(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】電極材料、電極及び電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/86 20060101AFI20240730BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240730BHJP
C25B 11/054 20210101ALN20240730BHJP
C25B 11/067 20210101ALN20240730BHJP
H01G 11/46 20130101ALN20240730BHJP
H01G 11/86 20130101ALN20240730BHJP
C01G 23/00 20060101ALN20240730BHJP
C01G 23/047 20060101ALN20240730BHJP
C01G 39/00 20060101ALN20240730BHJP
C01G 41/00 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
H01M4/86 B
H01M8/10 101
C25B11/054
C25B11/067
H01G11/46
H01G11/86
C01G23/00 C
C01G23/047
C01G39/00 Z
C01G41/00 A
(21)【出願番号】P 2021022651
(22)【出願日】2021-02-16
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000174541
【氏名又は名称】堺化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】跡部 晋太郎
(72)【発明者】
【氏名】家門 彰弘
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-195193(JP,A)
【文献】特開2017-073218(JP,A)
【文献】特開2009-099522(JP,A)
【文献】特開2016-013954(JP,A)
【文献】特開2007-130267(JP,A)
【文献】国際公開第2005/087372(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86
H01M 4/88
H01M 4/00
H01M 8/10
C25B 11/00
H01G 11/00
C01G 23/00
C01G 39/00
C01G 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1);
Ti
(1-x)A
xO
2 (1)
(式中、Aはモリブデン又はタングステンを表す。xは、0.2~0.6の数である。)
で表される複合酸化物を含むことを特徴とする電極材料。
【請求項2】
請求項1に記載の電極材料を用いて形成されることを特徴とする電極。
【請求項3】
請求項2に記載の電極を用いて構成されることを特徴とする燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極材料、電極及び電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心の高まりを受けて石油や石炭等の化石燃料から環境に負荷をかけない電力へのエネルギー源のシフトが進んでおり、電気分野だけでなく、自動車等の機械分野においても電池の使用が広がりをみせている。
様々な分野への電池の使用の広がりに伴い、より高性能な電池への要求が高まっており、そのような要求に応える電池の実現に向けて電池および電池を構成する様々な部材についての研究が活発に行われている。
【0003】
電池を構成する部材のうち、活発に研究が行われている部材の1つに電極がある。従来、電極の材料としてカーボンが広く使用されてきたが、燃料電池の電極にカーボンが使用された場合、高電位ではカーボンが水と反応して分解されるという不具合が生じる。このような不具合のない材料として、導電性に優れる金属酸化物に関する研究が活発に行われている。中でも二酸化モリブデンや二酸化タングステンは高導電性酸化物として知られており、例えば、モリブデン酸化物を含む乱層構造物質(特許文献1参照)、二酸化タングステンを負極活物質として含むリチウムイオンキャパシタ(特許文献2参照)等が開示されている。
