(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】制御装置、運搬システム、制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240730BHJP
B25J 5/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G05D1/43
B25J5/00 A
(21)【出願番号】P 2021016918
(22)【出願日】2021-02-04
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】太田 順也
(72)【発明者】
【氏名】岩本 国大
(72)【発明者】
【氏名】糸澤 祐太
(72)【発明者】
【氏名】古村 博隆
(72)【発明者】
【氏名】高木 裕太郎
(72)【発明者】
【氏名】中本 圭昭
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-199149(JP,A)
【文献】特開平06-278080(JP,A)
【文献】特開2020-059063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00 - 1/87
B25J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さ方向に伸縮可能な伸縮部
と、
前記伸縮部を伸縮するための伸縮駆動機構と、
車輪と、
前記車輪を駆動するための車輪駆動機構と、
を有する運搬ロボットの制御装置であって、
前記伸縮部の伸縮量に応じた前記運搬ロボットの固有振動数を推定する推定部と、
前記運搬ロボットの固有振動数と、前記運搬ロボットの動作時の振動発生部
である前記伸縮駆動機構の角振動数と、が一致しないように、前記運搬ロボットの
前記伸縮駆動機構を制御する制御部と、
前記伸縮部の上端部に設けられた載置部上に載置される被運搬物の重量の計測結果を取得する重量取得部と、
を備え
、
前記推定部は、前記載置部の重量と前記被運搬物の重量との合計重量と、前記伸縮部の剛性と、に基づいて、前記運搬ロボットの固有振動数を推定する、制御装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の制御装置と、
前記運搬ロボットと、
を備える、運搬システム。
【請求項3】
前記伸縮部の上端部に設けられた載置部上に載置される被運搬物の重量を計測する重量センサを備える、請求項
2に記載の運搬システム。
【請求項4】
高さ方向に伸縮可能な伸縮部
と、
前記伸縮部を伸縮するための伸縮駆動機構と、
車輪と、
前記車輪を駆動するための車輪駆動機構と、
を有する運搬ロボットの制御方法であって、
前記伸縮部の伸縮量に応じた前記運搬ロボットの固有振動数を推定する工程と、
前記運搬ロボットの固有振動数と、前記運搬ロボットの動作時の振動発生部
である前記車輪駆動機構の角振動数と、が一致しないように、前記運搬ロボットの
前記車輪駆動機構を制御する工程と、
前記伸縮部の上端部に設けられた載置部上に載置される被運搬物の重量を計測する工程と、
前記載置部の重量と前記被運搬物の重量との合計重量と、前記伸縮部の剛性と、に基づいて、前記運搬ロボットの固有振動数を推定する工程と、
を備える、制御方法。
【請求項5】
高さ方向に伸縮可能な伸縮部
と、
前記伸縮部を伸縮するための伸縮駆動機構と、
車輪と、
前記車輪を駆動するための車輪駆動機構と、
を有する運搬ロボットの制御プログラムであって、
前記伸縮部の伸縮量に応じた前記運搬ロボットの固有振動数を推定する処理と、
前記運搬ロボットの固有振動数と、前記運搬ロボットの動作時の振動発生部
である前記伸縮駆動機構の角振動数と、が一致しないように、前記運搬ロボットの
前記伸縮駆動機構を制御する処理と、
前記伸縮部の上端部に設けられた載置部上に載置される被運搬物の重量を計測する処理と、
前記載置部の重量と前記被運搬物の重量との合計重量と、前記伸縮部の剛性と、に基づいて、前記運搬ロボットの固有振動数を推定する処理と、
をコンピュータに実行させる、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、運搬システム、制御方法及び制御プログラムに関し、例えば、高さ方向に伸縮可能な伸縮部を有する運搬ロボットの制御装置、運搬システム、制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
