(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】電池制御装置、電池制御方法、運行管理システムおよび運行管理方法
(51)【国際特許分類】
B60L 58/13 20190101AFI20240730BHJP
H02J 7/00 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
B60L58/13
H02J7/00 P
(21)【出願番号】P 2021014185
(22)【出願日】2021-02-01
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小西 敏之
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-081300(JP,A)
【文献】特開2013-052830(JP,A)
【文献】特開2013-112326(JP,A)
【文献】特開2015-011576(JP,A)
【文献】特表2014-504977(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0242079(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 58/13
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電動車両の動力用の電池に対する充放電を制御する電池制御装置であって、
前記電池の蓄電量を所定の管理範囲内となるように充放電を制御する充放電制御部と、
外気温を取得する外気温取得部と、
取得した前記外気温が所定気温より低いとき、前記管理範囲の上限値である上限蓄電量を、前記外気温が前記所定気温より高いときの上限蓄電量より低い低温時上限蓄電量に設定する上限蓄電量設定部と、
前記外気温が前記所定気温より低いとき、前記管理範囲の下限値である下限蓄電量を、前記外気温が前記所定気温より高いときの下限蓄電量より低い低温時下限蓄電量に設定する下限蓄電量設定部と、
を有する、電池制御装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の電池制御装置であって、前記下限蓄電量設定部は、前記外気温が前記所定気温より低いときの前記管理範囲の幅を、前記外気温が前記所定気温より高いときの幅と同じになるよう前記低温時下限蓄電量を設定する、電池制御装置。
【請求項3】
商用電動車両の動力用の電池に対する充放電を制御する電池制御装置であって、
前記電池の蓄電量を所定の管理範囲内となるように充放電を制御する充放電制御部と、
外気温を取得する外気温取得部と、
取得した前記外気温が所定気温より低いとき、前記管理範囲の上限値である上限蓄電量を、前記外気温が前記所定気温より高いときの上限蓄電量より低い低温時上限蓄電量に設定する上限蓄電量設定部と、
充電対象の前記商用電動車両の次回充電までの走行距離を取得する次回走行距離取得部
と、
を有し、
前記上限蓄電量設定部は、次回充電までの前記走行距離に応じて前記低温時上限蓄電量を変更する、電池制御装置。
【請求項4】
商用電動車両の動力用の電池に対する充放電を制御する電池制御装置であって、
前記電池の蓄電量を所定の管理範囲内となるように充放電を制御する充放電制御部と、
外気温を取得する外気温取得部と、
取得した前記外気温が所定気温より低いとき、前記管理範囲の上限値である上限蓄電量を、前記外気温が前記所定気温より高いときの上限蓄電量より低い低温時上限蓄電量に設定する上限蓄電量設定部と、
充電対象の前記商用電動車両の次回の運行開始時刻を取得する運行開始時刻取得部
と、
を有し、
前記充放電制御部は、前記上限蓄電量が前記低温時上限蓄電量に設定されているとき、前記運行開始時刻の直前に充電が終了するよう制御する、電池制御装置。
【請求項5】
商用電動車両の動力用の電池に対する充放電を制御する電池制御装置であって、
前記電池の蓄電量を所定の管理範囲内となるように充放電を制御する充放電制御部と、
外気温を取得する外気温取得部と、
取得した前記外気温が所定気温より低いとき、前記管理範囲の上限値である上限蓄電量を、前記外気温が前記所定気温より高いときの上限蓄電量より低い低温時上限蓄電量に設定する上限蓄電量設定部と、
外気温の予報を取得する外気温予報取得部
と、
を有し、
前記予報された外気温が前記所定気温より低い場合、前記上限蓄電量設定部は、前記上限蓄電量を前記低温時上限蓄電量に設定する、電池制御装置。
【請求項6】
商用電動車両の運行を管理する運行管理システムであって、
前記商用電動車両の動力用の電池に対する充放電を制御する電池制御装置と、
前記商用電動車両の運行経路を選択する経路選択部と、
を備え、
前記電池制御装置は、
前記電池の蓄電量を所定の管理範囲内となるように充放電を制御する充放電制御部と、
外気温を取得する外気温取得部と、
取得した前記外気温が所定気温より低いとき、前記管理範囲の上限値である上限蓄電量を、前記外気温が前記所定気温より高いときの上限蓄電量より低い低温時上限蓄電量に設定する上限蓄電量設定部と、
を有し、
前記経路選択部は、前記上限蓄電量が前記低温時上限蓄電量に設定された商用電動車両の運行経路として、前記低温時上限蓄電量に対応した走行距離に応じた運行経路を選択する、
運行管理システム。
【請求項7】
複数の商用電動車両の運行を管理する運行管理システムであって、
運行計画の各便に対する各前記商用電動車両の割り当てを決定する配車部と、
前記商用電動車両の動力用の電池に対する充放電を制御する電池制御装置と、
前記電池の温度である電池温度を取得する電池温度取得部と、
便ごとの乗車人員の予測情報を取得する乗車人員予測情報取得部と、
を備え、
前記電池制御装置は、
前記電池の蓄電量を所定の管理範囲内となるように充放電を制御する充放電制御部と、
外気温を取得する外気温取得部と、
取得した前記外気温が所定気温より低いとき、前記管理範囲の上限値である上限蓄電量を、前記外気温が前記所定気温より高いときの上限蓄電量より低い低温時上限蓄電量に設定する上限蓄電量設定部と、
を有し、
前記配車部は、前記複数の商用電動車両のうち、前記取得した電池温度が低い商用電動車両を、前記取得した乗車人員の予測情報に基づく乗車人員が多い便に割り当てる、
運行管理システム。
【請求項8】
複数の商用電動車両の運行を管理する運行管理システムであって、
運行計画の各便に対する各前記商用電動車両の割り当てを決定する配車部と、
