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特許7528760非同期型通信システム、マスタ制御装置及びスレーブ制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】非同期型通信システム、マスタ制御装置及びスレーブ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/28 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
H04L12/28 200Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020204301
(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公開番号】P2022091456
(43)【公開日】2022-06-21
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】郷古 倫央
(72)【発明者】
【氏名】谷口 敏尚
(72)【発明者】
【氏名】岡本 圭司
(72)【発明者】
【氏名】井村 友弘
【審査官】羽岡 さやか
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-085222(JP,A)
【文献】米国特許第05159684(US,A)
【文献】特開2008-118342(JP,A)
【文献】特表2006-516073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/00-69/40
H04L 25/00-25/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタ制御装置(2,22)とスレーブ制御装置(3,23)との間で情報を通信する非同期型通信システム(1,21)であって、
前記マスタ制御装置は、
複数の信号うち一つの信号のオンオフを他信号と重複しないタイミングで切り替えるマスタ側信号切り替え部(6a,27a)と、
一つの信号のオンオフが前記マスタ側信号切り替え部により切り替られる毎に前記スレーブ制御装置からのエコーバックを条件として次の信号のオンオフが前記マスタ側信号切り替え部により切り替えられることで複数の信号のオンオフの配列が互いに異なる複数の信号パターンを生成するマスタ側信号パターン生成部(6b,27b)と、
前記マスタ側信号パターン生成部により生成された複数の信号パターンの並びを前記スレーブ制御装置に送信するマスタ側情報送信部(8,29)と、を備え、
前記スレーブ制御装置は、
複数の信号うち一つの信号のオンオフを他信号と重複しないタイミングで切り替えるスレーブ側信号切り替え部(10a,31a)と、
一つの信号のオンオフが前記スレーブ側信号切り替え部により切り替られる毎に前記マスタ制御装置からのエコーバックを条件として次の信号のオンオフが前記スレーブ側信号切り替え部により切り替えられることで複数の信号のオンオフの配列が互いに異なる複数の信号パターンを生成するスレーブ側信号パターン生成部(10b,31b)と、
前記スレーブ側信号パターン生成部により生成された複数の信号パターンの並びを前記マスタ制御装置に送信するスレーブ側情報送信部(12,33)と、を備える非同期型通信システム。
【請求項2】
前記マスタ制御装置と前記スレーブ制御装置とが1対1の関係に設けられている請求項1に記載した非同期型通信システム。
【請求項3】
前記マスタ制御装置と前記スレーブ制御装置とが1対複数の関係に設けられ
前記マスタ制御装置は、
前記複数のスレーブ制御装置の中から通信相手を選択する通信相手選択部(27c)を備え、
前記マスタ側情報送信部は、前記通信相手選択部により通信相手として選択されたスレーブ制御装置に情報を送信する請求項1に記載した非同期型通信システム。
【請求項4】
非同期型通信システムで用いられ、スレーブ制御装置との間で情報を通信するマスタ制御装置(2,22)であって、
複数の信号うち一つの信号のオンオフを他の信号と重複しないタイミングで切り替えるマスタ側信号切り替え部(6a,27a)と、
一つの信号のオンオフが前記マスタ側信号切り替え部により切り替られる毎に前記スレーブ制御装置からのエコーバックを条件として次の信号のオンオフが前記マスタ側信号切り替え部により切り替えられることで複数の信号のオンオフの配列が互いに異なる複数の信号パターンを生成するマスタ側信号パターン生成部(6b,27b)と、
前記マスタ側信号パターン生成部により生成された複数の信号パターンの並びを前記スレーブ制御装置に送信するマスタ側情報送信部(8,29)と、を備えるマスタ制御装置
【請求項5】
非同期型通信システムで用いられ、マスタ制御装置との間で情報を通信するスレーブ制御装置(3,23)であって、
複数の信号うち一つの信号のオンオフを他信号と重複しないタイミングで切り替えるスレーブ信号切り替え部(10a,31a)と、
一つの信号のオンオフが前記スレーブ信号切り替え部により切り替られる毎に前記マスタ制御装置からのエコーバックを条件として次の信号のオンオフが前記スレーブ信号切り替え部により切り替えられることで複数の信号のオンオフの配列が互いに異なる複数の信号パターンを生成するスレーブ側信号パターン生成部(10b,31b)と、
