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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】車両用回転電機のロータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/28 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
H02K1/28 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020189822
(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2021129493
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2020021901
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 幸範
(72)【発明者】
【氏名】山岸 義忠
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-151648(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0020248(US,A1)
【文献】特開2013-236425(JP,A)
【文献】特開平11-041841(JP,A)
【文献】特開2004-336965(JP,A)
【文献】特開2005-102437(JP,A)
【文献】特開2012-023900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のロータシャフトと、該ロータシャフトの外周面に締まりばめ状態または中間ばめ状態で嵌め付けられる複数枚の電磁鋼板から構成されるロータコアと、を備える車両用回転電機のロータであって、
前記ロータコアにおいて、前記ロータシャフトの軸方向で少なくとも一方の端部に配置される前記電磁鋼板の強度が、前記ロータシャフトの軸方向で中央部に配置される前記電磁鋼板の強度よりも高くされており、
前記電磁鋼板は、第1電磁鋼板と、前記第1電磁鋼板よりも強度の高い第2電磁鋼板と、から構成されており、
前記ロータコアにおいて、前記第1電磁鋼板が、前記ロータシャフトの軸方向で中央部に配置され、前記第2電磁鋼板が、前記ロータシャフトの軸方向で両端部に配置されており、
前記第2電磁鋼板には、組付状態で同じ位置に、前記ロータシャフトの軸方向に貫通する貫通穴がそれぞれ形成されており、
前記貫通穴は、前記組付状態において、前記ロータコアの端面に開く開口から前記第2電磁鋼板を通過して前記第1電磁鋼板で止まる止まり穴を形成している
ことを特徴とする車両用回転電機のロータ。
【請求項2】
前記第2電磁鋼板は、前記第1電磁鋼板よりも機械的強度の高い材質から構成されている
ことを特徴とする請求項の車両用回転電機のロータ。
【請求項3】
前記第2電磁鋼板は、前記第1電磁鋼板よりも厚みが厚くされている
ことを特徴とする請求項の車両用回転電機のロータ。
【請求項4】
組付状態において、前記貫通穴によって前記ロータコアの前記ロータシャフトの軸方向の両端部に形成される止まり穴は、前記ロータコアの周方向で同じ位置に形成されている
ことを特徴とする請求項の車両用回転電機のロータ。
【請求項5】
前記ロータコアを構成する前記電磁鋼板には、磁石を収容するための収容穴がそれぞれ形成され、
前記貫通穴は、前記電磁鋼板の径方向で前記収容穴よりも内周側に形成されている
ことを特徴とする請求項の車両用回転電機のロータ。
【請求項6】
前記電磁鋼板と前記ロータシャフトとは、該電磁鋼板および該ロータシャフトの一方に形成されたキーが他方に形成されたキー溝と嵌合することで互いの相対回転が規制され、
前記貫通穴は、前記第2電磁鋼板に形成された前記キーまたは前記キー溝に対して、周方向で所定角度だけ離れた位置に形成されている
ことを特徴とする請求項の車両用回転電機のロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用回転電機のロータの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
複数枚の電磁鋼板からなるロータコアがロータシャフトに嵌め付けられることで構成される車両用回転電機のロータがよく知られている。例えば特許文献1の回転電機のロータ(回転子)がそれである。特許文献1には、ロータシャフトに焼嵌めされる電磁鋼板のうち、ロータシャフトの軸方向において中央部に配置される電磁鋼板の強度を、ロータシャフトの軸方向において端部に配置される電磁鋼板の強度よりも高くすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-36471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ロータコアは、組付状態においてロータシャフトの軸方向で端部に配置される電磁鋼板に作用する応力が大きくなるため、特許文献1のような構成とした場合、ロータシャフトの軸方向で端部に配置される電磁鋼板の信頼性が懸念される。また、ロータシャフトの軸方向で中央部に高強度の電磁鋼板が使用されることで、高強度の電磁鋼板の使用量が増加し、コスト面で不利となる。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、車両用回転電機のロータにおいて、ロータコアの信頼性を維持しつつ、高強度の電磁鋼板の使用量を低減できる構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の要旨とするところは、(a)円筒状のロータシャフトと、そのロータシャフトの外周面に締まりばめ状態または中間ばめ状態で嵌め付けられる複数枚の電磁鋼板から構成されるロータコアと、を備える車両用回転電機のロータであって、(b)前記ロータコアにおいて、前記ロータシャフトの軸方向で少なくとも一方の端部に配置される前記電磁鋼板の強度が、前記ロータシャフトの軸方向で中央部に配置される前記電磁鋼板の強度よりも高くされており、(c)前記電磁鋼板は、第1電磁鋼板と、前記第1電磁鋼板よりも強度の高い第2電磁鋼板と、から構成されており、(d)前記ロータコアにおいて、前記第1電磁鋼板が、前記ロータシャフトの軸方向で中央部に配置され、前記第2電磁鋼板が、前記ロータシャフトの軸方向で両端部に配置されており、(e) 前記第2電磁鋼板には、組付状態で同じ位置に、前記ロータシャフトの軸方向に貫通する貫通穴がそれぞれ形成されており、(f)前記貫通穴は、前記組付状態において、前記ロータコアの端面に開く開口から前記第2電磁鋼板を通過して前記第1電磁鋼板で止まる止まり穴を形成していることを特徴とする。