前記商用電動車両の動力用の電池に対する充放電を制御する電池制御装置と、
前記電池の温度である電池温度を取得する電池温度取得部と、
便ごとの渋滞の予測情報を取得する渋滞予測情報取得部と、
を備え、
電池制御装置は、
前記電池の蓄電量を所定の管理範囲内となるように充放電を制御する充放電制御部と、
外気温を取得する外気温取得部と、
取得した前記外気温が所定気温より低いとき、前記管理範囲の上限値である上限蓄電量を、前記外気温が前記所定気温より高いときの上限蓄電量より低い低温時上限蓄電量に設定する上限蓄電量設定部と、
を有し、
前記配車部は、前記複数の商用電動車両のうち、前記取得した電池温度が低い商用電動車両を、前記取得した渋滞の予測情報に基づく渋滞が予測される便に割り当てる、
運行管理システム。
【請求項9】
複数の商用電動車両の運行を管理する運行管理システムであって、
運行計画の各便に対する各前記商用電動車両の割り当てを決定する配車部と、
前記商用電動車両の動力用の電池に対する充放電を制御する電池制御装置と、
前記電池の温度である電池温度を取得する電池温度取得部と、
便ごとの走行距離を取得する走行距離取得部と、
を備え、
電池制御装置は、
前記電池の蓄電量を所定の管理範囲内となるように充放電を制御する充放電制御部と、
外気温を取得する外気温取得部と、
取得した前記外気温が所定気温より低いとき、前記管理範囲の上限値である上限蓄電量を、前記外気温が前記所定気温より高いときの上限蓄電量より低い低温時上限蓄電量に設定する上限蓄電量設定部と、
を有し、
前記配車部は、前記複数の商用電動車両のうち、前記取得した電池温度が低い商用電動車両を、前記取得した走行距離に基づく走行距離が長い便に割り当てる、
運行管理システム。
【請求項10】
商用電動車両の動力用の電池に対する充放電を制御する電池制御方法であって、前記電池の蓄電量が所定の管理範囲内となるように制御し、外気温が所定気温より低いとき、前記管理範囲の上限値である上限蓄電量を、前記外気温が前記所定気温より高いときの上限蓄電量より低い低温時上限蓄電量に設定し、前記外気温が前記所定気温より低いとき、前記管理範囲の下限値である下限蓄電量を、前記外気温が前記所定気温より高いときの下限蓄電量より低い低温時下限蓄電量に設定する、電池制御方法。
【請求項11】
請求項
10に記載の電池制御方法であって、前記外気温が前記所定気温より低いときの前記管理範囲の幅を、前記外気温が前記所定気温より高いときの幅と同じになるよう前記下限蓄電量を設定する、電池制御方法。
【請求項12】
商用電動車両の動力用の電池に対する充放電を制御する電池制御方法であって、前記電池の蓄電量が所定の管理範囲内となるように制御し、外気温が所定気温より低いとき、前記管理範囲の上限値である上限蓄電量を、前記外気温が前記所定気温より高いときの上限蓄電量より低い低温時上限蓄電量に設定し、充電対象の前記商用電動車両の次回充電までの走行距離に応じて、前記低温時上限蓄電量を変更する、電池制御方法。
【請求項13】
商用電動車両の動力用の電池に対する充放電を制御する電池制御方法であって、前記電池の蓄電量が所定の管理範囲内となるように制御し、外気温が所定気温より低いとき、前記管理範囲の上限値である上限蓄電量を、前記外気温が前記所定気温より高いときの上限蓄電量より低い低温時上限蓄電量に設定し、前記上限蓄電量が前記低温時上限蓄電量に設定されているとき、充電対象の前記商用電動車両の次回の運行開始時刻の直前に充電が終了するよう制御する、電池制御方法。
【請求項14】
商用電動車両の動力用の電池に対する充放電を制御する電池制御方法であって、前記電池の蓄電量が所定の管理範囲内となるように制御し、外気温が所定気温より低いとき、前記管理範囲の上限値である上限蓄電量を、前記外気温が前記所定気温より高いときの上限蓄電量より低い低温時上限蓄電量に設定し、外気温の予報を取得し、前記予報された外気温が前記所定気温より低い場合、前記上限蓄電量を、事前に、前記低温時上限蓄電量に設定する、電池制御方法。
【請求項15】
動力用の電池を搭載した商用電動車両の運行を管理する運行管理方法であって、
前記電池の蓄電量が所定の管理範囲内となるように制御し、外気温が所定気温より低いとき、前記管理範囲の上限値である上限蓄電量を、前記外気温が前記所定気温より高いときの上限蓄電量より低い低温時上限蓄電量に設定する電池制御方法によって前記上限蓄電量が前記低温時上限蓄電量に設定された商用電動車両について、当該商用電動車両の運行経路として、前記低温時上限蓄電量に対応した走行距離に応じた運行経路を選択する、
運行管理方法。
【請求項16】
電池の蓄電量が所定の管理範囲内となるように制御し、外気温が所定気温より低いとき、前記管理範囲の上限値である上限蓄電量を、前記外気温が前記所定気温より高いときの上限蓄電量より低い低温時上限蓄電量に設定する電池制御方法によって搭載された
動力用の電池の蓄電量が制御される複数の商用電動車両の運行を管理する運行管理方法であって、
前記電池の温度である電池温度を取得し、
便ごとの乗車人員の予測情報を取得し、
前記複数の商用電動車両のうち、前記取得した電池温度が低い商用電動車両を、前記取得した乗車人員の予測情報に基づく乗車人員が多い便に割り当てる、
運行管理方法。
【請求項17】
電池の蓄電量が所定の管理範囲内となるように制御し、外気温が所定気温より低いとき、前記管理範囲の上限値である上限蓄電量を、前記外気温が前記所定気温より高いときの上限蓄電量より低い低温時上限蓄電量に設定する電池制御方法によって搭載された
動力用の電池の蓄電量が制御される複数の商用電動車両の運行を管理する運行管理方法であって、
前記電池の温度である電池温度を取得し、
便ごとの渋滞の予測情報を取得し、
前記複数の商用電動車両のうち、前記取得した電池温度が低い商用電動車両を、前記取得した渋滞の予測情報に基づく渋滞が予測される便に割り当てる、
運行管理方法。
【請求項18】
電池の蓄電量が所定の管理範囲内となるように制御し、外気温が所定気温より低いとき、前記管理範囲の上限値である上限蓄電量を、前記外気温が前記所定気温より高いときの上限蓄電量より低い低温時上限蓄電量に設定する電池制御方法によって搭載された
動力用の電池の蓄電量が制御される複数の商用電動車両の運行を管理する運行管理方法であって、
前記電池の温度である電池温度を取得し、
便ごとの走行距離を取得し、
前記複数の商用電動車両のうち、前記取得した電池温度が低い商用電動車両を、前記取得した走行距離に基づく走行距離が長い便に割り当てる、
運行管理方法。
