(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】弾性部材、転写装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
F16C 13/00 20060101AFI20240730BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240730BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
F16C13/00 B
G03G15/00 551
G03G15/16 103
(21)【出願番号】P 2020211789
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】落合 誠
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-166732(JP,A)
【文献】特開2010-113131(JP,A)
【文献】特開2016-196539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 13/00-15/00
G03G 13/00-13/02,13/14-13/16,
15/14-15/16,21/16-21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に設けられた単層型の弾性層と、を有し、
前記弾性層の歪み10%における弾性率が0.15MPa以上であり、
前記弾性層の前記基材と反対面側の表面から前記弾性層の前記基材側の表面までの厚さをtとしたとき、前記弾性層の前記基材と反対面側の表面からt/2.125深さ位置までの領域を外表面部とし、前記弾性層の前記基材側の表面からt/2.125深さ位置までの領域を内表面部とした場合における、前記内表面部の弾性率に対する前記外表面部の弾性率の比(外表面部の弾性率/内表面部の弾性率)が0.8以下である弾性部材。
【請求項2】
前記内表面部の弾性率に対する前記外表面部の弾性率の比(外表面部の弾性率/内表面部の弾性率)が0.2以上0.8以下である請求項1に記載の弾性部材。
【請求項3】
前記内表面部の弾性率に対する前記外表面部の弾性率の比(外表面部の弾性率/内表面部の弾性率)が0.4以上0.7以下である請求項2に記載の弾性部材。
【請求項4】
前記内表面部のMD-1硬度と前記外表面部のMD-1硬度との差(内表面部のMD-1硬度-外表面部のMD-1硬度)が2°以上12°以下である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の弾性部材。
【請求項5】
前記内表面部のMD-1硬度と前記外表面部のMD-1硬度との差(内表面部のMD-1硬度-外表面部のMD-1硬度)が4°以上10°以下である請求項4に記載の弾性部材。
【請求項6】
前記弾性層の比重が0.3g/cm
3以上0.8g/cm
3以下である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の弾性部材。
【請求項7】
前記弾性層の前記基材と反対面側の表面から測定したアスカーC硬度が25°以上45°以下である請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の弾性部材。
【請求項8】
基材と、
前記基材上に設けられた単層型の弾性層と、を有し、
前記弾性層の歪み10%における弾性率が0.15MPa以上であり、
前記弾性層の前記基材と反対面側の表面から前記弾性層の前記基材側の表面までの厚さをtとしたとき、前記弾性層の前記基材と反対面側の表面からt/2.125深さ位置までの領域を外表面部とし、前記弾性層の前記基材側の表面からt/2.125深さ位置までの領域を内表面部とした場合における、前記内表面部のMD-1硬度と前記外表面部のMD-1硬度との差(内表面部のMD-1硬度-外表面部のMD-1硬度)が2°以上12°以下である弾性部材。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の弾性部材を、被転写体に転写物を転写させる転写部材として備える転写装置。
【請求項10】
請求項9に記載の転写装置を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項11】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
トナーを含む現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する請求項9に記載の転写装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性部材、転写装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「軸芯体の外周面に導電性弾性体が形成された導電性ローラにおいて、導電性弾性体の電気抵抗が、軸芯体から外側に行くに従い小さくなっていることを特徴とする導電性ローラ」が提案されている。
特許文献2には、「像担持体に担持されたトナー像を情報記録材に転写する画像形成装置において、ローラによりトナー像に電界を作用させることにより転写が行なわれ、該ローラとして、ウレタンスポンジ層により形成された弾性層を有するウレタンスポンジローラであって、該ウレタンスポンジの層構成としてローラの軸近傍の層が、他の層に比してより大きな密度を有するウレタンスポンジローラを用いることを特徴とする画像形成装置」が提案されている。
特許文献3には、「導電性弾性体層が、ミラブルゴム材料を発泡せしめてなる発泡ゴムにて形成されていると共に、該導電性弾性体層の前記軸体側の部位の発泡セルの密度が、該導電性弾性体層の外周面側の部位の発泡セルの密度より高くされ、該軸体側の部位に、平均セル径:70~300μmの発泡セルが、セル密度:55~85個/mm2において形成されている一方、該外周面側の部位に、平均セル径:100~350μmの発泡セルが、セル密度:30~50個/mm2において形成されていることを特徴とする現像ロール」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-195597号公報
【文献】特開2003-215951号公報
【文献】特許第5108561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、基材と、前記基材上に設けられた単層型の弾性層と、を有する弾性部材において、前記弾性層の歪み10%における弾性率が0.15MPa未満である、内表面部の弾性率に対する外表面部の弾性率の比(外表面部の弾性率/内表面部の弾性率)が0.8超過である、又は、内表面部のMD-1硬度と外表面部のMD-1硬度との差(内表面部のMD-1硬度-外表面部のMD-1硬度)が2°未満若しくは12°超過である場合と比較して、被押当部材に対して均一に近いニップの形成が可能であり、かつ、弾性部材を被押当部材に押し当てた状態で維持した後における弾性部材が有する弾性層の歪みが抑制される弾性部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち
<1> 基材と、
前記基材上に設けられた単層型の弾性層と、を有し、
前記弾性層の歪み10%における弾性率が0.15MPa以上であり、
前記弾性層の前記基材と反対面側の表面から前記弾性層の前記基材側の表面までの厚さをtとしたとき、前記弾性層の前記基材と反対面側の表面からt/2.125深さ位置までの領域を外表面部とし、前記弾性層の前記基材側の表面からt/2.125深さ位置までの領域を内表面部とした場合における、前記内表面部の弾性率に対する前記外表面部の弾性率の比(外表面部の弾性率/内表面部の弾性率)が0.8以下である弾性部材。
<2> 前記内表面部の弾性率に対する前記外表面部の弾性率の比(外表面部の弾性率/内表面部の弾性率)が0.2以上0.8以下である前記<1>に記載の弾性部材。
<3> 前記内表面部の弾性率に対する前記外表面部の弾性率の比(外表面部の弾性率/内表面部の弾性率)が0.4以上0.7以下である前記<2>に記載の弾性部材。