高さ方向に伸縮可能な伸縮部を有する運搬ロボットが動作する場合、伸縮部の伸縮量に応じて運搬ロボットの固有振動数が異なるが、その際に運搬ロボットが安定するように当該運搬ロボットの振動が抑制されることが好ましい。
【0003】
ここで、特許文献1の運搬装置は、設置面に沿って移動するように当該設置面に接続された走行台車、及び走行台車に設けられ、被運搬物を載せて昇降する昇降台車を備えており、昇降台車の高さに応じた固有振動数に基づいて、振動が抑制される走行台車の加速時間又は減速時間を求める構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願人は、以下の課題を見出した。特許文献1の運搬装置は、走行台車が設置面に接続されているため、昇降台車の高さに拘わらず、走行台車を安定させつつ走行させることができるが、運搬ロボットは移動面に接続されていないため、伸縮部の伸縮量に応じて、運搬ロボットが安定させつつ動作させることが困難である。
【0006】
本開示は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、運搬ロボットの伸縮部の伸縮量に応じて、運搬ロボットを安定させつつ動作させることが可能な、制御装置、運搬システム、制御方法及び制御プログラムを実現する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の制御装置は、高さ方向に伸縮可能な伸縮部を有する運搬ロボットの制御装置であって、
前記伸縮部の伸縮量に応じた前記運搬ロボットの固有振動数を推定する推定部と、
前記運搬ロボットの固有振動数と、前記運搬ロボットの動作時の振動発生部の角振動数と、が一致しないように、前記運搬ロボットの駆動機構を制御する制御部と、
を備える。
【0008】
上述の制御装置は、前記伸縮部の上端部に設けられた載置部上に載置される被運搬物の重量の計測結果を取得する重量取得部を備え、
前記推定部は、前記載置部の重量と前記被運搬物の重量との合計重量と、前記伸縮部の剛性と、に基づいて、前記運搬ロボットの固有振動数を推定することが好ましい。
【0009】
本開示の一態様の運搬システムは、
上述の制御装置と、
前記運搬ロボットと、
を備える。
【0010】
上述の運搬システムは、前記伸縮部の上端部に設けられた載置部上に載置される被運搬物の重量を計測する重量センサを備えることが好ましい。
【0011】
上述の運搬システムにおいて、前記振動発生部は、前記伸縮部を伸縮する駆動機構であることが好ましい。
【0012】
本開示の一態様の制御方法は、高さ方向に伸縮可能な伸縮部を有する運搬ロボットの制御方法であって、
前記伸縮部の伸縮量に応じた前記運搬ロボットの固有振動数を推定する工程と、
前記運搬ロボットの固有振動数と、前記運搬ロボットの動作時の振動発生部の角振動数と、が一致しないように、前記運搬ロボットの駆動機構を制御する工程と、
を備える。
【0013】
上述の制御方法は、
前記伸縮部の上端部に設けられた載置部上に載置される被運搬物の重量を計測する工程と、
前記載置部の重量と前記被運搬物の重量との合計重量と、前記伸縮部の剛性と、に基づいて、前記運搬ロボットの固有振動数を推定する工程と、
を備えることが好ましい。
【0014】
本開示の一態様の制御プログラムは、高さ方向に伸縮可能な伸縮部を有する運搬ロボットの制御プログラムであって、
前記伸縮部の伸縮量に応じた前記運搬ロボットの固有振動数を推定する処理と、
前記運搬ロボットの固有振動数と、前記運搬ロボットの動作時の振動発生部の角振動数と、が一致しないように、前記運搬ロボットの駆動機構を制御する処理と、
をコンピュータに実行させる。
【0015】
上述の制御プログラムは、
前記伸縮部の上端部に設けられた載置部上に載置される被運搬物の重量を計測する処理と、
前記載置部の重量と前記被運搬物の重量との合計重量と、前記伸縮部の剛性と、に基づいて、前記運搬ロボットの固有振動数を推定する処理と、
をコンピュータに実行させることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、運搬ロボットの伸縮部の伸縮量に応じて、運搬ロボットを安定させつつ動作させることが可能な、制御装置、運搬システム、制御方法及び制御プログラムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態の運搬システムの制御系を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態の運搬ロボットにおいて、伸縮部が収縮した状態を示す側面図である。