【請求項19】
商用電動車両の動力用の電池に対する充放電を制御する電池制御方法であって、前記電池の蓄電量が所定の管理範囲内となるように制御し、冬季の所定期間、前記管理範囲の上限値である上限蓄電量を、前記冬季の所定期間以外の期間の上限蓄電量より低い冬季上限蓄電量に設定する、電池制御方法。
【請求項20】
請求項
19に記載の電池制御方法であって、前記冬季の所定期間、前記管理範囲の下限値である下限蓄電量を、前記冬季の所定期間以外の期間の下限蓄電量より低い冬季下限蓄電量に設定する、電池制御方法。
【請求項21】
請求項
20に記載の電池制御方法であって、前記冬季の所定期間の前記管理範囲の幅を、前記冬季の所定期間以外の期間の幅と同じになるよう前記下限蓄電量を設定する、電池制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の電池制御および運行管理に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両は、搭載した電池に電力を蓄え、この電力によりモータを駆動して走行する。
電池は、その温度によって特性が変化する。電池の温度変化による特性の変化に応じて充放電の制御を変更する技術が知られている。下記特許文献1には、ハイブリッド自動車の電池の制御において、電池に対する入出力電圧の上限値および下限値を電池の温度に応じて変更する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池は、温度が低くなると充電時間が長くなる傾向がある。特に、路線バス、タクシー等の商用車両においては、長い充電時間は、車両の稼働率の低下を招く。
【0005】
本発明は、低温時における充電時間の短縮を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電池制御装置は、商用電動車両の動力用の電池に対する充放電を制御する電池制御装置であって、電池の蓄電量を所定の管理範囲内となるように充放電を制御する充放電制御部と、外気温を取得する外気温取得部と、取得した外気温が所定気温より低いとき、蓄電量の管理範囲の上限値である上限蓄電量を、外気温が所定気温より高いときの上限蓄電量より低い低温時上限蓄電量に設定する上限蓄電量設定部とを有する。
【0007】
蓄電量が低い状態で充電を行うと、蓄電量が高い場合に比べて電池の発熱が大きく、電池の温度が上昇する。外気温が低温で電池温度が低下しがちなとき、上限蓄電量を低く設定することで、低い蓄電量のときの充電機会が増加し、電池温度を高めることができる。電池温度が高い状態では、低い状態に比べて充電効率が良く、より短時間で充電が完了する。
【0008】
また、電池制御装置は、外気温が所定気温より低いとき、蓄電量の管理範囲の下限値である下限蓄電量を、外気温が所定気温より高いときの下限蓄電量より低い低温時下限蓄電量に設定する下限蓄電量設定部を有するものとすることができる。これにより、蓄電量がより低い状態で充電が行われ、電池温度を高めることができる。
【0009】
さらに、下限蓄電量設定部は、外気温が所定気温より低いときの蓄電量の管理範囲の幅を、外気温が所定気温より高いときの幅と同じになるよう低温時下限蓄電量を設定するようにすることができる。これにより、外気温が高いときと同等の蓄電量を確保することができる。
【0010】
さらにまた、電池制御装置は、充電対象の商用電動車両の次回充電までの走行距離を取得する次回走行距離取得部を有するものとすることができ、上限蓄電量設定部は、次回充電までの走行距離に応じて低温時上限蓄電量を変更するものとすることができる。これにより、次回走行距離に応じた蓄電量を確保することができる。
【0011】
さらにまた、電池制御装置は、充電対象の商用電動車両の次回の運行開始時刻を取得する運行開始時刻取得部を有するものとすることができ、充放電制御部は、上限蓄電量が低温時上限蓄電量に設定されているとき、運行開始時刻の直前に充電が終了するよう制御するものとすることができる。これにより、充電後、運行開始までの間の電池温度の低下を抑制し、電池を温度の高い状態に維持することができる。
【0012】
さらにまた、電池制御装置は、外気温の予報を取得する外気温予報取得部を有するものとすることができ、予報された外気温が所定気温より低い場合、上限蓄電量設定部は、上限蓄電量を低温時上限蓄電量に設定するものとすることができる。外気温が低下する前に、あらかじめ電池温度を高めておくことができる。
【0013】
本発明に係る他の態様は、商用電動車両の運行を管理する運行管理システムであって、商用電動車両の動力用の電池に対する充放電を制御する電池制御装置と、商用電動車両の運行経路を選択する経路選択部とを備える運行管理システムである。電池制御装置は、電池の蓄電量を所定の管理範囲内となるように充放電を制御する充放電制御部と、外気温を取得する外気温取得部と、取得した外気温が所定気温より低いとき、蓄電量の管理範囲の上限値である上限蓄電量を、外気温が所定気温より高いときの上限蓄電量より低い低温時上限蓄電量に設定する上限蓄電量設定部とを有する。経路選択部は、上限蓄電量が低温時上限蓄電量に設定された商用電動車両の運行経路として、低温時上限蓄電量に対応した走行距離に応じた運行経路を選択する。上限蓄電量が抑えられ蓄電量が低下した車両に応じた走行距離の運行経路が選択することができる。
【0014】
本発明に係るさらに他の態様は、商用電動車両の運行を管理する運行管理システムであって、商用電動車両の動力用の電池に対する充放電を制御する上述した電池制御装置のうちいずれか1つと、運行計画の各便に対する各商用電動車両の割り当てを決定する配車部と、電池温度を取得する電池温度取得部と、便ごとの乗車人員の予測情報を取得する乗車人員予測情報取得部とを備える運行管理システムである。配車部は、複数の商用電動車両のうち、取得した電池温度が低い商用電動車両を、取得した乗車人員の予測情報に基づく乗車人員が多い便に割り当てる。乗車人員が多い便に割り当てることで、蓄電量の低下が早まり蓄電量の低い状態での充電が促される。
【0015】
本発明に係るさらに他の態様は、商用電動車両の運行を管理する運行管理システムであって、商用電動車両の動力用の電池に対する充放電を制御する上述した電池制御装置のうちいずれか1つと、運行計画の各便に対する各商用電動車両の割り当てを決定する配車部と、電池温度を取得する電池温度取得部と、便ごとの渋滞の予測情報を取得する渋滞予測情報取得部とを備える運行管理システムである。配車部は、複数の商用電動車両のうち、取得した電池温度が低い商用電動車両を、取得した渋滞の予測情報に基づく渋滞に掛かることが予測される便に割り当てる。渋滞が予測される便に割り当てることで、蓄電量の低下が早まり蓄電量の低い状態での充電が促される。