<4> 前記内表面部のMD-1硬度と前記外表面部のMD-1硬度との差(内表面部のMD-1硬度-外表面部のMD-1硬度)が2°以上12°以下である前記<1>~<3>のいずれか1つに記載の弾性部材。
<5> 前記内表面部のMD-1硬度と前記外表面部のMD-1硬度との差(内表面部のMD-1硬度-外表面部のMD-1硬度)が4°以上10°以下である前記<4>に記載の弾性部材。
<6> 前記弾性層の比重が0.3g/cm3以上0.8g/cm3以下である前記<1>~<5>のいずれか1つに記載の弾性部材。
<7> 前記弾性層の前記基材と反対面側の表面から測定したアスカーC硬度が25°以上45°以下である前記<1>~<6>のいずれか1つに記載の弾性部材。
<8> 基材と、
前記基材上に設けられた単層型の弾性層と、を有し、
前記弾性層の歪み10%における弾性率が0.15MPa以上であり、
前記弾性層の前記基材と反対面側の表面から前記弾性層の前記基材側の表面までの厚さをtとしたとき、前記弾性層の前記基材と反対面側の表面からt/2.125深さ位置までの領域を外表面部とし、前記弾性層の前記基材側の表面からt/2.125深さ位置までの領域を内表面部とした場合における、前記内表面部のMD-1硬度と前記外表面部のMD-1硬度との差(内表面部のMD-1硬度-外表面部のMD-1硬度)が2°以上12°以下である弾性部材。
<9> 前記<1>~<8>のいずれか1つに記載の弾性部材を、被転写体に転写物を転写させる転写部材として備える転写装置。
<10> 前記<9>に記載の転写装置を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
<11> 像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
トナーを含む現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する前記<9>に記載の転写装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0006】
<1>に係る発明によれば、基材と、前記基材上に設けられた単層型の弾性層と、を有する弾性部材において、前記弾性層の歪み10%における弾性率が0.15MPa未満である、又は内表面部の弾性率に対する外表面部の弾性率の比(外表面部の弾性率/内表面部の弾性率)が0.8超過である場合と比較して、被押当部材に対して均一に近いニップの形成が可能であり、かつ、弾性部材を被押当部材に押し当てた状態で維持した後における弾性部材が有する弾性層の歪みが抑制される弾性部材が提供される。
【0007】
<2>に係る発明によれば、前記内表面部の弾性率に対する前記外表面部の弾性率の比(外表面部の弾性率/内表面部の弾性率)が0.2未満又は0.8超過である場合と比較して、被押当部材に対して均一に近いニップの形成が可能であり、かつ、弾性部材を被押当部材に押し当てた状態で維持した後における弾性部材が有する弾性層の歪みが抑制される弾性部材が提供される。
【0008】
<3>に係る発明によれば、前記内表面部の弾性率に対する前記外表面部の弾性率の比(外表面部の弾性率/内表面部の弾性率)が0.4未満又は0.7超過である場合と比較して、被押当部材に対して均一に近いニップの形成が可能であり、かつ、弾性部材を被押当部材に押し当てた状態で維持した後における弾性部材が有する弾性層の歪みが抑制される弾性部材が提供される。
【0009】
<4>に係る発明によれば、前記内表面部のMD-1硬度と前記外表面部のMD-1硬度との差(内表面部のMD-1硬度-外表面部のMD-1硬度)が2°未満又は12°超過である場合と比較して、被押当部材に対して均一に近いニップの形成が可能であり、かつ、弾性部材を被押当部材に押し当てた状態で維持した後における弾性部材が有する弾性層の歪みが抑制される弾性部材が提供される。
【0010】
<5>に係る発明によれば、前記内表面部のMD-1硬度と前記外表面部のMD-1硬度との差(内表面部のMD-1硬度-外表面部のMD-1硬度)が4°未満又は10°超過である場合と比較して、被押当部材に対して均一に近いニップの形成が可能であり、かつ、弾性部材を被押当部材に押し当てた状態で維持した後における弾性部材が有する弾性層の歪みが抑制される弾性部材が提供される。
【0011】
<6>に係る発明によれば、前記弾性層の比重が0.3g/cm3未満又は0.8g/cm3以下である場合と比較して、被押当部材に対して均一に近いニップの形成が可能であり、かつ、弾性部材を被押当部材に押し当てた状態で維持した後における弾性部材が有する弾性層の歪みが抑制される弾性部材が提供される。
【0012】
<7>に係る発明によれば、前記弾性層の前記基材と反対面側の表面から測定したアスカーC硬度が25°未満又は45°超過である場合と比較して、被押当部材に対して均一に近いニップの形成が可能であり、かつ、弾性部材を被押当部材に押し当てた状態で維持した後における弾性部材が有する弾性層の歪みが抑制される弾性部材が提供される。
【0013】
<8>に係る発明によれば、基材と、前記基材上に設けられた単層型の弾性層と、を有する弾性部材において、前記弾性層の歪み10%における弾性率が0.15MPa未満である、又は前記内表面部のMD-1硬度と前記外表面部のMD-1硬度との差(内表面部のMD-1硬度-外表面部のMD-1硬度)が2°未満若しくは12°超過である場合と比較して、被押当部材に対して均一に近いニップの形成が可能であり、かつ、弾性部材を被押当部材に押し当てた状態で維持した後における弾性部材が有する弾性層の歪みが抑制される弾性部材が提供される。
【0014】
<9>、<10>又は<11>に係る発明によれば、基材と、前記基材上に設けられた単層型の弾性層と、を有する弾性部材において、前記弾性層の歪み10%における弾性率が0.15MPa未満である、内表面部の弾性率に対する外表面部の弾性率の比(外表面部の弾性率/内表面部の弾性率)が0.8超過である、又は、内表面部のMD-1硬度と外表面部のMD-1硬度との差(内表面部のMD-1硬度-外表面部のMD-1硬度)が2°未満若しくは12°超過である場合と比較して、被押当部材に対して均一に近いニップの形成が可能であり、かつ、弾性部材を被押当部材に押し当てた状態で維持した後における弾性部材が有する弾性層の歪みが抑制される弾性部材を備えた転写装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る弾性部材の一例を示す概略斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る弾性部材の一例を示す概略断面図であり、
図1のA-A断面図である。
【
図3】クロスヘッドを備えた押出成形機の構成の一例を示す概略図である。
【
図4】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0017】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0018】
<弾性部材>
第一実施形態に係る弾性部材は、基材と、前記基材上に設けられた単層型の弾性層と、を有する。
そして、前記弾性層の歪み10%における弾性率が0.15MPa以上である。
さらに、内表面部の弾性率に対する外表面部の弾性率の比(外表面部の弾性率/内表面部の弾性率)が0.8以下である。
ここで、内表面部とは、弾性層の基材と反対面側の表面から前記弾性層の前記基材側の表面までの厚さをtとしたとき(つまり、弾性層の厚さをtとしたとき)、前記弾性層の前記基材側の表面からt/2.125深さ位置までの領域を示す。
また、外表面部とは、弾性層の基材と反対面側の表面から前記弾性層の前記基材側の表面までの厚さをtとしたとき、前記弾性層の前記基材と反対面側の表面からt/2.125深さ位置までの領域を示す。
【0019】
第二実施形態に係る弾性部材は、基材と、前記基材上に設けられた単層型の弾性層と、を有する。
そして、前記弾性層の歪み10%における弾性率が0.15MPa以上である。
さらに、前記弾性層の前記基材と反対面側の表面から前記弾性層の前記基材側の表面までの厚さをtとしたとき、前記弾性層の前記基材と反対面側の表面からt/2.125深さ位置までの領域を外表面部とし、前記弾性層の前記基材側の表面からt/2.125深さ位置までの領域を内表面部とした場合における、前記内表面部のMD-1硬度と前記外表面部のMD-1硬度との差(内表面部のMD-1硬度-外表面部のMD-1硬度)が2°以上12°以下である。
