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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/19 20180101AFI20240730BHJP
   F21S 41/143 20180101ALI20240730BHJP
   F21S 41/151 20180101ALI20240730BHJP
   F21S 41/365 20180101ALI20240730BHJP
   F21S 41/663 20180101ALI20240730BHJP
   F21S 41/26 20180101ALI20240730BHJP
   F21S 41/29 20180101ALI20240730BHJP
   F21S 41/33 20180101ALI20240730BHJP
   F21S 41/39 20180101ALI20240730BHJP
   F21V 19/00 20060101ALI20240730BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20240730BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240730BHJP
【FI】
F21S41/19
F21S41/143
F21S41/151
F21S41/365
F21S41/663
F21S41/26
F21S41/29
F21S41/33
F21S41/39
F21V19/00 150
F21V19/00 170
F21W102:155
F21Y115:10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020195505
(22)【出願日】2020-11-25
(65)【公開番号】P2022083897
(43)【公開日】2022-06-06
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今村 洋弥
(72)【発明者】
【氏名】野末 洋和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英治
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-098105(JP,A)
【文献】特開2020-135924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/19
F21S 41/143
F21S 41/151
F21S 41/365
F21S 41/663
F21S 41/26
F21S 41/29
F21S 41/33
F21S 41/39
F21V 19/00
F21W 102/155
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光を前方に出射する第1光源と、
前記第1光源に対して下方に配置され第2光を前方に出射する第2光源と、
前記第1光源の前方に配置され、前記第1光を下方に反射する第1反射面と、
前記第2光源の上方に配置され、前記第1反射面で反射された前記第1光を前方に反射する第2反射面と、
前記第2光源の上方かつ前記第2反射面の下方に前後方向に延びた状態で配置され、前記第2反射面との間で前縁部を共有するように当該前縁部において前記第2反射面に接続され、前記第2光源からの前記第2光を前方に反射する第3反射面と、
前記第1反射面、前記第2反射面及び前記第3反射面の前方に配置され、前記第1光及び前記第2光を前方に照射する投影レンズと
を備え、
前記第1光源と前記第2光源とは、同一平面上に配置される
車両用前照灯。
【請求項2】
前記第2光源の下方に配置され、前記第2光源からの前記第2光を前方に反射する第4反射面を更に備える
請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記第3反射面は、後縁部が前記第2光源の上端部に対応する位置に配置され、
前記第4反射面は、後縁部が前記第2光源の下端部に対応する位置に配置される
請求項2に記載の車両用前照灯。
【請求項4】
前記第1反射面、前記第2反射面、前記第3反射面及び前記第4反射面は、単一部品の表面に形成される
請求項2又は請求項3に記載の車両用前照灯。
【請求項5】
前記前縁部は、前記投影レンズの焦点の近傍の位置に配置され、
前記第2光源は、前記投影レンズの光軸よりも下方かつ前記投影レンズの焦点よりも後方に配置され、
前記第1光源及び前記第2光源は、それぞれ前記第1光及び前記第2光の出射軸が前方の斜め上方を向くように配置される
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車両用前照灯。
【請求項6】
前記第1光源及び前記第2光源が実装される平面状の実装面を有する基板を更に備え、