前記スレーブ側信号パターン生成部により生成された複数の信号パターンの並びを前記マスタ制御装置に送信するスレーブ側情報送信部(12,33)と、を備えるスレーブ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非同期型通信システム、マスタ制御装置及びスレーブ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生産設備の電子制御として一般的にプログラマブルロジックコントローラ(以下、PLC(Programmable Logic Controller)と称する)が用いられている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-221904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の設備間で動作タイミング信号やインタロック信号を通信する際には、PLCの入出力ユニット(以下、IOユニットと称する)同士が接続され、信号のオンオフを切換えて情報を通信する。その際に、検査工程の結果やワーク品番の品番情報等の情報量が比較的多い情報を通信する場合がある。情報量が比較的多い情報を通信するために複数の出力ポート及び入力ポートを用意し、例えば8ビットで「0」~「255」の数値を通信する方法がある。ところが、この方法では、情報量に応じて多くの出力ポート及び入力ポートを必要とし、配線数も多くなり、作業工数や配線空間の確保といったコストアップが問題になる。
【0005】
又、デバイスネットやイーサネットのシリアル通信を使用する方法も一般的ではあるが、この方法では、専用のユニット及び配線を必要とするので、これもコストアップの要因になると共に、後付けの改造が必要になる。そもそもワーク品番の品番情報程度の情報量を通信するだけであれば10[bps]の通信速度で十分であり、一般的なシリアル通信は性能が過剰である。
【0006】
更に、通常の通信インタフェースを使用してシリアル通信を行う方法がある。例えば一般的に知られているI2C(Inter-Integrated Circuit)やSPI(Serial Peripheral Interface)等の2~3ビットを使用したシリアル通信規格を使用する方法がある。しかしながら、PLCの出力ポート及び入力ポートは、電磁バルブやパイロットランプ等の数10[mA]の電流を必要とする機器を動作させる前提であり、高電圧且つ高電流に対応可能なリレーが設けられている。このような高電圧且つ高電流に対応可能なリレーは通信用リレーに比べると、動作や応答速度が遅く、リレー開閉時間にバラつきがあると共に、チャタリングが発生し易い。そのため、一般のシリアル通信のように、既定の周波数に同期して信号のオンオフが切り替わり、チャタリングが殆ど発生しないことを前提とした通信は難しいという事情がある。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、マスタ制御装置とスレーブ制御装置との間で情報を通信する構成において、安定した非同期通信を適切に行うことができる非同期型通信システム、マスタ制御装置及びスレーブ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載した発明によれば、非同期型通信システム(1)において、マスタ制御装置(2)とスレーブ制御装置(3)との間で情報を通信する。マスタ制御装置は、複数の信号うち一つの信号のオンオフを他信号と重複しないタイミングで切り替えるマスタ側信号切り替え部(6a)と、一つの信号のオンオフがマスタ側信号切り替え部により切り替られる毎にスレーブ制御装置からのエコーバックを条件として次の信号のオンオフがマスタ側信号切り替え部により切り替えられることで複数の信号のオンオフの配列が互いに異なる複数の信号パターンを生成するマスタ側信号パターン生成部(6b)と、マスタ側信号パターン生成部により生成された複数の信号パターンの並びをスレーブ制御装置に送信するマスタ側情報送信部(8)と、を備える。
【0009】
スレーブ制御装置は、複数の信号うち一つの信号のオンオフを他信号と重複しないタイミングで切り替えるスレーブ側信号切り替え部(10a)と、一つの信号のオンオフがスレーブ側信号切り替え部により切り替られる毎にマスタ制御装置からのエコーバックを条件として次の信号のオンオフがスレーブ側信号切り替え部により切り替えられることで複数の信号のオンオフの配列が互いに異なる複数の信号パターンを生成するスレーブ側信号パターン生成部(10b)と、スレーブ側信号パターン生成部により生成された複数の信号パターンの並びをマスタ制御装置に送信するスレーブ側情報送信部(12)と、を備える。
【0010】
マスタ制御装置からスレーブ制御装置に情報を送信する場合には、信号パターンを生成する際に、信号毎にオンオフが切り替わるようにし、一つの信号のオンオフを切り替えた後にスレーブ制御装置からのエコーバックを条件として次の信号のオンオフを切り替えるようにした。又、マスタ制御装置からスレーブ制御装置への情報の送信に対し、スレーブ制御装置からマスタ制御装置に情報を送信する場合にも、信号パターンを生成する際に、信号毎にオンオフが切り替わるようにし、一つの信号のオンオフを切り替えた後にマスタ制御装置からのエコーバックを条件として次の信号のオンオフを切り替えるようにした。チャタリングが発生しても安定して信号を送信すると共に、クロックや周波数に依存しない非同期通信を行うことができる。これにより、安定した非同期通信を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の全体構成を示す図