【0016】
本発明に係るさらに他の態様は、商用電動車両の運行を管理する運行管理システムであって、商用電動車両の動力用の電池に対する充放電を制御する上述した電池制御装置のうちいずれか1つと、運行計画の各便に対する各商用電動車両の割り当てを決定する配車部と、電池温度を取得する電池温度取得部と、便ごとの走行距離を取得する走行距離取得部とを備える運行管理システムである。配車部は、複数の商用電動車両のうち、取得した電池温度が低い商用電動車両を、取得した走行距離に基づく走行距離が長い便に割り当てる。走行距離が長い便に割り当てることで、蓄電量の低下が早まり蓄電量の低い状態での充電が促される。
【0017】
本発明の他の態様である電池制御方法は、商用電動車両の動力用の電池に対する充放電を制御する電池制御方法であって、電池の蓄電量が所定の管理範囲内となるように制御し、外気温が所定気温より低いとき、蓄電量の管理範囲の上限値である上限蓄電量を、外気温が前記所定気温より高いときの上限蓄電量より低い低温時上限蓄電量に設定する方法である。また、外気温が所定気温より低いとき、上限蓄電量に加え、蓄電量の管理範囲の下限値である下限蓄電量を、外気温が前記所定気温より高いときの下限蓄電量より低い低温時下限蓄電量に設定するようにしてよい。このとき、蓄電量の管理範囲の幅が変更しないように、下限蓄電量を設定するようにしてよい。
【0018】
さらに本発明の他の態様である電池制御方法は、商用電動車両の動力用の電池に対する充放電を制御する電池制御方法であって、電池の蓄電量が所定の管理範囲内となるように制御し、冬季の所定期間、蓄電量の管理範囲の上限値である上限蓄電量を、冬季の所定期間以外の期間の上限蓄電量より低い冬季上限蓄電量に設定する方法である。また、冬季の所定期間において、上限蓄電量に加え、蓄電量の管理範囲の下限値である下限蓄電量を、冬季の所定期間以外の期間の下限蓄電量より低い冬季下限蓄電量に設定するようにしてよい。このとき、蓄電量の管理範囲の幅が変更しないように、下限蓄電量を設定してよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る運行システムの概略構成を示す模式図である。
【
図2】本実施形態に係る車両の概略構成を示す模式図である。
【
図3】本実施形態に係る運行管理装置と電池制御装置の機能を表すブロック図である。
【
図4】本実施形態の上限蓄電量の設定に関する制御フローの一例を示すチャートである。
【
図5】本実施形態の上限蓄電量および下限蓄電量の設定に関する制御フローの一例を示すチャートである。
【
図6】上限および下限蓄電量を常温時の値に設定したときの蓄電量および電池温度の変化のシミュレーション結果を示す図である。
【
図7】上限および下限蓄電量を低温時の値に設定したときの蓄電量および電池温度の変化のシミュレーション結果を示す図である。
【
図8】他の実施形態の電池制御装置の機能を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。
図1は、路線バスの運行システム10を概略的に示す図である。路線バスの車両12は、運行計画に従って、定められた経路(路線)14に沿って走行し、経路14の途中の複数箇所には、停留所16が設けられている。運行システム10は、2つの経路14、すなわち周回経路14Aと往復経路14Bを有する。経路は、周回経路と往復経路のいずれか一方だけでもよく、またより多くの経路を有してもよい。車両12は、各停留所16に、または必要な停留所16に停車しつつ、周回経路14Aを一方向に周回し、また往復経路14Bを往復する。車両12は、搭載された電池の電力により走行する電動車両である。経路14に隣接して充電ステーション18が設けられ、車両12は、充電ステーション18にて電池の充電を行う。充電ステーション18には充電スタンド20が設置され、車両12に備えられたプラグを充電スタンド20のコンセントに接続して充電が行われる。車両12の運行は、運行管理センタ22により管理される。運行管理センタ22では、各経路14の道のりや運行計画などのあらかじめ定められている情報、ならびにその都度変化する各車両12の電池の蓄電量や乗車人員等の運行状況、および外気温や渋滞情報などの外部の状況に基づいて、それぞれの車両12を運行計画が定める各便に割り当てる。運行管理センタ22には、運行管理装置24が設置され、運行管理装置24は各車両12の運行の全てを、または一部を管理する。運行管理の一部は、運行管理センタ22内のオペレータにより実行されてもよい。運行計画は、1つの車両が充電ステーション18から出発し、再び充電ステーション18に戻るまでの運行として規定される便に関する情報(当該便の走行距離、各停留所の出発/到着時刻など)、および各便への各車両12の割り当てを含んでよい。
【0021】
図2は、車両12の概略構成を示す図である。前述のように車両12は電気モータ30により駆動される電動車両である。以下において、電気モータ30を単にモータ30と記す。車両12は、モータ30に供給される電力を蓄える電池32、さらに、電池32の制御を行う電池制御装置34が搭載されている。電池制御装置34は、要求された動力に応じて電池32からモータ30に供給される電力を制御し、またモータ30の回生電力を電池32に充電する制御を行う。また、充電時には、充電スタンド20など外部からの電力を電池32に充電する制御を行う。さらに、車両12には、外気温度を測定する外気温センサ36、および電池32の温度を測定する電池温度センサ38が備えられている。
【0022】
図3は、運行管理装置24および電池制御装置34の機能を表す機能ブロック図である。運行管理装置24および電池制御装置34は、処理装置が所定のプログラムを実行することにより、所定の機能が実現されるよう構成されている。
【0023】
