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  • 特許-多層容器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】多層容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20240730BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20240730BHJP
   C08L 77/06 20060101ALI20240730BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240730BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20240730BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240730BHJP
   B29C 49/22 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B65D1/02 110
C08L67/04
C08L77/06
B32B27/36
B32B27/28
B32B27/00 H
B29C49/22
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020198642
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086561
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮部 高徳
(72)【発明者】
【氏名】小田 尚史
【審査官】二ッ谷 裕子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/096395(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/072917(WO,A1)
【文献】特表2004-534135(JP,A)
【文献】特開2006-182018(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101945749(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/00 - 1/48
C08L 67/04
C08L 77/06
B32B 27/00
B29C 49/22
C08G 63/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリエステル樹脂(X)を含有するポリエステル系樹脂層と、
ポリグリコール酸(Y)を含有するポリグリコール酸系樹脂層と、を有する多層容器であって、
該ポリグリコール酸系樹脂層に含まれるポリグリコール酸(Y)の分散度B(MwB/MnB)が3.5~7.0であり、ポリグリコール酸系樹脂層を形成する前の原料ポリグリコール酸(Y0)の分散度A(MwA/MnAが2.0~6.0であり、分散度Aに対する分散度Bの比(分散度B/分散度A)が1.2~1.8であり、多層容器の構造が、容器の外側から、ポリエステル系樹脂層/ポリグリコール酸系樹脂層/ポリエステル系樹脂層の順に積層した3層構造である、多層容器。
【請求項2】
前記ポリグリコール酸系樹脂層が、更にポリアミド樹脂(Z)を含有し、
該ポリアミド樹脂(Z)が、ジアミンに由来する構成単位と、ジカルボン酸に由来する構成単位とを有し、該ジアミンに由来する構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来する構成単位であり、該ジカルボン酸に由来する構成単位の70モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位であるポリアミド樹脂(Z-1)を含み、
前記ポリグリコール酸系樹脂層中のポリグリコール酸(Y)とポリアミド樹脂(Z)との質量比[(Y)/(Z)]が60/40~90/10である、請求項1に記載の多層容器。
【請求項3】
芳香族ポリエステル樹脂(X)が、ジカルボン酸に由来する構成単位と、ジオールに由来する構成単位とを有し、該ジカルボン酸に由来する構成単位の90モル%以上がテレフタル酸に由来する構成単位であり、かつ、該ジオールに由来する構成単位の90モル%以上がエチレングリコールに由来する構成単位である、請求項1又は2に記載の多層容器。
【請求項4】
多層容器の全層の厚さが200~400μmである、請求項1~のいずれか1つに記載の多層容器。
【請求項5】
容量が200~600mLである、請求項1~のいずれか1つに記載の多層容器。
【請求項6】
下記工程1及び2を含む多層容器の製造方法であって、
工程2で得られる多層容器におけるポリグリコール酸系樹脂層に含まれるポリグリコール酸(Y)の分散度B(MwB/MnB)が3.5~7.0であり、工程1に用いられる原料ポリグリコール酸(Y0)の分散度A(MwA/MnAが2.0~6.0であり、分散度Aに対する分散度Bの比(分散度B/分散度A)が1.2~1.8であり、多層容器の構造が、容器の外側から、ポリエステル系樹脂層/ポリグリコール酸系樹脂層/ポリエステル系樹脂層の順に積層した3層構造である、多層容器の製造方法。
工程1:芳香族ポリエステル樹脂(X)を含有するポリエステル系樹脂、及び原料ポリグリコール酸(Y0)又は原料ポリグリコール酸(Y0)と他の樹脂を混合して得られるポリグリコール酸系樹脂混合物を成形機に供給し、ポリエステル系樹脂層と、ポリグリコール酸系樹脂層とを有する多層プリフォームを形成する工程
工程2:工程1で得られた多層プリフォームをブロー成形し、芳香族ポリエステル樹脂(X)を含有するポリエステル系樹脂層と、ポリグリコール酸(Y)を含有するポリグリコール酸系樹脂層とを有する多層容器を得る工程
【請求項7】
工程1で得られた多層プリフォームの水分率が、5,000~25,000ppmとなるまで多層プリフォームを保管し、その後、工程2に供する、請求項に記載の多層容器の製造方法。
【請求項8】
工程1におけるポリグリコール酸系樹脂混合物に用いられる他の樹脂が、ポリアミド樹脂(Z)であり、ポリグリコール酸(Y)とポリアミド樹脂(Z)との質量比[(Y)/(Z)]が60/40~90/10であり、
該ポリアミド樹脂(Z)が、ジアミンに由来する構成単位と、ジカルボン酸に由来する構成単位とを有し、該ジアミンに由来する構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来する構成単位であり、該ジカルボン酸に由来する構成単位の70モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位であるポリアミド樹脂(Z-1)を含む、請求項6又は7に記載の多層容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステル樹脂は、透明性、機械的特性、溶融安定性、リサイクル性等に優れるという特徴を有することから、現在、フィルム、シート、中空容器等の各種包装材料に広く利用されている。
一方、特にボトル用途では、ポリエステル樹脂のみからなる中空容器では、炭酸ガス、酸素等に対するガスバリア性が十分ではないため、ガスバリア性に優れる樹脂と多層化を行うことにより、ガスバリア性を向上させる試みがなされている。
たとえば、特許文献1には、高湿度下でのバリア性と耐熱性、成型加工性を向上させるために、芳香族ジアミンを主成分とするジアミン成分とジカルボン酸とから得られる骨格中に芳香環を含むポリアミドと、ポリグリコール酸またはポリエチレンオキサレートをバリア層とする多層構造物が開示されている。
ガスバリア性に優れる樹脂としては、例えば、特許文献2には、ポリグリコール酸樹脂、グリコール酸オリゴマー、および熱安定剤を配合してなり、配合後の重量平均分子量が5万~70万であり、ガラス転移温度(Tg)が13~37℃であるポリグリコール酸樹脂組成物が開示され、他の熱可塑性樹脂と組み合わせることで、透明性およびガスバリア性に優れた積層シートないしフィルムを形成できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-211159号公報
