異常判定を行う構成において、車両1の状態に応じて閾値Thを変更してもよい。たとえば、判定部64は、伝搬遅延時間DTと閾値Thとを比較し、比較結果に基づいて異常判定を行う構成において、車両1の状態に応じて閾値Thを変更する。
図9は、本開示の第1の実施の形態に係るスイッチ装置における判定部により設定される閾値と車両の状態との対応関係を示す対応テーブルの一例を示す図である。
【0085】
図2および
図9を参照して、スイッチ装置101における記憶部53には、閾値Thと車両1の状態との対応関係を示す対応テーブルTb2が保存されている。車両1の状態は、たとえば、電源の状態、走行状態、エンジンの動作状態、回生機能の状態、およびウィンドウの動作状態などの各状態の組み合わせにより判定される。
【0086】
具体的には、イグニッションスイッチがオフであり、停車中であり、エンジンが停止中であり、回生機能が駆動しておらず、かつウィンドウが駆動していない場合における車両1の状態を「状態A」とする。また、イグニッションスイッチがオンであり、走行中であり、EV(Electric Vehicle)走行のためエンジンが停止中であり、回生機能が駆動中であり、かつウィンドウが駆動していない場合における車両1の状態を「状態B」とする。また、イグニッションスイッチがオンであり、走行中であり、エンジンが駆動中であり、回生機能が駆動中であり、かつウィンドウが駆動中である場合における車両1の状態を「状態C」とする。状態A、状態B、状態Cの順で、車載ネットワークシステム301における通信負荷が小さい状態である。
【0087】
たとえば、スイッチ装置101における制御部62は、定期的または不定期にスイッチ装置101を介して複数の機能部111間で送受信される通信データを監視することにより、イグニッションスイッチなどの各機能の状態を監視して、車両1の状態を判定する。そして、制御部62は、判定した車両1の状態を、情報処理部52に通知する。なお、
図9では、車両1の状態の一例として、状態A、状態Bおよび状態Cの3つの状態を示しているが、車両1の状態は、上記の3つの状態に限定されない。
【0088】
対応テーブルTb2では、閾値ThA,ThB,ThCと、状態A,B,Cとがそれぞれ対応づけられている。閾値ThA,ThB,ThCの順で、小さい値が設定されている。すなわち、車載ネットワークシステム301における通信負荷が大きいほど、大きい値の閾値Thが対応づけられている。
【0089】
図10は、本開示の第1の実施の形態に係るスイッチ装置における判定部による異常判定の例3を説明するための図である。
図10は、スイッチ装置101における計測部63により計測される伝搬遅延時間DTの時系列変化の一例を示す。
図10において、横軸は経過時間を示し、縦軸は伝搬遅延時間DTを示す。
【0090】
図9および
図10を参照して、制御部62は、時刻tx11より前の期間における車両1の状態が「状態A」であり、時刻tx11から時刻tx12までの期間における車両1の状態が「状態B」であり、時刻tx12以降の車両1の状態が「状態C」であると判定したとする。
【0091】
情報処理部52における判定部64は、記憶部53に保存されている対応テーブルTb2を参照して、制御部62により判定された車両1の状態に応じて、異常判定に用いる閾値Thを変更する。
【0092】
具体的には、判定部64は、時刻tx11より前の期間においては、閾値Thを閾値ThAに設定する。そして、判定部64は、たとえば、計測部63により計測された伝搬遅延時間DTと、閾値ThAとを比較して、伝搬遅延時間DTが閾値ThAより大きい場合、対応する伝送路において異常が生じていると判定する異常判定を行う。
【0093】
また、判定部64は、時刻tx11から時刻tx12までの期間においては、閾値Thを閾値ThBに設定する。そして、判定部64は、たとえば、計測部63により計測された伝搬遅延時間DTと、閾値ThBとを比較して、伝搬遅延時間DTが閾値ThBより大きい場合、対応する伝送路において異常が生じていると判定する異常判定を行う。
【0094】
また、判定部64は、時刻tx12以降、閾値Thを閾値ThCに設定する。そして、判定部64は、たとえば、計測部63により計測された伝搬遅延時間DTと、閾値ThCとを比較して、伝搬遅延時間DTが閾値ThCより大きい場合、対応する伝送路において異常が生じていると判定する異常判定を行う。
【0095】
なお、判定部64は、車両1の状態に応じて閾値Thを変更する場合においても、上述した「(b)例2」に示した異常判定と同様に、伝搬遅延時間DTが一時的に閾値Th以上となった場合には異常が生じていると判定せず、伝搬遅延時間DTが閾値Th以上である状態が所定時間T継続した場合に異常が生じていると判定してもよい。
【0096】
また、判定部64は、伝搬遅延時間DTと閾値Thとの比較を行う代わりに、伝搬遅延時間DTと初期値D1との差(DT-D1)を他の閾値Thxと比較する構成であり、かつ車両1の状態に応じて閾値Thxを変更する構成であってもよい。
【0097】
また、判定部64は、伝搬遅延時間DTと閾値Thとを比較して、伝搬遅延時間DTが閾値Th以上となった回数に基づいて異常判定を行う構成であり、かつ車両1の状態に応じて閾値Thを変更する構成であってもよい。
【0098】
(判定結果の通知および保存)
再び
