(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】車両用冷凍機
(51)【国際特許分類】
F25D 11/00 20060101AFI20240730BHJP
F25B 49/02 20060101ALI20240730BHJP
B60P 3/20 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
F25D11/00 101F
F25B49/02 D
B60P3/20 Z
(21)【出願番号】P 2020207635
(22)【出願日】2020-12-15
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】305062549
【氏名又は名称】ヤマト運輸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 陽
(72)【発明者】
【氏名】大村 源太郎
(72)【発明者】
【氏名】山崎 淳
(72)【発明者】
【氏名】福田 靖
(72)【発明者】
【氏名】上野 公
(72)【発明者】
【氏名】田村 顕久
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-206838(JP,A)
【文献】特開2020-104532(JP,A)
【文献】実開平02-045841(JP,U)
【文献】特開平10-153369(JP,A)
【文献】特開2017-218109(JP,A)
【文献】特開2011-088503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 11/00
F25B 49/02
B60P 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積荷を収納する荷室(2)が運転席(3a)および助手席(3b)に対して車両進行方向後側に配置されている自動車に適用される車両用冷凍機であって、
前記荷室に配置され、前記積荷を収納する保冷室(21)を形成して前記保冷室の内側と外側との間で熱が伝わることを抑える保冷箱(20A、20B)と、
電力を出力するバッテリ(40A、40B)と、
前記荷室に配置され、前記バッテリから出力される前記電力に基づいて前記保冷室内を冷却する冷却機器(30A、30B)と、を備え、
前記バッテリは、車室内(1a)のうち前記助手席に対して車両進行方向前側の床上に配置されて
おり、
前記車室内のうち前記助手席に対して前記車両進行方向前側の前記床上に配置され、前記バッテリを下側から支える台座(50)を備え、
前記バッテリは、所定方向に延びるように形成されており、
前記台座は、前記所定方向が車室内の上下方向に対して傾いた状態で前記バッテリを支えることにより、前記バッテリおよび前記助手席の間に間隔(K1)を形成し、かつ前記バッテリおよびインストルメントパネル(3)の間に間隔(K2)を形成し、
前記バッテリのうち下側端部が前記バッテリのうち上側端部よりも車両進行方向前側に配置されている車両用冷凍機。
【請求項2】
前記自動車は、前記運転席および前記助手席に対して前記車両進行方向後側に配置されて前記荷室の内側と外側との間で前記積荷を移動させるための開口部(4a、4b)と、前記開口部を開閉するドア(5c、5d)とを備え、
前記保冷箱は、前記荷室のうち前記開口部側に配置されている請求項
1に記載の車両用冷凍機。
【請求項3】
前記自動車には、前記保冷箱、前記バッテリ、前記冷却機器以外の他の車載機器(71、72、73、74)に電力を供給するための車載バッテリ(70)が搭載されており、
前記保冷箱、前記バッテリ、前記冷却機器は、前記車載バッテリに対して独立して作動する請求項
1または2に記載の車両用冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用冷凍機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、箱体および箱体の開口部を開閉する蓋体を有する保冷箱と、保冷箱に内蔵され、保冷箱内を冷却する冷却装置を備える冷凍機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