【文献】特開2009-40917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、清涼飲料だけでなく、様々な飲料や食品に対してポリエステル樹脂容器が用いられている。しかしながら、性状や分子構造の異なる樹脂を多層化することにより、各樹脂層間が剥離してしまう(デラミネーション)場合があることが分かった。例えば、前記特許文献1に開示される多層容器や、特許文献2に開示されるポリグリコール酸樹脂をバリア層として用いた多層容器は成形性及び耐デラミネーション性が十分に満足できるものでない。
そこで、本発明は、成形性に優れ、耐デラミネーション性にも優れる多層容器及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、芳香族ポリエステル樹脂(X)を含有するポリエステル系樹脂層と、ポリグリコール酸(Y)を含有するポリグリコール酸系樹脂層と、を有する多層容器であって、さらにポリグリコール酸系樹脂が特定の分散度を有することにより上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明は、以下の〔1〕~〔11〕を提供する。
【0006】
〔1〕芳香族ポリエステル樹脂(X)を含有するポリエステル系樹脂層と、ポリグリコール酸(Y)を含有するポリグリコール酸系樹脂層と、を有する多層容器であって、該ポリグリコール酸系樹脂層に含まれるポリグリコール酸(Y)の分散度B(MwB/MnB)が1.5~8.0であり、ポリグリコール酸系樹脂層を形成する前の原料ポリグリコール酸(Y0)の分散度A(MwA/MnA)に対する分散度Bの比(分散度B/分散度A)が1.1~2.5である、多層容器。
〔2〕前記ポリグリコール酸系樹脂層が、更にポリアミド樹脂(Z)を含有し、該ポリアミド樹脂(Z)が、ジアミンに由来する構成単位と、ジカルボン酸に由来する構成単位とを有し、該ジアミンに由来する構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来する構成単位であり、該ジカルボン酸に由来する構成単位の70モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位であるポリアミド樹脂(Z-1)を含み、前記ポリグリコール酸系樹脂層中のポリグリコール酸(Y)とポリアミド樹脂(Z)との質量比[(Y)/(Z)]が50/50~95/5である、上記〔1〕に記載の多層容器。
〔3〕芳香族ポリエステル樹脂(X)が、ジカルボン酸に由来する構成単位と、ジオールに由来する構成単位とを有し、該ジカルボン酸に由来する構成単位の90モル%以上がテレフタル酸に由来する構成単位であり、かつ、該ジオールに由来する構成単位の90モル%以上がエチレングリコールに由来する構成単位である、上記〔1〕又は〔2〕に記載の多層容器。
〔4〕2~5層構造である、上記〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の多層容器。
〔5〕多層容器の構造が、容器の外側から、ポリエステル系樹脂層/ポリグリコール酸系樹脂層の順に積層した2層構造、ポリエステル系樹脂層/ポリグリコール酸系樹脂層/ポリエステル系樹脂層の順に積層した3層構造、又はポリエステル系樹脂層/ポリグリコール酸系樹脂層/ポリエステル系樹脂層/ポリグリコール酸系樹脂層/ポリエステル系樹脂層の順に積層した5層構造のいずれかである、上記〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の多層容器。
〔6〕多層容器の全層の厚さが50~500μmである、上記〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の多層容器。
〔7〕容量が200~600mLである、上記〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の多層容器。
〔8〕下記工程1及び2を含む多層容器の製造方法であって、工程2で得られる多層容器におけるポリグリコール酸系樹脂層に含まれるポリグリコール酸(Y)の分散度B(MwB/MnB)が1.5~8.0であり、工程1に用いられる原料ポリグリコール酸(Y0)の分散度A(MwA/MnA)に対する分散度Bの比(分散度B/分散度A)が1.1~2.5である、多層容器の製造方法。
工程1:芳香族ポリエステル樹脂(X)を含有するポリエステル系樹脂、及び原料ポリグリコール酸(Y0)又は原料ポリグリコール酸(Y0)と他の樹脂を混合して得られるポリグリコール酸系樹脂混合物を成形機に供給し、ポリエステル系樹脂層と、ポリグリコール酸系樹脂層とを有する多層プリフォームを形成する工程
工程2:工程1で得られた多層プリフォームをブロー成形し、芳香族ポリエステル樹脂(X)を含有するポリエステル系樹脂層と、ポリグリコール酸(Y)を含有するポリグリコール酸系樹脂層とを有する多層容器を得る工程
〔9〕工程1で得られた多層プリフォームの水分率が、5,000~25,000ppmとなるまで多層プリフォームを保管し、その後、工程2に供する、上記〔8〕に記載の多層容器の製造方法。
〔10〕工程1において射出成形機に供給される原料ポリグリコール酸(Y0)の分散度A(Mw/Mn)が1.1~7.0である、上記〔8〕又は〔9〕に記載の多層容器の製造方法。
〔11〕工程1におけるポリグリコール酸系樹脂混合物に用いられる他の樹脂が、ポリアミド樹脂(Z)であり、該ポリアミド樹脂(Z)が、ジアミンに由来する構成単位と、ジカルボン酸に由来する構成単位とを有し、該ジアミンに由来する構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来する構成単位であり、該ジカルボン酸に由来する構成単位の70モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位であるポリアミド樹脂(Z-1)を含む、上記〔8〕~〔10〕のいずれか1つに記載の多層容器の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、成形性に優れ、耐デラミネーション性にも優れる多層容器及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、コールドパリソン成形の各工程を示す概念模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の多層容器は、芳香族ポリエステル樹脂(X)を含有するポリエステル系樹脂層と、ポリグリコール酸(Y)を含有するポリグリコール酸系樹脂層と、を有する多層容器であって、該ポリグリコール酸系樹脂層に含まれるポリグリコール酸系樹脂の分散度B(Mw/Mn)が1.5~8.0であり、ポリグリコール酸系樹脂層を形成する前の原料ポリグリコール酸(Y0)の分散度A(Mw/Mn)に対する分散度Bの比(分散度B/分散度A)が1.1~2.5である。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
[ポリエステル層]
本発明の多層容器を構成するポリエステル系樹脂層は、芳香族ポリエステル樹脂(X)を含有する。
【0011】
<芳香族ポリエステル樹脂(X)>
本発明に用いられる芳香族ポリエステル樹脂(X)は、ジカルボン酸とジオールの共重合体、ラクトンあるいはヒドロキシカルボン酸の重合体、またこれらモノマーの混合物の共重合体が挙げられ、ジカルボン酸とジオールの共重合体が好ましい。
好ましい芳香族ポリエステル樹脂(X)は、ジカルボン酸に由来する構成単位(以下、「ジカルボン酸単位」ともいう。)と、ジオールに由来する構成単位(以下、「ジオール単位」ともいう。)とを有する。
【0012】
ジカルボン酸単位が、テレフタル酸に由来する構成単位を90モル%以上含むことが好ましく、95モル%以上がより好ましく、99モル%以上が更に好ましい。ジカルボン酸単位中のテレフタル酸に由来する構成単位が90モル%以上であれば、ポリエステル樹脂が非晶質となりにくく、そのため、該ポリエステル樹脂を使用して容器を作製した場合、熱収縮しにくくなり、耐熱性が良好となる。
また、ジオール単位が、エチレングリコールに由来する構成単位を90モル%以上含むことが好ましく、95モル%以上がより好ましく、99モル%以上が更に好ましい。
すなわち、芳香族ポリエステル樹脂(X)のジカルボン酸単位とジオール単位の組み合わせとして、芳香族ポリエステル樹脂(X)は、テレフタル酸に由来する構成単位を90モル%以上含むジカルボン酸に由来する構成単位と、エチレングリコールに由来する構成単位を90モル%以上含むジオールに由来する構成単位を有することが好ましく、主成分がポリエチレンテレフタレートからなるものであることがより好ましい。
【0013】