【
図3】実施の形態の運搬ロボットにおいて、伸縮部が伸長した状態を示す側面図である。
【
図4】本実施の形態の運搬ロボットの伸縮部の構成を説明するための図である。
【
図6】載置部上に載置された被運搬物の振幅と、伸縮機構における駆動機構の案内部の角振動数と、の関係を示す図である。
【
図7】実施の形態の運搬ロボットにおいて、被運搬物を所望の高さに運搬するために伸縮部を制御する流れを示すフローチャート図である。
【
図8】制御装置及び運搬システムに含まれるハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本開示が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0019】
本実施の形態の運搬システムは、例えば、高さ方向(即ち、上下方向)に伸縮可能な伸縮部を有する運搬ロボットが被運搬物を運搬する際に好適である。
図1は、本実施の形態の運搬システムの制御系を示すブロック図である。運搬システム1は、
図1に示すように、運搬ロボット2及び制御装置3を備えている。
【0020】
図2は、本実施の形態の運搬ロボットにおいて、伸縮部が収縮した状態を示す側面図である。
図3は、本実施の形態の運搬ロボットにおいて、伸縮部が伸長した状態を示す側面図である。
図2及び
図3では、運搬ロボット2の載置部23上に被運搬物4が載置された状態の運搬ロボット2を示している。
【0021】
運搬ロボット2は、例えば、自律移動ロボットである。運搬ロボット2は、
図1乃至
図3に示すように、移動部21、伸縮機構22、載置部23及び重量センサ24を備えている。移動部21は、ロボット本体21a、ロボット本体21aに回転可能に設けられた一対の駆動車輪21b並びに従動車輪21c、及び各駆動車輪21bを回転駆動する一対の駆動機構21dを備えている。
【0022】
駆動機構21dは、モータ及び減速機などを備えており、例えば、当該モータの回転角速度が回転センサによって検出される構成である。これらの駆動車輪21bが回転することで、ロボット本体21aの前進移動、後進移動、及び回転が実現される。これにより、ロボット本体21aは、任意の位置に移動することができる。
【0023】
なお、上記移動部21の構成は一例であり、これに限定されない。例えば、移動部21の駆動車輪21b及び従動車輪21cの数は任意でよく、ロボット本体21aを任意の位置に移動させることができれば、公知の機構を用いることができる。
【0024】
伸縮機構22は、運搬ロボット2の高さ方向に伸縮する。伸縮機構22は、例えば、テレスコピック型の伸縮機構で構成することができ、例えば、伸縮部22a及び駆動機構22bを備えている。
【0025】
伸縮部22aは、
図2及び
図3に示すように、移動部21から上方に突出している。ここで、
図4は、本実施の形態の伸縮部の構成を説明するための図である。例えば、伸縮部22aは、第1の係合機構22cを有する第1のベルト22d、及び第1の係合機構22cに係脱可能な第2の係合機構22eを有する第2のベルト22fを備えている。第1のベルト22d及び第2のベルト22fは、例えば、金属板や硬質合成樹脂板などの剛性素材で構成され、適度な可撓性及び弾性を有している。
【0026】
伸縮部22aは、
図4に示すように、同一の軸線回りに、第1のベルト22dの第1の係合機構22cと第2のベルト22fの第2の係合機構22eとが相互に重なった状態で螺旋状に巻回することで、柱状構造体を形成する。例えば、第1のベルト22dは第2のベルト22fの外側に巻回される。
【0027】
具体的には、第1のベルト22dの上縁側の部分がそれより上方に配置される第2のベルト22fの下縁側の部分に外側から重なり、この第2のベルト22fの上縁側の部分がそれより上方に配置される第1のベルト22dの下縁側の部分に内側から重なっている。すなわち、伸縮部22aは、それぞれ螺旋状に巻回された第1のベルト22dと第2のベルト22fとが交互に高さ方向に部分的に重なりあうことにより構成されている。
【0028】