冷却装置は、保冷箱の外から着脱可能なバッテリと、バッテリから供給された電力によって駆動されるコンプレッサを有する冷媒圧縮式のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者等は、上記特許文献1の冷凍機を配送用自動車に適用して冷凍機を効率的に運用することを検討した。
【0006】
本発明者等によれば、上述の如く、冷却装置のバッテリが保冷箱に内蔵されている場合には、バッテリの体格は制限される。このため、バッテリの充電容量が制限されるため、冷却装置を長時間に亘って運転することはできない。したがって、配送用自動車に冷凍機を適用する場合には、保冷箱において十分な時間に亘って積荷を冷却することができなくなる。
【0007】
一方、保冷箱内の積荷を長時間に亘って冷却するために、体格の大きなバッテリを配送用自動車の荷室に配置する場合には、バッテリが荷室において積荷の搭載スペースを占有してしまう。このため、効率的に荷室に積荷を搭載することができなくなる、といった不具合が生じる。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、バッテリが荷室において積荷の搭載スペースを占有することを抑えるようにした車両用冷凍機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車両用冷凍機において、積荷を収納する荷室(1b)が運転席(3a)および助手席(3b)に対して車両進行方向後側に配置されている自動車に適用される車両用冷凍機であって、
荷室に配置され、積荷を収納する保冷室(21)を形成して保冷室の内側と外側との間で熱が伝わることを抑える保冷箱(20A、20B)と、
電力を出力するバッテリ(40A、40B)と、
荷室に配置され、バッテリから出力される電力に基づいて保冷室内を冷却する冷却機器(30A、30B)と、を備え、
バッテリは、車室内(1a)のうち助手席に対して車両進行方向前側の床上に配置されており、
車室内のうち助手席に対して車両進行方向前側の床上に配置され、バッテリを下側から支える台座(50)を備え、
バッテリは、所定方向に延びるように形成されており、
台座は、所定方向が車室内の上下方向に対して傾いた状態でバッテリを支えることにより、バッテリおよび助手席の間に間隔(K1)を形成し、かつバッテリおよびインストルメントパネル(3)の間に間隔(K2)を形成し、
バッテリのうち下側端部がバッテリのうち上側端部よりも車両進行方向前側に配置されている。
【0010】
したがって、バッテリが助手席に対して車両進行方向前側の床上に搭載される。このため、バッテリが荷室において積荷の搭載スペースを占有することを抑えるようにした車両用冷凍機を提供することができる。
【0011】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態における車両用冷凍機が適用された自動車の車室内を天井側から透視した場合における自動車の内部構成を示す図である。
【
図2】上記一実施形態における車両用冷凍機の保冷箱において蓋を開けた状態を示す斜視図である。
【
図3】上記一実施形態においてモバイルバッテリを車室内のうち助手席に対して車両進行方向前側の床上に配置した状態を車両幅方向左側から視た図である。
【
図4】上記一実施形態において台座がクレードルを介してモバイルバッテリを支える状態を示す側面図である。
【
図5】上記一実施形態の車両用冷凍機においてモバイルバッテリおよび冷却機器の電気的接続関係を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
【0014】
本実施形態の車両用冷凍機は、自動車1に適用されるものであって、
図1、
図2に示すように、保冷箱20A、20B、冷却機器30A、30B、およびモバイルバッテリ40A、40Bを備える。車両用冷凍機は、
図3、
図4に示すように、台座50、およびクレードル60を備える。
【0015】
