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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/06 20060101AFI20240730BHJP
   B60K 6/445 20071001ALI20240730BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20240730BHJP
   F02D 13/06 20060101ALI20240730BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20240730BHJP
   F02D 29/06 20060101ALI20240730BHJP
   F01N 3/023 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/445 ZHV
B60W10/08 900
F02D13/06 C
F02D29/02 321C
F02D29/06 D
F01N3/023 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021012691
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022116505
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2023-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】池田 悠人
(72)【発明者】
【氏名】野瀬 勇喜
(72)【発明者】
【氏名】後藤 嵩允
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-068759(JP,A)
【文献】特開2009-248698(JP,A)
【文献】特開2001-207886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 ー 20/50
B60K 6/445
F02D 13/06
F02D 29/02
F02D 29/06
F01N 3/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒及び前記気筒毎の点火プラグを有する内燃機関と、モータジェネレータとを駆動源とし、前記内燃機関及び前記モータジェネレータが駆動軸に連結しているハイブリッド車両に適用され、
前記点火プラグの目標点火時期を算出する点火時期算出処理と、
前記複数の気筒のうちの一部の気筒における燃焼制御を停止する停止処理と、
前記停止処理中に、前記燃焼制御の停止によって不足する駆動力を補填するように前記モータジェネレータを制御する補填処理とを実行可能であり、
前記点火時期算出処理で算出する前記目標点火時期が、予め定められた規定時期よりも遅い場合、前記停止処理の実行を禁止する
ハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
複数の気筒及び前記気筒毎の点火プラグを有する内燃機関と、モータジェネレータとを駆動源とし、前記内燃機関及び前記モータジェネレータが駆動軸に連結しているハイブリッド車両に適用され、
前記点火プラグの目標点火時期を算出する点火時期算出処理と、
前記複数の気筒のうちの一部の気筒における燃焼制御を停止する停止処理と、
前記停止処理中に、前記燃焼制御の停止によって不足する駆動力を補填するように前記モータジェネレータを制御する補填処理とを実行可能であり、
前記ハイブリッド車両の減速中において、前記内燃機関のトルクが、予め定められた規定トルク以下の場合、前記停止処理の実行を禁止する
ハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
複数の気筒、前記気筒毎の点火プラグ、及び排気中の粒子状物質を捕集するフィルタを有する内燃機関と、モータジェネレータとを駆動源とし、前記内燃機関及び前記モータジェネレータが駆動軸に連結しているハイブリッド車両に適用され、
前記点火プラグの目標点火時期を算出する点火時期算出処理と、
前記複数の気筒のうちの一部の気筒における燃焼制御を停止する停止処理と、
前記停止処理中に、前記燃焼制御の停止によって不足する駆動力を補填するように前記モータジェネレータを制御する補填処理と、
前記フィルタにおける前記粒子状物質の堆積量が、予め定められた規定堆積量以上であることを含む条件が満たされた場合に前記フィルタに捕集された前記粒子状物質を除去するフィルタ再生処理とを実行可能であり、
前記フィルタ再生処理の実行中は、前記停止処理の実行を禁止する
ハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
複数の気筒及び前記気筒毎の点火プラグを有する内燃機関と、モータジェネレータとを駆動源とし、前記内燃機関及び前記モータジェネレータが駆動軸に連結しているハイブリッド車両に適用され、
前記点火プラグの目標点火時期を算出する点火時期算出処理と、
前記複数の気筒のうちの一部の気筒における燃焼制御を停止する停止処理と、
前記停止処理中に、前記燃焼制御の停止によって不足する駆動力を補填するように前記モータジェネレータを制御する補填処理と、
前記内燃機関においてノッキングが生じているか否かを判定するノッキング判定処理とを実行可能であり、
前記ノッキング判定処理においてノッキングが生じていると判定された継続期間が予め定められた規定期間以上になった場合、前記停止処理の実行を禁止する
ハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
複数の気筒及び前記気筒毎の点火プラグを有する内燃機関と、モータジェネレータとを駆動源とし、前記内燃機関及び前記モータジェネレータが駆動軸に連結しており、且つ前記内燃機関に複数の変速段を有する変速装置が連結しているハイブリッド車両に適用され、
前記点火プラグの目標点火時期を算出する点火時期算出処理と、
前記複数の気筒のうちの一部の気筒における燃焼制御を停止する停止処理と、
前記停止処理中に、前記燃焼制御の停止によって不足する駆動力を補填するように前記モータジェネレータを制御する補填処理とを実行可能であり、
前記点火時期算出処理では、前記変速装置が変速段を切り替え中である場合、前記内燃機関の運転状態に応じた基本点火時期を遅角補正した前記目標点火時期を算出し、
前記変速装置が変速段を切り替え中である場合、前記停止処理の実行を禁止する
ハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
前記停止処理の実行を禁止し始めてから予め定められた一定期間が経過するまでは、前記目標点火時期に拘わらず、前記停止処理の禁止を継続する
請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された車両は、内燃機関、第1モータジェネレータ、第2モータジェネレータ、遊星歯車機構、駆動軸、駆動輪、及び制御装置を有する。内燃機関、第1モータジェネレータ、及び第2モータジェネレータは、遊星歯車機構を介して互いに動力を伝達可能な状態で連結している。遊星歯車機構は駆動軸を介して駆動輪に連結している。遊星歯車機構は、内燃機関、第1モータジェネレータ、及び第2モータジェネレータが出力するトルクを、駆動軸を介して駆動輪に伝達する。
【0003】
制御装置は、内燃機関及び各モータジェネレータを制御する。制御装置は、車両の走行状況に応じて内燃機関の各気筒における混合気の燃焼を停止する。その際、制御装置は、内燃機関のトルクの低下に伴って駆動軸に生じるトルクショックを抑制すべく、第2モータジェネレータから補正トルクを出力させる。すなわち、制御装置は、内燃機関のトルクの減少分を補うべく、第2モータジェネレータを駆動制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-248698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内燃機関を制御するにあたり、内燃機関における複数の気筒の全てで順に混合気の燃焼を行う場合、内燃機関のトルクは、各気筒での燃焼行程に応じて周期的に増加する。ここで、内燃機関を制御するにあたり、内燃機関における複数の気筒のうちの一部の気筒のみで混合気の燃焼を停止し、他の気筒ではそれぞれの点火時期での混合気の燃焼を継続することがある。この場合、内燃機関のトルクは、燃焼を継続している気筒での燃焼行程に応じて増加する一方で、燃焼を停止する気筒が燃焼行程を迎える時期には大幅に低下する。