前記基板は、前記実装面の法線が前方の斜め上方を向いた状態で配置される
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の車両用前照灯。
【請求項7】
前記第1光は、車両前方にロービームパターンを形成するための光であり、
前記第2光は、車両前方にハイビームパターンを形成するための光であり、
前記前縁部は、前記ロービームパターンにカットオフラインを形成するためのカットオフ形成部を有する
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の車両用前照灯。
【請求項8】
前記第1反射面は、当該第1反射面のうち前記第1光源の近傍の位置に到達した光を前記第2反射面の前縁部の近傍の部分に向けて反射し、当該第1反射面のうち前記第1光源から離れた位置に到達した光を前記第2反射面の下端から離れた位置に向けて反射するように形成される
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用前照灯として、例えば車両前方にロービームパターンを形成するための第1光源と、遠方を照射するハイビームパターンを形成するための第2光源とが1つのユニットに設けられた構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-98105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の車両用前照灯は、第1光源と第2光源とが異なる面上に配置された構成である。この構成では、第1光源と第2光源とで実装基板を別個に形成する必要があるため、部品点数が多くなってしまう。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、部品点数の増加を抑制することが可能な車両用前照灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用前照灯は、第1光を前方に出射する第1光源と、前記第1光源に対して下方に配置され第2光を前方に出射する第2光源と、前記第1光源の前方に配置され、前記第1光を下方に反射する第1反射面と、前記第2光源の上方に配置され、前記第1光源から前記第1反射面を介して到達する前記第1光を前方に反射する第2反射面と、前記第2光源の上方かつ前記第2反射面の下方に前後方向に延びた状態で配置され、前記第2反射面との間で前縁部を共有するように当該前縁部において前記第2反射面に接続され、前記第2光源からの前記第2光を前方に反射する第3反射面と、前記第1反射面、前記第2反射面及び前記第3反射面の前方に配置され、前記第1光及び前記第2光を前方に照射する投影レンズとを備え、前記第1光源と前記第2光源とは、同一平面上に配置される。
【0007】
上記の車両用前照灯において、前記第2光源の下方に配置され、前記第2光源からの前記第2光を前方に反射する第4反射面を更に備えてもよい。
【0008】
上記の車両用前照灯において、前前記第3反射面は、後縁部が前記第2光源の上端部に対応する位置に配置され、前記第4反射面は、後縁部が前記第2光源の下端部に対応する位置に配置されてもよい。
【0009】
上記の車両用前照灯において、前記第1反射面、前記第2反射面、前記第3反射面及び前記第4反射面は、単一部品の表面に形成されてもよい。
【0010】
上記の車両用前照灯において、前記前縁部は、前記投影レンズの焦点の近傍の位置に配置され、前記第2光源は、前記投影レンズの光軸よりも下方かつ前記投影レンズの焦点よりも後方に配置され、前記第1光源及び前記第2光源は、それぞれ前記第1光及び前記第2光の出射軸が前方の斜め上方を向くように配置されてもよい。
【0011】
上記の車両用前照灯は、前記第1光源及び前記第2光源が実装される平面状の実装面を有する基板を更に備え、前記基板は、前記実装面の法線が前方の斜め上方を向いた状態で配置されてもよい。
【0012】
上記の車両用前照灯において、前記第1光は、車両前方にロービームパターンを形成するための光であり、前記第2光は、車両前方にハイビームパターンを形成するための光であり、前記前縁部は、前記ロービームパターンにカットオフラインを形成するためのカットオフ形成部を有してもよい。
【0013】
上記の車両用前照灯において、前記第1反射面は、当該第1反射面のうち前記第1光源の近傍の位置に到達した光を前記第2反射面の前縁部の近傍の部分に向けて反射し、当該第1反射面のうち前記第1光源から離れた位置に到達した光を前記第2反射面の下端から離れた位置に向けて反射するように形成されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、部品点数の増加を抑制することが可能な車両用前照灯を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、第1実施形態に係る車両用前照灯の一例を示す正面図である。
図2図2は、図1におけるA-A断面矢視図である。