自動車1は、車室内1aのうち運転席3a、助手席3bに対して車両進行方向後側に積荷を搭載するための荷室2が設けられているワゴンタイプの配送用軽自動車である。本実施形態の自動車1では、車両幅方向右側に運転席3aが配置され、車両幅方向左側に助手席3bが配置されている。
【0016】
自動車1のうち車室内1aのうち運転席3a、助手席3bに対して車両進行方向前側には、インストルメントパネル3が配置されている。
【0017】
自動車1には、右側ドア5a、左側ドア5b、右側スライドドア5c、左側スライドドア5d、および後側ドア5eが設けられている。
【0018】
右側ドア5aは、自動車1の右壁6aのうち前方に形成される前方右側開口部を開閉する。左側ドア5bは、自動車1の左壁6bのうち前方に形成される前方左側開口部を開閉する。前方右側開口部および前方左側開口部は、それぞれ、車室内1aから車室外に開口させる開口部である。
【0019】
右側スライドドア5cは、自動車1の右壁6aの後方右側開口部4aを車両進行方向のスライド移動によって開閉する。後方右側開口部4aは、自動車1の右壁6aのうち右側ドア5aに対して後方に形成されている。後方右側開口部4aは、荷室2から車室外に開口させる開口部である。
【0020】
左側スライドドア5dは、自動車1の左壁6bの後方左側開口部4bを車両進行方向のスライド移動によって開閉する。後方左側開口部4bは、自動車1の左壁6bのうち左側ドア5bに対して後方に形成されている。後方左側開口部4bは、荷室2から車室外に開口させる開口部である。
【0021】
後側ドア5eは、右側スライドドア5cおよび左側スライドドア5dに対して車両進行方向後側に配置されている。後側ドア5eは、その回転によって自動車1の後壁の最後部開口部を開閉する。最後部開口部は、荷室2から車室外に開口する開口部である。
【0022】
本実施形態では、保冷箱20A、20Bは、自動車1の荷室2のうち車両進行方向前側に配置されている。保冷箱20A、20Bは、自動車1の荷室2内において車両幅方向に並べられている。
【0023】
保冷箱20Aは、
図1に示すように、荷室2のうち車両幅方向右側に配置されている。具体的には、保冷箱20Aは、荷室2のうち車両幅方向の中心線Tsに対して後方右側開口部4a側に配置されている。保冷箱20Aは、車両幅方向において後方右側開口部4aと重なるように配置されている。
【0024】
具体的には、保冷箱20Aは、積荷を収納する保冷室21を形成して保冷室21の内側と外側との間で熱が伝わることを抑える断熱箱である。保冷箱20Aには、
図2に示すように、保冷室21をその外側に開口させるための蓋部22a、22bが設けられている。
【0025】
蓋部22aは、保冷室21の上側開口部23aを開閉する。蓋部22bは、保冷室21の右側開口部23bを開閉する。上側開口部23aおよび右側開口部23bは、保冷室21から積荷を出したり、保冷室21に積荷を入れたりするために設けられている。保冷室21の右側開口部23bは、右側スライドドア5c、或いは後方右側開口部4aに対向するように形成されている。
【0026】
保冷箱20Bは、荷室2のうち車両幅方向左側に配置されている。具体的には、保冷箱20Bは、荷室2のうち車両幅方向の中心線Tsに対して後方左側開口部4b側に配置されている。保冷箱20Bは、車両幅方向において後方左側開口部4bと重なるように配置されている。
【0027】
具体的には、保冷箱20Bは、積荷を収納する保冷室を形成して保冷室の内側と外側との間で熱が伝わることを抑える断熱箱である。図示を省略するが、保冷箱20Bには、保冷室をその外側に開口させるための第1蓋部および第2蓋部が設けられている。第1蓋部は、保冷室の上側開口部を開閉する。
【0028】
第2蓋部は、保冷室の左側側開口部を開閉する。保冷室の左側側開口部は、左側スライドドア5d或いは後方左側開口部4bに対向するように形成されている。上側開口部および左側側開口部は、保冷室から積荷を出したり、保冷室に積荷を入れたりするために設けられている。荷室2のうち保冷箱20A、20B以外の領域は、常温で積荷を収納する領域を構成することになる。
【0029】
本実施形態では、保冷箱20A、20Bは、それぞれ、持ち運び可能となるように体格、重量が設定されている。
【0030】