【0020】
以下、第一実施形態に係る弾性部材と、第二実施形態に係る弾性部材と、を合わせて本実施形態に係る弾性部材とも称す。
【0021】
画像形成装置における、弾性部材は、転写部材、帯電部材、記録媒体搬送部材等に用いられる。弾性部材をこれらの用途に用いる場合、例えば、弾性部材を被押当部材に対して押し当てた状態で使用される。そして、画像形成装置が停止状態の場合において、弾性部材を被押当部材に対して押し当てた状態で維持されることがある。画像形成装置に用いられる弾性部材は、被押当部材との間に、均一に近い接触領域(以下、接触領域を「ニップ」と称することがある。)を形成することが要求される。そのため、弾性部材の弾性層は弾性率が低いことがある。具体的には、弾性層の弾性率は、弾性層の歪み10%における弾性率が0.15MPa以上であることが要求される。しかしながら、このような弾性部材は、被押当部材に対して押し当てた状態で維持されると、弾性部材の弾性層が変形しやすいことがあった。そのため、弾性部材が被押当部材に対して押し当てた状態で維持した後に、画像を形成した場合、弾性部材と被押当部材との間のニップが不均一となりやすく、画像欠陥などの不具合を引き起こしやすいことがあった。
【0022】
第一実施形態に係る弾性部材は、内表面部の弾性率に対する外表面部の弾性率の比(外表面部の弾性率/内表面部の弾性率)が0.8以下である。これは、弾性層の基材に近い領域は弾性が高く、かつ、外表面部に近い領域(言い換えると、弾性層の基材から遠い領域)は弾性が低い状態にあることを示す。弾性層の弾性率を前記状態とすることで、弾性部材を被押当部材に対して押し当てた場合に、弾性層の外表面部に近い領域は変形するが、弾性層の基材に近い領域は変形しにくくなる。そのため、第一実施形態に係る弾性部材は、弾性部材を被押当部材に対して押し当てた場合において、変形しやすい部分が外表面部付近の領域に限定されるため、弾性層の歪みが小さくなる。そのため、弾性部材を被押当部材に対して押し当てた状態で維持した後における弾性部材が有する弾性層の歪みが抑制される。そして、前記弾性率の比(外表面部の弾性率/内表面部の弾性率)を0.8以下とすることで、弾性部材を被押当部材に対して押し当てた状態で維持した後における弾性部材が有する弾性層の歪みが効果的に抑制される。
以上のことから、第一実施形態に係る弾性部材は、上記構成とすることで被押当部材に対して均一に近いニップの形成が可能であり、かつ、弾性部材を被押当部材に押し当てた状態で維持した後における弾性部材が有する弾性層の歪みが抑制される弾性部材となる。
【0023】
第二実施形態に係る弾性部材は、内表面部のMD-1硬度と外表面部のMD-1硬度との差(内表面部のMD-1硬度-外表面部のMD-1硬度)が2°以上12°以下である。これは、弾性層の基材に近い領域は硬度が高く、かつ、外表面部に近い領域(言い換えると、弾性層の基材から遠い領域)は硬度が低い状態にあることを示す。弾性層のMD-1硬度を前記状態とすることで、弾性部材を被押当部材に対して押し当てた場合に、弾性層の外表面部に近い領域は変形するが、弾性層の基材に近い領域は変形しにくくなる。そのため、第一実施形態に係る弾性部材は、弾性部材を被押当部材に対して押し当てた場合において、変形しやすい部分が外表面部付近の領域に限定されるため、弾性層の歪みが小さくなる。そのため、弾性部材を被押当部材に対して押し当てた状態で維持した後における弾性部材が有する弾性層の歪みが抑制される。そして、前記内表面部のMD-1硬度と前記外表面部のMD-1硬度との差(内表面部のMD-1硬度-外表面部のMD-1硬度)を2°以上12°以下とすることで、弾性部材を被押当部材に対して押し当てた状態で維持した後における弾性部材が有する弾性層の歪みが効果的に抑制される。
以上のことから、第二実施形態に係る弾性部材は、上記構成とすることで被押当部材に対して均一に近いニップの形成が可能であり、かつ、弾性部材を被押当部材に押し当てた状態で維持した後における弾性部材が有する弾性層の歪みが抑制される弾性部材となる。
【0024】
ここで、被押当部材に対して均一に近いニップの形成を可能とし、弾性層の歪みを抑制することは、例えば、弾性層を複層型とし、基材に近い領域の層を弾性率又は硬度が高い層とし、基材から遠い領域の層を弾性率又は硬度が低い層とすることによっても実現される。しかし、本実施形態に係る弾性部材の様に、弾性層を単層とし、且つ、前記弾性層の歪み10%における弾性率が0.15MPa以上であり、前記弾性率の比(外表面部の弾性率/内表面部の弾性率)又は前記内表面部のMD-1硬度と外表面部のMD-1硬度との差(内表面部のMD-1硬度-外表面部のMD-1硬度)を前記範囲内とすることで、複層型の弾性層と比べて、被押当部材に対して、より均一に近いニップの形成が可能であり、かつ、弾性部材を被押当部材に押し当てた状態で維持した後における弾性部材が有する弾性層の歪みがより抑制される。
その理由は、単層型では、発泡の構造が連続的に変化するため、荷重を受けた際の部分的な変形や応力集中が生じにくいが、複層型においては、硬度の異なる層間の部分に変形や応力が集中しやすくなる。そのため、複層型の弾性層において、単に発泡構造、又は硬度の変更によって、基材に近い領域の層を弾性率又は硬度が高い層とし、基材から遠い領域の層を弾性率又は硬度が低い層とすることでは、単層型の弾性層と比べて、歪み抑制の効果が劣り、均一に近いニップ形成がしにくい。
【0025】
以下、第一及び第二実施形態に係る弾性部材のいずれにも該当する弾性部材について詳細に説明する。ただし、本発明に係る弾性部材は、第一実施形態及び第二実施形態に係る弾性部材の少なくともいずれか一方に該当する弾性部材であればよい。
【0026】
本実施形態に係る弾性部材について、図面を参照しつつ、説明する。
図1は、本実施形態に係る弾性部材の一例を示す概略斜視図である。
図2は、本実施形態に係る弾性部材の一例を示す概略断面図である。なお、
図2は、
図1のA-A断面図である。
【0027】
弾性部材310は、
図1及び
図2に示すように、例えば、円筒状または円柱状の基材312と、基材312の外周面に配置された弾性層314と、弾性層314の表層を処理した表面層316と、を有する。
【0028】
弾性部材310は、上記構成に限られず、例えば、表面層316を有しない態様、つまり、弾性部材310は、基材312と弾性層314とで構成される態様であってもよい。
また、弾性部材310は、弾性層314と基材312との間に配置される中間層(例えば接着層)、弾性層314と表面層316との間に配置される抵抗調整層又は移行防止層を設けた態様であってもよい。
【0029】
以下、本実施形態に係る弾性部材310の詳細について説明する。なお、符号は省略して説明する。
【0030】
(基材)
基材は、弾性部材の支持部材として機能する部材(例えば、シャフト)である。
基材の材質としては、例えば、鉄(例えば、快削鋼等),銅,真鍮,ステンレス,アルミニウム,ニッケル等の金属が挙げられる。基材としては、外側の面にメッキ処理を施した部材(例えば樹脂部材、セラミック部材)、導電剤の分散された部材(例えば樹脂部材、セラミック部材)等も挙げられる。
基材は、中空状の部材(例えば、筒状部材)であってもよいし、非中空状の部材(例えば、柱状部材)であってもよい。
【0031】
(弾性層)
弾性層は、基材上に設けられる単層型の弾性層である。
弾性層は、ゴム材料を含むことが好ましい。
具体的には、弾性層は、未加硫ゴム材料と共に、必要に応じて、導電剤、加硫剤、加硫促進剤等の周知の添加剤を含む未加硫ゴム組成物の加硫物で構成されている。
ゴム材料には、エラストマーも含まれる材料である。なお、未加硫ゴムとしては、例えば、少なくとも化学構造中に炭素炭素二重結合を有し、加硫反応によりは架橋してゴム材料となるものが挙げられる。
【0032】
ゴム材料として具体的には、例えば、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン-エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン-エチレンオキシド-アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、天然ゴム等、及びこれらを混合したゴムが挙げられる。