【0008】
発明の要旨とするところは、第発明において、前記第2電磁鋼板は、前記第1電磁鋼板よりも機械的強度の高い材質から構成されていることを特徴とする。
【0009】
発明の要旨とするところは、第発明において、前記第2電磁鋼板は、前記第1電磁鋼板よりも厚みが厚くされていることを特徴とする。
【0012】
発明の要旨とするところは、第発明において、組付状態において、前記貫通穴によって前記ロータコアの前記ロータシャフトの軸方向の両端部に形成される止まり穴は、前記ロータコアの周方向で同じ位置に形成されていることを特徴とする。
【0013】
発明の要旨とするところは、第発明において、前記ロータコアを構成する前記電磁鋼板には、磁石を収容するための収容穴がそれぞれ形成され、前記貫通穴は、前記電磁鋼板の径方向で前記収容穴よりも内周側に形成されていることを特徴とする。
【0014】
発明の要旨とするところは、第発明において、前記電磁鋼板と前記ロータシャフトとは、該電磁鋼板および該ロータシャフトの一方に形成されたキーが他方に形成されたキー溝と嵌合することで互いの相対回転が規制され、前記貫通穴は、前記第2電磁鋼板に形成された前記キーまたは前記キー溝に対して、周方向で所定角度だけ離れた位置に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1発明によれば、ロータコアにおいて、円筒状のロータシャフトの軸方向で少なくとも一方の端部に配置される電磁鋼板の強度が、ロータシャフトの軸方向で中央部に配置される電磁鋼板の強度よりも高くされている。従って、組付状態において、ロータシャフトの軸方向で端部に配置される電磁鋼板に作用する応力が、中央部に配置される電磁鋼板に作用する応力よりも高くなるのに対して、ロータシャフトの軸方向で端部に強度の高い電磁鋼板が配置されることで、その端部に作用する応力に対応することができる。従って、ロータコアの信頼性が維持される。また、ロータシャフトの軸方向で中央部では作用する応力が小さいことを考慮して、強度の低い電磁鋼板が配置されることで、ロータコア全体として高強度の電磁鋼板の使用量を低減することができる。
さらに、電磁鋼板は、第1電磁鋼板と、第1電磁鋼板よりも強度の高い第2電磁鋼板と、から構成されており、ロータコアにおいて、第1電磁鋼板が、ロータシャフトの軸方向で中央部に配置され、第2電磁鋼板が、ロータシャフトの軸方向で両端部に配置されており、第2電磁鋼板には、組付状態で同じ位置に、ロータシャフトの軸方向に貫通する貫通穴がそれぞれ形成されており、貫通穴は、組付状態において、ロータコアの端面に開く開口から第2電磁鋼板を通過して第1電磁鋼板で止まる止まり穴を形成している。これにより、組み付け後にその止まり穴にピンを通すことで、誤組み付けされていないかを確認することができる。
【0018】
発明によれば、第2電磁鋼板は、第1電磁鋼板よりも機械的強度の高い材質から構成されているため、ロータシャフトの軸方向の両端部に配置される第2電磁鋼板には高い応力が作用するのに対して、その応力を第1電磁鋼板よりも強度の高い第2電磁鋼板で受けることで、その応力に対応することができる。
【0019】
発明によれば、第2電磁鋼板は、第1電磁鋼板よりも厚みが厚くされているため、ロータシャフトの軸方向で端部に配置される第2電磁鋼板が第1電磁鋼板よりも強度が高くなる。従って、ロータシャフトの軸方向で端部に配置される第2電磁鋼板に作用する応力が、中央部に配置される第1電磁鋼板に作用する応力よりも高くなるのに対して、その応力を強度の高い第2電磁鋼板によって受けることで、その応力に対応することができる。
【0022】
発明によれば、組付状態において、貫通穴によってロータコアのロータシャフトの軸方向の両端部に形成される止まり穴は、ロータコアの周方向で同じ位置に形成されているため、ロータコアの形状がロータシャフトの軸方向の中央部を中心にして左右対称になる。従って、ロータコアが非対称に形成されることによる、ロータの回転中に発生する偏心が抑制される。
【0023】
発明によれば、貫通穴が、電磁鋼板に形成される磁石を収容するための収容穴よりも内周側に形成されているため、磁石の周辺で発生する磁束が妨げられることが抑制される。
【0024】
発明によれば、第2電磁鋼板に形成される貫通穴は、第2電磁鋼板に形成されたキーまたはキー溝に対して、周方向で所定角度だけ離れた位置に形成されている。これより、第2電磁鋼板のキーまたはキー溝が形成される部位周辺は応力が高くなるのに対して、貫通穴がキーまたはキー溝から離れた位置に形成されることで、キーまたはキー溝の近傍に貫通穴が形成されることによる第2電磁鋼板の強度低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明が適用された車両に備えられる車両用駆動装置の一部を示す断面図である。
図2図1のロータシャフトに電磁鋼板が嵌め付けられたときのロータシャフトの撓みの状態を示す図である。
図3図1のロータシャフトにロータコアが組み付けられた状態における、各電磁鋼板に作用する応力の大きさを示す図である。
図4】ロータコアに異なる種類の電磁鋼板が使用されたロータコアの断面図である。
図5図4の第2ブロックおよびロータシャフトを切断線Dで切断した断面図である。
図6】本発明の他の実施例に対応する、ロータコアおよびロータシャフトの断面図である。
図7】本発明のさらに他の実施例に対応する、ロータコアおよびロータシャフトの断面図である。
図8】本発明のさらに他の実施例に対応する、ロータコアおよびロータシャフトの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0028】
図1は、本発明が適用された車両に備えられる車両用駆動装置10(以下、駆動装置10)の一部を示す断面図である。駆動装置10は、例えば電気自動車またはハイブリッド車両に備えられる。駆動装置10は、非回転部材であるケース12内において、車両の駆動力源として機能する車両用回転電機MG(以下、回転電機MG)を備えている。
【0029】