またモリブデンやタングステンの酸化物はこれまで電極以外の分野でも使用されてきており、モリブデンやタングステンとチタンとの複合酸化物を皮膚外用剤や脱硝触媒に利用することが開示されている(特許文献3~5参照)。更に製造方法についても、所定の平均粒子径であり、かつ粒子形状が均整であって略球状または多面体状の粒子状であるモリブデンを含有する酸化チタン粒子の製造方法(特許文献6参照)や、チタン酸化物のチタンの一部をモリブデンやタングステン等の異なる金属で置換した金属酸化物微粒子の製造方法が開示されている(特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-187066号公報
【文献】特開2019-21770号公報
【文献】特開平11-35326号公報
【文献】特開2013-193938号公報
【文献】特開2014-62012号公報
【文献】特開2016-13954号公報
【文献】特開2015-196634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のとおり電池の電極材料として二酸化モリブデンや二酸化タングステンが提案されている。これらは導電性に優れた物質であるが、酸化環境下では三酸化物(WoO3、MoO3)まで酸化されて導電性が消失してしまうという課題がある。燃料電池の電極は酸化環境に曝されるため、これらは燃料電池の電極材料として十分に適しているとはいえない。また、二酸化モリブデンや二酸化タングステンを一般的な製造方法で製造した場合、比表面積が1m2/g程度のものとなるが、電極として使用する場合、触媒となる貴金属を高分散に担持するほうが性能が高くなるためより比表面積が大きいほうが好ましく、この点でも二酸化モリブデンや二酸化タングステンは電極材料として改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、導電性に優れ、酸化環境下においても優れた耐酸化性を示し、かつ、比表面積の大きいモリブデンやタングステンを含む電極材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、モリブデンやタングステンを含む電極材料であって、酸化環境下においても導電性を維持することができ、かつ、一般的な製造方法で製造した二酸化モリブデンや二酸化タングステンよりも比表面積の大きい材料について検討し、モリブデン又はタングステンに対して金属元素としてチタンを加え、金属元素全体に対するモリブデン元素又はタングステン元素の割合を20~60mol%に調整した複合酸化物が導電性に優れ、かつ、酸化環境下において優れた耐酸化(組成安定)性を示し、電極材料として好適であることを見出した。更に本発明者は、この複合酸化物を、一般的な製造方法で製造した二酸化モリブデンや二酸化タングステンよりも比表面積の大きい材料として得ることができることも見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、下記式(1);
Ti(1-x)AxO2 (1)
(式中、Aはモリブデン又はタングステンを表す。xは、0.2~0.6の数である。)で表される複合酸化物を含むことを特徴とする電極材料である。
【0009】
本発明はまた、本発明の電極材料を用いて形成されることを特徴とする電極でもある。
【0010】
本発明はまた、本発明の電極を用いて構成されることを特徴とする燃料電池でもある。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電極材料は導電性に優れると共に酸化環境下において優れた耐酸化(組成安定)性を示し、かつ、一般的な製造方法で製造した二酸化モリブデンや二酸化タングステンよりも比表面積の大きい材料として得ることができるため、電池の電極、中でも電極が強い酸化環境下で使用される燃料電池の電極の材料として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0013】
1.電極材料
本発明の電極材料は、金属元素としてチタンと、モリブデン又はタングステンとを含み、金属元素全体に対するモリブデン元素又はタングステン元素の割合が20~60mol%である複合酸化物、具体的には、下記式(1);
Ti(1-x)AxO2 (1)
(式中、Aはモリブデン又はタングステンを表す。xは、0.2~0.6の数である。)で表される組成を有する複合酸化物を含む。
上記式(1)におけるxは、0.2~0.6であればよいが、0.3~0.5であることが好ましい。より好ましくは、0.4~0.5である。
このような複合酸化物は、二酸化モリブデンや二酸化タングステンに比べて酸化されにくく酸化環境下においても導電性を維持することができる。