このとき、第1の係合機構22c及び第2の係合機構22eは、例えば、係合ピン及び係合孔などで構成されており、相互に嵌合している。このように、第1のベルト22dと第2のベルト22fとの重なり合った面部分同士が第1の係合機構22cと第2の係合機構22eとの係合により固定されているため、伸縮部22aは一体の柱部材に近い高い剛性を有するものとなる。
【0029】
駆動機構22bは、外周面に溝が形成された案内部22g、及び案内部22gを回転駆動するモータや減速機などを備えており、例えば、当該モータの回転角速度が回転センサによって検出される構成である。ここで、本実施の形態では、駆動機構22bが運搬ロボット2の振動発生部である。
【0030】
駆動機構22bは、案内部22gを回転させることで、収納されていた第1のベルト22d及び第2のベルト22fを、案内部22gの溝に沿って巻き上げ、同一の軸線回りに第1のベルト22dと第2のベルト22fとを相互に重なった状態で螺旋状に巻回する。
【0031】
この螺旋状の巻回により、伸縮部22aを高さ方向に伸長させることができる。このように、第1のベルト22dと第2のベルト22fとを巻回することで伸縮部22aを高い剛性を維持しつつ高さ方向に伸長させることができる。
【0032】
一方、駆動機構22bは、案内部22gを逆回転させることで、第1のベルト22dと第2のベルト22fとを、案内部22gの溝に沿って巻き戻し、相互が巻回された状態を解くことで、伸縮部22aを高さ方向に収縮させることができる。
【0033】
このように、第1のベルト22dと第2のベルト22fとを巻き戻すことで、第1のベルト22d及び第2のベルト22fをコンパクトに収納しつつ、伸縮部22aを高さ方向に収縮させることができる。
【0034】
載置部23は、伸縮部22aの上部(先端)に設けられており、伸縮部22aの伸縮により昇降する。載置部23の上面には、被運搬物4が載置される平坦面を有する。重量センサ24は、載置部23上に載置された被運搬物4の重量を計測する。重量センサ24は、例えば、載置部23に設けられている。
【0035】
制御装置3は、運搬ロボット2の動作を制御する。詳細には、制御装置3は、
図1に示すように、重量取得部31、推定部32、格納部33及び制御部34を備えており、本実施の形態では、運搬ロボット2に搭載されている。
【0036】
重量取得部31は、重量センサ24から載置部23上に載置された被運搬物4の重量の計測結果を取得して当該載置部23の重量と加算することで、載置部23の重量と被運搬物4の重量との合計重量を取得する。但し、重量取得部31は、重量センサ24を備えていてもよい。
【0037】
推定部32は、例えば、載置部23の重量と被運搬物4の重量との合計重量、及び伸縮部22aの剛性に基づいて、伸縮部22aの伸縮量に応じた運搬ロボット2の固有振動数を推定する。ここで、運搬ロボット2の固有振動数ω0は、以下の<数1>で算出することができる。
【0038】
【数1】
但し、mは載置部23の重量と被運搬物4の重量との合計重量、lは伸縮部22aの長さ、Eはヤング率、Iは断面二次モーメントである。
【0039】
ここで、3EI/l3は伸縮部22aの剛性であるので、<数1>のように、運搬ロボット2の固有振動数ω0は、載置部23の重量と被運搬物4の重量との合計重量、及び伸縮部22aの剛性に基づいて算出することができる。
【0040】
格納部33は、例えば、載置部23の重量、予め設定された安全率、及び予め設定された伸縮機構22における駆動機構22bの案内部22gの最低角振動数などを格納する。制御部34は、例えば、運搬ロボット2の固有振動数ω0と、伸縮機構22における駆動機構22bの案内部22gの角振動数と、が一致しないように、伸縮機構22の駆動機構22bを制御する。
【0041】
ここで、運搬ロボット2の伸縮部22aに生じる振動は、
図5に示すような、ばね質量系の強制振動に見なすことができる。このとき、伸縮部22aの下端部の変位xは、<数2>で算出することができる。
【0042】
【数2】
但し、Aは伸縮部22aの下端部の振幅、ω
aは伸縮機構22における駆動機構22bの案内部22gの角振動数、tは時間である。
【0043】
載置部23の重量と被運搬物4の重量との合計重量mについての運動方程式は、<数3>で算出することができる。
【数3】
但し、yは載置部23上に載置された被運搬物4の変位、kはバネ定数である。
【0044】
そして、<数3>は、<数4>により<数5>に書き換えることができる。
【数4】
【数5】
【0045】
<数5>に<数2>を代入すると、<数6>を導き出すことができる。