図2】信号パターン1を示す図
図3】信号パターン2を示す図
図4】マスタ制御装置から送信される信号パターンの並びを示す図
図5】スレーブ制御装置がエコーバックを行う態様を示す図
図6】スレーブ制御装置がエコーバックを行う態様を示す図
図7】スレーブ制御装置から送信される信号パターンの並びを示す図
図8】マスタ制御装置がエコーバックを行う態様を示す図
図9】マスタ制御装置がエコーバックを行う態様を示す図
図10】第2実施形態の全体構成を示す図
図11】通信相手を選択する態様を示す図
図12】信号パターン1を示す図
図13】信号パターン2を示す図
図14】信号パターン3を示す図
図15】信号パターン4を示す図
図16】信号パターン5を示す図
図17】信号パターン6を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、幾つかの実施形態について図面を参照して説明する。以下に示す各実施形態において、先行する実施形態で説明した内容に対応する部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を省略することがある。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態について図1から図9を参照して説明する。図1に示すように、非同期型通信システム1は、マスタ制御装置2とスレーブ制御装置3とを備え、両者が信号通信線4a,4b,5a,5bを介して接続されている。マスタ制御装置2及びスレーブ制御装置3は、それぞれPLCから構成されている。信号通信線4a,5aは、「H」の信号が伝送される伝送路であり、信号通信線4b,5bは、「L」の信号が伝送される伝送路である。マスタ制御装置2とスレーブ制御装置3とは、1対1の関係にある。ここでいうマスタ制御装置2は、最初に通信を開始する制御装置であり、スレーブ制御装置3は、その最初の通信が開始されたことを受けて後から通信を開始する制御装置である。
【0014】
マスタ制御装置2は、制御部6と、IOユニット7とを備える。制御部6は、各種制御を実行するCPU(Central Processing Unit)と、各種制御の実行時にワークエリアとして使用されるRAM(Random Access Memory)と、各種制御を実行するための制御プログラムや各種設定データ等が格納されているROM(Read On Memory)と、IOユニット7との通信制御を行うI/O(Input/Output)とを有するマイクロコンピュータにより構成されている。制御部6は、各種制御を実行し、マスタ制御装置2の動作全般を制御する。
【0015】
IOユニット7は、電磁バルブやパイロットランプ等に駆動信号を送信したり近接センサや光電管等の設備用センサからセンサ信号を受信したりする一般的な設備用IOユニットであり、出力ポート8と入力ポート9とを有する。出力ポート8及び入力ポート9は、それぞれポート数が「2」であり、例えば60V1Aの電気信号に耐え得る高電圧且つ高電流に対応可能なリレーが設けられている。高電圧且つ高電流に対応可能なリレーは、通信用リレーに比べると、動作や応答速度が遅く、リレー開閉時間にバラつきがあると共に、チャタリングが発生し易い。尚、出力ポート8は、スレーブ制御装置3に信号を送信するポートとして機能するポートであり、マスタ側情報送信部に相当する。入力ポート9は、スレーブ制御装置3から信号を受信するポートとして機能するポートである。
【0016】
スレーブ制御装置3は、マスタ制御装置2と同等の構成であり、制御部10と、IOユニット11とを備える。制御部10は、各種制御を実行するCPUと、各種制御の実行時にワークエリアとして使用されるRAMと、各種制御を実行するための制御プログラムや各種設定データ等が格納されているROMと、IOユニット11との通信制御を行うI/Oとを有するマイクロコンピュータにより構成されている。制御部10は、各種制御を実行し、スレーブ制御装置3の動作全般を制御する。
【0017】
IOユニット11は、マスタ制御装置2のIOユニット7と同等の構成であり、電磁バルブやパイロットランプ等に駆動信号を送信したり近接センサや光電管等の設備用センサからセンサ信号を受信したりする一般的な設備用IOユニットであり、出力ポート12と入力ポート13とを有する。出力ポート12及び入力ポート13は、それぞれポート数が「2」であり、マスタ制御装置2の出力ポート8及び入力ポート9と同等の構成であり、例えば60V1Aの電気信号に耐え得る高電圧且つ高電流に対応可能なリレーが設けられている。尚、出力ポート12は、マスタ制御装置2に信号を送信するポートとして機能する送信ポートであり、スレーブ側情報送信部に相当する。入力ポート13は、マスタ制御装置2から信号を受信する受信ポートとして機能するポートである。
【0018】
マスタ制御装置2とスレーブ制御装置3との間の配線は、マスタ制御装置2の出力ポート8がそれぞれ信号通信線4a,4bを介してスレーブ制御装置3の入力ポート13に接続され、スレーブ制御装置3の出力ポート12がそれぞれ信号通信線5a,5bを介してマスタ制御装置2の入力ポート9に接続されている。即ち、マスタ制御装置2の出力ポート8から送信された信号は、それぞれ信号通信線4a,4bを介してスレーブ制御装置3の入力ポート13に受信され、スレーブ制御装置3の出力ポート12から送信された信号は、それぞれ信号通信線5a,5bを介してマスタ制御装置2の入力ポート9に受信される。