図2を参照して、通知部55は、判定部64による判定結果を通知する異常通知動作を行う。より詳細には、判定部64は、上述のとおり、伝送路において異常が生じている旨の判定結果を得た場合、当該判定結果を示す判定情報を通知部55へ出力する。通知部55は、判定情報を判定部64から受けると、たとえば、当該判定情報の示す内容を車両1に搭載されたモニタなどに表示してユーザに通知するとともに、当該判定情報を記憶部53に保存する異常通知動作を行う。
【0099】
また、通知部55は、異常が生じた伝送路の別に応じて、異常通知動作の内容を変更してもよい。より詳細には、ISO26262規格は、機能安全の指標としてASIL(Automotive Safety Integrity Level:安全要求レベル)を規定し、各安全要求に対して、レベルが低い順に、QM(Quality Management),A,B,C,Dのレベルを割り当てている。Dが割り当てられた機能は最も高いレベルの安全方策が求められ、Aが割り当てられた機能は求められる安全方策が最も低い。QMが割り当てられた機能は、安全性と関連がない。記憶部53には、機能部111ごとのASILのレベルが予め保存されている。
【0100】
通知部55は、判定部64から判定情報を受けると、当該判定情報の示す伝送路に対応する機能部111を特定する。また、通知部55は、記憶部53に保存されている機能部111ごとのASILレベルを参照して、特定した機能部111に対応するASILレベルを確認する。そして、通知部55は、たとえば、特定した機能部111のASILレベルが所定レベル以上である場合、ユーザによる所定の操作が行われるまでの間、判定情報の内容を継続してモニタに表示する。
【0101】
一方、通知部55は、たとえば、特定した機能部111のASILレベルが所定レベルより低い場合、判定情報の内容のモニタへの表示を行わない。そして、通知部55は、たとえば、当該機能部111に対応する伝送路において異常が生じていることを示す判定情報を再び判定部64から受けた場合に、当該判定情報の内容をモニタに表示する。通知部55は、判定部64から判定情報を受けた場合、当該判定情報の内容のモニタへの表示の有無にかかわらず、当該判定情報を記憶部53に保存する。
【0102】
なお、通知部55は、上記のような異常通知動作を行う構成に限らず、たとえば、特定した機能部111のASILレベルが所定レベルより低い場合、判定情報の内容のモニタへの表示を所定時間行った後に、当該表示を消してもよい。また、通知部55は、異常が生じた伝送路の別にかかわらず、同一の内容の異常通知動作を行う構成であってもよい。
【0103】
また、通知部55は、スイッチ装置101における記憶部53に判定情報を保存する代わりに、ダイアグ機能を有する他の車載装置に当該判定情報を保存してもよい。
【0104】
また、通知部55は、モニタへの表示を行う代わりに、またはモニタへの表示に加えて、車両1におけるLED(Light Emitting Diode)を点灯させるなどにより、伝送路に異常が生じていることをユーザに通知してもよい。この場合、通知部55は、たとえば、異常が生じた伝送路の別に応じて、LEDの点灯状態を変更する。
【0105】
[動作の流れ]
次に、本開示の第1の実施の形態に係るスイッチ装置101が、機能部111との間における通信データの伝送路の異常判定、および判定結果の通知を行う際の動作について図面を用いて説明する。
【0106】
車載ネットワークシステム301における各装置は、メモリを含むコンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のシーケンスの各ステップの一部または全部を含むプログラムを当該メモリから読み出して実行する。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、外部からインストールすることができる。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、記録媒体に格納された状態で流通する。
【0107】
(伝送路の異常判定および通知を行う際の動作手順(例1))
図11は、本開示の第1の実施の形態に係るスイッチ装置による、伝送路の異常判定、および判定結果の通知を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
図11は、上述した「(a)例1」に対応している。
【0108】
図11を参照して、まず、スイッチ装置101は、機能部111からの通信データを受信するまで待機し(ステップS11において「NO」)、機能部111からの通信データを受信した場合(ステップS11において「YES」)、当該通信データの受信時刻tBnを保存する(ステップS12)。
【0109】
次に、スイッチ装置101は、ステップS11において受信した通信データに、当該通信データの1つ前の通信データの送信時刻tA(n-1)が含まれているか否かを確認する(ステップS13)。
【0110】
次に、スイッチ装置101は、1つ前の通信データに送信時刻tA(n-1)が含まれている場合(ステップS13において「YES」)、伝搬遅延時間DT(=tBn-tA(n-1))を計測する。そして、スイッチ装置101は、計測した伝搬遅延時間DTと、保存済である複数の伝搬遅延時間の初期値D1であって、ステップS11において受信した通信データの送信元である機能部111に対応する初期値D1とを比較する(ステップS14)。
【0111】