冷却機器30Aは、自動車1の荷室2内のうち保冷箱20Aに対して車両進行方向前側に配置されている。冷却機器30Aは、保冷箱20Aの前壁に装着されている。
【0031】
冷却機器30Aは、電動圧縮機、放熱用熱交換器、減圧弁、冷却用熱交換器、第1電動ファン、第2電動ファンを備え、冷媒を循環して保冷箱20Aの保冷室内を冷却する冷凍サイクルを構成する。
【0032】
電動圧縮機は、圧縮機構とこの圧縮機構を駆動する電動モータとを備え、圧縮機構によって冷却用熱交換器から吸入した冷媒を圧縮して高圧冷媒を吐出する。放熱用熱交換器は、電動圧縮機から吐出される高圧冷媒から保冷箱20Aの外側に放熱させる。
【0033】
減圧弁は、放熱用熱交換器からの冷媒を減圧する。冷却用熱交換器は、減圧弁によって減圧された冷媒によって保冷箱20Aの保冷室21内から吸熱させる。第1電動ファンは、放熱用熱交換器を通過する空気流を発生させる。第2電動ファンは、冷却用熱交換器を通過する空気流を発生させる。
【0034】
このように冷却機器30Aは、冷媒を循環させることによって保冷箱20Aの保冷室21内の熱を保冷室21の外側に移動させるによって保冷室21内を冷却することになる。
【0035】
本実施形態の冷却機器30Aおよび保冷箱20Aは、保冷箱20Aの保冷庫内の積荷を凍らない程度の低温で保冷する冷蔵庫25Aを構成する。
【0036】
冷却機器30Bは、自動車1の荷室2内のうち保冷箱20Aに対して車両進行方向前側に配置されている。冷却機器30Bは、保冷箱20Bの前壁に装着されている。
【0037】
冷却機器30Bは、電動圧縮機、放熱用熱交換器、減圧弁、冷却用熱交換器、および第1、第2電動ファン等を備え、冷媒を循環して保冷箱20Bの保冷室内を冷却する冷凍サイクルを構成する。
【0038】
電動圧縮機は、圧縮機構と圧縮機構を駆動する電動モータとを備え、圧縮機構によって冷却用熱交換器から吸入した冷媒を圧縮して高圧冷媒を吐出する。放熱用熱交換器は、電動圧縮機から吐出される高圧冷媒から保冷箱20Bの外側に放熱させる。
【0039】
減圧弁は、放熱用熱交換器からの冷媒を減圧する。冷却用熱交換器は、減圧弁によって減圧された冷媒によって保冷箱20Aの保冷室から吸熱させる。第1電動ファンは、放熱用熱交換器を通過する空気流を発生させる。第2電動ファンは、冷却用熱交換器を通過する空気流を発生させる。
【0040】
このように冷却機器30Bは、冷媒を循環させることによって保冷箱20Bの保冷室内の熱を保冷室の外側に移動させるによって保冷室内を冷却することになる。
【0041】
本実施形態の冷却機器30Bおよび保冷箱20Bは、保冷箱20Bの保冷庫内の積荷を凍らせた状態で保冷する冷凍庫25Bを構成する。
【0042】
モバイルバッテリ40Aは、冷却機器30Aの電動圧縮機の電動モータ、第1、第2電動ファンに電力を供給するための二次電池である。モバイルバッテリ40Bは、冷却機器30Bの電動圧縮機の電動モータ、第1、第2電動ファンに電力を供給するための二次電池である。
【0043】
モバイルバッテリ40A、40Bは、
図3に示すように、車室内1aのうち助手席3bに対して車両進行方向前側の床7の上に配置されている。モバイルバッテリ40A、40Bは、車室内1aのうち車両幅方向の中心線Tsに対して助手席3b側に配置されている。モバイルバッテリ40A、40Bは、車両幅方向に並べられている。
【0044】
本実施形態のモバイルバッテリ40A、40Bは、それぞれ、
図4に示すように、所定方向Stに延びる角柱状に形成されている。モバイルバッテリ40A、40Bは、それぞれ、持ち運び可能となるように体格、重量が設定されている。
【0045】
台座50は、車室内1aのうち助手席3bに対して車両進行方向前側の床7の上に配置されている。台座50は、クレードル60を介してモバイルバッテリ40A、40Bを下側から支える。すなわち、台座50は、モバイルバッテリ40A、40Bを立てた状態でモバイルバッテリ40A、40Bを下側から支える。
【0046】
具体的には、台座50は、モバイルバッテリ40A、40Bの所定方向Stが車室内1aの上下方向に対して傾いた状態でモバイルバッテリ40A、40Bを下側から支える。モバイルバッテリ40A、40Bのうち下側端部がモバイルバッテリ40A、40Bのうち上側端部よりも車両進行方向前側に配置されている。