芳香族ポリエステル樹脂(X)には、テレフタル酸以外のジカルボン酸、エチレングリコール以外のジオール等の二官能性化合物由来の構成単位を含んでもよい。
テレフタル酸以外のジカルボン酸としては、スルホフタル酸、スルホフタル酸金属塩及びテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸は、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、及び4,4’-ビフェニルジカルボン酸が好ましい。
エチレングリコール以外のジオールは、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0014】
更に、芳香族ポリエステル樹脂(X)には、モノカルボン酸、モノアルコール等の単官能性化合物由来の構成単位を含んでもよく、カルボキシ基及びヒドロキシ基から選択されるエステル形成基を少なくとも3つ有する多官能性化合物由来の構成単位を含んでいてもよい。
【0015】
芳香族ポリエステル樹脂(X)は、公知の直接エステル化法やエステル交換法によって製造することができる。芳香族ポリエステル樹脂(X)の製造時に使用する重縮合触媒としては、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、アルミニウム化合物等を用いることができる。
また、芳香族ポリエステル樹脂(X)は、リサイクル済みポリエステルを含んでもよく、2種以上の樹脂の混合物でもよい。
【0016】
芳香族ポリエステル樹脂(X)の固有粘度は、特に制限はないが、0.5~2.0dL/gが好ましく、0.6~1.5dL/gがより好ましい。固有粘度が0.5dL/g以上であるとポリエステル樹脂の分子量が充分に高いために、容器は構造物として必要な機械的性質を発現することができる。
なお、固有粘度は、フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(=6/4質量比)混合溶媒に、測定対象のポリエステル樹脂を溶解して0.2、0.4、0.6g/dL溶液を調製し、25℃にて自動粘度測定装置(マルバーン社製、Viscotek)により固有粘度を測定したものである。
【0017】
芳香族ポリエステル樹脂(X)の含有量は、ポリエステル系樹脂層中、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上が更に好ましい。また、上限は100質量%であってもよい。
【0018】
[ポリグリコール酸系樹脂層]
本発明の多層容器を構成するポリグリコール酸系樹脂層は、ポリグリコール酸(Y)を含有する。ポリグリコール酸(Y)は、ポリグリコール酸系樹脂層を形成する前の原料ポリグリコール酸(Y0)を原料として、他の層を構成する樹脂と多層容器を成形することで得られる。
<ポリグリコール酸(Y)>
ポリグリコール酸(Y)は、グリコール酸の重合体であり、グリコール酸を由来とする[-O-CH-CO-]を構成単位として含有する。
前記構成単位の割合は70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。上限は100質量%である。
前記構成単位以外の構成単位としては、[-O-(CH2n-O-CO-(CH2-CO-](ただしn=1~10、m=0~10)、[-O-CH((CH2jH)-CO-](ただしj=1~10)、[-O-(CR12k-CO-](ただし、R1、R2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~10のアルキル基であり、k=2~10)、[-O-CH2-CH2-CH2-O-CO-]、[-O-CH2-O-CH2-CH2-]等が挙げられ、これらの構成単位を選択し、組み合わせることにより、ポリグリコール酸(Y)の融点、分子量、粘度などを調節することができる。
【0019】
ここで、ポリグリコール酸(Y)の原料となる、ポリグリコール酸系樹脂層を形成する前の原料ポリグリコール酸(Y0)は、公知の方法によって製造することができる。たとえば、グリコール酸、又はグリコール酸のエステルの縮重合、グリコリドの開環重合等が挙げられる。ポリグリコール酸(Y)は、前記のとおり、前記縮重合や開環重合等によって得られた原料ポリグリコール酸(Y0)を原料として、他の層を構成する樹脂と多層容器を成形することで得られる。
【0020】
ポリグリコール酸(Y)のポリグリコール酸系樹脂層中の含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましい。また、100質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下が更に好ましく、85質量%以下がより更に好ましい。ポリグリコール酸(Y)の含有量が前記範囲であると、得られる容器の耐デラミネーション性を高めることができ、成形性を良好にすることができる。
【0021】
ポリグリコール酸系樹脂層におけるポリグリコール酸(Y)の分散度(以下、「分散度B」という)(MwB/MnB)は、1.5~8.0である。分散度Bは、好ましくは2.0以上であり、より好ましくは2.5以上であり、更に好ましくは3.0以上であり、好ましくは7.5以下であり、より好ましくは6.5以下であり、更に好ましくは6.0以下である。
一方、ポリグリコール酸系樹脂層を形成する前の原料ポリグリコール酸(Y0)の分散度(以下、「分散度A」という)(MwA/MnA)に対する分散度Bの比(分散度B/分散度A)は、1.1~2.5である。分散度Aに対する分散度Bの比(分散度B/分散度A)は、好ましくは1.2以上であり、より好ましくは1.3以上であり、更に好ましくは1.5以上であり、好ましくは2.4以下であり、より好ましくは2.2以下であり、更に好ましくは2.0以下である。
分散度Aは、好ましくは1.0以上であり、より好ましくは1.1以上であり、更に好ましくは1.2以上であり、より更に好ましくは1.5以上であり、好ましくは8.0以下であり、より好ましくは7.5以下であり、更に好ましくは7.0以下であり、より更に好ましくは5.0以下であり、より更に好ましくは3.0以下である。
分散度とは、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)を意味する。重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、GPCにより、後述する実施例に記載の条件で測定することができる。
分散度Bが前記範囲にあると、ポリグリコール酸の加水分解性により優れた耐デラミネーション性を有することができるため好ましい。また、分散度Aに対する分散度Bの比(分散度B/分散度A)が前記範囲にあると、良好な容器成形性と優れた耐デラミネーション性を両立することが可能となるため好ましい。
【0022】
本発明の多層容器を構成するポリグリコール酸系樹脂層は、ポリグリコール酸(Y)以外の樹脂を含有してもよいし、ポリグリコール酸(Y)のみからなっていてもよい。ポリグリコール酸系樹脂層に含有してもよいポリグリコール酸(Y)以外の樹脂として、ポリアミド樹脂(Z)が挙げられる。ポリアミド樹脂(Z)を含有することで、得られる多層容器は、高い酸素バリア性を維持しつつ、耐熱性にも優れるものとなる。
前記ポリグリコール酸系樹脂層中のポリグリコール酸(Y)とポリアミド樹脂(Z)との質量比[(Y)/(Z)]は、50/50~95/5であることが好ましく、60/40~95/5がより好ましく、70/30~90/10が更に好ましい。ポリグリコール酸(Y)とポリアミド樹脂(Z)の比を前記の範囲にすることで、得られる多層容器は、高い酸素バリア性維持しつつ、耐熱性にも優れるものとなる。
【0023】
<ポリアミド樹脂(Z)>
ポリアミド樹脂(Z)は、ジアミンに由来する構成単位(以下、ジアミン単位ともいう。)と、ジカルボン酸に由来する構成単位(以下、ジカルボン酸単位ともいう。)とを有する。ポリアミド樹脂(Z)のジアミン単位を構成する化合物であるジアミンとしては、キシリレンジアミンが好ましい。ポリアミド樹脂(Z)のジカルボン酸単位を構成する化合物であるジカルボン酸としては、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
ポリアミド樹脂(Z)は、ジアミン単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来する構成単位であり、ジカルボン酸単位の70モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位であるポリアミド樹脂(Z-1)を含むことが好ましい。