図3図3は、図2における要部を拡大して示す図である。
図4図4は、車両用前照灯の動作の一例を示す図である。
図5図5は、車両前方の仮想のスクリーンに照射される配光パターンの一例を示す図である。
図6図6は、第2実施形態に係る車両用前照灯の一例を示す図である。
図7図7は、図6における要部を拡大して示す図である。
図8図8は、車両用前照灯の動作の一例を示す図である。
図9図9は、車両前方の仮想のスクリーンに照射される配光パターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る車両用前照灯の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0017】
以下の説明においては、車両が水平面と平行な地面に配置されることとし、運転室に搭乗した運転者を基準として、前、後、上、下、左、及び右という用語を用いて各部の位置関係について説明する。前後、上下、左右の各方向は、車両用灯具が車両に搭載された車両搭載状態における方向であって、運転席から車両の進行方向を見た場合における方向を示す。なお、本実施形態では、上下方向は鉛直方向に平行であり、前後方向及び左右方向は水平方向に平行であるとする。
【0018】
[第1実施形態]
図1及び図2は、第1実施形態に係る車両用前照灯100の一例を示す図である。図1は車両用前照灯100の一例を示す正面図、図2図1におけるA-A矢視断面図である。図1及び図2に示すように、車両用前照灯100は、光源部10と、リフレクタ20と、投影レンズ30と、保持部40とを備える。
【0019】
光源部10は、第1光源11と、第2光源12と、基板13とを有する。第1光源11は、例えば車両前方にロービームパターンを形成するための第1光L1を発光する。第2光源12は、例えば車両前方にハイビームパターンを形成するための第2光L2を発光する。
【0020】
第1光源11及び第2光源12は、例えばLED等の半導体型光源が用いられる。第1光源11及び第2光源12は、それぞれ複数設けられ、左右方向に並んだ配置となっている。第1光源11は、左右方向の中央に1つ配置され、左右方向の両側に1つずつ、合計で3つ配置される。第1光源11の個数は、3つに限定されず、2つ以下又は4つ以上であってもよい。第2光源12は、第1光源11よりも左右方向の間隔が狭くなるように複数配置される。第2光源12は、例えばそれぞれ独立して点灯状態を制御可能であってもよい。
【0021】
第1光源11は、第2光源12に対して上方に配置される。換言すると、第2光源12は、第1光源11に対して下方に配置される。このように、第1光源11と第2光源12とは、上下に配置されている。
【0022】
第1光源11及び第2光源12は、基板13の実装面13aに実装される。本実施形態において、第1光源11及び第2光源12は、1つの基板13に実装される。このため、光源ごとに別個の基板を形成する必要がなく、部品点数の削減を図ることができる。実装面13aは、平面状である。基板13は、後述する保持部40の基板支持面41に配置される。基板13は、基板支持面41に沿って配置される。基板13は、実装面13aが前方を向いた状態で配置される。第1光源11及び第2光源12は、発光面11a及び発光面12aが前方を向いた状態で配置される。このため、第1光源11及び第2光源12は、第1光L1及び第2光L2の出射軸がそれぞれ前方を向くように配置される。
【0023】
リフレクタ20は、第1光源11からの第1光L1及び第2光源12からの第2光L2を投影レンズ30に向けて反射する。図1に示すように、リフレクタ20は、単一部材として設けられ、保持部40に固定される。リフレクタ20が単一部材であることにより、後述する第1反射面21、第2反射面22及び第3反射面23の位置を精度よく規定できる。リフレクタ20の全体については、樹脂材料を成型することで形成することができる。また、第1反射面21、第2反射面22、第3反射面23及び第4反射面24については、成型体の所定の領域に金属膜を蒸着等することで形成することができる。
【0024】
図3は、図2における要部を拡大して示す図である。図2及び図3に示すように、リフレクタ20は、第1反射面21と、第2反射面22と、第3反射面23と、第4反射面24とを有する。
【0025】
第1反射面21は、第1光源11の前方に配置される。第1反射面21は、第1光を上方に反射する。第1反射面21は、基板13から前方に延び、前方に向けて凸となる楕円系の自由曲面の形状を有する。図1に示すように、第1反射面21は、それぞれの第1光源11の位置に対応して設けられる。本実施形態において、第1反射面21は、左右方向の中央に1つ配置され、左右方向の左右に1つずつ配置される。なお、第1反射面21は、それぞれの第1光源11の位置に対応して設けられる構成に限定されない。第1反射面21は、後述するように、当該第1反射面21のうち第1光源11の近傍の位置に到達した光を第2反射面22の前縁部25の近傍の部分に向けて反射し、当該第1反射面21のうち第1光源11から離れた位置に到達した光を第2反射面22の下端から離れた位置に向けて反射するように形成される。例えば、第1反射面21は、第1光源11の近傍の位置における焦点位置が第2反射面22の前縁部25の近傍の位置に設定される。第1反射面21は、第1光源11から下方に離れるほど焦点位置が第2反射面22に沿って上方に移動するように設定される。