【0019】
マスタ制御装置2において、制御部6は、信号切り替え部6aと、信号パターン生成部6bとを備える。信号切り替え部6aは、マスタ側信号切り替え部に相当し、信号パターン生成部6bは、マスタ側信号パターン生成部に相当する。信号切り替え部6aは、出力ポート8からそれぞれ送信する「H」及び「L」の信号のオンオフを信号毎に切り替える。信号パターン生成部6bは、各信号のオンオフが信号切り替え部6aにより切り替えられることで、各信号のオンオフの配列が互いに異なる複数の信号パターンを生成する。本実施形態では、信号パターン生成部6bは、信号パターン1と信号パターン2との2通りの信号パターンを生成する。
【0020】
同様に、スレーブ制御装置3において、制御部10は、信号切り替え部10aと、信号パターン生成部10bとを備える。信号切り替え部10aは、スレーブ側信号切り替え部に相当し、信号パターン生成部10bは、スレーブ側信号パターン生成部に相当する。信号切り替え部10aは、出力ポート12からそれぞれ送信する「H」及び「L」の信号のオンオフを信号毎に切り替える。信号パターン生成部10bは、各信号のオンオフが信号切り替え部10aにより切り替えられることで、各信号のオンオフの配列が互いに異なる複数の信号パターンを生成する。本実施形態では、信号パターン生成部10bは、マスタ制御装置2の信号パターン生成部6bと同様に、信号パターン1と信号パターン2との2通りの信号パターンを生成する。
【0021】
信号パターンについて説明する。信号パターンの種類が増えるほど複雑化して安定性を確保し難くなるので、信号パターンの種類をある程度に抑えることで安定性を確保し易くすることが可能となる。マスタ制御装置2からスレーブ制御装置3に信号を送信する際に、例えば「H」=オフ,「L」=オフの状態から「H」=オン,「L」=オンの状態に切り替わる際に、リレーの動作時間のずれやチャタリングの発生により、切り替わり途中に「H」=オフ,「L」=オンの状態や「H」=オン,「L」=オフの状態が途中状態として瞬間的に出現する可能性がある。
【0022】
このとき、信号の受信側であるスレーブ制御装置3では、例えば「H」=オフ,「L」=オンの状態が、リレーの動作時間のずれやチャタリングの発生に起因するものであるのか、又は正式な信号であるのかを判定不能である。この点に関し、信号の周波数を予め定めておいたり安定時間を設けたりすることで、上記した途中状態を識別しないという方法も想定し得る。しかしながら、上記したように出力ポート8,12及び入力ポート9,13に採用されている電圧・高電流に対応可能なリレーでは、動作や応答速度が遅く、リレー開閉時間にバラつきがあると共に、チャタリングが発生し易い特性があるので、上記した途中状態を識別しないという方法は難しい事情がある。
【0023】
そこで、本実施形態では、信号パターン生成部6b,10bにおいて、上記したように信号パターン1と信号パターン2との2通りの信号パターンを採用し、何れの信号パターンでも「H」及び「L」のうち一方のオンオフが切り替わるタイミングでは他方のオンオフが切り替わらないようにしている。即ち、信号パターン1及び信号パターン2の何れでも信号毎にオンオフが切り替わり、同時に2つの信号のオンオフが切り替わらないようにしている。
【0024】
具体的には、信号パターン1は、図2に示すように、「L」=オフ,「H」=オフの状態から「L」=オン,「H」=オフの状態(t1)、「L」=オン,「H」=オンの状態(t2)、「L」=オフ,「H」=オンの状態(t3)、「L」=オフ,「H」=オフの状態(t4)に順次オンオフが切り替わるパターンである。信号パターン2は、図3に示すように、「L」=オフ,「H」=オフの状態から「L」=オフ,「H」=オンの状態(t1)、「L」=オン,「H」=オンの状態(t2)、「L」=オン,「H」=オフの状態(t3)、「L」=オフ,「H」=オフの状態(t4)に順次オンオフが切り替わるパターンである。
【0025】
この場合、マスタ制御装置2からスレーブ制御装置3に情報を送信する際に、例えば信号パターン1のときに「L」がオフからオンに切り替わるときにある短い間にチャタリングが発生してオンオフが繰り返されても、信号の受信側であるスレーブ制御装置3では、次に「H」がオフからオンに切り替わるまで「L」がオンからオフに切り替わらないことを認識しているので、チャタリング中であることを認識することができる。この方法により、チャタリングが発生しても安定して信号を送信することができる。
【0026】
マスタ制御装置2は、上記した2通りの信号パターン1,2の並びを出力ポート8から送信することで、その信号パターンの並びから特定される情報をスレーブ制御装置3に送信する。具体的には、例えばワーク品番の品番情報「156」を送信する場合を例示する。10進数である「156」は2進数に変換すると「10011100」である。この場合、マスタ制御装置2は、2通りの信号パターン1,2を用い、例えば信号パターン1を「0」に対応させ、信号パターン2を「1」に対応させると、2進数の「10011100」を、図4に示すように、信号パターン2,1,1,2,2,2,1,1の並びとしてスレーブ制御装置3に送信する。マスタ制御装置2からスレーブ制御装置3に送信する信号パターンの数を予めマスタ制御装置2とスレーブ制御装置3との間で定めておけば、スレーブ制御装置3は、最終の信号パターンを受信したことで、マスタ制御装置2からの品番情報の送信完了を判定することができる。上記した例示では、マスタ制御装置2からスレーブ制御装置3に送信する信号パターンの数を「8」と定めておけば、スレーブ制御装置3は、8個目の信号パターンを受信したことで、マスタ制御装置2からの品番情報の送信完了を判定することができる。