【0024】
ポリアミド樹脂(Z-1)は、該ジアミン単位中にキシリレンジアミンに由来する構成単位を70モル%以上含む。ポリアミド樹脂(Z-1)におけるジアミン単位中のキシリレンジアミンに由来する構成単位の含有量は80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上が更に好ましい。ジアミン単位の70モル%以上をキシリレンジアミンに由来する構成単位とすることにより、本発明の多層容器に対して高いガスバリア性を付与することができる。
なお、キシリレンジアミンは、オルト、メタ、パラのいずれのキシリレンジアミンでもよいが、酸素バリア性と成形性の観点から、メタキシリレンジアミンであることが好ましい。
【0025】
ポリアミド樹脂(Z-1)は、該ジカルボン酸単位中に炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位を70モル%以上含む。ポリアミド樹脂(Z-1)におけるジカルボン酸単位中の炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位の含有量は80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上が更に好ましい。ジカルボン酸単位の70モル%以上を炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位とすることにより、得られる多層容器の無色性と接着性を効率よく高めることができる。
【0026】
炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸が挙げられ、アジピン酸、セバシン酸が好ましく、アジピン酸がより好ましい。これらのα、ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
ポリアミド樹脂(Z-1)のジアミン単位とジカルボン酸単位の組み合わせは、キシリレンジアミンに由来する構成単位を80モル%以上含むジアミンに由来する構成単位と、アジピン酸に由来する構成単位を80モル%以上含むジカルボン酸単位を有することが好ましい。
ポリアミド樹脂(Z)に占めるポリアミド樹脂(Z-1)の割合は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上が更に好ましい。また、上限は100質量%以下であり、ポリアミド樹脂(Z)はポリアミド樹脂(Z-1)のみからなっていてもよい。
【0028】
ポリアミド樹脂(Z)のジアミン単位を構成する化合物のうち、キシリレンジアミン以外のジアミンとして、芳香環構造を有するジアミン、脂肪族ジアミン、脂環式構造を有するジアミンが挙げられ、入手性が容易であり、無色性と接着性を高める点から、脂肪族ジアミンが好ましい。
【0029】
脂肪族ジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、及び5-メチルノナメチレンジアミン等が挙げられる。
脂環式構造を有するジアミンとしては、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、及びアミノエチルピペラジン等が挙げられる。
なお、本発明の効果を損なわない範囲で、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン等の3価以上の多価アミンやブチルアミン、ヘキシルアミン、及びオクチルアミン等のモノアミンを用いてもよい。
【0030】
ポリアミド樹脂(Z-1)のジアミン単位を構成するキシリレンジアミン以外のジアミンもポリアミド樹脂(Z)と同様に前記芳香環構造を有するジアミン、脂肪族ジアミン、脂環式構造を有するジアミンが挙げられる。
【0031】
ポリアミド樹脂(Z)のジカルボン酸単位を構成しうる化合物のうち、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸以外の化合物として、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸、ペンタシクロドデカンジカルボン酸、イソホロンジカルボン酸、及び3,9-ビス(2-カルボキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン等の脂環式構造を有するジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、オルソフタル酸、2-メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸などの芳香環構造を有するジカルボン酸等が挙げられる。
なお、本発明の効果を損なわない範囲で、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、及びトリカルバリル酸等の3価以上の多価カルボン酸を用いてもよく、モノカルボン酸を用いてもよい。
【0032】
なお、ポリアミド樹脂(Z)を構成する単位として、上述のジアミン単位、ジカルボン酸単位以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、アミノカルボン酸等に由来する構成単位を含んでもよく、具体的には、脂肪族アミノカルボン酸類に由来する構成単位、芳香族アミノカルボン酸等に由来する構成単位が挙げられる。
【0033】
前記ジカルボン酸単位に用いられるジカルボン酸、多価カルボン酸及びモノカルボン酸を構成する化合物には、無水物及び短鎖アルキルエステルが含まれる。短鎖アルキルエステルとしては、具体的には炭素数1~3、すなわちメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びイソプロピルエステルが挙げられ、なかでもメチルエステルが好ましい。また、アミノカルボン酸に由来する構成単位を構成する化合物には、無水物であるラクタムが含まれる。
【0034】
ポリアミド樹脂(Z-1)のジカルボン酸単位を構成しうる炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸以外の化合物も、前記のポリアミド樹脂(Z)と同様の脂環式構造を有するジカルボン酸及び芳香環構造を有するジカルボン酸等が挙げられる。
【0035】
本発明におけるポリアミド樹脂(Z-1)の具体例としては、ポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)、ポリアミドMXD10(ポリメタキシリレンセバカミド)、ポリアミドMXD6I(イソフタル酸共重合ポリメタキシリレンアジパミド)等が挙げられ、入手性、ガスバリア性及び無色性の観点から、ポリアミドMXD6又はポリアミドMXD10が好ましく、ポリアミドMXD6がより好ましい。これらのポリアミド樹脂は単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0036】
(ポリアミド樹脂(Z)の製造方法)
以下にポリアミド樹脂(Z)の好適な製造方法を説明するが、ポリアミド樹脂(Z-1)の好適な製造方法も包含する。すなわち、ポリアミド樹脂(Z-1)もポリアミド樹脂(Z)と同様の製造方法によって製造することが好ましい。
ポリアミド樹脂(Z)は、溶融重縮合法により製造されることが好ましい。
溶融重縮合法は、ジアミンを溶融状態のジカルボン酸に直接加えて、重縮合する方法によって製造する方法が好ましい。この場合、反応系を均一な液状状態に保つために、ジアミンをジカルボン酸に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミド及びポリアミドの融点よりも下回らないように反応系の温度を上昇させながら、重縮合を進めることが好ましい。
【0037】
ポリアミド樹脂(Z)の重縮合反応系内にはアミド化反応を促進する効果や、重縮合反応時の着色を防止する効果を得るために、リン原子含有化合物を添加することが好ましい。
リン原子含有化合物としては、アミド化反応を促進する効果が高く、かつ着色防止効果にも優れる点から、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸カルシウム等の次亜リン酸金属塩が好ましく、次亜リン酸ナトリウムがより好ましい。
【0038】
ポリアミド樹脂(Z)の重縮合反応系内に添加するリン原子含有化合物の添加量は、ポリアミド樹脂(Z)中のリン原子濃度換算で、1~500ppmが好ましく、5~450ppmがより好ましく、10~400ppmが更に好ましい。リン原子含有化合物の添加量を前記範囲内にすることで重縮合反応中のポリアミドの着色を防止すると共に、ポリアミドのゲル化を抑制する