【0047】
このことにより、台座は、モバイルバッテリ40A、40Bおよび助手席3bの間に間隔K1を形成し、かつモバイルバッテリ40A、40Bおよびインストルメントパネル3の間に間隔K2を形成する。車室内1aの上下方向は、車両幅方向に直交し、かつ車両進行方向に直交する方向である。
【0048】
クレードル60は、台座50によって下側から支えられている。クレードル60は、台座50に対してボルト等の締結部材によって固定されている。クレードル60は、所定方向Stが車室内1aの上下方向に対して傾いた状態でモバイルバッテリ40A、40Bを下側から保持する。
【0049】
本実施形態のクレードル60には、モバイルバッテリ40Aから冷却機器30Aの電動圧縮機の電動モータ、第1、第2電動ファンに電力を供給するための電源ケーブル80aの一端部が接続されている。電源ケーブル80aの他端部が冷却機器30Aに接続されている。
【0050】
さらに、クレードル60には、モバイルバッテリ40Bから冷却機器30Bの電動圧縮機の電動モータ、第1、第2電動ファンに電力を供給するための電源ケーブル80bの一端部が接続されている。電源ケーブル80bの他端部が冷却機器30Bに接続されている。
【0051】
クレードル60には、モバイルバッテリ40Aの正極電極、負極電極と電源ケーブル80aとの間で電力の供給を中継するための中継電極が設けられている。クレードル60には、モバイルバッテリ40Bの正極電極、負極電極と電源ケーブル80bとの間で電力の供給を中継するための中継電極が設けられている。
【0052】
さらに、クレードル60には、モバイルバッテリ40A、40Bに対して着脱可能になるようにモバイルバッテリ40A、40Bに接続する接続部が設けられている。
【0053】
このような保冷箱20A、20B、冷却機器30A、30B、モバイルバッテリ40A、40Bは、自動車のうち他の車載機器71、72、73、74、車載バッテリ70に対して独立して作動する。
【0054】
他の車載機器71、72、73、74は、自動車のうち保冷箱20A、20B、冷却機器30A、30B、モバイルバッテリ40A、40B以外の車載機器である。車載バッテリ70は、他の車載機器71、72、73、74に電力を供給するためのバッテリである。
【0055】
保冷箱20A、20B、冷却機器30A、30B、モバイルバッテリ40A、40Bは、他の車載機器71、72、73、74、車載バッテリ70に対して電源ケーブル、信号線で非接続状態になっている。
【0056】
次に、本実施形態の車両用冷凍機の作動について説明する。
【0057】
まず、冷却機器30Aの電動圧縮機の電動モータは、モバイルバッテリ40Aから電源ケーブル80a、中継電極を通して電力が供給されて、圧縮機構を駆動する。これに伴って、圧縮機構は、冷却用熱交換器から低圧冷媒を吸入して圧縮して高圧冷媒を吐出する。
【0058】
放熱用熱交換器は、高圧冷媒から保冷箱20Aの保冷室21の外側に放熱させる。減圧弁は、放熱用熱交換器からの高圧冷媒を減圧する。冷却用熱交換器は、減圧弁を通過した低圧冷媒によって保冷箱20Aの保冷室21の内側から吸熱させる。
【0059】
このことにより、保冷箱20Aの保冷室21の内部を冷却することができる。冷却用熱交換器を通過した低圧冷媒は圧縮機構に導かれる。
【0060】
また、冷却機器30Bの電動圧縮機の電動モータは、モバイルバッテリ40Bから電源ケーブル80b、中継電極を通して電力が供給されて、圧縮機構を駆動する。これに伴って、圧縮機構は、冷却用熱交換器から低圧冷媒を吸入して圧縮して高圧冷媒を吐出する。
【0061】
放熱用熱交換器は、高圧冷媒から保冷箱20Bの保冷室の外側に放熱させる。減圧弁は、放熱用熱交換器からの高圧冷媒を減圧する。冷却用熱交換器は、減圧弁を通過した低圧冷媒によって保冷箱20Bの保冷室の内側から吸熱させる。
【0062】
このことにより、保冷箱20Bの保冷室の内部を冷却することができる。冷却用熱交換器を通過した低圧冷媒は圧縮機構に導かれる。
【0063】
このように保冷箱20A、20Bのそれぞれの保冷室が冷却することができる。このため、保冷箱20Aでは、保冷室21内に積荷を凍らない程度の低温で保冷することができる。保冷箱20Bでは、保冷室内に積荷を凍らせた状態で保冷することができる。