【0027】
又、マスタ制御装置2は、スレーブ制御装置3がエコーバックを行うことを受け、「H」又は「L」のオンオフを切り替え、信号パターンをスレーブ制御装置3に送信する。即ち、スレーブ制御装置3は、マスタ制御装置2から受信する「H」又は「L」のオンオフの切り替えを判定する毎に、マスタ制御装置2に送信する「H」又は「L」のオンオフを切り替え、エコーバックを行う。
【0028】
スレーブ制御装置3は、マスタ制御装置2から信号パターン1を受信する際には、図5に示すように、マスタ制御装置2から受信する「L」がオフからオンに切り替わると(t11)、マスタ制御装置2に送信する「L」をオフからオンに切り替え、エコーバックを行う(t12)。マスタ制御装置2は、スレーブ制御装置3から受信する「L」がオフからオンに切り替わったことを確認してから次の「H」をオフからオンに切り替える(t13)。これ以降、同様に、スレーブ制御装置3は、マスタ制御装置2から受信する「H」又は「L」のオンオフが切り替わると、マスタ制御装置2に送信する「H」又は「L」のオンオフを切り替え、エコーバックを行う(t14,t16,t18)。マスタ制御装置2は、スレーブ制御装置3から受信する「H」又は「L」のオンオフが切り替わったことを確認してから次の「H」又は「L」のオンオフを切り替える(t15,t17)。マスタ制御装置2は、スレーブ制御装置3から受信する「H」及び「L」の両方がオフであることを確認して信号パターン1の送信を完了する。スレーブ制御装置3は、マスタ制御装置2から信号パターン2を受信する際にも同様であり、図6に示すように、エコーバックを行う。スレーブ制御装置3がエコーバックを行うことで、クロックや周波数に依存しない非同期通信を行うことができる。
【0029】
スレーブ制御装置3は、マスタ制御装置2から送信された2通りの信号パターン1,2の並びを受信し、その2通りの信号パターンの並びから特定される情報を受信すると、その情報を間違いなく受信完了したことをチェックするために同じ内容の情報をマスタ制御装置2に返信する。上記した図4に示したように、マスタ制御装置2が例えばワーク品番の品番情報「156」を2進数の「10011100」として「信号パターン2,1,1,2,2,2,1,1」の並びをスレーブ制御装置3に送信する場合であれば、スレーブ制御装置3は、図7に示すように、同じ内容の情報である「信号パターン2,1,1,2,2,2,1,1」の並びをマスタ制御装置2に返信する。この場合、マスタ制御装置2とスレーブ制御装置3とでは役割が入れ替わるだけであり、通信方法は、上記したマスタ制御装置2が「信号パターン2,1,1,2,2,2,1,1」の並びをスレーブ制御装置3に送信する場合と同じである。又、マスタ制御装置2は、図8及び図9に示すように、スレーブ制御装置3から受信する「H」又は「L」のオンオフの切り替えを判定する毎に、スレーブ制御装置3に送信する「H」又は「L」のオンオフを切り替え、エコーバックを行う(t21~t28)。
【0030】
又、マスタ制御装置2は、信号パターンをスレーブ制御装置3に送信する際に、スレーブ制御装置3からのエコーバックを予め定められている所定時間確認することができなければ、通信エラーが発生したと判定し、「H」及び「L」の両方をオフにした状態を予め定められている所定時間継続した後に、信号パターンの送信を最初からリトライする。このとき、スレーブ制御装置3は、「H」及び「L」の両方がオフにされた状態が所定時間継続すれば、通信エラーが発生したと判定し、信号パターンの受信を最初からリトライする。
【0031】
スレーブ制御装置3が信号パターンをマスタ制御装置2に送信する場合も同様である。スレーブ制御装置3は、信号パターンをマスタ制御装置2に送信する際に、マスタ制御装置2からのエコーバックを予め定められている所定時間確認することができなければ、通信エラーが発生したと判定し、「H」及び「L」の両方をオフにした状態を予め定められている所定時間継続した後に、信号パターンの送信を最初からリトライする。このとき、マスタ制御装置2は、「H」及び「L」の両方がオフにされた状態が所定時間継続すれば、通信エラーが発生したと判定し、信号パターンの受信を最初からリトライする。信号パターンを送信する側が通信エラーの発生を判定するための所定時間と、信号パターンを受信する側が通信エラーの発生を判定するための所定時間とは同じであっても良いし異なっていても良い。
【0032】
以上に説明したように、マスタ制御装置2は、先に通信を開始し、スレーブ制御装置3は、マスタ制御装置2が通信を開始したことを受けて後から通信を開始する。マスタ制御装置2とスレーブ制御装置3との間で通信する情報は、上記したワーク品番の品番情報に限らず、どのような情報であっても良い。例えばマスタ制御装置2が命令コマンドをスレーブ制御装置3に送信し、スレーブ制御装置3が命令コマンドに対する処理の実行結果をスレーブ制御装置3に送信しても良い。例えばマスタ制御装置2が要求コマンドをスレーブ制御装置3に送信し、スレーブ制御装置3が要求コマンドにより要求された応答情報をスレーブ制御装置3に送信しても良い。
【0033】