電池制御装置34は、電池32の充放電を制御する充放電制御部40を有する。充放電制御部40は、モータ30に供給される電力、モータ30から回生される電力を制御する。また、充放電制御部40は、電池32の蓄電量を、所定の上限蓄電量と下限蓄電量の間の管理範囲内に制御する。充電時において、充放電制御部40は、電池32の蓄電量を監視し、上限蓄電量に達すると充電を終了する。また、車両12の運行中において、電池32の蓄電量が下限蓄電量に達すると、または下限蓄電量に近づくと、これを報知し充電を促すようにしてよい。電池32の蓄電量は、耐久性を考慮して、蓄電量が100%および0%とならないように中間的な範囲で管理され、通常時においては40-80%の範囲で管理される。後述するように、この車両12または電池制御装置34においては、上限蓄電量は、外気温に関する情報に応じて変更される。また、上限蓄電量に加えて下限蓄電量が外気温に関する情報に応じて変更されてよい。電池制御装置34は、上限および下限蓄電量を設定する上限蓄電量設定部42および下限蓄電量設定部44を含む。
【0024】
電池制御装置34は、外気温取得部46を有する。外気温取得部46は、車両12に備えられた外気温センサ36からの信号に基づき、当該車両周囲の、その時点の外気温を取得する。また、外気温センサを経路14の近傍の1箇所または複数箇所に設置し、これらの外気温センサからの情報を車両12が直接に、または運行管理センタ22を介して取得するようにしてよい。外気温センサは、運行管理センタ22に設置してもよい。また、外気温取得部46は、気象庁など公的機関や民間のサービス機関が発信する天気情報を直接受信し、または運行管理センタ22を介して取得し、当該経路14を含む地域の気温を外気温として取得してもよい。運行管理センタ22からの情報は、有線または無線で取得する。有線で情報取得する場合は、例えば充電ステーション18で充電中に有線接続して情報を取得する。
【0025】
電池制御装置34は、さらに外気温予報取得部48を有する。外気温予報取得部48は、気象庁など公的機関や民間のサービス機関が発信する天気予報を取得し、所定時間内もしくは所定時間後の気温、または翌朝の最低気温を取得する。外気温予報取得部48は、運行管理センタ22を介して有線または無線にて外気温予報を取得してよく、またインターネット等を介して直接取得してもよい。
【0026】
電池制御装置34は、さらに次回走行距離取得部50を含む。次回走行距離取得部50は、運行計画に基づき、当該車両12の次回運行時の走行距離を取得する。次回運行時の走行距離は、車両12が充電ステーション18に停車中に運行管理センタ22から取得してよい。または、車両12が運行中に運行管理センタ22から取得してもよい。電池制御装置34は、さらにまた、運行開始時刻取得部52を含む。運行開始時刻取得部52は、運行計画に基づき、当該車両12の次回運行の開始時刻を取得する。次回運行の開始時刻は、車両12が充電ステーション18に停車中に運行管理センタ22から取得してよい。電池制御装置34は、電池32への1回の充電時間を制限する充電時間制限部53を含む。
【0027】
運行管理装置24は、各経路14および各停留所16間の距離および所要時間などの経路に関する基礎情報54、また各便の運行計画56を記憶する記憶部58を含む。運行計画56は、各便の経路14、充電ステーション18の出発および到着時刻、各停留所16の出発時刻の情報を含み、さらに各便に割り当てられた車両12の情報を含む。運行管理装置24は、各便に車両12を割り当てる配車部60を含む。配車部60は、基礎情報54、各車両12の状態、および外部情報に基づき、各便への車両12の割り当てを行う。
【0028】
運行管理装置24は、ある車両12に対応した運行経路を選択する経路選択部62を含む。例えば、経路選択部62は、蓄電量が制限された車両について、制限された蓄電量で走行可能な運行経路または便を選択する。
【0029】
運行管理装置24は、各車両12の電池32の温度を取得する電池温度取得部64を含む。電池温度取得部64は、各車両12に備わる電池温度センサ38からの信号に基づき、電池温度を取得する。電池温度は無線で、または充電時に有線で取得してよい。電池温度が低い車両12を把握し、この車両12を負荷の大きな便に割り当てることで、当該車両12の電池32の蓄電量の減少が促進される。負荷の大きな便を選定するために、運行管理装置24は、乗車人員予測情報取得部66、渋滞予測情報取得部68、走行距離情報取得部70を備える。乗車人員予測情報取得部66は、過去の運行実績から、また利用予定者の要求に基づき、ある便に対する乗車人員予測を取得する。渋滞予測情報取得部68は、過去の運行実績から、交通情報提供サービスから、または現在運行中の車両から経路14上の渋滞情報を取得する。走行距離情報取得部70は、記憶部58に記憶された情報に基づき便ごとの走行距離を取得する。
【0030】
一般的に、電池は、その温度が低いときには充電効率が悪く、充電時間が長くなる傾向がある。路線バスなどの商用車両において、充電時間が長くなると、運行可能な時間が短くなり、車両の稼働率が低下する。充電時間を短くするためには、充電時の電池の温度を高く保つようにすればよい。この運行システム10においては、電池の蓄電量が低い状態で充電するとき、電池の発熱量が大きくなることを利用して、電池温度を高く保ち、充電時間が長くなることを抑えている。
【0031】
電池制御装置34は、外気温が低いとき、低い蓄電量で充電が実行されるよう常温時に比べて上限蓄電量を低く設定する。上限蓄電量設定部42は、常温時において、蓄電量の上限値を例えば80%に設定している。外気温取得部46が、外気温が所定気温(例えば5℃)以下であることを取得すると、上限蓄電量設定部42は、蓄電量の上限値を常温時より低い低温時上限蓄電量(例えば70%)に設定する。
【0032】
図4は、上限蓄電量を外気温に応じて設定変更する制御に関するフローチャートの一例である。外気温Tを取得し(S100)、取得した外気温Tが所定温度(例えば5℃)を超えているかを判断する(S102)。所定温度を超えていれば、上限蓄電量を常温時の上限蓄電量(例えば80%)に設定する(S104)。一方、ステップS102にて、外気温Tが所定温度以下であった場合、上限蓄電量を低温時の上限蓄電量(例えば70%)に設定する(S106)。
【0033】
上限蓄電量を低くすることで、蓄電量が低い状態で充電する機会が増加する。常温時の蓄電量の上限値が80%、下限値が40%に設定されており、車両12が周回経路14Aを1周すると蓄電量が15%低下する場合、3周すると蓄電量が35%(=80%-15%×3)となり下限値40%を下回ってしまう。したがって、車両12が周回経路14Aを走行する場合、2周ごとに充電ステーション18に戻る必要がある。出発時点で蓄電量が80%であると2周後には蓄電量は50%となる。この状態から充電を行うと、毎回の充電は、蓄電量50-80%の範囲で充電されることになる。上限蓄電量を低温時上限蓄電量70%に設定することで、出発時点の蓄電量は70%、2周後の蓄電量は40%となる。常温時の設定では充電されなかった蓄電量40-50%の範囲、つまりより低い範囲で充電が行われるようになり、発熱量が増加し、電池32の温度を高めることができる。