【0026】
第2反射面22は、第2光源12の上方に配置される。第2反射面22は、第1光源11から第1反射面21を介して到達する第1光を前方に反射する。第2反射面22は、鉛直部22a及び傾斜部22bを有する。鉛直部22aは、前方を向いた状態で配置される。傾斜部22bは、鉛直部22aの下部に配置され、前方の斜め上方を向いた状態で配置される。第2反射面22は、鉛直部22aと傾斜部22bとが連続した一つの面であってもよい。この場合、第2反射面22は、平面状であってもよいし、湾曲した形状であってもよい。
【0027】
第2反射面22は、後方の端部に前縁部25を形成する。前縁部25は、後述する第3反射面23との間で共有される。前縁部25は、図1に示すように、第1直線部25a、傾斜部25b及び第2直線部25cを有する。第1直線部25a及び第2直線部25cは、ロービームパターンの水平カットオフラインCLa、CLc(図5参照)を形成するための部分である。傾斜部25bは、ロービームパターンの斜めカットオフラインCLb(図5参照)を形成するためのカットオフ形成部である。前縁部25は、後述する投影レンズ30の焦点F又は当該焦点Fの近傍の位置に配置される。なお、第1直線部25a及び第2直線部25cは、投影レンズ30による像面に沿って湾曲した形状を有してもよい。
【0028】
第3反射面23は、第2光源12の上方かつ第2反射面22の下方に配置される。第3反射面23は、例えば水平面に平行又は前方に向けて斜め上方に傾いた状態で配置される。第3反射面23は、第2光源12から出射された第2光の一部、例えば第2光のうち第2光源12から上方に向かう成分を前方に反射する。第3反射面23は、第2反射面22との間で前縁部25を共有し、当該前縁部25において第2反射面22に接続される。第3反射面23は、前縁部25から基板13側、つまり後方に向けて前後方向に延びた状態で設けられる。第3反射面23は、後縁部26(図3参照)が第2光源12の上端部12bに対応する位置に配置される。
【0029】
第4反射面24は、第2光源12の下方に配置される。第4反射面24は、例えば前方に向けて斜め下方に傾いた状態で配置される。第4反射面24は、第2光源12からの第2光の一部、例えば第2光のうち第2光源12から下方に向かう成分を前方に反射する。第4反射面24は、後縁部27(図3参照)が第2光源12の下端部12cの近傍に配置される。
【0030】
投影レンズ30は、リフレクタ20の前方に配置される。投影レンズ30は、入射面31及び出射面32を有する。入射面31は、リフレクタ20からの第1光L1及び第2光L2(図4等参照)が入射する。出射面32は、入射面31に入射した第1光L1及び第2光L2を車両前方に出射して、ロービームパターン及びハイビームパターンを形成する。投影レンズ30は、入射面31及び出射面32の少なくとも一方に、不図示の光拡散部が設けられてもよい。この光拡散部は、入射面31に入射する光及び出射面32から出射する光を左右方向又は上下方向に拡散させる。
【0031】
保持部40は、基板13を支持する基板支持面41を前部に有する。基板支持面41は、例えば平面状であり、前方を向いた状態で配置される。保持部40は、第1光源11及び第2光源12で発生した熱を放熱する。保持部40は、後部、上部又は下部にフィン等の不図示の放熱部が設けられてもよい。
【0032】
次に、上記のように構成された車両用前照灯100の動作を説明する。図4は、車両用前照灯100の動作の一例を示す図である。車両用前照灯100の第1光源11を点灯させることにより、発光面11aから第1光L1が放射される。図4に示すように、第1光L1の一部(以下、第1光L1aと表記する)は、第1反射面21により下方に反射され、第2反射面22の鉛直部22aにより前方に反射されて、投影レンズ30に到達する。また、第1光L1の一部(以下、第1光L1bと表記する)は、第1反射面21により下方に反射され、第2反射面22の傾斜部22bにより前方に反射されて、投影レンズ30に到達する。投影レンズ30に到達した第1光L1a、L1bは、投影レンズ30により車両前方に照射される。
【0033】
図5は、車両前方の仮想のスクリーンに照射される配光パターンPの一例を示す図であり、左側通行の車両に対応するパターンを示している。図5において、V-V線がスクリーンの垂直線を示し、H-H線がスクリーンの左右の水平線を示す。また、ここでは、垂直線と水平線との交点が、水平方向の基準位置であるとする。
【0034】