ケース12内には、隔壁16によって仕切られたモータ室18が形成され、このモータ室18内に回転電機MGが収容されている。回転電機MGは、回転軸線C1を中心にして回転可能に配置されている。回転電機MGは、ケース12に回転不能に固定されている円筒状のステータ22と、ステータ22の内周側に配置されている円筒状のロータコア24と、ロータコア24の内周に一体的に接続されているロータシャフト26と、を備えている。ロータコア24とロータシャフト26とが一体的に接続されることで、回転電機MGのロータ20が構成される。
【0030】
ステータ22は、複数枚の円板状の電磁鋼板23が積層されて構成されている。ステータ22は、複数本のボルト30によってケース12に回転不能に締結されている。ステータ22にコイルが巻き掛けることで、ステータ22の回転軸線C1方向の両側には、コイルエンド28が配置されている。
【0031】
ロータコア24は、ステータ22の内周側に配置されている。ロータコア24は、複数枚の円板状の電磁鋼板25が積層されて構成されている。ロータコア24の回転軸線C1方向の両側には、一対のエンドプレート32、34が配置されており、ロータコア24はこれらエンドプレート32、34に挟まれるようにして保持されている。また、ロータコア24には、磁石36が内蔵されている。
【0032】
ロータシャフト26は、円筒状に形成され、軸方向(回転軸線C1方向)の両端に配置されている軸受38、40によって、回転軸線C1を中心にして回転可能に支持されている。ロータシャフト26の外周面には、ロータコア24が一体的に固定されている。ロータシャフト26にロータコア24が一体的に固定されることで、ロータ20が構成される。ロータ20は、回転軸線C1を中心にして一体的に回転する。ロータコア24のロータシャフト26への固定構造については後述する。
【0033】
次に、ロータコア24のロータシャフト26への固定構造について説明する。上述したように、ロータコア24は、複数枚の電磁鋼板25がロータシャフト26の軸方向に積層されて構成されている。複数枚の電磁鋼板25は、何れもロータシャフト26の外周面に締まりばめ状態で嵌め付けられている。ここで、ロータコア24は、複数個のブロック50(図3参照)から構成されている。ブロック50は、予め設定された枚数の電磁鋼板25が、接着剤またはカシメ等で纏められて1つの部材として構成されている。ロータコア24のロータシャフト26への組付過渡期には、ブロック50毎にロータシャフト26に嵌め付けられる。
【0034】
ところで、上述したように、ロータコア24を構成する電磁鋼板25は、それぞれロータシャフト26に締まりばめ状態で嵌め付けられるため、電磁鋼板25およびロータシャフト26には、電磁鋼板25とロータシャフト26との間で設定される締め代に応じた応力が作用する。
【0035】
図2は、ロータシャフト26に電磁鋼板25が嵌め付けられたときのロータシャフト26の撓みの状態を示している。なお、図2は、ロータシャフト26の撓みの状態を説明するものであるため、形状や寸法等については図1のロータシャフト26と完全に一致していない。図2において、破線が電磁鋼板25が嵌め付けられる前のロータシャフト26の状態に対応し、実線が電磁鋼板25が嵌め付けられた後のロータシャフト26の状態に対応している。図2に示すように、電磁鋼板25が嵌め付けられると、ロータシャフト26の軸方向で中央部26aに位置するほど撓みが大きくなる。すなわち、ロータシャフト26の軸方向で中央部26aに位置するほど撓みやすくなり、電磁鋼板25の押付に対する変形量が大きくなる。一方、ロータシャフト26の軸方向で両端部26b、26cでは、撓みが小さくなる。すなわち、ロータシャフト26の軸方向で両端部26b、26cは撓みにくくなり、電磁鋼板25の押付に対する変形量が小さくなる。
【0036】
図3は、ロータシャフト26にロータコア24が組み付けられた状態における、各電磁鋼板に作用する応力σ[Pa]の大きさ、および、電磁鋼板25の強度を示している。図3において、上段が、ロータシャフト26にロータコア24が組み付けられた状態を概略的に示す断面図であり、中段が、ロータシャフト26を構成する電磁鋼板25に作用する応力σの大きさを示し、下段が、電磁鋼板25の強度を示している。なお、図3では、図1に示すエンドプレート32、34は省略されている。また、図3の断面図では、ロータシャフト26の外周面に形成された凹みにロータコア24の内周面が嵌め付けられているように示されているが、これは、ロータコア24とロータシャフト26とが締まりばめ状態で嵌め付けられている状態を概念的に示しているだけであって、この凹みはロータシャフト26の撓みに対応している。
【0037】
図3にあっては、ロータコア24が4つのブロック50から構成されている。図3に示すように、ロータコア24においてロータシャフト26の軸方向(以下、特に言及しない限り、軸方向はロータシャフト26の軸方向すなわち回転軸線C1方向を指すものとする。)で中央部24aに配置される電磁鋼板25に作用する応力σ[Pa]が小さく、ロータコア24の軸方向で中央部24aから両端部24b、24cに向かうほど電磁鋼板25に作用する応力σが大きくなっている。これは、上述したように、ロータシャフト26の軸方向の中央部26a(図2参照)では撓みやすいため、電磁鋼板25がロータシャフト26から受ける荷重(反力)が小さくなる一方、ロータシャフト26の軸方向で端部24b、24cに向かうほど、ロータシャフト26が撓みにくくなることから、電磁鋼板25がロータシャフト26から受ける荷重(反力)が大きくなるためである。
【0038】
従来構造では、全て同じ種類の電磁鋼板25が使用されていた。このとき、使用される電磁鋼板25が、ロータコア24のうち応力σの最も高くなる部位、すなわちロータコア24の軸方向で端部24b、24cに作用する応力σに対応できる強度を基準にして設計されていた。従って、ロータコア24を構成する電磁鋼板25が、何れも高強度な材質で構成されていた。その結果、高強度の材質から構成される電磁鋼板25の使用量が増加するためにコスト増加に繋がっていた。
【0039】
これに対して、ロータコア24が、ロータシャフト26への組付状態でロータコア24に作用する応力σの大きさに応じて、異なる強度を有する複数種類の電磁鋼板25から構成される。具体的には、図3の下段に示すように、ロータコア24において軸方向で両端部24b、24c側に配置される電磁鋼板25の強度が、軸方向で中央部24aに配置される電磁鋼板25の強度よりも高くされている。ここで、電磁鋼板25の強度は、例えば引張強さ、降伏点の大きさなどで規定される機械的強度に対応し、電磁鋼板25の強度が高くなるほど、引張強さ、降伏点が高くなる。