【0034】
電池制御装置34は、更に低い蓄電量で充電が実行されるよう、外気温が低いとき、常温時に比べて下限蓄電量を低く設定する。下限蓄電量設定部44は、常温時において、蓄電量の下限値を例えば40%に設定している。外気温取得部46が、外気温が所定気温(例えば5℃)以下であることを取得すると、下限蓄電量設定部44は、蓄電量の下限値を常温時より低い低温時下限蓄電量(例えば30%)に設定する。下限蓄電量の変更幅は、上限蓄電量の変更幅と別に定めるようにしてよい。例えば、上限蓄電量を80%から65%に変更するときに、下限蓄電量は40%から30%に変更するようにできる。また、上限蓄電量の変更幅と同じ幅で変更するようにしてよい。例えば、上限蓄電量80%から65%に変更するときに、下限蓄電量を40%から25%に変更することができる。上限蓄電量と下限蓄電量の変更幅を等しくすることにより、有効な蓄電量が変化せず、外気温が常温であることを想定して作成された運行計画を、走行距離の面から変更する必要がない。常温時の蓄電量の上限値が80%、下限値が40%に設定されており、車両12が往復経路14Bを1往復すると蓄電量が20%低下する場合、2往復すると蓄電量が下限値40%(=80%-20%×2)となる。つまり、車両12は、常温時、往復経路14Bを2往復することができる。低温時に、上限蓄電量を65%とし、下限蓄電量を30%とした場合、上限蓄電量と下限蓄電量で規定される蓄電量管理範囲が35%と狭くなり、有効な蓄電量が常温時に比して減少し、車両12は、往復経路14Bを2往復することができない。この場合は、運行計画を見直す必要があるが、上限蓄電量と下限蓄電量の変化幅を同じとし、蓄電量の管理範囲を維持すれば、2往復が可能であり運行計画を変更する必要がない。
【0035】
図5は、上限蓄電量に加え下限蓄電量も外気温に応じて設定変更する制御に関するフローチャートの一例である。
図4に示すフローチャートと同様のステップについては、同一の符号を付しその説明を省略する。ステップS102において、取得した外気温Tが所定温度を超えていれば、下限蓄電量を常温時の下限蓄電量(例えば40%)に設定する(S108)。一方、ステップS102にて、外気温Tが所定温度以下であった場合、下限蓄電量を低温時の下限蓄電量(例えば30%)に設定する(S110)。
【0036】
電池制御装置34は、次回の充電までの走行距離に応じて低温時上限蓄電量を変更してよい。次回走行距離取得部50は、運行計画に基づき当該車両12が割り当てられる次回の便の走行距離を取得する。次回の走行距離は、充電ステーション18に戻る度に運行管理装置24から取得してよく、また車両12において、所定の期間(例えば1日)の運行計画を一度に取得して、その期間内の各便の走行距離を記憶し、そこから取得してもよい。具体例として、運行計画において、周回経路14Aを2周の便、往復経路14Bを1往復の便に交互に割り当てられる車両12について説明する。前述の例にならって、常温時の蓄電量の上限値が80%、下限値が40%に設定されており、周回経路14Aの1周により15%の蓄電量を消費し、往復経路14Bの1往復により20%の蓄電量を消費するとする。仮に、必要な蓄電量が多い周回経路14Aを2周する便に合わせて、低温時上限蓄電量を設定する場合、低温時上限蓄電量は70%となる。下限蓄電量については変更しない。この場合、往復経路14Bを1往復した後の蓄電量は50%(=70%-20%)となり、この直後の充電は、50-70%の蓄電量で実行される。一方、次回の運行の走行距離に応じて、上限蓄電量を変更することにより、より低い範囲(例えば50%以下)での充電が可能になる。例えば、周回経路14Aを走行する前の充電において低温時上限蓄電量を70%に設定し、往復経路14Bを走行する前の充電において低温時上限蓄電量を60%に設定する。この上限蓄電量に従って充電を行えば、周回経路14Aを2周する便において必要な有効蓄電量30%が確保され、往復経路14Bを1往復する便において必要な有効蓄電量20%が確保される。往復経路14Bを1往復する便の運行後、蓄電量は40%となり、この直後の充電において、蓄電量が40-70%の範囲で充電が行われる。低温時上限蓄電量を変更しない場合に比較して、蓄電量が40-50%の範囲での充電機会が増え、より低い蓄電量のときに充電が実行される。
【0037】
電池制御装置34は、上限蓄電量が低温時上限蓄電量に設定されているとき、次回の運行開始時刻直前に終了するように充電してよい。運行開始時刻取得部52は、運行計画に基づき当該車両12が割り当てられる次回の便の運行開始時刻を取得する。次回の運行開始時刻は、充電ステーション18に戻る度に運行管理装置24から取得してよく、また車両12において、所定の期間(例えば1日)の運行計画を一度に取得して、その期間内の各便の運行開始時刻を記憶し、そこから取得してもよい。運行開始時刻から逆算して充電開始時刻を算出する。電池温度と、設定された低温時上限蓄電量までの充電に要する時間とをあらかじめ対応付けて記憶しておき、この対応付けに基づき充電に要する時間を取得し、充電開始時刻を算出してよい。充電と運行の間に時間を空けないようにすることで、充電時に上昇した電池温度が運行を開始するまでに低下しないようにする。これにより、運行時の回生電力を有効に充電できる。
【0038】
電池制御装置34は、外気温の予報を取得し、外気温が下がる以前に上限蓄電量を常温時に比べて低く設定してよい。上限蓄電量の変更に加えて、下限蓄電量を常温時に比べ低く設定してよく、また蓄電量の管理範囲を常温時と同じとなるよう下限蓄電量を設定してよい。現在の外気温が高くても、外気温が下がる前に電池をあらかじめ温めておくことができる。外気温予報取得部48は、今晩の、明朝の、所定時間後の、または所定時間先までの外気温予報を取得する。また、外気温予報取得部48は、明日の最低気温の予報を取得してもよい。取得された外気温予報に基づき上限蓄電量設定部42は、外気温予報において外気温が所定温度より低くなるとされた場合、外気温が所定温度に低下する以前に上限蓄電量を低温時上限蓄電量に設定する。また、下限蓄電量設定部44は、上限蓄電量設定部42と共に低温時の蓄電量に、つまり下限蓄電量を低温時下限蓄電量に設定してよい。低温時上限蓄電量および低温時下限蓄電量を設定する時刻は、外気温が所定気温より低くなると予報された時刻より所定時間、例えば5時間前としてよい。また、あらかじめ定められた時刻、例えば午前0時としてもよい。