次に、スイッチ装置101は、伝搬遅延時間DTが初期値D1より大きい場合(ステップS15において「YES」)、当該機能部111との間における伝送路に異常が生じていると判定する(ステップS16)。そして、スイッチ装置101は、異常通知動作、すなわち、判定結果の内容の表示、および判定結果を示す判定情報の保存を行う(ステップS17)。
【0112】
一方、スイッチ装置101は、ステップS11において受信した通信データに、当該通信データの1つ前の通信データの送信時刻tA(n-1)が含まれていない場合(ステップS13において「NO」)、または計測した伝搬遅延時間DTが初期値D1以下である場合(ステップS15において「NO」)、機能部111からの新たな通信データを受信するまで待機する。
【0113】
(伝送路の異常判定および通知を行う際の動作手順(例2))
図12は、本開示の第1の実施の形態に係るスイッチ装置による、伝送路の異常判定、および判定結果の通知を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
図12は、上述した「(b)例2」に対応している。
【0114】
図12を参照して、ステップS21~ステップS23までの動作は、
図11に示すステップS11~ステップS
13までの動作と同様であるため、ここでは詳細な説明は繰り返さない。
【0115】
次に、スイッチ装置101は、1つ前の通信データに送信時刻tA(n-1)が含まれている場合(ステップS23において「YES」)、伝搬遅延時間DT(=tBn-tA(n-1))を計測する。そして、スイッチ装置101は、計測した伝搬遅延時間DTと、現在時刻を示す時刻情報とを対応づけて保存する(ステップS24)。
【0116】
次に、スイッチ装置101は、保存している、伝搬遅延時間DTと時刻情報との複数の組み合わせを参照して、伝搬遅延時間DTが閾値Thより大きい状態が所定時間T以上継続したか否かを確認する(ステップS25)。
【0117】
次に、スイッチ装置101は、伝搬遅延時間DTが閾値Thより大きい状態が所定時間T以上継続した場合、当該機能部111との間における伝送路に異常が生じていると判定する(ステップS26)。そして、スイッチ装置101は、異常通知動作、すなわち、判定結果の内容の表示、および判定結果を示す判定情報の保存を行う(ステップS27)。
【0118】
一方、スイッチ装置101は、計測した伝搬遅延時間DTが閾値Thより大きい状態が所定時間T以上継続していない場合(ステップS25において「NO」)、機能部111からの新たな通信データを受信するまで待機する。
【0119】
(伝送路の異常判定および通知を行う際の動作手順(例3))
図13は、本開示の第1の実施の形態に係るスイッチ装置による、伝送路の異常判定、および判定結果の通知を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
図13は、上述した「(c)例3」に対応している。
【0120】
図13を参照して、ステップS31~ステップS34までの動作は、
図12に示すステップS21~ステップS24までの動作と同様であるため、ここでは詳細な説明は繰り返さない。
【0121】
次に、スイッチ装置101は、たとえば、機能部111間で送受信される通信データを監視することにより、車両1の状態を、「状態A」「状態B」または「状態C」のいずれか1つに判定する(ステップS35)。
【0122】
次に、スイッチ装置101は、保存している対応テーブルTb2を参照して、ステップS35において判定した車両1の状態に基づいて、異常判定に用いる閾値Thの変更が必要であるか否かを確認する(ステップS36)。
【0123】
次に、スイッチ装置101は、閾値Thの変更が必要であると判断した場合(ステップS36において「YES」)、車両1の状態に応じた閾値Thに変更する(ステップS37)。
【0124】
次に、スイッチ装置101は、たとえば、ステップS34において計測した伝搬遅延時間DTが、変更後の閾値Thより大きい状態が所定時間T以上継続したか否かを確認する(ステップS38)。
【0125】
次に、スイッチ装置101は、伝搬遅延時間DTが閾値Thより大きい状態が所定時間T以上継続した場合、当該機能部111との間における伝送路に異常が生じていると判定する(ステップS39)。そして、スイッチ装置101は、異常通知動作、すなわち、判定結果の内容の表示、および判定結果を示す判定情報の保存を行う(ステップS40)。
【0126】
一方、スイッチ装置101は、計測した伝搬遅延時間DTが閾値Thより大きい状態が所定時間T以上継続していない場合(ステップS38において「NO」)、機能部111からの新たな通信データを受信するまで待機する。
【0127】
また、スイッチ装置101は、判定した車両1の状態に基づいて、異常判定に用いる閾値Thの変更が必要ではないと判断した場合(ステップS36において「NO」)、閾値Thの変更を行うことなく、ステップS38以降の動作を行う。
【0128】
なお、上述した本開示の第1の実施の形態に係る車載ネットワークシステム301では、スイッチ装置101が、機能部111との間における伝送路の異常判定を行う構成であるが、これに限定されず、スイッチ装置101以外の他の車載装置が、スイッチ装置101と同様のユニットを備え、当該異常判定を行う構成であってもよい。また、スイッチ装置101は、機能部111間における通信データの中継処理を行う機能、および異常判定を行う機能に加えて、他の機能を有してもよい。
【0129】
次に、本開示の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0130】