【0014】
上記複合酸化物は、導電性複合酸化物であるが、体積抵抗率は、103/Ωcm以下あることが好ましい。より好ましくは、102/Ωcm以下である。更に好ましくは、101/Ωcm以下である。
複合酸化物の体積抵抗率は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
【0015】
上記複合酸化物は、一般的な製造方法で製造した二酸化モリブデンや二酸化タングステンよりも比表面積の大きい材料として得ることができるものであるが、比表面積は、5m2/g以上であることが好ましい。より好ましくは、10m2/g以上であり、更に好ましくは、20m2/g以上である。
複合酸化物の比表面積は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
【0016】
上記複合酸化物は、pH値の低い環境下においても酸化環境下においても酸化に対する耐性が高く、導電性を維持することができる。また一般的な製造方法で製造した二酸化モリブデンや二酸化タングステンよりも比表面積が大きいため電極反応の触媒となる貴金属等を高分散に担持することができる。このため、上記複合酸化物は電極材料として好適であり、中でも動作時に電極がpH値が3以下の極めて強い酸化環境に曝される燃料電池の電極の材料として好適に用いることができる。また燃料電池と同様の仕組みの電気化学デバイスである電気分解セルの電極の材料としても好適に用いることができる。
このような、上記複合酸化物を含む本発明の電極材料を用いて形成される電極、及び、該電極を用いて構成される燃料電池や電気分解セル等の電気化学デバイスもまた、本発明の1つである。
【0017】
本発明の電極材料は比表面積が大きく、電極反応の触媒となる貴金属等を高分散に担持することができるため、本発明の電極材料の表面に触媒が担持されてなる電極は本発明の電極の好適な実施形態の1つである。
また、本発明の電極を固体高分子電解質膜と組み合わせて用いる場合、本発明の電極材料を含む触媒層が固体高分子電解質膜の少なくとも一面に設けられた膜電極接合体を形成してもよく、そのような膜電極接合体もまた、本発明の電極の好適な実施形態の1つである。
【0018】
2.複合酸化物の製造方法
本発明の電極材料が含む複合酸化物の製造方法は特に制限されないが、例えば、モリブデン若しくはタングステンのアンモニウム塩の水溶液、又は、モリブデン源若しくはタングステン源と塩基性水溶液との混合水溶液に、チタン源の水溶液を添加して混合水溶液を得る第一工程、混合水溶液のpHを1~7に調整して水酸化物の沈殿を得る第二工程、得られた沈殿を分離する第三工程、及び、分離した沈殿を還元雰囲気下で焼成する第四工程を含む方法で得ることができる。このような製造方法で製造することで、比表面積の大きい複合酸化物を得ることができる。
なお、第二工程では、モリブデンもしくはタングステンの水溶液とチタン水溶液をそれぞれ用意し、両液を混合することで、直接pHを1~7に調整する方法でも沈殿を生成することができる。
【0019】
上記第一工程において、モリブデン又はタングステンのアンモニウム塩を使用しない場合のモリブデン源やタングステン源としては、ナトリウム塩、カリウム塩、塩化物の他、モリブデン酸、タングステン酸等を用いることができる。
【0020】
上記第一工程において用いる塩基性水溶液としては、特に限定されるものではないが、NH3水溶液、NaOH水溶液、炭酸ナトリウム水溶液等が挙げられる。
【0021】
上記第一工程において用いるチタン源としては、塩化物、硫酸塩等を用いることができる。
【0022】
上記第一工程において使用するチタン源の量は、チタン元素の量が、第一工程において混合するモリブデン元素又はタングステン元素1モルに対して、0.6~4.0モルとなる量であることが好ましい。より好ましくは、0.7~3.0モルとなる量であり、更に好ましくは、1.0~3.0モルとなる量である。
【0023】
上記第一工程において使用する溶媒の量は特に限定されないが、例えば、第一工程において使用するチタン源の量100重量部に対して、100~1000000重量部とすることが好ましい。より好ましくは500~100000重量部、更に好ましくは1000~50000重量部である。
【0024】
上記第一工程における混合水溶液の温度は、原料の溶解性の点から0~100℃であることが好ましい。より好ましくは、20~100℃である。
【0025】
上記第二工程においては、混合水溶液のpHを1~7に調整すればよいが、より十分に沈殿を生成させる点からpHは2~6であることが好ましい。より好ましくは、4~6である。