【0039】
外気温予報取得部48は、週間天気予報などの数日間にわたる予報を取得してよい。この期間の予報により低温が予想される場合は、上限蓄電量設定部42は、この期間中、上限蓄電量を低温時蓄電量に設定する。また、下限蓄電量設定部44は、上限蓄電量設定部42と共に低温時の蓄電量に、つまり下限蓄電量を低温時下限蓄電量に設定してよい。期間中の低温の判断は、例えば、最低気温が所定の気温を下回る日数が、期間中の所定の日数に達することをもって判断してよい。例えば、7日中3日の最低気温が所定の気温を下回る場合、この期間中、上限蓄電量および下限蓄電量を低温時上限蓄電量および低温時下限蓄電量に設定してよい。
【0040】
電池制御装置34は、外気温が所定温度より低いとき、または予報により外気温が所定温度より低くなることが想定されるとき、1回の充電時間を制限してよい。これにより、蓄電量が低い状態で電池32が使用される機会が増え、充電も蓄電量が低い状態で行われる。充電時間制限部53は、外気温取得部46または外気温予報取得部48により、外気温が低い、または低くなるとの情報に基づき、1回の充電時間を短い時間に設定する。設定される時間は、電池温度と、この電池温度で充電したとき上限蓄電量になるまでの時間とをあらかじめ関連付けておき、この時間よりも短い時間に設定してよい。電池温度は、電池温度センサ38から取得してよい。
【0041】
運行管理装置24は、上限蓄電量が低温時上限蓄電量に設定された車両12について、低温時上限蓄電量に対応した走行距離に応じた経路を選択するようにしてよい。上限蓄電量が低温時上限蓄電量に設定され、有効な蓄電量が減少した場合、これに応じて短い運行経路が選択される。例えば、周回経路14Aを1周する運行経路および2周する運行経路、往復経路14Bを1往復する運行経路および2往復する運行経路、ならびに周回経路14Aを1周し往復経路14Bを1往復する運行経路をあらかじめ設定しておく。周回経路14Aを1周する運行経路は蓄電量が15%減少し、往復経路14Bを1往復する運行経路は蓄電量が20%減少するとする。このとき、周回経路14Aを2周する運行経路では30%、往復経路14Bを2往復する運行経路では40%、周回経路14Aと往復経路14Bをそれぞれ1回走行する経路では35%、蓄電量が減少する。常温時において、上限蓄電量が80%、下限蓄電量が40%であれば、上記の運行経路のいずれもが選択可能である。低温時において上限蓄電量が低くされたとき、またはこれに加えて下限蓄電量が低くされ、有効な蓄電量が減少したとき、この蓄電量にて走行可能な運行経路が上記の中から選択される。例えば、上限蓄電量が65%に設定され、下限蓄電量に変更がない場合、減少する蓄電量が25%以下の運行経路、つまり周回経路14Aを1周する運行経路と、往復経路14Bを1往復する運行経路が選択対象となる。上限蓄電量が65%に、下限蓄電量が30%に設定された場合は、上記の運行経路のうち、往復経路14Bを2往復する以外の運行経路が選択対象となる。この制限された運行経路から運行計画が作成される。
【0042】
運行管理装置24は、電池温度を取得し、電池温度が低い車両12について、負荷が高いと想定される便に割り当てを行うようにしてよい。負荷が高い便に割り当てることにより、この車両12の蓄電量をより減少させることができ、次の充電時において、蓄電量が低い状態で充電させることができる。乗車人員が多くなる便、渋滞区間を走行する便、走行距離が長い便などが負荷が高くなる。
【0043】
乗車人員予測情報取得部66は、運行実績、利用予定者の要求などに基づき、ある便の乗車人員を予測する。運行実績は、例えば、各経路14における曜日ごと、時間帯ごとの乗車人員である。過去の運行における乗車人員を、曜日ごと、時間帯ごとに集計して実績を作成し、これを記憶しておく。また、運行実績は、経路14に近接する施設のイベントと乗車人員の関連を示す情報を含んでよい。また、利用者の要求に応えて停留所16に停車するシステムの場合、その要求情報に基づき乗車人員を予測することができる。運行実績は、例えば運行管理装置24の記憶部58に記憶されてよい。配車部60は、電池温度が低い車両12を、乗車人員が所定数より多くなると予測される便に割り当てる。すでに割り当てが定まっている場合、車両12を入れ替えるなどの変更を行う。
【0044】
渋滞予測情報取得部68は、運行実績、現在運行中の車両からの情報に基づき、またVICS(登録商標)等の交通情報提供サービスから取得した渋滞情報に基づき、ある便が渋滞に掛かることを予測する。運行実績は、例えば、各経路14における曜日ごと、時間帯ごとの停留所16間の所要時間であり、所要時間が他の時間帯より長いことをもって、その時間帯に渋滞が発生すると予測することができる。また、現在運行中の車両12からの情報、例えば走行速度に基づき渋滞情報を取得する。ある車両12の走行速度が低速度の状態が長い間続く場合、また停止、発進を頻繁に繰り返す場合、その車両12が走行している区間に渋滞が発生していると判断する。また、VICS(登録商標)等の交通情報提供サービスから渋滞情報を取得することもできる。ある便が、渋滞が発生している区間を走行する場合、当該便がこの渋滞に掛かることが予測できる。運行実績は、例えば運行管理装置24の記憶部58に記憶されてよい。配車部60は、電池温度が低い車両12を、渋滞に掛かると予測される便に割り当てる。すでに割り当てが定まっている場合、車両12を入れ替えるなどの変更を行う。
【0045】
走行距離情報取得部70は、記憶部58に記憶された運行計画56および基礎情報54に基づき、便の走行距離を取得する。電池温度が低い車両12について、次回の運行について、走行距離の長い便に割り当てられる。配車部60は、電池温度が低い車両12を、走行距離が長い便に割り当てる。すでに割り当てが定まっている場合、車両12を入れ替えるなどの変更を行う。
【0046】
図6,7は、上限蓄電量および下限蓄電量の設定を変更したときの蓄電量と電池温度のシミュレーション結果を比較して示す図である。
図6は、上限蓄電量を80%、下限蓄電量を40%に設定したとき、
図7は、上限蓄電量を65%、下限蓄電量を25%に設定したときの蓄電量と電池温度の変化を示す。外気温は、冬季を想定して、最低-6℃、最高5℃とし、日ごとの変動は、各日同一としている。車両12は、73.5分間走行後に充電ステーション18に戻り、充電を行う。蓄電量が上限蓄電量に達するまで充電を行い、充電完了後、運行を再開する。この走行と充電を休みなく繰り返す。