<第2の実施の形態>
上述した本開示の第1の実施の形態では、スイッチ装置101が、機能部111との間におけるデータの伝搬遅延時間DTに基づいて、対応する伝送路の異常判定を行う。これに対して、本開示の第2の実施の形態では、管理装置201が、車両1に搭載された車載装置間におけるデータの伝搬遅延時間DTが所定条件を満たした当該車両1の位置情報に基づいて、当該車両1における伝送路の異常判定を行う。
【0131】
[構成および基本動作]
図14は、本開示の第2の実施の形態に係る通信システムの構成を示す図である。
図14を参照して、通信システム401は、各々が車載ネットワークシステム301を備える複数の車両1と、管理装置201と、気象情報管理装置202とを備える。管理装置201は、たとえば、車両1の外部に設けられたサーバであり、ネットワーク150を介して各車両1との間で情報の送受信を行う。気象情報管理装置202は、たとえば、車両1の外部に設けられたサーバであり、ネットワーク150を介して管理装置201へ、定期的または不定期に気象情報の送信を行う。
【0132】
再び
図1および
図2を参照して、ここでは、車載ネットワークシステム301における機能部111Aが、車外通信ECUであるとする。各車両1のスイッチ装置101における判定部64は、たとえば第1の実施の形態において説明した方法と同様の方法により、伝搬遅延時間DTに基づいて伝送路の異常判定を行う。そして、判定部64は、伝搬遅延時間DTが所定条件を満たす場合、すなわち伝送路において異常が生じている旨の判定結果を得た場合、車両1の現在位置を示す位置情報を中継部51へ出力する。
【0133】
中継部51におけるスイッチ部61は、判定部64から受けた位置情報を、通信ポート54Aから機能部111Aへ送信する。そして、機能部111Aは、スイッチ装置101から受信した位置情報を、ネットワーク150を介して管理装置201へ送信する。
【0134】
図15は、本開示の第2の実施の形態に係る管理装置の構成を示す図である。
図15を参照して、管理装置201は、通信部(取得部)71と、記憶部72と、判定部73とを備える。通信部71および判定部73は、たとえば、CPUおよびDSP等のプロセッサにより実現される。記憶部72は、たとえば不揮発性メモリであり、地図情報などを保持している。
【0135】
通信部71は、車両1に搭載された車載装置間におけるデータの伝搬遅延時間DTが所定条件を満たした当該車両1の位置情報を取得する。より詳細には、通信部71は、車両1における伝送路において異常が生じている旨の判定結果を得た当該車両1におけるスイッチ装置101、から送信された位置情報を、機能部111Aおよびネットワーク150経由で受信する。そして、通信部71は、受信した位置情報を記憶部72に保存する。記憶部72には、伝搬遅延時間DTが所定条件を満たした1または複数の車両1の位置情報が蓄積される。
【0136】
また、通信部71は、気象情報管理装置202から送信された気象情報を、ネットワーク150経由で受信し、受信した気象情報を記憶部72に保存する。気象情報は、たとえば、エリアごとの、気温、湿度、雷の有無、および豪雨の有無などを示す。
【0137】
判定部73は、通信部71により取得された車両1の位置情報および他の情報に基づいて、当該車両1における伝送路の異常判定を行う。他の情報は、記憶部72に保存されている地図情報、ならびに通信部71により取得された、異常判定の判定対象となる車両1(以下、「対象車両」とも称する。)以外の他の車両1の位置情報、および気象情報のうちの少なくともいずれか1つである。判定部73による異常判定の詳細については、後述する。また、判定部73は、対象車両1の伝送路において異常が生じている旨の判定結果を得た場合、判定結果を示す判定情報を、当該対象車両1へ通信部71およびネットワーク150経由で送信する。
【0138】
再び
図1および
図2を参照して、車両1における機能部111Aは、管理装置201から送信された判定情報をネットワーク150経由で受信すると、当該判定情報をスイッチ装置101へ送信する。スイッチ装置101における制御部62は、機能部111Aから送信された判定情報を通信ポート54A経由で受信すると、当該判定情報を通知部55へ出力する。通知部55は、制御部62から判定情報を受けると、たとえば第1の実施の形態において説明した方法と同様の方法により、当該判定情報の内容をモニタ等に表示する異常通知動作を行う。
【0139】
[異常判定の詳細]
(例1)
図16および
図17は、本開示の第2の実施の形態に係る管理装置による異常判定の例1を説明するための図である。
図17は、対象車両1におけるスイッチ装置101の計測部63により計測される伝搬遅延時間DTの時系列変化の一例を示す。
図17において、横軸は経過時間を示し、縦軸は伝搬遅延時間DTを示す。
【0140】
図15~
図17を参照して、管理装置201における判定部73は、対象車両1の位置情報、伝搬遅延時間DTが所定条件を満たした1または複数の他の車両1の位置情報、および地図情報に基づいて、対象車両1における伝送路の異常判定を行う。
【0141】
より詳細には、判定部73は、たとえば、記憶部72に保存されている1または複数の位置情報を参照して、各位置情報の示す位置を、記憶部72に保存されている地図情報の示す地図上にマッピングする。これにより、
図16に示すように、地図上には、1または複数の車両1の各々の位置であって、伝送路に異常が生じている旨の判定結果を得た際の位置がマッピングされる。