【0006】
上記のように一部の気筒での燃焼を停止する態様で内燃機関を制御する場合において特許文献1の技術を転用して補正トルクを出力することが考えられる。この場合、燃焼を停止する気筒が燃焼行程を迎える時期に、内燃機関のトルクの低下を打ち消すべく補正トルクを出力することになる。こうした補正トルクの出力を繰り返しているときに、燃焼を継続している気筒における点火時期が遅角側に急変すると、内燃機関のトルクの位相が全体として急変する。それに付随して、燃焼を停止している気筒が燃焼行程を迎える時期において内燃機関のトルクの低下量がピークとなるタイミングも急変する。この場合、内燃機関のトルクの位相と補正トルクの位相とがずれてしまい、内燃機関のトルクの低下を適切に打ち消すことができなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのハイブリッド車両の制御装置は、複数の気筒及び前記気筒毎の点火プラグを有する内燃機関と、モータジェネレータとを駆動源とし、前記内燃機関及び前記モータジェネレータが駆動軸に連結しているハイブリッド車両に適用され、前記点火プラグの目標点火時期を算出する点火時期算出処理と、前記複数の気筒のうちの一部の気筒における燃焼制御を停止する停止処理と、前記停止処理中に、前記燃焼制御の停止によって不足する駆動力を補填するように前記モータジェネレータを制御する補填処理とを実行可能であり、前記点火時期算出処理で算出する前記目標点火時期が、予め定められた規定時期よりも遅い場合、前記停止処理の実行を禁止する。
【0008】
上記構成では、目標点火時期が規定時期よりも遅い場合、停止処理の実行を禁止する。すなわち、停止処理に伴う内燃機関のトルクの変動を補填できないおそれがある場合には、停止処理を実行しない。したがって、停止処理中のトルク変動を補填できないことを原因とする振動等の発生を防げる。
【0009】
上記課題を解決するためのハイブリッド車両の制御装置は、複数の気筒及び前記気筒毎の点火プラグを有する内燃機関と、モータジェネレータとを駆動源とし、前記内燃機関及び前記モータジェネレータが駆動軸に連結しているハイブリッド車両に適用され、前記点火プラグの目標点火時期を算出する点火時期算出処理と、前記複数の気筒のうちの一部の気筒における燃焼制御を停止する停止処理と、前記停止処理中に、前記燃焼制御の停止によって不足する駆動力を補填するように前記モータジェネレータを制御する補填処理とを実行可能であり、前記ハイブリッド車両の減速中において、前記内燃機関のトルクが、予め定められた規定トルク以下の場合、前記停止処理の実行を禁止する。
【0010】
ハイブリッド車両の減速中に内燃機関のトルクが規定トルク以下になると、内燃機関のトルクをさらに低下させるべく目標点火時期を遅くすることになる。すなわち、減速中に内燃機関のトルクが規定トルク以下になった場合には、目標点火時期が規定時期よりも遅くなる蓋然性がある。このような状況下で、停止処理の実行を禁止しておくことで、トルク変動を補填できないことを原因とする振動等の発生を未然に防げる。
【0011】
上記課題を解決するためのハイブリッド車両の制御装置は、複数の気筒、前記気筒毎の点火プラグ、及び排気中の粒子状物質を捕集するフィルタを有する内燃機関と、モータジェネレータとを駆動源とし、前記内燃機関及び前記モータジェネレータが駆動軸に連結しているハイブリッド車両に適用され、前記点火プラグの目標点火時期を算出する点火時期算出処理と、前記複数の気筒のうちの一部の気筒における燃焼制御を停止する停止処理と、前記停止処理中に、前記燃焼制御の停止によって不足する駆動力を補填するように前記モータジェネレータを制御する補填処理と、前記フィルタにおける前記粒子状物質の堆積量が、予め定められた規定堆積量以上であることを含む条件が満たされた場合に前記フィルタに捕集された前記粒子状物質を除去するフィルタ再生処理とを実行可能であり、前記フィルタ再生処理の実行中は、前記停止処理の実行を禁止する。
【0012】
フィルタ再生処理の実行中は、フィルタを昇温させるべく目標点火時期を遅くすることになる。すなわち、フィルタ再生処理の実行中は、目標点火時期が規定時期よりも遅くなる蓋然性がある。このような状況下で、停止処理の実行を禁止しておくことで、トルク変動を補填できないことを原因とする振動等の発生を未然に防げる。
【0013】
上記課題を解決するためのハイブリッド車両の制御装置は、複数の気筒及び前記気筒毎の点火プラグを有する内燃機関と、モータジェネレータとを駆動源とし、前記内燃機関及び前記モータジェネレータが駆動軸に連結しているハイブリッド車両に適用され、前記点火プラグの目標点火時期を算出する点火時期算出処理と、前記複数の気筒のうちの一部の気筒における燃焼制御を停止する停止処理と、前記停止処理中に、前記燃焼制御の停止によって不足する駆動力を補填するように前記モータジェネレータを制御する補填処理と、前記内燃機関においてノッキングが生じているか否かを判定するノッキング判定処理とを実行可能であり、前記ノッキング判定処理においてノッキングが生じていると判定された継続期間が予め定められた規定期間以上になった場合、前記停止処理の実行を禁止する。
【0014】
ノッキングが継続している場合、ノッキングを抑制すべく目標点火時期を遅くすることになる。すなわち、ノッキングが継続している場合には、目標点火時期が規定時期よりも遅くなる蓋然性がある。このような状況下で、停止処理の実行を禁止しておくことで、トルク変動を補填できないことを原因とする振動等の発生を未然に防げる。
【0015】
上記課題を解決するためのハイブリッド車両の制御装置は、複数の気筒及び前記気筒毎の点火プラグを有する内燃機関と、モータジェネレータとを駆動源とし、前記内燃機関及び前記モータジェネレータが駆動軸に連結しており、且つ前記内燃機関に複数の変速段を有する変速装置が連結しているハイブリッド車両に適用され、前記点火プラグの目標点火時期を算出する点火時期算出処理と、前記複数の気筒のうちの一部の気筒における燃焼制御を停止する停止処理と、前記停止処理中に、前記燃焼制御の停止によって不足する駆動力を補填するように前記モータジェネレータを制御する補填処理とを実行可能であり、前記変速装置が変速段を切り替え中である場合、前記停止処理の実行を禁止する。
【0016】
変速装置の変速段の切り替え中には、変速段の切り替えに伴う変速ショックを低減すべく目標点火時期を遅くすることになる。すなわち、変速装置の変速段の切り替え中は、目標点火時期が規定時期よりも遅くなる蓋然性がある。このような状況下で、停止処理の実行を禁止しておくことで、トルク変動を補填できないことを原因とする振動等の発生を未然に防げる。
【0017】
ハイブリッド車両の制御装置は、前記停止処理の実行を禁止し始めてから予め定められた一定期間が経過するまでは、前記目標点火時期に拘わらず、前記停止処理の禁止を継続してもよい。
【0018】
上記構成によれば、短い期間の間に停止処理の実行と中断とが繰り返されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】車両の概略構成図。
図2】点火時期算出処理の処理手順を表したフローチャート。
図3】禁止判定処理の処理手順を表したフローチャート。
図4】第1処理及び第2処理の処理手順を表したフローチャート。
図5】内燃機関及び第2モータジェネレータのトルクの時間変化の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、ハイブリッド車両の制御装置の一実施形態を、図面を参照して説明する。
<車両の概略構成>
図1に示すように、ハイブリッド車両(以下、車両と記す。)500は、内燃機関10、第1モータジェネレータ(以下、第1MGと記す。)71、第2モータジェネレータ(以下、第2MGと記す。)72、第1インバータ75、第2インバータ76、及びバッテリ77を有する。