図6,7のシミュレーション結果において、共にシミュレーション開始当初は、電池温度が低く、この時間帯は除外して比較、検討を行う。
【0047】
蓄電量の管理範囲を40-80%としたとき(
図6)、1回の充電時間は85~110分、電池温度の平均値は8.4℃、平均充電電力は10kWであった。これに対し、管理範囲を25-65%としたとき(
図7)、1回の充電時間は70~85分、電池温度の平均値は11℃、平均充電電力は13kWであった。蓄電量の管理範囲を低くすることにより、電池温度が上昇し、充電時間が短縮することが分かる。これにより、蓄電量の管理範囲が40-80%のときの1日の走行回数が7回であったのを、管理範囲を25-65%とすることにより、8回とすることができた。
【0048】
上述の実施形態において、電池制御装置34は、車両12に備えられたものとして説明したが、一部の機能を運行管理センタ22など地上に設置された装置にて実行してもよい。例えば、外気温取得部46は地上側に設け、上限蓄電量設定部42は外気温取得部46からの上限蓄電量を変更する指令を受けて、上限蓄電量の設定を変更するようにしてよい。
【0049】
上述した電池制御装置34および運行管理センタ22の機能の一部は、車両12に搭乗するオペレータまたは運行管理センタ22に居るオペレータが実行してもよい。例えば、車両12に外気温を表示するモニタを設け、オペレータは、モニタに表示された外気温が低くなったとき、上限蓄電量を手動で変更するようにしてもよい。また、運行管理センタ22のオペレータが遠隔で上限蓄電量を変更するようにしてもよい。
【0050】
図8は、他の実施形態を示す図であり、特に電池制御装置80の機能を示すブロック図である。運行システム10の全体構成、車両12の構成、運行管理装置24の構成については、
図1,2に示す実施形態と同様とすることができる。電池制御装置80は、電池32の充放電を制御する充放電制御部40を有する。充放電制御部40については、すでに説明されているので、説明は省略する。
【0051】
電池制御装置80は、季節に応じて、特に冬季において蓄電量の管理範囲を、他の季節のときの管理範囲より低い蓄電量の範囲に設定し、蓄電量が低いときの充電機会を増やして電池温度を高く維持するようにする。電池温度が高いときは充電効率がよく、低温による充電時間の増加を抑制することができる。上限蓄電量設定部82は、冬季に用いる冬季上限蓄電量と、冬季以外に用いる夏季上限蓄電量を選択的に設定する。冬季上限蓄電量は、夏季上限蓄電量より低い値であり、例えば夏季上限蓄電量を80%、冬季上限蓄電量を65%とすることができる。下限蓄電量設定部84は、冬季に用いる冬季下限蓄電量と、冬季以外に用いる夏季下限蓄電量を選択的に設定する。冬季下限蓄電量は、夏季下限蓄電量より低い値であり、例えば夏季下限蓄電量を40%、冬季上限蓄電量を25%とすることができる。充放電制御部40は、冬季においては、冬季上限蓄電量を上限、冬季下限蓄電量を下限として蓄電量を管理し、冬季以外においては、夏季上限蓄電量を上限、夏季下限蓄電量を下限として蓄電量を管理する。上限蓄電量および下限蓄電量は、時季設定指令86に基づき設定される。冬季の期間が指定された年間スケジュールを記憶しておき、冬季の開始日になると、冬季上限蓄電量および冬季下限蓄電量を設定する時季設定指令86が発せられ、冬季の終了日を過ぎると夏季上限蓄電量および夏季下限蓄電量を設定する時季設定指令86が発生される。冬季は、例えば12月1日から2月末日と定めることができ、この場合、12月1日に冬季上限蓄電量および冬季下限蓄電量が設定され、3月1日に夏季上限蓄電量および夏季下限蓄電量が設定される。年間スケジュールは、例えば運行管理装置24の記憶部58に格納されてよく、運行管理装置24が年間スケジュールに基づき各車両12に時季設定指令を発するようにしてよい。また、車両12にて年間スケジュールを記憶してもよい。また、運行管理センタ22のオペレータ、車両12に搭乗したオペレータ、または車両12の整備員などが時季設定の操作を手動で行ってもよい。この操作に基づき指令が発せられ、冬季上限蓄電量および冬季下限蓄電量または夏季上限蓄電量および夏季下限蓄電量が設定される。
【0052】
季節に対応して上限蓄電量のみ変更してもよい。また、上限蓄電量の変更幅と下限蓄電量の変更幅を等しくして管理範囲の幅が変わらないようにしてよく、また変更幅を異ならせて管理範囲の幅が変わるようにしてもよい。
【0053】
運行システム10において、充電ステーション18は、1箇所のみ設けられているが、複数箇所に設けてもよい。例えば、往復経路14Bの終端地点に更に設けてよい。
【0054】
また、上述の実施形態において、上限蓄電量、下限蓄電量は、それぞれ常温用と低温用の2つを設定して2段階に変更されるようにしたが、3段階に設定するようにしてもよい。この場合、上限および下限蓄電量を変更する外気温も段階の数に応じて2以上となる。
【0055】
また、ある車両について、稼動しない時間が長くなる場合、例えば、利用者が減少する深夜から早朝にかけて運行しない車両については、低温時においても、この期間だけ蓄電量上限値を常温時の上限値に、またはフル充電(100%)となるように設定してもよい。
【0056】
また、上述の実施形態においては、経路が定まっている路線バスについて説明したが、走行経路が定まっていないタクシーやハイヤーについても、本発明に従って上限蓄電量、また上限蓄電量に加えて下限蓄電量を低く設定すことで、蓄電量が低い状態で充電が行われるようにして充電時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0057】
10 運行システム、12 車両、14 経路、14A 周回経路、14B 往復経路、16 停留所、18 充電ステーション、22 運行管理センタ、24 運行管理装置、30 電気モータ、32 電池、34,80 電池制御装置、36 外気温センサ、38 電池温度センサ、40 充放電制御部、42,82 上限蓄電量設定部、44,84 下限蓄電量設定部、46 外気温取得部、48 外気温予報取得部、50 次回走行距離取得部、52 運行開始時刻取得部、54 基礎情報、56 運行計画、58 記憶部、60 配車部、62 経路選択部、64 電池温度取得部、66 乗車人員予測情報取得部、68 渋滞予測情報取得部、70 走行距離情報取得部、86 時季設定指令。