ことができるため、得られる容器の外観を良好に保つことができる。
また、ポリアミド樹脂(Z)の重縮合反応系内には、リン原子含有化合物と併用してアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を添加してもよい。
【0039】
溶融重縮合法で得られたポリアミド樹脂(Z)は、ペレット化した後、乾燥して使用することが好ましく、更に重合度を高めるために固相重合することがより好ましい。
固相重合は、減圧下、ペレットを加熱して行うことが好ましい。
【0040】
(ポリアミド樹脂(Z)の特性等)
ポリアミド樹脂(Z)の相対粘度は、好ましくは1.5~4.2、より好ましくは1.6~4.0、更に好ましくは1.7~3.8、より更に好ましくは1.9~3.0である。
ポリアミド樹脂(Z)の相対粘度を前記範囲に設定することで成形加工性が安定し、外観の良好な容器を得ることができる。
なお、本発明において、ポリアミド樹脂(Z)の相対粘度は、以下の方法により測定される。具体的には、ポリアミド樹脂を0.2g精秤し、96質量%硫酸20mLに20~30℃で撹拌溶解する。完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5mLを取り、25℃の恒温漕中で10分間放置後、当該溶液の落下時間(t)を測定する。また、96質量%硫酸の落下時間(t0)も同様に測定する。下記式より、測定したt及びt0の値を用いて、ポリアミド樹脂の相対粘度を算出する。
相対粘度=t/t0
【0041】
ポリアミド樹脂(Z)のポリグリコール酸系樹脂層中の含有量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましい。また、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
ポリアミド樹脂(Z)の含有量が5質量%以上であると、酸素透過性を十分に抑制し、熱安定性も良好とすることができ、含有量が50質量%以下であると、得られる容器の耐デラミネーション性が良好となる。
【0042】
[その他の成分]
本発明の多層容器を構成するポリエステル系樹層及びポリグリコール酸系樹脂層が含有するその他の成分としては、リサイクル助剤が例示される。
【0043】
リサイクル助剤は、リサイクル済みポリエステルを得るにあたり、リサイクル工程における黄変を抑制する効果を有する化合物であり、リサイクル助剤として、アルデヒド捕捉剤が好ましい。
前記リサイクル助剤としては、ポリエステル樹脂の黄変を抑制する能力を有し、かつ、アミノ基を含有する化合物が好ましく、具体的には、アントラニルアミド、アントラニル酸、及びナイロン6I/6Tよりなる群から選択される少なくとも1つの化合物であることがより好ましい。
【0044】
ポリエステル系樹層及びポリグリコール酸系樹脂層は、前記成分に加え、着色剤、酸素吸収剤、熱安定剤、光安定剤、防湿剤、防水剤、滑剤、展着剤等の添加物を含んでもよい。
【0045】
[多層容器]
本発明の多層容器は、中空容器であることが好ましく、該多層容器が中空容器である場合、少なくとも胴部が多層積層構造を有する。
本発明の多層容器は、2~5層構造であることが好ましく、2、3又は5層構造がより好ましく、3又は5層構造が更に好ましく、3層構造がより更に好ましい。
具体的には、容器の外側から、ポリエステル系樹脂層/ポリグリコール酸系樹脂層の順に積層した2層構造、ポリエステル系樹脂層/ポリグリコール酸系樹脂層/ポリエステル系樹脂層の順に積層した3層構造、又はポリエステル系樹脂層/ポリグリコール酸系樹脂層/ポリエステル系樹脂層/ポリグリコール酸系樹脂層/ポリエステル系樹脂層の順に積層した5層構造のいずれかであることが好ましい。
【0046】
本発明の多層容器は、ポリエステル系樹脂層とポリグリコール酸系樹脂層以外に、その他の層を有していてもよい。その他の層としては、ポリエステル系樹脂層とポリグリコール酸系樹脂層の間に介在される、接着性の樹脂を含有する接着層が挙げられる。ただし、成形加工性及びリサイクル時の分別性を向上させる観点から、接着剤層を含まないことが好ましい。
【0047】
本発明の多層容器は、内容物の減少に伴って最外層が変形することなく、内層が減容変形し、それに伴って層間剥離が可能である、積層剥離容器であってもよい。
前記積層剥離容器である場合、多層容器には、ポリエステル系樹脂層とポリグリコール酸系樹脂層との間に外気を導入するための外気導入孔が形成され、減容変形に伴う層間剥離が可能であることが好ましい。
このような機能を有するため、内容物を完全に使い切るまで内容物が空気に直接接触することなく、内容物の酸化を防止することができる。
前記積層剥離容器である場合、特に容器の外側から、ポリエステル系樹脂層/ポリグリコール酸系樹脂層の順に積層した2層構造であることが好ましい。
前記外気導入孔の位置は特に限定されないが、外層の容器口部または容器底部に設けることが好ましい。外気導入孔は、多層容器を成形した後に外層のみをくり抜いて形成してもよく、多層容器の成形時に同時に形成してもよい。多層容器の成形時に同時に形成する場合、たとえば、ブロー成形時に容器底部に形成されるシール部の層間を外気導入孔としてもよい。
【0048】
本発明の多層容器のポリグリコール酸系樹脂層の厚さは、全体厚さの1%以上が好ましく、2%以上がより好ましく、5%以上が更に好ましい。そして、15%以下が好ましく、13%以下がより好ましく、12%以下が更に好ましい。混合樹脂層の厚さが上記範囲内であると、十分な酸素バリア性が得られると共に、経済的である。
【0049】
なお、ポリグリコール酸系樹脂層は、多層容器の底部や首部には積層されていなくてもよく、少なくとも胴部の一部、好ましくは胴部の中央部、より好ましくは胴部の長さの50%以上において、混合樹脂層が上記の厚さ及び位置に存在することが好ましい。
耐デラミネーション性と酸素バリア性をバランスさせる観点からは、混合樹脂層が、後述するプリフォームのサポートリングの下部から、プリフォームの射出ゲート中心から20~40mm程度の位置まであることが好ましい。
【0050】
多層容器の全層の厚さは、50~500μmが好ましく、100~450μmがより好ましく、200~400μmが更に好ましい。ここでいう全層の厚さとは多層容器の胴部における全ての層(樹脂層)の厚さを合計したものの平均値をいう。
多層容器の容量は、酸素バリア性、熱安定性及び耐デラミネーション性、並びに、製造上の観点から、30~3,000mLが好ましく、50~2,000mLがより好ましく、100~1,500mLが更に好ましく、200~1,000mLがより更に好ましく、200~600mLがより更に好ましい。
【0051】
本発明の多層容器は、中空容器の内部に液体を充填して使用される液体用包装容器であることがより好ましく、飲料用包装容器であることが更に好ましい。内部に充填される液体としては、水、炭酸水、酸素水、水素水、牛乳、乳製品、ジュース、コーヒー、コーヒー飲料、炭酸ソフトドリンク類、茶類、アルコール飲料等の飲料;ソース、醤油、シロップ、みりん類、ドレッシング等の液体調味料;農薬、殺虫剤等の化学品;医薬品;洗剤等、種々の物品を挙げることができる。特に、酸素存在下で劣化を起こしやすい飲料や炭酸飲料、たとえば、ビール、ワイン、コーヒー、コーヒー飲料、フルーツジュース、炭酸ソフトドリンク、炭酸水、茶類が好ましく挙げられる。
【0052】
また、本発明の多層容器は、酸素バリア性に優れ、ASTM D3985に準じて測定された容器の酸素バリア性(mL/bottle・day・0.21atm)が、0.040以下が好ましく、0.035以下がより好ましく、0.030以下が更に好ましい。なお、酸素バリア性は、実施例で作製した容器、すなわち、内容積が500mL(表面積:0.04m2、胴部平均厚さ:0.35mm)である容器を基準とした場合の値である。
【0053】
[多層容器の製造方法]
本発明の多層容器は、上述のように、芳香族ポリエステル樹脂(X)を含有するポリエステル系樹脂層と、ポリグリコール酸(Y)を含有するポリグリコール酸系樹脂層と、を有する多層容器であって、該ポリグリコール酸系樹脂層に含まれるポリグリコール酸(Y)の分散度B(MwB/MnB)が1.5~8.0であり、ポリグリコール酸系樹脂層を形成する前の原料ポリグリコール酸(Y0)の分散度A(MwA/MnA)に対する分散度Bの比(分散度B/分散度A)が1.1~2.5であれば、その製造方法に制限はないが、次の方法によって製造することが好ましい。