【0021】
内燃機関10、第1MG71、及び第2MG72は、車両500の駆動源となっている。内燃機関10の詳細については後述する。第1MG71は、電動機及び発電機の双方の機能を有する発電電動機である。第2MG72は、第1MG71と同様、発電電動機である。第1MG71は、第1インバータ75を介してバッテリ77と電気的に接続されている。第2MG72は、第2インバータ76を介してバッテリ77と電気的に接続されている。第1インバータ75及び第2インバータ76は、直流交流の電力変換を行う。バッテリ77は、第1MG71及び第2MG72に電力を供給したり、第1MG71及び第2MG72から供給される電力を蓄えたりする。
【0022】
車両500は、動力分配統合機構40、リダクションギア50、減速機構60、ディファレンシャル61、及び駆動輪62を有する。
内燃機関10の出力軸であるクランク軸14、及び第1MG71の回転軸は、動力分配統合機構40に連結している。また、第2MG72の回転軸は、リダクションギア50を介して動力分配統合機構40に連結している。動力分配統合機構40は、減速機構60及びディファレンシャル61を介して駆動輪62に連結している。
【0023】
動力分配統合機構40は、遊星歯車機構である。動力分配統合機構40は、サンギア41、リングギア42、複数のピニオンギア43、及びキャリア44を有する。サンギア41は、外歯歯車である。サンギア41は自転する。リングギア42は、内歯歯車である。リングギア42は、サンギア41と同軸で回転する。複数のピニオンギア43は、サンギア41とリングギア42との間に介在している。各ピニオンギア43は、サンギア41及びリングギア42の双方と噛み合っている。各ピニオンギア43は、サンギア41を中心に公転可能である。詳細には、各ピニオンギア43は、自転可能且つサンギア41の周りを公転可能な状態でキャリア44に支持されている。キャリア44は、各ピニオンギア43の公転に従ってサンギア41と同軸で回転する。サンギア41は、第1MG71の回転軸に連結している。キャリア44は、クランク軸14に連結している。リングギア42の出力軸であるリングギア軸45は、リダクションギア50及び減速機構60の双方に連結している。なお、リングギア軸45は駆動軸に相当する。
【0024】
リダクションギア50は、遊星歯車機構である。リダクションギア50は、サンギア51、リングギア52、及び複数のピニオンギア53を有する。サンギア51は、外歯歯車である。サンギア51は自転する。リングギア52は、内歯歯車である。リングギア52は、サンギア51と同軸で回転する。複数のピニオンギア53は、サンギア51とリングギア52との間に介在している。各ピニオンギア53は、サンギア51及びリングギア52の双方と噛み合っている。各ピニオンギア53は、自転可能な一方で、サンギア51の周りを公転不能な状態で支持されている。サンギア51は、第2MG72の回転軸に連結している。リングギア52は、上記したリングギア軸45と連結している。
【0025】
内燃機関10のクランク軸14が動力分配統合機構40のキャリア44にトルクを入力すると、動力分配統合機構40はそのトルクをサンギア41側とリングギア42側とに分配する。サンギア41側に分配されたトルクは、第1MG71の回転軸に入力される。このトルクによって第1MG71の回転軸が回転すると、第1MG71を発電機として機能させることができる。
【0026】
一方、第1MG71を電動機として機能させた場合、第1MG71の回転軸は動力分配統合機構40のサンギア41にトルクを入力する。この場合、動力分配統合機構40は、入力されたトルクをキャリア44側とリングギア42側とに分配する。キャリア44側に入力されたトルクは、クランク軸14に入力される。このトルクによってクランク軸14は回転する。このように、第1MG71は、クランク軸14にトルクを付与できる。
【0027】
なお、リングギア42側に分配された内燃機関10のトルク、又は第1MG71のトルクは、リングギア軸45、減速機構60及びディファレンシャル61を介して駆動輪62に入力される。このとき、減速機構60は、入力されたトルクを増幅して出力する。また、ディファレンシャル61は、左右の駆動輪62に回転速度の差が生じることを許容する。
【0028】
また、車両500が減速する際には第2MG72を発電機として機能させることにより、第2MG72の発電量に応じた回生制動力が車両500に発生する。一方、第2MG72を電動機として機能させた場合には、第2MG72のトルクが、リダクションギア50、リングギア軸45、減速機構60及びディファレンシャル61を介して駆動輪62に入力される。
【0029】
車両500は、第1回転角センサ86、第2回転角センサ87、アクセルセンサ83、及び車速センサ85を有する。
第1回転角センサ86は、第1MG71の回転軸の近傍に位置している。第1回転角センサ86は、第1MG71の回転軸の回転位置Sm1を検出する。第2回転角センサ87は、第2MG72の回転軸の近傍に位置している。第2回転角センサ87は、第2MG72の回転軸の回転位置Sm2を検出する。アクセルセンサ83は、車両500におけるアクセルペダルの操作量であるアクセル操作量ACPを検出する。車速センサ85は、駆動輪62の近傍に位置している。車速センサ85は、車両500の走行速度である車速SPを検出する。
【0030】
<内燃機関の概略構成>
図1に示すように、内燃機関10は、機関本体10A、上記クランク軸14、クランク角センサ18、水温センサ82、及びノッキングセンサ89を有する。
【0031】
機関本体10Aは、4つの気筒11を有する。各気筒11は、機関本体10Aに区画された空間である。図示は省略するが、各気筒11はピストンを収容している。各気筒11内において、ピストンは往復動可能である。各気筒11内のピストンは、コネクティングロッドを介してクランク軸14に連結している。各気筒11内でのピストンの往復動に応じてクランク軸14は回転する。クランク角センサ18は、クランク軸14の近傍に位置している。クランク角センサ18は、クランク軸14の回転位置Scrを検出する。
【0032】
また、機関本体10Aは、ウォータージャケット19を有する。ウォータージャケット19は、冷却水が流通する通路である。ウォータージャケット19は、4つの気筒11の周囲に位置している。水温センサ82は、ウォータージャケット19の出口部分に位置している。水温センサ82は、冷却水の温度THWを検出する。
【0033】
ノッキングセンサ89は、機関本体10Aに取り付けられている。ノッキングセンサ89は、機関本体10Aの振動量VJを検出する。
内燃機関10は、4つの点火プラグ16を有する。各点火プラグ16は、気筒11毎に設けられている。各点火プラグ16の先端は、それぞれの気筒11内に位置している。各点火プラグ16は、火花放電によって、各気筒11内において吸気と燃料との混合気に点火を行う。
【0034】
内燃機関10は、吸気通路15、エアフロメータ81、及び4つの燃料噴射弁17を有する。吸気通路15は、各気筒11に吸気を導入するための通路である。吸気通路15は、各気筒11に接続している。エアフロメータ81は、吸気通路15の途中に位置している。エアフロメータ81は、吸気通路15を流通する吸気量GAを検出する。4つの燃料噴射弁17は、吸気通路15における、エアフロメータ81よりも下流側に位置している。4つの燃料噴射弁17は、気筒11毎に設けられている。4つの燃料噴射弁17は、気筒11毎に燃料を噴射する。
【0035】
内燃機関10は、排気通路21、三元触媒22、及びガソリンパティキュレートフィルタ(以下、GPFと記す。)23を有する。排気通路21は、各気筒11から排気を排出するための通路である。排気通路21は、各気筒11に接続している。三元触媒22は、排気通路21の途中に位置している。三元触媒22は、排気を浄化する。三元触媒22は、酸素吸蔵能力を有する。GPF23は、排気通路21における、三元触媒22よりも下流側に位置している。GPF23は、排気に含まれる粒子状物質(以下、PMと記す。)を捕集する。
【0036】
<制御装置の概略構成>