上記第二工程において、pHを1~7に調整する際の混合水溶液の温度は、沈殿の生成速度と作業性の点から、2~100℃であることが好ましい。より好ましくは、10~70℃である。
【0026】
上記複合酸化物の製造方法では、第二工程でpHを所定の範囲に調整した後、第三工程の前に所定の時間、混合溶液をそのまま保持する工程を設けてもよい。この工程を設けることで、より十分に沈殿を生成させることができる。
この工程を行う時間は特に制限されないが、十分に沈殿を生成させることと複合酸化物製造の効率とを考慮すると、10~600分であることが好ましい。より好ましくは、30~180分である。
【0027】
上記第三工程において第二工程で生成した水酸化物の沈殿を分離する方法は特に制限されず、ろ過、遠心分離、加熱下での蒸発等を使用することができる。
【0028】
上記第四工程において、還元雰囲気下で焼成する温度は第二工程で得られた水酸化物の焼成が十分に行われる限り特に制限されないが、200~800℃であることが好ましい。より好ましくは、400~600℃であり、更に好ましくは、500~600℃である。
焼成する時間も焼成が十分に行われる限り特に制限されないが、1~72時間であることが好ましい。より好ましくは、1~24時間であり、更に好ましくは、2~12時間である。
【0029】
上記第四工程における還元雰囲気としては、特に限定されず、水素(H2)雰囲気、一酸化炭素(CO)雰囲気、水素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気等が挙げられる。中でも、効率よく複合酸化物を製造できることから、水素雰囲気であることが好ましい。水素濃度は5~100vol%の範囲にあることが好ましく、より好ましくは50vol%以上、更に好ましくは75vol%以上、特に好ましくは100vol%である。また還元雰囲気としては、還元が行われている反応場(系とも称する)に還元用ガスが連続して注入され流れている状態であることが望ましい。
【0030】
上記複合酸化物の製造方法は、上述した第一~第三工程や、上述した第二工程後に混合溶液をそのまま保持する工程以外のその他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、上記第三工程で水酸化物の沈殿を分離した後、第四工程の焼成の前に沈殿を水洗する工程や沈殿を乾燥する工程、沈殿を粉砕する工程、沈殿を分級する工程等が挙げられる。
第三工程で分離した沈殿を乾燥する工程における乾燥温度は、沈殿が乾燥される限り特に制限されないが、沈殿を十分に乾燥させる点から40~200℃であることが好ましい。より好ましくは、50~130℃であるが、複合酸化物の酸化を防止する観点から、低温での乾燥が特に好ましく、70℃以下での乾燥が特に好ましい。
また乾燥する時間は、沈殿の量により適宜調整すればよいが、1~72時間であることが好ましい。より好ましくは、2~24時間である。
【実施例】
【0031】
本発明を詳細に説明するために以下に具体例を挙げるが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「%」及び「wt%」とは「重量%(質量%)」を意味する。なお、各物性の測定、評価方法は以下の通りである。
【0032】
<組成比>
リガク社製 走査型蛍光X線分析装置 ZSX Primus IIを使用し、蛍光X線法により測定した。
<体積抵抗率>
日東精工アナリテック社製 粉体抵抗測定システムMCP-PD51を使用し、四探針法により測定した。粉体抵抗測定システムは、油圧による粉体プレス部と四探針プローブ、高抵抗測定装置(同社製、ロレスターGX MCP-T700)から構成される。
以下の手順に従い、体積抵抗(Ω・cm)の値を求めた。
1)四探針プローブを底面に備えたプレス冶具(直径20mm)にサンプル粉末を投入し、粉体抵抗測定システムの加圧部にセットする。プローブと高抵抗測定装置とをケーブルで接続する。
2)ハンドプレスを用いて、20kNまで加圧する。粉体厚みをデジタルノギスで測定、抵抗値を高抵抗測定装置で測定する。
3)粉体の底面積、厚み、抵抗値から、下記数式1に基づき体積固有抵抗(Ω・cm)を求める。
【数1】
<比表面積>
JIS Z8830(2013年)の規定に準じ、試料を窒素雰囲気中、230℃で30分間熱処理した後、マイクロトラックベル社製 Belsorp IIを使用し、定容量式ガス吸着法により測定した。
<耐酸化評価>
(1)作用極の作製