【0040】
本実施例では、ロータコア24を構成する電磁鋼板25が、2種類の第1電磁鋼板25aおよび第2電磁鋼板25bから構成されている。図4は、本実施例に対応する、異なる2種類の電磁鋼板25から構成されるロータコア24の断面図である。図4に示すように、ロータコア24が、第1ブロック50aと、第2ブロック50bとから構成されている。第1ブロック50aは、複数枚の第1電磁鋼板25aが積層された状態で一体化されて構成されている。第2ブロック50bは、複数枚の第2電磁鋼板25bが積層された状態で一体化されて構成されている。ここで、第2電磁鋼板25bは、第1電磁鋼板25aよりも機械的強度の高い材質から構成されている。従って、第2電磁鋼板25bの強度が、第1電磁鋼板25aの強度よりも高くされている。なお、第1電磁鋼板25aおよび第2電磁鋼板25bの大きさについては、同じ寸法とされている。
【0041】
また、ロータコア24において、軸方向の中央部24aに2個の第1ブロック50aが配置され、その第1ブロック50aに隣接するようにして軸方向の両端部24b、24cにそれぞれ1個の第2ブロック50bが配置されている。すなわち、ロータコア24において、軸方向の中央部24aに第1電磁鋼板25aが配置され、軸方向の両端部24b、24cにそれぞれ第2電磁鋼板25bが配置されている。
【0042】
上記のように電磁鋼板25が配置されることで、応力σの高くなるロータコア24の軸方向の両端部24b、24cに、第1電磁鋼板25aよりも強度の高い第2電磁鋼板25bが配置されるため、第2電磁鋼板25bが高い応力σを受けることになり、その応力σに対応することができる。一方、応力σが両端部24b、24cよりも低くなるロータコア24の中央部24aには、強度が第2電磁鋼板25bよりも低い第1電磁鋼板25aが配置されるため、第1電磁鋼板25aであっても、作用する応力σに対応することができる。これに関連して、全ての電磁鋼板25が第2電磁鋼板25bから構成される場合に比べて、高強度の材質から構成される第2電磁鋼板25bの使用量を低減できる。
【0043】
ここで、ロータコア24が異なる種類の第1電磁鋼板25aおよび第2電磁鋼板25bから構成されることで、誤組付が発生する虞がある。例えば、ロータコア24の両端部24b、24cに、誤って第1電磁鋼板25aが組み付けられてしまうと、第1電磁鋼板25aに高い応力σが作用することでロータコア24の耐久性が低下する虞がある。このような誤組付をなくすため、各第2電磁鋼板25bには、組付状態で同じ位置に、ロータシャフト26の軸方向に貫通する貫通穴52がそれぞれ形成されている。貫通穴52は、第2電磁鋼板25bのプレス加工時に併せて形成される。
【0044】
従って、第2電磁鋼板25bが正常に組み付けられると、ロータコア24の軸方向の両端部24b、24cには、軸方向に伸びる穴56が形成される。穴56は、第1ブロック50aに隣接する位置まで伸びている。従って、ロータコア24がロータシャフト26に組み付けられた後、ロータコア24の軸方向の両側からその穴56にピン58を差し込むことで、第2ブロック50b(第2電磁鋼板25b)が正常に組み付けられているかを確認することができる。
【0045】
第2ブロック50b(第2電磁鋼板25b)が正常に組み付けられている場合には、ピン58を所定の深さ(ピン58の先端が第1ブロック50aに当接する深さ)まで穴56に挿し入れることができる。一方、例えば第2ブロック50bが組み付けられるべき位置に、誤って第1ブロック50aが組み付けられてしまった場合には、ピン58を通すことができないため、誤組付を検出することができる。なお、図4では、ロータコア24の軸方向の両端にそれぞれ1個の第2ブロック50bが組み付けられているが、両端にそれぞれ2個以上の第2ブロック50bが組み付けられる場合であっても、穴56にピン58を通すことで誤組付を検出することができる。すなわち、複数個の第2ブロック50bが組み付けられる場合であっても、第2ブロック50bの個数に応じた深さまでピン58が通るかを確認することで、誤組付を検出することができる。また、第2ブロック50bを組み付ける工程で、第2電磁鋼板25bの中に第1電磁鋼板25aが混ざってしまった場合であっても、組付後において、ピン58を穴56に所定の深さまで挿し入れることができなくなるため、誤組付を検出することができる。
【0046】
また、組付状態においてロータコア24の軸方向の両端部24b、24cに形成される穴56は、ロータコア24の周方向で同じ位置に形成されている。すなわち、ロータコア24の軸方向の両端部24b、24cに形成される穴56が、ロータコア24の軸方向の中央を中心にして左右対称の位置に形成されるため、ロータ20が回転したときに発生する偏心が低減される。
【0047】
また、電磁鋼板25には、磁石36を収容するための収容穴60が形成されるが、穴56は、第2電磁鋼板25bの径方向で前記収容穴60よりも所定値Lだけ内周側(径方向内側)に形成されている。収容穴60には磁石36が収容されるため、この磁石36の周りで磁束が発生する。これに対して、穴56が収容穴60よりも所定値Lだけ内周側に形成されることで、磁束が妨げられることが抑制され、回転電機MGの性能低下が抑制される。なお、前記所定値Lは、予め実験的または設計的に求められ、磁石36の周囲で発生する磁束が妨げられることがなく、回転電機MGの性能低下が抑制される値に設定されている。
【0048】
さらに、貫通穴52は、第2電磁鋼板25bに形成されるキー62に対して、第2電磁鋼板25bの周方向で所定角度だけ離れた位置に形成されている。図5は、図4の第2ブロック50bおよびロータシャフト26を切断線Dで切断した断面図である。図5に示すように、第2電磁鋼板25bの内周部には、内周側に向かって突き出す一対のキー62が2箇所形成されている。一対のキー62は、周方向で180度ずれた位置に形成されている。また、ロータシャフト26の外周面には、ロータコア24の組付状態でキー62と嵌合する位置にキー溝64が形成されている。キー62とキー溝64とが互いに嵌合することで、ロータシャフト26とロータコア24との間で互いの相対回転が規制されている。
【0049】