これらの中でも、ゴム材料としては、ポリウレタン、EPDM、エピクロルヒドリン-エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン-エチレンオキシド-アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、NBR、及びこれらを混合したゴムが好ましく、エピクロルヒドリン-エチレンオキシド-アリルグリシジルエーテル共重合ゴム(エピクロルヒドリン、エチレンオキサイド及びアリルグリシジルエーテルとの共重合体からなる3元系エピクロルヒドリンゴム)がより好ましい。
なお、これらゴム材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0033】
弾性層は、発泡弾性層であっても、非発泡弾性層であってもよいが、弾性層の弾性率及び硬度を所望の範囲とする観点から、発泡弾性層であることが好ましい。
【0034】
弾性層は、導電剤を含んでもよい。つまり、弾性層は導電性弾性層であってもよい。
導電剤としては、電子導電剤、イオン導電剤が挙げられる。
電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属または合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ-酸化アンチモン固溶体、酸化スズ-酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの粉末が挙げられる。
イオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩等;リチウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩等;が挙げられる。
これらの導電剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
導電剤の添加量は特に制限はないが、上記電子導電剤の場合は、ゴム材料100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下の範囲であることが好ましく、15質量部以上25質量部以下の範囲であることがより好ましい。一方、上記イオン導電剤の場合は、ゴム材料100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下の範囲であることが好ましく、0.5質量部以上3.0質量部以下の範囲であることがより好ましい。
【0036】
導電剤以外のその他添加剤としては、例えば、可塑剤、加硫剤、加硫促進剤、酸化防止剤、界面活性剤、カップリング剤等の周知の添加剤が挙げられる。
【0037】
(弾性層の特性)
-弾性層の歪み10%における弾性率-
弾性層は、弾性層の歪み10%における弾性率が0.15MPa以上である。
弾性層は、被押当部材に対して、更に均一に近いニップを形成しやすくする観点から、弾性層の歪み10%における弾性率が、0.15MPa以上0.5MPa以下であることが好ましく、0.17MPa以上0.4MPa以下であることがより好ましく、0.2MPa以上0.35MPa以下であることが好ましい。
【0038】
弾性層の歪み10%における弾性率の測定は下記の通りである。
先ず、弾性層から試験片の採取を行う。直径20mmの円形、厚み:弾性層の厚みの寸法に試験片を切り出す。得られた試験片を厚み方向に圧縮し、試験片の歪みが10%となるようにする。歪みを10%とした試験片を用いて、下記手順により応力の測定を行い、得られた測定値から弾性層の歪み10%における弾性率とする。
・弾性率の測定
温度22℃、湿度55%RHの環境下にて、圧縮歪みを定速で変化(具体的には、試験片を更に厚み方向に圧縮し、試験片の歪みを1分間当たり1mm増加させる)させたときの応力を測定する。得られた結果をデータ処理ソフトで解析し、応力-歪み曲線から弾性率を算出する。
【0039】
-弾性率の比(外表面部の弾性率/内表面部の弾性率)-
弾性層は、内表面部の弾性率に対する外表面部の弾性率の比(外表面部の弾性率/内表面部の弾性率)が0.8以下である。
【0040】
弾性層は、弾性部材を被押当部材に対して押し当てた状態で維持した後における弾性部材が有する弾性層の歪みをより抑制する観点から、内表面部の弾性率に対する外表面部の弾性率の比(外表面部の弾性率/内表面部の弾性率)が0.2以上0.8以下であることが好ましく、0.4以上0.7以下であることがより好ましく、0.5以上0.6以下であることが更に好ましい。
【0041】
外表面部の弾性率は、被押当部材に対して均一に近いニップの形成を可能とする観点から、0.10MPa以上0.30MPa以下であることが好ましく、0.13MPa以上0.27MPa以下であることがより好ましく、0.15MPa以上0.25MPa以下であることが更に好ましい。
【0042】
外表面部の弾性率及び内表面部の弾性率の測定手順は下記の通りである。
先ず、弾性層から試験片の採取を行う。縦:10mm、横:10mm、厚み:弾性層の厚みの寸法に試験片を裁断する。得られた試験片の裁断面の内、外表面部の厚み方向中央において、測定点を変えて合計5点の弾性率を測定する。得られた弾性率の算術平均を求め「外表面部の弾性率」とする。また、得られた試験片の裁断面の内、内表面部の厚み方向中央において、測定点を変えて合計5点の弾性率を測定する。得られた弾性率の算術平均を求め「内表面部の弾性率」とする。なお、弾性率の測定手順は下記の通りである。
【0043】
・弾性率測定手順
温度22℃、湿度55%RHの環境下にて、圧縮歪みを定速で変化(具体的には、試験片に対して加圧することで試験片を厚み方向に圧縮し、試験片の歪みを1分間当たり1mm増加させる)させたときの応力を測定する。得られた結果をデータ処理ソフトで解析し、応力-歪み曲線から弾性率を算出する。
【0044】
-MD-1硬度の差(内表面部のMD-1硬度-外表面部のMD-1硬度)-
弾性層は、内表面部のMD-1硬度と外表面部のMD-1硬度との差(内表面部のMD-1硬度-外表面部のMD-1硬度)が2°以上12°以下である。
弾性層は、弾性部材を被押当部材に対して押し当てた状態で維持した後における弾性部材が有する弾性層の歪みをより抑制する観点から、内表面部のMD-1硬度と外表面部のMD-1硬度との差(内表面部のMD-1硬度-外表面部のMD-1硬度)が4°以上10°以下であることが好ましく、5°以上9°以下であることがより好ましく、6°以上8°以下であることが更に好ましい。
【0045】
第一実施形態に係る弾性部材において、弾性層は、内表面部のMD-1硬度と外表面部のMD-1硬度との差(内表面部のMD-1硬度-外表面部のMD-1硬度)が2°以上12°以下であることが好ましく、4°以上10°以下であることがより好ましく、5°以上9°以下であることが更に好ましい。
【0046】
第一実施形態に係る弾性部材において、内表面部のMD-1硬度と外表面部のMD-1硬度との差(内表面部のMD-1硬度-外表面部のMD-1硬度)を上記範囲内とすることにより、更に弾性部材を被押当部材に対して押し当てた状態で維持した後における弾性部材が有する弾性層の歪みが抑制されやすくなる。その理由は以下の通り推測される。
第一実施形態に係る弾性部材の弾性層は、内表面部の弾性率に対する外表面部の弾性率の比(外表面部の弾性率/内表面部の弾性率)が0.8以下であることによる弾性層の歪みの抑制効果を有する。そして、第一実施形態に係る弾性部材の弾性層が、さらに内表面部のMD-1硬度と外表面部のMD-1硬度との差(内表面部のMD-1硬度-外表面部のMD-1硬度)が上記範囲内であることにより、外部から加わる力に対する抵抗力も備える弾性層となる。上述の弾性率に由来する歪みの抑制効果と、MD-1硬度に由来する力に対する抵抗力と、が組み合わさることにより、更に弾性部材を被押当部材に対して押し当てた状態で維持した後における弾性部材が有する弾性層の歪みが抑制されやすくなる。
【0047】
外表面部のMD-1硬度は、被押当部材に対して均一に近いニップの形成を可能とする観点から、9°以上21°以下であることが好ましく、11°以上19°以下であることがより好ましく、14°以上17°以下であることが更に好ましい。
【0048】
MD-1硬度の測定手順は下記の通りである。