【0142】
また、判定部73は、たとえば、単位エリア当たりのマッピング数に応じて、単位エリアごとにレベルを設定する。具体的には、判定部73は、単位エリア当たりのマッピング数がN1以上であるエリアにはレベル1を設定し、単位エリア当たりのマッピング数がN2(<N1)以上かつN1未満であるエリアにはレベル2を設定し、単位エリア当たりのマッピング数がN2未満であるエリアにはレベル3を設定する。
図16では、レベル1が設定されたエリアに網目状のハッチングを付し、レベル2が設定されたエリアに横線のハッチングを付し、レベル3が設定されたエリアに縦線のハッチングを付している。レベル1、レベル2、レベル3の順で、各エリアを走行する車両1における伝搬遅延時間DTが大きくなる傾向にある。
【0143】
図17に示すように、対象車両1が、時刻tx21から時刻tx22までに期間においてレベル1のエリアを走行したとする。また、当該期間において、対象車両1は、異常判定において伝送路に異常が生じていると判定し、現在位置を示す位置情報を管理装置201へ送信したとする。
【0144】
管理装置201における判定部73は、対象車両1からの位置情報が記憶部72に新たに保存された場合、当該位置情報およびマッピングが行われた地図を参照して、当該位置情報の示す位置を含むエリアのレベルを確認する。そして、判定部73は、確認したレベルに基づいて、対象車両1における伝搬遅延時間DTが大きい要因が、対象車両1の伝送路にあるのか、または対象車両1の走行環境にあるのかを切り分ける。
【0145】
具体的には、判定部73は、対象車両1の位置するエリアのレベルが「1」であることを確認すると、当該エリアは高圧電線が上空に設けられている高電界エリアなどであり、データの伝送においてノイズが生じやすいエリア、すなわち伝搬遅延時間DTが大きくなりやすいエリアであると特定する。そして、判定部73は、対象車両1における伝搬遅延時間DTが大きい要因は、当該対象車両1の走行環境にあり、当該対象車両1の伝送路に異常が生じていないと判定する。この場合、判定部73は、たとえば、判定結果を示す判定情報の対象車両1への送信を行わない。
【0146】
対象車両1においては、管理装置201への判定情報の送信後、管理装置201からの判定情報が到着しないことになり、対象車両1におけるスイッチ装置101は、異常通知動作を行わない。
【0147】
また、
図17に示すように、対象車両1が、時刻tx23以降の期間において、レベル2またはレベル3のエリアを走行したとする。また、当該期間において、対象車両1は、異常判定において伝送路に異常が生じていると判定し、現在位置を示す位置情報を管理装置201へ送信したとする。
【0148】
管理装置201における判定部73は、対象車両1からの位置情報が記憶部72に新たに保存された場合、当該位置情報およびマッピングが行われた地図を参照して、当該位置情報の示す位置を含むエリアのレベルを確認する。そして、判定部73は、対象車両1の位置を含むエリアのレベルが「2」または「3」であることを確認すると、当該対象車両1における伝搬遅延時間DTが大きい要因は、当該対象車両1における伝送路の異常であると判定する。そして、判定部73は、判定結果を示す判定情報を、通信部71およびネットワーク150経由で当該対象車両1へ送信する。
【0149】
対象車両1において、機能部111Aは、管理装置201から送信された判定情報をネットワーク150経由で受信して、当該判定情報をスイッチ装置101へ送信する。スイッチ装置101における制御部62は、機能部111Aから送信された判定情報を通信ポート54A経由で受信すると、当該判定情報を通知部55へ出力する。通知部55は、制御部62から判定情報を受けると、たとえば第1の実施の形態において説明した方法と同様の方法により、当該判定情報の内容をモニタ等に表示する異常通知動作を行う。
【0150】
なお、上記のように、判定部73が気象情報を用いることなく異常判定を行う場合、通信システム401は、気象情報管理装置202を備えなくもよい。
【0151】
また、管理装置201は、1または複数の車両1から取得した位置情報および地図情報、またはマッピングを行った後の地図を示すマッピング情報を、対象車両1へ送信してもよい。この場合、対象車両1は、管理装置201から受信した1または複数の位置情報および地図情報、またはマッピング情報に基づいて、自己の伝送路の異常判定を行ってもよい。たとえば、対象車両1におけるスイッチ装置101は、複数の位置情報および地図情報、またはマッピング情報に基づいて、自己の走行エリアのレベルを特定し、特定したレベルが「1」である場合、伝搬遅延時間DTが閾値Thより大きい場合であっても、伝送路に異常が生じていていないと判定する。
【0152】
(例2)
図18は、本開示の第2の実施の形態に係る管理装置による異常判定の例2を説明するための図である。
【0153】
図15および
図18を参照して、管理装置201における判定部73は、対象車両1から取得した位置情報、地図情報、および気象情報管理装置202から取得した気象情報に基づいて、当該対象車両1における伝送路の異常判定を行う。
【0154】
より詳細には、判定部73は、たとえば、定期的または不定期に、記憶部72に保存されている地図情報および最新の気象情報を参照して、雷または豪雨が発生しているエリアのレベルを「1」に設定し、判定部73は、レベル1のエリアの周辺エリアのレベルを「2」に設定し、他のエリアのレベルを「3」に設定する。