ここで、通信速度について説明する。マスタ制御装置2及びスレーブ制御装置3における信号のオンオフの切り替え速度は0.1[ms]程度である。1つの信号パターンを送信するには、4回のオンオフの切り替えが必要になり、エコーバックを合わせると、その倍の8回のオンオフの切り替えが必要になる。上記したようにワーク品番の品番情報を8個の信号パターンで通信する場合には、マスタ制御装置2からスレーブ制御装置3への送信開始から送信完了までを8個の信号パターンで行い、スレーブ制御装置3からマスタ制御装置2への返信開始から返信完了までを8個の信号パターンで行うので、128回のオンオフの切り替えが必要になる。即ち、8個の信号パターンから構成される情報を通信するのに12.8[ms]を要する。これは通信速度に換算すると約780[bps]であり、近年のイーサネットの通信速度である1GB[bps]と比較すれば非常に遅い通信速度であるが、設備動作に合わせて次工程に品番情報を送信する用途であれば十分な通信速度である。
【0034】
以上に説明したように第1実施形態によれば、次に示す作用効果を得ることができる。
非同期型通信システム1において、マスタ制御装置2は、「H」及び「L」の2つの信号のオンオフを信号毎に他の信号と重複しないタイミングで切り替え、「H」及び「L」のうち一方の信号のオンオフを切り替える毎にスレーブ制御装置3からのエコーバックを条件として次の他方の信号のオンオフを切り替えることで2つの信号のオンオフの配列が互いに異なる信号パターン1,2を生成し、その生成した信号パターン1,2の並びをスレーブ制御装置3に送信する。スレーブ制御装置3は、「H」及び「L」の2つの信号のオンオフを信号毎に他の信号と重複しないタイミングで切り替え、「H」及び「L」のうち一方の信号のオンオフを切り替える毎にマスタ制御装置3からのエコーバックを条件として次の他方の信号のオンオフを切り替えることで2つの信号のオンオフの配列が互いに異なる信号パターン1,2を生成し、その生成した信号パターン1,2の並びをマスタ制御装置2に送信する。
【0035】
マスタ制御装置2からスレーブ制御装置3に情報を送信する場合には、信号パターンを生成する際に、信号毎にオンオフが切り替わるようにし、一方の信号のオンオフを切り替えた後にスレーブ制御装置3からのエコーバックを条件として次の他方の信号のオンオフを切り替えるようにした。スレーブ制御装置3からマスタ制御装置2に情報を送信する場合にも、信号パターンを生成する際に、信号毎にオンオフが切り替わるようにし、一方の信号のオンオフを切り替えた後にマスタ制御装置2からのエコーバックを条件として次の他方の信号のオンオフを切り替えるようにした。チャタリングが発生しても安定して信号を送信すると共に、クロックや周波数に依存しない非同期通信を行うことができる。これにより、安定した非同期通信を適切に行うことができる
【0036】
又、通信速度が低速であるが、チャタリングや遅延に影響され難く、信号のオンオフの切り替え速度に影響され難いので、マイコンチップから一般的な設備用制御装置のIOユニットまで幅広く適用することができる。又、常にエコーバックしながら通信を行うので、通信相手の切り替え速度が極端に違っても通信を行うことができ、例えばマイコンとPLCとの間の通信等の全く異なる機種同士でも通信を行うことができる。
【0037】
又、情報を送信する方法としては上記した方法に限定されることはなく、例えば送り文字コードを送信する際に、マスタ制御装置2において、1文字を8ビットのアスキー番号に変換してビット列を送信し、スレーブ制御装置3において、マスタ制御装置2から受信したビット列を8ビット毎に文字に変換し、その変換した文字が予め定められた末尾コード(NULLや改行等)のときにマスタ制御装置2からの送信完了を判定しても良い。その後、スレーブ制御装置3において、マスタ制御装置2から送信された情報と同じ内容の情報をマスタ制御装置2に返信しても良い。
【0038】
(第2実施形態)
第2実施形態について図10から図を参照して説明する。第1実施形態は、マスタ制御装置とスレーブ制御装置3とが1対1の関係であるが、第2実施形態は、マスタ制御装置とスレーブ制御装置とが1対複数の関係である。
【0039】
図10に示すように、非同期型通信システム21は、マスタ制御装置22と複数のスレーブ制御装置23とを備え、両者が信号通信線24a,24b,25a,25b及び通信相手選択線26を介して接続されている。信号通信線24a,25aは、「H」の信号が伝送される伝送路であり、信号通信線24b,25bは、「L」の信号が伝送される伝送路であり、通信相手選択線26は、「CS」の信号が伝送される伝送路である。複数のスレーブ制御装置23は、並列の関係にあり、マスタ制御装置22は、複数のスレーブ制御装置23の中から何れかを択一的に通信相手として選択し、その通信相手として選択したスレーブ制御装置23との間で上記した第1実施形態で説明したように情報を通信する。
【0040】
マスタ制御装置22は、制御部27と、IOユニット28とを備える。IOユニット28は、出力ポート29と入力ポート30とを有する。出力ポート29は、第1実施形態で説明した出力ポート8とは異なり、ポート数が「3」であり、そのうちの2個のポートは第1実施形態で説明した「H」及び「L」の信号を送信するポートであり、1個のポートは通信相手を選択するための「CS」の信号を送信するポートである。入力ポート33は、第1実施形態で説明した入力ポート9と同等の構成である。
【0041】