先ず、弾性層から試験片の採取を行う。縦:10mm、横:10mm、厚み:弾性層の厚みの寸法に試験片を裁断する。得られた試験片の裁断面の内、外表面部の厚み方向中央において、測定点を変えて合計10点のMD-1硬度を測定する。得られたMD-1硬度の算術平均を求め「外表面部のMD-1硬度」とする。また、得られた試験片の裁断面の内、内表面部の厚み方向中央において、測定点を変えて合計10点のMD-1硬度を測定する。得られたMD-1硬度の算術平均を求め「内表面部のMD-1硬度」とする。なお、MD-1硬度の測定条件は下記の通りである。
測定装置:高分子計器株式会社製 MD-1 capa type-A
測定条件:測定モードはノーマルモード、タイマーは2秒値
【0049】
-弾性層の比重-
弾性層の比重は0.3g/cm3以上0.8g/cm3以下であることが好ましく、0.35g/cm3以上0.75g/cm3以下であることがより好ましく、0.4g/cm3以上0.7g/cm3以下であることが更に好ましい。
【0050】
本実施形態に係る弾性部材の弾性層を、上記範囲内の比重とすることで、被押当部材に対してより均一に近いニップの形成が可能であり、かつ、弾性部材を被押当部材に押し当てた状態で維持した後における弾性部材が有する弾性層の歪みがより抑制される弾性部材となりやすい。その理由は下記の通りである。
弾性層の比重を0.8g/cm3以下とすることで、弾性層におけるゴム材料の含有量が多くなりすぎず、弾性層を変形させたときの荷重が大きくなりにくくなる。そのため、より均一に近いニップが形成されやすくなる。弾性層の比重を0.3g/cm3以上とすることで、弾性層におけるゴム材料の含有量が少なくなりすぎず、弾性層が負荷を受けた際に構造を維持しやすくなり、弾性層の歪みがより抑制されやすくなる。
【0051】
弾性層の比重はJIS K 7222(2005)に準拠して測定される。
【0052】
弾性層は、弾性層の基材と反対面側の表面から測定したアスカーC硬度が25°以上45°以下であることが好ましく、28°以上40°以下であることがより好ましく、30°以上38°以下であることが更に好ましい。
本実施形態に係る弾性部材の弾性層を、上記範囲内のアスカーC硬度とすることで、被押当部材に対して更に均一に近いニップの形成が可能となる。
【0053】
アスカーC硬度の測定は、JIS K 7312:1996の測定方法に準じて、弾性層の基材と反対面側の表面にアスカーC型硬度計(高分子計器社製)の測定針を押圧し行う。
【0054】
-その他の特性-
弾性層の体積抵抗率は、103Ωcm以上1015Ωcm以下がよく、好ましくは105Ωcm以上1014Ωcm以下、より好ましくは106Ωcm以上1013Ωcm以下である。
【0055】
弾性層の体積抵抗率は、次に示す方法により測定された値である。
即ち、弾性層からシート状の測定試料を採取し、その測定試料に対し、JIS K 6911(1995)に従って、測定治具(R12702A/Bレジスティビティ・チェンバ:アドバンテスト社製)と高抵抗測定器(R8340Aデジタル高抵抗/微小電流計:アドバンテスト社製)とを用い、電場(印加電圧/組成物シート厚)が1000V/cmになるよう調節した電圧を30秒印加した後、その流れる電流値より、下記式を用いて算出する。
体積抵抗率(Ωcm)=(19.63×印加電圧(V))/(電流値(A)×測定試料厚(cm))
【0056】
弾性層の厚みは、被押当部材に対して均一に近いニップの形成が可能であり、かつ、弾性部材を被押当部材に押し当てた状態で維持した後における弾性部材が有する弾性層の歪みより抑制する観点から2mm以上15mm以下がよく、好ましくは4mm以上10mm以下である。
【0057】
弾性層の厚みは、次に示す方法により測定された値である。
即ち、弾性層における、弾性部材軸方向両端20mm位置及び中央部の3か所を片刃ナイフで切り取り、切り取った試料の断面を5から50倍の厚みに応じて適切な倍率で観察して、膜厚を測定して、その平均値とする。測定装置は、キーエンス社製、デジタルマイクロスコープVHX-200を用いる。
【0058】
(表面層)
弾性部材は、必要に応じて表面層を有していてもよい。
表面層は、弾性層上に樹脂層等を独立して設けた態様であってもよいし、発泡した弾性層の表層部の気泡に樹脂等を含浸させて設けた態様(つまり、気泡に樹脂等が含浸した弾性層の表層部を表面層とした態様)であってもよい。
【0059】
表面層を形成するための材料としては、例えば、樹脂が挙げられる。
樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、フッ素変性アクリル樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、共重合ナイロン、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレンテトラフルオロエチレン樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリチオフェン樹脂。ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、フッ素樹脂(ポリフッ化ビニリデン樹脂、4フッ化エチレン樹脂、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等)が挙げられる。また、樹脂は、硬化性樹脂を硬化剤若しくは触媒により硬化又は架橋したものが好ましい。
ここで、共重合ナイロンは、610ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、の内のいずれか1種又は複数種を重合単位として含む共重合体である。なお、共重合ナイロンには、6ナイロン、66ナイロン等の他の重合単位を含んでいてもよい。
【0060】
これらの中でも、汚れ防止の観点から、樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン樹脂、4フッ化エチレン樹脂、ポリアミド樹脂が好ましく、表面層の耐摩耗性、多孔質樹脂粒子の離脱抑制の点から、ポリアミド樹脂がより好ましい。
【0061】
特に、ポリアミド樹脂としては、表面層の耐摩耗性の点から、アルコキシメチル化ポリアミド(アルコキシメチル化ナイロン)が好ましく、より好ましくはメトキシメチル化ポリアミド(N-メトキシメチル化ナイロン)である。
【0062】
なお、樹脂は、表面層の機械的強度を向上させ、表面層の割れの発生を抑制する点から、架橋構造を有していてもよい。
【0063】
表面層を形成するためのその他の材料としては、例えば、導電剤、充填剤、硬化剤、加硫剤、加硫促進剤、酸化防止剤、界面活性剤、カップリング剤等の通常表面層に添加され得る周知の添加剤が挙げられる。
【0064】
表面層の厚みは、例えば、2μm以上25μm以下がよく、好ましくは3μm以上20μm以下であり、より好ましくは3μm以上15μm以下であり、更に好ましくは5μm
以上15μm以下である。
【0065】
表面層の厚みは、次に示す方法により測定された値である。表面層の弾性部材軸方向両端20mm位置及び中央部の3か所を片刃ナイフで切り取り、切り取った試料の断面を倍率1000倍で観察して、膜厚を測定してその平均値とした。測定装置は、キーエンス社製、デジタルマイクロスコープVHX-200を用いる。
<用途>
本実施形態に係る弾性部材は、電子写真方式の画像形成装置用の部材(像保持体を帯電させる帯電部材、記録媒体又は中間転写体にトナー像を転写する転写部材、記録媒体搬送部材、中間転写体、等)に利用される。電子写真方式の画像形成装置用以外の部材(被帯電体を帯電させる帯電部材、被転写体に転写物を転写させる転写部材等)に利用してもよい。
【0066】
<弾性部材の製造方法>
本実施形態に係る弾性部材の製造方法の一例について説明する。
【0067】
本実施形態に係る弾性部材の製造方法は、例えば、混練後の未加硫ゴム組成物の層を基材上に形成する工程(以下「第1工程」とも称する)と、未加硫ゴム組成物の層の加硫を行って、芯金上に、未加硫ゴム組成物層の加硫物からなる弾性層を形成する工程(以下「第2工程」とも称する)と、を有する。
【0068】
ここで、未加硫ゴム組成物は、発泡剤を含有することが好ましい。また、芯金は非中空状の芯金であることが好ましい。