車両500は、制御装置100を有する。制御装置100は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサとして構成し得る。なお、制御装置100は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路、またはそれらの組み合わせを含む回路(circuitry)として構成してもよい。プロセッサは、CPU及び、RAM並びにROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御装置100は、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリである記憶装置を有する。
【0037】
制御装置100は、車両500に搭載されている各種センサからの検出信号を受信する。具体的には、制御装置100は、次の各パラメータについての検出信号を受信する。
・エアフロメータ81が検出する吸気量GA
・水温センサ82が検出する冷却水の温度THW
・クランク角センサ18が検出するクランク軸14の回転位置Scr
・ノッキングセンサ89が検出する振動量VJ
・第1回転角センサ86が検出する第1MG71の回転軸の回転位置Sm1
・第2回転角センサ87が検出する第2MG72の回転軸の回転位置Sm2
・アクセルセンサ83が検出するアクセル操作量ACP
・車速センサ85が検出する車速SP
制御装置100は、ハイブリッド制御部102、内燃機関制御部104、及びモータ制御部106を有する。以下では、これらそれぞれの機能部について順に説明する。
【0038】
<ハイブリッド制御部>
ハイブリッド制御部102は、車両500を統括的に制御する。ハイブリッド制御部102は、アクセル操作量ACP及び車速SPに基づいて、クランク軸14の回転速度である機関回転速度NEの目標値(以下、目標機関回転速度と記す。)、及び内燃機関10のトルクである機関トルクの目標値(以下、目標機関トルクと記す。)を算出する。また、ハイブリッド制御部102は、アクセル操作量ACP及び車速SPに基づいて、第1MG71のトルクの目標値(以下、目標第1MGトルクと記す。)、及び第2MG72のトルクの目標値(以下、目標第2MGトルクと記す。)を算出する。
【0039】
<内燃機関制御部>
内燃機関制御部104は、ハイブリッド制御部102が算出する目標機関回転速度及び目標機関トルクに基づいて内燃機関10の各種部位を制御する。また、内燃機関制御部104は、機関運転状態を示す各種パラメータを随時算出する。具体的には、内燃機関制御部104は、クランク軸14の回転位置Scrに基づいて機関回転速度NEを算出する。また、内燃機関制御部104は、機関回転速度NE及び吸気量GAに基づいて機関負荷を算出する。さらに、内燃機関制御部104は、機関負荷及び冷却水の温度THWに基づいてGPF23に捕集されたPMの堆積量Wを算出する。
【0040】
内燃機関制御部104は、内燃機関10を制御するための処理の1つとして、点火時期算出処理を実行可能である。内燃機関制御部104は、点火時期算出処理では、点火プラグ16の点火時期の目標値である目標点火時期UGを算出する。なお、内燃機関制御部104は、点火時期算出処理で算出した目標点火時期UGに点火プラグ16による点火が行われるように点火プラグ16を制御する。
【0041】
内燃機関制御部104は、内燃機関10を制御するための処理の1つとして、第1処理を実行可能である。内燃機関制御部104は、第1処理の一環として、停止処理を実行可能である。停止処理は、GPF23によって捕集されたPMを当該GPF23から燃焼除去するための処理である。内燃機関制御部104は、停止処理では、4つの気筒11のうちの1つの気筒11における混合気の燃焼、すなわち燃焼制御を停止する。具体的には、内燃機関制御部104は、停止処理では、1燃焼サイクルにおいて4つの気筒11のうちの1つでは混合気の燃焼を停止する一方で残りの3つでは混合気の燃焼を実施する部分フューエルカットを、連続する複数の燃焼サイクルで繰り返す。すなわち、停止処理では、3つの気筒11で連続して混合気の燃焼を行う燃焼期間と、1つの気筒11で混合気の燃焼を行わない非燃焼期間とを繰り返すことになる。つまり、ここでいう「期間」とは、絶対的な時間として定められるものではなく、1気筒分、2気筒分といったように定められるものである。したがって、燃焼期間及び非燃焼期間の時間的な間隔は、機関回転速度NEに応じて変わる。
【0042】
内燃機関制御部104は、混合気の燃焼を停止する気筒11である停止気筒に対しては、燃料噴射を停止する。一方、内燃機関制御部104は、混合気の燃焼を実施する気筒11である燃焼気筒に対しては、燃焼気筒内の混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチとなるように燃料噴射を行う。なお、内燃機関制御部104が停止処理を実行すると、停止気筒での混合気の燃焼が停止されることに伴い機関回転速度NEは目標機関回転速度よりも小さくなる。また、機関トルクは目標機関トルクよりも小さくなる。
【0043】
内燃機関制御部104は、内燃機関10を制御するための処理の1つとして、禁止判定処理を実行可能である。内燃機関制御部104は、禁止判定処理では、目標点火時期UGが規定時期UTよりも遅角側である場合、すなわち、目標点火時期UGが規定時期UTよりも遅い場合、停止処理の実行を禁止する。内燃機関制御部104は、規定時期UTを予め記憶している。規定時期UTの詳細については後述する。
【0044】
ここで、上記した停止処理を実行する場合、それに付随して後述する補填処理を実行することになる。また、停止処理を実行する場合、内燃機関制御部104が混合気の燃焼に関して通常時に行っている処理である通常処理を中断することになる。そのため、仮に短い期間の中で停止処理の実行と中断とを繰り返すと、これら複数の処理について実行と中断とを繰り返すことになり、制御装置100が実行する処理の内容が煩雑になる。この結果、制御装置100の処理の負担が増える。また、短い期間の中で停止処理の実行と中断とを繰り返すと、GPF23におけるPMの燃焼除去が進まないにも拘わらず何度も停止処理を行うことになり、停止処理の実行が無駄になる。こうした事情を踏まえ、内燃機関制御部104は、停止処理の実行を禁止してから予め定められた一定期間Cが経過するまでは、目標点火時期UGに拘わらず、停止処理の禁止を継続する。上記一定期間Cは、制御装置100の処理の負担を抑えることができると見込まれる時間間隔として、例えば実験によって予め定められている。また、あるタイミングで目標点火時期UGが規定時期UTよりも遅角側になった場合、そのタイミングから相応の期間が経過するまでは、目標点火時期UGが規定時期UTよりも遅角側になり易い状況が継続する可能性が高い。上記一定期間Cは、目標点火時期UGが規定時期UTよりも遅角側になり易い状況が継続するであろうと見込まれる時間幅も考慮して定められている。
【0045】
<モータ制御部>
モータ制御部106は、ハイブリッド制御部102が算出する目標第1MGトルク及び目標第2MGトルクに基づいて、第1MG71及び第2MG72を制御する。モータ制御部106は、実質的には、第1インバータ75を制御することで第1MG71を制御する。また、モータ制御部106は、第2インバータ76を制御することで第2MG72を制御する。
【0046】
モータ制御部106は、第2MG72を制御するための処理の1つとして、第2処理を実行可能である。モータ制御部106は、第2処理の一環として、補填処理を実行可能である。上記のとおり、内燃機関制御部104が停止処理を実行する場合、機関回転速度NE及び機関トルクが低下する。そこで、モータ制御部106は、補填処理では、停止処理において非燃焼期間で不足する機関トルクを補填するように、すなわち1つの気筒11での燃焼制御の停止によって不足する駆動力を補填するように、第2MG72を制御する。その際、モータ制御部106は、非燃焼期間に不足する機関トルクを補填するためのトルクの目標値である目標補填トルクを算出する。そして、モータ制御部106は、非燃焼期間に対応するタイミングで目標補填トルクが出力されるように第2MG72を制御する。なお、目標補填トルクは、点火プラグ16の目標点火時期UGがMBT点火時期であると仮定したときに、非燃焼期間での機関トルクの不足分を全て補うのに足りる大きさとなっている。MBT点火時期とは、現状の機関運転状態において最大トルクを得ることのできる点火時期のことである。