図18では、レベル1が設定されたエリアに網目状のハッチングを付し、レベル2が設定されたエリアに横線のハッチングを付し、レベル3が設定されたエリアにはハッチングを付していない。レベル1、レベル2、レベル3の順で、各エリアを走行する車両1における伝搬遅延時間DTが大きくなる傾向にある。
【0155】
また、判定部73は、記憶部72に位置情報が新たに保存された場合、当該位置情報の示す位置を含むエリアのレベルを確認する。ここでは、当該エリアにおいて雷が発生しているとする。
【0156】
この場合、判定部73は、当該位置情報の送信元である対象車両1が、データの伝送においてノイズが生じやすいエリア、すなわち伝搬遅延時間DTが大きくなりやすいエリアに位置していると特定する。そして、判定部73は、対象車両1における伝搬遅延時間DTが大きい要因は、当該対象車両1の走行環境にあり、当該対象車両1における伝送路に異常が生じていないと判定する。この場合、判定部73は、たとえば、判定結果を示す判定情報の対象車両1への送信を行わない。
【0157】
対象車両1においては、管理装置201への判定情報の送信後、管理装置201からの判定情報が到着しないことになり、対象車両1におけるスイッチ装置101は、異常通知動作を行わない。
【0158】
一方、判定部73は、対象車両1の位置するエリアに雷または豪雨が発生していない場合、当該対象車両1における伝搬遅延時間DTが大きい要因は、当該対象車両1における伝送路の異常であると判定する。そして、判定部73は、判定結果を示す判定情報を、通信部71およびネットワーク150経由で当該対象車両1へ送信する。
【0159】
対象車両1において、機能部111Aは、管理装置201から送信された判定情報をネットワーク150経由で受信して、当該判定情報をスイッチ装置101へ送信する。スイッチ装置101における制御部62は、機能部111Aから送信された判定情報を通信ポート54A経由で受信すると、当該判定情報を通知部55へ出力する。通知部55は、制御部62から判定情報を受けると、たとえば第1の実施の形態において説明した方法と同様の方法により、当該判定情報の内容をモニタ等に表示する異常通知動作を行う。
【0160】
なお、対象車両1が、地図情報および気象情報を管理装置201から受信し、受信した地図情報および気象情報に基づいて、当該対象車両1における伝送路の異常判定を行ってもよい。すなわち、対象車両1におけるスイッチ装置101は、たとえば、地図情報および気象情報に基づいて、自己の走行エリアにおいて雷または豪雨が発生しているか否かを確認し、雷または豪雨が発生している場合、伝搬遅延時間DTが閾値Thより大きい場合であっても、伝送路に異常が生じていないと判定する構成であってもよい。
【0161】
また、管理装置201における判定部73は、上述した例1および例2以外の方法により異常判定を行ってもよい。たとえば、判定部73は、対象車両1を含む複数の車両1の各々から取得した複数の位置情報、地図情報、および気象情報に基づいて、対象車両1における伝送路の異常判定を行ってもよい。
【0162】
また、複数の車両1の各々は、伝送路に異常が生じていると判定した際の現在位置を示す位置情報に加えて、さらに、判定結果を示す判定情報、自車両の車種を示す車種情報、自車両の状態を示す状態情報、現在時刻を示す時刻情報、および異常判定に用いた伝搬遅延時間DTを示す遅延時間情報のうちの少なくともいずれか1つの車両情報を管理装置201へ送信してもよい。この場合、管理装置201は、車両1の位置情報だけでなく、当該車両1に関する車両情報を総合的に考慮した異常判定を行うことができるため、より正確な判定結果を得ることができる。
【0163】
[動作の流れ]
次に、本開示の第2の実施の形態に係る管理装置201が、対象車両1におけるデータの伝送路の異常判定を行う際の動作について図面を用いて説明する。
【0164】
通信システム401における各装置は、メモリを含むコンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のシーケンスの各ステップの一部または全部を含むプログラムを当該メモリから読み出して実行する。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、外部からインストールすることができる。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、記録媒体に格納された状態で流通する。
【0165】
(通信システムにおける、対象車両に対する異常判定を行う際の動作手順)
図19は、本開示の第2の実施の形態に係る通信システムにおける、対象車両に対する異常判定を行う処理のシーケンスの一例を示す図である。ここでは、3つの車両1である車両1A,1B,1Cが通信システム401に含まれているとする。
【0166】
図19を参照して、まず、車両1Aにおけるスイッチ装置101が、車両1Aにおける伝送路の異常判定を行ったとする(ステップS51)。そして、車両1Aにおけるスイッチ装置101は、異常が生じていると判定した場合(ステップS52において「YES」)、車両1Aの現在位置を示す位置情報を管理装置201へ送信する(ステップS53)。一方、車両1Aにおけるスイッチ装置101は、異常は生じていないと判定した場合(ステップS52において「NO」)、次の異常判定を行うまで待機する。
【0167】
次に、管理装置201は、車両1Aから送信された位置情報を受信すると、当該位置情報を保存する(ステップS54)。