図5に示すように、投影レンズ30から照射された第1光L1a、L1bにより、車両前方にロービームパターンP1が形成される。第1光L1a、L1bのうち前縁部25を通過した光によりカットオフラインCLが形成される。カットオフラインCLは、水平カットオフラインCLa、CLc及び斜めカットオフラインCLbを含む。
【0035】
本実施形態では、第1反射面21のうち第1光源11の近傍の位置で反射される第1光Lb光は、第2反射面22の前縁部25の近傍の部分で反射され、ロービームパターンP1のカットオフラインCL側に照射される。また、第1反射面21のうち第1光源11から離れた位置で反射される第1光Laは、第2反射面22の下端から離れた位置に向けて反射され、ロービームパターンP1のうちカットオフラインCLから上方に離れた位置に照射される。これにより、ロービームパターンP1の光度分布が適正な分布となる。
【0036】
また、車両用前照灯100の第2光源12を点灯させることにより、発光面12aから第2光L2が放射される。図4の一部に、第2光源12の近傍を拡大して示している。図4(拡大図を含む)に示すように、第2光L2のうち前方に出射された一部(以降、第2光L2aと表記する)は、第3反射面23と第4反射面24との間を通過して投影レンズ30に到達する。この場合、第2光L2aの一部は、第3反射面23の先端である前縁部25の近傍を超えて投影レンズ30に到達する。また、第2光L2のうち上方に出射された一部(以降、第2光L2bと表記する)は、第3反射面23により前方に反射されて投影レンズ30に到達する。また、第2光L2のうち下方に出射された一部(以降、第2光L2cと表記する)は、第4反射面24により前方に反射されて投影レンズ30に到達する。投影レンズ30に到達した第2光L2a、L2b、L2cは、投影レンズ30により車両前方に照射され、図5に示すように、ハイビームパターンP2を形成する。例えば、第3反射面23により反射された第2光L2bは、ハイビームパターンP2のうち水平線側に照射される。また、例えば第4反射面24により反射された第2光L2cは、ハイビームパターンP2のうち上方に拡散された状態で照射される。
【0037】
以上のように、本実施形態に係る車両用前照灯100は、第1光L1を前方に出射する第1光源11と、第1光源11に対して下方に配置され第2光L2を前方に出射する第2光源12と、第1光源11の前方に配置され、第1光L1を下方に反射する第1反射面21と、第2光源12の上方に配置され、第1光源11から第1反射面21を介して到達する第1光L1を前方に反射する第2反射面22と、第2光源12の上方かつ第2反射面22の下方に前後方向に延びた状態で配置され、第2反射面22との間で前縁部25を共有するように当該前縁部25において第2反射面22に接続され、第2光源12からの第2光L2を前方に反射する第3反射面23と、第2光源12の下方に配置され、第2光源12からの第2光L2を前方に反射する第4反射面24と、第1反射面21、第2反射面22、第3反射面23及び第4反射面24の前方に配置され、第1光L1及び第2光L2を前方に照射する投影レンズ30とを備え、第1光源11と第2光源12とは、同一平面上に配置される。
【0038】
この構成によれば、第1光源11及び第2光源12が同一平面上に配置されるため、当該第1光源11及び第2光源12を1つの基板13に実装することができる。このため、光源ごとに別個の基板を形成する必要がない。これにより、部品点数の増加を抑制することができる。また、第2光源12から上方に向かう第2光L2bを第3反射面23により前方に反射するため、第2光L2の損失を抑えることができる。また、第1光源11と第2光源12とを上下方向に配置して前方に向ける構成により、第1光源11及び第2光源12が上下方向に向いた構成に比べて、前後方向の寸法を小さくすることができる。
【0039】
本実施形態に係る車両用前照灯100において、第2光源12の下方に配置され、第2光源12からの第2光L2を前方に反射する第4反射面24を更に備える。この構成では、第2光源12から下方に向かう第2光L2cが第4反射面24により前方に反射されるため、第2光L2の損失をより確実に抑えることができる。
【0040】
本実施形態に係る車両用前照灯100において、第3反射面23は、後縁部26が第2光源12の上端部12bに対応する位置に配置され、第4反射面24は、後縁部27が第2光源12の下端部12cに対応する位置に配置される。この構成により、第2光L2b、L2cをより確実に前方に反射することができるため、損失をより確実に抑えることができる。
【0041】
本実施形態に係る車両用前照灯100において、第1反射面21、第2反射面22、第3反射面23及び第4反射面24は、単一部品の表面に形成される。この構成では、第1反射面21、第2反射面22、第3反射面23及び第4反射面24が別部品に形成される構成に比べて、互いの位置関係を精度よく規定することができる。
【0042】