発泡剤を含有する未加硫ゴム組成物を用いて弾性部材を製造することで、弾性部材の弾性層が発泡体となる。そして、非中空状の芯金を用いることで、第2工程において弾性層の外表面部付近は熱が加わりやすいが、弾性層の内表面部付近は熱が加わりにくい状態となりやすい。そのため、弾性層の外表面部付近は、発泡剤由来の気泡が多く発生しやすくなる。一方、弾性層の内表面部付近は発泡剤由来の気泡が、外表面部付近と比較して少ない状態となりやすい。つまり、得られる弾性層は、外表面部付近は空孔を多く含み、内表面部付近は空孔が少ないものとなりやすい。当該空孔の分布差は、弾性層の弾性率及び硬度の分布を引き起こしやすくなる。
上述のことから、発泡剤を含有する未加硫ゴム組成物を用いて、且つ、芯金として非中空状の芯金を用いて弾性部材を製造することで、内表面部の弾性率に対する外表面部の弾性率の比(外表面部の弾性率/内表面部の弾性率)が0.8以下である弾性層又は内表面部のMD-1硬度と外表面部のMD-1硬度との差(内表面部のMD-1硬度-外表面部のMD-1硬度)が2°以上12°以下である弾性層となりやすい。
【0069】
以下、各工程の詳細について説明する。
-第1工程-
第1工程では、未加硫ゴム組成物(以下、単に「ゴム材」とも称する)の層を芯金上に形成する。具体的には、例えば、
図3に示す押出成形機21を用いて、円筒状のゴム材の層(以下「ゴムロール部」とも称する)を芯金の外周面上に成形する。
【0070】
未加硫ゴム組成物は、発泡剤を含有することが好ましい。
発泡剤としては、公知のものを用いることができ、化学発泡剤であっても、物理発泡剤であってもよいが、取り扱い性や保存性の観点から、化学発泡剤であることが好ましい。
化学発泡剤としては、無機化合物であっても、有機化合物であってもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
有機化学発泡剤としては、例えば、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)などのニトロソアミン化合物、アゾジカルボンアミド(ADCA)などのアゾ化合物、4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)やヒドラゾジカルボンアミド(HDCA)などのヒドラジン化合物等が挙げられる。
無機化学発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム等の炭酸水素塩、炭酸塩、炭酸水素塩と有機酸塩との組み合わせ等が挙げられる。
中でも、有機化学発泡剤が好ましく、ニトロソアミン化合物、アゾ化合物及びヒドラジ
ン化合物がより好ましく、アゾジカルボンアミド(ADCA)、4、4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、及び、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DTP)よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物が特に好ましい。
【0072】
物理発泡剤としては、窒素、二酸化炭素等の不活性ガスや揮発性有機化合物などが挙げられる。中でも、不活性ガスを使用することが好ましく、超臨界状態の二酸化炭素、窒素、又は、これらの混合物を使用することが好ましい。
【0073】
発泡剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよく、また、化学発泡剤と物理発泡剤とを併用してもよい。
発泡剤の使用量は、使用する樹脂の特性や発泡体の用途によって適宜、調整することができるが、未加硫ゴム組成物全体100質量部に対し、0.1質量部~30質量部であることが好ましく、0.5質量部~20質量部であることがより好ましく、1質量部~15質量部であることが更に好ましく、2質量部~10質量部であることが特に好ましい。
【0074】
ゴムロール部を芯金の外周面上に成形するためには、押出成形機を用いることが好ましい。以下、押出成形機の一例について述べる。
【0075】
・押出成形機
図3に示す押出成形機10は、いわゆるクロスヘッドダイから構成される排出機12と、排出機12の下流側に配置される加圧機14と、加圧機14の下流側に配置される引出機16と、を備えている。
そして、押出成形機10には、装置内の各部を制御するための制御部11を備えている。
【0076】
排出機12は、ゴム材を供給するゴム材供給部18と、ゴム材供給部18から供給されたゴム材を円筒状に押し出す押し出部20と、押し出部20から円筒状に押し出されるゴム材の中心部に芯金22を供給する芯金供給部24と、を備えている。
【0077】
ゴム材供給部18は、円筒状の本体部26の内部にスクリュー28を有している。スクリュー28は駆動モータ30によって回転駆動される。本体部26の駆動モータ30側にはゴム材を投入する投入口32が設けられている。円筒状の本体部26のゴム材押出口には、ブレーカープレート31が設けられている。投入口32から投入されたゴム材は、本体部26の内部においてスクリュー28によって練られながらブレーカープレート31を通過して押し出部20に向けて送り出される。
【0078】
押し出部20は、ゴム材供給部18に接続される円筒状のケース34と、ケース34の内部中心に配置される円柱状のマンドレル36と、マンドレル36の下方に配置される排出ヘッド38と、を備えている。マンドレル36は保持部材40によってケース34に保持されている。排出ヘッド38は保持部材42によってケース34に保持されている。マンドレル36の外周面(一部において保持部材40の外周面)と保持部材42の内周面(一部において排出ヘッド38の内周面)との間には、ゴム材が環状に流れる環状流路44が形成されている。
【0079】
マンドレル36の中心部には芯金22が挿通される挿通孔46が形成されている。マンドレル36の下部は端に向けて先細った形状を呈している。そして、マンドレル36の先端の下方の領域は、挿通孔46から供給される芯金22と環状流路44から供給されるゴム材とが合流する合流域48とされている。即ち、この合流域48に向けてゴム材が円筒状に押し出され、円筒状に押し出されるゴム材の中心部に芯金22が送り込まれる態様となっている。
【0080】
芯金供給部24は、マンドレル36の上方に配置されるロール対50を備えている。ロール対50は複数対(3対)設けられ、各ロール対50の片側のロールはベルト52を介して駆動ロール54に接続されている。駆動ロール54が駆動されると、各ロール対50によって挟み込まれる芯金22はマンドレル36の挿通孔46に向けて送られる。芯金22は予め定められた長さとされており、ロール対50によって送られる後方の芯金22がマンドレル36の挿通孔46に存在する先方の芯金22を押すことにより、複数の芯金22が順次に挿通孔46を通過する態様となっている。また、駆動ロール54の駆動は、先方の芯金22の前方端がマンドレル36の先端に位置したときに一旦停止され、マンドレル36の下方の合流域48において、芯金22が間隔をおいて送り込まれる。
【0081】
こうして、排出機12においては、合流域48においてゴム材を円筒状に押し出し、ゴム材の中心部に間隔をおいて芯金22が順次送り込まれる。それにより、ゴム材で芯金22の外周面が被覆され、ゴムロール部56(円筒状のゴム材の層)が、芯金22の外周面に形成される。なお、芯金22の外周面にはゴム材との接着性を高めるために接着剤層(つまり、プライマー又は接着剤)が予め塗布されていてもよい。
【0082】
なお、制御部11は、押出成形機10の各部の動作を制御するように構成されている。
具体的には、図示しないが、制御部11は、例えば、コンピュータとして構成され、CPU(Central Processing Unit)、各種メモリ[例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、不揮発性メモリ]、及び入出力インターフェース(I/O)がバスを介して各々接続された構成となっている。そして、I/Oには、例えば、スクリュー28を回転駆動する駆動モータ30、駆動ロール54を回転駆動する駆動モータ(不図示)、圧力計33等の押出成形機10の各部が接続されている。
CPUは、例えば、各種メモリに記憶されているプログラム(例えば、押出成形プログラム等の制御プログラム)実行し、押出成形機10の各部の動作を制御する。なお、CPUが実行するプログラムを記憶するための記憶媒体は、各種メモリに限定されない。例えば、フレキシブルディスクやDVDディスク、光磁気ディスクやUSBメモリ(ユニバーサルシリアルバスメモリ)等(不図示)であってもよいし、通信手段(不図示)に接続された他の装置の記憶装置であってもよい。