【0064】
ここで、右側スライドドア5cによって後方右側開口部4aが開けられた状態で、保冷箱20Aでは、作業者が蓋部22aによって上側開口部23aを開け、かつ蓋部22bによって右側開口部23bを開けた状態にする。すると、上側開口部23a、右側開口部23bは、後方右側開口部4aに向けて開口する。
【0065】
このとき、作業者が自動車1の外側から後方右側開口部4a、上側開口部23a、右側開口部23bを通して保冷箱20Aの保冷室21内に積荷を収納することができる。或いは、作業者が保冷箱20Aの保冷室21から上側開口部23a、右側開口部23b、後方右側開口部4aを通して自動車1の外側に積荷を取り出すことができる。
【0066】
一方、作業者が自動車1の外側から後方左側開口部4b、上側開口部、右側開口部を通して保冷箱20Bの保冷室内に積荷を収納することができる。或いは、作業者が保冷箱20Bの保冷室から上側開口部、右側開口部、後方左側開口部4bを通して自動車1の外側に積荷を取り出すことができる。
【0067】
以上説明した本実施形態によれば、車両用冷凍機は、積荷を収納する荷室2が車室内1aのうち運転席3aおよび助手席3bに対して車両進行方向後側に配置されている自動車1に適用される。
【0068】
車両用冷凍機は、荷室2に配置されて積荷を収納する保冷室を形成して保冷室の内側と外側との間で熱が伝わることを抑える保冷箱20A、20Bと、電力を出力するモバイルバッテリ40A、40Bとを備える。
【0069】
車両用冷凍機は、荷室2に配置されて、モバイルバッテリ40A、40Bから出力される電力に基づいて保冷室内を冷却する冷却機器30A、30Bを備える。
【0070】
モバイルバッテリ40A、40Bは、車室内1aのうち助手席3bに対して車両進行方向前側の床7上に配置されている。すなわち、モバイルバッテリ40A、40Bは、車室内1aのうち助手席3bに着座する乗員の足元に配置されている。
【0071】
したがって、荷室2にモバイルバッテリ40A、40Bを搭載しないため、荷室2に効率的に積荷を搭載するようにした車両用冷凍機を提供することができる。
【0072】
上述した本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0073】
(1)車両用冷凍機は、車室内1aのうち助手席3bに対して車両進行方向前側の床7上に配置され、モバイルバッテリ40A、40Bを下側から支える台座50を備える。
【0074】
モバイルバッテリ40A、40Bは、それぞれ、所定方向Stに延びるように形成されている。台座50は、所定方向Stが車室内1aの上下方向に対して傾いた状態でモバイルバッテリ40A、40Bを支える。
【0075】
このことにより、モバイルバッテリ40A、40Bおよび助手席3bの間に間隔K1を形成し、かつモバイルバッテリ40A、40Bおよびインストルメントパネル3の間に間隔K2を形成する。
【0076】
したがって、モバイルバッテリ40A、40Bが助手席3bやインストルメントパネル3に干渉することを抑えることができる。よって、モバイルバッテリ40A、40Bおよび助手席3bの間で摩耗が生じることを抑えることができる。モバイルバッテリ40A、40Bおよびインストルメントパネル3の間で摩耗することを未然に抑えることができる。
【0077】
(2)自動車1は、運転席3aおよび助手席3bに対して車両進行方向後側に配置されて荷室2の内側と外側との間で積荷を移動させるための後方右側開口部4a、後方左側開口部4bを備える。自動車1は、後方右側開口部4aを開閉する右側スライドドア5cと後方左側開口部4bを開閉する左側スライドドア5dとを備える。
【0078】
保冷箱20Aは、荷室2のうち後方右側開口部4a側に配置されている。このため、作業者が自動車1の外側から後方右側開口部4aを通して保冷箱20Aに容易に近づくことができる。
【0079】
すなわち、自動車1の駐車状態によらず、作業者が保冷箱20Aにアクセス可能に構成されている。したがって、作業者が自動車1の外側から保冷箱20Aに積荷を収納したり、作業者が保冷箱20Aから積荷を後方右側開口部4aを通して自動車1の外側に取り出したりすることが容易になる。