【数6】
【0046】
<数6>の特解は、<数7>である。
【数7】
但し、Bは載置部23上に載置された被運搬物4の振幅である。
【0047】
ここで、Bは<数8>で表すことができる。
【数8】
【0048】
以上より、振幅比は、<数9>で表すことができる。
【数9】
【0049】
制御部34は、例えば、<数9>の右辺が予め設定された安全率以下となる伸縮機構22の駆動機構22bの案内部22gの角振動数ω
aで、当該案内部22gが回転するように、伸縮機構22の駆動機構22bを制御する。このとき、載置部23上に載置された被運搬物4の振幅Bと伸縮機構22の駆動機構22bの案内部22gの角振動数ω
aとの関係は、
図6に示すことができる。
【0050】
つまり、制御部34は、例えば、
図6に示す範囲R1又は範囲R2内で、伸縮機構22の駆動機構22bの案内部22gが回転するように、伸縮機構22の駆動機構22bを制御するのである。これにより、運搬ロボット2の固有振動数ω
0と伸縮機構22の駆動機構22bの案内部22gの角振動数ω
aとが一致しないように、伸縮機構22の駆動機構22bを制御することができ、伸縮部22aの伸縮量に応じて、運搬ロボット2を安定させつつ動作させることが可能である。
【0051】
ここで、伸縮部22aの伸長量(y-x)が長い場合や被運搬物4の重量が重たい場合などは、<数1>から運搬ロボット2の固有振動数ω0が低下し、範囲R1内の角振動数で伸縮機構22の駆動機構22bの案内部22gを回転させる場合、当該案内部22gの回転が極端に遅くなる。
【0052】
そこで、制御部34は、例えば、範囲R2内の角振動数で伸縮機構22の駆動機構22bの案内部22gが回転するように、伸縮機構22の駆動機構22bを制御するとよい。これにより、伸縮機構22を迅速に動作させることができ、運搬ロボット2の作業性を向上させることができる。
【0053】
このとき、伸縮機構22の駆動機構22bの案内部22gの回転数を増加させる際に、範囲R1と範囲R2と間の運搬ロボット2の固有振動数ω0を超えることになるが、当該案内部22gの回転加速度を大きくすることで、運搬ロボット2の固有振動数ω0付近での振幅Bの増大を抑制するとよい。
【0054】
次に、本実施の形態の運搬ロボット2において、被運搬物4を所望の高さに運搬するために伸縮機構22を制御する流れを説明する。
図7は、本実施の形態の運搬ロボットにおいて、被運搬物を所望の高さに運搬するために伸縮機構を制御する流れを示すフローチャート図である。
【0055】
先ず、運搬ロボット2の載置部23上に被運搬物4が載置されると、重量センサ24が被運搬物4の重量を計測する(S1)。そして、重量取得部31は、重量センサ24から被運搬物4の重量の計測結果を取得して当該載置部23の重量と加算し、載置部23の重量と被運搬物4の重量との合計重量を取得する。
【0056】
次に、被運搬物4を所望の高さに運搬するために、伸縮部22aを伸長させる。詳細には、制御部34は、伸縮機構22の駆動機構22bを制御して伸縮部22aを伸長させつつ、その際の伸縮部22aの長さlを駆動機構22bが備える回転センサの検出結果に基づいて算出する(S2)。
【0057】
次に、推定部32は、伸縮部22aの長さl、及び載置部23の重量と被運搬物4の重量との合計重量mなどに基づいて、上述の<数1>により、伸縮部22aの伸縮量に応じた運搬ロボット2の固有振動数ω0を推定(算出)する(S3)。
【0058】
次に、制御部34は、運搬ロボット2の固有振動数ω0に基づいて、<数9>の右辺が予め設定された安全率以下となる伸縮機構22の駆動機構22bの案内部22gの角振動数ωaの範囲R1、R2内で、当該案内部22gが回転するように、伸縮機構22の駆動機構22bを制御する(S4)。
【0059】
このとき、制御部34は、伸縮機構22における駆動機構22bの案内部22gの最低角振動数や伸縮機構22の駆動機構22bの出力限界などに基づいて、例えば、範囲R1、R2内の最も大きい角振動数で、案内部22gが回転するように、伸縮機構22の駆動機構22bを制御するとよい。
【0060】
制御装置3は、上述のS2~S4の工程を繰り返しつつ、伸縮機構22の駆動機構22bを制御し、当該駆動機構22bが備える回転センサの検出結果に基づいて、運搬ロボット2の載置部23が所望の高さに到達したことを認識すると、伸縮機構22の伸長動作を停止させる。
【0061】