【0168】
次に、管理装置201は、たとえば、保存している複数の位置情報および地図情報に基づいて、車両1Aを対象車両とした異常判定を行う。ここでは、管理装置201は、異常なしとの判定結果を得たとする。この場合、管理装置201は、判定結果を示す判定情報の送信を行わず、たとえば、他の位置情報を受信するまで待機する(ステップS55)。
【0169】
次に、車両1Bにおけるスイッチ装置101が、車両1Bにおける伝送路の異常判定を行ったとする(ステップS56)。次に、車両1Bにおけるスイッチ装置101は、異常が生じていると判定した場合(ステップS57において「YES」)、車両1Bの現在位置を示す位置情報を管理装置201へ送信する(ステップS58)。一方、車両1Bにおけるスイッチ装置101は、異常は生じていないと判定した場合(ステップS57において「NO」)、次の異常判定を行うまで待機する。
【0170】
次に、管理装置201は、車両1Bから送信された位置情報を受信すると、当該位置情報を保存する(ステップS59)。
【0171】
次に、管理装置201は、たとえば、保存している複数の位置情報および地図情報に基づいて、車両1Bを対象車両とした異常判定を行う。ここでは、管理装置201は、異常なしとの判定結果を得たとする。この場合、管理装置201は、判定結果を示す判定情報の送信を行わず、たとえば、他の位置情報を受信するまで待機する(ステップS60)。
【0172】
次に、車両1Cにおけるスイッチ装置101が、車両1Cにおける伝送路の異常判定を行ったとする(ステップS61)。次に、車両1Cにおけるスイッチ装置101は、異常が生じていると判定した場合(ステップS62において「YES」)、車両1Cの現在位置を示す位置情報を管理装置201へ送信する(ステップS63)。一方、車両1Cにおけるスイッチ装置101は、異常は生じていないと判定した場合(ステップS62において「NO」)、次の異常判定を行うまで待機する。
【0173】
次に、管理装置201は、車両1Cから送信された位置情報を受信すると、当該位置情報を保存する(ステップS64)。
【0174】
次に、管理装置201は、たとえば、保存している複数の位置情報および地図情報に基づいて、車両1Cを対象車両とした異常判定を行う。ここでは、管理装置201は、異常ありとの判定結果を得たとする。この場合、管理装置201は、判定結果を示す判定情報を車両1Cへ送信する(ステップS66)。
【0175】
次に、車両1Cにおけるスイッチ装置101は、管理装置201から送信された判定情報を受信すると、受信した判定情報に基づいて、異常通知動作、すなわち当該判定情報の示す内容の表示、および当該判定情報の保存を行う(ステップS67)。
【0176】
(管理装置による異常判定の動作手順(例1))
図20は、本開示の第2の実施の形態に係る管理装置による異常判定を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
図20は、上述した「(例1)」に対応している。
【0177】
図20を参照して、まず、管理装置201は、車両1におけるスイッチ装置101から送信された位置情報を取得し、取得した位置情報を保存する(ステップS71)。次に、管理装置201は、新たに受信した位置情報の示す位置を、保存している地図情報の示す地図にマッピングする。そして、管理装置201は、単位エリア当たりのマッピング数に応じて、エリアごとにレベルを設定する(ステップS72)。
【0178】
次に、管理装置201は、位置情報の送信元である車両1を対象車両として、当該対象車両1の位置を含むエリアのマッピング数を確認する。すなわち、管理装置201は、当該エリアのレベルを確認する(ステップS73)。次に、管理装置201は、当該エリアのマッピング数が所定値N1より少ない場合、すなわち当該エリアのレベルが「2」または「3」である場合(ステップS74において「YES」)、対象車両1の伝送路に異常が生じていると判定し(ステップS75)、判定結果を示す判定情報を対象車両1へ送信する(ステップS76)。
【0179】
一方、管理装置201は、対象車両1の位置を含むエリアのマッピング数が所定値N1以上である場合、すなわち当該エリアのレベルが「1」である場合(ステップS74において「NO」)、対象車両1の伝送路に異常は生じていないと判定する(ステップS77)。この場合、管理装置201は、たとえば、判定結果を示す判定情報の送信は行わない。
【0180】
(管理装置による異常判定の動作手順(例2))
図21は、本開示の第2の実施の形態に係る管理装置による異常判定を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
図21は、上述した「(例2)」に対応している。
【0181】
図21を参照して、まず、管理装置201は、気象情報管理装置202から送信された気象情報を取得し、取得した気象情報を保存する(ステップS81)。次に、管理装置201は、新たに受信した気象情報、および保存している地図情報に基づいて、エリアごとにレベルを設定する(ステップS82)。管理装置201による、気象情報の取得および保存、ならびにエリアごとのレベルの設定(ステップS81およびステップS82)は、定期的または不定期に行われる。
【0182】
次に、管理装置201は、車両1におけるスイッチ装置101から送信された位置情報を取得し、取得した位置情報を保存する(ステップS83)。次に、管理装置201は、位置情報の送信元である車両1を対象車両として、対象車両1の位置を含むエリアにおける雷の有無および豪雨の有無を確認する。すなわち、管理装置201は、当該エリアのレベルを確認する(ステップS84)。