すなわち、本発明の好適な多層容器の製造方法は、下記工程1及び2を含む多層容器の製造方法であって、
工程2で得られる多層容器におけるポリグリコール酸系樹脂層に含まれるポリグリコール酸(Y)の分散度B(MwB/MnB)が1.5~8.0であり、工程1に用いられる原料ポリグリコール酸(Y0)の分散度A(MwA/MnA)に対する分散度Bの比(分散度B/分散度A)が1.1~2.5である。
工程1:芳香族ポリエステル樹脂(X)を含有するポリエステル系樹脂、及び原料ポリグリコール酸(Y0)又は原料ポリグリコール酸(Y0)と他の樹脂を混合して得られるポリグリコール酸系樹脂混合物を成形機に供給し、ポリエステル系樹脂層と、ポリグリコール酸系樹脂層とを有する多層プリフォームを形成する工程
工程2:工程1で得られた多層プリフォームをブロー成形し、芳香族ポリエステル樹脂(X)を含有するポリエステル系樹脂層と、ポリグリコール酸(Y)を含有するポリグリコール酸系樹脂層とを有する多層容器を得る工程
また、前記の工程1で得られた多層プリフォームの水分率が、5,000~25,000ppmとなるまで保管し、その後、工程2に供することがより好ましい。
以下に各工程について、説明する。
【0054】
<工程1>
工程1は、芳香族ポリエステル樹脂(X)を含有するポリエステル系樹脂、及び原料ポリグリコール酸(Y0)又は原料ポリグリコール酸(Y0)と他の樹脂を混合して得られるポリグリコール酸系樹脂混合物を成形機に供給し、ポリエステル系樹脂層と、ポリグリコール酸系樹脂層とを有する多層プリフォームを形成する工程である。
【0055】
本工程1において、射出成形機に供給される原料ポリグリコール酸(Y0)は上述の<ポリグリコール酸(Y)>の項で説明した構成単位を有し、同項で説明した方法によって得られるものであることが好ましい。
また、工程1において射出成形機に供給される原料ポリグリコール酸(Y0)の分散度A(Mw/Mn)は、好ましくは1.0以上であり、より好ましくは1.1以上であり、更に好ましくは1.2以上であり、より更に好ましくは1.5以上であり、好ましくは8.0以下であり、より好ましくは7.5以下であり、更に好ましくは7.0以下であり、より更に好ましくは5.0以下であり、より更に好ましくは3.0以下である。
【0056】
本工程において、ポリグリコール酸系樹脂層の原料として、原料ポリグリコール酸(Y0)以外の他の樹脂を用いる場合、プリフォームの成形の前に、原料ポリグリコール酸(Y0)と他の樹脂を混合して、予めポリグリコール酸系樹脂混合物を調製することが好ましい。
ここで、本工程1におけるポリグリコール酸系樹脂混合物に用いられる他の樹脂が、ポリアミド樹脂(Z)であることが好ましい。更に当該他の樹脂が、ポリアミド樹脂(Z)であり、該ポリアミド樹脂(Z)が、ジアミンに由来する構成単位と、ジカルボン酸に由来する構成単位とを有し、該ジアミンに由来する構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来する構成単位であり、該ジカルボン酸に由来する構成単位の70モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位であるポリアミド樹脂(Z-1)を含むことがより好ましい。
ポリアミド樹脂(Z)及びポリアミド樹脂(Z-1)はそれぞれ前述の[ポリグリコール酸系樹脂層]の項に記載したものであることが好ましい。
【0057】
なお、前記混合は、ドライブレンドでもよく、メルトブレンド(溶融混練)でもよい。すなわち、各成分をドライブレンドして、混合樹脂を調製してもよく、各成分をメルトブレンドして、混合樹脂を調製してもよい。これらの中でも、熱履歴を少なくする観点から、ドライブレンドが好ましい。ここで、ドライブレンドとは、粉末状又はペレット状の形態で機械的に混合することを意味する。混合には、タンブラーミキサー、リボンミキサー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー等の混合装置を用いることが好ましい。あるいは、成形加工に供する際に、原料ポリグリコール酸(Y0)の供給フィーダーとは別のフィーダーにて他の樹脂、好ましくはポリアミド樹脂(Z)を所定量供給することで、パリソンを成形直前に混合樹脂としてもよい。
また、原料ポリグリコール酸(Y0)及び他の樹脂を溶融混練する場合には、溶融混練における温度は特に限定されないが、樹脂が十分に溶融し、十分に混練されるという観点から、240~280℃が好ましく、245~270℃がより好ましく、250~265℃が更に好ましい。また、溶融混練する時間は特に限定されないが、樹脂が均一に混合されるという観点から、10~600秒間が好ましく、20~400秒間がより好ましく、30~300秒間が更に好ましい。溶融混練に使用される装置は特に限定されないが、開放型のミキシングロール、非開放型のバンバリーミキサー、ニーダー、連続混練機(単軸混練機、二軸混練機、多軸混練機等)などが挙げられる。
また、ポリエステル系樹脂層又はポリグリコール酸系樹脂層に、その他の樹脂やその他の成分を混合する場合も、前記の条件で行うことが好ましい。
【0058】
次に、ポリエステル系樹脂層を構成する樹脂を第一の押出機から押し出し、ポリグリコール酸系樹脂層を構成する樹脂を第二の押出機から押し出し、パリソン(多層プリフォーム)を成形する。より具体的には、押出成形法、共射出成形法、又は、圧縮成形法等により、多層プリフォームを成形する工程であることが好ましい。
押出成形では、ポリエステル層を構成する樹脂、及び混合樹脂層を構成する樹脂を、共押出成形して、多層プリフォームを成形する。
また、共射出成形では、ポリエステル系樹脂層を構成する樹脂、及びポリグリコール酸系樹脂層を構成する樹脂を金型にそれぞれ押し出し、共射出成形して、多層プリフォームを成形する。
圧縮成形では、加熱溶融状態のポリエステル系樹脂層を構成する樹脂が流動する押出流路内に、加熱溶融状態のポリグリコール酸系樹脂層を構成する樹脂を間歇的に押し出して、押し出された混合樹脂層を構成する樹脂の実質上全体を囲む、ポリエステル系樹脂層を構成する樹脂を押出流路の押出口から押し出して、溶融樹脂成形材料として適宜成形金型に供給して、次いで圧縮成形して多層プリフォームを成形する方法が例示される。
これらの中でも、生産性の観点から、共射出成形であることが好ましい。
【0059】
<水分率調整工程>
本工程は、前記の工程1で得られた多層プリフォームの水分率が、5,000~25,000ppmとなるまで多層プリフォームを保管し、その後、工程2に供する工程である。
なお、水分率は実施例に記載の方法によって測定することができ、本明細書における「ppm」は「質量ppm」である。
本工程は任意の工程であるが、本発明の多層容器の該ポリグリコール酸系樹脂層に含まれるポリグリコール酸(Y)の分散度B(MwB/MnB)を1.5~8.0とし、ポリグリコール酸系樹脂層を形成する前の原料ポリグリコール酸(Y0)の分散度A(MwA/MnA)に対する分散度Bの比(分散度B/分散度A)を1.1~2.5に調整するために、本工程を設けることが好ましい。
【0060】
具体的には、(1)前記工程で得られたプリフォームを高湿度下で保管する方法や、(2)前記工程で得られたプリフォームを水中に浸漬する方法が挙げられ、(1)前記工程で得られたプリフォームを高湿度下で保管する方法が好ましい。
(1)前記工程で得られたプリフォームを高湿度下で保管する具体的な方法としては、前記工程で得られたプリフォームを15~35℃、相対湿度45~65%環境の環境下に5~20日間保存する方法や、前記工程で得られたプリフォームを36~50℃、相対湿度75~95%の環境下に10~40日間保存する方法が好ましく、15~35℃、相対湿度45~65%環境の環境下に5~20日間保存する方法がより好ましい。
前記工程で得られたプリフォームを15~35℃、相対湿度45~65%環境の環境下に5~20日間保存する方法における温度は、20~30℃が好ましく、相対湿度は、45~55%が好ましく、保存期間は6~10日間が好ましい。
前記工程で得られたプリフォームを36~50℃、相対湿度75~95%の環境下に10~40日間保存する方法における温度は、36~45℃が好ましく、相対湿度は、75~85%が好ましく、保存期間は、12~20日間が好ましい。
(2)前記工程で得られたプリフォームを水中に浸漬する具体的な方法としては、前記工程で得られたプリフォームを15~35℃の水を貯めた水槽の水中に0.5~30時間保管する方法が挙げられる。この方法における水の温度としては、20~30℃が好ましく、保管する時間としては、3~10時間が好ましい。
【0061】
<工程2>