【0080】
保冷箱20Bは、荷室2のうち後方左側開口部4b側に配置されている。このため、作業者が自動車1の外側から後方左側開口部4b側を通して保冷箱20Bに容易に近づくことができる。
【0081】
すなわち、自動車1の駐車状態によらず、作業者が保冷箱20Bにアクセス可能に構成されている。したがって、作業者が自動車1の外側から保冷箱20Bに積荷を収納したり、作業者が保冷箱20Bから積荷を後方左側開口部4bを通して自動車1の外側に取り出したりすることが容易になる。
【0082】
(3)自動車1には、保冷箱20A、20B、モバイルバッテリ40A、40B、冷却機器30A、30B以外の他の車載機器71、72、73、74に電力を供給するための車載バッテリ70が搭載されている。保冷箱20A、20B、モバイルバッテリ40A、40B、冷却機器30A、30Bは、車載バッテリ70に対して独立して作動する。
【0083】
したがって、保冷箱20A、20B、モバイルバッテリ40A、40B、冷却機器30A、30Bを自動車1から運び出したり、自動車1に搭載することが容易になる。
【0084】
(他の実施形態)
(1)上記実施形態では、モバイルバッテリ40A、40Bを立てた状態で床上に配置した例について説明したが、これに限らず、所定方向Stが床に沿うようにモバイルバッテリ40A、40Bを床上に配置してもよい。
【0085】
(2)上記実施形態では、運転席3aを車両幅方向右側に配置し、かつ助手席3bを車両幅方向右側に配置した自動車1において車両用冷凍機を適用した例について説明した。しかし、これに代えて、運転席3aを車両幅方向左側に配置し、かつ助手席3bを車両幅方向右側に配置した自動車1において車両用冷凍機を適用してもよい。
【0086】
(3)上記実施形態では、荷室2のうち後方右側開口部4a側に保冷箱20Aを配置し、かつ荷室2のうち後方左側開口部4b側に保冷箱20Bを配置した例について説明した。
【0087】
しかし、荷室2のうち最後部開口部側に保冷箱20A或いは保冷箱20Bを配置してもよい。
【0088】
(4)上記実施形態では、台座50およびモバイルバッテリ40A、40Bの間にクレードル60を配置した例について説明したが、これに代えて、クレードル60を削除して、台座50が直接、モバイルバッテリ40A、40Bを支えるようにしてもよい。
【0089】
(5)上記実施形態では、荷室2に2つの保冷箱20A、20Bを配置した例について説明したが、これに代えて、荷室2に1つの保冷箱、或いは3つ以上の保冷箱を荷室2に配置してもよい。
【0090】
(6)上記実施形態では、持ち運び可能に構成されているモバイルバッテリ40A、40Bを車両用冷凍機のバッテリとした例について説明した。しかし、これに限らず、持ち運び可能に構成されていないバッテリを車両用冷凍機のバッテリとしてもよい。
【0091】
(7)上記実施形態では、持ち運び可能に構成されている保冷箱20A、20Bを車両用冷凍機の保冷箱とした例について説明した。しかし、これに限らず、持ち運び可能に構成されていない保冷箱を車両用冷凍機の保冷箱としてもよい。
【0092】
(8)なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。また、上記実施形態において、センサから自動車の外部環境情報(例えば車外の湿度)を取得することが記載されている場合、そのセンサを廃し、自動車の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報を受信することも可能である。あるいは、そのセンサを廃し、自動車の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報に関連する関連情報を取得し、取得した関連情報からその外部環境情報を推定することも可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 自動車
1b 荷室
3a 運転席
3b 助手席
20A、20B 保冷箱
30A、30B 冷却機器
40A、40B バッテリ
50 台座
60 クレードル