キー62がキー溝64と嵌合する部位周辺では、電磁鋼板25に作用する応力σが高くなる。これに対して、第2電磁鋼板25bに形成される貫通穴52は、第2電磁鋼板25bのキー62が形成される位置に対して、周方向で所定角度θだけ離れた位置に形成されている。例えば、貫通穴52は、第2電磁鋼板25bの一対のキー62が形成される位置に対して、周方向で90度離れた位置に形成されている。このように、貫通穴52がキー62から離れた位置に形成されることで、第2電磁鋼板25bのキー62の周辺の強度低下が抑制される。その結果、第2電磁鋼板25bのキー62の周辺に高い応力σが作用することによる第2電磁鋼板25bの耐久性の低下が抑制される。前記所定角度θは、予め実験的または設計的に求められ、キー62周辺の強度に影響を及ぼさない範囲、またはキー62周辺の強度が応力σに耐えうる範囲となる値に設定されている。
【0050】
上述のように、本実施例によれば、ロータコア24において、軸方向で両端部24b、24cに配置される第2電磁鋼板25bの強度が、中央部24aに配置される第1電磁鋼板25aの強度よりも高くされている。従って、組付状態において、両端部24b、24cに配置される第2電磁鋼板25bに作用する応力σが、中央部24aに配置される第1電磁鋼板25aに作用する応力σよりも高くなるのに対して、両端部24b、24cに強度の高い第2電磁鋼板25bが配置されることで、その両端部24b、24cに作用する応力σに対応することができる。従って、ロータコア24の信頼性が維持される。また、ロータコア24において、中央部24aでは作用する応力σが小さいことを考慮して、第2電磁鋼板25bよりも強度の低い第1電磁鋼板25aが配置されることで、ロータコア24全体として高強度の第2電磁鋼板25bの使用量を低減することができる。
【0051】
また、本実施例によれば、第2電磁鋼板25bには、組付状態で周方向で同じ位置に、ロータシャフト26の軸方向に貫通する貫通穴52がそれぞれ形成されているため、組付後にその貫通穴52によって形成された穴56にピン58を通すことで、誤組付されていないかを確認することができる。また、組付状態において、貫通穴52によってロータコア24の両端部24b、24cに形成される穴56は、ロータコア24の周方向で同じ位置に形成されるため、ロータコア24の形状がロータシャフト26の軸方向の中央部を中心にして左右対称になる。従って、ロータコア24が左右非対称に形成されることによる、ロータ20の回転中に発生する偏心が抑制される。また、貫通穴52が、第2電磁鋼板25bに形成される磁石36を収容するための収容穴60よりも内周側に形成されているため、磁石36の周辺で発生する磁束が妨げられることが抑制される。また、第2電磁鋼板25bに形成される貫通穴52は、第2電磁鋼板25bに形成されたキー62に対して、周方向で所定角度θだけ離れた位置に形成されている。これより、第2電磁鋼板25bのキー62が形成される部位周辺は応力σが高くなるのに対して、貫通穴52がキー62から離れた位置に形成されることで、キー62の近傍に貫通穴52が形成されることによる第2電磁鋼板25bの強度低下を抑制することができる。
【0052】
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0053】
図6は、本発明の他の実施例に対応する、ロータコア80およびロータシャフト26の断面図である。ロータシャフト26の外周面にロータコア80が一体的に嵌め付けられることで、ロータ78が構成される。本実施例では、ロータコア80が、第1ブロック82a、第2ブロック82b、および第3ブロック82cの3つのブロックから構成されている。第1ブロック82aは、複数枚の第1電磁鋼板84aが積層されて構成されている。第2ブロック82bは、複数枚の第2電磁鋼板84bが積層されて構成されている。第3ブロック82cは、複数枚の第3電磁鋼板84cが積層されて構成されている。言い換えれば、電磁鋼板84は、異なる材質からなる3種類の第1電磁鋼板84a~第3電磁鋼板84cで構成されている。ここで第2電磁鋼板84bの強度が、第1電磁鋼板84aの強度よりも高く、第3電磁鋼板84cの強度が、第2電磁鋼板84bの強度よりも高くなるように設計されている。従って、第3電磁鋼板84cの強度が最も高くなり、次いで第2電磁鋼板84bの強度が高くなり、第1電磁鋼板84aの強度が最も低くなる。なお、本実施例においても、第1電磁鋼板84a、第2電磁鋼板84b、および第3電磁鋼板84cは、何れも締まりばめ状態でロータシャフト26に嵌め付けられる。
【0054】
また、ロータコア80において、第1ブロック82aがロータシャフト26の軸方向で中央部に配置され、ロータシャフト26の軸方向で両端部に向かって第2ブロック82b、第3ブロック82cの順番で配置されている。すなわち、図6の下段にも示されるように、ロータコア80において、ロータシャフト26の軸方向で中央部を基準にして両端部側に配置される電磁鋼板84ほど強度が高くされている。従って、ロータコア80においてロータシャフト26の軸方向で両端部側に向かうほど、電磁鋼板84に作用する応力σが高くなるのに対して、その端部側に向かうほど強度の高い電磁鋼板84(第3電磁鋼板84c、第2電磁鋼板84b)が配置されることで、その応力に対応することができる。
【0055】
また、第2電磁鋼板84bには、第1貫通穴86が形それぞれ成されている。第3電磁鋼板84cには、第2貫通穴88および第3貫通穴90がそれぞれ形成されている。ここで、ロータシャフト26に第2電磁鋼板84bおよび第3電磁鋼板84cが組み付けられた状態において、第1貫通穴86および第2貫通穴88が周方向で同じ位置となるように設計されている。なお、第1貫通穴86および第2貫通穴88の穴の直径(内径)は同じものとする。これより、第2ブロック82bには、第1貫通穴86によって形成される第1穴96が形成される。また、第3ブロック82cには、第2貫通穴88によって形成される第2穴98および第3貫通穴90によって形成される第3穴99が形成される。なお、第1貫通穴86、第2貫通穴88、および第3貫通穴90が、それぞれ本発明の貫通穴に対応し、第1穴96、第2穴98、第3穴99が、それぞれ本発明の穴に対応している。
【0056】
上記のように構成されることで、組付後において、第1ピン92を、第3ブロック82cに形成された第2穴98に挿し入れると、正常に組み付けられた状態では、第1ピン92が、第3ブロック82cの第2穴98を通り、さらに、第2ブロック82bの第1穴96の底に到達する。これより、第1ピン92の先端が、第1穴96の底に到達したか否かに基づいて、誤組付を検出することができる。