スレーブ制御装置23は、制御部31と、IOユニット32とを備える。IOユニット32は、出力ポート33と入力ポート34とを有する。出力ポート33は、第1実施形態で説明した出力ポート12と同等の構成である。入力ポート34は、第1実施形態で説明した入力ポート13とは異なり、ポート数が「3」であり、そのうちの2個のポートは第1実施形態で説明した「H」及び「L」の信号を受信するポートであり、1個のポートは通信相手を選択するための「CS」の信号を受信するポートである。
【0042】
マスタ制御装置22において、制御部27は、信号切り替え部27aと、信号パターン生成部27bと、通信相手選択部27cとを備える。信号切り替え部27a及び信号パターン生成部27bは、それぞれ第1実施形態で説明した信号切り替え部6a及び信号パターン生成部6bと同等の構成である。通信相手選択部27cは、複数のスレーブ制御装置23の中から通信相手を選択する。
【0043】
スレーブ制御装置23において、制御部31は、信号切り替え部31aと、信号パターン生成部31bとを備える。信号切り替え部31a及び信号パターン生成部31bは、それぞれ第1実施形態で説明した信号切り替え部10a及び信号パターン生成部10bと同等の構成である。
【0044】
マスタ制御装置22は、以下の手順により、複数のスレーブ制御装置23の中から通信相手を択一的に選択する。ここでは、図11に示すように、マスタ制御装置22とスレーブ制御装置23とが1対4の関係の場合を例示して説明する。尚、4個のスレーブ制御装置23を第1~第4スレーブ制御装置23と称する。
【0045】
マスタ制御装置22は、例えば第3スレーブ制御装置23を通信相手として選択する場合には、1回目の(最初の)送信として予め定められている通信パターン1を第1~第4スレーブ制御装置23に送信する。1回目の通信パターン1の送信は、「第1スレーブ制御装置23は通信相手ではない」という意味を持つ送信であり、第1スレーブ制御装置23は、マスタ制御装置22から1回目の通信パターン1を受信すると、エコーバックを行う。一方、第2~第4スレーブ制御装置23は、マスタ制御装置22から1回目の通信パターン1を受信すると、その通信パターン1の受信を確信するだけであり、エコーバックを行わない。
【0046】
マスタ制御装置22は、第1スレーブ制御装置23がエコーバックを行ったことを受け、2回目の送信として同じく通信パターン1を第1~第4スレーブ制御装置23に送信する。2回目の通信パターン1の送信は、「第2スレーブ制御装置23は通信相手ではない」という意味を持つ送信であり、第2スレーブ制御装置23は、マスタ制御装置22から2回目の通信パターン1を受信すると、エコーバックを行う。一方、第1,第3,第4スレーブ制御装置23は、マスタ制御装置22から2回目の通信パターン1を受信すると、その通信パターン1の受信を確信するだけであり、エコーバックを行わない。
【0047】
マスタ制御装置22は、第2スレーブ制御装置23がエコーバックを行ったことを受け、3回目の送信として通信パターン1とは異なる通信パターン2を第1~第4スレーブ制御装置23に送信する。通信パターン2の送信は、「第3スレーブ制御装置23は通信相手である」という意味を持つ送信であり、第3スレーブ制御装置23は、マスタ制御装置22から通信パターン2を受信すると、エコーバックを行う。一方、第1,第2,第4スレーブ制御装置23は、マスタ制御装置22から通信パターン2を受信すると、その通信パターン2の受信を確信するだけであり、エコーバックを行わない。
【0048】
マスタ制御装置22は、第3スレーブ制御装置23がエコーバックを行ったことを受け、4回目の(最後の)送信として再び通信パターン1を第1~第4スレーブ制御装置23に送信する。3回目の通信パターン1の送信は、「第4スレーブ制御装置23は通信相手ではない」という意味を持つ送信であり、第4スレーブ制御装置23は、マスタ制御装置22から3回目の通信パターン1を受信すると、エコーバックを行う。一方、第1~第3スレーブ制御装置23は、マスタ制御装置22から3回目の通信パターン1を受信すると、その通信パターン1の受信を確信するだけであり、エコーバックを行わない。
【0049】
マスタ制御装置22は、第4スレーブ制御装置23がエコーバックを行ったことを受け、全てのスレーブ制御装置23に対する通信相手であるか否かの確認を完了し、「CS」をオフからオンに切り替える。「CS」がオフからオンに切り替わると、第3スレーブ制御装置23は、これからマスタ制御装置22との間で通信を開始することを認識し、第1,第2,第4スレーブ制御装置23は、「CS」がオンからオフに切り替わるまでマスタ制御装置22から受信する信号を無視する。
【0050】
マスタ制御装置22は、「CS」をオフからオンに切り替えると、その通信相手として選択した第3スレーブ制御装置との間で第1実施形態で説明したように情報を通信する。即ち、マスタ制御装置22は、信号パターンの並びを第3スレーブ制御装置23に送信し、その後、第3スレーブ制御装置23は、マスタ制御装置22から送信された情報と同じ内容の情報をマスタ制御装置22に返信する。マスタ制御装置22は、第3スレーブ制御装置23からの情報の受信完了を認識すると、「CS」をオンからオフに切り替え、次の情報の送信開始を待機する。
【0051】