工程2は、工程1で得られた多層プリフォームをブロー成形し、芳香族ポリエステル樹脂(X)を含有するポリエステル系樹脂層と、ポリグリコール酸(Y)を含有するポリグリコール酸系樹脂層とを有する多層容器を得る工程である。
前記水分率調整工程を設けた場合には、本工程では、水分率調整工程で得られた多層プリフォームをブロー成形し、芳香族ポリエステル樹脂(X)を含有するポリエステル系樹脂層と、ポリグリコール酸(Y)を含有するポリグリコール酸系樹脂層とを有する多層容器を得る。
【0062】
本工程で得られる多層容器におけるポリグリコール酸系樹脂層に含まれるポリグリコール酸(Y)の分散度B(MwB/MnB)は1.5~8.0であり、工程1に用いられる原料ポリグリコール酸(Y0)の分散度A(MwA/MnA)に対する分散度Bの比(分散度B/分散度A)は1.1~2.5である。
【0063】
分散度Bは、好ましくは2.0以上であり、より好ましくは2.5以上であり、更に好ましくは3.0以上であり、好ましくは7.5以下であり、より好ましくは6.5以下であり、更に好ましくは6.0以下である。
また、分散度Aに対する分散度Bの比(分散度B/分散度A)は、好ましくは1.2以上であり、より好ましくは1.3以上であり、更に好ましくは1.5以上であり、好ましくは2.4以下であり、より好ましくは2.2以下であり、更に好ましくは2.0以下である。
分散度Bが前記範囲にあると、ポリグリコール酸の加水分解性により優れた耐デラミネーション性を有することができるため好ましい。また、分散度Aに対する分散度Bの比(分散度B/分散度A)が前記範囲にあると、良好な容器成形性と優れた耐デラミネーション性を両立することが可能となるため好ましい。
【0064】
本工程におけるブロー成形方法は、成形品の構造等を考慮して適切な製造方法が選択される。具体的には、射出成形機から金型中に溶融した樹脂又は樹脂組成物を射出してプリフォームを製造後、ブロー延伸することにより得ることができる(インジェクションブロー成形、インジェクションストレッチブロー成形)。
また、押出成形機から金型中に溶融した樹脂又は樹脂組成物を押し出すことで得られるパリソンを金型内でブローすることにより得ることができる(ダイレクトブロー成形)。
本発明の多層容器はインジェクションブロー成形で作製することが好ましい。
【0065】
本発明の多層容器は、プリフォームを二軸延伸ブロー成形することによって製造することが好ましい。
本発明の多層容器は、コールドパリソン成形してもよく、ホットパリソン成形してもよい。コールドパリソン(2ステージ成形)成形は、射出成形後のプリフォームを室温まで冷やして、保管されたのちに、別の装置で再加熱し、ブロー成形に供給される成形方法である。一方、ホットパリソン成形(1ステージ成形)は、パリソンを室温まで完全に冷却することなく、射出成形時の予熱とブロー前の温調をすることで、ブロー成形する方法である。ホットパリソン成形では、多くの場合は、同一成形機ユニット内に、射出成形機、温調ゾーン及びブロー成形機を備え、プリフォーム射出成形とブロー成形が行われる。
【0066】
本発明の多層容器の製造方法の第一の実施形態は、コールドパリソン成形によって成形する形態である。
以下、図1に従って説明する。図1は、コールドパリソン成形の各工程を示す概念模式図である。しかし、第一の実施形態が図1に記載の構成に限定されるものではないことはいうまでもない。
図1では、まず、プリフォーム1が加熱される(図1(1))。加熱は、赤外線ヒータ2等で行われる。
次いで、加熱されたプリフォーム1に、二軸延伸ブロー成形を行う。すなわち、金型3に設置され(図1(2))、延伸ロッド4によって延伸しながら、ブロー成形する(図1(3)及び(4))。
延伸は、たとえば、プリフォームの表面を加熱した後にコアロッドインサートで押すといった機械的手段により軸方向に延伸し、次いで、通常2~4MPaの高圧空気をブローして横方向に延伸させブロー成形する方法がある。
また、容器の耐熱性を向上させるために、結晶化度を高めたり、残留歪みを軽減するブロー成形方法を組み合わせてもよい。たとえば、多層プリフォームの表面を加熱した後にガラス転移点以上の温度の金型内でブロー成形する方法(シングルブロー成形)がある。
更に、プリフォームを最終形状より大きく二軸延伸ブロー成形する一次ブロー成形工程と、この一次ブロー成形品を加熱して熱収縮させて二次中間成形品に成形する工程と、最後にこの二次中間成形品を最終容器形状にブロー成形する二次ブロー成形工程とからなる所謂ダブルブロー成形であってもよい。
ブロー成形された後、金型3が外され、多層容器5が得られる(図1(5))。
【0067】
コールドパリソン成形において、ブロー成形前のパリソン温度は、本発明の多層容器を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)を考慮して決定される。ブロー成形前とは、たとえば、予熱ゾーンを通過した後、ブローされる直前のことをいう。
パリソン温度は、本発明の多層容器を構成する樹脂の中で、最もガラス転移温度が高い樹脂のガラス転移温度(Tgmax)を超える温度が好ましく、(Tgmax+0.1)℃~(Tgmax+50)℃の温度範囲がより好ましい。
また、本発明の多層容器を構成する樹脂の中で最もガラス転移温度が低い樹脂のガラス転移温度(Tgmin)と前記Tgmaxの差は、40℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、ブロー成形性がより向上する傾向にある。
更に、本発明の多層容器を構成する樹脂の少なくとも1種が結晶性樹脂の場合、前記結晶性樹脂の結晶化温度(Tc)の内、最も低い温度(Tcmin)と、本発明の多層容器を構成する樹脂の中で、最もガラス転移温度が高い樹脂のガラス転移温度(Tgmax)との差が大きい方が好ましい。
具体的には、Tcmin-Tgmaxは、5℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましい。
Tcmin-Tgmaxの上限値としては、100℃以下が実際的である。このような範囲とすることにより、ブロー成形性がより向上する傾向にある。
【実施例
【0068】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に制限されるものではない。
【0069】
実施例及び比較例で使用した樹脂は以下の通りである。
<ポリエステル樹脂(X)>
・PET:ポリエチレンテレフタレート(固有粘度:0.83dL/g)、商品名:BK2180、三菱ケミカル株式会社製(融点248℃)
<原料ポリグリコール酸(Y0)>
・PGA1:ポリグリコール酸(分散度(Mw/Mn):2.0、ガラス転移温度:38℃、融点:221℃、結晶化温度:91℃)
・PGA2:ポリグリコール酸(分散度(Mw/Mn):2.5、ガラス転移温度:38℃、融点:221℃、結晶化温度:91℃)
・PGA3:ポリグリコール酸(分散度(Mw/Mn):4.5、ガラス転移温度:38℃、融点:221℃、結晶化温度:91℃)
・PGA4:ポリグリコール酸(分散度(Mw/Mn):6.0、ガラス転移温度:38℃、融点:221℃、結晶化温度:91℃)
・PGA5:ポリグリコール酸(分散度(Mw/Mn):3.5、ガラス転移温度:38℃、融点:221℃、結晶化温度:91℃)
・PGA6:ポリグリコール酸(分散度(Mw/Mn):8.0、ガラス転移温度:38℃、融点:221℃、結晶化温度:91℃)
・PGA7:ポリグリコール酸(分散度(Mw/Mn):3.0、ガラス転移温度:38℃、融点:221℃、結晶化温度:91℃)
<ポリアミド樹脂(Z)>
・MXD6:ポリ(メタキシリレンアジパミド)(相対粘度:2.7、融点=237℃)、商品名:MXナイロン S6007、三菱ガス化学株式会社製、ポリアミド樹脂(Z-1)に該当
【0070】
[測定・評価方法]
<ポリグリコール酸の分散度>
ポリグリコール酸の分散度は以下のようにして測定した。
ゲルパーミエーションクロマトグラフ「HLC-8320GPC」(東ソー株式会社製)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めた重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)から算出した。
なお、上記分子量は標準ポリメチルメタクリレート(PMMA)を使用した検量線によって算出したPMMA換算値である。なお、測定用カラムとしては「TSKgel SuperHM-H」を2本用い、溶媒にはトリフルオロ酢酸ナトリウム濃度10mmol/Lのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用い、ポリグリコール酸濃度0.02質量%、カラム温度は40℃、流速0.3mL/分、屈折率検出器(RI)の条件で測定した。また、検量線は6水準の標準PMMAをHFIPに溶解させて測定し作成した。