測定対象のサンプルに、5重量%パーフルオロスルホン酸樹脂溶液(アルドリッチ社製)、イソプロピルアルコール(和光純薬工業社製)及びイオン交換水を加え、超音波により分散させてペーストを調製した。ペーストを回転グラッシーカーボンディスク電極に塗布し、充分に乾燥した。乾燥後の回転電極を作用極とした。
(2)サイクリックボルタンメトリー測定
Automatic Polarization System(北斗電工社製、商品名「HZ-7000」)に、回転電極装置(北斗電工社製、商品名「HR-301」)を接続し、作用極に、上記で得た測定サンプル付き電極を用い、対極と参照極には、それぞれ白金電極と可逆水素電極(RHE)電極を用いた。
測定サンプル付き電極のクリーニングのため、25℃で、電解液(0.1mol/lの過塩素酸水溶液)にアルゴンガスをバブリングしながら0.05Vから1.2Vまでサイクリックボルタンメトリーに供した。その後、25℃で、アルゴンガスを飽和させた電解液(0.1mol/l硫酸水溶液)で0.05Vから1.2Vまで掃引速度50mV/secで1000サイクルの試験を行い、酸化由来の電流発生の有無を確認した。
【0033】
実施例1
タングステン酸アンモニウムパラ五水和物(関東化学社製)6.7gと80℃に加熱したイオン交換水300gを混合撹拌し、タングステン溶液を得た。得られたタングステン溶液に三塩化チタン溶液(富士フィルム和光純薬社製、TiCl3含有量22wt%)47.3gを添加し混合撹拌したものを準備した(これを「混合水溶液」と称す)。
上記混合水溶液に1.0Nのアンモニア水を添加し、30℃に加熱保持しながら混合撹拌した。pH5.5になった時点で、アンモニア水の添加を止め、液温30℃に1時間加熱維持した後、得られた沈殿物を常法に従い濾過、水洗した後、60℃で18時間乾燥した。得られた粉末を水素雰囲気下、550℃まで昇温し、550℃で4時間保持した後、室温まで冷却して複合酸化物の黒色粉末1を得た。黒色粉末1の蛍光X線分析結果から、TiとWのモル比を確認した。結果を表1に示す。
【0034】
実施例2
タングステン酸アンモニウムパラ五水和物(関東化学社製)13.1g、三塩化チタン溶液31.6gを秤量した以外は実施例1と同様の方法により複合酸化物の黒色粉末2を得た。黒色粉末2の蛍光X線分析結果から、TiとWのモル比を確認した。結果を表1に示す。
【0035】
実施例3
タングステン酸アンモニウムパラ五水和物の替わりにモリブデン酸アンモニウム四水和物(富士フィルム和光純薬社製)を使用し、モリブデン酸アンモニウム四水和物4.01g、三塩化チタン溶液47.3gを秤量した以外は実施例1と同様の方法により複合酸化物の黒色粉末3を得た。黒色粉末3の蛍光X線分析結果から、TiとMoのモル比を確認した。結果を表1に示す。
【0036】
実施例4
モリブデン酸アンモニウム四水和物8.03g、三塩化チタン溶液31.6gを秤量した以外は実施例3と同様の方法により複合酸化物の黒色粉末4を得た。黒色粉末4の蛍光X線分析結果から、TiとMoのモル比を確認した。結果を表1に示す。
【0037】
比較例1
モリブデン酸アンモニウム四水和物0.803g、三塩化チタン溶液24.7gを秤量した以外は実施例3と同様の方法により複合酸化物の灰色粉末5を得た。粉末5の蛍光X線分析結果から、TiとMoのモル比を確認した。結果を表1に示す。
【0038】
比較例2
三酸化モリブデン(富士フィルム和光純薬社製)5.0gを水素雰囲気下、500℃まで昇温し、500℃で4時間保持した後、室温まで冷却して黒色粉末6を得た。
【0039】
比較例3
三酸化タングステン(富士フィルム和光純薬社製)5.0gを水素雰囲気下、580℃まで昇温し、580℃で4時間保持した後、室温まで冷却して黒色粉末7を得た。
【0040】
実施例1~4、比較例1で得られた複合酸化物の組成比、体積抵抗率、比表面積、及び、比較例2、3の酸化物の体積抵抗率、比表面積を上述した方法で測定し、更に上述した方法で耐酸化評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
【0042】
電極材料は、体積抵抗率(Ωcm)が103オーダー以下、比表面積が5m2/g以上であることが望ましい。実施例1~4の複合酸化物はいずれもこの水準を満たし、また耐酸化性にも優れることが確認された。一方、比較例1の材料は体積抵抗率が大幅に大きく、酸化モリブデンや酸化タングステンを用いた比較例2、3の材料は比表面積が小さかった。
これらより、チタンと、モリブデン又はタングステンとを含み、金属元素全体に対するモリブデン元素又はタングステン元素の割合が所定の範囲である本発明の複合酸化物が電極材料として好適であることが確認された。