【0057】
一方、第3ブロック82cが組み付けられる位置に、第2ブロック82bが誤って組み付けられてしまった場合には、第1ピン92が正常な位置まで差し入れられてしまうため、第1ピン92では誤組付を検出できない。これに対して、第2ピン94を、第3ブロック82cに形成された第3穴99に挿し入れることで、誤組付を検出することができる。
【0058】
上述のように、ロータコア80が3種類の電磁鋼板84から構成される場合であっても、前述の実施例と同様の効果を得ることができる。同様に、4種類以上の電磁鋼板からロータコアを構成する場合であっても、ロータコアにおいてロータシャフトの軸方向で中央部から両端部側に配置される電磁鋼板ほど強度が高くされることで、前述の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0059】
また、ロータコアが3種類以上の電磁鋼板から構成される場合であっても、電磁鋼板の種類毎に貫通穴を適切に設定することで、誤組付を検出することができる。例えば、強度の最も低い電磁鋼板には貫通穴が形成されず、その電磁鋼板よりも強度の高い電磁鋼板には1つの貫通穴が形成される。また、1つの貫通穴が形成された電磁鋼板よりも強度の高い電磁鋼板には、2個の貫通穴が形成されるととともに、2個の貫通穴の1つは、組付状態で強度の低い電磁鋼板と同じ位置に形成される。このように、強度の高い電磁鋼板ほど貫通穴の数が増加し、1つの貫通穴を除く各貫通穴は、組付状態でその電磁鋼板よりも強度の低い各電磁鋼板に形成された各貫通穴と同じ位置に形成される。上記のように貫通穴が形成されることで、組付後にロータコアに形成される各穴にピンをそれぞれ差し込み、このとき、ピンがそれぞれの穴に設定された深さまで到達するかに基づいて、誤組付を検出することができる。
【実施例3】
【0060】
前述の実施例では、電磁鋼板を構成する材質を異ならせることで電磁鋼板の強度を異ならせるものであったが、本実施例では、電磁鋼板の厚みを変更することで、電磁鋼板の強度を異ならせる。具体的には、本実施例のロータコア102を構成する電磁鋼板108は、厚みの異なる第1電磁鋼板108aおよび第2電磁鋼板108bから構成されている。
【0061】
図7は、本発明のさらに他の実施例に対応する、ロータシャフト26およびロータコア102の断面図である。ロータシャフト26の外周面には、ロータコア102が一体的に嵌め付けられている。本実施例においても、ロータコア102は、締まりばめ状態でロータシャフト26に嵌め付けられている。ロータシャフト26およびロータシャフト26の外周面に嵌め付けられたロータコア102によって、ロータ100が構成される。本実施例では、ロータコア102が、第1ブロック104aおよび第2ブロック104bの2種類のブロック104から構成されている。ロータコア102においてロータシャフト26の軸方向の中央に位置する中央部102aに、2個の第1ブロック104aが配置され、ロータコア102においてロータシャフト26の軸方向の両端に位置する両端部102b、102cに、それぞれ1個の第2ブロック104bが配置されている。
【0062】
第1ブロック104aは、複数枚の第1電磁鋼板108aが積層された状態で一体化されて構成されている。また、第2ブロック104bは、複数枚の第2電磁鋼板108bが積層された状態で一体化されて構成されている。第1ブロック104aおよび第2ブロック104bは、それぞれ接着剤またはカシメ等によって一体的に固定される。このように、ロータコア102を構成する電磁鋼板108が、第1電磁鋼板108aおよび第2電磁鋼板108bから構成されている。また、ロータコア102において、第1電磁鋼板108aが、ロータシャフト26の軸方向で中央に位置する中央部102aに配置され、第2電磁鋼板108bが、ロータシャフト26の軸方向で両端に位置する両端部102b、102cに配置されている。
【0063】
図7において、紙面右側の上段が第1電磁鋼板108aの断面形状を示し、紙面右側の下段が第2電磁鋼板108bの断面形状を示している。第1電磁鋼板108aおよび第2電磁鋼板108bは、それぞれ表面が絶縁体110によって被膜されている。なお、本実施例では、第1電磁鋼板108aおよび第2電磁鋼板108bが、同じ材質で構成されているものとする。
【0064】
また、図7の紙面右側に示すように、第2電磁鋼板108bの厚みLbが、第1電磁鋼板108aの厚みLaよりも厚くなっている。言い換えれば、第2電磁鋼板108bがロータシャフト26に嵌め付けられた状態における軸方向の長さLbが、第1電磁鋼板108aがロータシャフト26に嵌め付けられた状態における軸方向の長さLaよりも長くなっている(Lb>La)。従って、ロータコア102を構成する電磁鋼板108が、第1電磁鋼板108aと第1電磁鋼板108aよりも厚みの厚い第2電磁鋼板108bとから構成される。
【0065】
これより、第2電磁鋼板108bの方が第1電磁鋼板108aに比べて金属材料で構成される部位が多くなるため、第2電磁鋼板108bの方が第1電磁鋼板108aに比べて強度が高くなる。その結果、図7の下段に示すように、ロータコア102の両端部102b、102cに配置される第2電磁鋼板108bの強度が、ロータコア102の中央部102aに配置される第1電磁鋼板108aの強度よりも高くなる。ここでいう強度は、電磁鋼板108の厚みの変化に伴う電磁鋼板108全体の剛性の変化による強度に対応している。従って、ロータコア102の中央部102aからロータシャフト26の軸方向で両端部102b、102c側に向かうほど電磁鋼板108に作用する応力σが高くなるのに対して、両端部102b、102c側に配置される第2電磁鋼板108bでその応力を受けることができるため、その応力に対応することができる。また、ロータコア102の中央部102aでは、電磁鋼板108に作用する応力σが小さいことから、その中央部102aに第2電磁鋼板108bよりも厚みの薄い第1電磁鋼板108aが配置されることで、ロータコア102全体として第1電磁鋼板108aの使用量を低減することができる。また、第1電磁鋼板108aおよび第2電磁鋼板108bを、全て高強度の材質で構成することを防止することができる。
【0066】