尚、上記した構成では、予めスレーブ制御装置23に固有の装置識別情報が付与されている必要があり、マスタ制御装置22がスレーブ制御装置23の台数を設定しておく必要があるが、スレーブ制御装置23からのエコーバックの有無を判定し、スレーブ制御装置23からのエコーバックがないと判定し、それ以上の台数が存在しないと判定することで、スレーブ制御装置23の台数を認識しても良い。図11の例示では、マスタ制御装置22が5回目の送信として4回目の通信パターン1を第1~第4スレーブ制御装置23に送信しても、第1~第4スレーブ制御装置23の何れもエコーバックを行わないので、マスタ制御装置22は、スレーブ制御装置23が4台であると認識することができる。
【0052】
又、マスタ制御装置22は、信号パターンを通信相手として選択しているスレーブ制御装置23に送信する際に、スレーブ制御装置23からのエコーバックを予め定められている所定時間確認することができず、通信エラーが発生したと判定すると、「CS」をオンからオフに切り替え、上記した通信相手を択一的に選択する手順を最初から再開しても良い。
【0053】
以上に説明したように第2実施形態によれば、次に示す作用効果を得ることができる。
非同期型通信システム21において、マスタ制御装置22とスレーブ制御装置23とが1対複数の関係であっても、複数のスレーブ制御装置23の中から通信相手を択一的に選択し、その通信相手として選択したスレーブ制御装置23との間で第1実施形態と同様の通信を行うことで、安定した非同期通信を適切に行うことができる。
【0054】
(その他の実施形態)
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、更には、それらに一要素のみ、それ以上、或いはそれ以下を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0055】
第2実施形態で説明した「CS」と同等の信号を第1実施形態に適用することで、マスタ制御装置とスレーブ制御装置とが1対1の関係である構成においても、マスタ制御装置2において、情報の送信を開始する際に「CS」をオフからオンに切り替え、スレーブ制御装置からの情報の受信完了を認識した際に「CS」をオフからオンに切り替えても良い。
【0056】
出力ポートと入力ポートとを接続する信号通信線を2本とし、2通りの信号パターンを生成する構成を例示したが、出力ポートと入力ポートとを接続する信号通信線を3本以上とし、3通り以上の信号パターンを生成する構成でも良い。例えば出力ポートのポート数を「3」とし、3本の信号通信線で伝送される信号を「H」、「M」、「L」とすると、図12から図17に示すように、6通りの信号パターンを生成することができる。6通りの信号パターンのうち任意の4通りの信号パターンを用いることで、2ビットの信号「00」、「01」、「10」、「11」を送信することができ、上記した2通りの信号パターンを生成する場合と比較すると、情報量を2倍にすることできる。その一方で、1つの信号パターンを送信するのに6回のオンオフの切り替えが必要になり、上記した2通りの信号パターンを生成する場合と比較すると、オンオフの切り替え回数が1.5倍になり、1つの信号パターンを送信するのに要する時間が1.5倍になる。即ち、情報量が2倍に
増える一方でオンオフの切り替え回数も1.5倍に増えるので、結果的に、情報を通信すするのに要する通信時間としては、上記した2通りの信号パターンを生成する場合と比較すると、「2/1.5=1.33…」倍になり、通信速度を高めることができる。この場合も、「H」、「M」、「L」のうち何れか1つの信号がオフからオンに切り替わるときにチャタリングが発生してオンオフが繰り返されても、信号の受信側では、次に当該信号がオフからオンに切り替わるまでオンからオフに切り替わらないことを認識しているので、チャタリング中であることを認識することができる。尚、ポート数が多くなると、上記したように信号パターンの種類が増えることで複雑化して安定性を確保し難くなることが懸念され、加えて、配線線を少なくしてコストを低減するという本来のシリアル通信を採用する目的に反することになるので、システムを運用する上で要求される通信速度やコストが兼ね合うポート数に設計することが望ましい。
【0057】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。或いは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によりプロセッサを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。若しくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路により構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより実現されても良い。又、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていても良い。
【符号の説明】
【0058】
図面中、1,21は非同期型通信システム、2,22はマスタ制御装置、3,23はスレーブ制御装置、4a,4b,5a,5b,24a,24b,25a,25bは信号通信線、26は通信相手選択線、6a,27aはマスタ側信号切り替え部、6b,27bはマスタ側信号パターン生成部、27cは通信相手選択部、8,29はマスタ側情報送信部、10a,31aはスレーブ側信号切り替え部、10b,31bはスレーブ側信号パターン生成部、12,33はスレーブ側情報送信部である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17