【0083】
-第2工程-
第2工程では、ゴム材(未加硫ゴム組成物)の層の加硫を行う。これにより、芯金(基材)上に、未加硫ゴム組成物の加硫物で構成された弾性層を形成する。
また、未加硫ゴム組成物が発泡剤を含有する場合、当該工程において加えられる熱により発泡剤由来の気泡が発生する。
【0084】
具体的には、ゴム材(未加硫ゴム組成物)の層を、未加硫ゴム材料の加硫温度まで加熱する。ゴム材の層の加熱は、例えば、加熱炉(熱風加熱炉など)に利用する。例えば、加熱温度150℃以上200℃以下、加熱時間10分以上120分以下で、ゴム材の層が芯金の外周面に形成されたゴムロールを加熱する。これにより、ゴム材の層に含まれる未加硫ゴム材料の加硫を実施し、弾性層が形成される。
【0085】
その後、得られたゴムロールの弾性層の表面に、必要に応じて、表面層を形成する。
【0086】
ここで、弾性部材の基材としては、弾性層の形成に用いた芯金を基材として用いてもよい。また、弾性層の形成後に、ゴムロールから芯金を取り除き、弾性層からなる円筒状物の貫通孔に基材を挿入してもよい。
【0087】
以上の工程を経て、本実施形態に係る弾性部材が形成される。
【0088】
<画像形成装置/転写装置/プロセスカートリッジ>
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、前記像保持体の表面を帯電する帯電装置と、帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、トナーを含む現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、を備える。
そして、転写装置は、上記本実施形態に係る弾性部材を、記録媒体(被転写体の一例)にトナー像(転写物の一例)を転写させる転写部材として備える転写装置(本実施形態に係る転写装置)を適用する。
【0089】
一方、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、例えば、上記構成の画像形成装置に着脱され、像保持体の表面を帯電する帯電装置、及びトナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置の少なくとも一方を備える。そして、転写装置として、上記本実施形態に係る転写装置を適用する。
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、必要に応じて、例えば、像保持体、帯電した像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置、像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置、像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置、および像保持体表面をクリーニングするクリーニング装置からなる群より選択される少なくとも一種を備えていてもよい。
【0090】
次に、本実施形態に係る画像形成装置、およびプロセスカートリッジについて図面を参照しつつ説明する。
【0091】
図4は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。なお、図中に示す矢印UPは、鉛直方向上方を示している。
【0092】
画像形成装置210は、
図4に示すように、各構成部品が内部に収容される画像形成装置本体211を備えている。画像形成装置本体211の内部には、用紙等の記録媒体Pが収容される収容部212と、記録媒体Pに画像を形成する画像形成部214と、収容部212から画像形成部214へ記録媒体Pを搬送する搬送部216と、画像形成装置210の各部の動作を制御する制御部220と、が設けられている。また、画像形成装置本体211の上部には、画像形成部214によって画像が形成された記録媒体Pが排出される排出部218が設けられている。
【0093】
画像形成部214は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像を形成する画像形成ユニット222Y、222M、222C、222K(以下、222Y~222Kと示す)と、画像形成ユニット222Y~222Kで形成されたトナー像が転写される中間転写ベルト224(被転写物の一例)と、画像形成ユニット222Y~222Kで形成されたトナー像を中間転写ベルト224に転写する第1転写ロール226(転写ロールの一例)と、第1転写ロール226によって中間転写ベルト224に転写されたトナー像を中間転写ベルト224から記録媒体Pへ転写する第2転写ロール228(転写部材の一例)と、を備えている。なお、画像形成部214は、上記の構成に限られず、他の構成であってもよく、記録媒体P(転写物の一例)に画像を形成するものであればよい。
ここで、中間転写ベルト224、第1転写ロール226、及び第2転写ロール228からなるユニットが、転写装置の一例に相当する。なお、このユニットは、カートリッジ化されていてもよい(プロセスカートリッジ)。
【0094】
画像形成ユニット222Y~222Kは、水平方向に対して傾斜した状態で、画像形成装置210の上下方向中央部に並んで配置されている。また、画像形成ユニット222Y~222Kは、一方向(例えば、
図4における時計回り方向)へ回転する感光体232(像保持体の一例)をそれぞれ有している。なお、画像形成ユニット222Y~222Kは、同様に構成されているので、
図4において、画像形成ユニット222M、222C、222Kの各部の符号を省略している。
【0095】
各感光体232の周囲には、感光体232の回転方向上流側から順に、感光体232を帯電させる帯電ロール223A(帯電部材の一例)を有する帯電装置223と、帯電装置223によって帯電した感光体232を露光して感光体232に静電潜像を形成する露光装置236(静電潜像形成装置の一例)と、露光装置236によって感光体232に形成された潜像を現像してトナー像を形成する現像装置238と、感光体232に接触して感光体232に残留しているトナーを除去する除去部材(クリーニングブレード等)240と、が設けられている。
【0096】
ここで、感光体232、帯電装置223、露光装置236、現像装置238、及び除去部材240は、ハウジング(筐体)222Aにより一体的に保持されてカートリッジ化されている(プロセスカートリッジ)。
【0097】
露光装置236は、自己走査型のLEDプリントヘッドが適用されている。なお、露光装置236は、光源からポリゴンミラーを介して感光体232を露光する光学系の露光装置であってもよい。
露光装置236は、制御部220から送られた画像信号に基づき潜像を形成するようになっている。制御部220から送られる画像信号としては、例えば、制御部220が外部装置から取得した画像信号がある。
【0098】
現像装置238は、感光体232へ現像剤を供給する現像剤供給体238Aと、現像剤供給体238Aへ付与される現像剤を攪拌しながら搬送する複数の搬送部材238Bと、を備えている。
【0099】
中間転写ベルト224は、環状に形成されると共に、画像形成ユニット222Y~222Kの上側に配置されている。中間転写ベルト224の内周側には、中間転写ベルト224が巻き掛けられる巻掛ロール242・244が設けられている。中間転写ベルト224は、巻掛ロール242・244のいずれかが回転駆動することによって、感光体232と接触しながら一方向(例えば、
図3における反時計回り方向)へ循環移動(回転)するようになっている。なお、巻掛ロール242は、第2転写ロール228に対向する対向ロールとされている。
【0100】
第1転写ロール226は、中間転写ベルト224を挟んで感光体232に対向している。第1転写ロール226と感光体232との間が、感光体232に形成されたトナー像が中間転写ベルト224に転写される第1転写位置とされている。
【0101】
第2転写ロール228は、中間転写ベルト224を挟んで巻掛ロール142に対向している。第2転写ロール228と巻掛ロール242との間が、中間転写ベルト224に転写されたトナー像が記録媒体Pに転写される第2転写位置とされている。
【0102】