【0183】
次に、管理装置201は、当該エリアにおいて、雷および豪雨の両方が発生していない場合、すなわち当該エリアのレベルが「2」または「3」である場合(ステップS84において「YES」)、対象車両1の伝送路に異常が生じていると判定し(ステップS85)、判定結果を示す判定情報を対象車両1へ送信する(ステップS86)。
【0184】
一方、管理装置201は、対象車両1の位置を含むエリアにおいて、雷または豪雨の少なくともいずれか一方が発生している場合、すなわち当該エリアのレベルが「1」である場合(ステップS84において「NO」)、対象車両1の伝送路に異常は生じていないと判定する(ステップS87)。この場合、管理装置201は、たとえば、判定結果を示す判定情報の送信は行わない。
【0185】
なお、管理装置201による、気象情報の取得および保存、ならびにエリアごとのレベルの設定(ステップS81およびステップS82)は、車両1からの位置情報の取得および保存(ステップS83)の前に限定されない。
【0186】
また、本開示の第2の実施の形態に係る管理装置201の機能の一部または全部が、クラウドコンピューティングによって提供されてもよい。すなわち、本開示の第2の実施の形態に係る管理装置201が、複数のクラウドサーバ等によって構成されてもよい。
【0187】
その他の構成は第1の実施の形態と同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
【0188】
ところで、特許文献1に記載の車載ネットワークでは、複数の車載装置間においてデータの送受信が行われる。しかしながら、車載装置間におけるデータの伝送路に異常が発生すると、これら車載装置間における通信が正常に行われず、車両の制御を正常に行うことができない等の問題が生じるおそれがある。
【0189】
これに対して、本開示の第1および第2の実施の形態に係るスイッチ装置101および管理装置201および異常判定方法は、上記のような構成および方法により、車両1における故障を事前に検知することができる。
【0190】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0191】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
車両に搭載される車載装置であって、
前記車両に搭載される他の車載装置との間におけるデータの伝搬遅延時間を計測する計測部と、
前記計測部により計測された前記伝搬遅延時間に基づいて、前記データの伝送路の異常判定を行う判定部とを備え、
前記車載装置は、複数の他の車載装置間におけるデータを中継するスイッチ装置であり、
前記判定部は、前記計測部により計測された前記伝搬遅延時間と、前記伝搬遅延時間の初期値とに基づいて前記異常判定を行う、車載装置。
【0192】
[付記2]
車両に搭載される車載装置であって、
前記車両に搭載される他の車載装置との間におけるデータの伝搬遅延時間を計測する計測部と、
前記計測部により計測された前記伝搬遅延時間に基づいて、前記データの伝送路の異常判定を行う判定部とを備え、
前記判定部は、前記異常判定において異常が生じていると判定した場合、前記車両の現在位置を示す位置情報と、判定結果を示す判定情報、前記車両の車種を示す車種情報、前記車両の状態を示す状態情報、現在時刻を示す時刻情報、および前記伝搬遅延時間を示す遅延時間情報のうちの少なくともいずれか1つの車両情報とを管理装置へ送信し、
前記管理装置は、前記車両から受信した前記位置情報および1または複数の前記車両情報、ならびに他の情報に基づいて、前記車両におけるデータの伝送路の異常判定を行い、異常が生じていると判定した場合、判定結果を示す判定情報を前記車両へ送信し、
前記車載装置は、さらに、
前記管理装置から送信された判定情報の示す判定結果を通知する異常通知動作を行う通知部を備える、車載装置。
【0193】
[付記3]
対象車両に搭載された車載装置間におけるデータの伝搬遅延時間が所定条件を満たした前記対象車両の位置情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記対象車両の位置情報および他の情報に基づいて、前記対象車両におけるデータの伝送路の異常判定を行う判定部とを備え、
前記他の情報は、地図情報、前記対象車両以外の他の車両の位置情報、および気象情報のうちの少なくともいずれか1つであり、
前記判定部は、前記異常判定において、前記対象車両における前記伝搬遅延時間が前記所定条件を満たした要因が、前記対象車両における伝送路にあるのか、または前記対象車両の走行環境にあるのかを切り分ける、管理装置。
【符号の説明】
【0194】
1,1A,1B,1C 車両
10,10A,10B イーサネットケーブル
11,11A,11B 中継コネクタ
51 中継部
52,82 情報処理部
53,72,83 記憶部
54,54A,54B,84 通信ポート
55 通知部
61 スイッチ部
62 制御部
63 計測部
64,73 判定部
71,81 通信部
101 スイッチ装置(車載装置)
111,111A,111B 機能部(車載装置)
150 ネットワーク
201 管理装置
202 気象情報管理装置
301 車載ネットワークシステム
401 通信システム
Tb1 アドレステーブル
Tb2 対応テーブル