【0047】
ここで、目標補填トルクとの対応で、上記禁止判定処理で利用する規定時期UTについて説明する。上記のとおり、補填処理では、目標補填トルクに応じた第2MG72の出力で停止処理に伴う機関トルクの低下分を補填する。そして、この目標補填トルクは、目標点火時期UGがMBT点火時期であるという仮定のもとで算出されるトルクである。そのため、目標点火時期UGがMBT点火時期よりも遅角側である場合、目標補填トルクに応じた第2MG72からの出力で停止処理に伴う機関トルクの低下分を適切に補填できないことがある。上記の規定時期UTは、目標補填トルクに応じた第2MG72からの出力によって停止処理に伴う機関トルクの低下分を適切に補填できる点火時期の範囲のうち、遅角側の限界値として例えば実験等で定められている。なお、停止処理に伴って機関トルクが低下した場合、その低下に伴うトルクショックがリングギア軸45に作用する。目標補填トルクに応じた第2MG72からの出力によって機関トルクの低下を適切に補填できる場合、リングギア軸45に作用するトルクショックを軽減でき、ひいては車両500に作用する振動が低減できる。すなわち、上記の規定時期UTは、車両500に生じる振動を許容範囲内に抑えることができる値として定められている。
【0048】
<点火時期算出処理の具体的な処理手順>
以下、各処理の具体的な処理手順を、点火時期算出処理、禁止判定処理、第1処理、及び第2処理の順で説明する。
【0049】
内燃機関制御部104は、車両500のイグニッションスイッチがオンになっている間、点火時期算出処理を繰り返し実行する。図2に示すように、内燃機関制御部104は、点火時期算出処理を開始すると、ステップS101の処理を実行する。
【0050】
ステップS101において、内燃機関制御部104は、基本点火時期を算出する。具体的には、内燃機関制御部104は、最新の機関回転速度NE及び機関負荷を参照する。そして、内燃機関制御部104は、これらに基づいて基本点火時期を算出する。本実施形態において、基本点火時期は、MBT点火時期となっている。内燃機関制御部104は、ステップS101の処理を実行すると、処理をステップS102に進める。
【0051】
ステップS102において、内燃機関制御部104は、遅角条件が成立しているか否かを判定する。遅角条件が成立している場合、基本点火時期を遅角補正する必要がある。遅角条件は、複数の遅角用項目の少なくとも1つが満たされていることである。遅角用項目は、具体的には下記の2つである。
(イ)車両500が減速中であり、且つ、機関トルクが規定トルクZT以下である。
(ロ)ノッキングを解消するための遅角補正量がゼロでない。
【0052】
上記(イ)に関して、車両500の減速中に機関トルクがある程度低下した場合、内燃機関10を、当該内燃機関10が自立して駆動を継続できる最小限度の機関回転速度NEにある状態、すなわちアイドル運転状態へと移行させるのが好適である。そして、アイドル運転状態への移行を実現する上では、点火時期を遅角させる必要がある。そうした必要上から上記(イ)が定められている。上記の規定トルクZTは、車両500が減速中であることを前提に、内燃機関10をアイドル運転状態に移行させてもトルクショックが生じないとみなすことができる値として、例えば実験で予め定められている。内燃機関制御部104は、例えば車速SP及び機関回転速度NEといった、上記(イ)の成立可否の判定に必要なパラメータの最新の値を参照して当該(イ)の成立可否を判定する。
【0053】
上記(ロ)に関して、内燃機関10にノッキングが生じた場合、ノッキングを収束させるべく、点火時期を遅角させる必要がある。そうした必要上から要件(ロ)が定められている。上記の遅角補正量は、内燃機関10にノッキングが生じてないときはゼロである。一方、遅角補正量は、内燃機関10にノッキングが生じた場合には正の値になる。遅角補正量は、ノッキングが継続して生じているときには徐々に大きくなる。なお、遅角補正量は、点火時期を遅角側に変更する値の絶対値である。ここで、内燃機関制御部104は、内燃機関10においてノッキングが生じているか否かを判定するノッキング判定処理をバックグラウンドで繰り返し実行している。内燃機関制御部104は、ノッキング判定処理では、ノッキングセンサ89が検出する振動量VJに基づいて、気筒11毎にノッキングの発生の有無を判定する。内燃機関制御部104は、このノッキング判定処理の判定結果に基づいて遅角補正量を算出し、その遅角補正量に基づき要件(ロ)の成立可否を判定する。
【0054】
内燃機関制御部104は、ステップS102において、2つの遅角用項目の双方が満たされていない場合、遅角条件は成立していない判定する(ステップS102:NO)。この場合、内燃機関制御部104は、処理をステップS104に進める。
【0055】
ステップS104において、内燃機関制御部104は、基本点火時期をそのまま目標点火時期UGとして算出する。この後、内燃機関制御部104は、点火時期算出処理の一連の処理を一旦終了する。そして、内燃機関制御部104は、再度ステップS101の処理を実行する。
【0056】
一方、ステップS102において、内燃機関制御部104は、2つの遅角用項目のうち1つでも満たされているものがある場合、遅角条件は成立している判定する(ステップS102:YES)。この場合、内燃機関制御部104は、処理をステップS103に進める。
【0057】
ステップS103において、内燃機関制御部104は、ステップS101で算出した基本点火時期を遅角補正する。そして、内燃機関制御部104は、遅角補正した値を目標点火時期UGとして算出する。なお、内燃機関制御部104は、ステップS102で成立したと判定されている遅角用項目、及び現状の機関運転状態を考慮して遅角補正する際の補正量を定める。すなわち、遅角用項目(イ)が成立しているときには、アイドル運転状態への移行に伴うトルクショックを緩和できる値として予め定められている分だけ、点火時期をMBT点火時期から遅角側に変更する。また、遅角用項目(ロ)が成立しているときには、ノッキングを解消するための遅角補正量分だけ、点火時期をMBT点火時期から遅角側に変更する。内燃機関制御部104は、目標点火時期UGを算出すると、点火時期算出処理の一連の処理を一旦終了する。そして、内燃機関制御部104は、再度ステップS101の処理を実行する。
【0058】
<禁止判定処理の具体的な処理手順>
内燃機関制御部104は、車両500のイグニッションスイッチがオンになっている間、禁止判定処理を繰り返し実行する。図3に示すように、内燃機関制御部104は、禁止判定処理を開始すると、ステップS201の処理を実行する。
【0059】
ステップS201において、内燃機関制御部104は、目標点火時期UGが規定時期UTよりも遅角側であるか否かを判定する。具体的には、内燃機関制御部104は、最新の目標点火時期UGを参照する。そして、内燃機関制御部104は、目標点火時期UGと規定時期UTとを比較する。内燃機関制御部104は、目標点火時期UGが規定時期UTと同一、又は規定時期UTに対して進角側である場合(ステップS201:NO)、処理をステップS203に進める。
【0060】
ステップS203において、内燃機関制御部104は、停止処理の実行の禁止を示すフラグである禁止フラグFをオフにする。この後、内燃機関制御部104は、禁止判定処理の一連の処理を一旦終了する。そして、内燃機関制御部104は、再度ステップS201の処理を実行する。
【0061】
一方、ステップS201において、内燃機関制御部104は、目標点火時期UGが規定時期UTよりも遅角側である場合(ステップS201:YES)、処理をステップS202に進める。
【0062】
ステップS202において、内燃機関制御部104は、禁止フラグFをオンにする。この後、内燃機関制御部104は、処理をステップS204に進める。