本実施形態に係る車両用前照灯100において、第1光L1は、車両前方にロービームパターンP1を形成するための光であり、第2光L2は、車両前方にハイビームパターンP2を形成するための光であり、前縁部25は、ロービームパターンP1にカットオフラインCLを形成するためのカットオフ形成部(第1直線部25a、傾斜部25b、第2直線部25c)を有する。この構成では、ハイビームパターンP2の下側部分が、ロービームパターンP1の水平カットオフラインCLcの近傍に形成される。これにより、ハイビームパターンP2がロービームパターンP1に対して上方に離れた状態で形成されることを抑制できる。
【0043】
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態に係る車両用前照灯200の一例を示す図である。図6に示すように、車両用前照灯200は、光源部10と、リフレクタ120と、投影レンズ30と、保持部140とを備える。
【0044】
本実施形態に係る車両用前照灯200において、保持部140の基板保持面141は、前方の斜め上方を向いた状態で配置される。また、基板保持面141に保持される基板13は、実装面13aの法線が前方の斜め上方を向いた状態で配置される。このような構成により、実装面13aに実装される第1光源11及び第2光源12は、発光面11a及び発光面12aが前方の斜め上方を向いた状態で配置される。このため、第1光源11及び第2光源12は、第1光L3の出射軸AX1及び第2光L4の出射軸AX2がそれぞれ前方の斜め上方を向くように配置される。
【0045】
リフレクタ120は、第1反射面121と、第2反射面122と、第3反射面123と、第4反射面124とを有する。第1反射面121、第2反射面122、第3反射面123及び第4反射面124は、第1光源11及び第2光源12の出射軸AX1、AX2の傾きに応じて、形状、寸法及び姿勢が第1実施形態とは異なる態様で設定される。
【0046】
図7は、図6における要部を拡大して示す図である。図7に示すように、第2反射面122については、上側傾斜部122aと、下側傾斜部122bとが形成される。上側傾斜部122aは、第1実施形態の鉛直部22aに対して斜め上方に傾いた状態で配置される。下側傾斜部122bは、第1実施形態の傾斜部22bに対してさらに斜め上方に傾いた状態で配置される。下側傾斜部122bの下端には、前縁部125が形成される。前縁部125の形状については、第1実施形態に記載の前縁部25と同様である。また、前縁部125は、焦点Fの近傍に配置される。
【0047】
本実施形態の下側傾斜部122bは、第1実施形態に記載の傾斜部22bよりも傾斜方向に沿った長さが長い。つまり、第1実施形態に記載の傾斜部22bを単に斜め上方に傾ける場合、傾斜部22bの下端部である前縁部25の位置が、焦点Fに対して上方にずれた構成となる。これに対して、本実施形態においては、保持部140の基板保持面141が傾斜している。このため、基板保持面141を鉛直方向に立てて配置した場合と比較して、下側傾斜部122bが後方かつ上方に伸びた構成となっている。このため、下側傾斜部122bにおいて第1光L3をより効率的に反射することができる。
【0048】
次に、上記のように構成された車両用前照灯200の動作を説明する。図8は、車両用前照灯200の動作の一例を示す図である。車両用前照灯200の第1光源11を点灯させることにより、発光面11aから第1光L3が放射される。図8に示すように、第1光L3の一部(以下、第1光L3aと表記する)は、第1反射面121により下方に反射され、第2反射面122の上側傾斜部122aにより前方に反射されて、投影レンズ30に到達する。また、第1光L3の一部(以下、第1光L3bと表記する)は、第1反射面21により下方に反射され、第2反射面22の下側傾斜部122bにより前方に反射されて、投影レンズ30に到達する。投影レンズ30に到達した第1光L3a、L3bは、投影レンズ30により車両前方に照射される。
【0049】
また、車両用前照灯200の第2光源12を点灯させることにより、発光面12aから第2光L4が放射される。図8の一部に、第2光源12の近傍を拡大して示している。図8(拡大図を含む)に示すように、第2光L4のうち前方に出射された一部(以降、第2光L4aと表記する)は、第3反射面123と第4反射面124との間を通過して投影レンズ30に到達する。この場合、第2光L4aの一部は、第3反射面123の先端である前縁部125の近傍を超えて投影レンズ30に到達する。また、第2光L4のうち上方に出射された一部(以降、第2光L4bと表記する)は、第3反射面123により前方に反射されて投影レンズ30に到達する。また、第2光L4のうち下方に出射された一部(以降、第2光L4cと表記する)は、第4反射面124により前方に反射されて投影レンズ30に到達する。
【0050】
図9は、車両前方の仮想のスクリーンに照射される配光パターンPの一例を示す図であり、左側通行の車両に対応するパターンを示している。図9において、V-V線がスクリーンの垂直線を示し、H-H線がスクリーンの左右の水平線を示す。また、ここでは、垂直線と水平線との交点が、水平方向の基準位置であるとする。
【0051】