表1において分散度Aは原料ポリグリコール酸(Y0)の分散度(MwA/MnA)であり、分散度B(MwB/MnB)は成形後のポリグリコール酸系樹脂層に含まれるポリグリコール酸の分散度である。
なお、実施例5及び6においては、ポリグリコール酸とMXD6からなる樹脂組成物中のポリグリコール酸の分散度である。
【0071】
<水分率の測定>
水分率は、以下の方法により測定した。
水分計CA200(株式会社三菱化学アナリテック製)と、サンプルチャージャーVA-236Sを用い、プリフォームから測定用の試料0.5gを切り出し、設定温度は融点-5℃とし、検出開始までの待機時間を0秒とし、測定時間を30分間とし、カール・フィッシャー法で水分量を測定した。ブランクとして試料量0gに対して同条件で水分量を測定した。次式により、試料の水分率を計算した。
水分率(ppm)=[(試料の水分量)-(ブランクの水分量)]/(試料の質量)
【0072】
<ブロー成形性>
ブロー成形性は、後述の<多層ボトルの製造>に記載した方法で下記の成形条件にしたがって、ブロー成形によりボトルを成形した際の成形性を下記の基準で評価した。なお、外観不良は白化や表面の変形である。
また、ブロー成形性が下記の基準でCであった比較例1、2は、一次ブロー圧力を変更することによって、耐デラミネーション性の評価に供するボトルを得た。
【0073】
(評価基準)
A:全てのボトルに外観不良が無く、下記成形条件でブロー成形が可能
B:3割未満のボトルに外観不良が発生し、下記成形条件ではブロー成形が困難であるが、プリフォーム加熱温度の変更によりブロー成形が可能
C:3割以上のボトルに外観不良が発生し、プリフォーム加熱温度の変更を行ってもブロー成形が困難
D:バーストが発生し、ブロー成形が困難
【0074】
(成形条件)
プリフォーム加熱温度:100℃
一次ブロー圧力:0.9MPa
二次ブロー圧力:2.5MPa
一次ブロー遅延時間:0.30sec
一次ブロー時間:0.30sec
二次ブロー時間:2.0sec
ブロー排気時間:0.6sec
金型温度:30℃
【0075】
<耐デラミネーション性>
ASTM D2463-95Bに準じた測定方法に基づき実施した。実施例及び比較例の多層ボトルに水を500g充填し、キャップをした後、1日間、23℃50%RHの環境下にて保存し、その後、1mの高さより落下試験を実施し、ボトル底部にデラミネーションが発生した回数(ポリエステル系樹脂層とポリグリコール酸系樹脂層が剥離するまでの試験回数)を測定し、耐デラミネーション性を下記の基準で評価した。
A:剥離するまでの試験回数が40回以上
B:剥離するまでの試験回数が20回以上40回未満
C:剥離するまでの試験回数が20回未満
【0076】
実施例1
<プリフォームの製造>
ポリエステル系樹脂層用の樹脂としてPET(BK2180)、ポリグリコール酸系樹脂層用の樹脂としてPGA1を、インジェクションブロー成形機のホッパーに投入し、多層ホットランナー金型を使用して、以下に示した条件で、射出して、キャビティーを満たすことにより、ポリエステル系樹脂層/ポリグリコール酸系樹脂層/ポリエステル系樹脂層の3層構造を有するプリフォーム(25g)を得た。各層の厚さは5:1:5となるように調整した。プリフォームの形状は、全長92mm、外形22mm、肉厚3.9mmであった。
スキン側射出シリンダー温度:285℃
コア側射出シリンダー温度:250℃
金型内樹脂流路温度:290℃
金型冷却水温度:15℃
【0077】
<プリフォームの水分率調整>
得られたプリフォームを23℃50%RH環境にて、14日間保管した。
【0078】
<多層ボトルの製造>
上記の製造方法にて作製したプリフォームを用いて、多層ボトルを成形した。
具体的には、得られたプリフォームを、二軸延伸ブロー成形装置(株式会社フロンティア製、型式EFB1000ET)により二軸延伸ブロー成形してペタロイド型多層ボトル(3層構造)を得た。ボトルの全長は223mm、外径は65mm、内容積は500mL(表面積:0.04m、胴部平均厚さ:0.35mm)であり、底部はペタロイド形状である。胴部にディンプルは設けなかった。二軸延伸ブロー成形条件は以下に示した通りである。なお、得られた多層ボトルの首部付近、及び底部は、ポリエステル系樹脂層のみから形成されていた。
このようにして得られた多層ボトルに対して、前記の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
プリフォーム加熱温度:100℃
一次ブロー圧力:0.9MPa
二次ブロー圧力:2.5MPa
一次ブロー遅延時間:0.30sec
一次ブロー時間:0.30sec
二次ブロー時間:2.0sec
ブロー排気時間:0.6sec
金型温度:30℃
【0079】
実施例2
PGA1をPGA2に変更した以外は、実施例1と同様にして多層ボトルを成形した。得られた多層ボトルに対して、前記の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0080】
実施例3
PGA1をPGA3に変更し、多層ボトル製造時の二軸延伸ブロー成形条件のうち、プリフォーム加熱温度を98℃とした以外は、実施例1と同様にして多層ボトルを成形した。得られた多層ボトルに対して、前記の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
実施例4
PGA1をPGA4に変更し、多層ボトル製造時の二軸延伸ブロー成形条件のうち、プリフォーム加熱温度を98℃とした以外は、実施例1と同様にして多層ボトルを成形した。得られた多層ボトルに対して、前記の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0082】
実施例5
<プリフォームの製造>
ポリグリコール酸系樹脂層用に、PGA2及びポリアミド樹脂(MXD6)を質量比(PGA2/MXD6)が70/30となるようにタンブラーに入れ、ドライブレンドした。ポリエステル系樹脂層用の樹脂としてはPET(BK2180)を用いた。各層の材料を実施例1と同様にしてプリフォーム(25g)を得た。各層の厚さ及びプリフォームの形状も実施例1と同様である。
<プリフォームの水分率調整>
得られたプリフォームを23℃50%RH環境にて、14日間保管し、プリフォームの水分率を13,000ppmに調整した。
【0083】
<多層ボトルの製造>
上記の製造方法にて作製したプリフォームを用いて、実施例1と同様にしてボトルを成形した。
このようにして得られた多層ボトルに対して、前記の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
実施例6
PGA2をPGA5に変更した以外は、実施例5と同様にして多層ボトルを成形した。得られた多層ボトルに対して、前記の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0085】
比較例1
PGA1をPGA6に変更し、多層ボトル製造時の二軸延伸ブロー成形条件のうち、一次ブロー圧力を0.6MPaとし、プリフォーム加熱温度を96℃とした以外は、実施例1と同様にして多層ボトルを成形した。得られた多層ボトルに対して、前記の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
比較例2
PGA1をPGA7に変更し、プリフォームの水分率調整の期間を14日間から28日間に変更し、多層ボトル製造時の二軸延伸ブロー成形条件のうち、一次ブロー圧力を0.6MPaとし、プリフォーム加熱温度を96℃とした以外は、実施例1と同様にして多層ボトルを成形した。得られた多層ボトルに対して、前記の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
表1に示すように、本発明の要件を満たす実施例1~6では、ブロー成形性に優れ、更に耐デラミネーション性にも優れる多層容器が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明によれば、成形性に優れ、耐デラミネーション性にも優れる多層容器が得られる。そのため、特に、飲料、液体調味料、液体化学品等を収容する容器として好適に使用できる。
【符号の説明】
【0090】
1 プリフォーム
2 赤外線ヒータ
3 金型
4 延伸ロッド
5 多層容器
図1