ステップS204において、内燃機関制御部104は、ステップS202の処理を終了してから一定期間Cが経過したか否かを判定する。内燃機関制御部104は、ステップS202の処理を終了してから一定期間Cが経過していない場合(ステップS204:NO)、再度ステップS204の処理を実行する。内燃機関制御部104は、一定期間Cが経過するまでステップS204の処理を繰り返す。そして、内燃機関制御部104は、一定期間Cが経過すると(ステップS204:YES)、禁止判定処理の一連の処理を一旦終了する。そして、内燃機関制御部104は、再度ステップS201の処理を実行する。なお、ステップS204の処理により、禁止フラグFをオンにしてから一定期間Cの間は、目標点火時期UGに拘わらず、禁止フラグFがオンである状態が継続することになる。
【0063】
<第1処理の具体的な処理手順>
内燃機関制御部104は、車両500のイグニッションスイッチがオンになっている間、第1処理を繰り返し実行する。図4の(a)に示すように、内燃機関制御部104は、第1処理を開始すると、ステップS301の処理を実行する。
【0064】
ステップS301において、内燃機関制御部104は、停止処理の開始条件が成立しているか否かを判定する。開始条件は、複数の開始用項目が全て満たされることである。複数の開始用項目は、つぎの内容を含んでいる。
(A1)GPF23におけるPMの堆積量Wが第1規定量W1以上である。
(A2)禁止フラグFがオフである。
(A3)目標機関回転速度が概ね一定とみなせる状態が第1設定期間H1以上継続している。
(A4)車速SPがゼロよりも大きい。
【0065】
第1規定量W1は、GPF23におけるPMの堆積量Wが相応に多く、GPF23からPMを除去することが望まれる値として、例えば実験で予め定められている。なお、加速要求があるときのように、目標機関回転速度が急変しているときに停止処理を行って混合気の燃焼を停止することは好ましくない。そうした観点から上記(A3)が開始用項目の1つとして定められている。第1設定期間H1は、目標機関回転速度が安定した状態が継続しているとみなすことができる値として、例えば実験で予め定められている。また、車両500の停止中には内燃機関10の運転を停止させて燃料消費量を「0」にすることが好ましい。そうした観点から上記(A4)が開始用項目の1つとして定められている。
【0066】
内燃機関制御部104は、ステップS301の処理を行うにあたって、例えばPMの堆積量W、禁止フラグF、目標機関回転速度、及び車速SPといった、各開始用項目の成立可否の判定に必要となる各パラメータについて、最新の情報及び過去の履歴を参照する。そして、内燃機関制御部104は、それらの情報に基づいて各開始用項目の成立可否を判定する。
【0067】
内燃機関制御部104は、ステップS301において、複数の開始用項目のうち1つでも満たされていないものがある場合、開始条件が成立していないと判定する(ステップS301:NO)。この場合、内燃機関制御部104は、第1処理の一連の処理を一旦終了する。そして、内燃機関制御部104は、再度ステップS301の処理を実行する。
【0068】
一方、ステップS301において、内燃機関制御部104は、複数の開始用項目の全てが満たされている場合、開始条件が成立していると判定する(ステップS301:YES)。この場合、内燃機関制御部104は、処理をステップS302に進める。
【0069】
ステップS302において、内燃機関制御部104は、混合気の燃焼に関する上記の通常処理をキャンセルし、停止処理を開始する。上記のとおり、内燃機関制御部104は、停止処理では、停止気筒に対しては燃料噴射を停止し、燃焼気筒に対しては混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチになるように燃料噴射を行う。こうした停止処理に伴い、停止気筒からは酸素が排気通路21に排出される。一方、燃焼気筒からは未燃燃料が排気通路21に排出される。排気通路21に排出されたこれら酸素及び未燃燃料が三元触媒22に至ると、当該三元触媒22において未燃燃料が燃焼し、排気の温度が上昇する。そして、この高温の排気がGPF23に至ると、当該GPF23の温度が上昇する。この状態で、停止気筒から排気通路21に排出された酸素がGPF23に至ると、GPF23が捕集したPMが燃焼除去される。内燃機関制御部104は、ステップS302において停止処理を開始すると、処理をステップS303に進める。
【0070】
ステップS303において、内燃機関制御部104は、停止処理の終了条件が成立しているか否かを判定する。終了条件は、複数の終了用項目のうちの少なくとも1が満たされることである。複数の終了用項目は、つぎの内容を含んでいる。
(B1)GPF23におけるPMの堆積量Wが第2規定量W2以下である。
(B2)停止処理を開始してからの経過時間が第2設定期間H2以上である。
(B3)禁止フラグFがオンである。
(B4)目標機関回転速度が急変した。
(B5)車速SPがゼロである。
【0071】
第2規定量W2は、GPF23におけるPMの堆積量Wが十分に小さくなり、停止処理を終了してもよい値として、例えば実験で定められている。第2設定期間H2は、他の制御との兼ね合いから、停止処理の継続が許容される最大値よりもやや短い値として、例えば実験で定められている。なお、(B4)及び(B5)は、上記(A3)及び(A4)と同様の観点の必要上から定められている。内燃機関制御部104は、ステップS303の処理では、ステップS301の処理と同様、各終了用項目の成立可否の判定に必要となるパラメータについて最新の情報及び過去の履歴を参照する。そして、内燃機関制御部104は、それらの情報に基づいて各終了用項目の成立可否を判定する。
【0072】
内燃機関制御部104は、ステップS303において、複数の終了用項目のうち満たされている項目が1つも存在しない場合、終了条件は成立していないと判定する(ステップS303:NO)。この場合、内燃機関制御部104は、再度ステップS303の処理を実行する。内燃機関制御部104は、複数の終了用項目のうちの少なくとも1つが満たされるまでステップS303の処理を繰り返す。そして、内燃機関制御部104は、複数の終了用項目のうち1つでも満たされた場合、終了条件が成立したと判定する(ステップS303:YES)。この場合、内燃機関制御部104は、処理をステップS304に進める。
【0073】
ステップS304において、内燃機関制御部104は、停止処理を終了する。そして、内燃機関制御部104は、通常処理を再開する。内燃機関制御部104は、ステップS304の処理を実行すると、第1処理の一連の処理を一旦終了し、再度ステップS301の処理を実行する。
【0074】
<第2処理の具体的な処理手順>
モータ制御部106は、車両500のイグニッションスイッチがオンになっている間、第2処理を繰り返し実行する。図4の(b)に示すように、モータ制御部106は、第2処理を開始すると、ステップS401の処理を実行する。
【0075】
ステップS401において、モータ制御部106は、内燃機関制御部104が停止処理を開始したか否かを判定する。モータ制御部106は、内燃機関制御部104が停止処理を開始していない場合(ステップS401:NO)、第2処理の一連の処理を一旦終了し、再度ステップS401の処理を実行する。
【0076】
一方、ステップS401において、モータ制御部106は、内燃機関制御部104が停止処理を開始した場合(ステップS401:YES)、処理をステップS402に進める。
【0077】
ステップS402において、モータ制御部106は、補填処理を開始する。上記のとおり、モータ制御部106は、補填処理では、目標補填トルクを算出し、非燃焼期間に対応するタイミングで目標補填トルクが出力されるように第2MG72を制御する。モータ制御部106は、例えば、補填トルクマップを参照して目標補填トルクを算出する。補填トルクマップには、機関回転速度NE毎に、目標点火時期UGがMBT点火時期であるときに必要になる目標補填トルクが、クランク軸14の回転位置Scrに対する変数として定められている。モータ制御部106は、クランク軸14の回転位置Scrに基づいて機関回転速度NEを算出し、機関回転速度NEに対応する補填目標トルクを補填トルクマップから算出する。こうした態様によって目標補填トルクを算出してもよい。モータ制御部106は、ステップS402の処理において補填処理を開始すると、処理をステップS403に進める。
【0078】