また、本実施例においても、電磁鋼板108の誤組付を防止するため、第2電磁鋼板108bには、ロータシャフト26への組付状態で周方向の同じ位置に、ロータシャフト26の軸方向に貫通する貫通穴106がそれぞれ形成されている。従って、ロータコア102が正常に組み付けられた状態では、ロータコア102の両端部102b、102cには、ロータシャフト26の軸方向に平行な穴112が形成される。これより、ロータコア102がロータシャフト26に組み付けられた後、ロータコア102の軸方向の両側から穴112にピン114を差し込むことで、第2ブロック104bが正常に組み付けられているかを確認することができる。また、ロータコア102の両端部102b、102cにそれぞれ形成される穴112は、ロータコア102の周方向で同じ位置に形成されている。すなわち、両端部102b、102cにそれぞれ形成される穴112は、ロータコア102の軸方向の中央部102aを中心にして左右対称の位置に形成されている。これより、ロータコア102の対称性が維持され、ロータ100が回転したときに発生する偏心が低減される。
【0067】
また、貫通穴106は、磁石36を収容するために形成されている収容穴60よりも電磁鋼板108の径方向で内周側に形成されている。さらに、前述の実施例1の図5と同様に、貫通穴106は、第2電磁鋼板108bのキー(本実施例では図示されず)が形成される位置に対して、周方向で所定角度(例えば90度)だけ離れた位置に形成されている。
【0068】
上述のように、本実施例によれば、ロータコア122を構成する電磁鋼板108が、厚みの異なる第1電磁鋼板108aおよび第2電磁鋼板108bから構成され、ロータコア102において端部102b、102cに配置される第2電磁鋼板108bの厚みLbが、中央部102aに配置される第1電磁鋼板108aの厚みLaよりも厚くされるため、両端部102b、102cに配置される第2電磁鋼板108bの強度が、中央部102aに配置される第1電磁鋼板108aよりも高くなる。従って、ロータシャフト26の軸方向で端部102b、102c側に配置される第2電磁鋼板108bに作用する応力σが、中央部102aに配置される第1電磁鋼板108aに作用する応力σよりも高くなるのに対して、その応力に対応することができる。
【実施例4】
【0069】
前述した実施例3では、電磁鋼板108が厚みの異なる2種類の第1電磁鋼板108aおよび第2電磁鋼板108bから構成されるものであったが、本実施例では、電磁鋼板128が、厚みの異なる3種類の第1電磁鋼板128a~第3電磁鋼板128cから構成されている。図8は、本発明のさらに他の実施例に対応する、ロータシャフト26およびロータコア122の断面図である。ロータコア122は、ロータシャフト26の外周面に締まりばめ状態で嵌め付けられている。ロータシャフト26およびロータシャフト26の外周面に嵌め付けられているロータコア122によって、ロータ120が構成される。図8に示すように、ロータコア122が、第1ブロック124a、第2ブロック124b、および第3ブロック124cの3つのブロックから構成されている。
【0070】
第1ブロック124aは、ロータコア122においてロータシャフト26の軸方向で中央に位置する中央部122aに配置され、第2ブロック124b及び第3ブロック124cは、ロータコア122においてロータシャフト26の軸方向で両端に位置する両端部122b、122cに配置されている。また、両端部122b、122cにおいて、第3ブロック124cが、第2ブロック124bよりもロータシャフト26の軸方向で中央部122aから遠ざかる側に配置されている。すなわち、ロータシャフト26の軸方向で中央部122aから両端部122b、122c側に向かって第1ブロック124a、第2ブロック124b、第3ブロック124cの順番で配置されている。
【0071】
第1ブロック124aは、複数枚の第1電磁鋼板128aが積層された状態で一体化されて構成されている。第2ブロック124bは、複数枚の第2電磁鋼板128bが積層された状態で一体化されて構成されている。第3ブロック124cは、複数枚の第3電磁鋼板128cが積層された状態で一体化されて構成されている。このように、ロータコア102を構成する電磁鋼板128が、第1電磁鋼板128a~第3電磁鋼板128cから構成されている。
【0072】
図8の紙面右側に示すように、第3電磁鋼板128cの厚みLcが、第1電磁鋼板128aの厚みLaおよび第2電磁鋼板128bの厚みLbよりも厚くなっている(Lc>La、Lb)。また、第2電磁鋼板128bの厚みLbが、第1電磁鋼板128aの厚みLaよりも厚くなっている(Lb>La)。従って、第3電磁鋼板128cの厚みLcが最も厚く、次いで、第2電磁鋼板128bの厚みLbが厚く、第1電磁鋼板128aの厚みLaが最も薄くなっている(Lc>Lb>La)。従って、ロータシャフト26の軸方向において中央部122aから両端部122b、122c側に配置される電磁鋼板128ほど厚みが厚くされている。なお、電磁鋼板128の厚みは、電磁鋼板128がロータシャフト26に嵌め付けられた状態における、ロータシャフト26の軸方向の長さに対応する。
【0073】
これに関連して、図8の下段に示すように、第3ブロック124cを構成する第3電磁鋼板128cの強度が最も高く(高強度)、次いで、第2ブロック124bを構成する第2電磁鋼板128bの強度が高く(中強度)、第1ブロック124aを構成する第1電磁鋼板128aの強度が最も低く(低強度)なる。すなわち、ロータコア122において両端部122b、122c側に配置される第3電磁鋼板128cおよび第2電磁鋼板128bの強度が、中央部122aに配置される第1電磁鋼板128aよりも高くなる。さらに、ロータコア122の両端部122b、122cにおいて、強度の最も高い第3電磁鋼板128cが、第2電磁鋼板128bよりもロータシャフト26の軸方向の端部側に配置されている。すなわち、ロータシャフト26の軸方向で中央部122aから両端部122b、122c側に向かうほど、電磁鋼板128の厚みが厚くされるとともに、強度が段階的に高くされている。その結果、ロータシャフト26の軸方向で中央部122aから両端部122b、122cに向かうほど電磁鋼板128に作用する応力σが大きくなるのに対して、両端部122b、122c側に配置される電磁鋼板128ほど強度が高くなるため、その応力σに対応することができる。なお、本実施例においても、前述した各実施例と同様に、第2電磁鋼板128bおよび第3電磁鋼板128cに、電磁鋼板128の誤組付を防止するための貫通穴が形成されていても構わない。
【0074】