このように本実施の形態の制御装置3、運搬システム1及び制御方法は、上述のように、運搬ロボット2の固有振動数ω0と伸縮機構22の駆動機構22bの案内部22gの角振動数ωaとが一致しないように、伸縮機構22の駆動機構22bを制御することができ、伸縮部22aの伸縮量に応じて、運搬ロボット2を安定させつつ動作させることが可能である。
【0062】
ちなみに、上述の説明では、被運搬物4を所望の高さに運搬するために伸縮部22aを伸長させているが、被運搬物4を所望の高さに運搬するために伸縮部22aを収縮させる場合も、上述の流れと同様に実施することができる。
【0063】
上記実施の形態に係る制御装置及び運搬システムは、次のようなハードウェア構成を備えることができる。
図8は、制御装置及び運搬システムに含まれるハードウェア構成の一例を示す図である。上述した様々な実施の形態において、制御装置及び運搬システムにおける処理の手順を説明したように、本開示は制御方法としての形態も採り得る。
【0064】
図8に示す処理装置は、インタフェース103と共に、プロセッサ101及びメモリ102を備えている。上述した実施の形態で説明した制御装置及び運搬システムの一部の構成は、プロセッサ101がメモリ102に記憶された制御プログラムを読み込んで実行することにより実現される。つまり、このプログラムは、プロセッサ101を制御装置及び運搬システムの一部の構成として機能させるためのプログラムである。このプログラムは、制御装置及び運搬システムに、その構成、又はその一部における処理を実行させるためのプログラムであると言える。
【0065】
上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータ(情報通知装置を含むコンピュータ)に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)を含む。さらに、この例は、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/Wを含む。さらに、この例は、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM、EPROM、フラッシュROM、RAM)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0066】
なお、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0067】
上記実施の形態では、伸縮機構22の駆動機構22bの案内部22gの角振動数が運搬ロボット2の固有振動数に一致しないように、伸縮機構22の駆動機構22bを制御したが、振動発生部である駆動車輪21bの角振動数が運搬ロボット2の固有振動数に一致しないように、移動部21の駆動機構21dを制御してもよい。
【0068】
この場合、例えば、移動部21に設けられた加速度センサの検出結果に基づいて運搬ロボット2の固有振動数を推定し、推定した運搬ロボット2の固有振動数と、駆動車輪21bの角振動数と、が一致しないように、移動部21の駆動機構21dを制御するとよい。
【0069】
要するに、振動発生部の角振動数が運搬ロボット2の固有振動数に一致しないように、運搬ロボット2が有する駆動機構を制御すればよい。
【0070】
上記実施の形態では、伸縮機構22をテレスコピック式の伸縮機構で構成したが、伸縮機構22の構成は限定されず、運搬ロボット2の高さ方向に伸縮可能な構成であればよい。
【0071】
上記実施の形態では、制御装置3を運搬ロボット2に搭載しているが、制御装置3の少なくとも一部の要素を運搬ロボット2の外部のサーバなどに搭載してもよい。
【0072】
上記実施の形態では、運搬ロボット2を自律移動ロボットとして構成しているが、ユーザの指示に基づいて移動するロボットであってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 運搬システム
2 運搬ロボット
21 移動部、21a ロボット本体、21b 駆動車輪、21c 従動車輪、21d 駆動機構
22 伸縮機構
22a 伸縮部、22c 第1の係合機構、22d 第1のベルト、22e 第2の係合機構、22f 第2のベルト
22b 駆動機構、22g 案内部
23 載置部
24 重量センサ
3 制御装置
31 重量取得部
32 推定部
33 格納部
34 制御部
4 被運搬物
101 プロセッサ
102 メモリ
103 インタフェース