ステップS403において、モータ制御部106は、内燃機関制御部104が停止処理を終了したか否かを判定する。モータ制御部106は、内燃機関制御部104が停止処理を終了していない場合(ステップS403:NO)、再度ステップS403の処理を実行する。モータ制御部106は、内燃機関制御部104が停止処理を終了するまでステップS403の処理を繰り返す。そして、モータ制御部106は、内燃機関制御部104が停止処理を終了すると(ステップS403:YES)、処理をステップS404に進める。
【0079】
ステップS404において、モータ制御部106は、補填処理を終了する。この後、モータ制御部106は、第2処理の一連の処理を一旦終了し、再度ステップS401の処理を実行する。
【0080】
<実施形態の作用>
仮に、目標点火時期UGがMTB点火時期である状態で、気筒11内で混合気の燃焼を行うものとする。図5の(a)に示すように、全ての気筒11において混合気の燃焼を順に行う場合、機関トルクは、各気筒11において燃焼行程を迎えるタイミングで繰り返し増加する。すなわち、機関トルクは、クランク軸14の回転位置Scrに応じて周期的に変化する。一方、図5の(b)の実線で示すように、停止処理を行った場合、停止気筒が本来であれば燃焼行程を迎えるタイミングt2で、機関トルクは大幅に低下する。図5の(c)に示すように、補填処理では、停止処理を行った場合に機関トルクが停止気筒に応じた極小値になるタイミングで第2MG72からトルクを出力する。なお、図5の(b)の点線は、全ての気筒11において混合気の燃焼を順に行う場合の機関トルクを示している。
【0081】
いま、停止処理を行っている状態において目標点火時期UGがMTB点火時期から遅角側に急変したものとする。そして、目標点火時期UGが規定時期UTよりも遅角側になったものとする。この場合、図5の(b)の二点鎖線で示すように、燃焼気筒が燃焼行程を迎えたタイミングt1での機関トルクが低下する。これに伴い、機関トルクの推移の全体的な位相が急変する。そして、停止気筒が燃焼行程を迎えるタイミングt2での機関トルクの低下量、及び機関トルクが極小値となるタイミングは、目標点火時期UGがMTB点火時期であった場合のものからずれる。
【0082】
補填処理で第2MG72から出力するトルクは、目標点火時期UGがMTB点火時期であることを前提としたものである。そのため、そうしたトルクを、目標点火時期UGが規定時期UTよりも遅角側になった状況下で出力しても、機関トルクが低下するタイミングとは位相がずれてしまい、機関トルクの低下分を適切に打ち消すことはできない。むしろ、機関トルクの位相のずれ量によっては、機関トルクに、補填処理による第2MG72からのトルクを合わせることによって、新たな位相のピークが生じたり、位相のピークが大きくなったりする。
【0083】
そこで、禁止判定処理では、目標点火時期UGが規定時期UTよりも遅角側である場合、停止処理の禁止フラグFをオンにして停止処理の実行を禁止する。これに伴い、目標点火時期UGが規定時期UTよりも遅角側になった場合、停止処理を行う機会そのものがなくなる。
【0084】
<実施形態の効果>
(1)停止処理の実行中に目標点火時期UGが急変した場合の対応として、目標点火時期UGが急変した情報をモータ制御部106が取得すると共に、変更後の目標点火時期UGに見合った目標補填トルクをモータ制御部106が算出することが考えられる。しかし、目標点火時期UGの変更情報をモータ制御部106が取得する場合、内燃機関制御部104及びモータ制御部106間でその情報をやりとりするのに相応に時間がかかる。さらに、モータ制御部106が目標点火時期UGの変更情報を取得した後、モータ制御部106が目標点火時期UGの変更を加味して目標補填トルクを算出するための処理にも相応に時間がかかる。したがって、目標点火時期UGが変更された後、停止気筒が燃焼行程を迎えるタイミングまでに変更後の目標点火時期UGに応じた目標補填トルクを速やかに算出し、停止気筒が燃焼行程を迎えるタイミングで変更後の目標点火時期UGに応じたトルクを第2MGから出力させるのは困難である。また、仮に通信速度及び処理プロセスを速めて上記のような問題に対処したとしても、目標点火時期UGが相応に大きく遅角側に変更された場合の機関トルクの位相の波形は変則的なものになることから、停止処理に伴う機関トルクの減少分と逆位相となるトルクを第2MG72から出力させるべく第2MG72を制御することは非常に難しい。
【0085】
本実施形態では、目標点火時期UGが遅角側に大きく変更された場合には、停止処理そのものを行わない。すなわち、停止処理に伴う機関トルクの変動を補填できないおそれがある場合には、停止処理を実行しない。したがって、停止処理中のトルク変動を補填できないことを原因とする振動等の発生を防げる。
【0086】
(2)本実施形態では停止処理の実行を禁止してから一定期間Cが経過するまでは停止処理の禁止を継続する。そのため、短い期間の中で停止処理の実行と中断とを繰り返すことを防止できる。このことにより、停止処理の実行・禁止が繰り返されることに伴って、内燃機関10の駆動が不安定になることは防げる。また、制御装置100の処理の負担を抑えることができる。
【0087】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0088】
・目標点火時期UGが実際に規定時期UTよりも遅角側になっている状況下で禁止フラグFをオンにすることに加えて、又は代えて、目標点火時期UGが規定時期UTよりも遅角側になる蓋然性がある状況において禁止フラグFをオンにしてもよい。そうした状況として、例えば、遅角条件における遅角用項目が成立している状況が考えられる。そこで、例えば遅角用項目(イ)が成立しているときに、目標点火時期UGが規定時期UTよりも遅角側であるとみなして禁止フラグFをオンにしてもよい。また、遅角用項目(ロ)が成立しており、且つノッキングが生じていると判定された継続期間が予め定められた規定期間ZH以上になったときに、目標点火時期UGが規定時期UTよりも遅角側であるとみなして禁止フラグFをオンにしてもよい。なお、上述のとおり、ノッキングが生じている継続期間が長いほど、遅角補正量が大きくなる。そのため、ノッキングが生じている継続期間が長いほど、目標点火時期UGが規定時期UTよりも遅角側になる可能性は高くなる。この例では、停止処理に伴うトルク変動を補填できないことを原因とする振動等の発生を未然に防げる。
【0089】
・遅角用項目の内容及び数は、上記実施形態の例に限定されない。上記実施形態で示した遅角用項目に代えて、又は加えて他の項目を設定してもよい。また、遅角用項目の数を1つにしてもよい。
【0090】
・目標点火時期UGを遅角すると、GPF23の昇温を促進できる。そこで、目標点火時期UGを遅角することを利用してGPF23に捕集されたPMを燃焼除去するフィルタ再生処理を内燃機関制御部104が実行可能な構成としてもよい。そして、遅角用項目として、上記フィルタ再生処理の実行中であるという要件を採用してもよい。内燃機関制御部104がフィルタ再生処理を実行可能な構成とする場合、当該フィルタ再生処理の実行条件として、例えば次の各項目を設定しておけばよい。第1項目は、GPF23におけるPMの堆積量Wが規定堆積量ZW以上であることである。規定堆積量ZWは、PMの除去が望まれる値として予め設定しておけばよい。この規定堆積量ZWは、第1規定量W1と同じであっても異なっていてもよい。第2の項目は、吸気量GAが、PMの燃焼除去に必要な規定吸気量以上であることである。第3の項目は、車速SPがゼロよりも大きいことである。すなわち、車両500の停止中におけるフィルタ再生処理の実行を回避する。これらの各項目が全て満たされたときに、実行条件が成立したとしてフィルタ再生処理を行えばよい。
【0091】
・上記変更例のように、内燃機関制御部104がフィルタ再生処理を実行可能な構成とする場合において、フィルタ再生処理の実行条件は上記のものに限定されない。実行条件は、上記第1項目を含んでいればよい。
【0092】
・上記変更例のように、内燃機関制御部104がフィルタ再生処理を実行可能な構成とする場合、当該フィルタ再生処理の実行に伴って目標点火時期UGを遅角させることになる。したがって、目標点火時期UGが規定時期UTよりも遅角側になる蓋然性がある。そこで、目標点火時期UGが実際に規定時期UTよりも遅角側になっている状況下で禁止フラグFをオンにすることに加えて、又は代えて、フィルタ再生処理の実行中であるときに、目標点火時期UGが規定時期UTよりも遅角側であるとみなして禁止フラグFをオンにしてもよい。この例では、停止処理に伴うトルク変動を補填できないことを原因とする振動等の発生を未然に防げる。