上記のように、ロータコア122が、厚みの異なる3種類の第1電磁鋼板128a~第3電磁鋼板128cから構成される場合であっても、前述の実施例と同様の効果を得ることができる。具体的には、ロータシャフト26の軸方向で端部122b、122c側に配置される電磁鋼板128ほど厚みが厚くされるため、両端部122b、122c側に配置される電磁鋼板128ほど強度も高くなる。従って、ロータシャフト26の軸方向で両端部122b、122cに向かうほど電磁鋼板に作用する応力σが高くなるのに対して、その高い応力σを強度の高い電磁鋼板128で受けることができることから、その応力に対応することができる。
【0075】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0076】
例えば、前述の実施例1では、ロータコア24において、ロータシャフト26の軸方向で両端に、それぞれ1個の第2ブロック50bが配置されていたが、必ずしも1個の第2ブロック50bに限定されず適宜変更される。例えば、2個以上の第2ブロック50bが配置されるものであっても構わない。また、前述の実施例2では、ロータコア80において、ロータシャフト26の軸方向で両端に、1個の第2ブロック82bおよび1個の第3ブロック82cが配置されるものであったが、これらブロックの個数についても適宜変更される。要は、ロータコアにおいて、ロータシャフトの軸方向で中央部から両端部に向かうほど電磁鋼板の強度が高くなる限りにおいて、ブロックの個数を適宜変更することができる。
【0077】
また、前述の実施例3では、ロータコア102において、中央部102aに2個の第1ブロック104aが配置され、軸方向の両端部102b、102cにそれぞれ1個の第2ブロック104bが配置されるものであったが、ブロックの個数は必ずしもこれに限定されない。また、前述の実施例4では、ロータコア122において、中央部122aに2個の第1ブロック124aが配置され、両端部122b、122cに、それぞれ1個の第2ブロック124bおよび第3ブロック124cが配置されるものであったが、ブロックの個数は必ずしもこれに限定されない。要は、ロータコアにおいて、ロータシャフトの軸方向で中央部から両端部に向かうほど電磁鋼板の厚みが厚くされる限りにおいて、ブロックの個数を適宜変更することができる。
【0078】
また、前述の各実施例では、複数枚の同じ強度を有する電磁鋼板が積層されて構成されるブロック毎に、ロータシャフト26に組み付けられるものであったが、必ずしもブロック単位で組み付けられる必要はなく、1枚の電磁鋼板毎にロータシャフト26に組み付けられるものであっても構わない。この場合であっても、ロータコアにおいて、ロータシャフト26の軸方向で端部側に配置される電磁鋼板ほど、高強度または厚みの厚いものが使用される。
【0079】
また、前述の実施例3では、第1電磁鋼板108aおよび第2電磁鋼板108bが同じ材質で構成されるものであったが、第1電磁鋼板108aおよび第2電磁鋼板108bが、それぞれ異なる材質から構成されるものであっても構わない。例えば、ロータコア102の中央部102aに配置される第1電磁鋼板108aは比較的強度の低い材質から構成され、両端部102b、102cに配置される第2電磁鋼板108bについては、比較的強度の高い材質から構成されるものであっても構わない。要は、ロータコアにおいてロータシャフトの軸方向で端部に配置される電磁鋼板の強度が、軸方向で中央部に配置される電磁鋼板の強度よりも高くなる範囲において、電磁鋼板の材質および厚みの両方を異ならせて実施しても構わない。
【0080】
また、前述の実施例3では、ロータコア102が、厚みの異なる第1電磁鋼板108aおよび第2電磁鋼板108bから構成され、実施例4では、ロータコア122が、厚みの異なる第1電磁鋼板128a~第3電磁鋼板128cから構成されるものであったが、さらに、ロータコアが、厚みの異なる4種類以上の電磁鋼板から構成されるものであっても構わない。
【0081】
また、前述の実施例1では、第2電磁鋼板25bに貫通穴52が形成され、実施例2では、第2電磁鋼板84bに第1貫通穴86が形成されるとともに、第3電磁鋼板84cに第2貫通穴88および第3貫通穴90が形成され、実施例3では、第2電磁鋼板108bに貫通穴106が形成されるものであったが、各貫通穴は必ずしも必須ではなく、貫通穴が形成されない状態で実施するものであっても構わない。
【0082】
また、前述の実施例1、2では、ロータコア24、80において、ロータシャフト26の軸方向の両端部に強度の高い電磁鋼板が配置されるものであったが、ロータコアにおいてロータシャフト26の軸方向の一端にのみ、強度の高い電磁鋼板が配置されるものであっても構わない。また、前述の実施例3、4では、ロータコア102、122においてロータシャフト26の軸方向の両端部に厚みの厚い電磁鋼板が配置されるものであったが、ロータコアにおいてロータシャフト26の軸方向の一端にのみ、厚みの厚い電磁鋼板が配置されるものであっても構わない。
【0083】
また、前述の各実施例では、ロータコア24、80、102、122は、何れもロータシャフト26に締まりばめ状態で嵌め付けられるものであったが、ロータコア24、80、102、122が中間ばめ状態で嵌め付けられるものであっても構わない。
【0084】
また、前述の実施例1では、電磁鋼板25にキー62が形成され、ロータシャフト26にキー溝64が形成されるものであったが、電磁鋼板25にキー溝が形成され、ロータシャフト26にキーが形成されるものであっても構わない。
【0085】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0086】
20、78、100、120:ロータ
24、80、102、122:ロータコア
24a、102a、122a:中央部
24b、24c、102b、102c、122b、122c:端部
25、84、108、128:電磁鋼板
25a、84a、108a、128a:第1電磁鋼板(電磁鋼板)
25b、84b、108b、128b:第2電磁鋼板(電磁鋼板)
84c、128c:第3電磁鋼板(電磁鋼板)
26:ロータシャフト
36:磁石
52:貫通穴
56:穴
60:収容穴
62:キー
64:キー溝
86:第1貫通穴(貫通穴)
88:第2貫通穴(貫通穴)
90:第3貫通穴(貫通穴)
96:第1穴(穴)
98:第2穴(穴)
99:第3穴(穴)
106:貫通穴
112:穴
MG:車両用回転電機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8