搬送部216は、収容部212に収容された記録媒体Pを送り出す送出ロール246と、送出ロール246に送り出された記録媒体Pが搬送される搬送路248と、搬送路248に沿って配置され送出ロール246によって送り出された記録媒体Pを第2転写位置へ搬送する複数の搬送ロール250と、が設けられている。
【0103】
第2転写位置より搬送方向下流側には、画像形成部214によって記録媒体Pに形成されたトナー像を記録媒体Pに定着させる定着装置260が設けられている。
【0104】
定着装置260は、記録媒体P上の画像を加熱する加熱ロール264と、加圧部材の一例としての加圧ロール266と、が設けられている。加熱ロール264の内部には、加熱源264Bを備えている。
【0105】
定着装置260より搬送方向下流側には、トナー像が定着された記録媒体Pを排出部218へ排出する排出ロール252が設けられている。
【0106】
次に、画像形成装置210における、記録媒体Pへ画像を形成する画像形成動作について説明する。
【0107】
画像形成装置210では、収容部212から送出ロール246によって送り出された記録媒体Pが、複数の搬送ロール250によって第2転写位置へ送り込まれる。
【0108】
一方、画像形成ユニット222Y~222Kでは、帯電装置223によって帯電した感光体232が、露光装置236によって露光されて感光体232に潜像が形成される。その潜像が現像装置238によって現像されて感光体232にトナー像が形成される。画像形成ユニット222Y~222Kで形成された各色のトナー像は、第1転写位置にて中間転写ベルト224に重ねられて、カラー画像が形成される。そして、中間転写ベルト224に形成されたカラー画像が、第2転写位置にて記録媒体Pへ転写される。
【0109】
トナー像が転写された記録媒体Pは、定着装置260へ搬送され、転写されたトナー像が定着装置260により定着される。トナー像が定着された記録媒体Pは、排出ロール152によって排出部218に排出される。以上のように、一連の画像形成動作が行われる。
【0110】
なお、本実施形態に係る画像形成装置210は、上記構成に限られず、例えば、画像形成ユニット222Y~222Kの各感光体232に形成されたトナー像を直接記録媒体Pに転写する直接転写方式の画像形成装置等、周知の画像形成装置を採用してもよい。
【実施例】
【0111】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
<実施例1>
(弾性ロールの作製)
下記混合物をオープンロールで混練りしゴム練り材Aを得た後、ゴム練り材Aと非中空状のシャフト(SUS製、直径12mm)とを同時に押し出して、シャフトの外周面上に円筒形状のゴム練り材Aを有するロール(以下、「未加硫ゴムロール」という)を得た。次いで、未加硫ゴムロールを160℃で30分間加熱することで、円筒形状のゴム練り材Aを加硫し、加硫後ゴムロールを得た。次いで、加硫後ゴムロールのシャフトにエアーを吹き込み、加硫後のゴムを抜き出して、長さ224mmにカットした。
次いで、加硫後のゴムの中心部の貫通孔に、シャフト(基材の一例、SUS製、直径12mm)を差し込み、ロールの外周面を研磨して外径20.5mm(弾性層厚4.25mm)の弾性ロール(シャフトの外周面に弾性層が形成されたロール)を得た。
【0112】
-混合物の組成-
・ゴム材 ・・・・・・・・・100質量部
(ニトリルゴム(JSR社製、製品名:N230SV)と、エピクロルヒドリンゴム((株)大阪ソーダ製、製品名:CG102)と、質量比100/60で含有。)
・カーボンブラック(#55:旭カーボン社製) ・・・15質量部
・加硫剤(硫黄)200メッシュ:鶴見化学工業社製 ・・・・1質量部
・加硫促進剤(ノクセラーDM:大内新興化学工業社製) ・・1.5質量部
・加硫促進剤(ノクセラーTET:大内新興化学工業社製) ・・1.0質量部
・酸化亜鉛(亜鉛華1号:正同化学工業社製) ・・・・5質量部
・炭酸カルシウム(ホワイトンSSB:白石カルシウム) ・・・10質量部
・ステアリン酸(ステアリン酸S:花王社製) ・・・・1質量部
・老化防止剤(ノクラック300:大内新興化学工業社製、化合物名:4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)) ・・・・3質量部
・発泡剤A(アゾジカルボンアミド(ADCA)) ・・・・適量
・発泡剤B(4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、OBSH)・・・・適量
【0113】
<実施例2、3、18~21、24、25>
弾性層の特性が表1に記載の通りとなる様に、発泡剤A及び発泡剤Bの添加量を変更したこと以外は実施例1と同様にして、弾性ロールを得た。
【0114】
<実施例4~17、22、23、比較例4~6>
弾性層の特性が表1に記載の通りとなる様に、未加硫のゴムロールの加熱温度及び加熱時間を変えたこと以外は実施例1と同様にして、弾性ロールを得た。
【0115】
<比較例1>
実施例1に記載のゴム練り材Aと同様の組成の混合物を押出機でチューブ形状に押出成形し、これを加硫缶内において加圧蒸気下で加熱発泡した。加硫された弾性発泡層に金属芯材を圧入した後、当該弾性発泡層の外径を研磨した。次に、EPDM系ゴム材料(日本合成ゴム製NE40)100部、粒状アセチレンブラック(電気化学工業(株)製)12部、及びFTカーボン(旭カーボン(株)製)25部(ρv:7.5)を混練した後、この弾性層の原材料をチューブクロスヘッド押出成形機により弾性発泡層の外側に被覆する。
以上により、複層構造の弾性ロールを得た。
【0116】
<比較例2、3>
弾性層の特性が表1に記載の通りとなる様に、発泡剤A及び発泡剤Bの添加量、未加硫のゴムロールの加熱温度及び加熱時間を変えたこと以外は実施例1と同様にして、弾性ロールを得た。
【0117】
<測定>
各例で得られた弾性ロールについて、弾性層の歪み10%における弾性率、内表面部の弾性率に対する外表面部の弾性率の比(外表面部の弾性率/内表面部の弾性率)、内表面部のMD-1硬度と外表面部のMD-1硬度との差(内表面部のMD-1硬度-外表面部のMD-1硬度)、比重、及びアスカーC硬度の測定を、既述の方法に従って行った。結果を表1に示す。
【0118】
<評価>
各例の弾性ロールを転写部材として、中間転写方式の画像形成装置(富士ゼロックス社製)に装着し、後述の評価を行った。
(ニップ性評価)
画像形成装置(富士ゼロックス社製)に二次転写ロールとして装着し、通常使用環境である温度22℃、湿度55%に維持した環境の条件で、画像形成装置にてA4サイズ用紙に対して画像を形成した。その後、用紙上に形成した画像を光学顕微により観察し、下記基準により定性評価した。
A(○):画像濃度の変化が観察されない
B(△):若干の画像濃度変化が観察される
C(×):像欠け、白ぬけ、飛び散り等の画像濃度変化が観察される
【0119】
(歪み評価)
弾性ロールを22℃、湿度55%環境下に24時間以上静置した。その後、弾性ロールをSUS製金属平板に対して、弾性ロールの弾性層が0.6mm食込む様にセットした後、45℃、湿度95%環境下に48時間静置する。48時間静置後に再び22℃、湿度55%環境下に24時間静置し、弾性ロールを食込みから開放した。画像形成装置(富士ゼロックス社製)に二次転写ロールとして装着して、通常使用環境である22℃、湿度55%に維持した環境の条件で、A4サイズ用紙に対して画像を形成した。用紙上に形成した画像を光学顕微により観察し、下記基準により定性評価した。
A(○):画像濃度の変化が観察されない
B(△):若干の画像濃度変化が観察される
C(×):白ぬけ等の画像濃度変化が観察される
【0120】
【0121】
上記結果から、本実施例の弾性部材は、画像濃度の変化が抑制されていることから、被押当部材に対して均一に近いニップの形成が可能であり、かつ、弾性部材を被押当部材に押し当てた状態で維持した後における弾性部材が有する弾性層の歪みが抑制されることがわかる。
【符号の説明】
【0122】
210 画像形成装置、214 画像形成部、216 搬送部、218 排出部、220 制御部、222 画像形成ユニット、223 帯電装置、223A 帯電ロール、224 中間転写ベルト、226 第1転写ロール、228 第2転写ロール、232 感光体、236 露光装置、238 現像装置、240 除去部材、260 定着装置、310 弾性部材、312 基材、314 弾性層、316表面層