【0093】
・車両500の全体構成は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、減速機構60に代えて、複数の変速段を有する変速装置を採用してもよい。
・上記変更例のように、車両500に複数の変速段を有する変速装置を搭載した場合、当該変速装置の変速段の切り替え中には、変速段の切り替えに伴う変速ショックを抑えるべく、目標点火時期UGを遅角させることが好ましい。そこで、遅角用項目として、自動変速機が変速段を切り替え中であるという要件を採用してもよい。
【0094】
・上記変更例のように、車両500に変速装置を搭載した場合、変速装置が変速段を切り替え中である場合、目標点火時期UGを遅角させることになる。したがって、目標点火時期UGが規定時期UTよりも遅角側になる蓋然性がある。そこで、目標点火時期UGが実際に規定時期UTよりも遅角側になっている状況下で禁止フラグFをオンにすることに加えて、又は代えて、自動変速機が変速段を切り替え中である場合、目標点火時期UGが規定時期UTよりも遅角側であるとみなして禁止フラグFをオンにしてもよい。この例では、停止処理に伴うトルク変動を補填できないことを原因とする振動等の発生を未然に防げる。
【0095】
・停止処理の内容は、上記実施形態の例に限定されない。停止処理の実行中に停止気筒の数を増やしたり減らしたりしてもよい。停止処理では、気筒11での混合気の燃焼を行う燃焼期間と、気筒11での混合気の燃焼を行わない非燃焼期間とが繰り返されればよい。すなわち、停止処理は、4つの気筒11のうちの一部の気筒11における燃焼制御を停止する内容になっていればよい。
【0096】
・上記実施形態では、GPF23からPMを燃焼除去することを目的として停止処理を行った。しかし、停止処理の用途は、これに限らない。停止処理の用途に応じて、停止処理の内容は適宜変更すればよい。
【0097】
・第1処理における開始条件及び終了条件の内容は、上記実施形態の例に限定されない。停止処理の内容及び用途に合わせて、適切な内容を開始条件及び終了条件として設定すればよい。
【0098】
・基本点火時期は、MGT点火時期に限定されない。基本点火時期は、機関運転状態に応じてMGT点火時期を基準として適宜補正してもよい。基本点火時期は、機関運転状態に応じた適切な点火時期であればよい。
【0099】
・目標補填トルクの大きさは、上記実施形態の例に限定されない。目標補填トルクは、停止処理に伴う機関トルクの不足分の少なくとも一部を補うことができればよい。
・目標補填トルクの定め方は、上記実施形態の例に限定されない。目標補填トルクを定める上での基準とする点火時期をMGT点火時期から変更してもよい。目標補填トルクを定める上での基準とする点火時期を、機関運転状態に拘わらず一律の時期に定めるのではなく、機関運転状態に応じて変えてもよい。停止処理に伴う機関トルクの不足分を少なからず補填できるトルクとして目標補填トルクを定めることができるのであれば、目標補填トルクの定め方は問わない。
【0100】
・規定時期UTは、上記実施形態の例に限定されない。規定時期UTは、目標補填トルクを定める上での基準とする点火時期を考慮して定めればよい。規定時期UTは、車両500の振動を許容範囲に抑えることができる時期であればよい。
【0101】
・目標点火時期UGが規定時期UTよりも遅角側である状態が、相応の期間継続した場合に、禁止フラグFをオンにしてもよい。この場合、何らかの原因で目標点火時期UGが、瞬間的に規定時期UTよりも遅角側になった場合、停止処理は禁止されない。
【0102】
・停止処理の実行を禁止し始めてから一定期間Cが経過するまで停止処理の禁止を継続することは必須ではない。
・停止処理に伴う機関トルクの不足分を第2MG72ではなく第1MG71から出力してもよい。そして、第1MG71のトルクをクランク軸14に付与してもよい。こうした態様によって、停止処理に伴う機関トルクの不足分を補填してもよい。
【0103】
・車両は、内燃機関とモータジェネレータとを駆動源とし、内燃機関及びモータジェネレータが駆動軸に連結している構成であればよい。例えばモータジェネレータが1つのみであってもよい。こうした車両において、停止処理に伴う機関トルクの不足分を補填するようにモータジェネレータを制御してもよい。なお、駆動軸は、リングギア軸45に限定されず、内燃機関及びモータジェネレータの駆動力を駆動輪に伝達するものであればよい。
【0104】
・内燃機関10の構成は、上記実施形態の例に限定されない。気筒11の数を上記実施形態の数から変更してもよい。内燃機関10は、複数の気筒11、及び気筒11毎の点火プラグ16を有していればよい。
【0105】
上記実施形態及び変更例から導き出せる技術思想を以下に記載する。
・複数の気筒及び前記気筒毎の点火プラグを有する内燃機関と、モータジェネレータとを駆動源とし、前記内燃機関及び前記モータジェネレータが駆動軸に連結しているハイブリッド車両に適用され、前記点火プラグの目標点火時期を算出する点火時期算出処理と、前記複数の気筒のうちの一部の気筒における燃焼制御を停止する停止処理と、前記停止処理中に、前記燃焼制御の停止によって不足する駆動力を補填するように前記モータジェネレータを制御する補填処理とを実行可能であり、前記ハイブリッド車両の減速中において、前記内燃機関のトルクが、予め定められた規定トルク以下の場合、前記停止処理の実行を禁止するハイブリッド車両の制御装置。
【0106】
・複数の気筒、前記気筒毎の点火プラグ、及び排気中の粒子状物質を捕集するフィルタを有する内燃機関と、モータジェネレータとを駆動源とし、前記内燃機関及び前記モータジェネレータが駆動軸に連結しているハイブリッド車両に適用され、前記点火プラグの目標点火時期を算出する点火時期算出処理と、前記複数の気筒のうちの一部の気筒における燃焼制御を停止する停止処理と、前記停止処理中に、前記燃焼制御の停止によって不足する駆動力を補填するように前記モータジェネレータを制御する補填処理と、前記フィルタにおける前記粒子状物質の堆積量が、予め定められた規定堆積量以上であることを含む条件が満たされた場合に前記フィルタに捕集された前記粒子状物質を除去するフィルタ再生処理とを実行可能であり、前記フィルタ再生処理の実行中は、前記停止処理の実行を禁止するハイブリッド車両の制御装置。
【0107】
・複数の気筒及び前記気筒毎の点火プラグを有する内燃機関と、モータジェネレータとを駆動源とし、前記内燃機関及び前記モータジェネレータが駆動軸に連結しているハイブリッド車両に適用され、前記点火プラグの目標点火時期を算出する点火時期算出処理と、前記複数の気筒のうちの一部の気筒における燃焼制御を停止する停止処理と、前記停止処理中に、前記燃焼制御の停止によって不足する駆動力を補填するように前記モータジェネレータを制御する補填処理と、前記内燃機関においてノッキングが生じているか否かを判定するノッキング判定処理とを実行可能であり、前記ノッキング判定処理においてノッキングが生じていると判定された継続期間が予め定められた規定期間以上になった場合、前記停止処理の実行を禁止するハイブリッド車両の制御装置。
【0108】
・複数の気筒及び前記気筒毎の点火プラグを有する内燃機関と、モータジェネレータとを駆動源とし、前記内燃機関及び前記モータジェネレータが駆動軸に連結しており、且つ前記内燃機関に複数の変速段を有する変速装置が連結しているハイブリッド車両に適用され、前記点火プラグの目標点火時期を算出する点火時期算出処理と、前記複数の気筒のうちの一部の気筒における燃焼制御を停止する停止処理と、前記停止処理中に、前記燃焼制御の停止によって不足する駆動力を補填するように前記モータジェネレータを制御する補填処理とを実行可能であり、前記変速装置が変速段を切り替え中である場合、前記停止処理の実行を禁止するハイブリッド車両の制御装置。
【符号の説明】
【0109】
10…内燃機関
11…気筒
16…点火プラグ
23…GPF
45…リングギア軸
71…第1MG
72…第2MG
100…制御装置
500…車両
図1
図2
図3
図4
図5