図9に示すように、投影レンズ30から照射された第1光L3a、L3bにより、車両前方にロービームパターンP3が形成される。第1光L3a、L3bのうち前縁部25を通過した光によりカットオフラインCLが形成される。カットオフラインCLは、水平カットオフラインCLa、CLc及び斜めカットオフラインCLbを含む。また、投影レンズ30に到達した第2光L4a、L4b、L4cは、投影レンズ30により車両前方に照射され、ハイビームパターンP4を形成する。例えば、第3反射面23により反射された第2光L4bは、ハイビームパターンP4のうち水平線側に照射される。また、例えば第4反射面24により反射された第2光L4cは、ハイビームパターンP4のうち上方に拡散された状態で照射される。また、第2光L4の出射軸AX2が水平方向に対して斜め上方を向くように傾斜しているため、当該出射軸AX2が水平方向に沿って前方を向く場合に比べて、直射光となる第2光L4aをハイビームパターンP4のH線付近により多く照射することができる。この結果、ハイビームパターンP4のH線付近を明るくすることができるため、遠方の視認距離を伸ばすことができる。
【0052】
以上のように、第2実施形態に係る車両用前照灯200において、前縁部125は、投影レンズ30の焦点Fの近傍の位置に配置され、第2光源12は、投影レンズ30の光軸AXよりも下方かつ投影レンズ30の焦点Fよりも後方に配置され、第1光源11及び第2光源12は、それぞれ第1光L3及び第2光L4の出射軸AX1、AX2が前方の斜め上方を向くように配置される。この構成によれば、第1光L3が第2反射面22の前縁部125を通過するように第1光源11を配置しつつ、第2光L4の出射軸AX2を前縁部125の近傍に向けるように第2光源12を配置することができる。これにより、第2光L4の一部が前縁部25の近傍を通過して投影レンズ30に到達するため、第2光L4によるパターンを第1光L3によるパターンの上方近傍の位置に形成することができる。
【0053】
本実施形態に係る車両用前照灯100は、第1光源11及び第2光源12が実装される平面状の実装面13aを有する基板13を更に備え、基板13は、実装面13aの法線が前方の斜め上方を向いた状態で配置される。この構成によれば、第1光源11及び第2光源12の向き及び位置を高精度に設定することができる。
【0054】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、第1反射面21、第2反射面22及び第3反射面23が単一部品の表面に形成された構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。第1反射面21、第2反射面22及び第3反射面23は、少なくとも1つが別個の部品に形成されてもよい。
【0055】
また、上記実施形態において、第1光源11及び第2光源12は、それぞれ第1光L1、L3及び第2光L2、L4の出射軸が前方又は前方の斜め上方を向くように配置された構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。第1光源11及び第2光源12は、それぞれ第1光L1、L3及び第2光L2、L4の出射軸が前方の斜め下方を向くように配置された構成であってもよい。
【0056】
また、上記実施形態において、第1光L1、L3が、車両前方にロービームパターンP1、P3を形成するための光であり、第2光L2、L4が、車両前方にハイビームパターンP2、P4を形成するための光である場合を例に挙げて説明したが、この組み合わせに限定されない。例えば第2光L2、L4は、オーバーヘッドパターン等の水平線の上方に照射される補助パターンであってもよい。また、この場合、第1光L1、L3がハイビームパターンP2、P4であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
AX…光軸、AX1,AX2…出射軸、CL…カットオフライン、CLa,CLc…水平カットオフライン、CLb…斜めカットオフライン、F…焦点、L1,L1a,L1b,L3,L3a,L3b…第1光、L2,L2a,L2b,L2c,L4,L4a,L4b,L4c…第2光、P…配光パターン、P1,P3…ロービームパターン、P2,P4…ハイビームパターン、10…光源部、11…第1光源、11a,12a…発光面、12…第2光源、12b…上端部、12c…下端部、13…基板、13a…実装面、20,120…リフレクタ、21,121…第1反射面、22,122…第2反射面、22a…鉛直部、22b,25b…傾斜部、23,123…第3反射面、24,124…第4反射面、25,125…前縁部、25a…第1直線部、25c…第2直線部、26,27…後縁部、30…投影レンズ、31…入射面、32…出射面、40,140…保持部、41…基板支持面、100,200…車両用前照灯、122a…上側傾斜部、122b…下側傾斜部、141…基板保持面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9